以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の駐車制御装置の一実施形態である制御装置10が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。また、図1では、全車輪2に所定の舵角が付与された状態が図示されている。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を独立に操舵駆動するアクチュエータ装置4とを主に備えている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、これら前後輪2FL〜2RRは、ステアリング装置20,30により操舵可能に構成されている。
ステアリング装置20,30は、各車輪2を操舵するための操舵装置であり、図1に示すように、各車輪2を揺動可能に支持するキングピン21と、各車輪2のナックルアーム(図示せず)に連結されるタイロッド22と、そのタイロッド22にアクチュエータ装置4の駆動力を伝達する伝達機構部23とを主に備えて構成されている。
アクチュエータ装置4は、上述したように、各車輪2を独立に操舵駆動するための操舵駆動装置であり、図1に示すように、4個のアクチュエータ(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)を備えて構成されている。運転者がハンドル51を操作した場合には、アクチュエータ装置4の一部(例えば、前輪2FL,2FRのみ)又は全部が駆動され、ハンドル51の操作量に応じた舵角が付与される。
また、運転者によるハンドル操作が行われていない場合であっても、自動駐車旋回スイッチ42が押下(オン)されたことによって起動する後述する駐車制御処理が実行された場合には、車両1の周囲状況に応じて、車輪2に対応するアクチュエータ装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)を駆動し、車輪2を左右に操舵駆動する。これにより、旋回半径に限界なく自由な車両1の旋回の実現を図る。また、必要に応じて、車輪2に対応するアクチュエータ装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)を適宜駆動し、制動力又は駆動力の向上を図る。
このように、アクチュエータ装置4による車輪2の操舵駆動は、旋回を目的とする場合と、制動力や駆動力の向上を目的として行われる場合との2種類がある。なお、上述したように、旋回制御は、ハンドル51の操作に起因する場合と、自動駐車旋回スイッチ42の押下に伴って実行される駐車制御処理に起因する場合とがあり、この旋回制御、特に、自動駐車旋回スイッチ42の押下に伴って実行される旋回制御処理に起因する旋回制御の詳細については、図5〜図8を参照して後述する。
ここで、本実施形態では、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRが電動モータで構成されると共に、伝達機構部23がねじ機構で構成される。電動モータが回転されると、その回転運動が伝達機構部23により直線運動に変換され、タイロッド22に伝達される。その結果、各車輪2がキングピン21を揺動中心として揺動駆動され、各車輪2に所定の舵角が付与される。
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図1に示すように、4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)を各車輪2ごとに(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル53を操作した場合には、各車輪駆動装置3から回転駆動力が各車輪2に付与され、各車輪2がアクセルペダル53の操作量に応じた回転速度で回転される。なお、運転者がアクセルペダル53を操作した際の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の回転方向は、前進スイッチ40又は後進スイッチ41のいずれか選択(押下)された方に応じて順転又は逆転し、その結果、前進スイッチ40が選択されている場合には、車両1は前進し、後進スイッチ41が選択されている場合には、車両1は後進(バック)する。
なお、車両1は、上記したように、アクチュエータ4(4FL〜4RR)及び車輪駆動装置3(3FL〜3RR)によって、各車輪2FL〜2RRに対してそれぞれ独立して舵角及び回転状態(回転速度及び回転方向)を付与できるので、旋回半径に限界のない自由な旋回や、左右への平行移動が可能とされる。
制御装置10は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための制御装置であり、例えば、アクセルペダル53が操作された場合などには、車輪駆動装置3の駆動制御を行う一方、ハンドル51や各ペダル52,53が操作された場合などには、アクチュエータ装置4の駆動制御(旋回制御、操舵制御)を行う。また、制御装置10は、上述したように、自動駐車旋回スイッチ42の押下を検出した場合には、後述する駐車制御処理を実行する(図5〜図8参照)。ここで、図2を参照して、制御装置10の詳細構成について説明する。
図2は、制御装置10の電気的構成を示したブロック図である。制御装置10は、図2に示すように、CPU71と、ROM72と、RAM73と、ハードディスク74(以下、HDD74と称する)とを備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。なお、後述する図5〜図8に示すフローチャートを実行するプログラムは、このROM72に格納されている。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、駐車継続フラグ73aと、回避中フラグ73bとを備えている。
駐車継続フラグ73aは、安全性を保障できない範囲に動的障害物が存在するであっても、選択された旋回パターンに従う通常駐車制御処理(S507)を強制実行するか否かを示すフラグであり、通常駐車制御処理(S507)を強制実行される場合にはオンを示し、通常駐車制御処理(S507)を強制実行することなく車両1が停止される場合はオフを示す。
なお、この駐車継続フラグ73aは、駐車制御処理(図5参照)が起動されるとオフされ、駐車継続スイッチ43の押下(オン)によってオンされる。また、後述するように駐車継続スイッチ43は、オンされた後に、さらに別の動的障害物が検出されると自動的にオフされるので、その際に、駐車継続フラグ73aもまたオフされる。
回避中フラグ73bは、現在において他車両に対する回避中であるか否かを示すフラグであり、回避中であればオンを示し、回避中でなければオフを示す。なお、この回避中フラグ73bは、駐車制御処理(図5参照)が起動されるとオフされ、安全性を保障できない範囲に動的障害物としての他車両が検出され、その他車両が回避可能であった場合にオンされる。その後、1シリーズの回避動作が終了し、旋回中心及び旋回パターンの再選択が完了すると、回避中フラグ73bはオフされる。
HDD74は、書き換え可能な不揮発性の大容量メモリであり、旋回パターンテーブル74aと、地図データベース74b(以下、地図DB74bと称する)と、検出用マッチングパターン74cとを備えている。
旋回パターンテーブル74aは、1の旋回中心毎に、対応する旋回パターンが記憶されているテーブルである。なお、本実施形態では、後述する図3に示すテーブルを旋回パターンテーブル74aとして使用し、x方向はみ出し量Exとy方向はみ出し量Eyとによって規定される旋回パターンを使用する。
地図DB74bは、地図データ及び駐車場データを記憶するデータベースであり、例えば、非図示のデータ読込装置(例えば、DVD装置)によって地図データ及び駐車場データの記録された媒体(例えば、DVD)から読み取られたり、外部の情報センタ等から非図示の通信装置を介して受信されたりした地図データ及び駐車場データが記憶されている。なお、この地図DB74bに記憶されている駐車場データとしては、駐車場全体の形状や、目標駐車枠110(図4参照)の位置や大きさや、取り付け車路の幅などが挙げられる。
マッチングパターンメモリ74cは、検出用マッチングパターンを記憶するデータベースである。この検出用マッチングパターンは、車載カメラ44による撮像画像から動的障害物の種別を判定するためのパターンマッチングを行う際における該撮像画像の比較対象とする画像である。
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
また、アクチュエータ装置4は、上述したように、各車輪2を操舵駆動するための装置であり、各車輪2に操舵駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを備えている。
舵角センサ装置31は、各車輪2の舵角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の舵角をそれぞれ検出する4個のFL〜RR舵角センサ31FL〜31RRと、それら各舵角センサ31FL〜31RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
ここで、舵角センサ装置31により検出される舵角とは、各車輪2の中心線と車両1(車体フレームBF)の基準線(各線ともに図示せず)とがなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度である。
車両速度センサ装置32は、路面に対する車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後及び左右方向加速度センサ32a,32bと、それら各加速度センサ32a,32bの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
前後方向加速度センサ32aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ32bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1左右方向)の加速度を検出するセンサである。CPU71は、車両速度センサ装置32から入力された各加速度センサ32a,32bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後及び左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を得ることができる。
車輪回転速度センサ装置33は、各車輪2の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の回転速度をそれぞれ検出する4個のFL〜RR回転速度センサ33FL〜33RRと、それら各回転速度センサ33FL〜33RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
CPU71は、車輪回転速度センサ装置33から入力された各車輪2の回転速度と、予めROM72に記憶されている各車輪2の外径とから、各車輪2の実際の周速度をそれぞれ得ることができる。
前進スイッチ40は、運転者が、車両1を前進させることを所望した場合に選択するスイッチである。この前進スイッチ40が押下(オン)されると、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)が順転されて、その結果として、車両1は前進する。
後進スイッチ41は、運転者が、車両1を後進(バック)させることを所望した場合に選択するスイッチである。この後進スイッチ41が押下(オン)されると、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)が逆転されて、その結果として、車両1は後進する。
なお、前進スイッチ40が押下(オン)された場合には、後進スイッチ41は必ずオフに切り換えられ、一方で、後進スイッチ41が押下(オン)された場合には、前進スイッチ40は必ずオフに切り換えられ、両方のスイッチ40,41が同時にオンされないように構成されている。
自動駐車開始スイッチ42は、運転者が、後述する駐車制御処理(図7参照)による旋回制御を所望する場合に、押下することによって駐車制御処理(図7参照)の実行を指示するスイッチである。なお、この自動駐車開始スイッチ42は、駐車制御処理(図7参照)の実行後に自動的にオフされるように構成されている。
駐車継続スイッチ43は、駐車制御処理(図7参照)の実行中に、動的障害物が検出されたにもかかわらず、選択された旋回パターンに従う通常駐車制御処理(S507)の強制実行を指示する場合に押下(オン)されるスイッチである。なお、この駐車継続スイッチ43は、次に別の動的障害物が検出されると自動的にオフされるように構成されている。
車載カメラ44は、車両1の周囲を撮像可能な小型CCDカメラである。本実施形態では、前後左右に4つの車載カメラ44が設けられており、車両1の周囲360度を撮像することができるように構成されている。
この車載カメラ44は、撮像画像に基づいて障害物(静的障害物及び動的障害物)の存在の有無を検出する検出センサの役割を果たすと共に、マッチングパターンメモリ74cに記憶されている検出用マッチングパターンと比較することによって、歩行者(人間)を認識する画像センサの役割を果たす。
レーザレーダ装置45は、近距離にある物体までの距離計測が可能なレーダ装置であり、レーザ光を発光する発光部(非図示)と、反射レーザ光を受光する受光部(非図示)と、その受光部に受光された反射レーザ光に基づいて、対象物体(レーザ光を反射した物体)までの距離を算出する距離算出部(非図示)とから構成される。なお、本実施形態では、前後左右に4つのレーザレーダ装置45が設けられており、車両1の周囲360度に存在する物体との距離を計測することができるように構成されている。
LCD46は、各種情報や地図データに基づく地図などを表示するための液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)である。
GPS受信機47は、非図示のGPS衛星から位置情報(例えば、緯度情報及び経度情報)をアンテナ47aを介して受信する装置であり、このGPS受信機47により位置情報が受信されると、その位置情報と、車両速度センサ装置32により検出された対地速度と、非図示のジャイロスコープにより検出される車両1の回転角速度とに基づいて、CPU71において車両1の現在位置が求められる。
次に、図3を参照して、上述した旋回パターンテーブル74aについて説明する。図3は、旋回パターンテーブル74aの構成を示す模式図である。図3に示すように、旋回パターンテーブル74aは、前進時の旋回パターンを記憶するテーブルであるフロント用テーブル74a1と、後進時(バック時)の旋回パターンを記憶するテーブルであるバック用テーブル74a2とから構成されている。
また、フロント用テーブル74a1は、前進左旋回の際に使用される前進左旋回用テーブル74a11と、前進右旋回の際に使用される前進右旋回用テーブル74a12とを備えている。一方で、バック用テーブル74a2は、後進左旋回の際に使用される後進左旋回用テーブル74a21と、後進右旋回の際に使用される後進右旋回用テーブル74a22とを備えている。
これらフロント用テーブル74a1及びバック用テーブル74a2は、自動駐車開始スイッチ42と共に、前進スイッ40が押下(オン)されたか、後進スイッチ41が押下(オン)されたかに応じて選択される。即ち、この場合に、前進スイッチ40が押下(オン)が押下された場合には、フロント用テーブル74a1が選択されることになり、一方で、後進スイッチ41が押下(オン)が押下された場合には、バック用テーブル74a2が選択されることになる。
また、フロント用テーブル74a1又はバック用テーブル74a2において、左旋回用のテーブル(前進左旋回用テーブル74a11又は後進左旋回用テーブル74a21)が選択されるか、右旋回用のテーブル(前進右旋回用テーブル74a12又は後進右旋回用テーブル74a22)が選択されるかは、後述する旋回パターン選択処理(図6参照)において求められる車両1と目標駐車枠110との相対的位置に従う。
フロント用テーブル74a1(前進左旋回用テーブル74a11及び前進右旋回用テーブル74a12)及びバック用テーブル74a2(後進左旋回用テーブル74a21及び後進右旋回用テーブル74a22)はいずれも、車両1の周囲に無限に存在する旋回中心のうち、代表的なN個の旋回中心の各々に対し、x方向はみ出し量Exとy方向はみ出し量Eyとが旋回パターンとして記憶されている。なお、x方向はみ出し量Ex及びy方向はみ出し量Eyの定義については、図4を参照しつつ後述するものとする。
この旋回パターンテーブル74aは、後述する旋回パターン選択処理(図9参照)において、車両1と目標駐車枠110(図5参照)との相対的位置を示す情報と、車両1周辺に検出された静的障害物を示す情報と共に参照されて、最適な旋回中心と旋回パターンとが選択される。
次に、図4を参照して、x方向はみ出し量Ex及びy方向はみ出し量Eyについて説明する。図4は、x方向はみ出し量Ex及びy方向はみ出し量Eyを説明するための模式図である。
図4では、車両1(長さ4795mm×幅1790mm×高さ1770mm)が、駐車枠100に対して略直角に設けられた取り付け車路120(車路幅5.5m)から、目標駐車枠110(幅2.3m×長さ5.0m)へ、旋回中心X(後進左旋回用テーブル74a21に含まれる旋回中心の1つ)周りに旋回した場合を例示している。
なお、x方向はみ出し量Exは、初期停止位置の車両1における旋回方向とは反対側の側面付近に、初期停止位置の車両1に対して平行に引いたx方向基準線112(本実施形態では、駐車枠110の長辺上を通る直線をx方向基準線112とした)から、旋回時に車両1が最大にはみ出す長さとして定義される。
一方で、y方向はみ出し量Eyは、x方向基準線112に対して直交するy方向基準線114から、旋回時に車両1が最大にはみ出す長さとして定義される。
このように旋回パターンが、x方向はみ出し量Exとy方向はみ出し量Eyとによって規定される場合には、例えば、車両1と目標駐車枠110との相対的位置に基づいて、車両1が移動可能な領域を示すマップを作成し、そのマップを参照し、該マップから車両1がはみ出さない旋回中心及び旋回パターンを選択すればよい。その結果として、接触や衝突を抑制しつつ安全に車両1を旋回させて目標駐車枠110へ入庫させることが可能となる。
なお、図4に示すように、本実施形態では、旋回パターンテーブル74aに記憶されている各旋回パターン(x方向はみ出し量Ex及びy方向はみ出し量Ey)が、前後のオーバーハングの値が等しい車両1に対してのみ得られた値であっても、オーバーハングが前後で異なる車両にも適用可能である。即ち、与える舵角をそれぞれ変化させ、オーバーハングが同じ値となるように旋回中心を変化させることで対応させることが可能である。
次に、図5〜図8のフローチャートを参照して、上記のように構成される本実施形態の車両1の旋回制御について説明する。図5は、車両1の制御装置10(CPU71)で実行される駐車制御処理を示すフローチャートであり、図6は、図5の駐車制御処理の中で実行される旋回パターン選択処理(S503)を示すフローチャートであり、図7は、図5の駐車制御処理の中で実行される車両回避処理(S518)を示すフローチャートであり、図8は、図5の駐車制御処理の中で実行される通常駐車制御処理(S507)を示すフローチャートである。
この旋回制御処理は、運転者により自動駐車開始スイッチ42が押下(オン)されると共に、所望する入庫向き(前進又はバック)に応じたスイッチ(前進スイッチ40又は後進スイッチ41)が押下(オン)されたことによって起動する処理であり、まず、初期設定として、駐車継続フラグ73a及び回避中フラグ73bをオフする(S501)。
次いで、車両1が停止状態であるか否かを確認し(S502)、ここで、車両1が停止状態でなければ(S502:No)、停止を促す表示をLCD46に表示し(S509)、この駐車制御処理を終了する。運転者は、この表示を確認することによって、車両1を停止させた後、再度、駐車制御処理を実行させることができる。
一方で、S502の処理により確認した結果、車両1が停止状態にあれば(S502:Yes)、旋回パターン選択処理を実行する(S503)。この旋回パターン選択処理(S503)は、車両の周囲状況を把握した上で、旋回パターンテーブル74aに記憶されている旋回中心と旋回パターンの中から、車両1が目標駐車枠110に駐車するに最適な旋回中心と旋回パターンとを選択する処理である。
ここで、図6のフローチャートを参照して、この旋回パターン選択処理(S503)について説明する。図6に示すように、旋回パターン選択処理(S503)では、まず、GPS受信機47に受信されたGPS衛星(非図示)からの位置情報(緯度及び経度情報)に基づいて、車両1の現在位置を取得する(S601)。
S601の処理後、車両1の現在位置周辺の駐車場に対応する駐車場データを、地図DB74bから読み出し(S602)、読み出した駐車場データから、目標駐車枠110の位置を取得する(S603)。なお、S603において、目標駐車枠110は、例えば、読み出した駐車場データに基づいてLCD46に表示された画面からユーザの指示によって選択される。
S603の処理後、S601で取得された車両1の現在位置と、地図DB74bから読み出された駐車場データとを用いて、自車(車両1)と目標駐車枠110との相対的位置を計算する(S604)。
S604の処理後、車載カメラ44とレーザレーダ装置45とを用いて、自車(車両1)の周辺の静的障害物に関する情報を取得する(S605)。なお、「静的障害物」は、その場に静止している障害物を意味し、その場に固定(固設)されている物体だけでなく、一時的な停止によって静止している静止物などが含まれる。静的障害物としては、例えば、壁や柵などの建造物や、縁石や固定された置物などの固定(固設)物や、停車中の他車両や一時的にその場に置かれた荷物などの種々の静止物が挙げられる。
S605の処理後、S604での計算によって取得された自車(車両1)と目標駐車枠110との相対的位置に基づいて、旋回パターンテーブル74aの中から旋回可能な旋回パターンを抽出する(S606)。
なお、S606において旋回パターンを抽出する際、旋回パターンテーブル74aにおけるいずれのテーブル(前進左旋回用テーブル74a11、前進右旋回用テーブル74a12、後進左旋回用テーブル74a21、後進右旋回用テーブル74a22)が用いられるかは、前進スイッ40又は後進スイッチ41の操作状況と、車両1と目標駐車枠110との相対的位置とに従う。
S606の処理後、S605で取得された静的障害物に関する情報を参照し、S606で抽出された旋回パターンの中から、静的障害物から最も離れて旋回可能な旋回パターンを選択し(S607)、この旋回パターン選択処理(S503)を終了する。
よって、この旋回パターン選択処理(S503)の結果として、車両1は、その車両1の周囲に存在する静的障害物を避けつつ、目標駐車枠110へ向けて旋回されることになるので、駐車の際に、車両1は、周囲の静的障害物と衝突や接触することなく安全に旋回できることになる。
再度、図5に戻って説明する。旋回パターン選択処理(S503)の実行後、旋回パターン選択処理(S503)により旋回パターンが選択されたかを確認し(S504)、ここで、旋回パターン選択処理(S503)によって旋回パターンが選択されなかった場合には(S504:No)、現在の状況において使用可能な旋回パターンが旋回パターンテーブル74aに存在しなかったことを示すので、実行中の駐車制御処理による自動駐車が不可能であることをLCD46に表示し(S510)、この駐車制御処理を終了する。運転者は、この表示を確認することによって、自動制御による旋回が困難であることを認識し、ハンドル51の切り返しを繰り返して旋回させたり、あるいは他の方法をとることによって対処したりすることができる。
一方で、S504の処理により確認した結果、旋回パターン選択処理(S503)によって旋回パターンが選択されている場合には(S504:Yes)、車両1の前後左右に設けられた車載カメラ44で連続的に撮像し(S505)、得られた連写画像を用いる画像認識によって、動的障害物が検出されたかを確認する(S506)。
ここで、「動的障害物」は、刻々と移動する障害物を意味する。なお、本実施形態では、動的障害物を、歩行者か、移動中の車両(自動車(自動二輪車や三輪以上の車輪を有する自動車)や原動機付き自転車や自転車など)かのいずれかに区別するものとする。
S506の処理により確認した結果、動的障害物が検出されなかった場合には(S506:No)、選択された旋回パターンに従う旋回動作を行う通常駐車制御処理(S507)を実行し、S508へ移行する。なお、この通常駐車制御処理(S507)の具体的処理については、図8を参照しつつ後述する。
また、S506の処理により確認した結果、動的障害物が検出された場合には(S506:Yes)、駐車継続フラグ73aがオンであるかを確認し(S511)、駐車継続フラグ73aがオンである場合には(S511:Yes)、動的障害物が検出されているにもかかわらず、駐車継続スイッチ43の押下(オン)によって、通常駐車制御処理(S507)の強制実行が指示されていることを示すので、通常駐車制御処理(S507)へ移行する。
一方で、S511の処理により確認した結果、駐車継続フラグ73aがオフである場合には(S511:No)、S512へ移行し、S512〜S518による動的障害物に対する各処理を実行する。
よって、駐車継続フラグ73aがオフである場合には(S511:No)、次いで、レーザレーダ装置45を用いて、自車(車両1)と検出された動的障害物との距離を計測する(S512)。
S512の処理後、自車と動的障害物との距離が閾値以下であるかを確認する(S513)。なお、S513において、自車と動的障害物との距離に対して比較される閾値は、動的障害物に対する安全性を保障できる値(例えば、7m)とされている。
なお、検出された動的障害物が複数存在する場合には、S513では、車両1に最も近くに位置する動的障害物に対し、その動的障害物までの距離が閾値以下であるかを確認すればよい。あるいは、全ての動的障害物に対し、閾値以下となる距離が少なくとも1つ存在するかを確認するような構成であってもよい。
ここで、S513の処理により確認した結果、自車と動的障害物との距離が閾値を越える場合には(S513:No)、検出された動的障害物と自車(車両1)との距離が、安全性を保障する程度に遠く離れていることを示すので、通常駐車制御処理(S507)へ移行し、選択された旋回パターンに従う旋回動作を行う。
よって、自車と動的障害物との距離が閾値を越える場合には、車両1が停止されることなく、必ず旋回動作が実行されるので、無駄に車両1の旋回が妨げられることがなく、効率的に旋回動作が実行されるのである。
また、安全性を保障できる距離以上の位置にある動的障害物をも検出対象にするということは、換言すれば、安全性を保障できない範囲を含む広い範囲で動的障害物を検出するということであり、動的障害物に対して発生し得る事故を高精度に防止することができる。
一方で、S513の処理により確認した結果、自車と動的障害物との距離が閾値以下である場合には(S513:Yes)、自車が停止状態であるかを確認し(S514)、停止状態でない、即ち、通常旋回制御処理(S507)の実行による旋回動作中であれば(S514:No)、全ての車輪2(2FL〜2RR)をそれぞれ制動し、自車(車両1)を停止させ(S515)、S516へ移行する。
従って、動的障害物が検出された場合には、例え、車両1が停止状態にない場合であっても、S515の処理によって、必ず車両1の停止が図られることになる。その結果として、車両1が、予期せずに出現する動的障害物と接触したり衝突したりすることを確実に防止することができる。
一方で、S514の処理により確認した結果、自車が停止状態であれば(S514:Yes)、S515をスキップして、S516へ移行する。
S516では、車載カメラ44による動的障害物を含む撮像画像と、マッチングパターンメモリ74cに記憶されている検出用マッチングパターンとの比較を行う。S516の処理後、動的障害物が歩行者であるかを確認し(S517)、歩行者でなく移動中の車両(移動中の他車)であれば(S517:No)、その移動中の車両に対する回避処理を行う車両回避処理を実行し(S518)、S508へ移行する。なお、この車両回避処理(S518)の具体的処理については、図7を参照しつつ後述する。
一方で、S517の処理により確認した結果、動的障害物が歩行者である場合には(S517:Yes)、車両回避処理(S518)を行うことなく、S508の処理へ移行する。
S508では、駐車完了、即ち、車両1が目標駐車枠110の範囲内における適切な位置に納まったかを確認する。なお、S508において、駐車完了か否かの判断は、車両1の車載カメラ44(前方又は後方)による撮像画像やレーザレーダ装置45(前方又は後方の)による検出結果に基づいて、車両1が、目標駐車枠110の車両進入方向の端部を越えない適切な位置に到達したか否かを判断することによって行うことができる。
S508の処理によって、未だ駐車完了が確認されない場合には(S508:No)、S505へ移行し、車載カメラ44を用いる動的障害物の検出が行われ、動的障害物が存在するか否かに応じた処理が実行される。即ち、動的障害物が存在しない場合には、通常駐車制御処理(S507)が実行され、動的障害物が検出された場合には、動的障害物に対する各処理(S512〜S518)が実行される。
そして、S508の処理によって、駐車完了が確認されると(S508:Yes)、この駐車制御処理を終了する。
従って、この駐車制御処理によれば、S517の処理の結果として、動的障害物として歩行者が確認された場合には、動的障害物との自車(車両1)との距離が、安全性を保障する程度に遠く離れたことが確認されるか、動的障害物が確認されなくなるまで、車両1の停止が継続されることになる。よって、行動の予測がし難い歩行者が動的障害物として出現したとしても、対歩行者事故を確実に防止できるのである。
次に、図7のフローチャートを参照して、上記した車両回避処理(S518)について説明する。この車両回避処理(S518)では、まず、車載カメラ44で他車両を撮像し(S701)、その撮像画像に基づいて、他車両が停止状態であるかを確認する(S702)。
S702の処理により確認した結果、他車両が停止状態である場合には(S702:Yes)、駐車継続スイッチ43が押下(オン)されたかを確認する(S703)。多くの場合において、駐車継続スイッチ43は、動的障害物となる他車両の運転車との意思疎通に基づき、先に駐車枠110への入庫を許可された場合に押下されるので、S703では、他車両が検出されたことによって停止された車両1に対し、停止を解除し、通常駐車制御処理(S507)の強制実行の意思を確認することになる。
S703の処理により確認した結果、駐車継続スイッチ43がオンされた場合には(S703:Yes)、駐車継続フラグ73aをオンし(S714)、図5の通常駐車制御処理(S507)へ移行する。
一方で、S703の処理により確認した結果、駐車継続スイッチ43がオフである場合には(S703:No)、回避フラグ73bがオンであるかを確認する(S704)。S704の処理により確認した結果、回避フラグ73bがオフ、即ち、現在において他車両に対する回避中でない場合には(S704:No)、駐車場データに含まれる取り付け車路120の幅(車路幅)が、(自車の幅(自車幅)+他車両の幅(他車幅)+定数α)の値以上であるかを確認する(S715)。
S715において、自車(車両1)の幅としては、例えば、非図示の自車両データベースに記憶されている値を使用することができ、他車両の幅としては、S701で撮像した他車両の撮像画像を用いて得られた値を使用することができる。また、自動回避制御による確実な回避を保障するために、数メートル程度(例えば、2m程度)の値が定数αとしては付与されている。
S715の処理により確認した結果、(車路幅)<(自車幅+他車幅+α)である場合には(S715:No)、自動回避が不可能であることをLCD46に表示し(S716)、図5の駐車制御処理に戻って、駐車制御処理を終了する。運転者は、この表示を確認することによって、自動制御による回避が困難であることを認識し、ハンドル51の切り返しを繰り返して旋回させたり、あるいは他の方法をとることによって対処したりすることができる。
一方で、S715の処理により確認した結果、(車路幅)≧(自車幅+他車幅+α)である場合には(S715:Yes)、回避中フラグ73bをオンし(S717)、S705の処理へ移行する。
また、S704の処理により確認した結果、回避フラグ73bがオン、即ち、現在において他車両に対する回避中である場合もまた(S704:Yes)、S705の処理へ移行する。
S705では、車載カメラ44による撮像画像を用いて、取り付け車路120の長さ方向に対する自車(車両1)の相対角度を検出する(S705)。この場合、前後左右の車載カメラ44の撮像画像から総合的に、取り付け車路120の車路長方向に対する自車(車両1)の相対角度を検出する。
S705の処理後、検出された相対角度が0°であるか、即ち、取り付け車路120の車路長方向に対して車両1が平行であるかを確認し(S706)、相対角度が0°でなければ(S706;No)、相対角度が0°に近づく方向に、自車(車両1)が所定量だけ移動(旋回及び/又は前後進)するように、アクチュエータ装置4(アクチュエータ4FL〜4RR)と車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の制御によって、各車輪2(2FL〜2RR)の舵角と回転方向を制御する(S718)。
S718の処理後、この車両回避処理(S518)を終了し、図5の駐車制御処理におけるS508の処理へ移行する。
従って、S718の処理後に車両回避処理(S518)を終了した場合には、駐車継続スイッチ43が押下(オン)されず、かつ、安全性を保障しない領域に存在する他車両が検出される限り、車両回避処理(S518)が再度実行される。その際、S718の処理によって、車両1は、取り付け車路120の長さ方向に対する自車の相対角度が0°に近づくように、旋回及び/又は前後進されて、所定量ずつ移動される。
そして、S706において、取り付け車路120の長さ方向に対する自車(車両1)の相対角度が0°であることが確認されると(S706:Yes)、次いで、車載カメラ44による撮像画像を用いて、取り付け車路120上における自車(車両1)と他車両との位置関係を検出する(S707)。
S707の処理後、検出された位置関係に基づいて、他車が自車(車両1)の存在下であっても取り付け車路120を通行可能かを確認し(S708)、通行可能でなければ(S708:No)、自車(車両1)が取り付け車路120上における近い側の縁端に向けて、自車(車両1)が所定量だけ平行移動するように、アクチュエータ装置4(アクチュエータ4FL〜4RR)と車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の制御によって、各車輪2(2FL〜2RR)の舵角と回転方向を制御する(S719)。
S719の処理後、この車両回避処理(S518)を終了し、図5の駐車制御処理におけるS508の処理へ移行する。
従って、S719の処理後に車両回避処理(S518)を終了した場合には、駐車継続スイッチ43が押下(オン)されず、かつ、安全性を保障しない領域に存在する他車両が検出される限り、車両回避処理(S518)が再度実行される。その際、取り付け車路120の長さ方向に対する自車の相対角度が0°である場合には、S719の処理によって、車両1は、自車(車両1)を取り付け車路120上における近い側の縁端に向けて所定量だけ平行移動される。
そして、S708において、他車が自車(車両1)の存在下であっても取り付け車路120を通行可能であることが確認されると(S708:Yes)、次いで、自車が停止状態であるかを確認し(S709)、停止状態でない場合には(S709:No)、全ての車輪2(2FL〜2RR)をそれぞれ制動し、自車(車両1)を停止させ(S710)、S711へ移行する。
一方で、S709の処理により確認した結果、自車が停止状態であれば(S709:Yes)、S710をスキップして、S711へ移行する。
S711では、上記した旋回パターン選択処理(S503,図3参照)と同様の旋回パターン選択処理を実行する。従って、旋回パターンに従って旋回動作中の車両1が、動的障害物として他車両を検出し、その他車両を回避する目的で実行されるS718やS719の処理の結果として移動された場合であっても、他車回避後の位置から目標駐車枠110へ入庫するのに最適な旋回パターンが再度決定される。よって、目標駐車枠110への入庫中に、車両1の近辺を移動する他車両が検出されたとしても、運転者には負担を強いることなく、検出された他車両を避けた上で、安全かつ容易に車両1を旋回させて目標駐車枠110へ入庫することができるのである。
旋回パターン選択処理(S711)の実行後、この旋回パターン選択処理(S711)により旋回パターンが選択されたかを確認し(S712)、旋回パターンが選択されなかった場合には(S712:No)、現在の状況において使用可能な旋回パターンが旋回パターンテーブル74aに存在しなかったことを示すので、実行中の駐車制御処理による自動駐車が不可能であることをLCD46に表示し(S720)、図5の駐車制御処理に戻って、駐車制御処理を終了する。運転者は、この表示を確認することによって、自動制御による旋回が困難であることを認識し、ハンドル51の切り返しを繰り返して旋回させたり、あるいは他の方法をとることによって対処したりことができる。
一方で、S712の処理により確認した結果、旋回パターン選択処理(S711)によって旋回パターンが選択されている場合には(S712:Yes)、回避中フラグ73bをオフして(S713)、この車両回避処理(S518)を終了する。
また、S702の処理により確認した結果、他車両が停止状態でなく、移動状態である場合もまた(S702:No)、この車両回避処理(S518)を終了する。
よって、安全性を保障する領域以下、即ち、安全性を保障しない領域に存在する他車両(動的障害物)が検出されたとしても、該他車両が移動中である間は、車両1は他車両回避のための動作(移動)を行うことなく、停止の状態を継続する。従って、自車両(車両1)と他車両との同時移動に起因する車両間の事故の発生を防止することができる。
次に、図8のフローチャートを参照して、上記した通常駐車制御処理(S507)について説明する。この車通常駐車制御処理(S507)では、まず、GPS受信機47に受信されたGPS衛星(非図示)からの位置情報(緯度及び経度情報)に基づいて、車両1の現在位置を取得する(S801)。
S801の処理後、S801で取得された車両1の現在位置と、S602において既に読み込み済みの駐車場データとを用いて、自車(車両1)と目標駐車枠110との相対的位置を計算する(S802)。
S802の処理後、S503又はS711の旋回パターン決定処理によって選択された旋回中心及び旋回パターンに従い、各車輪2(2FL〜2RR)の舵角及び回転方向を計算し(S803)する。
S803の処理後、算出した舵角及び回転方向に基づいて、アクチュエータ装置4(アクチュエータ4FL〜4RR)と車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)の制御によって、各車輪2(2FL〜2RR)の舵角と回転方向を制御し(S804)、この通常駐車制御処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態の制御装置10によれば、その制御装置10が搭載される車両1と停車領域である目標駐車枠110との相対的位置関係と、該車両1の周辺にある静的障害物とに基づいて、適切な旋回中心及び旋回パターンを探索するので、車両1の周囲にある静的障害物の存在状況が、運転者のハンドル操作及びアクセル操作で車両を旋回させることが困難な状況であったり、旋回範囲が限定されるような状況であったりしても、探索された旋回中心及び旋回パターンで旋回されるように各車輪をそれぞれ独立して操舵するように制御がなされ、その結果として、車両1に適切な自動駐車動作を行わせ、目標駐車枠110へ確実に入庫させることができる。
また、車両1が、各車輪2(2FL〜2RE)の操舵駆動と回転駆動が、それぞれ、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRとFL〜RRモータ3FL〜3RRとによって独立して行われる車両として構成されているので、目標駐車枠110への入庫の際に車両1の旋回が必要とされる場合であっても、運転者による切り返し操作を行うことなく容易に入庫することができるのである。
また、車両1の周囲の状況に応じた適切な旋回中心及び旋回パターンで旋回されるように、各車輪2(2FL〜2RR)がそれぞれ独立して操舵制御されるので、運転者に負担を強いることなく、適切に各車輪が操舵され、その結果として、適切に車両を目標駐車枠110へ入庫させることができる。
また、選択された旋回中心及び旋回パターンに従って車両1の旋回を開始する直前から、車両1が目標駐車枠110に到達(駐車完了)するまでの間、車載カメラ44の撮像画像を用いて動的障害物の検出(監視)が行われるので、自動駐車動作をする車両1と、予期せずに突然出現する動的障害物を確実に検出することができる。
さらに、動的障害物の監視の結果として、車両1の周囲に予期しない動的障害物が検出された場合には、旋回動作中の車両1の停止が図られるので、出現した動的障害物との接触や衝突を確実に防止することができる。
また、動的障害物の監視の結果として検出された動的障害物が歩行者である場合には、動的障害物の監視の結果として、該歩行者が不検出とされるまで、自動駐車動作の中断、即ち、車両1の停止されるので、行動の予測がし難い歩行者が動的障害物として出現したとしても、対歩行者事故を確実に防止できるのである。
また、動的障害物の監視の結果として検出された動的障害物が他車両であった場合には、車両1又は他車両のいずれか一方が他方の車両を回避することができるのであれば、自車両(車両1)又は他車両が移動可能となる位置まで車両1を移動させるので、通路(取り付け車路120など)上での混雑を抑制し、結果的にスムーズな目標駐車枠110への到達を可能とするのである。
ここで、車両1が回避目的で移動された後には、再度、車両1が目標駐車枠110へ入庫するのに適切な旋回中心及び旋回パターンが探索される。よって、目標駐車枠110への入庫中に、車両1の近辺を移動する他車両が検出されたとしても、運転者には負担を強いることなく、検出された他車両を避けた上で、安全かつ容易に車両1を旋回させて目標駐車枠へ入庫することができるのである。
なお、請求項1記載の自動駐車手段としては、通常駐車制御処理(S507)が該当し、請求項1記載の動的障害物判定手段としては、S506の処理が該当し、請求項1記載の駐車制御手段としては、S514,S515の処理が該当する。
また、請求項1記載の種別検出手段としては、S516,S517の処理が該当する。
また、請求項1記載の回避判定手段としては、S715の処理が該当し、請求項1記載の移動手段としては、S718,S719の処理が該当する。
また、請求項3記載の距離計測手段としては、S512の処理が該当し、請求項3記載の駐車制御禁止手段としては、S513におけるNoの分岐処理が該当する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
また、上記実施形態では、本発明の駐車制御装置(制御装置10)が搭載される車両1を、各車輪2(2FL〜2RE)の操舵駆動と回転駆動が、それぞれ、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRとFL〜RRモータ3FL〜3RRとによって独立して行われる車両として構成したが、車両の種類はこれに限定されるものではない。即ち、ハンドル操作とアクセル操作とに応じた軌跡で移動する現在において一般的に普及しているタイプの車両に本発明の駐車制御装置(制御装置10)を搭載する構成であってもよい。
なお、現在において一般的に普及しているタイプの車両に本発明の駐車制御装置(制御装置10)を搭載する場合には、制御装置10は、ハンドルの切り返し操作を模倣すべく、車載カメラ44によって静的障害物を検出しながら、駆動輪に付与した舵角を適宜変更しつつ前後進させるように制御すればよい。この場合、旋回パターンテーブル74aの代わりに、駆動輪に付与した舵角に応じた軌跡パターンを記憶する軌跡パターンテーブルを備えるように構成すればよい。
また、上記実施形態では、車両1の周囲における障害物情報(静的障害物、動的障害物)を得るために、車両1の前後左右に配置した車載カメラ44の撮像画像を利用したが、車載カメラ44としては、車両1の屋根部分の上方に周囲360°の状況を撮像可能な魚眼レンズを1つ配置するように構成してもよい。また、複数の車載カメラ44を用いる場合には、その数を4以上に増やして総合的に障害物情報を得るように構成してもよい。
また、車載カメラ44に換えて赤外線センサなどの各種センサやレーダなどの対物検出装置を用いて障害物情報(静的障害物、動的障害物)を得るように構成してもよい。また、車載カメラ44及び対物検出装置の両方を併用して障害物情報を得るように構成してもよい。
また、上記実施形態では、レーザレーダ装置45を用いて動的障害物との距離を計測するように構成したが、赤外線センサや超音波センサなど、他の対物検出装置の使用によって動的障害物との距離を検出するように構成してもよい。また、車載カメラ44などによる撮像画像を利用して動的障害物との距離を検出するように構成してもよい。
また、上記実施形態では、車載カメラ44による撮像画動的障害物を含む撮像画像と、マッチングパターンメモリ74cに記憶されている検出用マッチングパターンとの比較とによって、動的障害物の種別を判定するように構成したが、赤外線サーモグラフなどの対物温度分布検出装置を利用するように構成してもよい。その際には、動的障害物となり得る物体の温度分布を記憶するデータベースを制御装置10に設けるように構成すればよい。
また、上記実施形態では、旋回パターンとして、x方向はみ出し量Exとy方向はみ出し量Eyとを用いたが、より詳細な旋回軌跡のデータを移動可能領域マップと比較するように構成してもよい。また、車両1の周囲に無限に存在する旋回中心に対し、演算によって旋回軌跡を求め、移動可能領域マップと比較するように構成してもよい。
また、上記実施例では、動的障害物を歩行者又は車両の2区分に分け、歩行者であるか車両であるかに応じた制御を行うように構成したが、動的障害物の特徴に応じてさらに区分を細分化し、各区分に最適な制御を行うように構成してもよい。
また、上記実施形態では、動的障害物を監視するための処理(S505,S506)の実行タイミングについては特に言及しなかったが、動的障害物を監視するための処理の実行タイミングは、定期的又は不定期であることのいずれかを限定するものではない。即ち、完全に定期的なタイミングであっても、全く不定期なタイミングであってもよい。あるいは、定期的なタイミングの中に不定期なタイミングが混在する形態であってもよい。
また、上記実施形態では、旋回パターン選択処理(S501又はS711)において、旋回可能と判断された旋回中心及び旋回パターンの中から、車両1が静的障害物から最も離れて旋回できる旋回中心及び旋回パターンを選択するように構成したが、旋回可能な旋回中心及び旋回パターンであれば、どの旋回中心及び旋回パターンが選択されてもよい。
また、車両1が静的障害物から最も離れて旋回できる旋回中心及び旋回パターンではなく、車両1ができる限り緩やかな軌跡で旋回されるような旋回中心及び選択パターンを選択するように構成してもよい。車両1ができる限り緩やかな軌跡で旋回されるような旋回中心及び選択パターンを選択した場合、車輪2(2FL〜2RR)の磨耗抑制を図ることが可能となる。