以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の実施の形態における車両の概念図である。
図において、11は車両の本体であるボディ、12は駆動源としてのエンジン、WLF、WRF、WLB、WRBは、前記ボディ11に対して回転自在に配設された左前方、右前方、左後方及び右後方の車輪である。なお、車輪WLF、WRFによって前輪が、車輪WLB、WRBによって後輪が構成される。
前記車両は後輪駆動方式の構造を有し、前記車輪WLB、WRBが駆動輪として機能する。そして、エンジン12と各車輪WLB、WRBとが第1の伝動軸としてのプロペラシャフト17、差動装置18及び第2の伝動軸としてのドライブシャフト46を介して連結され、エンジン12を駆動することによって発生させられた回転が車輪WLB、WRBに伝達される。本実施の形態において、前記車両は後輪駆動方式の構造を有するようになっているが、前輪駆動方式の構造を有するようにすることもできる。
また、13は車両の操舵を行うための操作部としての、かつ、操舵部材としてのステアリングホイール、14は車両を加速するための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル、15は車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダルである。
そして、31、32は、それぞれ、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に配設され、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのキャンバ可変機構としてのアクチュエータである。なお、本実施の形態においては、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に各アクチュエータ31、32が配設されるようになっているが、ボディ11と各車輪WLF、WRFとの間にアクチュエータを配設したり、ボディ11と車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間にアクチュエータを配設したりすることができる。
ところで、前記車輪WLF、WRF、WLB、WRBは、アルミニウム合金等によって形成された図示されないホイール、及び該ホイールの外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ36を備える。そして、該タイヤ36として、後述される損失正接を小さくすることにより、タイヤ36のトレッドの変形によって発生する転がり抵抗が小さくされた低転がり抵抗タイヤが使用される。本実施の形態においては、転がり抵抗を小さくするためにタイヤ36の幅が通常のタイヤより小さくされるが、トレッドの溝のパターンであるトレッドパターンを、転がり抵抗が小さくなるような形状にしたり、少なくともトレッドの部分の材料を、転がり抵抗が小さいものにしたりすることができる。
なお、前記損失正接は、トレッドが変形する際のエネルギーの吸収の度合いを表し、貯蔵剪(せん)断弾性率に対する損失剪断弾性率の比で表すことができる。損失正接が小さいほどトレッドによるエネルギーの吸収が少なくなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が小さくなり、タイヤ36に発生する摩耗が少なくなる。これに対して、損失正接が大きいほどトレッドによるエネルギーの吸収が多くなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が大きくなり、タイヤ36に発生する摩耗が多くなる。
前記構成の車両においては、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるので、燃費を良くすることができる。
次に、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするための前記アクチュエータ31、32について説明する。この場合、アクチュエータ31、32の構造は同じであるので、車輪WLB及びアクチュエータ31についてだけ説明する。
図3は本発明の実施の形態における車輪の断面図である。
図において、WLBは車輪、21はホイール、31はアクチュエータ、36はタイヤである。
前記アクチュエータ31は、ベース部材としての図示されないナックルに固定されたキャンバ制御用の駆動部としてのモータ41、前記ナックルに対して揺動自在に配設された可動部材としての可動プレート43、前記モータ41の回転運動を可動プレート43の揺動運動に変換する運動方向変換機構としてのクランク機構45、前記エンジン12(図2)の回転をホイール21に伝達する前記ドライブシャフト46等を備える。前記ホイール21は、可動プレート43に対して回転自在に支持され、ドライブシャフト46と連結される。
また、前記クランク機構45は、前記モータ41の出力軸に取り付けられた第1の変換要素としてのウォームギヤ51、前記ナックルに対して回転自在に配設され、前記ウォームギヤ51と噛(し)合させられる第2の変換要素としてのウォームホイール52、及び該ウォームホイール52と可動プレート43とを連結する第3の変換要素としての、かつ、連結要素としてのアーム53を有する。該アーム53は、一端において、ウォームホイール52の回転軸から偏心させた位置で、第1の連結部を介してウォームホイール52と連結され、他端において、可動プレート43の上端で、第2の連結部を介して可動プレート43と連結される。この場合、前記可動プレート43によって第4の変換要素が構成される。
前記ウォームギヤ51及びウォームホイール52によって、それぞれの回転運動の軸心の向きが変換され、ウォームホイール52及びアーム53によって、ウォームホイール52の回転運動がアーム53の直進運動に変換され、アーム53及び可動プレート43によって、アーム53の直進運動が可動プレート43の揺動運動に変換される。
したがって、モータ41を駆動すると、ウォームギヤ51及びウォームホイール52が回転させられ、アーム53が進退させられ、可動プレート43が揺動させられる。その結果、可動プレート43が傾けられた角度と等しい角度のキャンバが車輪WLBに付与される。
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
図1は本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
図において、16はコンピュータを構成する制御部、61は第1の記憶部としてのROM、62は第2の記憶部としてのRAM、63は車速を検出する車速検出部としての車速センサ、64は前記ステアリングホイール13(図2)の操作量を表す操舵量としてのステアリング角度を検出する操舵量検出部としての、かつ、ステアリング操作量検出部としてのステアリングセンサ、65は車両のヨーレートを検出するヨーレート検出部としてのヨーレートセンサ、66は横Gを検出する第1の加速度検出部としての横Gセンサ、67は前後Gを検出する第2の加速度検出部としての前後Gセンサ、68は各車輪WLB、WRBに付与されたキャンバを検出するキャンバ検出部としてのキャンバセンサ、Swは車室内に配設され、車両の自動走行を指示するための操作要素としての自動走行スイッチ、69は撮像装置としてのカメラ、70は表示部、71は前記アクセルペダル14の操作量を表す踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル操作量検出部としてのアクセルセンサ、72は前記ブレーキペダル15の操作量を表す踏込量(ブレーキストローク)を検出するブレーキ操作量検出部としてのブレーキセンサ、73は各車輪WLB、WRBの図示されないサスペンション装置のストロークを検出する懸架検出部としてのサスストロークセンサ、75は各車輪WLB、WRBに加わる荷重を検出する荷重検出部としての荷重センサ、76は前記タイヤ36の潰れ代、すなわち、タイヤ潰れ代を検出するタイヤ潰れ代検出部としてのタイヤ潰れ代センサである。前記ボディ11、アクチュエータ31、32、制御部16等によってキャンバ制御装置が構成される。
なお、前記ステアリングセンサ64は、ステアリング角度に代えて、ステアリング角度の変化率を表すステアリング角速度、該ステアリング角速度の変化率を表すステアリング角加速度、車輪WLF、WRFの舵角、該舵角の変化率を表す舵角速度、該舵角速度の変化率を表す舵角加速度等を操舵量として検出することができ、アクセルセンサ71は、アクセルペダル14の踏込量に代えて、アクセルペダル14の操作量を表す踏込速度、踏込加速度等を検出することができ、ブレーキセンサ72は、ブレーキペダル15の踏込量に代えて、ブレーキペダル15の操作量を表す踏込速度、踏込加速度等を検出することができる。
また、前記サスストロークセンサ73は、ハイトセンサ、磁気センサ等によって構成され、荷重センサ75は、サスペンション装置に配設されたロードセル(歪みセンサ)によって構成され、タイヤ潰れ代センサ76は、タイヤ36に配設されたロードセル(歪みセンサ)によって構成される。
ところで、本実施の形態においては、前述されたように、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるが、タイヤ36の転がり抵抗が小さい場合、タイヤ36の剛性が低下する。そこで、本実施の形態においては、タイヤ36の剛性が低下した場合でも車両の走行安定性及び旋回安定性を高くすることができるように、所定のキャンバ付与条件が成立したかどうかが判断され、所定のキャンバ付与条件が成立した場合に、前記各アクチュエータ31、32が作動させられ、各車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与される。
なお、前記各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのうちの少なくとも各車輪WLB、WRB、本実施の形態においては、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに、車両の仕様で規定された所定の角度のキャンバ、すなわち、基準キャンバが付与され、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBが通常の状態、すなわち、初期状態に置かれる。そして、本実施の形態においては、キャンバ付与条件が成立した場合に、初期状態に置かれた各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与される。
この場合、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させるのに伴ってタイヤ36に偏摩耗が発生すると、タイヤ36の寿命が短くなってしまうが、本実施の形態においては、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させているときに、タイヤ36に偏摩耗が発生するのを抑制するために、所定のキャンバ解除条件が成立したかどうかが判断され、キャンバ解除条件が成立した場合に、アクチュエータ31、32が作動させられ、各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与が解除され、各車輪WLB、WRBが初期状態に置かれる。
次に、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、キャンバθの付与を解除したりするための制御部16の動作について説明する。
図4は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第1のメインフローチャート、図5は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第2のメインフローチャート、図6は本発明の実施の形態における制御モード設定処理のサブルーチンを示す図、図7は本発明の実施の形態における操縦安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図8は本発明の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図9は本発明の実施の形態における接地荷重判定処理のサブルーチンを示す図である。
まず、制御部16の図示されない判定指標取得処理手段は、判定指標取得処理を行い、前記各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、キャンバθの付与を解除したりするために必要な判定指標、本実施の形態においては、車両の状態を表す車両状態、及び操作者としての運転者による各操作部の操作の状態を表す操作状態を取得する(ステップS1、S2)。
そのために、前記判定指標取得処理手段は、前記ヨーレートセンサ65、横Gセンサ66、前後Gセンサ67、キャンバセンサ68、サスストロークセンサ73、荷重センサ75、タイヤ潰れ代センサ76等の各センサのセンサ出力を読み込み、車両状態として、ヨーレート、横G、前後G、キャンバθ、サスストローク、荷重、タイヤ潰れ代等を取得し、取得したサスストロークに基づいてロール角を算出し、該ロール角を車両状態として更に取得する。なお、ロール角検出部としてロール角センサを配設し、該ロール角センサのセンサ出力を読み込むことによって、ロール角を取得することもできる。
また、前記判定指標取得処理手段は、前記ステアリングセンサ64、アクセルセンサ71、ブレーキセンサ72等の各センサのセンサ出力を読み込み、操作状態として、ステアリング角度、アクセルペダル14の踏込量、ブレーキペダル15の踏込量等を取得し、取得したステアリング角度に基づいて、ステアリング角度の変化率を表すステアリング角速度、及び該ステアリング角速度の変化率を表すステアリング角加速度を操作状態として更に取得する。
ところで、本実施の形態において、車両は、自動走行を行うことによって車両を所定の箇所、例えば、駐車場における駐車スペースに誘導するための走行支援装置を備える。
該走行支援装置においては、前記ROM61に、駐車スペースの位置データ、車両を旋回させる際の旋回半径ごとの経路等があらかじめ記録され、運転者が前記自動走行スイッチSwを押下して自動走行を指示すると、制御部16によって車両の自動走行が行われる。
そのために、前記制御部16の図示されない走行支援処理手段は、走行支援処理を行い、カメラ69によって撮影された映像を画像データとして読み込み、該画像データに対して画像処理を施し、画像処理が施された画像データ、駐車スペースの位置データ、前記旋回半径ごとの経路等に基づいて、車両を最小の旋回半径で旋回させて駐車スペース内に移動させることができる経路及び後退開始位置を設定し、設定された後退開始位置から設定された経路に沿って車両を駐車スペースに移動させる。
ところが、本実施の形態においては、前述されたように、キャンバ付与条件が成立して、各車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与されると、車両を駐車スペースに精度良く誘導することができなくなってしまう。
すなわち、各車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与されると、タイヤ36における路面と接触する部位、すなわち、接地部位が変化するので、タイヤ36の実質的な径が変化し、タイヤ36の1回転当たりの移動距離が変化する。また、各車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与されると、各車輪WLB、WRBのタイヤ36の接地荷重が変化するので、タイヤ36のスリップ率が変化する。しかも、キャンバθを付与するためのアクチュエータ31、32を作動させたときに、機械的な誤差等によって、各アクチュエータ31、32において可動プレート43を同じタイミングで傾けることができず、キャンバθが付与されるタイミングが車輪WLBと車輪WRBとで異なってしまう。
その場合、自動走行において、車両を、設定された経路に沿って移動させたときに、設定された経路と実際の車両の軌跡とが異なってしまうので、車両を駐車スペースに精度良く誘導することができなくなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、前記車両状態及び操作状態が取得されると、前記制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段は、キャンバ制御処理を行い、自動走行が行われているかどうかに基づいて、各車輪WLB、WRBに対して適正なキャンバθの付与を行う。
そのために、前記キャンバ制御処理手段の制御モード設定処理手段は、制御モード設定処理を行い、自動走行が行われているかどうかに基づいて、制御モードを設定する(ステップS3)。すなわち、前記制御モード設定処理手段の自動走行判断処理手段は、自動走行判断処理を行い、前記自動走行スイッチSwからの信号を読み込み、該信号に基づいて、自動走行が行われているかどうかを判断する(ステップS3−1)。
そして、前記制御モード設定処理手段の設定実行処理手段は、設定実行処理を行い、自動走行が行われている場合、第1の制御モードとしての通常制御モードを設定し(ステップS3−2)、各車輪WLB、WRBを、キャンバθが付与されない初期状態に置き、自動走行が行われていない場合、第2の制御モードとしてのキャンバ制御モードを設定し(ステップS3−3)、初期状態に置かれた各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する。
続いて、前記キャンバ制御処理手段の制御モード判定処理手段は、制御モード判定処理を行い、キャンバ制御モードが設定されたかどうかを判断し(ステップS4)、キャンバ制御モードが設定された場合、制御部16の図示されない第1のキャンバ付与条件成立判断処理手段としての操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、第1のキャンバ付与条件成立判断処理としての操縦安定キャンバ要否判定処理を行い(ステップS5、S6)、キャンバ制御モードが設定されず、通常モードが設定された場合、制御部16は処理を終了する。
そして、前記操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、車両の旋回時に、前記車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、前記操作状態に基づいて、旋回用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する。そのために、操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、前記ステアリング角度を読み込み、ステアリング角度が閾値γth以上であるかどうかを判断し(ステップS5−1)、ステアリング角度が閾値γth以上である場合に、前記旋回時用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS5−2)。
そして、旋回時用のキャンバ付与条件が成立した場合、制御部16の図示されないキャンバ付与状態判断処理手段は、キャンバ付与状態判断処理を行い、前記キャンバセンサ68によって検出されたキャンバθpを読み込み、該キャンバθpが、
−5〔°〕≦θp<α〔°〕
であるかどうかによって、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS7)。なお、値αは基準キャンバである。
各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合、制御部16は処理を終了し、キャンバθが付与されていない場合、前記キャンバ制御処理手段のキャンバ付与処理手段は、キャンバ付与処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBにキャンバθ
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
を付与する(ステップS8)。
このとき、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるのに伴って、車輪WLB、WRBのタイヤ36に互いに対向する方向にキャンバスラストが発生するが、車両を左方に向けて旋回させる場合は、車両に遠心力が発生するので、外周側の車輪WRB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WRBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WLB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。また、車両を右方に向けて旋回させる場合は、外周側の車輪WLB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WLBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WRB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。
したがって、車両に十分な求心力を発生させることができるので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、車両の旋回安定性を高くすることができる。
これに対して、前記操縦安定キャンバ要否判定処理において、旋回時用のキャンバ付与条件が成立しない場合、制御部16の図示されない第2のキャンバ付与条件成立判断処理手段としての直進安定キャンバ要否判定処理手段は、第2のキャンバ付与条件成立判断処理としての直進安定キャンバ要否判定処理を行い、車両の直進走行時に、前記車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、前記車両状態及び操作状態に基づいて、直進走行時用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS9、S10)。そのために、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、車速を読み込み、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて、車速算出値、本実施の形態においては、平均車速を算出するとともに、前記ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度を算出し、過去X〔秒〕間の平均車速が閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度が閾値γth1より小さいかどうかを判断する(ステップS9−1)。過去X〔秒〕間の平均車速が閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度が閾値γth1より小さい場合に、キャンバ付与条件成立判断処理手段は、前記キャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS9−2)。なお、閾値γth1は閾値γthより小さく設定される。
そして、直進走行時用のキャンバ付与条件が成立した場合、前記キャンバ付与状態判断処理手段は、前記キャンバθpを読み込み、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断し(ステップS11)、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていない場合、前記キャンバ付与処理手段は、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS12)。
このとき、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与するのに伴って、車輪WLB、WRBのタイヤ36に互いに対向する方向にキャンバスラストが発生するので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、各車輪WLB、WRBに外力が加わった場合は、外力が加わった車輪の反対側の車輪に発生するキャンバスラストが大きくなる。したがって、車両の復元力が大きくなり、車両の走行安定性を高くすることができる。
続いて、制御部16の図示されないキャンバ解除判定処理手段としての接地荷重判定処理手段は、キャンバ解除判定処理としての接地荷重判定処理を行い、前記キャンバ解除条件が成立したかどうかを判断する(ステップS13、S14)。そのために、前記接地荷重判定処理手段は、接地荷重指標として、タイヤ潰れ代、サスストローク、前後G、ヨーレート、ロール角、荷重、ブレーキストローク、アクセル開度、ステアリング角度、ステアリング角速度、ステアリング角加速度等を読み込み、各接地荷重指標が、それぞれの閾値以上であるかどうかを判断し(ステップS13−1〜S13−11)、各接地荷重指標のうちのいずれか一つ、本実施の形態においては、少なくともタイヤ潰れ代が閾値以上である場合に、接地荷重がタイヤ36に偏摩耗を発生させると判断し、キャンバ解除条件が成立したと判断する(ステップS13−12)。
そして、前記接地荷重判定処理において、キャンバ解除条件が成立すると、前記キャンバ制御処理手段のキャンバ解除処理手段は、キャンバ解除処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除する(ステップS15)。
また、前記操縦安定キャンバ要否判定処理及び直進安定キャンバ要否判定処理において、直進走行時用のキャンバ付与条件が成立しない場合に、前記キャンバ付与状態判断処理手段は、前記キャンバθpを読み込み、現在、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS16)。
そして、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合に、前記キャンバ解除処理手段は、制御部16に内蔵された計時処理部としての図示されないタイマによる計時を開始し、計時を開始してから所定の時間が経過すると(ステップS17)、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除する(ステップS18)。
このように、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の平均車速が閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度が閾値γth1より小さい場合に各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるので、高速道路、幹線道路等の道路において車両を高速又は中速で走行させている間だけ、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与され、高速道路、幹線道路等以外の道路において車両を低速で走行させている場合、高速道路、幹線道路等の道路において渋滞が発生している場合等には、キャンバθは付与されない。また、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させている間にキャンバ解除条件が成立すると、各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与が解除される。したがって、キャンバθが付与される頻度を低くすることができ、しかも、キャンバθが付与される時間を短くすることができるので、タイヤ36に偏摩耗が発生するのを十分に抑制することができる。その結果、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
そして、車両を走行させている間、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与され続けることがないので、タイヤ36の転がり抵抗をその分小さくすることができる。したがって、燃費を良くすることができる。
また、自動走行が行われていない場合、キャンバ制御モードが設定され、旋回時用及び直進走行時用のキャンバ付与条件が成立すると、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるが、自動走行が行われている場合、通常制御モードが設定され、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されないので、自動走行が行われている場合において、車両を、設定された経路に沿って移動させたときに、設定された経路と実際の車両の軌跡とが異なるのを防止することができる。したがって、車両を駐車スペースに精度良く誘導することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。