明 細 書
車両用制御装置
技術分野
[0001] 本発明は、車輪と、その車輪のキャンバー角を調整するキャンバー角調整装置とを 有する車両に対し、前記キャンバー角調整装置を作動させて、前記車輪のキャンバ 一角を制御する車両用制御装置に関し、特に、高グリップ性と低燃費との両立を図る ことができる車両用制御装置に関するものである。
背景技術
[0002] 車輪のキャンバー角(タイヤ中心と地面とがなす角度)をマイナス方向で大きくとるこ とで、タイヤの能力を十分に引き出して、旋回性能の向上を図る試みが行われている 。これは、キャンバー角を例えば 0° に設定していると、直進走行時にはトレッドが幅 方向の全域で地面に接地する力 旋回時には遠心力による車両のロールにより内側 のトレッドが地面力 浮き上がり、十分な旋回性能を得られないからである。従って、 マイナス方向のキャンバー角を予め付与しておくことで、旋回時にトレッドが地面へ幅 広く接地でき、旋回性能の向上を図ることができる。
[0003] し力しながら、マイナス方向に大きなキャンバー角で車輪を車両に装着すると、タイ ャの旋回性能は向上される力 直進走行時に内側のトレッド端部における接地圧が 高くなり、タイヤが偏磨耗して不経済であると共に、トレッド端部の温度が高温になる という問題点があった。
[0004] そこで、特開平 2— 185802号公報には、マイナス方向に大きなキャンバー角で車 両に車輪を装着する場合に、タイヤの一方側のサイド部を他方側のサイド部より強く 補強して剛性を大ならしめると共に、トレッドゴムを 2分して、その一方側を他方側より 硬度を低くする、或いはトレッド端部のトレッド厚みを厚くして、耐摩耗性、耐熱性及 び高グリップ性を確保する技術が開示されて!ヽる (特許文献 1)。
[0005] また、 US6, 347, 802B1公報には、車輪のキャンバー角をァクチユエータの駆動 力によってアクティブ制御するサスペンションシステムが開示されて 、る(特許文献 2)
特許文献 1 :特開平 2— 185802号公報
特許文献 2 :US6, 347, 802B1公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] し力しながら、前者の技術では、旋回時の高グリップ性を維持すると 、う点では十分 な性能を発揮し得るが、高グリップ性と低燃費 (低転がり抵抗)との両立と!/ヽぅ点では 不十分であるという問題点があった。また、上述した従来の技術では、高グリップ性は 旋回時に限られるものであり、例えば、直進走行時の急加速'急制動時における高グ リップ性の発揮が不十分であるという問題点があった。同様に、後者の技術では、高 グリップ性と低燃費との両立という点では不十分であるという問題点があった。
[0007] 本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、高グリップ性と低 燃費との両立を図ることができる車両用制御装置を提供することを目的としている。 課題を解決するための手段
[0008] この目的を達成するために、請求項 1記載の車両用制御装置は、車輪と、その車輪 のキャンバー角を調整するキャンバー角調整装置とを備える車両に対し、前記キャン バー角調整装置を作動させて、前記車輪のキャンバー角を制御するものであって、 前記キャンバー角調整装置の作動状態を制御する作動制御手段を備え、前記車輪 は、第 1トレッドと、その第 1トレッドと特性が異なる第 2トレッドとを少なくとも備え、前記 第 1トレッドが前記車輪の幅方向において前記第 2トレッドよりも前記車両の内側又は 外側に配置され、前記第 1トレッドは、前記第 2トレッドに比して、グリップ力の高い特 性に構成されると共に、前記第 2トレッドは、前記第 1トレッドに比して、転がり抵抗の 小さい特性に構成され、前記作動制御手段が前記キャンバー角調整装置の作動状 態を制御して、前記車輪のキャンバー角を調整することで、前記車輪の前記第 1トレ ッドにおける接地圧と前記第 2トレッドにおける接地圧との比率を変更する。
[0009] 請求項 2記載の車両用制御装置は、請求項 1記載の車両用制御装置において、前 記作動制御手段は、前記車両の対地速度を判断する対地速度判断手段と、その対 地速度検出手段により前記車両の対地速度が所定速度以下であると判断される場 合に、少なくとも前記第 1トレッドにおける接地圧が増加するように、前記キャンバー
角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する低速時作動制御手段 と、を備えている。
[0010] 請求項 3記載の車両用制御装置は、請求項 1又は 2に記載の車両用制御装置にお いて、前記作動制御手段は、運転者が操作する操作部材の操作状態を判断する操 作状態判断手段と、その操作状態判断手段により前記操作部材の操作状態が所定 の条件を満たしていると判断される場合に、少なくとも前記第 1トレッドにおける接地 圧が増加するように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ 一角を調整する操作時作動制御手段と、を備えている。
発明の効果
[0011] 請求項 1記載の車両用制御装置によれば、作動制御手段によってキャンバー角調 整装置が作動制御され、車輪のキャンバー角がマイナス方向(ネガティブキャンバー 方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド (第 1トレッド又は第 2トレッド) の接地圧が増加される一方、車両の外側に配置されるトレッド (第 2トレッド又は第 1ト レッド)の接地圧が減少される。
[0012] これに対し、車輪のキャンバー角がプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整 されると、車両の内側に配置されるトレッド (第 1トレッド又は第 2トレッド)の接地圧が 減少される一方、車両の外側に配置されるトレッド (第 2トレッド又は第 1トレッド)の接 地圧が増加される。
[0013] このように、本発明の車両用制御装置によれば、作動制御手段によってキャンバー 角調整装置の作動状態を制御して、車輪のキャンバー角を調整することで、車輪の 第 1トレッドにおける接地圧と第 2トレッドにおける接地圧との比率 (一方のトレッドのみ が接地し、他方のトレッドが路面力 離れて 、る状態を含む)を任意のタイミングで変 更することができるので、第 1トレッドの特性より得られる性能と第 2トレッドの特性より 得られる性能との 2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
[0014] ここで、第 1及び第 2トレッドの特性より得られる 2つの性能としては、例えば、高ダリ ップ性より得られる走行性能 (加速力,制動力)と低転がり性より得られる省燃費性能 との 2つの性能、路面にできた水膜の除去に適した溝パターンより得られる排水性能 とパターンノイズの低減に適した溝パターンより得られる低ノイズ性能との 2つの性能
、未舗装路における路面に食い込むブロックパターンより得られる未舗装路でのダリ ップ性能と溝を有さず接地面積を確保したトレッドより得られる乾燥舗装路でのグリツ プ性能との 2つの性能、或いは、積雪路ゃ凍結路において駆動力'制動力を発揮す る性能と常温における舗装路面で駆動力,制動力を発揮する性能との 2つの性能な どが例示される。
[0015] なお、このように互いに背反する 2つの性能の両立は、従来の車両では達成するこ とが不可能であり、それぞれの性能に対応する 2種類のタイヤを履き替える必要があ つたところ、本発明のように、第 1及び第 2トレッドを有する車輪のキャンバー角が、作 動制御手段によるキャンバー角調整装置の作動状態の制御により調整される構成と することで初めて達成可能となったものであり、これにより、互いに背反する 2つの性 能の両立を達成することができる。
[0016] また、本発明の車両用制御装置によれば、複数種類のトレッドが車輪の幅方向に 並設されているので、キャンバー角調整装置の作動状態を制御して、車輪のキャン バー角を調整することで、各トレッドの特性より得られる複数の性能をそれぞれ発揮さ せることができると!/、う効果がある。
[0017] 即ち、本発明によれば、第 1トレッドが、第 2トレッドに比して、グリップ力の高い特性 に構成されると共に、第 2トレッドが、第 1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性に 構成されているので、車輪のキャンバー角を調整して、第 1トレッドにおける接地圧と 第 2トレッドにおける接地圧との比率 (一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが 路面力 離れている状態を含む)を変更することで、走行性能 (例えば、旋回性能、 加速性能、制動性能或いは雨天時や積雪路などでの車両安定性など)と省燃費性 能との 2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
[0018] また、グリップ力の高い特性に構成されるトレッドは第 1トレッドとして車両の内側に 配設されているので、カゝかる第 1トレッドを利用する場合には、車輪にネガティブキヤ ンバーを付与した状態とすることができ、その結果、旋回性能のより一層の向上を図 ることができると!/、う効果がある。
[0019] 請求項 2記載の車両用制御装置によれば、請求項 1記載の車両用制御装置の奏 する効果に加え、対地速度判断手段により車両の対地速度が所定速度以下であると
判断される場合には、低速時作動制御手段がキャンバー角調整装置を作動させて 車輪のキャンバー角を調整することで、第 1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加さ せることができるので、高グリップの第 1トレッドを利用して、加速性能'制動性能の向 上を図ることができると 、う効果がある。
[0020] 即ち、対地速度が所定値以下であるということは、車両 1がその後に減速し停車す る可能性や加速する可能性も高いといえる。よって、これらの場合には車両 (車輪)の グリップ力や停止力を予め確保しておく必要がある。
[0021] このような状況において、本発明によれば、車両の対地速度が所定値以下になつ た場合には、第 1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させて、第 1トレッドの高ダリ ップ性を利用することで、車輪のグリップ力を確保して、加速性能 ·制動性能の向上 を図ることができる。なお、この場合の低速時作動手段によるキャンバー角の調整は 、第 1トレッドにおける接地圧が第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように行つ ても良い。
[0022] また、車両が停車した後は、第 1トレッドの高グリップ性を利用して、車両 (車輪)の 停止力を確保することができるので、車両を安定した状態で停車させておくことがで きる。更に、その停車後に再発進する場合には、予め第 1トレッドの接地圧が増加さ れていることで、車輪がスリップすることを防止して、車両の再発進をスムーズ且つ高 レスポンスに行うことができる。
[0023] 一方、対地速度判断手段により車両の対地速度が所定地以下であるとは判断され ない場合には、車両 (車輪)に作用する駆動力'制動力は上述の場合と比較して比 較的小さい。このような場合に、本発明によれば、キャンバー角調整装置を作動させ て、車輪のキャンバー角を調整することで、第 2トレッドにおける接地圧を増加させる( 即ち、第 1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第 2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができる。なお、この場合の低速 時作動手段によるキャンバー角の調整は、第 2トレッドにおける接地圧が第 1トレッド における接地圧よりも大きくなるように行っても良 、。
[0024] このように、本発明によれば、作動制御手段 (低速時作動制御手段)によって、車輪 のキャンバー角を調整して、第 1トレッドにおける接地圧と第 2トレッドにおける接地圧
との比率 (一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面力 離れて 、る状態を 含む)を変更することで、加減速性能と省燃費性能との互いに背反する 2つの性能の 両立を図ることができると 、う効果がある。
[0025] なお、請求項 2記載の発明において、車両速度判断手段により車両の対地速度が 所定速度以下であると判断される場合 (判断されない場合)とは、車両速度センサ装 置により測定された車両の実際の対地速度が既に所定速度以下に達して 、る場合 ( 達していない場合)のみでなぐ運転者により操作される操作部材 (例えば、アクセル ペダル、ブレーキペダル或いはシフトの操作状態)などに基づいて、車両の対地速 度が所定速度以下になる(所定量以下とはならない)と予測される場合も含む趣旨で ある。
[0026] 請求項 3記載の車両用制御装置によれば、請求項 1又は 2に記載の車両用制御装 置の奏する効果に加え、操作状態判断手段により操作部材の操作状態が所定の条 件を満たしていると判断される場合には、操作時作動制御手段がキャンバー角調整 装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第 1トレッドにおける接地圧 を少なくとも増カロさせることができるので、高グリップの第 1トレッドを利用して、加速性 能 ·制動性能 '旋回性能の向上を図ることができると!、う効果がある。
[0027] 例えば、ウィンカスイッチ (操作部材)のオン (所定の条件)によって、操作時作動制 御手段が第 1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、右左折 や車線変更を行う際に、第 1トレッドの高グリップ性を利用して、車輪のグリップ力を確 保することができるので、車両の旋回性能の向上を図ることができる。
[0028] また、例えば、高グリップスィッチ (操作部材)のオン (所定の条件)によって、操作時 作動制御手段が第 1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、セ ンサ装置の検出精度などに起因して、路面状態 (積雪'凍結など)を適正に認識でき ない場合であっても、運転者の指示に基づいて、車輪のグリップ力を確保することが できるので、車輪のスリップやロックを防止して、車両の制動性能や加速性能、或い は旋回性能の向上を図ることができる。
[0029] また、例えば、アクセルペダルやブレーキペダル (操作部材)の踏み込み量が所定 値以上となること (所定の条件)によって、操作時作動制御手段が第 1トレッドにおけ
る接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、加速や制動を行う際に、第 1トレッド の高グリップ性を利用して、車輪のグリップ力を確保することができるので、車輪のスリ ップゃロックを防止して、車両の加速性能 ·制動性能の向上を図ることができる。
[0030] なお、所定の条件は、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量が所定値以 上の場合だけでなぐ他の状態量であっても良い。例えば、アクセルペダルやブレー キペダルの操作速度が例示される。例えば、アクセルペダル又はブレーキペダルの 踏み込み量が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い場合を所定条件を 満たして!/、る場合としても良!、。
[0031] また、例えば、変速機の減速度を上げるシフト (操作部材)操作が行われたこと (所 定の条件)によって、操作時作動制御手段が第 1トレッドにおける接地圧を少なくとも 増加させる構成であれば、シフト操作に伴う加減速を行う際に、第 1トレッドの高グリツ プ性を利用して、車輪のグリップ力を確保することができるので、車輪のスリップや口 ックを防止して、車両の加速性能 ·制動性能の向上を図ることができる。
図面の簡単な説明
[0032] [図 1]本発明の第 1実施の形態における車両用制御装置が搭載される車両を模式的 に示した模式図である。
[図 2] (a)は車輪の断面図であり、 (b)は車輪の舵角及びキャンバー角の調整方法を 模式的に説明する模式図である。
[図 3]車両用制御装置の電気的構成を示したブロック図である。
[図 4]車両の上面視を模式的に示した模式図である。
[図 5]車両の正面視を模式的に図示した模式図であり、車輪にネガティブキャンバー が付与された状態である。
[図 6]車両の正面視を模式的に図示した模式図であり、車輪にポジティブキャンバー が付与された状態である。
[図 7]キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
[図 8]第 2実施の形態における車輪の上面図である。
[図 9]車両の上面視を模式的に示した模式図である。
[図 10]左旋回状態にある車両の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車
輪に左旋回用の舵角が、旋回外輪 (右の前輪)にネガティブキャンバーが、旋回内輪 (左の車輪)にキャンバー定常角が、それぞれ付与された状態である。
[図 11]キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
[図 12]第 3実施の形態における車輪の上面図である。
圆 13]左旋回状態にある車両の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車 輪に左旋回用の舵角が、旋回外輪 (右の前輪)にネガティブキャンバーが、旋回内輪 (左の車輪)にポジティブキャンバー力 それぞれ付与された状態である。
[図 14]キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
[図 15]第 4実施の形態におけるキャンバー制御処理を示すフローチャートである。 符号の説明
100 車両用制御装置
1, 201, 301 両
2, 202, 302 車輪
2FL 前輪 (車輪、左車輪)
2FR 前輪 (車輪、右車輪)
2RL 後輪 (車輪、左車輪)
2RR 後輪 (車輪、右車輪)
21, 221 第 1トレッド
22 第 2トレッド
323 第 3トレッド
4 キャンバー角調整装置
4FL〜4RR FL〜RRァクチユエータ(キャンバー角調整装置)
4a〜4c 油圧シリンダ (キャンバー角調整装置の一部)
4d 油圧ポンプ (キャンバー角調整装置の一部)
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図 1 は、本発明の第 1実施の形態における車両用制御装置 100が搭載される車両 1を模 式的に示した模式図である。なお、図 1の矢印 FWDは、車両 1の前進方向を示す。
[0035] まず、車両 1の概略構成について説明する。車両 1は、図 1に示すように、車体フレ ーム BFと、その車体フレーム BFに支持される複数 (本実施の形態では 4輪)の車輪 2と、それら各車輪 2を独立に回転駆動する車輪駆動装置 3と、各車輪 2の操舵駆動 及びキャンバー角の調整等を行うキャンバー角調整装置 4とを主に備え、車輪 2のキ ヤンバー角を車両用制御装置 100により制御して、車輪 2に設けられた 2種類のトレツ ドを使い分けることで (図 5及び図 6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図る ことができるように構成されて!、る。
[0036] 次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪 2は、図 1に示すように、車両 1の 進行方向前方側に位置する左右の前輪 2FL, 2FRと、進行方向後方側に位置する 左右の後輪 2RL, 2RRとの 4輪を備え、これら前後輪 2FL〜2RRは、車輪駆動装置 3から回転駆動力を付与されて、それぞれ独立に回転可能に構成されている。
[0037] 車輪駆動装置 3は、各車輪 2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、 図 1に示すように、 4個の電動モータ(FL〜RRモータ 3FL〜3RR)を各車輪 2に(即 ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル 52 を操作した場合には、各車輪駆動装置 3から回転駆動力が各車輪 2に付与され、各 車輪 2がアクセルペダル 52の操作量に応じた回転速度で回転される。
[0038] また、車輪 2 (前後輪 2FL〜2RR)は、キャンバー角調整装置 4により舵角とキャン バー角とが調整可能に構成されている。キャンバー角調整装置 4は、各車輪 2の舵 角とキャンバー角とを調整するための駆動装置であり、図 1に示すように、各車輪 2に 対応する位置に合計 4個(FL〜RRァクチユエータ 4FL〜4RR)が配置されている。
[0039] 例えば、運転者がステアリング 54を操作した場合には、キャンバー角調整装置 4の 一部(例えば、前輪 2FL, 2FR側のみ)又は全部が駆動され、ステアリング 54の操作 量に応じた舵角を車輪 2に付与する。これにより、車輪 2の操舵動作が行われ、車両 1が所定の方向へ旋回される。
[0040] また、キャンバー角調整装置 4は、車両 1の走行状態 (例えば、定速走行時または 加減速時、或いは、直進時または旋回時)や車輪 2が走行する路面 Gの状態 (例えば 、乾燥路面時と雨天路面時)などの状態変化に応じて、車両用制御装置 100により 作動制御され、車輪 2のキャンバー角を調整する。
[0041] ここで、図 2を参照して、車輪駆動装置 3とキャンバー角調整装置 4との詳細構成に ついて説明する。図 2 (a)は、車輪 2の断面図であり、図 2 (b)は、車輪 2の舵角及び キャンバー角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
[0042] なお、図 2 (a)では、車輪駆動装置 3に駆動電圧を供給するための電源配線などの 図示が省略されている。また、図 2 (b)中の仮想軸 Xf—Xb、仮想軸 Yl—Yr、及び、 仮想軸 Zu— Zdは、それぞれ車両 1の前後方向、左右方向、及び、上下方向にそれ ぞれ対応する。
[0043] 図 2 (a)に示すように、車輪 2 (前後輪 2FL〜2RR)は、ゴム状弹性材力 構成され るタイヤ 2aと、アルミニウム合金などカゝら構成されるホイール 2bとを主に備えて構成さ れ、ホイール 2bの内周部には、車輪駆動装置 3 (FL〜RRモータ 3FL〜3RR)がイン ホイールモータとして配設されて 、る。
[0044] タイヤ 2aは、車両 1の内側(図 2 (a)右側)に配置される第 1トレッド 21と、その第 1ト レッド 21と特性が異なり、車両 1の外側(図 2 (a)左側)に配置される第 2トレッド 22とを 備える。なお、車輪 2 (タイヤ 2a)の詳細構成については図 4を参照して後述する。
[0045] 車輪駆動装置 3は、図 2 (a)に示すように、その前面側(図 2 (a)左側)に突出された 駆動軸 3aがホイール 2bに連結固定されており、駆動軸 3aを介して、回転駆動力を 車輪 2へ伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置 3の背面には、キャンバー 角調整装置 4 (FL〜RRァクチユエータ 4FL〜4RR)が連結固定されて 、る。
[0046] キャンバー角調整装置 4は、複数本 (本実施の形態では 3本)の油圧シリンダ 4a〜4 cを備えており、それら 3本の油圧シリンダ 4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置 3の背 面側(図 2 (a)右側)にジョイント部 (本実施の形態ではユニバーサルジョイント) 64を 介して連結固定されている。なお、図 2 (b)に示すように、各油圧シリンダ 4a〜4cは、 周方向略等間隔 (即ち、周方向 120° 間隔)に配置されると共に、 1の油圧シリンダ 4 bは、仮想軸 Zu— Zd上に配置されている。
[0047] これにより、各油圧シリンダ 4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだ け伸長駆動又は収縮駆動することで、車輪駆動装置 3が仮想軸 Xf—Xb, Zu—Xdを 揺動中心として揺動駆動され、その結果、各車輪 2に所定のキャンバー角と舵角とが 付与される。
[0048] 例えば、図 2 (b)に示すように、車輪 2が中立位置(車両 1の直進状態)にある状態 で、油圧シリンダ 4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ 4a, 4cのロッド部 が伸長駆動されると、車輪駆動装置 3が仮想線 Xf—Xb回りに回転され (図 2 (b)矢印 A)、車輪 2にマイナス方向(ネガティブキャンバー)のキャンバー角(車輪 2の中心線 が仮想線 Zu— Zdに対してなす角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧 シリンダ 4b及び油圧シリンダ 4a, 4cがそれぞれ伸縮駆動されると、車輪 2にプラス方 向(ポジティブキャンバー)のキャンバー角が付与される。
[0049] また、車輪 2が中立位置(車両 1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ 4aのロッ ド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ 4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆 動装置 3が仮想線 Zu—Zd回りに回転され(図 2 (b)矢印 B)、車輪 2にトーイン傾向の 舵角(車輪 2の中心線が車両 1の基準線に対してなす角度であり、車両 1の進行方向 とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ 4a 及び油圧シリンダ 4cが伸縮駆動されると、車輪 2にトーアウト傾向の舵角が付与され る。
[0050] なお、ここで例示した各油圧シリンダ 4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪 2 が中立位置にある状態力 駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方 法を組み合わせて各油圧シリンダ 4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪 2に 任意のキャンバー角及び舵角を付与することができる。
[0051] 図 1に戻って説明する。アクセルペダル 52及びブレーキペダル 53は、運転者により 操作される操作部材であり、各ペダル 52, 53の踏み込み状態 (踏み込み量、踏み込 み速度など)に応じて、車両 1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置 3の 作動制御が行われる。
[0052] ステアリング 54は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(回転角 度、回転速度など)に応じて、車両 1の旋回半径などが決定され、キャンバー角調整 装置 4の作動制御が行われる。ワイパースィッチ 55は、運転者により操作される操作 部材であり、その操作状態 (操作位置など)に応じて、ワイパー(図示せず)の作動制 御が行われる。
[0053] 同様に、ウィンカスイッチ 56及び高グリップスィッチ 57は、運転者により操作される
操作部材であり、その操作状態 (操作位置など)に応じて、前者の場合はウィンカー( 図示せず)の作動制御が行われ、後者の場合はキャンバー角調整装置 4の作動制 御が行われる。
[0054] なお、高グリップスィッチ 57がオンされた状態は、車輪 2の特性として高グリップ性 が選択された状態に対応し、高グリップスィッチ 57がオフされた状態は車輪 2の特性 として低転がり抵抗が選択された状態に対応する。
[0055] 車両用制御装置 100は、上述のように構成された車両 1の各部を制御するための 車両用制御装置であり、例えば、各ペダル 52, 53の操作状態を検出し、その検出結 果に応じて車輪駆動装置 3を作動させることで、各車輪 2の回転速度を制御する。
[0056] 或いは、アクセルペダル 52、ブレーキペダル 53やステアリング 54の操作状態を検 出し、その検出結果に応じてキャンバー角調整装置 4を作動させ、各車輪のキャンバ 一角を調整することで、車輪 2に設けられた 2種類のトレッド 21, 22を使い分けて(図 5及び図 6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図る。ここで、図 3を参照して、 車両用制御装置 100の詳細構成について説明する。
[0057] 図 3は、車両用制御装置 100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御 装置 100は、図 3に示すように、 CPU71、 ROM72及び RAM73を備え、これらはバ スライン 74を介して入出力ポート 75に接続されている。また、入出力ポート 75には、 車輪駆動装置 3等の複数の装置が接続されて ヽる。
[0058] CPU71は、バスライン 74により接続された各部を制御する演算装置である。 ROM 72は、 CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換 え不能な不揮発性のメモリであり、 RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデ ータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。なお、 ROM72内には、図 7に図 示されるフローチャート(キャンバ制御処理)のプログラムが格納されて 、る。
[0059] 車輪駆動装置 3は、上述したように、各車輪 2 (図 1参照)を回転駆動するための装 置であり、各車輪 2に回転駆動力を付与する 4個の FL〜: RRモータ 3FL〜3RRと、そ れら各モータ 3FL〜3RRを CPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路( 図示せず)とを主に備えて 、る。
[0060] キャンバー角調整装置 4は、上述したように、各車輪 2の舵角とキャンバー角とを調
整するための駆動装置であり、各車輪 2 (車輪駆動装置 3)に角度調整のための駆動 力を付与する 4個の FL〜: RRァクチユエータ 4FL〜4RRと、それら各ァクチユエータ 4FL〜4RRを CPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)と を主に備えている。
[0061] なお、 FL〜RRァクチユエータ 4FL〜4RRは、 3本の油圧シリンダ 4a〜4cと、それ ら各油圧シリンダ 4a〜4cにオイル (油圧)を供給する油圧ポンプ 4d (図 1参照)と、そ の油圧ポンプ力も各油圧シリンダ 4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換え る電磁弁(図示せず)と、各油圧シリンダ 4a〜4c (ロッド部)の伸縮量を検出する伸縮 センサ(図示せず)とを主に備えて構成されて 、る。
[0062] CPU71からの指示に基づいて、キャンバー角調整装置 4の駆動回路が油圧ボン プを駆動制御すると、その油圧ポンプ力 供給されるオイル (油圧)によって、各油圧 シリンダ 4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン Zオフされると、各油圧シリン ダ 4a〜4cの駆動方向(伸長又は収縮)が切り換えられる。
[0063] キャンバー角調整装置 4の駆動回路は、各油圧シリンダ 4a〜4cの伸縮量を伸縮セ ンサにより監視し、 CPU71から指示された目標値 (伸縮量)に達した油圧シリンダ 4a 〜4cは、その伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、駆動回 路カも CPU71に出力され、 CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪 2の現在の 舵角及びキャンバー角を得ることができる。
[0064] 車両速度センサ装置 32は、路面 Gに対する車両 1の対地速度 (絶対値及び進行方 向)を検出すると共に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、前後 及び左右方向加速度センサ 32a, 32bと、それら各加速度センサ 32a, 32bの検出 結果を処理して CPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えて 、る。
[0065] 前後方向加速度センサ 32aは、車両 1 (車体フレーム BF)の前後方向(図 1上下方 向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ 32bは、車両 1 (車体 フレーム BF)の左右方向(図 1左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、 本実施の形態では、これら各加速度センサ 32a, 32bが圧電素子を利用した圧電型 センサとして構成されて!、る。
[0066] CPU71は、車両速度センサ装置 32の制御回路力 入力された各加速度センサ 3
2a, 32bの検出結果 (加速度値)を時間積分して、 2方向(前後及び左右方向)の速 度をそれぞれ算出すると共に、それら 2方向成分を合成することで、車両 1の対地速 度 (絶対値及び進行方向)を得ることができる。
[0067] 接地荷重センサ装置 34は、各車輪 2の接地面が路面 Gから受ける荷重を検出する と共に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、各車輪 2が受ける荷 重をそれぞれ検出する FL〜RR荷重センサ 34FL〜34RRと、それら各荷重センサ 3 4FL〜34RRの検出結果を処理して CPU71に出力する処理回路(図示せず)とを 備えている。
[0068] なお、本実施の形態では、各荷重センサ 34FL〜34RRがピエゾ抵抗型の 3軸荷重 センサとして構成されている。これら各荷重センサ 34FL〜34RRは、各車輪 2のサス ペンション軸(図示せず)上に配設され、上述した車輪 2が路面 G力 受ける荷重を車 両 1の前後方向(仮想軸 Xf— Xb方向)、左右方向(仮想軸 Y1— Yr方向)及び上下方 向(仮想軸 Zu—Zd方向)の 3方向で検出する(図 2 (b)参照)。
[0069] CPU71は、接地荷重センサ装置 34から入力された各荷重センサ 34FL〜34RR の検出結果 (接地荷重)より、各車輪 2の接地面における路面 Gの摩擦係数 を次の ように推定する。
[0070] 例えば、前輪 2FLに着目すると、 FL荷重センサ 34FLにより検出される車両 1の前 後方向、左右方向および垂直方向の荷重がそれぞれ Fx、 Fy及び Fzであれば、前 輪 2FLの接地面に対応する部分の路面 Gにおける車両 1前後方向の摩擦係数 は 、前輪 2FLが路面 Gに対してスリップしているスリップ状態では FxZFzとなり( μ χ = Fx/Fz)、前輪 2FLが路面 Gに対してスリップしていない非スリップ状態では FxZF zよりも大き 、値であると推定される ( μ χ > Fx/Fz)。
[0071] なお、車両 1の左右方向の摩擦係数/ z yについても同様であり、スリップ状態では
/ y = FyZFZとなり、非スリップ状態では FyZFzよりも大きな値と推定される。また、 摩擦係数 を他の手法により検出することは当然可能である。他の手法としては、例 えば、特開 2001— 315633号公報ゃ特開 2003— 118554号に開示される公知の 技術が例示される。
[0072] 車輪回転速度センサ装置 35は、各車輪 2の回転速度を検出すると共に、その検出
結果を CPU71に出力するための装置であり、各車輪 2の回転速度をそれぞれ検出 する 4個の FL〜RR回転速度センサ 35FL〜35RRと、それら各回転速度センサ 35F L〜35RRの検出結果を処理して CPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備え ている。
[0073] なお、本実施の形態では、各回転センサ 35FL〜35RRが各車輪 2に設けられ、各 車輪 2の角速度を回転速度として検出する。即ち、各回転センサ 35FL〜35RRは、 各車輪 2に連動して回転する回転体と、その回転体の周方向に多数形成された歯の 有無を電磁的に検出するピックアップとを備えた電磁ピックアップ式のセンサとして構 成されている。
[0074] CPU71は、車輪回転速度センサ装置 35から入力された各車輪 2の回転速度と、 予め ROM72に記憶されて 、る各車輪 2の外径とから、各車輪 2の実際の周速度を それぞれ得ることができ、その周速度と車両 1の走行速度 (対地速度)とを比較するこ とで、各車輪 2がスリップして 、る力否かを判断することができる。
[0075] アクセルペダルセンサ装置 52aは、アクセルペダル 52の操作状態を検出すると共 に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル 52の踏 み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処 理して CPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えて 、る。
[0076] ブレーキペダルセンサ装置 53aは、ブレーキペダル 53の操作状態を検出すると共 に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル 53の踏 み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処 理して CPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えて 、る。
[0077] ステアリングセンサ装置 54aは、ステアリング 54の操作状態を検出すると共に、その 検出結果を CPU71に出力するための装置であり、ステアリング 54の操作状態を検 出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理して CPU71に 出力する制御回路(図示せず)とを主に備えて 、る。
[0078] ワイパスイッチセンサ装置 55aは、ワイパースィッチ 55の操作状態を検出すると共 に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、ワイパースィッチ 55の操 作状態 (操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニン
グセンサの検出結果を処理して CPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備 えている。
[0079] ウィンカスイッチセンサ装置 56aは、ウィンカスイッチ 56の操作状態を検出すると共 に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、ウィンカスイッチ 56の操 作状態 (操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニン グセンサの検出結果を処理して CPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備 えている。
[0080] 高グリップスィッチセンサ装置 57aは、高グリップスィッチ 57の操作状態を検出する と共に、その検出結果を CPU71に出力するための装置であり、高グリップスィッチ 5 7の操作状態 (操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジシ ョユングセンサの検出結果を処理して CPU71に出力する制御回路(図示せず)とを 主に備えている。
[0081] なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンシ ョメータとして構成されている。 CPU71は、各センサ装置 52a〜54aの制御回路から 入力された検出結果により各ペダル 52, 53の踏み込み量及びステアリング 54の操 作角を得ると共に、その検出結果を時間微分することにより、各ペダル 52, 53の踏 み込み速度 (操作速度)及びステアリング 54の回転速度 (操作速度)を得ることができ る。
[0082] 図 3に示す他の入出力装置 35としては、例えば、雨量を検出するための雨量セン サゃ路面 Gの状態を非接触で検出する光学センサなどが例示される。
[0083] 次いで、図 4から図 6を参照して、車輪 2の詳細構成について説明する。図 4は、車 両 1の上面視を模式的に示した模式図である。図 5及び図 6は、車両 1の正面視を模 式的に図示した模式図であり、図 5では、車輪 2にネガティブキャンバーが付与され た状態が図示され、図 6では、車輪 2にポジティブキャンバーが付与された状態が図 示されている。
[0084] 上述したように、車輪 2は、第 1トレッド 21及び第 2トレッド 22の 2種類のトレッドを備 え、図 4に示すように、各車輪 2 (前輪 2FL, 2FR及び後輪 2RL, 2RR)において、第 1トレッド 21が車両 1の内側に配置され、第 2トレッド 22が車両 1の外側に配置されて
いる。
[0085] 本実施の形態では、両トレッド 21, 22の幅寸法(図 4左右方向寸法)が同一に構成 されている。また、第 1トレッド 21は、第 2トレッド 22に比して、グリップ力の高い特性( 高グリップ性)に構成される。一方、第 2トレッド 22は、第 1トレッド 21に比して、転がり 抵抗の小さ 、特性 (低転がり抵抗)に構成されて 、る。
[0086] 例えば、図 5に示すように、キャンバー角調整装置 4が作動制御され、車輪 2のキヤ ンバ一角 0 L, 0 Rがマイナス方向(ネガティブキャンバー)に調整されると、車両 1の 内側に配置される第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に、車両 1の外側に 配置される第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少される。これにより、第 1トレッド 21の 高グリップ性を利用して、走行性能 (例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは 雨天時の車両安定性など)の向上を図ることができる。
[0087] 一方、図 6に示すように、キャンバー各調整装置 4が作動制御され、車輪 2のキャン バー角 0 L, 0 Rがプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整されると、車両 1の 内側に配置される第 1トレッド 21の接地圧が減少されると共に、車両 1の外側に配置 される第 2トレッド 22の接地圧が増加される。これにより、第 2トレッド 22の低転がり抵 抗を利用して、省燃費性能の向上を図ることができる。
[0088] 次いで、図 7を参照して、キャンバー制動制御について説明する。図 7は、キャンバ 一制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置 100の電源 が投入されている間、 CPU71によって繰り返し (例えば、 0. 2ms間隔で)実行される 処理であり、車輪 2に付与するキャンバー角を調整することで、上述した走行性能と 省燃費性能との 2つの性能の両立を図る。
[0089] CPU71は、キャンバー制御処理に関し、まず、ワイパースィッチ 55がオンされてい るか否か、即ち、フロントガラスのワイパーによる拭き取り動作が運転者により指示さ れているか否かを判断する(Sl)。その結果、ワイパースィッチ 55がオンされていると 判断される場合には(SI : Yes)、現在の天候が雨天であり、路面 Gに水膜が形成さ れている可能性があると推定されるので、車輪 2にネガティブキャンバーを付与して( S6)、このキャンバー処理を終了する。
[0090] これにより、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に第 2トレッド 22の接地圧
Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高グリップ性を利用して、雨天 時の車両安定性の向上を図ることができる。
[0091] S1の処理において、ワイパースィッチ 55はオンされていないと判断される場合には
(Sl :No)、雨天ではなぐ路面 Gの状態は良好であると推定されるので、次いで、ァ クセルペダル 52の踏み込み量は所定値以上である力否力、即ち、所定以上の加速 ( 急加速)が運転者により指示されているカゝ否かを判断する(S2)。
[0092] その結果、アクセルペダル 52の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合 には(S2 : Yes)、急加速が運転者より指示されており、車輪 2がスリップするおそれが あるので、車輪 2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終 了する。
[0093] これにより、上述した場合と同様に、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に 第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高ダリ ップ性を利用して、車輪 2のスリップを防止することができ、車両 1の加速性能の向上 を図ることができる。
[0094] S2の処理にお!、て、アクセルペダル 52の踏み込み量が所定値に達して!/、な!/、と 判断される場合には(S2 : No)、急加速は指示されておらず、緩やかな加速又は定 速走行であると推定されるので、次いで、ブレーキペダル 53の踏み込み量は所定値 以上であるか否か、即ち、所定以上の制動 (急制動)が運転者により指示されている か否かを判断する(S3)。
[0095] その結果、ブレーキペダル 53の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合 には(S3 : Yes)、急制動が運転者より指示されており、車輪 2がロックするおそれがあ るので、車輪 2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了 する。
[0096] これにより、上述した場合と同様に、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に 第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高ダリ ップ性を利用して、車輪 2のロックを防止することができ、車両 1の制動性能の向上を 図ることができる。
[0097] S3の処理にお!、て、ブレーキペダル 53の踏み込み量が所定値に達して!/、な!/、と
判断される場合には(S3 :No)、急制動は指示されておらず、緩やかな制動か加速 又は定速走行であると推定されるので、次いで、車両速度 (対地速度)は所定値 (例 えば、時速 15km)以下であるか否か、即ち、低速走行であるか否かを判断する(S1 7)。
[0098] その結果、車両速度が所定値以下 (即ち、低速走行中)であると判断される場合に は(S17 : Yes)、車両速度が所定値を越えている場合と比較して、車両 1がその後に 減速し停車する可能性や加速する可能性も高いといえる。よって、これらの場合には 車両 1 (車輪 2)のグリップ力や停止力を予め確保しておく必要があるので、車輪 2に ネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
[0099] これにより、上述した場合と同様に、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に 第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高ダリ ップ性を利用して、車輪 2のグリップ力を増加させることで、そのロックやスリップを防 止して、車両 1の制動性能や加速性能の向上を図ることができる。
[0100] また、車両 1が停車した後は、第 1トレッド 21の高グリップ性を利用して、車両 1 (車 輪 2)の停止力を確保することができるので、車両 1を安定した状態で停車させておく ことができる。更に、その停車後に再発進する場合には、予め第 1トレッドの接地圧 Ri nが増加されていることで、車輪 2がスリップすることを防止して、車両 1の再発進をス ムーズ且つ高レスポンスで行うことができる。
[0101] S17の処理において、車両速度が所定値よりも大きいと判断される場合には(S17 : No)、車両速度が低速ではなぐ加減速の際の駆動力 ·制動力が比較的小さな値 になると推定されるので、次いで、ウィンカスイッチ 56はオンであるか否力 即ち、右 左折や車線変更を行う旨が運転者により指示されているカゝ否かを判断する(S18)。
[0102] その結果、ウィンカスイッチ 56がオンであると判断される場合には(S18 : Yes)、右 左折や車線変更に伴って、車両 1の旋回動作やその準備のための減速が行われる 可能性が高いので、車輪 2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー 処理を終了する。
[0103] これにより、上述した場合と同様に、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に 第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高ダリ
ップ性を利用して、車輪 2のスリップを防止することができ、車両 1の旋回性能の向上 を図ることができる。
[0104] S18の処理において、ウィンカスイッチ 56はオンされていないと判断される場合に は(S18 :No)、右左折や車線変更に伴う車両 1の旋回動作は行われないと推定され るので、次いで、高グリップスィッチ 57はオンである力否力、即ち、車輪 2の特性とし て高グリップ性を選択する旨が運転者により指示されているカゝ否かを判断する(S19)
[0105] その結果、高グリップスィッチ 57がオンであると判断される場合には(S19 : Yes)、 車輪 2の特性として高グリップ性が選択されたと 、うことであるので、車輪 2にネガティ ブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
[0106] これにより、上述した場合と同様に、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に 第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高ダリ ップ性を利用して、車輪 2のスリップを防止することができ、車両 1の制動性能や加速 性能、或いは旋回性能の向上を図ることができる。
[0107] S19の処理において、高グリップスィッチ 57はオンされていないと判断される場合 には(S 19 : No)、次いで、ステアリング 54の操作角は所定値以上である力否力、即 ち、所定以上の旋回 (急旋回)が運転者により指示されて ヽるカゝ否かを判断する(S4
) o
[0108] その結果、ステアリング 54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4 : Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪 2がスリップして、車両 1がスピンす るおそれがあるので、車輪 2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバ 一処理を終了する。
[0109] これにより、上述した場合と同様に、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが増加されると共に 第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少されることで(図 5参照)、第 1トレッド 21の高ダリ ップ性を利用して、車輪 2のスリップ(車両 1のスピン)を防止することができ、車両 1の 旋回性能の向上を図ることができる。
[0110] 一方、 S4の処理において、ステアリング 54の操作角が所定値に達していないと判 断される場合には(S4 : No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進
走行であり、また、 SIから S3の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も 指示されていないと推定される(Sl :No、 S2 :No、 S3 :No)。
[0111] よって、この場合には(Sl :No、 S2 :No、 S3 :No、 S4 : No)、車輪 2の性能として 高グリップ性を得る必要はなぐ低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましい と判断できるので、車輪 2にポジティブキャンバーを付与して(S5)、このキャンバー処 理を終了する。
[0112] これにより、第 1トレッド 21の接地圧 Rinが減少されると共に第 2トレッド 22の接地圧 Routが増加されることで(図 6参照)、第 2トレッド 21の低転がり抵抗を利用して、車輪 2の転がり効率を向上させることができ、車両 1の省燃費性能の向上を図ることができ る。
[0113] このように、本実施の形態によれば、キャンバー角調整装置 4により車輪 2のキャン バー角 Θ R, Θ Lを調整して、第 1トレッド 21における接地圧 Rinと第 2トレッド 22にお ける接地圧 Routとの比率を変更することで、加速性能及び制動性能と省燃費性能と の互いに背反する 2つの性能の両立を図ることができる。
[0114] 次いで、図 8から図 11を参照して、第 2実施の形態について説明する。図 8は、第 2 実施の形態における車輪 202の上面図であり、図 9は、車両 201の上面視を模式的 に示した模式図である。
[0115] また、図 10は、左旋回状態にある車両 201の正面視を模式的に図示した模式図で あり、左右の車輪 2に左旋回用の舵角が付与されると共に、旋回外輪 (右の前輪 202 FR)にネガティブキャンバーが付与され、旋回内輪 (左の車輪 202FL)にキャンバー 定常角が付与された状態が図示されて!、る。
[0116] 第 1実施の形態では、車輪 2の両トレッド 21, 22の外径が幅方向に一定とされる場 合を説明したが、第 2実施の形態における車輪 2は、第 1トレッド 221の外径が漸次縮 径するように構成されている。なお、上記した第 1実施の形態と同一の部分には同一 の符号を付して、その説明は省略する。
[0117] 第 2実施の形態における車輪 202は、図 8及び図 9に示すように、車両 201の内側( 図 8右側)に配置される第 1トレッド 221と、その第 1トレッド 221と特性が異なり、車両 201の外側(図 8左側)に配置される第 2トレッド 22とを備える。
[0118] なお、第 1トレッド 221は、第 2トレッド 22に比して、グリップ力の高い特性 (高グリツ プ性)に構成され、第 2トレッド 22は、第 1トレッド 221に比して、転がり抵抗の小さい 特性 (低転がり抵抗)に構成されている。
[0119] 図 8及び図 9に示すように、車輪 202は、両トレッド 221, 22の幅寸法(図 8左右方 向寸法)が同一に構成されているが、第 2トレッド 22における外径が幅方向(図 8左右 方向)に略一定に構成される一方で、第 1トレッド 221における外径が第 2トレッド 22 側(図 8左側)から車両 201の内側(図 8右側)に向かうに従つて漸次縮径して構成さ れている。
[0120] これにより、図 10に示すように、車輪 202 (左の前輪 202FL)に大きなキャンバー角 を付与しなくても (即ち、キャンバー角を 0° に設定しても)、第 1トレッド 221が路面 G から離れた状態で、第 2トレッド 22のみを接地させることができる。その結果、車輪 2 全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることが できる。同時に、第 1トレッド 221が接地せず、かつ、第 2トレッド 22がより小さなキャン バー角で接地されることより、これら両トレッド 221, 22の摩耗を抑制して、高寿命化 を図ることができる。
[0121] 一方、図 10に示すように、車輪 202 (右の前輪 202FR)にマイナス方向へのキャン バー角(ネガティブキャンバー)を付与して、第 1トレッド 221を接地させる場合には、 力かる第 1トレッド 221の外径が漸次縮径されていることから、第 1トレッド 221におけ る接地圧を幅方向(図 8左右方向)全域において均等化することができ、トレッド端部 に接地圧が集中することを抑制することができる。
[0122] よって、高グリップの第 1トレッド 221を効率的に利用して、走行性能 (旋回性能、加 速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができる と共に、第 1トレッド 221の偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
[0123] 次いで、図 11を参照して、第 2実施の形態におけるキャンバー制動制御について 説明する。図 11は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
[0124] CPU71は、キャンバー制御処理に関し、ワイパースィッチ 55がオンされていると判 断される場合 (S1: Yes)、アクセルペダル 52の踏み込み量が所定値以上であると判 断される場合(Sl :No、 S2 : Yes)、ブレーキペダル 53の踏み込み量が所定値以上
であると判断される場合 (SI :No、 S2:No、 S3: Yes)、車両速度が所定値以下であ ると判断される場合(Sl:No、 S2:No、 S3:No、 S 17: Yes)、ウィンカスイッチ 56が オンされていると半 IJ断される場合(Sl:No、 S2:No、 S3:No、 S17:No、 S18:Yes) 、及び、高グリップスィッチ 57がオンされていると判断される場合には(SI :No、 S2: No、 S3:No、 S17:No、 S18:Yes)、上述した第 1実施の形態で説明したように、路 面 Gに水膜が形成されている、急加速 '急制動が指示されている、大きな駆動力の発 生や停車が予測される、右左折や車線変更に伴う旋回動作が予測される、或いは、 高グリップ性の選択が指示されているということであり、第 1トレッド 221の高グリップ性 を利用する必要がある。
[0125] よって、この場合には、左右の車輪 2にネガティブキャンバー(本実施の形態では、 少なくとも第 2トレッド 22が路面 G力も離接するキャンバー角、図 10に図示する右の 前輪 202FRを参照)を付与して(S27)、このキャンバー処理を終了する。
[0126] これにより、上述した第 1実施の形態の場合と同様に、第 1トレッド 221の接地圧 Rin が増加されると共に第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少される(本実施の形態では 接地圧 Routが 0となる)ことで、第 1トレッド 221の高グリップ性を利用して、車輪 2のス リップ'ロックを防止することができ、車両 201の走行安定性や加速 ·制動性能の向上 を図ることができる。
[0127] なお、左右の車輪 2に付与するキャンバー角 0 R, 0 Lは直進走行時であれは同じ 角度であることが好ましい。また、そのキャンバー角 Θ R, Θ Lは第 2トレッド 22が路面 G力も離接する以上の角度であることが好ましい。
[0128] 一方、 S4の処理にお!、て、ステアリング 54の操作角が所定値に達して ヽな 、と判 断される場合には(S4: No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進 走行であり、また、 S1から S3の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も 指示されておらず、大きな駆動力の発生や停車は予測されず、右左折や車線変更 に伴う旋回動作も予測されず、更に、高グリップ性の選択は指示されていないと推定 される(Sl:No、 S2:No、 S3:No、 S17:No、 S18:No、 S19:No)。
[0129] よって、この場合に ίま(Sl:No、 S2:No、 S3:No、 S17:No、 S18:No、 S19:No 、 S4: No)、車輪 2の性能として高グリップ性を得る必要はなぐ低転がり抵抗による
省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪 2にキャンバー定常角を付 与して(S25)、このキャンバー処理を終了する。なお、本実施の形態では、キャンバ 一定常角が 0° (図 10に図示する左の前輪 202FL参照)に設定される。
[0130] これにより、第 1トレッド 221が路面 G力も離れた状態で、第 2トレッド 22のみを接地 させることができるので、車輪 202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性 能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第 1トレッド 221が接地 せず、かつ、キャンバー角が 0° で第 2トレッド 22が接地されることで、これら両トレッド 221, 22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
[0131] また、 S4の処理において、ステアリング 54の操作角が所定値以上であると判断され る場合には(S4 : Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪 2がスリップして、 車両 201がスピンするおそれがある。そこで、本実施の形態では、旋回外輪(図 10で は右の前輪 202FR)にネガティブキャンバーを付与すると共に、旋回内輪(図 10で は左の前輪 202FL)にキャンバー定常角を付与して(S26)、このキャンバー処理を 終了する。
[0132] これにより、旋回性能を確保しつつ、制御駆動コストの削減を図ることができる。即 ち、旋回外輪では、第 1トレッド 221の接地圧 Rinが増加されると共に第 2トレッド 22の 接地圧 Routが減少される (本実施の形態では 0となる)ことで(図 10参照)、第 1トレツ ド 221の高グリップ性を利用して、車輪 202のスリップ(車両 201のスピン)を防止する ことができ、車両 201の旋回性能の向上を図ることができる。一方、旋回内輪では、 そのキャンバー角の変化を旋回外輪よりも少なくする(即ち、直進走行時のキャンバ 一角をそのまま維持する)ことで、車両用制御装置 100の制御コスト或いはキャンバ 一角調整装置 4の駆動コストの削減を図ることができる。
[0133] 次いで、図 12から図 14を参照して、第 3実施の形態について説明する。図 12は、 第 3実施の形態における車輪 302の上面図である。また、図 13は、左旋回状態にあ る車両 301の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車輪 2に左旋回用の 舵角が付与されると共に、旋回外輪 (右の前輪 202FR)にネガティブキャンバーが付 与され、旋回内輪 (左の車輪 202FL)にポジティブキャンバーが付与された状態が図 示されている。
[0134] 第 1実施の形態では、車輪 2の両トレッド 21, 22の外径が幅方向に一定とされる場 合を説明したが、第 3実施の形態における車輪 2は、第 1トレッド 221の外径と第 3トレ ッド 323の外径とが漸次縮径するように構成されている。なお、上記した各実施の形 態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
[0135] 第 3実施の形態における車輪 302は、図 12に示すように、第 3トレッド 323を備え、 第 1トレッド 221が車両 301の内側(図 12右側)に配置されると共に、第 3トレッド 323 が車両 301の外側(図 12左側)に配置され、第 2トレッド 22が第 1トレッド 221と第 3ト レッド 323との間に配置されている。
[0136] そして、第 3トレッド 323は、少なくとも第 2トレッド 22に比して、グリップ力の高い特 性に構成されると共に、その第 3トレッド 323の外径は、図 12に示すように、第 2トレツ ド 22側(図 12右側)から車両 301の外側 (図 12左側)に向かうに従って漸次縮径して 構成されている。
[0137] これにより、車輪 302に大きなキャンバー角を付与することなく(例えば、キャンバー 角を 0° に設定しても)、第 1トレッド 221及び第 3トレッド 323が路面 G力も離れた状 態で、第 2トレッド 22のみを接地させることができる。これにより、車輪 302全体として の転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
[0138] 同時に、第 1トレッド 221及び第 3トレッド 323が接地せず、かつ、第 2トレッド 22がよ り小さなキャンバー角で接地されることより、これら各トレッド 221, 22, 323の摩耗を 抑制して、高寿命化を図ることができる。
[0139] 一方、車輪 302にプラス方向へのキャンバー角(ポジティブキャンバー)を付与して 、第 3トレッド 323を接地させる場合には、力かる第 3トレッド 323の外径が漸次縮径さ れていることから、第 3トレッド 323における接地圧を幅方向(図 12左右方向)全域に おいて均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中することを抑制することが できる。
[0140] よって、高グリップ性の第 3トレッド 323を効率的に利用して、走行性能 (旋回性能、 加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができ ると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
[0141] 次いで、図 14を参照して、第 3実施の形態におけるキャンバー制動制御について
説明する。図 14は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
[0142] CPU71は、 S4の処理において、ステアリング 54の操作角が所定値に達していな いと判断される場合には(S4 : No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は 直進走行であり、また、 S1から S3及び S17から S19の処理より、路面状態は良好で あり、急加速や急制動も指示されておらず、大きな駆動力の発生や停車は予測され ず、右左折や車線変更に伴う旋回動作も予測されず、更に、高グリップ性の選択は 旨示されていないと推定される(Sl :No、 S2 :No、 S3 :No、 S17 :No、 S18 :No、 S 19 :No)。
[0143] よって、この場合に ίま(Sl :No、 S2 :No、 S3 :No、 S17 :No、 S18 :No、 S19 :No 、 S4 : No)、車輪 302の性能として高グリップ性を得る必要はなぐ低転がり抵抗によ る省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪 2にキャンバー定常角を 付与して(S25)、このキャンバー処理を終了する。なお、本実施の形態では、キャン バー定常角が 0° (図 10に図示する左の前輪 202FL参照)に設定される。
[0144] これにより、第 1トレッド 221及び第 3トレッド 323が路面 G力も離れた状態で、第 2ト レッド 22のみを接地させることができるので、車輪 302全体としての転がり抵抗をより 小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、 第 1トレッド 221及び第 3トレッド 323が接地せず、かつ、キャンバー角が 0° で第 2ト レッド 22が接地されることで、これら各トレッド 221, 22, 323の摩耗を抑制して、高寿 命化を図ることができる。
[0145] また、 S4の処理において、ステアリング 54の操作角が所定値以上であると判断され る場合には(S4 : Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪 2がスリップして、 車両 301がスピンするおそれがある。そこで、本実施の形態では、旋回外輪(図 13で は右の前輪 202FR)にネガティブキャンバーを付与すると共に、旋回内輪(図 13で は左の前輪 202FL)にポジティブキャンバーを付与して(S36)、このキャンバー処理 を終了する。
[0146] 即ち、 S36の処理では、図 13に示すように、左右の車輪 320がいずれも旋回内方 側(図 13右側)〖こ傾斜するように、キャンバー角 Θ R, Θ Lを付与するので、左右両輪 302にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪 302の横力を旋回力として利用する
ことができるので、旋回性能のより一層の向上を図ることができる。
[0147] 次いで、図 15を参照して、第 4実施の形態について説明する。図 15は、第 4実施の 形態におけるキャンバー制御処理を示すフローチャートである。
[0148] 第 1実施の形態では、例えば、急加速や急旋回などが運転者により指示された場 合に車輪 2のキャンバー角を調整する場合を説明したが、第 4実施の形態では、スリ ップした車輪 202がある場合にその車輪 202のキャンバー角を調整するように構成さ れている。
[0149] なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は 省略する。また、第 4実施の形態では、第 2実施の形態における車両 201 (車輪 202) を車両用制御装置 100で制御する場合を例に説明する。
[0150] CPU71は、キャンバー角 S4の処理において、まず、車両速度を検出すると共に( S41)、車輪 202の回転速度 (周速度)を検出し (S42)、これら車両速度と車輪 202 の周速度とに基づ 、て、スリップして 、る車輪 202が有る力否かを判断する(S43)。 なお、車両速度及び車輪 202の周速度は、上述したように、車両速度センサ装置 32 及び車輪回転速度センサ装置 35により算出される。
[0151] その結果、 S43の処理において、スリップしている車輪 202はない、即ち、全ての車 輪 202が路面 Gにグリップして走行していると判断される場合には(S43 : No)、車輪 202の性能として高グリップ性を得る必要はなぐ低転がり抵抗による省燃費性能を 得ることが好ましいと判断できるので、車輪 202にキャンバー定常角(第 2実施の形態 の場合と同様に 0° )を付与して(S44)、このキャンバー処理を終了する。
[0152] これにより、第 1トレッド 221が路面 G力も離れた状態で、第 2トレッド 22のみを接地 させることができるので、車輪 202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性 能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第 1トレッド 221が接地 せず、かつ、キャンバー角が 0° で第 2トレッド 22が接地されることで、これら両トレッド 221, 22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
[0153] 一方、 S43の処理において、スリップしている車輪 202があると判断される場合には
(S43 :Yes)、車両 201の加速性能や走行安定性が損なわれるおそれがあるので、 スリップしている車輪 202にネガティブキャンバーを付与して(S45)、このキャンバー
処理を終了する。
[0154] これにより、上述した第 1実施の形態の場合と同様に、第 1トレッド 221の接地圧 Rin が増加されると共に第 2トレッド 22の接地圧 Routが減少される(本実施の形態では 接地圧 Routが 0となる)ことで、第 1トレッド 221の高グリップ性を利用して、車輪 202 のスリップを防止することができ、車両 201の加速性能や走行安定性の向上を図るこ とがでさる。
[0155] ここで、図 7に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項 1記載の 作動制御手段としては S5及び S6の処理が、請求項 2記載の対地速度判断手段とし ては S17の処理が、低速時作動制御手段としては S6の処理力 請求項 3記載の操 作状態判断手段としては SI, S2, S3, S18, S19, S4の処理が、操作時作動制御 手段としては S6の処理が、それぞれ該当する。
[0156] また、図 11に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項 1記載の 作動制御手段としては S25、 S26及び S27の処理が、請求項 2記載の対地速度判断 手段としては S17の処理力 低速時作動制御手段としては S6の処理力 請求項 3記 載の操作状態判断手段としては SI, S2, S3, S18, S19, S4の処理力 操作時作 動制御手段としては S6又は S26の処理力 それぞれ該当する。
[0157] また、図 14に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項 1記載の 作動制御手段としては S25、 S27及び S36の処理が、請求項 2記載の対地速度判断 手段としては S17の処理力 低速時作動制御手段としては S27の処理力 請求項 3 記載の操作状態判断手段としては SI, S2, S3, S18, S19, S4の処理が、操作時 作動制御手段としては S27又は S36の処理力 それぞれ該当する。
[0158] また、図 15に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、請求項 1記載の 作動制御手段としては S44及び S45の処理が該当する。
[0159] 以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら 限定されるものではなぐ本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可 能であることは容易に推察できるものである。
[0160] 例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは 当然可能である。
[0161] 上記第 1から第 3実施の形態では、運転者によるアクセルペダル 52又はブレーキ ペダル 53の操作量 (踏み込み量)が所定値以上の場合に車輪 2にネガティブキャン バーを付与する場合を説明したが(図 7S2、 S3及び S6参照)、必ずしもこれに限られ るものではなぐ他の状態量に基づいて車輪 2のキャンバー角を決定するように構成 することは当然可能である。
[0162] ここで、他の状態量としては、例えば、アクセルペダル 52又はブレーキペダル 53の 操作速度が例示される。例えば、アクセルペダル 52又はブレーキペダル 53の踏み 込み量が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い (遅い)場合には、ネガ ティブキャンバー(ポジティブキャンバー)を付与するように構成しても良 、。
[0163] 或いは、他の状態量としては、例えば、変速機のシフト操作が例示される。例えば、 変速機の減速度を上げるシフト操作 (シフトダウン操作)が行われた場合に、そのシフ ト操作により比較的大きな加減速が発生すると判断して、車輪 2にネガティブキャンバ 一を付与するように構成しても良い。これにより、車輪 2のスリップやロックを抑制して 、車両 1の加速性能や制動性能の向上を図ることができる。
[0164] 上記第 1から第 3実施の形態では、運転者によるステアリング 54の操作角が所定値 以上の場合に車輪 2にネガティブキャンバーを付与する場合を説明したが(図 7S4及 び S6参照)、必ずしもこれに限られるものではなぐ他の状態量に基づいて車輪 2の キャンバー角を決定するように構成することは当然可能である。
[0165] ここで、他の状態量としては、例えば、ステアリング 54の操作速度が例示される。例 えば、ステアリング 54の操作角が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い (遅い)場合には、ネガティブキャンバー(ポジティブキャンバー)を付与するように構 成しても良い。
[0166] 上記第 1から第 3実施の形態では、請求項 3記載の加減速状態判断手段として、各 ペダル 52, 53の操作状態に基づいて判断する処理を例示した力 必ずしもこれに限 られるものではなぐ例えば、車両速度センサ装置 32 (前後方向加速度センサ 32a、 左右方向加速度センサ 32b)により検出された実際の加減速度に基づいて判断する ことは当然可能である。即ち、車両に所定値以上の加減速度が発生した場合に、車 輪 2にネガティブキャンバーを付与し、所定値に達して ヽな 、場合にポジティブキヤ
ンバーを付与するように構成しても良い。この場合には、車両前後方向と車両左右方 向との両方向の加減速度に基づいて判断しても良ぐ或いは、これら両方向のいず れか一方の加減速度のみに基づ!/、て判断しても良!、。
[0167] 上記第 1から第 3実施の形態では、請求項 5記載の路面判断手段として、ワイパー スィッチ 55の操作状態に基づ ヽて判断する処理を例示したが、必ずしもこれに限ら れるものではなぐ例えば、雨量センサにより降雨量を検出し、その検出値が所定値 以上の場合に、車輪 2にネガティブキャンバーを付与するように構成しても良い。或 いは、非接触の光学式センサ等で路面の状態を検出し、その検出結果 (路面の水膜 状態、路面の積雪状態、路面の凍結状態、或いは、舗装状態など)に基づいて、車 輪にネガティブキャンバー又はポジティブキャンバーを付与するように構成しても良 い。
[0168] 上記第 1から第 3実施の形態では、ネガティブキャンバーを付与する力否かの判断 順序として、ワイパースィッチ 55の状態、アクセルペダル 52の状態、ブレーキペダル 53の状態、車両速度の状態、ウィンカスイッチ 56の状態、高グリップスィッチ 57の状 態、ステアリング 54の状態の順としたが(S1から S4参照)、この順序に限られるもので はなぐこれらを入れ替えて他の順序とすることは当然可能である。また、これらの判 断ステップの一部を省略することも当然可能である。
[0169] 上記各実施の形態では、左右の車輪 2に付与するキャンバー角 0 R, 0 Lが同じ角 度である場合を説明したが( Θ R= 0 L)、必ずしもこれに限られるものではなぐ左右 の車輪 2にそれぞれ異なるキャンバー角 Θ R, 0 Lを付与することは当然可能である( 0 R< Θ LX¾ Θ L< 0 R) o
[0170] 上記第 1から第 3実施の形態では、第 1トレッド 21, 221が車両内側に、第 2トレッド 22が車両外側に、それぞれ配設される場合を説明したが、この位置関係に限定され るものではなぐ各車輪 2毎に適宜変更することは当然可能である。
[0171] 例えば、第 1トレッド 21, 221が車両外側に、第 2トレッド 22が車両内側に、それぞ れ配設されていても良ぐ前輪では第 1トレッド 21, 221が車両外側に、後輪では第 2 トレッド 22を車両内側に、それぞれ配設されていても良い。或いは、各車輪 2毎にこ の位置関係が異なって!/、ても良 、。
[0172] 上記第 2から第 4実施の形態では、キャンバー定常角が 0° の場合を説明したが、 必ずしもこれに限られるものではなぐキャンバー定常角をポジティブキャンバー又は ネガティブキャンバーに設定することは当然可能である。
[0173] 上記各実施の形態では、車輪が 2種類のトレッドを有する場合と 3種類のトレッドを 有する場合とを説明した力 これらの車輪を組み合わせることは当然可能である。例 えば、前輪には 2種類のトレッドを有する車輪 2、 202を使用し、後輪には 3種類のトレ ッドを有する車輪 303を使用しても良ぐこの逆でも良!、。
[0174] 上記各実施の形態では、第 1又は第 3のトレッド 21, 221, 323が第 2のトレッド 22 に比して高グリップ性の特性を有し、第 2のトレッド 22が第 1又は第 3のトレッド 21, 22 1, 323に比して低転がり性の特性を有する場合を説明したが、これら各トレッド 21, 221, 22, 323に他の特性を持たせて構成することは当然可能である。例えば、 2種 類のトレッドパターン (溝)を設けることで、一のトレッドは排水性の高い特性とし、他の トレッドはノードノイズの小さい特性をするものが例示される。
[0175] 上記第 4実施の形態では、車輪 2がスリップしている力否かに応じて車輪 2のキャン バー角を制御する場合を説明したが(図 15S43から S45参照)、必ずしもこれに限ら れるものではなぐ他の状態に基づいて車輪 2のキャンバー角を制御することは当然 可能である。
[0176] 他の状態としては、例えば、車輪 2が走行する路面の摩擦係数 μが例示される。な お、摩擦係数 は上述したように接地荷重センサ装置 34により推定することができる 。或いは、車輪 2がロックしているか否かに基づいて、車輪 2のキャンバー角を制御す る(ロック時にネガティブキャンバーを付与する)ようにしても良 、。
[0177] 以下に本発明の変形例を示す。請求項 1記載の車両用制御装置において、前記 作動制御手段は、前記車両の加減速状態を判断する加減速判断手段と、その加減 速判断手段により前記車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合に、 前記第 1トレッドにおける接地圧が前記第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるよう に、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する加 減速時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置 1。なお、加 減速時作動制御手段は、加減速判断手段により前記車両の加減速状態が所定量以
上であると判断される場合に、前記第 1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加する ように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整す るものであっても良い。
[0178] 車両用制御装置 1によれば、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以 上であると判断される場合には、加減速時作動制御手段がキャンバー角調整装置を 作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第 1トレッドにおける接地圧を第 2 トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第 1トレッドを利 用して、加速性能 ·制動性能の向上を図ることができるという効果がある。
[0179] 一方、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であるとは判断され ない場合には、キャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整する ことで、第 2トレッドにおける接地圧を第 1トレッドにおける接地圧よりも大きくする(即 ち、第 1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第 2ト レッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
[0180] このように、本発明によれば、作動制御手段 (加減速時作動制御手段)によって、車 輪のキャンバー角を調整して、第 1トレッドにおける接地圧と第 2トレッドにおける接地 圧との比率 (一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面力 離れて 、る状態 を含む)を変更することで、加減速性能と省燃費性能との互いに背反する 2つの性能 の両立を図ることができると 、う効果がある。
[0181] なお、車両用制御装置 1の発明において、加減速判断手段により車両の加減速状 態が所定量以上であると判断される場合 (判断されない場合)とは、例えば、加速度 センサにより計測された車両の実際の加減速状態が既に所定量以上に達している場 合 (達していない場合)のみでなぐ運転者により操作される操作部材 (例えば、ァク セルペダルやブレーキペダルの操作状態)などに基づ 、て、車両の加減速状態が所 定量以上になる(所定量以上とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
[0182] 請求項 1記載の車両用制御装置または車両用制御装置 1において、前記作動制 御手段は、前記車両の旋回状態を判断する旋回判断手段と、その旋回判断手段に より前記車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第 1トレッド における接地圧が前記第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように、前記キャン
バー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する旋回時作動制御 手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置 2。なお、旋回時作動制御手 段は、旋回判断手段により前記車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場 合に、前記第 1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー 角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整するものであっても良い。
[0183] 車両用制御装置 2によれば、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上で あると判断される場合には、旋回時作動制御手段がキャンバー角調整装置を作動さ せて車輪のキャンバー角を調整することで、第 1トレッドにおける接地圧を第 2トレッド における接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第 1トレッドを利用して 、旋回性能の向上を図ることができるという効果がある。
[0184] 一方、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であるとは判断されない 場合には、キャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整すること で、第 2トレッドにおける接地圧を第 1トレッドにおける接地圧よりも大きくする (即ち、 第 1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第 2トレツ ドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
[0185] このように、本発明によれば、作動制御手段 (旋回時作動制御手段)によって、車輪 のキャンバー角を調整して、第 1トレッドにおける接地圧と第 2トレッドにおける接地圧 との比率 (一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面力 離れて 、る状態を 含む)を変更することで、旋回性能と省燃費性能との互いに背反する 2つの性能の両 立を図ることができると 、う効果がある。
[0186] なお、車両用制御装置 2の発明において、旋回判断手段により車両の旋回状態が 所定量以上であると判断される場合 (判断されない場合)とは、車両の実際の旋回状 態が既に所定量以上に達して 、る場合 (達して 、な 、場合)のみでなぐ運転者によ り操作される操作部材 (例えば、ステアリングの操作状態)などに基づいて、車両の旋 回状態が所定量以上になる(所定量以上とはならない)と予測される場合も含む趣旨 である。
[0187] 請求項 1記載の車両用制御装置または車両用制御装置 1若しくは 2において、前 記作動制御手段は、前記車輪が走行する路面の状態を判断する路面判断手段と、
その路面判断手段により前記車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態 であると判断される場合に、前記第 1トレッドにおける接地圧が前記第 2トレッドにおけ る接地圧よりも大きくなるように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪 のキャンバー角を調整する路面変化時作動制御手段と、を備えて!/、ることを特徴とす る車両用制御装置 3。なお、路面変化時作動制御手段は、路面判断手段により前記 車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合に、前 記第 1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー角調整装 置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整するものであっても良い。
[0188] 車両用制御装置 3によれば、路面判断手段により車輪が走行する路面の状態が所 定条件を満たす状態であると判断される場合には、路面変化時作動制御手段がキヤ ンバ一角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第 1トレッドに おける接地圧を第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリツ プの第 1トレッドを利用して、走行性能 (例えば、雨天時、路面積雪時、路面凍結時 或いは未舗装路走行時などの走行安定性)の向上を図ることができるという効果があ る。
[0189] 一方、路面判断手段により車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態 であるとは判断されない場合には、キャンバー角調整装置を作動させて車輪のキヤ ンバ一角を調整することで、第 2トレッドにおける接地圧を第 1トレッドにおける接地圧 よりも大きくする(即ち、第 1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、 低転がり抵抗の第 2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという 効果がある。
[0190] このように、本発明によれば、作動制御手段 (路面変化時作動制御手段)によって、 車輪のキャンバー角を調整して、第 1トレッドにおける接地圧と第 2トレッドにおける接 地圧との比率 (一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面力 離れて 、る状 態を含む)を変更することで、走行安定性能と省燃費性能との互いに背反する 2つの 性能の両立を図ることができると 、う効果がある。
[0191] なお、車両用制御装置 3の発明において、路面判断手段により車輪が走行する路 面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合 (判断されな 、場合)とは
、路面の状態が既に所定条件を満たす状態となって!/、る場合 (なって!/、な 、場合)の みでなぐ運転者により操作される操作部材 (例えば、ワイパ操作レバーの操作状態) などに基づいて、路面の状態が所定の条件を満たす状態になる (所定の条件を満た す状態とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
[0192] 請求項 1記載の車両用制御装置または車両用制御装置 1から 3のいずれかにおい て、前記車輪は、前記第 2トレッドにおける外径が車輪幅方向に略一定に構成される と共に、前記第 1トレッドにおける外径が前記第 2トレッド側から前記車両の内側又は 外側に向かうに従って漸次縮径して構成されていることを特徴とする車両用制御装 置 4。
[0193] 車両用制御装置 4によれば、第 2トレッドにおける外径が車輪幅方向に略一定に構 成されると共に、第 1トレッドにおける外径が第 2トレッド側力も車両の内側又は外側 に向かうに従って漸次縮径して構成されているので、車輪に大きなキャンバー角を付 与しなくても(例えば、キャンバー角を 0° に設定しても)、第 1トレッドが路面力 離れ た状態で、第 2トレッドのみを接地させることができる。
[0194] これにより、車輪全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の 向上を図ることができる。同時に、第 1トレッドが接地せず、かつ、第 2トレッドがより小 さなキャンバー角で接地されることで、これら両トレッドの摩耗をそれぞれ抑制して、 高寿命化を図ることができると 、う効果がある。
[0195] 一方、車輪にマイナス方向又はプラス方向へのキャンバー角(ネガティブキャンバ 一又はポジティブキャンバー)を付与して、第 1トレッドを接地させる場合には、かかる 第 1トレッドの外径が漸次縮径されていることから、第 1トレッドにおける接地圧を幅方 向全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中しないので、高 グリップの第 1トレッドを効率的に利用して、走行性能 (旋回性能、加速性能、制動性 能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を 抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
[0196] 車両用制御装置 4において、前記車輪は、少なくとも前記第 2トレッドに比して、ダリ ップ力の高い特性に構成される第 3トレッドを備え、前記第 1トレッドが前記車両の内 側に配置されると共に、前記第 3トレッドが前記車両の外側に配置され、前記第 2トレ
ッドが前記第 1トレッドと第 3トレッドとの間に配置されるものであり、前記第 3トレッドに おける外径が前記第 2トレッド側から前記車両の外側に向かうに従って漸次縮径して 構成されて ヽることを特徴とする車両用制御装置 5。
[0197] 車両用制御装置 5によれば、第 3トレッドにおける外径が第 2トレッド側力も車両の外 側に向かうに従って漸次縮径して構成されているので、第 1及び第 2トレッドに加えて 第 3トレッドを更に設ける場合であっても、車輪に大きなキャンバー角を付与すること なく(例えば、キャンバー角を 0° に設定しても)、第 1トレッド及び第 3トレッドが路面 から離れた状態で、第 2トレッドのみを接地させることができる。
[0198] これにより、車輪全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の 向上を図ることができる。同時に、第 1トレッド及び第 2トレッドが接地せず、かつ、第 2 トレッドがより小さなキャンバー角で接地されることで、これら各トレッドの摩耗をそれ ぞれ抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
[0199] 一方、車輪にプラス方向へのキャンバー角(ポジティブキャンバー)を付与して、第 3 トレッドを接地させる場合には、力かる第 3トレッドの外径が漸次縮径されて 、ることか ら、第 3トレッドにおける接地圧を幅方向全域において均等化することができ、トレッド 端部に接地圧が集中しないので、高グリップの第 3トレッドを効率的に利用して、走行 性能 (旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向 上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができるという効 果がある。
[0200] 車両用制御装置 5において、前記車輪は、前記車両の左右に配置され、前記作動 制御手段は、前記車両が旋回される場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ 、前記左右の車輪が 、ずれも旋回内方側に傾斜するようにキャンバー角を調整する ことで、旋回外輪では前記第 1トレッドにおける接地圧が前記第 2トレッド及び第 3トレ ッドにおける接地圧よりも大きくなり、かつ、旋回内輪では前記第 3トレッドにおける接 地圧が前記第 1トレッド及び第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにする旋 回第 1作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置 6。なお、旋回第 1作動制御手段は、旋回外輪では前記第 1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加 し、かつ、旋回内輪では前記第 3トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、
キャンバー角調整装置を作動させるものであっても良い。
[0201] 車両用制御装置 6によれば、第 1から第 3トレッドを有する車輪が車両の左右に配 置され、車両が旋回される場合には、旋回第 1作動制御手段により、左右の車輪が いずれも旋回内方側に傾斜する(即ち、旋回外輪がネガティブキャンバーとなり旋回 内輪がポジティブキャンバーとなる)ようにキャンバー角を調整するので、左右両輪に それぞれ横力を発生させて、それら両輪の横力を旋回力として利用することができる ので、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
[0202] 請求項 1記載の車両用制御装置または車両用制御装置 1から 4のいずれかにおい て、前記車輪は、前記車両の左右に配置され、前記作動制御手段は、前記車両が 旋回される場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ、前記左右の車輪の内の 旋回外輪となる車輪のキャンバー角を調整することで、前記旋回外輪の第 1トレッドに おける接地圧が前記旋回外輪の第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにす る旋回第 2作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置 7。なお、旋 回第 2作動制御手段は、前記左右の車輪の内の旋回外輪となる車輪のキャンバー角 を調整することで、前記旋回外輪の第 1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加する ように、前記キャンバー角調整装置を作動させるものであっても良 、。
[0203] 車両用制御装置 7によれば、第 1及び第 2トレッドを有する車輪が車両の左右に配 置され、車両が旋回される場合には、旋回第 2作動制御手段により、左右の車輪の 内の旋回外輪のキャンバー角を調整 (例えば、旋回外輪のみを旋回内方側 (ネガテ イブキャンバー側)へ傾斜させ、旋回内輪は直進走行時と同様のキャンバー角を維 持する)するので、旋回性能を確保しつつ、制御駆動コストの削減を図ることができる という効果がある。
[0204] 即ち、本発明によれば、旋回外輪では、第 1トレッドにおける接地圧を第 2トレッドに おける接地圧よりも大きくすることで、高グリップ性能の第 1トレッドを利用して、旋回 性能を確保することができる。一方、旋回内輪では、そのキャンバー角の調整を不要 とする(直進走行時のキャンバー角をそのまま維持する)ことで、車両用制御装置の 制御コスト或いはキャンバー角調整装置の駆動コストの削減を図ることができる。
[0205] 請求項 1記載の車両用制御装置または車両用制御装置 1から 7のいずれかにおい
て、前記車両の対地速度を検出する対地速度検出手段と、前記車輪の回転速度を 検出する回転速度検出手段と、それら対地速度検出手段および回転速度検出手段 により検出された対地速度および回転速度に基づいて、前記車輪がスリップしている か否かを判断するスリップ判断手段とを備え、前記作動制御手段は、前記スリップ判 断手段により前記車輪がスリップしていると判断された場合に、前記キャンバー角調 整装置を作動させ、前記車輪のキャンバー角を調整することで、前記第 1トレッド又は 第 3トレッドにおける接地圧が前記第 2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにす るスリップ時作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置 8。なお、ス リップ時作動制御手段は、前記スリップ判断手段により前記車輪がスリップして!/ヽると 判断された場合に、前記キャンバー角調整装置を作動させ、前記車輪のキャンバー 角を調整することで、前記第 1トレッド又は第 3トレッドにおける接地圧が少なくとも増 加するようにものであっても良 、。
[0206] 車両用制御装置 8によれば、車輪がスリップしているとスリップ判断手段によって判 断された場合には、スリップ時作動制御手段がスリップして 、る車輪のキャンバー角 を調整して、第 1トレッド又は第 3トレッドの接地圧を増カロさせることができるので、ダリ ップカを回復させて、車両の走行安定性を高めることができるという効果がある。
[0207] ここで、図 7に示すフローチャート(キャンバー制御処理)にお!/、て、車両用制御装 置 1の加減速判断手段としては S2及び S3の処理力 加減速時作動制御手段として は S6の処理が、車両用制御装置 2の旋回判断手段としては S4の処理力 旋回時作 動制御手段としては S6の処理力 車両用制御装置 3の路面判断手段としては S1の 処理が、路面変化時作動制御手段としては S6の処理が、それぞれ該当する。
[0208] また、図 11に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装 置 1の加減速判断手段としては S2及び S3の処理力 加減速時作動制御手段として は S27の処理が、車両用制御装置 2の旋回判断手段としては S4の処理力 旋回時 作動制御手段としては S26の処理が、車両用制御装置 3の路面判断手段としては S 1の処理力 路面変化時作動制御手段としては S27の処理力 車両用制御装置 7記 載の旋回第 2作動制御手段としては S26の処理が、それぞれ該当する。
[0209] また、図 14に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装
置 1の加減速判断手段としては S2及び S3の処理力 加減速時作動制御手段として は S27の処理が、車両用制御装置 2の旋回判断手段としては S4の処理力 旋回時 作動制御手段としては S36の処理が、車両用制御装置 3の路面判断手段としては S 1の処理力 路面変化時作動制御手段としては S27の処理力 車両用制御装置 6の 旋回第 1作動制御手段としては S36の処理が、それぞれ該当する。
また、図 15に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、車両用制御装 置 8の対地速度検出手段としては S41の処理力 回転速度検出手段としては S42の 処理が、スリップ判断手段としては S43の処理力 スリップ時作動制御手段としては S 45の処理が、それぞれ該当する。