JP2009241858A - 旋回制御装置及び旋回制御方法 - Google Patents

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Fumihiko Sakakibara
文彦 榊原
Masao Ando
正夫 安藤
Masahiro Hasebe
正広 長谷部
Munehisa Horiguchi
宗久 堀口
Minoru Abe
稔 阿部
Yoshihiro Suda
義大 須田
Shoichiro Takehara
昭一郎 竹原
Yasuharu Bonkohara
康晴 盆子原
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Equos Research Co Ltd
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Abstract

【課題】車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを小さくすることができ、車両の旋回時の応答性を必要に応じて高くすることができるようにする。
【解決手段】ボディと、車輪WLF、WRF、WLB、WRBと、車輪にキャンバ角を付与する車輪駆動部と、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出する要求ヨーレート算出処理手段と、要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを判断する要求ヨーレート判定処理手段と、要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角を付与するスリップ角付与処理手段と、要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角を付与するキャンバ角付与処理手段とを有する。要求ヨーレートが基準値以上である場合に、スリップ角を大きくすることができ、要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、コーナリング抵抗を小さくすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、旋回制御装置及び旋回制御方法に関するものである。
従来、車両を走行させる際には、タイヤと路面との間の摩擦によって、タイヤの進行方向と逆方向に転がり抵抗が発生する。また、車両を旋回させるために、運転者がステアリングホイールを操作して、タイヤの向きを変えると、タイヤと路面との間の摩擦によって、タイヤの向きに対して垂直の方向に横力が発生する。したがって、車両の旋回時には、前記転がり抵抗と横力との合力がタイヤ力となってタイヤに加わる。
このとき、前記タイヤ力におけるタイヤの進行方向に対して垂直の方向の成分がコーナリングフォースとなり、該コーナリングフォースは、車両を旋回させる際に遠心力に抗して必要になる求心力として機能する。また、前記タイヤ力におけるタイヤの進行方向の成分がコーナリング抵抗となり、該コーナリング抵抗は、車両の走行抵抗として機能する。
ところで、車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを小さくするために、前輪にキャンバ角を付与することによって、キャンバスラストを発生させ、タイヤのスリップ角をその分小さくしてコーナリング抵抗を小さくするようにした車両が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2007−15473号公報
しかしながら、前記従来の車両において、キャンバスラストはスリップ角を付与したときの横力より小さいので、車両の旋回時の応答性が低下してしまう。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを小さくすることができ、車両の旋回時の応答性を必要に応じて高くすることができる旋回制御装置及び旋回制御方法を提供することを目的とする。
そのために、本発明の旋回制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された車輪と、前記ボディと車輪との間に配設され、前記車輪にキャンバ角を付与する車輪駆動部と、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出する要求ヨーレート算出処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを判断する要求ヨーレート判定処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角を付与するスリップ角付与処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角を付与するキャンバ角付与処理手段とを有する。
本発明の他の旋回制御装置においては、さらに、前記キャンバ角付与処理手段は、車輪に最大のキャンバ角を付与する。
本発明の更に他の旋回制御装置においては、さらに、車輪にキャンバ角が付与された状態で、スリップ角を小さくするスリップ角設定処理手段を有する。
本発明の更に他の旋回制御装置においては、さらに、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵装置と、該操舵装置の操作量を検出する操作量検出部とを有する。
そして、前記要求ヨーレート算出処理手段は、前記操作量に基づいて運転者の要求ヨーレートを算出する。
本発明の更に他の旋回制御装置においては、さらに、車両を操舵するために運転者によって操作される操舵装置と、該操舵装置の操作量を検出する操作量検出部とを有する。
そして、前記要求ヨーレート算出処理手段は、前記操作量の変化率に基づいて運転者の要求ヨーレートを算出する。
本発明の旋回制御方法においては、車両のボディ、該ボディに対して回転自在に配設された車輪、及び前記ボディと車輪との間に配設され、車輪にキャンバ角を付与する車輪駆動部を有する車両に適用される。
そして、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出し、該要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを判断し、前記要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角を付与し、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角を付与する。
本発明によれば、旋回制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された車輪と、前記ボディと車輪との間に配設され、前記車輪にキャンバ角を付与する車輪駆動部と、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出する要求ヨーレート算出処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを判断する要求ヨーレート判定処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角を付与するスリップ角付与処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角を付与するキャンバ角付与処理手段とを有する。
この場合、要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角が付与され、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角が付与される。
したがって、要求ヨーレートが基準値以上である場合に、スリップ角を大きくすることができるので、旋回の応答性を向上させることができ、車両を急速に旋回させることができる。その結果、旋回性を向上させることができる。
また、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角が付与されるので、コーナリング抵抗を小さくすることができる。その結果、車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを小さくすることができる。
本発明の他の旋回制御装置においては、さらに、車輪にキャンバ角が付与された状態で、スリップ角を小さくするスリップ角設定処理手段を有する。
この場合、車輪にキャンバ角を付与しながら、要求ヨーレートで車両を旋回することができるようにスリップ角が小さくされるので、コーナリング抵抗を一層小さくすることができる。その結果、車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを一層小さくすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は本発明の実施の形態における車両の概念図、図3は本発明の実施の形態における車輪駆動部ユニットの平面図、図4は本発明の実施の形態におけるアクチュエータの動作を説明する図である。
図において、11は車両の本体を表すボディ、WLF、WRF、WLB、WRBは、ボディ11に対して回転自在に配設された前方左側、前方右側、後方左側及び後方右側の車輪であり、互いに独立させて回転させることができるようになっている。そして、車輪WLF、WRFによって前輪が、車輪WLB、WRBによって後輪が構成される。
また、13は操舵装置(操作部材)としてのステアリングホイール、14は加速操作部材としてのアクセルペダル、15は減速操作部材としてのブレーキペダルであり、運転者がステアリングホイール13を操作して回転させると、ステアリングホイール13の回転に応じて車輪WLF、WRFに舵角が付与され、車両を旋回させることができる。また、運転者がアクセルペダル14を踏み込むと、アクセルペダル14の踏込量に応じて車両を加速することができ、運転者がブレーキペダル15を踏み込むと、ブレーキペダル15の踏込量に応じて車両を制動することができる。なお、前記舵角は、ステアリングホイール13の回転に応じて車輪WLF、WRFの向きが変化させられたときの、車両の前後方向と車輪WLF、WRFの向きとが成す角度である。
そして、16は車両の全体の制御を行う制御部、31〜34は、それぞれ、ボディ11と各車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間に配設され、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBを独立させて回転させ、かつ、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに舵角を独立させて形成し、キャンバ角を独立させて付与する車輪駆動部、38は、舵角を形成し、キャンバ角を付与するために油圧を発生させる油圧制御部である。
なお、前記ステアリングホイール13、制御部16、車輪駆動部31〜34、油圧制御部38等によって旋回制御装置が、各車輪WLF、WRF、WLB、WRB及び各車輪駆動部31〜34によって、前方左側、前方右側、後方左側及び後方右側の車輪駆動部ユニット41〜44が構成される。また、前記各車輪駆動部31〜34は各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに対応させて配設されるようになっているが、ボディ11における所定の1箇所に配設することもできる。
次に、前記各車輪駆動部ユニット41〜44の構造について説明する。この場合、各車輪駆動部ユニット41〜44の構造は互いに等しいので、車輪駆動部ユニット41についてだけ説明する。
図3に示されるように、前記車輪駆動部ユニット41は車輪WLF及び車輪駆動部31を備え、前記車輪WLFは、アルミニウム合金等によって形成されたホイール18、及び該ホイール18の外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ19を備え、前記車輪駆動部31は、円形の形状を有する車輪駆動板としてのキャンバプレート45、該キャンバプレート45に取り付けられ、ホイール18内に収容された走行用の駆動部としてのモータ(ホイールモータ)46、前記キャンバプレート45を揺動させる揺動用の駆動部としてのアクチュエータ47、前記キャンバプレート45とアクチュエータ47とを連結する連結部材としてのジョイント部(ユニバーサルジョイント)51等を備える。
前記モータ46は、前記キャンバプレート45に固定されたステータ48、該ステータ48内に配設され、回転自在に配設された図示されないロータ、該ロータに取り付けられ、先端にホイール18が固定された出力軸49等を備える。そして、前記アクセルペダル14が踏み込まれると、アクセルペダル14の踏込量に比例してモータ46が駆動され、回転速度が増減させられる。
また、前記アクチュエータ47は、第1〜第3の駆動部材としての油圧シリンダ53〜55を備え、該各油圧シリンダ53〜55は、前記ボディ11に固定されたシリンダ部61〜63、及び該各シリンダ部61〜63に対して進退自在に配設されたロッド部64〜66を備え、該各ロッド部64〜66はジョイント部51を介してキャンバプレート45と連結される。
ところで、前記キャンバプレート45の中心Oを通り、車両の前後方向(長さ方向)に延びる軸をxa軸とし、車両の左右方向(幅方向)に延びる軸をya軸とし、車両の上下方向(高さ方向)に延びる軸をza軸としたとき、前記油圧シリンダ53〜55を駆動し、各ロッド部64〜66を矢印A、B方向に進退させることによって、キャンバプレート45を、xa軸を中心にして矢印C、D方向に回動させたり、za軸を中心にして矢印E、F方向に回動させたりすることができる。そのために、前記キャンバプレート45におけるza軸上の上端の近傍の所定の位置を第1の位置st1とし、該第1の位置st1より車両の前後方向における後側の所定の位置を第2の位置st2とし、前記第1の位置st1より車両の前後方向における前側の所定の位置を第3の位置st3としたとき、第1〜第3の位置st1〜st3に各ジョイント部51が配設され、各ジョイント部51を介してキャンバプレート45とロッド部64〜66とが全方向に回動自在に連結される。なお、本実施の形態において、前記第1〜第3の位置st1〜st3は、前記キャンバプレート45の円周方向において等ピッチ角で、120〔°〕の間隔を置いて設定される。
そして、前記油圧制御部38によって油圧を発生させ、発生させられた油圧を前記各シリンダ部61〜63に対して選択的に給排することによって車輪WLFに舵角及びキャンバ角を付与することができる。また、図3に示されるように、車輪WLFが図示されない路面に対して垂直に、かつ、ボディ11に対して平行に置かれる状態を中立状態としたとき、該中立状態において、ロッド部64を所定の量だけ矢印A方向に移動(後退)させ、ロッド部65、66を同じ量だけ矢印B方向に移動(前進)させると、車輪WLFは矢印C方向に回動させられ、車輪WLFに負の値のキャンバ角(ネガティブキャンバ)が付与される。また、前記中立状態において、ロッド部64を所定の量だけ矢印B方向に移動(前進)させ、ロッド部65、66を同じ量だけ矢印A方向に移動(後退)させると、車輪WLFは矢印D方向に回動させられ、車輪WLFに正の値のキャンバ角(ポジティブキャンバ)が付与される。
さらに、前記中立状態において、ロッド部65を所定の量だけ矢印A方向に移動(後退)させ、ロッド部66を同じ量だけ矢印B方向に移動(前進)させると、車輪WLFは矢印E方向に回動させられ、車輪WLFに正の値の舵角(トウアウト)が付与される。また、前記中立状態において、ロッド部64を所定の量だけ矢印B方向に移動(前進)させ、ロッド部66を同じ量だけ矢印A方向に移動(後退)させると、車輪WLFは矢印F方向に回動させられ、車輪WLFに負の値の舵角(トウイン)が付与される。
なお、本実施の形態においては、走行用の駆動部としてモータ46が配設されるようになっているが、モータ46に代えてエンジンを使用することができる。その場合、エンジンによって発生させられた回転を、プロペラシャフト、ディファレンシャル装置、ドライブシャフト等の回転伝達系を介して駆動輪として機能する車輪に伝達することができる。
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
図1は本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
図において、16は制御部、WLF、WRF、WLB、WRBは車輪、20はステアリングホイール13の操作量である操作量を検出する操作量検出部としての操作量センサ、s1は各シリンダ部61に対して油圧の給排を行う制御弁、s2は各シリンダ部62に対して油圧の給排を行う制御弁、s3はシリンダ部63に対して油圧の給排を行う制御弁、ε1は各車輪WLF、WRFに形成された舵角を検出する舵角検出部としての舵角センサ、ε2は各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのキャンバ角を検出するキャンバ角検出部としてのキャンバ角センサである。
本実施の形態においては、運転者がステアリングホイール13を操作したときの操作量に基づいてアクチュエータ47が駆動され、各車輪WLF、WRFに舵角が形成されるようになっているが、ステアリングホイール13を操作することによって直接各車輪WLF、WRFを揺動させて舵角を形成することができる。なお、前記舵角センサε1によって舵角を検出することができるほかに、制御部16の図示されない舵角検出処理手段が舵角検出部として機能し、舵角を検出することができる。この場合、前記舵角検出処理手段は、舵角検出処理を行い、操作量を読み込み、図示されない記憶装置に配設された舵角マップを参照し、ステアリングホイール13の操作量に基づいて各車輪WLF、WRFの舵角を検出する。
前記制御部16は、ステアリングホイール13の操作量が操作量センサ20によって検出されると、アクチュエータ47を駆動し、各車輪WLF、WRFに前記操作量に応じた舵角を形成する。該形成された舵角は舵角センサε1によって検出され、制御部16に送られ、フィードバック制御が行われる。また、制御部16は、後述されるように、アクチュエータ47を駆動し、検出された舵角に応じたキャンバ角を各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与する。付与されたキャンバ角は、キャンバ角センサε2によって検出され、制御部16に送られ、フィードバック制御が行われる。
次に、車両を旋回させるに当たり、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBにキャンバ角を付与したときの旋回特性について説明する。
図5は本発明の実施の形態におけるキャンバスラストの発生のメカニズムを説明する図、図6は本発明の実施の形態における車輪にキャンバ角を付与したときのコーナリング抵抗を説明する第1の図、図7は本発明の実施の形態における車輪にキャンバ角を付与したときのコーナリング抵抗を説明する第2の図、図8は本発明の実施の形態における車輪にキャンバ角を付与したときのコーナリング抵抗を説明する第3の図である。この場合、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのうちの車輪WLFについて説明する。
図5において、Trは車輪WLFのタイヤ19の図示されないトレッドの中心、GNDは路面、θはキャンバ角である。
車輪WLFにキャンバ角θを付与すると、図に示されるように、車輪WLFにスリップ角が付与されていなくても、トレッドの中心Trを上方から見ると、矢印Hで示されるように楕(だ)円の軌跡を描く。この場合、仮に、キャンバ角θが付与された車輪WLFを、路面GNDに沿って自由に移動させると、接地面の中心も、同様に矢印Hで示されるように楕円の軌跡を描くが、実際には、接地面の中心は、矢印Kで示されるように直線の軌跡を描くことになる。したがって、トレッドの中心Trの描く楕円と接地面の中心が描く直線とによってタイヤ19に剪(せん)断変形が生じ、該剪断変形に応じた横力が、キャンバスラストとして発生する。
次に、車両を旋回させたときのコーナリング抵抗について説明する。
図において、Mは車両を旋回させたときのタイヤ19の進行方向、Nはタイヤ19の進行方向Mに対して垂直の方向、Rはタイヤ19が転がる方向を表すタイヤ19の向き、Sはタイヤ19の向きRに対して垂直の方向、β1はスリップ角である。ところで、車両を直進走行させているときにステアリングホイール13を操作して、車輪WLFに所定の舵角を付与すると、舵角に応じてタイヤ19の向きRが変化する。このとき、タイヤ19は路面GND上を滑り、進行方向Mに向けて移動する。前記スリップ角β1は、このときのタイヤ19の向きRと進行方向Mとが成す角度である。
ところで、車両を走行させる際には、タイヤ19と路面GNDとの間の摩擦によって、タイヤ19の向きRと逆方向に転がり抵抗Frが発生する。また、車両を旋回させるために、運転者がステアリングホイール13を操作して、タイヤ19の向きRを変えると、タイヤ19と路面GNDとの間の摩擦によって、タイヤ19の向きRに対して垂直の方向Sに横力Fsが発生する。したがって、車両の旋回時には、前記転がり抵抗Frと横力Fsとの合力がタイヤ力Ftとなってタイヤ19に加わる。
このとき、前記タイヤ力Ftにおけるタイヤ19の進行方向Mに対して垂直の方向Nの成分はコーナリングフォースFnとなり、該コーナリングフォースFnは車両を旋回させる際に遠心力に抗して必要になる求心力として機能する。また、前記タイヤ力Ftにおけるタイヤ19の進行方向Mの成分はコーナリング抵抗Fmとなり、該コーナリング抵抗Fmは、車両の走行抵抗として機能する。
ところで、車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを小さくするためには、前記コーナリング抵抗Fmを小さくするのが好ましいが、該コーナリング抵抗Fmを小さくするためにはスリップ角β1を小さくする必要がある。
ところが、スリップ角β1を小さくすると、コーナリングフォースFnがその分小さくなり、旋回性が低下して車両の旋回状態を維持することができなくなってしまう。
そこで、車輪WLFにキャンバ角θを付与すると、タイヤ19にキャンバスラストが発生させられ、コーナリングフォースFnを維持したままスリップ角β1を小さくし、コーナリング抵抗Fmを小さくすることができる。
すなわち、図7に示されるように、車両の旋回時に、車輪WLFに正の値のキャンバ角θを付与すると、スリップ角β1を維持した状態で、転がり抵抗Frは変化しないが、キャンバ角θを付与した分だけ横力Fsが大きくなる。したがって、タイヤ力Ftが大きくなり、コーナリングフォースFn及びコーナリング抵抗Fmも、その分大きくなる。
そこで、図8に示されるように、図6における車輪WLFにキャンバ角θを付与しない状態と同じ大きさのコーナリングフォースFnを発生させた状態で、スリップ角を小さくし、β2とすることができる。その結果、コーナリング抵抗Fmを小さくすることができる。このように、車両の旋回時に、車輪WLFに、ステアリングホイール13の操舵方向側にタイヤ19が傾く方向にキャンバ角θを付与することによって、スリップ角をβ1からβ2に小さくすることができるので、車両の旋回性を向上させることができ、消費されるエネルギーを小さくすることができる。
ところで、消費されるエネルギーを小さくしようとすると、タイヤのスリップ角を小さくする必要があるので、舵角を大きくすることができず、旋回性が低下してしまう。そこで、本実施の形態において、制御部16の図示されない旋回制御処理手段は、旋回制御処理を行い、車両の旋回時に、車輪WLF、WRF、WLB、WRBにスリップ角及びキャンバ角θを選択的に付与することによって、消費されるエネルギーを小さくし、かつ、旋回性を向上させるようにしている。
図9は本発明の実施の形態における旋回制御手段の動作を示すフローチャート、図10は本発明の実施の形態におけるタイヤ力マップを示す図、図11は本発明の実施の形態における車輪の状態を示す第1の図、図12は本発明の実施の形態における車輪の状態を示す第2の図である。なお、図10において、横軸にスリップ角βを、縦軸にキャンバ角θを、高さ軸に左右力係数ηyを採ってある。
この場合、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBについてタイヤ力マップを作成するために、タイヤ19を図示されない路面・タイヤ走行模擬試験装置に搭載し、スリップ角β及びキャンバ角θを変化させて、実際に発生するタイヤ力Ftを、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに発生する前後力Fx1〜Fx4、左右力Fy1〜Fy4及び垂直力Fz1〜Fz4として測定した。そして、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBについて、前後力Fx1〜Fx4をそれぞれ垂直力Fz1〜Fz4で除算して前後力係数ηxを算出し、左右力Fy1〜Fy4をそれぞれ垂直力Fz1〜Fz4で除算して左右力係数ηyを算出し、前後方向のタイヤ力マップ及び左右方向のタイヤ力マップにおいてプロットした。図10のタイヤ力マップは各タイヤ力マップのうちの左右方向のタイヤ力マップを表す。
まず、前記旋回制御処理手段の旋回判定処理手段は、旋回判定処理を行い、運転者がステアリングホイール13を操作するのに伴って、舵角センサε1によって検出された舵角を読み込み、舵角が旋回判断用の閾(しきい)値以上であるかどうかを判断する。舵角が閾値以上である場合、前記旋回判定処理手段は、車両が旋回させられていると判断する。
次に、前記旋回制御処理手段の要求ヨーレート算出処理手段は、要求ヨーレート算出処理を行い、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出する。本実施の形態において、該要求ヨーレートは、前記舵角を微分することによって得られる値、すなわち、舵角変化率とされるが、要求ヨーレートを、所定の時間が経過する間の舵角の変化量としたり、操作量センサ20によって検出されたステアリングホイール13の操作量としたり、該操作量の変化率としたりすることができる。
続いて、前記旋回制御処理手段の要求ヨーレート判定処理手段は、要求ヨーレート判定処理を行い、要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを、前記舵角変化率が基準値以上であるかどうかによって判断する。舵角変化率が基準値以上であり、運転者が車両を急速に旋回させようとしている場合、前記旋回制御処理手段のスリップ角付与処理手段は、スリップ角付与処理を行い、アクチュエータ47を駆動し、車輪WLF、WRF、WLB、WRBに、ステアリングホイール13の操作量に応じた舵角を付与することによって、車輪WLF、WRFの旋回方向と同方向にスリップ角βを、車輪WLB、WRBの旋回方向と逆方向にスリップ角βを付与する。
なお、この場合、車輪WLF、WRFに付与されるスリップ角βと、車輪WLB、WRBに付与されるスリップ角βとを、等しくなるように設定したり、異ならせて設定したりすることができる。
この場合、車輪WLF、WRFの旋回方向と同方向にスリップ角βが、車輪WLB、WRBの旋回方向と逆方向にスリップ角βが付与されるので、車輪WLF、WRFについては、旋回方向に向けて横力が、車輪WLB、WRBについては、旋回方向に対して逆方向に向けて横力が発生する。そして、スリップ角βが付与されたときの車輪WLF、WRF、WLB、WRBに発生する横力は、キャンバスラストより大きいので、車両の旋回時の応答性を高くすることができ、車両を急速に旋回させることができる。その結果、旋回性を向上させることができる。
一方、運転者が車両を急速に旋回させようとしておらず、舵角変化率が基準値より小さい場合、前記旋回制御処理手段のキャンバ角付与処理手段は、キャンバ角付与処理を行い、スリップ角βが車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与されているかどうかを判断する。スリップ角βが車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与されている場合、前記キャンバ角付与処理手段は、図12に示されるように、アクチュエータ47を駆動し、車輪WLF、WRFに、舵角に対して同方向の最大のキャンバ角θを付与し、車輪WLB、WRBに、舵角に対して逆方向の最大のキャンバ角θを付与する。同時に、前記旋回制御処理手段のスリップ角設定処理手段は、スリップ角設定処理を行い、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与されているスリップ角βを小さくして、各スリップ角の合計を最小とする。
例えば、二輪モデルの場合、車体に対する車両の進行方向角(横すべり角)をδとすると、要求ヨーレートはdδ/dtで表すことができ、車両の重量をmとし、車速をvとし、車両の現在のヨーレートをrとし、車輪WLF、WRFのコーナリングフォースをFnfとし、車輪WLB、WRBのコーナリングフォースをFnrとすると、次の運動方程式が成立する。
mv(dδ/dt+r)=2(Fnf+Fnr)
そこで、該運動方程式を満たすコーナリングフォースFnf、Fnrを算出し、コーナリングフォースFnf、Fnrに対応する左右力係数ηy及びキャンバ角θに基づいて、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのスリップ角βの合計を最小とする。
そして、前記スリップ角設定処理手段は、アクチュエータ47を駆動し、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのスリップ角βを、合計が最小になるように調整する。
また、舵角変化率が基準値より小さく、スリップ角βが車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与されていない場合、前記キャンバ角付与処理手段は、キャンバ角θを優先して付与し、前述されたように、アクチュエータ47を駆動し、車輪WLF、WRFに、操舵方向側にタイヤ19が傾く方向に最大のキャンバ角θを付与し、車輪WLB、WRBに、操舵方向と反対側にタイヤ19が傾く方向に最大のキャンバ角θを付与する。続いて、前記スリップ角設定処理手段は、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与されているスリップ角βの合計を最小とする。
この場合、キャンバ角θによってキャンバスラストが発生させられ、キャンバスラストによって車両が旋回させられるので、コーナリング抵抗Fmを小さくすることができる。したがって、車両を旋回させるときに消費されるエネルギーを小さくすることができる。
また、車輪WLF、WRF、WLB、WRBにキャンバ角θが付与された状態で、スリップ角βが小さくされるので、コーナリング抵抗Fmを一層小さくすることができる。その結果、車両を旋回させる際に消費されるエネルギーを一層小さくすることができる。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 舵角変化率を算出する。
ステップS2 舵角変化率が基準値以上であるかどうかを判断する。舵角変化率が基準値以上である場合はステップS3に、舵角変化率が基準値より小さい場合はステップS4に進む。
ステップS3 スリップ角βを付与し、処理を終了する。
ステップS4 スリップ角βが付与されているかどうかを判断する。スリップ角βが付与されている場合はステップS5に、付与されていない場合はステップS6に進む。
ステップS5 最大のキャンバ角θを付与する。
ステップS6 キャンバ角θを優先して付与する。
ステップS7 各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのスリップ角βの合計を最小とし、処理を終了する。
本実施の形態においては、スリップ角β及びキャンバ角θが各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与されるようになっているが、所定の車輪、例えば、車輪WLF、WRFに付与したり、車輪WLB、WRBに付与したりすることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図である。 本発明の実施の形態における車両の概念図である。 本発明の実施の形態における車輪駆動部ユニットの平面図である。 本発明の実施の形態におけるアクチュエータの動作を説明する図である。 本発明の実施の形態におけるキャンバスラストの発生のメカニズムを説明する図である。 本発明の実施の形態における車輪にキャンバ角を付与したときのコーナリング抵抗を説明する第1の図である。 本発明の実施の形態における車輪にキャンバ角を付与したときのコーナリング抵抗を説明する第2の図である。 本発明の実施の形態における車輪にキャンバ角を付与したときのコーナリング抵抗を説明する第3の図である。 本発明の実施の形態における旋回制御手段の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態におけるタイヤ力マップを示す図である。 本発明の実施の形態における車輪の状態を示す第1の図である。 本発明の実施の形態における車輪の状態を示す第2の図である。
符号の説明
11 ボディ
13 ステアリングホイール
16 制御部
31〜34 車輪駆動部
38 油圧制御部
WLF、WRF、WLB、WRB 車輪
β、β1、β2 スリップ角
ε1 舵角センサ
θ キャンバ角

Claims (6)

  1. 車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された車輪と、前記ボディと車輪との間に配設され、前記車輪にキャンバ角を付与する車輪駆動部と、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出する要求ヨーレート算出処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを判断する要求ヨーレート判定処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角を付与するスリップ角付与処理手段と、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角を付与するキャンバ角付与処理手段とを有することを特徴とする旋回制御装置。
  2. 前記キャンバ角付与処理手段は、車輪に最大のキャンバ角を付与する請求項1に記載の旋回制御装置。
  3. 車輪にキャンバ角が付与された状態で、スリップ角を小さくするスリップ角設定処理手段を有する請求項1に記載の旋回制御装置。
  4. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵装置と、該操舵装置の操作量を検出する操作量検出部とを有するとともに、前記要求ヨーレート算出処理手段は、前記操作量に基づいて運転者の要求ヨーレートを算出する請求項1に記載の旋回制御装置。
  5. 車両を操舵するために運転者によって操作される操舵装置と、該操舵装置の操作量を検出する操作量検出部とを有するとともに、前記要求ヨーレート算出処理手段は、前記操作量の変化率に基づいて運転者の要求ヨーレートを算出する請求項1に記載の旋回制御装置。
  6. 車両のボディ、該ボディに対して回転自在に配設された車輪、及び前記ボディと車輪との間に配設され、車輪にキャンバ角を付与する車輪駆動部を有する車両の旋回制御方法において、運転者が車両を旋回させる際に必要とする旋回の要求度を表す要求ヨーレートを算出し、該要求ヨーレートが基準値以上であるかどうかを判断し、前記要求ヨーレートが基準値以上である場合に、車輪にスリップ角を付与し、前記要求ヨーレートが基準値より小さい場合に、車輪にキャンバ角を付与することを特徴とする旋回制御方法。
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