以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2の操舵駆動及びキャンバ角の調整等を行うキャンバ角調整装置4とを主に備えている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、これら前後輪2FL〜2RRは、車輪駆動装置3から回転駆動力を付与されて、それぞれ独立に回転可能に構成されている。
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図1に示すように、4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)を各車輪2に(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル52を操作した場合には、各車輪駆動装置3から回転駆動力が各車輪2に付与され、各車輪2がアクセルペダル52の操作量に応じた回転速度で回転される。
また、キャンバ角調整装置4は、各車輪2の舵角とキャンバ角とを調整するための駆動装置であり、図1に示すように、各車輪2に対応する位置に合計4個(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が配置されている。
例えば、運転者がステアリング54を操作した場合には、キャンバ角調整装置4の一部(例えば、前輪2FL,2FR側のみ)又は全部が駆動され、ステアリング54の操作量に応じた舵角を車輪2に付与する。これにより、車輪2の操舵動作が行われ、車両1が所定の方向へ旋回される。
また、キャンバ角調整装置4は、車両1の走行状態(例えば、定速走行時または加減速時、或いは、直進時または旋回時)や車輪2が走行する路面Gの状態(例えば、乾燥路面時と雨天路面時)などの状態変化に応じて、制御装置100により作動制御され、車輪2のキャンバ角を調整する。また、詳細は後述するが、キャンバ角調整装置4は、車両1の状況(例えば、車両1の周囲状況や車両1の操作状況)に応じて作動制御されて、車輪2のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブキャンバ)に調整するように構成されている。
ここで、図2を参照して、車輪駆動装置3とキャンバ角調整装置4との詳細構成について説明する。図2(a)は、車輪2の断面図であり、図2(b)は、車輪2の舵角及びキャンバ角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
なお、図2(a)では、車輪駆動装置3に駆動電圧を供給するための電源配線などの図示が省略されている。また、図2(b)中の仮想軸Xf−Xb、仮想軸Yl−Yr、及び、仮想軸Zu−Zdは、それぞれ車両1の前後方向、左右方向、及び、上下方向にそれぞれ対応する。
図2(a)に示すように、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、ゴム状弾性材から構成されるタイヤ2aと、アルミニウム合金などから構成されるホイール2bとを主に備えて構成され、ホイール2bの内周部には、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)がインホイールモータとして配設されている。
車輪駆動装置3は、図2(a)に示すように、その前面側(図2(a)左側)に突出された駆動軸3aがホイール2bに連結固定されており、駆動軸3aを介して、回転駆動力を車輪2へ伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置3の背面には、キャンバ角調整装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が連結固定されている。
キャンバ角調整装置4は、複数本(本実施形態では3本)の油圧シリンダ4a〜4cを備えており、それら3本の油圧シリンダ4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置3の背面側(図2(a)右側)にジョイント部(本実施形態ではユニバーサルジョイント)54を介して連結固定されている。なお、図2(b)に示すように、各油圧シリンダ4a〜4cは、周方向略等間隔(即ち、周方向120°間隔)に配置されると共に、1の油圧シリンダ4bは、仮想軸Zu−Zd上に配置されている。
これにより、各油圧シリンダ4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだけ伸長駆動又は収縮駆動することで、車輪駆動装置3が仮想軸Xf−Xb,Zu−Xdを揺動中心として揺動駆動され、その結果、各車輪2に所定のキャンバ角と舵角とが付与される。
例えば、図2(b)に示すように、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4a,4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Xf−Xb回りに回転され(図2(b)矢印A)、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバ)のキャンバ角(車輪2の中心線が仮想線Zu−Zdに対してなす角度)が付与される。
また、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4aのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Zu−Zd回りに回転され(図2(b)矢印B)、車輪2にトーイン傾向の舵角(車輪2の中心線が車両1の基準線に対してなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4a及び油圧シリンダ4cが伸縮駆動されると、車輪2にトーアウト傾向の舵角が付与される。
なお、ここで例示した各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪2が中立位置にある状態から駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方法を組み合わせて各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪2に任意のキャンバ角及び舵角を付与することができる。
図1に戻って説明する。アクセルペダル52及びブレーキペダル53は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル52,53の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の作動制御が行われる。また、ステアリング54は、運転者により操作される操作部材である。
また、本実施形態の車両1は、カメラ55を有している。カメラ55は、車両1の周囲状況を撮影するものであり、本実施形態では、4つのカメラ55FL〜55RRが配設されている。具体的には、左前輪2FL付近を撮影するFLカメラ55FL、右前輪2FR付近を撮影するFRカメラ55FR、左後輪2RL付近を撮影するRLカメラ55RL、及び、右後輪2RR付近を撮影するRRカメラ55RRが車両1に配設されている。
さらに、図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両1の周囲の対物状況を検出し、周囲に存在する障害物を検出可能な変位センサ装置56を有している。本実施形態の変位センサ装置56は、左前輪2FL付近を検出範囲とするFL変位センサ装置56FL、右前輪2FR付近を検出範囲とするFR変位センサ装置56FR、左後輪2RL付近を検出範囲とするRL変位センサ装置56RL、及び、右後輪2RR付近を検出範囲とするRR変位センサ装置56RRを含んで構成される。本実施形態では、各変位センサ装置56FL〜56RRとして超音波を用いて対象物までの距離を測定可能な超音波式変位センサを採用している。
詳細は後述するが、本実施形態では、カメラ55による撮影画像と変位センサ装置56による検出結果とに基づいて、車輪2の側面(より具体的には、車輪2における車両1の幅方向外側となる側面)に障害物が接触する可能性があるか否かが制御装置100によって判断される。
また、図1に示すように、本実施形態の車両1は、キャンバスイッチ57と、ハザードランプスイッチ58と、リバーススイッチ59とを有している。キャンバスイッチ57は、車輪2に予め設定されているキャンバ角(例えば、ネガティブ側に5°のキャンバ角)を付与するためのスイッチである。よって、運転者は、このキャンバスイッチ57を必要に応じて操作することにより、予め設定されているキャンバ角を車輪2に付与することができる。
ハザードランプスイッチ58は、図示されないハザードランプを点滅させるスイッチである。運転者は、ハザードランプを点灯させたい場合に、このハザードランプスイッチ58をオンする。リバーススイッチ59は、車両1をバックさせる場合に使用されるスイッチである。運転者は、車両1をバックさせたい場合に、このリバーススイッチ59をオンする。
ここで、ハザードランプスイッチ58が運転者によって操作される状況として、車両1を路肩に寄せて一時停車するなど、縁石などの障害物に車輪2の側面(より具体的には、車輪2における車両1の幅方向外側となる側面)が接触する可能性のある状況が多く想定される。同様に、リバーススイッチ59が運転者によって操作される状況として、縦列駐車や駐車場への車庫入れなど、縁石などの障害物に車輪2の側面が接触する可能性のある状況が多く想定される。また、運転者は、縁石などの障害物に車輪2の側面が接触する可能性があり、障害物と車輪2の側面との接触を避けたい状況において、キャンバスイッチ57を操作する。
従って、本実施形態の制御装置100は、後述する車輪保護処理(図4参照)において、キャンバスイッチ57、ハザードランプスイッチ58、又はリバーススイッチ59が操作されていれば、車輪2の側面(より具体的には、車輪2における車両1の幅方向外側となる側面)に障害物が接触する可能性があると判断するように構成されている
制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための制御装置であり、例えば、各ペダル52,53の操作状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を作動させることで、各車輪2の回転速度を制御する。
或いは、アクセルペダル52、ブレーキペダル53やステアリング54の操作状態を検出し、その検出結果に応じてキャンバ角調整装置4を制御し、走行状態に応じた各車輪2のキャンバ角の調整を行う。このように、車両1の走行状態に応じて車輪2のキャンバ角を調整することにより、走行性能を向上させることができる。
また、本実施形態の制御装置100は、カメラ55及び変位センサ装置56から得られる車両1の周囲状況や、車両1の操作状況(具体的には、キャンバスイッチ57、ハザードランプスイッチ58、又はリバーススイッチ59の操作状況)といった車両1の状況に応じてキャンバ角調整装置4を作動制御し、車輪2のキャンバ角をマイナス方向(ネガティブキャンバ)に調整するように構成されている。
ここで、図3を参照して、本実施形態における制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。図3に示すように、制御装置100は、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。なお、ROM72内には、後述する車輪保護処理(図4参照)を実行するプログラムが格納されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
キャンバ角調整装置4は、上述したように、各車輪2の舵角とキャンバ角とを調整するための駆動装置であり、各車輪2(車輪駆動装置3)に角度調整のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRは、3本の油圧シリンダ4a〜4cと、それら各油圧シリンダ4a〜4cにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ4d(図1参照)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダ4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)と、各油圧シリンダ4a〜4c(ロッド部)の伸縮量を検出する伸縮センサ(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、キャンバ角調整装置4の駆動回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方向(伸長又は収縮)が切り換えられる。
キャンバ角調整装置4の駆動回路は、各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮量を伸縮センサにより監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダ4a〜4cは、その伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、駆動回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在の舵角及びキャンバ角を得ることができる。
カメラ55(FLカメラ55FL〜RRカメラ55RR)は、各設置位置の周囲を撮影可能なCCDカメラ(又はCMOSカメラ)である。これらのカメラ55FL〜55RRは、CPU71からの撮影指示が入力されると撮影を行い、その撮影結果をCPU71へ出力する。
変位センサ装置56は、各接地位置の周囲の対物状況を検出すると共に、その検出結果をCPU1に出力するための装置であり、超音波パルスを発信する超音波発信部(図示せず)と、対象物によって反射された超音波を受信する受信部(図示せず)と、超音波の発信から受信までの時間に基づいて対象物までの距離を算出する距離算出部(図示せず)とから構成される。
本実施形態では、変位センサ装置56が、前後左右に配置された4つの変位センサ装置(FL変位センサ装置56FL〜RR変位センサ装置56RR)から構成され、各車輪2FL〜2RR付近に存在する障害物を検出できるように構成されている。
キャンバスイッチ57は、運転者が、車輪2にキャンバ角を付与することを所望する場合にオンするスイッチである。なお、このキャンバスイッチ56は、運転者が必要に応じて所定の操作を行うか、所定の処理の実行が終了した場合に自動的にオフされるように構成されている。
ハザードランプスイッチ58は、運転者がハザードランプ(図示せず)の点灯を所望する場合にオンされるスイッチである。また、リバーススイッチ59は、運転者が車両1をバック(後進)させたい場合にオンされるスイッチである。なお、ハザードランプスイッチ58及びリバーススイッチ59は、運転者が必要に応じて所定の操作を行うことによって任意にオン−オフされる。
また、入出力装置36としては、アクセルペダル52の操作状態を検出するアクセルペダルセンサ装置や、ブレーキペダル53の操作状態を検出するブレーキペダルセンサ装置や、ステアリング54の操作状態を検出するステアリングセンサ装置などが例示される。
次いで、図4を参照して、上記構成を有する車両1における制御装置100により実行される車輪保護処理について説明する。図4は、車輪保護処理を示すフローチャートである。
この車輪保護処理は、車輪2の側面(より具体的には、車輪2における車両1の幅方向外側となる側面)が障害物に接触する可能性がある場合に、車輪2のキャンバ角をネガティブキャンバ(マイナス方向のキャンバ)に調整する処理である。本実施形態では、車輪保護処理は、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、2ms間隔で)実行される。
図4に示すように、この車輪保護処理では、まず、車両1の周囲における対物状況に基づいて車輪2の側面に障害物が接触する可能性があるか否かを判断する対物判断処理(S1)を実行する。
この対物判断処理(S1)をより詳細に説明すると、まず、カメラ情報の取得を行う(S11)。具体的には、カメラ55(55FL〜55RR)へ撮影指示を出力し、各カメラ55FL〜55RRから撮影画像を得る。
S11の処理後、変位センサ情報を取得する(S12)。具体的には、変位センサ装置56(56FL〜56RR)へ測定指示を出力し、各変位センサ装置56FL〜56RRから測定結果を得る。
S12の処理後、各カメラ55FL〜55RRから得たカメラ情報(撮影画像)と各変位センサ装置56FL〜56RRから得た変位センサ情報(測定結果)とに基づいて、車輪2(2FL〜2RR)の周囲における対物状況を解析し、車輪2の側面に接触する(干渉する)可能性のある障害物が存在するかを確認する(S13)。
S13の処理により確認した結果、車輪2の側面に接触する可能性のある障害物が存在すると判断される場合には(S13:Yes)、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側(マイナス側)にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方で、S13の処理により確認した結果、車輪2の側面に接触する可能性のある障害物がないと判断される場合には(S13:No)、車両1におけるスイッチの操作状況に基づいて車輪2の側面に障害物が接触する可能性があるか否かを判断する操作状況判断処理(S2)を実行する。
この操作状況判断処理(S2)をより詳細に説明すると、まず、スイッチの操作状態を取得し(S21)、キャンバスイッチ57がオンであるかを確認する(S22)。
S22の処理により確認した結果、キャンバスイッチ57がオンであれば(S22:Yes)、運転者が車輪2へのキャンバ角の付与を所望しているので、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側(マイナス側)にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方、S22の処理により確認した結果、キャンバスイッチ57がオフであれば(S22:No)、次いで、ハザードランプスイッチ58がオンであるかを確認する(S23)。
S23の処理により確認した結果、ハザードランプスイッチ58がオンであれば(S23:Yes)、車輪2の側面が縁石などの障害物に接触する可能性のある状況(例えば、車両1を路肩に寄せて一時停車する)であると判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方、S23の処理により確認した結果、ハザードランプスイッチ58がオフであれば(S23:No)、リバーススイッチ59がオンであるかを確認する(S24)。
S24の処理により確認した結果、リバーススイッチ59がオンであれば(S24:Yes)、車輪2の側面が縁石などの障害物に接触する可能性のある状況(例えば、縦列駐車や駐車場への車庫入れ)にあると判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方、S23の処理により確認した結果、リバーススイッチ59がオフであれば(S23:No)、車輪2の側面に障害物が接触する可能性がないと判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角を定常角(例えば、0°)となるように調整し(S3)、車輪保護処理を終了する。
従って、この車輪保護処理によれば、対物状況判断処理(S1)において、車輪2の側面に接触する可能性のある障害物が存在と判断された場合(即ち、S13:Yes)、あるいは、操作状況判断処理(S2)において、運転者がキャンバスイッチ57、ハザードランプスイッチ58、又はリバーススイッチ59を操作したことにより、車輪2の側面が障害物に接触する可能性のある状況であると判断された場合(即ち、S22:Yes,S23:Yes,S24:Yes)には、全車輪2のキャンバ角が、ネガティブ側(マイナス側)にθ°(例えば、5°)となるように調整される。
なお、図4に示した車輪保護処理において、S11,S12,S21は、それぞれ、本発明の車両状況取得手段に該当する。また、S13,S22,S23,S24は、それぞれ、本発明の接触判断手段に該当する。また、S4は、本発明のキャンバ角調整手段に該当する。
ここで、図5を参照して、上述した車輪保護処理(図4)におけるS4の処理の結果として、車輪2にθ°のネガティブキャンバが付与されたことによって、得られる効果について説明する。図5(a)は、定常角にある車輪2の側面が障害物(縁石B)に接触している状態を示す模式図であり、図5(b)は、(a)に示した車輪2のキャンバ角をネガティブキャンバにした状態を示す模式図である。なお、図5では、車輪2の代表例として右の前輪2FRを図示している。
図5(a)に示すように、車輪2の側面が縁石Bに接触する場合には、タイヤ2aのサイドウォール2a1や、ホイール2bが縁石Bに擦れ、サイドウォール2a1やホイール2bの損傷に繋がる。
上述したように、車両保護処理(図4)によれば、車輪2の側面が障害物に接触する可能性がある場合には、S4の処理が実行されて、車輪2にネガティブキャンバが付与される。その結果、図5(b)に示すように、障害物に接触する可能性があった車輪2の側面(即ち、車輪2における車両1の幅方向外側の側面)が上方を向く側に傾けられ、車輪2の側面における縁石Bとの接触可能領域が低減する。
図5(b)に示すように、ホイール2bは、縁石Bから十分に離されることになり、タイヤ2aは、障害物に接触するとしても、サイドウォール2a1を可及的に避け、トレッド面2a2側で接触させることができ、サイドウォール2a1の損傷を低減することが可能となる。
従って、本実施形態によれば、車輪2の側面が縁石B(障害物)に接触する可能性があると判断された場合には、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の側面(タイヤ2aのサイドウォール2a1やホイール2b)と障害物との接触を回避し得、ホイール2bやサイドウォール2a1の損傷を有効に防止することができる。よって、ホイール2bやサイドウォール2a1の損傷に伴うホイール2bやタイヤ2aの交換頻度を減らすことができ、車両1の維持コストや交換に必要な労力を削減することができる。また、タイヤ2aの耐久性が向上し、安全性が向上する。
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、カメラ55から得られるカメラ情報と変位センサ装置56から得られる変位センサ情報とに基づく対物判断処理(S1)、又は、車両1におけるスイッチの操作状況に基づく操作状況判定処理(S2)により、車輪2の側面が障害物に接触する可能性があるか否かを判断した。
これに換えて、第2実施形態では、車両1の位置情報に基づいて車輪2の側面が障害物に接触する可能性があるか否かを判断する。なお、上記の第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図6は、第2実施形態における制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。図6に示すように、第2実施形態の制御装置100は、CPU71、ROM72、及びRAM73に加え、入出力ポート75に接続されたハードディスク76(以下、HDD76と称する)を有している。このHDD74は、書き換え可能な不揮発性の大容量メモリであり、地図メモリ76aと、指定地点メモリ76bとを有している。
地図メモリ76aは、地図データを記憶するものであり、例えば、非図示のデータ読込装置(例えば、DVD装置)によって地図データの記録された媒体(例えば、DVD)から読み取られたり、外部の情報センタ等から非図示の通信装置を介して受信されたりした地図データが記憶されている。なお、この地図メモリ76aは、本発明における位置記憶手段に該当する。
指定地点メモリ76bは、運転者などユーザによって入力された、車輪2の側面(より具体的には、車輪2における車両1の幅方向外側となる側面)に障害物が接触する可能性がある位置(例えば、しばしば使用するにもかかわらず、地図データにデータが存在しない駐車場など)が記憶されている。なお、この指定地点メモリ76bは、本発明における位置記憶手段に該当する。
また、図6に示すように、第2実施形態の制御装置100において、入出力ポート75には、カメラ55、変位センサ装置56、キャンバスイッチ57、ハザードランプスイッチ58、及びリバーススイッチ59に換えて、GPS受信機60が接続されている。
GPS受信機60は、図示されないGPS衛星から位置情報(例えば、緯度情報及び経度情報)を、アンテナ60aを介して受信する装置である。このGPS受信機60により位置情報が受信されると、その位置情報と、図示されない車両速度センサ装置により検出された対地速度と、図示されないジャイロスコープにより検出される車両1の回転角速度とに基づいて、CPU71において車両1の現在位置が求められる。
次いで、図6を参照して、上記構成を有する第2実施形態の制御装置100により実行される車輪保護処理について説明する。図6は、第2実施形態の車輪保護処理を示すフローチャートである。
この第2実施形態の車輪保護処理は、第1実施形態の車輪保護処理(図4参照)と同様に、車輪2の側面(より具体的には、車輪2における車両1の幅方向外側となる側面)が障害物に接触する可能性がある場合に、車輪2のキャンバ角をネガティブキャンバに調整する処理であり、制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、2ms間隔で)実行される。なお、この第2実施形態の車輪保護処理を実行するプログラムは、ROM72内に格納されている。
図6に示すように、第2実施形態の車輪保護処理では、まず、車両1の位置に基づいて車輪2の側面に障害物が接触する可能性があるか否かを判断する車両位置判断処理(S5)を実行する。
この車両位置判断処理(S5)をより詳細に説明すると、まず、GPS受信機60から車両1の位置情報を取得し(S51)、取得した位置情報に基づいて車両1の現在位置を求め、地図メモリ76aに記憶される地図データを参照し、車両1の現在位置が駐車場(平面駐車場又は立体駐車場)であるかを確認する(S52)。
S52の処理により確認した結果、車両1の現在位置が駐車場であれば(S52:Yes)、車両1が料金所へ幅寄せしたり、駐車場内に駐車する状況が生じるため、車輪2の側面が縁石などの障害物に接触する可能性のある状況であると判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側(マイナス側)にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方、S52の処理により確認した結果、車両1の現在位置が駐車場でなければ(S52:No)、車両1の現在位置が料金所であるかを確認する(S53)。
S53の処理により確認した結果、車両1の現在位置が料金所であれば(S53:Yes)、車両1が料金所に幅寄せする状況が生じるため、車輪2の側面が縁石などの障害物に接触する可能性のある状況であると判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方、S53の処理により確認した結果、車両1の現在位置が料金所でなければ(S53:No)、メモリ地点、即ち、車両1の現在位置が指定地点メモリ76bに記憶されている位置であるかを確認する(S54)。つまり、S54の処理では、車両1が、ユーザにより予め指定されている車輪2の側面に障害物が接触する可能性がある位置に位置しているかを確認する。
S54の処理により確認した結果、車両1の現在位置がメモリ地点であれば(S54:Yes)、車輪2の側面が障害物に接触する可能性のある状況であると判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角をネガティブ側にθ°(例えば、5°)となるように調整し(S4)、車輪保護処理を終了する。
一方、S54の処理により確認した結果、車両1の現在位置がメモリ地点でなければ(S54:No)、車輪2の側面に障害物が接触する可能性がないと判断し、キャンバ調整装置4を作動させて、全車輪2のキャンバ角を定常角(例えば、0°)となるように調整し(S3)、車輪保護処理を終了する。
従って、この車輪保護処理によれば、車両位置判断処理(S5)において、車両1の現在位置が車輪2の側面が障害物に接触する可能性のある状況であると判断された場合(即ち、S52:Yes,S53:Yes,S54:Yes)には、全車輪2のキャンバ角が、ネガティブ側(マイナス側)にθ°(例えば、5°)となるように調整される。
このように、第2実施形態も、第1実施形態と同様に、車輪2の側面が障害物に接触する可能性があると判断された場合には、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車輪2の側面(タイヤ2aのサイドウォール2a1やホイール2b1)と障害物との接触を回避し得、ホイール2bやサイドウォール2a1の損傷を有効に防止することができる。
なお、図7に示した車輪保護処理において、S51は、本発明の車両状況取得手段に該当する。また、S52,S53,S54は、それぞれ、本発明の接触判断手段に該当する。また、S4は、本発明のキャンバ角調整手段に該当する。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
また、上記第1実施形態の車輪保護処理(図4)では、車輪2の側面に接触する可能性のある障害物が存在と判断する処理として、対物状況判断処理(S1)と操作状況判断処理(S2)とを含む構成としたが、対物状況判断処理(S1)又は操作状況判断処理(S2)のいずれか一方のみを含む構成としてもよい。また、対物状況判断処理(S1)及び/又は操作状況判断処理(S2)と、第2実施形態で実行した車両位置判断処理(S5)とを組み合わせてもよい。
また、上記各実施形態では、車輪2の側面が障害物に接触する可能性があると判断された場合には、全車輪2のキャンバ角をネガティブキャンバに調整する構成としたが、側面が障害物に接触する可能性がある車輪を特定し、特定された車輪のみをネガティブキャンバに調整する構成としてもよい。
あるいは、側面が障害物に接触する可能性がある車輪を特定した場合には、特定された車輪と同じ側の車輪(例えば、左前輪2FLが特定された場合には、左側の前後輪2FL、2RL)をネガティブキャンバに調整する構成としてもよい。
なお、車両1の走行安定性の点からすると、全車輪2のキャンバ角をネガティブキャンバに調整することが好ましい。一方で、車輪2の摩耗抑制の点からすると、側面が障害物に接触する可能性があると特定された車輪のみであったり、特定された車輪とおなじ側の車輪のキャンバ角をネガティブキャンバに調整することが好ましい。よって、車速が所定速度以上である場合には、全車輪2のキャンバ角をネガティブキャンバに調整し、車速が所定速度未満である場合には、側面が障害物に接触する可能性があると特定された車輪とおなじ側の車輪のキャンバ角をネガティブキャンバに調整するなど、条件に応じてネガティブキャンバにする車輪の数を変更するように構成してもよい。
また、上記各実施形態では、車輪2の側面が障害物に接触する可能性があると判断された場合には、障害物の高さとは無関係に、車輪2のキャンバ角をネガティブ側にθ°(例えば、5°)となるように調整したが、障害物の高さに応じて車輪2に付与するキャンバ角の大きさを変えるように構成してもよい。