以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の実施の形態における車両の概念図である。
図において、11は車両の本体であるボディ、12は駆動源としてのエンジン、WLF、WRF、WLB、WRBは、前記ボディ11に対して、着脱自在に、かつ、回転自在に配設された左前方、右前方、左後方及び右後方の車輪である。前記各車輪WLF、WRFによって前輪が、前記各車輪WLB、WRBによって後輪が構成される。
本実施の形態において、車両は後輪駆動方式の構造を有し、前記車輪WLB、WRBが駆動輪として機能する。そして、エンジン12と車輪WLB、WRBとが第1の伝動軸としてのプロペラシャフト17、差動装置18及び第2の伝動軸としてのドライブシャフト46を介して連結され、エンジン12を駆動することによって発生させられた回転が車輪WLB、WRBに伝達される。本実施の形態において、前記車両は後輪駆動方式の構造を有するようになっているが、前輪駆動方式の構造を有するようにしたり、四輪駆動方式の構造を有するようにしたりすることもできる。また、駆動源としてエンジン、発電機及びモータを配設してハイブリッド型車両を構成するようにしたり、駆動源としてモータを配設して電気自動車を構成するようにしたりすることもできる。
また、13は車両の操舵を行うための操作部としての、かつ、操舵部材としてのステアリングホイール、14は車両を加速するための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル、15は車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダルである。
そして、31、32は、それぞれ、ボディ11と車輪WLB、WRBとの間に配設され、車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのキャンバ可変機構としてのアクチュエータである。なお、本実施の形態においては、ボディ11と車輪WLB、WRBとの間にそれぞれアクチュエータ31、32が配設されるようになっているが、ボディ11と車輪WLF、WRFとの間にアクチュエータを配設したり、ボディ11と車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間にアクチュエータを配設したりすることができる。
ところで、前記車輪WLF、WRF、WLB、WRBは、アルミニウム合金等によって形成された図示されないホイール、及び該ホイールの外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ36を備える。そして、本実施の形態においては、前記タイヤ36として、タイヤ36の幅方向の全体にわたって、損失正接を小さくすることにより、タイヤ36のトレッドの変形によって発生する転がり抵抗が小さくされた低転がり抵抗タイヤが、ノーマルタイヤとして使用される。この場合、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるので、燃費を良くすることができる。
本実施の形態においては、転がり抵抗を小さくするためにタイヤ36の幅が通常のタイヤより小さくされるが、トレッドの溝のパターンであるトレッドパターンを、転がり抵抗が小さくなるような形状にしたり、少なくともトレッドの部分の材料を、転がり抵抗が小さいものにしたりすることができる。
なお、前記損失正接は、トレッドが変形する際のエネルギーの吸収の度合いを表し、貯蔵剪(せん)断弾性率に対する損失剪断弾性率の比で表すことができる。損失正接が小さいほどトレッドによるエネルギーの吸収が少なくなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が小さくなり、タイヤ36に発生する摩耗が少なくなる。これに対して、損失正接が大きいほどトレッドによるエネルギーの吸収が多くなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が大きくなり、タイヤ36に発生する摩耗が多くなる。
次に、車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのアクチュエータ31、32について説明する。この場合、各アクチュエータ31、32の構造は同じであるので、車輪WLB及びアクチュエータ31についてだけ説明する。
図3は本発明の実施の形態における車輪の断面図である。
図において、WLBは車輪、21はホイール、31はアクチュエータ、36はタイヤである。
前記アクチュエータ31は、ベース部材としての図示されないナックルに固定されたキャンバ制御用の駆動部としてのモータ41、前記ナックルに対して揺動自在に配設された可動部材としての可動プレート43、前記モータ41の回転運動を可動プレート43の揺動運動に変換する運動方向変換機構としてのクランク機構45、前記エンジン12(図2)の回転をホイール21に伝達する前記ドライブシャフト46等を備える。前記ホイール21は、可動プレート43に対して回転自在に支持され、ドライブシャフト46と連結される。
また、前記クランク機構45は、前記モータ41の出力軸に取り付けられた第1の変換要素としてのウォームギヤ51、前記ナックルに対して回転自在に配設され、前記ウォームギヤ51と噛(し)合させられる第2の変換要素としてのウォームホイール52、及び該ウォームホイール52と可動プレート43とを連結する第3の変換要素としての、かつ、連結要素としてのアーム53を有する。該アーム53は、一端において、ウォームホイール52の回転軸から偏心させた位置で、第1の連結部を介してウォームホイール52と連結され、他端において、可動プレート43の上端で、第2の連結部を介して可動プレート43と連結される。この場合、前記可動プレート43によって第4の変換要素が構成される。
そして、前記ウォームギヤ51及びウォームホイール52によって、ウォームギヤ51及びウォームホイール52の回転運動の軸心の向きが変換され、ウォームホイール52及びアーム53によって、ウォームホイール52の回転運動がアーム53の直進運動に変換され、アーム53及び可動プレート43によって、アーム53の直進運動が可動プレート43の揺動運動に変換される。
したがって、モータ41を駆動すると、ウォームギヤ51及びウォームホイール52が回転させられ、アーム53が進退させられ、可動プレート43が揺動させられる。その結果、可動プレート43が鉛直方向に対して傾けられた角度と等しい角度のキャンバが車輪WLBに付与される。
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
図1は本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
図において、16はコンピュータを構成する制御部、61は第1の記憶部としてのROM、62は第2の記憶部としてのRAM、63は車速を検出する車速検出部としての車速センサ、64は操作者である運転者による前記ステアリングホイール13(図2)の操作量を表す操舵量としてのステアリング角度γ(本実施の形態において、ステアリング角度γは、ステアリングホイール13を零点位置から左方向又は右方向に回転させたときの回転角度を絶対値で表したものである。)を検出する操舵量検出部としての、かつ、ステアリング操作量検出部としてのステアリングセンサ、65は車両のヨーレートを検出するヨーレート検出部としてのヨーレートセンサ、66は第1の加速度としての横加速度を検出する第1の加速度検出部としての横加速度センサ、67は第2の加速度としての前後加速度を検出する第2の加速度検出部としての前後加速度センサ、68は車輪WLB、WRBに付与されたキャンバθを検出するキャンバ検出部としてのキャンバセンサ、69は車輪WLF、WRF、WLB、WRBの各タイヤ36のうちの所定のタイヤ36に配設され、該タイヤ36の温度を検出する温度検出部としてのタイヤ温度センサ、swは車室内の所定の箇所、例えば、インスツルメントパネルに配設され、車両に装着されているタイヤ36の種類を指定するための操作要素としての、かつ、スイッチとしてのタイヤ種スイッチ、70は車外を撮影する撮像装置としてのカメラ、dsは図示されない表示画面を備えた表示部、71は運転者による前記アクセルペダル14の操作量を表す踏込量(アクセル開度)を検出する加速操作量検出部としてのアクセルセンサ、72は運転者による前記ブレーキペダル15の操作量を表す踏込量(ブレーキストローク)を検出する制動操作量検出部としてのブレーキセンサ、73は車輪WLB、WRBの図示されないサスペンション装置のストロークを検出する懸架検出部としてのサスストロークセンサ、75は車輪WLB、WRBに加わる荷重を検出する荷重検出部としての荷重センサである。前記サスストロークセンサ73は、ハイトセンサ、磁気センサ等によって構成され、荷重センサ75は、前記サスペンション装置に配設されたロードセル(歪みセンサ)によって構成される。
なお、前記ボディ11、アクチュエータ31、32、制御部16等によってキャンバ制御装置が構成される。
ところで、前記車両には、ドライ路、ウェット路等を走行するためのノーマルタイヤを装着したり、凍結路、積雪路等の氷雪路を走行するための寒冷期用の、また、氷雪路用のタイヤ、例えば、スタッドレスタイヤを装着したりすることができるようになっている。
そして、本実施の形態においては、運転者が、例えば、ノーマルタイヤをスタッドレスタイヤに交換した場合に、前記タイヤ種スイッチswを押下すると、車両に装着されているタイヤ36の種類をスタッドレスタイヤとして指定することができる。なお、本実施の形態においては、運転者がタイヤ種スイッチswを押下すると、タイヤ36の種類が指定されるようになっているが、タイヤ36の所定の箇所にタイヤの種類を表す突起等のマーカを配設し、ボディ11にマーカを読み取るタイヤ種検出部としてのセンサを配設し、該センサによってタイヤ36の種類を検出するようにすることができる。
ところで、本実施の形態においては、前述されたように、転がり抵抗が小さいタイヤ36がノーマルタイヤとして使用されるが、タイヤ36の転がり抵抗が小さい場合、タイヤ36のトレッド剛性が低下し、タイヤ36による路面を掴(つか)む力、すなわち、グリップ力が小さくなる。そこで、本実施の形態においては、車両に装着されたタイヤ36のトレッド剛性が低く、グリップ力が小さい場合でも、車両の直進走行時の安定性(以下「走行安定性」という。)を高くすることができるように、あらかじめ設定された所定の直進走行用のキャンバ付与条件が成立したかどうかが判断され、運転者がステアリングホイール13を操作して車両を旋回させるとき、すなわち、車両の旋回時の安定性(以下「旋回安定性」という。)を高くすることができるように、あらかじめ設定された所定の旋回用のキャンバ付与条件が成立したかどうかが判断され、前記各キャンバ付与条件が成立した場合に、前記アクチュエータ31、32が作動させられ、車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与されるようになっている。前記直進走行用のキャンバ付与条件は、車両の直進走行時に車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθを付与する必要があるかどうかを判断するための条件であり、前記旋回用のキャンバ付与条件は、車両の旋回時に車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθを付与する必要があるかどうかを判断するための条件である。
なお、車輪WLB、WRBには、アクチュエータ31、32を作動させない通常の状態である初期状態において、車両の仕様で規定された所定の角度のキャンバ、すなわち、基準キャンバαが付与される。したがって、本実施の形態においては、前記各キャンバ付与条件が成立した場合に、前記基準キャンバαに所定のキャンバが付加されて前記キャンバθが、
−5〔°〕≦θ<0〔°〕
にされる。
また、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させるのに伴ってタイヤ36に偏摩耗が発生すると、タイヤ36の寿命が短くなってしまうが、本実施の形態においては、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させるのに伴ってタイヤ36に偏摩耗が発生するのを抑制するために、所定のキャンバ解除条件が成立したかどうかが判断され、キャンバ解除条件が成立した場合に、アクチュエータ31、32が作動させられ、車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与が解除され、車輪WLB、WRBが初期状態に置かれる。
次に、車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、キャンバθの付与を解除したりするための制御部16の動作について説明する。
図4は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第1のメインフローチャート、図5は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第2のメインフローチャート、図6は本発明の実施の形態における路面状況判定処理のサブルーチンを示す図、図7は本発明の実施の形態におけるタイヤ装着状態判断処理のサブルーチンを示す図、図8は本発明の実施の形態における操縦安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図9は本発明の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
まず、制御部16の図示されない判定情報取得処理手段は、判定情報取得処理を行い、前記車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除したりするために必要な判定情報、本実施の形態においては、車両の状態を表す車両状態、運転者による各操作部の操作の状態を表す操作状態、及び車両を走行させる道路の路面の状態、すなわち、路面状態を取得する(ステップS1〜S3)。
そのために、前記判定情報取得処理手段は、前記車速センサ63(図1)、ヨーレートセンサ65、横加速度センサ66、前後加速度センサ67、キャンバセンサ68、温度センサ69、サスストロークセンサ73、荷重センサ75等の各検出部(センサ)の検出情報としてのセンサ出力、及び前記タイヤ種スイッチswの押下による指示情報としての、かつ、タイヤ情報としてのスイッチ信号を読み込み、車両状態として、車速v、ヨーレート、横加速度、前後加速度、キャンバθ、タイヤ36の温度、サスストローク、荷重、タイヤ36の種類等を取得する。
また、タイヤ種スイッチswに代えてタイヤ種検出部が配設される場合に、前記判定情報取得処理手段は、タイヤ種検出部(センサ)の検出情報としての、かつ、タイヤ情報としてのセンサ出力を読み込み、車両状態としてタイヤ36の種類を取得する。
なお、前記判定情報取得処理手段は、前記車速vの変化率(微分)を表す加速度又は減速度を算出したり、前記ヨーレートの変化率を表すヨーレート変化速度を算出したり、前記横加速度の変化率を表す横加速度変化速度を算出したり、前記サスストロークに基づいてロール角を算出したりすることによって、車両状態として、加速度、減速度、ヨーレート変化速度、横加速度変化速度、ロール角等を取得することもできる。
次に、前記判定情報取得処理手段は、前記ステアリングセンサ64、アクセルセンサ71、ブレーキセンサ72等の各検出部(センサ)の検出情報としてのセンサ出力を読み込み、操作状態として、前記ステアリング角度γ、アクセルペダル14の踏込量、ブレーキペダル15の踏込量等を取得する。
なお、前記判定情報取得処理手段は、ステアリング角度γの変化率を表すステアリング角速度、及び該ステアリング角速度の変化率を表すステアリング角加速度を算出したり、アクセルペダル14の踏込量の変化率を表す踏込速度、及び該踏込速度の変化率を表す踏込加速度を算出したり、ブレーキペダル15の踏込量の変化率を表す踏込速度、及び該踏込速度の変化率を表す踏込加速度を算出したりすることによって、操作状態として、ステアリング角速度、ステアリング角加速度、アクセルペダル14の踏込速度及び踏込加速度、ブレーキペダル15の踏込速度及び踏込加速度等を取得することもできる。
さらに、ステアリングセンサ64に代えて、操舵量検出部としての舵角センサを配設することによって、操舵量としての車輪WLF、WRFの舵角を検出することもでき、その場合、前記判定情報取得処理手段は、舵角センサの検出情報としてのセンサ出力を読み込み、操作状態として舵角を取得する。また、前記判定情報取得処理手段は、舵角の変化率を表す舵角速度、及び該舵角速度の変化率を表す舵角加速度を算出することによって、操作状態として舵角速度及び舵角加速度を取得することもできる。
続いて、前記判定情報取得処理手段は、前記カメラ70によって撮影された道路の映像を取得し、該映像の画像データに対して画像処理を行うことによって、路面状態として、路面の色、路面の凹凸のレベル等を取得する。
また、前記判定情報取得処理手段は、タイヤ36の温度に基づいて、路面の温度、すなわち、路面温度を算出したり、サスストロークに基づいて車両が走行している道路の路面における凹凸のレベル(路面粗度)を算出したりすることによって、路面状態として、路面温度、路面の凹凸のレベル等を取得することもできる。なお、サスストロークに基づいて路面の凹凸のレベルを算出する場合、前記判定情報取得処理手段は、車両状態に基づいて路面状態を取得する。
次に、車両に装着されているタイヤ36の種類に応じてキャンバθを付与するために、制御部16の図示されない路面状況判定処理手段は、路面状況判定処理を行い、前記路面状態に基づいて前記路面状況を判定する(ステップS4)。
すなわち、前記路面状況判定処理手段は、前記判定情報取得処理手段によって取得された路面状態としての、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等を読み込み、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等に基づいて、車両が氷雪路を走行しているかどうかを判断し(ステップS4−1)、車両が氷雪路を走行している場合、制御部16に設定された路面状況フラグをオンにし(ステップS4−2)、車両が氷雪路を走行していない場合、すなわち、車両が氷雪路以外の道路、例えば、ドライ路、ウェット路等を走行している場合、路面状況フラグをオフにする(ステップS4−3)。
なお、氷雪路、ウェット路及びドライ路の各道路について、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等があらかじめ測定され、測定結果に基づいて、前記ROM61に配設された図示されない路面判定マップに、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等と各道路とが対応させて記録される。したがって、前記路面状況判定処理手段は、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等を読み込むと、前記路面判定マップを参照し、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等に対応する道路を読み出し、車両が氷雪路を走行しているかどうかを判断する。
本実施の形態においては、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等のすべての路面状態に基づいて車両が氷雪路を走行しているかどうかが判断されるようになっているが、路面の色、路面の凹凸のレベル、路面温度等のうちの所定の路面状態に基づいて車両が氷雪路を走行しているかどうかを判断することもできる。
また、制御部16の図示されないタイヤ装着状態判断処理手段は、タイヤ装着状態判断処理を行い、車両にスタッドレスタイヤが装着されているかどうかを判断する(ステップS5)。
そのために、前記タイヤ装着状態判断処理手段は、前記タイヤ種スイッチswのスイッチ信号を読み込む(ステップS5−1)。そして、前記タイヤ装着状態判断処理手段は、スイッチ信号がオンであるかどうかによって、指定されたタイヤの種類がスタッドレスタイヤであるかどうか、すなわち、車両にスタッドレスタイヤが装着されているかどうかを判断し(ステップS5−2)、車両にスタッドレスタイヤが装着されている場合、制御部16に設定されたタイヤフラグをオンにし(ステップS5−3)、車両にスタッドレスタイヤが装着されていない場合、すなわち、ノーマルタイヤが装着されている場合、タイヤフラグをオフにする(ステップS5−4)。
続いて、制御部16の図示されない第1のキャンバ付与条件成立判断処理手段としての操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、操縦安定キャンバ要否判定処理を行い、車両の旋回時に、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、車両状態及び操作状態に基づいて、旋回用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS6、S7)。
そのために、前記操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、前記ステアリング角度γを読み込み、ステアリング角度γが閾(しきい)値γf以上であるかどうかを判断し(ステップS6−1)、ステアリング角度γが閾値γf以上である場合に、旋回用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS6−2)。
なお、ステアリング角度γだけでなく、横加速度及びヨーレートが閾値以上であるかどうかを判断することができる。その場合、前記操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、前記ステアリング角度γ、横加速度及びヨーレートを読み込み、ステアリング角度γが閾値以上であるかどうかによって第1の旋回付与条件が成立したかどうかを、横加速度が閾値以上であるかどうかによって第2の旋回付与条件が成立したかどうかを、ヨーレートが閾値以上であるかどうかによって第3の旋回付与条件が成立したかどうかを判断し、第1〜第3の旋回付与条件のうちの少なくとも一つの旋回付与条件が成立した場合に、旋回用のキャンバ付与条件が成立したと判断する。
そして、旋回用のキャンバ付与条件が成立した場合、前記制御部16の図示されないキャンバ付与状態判断処理手段は、キャンバ付与状態判断処理を行い、前記キャンバセンサ68によって検出されたキャンバθpを読み込み、該キャンバθpが、
−5〔°〕≦θp<0〔°〕
であるかどうかによって、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS8)。
車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合、制御部16は処理を終了し、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていない場合、制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段としての第1のキャンバ付与処理手段は、キャンバ制御処理としての第1のキャンバ付与処理を行い、前記アクチュエータ31、32(図2)を作動させて車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS9〜S13)。
ところで、前述されたように、車輪WLB、WRBにキャンバθを付与することによって旋回安定性を高くすることができるが、タイヤ36の種類、路面状態等によっては旋回安定性を十分に高くすることができなくなることがある。
例えば、前記スタッドレスタイヤは、ノーマルタイヤと比べて柔軟なゴム材料によって形成され、トレッドに深い溝が形成され、溝間のブロックに細かい溝から成るサイプが形成されるようになっている。
したがって、車両にスタッドレスタイヤを装着して走行する場合、積雪路においては、ブロックが大きく変形し、溝によって雪を十分に噛み込むことができ、凍結路においては、サイプによって路面を引っ掻くことができるので、車両を安定させて走行させることができる。
ところが、スタッドレスタイヤは、前述されたように、柔軟なゴム材料によって形成され、トレッド剛性が低いので、スタッドレスタイヤが装着された車両を、ドライ路、ウェット路等で走行させているときに、風、路面の凹凸等によって外力を受けたり、旋回に伴って遠心力が発生したりすると、仮に、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていても、車両を十分に安定させて走行させることができなくなることがある。
そこで、本実施の形態においては、タイヤ36の種類及び路面状態に対応させて、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθが変更されるようになっている。
そのために、前記第1のキャンバ付与処理手段は、前記路面状況フラグを読み込み、路面状況フラグがオンであるかどうかを判断し(ステップS9)、路面状況フラグがオフである場合に、前記タイヤフラグを読み込み、タイヤフラグがオンであるかどうかを判断する(ステップS10)。
そして、前記第1のキャンバ付与処理手段のキャンバ設定処理手段は、キャンバ設定処理を行い、路面状況フラグがオンである場合、並びに路面状況フラグ及びタイヤフラグがオフである場合、キャンバθを、
−5〔°〕≦θ<0〔°〕
の範囲内の第1の値θaに設定し(ステップS11)、路面状況フラグがオフであり、かつ、タイヤフラグがオンである場合、キャンバθを、
−5〔°〕≦θ<0〔°〕
の範囲内の第2の値θb
θb<θa
に設定する(ステップS12)。この場合、第1の値θaは標準値であり、第2の値θbは、絶対値で標準値より大きい(負側に大きい)修正値であり、第1、第2の値θa、θbの角度差δθ1
δθ1=θb−θa
は、例えば、1〔°〕にされる。
続いて、前記第1のキャンバ付与処理手段のキャンバ可変機構作動処理手段は、キャンバ可変機構作動処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS13)。
一方、前記操縦安定キャンバ要否判定処理において、旋回用のキャンバ付与条件が成立しない場合、制御部16の図示されない第2のキャンバ付与条件成立判断処理手段としての直進安定キャンバ要否判定処理手段は、第2のキャンバ付与条件成立判断処理としての直進安定キャンバ要否判定処理を行い、車両の直進走行時に、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、車両状態及び操作状態に基づいて、直進走行用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS14、S15)。
そのために、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、車速vを読み込み、該車速vを読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速vに基づいて、車速算出値、本実施の形態においては、平均車速avを算出するとともに、ステアリング角度γを読み込み、該ステアリング角度γを読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度γに基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度aγを算出し、過去X〔秒〕間の平均車速avが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度aγが閾値γth1より小さいかどうかを判断する(ステップS14−1)。過去X〔秒〕間の平均車速avが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度aγが閾値γth1より小さい場合に、直進安定キャンバ要否判定処理手段は、直進走行用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS14−2)。なお、閾値γth1は閾値γfより小さくされる。
そして、直進走行用のキャンバ付与条件が成立した場合、前記キャンバ付与状態判断処理手段は、前記キャンバθpを読み込み、該キャンバθpが、
−5〔°〕≦θp<0〔°〕
であるかどうかによって、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS16)。
車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合、制御部16は処理を終了し、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていない場合、制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段としての第2のキャンバ付与処理手段は、キャンバ制御処理としての第2のキャンバ付与処理を行い、キャンバ設定処理手段によってキャンバθを第1、第2の値θa、θbに設定し、第1のキャンバ付与処理と同様に、キャンバ可変機構作動処理手段によってアクチュエータ31、32を作動させて車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS9〜S13)。
また、前記直進安定キャンバ要否判定処理において、直進走行用のキャンバ付与条件が成立しない場合、前記キャンバ付与状態判断処理手段は、前記キャンバθpを読み込み、該キャンバθpが、
−5〔°〕≦θp<0〔°〕
であるかどうかによって、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS17)。
車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていない場合、制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段としての第3のキャンバ付与処理手段は、キャンバ制御処理としての第3のキャンバ付与処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS18〜S21)。
そのために、前記第3のキャンバ付与処理手段は、前記路面状況フラグを読み込み、路面状況フラグがオンであるかどうかを判断し(ステップS18)、路面状況フラグがオフである場合に、前記タイヤフラグを読み込み、タイヤフラグがオンであるかどうかを判断する(ステップS19)。
そして、前記第3のキャンバ付与処理手段のキャンバ設定処理手段は、路面状況フラグがオンである場合、並びに路面状況フラグ及びタイヤフラグがオフである場合、キャンバθを、
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
好ましくは、
−5〔°〕≦θ<0〔°〕
の範囲内の第3の値θcに設定し(ステップS20)、路面状況フラグがオフであり、かつ、タイヤフラグがオンである場合、キャンバθを、
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
好ましくは、
−5〔°〕≦θ<0〔°〕
の範囲内の第4の値θd
θb<θa<θd<θc
に設定する(ステップS21)。この場合、第3の値θcは標準値であり、第4の値θdは、絶対値で標準値より大きい(負側に大きい)修正値であり、第3、第4の値θc、θdの角度差δθ2
δθ2=θc−θd
は、例えば、1〔°〕にされる。なお、本実施の形態において、角度差δθ1、δθ2は等しくされるが、互いに異ならせることもできる。
続いて、第3のキャンバ付与処理手段のキャンバ可変機構作動処理手段は、アクチュエータ31、32を作動させて車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS22)。
一方、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合、制御部16の図示されないキャンバ解除処理手段は、キャンバ解除処理を行い、制御部16に内蔵された計時処理部としての図示されないタイマによる計時を開始し、計時を開始してから所定の時間が経過すると(ステップS23)、アクチュエータ31、32を作動させて車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除する(ステップS24)。
このように、本実施の形態においては、旋回用のキャンバ付与条件が成立した場合に車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるので、車両の旋回時には、車両に遠心力が発生するが、外周側の車輪(車両を左方に旋回させる場合は車輪WRBであり、車両を右方に旋回させる場合は車輪WLBである。)の接地荷重が内周側の車輪(車両を左方に旋回させる場合は車輪WLBであり、車両を右方に旋回させる場合は車輪WRBである。)の接地荷重より大きくなり、外周側の車輪のタイヤ36に発生するキャンバスラストが、内周側の車輪のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。したがって、車両に求心力を発生させることができるので、旋回安定性を高くすることができる。
そして、旋回用のキャンバ付与条件が成立した場合において、車両が氷雪路で旋回させられる場合、及び車両がドライ路、ウェット路等で旋回させられ、かつ、車両にノーマルタイヤが装着されている場合には、車輪WLB、WRBに第1の値θaのキャンバθが付与され、車両がドライ路、ウェット路等で旋回させられ、かつ、車両にスタッドレスタイヤが装着されている場合には、車輪WLB、WRBに第2の値θbのキャンバθが付与されるので、車両にスタッドレスタイヤが装着された状態で、ドライ路、ウェット路等で旋回させているときに、風、路面の凹凸等によって外力を受けたり、旋回に伴って遠心力が発生したりしても、車両を十分に安定させて走行させることができる。
また、旋回用のキャンバ付与条件が成立せず、直進走行用のキャンバ付与条件が成立した場合に、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるのに伴って、車輪WLB、WRBの各タイヤ36に、互いに対向する方向にキャンバスラストが発生するので、車両の直進走行時に、何らかの理由で車両に外力が加わると、外力が加わった側とは反対側の車輪のタイヤ36に大きなキャンバスラストが発生し、該キャンバスラストが復元力として車両に加わる。その結果、走行安定性を高くすることができる。
そして、旋回用のキャンバ付与条件が成立せず、直進走行用のキャンバ付与条件が成立した場合において、車両が氷雪路を直進走行させられる場合、及び車両がドライ路、ウェット路等を直進走行させられ、かつ、車両にノーマルタイヤが装着されている場合には、車輪WLB、WRBに第1の値θaのキャンバθが付与され、車両がドライ路、ウェット路等を直進走行させられ、かつ、車両にスタッドレスタイヤが装着されている場合には、車輪WLB、WRBに第2の値θbのキャンバθが付与されるので、車両にスタッドレスタイヤが装着された状態で、ドライ路、ウェット路等を走行させているときに、風、路面の凹凸等によって外力を受けても、車両を十分に安定させて走行させることができる。
さらに、旋回用のキャンバ付与条件及び直進走行用のキャンバ付与条件のいずれも成立しない場合において、車両が氷雪路を走行させられる場合、及び車両がドライ路、ウェット路等を走行させられ、かつ、車両にノーマルタイヤが装着されている場合には、車輪WLB、WRBに第3の値θcのキャンバθが付与され、車両がドライ路、ウェット路等を走行させられ、かつ、車両にスタッドレスタイヤが装着されている場合には、車輪WLB、WRBに第4の値θdのキャンバθが付与されるので、車両にスタッドレスタイヤが装着された状態で、ドライ路、ウェット路等を走行させているときに、風、路面の凹凸等によって外力を受けても、車両を十分に安定させて走行させることができる。
したがって、車両に装着されるタイヤ36の種類によらず、車両を十分に安定させて走行させることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。