以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明による車両制御装置の一実施の形態を示す図である。図1では、車両制御装置としての制御装置100と、その周辺装置とを示すブロック図である。図1に例示される制御装置100aは、自車両を制御するコンピュータであって、不図示の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することにより、周辺環境認識部1、目標経路生成部2、衝突予測部3、車両制御部4、再発進判定部5として機能する。なお、制御装置100aは記憶部6を有している。
制御装置100aは、自車両の操舵装置102、駆動装置103、および制動装置104と、自車両に設けられた外環境認識装置101、音発生装置105、表示装置106、自動運転ボタン107および再発進確認ボタン108に接続されている。また、制御装置100aは、自車両のCAN(不図示)などに接続されており、そのCANを介して自車両の車速、舵角、ギア位置などの車両情報が入力される。
外環境認識装置101は、自車両の周囲環境に関する情報を取得するものであって、例えば、自車両の前方、後方、右側方、左側方の周囲環境をそれぞれ撮影する4個の車載カメラである。外環境認識装置101(車載カメラ)により得られた画像データは、アナログデータのまま、もしくはA/D変換されて、専用線などを用いて制御装置100aに入力される。外環境認識装置101としては、車載カメラ以外にもミリ波やレーザーを用いて物体との距離を計測するレーダ、超音波を用いて物体との距離を計測するソナー等を用いることができる。外環境認識装置101は、得られた物体との距離、物体の方角等の情報を、専用線などを用いて制御装置100aに出力する。
操舵装置102は、制御装置100aの駆動指令により電動や油圧のアクチュエータなどで舵角を制御することの可能な電動パワーステアリング、油圧パワーステアリング等で構成される。駆動装置103は、制御装置100aの駆動指令により電動のスロットルなどでエンジントルクを制御することの可能なエンジンシステムや、制御装置100aの駆動指令により駆動力を制御することが可能な電動パワートレインシステム等で構成される。制動装置104は、制御装置100aの駆動指令により電動や油圧のアクチュエータなどで制動力を制御することの可能な電動ブレーキや油圧ブレーキ等で構成される。
音発生装置105は、スピーカー等で構成され、運転者に対する警報や音声ガイダンス等の出力に用いられる。表示装置106は、ナビゲーション装置等のディスプレイ、メーターパネル、警告灯等で構成される。表示装置106には、制御装置100aの操作画面のほか、自車両が障害物に衝突する危険があることなどを運転者に視覚的に伝える警告画面等が表示される。
自動運転ボタン107は、運転者が操作可能な位置に設けられた操作部材であって、運転者の操作に基づいて、制御装置100aの動作を開始させる開始信号を制御装置100aへ出力する。なお、自動運転ボタン107にモード切り替えスイッチを設けて、自動駐車モード、一般道自動運転モード、高速道自動運転モード等の複数の走行モードを切り替えられるようにしてもよい。さらには、制御装置100aの動作が行われている最中に自動運転ボタン107を操作することで、制御装置100aの動作を終了するように構成してもよい。再発進確認ボタン108は、運転者が操作可能な位置に設けられた操作部材である。この再発進確認ボタン108が運転者によって操作されると、制御装置100aの再発進の動作を指示する信号が制御装置100aの再発進判定部5に入力される。
なお、自動運転ボタン107および再発進確認ボタン108は、ステアリング周辺の運転者が操作しやすい場所にスイッチとして設置される。また、表示装置106がタッチパネル式のディスプレイの場合には、表示装置106に自動運転ボタン107および再発進確認ボタン108に相当するボタンを表示して、運転者が操作できるようにしてもよい。
次に、制御装置100aの各構成を説明する。上述したように、制御装置100aには外環境認識装置101(車載カメラ)により得られた画像データが入力される。周辺環境認識部1は、外環境認識装置101から入力された画像データを用いて、自車両周辺の静止立体物、移動体、駐車枠線等の路面ペイント、標識等の物体の形状や位置を検出し、さらに、路面の凹凸等を検出して自車両が走行可能な路面であるか否かの判定機能を持つ。
静止立体物とは、例えば、駐車車両、壁、ポール、パイロン、縁石、車止めなどである。また、移動体とは、例えば、歩行者、自転車、バイク、車両などである。以降、静止立体物と移動体の二つをまとめて障害物と呼ぶ。物体の形状や位置は、パターンマッチング手法やその他の公知技術を用いて検出される。物体の位置は、例えば、自車両の前方を撮影する車載カメラの位置に原点を有する座標系を用いて表現される。
また、周辺環境認識部1は、検出した物体の形状や位置に関する情報と、自車両が走行可能な路面であるか否かの判定結果とに基づいて、例えば、駐車場の場合であれば、自車両を駐車させることができる空間、駐車可能スペース等を検出する。また、一般道を走行する場合であれば、走行可能な車線位置や交差点の旋回可能スペース等を検出する。
目標経路生成部2は、現在の自車位置から目標位置に自車両を移動するための経路を生成する。例えば、駐車場の場合では、自車両と障害物との位置関係から自車両を駐車する目標駐車位置を駐車可能スペース内に設定し、そこまでの経路を生成する。また、一般道を走行する場合には、地図データを持つナビゲーション装置等を利用して目的地を設定し、目的地に向かって走行する際の自車両と障害物との位置関係や車線位置等の情報から経路を生成する。
衝突予測部3は、目標経路生成部2が生成した経路に沿って自車両が走行したときに、自車両が障害物と衝突するか否かを判断する。衝突予測部3は、周辺環境認識部1の認識結果に基づいて移動体の移動経路を推測し、自車両の経路と移動体の予測経路との交点で自車両が移動体と衝突するか否かを判定する。
車両制御部4は、目標経路生成部2で生成した目標経路に沿って自車両を制御する。車両制御部4は、目標経路に基づいて目標舵角と目標速度を演算する。なお、衝突予測部3において自車両と障害物との衝突が予測される場合には、自車両が障害物に衝突しないように目標舵角と目標速度を演算する。そして、車両制御部4は、その目標舵角を実現するための目標操舵トルクを操舵装置102へ出力する。また、車両制御部4は、目標速度を実現するための目標エンジントルクや目標ブレーキ圧を駆動装置103や制動装置104へ出力する。
再発進判定部5は、運転者により操作された再発進確認ボタン108からの信号に基づいて自車両を再発進させるか否かを判断する。詳細は後述するが、運転者に再発進の前に自車両周辺の安全確認を行わせるため、音発生装置105により音声ガイダンスをしたり、表示装置106により視覚的に情報を提供したりする。さらに、運転者が自車両周辺の安全確認をしたか否かを判断する機能を有してもよい。
(制御装置100aの動作説明)
以下、駐車場での自動駐車シーンを例にとって、自車両を駐車場の駐車枠内に後ろ向きに駐車する場合の制御装置100aの動作について説明する。駐車場に進入した自車両の運転者が自動運転ボタン107を操作して自動駐車モードにすると、周辺環境認識部1が動作を開始して、駐車可能スペースの検出を開始する。
周辺環境認識部1には、毎フレームごとに外環境認識装置101(例えば、自車両の四方の周囲環境をそれぞれ撮影する4個の車載カメラ)から自車両の周囲を撮像した画像データが入力される。周辺環境認識部1は、外環境認識装置101から入力された画像データを用いて、公知の手法により、自車両の周囲環境に関する俯瞰画像を生成する。周辺環境認識部1は、その俯瞰画像から駐車可能スペースを検出する。
図2(a)は、周辺環境認識部1が生成した自車両の周囲環境に関する俯瞰画像の一例を示したものである。図2(a)に例示する俯瞰画像では、自車両200の右側に駐車枠線203で区切られ、車止め204が設けられた3台分の並列駐車用の駐車スペースが存在している。3台分の駐車スペースのうち、左側と右側の駐車スペースにはそれぞれ駐車車両201,202が存在する。中央の駐車スペースには、駐車車両が存在せず、自車両200を駐車することができる。自車両200の左側には5個のパイロン205が存在しており、自車両200の前方左側には自車両200に近づく歩行者206が存在している。
周辺環境認識部1は、それぞれのカメラからの画像と俯瞰画像に対して公知のパターンマッチング手法等を用いて、駐車車両201,202と、駐車枠線203と、車止め204と、パイロン205と、歩行者206とを検出して、それらの位置に関する情報を取得する。例えば、周辺環境認識部1は、図2(b)に示すように駐車車両201,202およびパイロン205をそれぞれ矩形211,212および矩形215として認識し、それらの角の座標をそれぞれ取得する。また、周辺環境認識部1は、駐車枠線203、車止め204をそれぞれ線分213、線分214として認識し、その両端の座標をそれぞれ取得する。さらに周辺環境認識部1は、歩行者206を点216として認識し、その座標を取得する。
また、周辺環境認識部1は、複数フレーム分の画像から歩行者206の移動方向を検出して、その移動方向を表すベクトル218を取得する。周辺環境認識部1には、自車両200の形状に関する情報が予め設定されている。例えば、周辺環境認識部1には、自車両200を表す矩形210の角の座標が予め設定されている。なお、以降の説明では、自車両200を表す矩形210のことを自車両210と略記し、駐車車両201,202を表す矩形211,212のことを駐車車両211,212と略記することがある。
周辺環境認識部1は、例えば、図2(a)に示す俯瞰画像に基づいて、駐車枠線203で挟まれると共に車止め204が検出されていて、かつ自車両200よりも大きな領域を、駐車可能スペース217として検出する。図2(b)では、駐車可能スペース217は、矩形の領域として検出されている。周辺環境認識部1は、その領域の角の位置情報を算出する。
制御装置100aは、駐車可能スペース217が検出されると、運転者に対して自動駐車制御に切り替わること報知する。例えば、制御装置100aは、「自動駐車を開始し、右側の駐車スペースに並列駐車します。」というメッセージを音発生装置105や表示装置106から出力する。このとき、制御装置100aは、目標経路生成部2の処理を開始する。目標経路生成部2は、周辺環境認識部1が検出した駐車可能スペース217の中に目標駐車位置を設定して、自車両200の現在位置から目標駐車位置までの目標経路を演算する。以降、駐車運転開始に際して自動駐車制御に切り替わった位置を誘導開始位置と呼ぶ。
図3は、図2(a)に示す位置で自車両200が自動駐車制御に切り替わった場合の、目標経路生成部2が設定した目標駐車位置311(破線で示す)と、その目標駐車位置311までの目標経路を示す図である。目標経路生成部2は、目標駐車位置311を図2(b)に示した駐車可能スペース217の内側に設定する。
また、目標経路生成部2は、図3の自車両210を目標駐車位置311に後ろ向きに駐車するため、切り返し位置310を設定する。目標経路生成部2は、自車両210の誘導開始位置から切り返し位置310まで自車両210を前進させる前進経路300と、切り返し位置310から目標駐車位置311まで自車両210を後進させる後進経路301とを目標経路として設定する。
図3に示す前進経路300は、自車両210を左側に幅寄せするための旋回区間と、旋回を開始するまで誘導開始位置から直進する直進区間とを有する。目標経路生成部2は、直進区間の経路を直線で表し、旋回区間の経路をクロソイド曲線と円弧とを組み合わせて近似する。クロソイド曲線は、自車両210の速度を一定にし、自車両210の舵角を一定の角速度で変化させたときに自車両が描く軌跡を表す。円弧は、自車両210の速度を一定にし、自車両210の舵角を所定値(自車両が直進する舵角を除く)に固定して運転したときに自車両が描く軌跡を表す。
図3に示す後進経路301は、切り返し位置310から目標駐車位置311までクロソイド曲線と円弧とを組み合わせた曲線で表される。後進経路301の終点は、自車両210の後輪が車止め214に接触する直前の位置に設定される。
制御装置100aは、前進経路300と後進経路301とを演算すると、衝突予測部3の処理を開始する。衝突予測部3は、自車両が前進経路300および後進経路301に沿って移動したときに障害物と衝突するか否かを判定する。衝突予測部3は、周辺環境認識部1が検出した移動体の移動方向、例えば歩行者206の移動方向に基づいて、歩行者206が通過すると推測される推測経路を演算する。
図4は、衝突予測部3が生成した歩行者206の推測経路400の一例を示す図である。推測経路400は、歩行者206がベクトル218の示す方向にそのまま直進すると仮定した場合の推測経路である。
衝突予測部3は、自車両200が障害物に衝突するおそれがある位置として、前進経路300と推測経路400との交点401を算出する。衝突予測部3は、自車両200の目標経路(前進経路300)と歩行者206の推測経路400の交点401に自車両と歩行者がそれぞれ到達するまでの時間を算出し、両者がそれぞれ交点401に到達したときの位置関係から自車両200と歩行者206とが衝突するか否かを判定する。
衝突予測部3は、後進経路301についても同様に推測経路400との交点を算出して、自車両200と歩行者206とがその交点に到達するまでの時間を算出し、自車両200と歩行者206とが衝突するか否かを判定する。衝突予測部3は、自車両200が障害物に衝突すると判定した場合、その交点の位置を予測衝突位置として車両制御部4に出力する。
一方、衝突予測部3において自車両200が障害物と衝突しないと判定された場合、すなわち衝突予測部3から予想衝突位置が出力されていない場合、車両制御部4は、目標経路生成部2が生成した前進経路300と後進経路301とに沿って自車両200を誘導する。その場合、車両制御部4は、自車両200が前進経路300および後進経路301に沿って移動するように目標速度と目標舵角とを決定し、その目標舵角を操舵装置102へ出力し、目標速度を駆動装置103および制動装置104に出力する。
図5(a)は、衝突予測部3が前進経路300上において自車両200が障害物と衝突しないと判定した場合に、車両制御部4により実施される目標速度制御の一例を示す図である。図5(a)の横軸は、前進経路300に沿った位置を表し、縦軸はその位置での目標速度を表す。横軸の左端は誘導開始位置である。車両制御部4は、切り返し位置310の手前の減速開始位置から徐々に目標速度を低下させ、自車両200を切り返し位置310で停止させる。
前進経路300上で自車両200が障害物と衝突することを衝突予測部3が判定した場合、車両制御部4は、前進経路300上の交点401(予測衝突位置)から余裕距離YLだけ手前で自車両200を停止させて障害物との衝突を回避する。
図5(b)は、衝突予測部3において自車両200が障害物と衝突すると判定された場合に実施される、車両制御部4による目標速度制御の一例を示す図である。図5(b)の横軸は、前進経路300に沿った位置を表し、縦軸はその位置での目標速度を表す。図5(b)の横軸の左端は誘導開始位置である。図5(b)では、障害物との交点401(予測衝突位置)から余裕距離YLだけ手前の目標停止位置で自車両200が停止するように自車両200の目標速度を低下させる。
例えば、図6(a)のように自車両200が前進経路300に沿って前方に進行している場合、交点401で衝突することが予想されると、図6(b)に示すように交点401から余裕距離YLだけ手前の前進経路300上の位置で自車両200が停止するように自車両200の目標速度を低下させる。
ここで、余裕距離YLは、交点401(予測衝突位置)における自車両200の進行方向に基づいて変化させ、運転者が慎重に運転する状況ほど大きく設定されることが望ましい。例えば、自車両200が前進している場合と後進している場合とを比較すると、後進している場合の方がより慎重に運転する状況であると言える。そのため、後進の場合には、前進の場合に比べて予想衝突位置に対してより手前で停止することで、運転者に違和感を覚えさせないようにする。
次いで、図6(b)に示すように自車両200を停止させた後、歩行者206が自車両200の進行方向上から消失すると、再発進判定部5は、自動運転(自動駐車)を再開するために、歩行者206の歩行軌跡と自車両200との間の距離に基づいて自車両200の再発進を判断する。
図7は、歩行者206の歩行軌跡に関する2つのパターン示す図である。図7(a)は、停車している自車両200の前を歩行者206が横切って、歩行経路700で歩行したことを示している。また、このときの歩行者206が自車両200に最も接近したときの距離が701である。なお、図7(a)では、右端の駐車枠線203と重なっている歩行者206が分かりやすいように、右端の駐車枠線203を白抜き表示とした。
歩行者206が自車両200の進行方向上から消失すると、再発進判定部5は、自動運転(自動駐車)を再開するために、距離701が所定値(たとえば2m)以下であるか否かの判定を行う。再発進判定部5は、距離701が所定値よりも大きいと判定すると、車両制御部4に再発進の信号を送信する。再発進の信号を受信した車両制御部4は、再度、前進経路300に沿った自動運転を再開する。
図7(b)は、歩行経路710で歩行者206が自車両200の前を横切った場合を示す。この場合、距離711が、歩行者206が自車両200に最も接近したときの距離である。歩行者206が自車両200の進行方向上から消失すると、再発進判定部5は、自動運転(自動駐車)を再開するために、距離711が所定値(たとえば2m)以下であるか否かの判定を行う。
なお、上述した所定値としては、歩行経路700や歩行経路710のように歩行者が歩行して進行方向上から消失した場合に、運転者が歩行者を見失うことなく確認できるような距離が設定される。例えば、図7(b)のように、歩行者が自車両200に非常に接近するように通り過ぎた場合、身長の低い歩行者や動物(犬など)の場合には運転者が見失うおそれがある。そのため、運転者による安全確認が不十分となるおそれがある。そこで、所定値としては、そのような歩行者を見失わない距離が設定される。上述した例では、所定値を2mとして説明した。歩行者が自車両200から2mよりも大きく離れていれば、運転者は通過する歩行者を十分に視認することができる。
図7(b)の場合のように、距離711が所定値以下と判定されると、再発進判定部5は運転者に再発進の前に自車両200周辺の安全確認を行わせるため、音発生装置105に「車両周辺の安全確認を実施してください。」等の音声ガイダンスをさせたり、表示装置106のディスプレイ上に危険個所を表示させたりして、運転者に安全確認を促す。そして、運転者により再発進確認ボタン108が操作されると、再発進判定部5は車両制御部4に再発進の信号を送信する。再発進の信号を受信した車両制御部4は、前進経路300に沿った自動運転を再開させる。
なお、運転者が自車両200周辺の安全確認をしたか否かを判断する方法として、例えば、運転者の視線を検知するようにしても良い。詳細は後述するが、自車両200に運転者の視線を検出するカメラを搭載し、運転者が表示装置106のディスプレイを見て安全を確認したか否かをカメラにより確認する。ディスプレイを見たことが確認され、かつ運転者により再発進確認ボタン108が操作された場合には、再発進判定部5は車両制御部4に再発進の信号を送信する。このような動作を行わせることにより、安全確認の判定の確実性をより高めることができる。
図8は、図7(b)で説明したシーンと類似したシーンであり、複数の歩行者811が自車両200の直近を通過するが、一人の歩行者812だけ自車両200の脇に居残るシーンを想定している。このような状況下では、居残った歩行者812が身長の低い子供であった場合には、その歩行者812が障害物を検出するセンサの死角に入ってしまう場合がある。また、センサが単眼カメラの場合には、パターン認識精度の関係から歩行者812を検出できなかったりする場合がある。そのような場合、居残らなかった他の歩行者811が遠のいたことによって、自車両200の周辺から障害物が消失したと判断することがある。
このような場合、本実施の形態では、複数の歩行者811の歩行経路800から、自車両200に最も接近した時の距離801を演算し、その距離801が所定値(例えば、2m)以下と判断されれば、再発進判定部5は運転者に再発進の前に自車両200の安全確認を行わせる。それにより、運転者が居残った歩行者812を発見し、自動運転を手動で解除することができる。
図9は、図8で示した状況下で、再発進判定部5が運転者に再発進の前に自車両周辺の安全確認を行わせる場合を説明する図であり、自車両200に搭載されている表示装置106(ここではタッチパネル式のディスプレイ900)の表示例を示す。ディスプレイ900の左側領域には自車両200を中心とした俯瞰画像901が表示され、ディスプレイ900の右側領域はメッセージ領域902とされている。メッセージ領域902には、再発進確認ボタン108の機能を有する再発進確認OKボタン904と、自動運転ボタン107の機能を有する自動運転中止ボタン905が配置されている。
上述した図8の状況下では、周辺環境認識部1において、複数の歩行者811が自車両200の左側から自車両200に近づき、自車両200の右側に抜けていく経路を取っていることが認識されるので、例えば、領域903の輝度値を変化させる等して、運転者の注意をひくようにする。そのような表示を行うことで、運転者は自車両200の右側前方に歩行者812が存在することに気付くので、不注意に再発進させてしまうのを防止することができ、歩行者812に衝突する事故を防止できる。
歩行者812が移動して自車両200周辺の安全を確認した後、運転者の判断で再発進確認OKボタン904を操作すると、自車両200は再発進する。再発進すると、自動運転中断中の表示や、再発進確認OKボタン904の表示が消え、例えば、自動運転中の表示が表示される。
なお、図9で示した状況から歩行者812が移動しない場合は、運転者の判断で自動運転中止ボタン905を操作して自動運転を解除することもできる。自動運転が解除されると、例えば、自動運転中止ボタン905は自動運転開始のボタンに表示が変わる。
以上説明したように、自車両200が停止中に、歩行者206が自車両200に最も接近した距離701,711に基づいて再発進の方法を切り替えることで障害物との衝突の可能性を低減しつつ、かつ、運転者に煩わしさを与えない自動運転が可能となる。
図10および図11は、制御装置100aの処理手順の一例を示すフローチャートであり、自動運転ボタン107が操作されると、図10,11のフローチャートで示す制御プログラムが実行される。図10,11の処理は所定時間間隔(例えば、0.01秒間隔)で繰り返し実行される。そして、自動運転中止の操作が行われると(例えば、図9の自動運転中止ボタン905が操作されると)、上記繰り返し実行が停止され自動運転が中止される。
ステップS1005では、制御装置100aは自動運転中か否かの判断をする。例えば、上述した自動運転ボタン107が操作され、その後、運転中止ボタン905が操作されるまでは自動運転中と判定され、自動運転ボタン107が操作された後に運転中止ボタン905が操作されると、自動運転中でないと判定される。ステップS1005で自動運転中と判断されるまではステップS1005の処理が繰り返し実行され、自動運転中と判定されるとステップS1010に進む。
ステップS1010では、制御装置100aは、外環境認識装置101から画像データの取り込みを開始する。以降、毎フレームごとに外環境認識装置101から画像データを取り込む。
ステップS1020では、制御装置100aは、ステップS1010で取り込んだ画像データを周辺環境認識部1に入力し、自車両周辺の静止立体物や移動体(すなわち障害物)、駐車枠線等の路面ペイント、標識等の物体の形状や位置を検出する。また、検出した物体の形状や位置に関する情報と自車両が走行可能な路面であるか否かの判定結果に基づいて、例えば駐車場の場合であれば、自車両を駐車させることができる空間、駐車可能スペース等を検出する。また、一般道を走行する場合であれば、走行可能な車線位置や交差点の旋回可能スペース等を検出する。ステップS1025では、周辺環境認識部1により検出された情報、すなわち、障害物位置を含む検出情報を記憶部6に記憶させる。この記憶された障害物位置に基づいて、後述するように最接近距離の演算が行われる。
ステップS1030では、制御装置100aは、ステップS1020で検出された自車両周辺環境の情報に基づいて、現在の自車位置から目標位置に自車両を移動するための経路を生成する。例えば駐車場の場合では、自車両と障害物との位置関係から、自車両を駐車する目標駐車位置を駐車可能スペース内に設定して、経路を生成する。また、一般道を走行する場合には、地図データを持つナビゲーション装置等を利用して目的地を設定し、目的地に向かって走行する際に自車両と障害物との位置関係や車線位置等の情報から経路を生成する。
ステップS1040では、制御装置100aは、ステップS1030で生成した目標経路に基づき目標舵角と目標速度を演算する。前述したとおり、目標経路は、直線とクロソイド曲線と円弧とを組み合わせて構成されている。直線の軌跡については、制御装置100aは、自車両が直進方向に目標速度で走行するように目標舵角と目標速度とを設定する。また、クロソイド曲線の軌跡については、制御装置100aは、自車両の走行軌跡がクロソイド曲線となるように、目標舵角を所定の角速度で変化させると共に、目標速度を所定の速度に設定する。制御装置100aは、円弧の軌跡については、自車両の走行軌跡が円弧となるように、目標舵角を所定の舵角に設定し、目標速度を所定の速度に設定する。これらの設定は、制御装置100aから図1に示す操舵装置102、駆動装置103および制動装置104に出力され、設定に基づく自動走行が開始される。
ステップS1050では、制御装置100aは、ステップS1030にて生成した目標経路に沿って自車両が移動する場合に、自車両が障害物に衝突するか否かを判定する。
ステップS1060では、制御装置100aは、ステップS1050において障害物に衝突すると予測されたか否かを判定する。制御装置100aは、ステップS1050で障害物に衝突すると予測されている場合は、ステップS1070の処理に進む。一方、制御装置100aは、ステップS1050で障害物に衝突すると予測されていない場合は、図11のステップS1080の処理に進む。
ステップS1070では、制御装置100aは、図5(b)に示す減速開始位置と目標停止位置との間の目標速度を演算する。例えば、制御装置100aは、減速開始位置と目標停止位置との間において等減速度で減速して、目標停止位置で目標速度がゼロとなるように、減速開始位置と目標停止位置との間の目標速度を演算する。
図11のステップS1080では、制御装置100aは、自車両が障害物衝突回避のために停止したか否かを判定する。制御装置100aは、自車両が障害物衝突回避のために停止した場合、ステップS1090の処理に進み、自車両が障害物衝突回避のために停止していない場合、ステップS1150の処理に進む。
ステップS1090では、制御装置100aは、検出していた障害物を消失したか否かを判定する。制御装置100aは、検出していた障害物を消失した場合にはステップS1100の処理に進み、検出していた障害物を消失していない場合にはステップS1170へ進んで一連の処理を終了する。そして、上述したように所定の繰り返し間隔時間が経過すると、図10,11の処理を再び実行する。
ステップS1100では、制御装置100aは、ステップS1025で記憶した障害物位置に基づいて、自車両と障害物の最接近距離701,711を演算する。最接近距離の演算方法としては、毎回の処理周期で自車両と障害物との距離を演算してその値を記憶部6(図1参照)に記憶し、記憶した値(履歴)の中から最も小さい値を選択する方法がある。
ステップS1110では、制御装置100aは、ステップS1100で演算した最接近距離が上述した所定値以下か否かを判定する。制御装置100aは、ステップS1100で演算した最接近距離が所定値以下の場合、ステップS1120の処理に進み、ステップS1100で演算した最接近距離が所定値より大きい場合、ステップS1140の処理に進む。
ステップS1120では、制御装置100aは、再発進処理を行うためのユーザ操作要求を行う(図9)。ここでのユーザ操作要求とは運転者に安全確認を促す動作であり、運転者に再発進の前に自車両周辺の安全確認を行わせるために、図1の音発生装置105により「車両周辺の安全確認を実施してください。」等の音声ガイダンスをしたり、図9に示したように領域903の輝度値を変化させたり、メッセージ領域902に周囲確認を促す表示をしたり、再発進確認OKボタン904を表示したり、表示装置106のディスプレイ900に危険個所を表示したりする。
ステップS1130では、制御装置100aは、ユーザ操作があったか否かの判定を行う。ここでのユーザ操作とは、運転者による再発進確認ボタン108(図9の再発進確認OKボタン904)の操作、または、図9の自動運転中止ボタン905の操作であり、制御装置100aは、ユーザ操作があった場合にはステップS1135の処理に進み、ユーザ操作がない場合にはステップS1130の処理を繰り返し行わせる。
なお、ステップS1120とステップS1130との間に、運転者が安全確認動作を行ったことを確認する判定ステップを挿入してもよい。すなわち、前述したように運転者がディスプレイ900を確認したか否かを視線検出により判定し、確認したと判定された場合にステップS1130へ進むようにする。
ステップS1135では、ユーザ操作が再発進OKか否かを判定する。すなわち、ユーザ操作が、再発進確認OKボタン904の操作か自動運転中止ボタン905の操作かを判定する。自動運転中止ボタン905が操作された場合には、ステップS1135において再発進OKでない(NO)と判定されてステップS1145へ進む。そして、ステップS1145で自動運転中止処理を行った後に、ステップS1170へ進み、再発進判定の対象となっている障害物に関する記録情報をリセットする。
例えば、図9で示した状況から歩行者812が移動しない場合は、運転者の判断で自動運転中止ボタン905を操作して自動運転を解除することができる。自動運転が解除されると、例えば、自動運転中止ボタン905は自動運転開始のボタンに表示が変わる。
一方、ステップS1135において再発進OK(YES)と判定されると、すなわち再発進確認OKボタン904が操作された場合には、ステップS1135からステップS1140へ進む。ステップS1140では、制御装置100aは、自車両が停止状態からの再発進を行うため、再発進のための目標速度を設定する。
ステップS1150では、制御装置100aは、最終目標速度の設定を行う。ここでは、ステップS1040で演算された目標速度、ステップS1070で演算された目標速度、ステップS1140で演算された目標速度の中で最も小さい値を選択して最終目標速度とする。
ステップS1160では、制御装置100aは、ステップS1040で演算した目標舵角と、ステップS1150で設定した最終目標速度を操舵装置102、駆動装置103、制動装置104のそれぞれに出力するための制御パラメータを演算して、一連の処理を終了する。
例えば、操舵装置102に出力する制御パラメータとしては、目標操舵角を実現するための目標操舵トルクが挙げられるが、操舵装置102の構成によっては直接目標速舵角を出力することも可能である。また、駆動装置103と制動装置104に出力する制御パラメータとしては、目標速度を実現するための目標エンジントルクや目標ブレーキ圧等が挙げられるが、駆動装置103と制動装置104の構成によっては直接目標速度を出力することも可能である。
上記制御パラメータが制御装置100aから操舵装置102、駆動装置103、制動装置104に出力されると、中断していた自動運転が再開されて自車両は再発進される。
ところで、図10,11に示す制御では、自動運転中止要件の一例として、ユーザによる自動運転中止ボタン905の操作を例に説明したが、例えば、ステップS1030の目標経路生成処理において、障害物により経路生成が不可能な場合には自動的に自動運転中止処理が実行される。また、自動運転中に、運転者による運転操作(ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作など)が行われた場合にも、自動的に自動運転中止処理が実行される。
(変形例)
図12,13は、図10,11に示した制御の変形例を示すフローチャートである。なお、図12,13のフローチャートにおいて、図10,11のフローチャートと異なる点は、図10のステップS1025に代えてステップS1026を追加し、図11のステップS1100の処理を削除した点である。以下では、同一処理のステップについては説明を省略し、処理の異なるステップについて説明する。
変形例では、最近接距離の履歴に関する処理が異なっている。図12のステップS1026では、ステップS1020で取得された障害物位置に基づいて、自車両との障害物との距離を演算する。そして、算出された距離と記憶部6に記憶されている最接近距離とを比較し、小さい方を新たな最接近距離として更新し記憶する。なお、最接近距離の初期値は、自動運転開始後の最初に計算された距離となる。なお、図13のステップS1110では、記憶部6に記憶されている最接近距離が上述した所定値以下か否かを判定する。その他のステップの処理は、図10,11の対応するステップの処理と同一である。
(最接近距離について)
上述した最接近距離について簡単に説明する。本実施の形態において、最接近距離とは、ソナーやカメラ等の検知手段が物体を検出した際に車両が自動ブレーキで障害物に衝突することなく停止可能な距離に基づいて設定される。特に、ソナーを用いる場合、図14に示すように、物体(歩行者812)が各ソナーの検知可能範囲140の隙間(死角)に入ってしまうと検知不能となるおそれがある。従って、最接近距離の閾値Dは、各ソナーの検知可能範囲140が重複する距離に基づいて決定される。但し、物体はある程度の大きさを有することから、各ソナーの検知可能範囲140が完全には重複していない位置であっても検知が可能であるため、図14のように各ソナーの検知可能範囲140が重複する距離よりも短い距離に設定することが可能である。
なお、以上の実施形態では駐車場での自動運転を例にとって説明したが、駐車場以外の場所、交差点や横断歩道付近で歩行者との衝突回避を行う場面等においても本発明を適用可能である。例えば、横断歩道の手前で自動停車し、図7(b)や図8に記載のような歩行経路710,800で道路を横切った場合にも、図11に示した再発進処理が実行される。そのため、図8のような状況が生じた場合であっても、運転者は安全を確認した後に手動による再発進を行うので、安全に再発進させることができる。もちろん、図7(a)のような状況の場合には、自動で再発進されるので、運転者は煩わしさを感じることがない。
以上説明したしたように、本実施の形態の車両制御装置(制御装置)100aは、図6(b)に示すように、自車両200が予め設定された目標経路(300,301)に沿って移動するように操舵制御と速度制御を行う自動運転中に、障害物(歩行者206)を検出して自車両200を停止させ、停止後に再発進させるものであって、図1の再発進確認ボタン108が操作されて再発進指示が入力されることにより自車両200を再発進させる手動再発進、または、前記再発進指示の入力によらず自車両200を再発進させる自動再発進のいずれかを、自車両200と歩行者206との位置関係に基づいて選択する再発進判定部5、を備える。そして、再発進判定部5の選択に従って自車両200を再発進させる。
従来のように歩行者が消失すると自動的に再発進する場合には、センサの死角等の関係から自車両近辺に残存する歩行者を検出できなかった場合にも再発進してしまうことになり、安全性の点で不十分であった。しかしながら、本実施の形態の車両制御装置では、自車両と歩行者との位置関係から自動再発進か手動再発進かを選択するような構成であるため、歩行者の残存を見逃すような位置関係である場合には手動再発進を選択して運転者による安全確認を促すことで、自動運転制御における安全性向上を図ることができる。
また、再発進時の安全確保を優先して、停止後は常に手動再発進させるような制御も考えられるが、明らかに自車両周囲に歩行者はおらず自動再発進が可能である場合でも手動再発進が行われる。そのため、例えば、車両の周囲に歩行者が多く存在する場合、車両が停止するたびに運転者のスイッチ操作が要求されるため、非常に煩雑で運転者に煩わしさを与えてしまう。また、煩わしさのために、結果的にこのような機能が使われなくなってしまう恐れもある。
しかしながら、本実施の形態では、そのように明らかに歩行者がいない場合には自動再発進が選択されるので、運転者に煩わしさを感じさせることが少ない。
さらに、制御装置100aは、自車両から入力される障害物の位置情報に基づいて自車両と障害物との位置関係である障害物との距離を算出し、算出された距離の履歴を記憶部6に記憶する。そして、再発進判定部5は、その履歴の中で最も短い距離(図7の距離701,711)が所定値以上の場合は前記自動再発進を選択し、前記最も短い距離が所定値以下の場合は前記手動再発進を選択する。履歴の中で最も短い距離が所定値より大きい場合は、障害物が検出の死角に入ることがないので障害物検出が確実に行われ、安全に自動再発進させることができる。一方、前記距離が所定値以下の場合には障害物が検出できないおそれがあるので、手動再発進を選択することで、安全確認を促すことができる。
また、再発進判定部5によって手動再発進が選択されると、自車両200に設けられた情報提示手段により安全確認情報を提示して、例えば、音声による報知や、表示による報知を行って、乗員に自車両の周辺の安全確認を促すようにしても良い。手動再発進時の安全性をより向上させることができる。
さらにまた、自車両からは、乗員による安全確認動作の有無を判定する判定用情報(例えば、視線検知用カメラにより検出された運転者の視線情報や、図9に示す再発進確認OKボタン904の操作信号)が入力され、制御装置100aは、その判定用情報に基づいて安全確認動作が行われたか否かを判定する。そして、安全確認動作が行われたと判定された場合に手動再発進を行わせる。また、視線情報により運転者がディスプレイ900を確認したと判定されたときにのみ、再発進確認OKボタン904を表示するようにしても良い。これにより、運転者による安全確認を確実に行わせることができる。
さらに、安全確認動作が行われていないと判定された場合には、手動再発進を行わせることなく、情報提示手段に対して安全確認警告情報(図9におけるメッセージ領域902への自動運転中断中という表示や、音声による警告)を提示させるようにしても良い。
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。例えば、上述した実施の形態では自車両として乗用車を想定して説明したが、建設機械やロボットなどの自動走行にも本発明は適用可能である。
また、図11のステップS1120およびステップS1130においては、ユーザからの操作を再発進確認ボタン108の操作で受け付けると説明したが、ユーザからの操作はアクセルペダルの踏み込み等で判断してもよく、もしくは両者どちらか一方の操作を受け付けるようにしてもよい。さらに、図11のステップS1110において、自車両と歩行者の最接近距離の閾値は、車両毎に設定する値でもよく、予めユーザが所定の範囲内で選択する方式としてもよい。