以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態におけるタイヤ100が装着される車両1の上面視を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印FWDは、車両1の前進方向を示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。図1に示すように、車両1は、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2の回転駆動を行う車輪駆動装置3と、各車輪2の操舵駆動を行うと共にキャンバ角の変更を行うキャンバ角変更装置4とを主に備え、キャンバ角変更装置4により車輪2のキャンバ角を変更することで、タイヤ100(図4参照)に設けられた3種類のトレッドを使い分け、省燃費化と高グリップ性能との両立を図ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。図1に示すように、車輪2は、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備えている。これら前後輪2FL〜2RRは、車輪駆動装置3から回転駆動力が付与されることで、それぞれ独立に回転可能に構成されている。
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための装置であり、図1に示すように、合計4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)が各車輪2に(即ち、インホイールモータとして)配設されている。運転者がアクセルペダル11を操作した場合には、車輪駆動装置3から各車輪2に回転駆動力が付与され、アクセルペダル11の操作量に応じた回転速度で各車輪2が回転駆動される。また、運転者がブレーキペダル12を操作した場合には、ブレーキペダル12の操作量に応じた制動力が得られるように、車輪駆動装置3が作動制御される。
キャンバ角変更装置4は、各車輪2を独立に操舵駆動するための装置であり、図1に示すように、合計4個のアクチュエータ(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が各車輪2に対応して配設されている。運転者がステアリング13を操作した場合には、キャンバ角変更装置4の一部(例えば、FLアクチュエータ4FL及びFRアクチュエータ4FR)又は全部が作動制御され、ステアリング13の操作量に応じた操舵角で車輪2が操舵駆動される。
また、キャンバ角変更装置4は、車両1の走行状態(例えば、直進走行、加減速、或いは、旋回など)に応じて作動制御され、各車輪2のキャンバ角を変更する。ここで、図2を参照して、車輪駆動装置3及びキャンバ角変更装置4の詳細構成について説明する。
図2(a)は、車輪2の断面図であり、図2(b)は、操舵角およびキャンバ角の付与方法を模式的に説明する模式図である。なお、図2(a)では、タイヤ100が模式的に図示されている。また、図2(b)中の仮想軸Xf−Xb、仮想軸Yl−Yr及び仮想軸Zu−Zdは、それぞれ車両1の前後方向、左右方向および高さ方向に対応する。
図2(a)に示すように、車輪2は、アルミニウム合金などから構成されるホイール2aと、そのホイール2aに嵌合されるタイヤ100とを主に備えて構成され、ホイール2aの内周部には、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)がインホイールモータとして配設されている。即ち、本実施の形態では、車輪2が車輪駆動装置3により支持され、車輪駆動装置3が車輪支持装置としての役割を担っている。
タイヤ100は、車両1の外側(図2(a)左側)に配置される第1トレッド141と、車両1の内側(図2(a)右側)に配置される第2トレッド142と、それら第1トレッド141と第2トレッド142との間に配置される中間トレッド143(いずれも図4参照)とを備えて構成されている。なお、タイヤ100の詳細構成については、図4から図6を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、図2(a)に示すように、その前面側(図2(a)左側)に突出した駆動軸3aがホイール2aに連結固定されており、駆動軸3aを介して車輪2に回転駆動力を伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置3の背面には、キャンバ角変更装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が連結固定されている。
キャンバ角変更装置4は、複数本(本実施の形態では3本)の油圧シリンダ4a〜4cを備えており、それら油圧シリンダ4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置3の背面側(図2(a)右側)にジョイント部(本実施の形態ではユニバーサルジョイント)14を介して連結固定されている。なお、図2(b)に示すように、各油圧シリンダ4a〜4cは、周方向略等間隔(即ち、周方向120°間隔)に配置されると共に、1の油圧シリンダ4bは、仮想軸Zu−Zd上に配置されている。
これにより、各油圧シリンダ4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだけ伸長駆動または収縮駆動することで、車輪駆動装置3が仮想軸Xf−Xb,Zu−Xdを揺動中心として揺動駆動され、その結果、車輪2に所定のキャンバ角および操舵角が付与される。
例えば、図2(b)に示すように、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4a,4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Xf−Xb回りに回転して(図2(b)矢印A)、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバ)のキャンバ角(車輪2の中心線が仮想線Zu−Zdに対してなす角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4b及び油圧シリンダ4a,4cがそれぞれ伸縮駆動されると、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバ)のキャンバ角が付与される。
また、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4aのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Zu−Zd回りに回転して(図2(b)矢印B)、車輪2にトーイン傾向の操舵角(車輪2の中心線が仮想線Zf−Zbに対してなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4a及び油圧シリンダ4cが伸縮駆動されると、車輪2にトーアウト傾向の操舵角が付与される。
ここで例示した各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪2が中立位置にある状態から駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方法を組み合わせて各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪2に任意のキャンバ角および操舵角を付与することができる。
図1に戻って説明する。車両用制御装置5は、上述したように構成される車両1の各部を制御するためのものであり、例えば、各ペダル11,12の操作量を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を作動制御する。或いは、ステアリング13の操作量を検出し、その検出結果に応じてキャンバ角変更装置4を作動制御する。
ここで、図3を参照して、車両用制御装置5の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置5の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置5は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71によって実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリである。また、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図1参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
キャンバ角変更装置4は、上述したように、各車輪2を操舵駆動すると共に各車輪2のキャンバ角を変更するための装置であり、各車輪2(車輪駆動装置3)に角度調整のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRは、3本の油圧シリンダ4a〜4cと、それら各油圧シリンダ4a〜4cにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ4d(図1参照)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダ4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、キャンバ角変更装置4の制御回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方向(伸長または収縮)が切り替えられる。
キャンバ角変更装置4の制御回路は、各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮量をセンサ(図示せず)で監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した場合には、油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動が停止される。なお、センサによる検出結果は、制御回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在の操舵角およびキャンバ角を得ることができる。
アクセルペダルセンサ装置11aは、アクセルペダル11の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル11の踏み込み角度を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置12aは、ブレーキペダル12の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル12の踏み込み角度を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置13aは、ステアリング13の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング13の回転角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、図3に示す他の入出力装置30としては、例えば、車輪2のキャンバ角を運転者の所望の角度とするために、運転者がキャンバ角変更装置4を手動で作動させるためのスイッチなどが例示される。
次いで、図4から図6を参照して、タイヤ100の詳細構成について説明する。図4は、タイヤ100の子午線断面図であり、図5は、図4のVで示す部分を拡大したタイヤ100の子午線断面図である。また、図6は、図4の矢印VI方向視におけるタイヤ100のトレッドパタンを模式的に示した模式図である。なお、子午線断面とは、タイヤ軸O(タイヤ回転中心となる軸)を含む平面でのタイヤ断面であり、図4では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ100は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図4から図6を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
図4に示すように、タイヤ100は、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層120と、そのゴム層120におけるトレッド部140の内周側(図4上側)に配置されるベルト部150とを主に備えて構成されている。
カーカス110は、タイヤ100の骨格を形成するものであり、繊維を撚り合わせた複数本のコード(図示せず)をタイヤ中心線CL(タイヤ幅中心となる線)に対して直角に配列することにより構成されている。なお、本実施の形態におけるタイヤ100は、かかるコードをタイヤ中心線CLに対して直角に配列したラジアルタイヤとして構成されているが、かかるコードをタイヤ中心線CLに対して斜めに配列したバイアスタイヤとして構成しても良い。
ゴム層120は、カーカス110を保護するためのものであり、図4に示すように、ビード部121と、そのビード部121に連設されタイヤ径方向外方(図4下側)へ向けて延設されるサイドウォール部130と、そのサイドウォール部130に連設されタイヤ幅方向(図4左右方向)に延設されるトレッド部140とを備えて構成されている。
ビード部121は、ホイール2a(図2(a)参照)に嵌合される部位であり、サイドウォール部130は、タイヤ側面を構成する部位である。なお、ビード部121内には、スチール製のワイヤ(図示せず)を束ねたビードコア121aが形成されており、そのビードコア121aにカーカス110が巻着されている。ここで、上述したタイヤ中心線CLとは、具体的には、一対のビードコア121a,121aの中心を結ぶビード線(図示せず)と直角をなし、かかるビード線の中心を通過する線である。
トレッド部140は、走行路面に接地する部位であり、図4に示すように、第1トレッド141と、第2トレッド142と、それら第1トレッド141及び第2トレッド142の間に位置する中間トレッド143との3種類のトレッドを備えて構成されている。
ベルト部150は、トレッド部140の剛性を確保するためのものであり、スチール製の複数本のコード(図示せず)をタイヤ中心線CLに対して斜めに配列することにより構成されている。このベルト150は、第1トレッド141の内周側(図4上側)に対応して配置される第1ベルト151と、その第1ベルト151に連設され第2トレッド142及び中間トレッド143の内周側(図4上側)に対応して配置される第2ベルト152とを備えると共に、第1ベルト151の厚みT1が第2ベルト152の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト151の剛性が第2ベルト152の剛性よりも高く構成されている。
これにより、第1トレッド141の剛性を第2トレッド142及び中間トレッド143の剛性よりも高くして、第1トレッド141を第2トレッド142及び中間トレッド143よりも変形し難くすることで、第1トレッド141を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド142及び中間トレッド143の剛性を第1トレッド141の剛性よりも低くして、第2トレッド142及び中間トレッド143を第1トレッド141よりも変形し易くすることで、第2トレッド142及び中間トレッド143をグリップ力の高い特性に構成することができる。
次いで、図4及び図5を参照して、タイヤ100の子午線断面(タイヤ軸Oを含む平面でのタイヤ断面)における外表面の輪郭を規定したタイヤプロファイルについて説明する。なお、ここでは、タイヤ100を規格(例えばJATMA規格)で規定された標準リムに嵌合して内圧230kPaとした状態で負荷能力の100%の荷重を加えた場合のタイヤプロファイルを説明する。
第1トレッド141は、図4に示す子午線断面において、外表面(以下、「トレッド面」と称す。)の輪郭がタイヤ径方向外方(図4下側)へ凸となる円弧状に構成されている。この第1トレッド141は、タイヤ軸O方向(図4左右方向)の寸法(以下、「トレッド幅」と称す。)W1が第2トレッド142のトレッド幅W2と中間トレッド143のトレッド幅W3との和よりも大きく設定され(W1>W2+W3)、第1トレッド141のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されている。
第2トレッド142は、図5に示す子午線断面において、トレッド面の輪郭が直線状に形成されると共に、かかるトレッド面がサイドウォール部130側へ向かうに従ってタイヤ径方向内方(図5上側)へ傾斜するように構成されている。具体的には、第1トレッド141と中間トレッド143との接続位置Pを通過しタイヤ軸O方向(図5左右方向)に平行に延びる仮想線L1と、接続位置Pを通過し第2トレッド142のトレッド面に接する仮想線L2とが角度θ2をなすように構成されている。即ち、第2トレッド142のトレッド面が仮想線L1に対して角度θ2で傾斜するように構成されている。
中間トレッド143は、図5に示す子午線断面において、トレッド面の輪郭が直線状に形成されると共に、かかるトレッド面がサイドウォール部130側へ向かうに従ってタイヤ径方向内方(図5上側)へ傾斜するように構成されている。具体的には、仮想線L1と、接続位置Pを通過し中間トレッド143のトレッド面に接する仮想線L3とが角度θ1をなすように構成されている。即ち、中間トレッド143のトレッド面が仮想線L1に対して角度θ1で傾斜するように構成されている。
かかる角度θ1と角度θ2との関係は、角度θ1が角度θ2よりも大きく設定され(θ1>θ2)、中間トレッド143のトレッド面が仮想線L2よりもタイヤ径方向内方(図5上側)へ入り込み、仮想線L2よりもタイヤ径方向外方(図5下側)へ露出しないように構成されている。
ここで、角度θ1は、キャンバ角をマイナス方向に最大のキャンバ角(以下、「最大キャンバ角」と称す。)とした場合に、中間トレッド143のトレッド面が走行路面と正対する角度に設定されており、本実施の形態では、最大キャンバ角を5°とするのに対応して、角度θ1が4°に設定されている。これにより、キャンバ角を最大キャンバ角とした場合には、中間トレッド143のトレッド面全域が走行路面に均等に接地した状態となる。
これに対し、角度θ2は、キャンバ角を最大キャンバ角の半分(以下、「中間キャンバ角」と称す。)とした場合に、第2トレッド142のトレッド面が走行路面と正対する角度に設定されており、本実施の形態では、中間キャンバ角が2.5°であるのに対応して、角度θ2が2°に設定されている。これにより、キャンバ角を中間キャンバ角とした場合には、第2トレッド142のトレッド面全域が走行路面に均等に接地した状態となる。
また、角度θ1がキャンバ角を最大キャンバ角とした場合の角度であると共に、角度θ2がキャンバ角を最大キャンバ角の半分(中間キャンバ角)とした場合の角度であるので、キャンバ角が一定の角度(本実施の形態では2.5°)増加する毎に第2トレッド142から中間トレッド143へと順に接地させることができる。
上述したようなタイヤプロファイルに規定される各トレッド141,142,143は、図6に示すように、それぞれ異なる形状の溝、いわゆるトレッドパタンが刻設されている。第1トレッド141のトレッドパタンは、タイヤ周方向(図6上下方向)に連続した形状、いわゆるリブタイプとして構成されている。かかるリブタイプは、タイヤ回転方向に沿う形状であるため、転がり抵抗の小さい特性を有している。
これに対し、第2トレッド142のトレッドパタンは、タイヤ幅方向(図6左右方向)に連続した形状、いわゆるラグタイプとして構成されている。かかるラグタイプは、タイヤ回転方向に交差する形状であるため、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有している。
また、中間トレッド143のトレッドパタンは、独立した複数のブロックを配列した形状、いわゆるブロックタイプとして構成されている。かかるブロックタイプは、ラグタイプと同様に、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有している。
また、各トレッド141,142,143は、それぞれ異なる損失正接tanδのトレッドゴムで構成され、第1トレッド141の損失正接tanδaが第2トレッド142の損失正接tanδbよりも小さく構成されると共に、中間トレッド143の損失正接tanδcが第2トレッド142の損失正接tanδbよりも大きく構成されている(tanδa<tanδb<tanδc)。
なお、損失正接tanδとは、各トレッド141,142,143が変形する際のエネルギーの吸収度合を示すものであり、貯蔵剪断弾性率と損失剪断弾性率との比(損失剪断弾性率/貯蔵剪断弾性率)で表される。かかる損失正接tanδは、値が小さいほどエネルギーを吸収し難いため、転がり抵抗の小さい特性を有する。一方、値が大きいほどエネルギーを吸収し易いため、転がり抵抗は大きく、また、摩耗し易いが、グリップ力の高い特性を有している。
次いで、図7を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部140の接地状態の変化について説明する。なお、本実施の形態では、キャンバ角の付与方向はマイナス方向のみとする。従って、図7では、キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角(マイナス方向に最大のキャンバ角)の状態までの接地状態の変化を説明する。
図7は、トレッド部140の接地状態を模式的に示した模式図であり、図7(a)は、キャンバ角が0°の状態を、図7(b)は、キャンバ角が中間キャンバ角の状態を、図7(c)は、キャンバ角が最大キャンバ角の状態を、それぞれ示している。なお、図7では、図面の理解を容易とするため、主要部のみに符号を付して、図面を簡略化している。また、図7に示すトレッド部140の接地状態は、乗員や荷物などの荷重による影響を考慮しない理想的な接地状態を示している。
図7(a)に示すように、キャンバ角が0°の状態では、タイヤ中心線CLが走行路面Gと直交する。この場合、第1トレッド141は、トレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されているので(図4参照)、走行路面Gに接地した状態となる。
これに対し、第2トレッド142は、トレッド面が仮想線L1に対して角度θ2で傾斜するように構成されているので(図5参照)、走行路面Gに対しても角度θ2で傾斜し、走行路面Gから離間した状態となる。
また、中間トレッド143は、トレッド面が仮想線L1に対して角度θ1で傾斜するように構成されているので(図5参照)、走行路面Gに対しても角度θ1で傾斜し、第2トレッド142と同様に、走行路面Gから離間した状態となる。
キャンバ角が0°の状態から中間キャンバ角の状態となると、図7(b)に示すように、走行路面Gに直交する鉛直線Vに対しタイヤ中心線CLが中間キャンバ角と同じ角度で傾斜する。この場合、第2トレッド142は、角度θ2がキャンバ角を中間キャンバ角とした場合にトレッド面が走行路面Gと正対する角度に設定されているので、走行路面Gに接地した状態となる。
これに対し、中間トレッド143は、角度θ1がキャンバ角を中間キャンバ角よりも大きな最大キャンバ角とした場合にトレッド面が走行路面Gと正対する角度に設定されているので、走行路面Gから離間した状態が維持される。
但し、キャンバ角を付与すると、それに伴い、第1トレッド141及び第2トレッド142に変形が生じるため、第1トレッド141との接続部付近および第2トレッド142との接続部付近の中間トレッド143が僅かながら走行路面Gに接地した状態となる。なお、第1トレッド141は、走行路面Gに接地した状態が維持される。
キャンバ角が中間キャンバ角の状態から最大キャンバ角の状態となると、図7(c)に示すように、走行路面Gに直交する鉛直線Vに対しタイヤ中心線CLが最大キャンバ角と同じ角度で傾斜する。この場合、中間トレッド143は、角度θ1がキャンバ角を最大キャンバ角とした場合にトレッド面が走行路面Gと正対する角度に設定されているので、走行路面Gに接地した状態となる。
また、第2トレッド142は、角度θ2がキャンバ角を最大キャンバ角よりも小さな中間キャンバ角とした場合にトレッド面が走行路面Gと正対する角度に設定されているので、走行路面Gに接地した状態が維持される。なお、第1トレッド141も、走行路面Gに接地した状態が維持される。
次いで、図8を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部140の接地面形状の変化およびタイヤ100の特性の変化について説明する。図8(a)から図8(c)は、トレッド部140の接地面形状を模式的に示した模式図であり、図8(d)から図8(f)は、タイヤ100の特性を模式的に示した模式図である。また、図8(a)及び図8(d)は、キャンバ角が0°の状態を、図8(b)及び図8(e)は、キャンバ角が中間キャンバ角の状態を、図8(c)及び図8(f)は、キャンバ角が最大キャンバ角の状態を、それぞれ示している。
図8(a)に示すように、キャンバ角が0°の状態では、上述したように、第2トレッド142及び中間トレッド143は走行路面から離間した状態となり、第1トレッド141のみが接地した状態となるので、第1トレッド141のみが接地面として現れ、接地面中心GCは第1トレッド141上に位置する。
この場合、第1トレッド141は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部150の剛性の面で第2トレッド142及び中間トレッド143よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、図8(d)に示すように、タイヤ100に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
また、かかる場合には、第1トレッド141よりも転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易い特性である第2トレッド142及び中間トレッド143を走行路面から離間させることができるので、その分、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができると共に、第2トレッド142及び中間トレッド143が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
図8(b)に示すように、キャンバ角が中間キャンバ角の状態となると、上述したように、第2トレッド142が接地した状態となるので、接地面に第2トレッド142が現れ、接地面中心GCも中間トレッド143側(図8(b)右側)へ移動する。
この場合、第2トレッド142は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部150の剛性の面で第1トレッド141よりもグリップ力の高い特性であるので、図8(e)に示すように、タイヤ100に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト152の剛性が第1ベルト151の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって第2トレッド142を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド141の接地面圧と第2トレッド142の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
なお、上述したように、キャンバ角を付与すると、それに伴い、第1トレッド141及び第2トレッド142に変形が生じるため、第1トレッド141との接続部付近および第2トレッド142との接続部付近における中間トレッド143が僅かながら走行路面に接地した状態となるので、それら第1トレッド141との接続部付近および第2トレッド142との接続部付近における中間トレッド143が接地面に現れる。
図8(c)に示すように、キャンバ角が最大キャンバ角の状態となると、上述したように、中間トレッド143が接地した状態となるので、接地面に中間トレッド143が現れ、接地面中心GCも中間トレッド143側(図8(c)右側)へ移動して、中間トレッド143のトレッド幅中心に位置する。
この場合、中間トレッド143は、損失正接tanδの面で第2トレッド142よりもグリップ力の高い特性であるので、図8(f)に示すように、タイヤ100に更なる高グリップ特性を付与することができる。その結果、タイヤ100のグリップ力をより増加して、グリップ性能のより一層の向上を図ることができる。また、かかる場合には、接地面中心GCをグリップ力が最大となる中間トレッド143に位置させることができるので、その分、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト152の剛性が第1ベルト151の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって中間トレッド143を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド141の接地面圧と第2トレッド142の接地面圧と中間トレッド143の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
このように、本実施の形態におけるタイヤ100によれば、第2トレッド142を接地させた後に中間トレッド143を接地させる、即ち、グリップ力の低いトレッド面からグリップ力の高いトレッド面へと順に接地させることができるので、タイヤ100全体としてのグリップ力が急激に変化することを抑制して、車両1の安定性を保つことができる。
更に、上述したように、キャンバ角が一定の角度(本実施の形態では2.5°)増加する毎に第2トレッド142から中間トレッド143へと順に接地させることができるので、タイヤ100全体としてのグリップ力が急激に変化することを抑制して、車両1の安定性を保つことができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ100によれば、損失正接tanδが大きく構成され変形し易い中間トレッド143が第1トレッド141と第2トレッド142との間に配置されているので、中間トレッド143を接地させるために必要な最大キャンバ角をより小さくすることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ100によれば、第1ベルト151の剛性が第2ベルト152の剛性よりも高く構成されているので、キャンバ角が0°の状態での車両1の操縦安定性の向上を図ることができると共に、キャンバ角を付与した場合には、第2トレッド142及び中間トレッド143を変形させ易くして、それら第2トレッド142及び中間トレッド143を確実に接地させることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ100によれば、第1トレッド141が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド142及び中間トレッド143が第1トレッド141よりも車両1の内側に配置されているので、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド142及び中間トレッド143の接地面積を増やす場合には、ネガティブキャンバを付与した状態とすることができ、その結果、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
次いで、図9及び図10を参照して、第2実施の形態から第7実施の形態におけるタイヤ200〜700について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9及び図10は、タイヤ200〜700の子午線断面図であり、第1実施の形態におけるタイヤ100の図5に対応する部分のみを図示している。また、図9(a)は、第2実施の形態におけるタイヤ200を、図9(b)は、第3実施の形態におけるタイヤ300を、図9(c)は、第4実施の形態におけるタイヤ400を、図10(a)は、第5実施の形態におけるタイヤ500を、図10(b)は、第6実施の形態におけるタイヤ600を、図10(c)は、第7実施の形態におけるタイヤ700を、それぞれ示している。
第2実施の形態から第7実施の形態におけるタイヤ200〜700は、第1実施の形態におけるタイヤ100のタイヤプロファイルを変更したものであり、以下に各実施の形態におけるタイヤ200〜700のタイヤプロファイルについて説明する。なお、ここでは、第1実施の形態の場合と同様に、タイヤ200〜700を規格(例えばJATMA規格)で規定された標準リムに嵌合して内圧230kPaとした状態で負荷能力の100%の荷重を加えた場合のタイヤプロファイルを説明する。
第2実施の形態におけるタイヤ200の第2トレッド242は、第1実施の形態におけるタイヤ100に対し、図9(a)に示す子午線断面(タイヤ軸Oを含む平面でのタイヤ断面)において、トレッド面が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(a)下側)へ露出して仮想線L6と仮想線L1との間に位置すると共に仮想線L200に接して構成されている。具体的には、仮想線L6は、第1トレッド141と中間トレッド143との接続位置Pと、第2トレッド242と中間トレッド143との接続位置Qとを通過する線であり、本実施の形態では、第1実施の形態における仮想線L3に等しく、仮想線L6と仮想線L1とが角度θ1をなしている。また、仮想線L200は、接続位置Qを通過し、その仮想線L200と仮想線L1とのなす角度θ200が角度θ1よりも小さく設定されている(θ200<θ1)。
なお、図9(a)では、第2トレッド242のトレッド面がサイドウォール部130側へ向かうに従ってタイヤ径方向内方(図9(a)上側)へ傾斜するように構成される場合を図示しているが、第2トレッド242のトレッド面を仮想線L1と平行に構成しても良く、或いは、サイドウォール部130側へ向かうに従ってタイヤ径方向外方(図9(a)下側)へ傾斜するように構成しても良い。また、仮想線L6は、第1実施の形態における仮想線L3に等しい場合に限られず、仮想線L1に対して所定角度をなす線であれば良い。
第3実施の形態におけるタイヤ300の第2トレッド342は、第2実施の形態におけるタイヤ200に対し、図9(b)に示す子午線断面において、トレッド面が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(b)下側)に露出して仮想線L6と仮想線L1との間に位置すると共に仮想線L300に接して構成されている。具体的には、仮想線L300は、第2トレッド342と中間トレッド143との接続位置Qにおいて仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(b)下側)を通過し、その仮想線L300と仮想線L1とのなす角度θ300が角度θ1よりも大きく設定されている(θ300>θ1)。
なお、図9(b)では、第2トレッド342のトレッド面全域が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(b)下側)へ露出するように構成される場合を図示しているが、第2トレッド342のトレッド面の一部のみが仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(b)下側)へ露出するように構成しても良い。
第4実施の形態におけるタイヤ400の第2トレッド442は、第3実施の形態におけるタイヤ300に対し、図9(c)に示す子午線断面において、トレッド面がタイヤ径方向外方(図9(c)下側)へ凸となる円弧状に構成されると共に仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(c)下側)に露出して仮想線L6と仮想線L1との間に位置するように構成されている。
なお、図9(c)では、第2トレッド442のトレッド面全域が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(c)下側)へ露出するように構成される場合を図示しているが、第2トレッド442のトレッド面の一部のみが仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図9(c)下側)へ露出するように構成しても良い。
第5実施の形態におけるタイヤ500の中間トレッド543は、第1実施の形態におけるタイヤ100に対し、図10(a)に示す子午線断面において、トレッド面がタイヤ径方向内方(図10(a)上側)へ凸となる円弧状に構成されると共に仮想線L6よりもタイヤ径方向内方(図10(a)上側)へ入り込み仮想線L1とは反対側に位置するように構成されている。具体的には、仮想線L6は、第1トレッド141と中間トレッド543との接続位置Pと、第2トレッド142と中間トレッド543との接続位置Qとを通過する線であり、本実施の形態では、第1実施の形態における仮想線L2に等しく、仮想線L6と仮想線L1とが角度θ2をなしている。
なお、図10(a)では、中間トレッド543のトレッド面全域が仮想線L6よりもタイヤ径方向内方(図10(a)上側)へ入り込み、仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(a)下側)へ露出しないように構成される場合を図示しているが、中間トレッド543のトレッド面の一部が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(a)下側)へ露出するように構成しても良い。また、仮想線L6は、第1実施の形態における仮想線L2に等しい場合に限られず、仮想線L1に対して所定角度をなす線であれば良い。
第6実施の形態におけるタイヤ600の第2トレッド642は、第5実施の形態におけるタイヤ500に対し、図10(b)に示す子午線断面において、トレッド面がタイヤ径方向外方(図10(b)下側)へ凸となる円弧状に構成されると共に仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(b)下側)へ露出して仮想線L6と仮想線L1との間に位置するように構成されている。
なお、図10(b)では、第2トレッド642のトレッド面全域が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(b)下側)へ露出するように構成される場合を図示しているが、第2トレッド642のトレッド面の一部のみが仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(b)下側)へ露出するように構成しても良い。
第7実施の形態におけるタイヤ700の中間トレッド743は、第6実施の形態におけるタイヤ600に対し、図10(c)に示す子午線断面において、トレッド面がタイヤ径方向外方(図10(c)下側)へ凸となる円弧状に構成されると共に仮想線L6よりもタイヤ径方向内方(図10(c)上側)へ入り込み仮想線L1とは反対側に位置するように構成されている。
なお、図10(c)では、中間トレッド743のトレッド面全域が仮想線L6よりもタイヤ径方向内方(図10(c)上側)へ入り込み、仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(c)下側)へ露出しないように構成される場合を図示しているが、中間トレッド743のトレッド面の一部が仮想線L6よりもタイヤ径方向外方(図10(c)下側)へ露出するように構成しても良い。
第2実施の形態から第7実施の形態におけるタイヤ200〜700は、いずれの実施の形態においても、第1実施の形態におけるタイヤ100の場合と同様に、キャンバ角が0°の状態では、第2トレッド142,242,342,442,642及び中間トレッド143,543,743が走行路面から離間した状態となり、第1トレッド141のみが接地した状態となる。これにより、転がり抵抗の小さい特性に構成される第1トレッド141を使用して省燃費化を図ることができると共に、偏摩耗の発生を抑制することができる。
これに対し、キャンバ角が中間キャンバ角の状態となると、第1トレッド141は接地した状態が維持され、第2トレッド142,242,342,442,642が接地した状態となる。これにより、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド142,242,342,442,642を使用してグリップ性能の向上を図ることができる。
また、キャンバ角が最大キャンバ角の状態となると、第1トレッド141及び第2トレッド142,242,342,442,642は接地した状態が維持され、中間トレッド143,543,743が接地した状態となる。これにより、第2トレッド142,242,342,442,642よりもグリップ力の高い特性に構成される中間トレッド143,543,743を使用してグリップ性能のより一層の向上を図ることができる。
このように、第2実施の形態から第7実施の形態におけるタイヤ200〜700は、第1実施の形態におけるタイヤ100の第2トレッド142及び中間トレッド143のタイヤプロファイルを変更したものであり、キャンバ角が0°の状態で第2トレッド142,242,342,442,642及び中間トレッド143,543,743が走行路面から離間した状態となり、キャンバ角が中間キャンバ角および(又は)最大キャンバ角の状態で第2トレッド142,242,342,442,642及び中間トレッド143,543,743が接地した状態となるように構成されていることを趣旨としている。
次いで、図11を参照して、第8実施の形態におけるタイヤ800について説明する。なお、ここでは、タイヤ800が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されるものとして説明する。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11は、タイヤ800の子午線断面図である。なお、図11では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ800は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図11を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
図11に示すように、タイヤ800は、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層820と、そのゴム層820におけるトレッド部840の内周側に(図11上側)に配置されるベルト部850とを主に備えて構成されている。
ゴム層820は、カーカス110を保護するためのものであり、図11に示すように、タイヤ幅方向(図11左右方向)に延設されるトレッド部840と、そのトレッド部840を挟んで両側に連設されるショルダー部860と、そのショルダー部860の両側に更に連設されるサイドウォール部830とを備えて構成されている。
トレッド部840は、走行路面に接地する部位であり、図11に示すように、第1トレッド841と、その第1トレッド841に連設される第2トレッド842との2種類のトレッドを備えて構成されている。タイヤ800は、第1トレッド841が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド842が車両1の内側に配置されるように車両1に装着される。
サイドウォール部830は、タイヤ側面を構成する部位であり、図11に示すように、第1トレッド841側(図11左側)に位置する第1サイドウォール831と、第2トレッド842側(図11右側)に位置する第2サイドウォール832とを備えて構成されている。
ショルダー部860は、トレッド部840とサイドウォール部860との間の肩を構成する部位であり、第1トレッド841及び第1サイドウォール831の間に位置する第1ショルダー861と、第2トレッド842及び第2サイドウォール832の間に位置する第2ショルダー862とを備えて構成されている。
ベルト部850は、トレッド部840の剛性を確保するためのものであり、第1トレッド841の内周側(図11上側)に対応して配置される第1ベルト851と、その第1ベルト851に連設され第2トレッド842の内周側(図11上側)に対応して配置される第2ベルト852とを備えている。これら第1ベルト851及び第2ベルト852は、第1ベルト851の厚みT1が第2ベルト852の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト851の剛性が第2ベルト852の剛性よりも高く構成されている。
これにより、第1トレッド841の剛性を第2トレッド842の剛性よりも高くして、第1トレッド841を第2トレッド842よりも変形し難くすることで、第1トレッド841を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド842の剛性を第1トレッド841の剛性よりも低くして、第2トレッド842を第1トレッド841よりも変形し易くすることで、第2トレッド842をグリップ力の高い特性に構成することができる。
次いで、図11を参照して、タイヤ800のタイヤプロファイルについて説明する。なお、ここでは、タイヤ800を規格(例えばJATMA規格)で規定された標準リムに嵌合して内圧230kPaとした状態で負荷能力の100%の荷重を加えた場合のタイヤプロファイルを説明する。
第1トレッド841は、図11に示す子午線断面(タイヤ軸Oを含む平面でのタイヤ断面)において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図11下側)へ凸となる円弧状に構成されている。この第1トレッド841は、トレッド幅W1に構成され、そのトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置すると共に、キャンバ角が0°の状態で走行路面に接地する接地端であって車両1の外側(図11左側)の接地端位置E1(図12(a)参照)が位置するように構成されている。即ち、かかる接地端位置E1よりも第1トレッド841が車両1の外側(図11左側)まで延設されるように構成されている。
また、第1トレッド841は、第1トレッド841と第2トレッド842との接続位置Pを通過しタイヤ軸O方向(図11左右方向)に平行に延びる仮想線L1と、第1トレッド841のトレッド端であって車両1の外側(図11左側)に対応するトレッド端位置P1とがタイヤ軸Oと直交する方向(図11上下方向)に距離h1をなすように構成されている。
第2トレッド842は、図11に示す子午線断面において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図11下側)へ凸となる円弧状に構成されている。この第2トレッド842は、トレッド幅W2に構成され、そのトレッド幅W2内に、キャンバ角が最大キャンバ角の状態で走行路面に接地する接地端であって車両1の内側(図11右側)の接地端位置E2(図12(b)参照)が位置するように構成されている。即ち、かかる接地端位置E2よりも第2トレッド842が車両1の内側(図11右側)まで延設されるように構成されている。
また、第2トレッド842は、仮想線L1と、第2トレッド842のトレッド端であって車両1の内側(図11右側)に対応するトレッド端位置P2とがタイヤ軸Oと直交する方向(図11上下方向)に距離h2をなすように構成されている。
かかる距離h1と距離h2との関係は、距離h2が距離h1よりも大きく設定され(h1<h2)、接続位置P及びトレッド端位置P2を通過する仮想線L4と仮想線L1とがなす角度βが、接続位置P及びトレッド端位置P1を通過する仮想線L5と仮想線L1とがなす角度αよりも大きくなるように構成されている(α<β)。
ここで、角度βは、キャンバ角を0°とした場合に、接地面中に占める第1トレッド841の接地面積の割合を大きくする一方、キャンバ角を最大キャンバ角とした場合に、第2トレッド842の接地面積の割合を大きくし、キャンバ角が0°の状態と最大キャンバ角の状態との接地面積の差を大きく確保することのできる角度に設定されており、本実施の形態では、最大キャンバ角を5°とするのに対応して、角度βが3°に設定されている。
なお、角度βは、1°以上かつ10°以下の範囲内に設定することが望ましい。即ち、角度βを1°よりも小さくすると、キャンバ角が0°の状態で既に第2トレッド842の接地面積の割合が大きくなり、キャンバ角が最大キャンバ角の状態との接地面積の差を十分に確保することができなくなる。これに対し、角度βを1°以上とすることで、第1トレッド841と第2トレッド842との接地面積の差を大きく確保することができる。
一方、角度βを10°よりも大きくすると、第2トレッド842を接地端位置E2(図12(b)参照)まで接地させるのに必要な最大キャンバ角が大きくなり、車両1の不安定化を招く。また、この場合には、大きなキャンバ角がつけられた状態で第2トレッド842が接地することで、第2トレッド842側に荷重が偏り、サイドウォール部860なども変形する。その結果、キャンバ角の変更に伴う第2トレッド842の接地面形状の変化が大きくなり、第2トレッド842が先に摩耗する偏摩耗の発生を招く。これに対し、角度βを10°以下とすることで、第2トレッド842に接地荷重が偏って作用することを抑制することができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、第2トレッド842が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
上述したようなタイヤプロファイルに規定される各トレッド841,842は、それぞれ異なる形状の溝、いわゆるトレッドパタンが刻設されている。第1トレッド841のトレッドパタンは、転がり抵抗の小さい特性を有するリブタイプとして構成されている。これに対し、第2トレッド842のトレッドパタンは、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有するラグタイプとして構成されている。
また、各トレッド841,842は、それぞれ異なる損失正接tanδのトレッドゴムで構成され、第1トレッド841の損失正接tanδaが第2トレッド842の損失正接tanδbの2/3倍よりも小さく構成されると共に(tanδa<2/3・tanδb)、第1トレッド841の損失正接tanδaが60℃において0.15よりも小さく構成されている。即ち、第1トレッド841が転がり抵抗の小さい特性に構成されると共に、第2トレッド842が転がり抵抗は大きく、また、摩耗し易いが、グリップ力の高い特性に構成されている。
なお、第1トレッド841の損失正接tanδaは、60℃において、0.1よりも大きく且つ0.15よりも小さい範囲内に構成することが望ましい。即ち、損失正接tanδaを0.1以下とすると、製造が困難であると共に、0.15以上とすると、第1トレッド841の転がり抵抗を十分に低減することができなくなる。これに対し、損失正接tanδaを0.1よりも大きく且つ0.15よりも小さい範囲内とすることで、タイヤ800の製造を容易としつつ、転がり抵抗を十分に低減することができる。
次いで、図12を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部840の接地状態の変化および接地面形状の変化について説明する。なお、本実施の形態では、キャンバ角の付与方向はマイナス方向のみとする。従って、図12では、キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角(マイナス方向に最大のキャンバ角)の状態までの接地状態の変化および接地面形状の変化を説明する。
図12(a)及び図12(b)は、トレッド部840の接地状態を模式的に示した模式図であり、図12(c)及び図12(d)は、トレッド部840の接地面形状を模式的に示した模式図である。また、図12(a)及び図12(c)は、キャンバ角が0°の状態を、図12(b)及び図12(d)は、キャンバ角が最大キャンバ角の状態を、それぞれ示している。なお、図12(a)及び図12(b)では、図面の理解を容易とするため、主要部のみに符号を付して、図面を簡略化している。また、図12(a)及び図12(b)に示すトレッド部840の接地状態は、乗員や荷物などの荷重による影響を考慮しない理想的な接地状態を示している。
図12(a)に示すように、キャンバ角が0°の状態では、タイヤ中心線CLが走行路面Gと直交する。この場合、第1トレッド841及び第2トレッド842がいずれも走行路面Gに接地した状態となり、図12(c)に示すように、第1トレッド841及び第2トレッド842が接地面として現れる。また、第1トレッド841のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されているので(図11参照)、接地面中心GCが第1トレッド841上に位置する。
この場合、第1トレッド841は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部850の剛性の面で第2トレッド842よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ800に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
また、かかる場合には、距離h2が距離h1よりも大きく設定されているので(図11参照)、接地面中に占める第1トレッド841の接地面積の割合が大きくなり、第2トレッド842の接地面積の割合が小さくなる。よって、第1トレッド841よりも転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易い特性である第2トレッド842の接地面積の割合を小さくすることができるので、その分、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができると共に、第2トレッド842が先に摩耗する偏摩耗を抑制することができる。
キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角の状態となると、図12(b)に示すように、走行路面Gに直交する鉛直線Vに対しタイヤ中心線CLが最大キャンバ角と同じ角度で傾斜する。この場合、第2トレッド842は、角度βがキャンバ角を最大キャンバ角とした場合に接地面中に占める第2トレッド842の接地面積の割合を大きくすることのできる角度に設定されているので、図12(d)に示すように、第2トレッド842の接地面積の割合が大きくなり、第1トレッド841の接地面積の割合が小さくなる。また、接地面中心GCも第2トレッド842側(図12(d)右側)へ移動して、第2トレッド842上に位置する。
この場合、第2トレッド842は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部850の剛性の面で第1トレッド841よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ800に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト852の剛性が第1ベルト851の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって第2トレッド842を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド841の接地面圧と第2トレッド842の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
このように、本実施の形態におけるタイヤ800によれば、距離h2が距離h1よりも大きく設定されているので、転がり抵抗の小さい第1トレッド841とグリップ力の高い第2トレッド842との接地面積の差を大きくして、転がり抵抗の低減とグリップ性能の向上との両立を効率的に図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ800によれば、第1トレッド841のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されると共に、距離h2が距離h1よりも大きく設定されているので、キャンバ角を最大キャンバ角とした場合でも、第2トレッド842に接地荷重が偏って作用することを抑制することができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、摩耗し易い特性に構成される第2トレッド842が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ800によれば、第1トレッド841の損失正接tanδaが第2トレッド842の損失正接tanδbの2/3倍よりも小さく構成されているので、第1トレッド841と第2トレッド842との特性差を十分に確保することができる。その結果、転がり抵抗の低減とグリップ力の向上とを効果的に発揮させることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ800によれば、第1トレッド841が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド842が車両1の内側に配置されているので、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド842の接地面積を増やす場合には、ネガティブキャンバを付与した状態とすることができ、その結果、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
次いで、図13を参照して、第9実施の形態におけるタイヤ900について説明する。なお、ここでは、タイヤ900が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されるものとして説明する。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図13は、タイヤ900の子午線断面図である。なお、図13では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ900は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図13を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
図13に示すように、タイヤ900は、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層920と、そのゴム層920におけるトレッド部940の内周側に(図13上側)に配置されるベルト部950とを主に備えて構成されている。
ゴム層920は、カーカス110を保護するためのものであり、図13に示すように、タイヤ幅方向(図13左右方向)に延設されるトレッド部940と、そのトレッド部940を挟んで両側に連設されるショルダー部960と、そのショルダー部960の両側に更に連設されるサイドウォール部930とを備えて構成されている。
トレッド部940は、走行路面に接地する部位であり、図13に示すように、第1トレッド941と、その第1トレッド941に連設される第2トレッド942との2種類のトレッドを備えて構成されている。タイヤ900は、第1トレッド941が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド942が車両1の内側に配置されるように車両1に装着される。
サイドウォール部930は、タイヤ側面を構成する部位であり、図13に示すように、第1トレッド941側(図13左側)に位置する第1サイドウォール931と、第2トレッド942側(図13右側)に位置する第2サイドウォール932とを備えて構成されている。
ショルダー部960は、トレッド部940とサイドウォール部960との間の肩を構成する部位であり、第1トレッド941及び第1サイドウォール931の間に位置する第1ショルダー961と、第2トレッド942及び第2サイドウォール932の間に位置する第2ショルダー962とを備えて構成されている。
ベルト部950は、トレッド部940の剛性を確保するためのものであり、第1トレッド941の内周側(図13上側)に対応して配置される第1ベルト951と、その第1ベルト951に連設され第2トレッド942の内周側(図13上側)に対応して配置される第2ベルト952とを備えている。これら第1ベルト951及び第2ベルト952は、第1ベルト951の厚みT1が第2ベルト952の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト951の剛性が第2ベルト952の剛性よりも高く構成されている。
これにより、第1トレッド941の剛性を第2トレッド942の剛性よりも高くして、第1トレッド941を第2トレッド942よりも変形し難くすることで、第1トレッド941を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド942の剛性を第1トレッド941の剛性よりも低くして、第2トレッド942を第1トレッド941よりも変形し易くすることで、第2トレッド942をグリップ力の高い特性に構成することができる。
次いで、図13を参照して、タイヤ900のタイヤプロファイルについて説明する。なお、ここでは、タイヤ900を規格(例えばJATMA規格)で規定された標準リムに嵌合して内圧230kPaとした状態で負荷能力の100%の荷重を加えた場合のタイヤプロファイルを説明する。
第1トレッド941は、図13に示す子午線断面(タイヤ軸Oを含む平面でのタイヤ断面)において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図13下側)へ凸となる曲率半径Rt1の円弧状に構成されている。この第1トレッド941は、トレッド幅W1に構成され、そのトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されている。
第2トレッド942は、図13に示す子午線断面において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図13下側)へ凸となる曲率半径Rt2の円弧状に構成され、その曲率半径Rt2が曲率半径Rt1よりも小さく設定されている(Rt1>Rt2)。この第2トレッド942は、トレッド幅W2に構成されている。
第1サイドウォール931は、図13に示す子午線断面において、外表面の輪郭がタイヤ幅方向外方(図13左側)へ凸となる曲率半径Rw1の円弧状に構成されると共に、第2サイドウォール932は、外表面の輪郭がタイヤ幅方向外方(図13右側)へ凸となる曲率半径Rw2の円弧状に構成されている。
これら第1サイドウォール931及び第2サイドウォール932は、タイヤ最大幅部におけるタイヤ軸O方向(図13左右方向)長さに関し、第2サイドウォール932の肉厚M2が第1サイドウォール931の肉厚M1よりも厚く設定され(M1<M2)、第2サイドウォール932の剛性が第1サイドウォール931の剛性よりも高く構成されている。
これにより、キャンバ角を最大キャンバ角とした場合でも、第2トレッド942側の強度を確保して、第2トレッド942及び第2ショルダー962の異常変形を抑制することができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、摩耗し易い特性に構成される第2トレッド942が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
また、タイヤ最大幅部におけるタイヤ軸O方向長さに関し、第2サイドウォール932の肉厚M2が第1サイドウォール931の肉厚M1よりも厚く設定されているので、タイヤ軸O方向長さが肉厚とされた第2サイドウォール932のゴム状弾性体が変形抵抗となり、キャンバ角が最大キャンバ角の状態において、第2トレッド942のグリップ性能の向上を図ることができる。
第1ショルダー961は、図13に示す子午線断面において、外表面の輪郭が第1トレッド941のトレッド面の輪郭と第1サイドウォール931の外表面の輪郭とのそれぞれに内接する曲率半径Rs1の円弧状に構成されると共に、第2ショルダー962は、外表面の輪郭が第2トレッド942のトレッド面の輪郭と第2サイドウォール932の外表面の輪郭とのそれぞれに内接する曲率半径Rs2の円弧状に構成され、その曲率半径Rs2が曲率半径Rs1よりも大きく設定されている(Rs1<Rs2)。
上述したようなタイヤプロファイルに規定される各トレッド941,942は、それぞれ異なる形状の溝、いわゆるトレッドパタンが刻設されている。第1トレッド941のトレッドパタンは、転がり抵抗の小さい特性を有するリブタイプとして構成されている。これに対し、第2トレッド942のトレッドパタンは、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有するブロックタイプとして構成されている。
また、各トレッド941,942は、それぞれ異なる損失正接tanδのトレッドゴムで構成され、第1トレッド941の損失正接tanδaが第2トレッド942の損失正接tanδbよりも小さく構成されている(tanδa<tanδb)。即ち、第1トレッド941が転がり抵抗の小さい特性に構成されると共に、第2トレッド942が転がり抵抗は大きく、また、摩耗し易いが、グリップ力の高い特性に構成されている。
次いで、図14を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部940の接地状態の変化および接地面形状の変化について説明する。なお、本実施の形態では、キャンバ角の付与方向はマイナス方向のみとする。従って、図14では、キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角(マイナス方向に最大のキャンバ角)の状態までの接地状態の変化および接地面形状の変化を説明する。
図14(a)及び図14(b)は、トレッド部940の接地状態を模式的に示した模式図であり、図14(c)及び図14(d)は、トレッド部940の接地面形状を模式的に示した模式図である。また、図14(a)及び図14(c)は、キャンバ角が0°の状態を、図14(b)及び図14(d)は、キャンバ角が最大キャンバ角の状態を、それぞれ示している。なお、図14(a)及び図14(b)では、図面の理解を容易とするため、主要部のみに符号を付して、図面を簡略化している。また、図14(a)及び図14(b)に示すトレッド部940の接地状態は、乗員や荷物などの荷重による影響を考慮しない理想的な接地状態を示している。
図14(a)に示すように、キャンバ角が0°の状態では、タイヤ中心線CLが走行路面Gと直交する。この場合、第1トレッド941及び第2トレッド942がいずれも走行路面Gに接地した状態となり、図14(c)に示すように、第1トレッド941及び第2トレッド942が接地面として現れる。また、第1トレッド941のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されているので(図13参照)、接地面中心GCが第1トレッド941上に位置する。
この場合、第1トレッド941は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部950の剛性の面で第2トレッド942よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ900に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
また、かかる場合には、第2トレッド942のトレッド面における輪郭の曲率半径Rt2が第1トレッド941のトレッド面における輪郭の曲率半径Rt1よりも小さく構成されているので(図13参照)、接地面中に占める第1トレッド941の接地面積の割合が大きくなり、第2トレッド942の接地面積の割合が小さくなる。よって、第1トレッド941よりも転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易い特性である第2トレッド942の接地面積の割合を小さくすることができるので、その分、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができると共に、第2トレッド942が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角の状態となると、図14(b)に示すように、走行路面Gに直交する鉛直線Vに対しタイヤ中心線CLが最大キャンバ角と同じ角度で傾斜する。この場合、曲率半径Rt2が曲率半径Rt1よりも小さく構成されると共に、第2ショルダー962の外表面における輪郭の曲率半径Rs2が第1ショルダー961の外表面における輪郭の曲率半径Rs1よりも大きく構成されているので、図14(d)に示すように、第2トレッド942の接地面積の割合が大きくなり、第1トレッド941の接地面積の割合が小さくなる。また、接地面中心GCも第2トレッド942側(図14(d)右側)へ移動して、第2トレッド942上に位置する。
なお、図14(b)及び図14(d)では、第2ショルダー962が接地せず走行路面から離間した状態を図示しているが、最大キャンバ角が本実施の形態における最大キャンバ角よりも大きく設定される場合には、第2ショルダー962も接地面に現れ、第2トレッド942及び第2ショルダー962の接地面積の割合が大きくなり、第1トレッド941の接地面積の割合が小さくなる。
この場合、第2トレッド942は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部950の剛性の面で第1トレッド941よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ900に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト952の剛性が第1ベルト951の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって第2トレッド942を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド941の接地面圧と第2トレッド942の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
このように、本実施の形態におけるタイヤ900によれば、曲率半径Rt2が曲率半径Rt1よりも小さく構成されているので、転がり抵抗の小さい第1トレッド941とグリップ力の高い第2トレッド942との接地面積の差を大きくして、転がり抵抗の低減とグリップ性能の向上との両立を効率的に図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ900によれば、第1トレッド941のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置すると共に、曲率半径Rt2が曲率半径Rt1よりも小さく構成されているので、キャンバ角を最大キャンバ角とした場合でも、第2トレッド942に接地荷重が偏って作用することを抑制することができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、摩耗し易い特性に構成される第2トレッド942が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ900によれば、タイヤ最大幅部におけるタイヤ軸O方向長さに関し、第2サイドウォール932の肉厚M2が第1サイドウォール931の肉厚M1よりも厚く設定され、第2サイドウォール932の剛性が第1サイドウォール931の剛性よりも高く構成されているので、第2トレッド942にグリップ力の高い特性を付与するべく、第2ベルト部952の厚みT2を第1ベルト951の厚みT1よりも薄く設定し、第2トレッド942の剛性を第1トレッド941の剛性よりも低く構成した場合でも、タイヤ軸O方向長さが肉厚とされた第2サイドウォール932のゴム状弾性体が変形抵抗となり、キャンバ角が最大キャンバ角の状態において、第2トレッド942及び第2ショルダー962の異常変形を抑制することができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、摩耗し易い特性に構成される第2トレッド942が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ900によれば、第1トレッド941が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド942が車両1の内側に配置されているので、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド942の接地面積を増やす場合には、ネガティブキャンバを付与した状態とすることができ、その結果、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
次いで、図15を参照して、第10実施の形態におけるタイヤ1000について説明する。なお、ここでは、タイヤ1000が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されるものとして説明する。また、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図15は、タイヤ1000の子午線断面図である。なお、図15では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1000は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図15を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
図15に示すように、タイヤ1000は、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層1020と、そのゴム層1020におけるトレッド部1040の内周側に(図15上側)に配置されるベルト部1050とを主に備えて構成されている。
ゴム層1020は、カーカス110を保護するためのものであり、図15に示すように、ビード部121と、そのビード部121に連設されタイヤ径方向外方(図15下側)へ向けて延設されるサイドウォール部130と、そのサイドウォール部130に連設されタイヤ幅方向(図15左右方向)に延設されるトレッド部1040とを備えて構成されている。
トレッド部1040は、走行路面に接地する部位であり、図15に示すように、第1トレッド1041と、その第1トレッド1041を挟んで両側に連設される中間トレッド1043と、その中間トレッド1043の両側に更に連設される第2トレッド1042との3種類のトレッドを備えて構成されている。
ベルト部1050は、トレッド部1040の剛性を確保するためのものであり、第1トレッド1041の内周側(図15上側)に対応して配置される第1ベルト1051と、その第1ベルト1051を挟んで両側に連設され第2トレッド1042及び中間トレッド1043の内周側(図15上側)に対応して配置される第2ベルト1052とを備えている。これら第1ベルト1051及び第2ベルト1052は、第1ベルト1051の厚みT1が第2ベルト1052の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト1051の剛性が第2ベルト1052の剛性よりも高く構成されている。
これにより、第1トレッド1041の剛性を第2トレッド1042及び中間トレッド1053の剛性よりも高くして、第1トレッド1041を第2トレッド1042よりも変形し難くすることで、第1トレッド1041を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド1042及び中間トレッド1043の剛性を第1トレッド1041の剛性よりも低くして、第2トレッド1042を第1トレッド1041よりも変形し易くすることで、第2トレッド1042をグリップ力の高い特性に構成することができる。
ここで、タイヤ1000のタイヤプロファイルは、第1実施の形態におけるタイヤ100のタイヤプロファイルに基づき、タイヤ100における第2トレッド142及び中間トレッド143のトレッド面の輪郭をタイヤ中心線CLを対称とした構成であると共に、第1トレッド1041がタイヤ100の第1トレッド141に、第2トレッド1042がタイヤ100の第1トレッド142に、中間トレッド1043がタイヤ100の中間トレッド143に、それぞれ対応するものであるため、その説明については省略する。
なお、本実施の形態におけるタイヤ1000では、第1トレッド1041のトレッド幅W1が第2トレッド1042のトレッド幅W2の2倍と中間トレッド1043のトレッド幅W3の2倍との和よりも大きく設定されている(W1>2・W2+2・W3)。
上述したようなタイヤプロファイルに規定される各トレッド1041,1042,1043のトレッドパタン及び損失正接tanδに関しては、第1トレッド1041が第1実施の形態におけるタイヤ100の第1トレッド141に、第2トレッド1042がタイヤ100の第1トレッド142に、中間トレッド1043がタイヤ100の中間トレッド143に、それぞれ対応するものであるため、その説明については省略する。
次いで、キャンバ角の変更に伴うトレッド部1040の接地面形状の変化およびタイヤ1000の特性の変化について説明する。キャンバ角が0°の状態では、第1実施の形態におけるタイヤ100の場合と同様に、第2トレッド1042及び中間トレッド1043は走行路面から離間した状態となり、第1トレッド1041のみが接地した状態となるので、第1トレッド1041のみが接地面として現れる。
この場合、第1トレッド1041は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部1050の剛性の面で第2トレッド1042及び中間トレッド1043よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1000に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
また、かかる場合には、第1トレッド1041よりも転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易い特性である第2トレッド1042及び中間トレッド1043を走行路面から離間させることができるので、その分、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができると共に、第2トレッド1042及び中間トレッド1043が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
キャンバ角が中間キャンバ角の状態となると、第1実施の形態におけるタイヤ100の場合と同様に、第2トレッド1042が接地した状態となるので、接地面に第2トレッド1042が現れる。
この場合、第2トレッド1042は、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部1050の剛性の面で第1トレッド1041よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1000に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト1052の剛性が第1ベルト1051の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって第2トレッド1042を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド1041の接地面圧と第2トレッド1042の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
同様に、キャンバ角がプラス方向に最大のキャンバ角の半分となると、第2トレッド1042が接地した状態となるので、接地面に第2トレッド1042が現れ、タイヤ1000に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
キャンバ角が最大キャンバ角の状態となると、第1実施の形態におけるタイヤ100の場合と同様に、中間トレッド1043が接地した状態となるので、接地面に中間トレッド1043が現れる。
この場合、中間トレッド1043は、損失正接tanδの面で第2トレッド1042よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1000に更なる高グリップ特性を付与することができる。その結果、タイヤ1000のグリップ力をより増加して、グリップ性能のより一層の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト1052の剛性が第1ベルト1051の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって中間トレッド1043を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド1041の接地面圧と第2トレッド1042の接地面圧と中間トレッド1043の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
同様に、キャンバ角がプラス方向に最大のキャンバ角となると、中間トレッド1043が接地した状態となるので、接地面に中間トレッド1043が現れ、キャンバ角がプラス方向に最大のキャンバ角の半分の状態よりも、タイヤ1000に更なる高グリップ特性を付与することができる。その結果、タイヤ1000のグリップ力をより増加して、グリップ性能のより一層の向上を図ることができる。
このように、本実施の形態におけるタイヤ1000によれば、第2トレッド1042を接地させた後に中間トレッド1043を接地させる、即ち、グリップ力の低いトレッド面からグリップ力の高いトレッド面へと順に接地させることができるので、タイヤ1000全体としてのグリップ力が急激に変化することを抑制して、車両1の安定性を保つことができる。
更に、上述したように、キャンバ角が一定の角度(本実施の形態では2.5°)増加する毎に第2トレッド1042から中間トレッド1043へと順に接地させることができるので、タイヤ1000全体としてのグリップ力が急激に変化することを抑制して、車両1の安定性を保つことができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1000によれば、損失正接tanδが大きく構成され変形し易い中間トレッド1043が第1トレッド1041と第2トレッド1042との間に配置されているので、中間トレッド1043を接地させるために必要な最大キャンバ角をより小さくすることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1000によれば、第1ベルト1051の剛性が第2ベルト1052の剛性よりも高く構成されているので、キャンバ角が0°の状態での車両1の操縦安定性の向上を図ることができると共に、キャンバ角を付与した場合には、第2トレッド1042及び中間トレッド1043を変形させ易くして、それら第2トレッド1042及び中間トレッド1043を確実に接地させることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1000によれば、第2トレッド1042及び中間トレッド1043が第1トレッド1041を挟んで両側に配置されているので、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド1042及び中間トレッド1043の接地面積を増やす場合には、ネガティブキャンバ又はポジティブキャンバのいずれかを付与した状態とすることができ、その結果、例えば、車両1の旋回時に旋回内側へ向けてネガティブキャンバ又はポジティブキャンバを付与することで、キャンバスラストを発生させつつ、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
次いで、図16及び図17を参照して、第11実施の形態におけるタイヤ1100について説明する。なお、ここでは、タイヤ1100が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されると共に、少なくとも車両1が直進走行している場合にはキャンバ角が0°に調整されるものとして説明する。また、第1及び第8実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図16は、タイヤ1100の子午線断面図であり、図17は、図16の矢印XVII方向視におけるタイヤ1100のトレッドパタンを模式的に示した模式図である。なお、子午線断面とは、タイヤ軸O(タイヤ回転中心となる軸)を含む平面でのタイヤ断面であり、図16では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1100は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図16を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
図16に示すように、タイヤ1100は、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層1120と、そのゴム層1120におけるトレッド部1140の内周側に(図16上側)に配置されるベルト部1150とを主に備えて構成されている。
ゴム層1120は、カーカス110を保護するためのものであり、図16に示すように、タイヤ幅方向(図16左右方向)に延設されるトレッド部1140と、そのトレッド部1140を挟んで両側に連設されるショルダー部860と、そのショルダー部860の両側に更に連設されるサイドウォール部830とを備えて構成されている。
トレッド部1140は、走行路面に接地する部位であり、図16に示すように、第1トレッド1141と、その第1トレッド1141に連設される第2トレッド1142との2種類のトレッドを備えて構成されている。タイヤ1100は、第1トレッド1141が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド1142が車両1の内側に配置されるように車両1に装着される。
ベルト部1150は、トレッド部1140の剛性を確保するためのものであり、第1トレッド1141の内周側(図16上側)に対応して配置される第1ベルト1151と、その第1ベルト1151に連設され第2トレッド1142の内周側(図16上側)に対応して配置される第2ベルト1152とを備えている。これら第1ベルト1151及び第2ベルト1152は、第1ベルト1151の厚みT1が第2ベルト1152の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト1151の剛性が第2ベルト1152の剛性よりも高く構成されている。
これにより、第1トレッド1141の剛性を第2トレッド1142の剛性よりも高くして、第1トレッド1141を第2トレッド1142よりも変形し難くすることで、第1トレッド1141を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド1142の剛性を第1トレッド1141の剛性よりも低くして、第2トレッド1142を第1トレッド1141よりも変形し易くすることで、第2トレッド1142をグリップ力の高い特性に構成することができる。
次いで、図16を参照して、タイヤ1100のタイヤプロファイルについて説明する。なお、ここでは、タイヤ1100を規格(例えばJATMA規格)で規定された標準リムに嵌合して内圧230kPaとした状態で負荷能力の100%の荷重を加えた場合のタイヤプロファイルを説明する。
第1トレッド1141は、図16に示す子午線断面(タイヤ軸Oを含む平面でのタイヤ断面)において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図16下側)へ凸となる円弧状に構成されている。この第1トレッド1141は、トレッド幅W1に構成され、そのトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置すると共に、キャンバ角が0°の状態で走行路面に接地する接地端であって車両1の外側(図16左側)の接地端位置E1(図18(a)参照)が位置するように構成されている。即ち、かかる接地端位置E1よりも第1トレッド1141が車両1の外側(図16左側)まで延設されるように構成されている。
また、第1トレッド1141は、第1トレッド1141と第2トレッド1142との接続位置Pを通過しタイヤ軸O方向(図16左右方向)に平行に延びる仮想線L1と、第1トレッド1141のトレッド端であって車両1の外側(図16左側)に対応するトレッド端位置P1とがタイヤ軸Oと直交する方向(図16上下方向)に距離h1をなすように構成されている。
第2トレッド1142は、図16に示す子午線断面において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図16下側)へ凸となる円弧状に構成されている。この第2トレッド1142は、トレッド幅W2に構成され、そのトレッド幅W2内に、キャンバ角が最大キャンバ角の状態で走行路面に接地する接地端であって車両1の内側(図16右側)の接地端位置E2(図18(b)参照)が位置するように構成されている。即ち、かかる接地端位置E2よりも第2トレッド1142が車両1の内側(図16右側)まで延設されるように構成されている。
また、第2トレッド1142は、仮想線L1と、第2トレッド1142のトレッド端であって車両1の内側(図16右側)に対応するトレッド端位置P2とがタイヤ軸Oと直交する方向(図16上下方向)に距離h2をなすように構成されている。
かかる距離h1と距離h2との関係は、距離h2が距離h1よりも大きく設定され(h1<h2)、接続位置P及びトレッド端位置P2を通過する仮想線L4と仮想線L1とがなす角度βが、接続位置P及びトレッド端位置P1を通過する仮想線L5と仮想線L1とがなす角度αよりも大きくなるように構成されている(α<β)。
ここで、角度βは、キャンバ角を0°とした場合に、接地面中に占める第1トレッド1141の接地面積の割合を大きくする一方、キャンバ角を最大キャンバ角とした場合に、第2トレッド1142の接地面積の割合を大きくし、キャンバ角が0°の状態と最大キャンバ角の状態との接地面積の差を大きく確保することのできる角度に設定されており、本実施の形態では、最大キャンバ角を5°とするのに対応して、角度βが3°に設定されている。
なお、角度βは、1°以上かつ10°以下の範囲内に設定することが望ましい。即ち、角度βを1°よりも小さくすると、キャンバ角が0°の状態で既に第2トレッド1142の接地面積の割合が大きくなり、キャンバ角が最大キャンバ角の状態との接地面積の差を十分に確保することができなくなる。これに対し、角度βを1°以上とすることで、第1トレッド1141と第2トレッド1142との接地面積の差を大きく確保することができる。
一方、角度βを10°よりも大きくすると、第2トレッド1142を接地端位置E2(図18(b)参照)まで接地させるのに必要な最大キャンバ角が大きくなり、車両1の不安定化を招く。また、この場合には、大きなキャンバ角がつけられた状態で第2トレッド1142が接地することで、第2トレッド1142側に荷重が偏り、サイドウォール部860なども変形する。その結果、キャンバ角の変更に伴う第2トレッド1142の接地面形状の変化が大きくなり、第2トレッド1142が先に摩耗する偏摩耗の発生を招く。これに対し、角度βを10°以下とすることで、第2トレッド1142に接地荷重が偏って作用することを抑制することができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、第2トレッド1142が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
これら第1トレッド1141及び第2トレッド1142は、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さがL1に、第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さがL2に、それぞれ構成されると共に、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2に対して1/2倍の厚さに設定され、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2よりも薄く構成されている(L1<L2)。
これにより、第1トレッド1141を第2トレッド1142よりも変形し難くして、トレッド部1140が吸収するエネルギーの内、第1トレッド1141が吸収するエネルギーの吸収度合を第2トレッド1142が吸収するエネルギーの吸収度合よりも小さくすることができる。よって、第1トレッド1141におけるエネルギー損失を第2トレッド1142におけるエネルギー損失よりも小さくして、第1トレッド1141を第2トレッド1142よりも転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。
一方、トレッド部1140が吸収するエネルギーの内、第2トレッド1142が吸収するエネルギーの吸収度合を第1トレッド1141が吸収するエネルギーの吸収度合よりも大きくすることで、第2トレッド1142を第1トレッド1141よりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
上述したようなタイヤプロファイルに規定される各トレッド1141,1142は、それぞれ異なる損失正接tanδのトレッドゴムで構成され、第1トレッド1141の損失正接tanδaが第2トレッド1142の損失正接tanδbの2/3倍よりも小さく構成されると共に(tanδa<2/3・tanδb)、第1トレッド1141の損失正接tanδaが60℃において0.15よりも小さく設定されている。即ち、第1トレッド1141は転がり抵抗の小さい特性に構成される一方、第2トレッド1142は転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易いが、グリップ力の高い特性に構成されている。
なお、第1トレッド1141の損失正接tanδaは、60℃において、0.1よりも大きく且つ0.15よりも小さい範囲内に設定することが望ましい。即ち、損失正接tanδaを0.1以下とすると、製造が困難であると共に、0.15以上とすると、第1トレッド1141の転がり抵抗を十分に低減することができなくなる。これに対し、損失正接tanδaを0.1よりも大きく且つ0.15よりも小さい範囲内とすることで、タイヤ1100の製造を容易としつつ、転がり抵抗を十分に低減することができる。
また、各トレッド1141,1142は、図17に示すように、それぞれ異なる形状の溝、いわゆるトレッドパタンが刻設されている。第1トレッド1141のトレッドパタンは、転がり抵抗の小さい特性を有するリブタイプとして構成されている。これに対し、第2トレッド1142のトレッドパタンは、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有するラグタイプとして構成されている。
なお、少なくとも第1トレッド1141に刻設される溝の深さは、1.6mm以上に設定されている。これにより、雨天時に第1トレッド1141を使用して走行する場合のグリップ性能を確保することができる。このため、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1(図16参照)は、1.6mmよりも厚く構成されている。
次いで、図18を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部1140の接地状態の変化および接地面形状の変化について説明する。なお、本実施の形態では、キャンバ角の付与方向はマイナス方向のみとする。従って、図18では、キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角(マイナス方向に最大のキャンバ角)の状態までの接地状態の変化および接地面形状の変化を説明する。
図18(a)及び図18(b)は、トレッド部1140の接地状態を模式的に示した模式図であり、図18(c)及び図18(d)は、トレッド部1140の接地面形状を模式的に示した模式図である。また、図18(a)及び図18(c)は、キャンバ角が0°の状態を、図18(b)及び図18(d)は、キャンバ角が最大キャンバ角の状態を、それぞれ示している。なお、図18(a)及び図18(b)では、図面の理解を容易とするため、主要部のみに符号を付して、図面を簡略化している。また、図18(a)及び図18(b)に示すトレッド部1140の接地状態は、乗員や荷物などの荷重による影響を考慮しない理想的な接地状態を示している。
図18(a)に示すように、キャンバ角が0°の状態では、タイヤ中心線CLが走行路面Gと直交する。この場合、第1トレッド1141及び第2トレッド1142がいずれも走行路面Gに接地した状態となり、図18(c)に示すように、第1トレッド1141及び第2トレッド1142が接地面として現れる。また、第1トレッド1141のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されているので(図16参照)、接地面中心GCが第1トレッド1141となる。
この場合、第1トレッド1141は、タイヤ径方向厚さ、損失正接tanδ及びトレッドパタンに加え、ベルト部1150の剛性の面で第2トレッド1142よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1100に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
また、かかる場合には、距離h2が距離h1よりも大きく設定されているので(図16参照)、接地面中に占める第1トレッド1141の接地面積の割合が大きくなり、第2トレッド1142の接地面積の割合が小さくなる。よって、第1トレッド1141よりも転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易い特性である第2トレッド1142の接地面積の割合を小さくすることができるので、その分、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができると共に、第2トレッド1142が先に摩耗する偏摩耗を抑制することができる。
キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角の状態となると、図18(b)に示すように、走行路面Gに直交する鉛直線Vに対しタイヤ中心線CLが最大キャンバ角と同じ角度で傾斜する。この場合、第2トレッド1142は、角度βがキャンバ角を最大キャンバ角とした場合に接地面中に占める第2トレッド1142の接地面積の割合を大きくすることのできる角度に設定されているので、図18(d)に示すように、第2トレッド1142の接地面積の割合が大きくなり、第1トレッド1141の接地面積の割合が小さくなる。また、接地面中心GCも第2トレッド1142側(図18(d)右側)へ移動して、接地面中心GCが第2トレッド1142となる。
この場合、第2トレッド1142は、タイヤ径方向厚さ、損失正接tanδ及びトレッドパタンに加え、ベルト部1150の剛性の面で第1トレッド1141よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1100に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト1152の剛性が第1ベルト1151の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって第2トレッド1142を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド1141の接地面圧と第2トレッド1142の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
このように、本実施の形態によれば、上述したように、少なくとも車両1が直進走行している場合にはキャンバ角が0°に調整されるので、直進走行時において、第1トレッド1141の特性、即ち、転がり抵抗の小さい特性をタイヤ1100に付与して、省燃費化を図ることができる。ここで、直進走行時には、加減速時または旋回時と比較して高いグリップ性能が要求されないので、本実施の形態のように、直進走行時において、第1トレッド1141の特性、即ち、転がり抵抗の小さい特性をタイヤ1100に付与する構成とすることで、走行安全性を確保しつつ、効率的に省燃費化を図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1100によれば、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1を第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2よりも薄くすることで第1トレッド1141を第2トレッド1142よりも転がり抵抗の小さい特性に構成すると共に第2トレッド1142を第1トレッド1141よりもグリップ力の高い特性に構成するので、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を図りつつも、タイヤ1100の軽量化を図ることができる。更に、製造段階での省資源化を図り、タイヤ1100のコスト低減を図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1100によれば、第1トレッド1141のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置するように構成されているので、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態での接地面中心を第1トレッド1141とすることができる。これにより、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態において、省燃費化を図ることができる。更に、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態での接地面中心を第1トレッド1141とすることができるので、キャンバスラストの影響を小さくして、効率的に省燃費化を図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1100によれば、距離h2が距離h1よりも大きく設定されているので、転がり抵抗の小さい第1トレッド1141とグリップ力の高い第2トレッド1142との接地面積の差を大きくして、転がり抵抗の低減とグリップ性能の向上との両立を効率的に図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1100によれば、第1トレッド1141の損失正接tanδaが第2トレッド1142の損失正接tanδbの2/3倍よりも小さく構成されているので、第1トレッド1141と第2トレッド1142との特性差を十分に確保することができる。その結果、転がり抵抗の低減とグリップ力の向上とを効果的に発揮させることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1100によれば、第1トレッド1141が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド1142が車両1の内側に配置されているので、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド1142の接地面積を増やす場合には、ネガティブキャンバを付与した状態とすることができ、その結果、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
なお、本実施の形態では、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2に対して1/2倍の厚さに設定される場合を説明したが、必ずしも1/2倍の厚さに設定する場合に限られるものではない。一般に、タイヤは、トレッド部におけるエネルギー損失がタイヤ全体のエネルギー損失に対して約40%を占めるとされているので、第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2に対する第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1は、目標とする燃費効率の向上率に基づいて設定することが好ましい。
更に、第1トレッド1141のタイヤ径方向厚さL1は、1.6mmよりも厚く、且つ、第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2に対して1/1.5倍よりも薄く構成することが好ましく、より好ましくは、1.6mmよりも厚く、且つ、第2トレッド1142のタイヤ径方向厚さL2に対して1/2倍よりも薄く構成することが好ましい。これにより、上述したように、雨天時に第1トレッド1141を使用して走行する場合のグリップ性能を確保しつつも、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
次いで、図19及び図20を参照して、第12実施の形態におけるタイヤ1200について説明する。なお、ここでは、タイヤ1200が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されると共に、少なくとも車両1が直進走行している場合にはキャンバ角が0°に調整されるものとして説明する。また、第1及び第9実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図19は、タイヤ1200の子午線断面図であり、図20は、図19の矢印XX方向視におけるタイヤ1200のトレッドパタンを模式的に示した模式図である。なお、子午線断面とは、タイヤ軸O(タイヤ回転中心となる軸)を含む平面でのタイヤ断面であり、図19では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1200は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図19を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
図19に示すように、タイヤ1200は、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層1220と、そのゴム層1220におけるトレッド部1240の内周側に(図19上側)に配置されるベルト部1250とを主に備えて構成されている。
ゴム層1220は、カーカス110を保護するためのものであり、図19に示すように、タイヤ幅方向(図19左右方向)に延設されるトレッド部1240と、そのトレッド部1240を挟んで両側に連設されるショルダー部960と、そのショルダー部960の両側に更に連設されるサイドウォール部930とを備えて構成されている。
トレッド部1240は、走行路面に接地する部位であり、図19に示すように、第1トレッド1241と、その第1トレッド1241に連設される第2トレッド1242との2種類のトレッドを備えて構成されている。タイヤ1200は、第1トレッド1241が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド1242が車両1の内側に配置されるように車両1に装着される。
ベルト部1250は、トレッド部1240の剛性を確保するためのものであり、第1トレッド1241の内周側(図19上側)に対応して配置される第1ベルト1251と、その第1ベルト1251に連設され第2トレッド1242の内周側(図19上側)に対応して配置される第2ベルト1252とを備えている。これら第1ベルト1251及び第2ベルト1252は、第1ベルト1251の厚みT1が第2ベルト1252の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト1251の剛性が第2ベルト1252の剛性よりも高く構成されている。
これにより、第1トレッド1241の剛性を第2トレッド1242の剛性よりも高くして、第1トレッド1241を第2トレッド1242よりも変形し難くすることで、第1トレッド1241を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド1242の剛性を第1トレッド1241の剛性よりも低くして、第2トレッド1242を第1トレッド1241よりも変形し易くすることで、第2トレッド1242をグリップ力の高い特性に構成することができる。
次いで、図19を参照して、タイヤ1200のタイヤプロファイルについて説明する。なお、ここでは、タイヤ1200を規格(例えばJATMA規格)で規定された標準リムに嵌合して内圧230kPaとした状態で負荷能力の100%の荷重を加えた場合のタイヤプロファイルを説明する。
第1トレッド1241は、図19に示す子午線断面(タイヤ軸Oを含む平面でのタイヤ断面)において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図19下側)へ凸となる曲率半径Rt1の円弧状に構成されている。この第1トレッド1241は、トレッド幅W1に構成されている。
第2トレッド1242は、図19に示す子午線断面において、トレッド面の輪郭がタイヤ径方向外方(図19下側)へ凸となる曲率半径Rt2の円弧状に構成され、その曲率半径Rt2が曲率半径Rt1よりも小さく設定されている(Rt1>Rt2)。この第2トレッド1242は、トレッド幅W2に構成され、第1トレッド1241と第2トレッド1242との接続位置Pがタイヤ中心線CL上に位置するように構成されている。
これら第1トレッド1241及び第2トレッド1242は、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さがL1に、第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さがL2に、それぞれ構成されると共に、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2に対して1/2倍の厚さに設定され、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2よりも薄く構成されている(L1<L2)。
これにより、第1トレッド1241を第2トレッド1242よりも変形し難くして、トレッド部1240が吸収するエネルギーの内、第1トレッド1241が吸収するエネルギーの吸収度合を第2トレッド1242が吸収するエネルギーの吸収度合よりも小さくすることができる。よって、第1トレッド1241におけるエネルギー損失を第2トレッド1242におけるエネルギー損失よりも小さくして、第1トレッド1241を第2トレッド1242よりも転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。
一方、トレッド部1240が吸収するエネルギーの内、第2トレッド1242が吸収するエネルギーの吸収度合を第1トレッド1241が吸収するエネルギーの吸収度合よりも大きくすることで、第2トレッド1242を第1トレッド1241よりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
上述したようなタイヤプロファイルに規定される各トレッド1241,1242は、それぞれ異なる損失正接tanδのトレッドゴムで構成され、第1トレッド1241の損失正接tanδaが第2トレッド1242の損失正接tanδbよりも小さく構成されている(tanδa<tanδb)。即ち、第1トレッド1241は転がり抵抗の小さい特性に構成される一方、第2トレッド1242は転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易いが、グリップ力の高い特性に構成されている。
また、各トレッド1241,1242は、図20に示すように、それぞれ異なる形状の溝、いわゆるトレッドパタンが刻設されている。第1トレッド1241のトレッドパタンは、転がり抵抗の小さい特性を有するリブタイプとして構成されている。これに対し、第2トレッド1242のトレッドパタンは、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有するブロックタイプとして構成されている。
なお、少なくとも第1トレッド1241に刻設される溝の深さは、1.6mm以上に設定されている。これにより、雨天時に第1トレッド1241を使用して走行する場合のグリップ性能を確保することができる。このため、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1(図19参照)は、1.6mmよりも厚く構成されている。
次いで、図21を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部1240の接地状態の変化および接地面形状の変化について説明する。なお、本実施の形態では、キャンバ角の付与方向はマイナス方向のみとする。従って、図21では、キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角(マイナス方向に最大のキャンバ角)の状態までの接地状態の変化および接地面形状の変化を説明する。
図21(a)及び図21(b)は、トレッド部1240の接地状態を模式的に示した模式図であり、図21(c)及び図21(d)は、トレッド部1240の接地面形状を模式的に示した模式図である。また、図21(a)及び図21(c)は、キャンバ角が0°の状態を、図21(b)及び図21(d)は、キャンバ角が最大キャンバ角の状態を、それぞれ示している。なお、図21(a)及び図21(b)では、図面の理解を容易とするため、主要部のみに符号を付して、図面を簡略化している。また、図21(a)及び図21(b)に示すトレッド部1240の接地状態は、乗員や荷物などの荷重による影響を考慮しない理想的な接地状態を示している。
図21(a)に示すように、キャンバ角が0°の状態では、タイヤ中心線CLが走行路面Gと直交する。この場合、第1トレッド1241及び第2トレッド1242がいずれも走行路面Gに接地した状態となり、図21(c)に示すように、第1トレッド1241及び第2トレッド1242が接地面として現れる。また、第1トレッド1241と第2トレッド1242との接続位置Pがタイヤ中心線CL上に位置するように構成されているので(図19参照)、接地面中心GCが第1トレッド1141と第2トレッド1142との境界となる。
この場合、第1トレッド1241は、少なくともタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2よりも薄く構成されているので、第2トレッド1242よりも変形し難く、タイヤ1200に第1トレッド1241の特性を付与することができる。即ち、第1トレッド1241は、タイヤ径方向厚さ、損失正接tanδ及びトレッドパタンに加え、ベルト部1250の剛性の面で第2トレッド1242よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1200に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
また、かかる場合には、第2トレッド1242のトレッド面における輪郭の曲率半径Rt2が第1トレッド1241のトレッド面における輪郭の曲率半径Rt1よりも小さく構成されているので(図19参照)、接地面中に占める第1トレッド1241の接地面積の割合が大きくなり、第2トレッド1242の接地面積の割合が小さくなる。よって、第1トレッド1241よりも転がり抵抗が大きく、また、摩耗し易い特性である第2トレッド1242の接地面積の割合を小さくすることができるので、その分、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができると共に、第2トレッド1242が先に摩耗する偏摩耗の発生を抑制することができる。
キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角の状態となると、図21(b)に示すように、走行路面Gに直交する鉛直線Vに対しタイヤ中心線CLが最大キャンバ角と同じ角度で傾斜する。この場合、曲率半径Rt2が曲率半径Rt1よりも小さく構成されると共に、第2ショルダー962の外表面における輪郭の曲率半径Rs2が第1ショルダー961の外表面における輪郭の曲率半径Rs1よりも大きく構成されているので、図21(d)に示すように、第2トレッド1242の接地面積の割合が大きくなり、第1トレッド1241の接地面積の割合が小さくなる。また、接地面中心GCも第2トレッド1242側(図21(d)右側)へ移動して、接地面中心GCが第2トレッド1242となる。
なお、図21(b)及び図21(d)では、第2ショルダー962が接地せず走行路面から離間した状態を図示しているが、最大キャンバ角が本実施の形態における最大キャンバ角よりも大きく設定される場合には、第2ショルダー962も接地面に現れ、第2トレッド1242及び第2ショルダー962の接地面積の割合が大きくなり、第1トレッド1241の接地面積の割合が小さくなる。
この場合、第2トレッド1242は、タイヤ径方向厚さ、損失正接tanδ及びトレッドパタンに加え、ベルト部1250の剛性の面で第1トレッド1241よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1200に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
また、かかる場合には、第2ベルト1252の剛性が第1ベルト1251の剛性よりも低く構成されているので、キャンバ角にならって第2トレッド1242を変形させることができ、接地面に対する第1トレッド1241の接地面圧と第2トレッド1242の接地面圧との均一化を図ることができる。これにより、キャンバ角の変更に伴う接地面形状の変化を小さくすることができるので、偏摩耗の発生を抑制することができる。
このように、本実施の形態によれば、上述したように、少なくとも車両1が直進走行している場合にはキャンバ角が0°に調整されるので、直進走行時において、第1トレッド1241の特性、即ち、転がり抵抗の小さい特性をタイヤ1200に付与して、省燃費化を図ることができる。ここで、直進走行時には、加減速時または旋回時と比較して高いグリップ性能が要求されないので、本実施の形態のように、直進走行時において、第1トレッド1241の特性、即ち、転がり抵抗の小さい特性をタイヤ1200に付与する構成とすることで、走行安全性を確保しつつ、効率的に省燃費化を図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1200によれば、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1を第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2よりも薄くすることで第1トレッド1241を第2トレッド1242よりも転がり抵抗の小さい特性に構成すると共に第2トレッド1242を第1トレッド1241よりもグリップ力の高い特性に構成するので、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を図りつつも、タイヤ1200の軽量化を図ることができる。更に、製造段階での省資源化を図り、タイヤ1200のコスト低減を図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1200によれば、第2トレッド1242のトレッド面における輪郭の曲率半径Rt2が第1トレッド1241のトレッド面における輪郭の曲率半径Rt1よりも小さく構成されているので、転がり抵抗の小さい第1トレッド1241とグリップ力の高い第2トレッド1242との接地面積の差を大きくして、転がり抵抗の低減とグリップ性能の向上との両立を効率的に図ることができる。
また、本実施の形態におけるタイヤ1200によれば、第1トレッド1241が車両1の外側に配置されると共に、第2トレッド1242が車両1の内側に配置されているので、グリップ力の高い特性に構成される第2トレッド1242の接地面積を増やす場合には、ネガティブキャンバを付与した状態とすることができ、その結果、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
なお、本実施の形態では、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1が第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2に対して1/2倍の厚さに設定される場合を説明したが、必ずしも1/2倍の厚さに設定する場合に限られるものではない。一般に、タイヤは、トレッド部におけるエネルギー損失がタイヤ全体のエネルギー損失に対して約40%を占めるとされているので、第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2に対する第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1は、目標とする燃費効率の向上率に基づいて設定することが好ましい。
更に、第1トレッド1241のタイヤ径方向厚さL1は、1.6mmよりも厚く、且つ、第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2に対して1/1.5倍よりも薄く構成することが好ましく、より好ましくは、1.6mmよりも厚く、且つ、第2トレッド1242のタイヤ径方向厚さL2に対して1/2倍よりも薄く構成することが好ましい。これにより、上述したように、雨天時に第1トレッド1241を使用して走行する場合のグリップ性能を確保しつつも、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
次いで、図22を参照して、第13実施の形態におけるタイヤ1300について説明する。図22は、第13実施の形態におけるタイヤ1300の子午線断面図である。なお、図22では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1300は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図22を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
第13実施の形態におけるタイヤ1300は、上記第8実施の形態に対し、トレッド部1340の構成が変更されている。即ち、上記第8実施の形態におけるタイヤ800では、第1トレッド841と第2トレッド842とが互いに異なる材質のゴム状弾性材(トレッドゴム)から構成されたが、本実施の形態におけるタイヤ1300では、第1トレッド1341と第2トレッド1342とが同じ材質のゴム状弾性材(トレッドゴム)から構成されている。
なお、ここでは、タイヤ1300が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されるものとして説明する。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
トレッド部1340は、走行路面に接地する部位であり、図22に示すように、第1トレッド1341と、その第1トレッド1341に連設される第2トレッド1342との2種類のトレッドを備えて構成されている。但し、これら第1トレッド1341及び第2トレッド1342は、上述したように、同じ材質のゴム状弾性体(トレッドゴム)から構成されるものであり、図22に示すように、一体に構成されている。なお、タイヤ1300は、第1トレッド1341が車両1の外側に、第2トレッド1342が車両1の内側に、それぞれ配置された状態で車両1に装着される。
ここで、図22に示すように、第1トレッド1341は、第1ベルト851に対応して配設される部位(トレッド幅W1の部位)であり、第2トレッド1342は、第2ベルト852に対応して配設される部位(トレッド幅W2の部位)である。即ち、第1トレッド1341の内周側(図22上側)には、その第1トレッド1341に対応する範囲に第1ベルト851が配設されると共に、第2トレッド1342の内周側(図22上側)には、その第2トレッド1342に対応する範囲に第2ベルト852が配設されている。
これら第1ベルト851及び第2ベルト852は、上記実施の形態で説明したように、第1ベルト851の厚みT1が第2ベルト852の厚みT2よりも厚く設定され(T1>T2)、第1ベルト851の剛性が第2ベルト852の剛性よりも高く構成されている。そのため、トレッド部1340は、図22に示すように、第1トレッド1341のタイヤ径方向厚さ(図22上下方向寸法)が、第2トレッド1342のタイヤ径方向厚さよりも薄く構成されている。
これにより、第1トレッド1341と第2トレッド1342とが同じ材質のゴム状弾性体(トレッドゴム)から構成される場合であっても、第1トレッド1341を第2トレッド1342よりも変形し難くして、タイヤ1300が路面に対して転動する走行中において、第1トレッド1341が吸収するエネルギーを第2トレッド1342が吸収するエネルギーよりも小さくすることができる。よって、第1トレッド1341におけるエネルギー損失を第2トレッド1342におけるエネルギー損失よりも小さくして、第1トレッド1341を第2トレッド1342よりも転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。
一方、このように、タイヤ1300が路面に対して転動する走行中において、第2トレッド1142が吸収するエネルギーを第1トレッド1141が吸収するエネルギーよりも大きくすることで、トレッドが路面にグリップすることにより費やされるエネルギー損失の絶対値を増加させることができるので、第2トレッド1342を第1トレッド1341よりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
また、上述したように、タイヤ1300は、第1トレッド1341と第2トレッド1342のタイヤ径方向厚さを異ならせるために、第1ベルト851の厚みT1を第2ベルト852の厚みT2よりも厚く設定する構成であるので、その分、第1トレッド1341側(少なくとも第1トレッド1341及び第1ベルト851を含む部位)における剛性を第2トレッド1342側(少なくとも第1トレッド1341及び第1ベルト851を含む部位)における剛性よりも高くすることができる。
これにより、第1トレッド1341側を第2トレッド1342側よりも変形し難くすることで、第1トレッド1341を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド1342側の剛性を第1トレッド1341側の剛性よりも低くして、第2トレッド1342を第1トレッド841よりも変形し易くすることで、第2トレッド1342をグリップ力の高い特性に構成することができる。
なお、本実施の形態におけるタイヤ1300では、第1トレッド1341と第2トレッド1342とにそれぞれ異なる形状の溝(トレッドパタン)が刻設されている。即ち、上述した第11実施の形態におけるタイヤ1100と同様に、第1トレッド1341のトレッドパタンは、転がり抵抗の小さい特性を有するリブタイプとして構成され、第2トレッド1342のトレッドパタンは、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有するラグタイプとして構成されている(図17参照)。
ここで、タイヤ1300は、少なくとも第1トレッド1341に刻設される溝の深さが1.6mm以上の値に設定されている。これにより、雨天時に第1トレッド1341を使用して走行する場合のグリップ性能を確保することができる。このため、第1トレッド1341のタイヤ径方向厚さL1(図16参照)は、1.6mmよりも厚く構成されている。
タイヤ1300によれば、上述した第11実施の形態と同様に、キャンバ角が0°の状態では、第1トレッド1341及び第2トレッド1342が接地面として現れると共に接地面中心GCが第1トレッド1341上に位置する(即ち、第1トレッド1341の設置面積の割合が大きい、図14(a)参照)。この場合、第1トレッド1341は、トレッドパタン、ベルト部850の剛性、及び、タイヤ径方向厚さの面で第2トレッド942よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1300に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
一方、キャンバ角が0°の状態から最大キャンバ角の状態となると(図14(b)参照)、接地面中心GCが第2トレッド1342側へ移動して、第2トレッド1342上に位置することで、第2トレッド1342の接地面積の割合が大きくなる(第1トレッド1341の接地面積の割合が小さくなる)。この場合、第2トレッド1342は、トレッドパタン、ベルト部850の剛性、及び、タイヤ径方向厚さの面で第1トレッド1341よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1300に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
次いで、図23及び図24を参照して、第14実施の形態におけるタイヤ1400について説明する。図23は、第14実施の形態におけるタイヤ1400の子午線断面図である。なお、図23では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1400は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図23を参照して説明し、他部についての説明は省略する。
第14実施の形態におけるタイヤ1400は、上記第8実施の形態に対し、トレッド部1440の構成が変更されている。即ち、上記第8実施の形態におけるタイヤ800では、第1トレッド841と第2トレッド842とが互いに異なる材質のゴム状弾性材(トレッドゴム)から異なる子午線断面形状(タイヤプロファイル)に構成される場合を説明したが、本実施の形態におけるタイヤ1400では、第1トレッド1341と第2トレッド1342とが同じ材質のゴム状弾性材(トレッドゴム)からタイヤ中心線CLに対称な子午線断面形状に構成されている。
なお、ここでは、タイヤ1400が第1実施の形態における車両1(図1参照)に装着されるものとして説明する。但し、タイヤ1400には、キャンバ角が0°の状態を中心として、プラス方向およびマイナス方向へキャンバ角が付与されるものとする。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
タイヤ1400は、図23に示すように、カーカス110と、そのカーカス110を被覆するゴム層1420と、そのゴム層1420におけるトレッド部1440の内周側(図4上側)に配置されるベルト部1450とを主に備えて構成されている。ゴム層1420は、カーカス110を保護するためのものであり、図23に示すように、ビード部121と、そのビード部121に連設されタイヤ径方向外方(図23下側)へ向けて延設されるサイドウォール部1430と、そのサイドウォール部1430に連設されタイヤ幅方向(図23左右方向)に延設されるトレッド部1440とを備え、タイヤ中心線CLに対して対称に構成されている。
サイドウォール部1430は、タイヤ側面を構成する部位であり、トレッド部1440は、走行路面に接地する部位である。トレッド部1440は、図23に示すように、第1トレッド1441と、その第1トレッド1441に連設される第2トレッド1442との2種類のトレッドを備えて構成されている。これら第1トレッド1441及び第2トレッド1442は、同じ材質のゴム状弾性体(トレッドゴム)から構成されるものであり、一体に構成されている。なお、タイヤ1400は、第1トレッド1441が車両1の外側に、第2トレッド1442が車両1の内側に、それぞれ配置された状態で車両1に装着される。
ここで、図23に示すように、トレッド部1440は、タイヤ中心線CLを境界として、第1トレッド1441と第2トレッド1442とが配設されると共に、第1トレッド1441には、ベルト部1450が埋設されている。そのため、トレッド部1440は、図23に示すように、第1トレッド1441のタイヤ径方向厚さ(図23上下方向寸法)が、第2トレッド1442のタイヤ径方向厚さよりも薄く構成されている。
これにより、第1トレッド1441と第2トレッド1442とが同じ材質のゴム状弾性体(トレッドゴム)から構成される場合であっても、第1トレッド1441を第2トレッド1442よりも変形し難くして、タイヤ1400が路面に対して転動する走行中において、第1トレッド1441が吸収するエネルギーを第2トレッド1442が吸収するエネルギーよりも小さくすることができる。よって、第1トレッド1441におけるエネルギー損失を第2トレッド1442におけるエネルギー損失よりも小さくして、第1トレッド1441を第2トレッド1442よりも転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。
一方、このように、タイヤ1400が路面に対して転動する走行中において、第2トレッド1142が吸収するエネルギーを第1トレッド1141が吸収するエネルギーよりも大きくすることで、トレッドが路面にグリップすることにより費やされるエネルギー損失の絶対値を増加させることができるので、第2トレッド1442を第1トレッド1441よりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
なお、本実施の形態におけるタイヤ1400では、上記各実施の形態と同様に、ベルト部1450がスチール製の複数本のコード(図示せず)から構成されている。また、第1トレッド1441及び第2トレッド1442には、それぞれ異なる形状の溝(トレッドパタン)が刻設されている。即ち、上述した第11実施の形態におけるタイヤ1100と同様に、第1トレッド1441のトレッドパタンは、転がり抵抗の小さい特性を有するリブタイプとして構成され、第2トレッド1442のトレッドパタンは、転がり抵抗は大きいが、グリップ力の高い特性を有するラグタイプとして構成されている(図17参照)。
また、上述したように、タイヤ4500は、第1トレッド1441と第2トレッド1442のタイヤ径方向厚さを異ならせるために、第1トレッド1441のみにベルト部1450を埋設する構成である。ベルト部1450は、トレッド部1440よりも剛性が高い部材であるので、その分、第1トレッド1441側(少なくとも第1トレッド1441及びベルト1450を含む部位)における剛性を第2トレッド1442側における剛性よりも高くすることができる。
これにより、第1トレッド1441側を第2トレッド1442側よりも変形し難くすることで、第1トレッド1441を転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。一方、第2トレッド1442側の剛性を第1トレッド1441側の剛性よりも低くして、第2トレッド1442を第1トレッド841よりも変形し易くすることで、第2トレッド1442をグリップ力の高い特性に構成することができる。
ここで、タイヤ1400は、少なくとも第1トレッド1441に刻設される溝の深さが1.6mm以上の値に設定されている。これにより、雨天時に第1トレッド1441を使用して走行する場合のグリップ性能を確保することができる。このため、第1トレッド1441のタイヤ径方向厚さ(図23上下方向寸法)は、1.6mmよりも厚く構成されている。
次いで、図24を参照して、キャンバ角の変更に伴うトレッド部1440の接地状態の変化と接地面形状の変化について説明する。図24(a)及び図24(b)は、トレッド部1440の接地状態を模式的に示した模式図であり、図24(c)及び図24(d)は、トレッド部1440の接地面形状を模式的に示した模式図である。
なお、図24(a)及び図24(b)では、図面の理解を容易とするため、主要部のみに符号を付して、図面を簡略化している。また、図24(a)及び図24(b)に示すトレッド部940の接地状態は、乗員や荷物などの荷重による影響を考慮しない理想的な接地状態を示している。
また、図24(a)及び図24(c)は、プラス側に最大のキャンバ角が付与されたタイヤ1400の状態を、図24(b)及び図24(d)は、マイナス側に最大のキャンバ角が付与されたタイヤ1400の状態を、それぞれ示している。即ち、本実施の形態におけるタイヤ1400は、プラス方向に最大のキャンバ角とマイナス方向に最大のキャンバ角との範囲で、走行状態に応じて、キャンバ角が変更される。
タイヤ1400によれば、図24(a)に示すように、プラス方向に最大のキャンバ角が付与された状態となると、接地面中心GCが第1トレッド1441上に位置することで、図24(c)に示すように、第1トレッド1441の接地面積の割合が大きくなる(第2トレッド1442の接地面積の割合が小さくなる)。この場合、第1トレッド1441は、トレッドパタン、ベルト部1450の剛性、及び、タイヤ径方向厚さの面で第2トレッド942よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1400に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
一方、図24(b)に示すように、マイナス方向に最大のキャンバ角が付与された状態となると、接地面中心GCが第2トレッド1442上に位置することで、図24(d)に示すように、第2トレッド1442の接地面積の割合が大きくなる(第1トレッド1441の接地面積の割合が小さくなる)。この場合、第2トレッド1442は、トレッドパタン、及び、タイヤ径方向厚さの面で第1トレッド1441よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1400に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
次いで、図25を参照して、第15実施の形態におけるタイヤ1500について説明する。図25は、第15実施の形態におけるタイヤ1500の子午線断面図である。なお、図25では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1500は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図25を参照して説明し、他部についての説明は省略する。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
第15実施の形態におけるタイヤ1500は、上記第14実施の形態に対し、ベルト部1550の構成が変更されている。即ち、本実施の形態では、ベルト部1550が複数の繊維から織り上げられた布状体(繊維織布)1551を積層して構成されている。そのため、ベルト部1550は、変形時のエネルギー吸収が小さく、エネルギー損失が小さい構成であるので、第1トレッド1441側の転がり抵抗をより小さくすることができる。
なお、ベルト部1450に使用する繊維としては、綿、麻、絹などの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、レーヨン、ポリアミド、オレフィン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、レーヨン、ポリイミド、オレフィン、レーヨンなどの合成繊維などが例示される。
このタイヤ1500によれば、プラス方向に最大のキャンバ角が付与された状態となると(図24(a)参照)、接地面中心GCが第1トレッド1441上に位置することで、第1トレッド1441の接地面積の割合が大きくなる(第2トレッド1442の接地面積の割合が小さくなる、図24(c)参照)。この場合、第1トレッド1441は、上記第14実施の形態の場合と同様に、トレッドパタン、ベルト部1450の剛性、及び、タイヤ径方向厚さの面のいずれにおいても第2トレッド942よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1500に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
一方、タイヤ1500は、マイナス方向に最大のキャンバ角が付与された状態となると(図24(b)参照)、接地面中心GCが第2トレッド1442上に位置することで、第2トレッド1442の接地面積の割合が大きくなる(第1トレッド1441の接地面積の割合が小さくなる、図24(d)参照)。この場合、第2トレッド1442は、トレッドパタン、及び、タイヤ径方向厚さの面のいずれにおいても第1トレッド1441よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1500に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
次いで、図26を参照して、第16実施の形態におけるタイヤ1600について説明する。図26は、第16実施の形態におけるタイヤ1600の子午線断面図である。なお、図26では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1600は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図26を参照して説明し、他部についての説明は省略する。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
第16実施の形態におけるタイヤ1600は、上記第14実施の形態に対し、サイドウォール部1630と、ベルト部1650との構成が変更されている。即ち、サイドウォール部1630は、図26に示すように、カーカス110の表面側(図26下側)の全面を覆っており、このサイドウォール部1630とトレッド1440との間にベルト部1650が介設されている。
また、ベルト部1650は、図26に示すように、内部が空洞の筒状体の両端を接続した輪状の管部材1651を備え、その管部材1651の内部空間1651aには、非圧縮性流体が充填封入されている。なお、本実施の形態では、管部材1651が複数の繊維(上述した天然繊維あるいは合成繊維)が埋設されて補強されたゴム状弾性材から構成されており、走行時の損傷が抑制されている。但し、管部材1651を可撓性樹脂により構成しても良い。また、非圧縮性流体としては、水やオイルなどが例示される。
このように、本実施の形態におけるタイヤ1600によれば、ベルト部1650(管部材1651)に非圧縮性流体が充填封入された構成であるので、かかるベルト部1650の変形時におけるエネルギー吸収をより小さくして、エネルギー損失を小さくすることができるので、第1トレッド1441側の転がり抵抗をより小さくすることができる。また、ベルト部1650(管部材1651)とカーカス110との間にはサイドウォール部1530が介在するので、管部材1651が損傷することを抑制することができる。
このタイヤ1600によれば、プラス方向に最大のキャンバ角が付与された状態となると(図24(a)参照)、接地面中心GCが第1トレッド1441上に位置することで、第1トレッド1441の接地面積の割合が大きくなる(第2トレッド1442の接地面積の割合が小さくなる、図24(c)参照)。この場合、第1トレッド1441は、上記第14実施の形態の場合と同様に、トレッドパタン、ベルト部1450の剛性、及び、タイヤ径方向厚さの面のいずれにおいても第2トレッド942よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、タイヤ1600に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
一方、タイヤ1600は、マイナス方向に最大のキャンバ角が付与された状態となると(図24(b)参照)、接地面中心GCが第2トレッド1442上に位置することで、第2トレッド1442の接地面積の割合が大きくなる(第1トレッド1441の接地面積の割合が小さくなる、図24(d)参照)。この場合、第2トレッド1442は、トレッドパタン、及び、タイヤ径方向厚さの面のいずれにおいても第1トレッド1441よりもグリップ力の高い特性であるので、タイヤ1600に高グリップ特性を付与することができる。その結果、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
次いで、図27を参照して、第17実施の形態におけるタイヤ1700について説明する。図27は、第17実施の形態におけるタイヤ1700の子午線断面図である。なお、図27では、タイヤ軸Oに対して片側の子午線断面のみを図示しており、他方側の子午線断面の図示が省略されている。ここで、タイヤ1700は、タイヤ周方向全周において同一の構成であるため、タイヤ周方向一部の構成のみを図27を参照して説明し、他部についての説明は省略する。また、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
第17実施の形態におけるタイヤ1700は、上記第16実施の形態に対し、ベルト部1750の構成が変更されている。即ち、ベルト部1750は、図27に示すように、管部材1651と、その管部材1651の内部空間1651aに配設される一対の電極1761,1762と、それら一対の電極1761,1762間に電圧を印可すると共にその印可する電圧を走行状態(タイヤ1700のキャンバ角を含む)に応じて制御する制御回路(図示せず)とを備える。また、タイヤ1700は、内部空間1651aにER流体(電気粘性流体)が充填封入されている。
なお、ER流体は、電気絶縁性の液体(例えば、シリコンオイル、炭化水素系鉱油、ハロゲン化炭化水素等)に電場の印加により電気分極する固体微粒子(例えば、セルロース、シリカ、ゼオライト等の微粒子)を分散・懸濁させたものであり、印可する電場の大きさに応じて流体の粘性が変化する特性を持つ。
一対の電極1761,1762は、図27に示すように、所定間隔を隔てつつ互いに対向して配置されており、その対向面間にER流体が充填されている。これにより、制御回路を作動させ、電極1761,1762に印可する電圧を大きくすることで、発生する電場を強くして、ER流体の微粒子間の固着状態を強くすることできる。その結果、ER流体の粘性を高くして、第1トレッド1441のみかけの硬さを高くすることができる。よって、この場合には、ベルト部1650の変形時におけるエネルギー吸収をより小さくして、エネルギー損失を小さくすることができるので、第1トレッド1441側の転がり抵抗をより小さくすることができる。
よって、タイヤ1700によれば、マイナス方向に最大のキャンバ角を付与して、第2トレッド1442の接地面積の割合を大きくする場合に(図24(d)参照)、電極1761,1762に印可する電圧を大きくして、ER流体の粘性を高くすることで、第1トレッド1441のみかけの硬さを高くする。これにより、第1トレッド1441側の剛性を高くして、タイヤ1700に低転がり特性を付与することができる。その結果、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。なお、この場合には、ベルト部1750の剛性の面だけでなく、トレッドパタン及びタイヤ径方向厚さの面でも第1トレッド1441側が第2トレッド942よりも転がり抵抗の小さい特性であるので、この面からも、転がり抵抗を低減して、その分、省燃費化を図ることができる。
一方、タイヤ1700によれば、制御回路を作動させ、電極1761,1762に印可する電圧を小さく(又は、遮断)することで、発生する電場を弱く(解除)して、ER流体の微粒子間の固着状態を弱くすることができる。その結果、ER流体の粘性を低くして、第1トレッド1441のみかけの硬さを低くすることができる。よって、この場合には、第1トレッド1441側の剛性を低くして、変形し易くすることができる。
よって、タイヤ1700によれば、マイナス方向に最大のキャンバ角を付与して、第2トレッド1442の接地面積の割合を大きくする場合には(図24(d)参照)、電極1761,1762に印可する電圧を小さく(又は、遮断)して、ER流体の粘性を低くすることで、第1トレッド1441のみかけの硬さを低くする。これにより、第1トレッド1441側の剛性を低くして、その分、トレッド部1440全体をより変形し易くすることができるので、その分、ER流体の粘性が高くベルト部1750の剛性が高い場合と比較して、第2トレッド1442のグリップ力を増加させて、グリップ性能の向上を図ることができる。なお、この場合には、トレッドパタン及びタイヤ径方向厚さの面で、第2トレッド1442が第1トレッド1441よりもグリップ力の高い特性であるので、この面からも、グリップ力を増加して、グリップ性能の向上を図ることができる。
次いで、図28から図34を参照して、第18実施の形態について説明する。図28は、本発明の第18実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図28の矢印FWDは、車両1の前進方向を示す。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図28に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFに支持される複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら各車輪2を独立に回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2の操舵駆動及びキャンバ角の調整等を行うキャンバ角調整装置4とを主に備え、車輪2のキャンバ角を車両用制御装置100により制御して、車輪2に設けられた2種類のトレッドを使い分けることで(図5及び図6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図ることができるように構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図28に示すように、車両1の進行方向前方側に位置する左右の前輪2FL,2FRと、進行方向後方側に位置する左右の後輪2RL,2RRとの4輪を備え、これら前後輪2FL〜2RRは、車輪駆動装置3から回転駆動力を付与されて、それぞれ独立に回転可能に構成されている。
車輪駆動装置3は、各車輪2を独立に回転駆動するための回転駆動装置であり、図28に示すように、4個の電動モータ(FL〜RRモータ3FL〜3RR)を各車輪2に(即ち、インホイールモータとして)配設して構成されている。運転者がアクセルペダル52を操作した場合には、各車輪駆動装置3から回転駆動力が各車輪2に付与され、各車輪2がアクセルペダル52の操作量に応じた回転速度で回転される。
また、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、キャンバ角調整装置4により舵角とキャンバ角とが調整可能に構成されている。キャンバ角調整装置4は、各車輪2の舵角とキャンバ角とを調整するための駆動装置であり、図28に示すように、各車輪2に対応する位置に合計4個(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が配置されている。
例えば、運転者がステアリング54を操作した場合には、キャンバ角調整装置4の一部(例えば、前輪2FL,2FR側のみ)又は全部が駆動され、ステアリング54の操作量に応じた舵角を車輪2に付与する。これにより、車輪2の操舵動作が行われ、車両1が所定の方向へ旋回される。
また、キャンバ角調整装置4は、車両1の走行状態(例えば、定速走行時または加減速時、或いは、直進時または旋回時)や車輪2が走行する路面Gの状態(例えば、乾燥路面時と雨天路面時)などの状態変化に応じて、車両用制御装置100により作動制御され、車輪2のキャンバ角を調整する。
ここで、図29を参照して、車輪駆動装置3とキャンバ角調整装置4との詳細構成について説明する。図29(a)は、車輪2の断面図であり、図29(b)は、車輪2の舵角及びキャンバ角の調整方法を模式的に説明する模式図である。
なお、図29(a)では、車輪駆動装置3に駆動電圧を供給するための電源配線などの図示が省略されている。また、図29(b)中の仮想軸Xf−Xb、仮想軸Yl−Yr、及び、仮想軸Zu−Zdは、それぞれ車両1の前後方向、左右方向、及び、上下方向にそれぞれ対応する。
図29(a)に示すように、車輪2(前後輪2FL〜2RR)は、ゴム状弾性材から構成されるタイヤ2aと、アルミニウム合金などから構成されるホイール2bとを主に備えて構成され、ホイール2bの内周部には、車輪駆動装置3(FL〜RRモータ3FL〜3RR)がインホイールモータとして配設されている。
タイヤ2aは、車両1の内側(図29(a)右側)に配置される第1トレッド21と、その第1トレッド21と特性が異なり、車両1の外側(図29(a)左側)に配置される第2トレッド22とを備える。なお、車輪2(タイヤ2a)の詳細構成については図4を参照して後述する。
車輪駆動装置3は、図29(a)に示すように、その前面側(図29(a)左側)に突出された駆動軸3aがホイール2bに連結固定されており、駆動軸3aを介して、回転駆動力を車輪2へ伝達可能に構成されている。また、車輪駆動装置3の背面には、キャンバ角調整装置4(FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RR)が連結固定されている。
キャンバ角調整装置4は、複数本(本実施の形態では3本)の油圧シリンダ4a〜4cを備えており、それら3本の油圧シリンダ4a〜4cのロッド部は、車輪駆動装置3の背面側(図29(a)右側)にジョイント部(本実施の形態ではユニバーサルジョイント)54を介して連結固定されている。なお、図29(b)に示すように、各油圧シリンダ4a〜4cは、周方向略等間隔(即ち、周方向120°間隔)に配置されると共に、1の油圧シリンダ4bは、仮想軸Zu−Zd上に配置されている。
これにより、各油圧シリンダ4a〜4cが各ロッド部をそれぞれ所定方向に所定長さだけ伸長駆動又は収縮駆動することで、車輪駆動装置3が仮想軸Xf−Xb,Zu−Xdを揺動中心として揺動駆動され、その結果、各車輪2に所定のキャンバ角と舵角とが付与される。
例えば、図29(b)に示すように、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4bのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4a,4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Xf−Xb回りに回転され(図29(b)矢印A)、車輪2にマイナス方向(ネガティブキャンバー)のキャンバ角(車輪2の中心線が仮想線Zu−Zdに対してなす角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4b及び油圧シリンダ4a,4cがそれぞれ伸縮駆動されると、車輪2にプラス方向(ポジティブキャンバー)のキャンバ角が付与される。
また、車輪2が中立位置(車両1の直進状態)にある状態で、油圧シリンダ4aのロッド部が収縮駆動され、かつ、油圧シリンダ4cのロッド部が伸長駆動されると、車輪駆動装置3が仮想線Zu−Zd回りに回転され(図29(b)矢印B)、車輪2にトーイン傾向の舵角(車輪2の中心線が車両1の基準線に対してなす角度であり、車両1の進行方向とは無関係に定まる角度)が付与される。一方、これとは逆の方向に油圧シリンダ4a及び油圧シリンダ4cが伸縮駆動されると、車輪2にトーアウト傾向の舵角が付与される。
なお、ここで例示した各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方法は、上述した通り、車輪2が中立位置にある状態から駆動する場合を説明するものであるが、これらの駆動方法を組み合わせて各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮駆動を制御することにより、車輪2に任意のキャンバ角及び舵角を付与することができる。
図28に戻って説明する。アクセルペダル52及びブレーキペダル53は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル52,53の踏み込み状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3の作動制御が行われる。
ステアリング54は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(回転角度、回転速度など)に応じて、車両1の旋回半径などが決定され、キャンバ角調整装置4の作動制御が行われる。ワイパースイッチ55は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、ワイパー(図示せず)の作動制御が行われる。
同様に、ウインカスイッチ56及び高グリップスイッチ57は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置など)に応じて、前者の場合はウインカー(図示せず)の作動制御が行われ、後者の場合はキャンバ角調整装置4の作動制御が行われる。
なお、高グリップスイッチ57がオンされた状態は、車輪2の特性として高グリップ性が選択された状態に対応し、高グリップスイッチ57がオフされた状態は車輪2の特性として低転がり抵抗が選択された状態に対応する。
車両用制御装置100は、上述のように構成された車両1の各部を制御するための車両用制御装置であり、例えば、各ペダル52,53の操作状態を検出し、その検出結果に応じて車輪駆動装置3を作動させることで、各車輪2の回転速度を制御する。
或いは、アクセルペダル52、ブレーキペダル53やステアリング54の操作状態を検出し、その検出結果に応じてキャンバ角調整装置4を作動させ、各車輪のキャンバ角を調整することで、車輪2に設けられた2種類のトレッド21,22を使い分けて(図5及び図6参照)、走行性能の向上と省燃費の達成とを図る。ここで、図30を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。
図30は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図30に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の複数の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。ROM72は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリである。なお、ROM72内には、図7に図示されるフローチャート(キャンバ制御処理)のプログラムが格納されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、各車輪2(図28参照)を回転駆動するための装置であり、各車輪2に回転駆動力を付与する4個のFL〜RRモータ3FL〜3RRと、それら各モータ3FL〜3RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
キャンバ角調整装置4は、上述したように、各車輪2の舵角とキャンバ角とを調整するための駆動装置であり、各車輪2(車輪駆動装置3)に角度調整のための駆動力を付与する4個のFL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRと、それら各アクチュエータ4FL〜4RRをCPU71からの命令に基づいて駆動制御する駆動回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、FL〜RRアクチュエータ4FL〜4RRは、3本の油圧シリンダ4a〜4cと、それら各油圧シリンダ4a〜4cにオイル(油圧)を供給する油圧ポンプ4d(図28参照)と、その油圧ポンプから各油圧シリンダ4a〜4cに供給されるオイルの供給方向を切り換える電磁弁(図示せず)と、各油圧シリンダ4a〜4c(ロッド部)の伸縮量を検出する伸縮センサ(図示せず)とを主に備えて構成されている。
CPU71からの指示に基づいて、キャンバ角調整装置4の駆動回路が油圧ポンプを駆動制御すると、その油圧ポンプから供給されるオイル(油圧)によって、各油圧シリンダ4a〜4cが伸縮駆動される。また、電磁弁がオン/オフされると、各油圧シリンダ4a〜4cの駆動方向(伸長又は収縮)が切り換えられる。
キャンバ角調整装置4の駆動回路は、各油圧シリンダ4a〜4cの伸縮量を伸縮センサにより監視し、CPU71から指示された目標値(伸縮量)に達した油圧シリンダ4a〜4cは、その伸縮駆動が停止される。なお、伸縮センサによる検出結果は、駆動回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在の舵角及びキャンバ角を得ることができる。
車両速度センサ装置32は、路面Gに対する車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後及び左右方向加速度センサ32a,32bと、それら各加速度センサ32a,32bの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ32aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図28上下方向)の加速度を検出するセンサであり、左右方向加速度センサ32bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図28左右方向)の加速度を検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ32a,32bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
CPU71は、車両速度センサ装置32の制御回路から入力された各加速度センサ32a,32bの検出結果(加速度値)を時間積分して、2方向(前後及び左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車両1の対地速度(絶対値及び進行方向)を得ることができる。
接地荷重センサ装置34は、各車輪2の接地面が路面Gから受ける荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2が受ける荷重をそれぞれ検出するFL〜RR荷重センサ34FL〜34RRと、それら各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各荷重センサ34FL〜34RRがピエゾ抵抗型の3軸荷重センサとして構成されている。これら各荷重センサ34FL〜34RRは、各車輪2のサスペンション軸(図示せず)上に配設され、上述した車輪2が路面Gから受ける荷重を車両1の前後方向(仮想軸Xf−Xb方向)、左右方向(仮想軸Yl−Yr方向)及び上下方向(仮想軸Zu−Zd方向)の3方向で検出する(図29(b)参照)。
CPU71は、接地荷重センサ装置34から入力された各荷重センサ34FL〜34RRの検出結果(接地荷重)より、各車輪2の接地面における路面Gの摩擦係数μを次のように推定する。
例えば、前輪2FLに着目すると、FL荷重センサ34FLにより検出される車両1の前後方向、左右方向および垂直方向の荷重がそれぞれFx、Fy及びFzであれば、前輪2FLの接地面に対応する部分の路面Gにおける車両1前後方向の摩擦係数μは、前輪2FLが路面Gに対してスリップしているスリップ状態ではFx/Fzとなり(μx=Fx/Fz)、前輪2FLが路面Gに対してスリップしていない非スリップ状態ではFx/Fzよりも大きい値であると推定される(μx>Fx/Fz)。
なお、車両1の左右方向の摩擦係数μyについても同様であり、スリップ状態ではμy=Fy/Fzとなり、非スリップ状態ではFy/Fzよりも大きな値と推定される。また、摩擦係数μを他の手法により検出することは当然可能である。他の手法としては、例えば、特開2001−315633号公報や特開2003−118554号に開示される公知の技術が例示される。
車輪回転速度センサ装置35は、各車輪2の回転速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の回転速度をそれぞれ検出する4個のFL〜RR回転速度センサ35FL〜35RRと、それら各回転速度センサ35FL〜35RRの検出結果を処理してCPU71に出力する処理回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各回転センサ35FL〜35RRが各車輪2に設けられ、各車輪2の角速度を回転速度として検出する。即ち、各回転センサ35FL〜35RRは、各車輪2に連動して回転する回転体と、その回転体の周方向に多数形成された歯の有無を電磁的に検出するピックアップとを備えた電磁ピックアップ式のセンサとして構成されている。
CPU71は、車輪回転速度センサ装置35から入力された各車輪2の回転速度と、予めROM72に記憶されている各車輪2の外径とから、各車輪2の実際の周速度をそれぞれ得ることができ、その周速度と車両1の走行速度(対地速度)とを比較することで、各車輪2がスリップしているか否かを判断することができる。
アクセルペダルセンサ装置52aは、アクセルペダル52の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル52の踏み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置53aは、ブレーキペダル53の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル53の踏み込み状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置54aは、ステアリング54の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング54の操作状態を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ワイパスイッチセンサ装置55aは、ワイパースイッチ55の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ワイパースイッチ55の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
ウィンカスイッチセンサ装置56aは、ウィンカスイッチ56の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ウィンカスイッチ56の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
高グリップスイッチセンサ装置57aは、高グリップスイッチ57の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、高グリップスイッチ57の操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。CPU71は、各センサ装置52a〜54aの制御回路から入力された検出結果により各ペダル52,53の踏み込み量及びステアリング54の操作角を得ると共に、その検出結果を時間微分することにより、各ペダル52,53の踏み込み速度(操作速度)及びステアリング54の回転速度(操作速度)を得ることができる。
図30に示す他の入出力装置35としては、例えば、雨量を検出するための雨量センサや路面Gの状態を非接触で検出する光学センサなどが例示される。
次いで、図31から図33を参照して、車輪2の詳細構成について説明する。図31は、車両1の上面視を模式的に示した模式図である。図32及び図33は、車両1の正面視を模式的に図示した模式図であり、図32では、車輪2にネガティブキャンバーが付与された状態が図示され、図33では、車輪2にポジティブキャンバーが付与された状態が図示されている。
上述したように、車輪2は、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備え、図31に示すように、各車輪2(前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RR)において、第1トレッド21が車両1の内側に配置され、第2トレッド22が車両1の外側に配置されている。
本実施の形態では、両トレッド21,22の幅寸法(図31左右方向寸法)が同一に構成されている。また、第1トレッド21は、第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成される。一方、第2トレッド22は、第1トレッド21に比して、転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されている。
例えば、図32に示すように、キャンバ角調整装置4が作動制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがマイナス方向(ネガティブキャンバー)に調整されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地圧Routが減少される。これにより、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、走行性能(例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは雨天時の車両安定性など)の向上を図ることができる。
一方、図33に示すように、キャンバー各調整装置4が作動制御され、車輪2のキャンバ角θL,θRがプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整されると、車両1の内側に配置される第1トレッド21の接地圧が減少されると共に、車両1の外側に配置される第2トレッド22の接地圧が増加される。これにより、第2トレッド22の低転がり抵抗を利用して、省燃費性能の向上を図ることができる。
次いで、図34を参照して、キャンバー制動制御について説明する。図34は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理であり、車輪2に付与するキャンバ角を調整することで、上述した走行性能と省燃費性能との2つの性能の両立を図る。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、まず、ワイパースイッチ55がオンされているか否か、即ち、フロントガラスのワイパーによる拭き取り動作が運転者により指示されているか否かを判断する(S1)。その結果、ワイパースイッチ55がオンされていると判断される場合には(S1:Yes)、現在の天候が雨天であり、路面Gに水膜が形成されている可能性があると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、雨天時の車両安定性の向上を図ることができる。
S1の処理において、ワイパースイッチ55はオンされていないと判断される場合には(S1:No)、雨天ではなく、路面Gの状態は良好であると推定されるので、次いで、アクセルペダル52の踏み込み量は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の加速(急加速)が運転者により指示されているか否かを判断する(S2)。
その結果、アクセルペダル52の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合には(S2:Yes)、急加速が運転者より指示されており、車輪2がスリップするおそれがあるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップを防止することができ、車両1の加速性能の向上を図ることができる。
S2の処理において、アクセルペダル52の踏み込み量が所定値に達していないと判断される場合には(S2:No)、急加速は指示されておらず、緩やかな加速又は定速走行であると推定されるので、次いで、ブレーキペダル53の踏み込み量は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の制動(急制動)が運転者により指示されているか否かを判断する(S3)。
その結果、ブレーキペダル53の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合には(S3:Yes)、急制動が運転者より指示されており、車輪2がロックするおそれがあるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のロックを防止することができ、車両1の制動性能の向上を図ることができる。
S3の処理において、ブレーキペダル53の踏み込み量が所定値に達していないと判断される場合には(S3:No)、急制動は指示されておらず、緩やかな制動か加速又は定速走行であると推定されるので、次いで、車両速度(対地速度)は所定値(例えば、時速15km)以下であるか否か、即ち、低速走行であるか否かを判断する(S17)。
その結果、車両速度が所定値以下(即ち、低速走行中)であると判断される場合には(S17:Yes)、車両速度が所定値を越えている場合と比較して、車両1がその後に減速し停車する可能性や加速する可能性も高いといえる。よって、これらの場合には車両1(車輪2)のグリップ力や停止力を予め確保しておく必要があるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のグリップ力を増加させることで、そのロックやスリップを防止して、車両1の制動性能や加速性能の向上を図ることができる。
また、車両1が停車した後は、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1(車輪2)の停止力を確保することができるので、車両1を安定した状態で停車させておくことができる。更に、その停車後に再発進する場合には、予め第1トレッドの接地圧Rinが増加されていることで、車輪2がスリップすることを防止して、車両1の再発進をスムーズ且つ高レスポンスで行うことができる。
S17の処理において、車両速度が所定値よりも大きいと判断される場合には(S17:No)、車両速度が低速ではなく、加減速の際の駆動力・制動力が比較的小さな値になると推定されるので、次いで、ウィンカスイッチ56はオンであるか否か、即ち、右左折や車線変更を行う旨が運転者により指示されているか否かを判断する(S18)。
その結果、ウィンカスイッチ56がオンであると判断される場合には(S18:Yes)、右左折や車線変更に伴って、車両1の旋回動作やその準備のための減速が行われる可能性が高いので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップを防止することができ、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
S18の処理において、ウィンカスイッチ56はオンされていないと判断される場合には(S18:No)、右左折や車線変更に伴う車両1の旋回動作は行われないと推定されるので、次いで、高グリップスイッチ57はオンであるか否か、即ち、車輪2の特性として高グリップ性を選択する旨が運転者により指示されているか否かを判断する(S19)。
その結果、高グリップスイッチ57がオンであると判断される場合には(S19:Yes)、車輪2の特性として高グリップ性が選択されたということであるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップを防止することができ、車両1の制動性能や加速性能、或いは旋回性能の向上を図ることができる。
S19の処理において、高グリップスイッチ57はオンされていないと判断される場合には(S19:No)、次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の旋回(急旋回)が運転者により指示されているか否かを判断する(S4)。
その結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪2がスリップして、車両1がスピンするおそれがあるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S6)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した場合と同様に、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップ(車両1のスピン)を防止することができ、車両1の旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進走行であり、また、S1からS3の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も指示されていないと推定される(S1:No、S2:No、S3:No)。
よって、この場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S4:No)、車輪2の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪2にポジティブキャンバーを付与して(S5)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが減少されると共に第2トレッド22の接地圧Routが増加されることで(図33参照)、第2トレッド21の低転がり抵抗を利用して、車輪2の転がり効率を向上させることができ、車両1の省燃費性能の向上を図ることができる。
このように、本実施の形態によれば、キャンバ角調整装置4により車輪2のキャンバ角θR,θLを調整して、第1トレッド21における接地圧Rinと第2トレッド22における接地圧Routとの比率を変更することで、加速性能及び制動性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができる。
次いで、図35から図38を参照して、第19実施の形態について説明する。図35は、第19実施の形態における車輪202の上面図であり、図36は、車両201の上面視を模式的に示した模式図である。
また、図37は、左旋回状態にある車両201の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車輪2に左旋回用の舵角が付与されると共に、旋回外輪(右の前輪202FR)にネガティブキャンバーが付与され、旋回内輪(左の車輪202FL)にキャンバー定常角が付与された状態が図示されている。
第18実施の形態では、車輪2の両トレッド21,22の外径が幅方向に一定とされる場合を説明したが、第19実施の形態における車輪2は、第1トレッド221の外径が漸次縮径するように構成されている。なお、上記した第18実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第19実施の形態における車輪202は、図35及び図36に示すように、車両201の内側(図35右側)に配置される第1トレッド221と、その第1トレッド221と特性が異なり、車両201の外側(図35左側)に配置される第2トレッド22とを備える。
なお、第1トレッド221は、第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性(高グリップ性)に構成され、第2トレッド22は、第1トレッド221に比して、転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)に構成されている。
図35及び図36に示すように、車輪202は、両トレッド221,22の幅寸法(図35左右方向寸法)が同一に構成されているが、第2トレッド22における外径が幅方向(図35左右方向)に略一定に構成される一方で、第1トレッド221における外径が第2トレッド22側(図35左側)から車両201の内側(図35右側)に向かうに従って漸次縮径して構成されている。
これにより、図37に示すように、車輪202(左の前輪202FL)に大きなキャンバ角を付与しなくても(即ち、キャンバ角を0°に設定しても)、第1トレッド221が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができる。その結果、車輪2全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。同時に、第1トレッド221が接地せず、かつ、第2トレッド22がより小さなキャンバ角で接地されることより、これら両トレッド221,22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、図37に示すように、車輪202(右の前輪202FR)にマイナス方向へのキャンバ角(ネガティブキャンバー)を付与して、第1トレッド221を接地させる場合には、かかる第1トレッド221の外径が漸次縮径されていることから、第1トレッド221における接地圧を幅方向(図35左右方向)全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中することを抑制することができる。
よって、高グリップの第1トレッド221を効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、第1トレッド221の偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
次いで、図38を参照して、第19実施の形態におけるキャンバー制動制御について説明する。図38は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、ワイパースイッチ55がオンされていると判断される場合(S1:Yes)、アクセルペダル52の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合(S1:No、S2:Yes)、ブレーキペダル53の踏み込み量が所定値以上であると判断される場合(S1:No、S2:No、S3:Yes)、車両速度が所定値以下であると判断される場合(S1:No、S2:No、S3:No、S17:Yes)、ウィンカスイッチ56がオンされていると判断される場合(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:Yes)、及び、高グリップスイッチ57がオンされていると判断される場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:Yes)、上述した第18実施の形態で説明したように、路面Gに水膜が形成されている、急加速・急制動が指示されている、大きな駆動力の発生や停車が予測される、右左折や車線変更に伴う旋回動作が予測される、或いは、高グリップ性の選択が指示されているということであり、第1トレッド221の高グリップ性を利用する必要がある。
よって、この場合には、左右の車輪2にネガティブキャンバー(本実施の形態では、少なくとも第2トレッド22が路面Gから離接するキャンバ角、図37に図示する右の前輪202FRを参照)を付与して(S27)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した第18実施の形態の場合と同様に、第1トレッド221の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少される(本実施の形態では接地圧Routが0となる)ことで、第1トレッド221の高グリップ性を利用して、車輪2のスリップ・ロックを防止することができ、車両201の走行安定性や加速・制動性能の向上を図ることができる。
なお、左右の車輪2に付与するキャンバ角θR,θLは直進走行時であれは同じ角度であることが好ましい。また、そのキャンバ角θR,θLは第2トレッド22が路面Gから離接する以上の角度であることが好ましい。
一方、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進走行であり、また、S1からS3の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も指示されておらず、大きな駆動力の発生や停車は予測されず、右左折や車線変更に伴う旋回動作も予測されず、更に、高グリップ性の選択は指示されていないと推定される(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No)。
よって、この場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No、S4:No)、車輪2の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪2にキャンバー定常角を付与して(S25)、このキャンバー処理を終了する。なお、本実施の形態では、キャンバー定常角が0°(図37に図示する左の前輪202FL参照)に設定される。
これにより、第1トレッド221が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221が接地せず、かつ、キャンバ角が0°で第2トレッド22が接地されることで、これら両トレッド221,22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
また、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪2がスリップして、車両201がスピンするおそれがある。そこで、本実施の形態では、旋回外輪(図37では右の前輪202FR)にネガティブキャンバーを付与すると共に、旋回内輪(図37では左の前輪202FL)にキャンバー定常角を付与して(S26)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、旋回性能を確保しつつ、制御駆動コストの削減を図ることができる。即ち、旋回外輪では、第1トレッド221の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少される(本実施の形態では0となる)ことで(図37参照)、第1トレッド221の高グリップ性を利用して、車輪202のスリップ(車両201のスピン)を防止することができ、車両201の旋回性能の向上を図ることができる。一方、旋回内輪では、そのキャンバ角の変化を旋回外輪よりも少なくする(即ち、直進走行時のキャンバ角をそのまま維持する)ことで、車両用制御装置100の制御コスト或いはキャンバ角調整装置4の駆動コストの削減を図ることができる。
次いで、図39から図41を参照して、第3実施の形態について説明する。図39は、第20実施の形態における車輪302の上面図である。また、図40は、左旋回状態にある車両301の正面視を模式的に図示した模式図であり、左右の車輪2に左旋回用の舵角が付与されると共に、旋回外輪(右の前輪202FR)にネガティブキャンバーが付与され、旋回内輪(左の車輪202FL)にポジティブキャンバーが付与された状態が図示されている。
第18実施の形態では、車輪2の両トレッド21,22の外径が幅方向に一定とされる場合を説明したが、第20実施の形態における車輪2は、第1トレッド221の外径と第3トレッド323の外径とが漸次縮径するように構成されている。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
第20実施の形態における車輪302は、図39に示すように、第3トレッド323を備え、第1トレッド221が車両301の内側(図39右側)に配置されると共に、第3トレッド323が車両301の外側(図39左側)に配置され、第2トレッド22が第1トレッド221と第3トレッド323との間に配置されている。
そして、第3トレッド323は、少なくとも第2トレッド22に比して、グリップ力の高い特性に構成されると共に、その第3トレッド323の外径は、図39に示すように、第2トレッド22側(図39右側)から車両301の外側(図39左側)に向かうに従って漸次縮径して構成されている。
これにより、車輪302に大きなキャンバ角を付与することなく(例えば、キャンバ角を0°に設定しても)、第1トレッド221及び第3トレッド323が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができる。これにより、車輪302全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。
同時に、第1トレッド221及び第3トレッド323が接地せず、かつ、第2トレッド22がより小さなキャンバ角で接地されることより、これら各トレッド221,22,323の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、車輪302にプラス方向へのキャンバ角(ポジティブキャンバー)を付与して、第3トレッド323を接地させる場合には、かかる第3トレッド323の外径が漸次縮径されていることから、第3トレッド323における接地圧を幅方向(図39左右方向)全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中することを抑制することができる。
よって、高グリップ性の第3トレッド323を効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
次いで、図41を参照して、第20実施の形態におけるキャンバー制動制御について説明する。図41は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。
CPU71は、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S4:No)、急旋回は指示されておらず、緩やかな旋回又は直進走行であり、また、S1からS3及びS17からS19の処理より、路面状態は良好であり、急加速や急制動も指示されておらず、大きな駆動力の発生や停車は予測されず、右左折や車線変更に伴う旋回動作も予測されず、更に、高グリップ性の選択は指示されていないと推定される(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No)。
よって、この場合には(S1:No、S2:No、S3:No、S17:No、S18:No、S19:No、S4:No)、車輪302の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪2にキャンバー定常角を付与して(S25)、このキャンバー処理を終了する。なお、本実施の形態では、キャンバー定常角が0°(図37に図示する左の前輪202FL参照)に設定される。
これにより、第1トレッド221及び第3トレッド323が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪302全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221及び第3トレッド323が接地せず、かつ、キャンバ角が0°で第2トレッド22が接地されることで、これら各トレッド221,22,323の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
また、S4の処理において、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S4:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、車輪2がスリップして、車両301がスピンするおそれがある。そこで、本実施の形態では、旋回外輪(図40では右の前輪202FR)にネガティブキャンバーを付与すると共に、旋回内輪(図40では左の前輪202FL)にポジティブキャンバーを付与して(S36)、このキャンバー処理を終了する。
即ち、S36の処理では、図40に示すように、左右の車輪320がいずれも旋回内方側(図40右側)に傾斜するように、キャンバ角θR,θLを付与するので、左右両輪302にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪302の横力を旋回力として利用することができるので、旋回性能のより一層の向上を図ることができる。
次いで、図42を参照して、第4実施の形態について説明する。図42は、第21実施の形態におけるキャンバー制御処理を示すフローチャートである。
第18実施の形態では、例えば、急加速や急旋回などが運転者により指示された場合に車輪2のキャンバ角を調整する場合を説明したが、第4実施の形態では、スリップした車輪202がある場合にその車輪202のキャンバ角を調整するように構成されている。
なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第4実施の形態では、第19実施の形態における車両201(車輪202)を車両用制御装置100で制御する場合を例に説明する。
CPU71は、キャンバ角S4の処理において、まず、車両速度を検出すると共に(S41)、車輪202の回転速度(周速度)を検出し(S42)、これら車両速度と車輪202の周速度とに基づいて、スリップしている車輪202が有るか否かを判断する(S43)。なお、車両速度及び車輪202の周速度は、上述したように、車両速度センサ装置32及び車輪回転速度センサ装置35により算出される。
その結果、S43の処理において、スリップしている車輪202はない、即ち、全ての車輪202が路面Gにグリップして走行していると判断される場合には(S43:No)、車輪202の性能として高グリップ性を得る必要はなく、低転がり抵抗による省燃費性能を得ることが好ましいと判断できるので、車輪202にキャンバー定常角(第19実施の形態の場合と同様に0°)を付与して(S44)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、第1トレッド221が路面Gから離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪202全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221が接地せず、かつ、キャンバ角が0°で第2トレッド22が接地されることで、これら両トレッド221,22の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。
一方、S43の処理において、スリップしている車輪202があると判断される場合には(S43:Yes)、車両201の加速性能や走行安定性が損なわれるおそれがあるので、スリップしている車輪202にネガティブキャンバーを付与して(S45)、このキャンバー処理を終了する。
これにより、上述した第18実施の形態の場合と同様に、第1トレッド221の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少される(本実施の形態では接地圧Routが0となる)ことで、第1トレッド221の高グリップ性を利用して、車輪202のスリップを防止することができ、車両201の加速性能や走行安定性の向上を図ることができる。
次いで、図43から図46を参照して、第5実施の形態について説明する。上記各実施の形態では、車輪2にネガティブキャンバーやポジティブキャンバーなどを付与する場合に、そのキャンバー角が車両1の走行状態に寄らず一定値である場合を説明したが、第22実施の形態では、車両1の走行状態に応じて、車輪2に付与されるキャンバー角の大きさが増減するように構成されている。
なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第22実施の形態では、上記各実施の形態における車両1,100を車両用制御装置500で制御する場合を例に説明する。
図43は、第22実施の形態における車両用制御装置500の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置500は、図43に示すように、CPU71、ROM572及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。第22実施の形態におけるROM572には、摩擦係数マップ572aとキャンバー角マップ572bとが設けられている。なお、これら両マップ572a,572bの詳細については、図44及び図45を参照して後述する。
路面状況スイッチセンサ装置558aは、路面状況スイッチ(図示せず)の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、路面状況スイッチの操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、路面状況スイッチは、運転者により操作される操作部材であり、走行路面の状況に応じて、運転者により路面状況スイッチが切り換えられると、その操作状態(操作位置)に応じて、キャンバー角調整装置4の作動制御がCPU71により行われる。具体的には、路面状況スイッチは、3段式(3ポジション式)のロッカースイッチとして構成され、第1位置は走行路面が乾燥舗装路である状態に、第2位置は走行路面が未舗装路である状態に、第3位置は走行路面が雨天舗装路である状態に。それぞれ対応する。
図44は、摩擦係数マップ572aの内容を模式的に図示した模式図である。摩擦係数マップ572aは、アクセルペダル52a及びブレーキペダル53の踏み込み量(操作量)と必要前後摩擦係数との関係を記憶したマップである。
CPU71は、この摩擦係数マップ572aの内容に基づいて、現在の車両1の走行状態において車輪2が発揮すべき摩擦係数(即ち、車輪2にスリップやロックを生じさせないために必要な摩擦係数)を算出する。なお、縦軸に示した必要前後摩擦係数は、車輪2にスリップ又はロックを生じさせないために必要な車両前後方向(図1上下方向)における摩擦係数である。
この摩擦係数マップ572aによれば、図44に示すように、アクセルペダル52及びブレーキペダル53が操作されていない状態(アクセル及びブレーキ操作量=0)では、必要前後摩擦係数が最小値μfminに規定されると共に、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作量(踏み込み量)に比例して、必要前後摩擦係数が直線的に変化し、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作量が最大に操作された状態(アクセル操作量=100%)において、必要前後摩擦係数が最大値μfmaxとなるように規定されている。
図45は、キャンバー角マップ572bの内容を模式的に図示した模式図である。キャンバー角マップ572bは、車輪2の摩擦係数及び転がり抵抗とキャンバー角との関係を記憶したマップであり、車輪2を使用した予備試験で実測された値が記憶されている。
CPU71は、このキャンバー角マップ572bの内容に基づいて、車輪2に付与すべきキャンバー角を算出する。
なお、図45において、実線501は摩擦係数に、実線502は転がり抵抗に、それぞれ対応する。また、横軸のキャンバー角は、図45右側(角度0度よりもθa側)がネガティブキャンバー(即ち、高グリップの第1トレッド21の接地圧が増加する側、図32参照)に、図45左側(角度0度よりもθb側)がポジティブキャンバー(即ち、低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が増加する側、図33参照)に、それぞれ対応する。
ここで、キャンバー角マップ572bには、上述した路面状況スイッチの3種類の操作状態に対応して、3種類のマップが記憶されているが、図45では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類についてはその図示を省略している。
即ち、キャンバー角マップ572bには、乾燥舗装路用マップ、未舗装用マップ及び雨天舗装路用マップの3種類が記憶されており、CPU71は、路面状況スイッチの操作状態を検出し、乾燥舗装路が指示されている場合には乾燥舗装路用マップを、未舗装路が指示されている場合には未舗装路用マップを、雨天舗装路が指示されている場合には雨天舗装路用マップを、それぞれ読み出し、その内容に基づいて、キャンバー角調整装置4の作動制御を行う。
このキャンバー角マップ572bによれば、図45に示すように、キャンバー角が0度の状態(即ち、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、ネガティブキャンバー側(θa側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ特性の第1トレッド21の接地圧が漸次増加する(低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が漸次減少する)ことで、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次増加するように規定されている。
そして、キャンバー角がθa(以下、「第2キャンバー角θa」と称す。)に達すると、第2トレッド22が走行路面から離間され、第1トレッド21のみが走行路面に接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。
なお、キャンバー角が第2キャンバー角θaからネガティブキャンバー側へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に走行路面から離間されているので、摩擦係数の変化はほとんど生じず、摩擦係数は最大値μaに維持される。また、転がり抵抗の変化も同様であり、第2キャンバー角θaで最大値となり、その後はほぼ一定値を維持する。
一方、図45に示すように、0度よりポジティブキャンバー側(θb側)の領域では、キャンバー角が0度の状態(即ち、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、ネガティブキャンバー側へ向けて変化しても、摩擦係数の変化はほとんど生じず、摩擦係数は最小値μbに維持される。
つまり、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、キャンバー角がネガティブキャンバー側に変化し、かかる変化に伴って、低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が漸次増加する(高グリップ特性の第1トレッド21の接地圧が漸次減少する)にもかかわらず、摩擦係数は最小値μbに維持される。この現象は、一般的に、低転がり抵抗を有する第2トレッドが、高グリップ特性を有する第1トレッド21に比べて高硬度に構成されるために、第2トレッドの接地が、第1トレッド21の接地による高グリップ特性への寄与を妨げるためであると考えられる。
ここで、図45で図示を省略した未舗装路面用マップ及び雨天舗装路面用マップについては、乾燥路面用マップの実線を摩擦係数が小さくなる方向へ平行移動した特性である。即ち、いずれのマップにおいても、摩擦係数が最小値となるキャンバー角は0度であり、摩擦係数が最大値となるキャンバー角は第2キャンバー角θaである。
次いで、図46を参照して、第22実施の形態におけるキャンバー制御処理について説明する。図46は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置500の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、まず、路面状況を判断する(S51)。この処理は、路面状況スイッチセンサ装置558a(図43参照)による検出結果を確認し、運転者による路面状況スイッチの操作状態を取得することで行われる。即ち、CPU71は、上述したように、路面状況スイッチの操作位置を第1位置と確認した場合には、路面状況を乾燥路面と判断し、第2位置であれば未舗装路面と判断すると共に、第3位置であれば雨天舗装路面と判断する。
次いで、S52の処理では、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の操作状態を検出し(S52)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ572a(図44参照)から読み出す(S53)。これにより、車輪2にスリップ又はロックを生じさせないために必要な車両前後方向(図1上下方向)における摩擦係数を得ることができる。
次いで、S54の処理では、車輪2の舵角及び車両1の対地速度(車速)を検出し(S54)、その検出した舵角及び車速から必要横摩擦係数を算出する(S55)。なお、CPU71は、上述したように、ステアリングセンサ装置54a及び車両速度センサ装置32の検出結果に基づいて、車輪2の舵角及び車両1の対地速度を検出する。
ここで、必要横摩擦係数は、旋回走行中の車両1において、その車輪2にスリップが生じさせないために必要な車両左右方向(図1左右方向)における摩擦係数であり、次に説明するように算出される。
即ち、まず、車輪2の舵角σ、アッカーマン旋回半径R0及び車両1のホイールベースIの関係は、tanσ=I/R0により表すことができる。この関係式は、舵角σが微小角の場合、σ=I/R0と近似することができる。これをアッカーマン旋回半径R0について変形することで、R0=I/σを得ることができる。
一方、車両1の実旋回半径R及び車両1の対地速度(車速)vの関係は、車両1について実測したスタビリティファクターKを使用することで、車両1のステア特性より、R/R0=1+K・v2により表すことができる。これを実旋回半径Rについて変形すると共に、先に求めたアッカーマン旋回半径R0を代入することで、R=I(1+K・v2)/σを得ることができる。
ここで、旋回走行中に車両1に作用する遠心力Fは、車両1の重量をmとすれば、F=m・v2/Rとなり、これに先に求めた実旋回半径Rを代入することで、F=m・v2・σ/(I(1+K・v2))を得ることができる。車輪2が横方向(車両1の左右方向)にスリップすることを回避するための摩擦力は、この遠心力Fよりも大きな値であれば良いので、必要横摩擦係数μwは、遠心力Fを重量mで割ることで、μw=F/m=v2・σ/(I(1+K・v2))により表すことができる。
S53及びS55の処理において必要前後摩擦係数及び必要横摩擦係数を得た後は、それら必要前後摩擦係数及び必要横摩擦係数に基づいて(即ち、車両1の前後方向及び左右方向を向くベクトルの合力として)、必要摩擦係数を算出して(S56)、S57の処理へ移行する。
S57の処理では、S56の処理において算出した必要摩擦係数と、車輪2が発揮可能な摩擦係数の最大値μa及び最小値μbとを比較し、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S57)。
なお、車輪2が発揮可能な摩擦係数の最大値μa及び最小値μbは、上述したように、キャンバー角マップ572b(図45参照)から読み出される。また、この場合には、CPU71は、S51の処理において判別した路面状況に応じたマップを3種類のマップの中から選択し、その選択したマップの内容に基づいて、最大値μa及び最小値μbを読み出す。
S57において判断した結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S57:Yes)、必要摩擦係数に対応する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバー角をキャンバー角マップ572bから読み出し(S58)、その読み出したキャンバー角を車輪2に付与して(S59)、このキャンバー制御処理を終了する。
具体的には、この場合は、例えば、S56の処理において算出された必要摩擦係数がμxであって、μb≦μx≦μaの関係が成り立つということであるので(S57:Yes)、この必要摩擦係数μxに対応するキャンバー角を図45に示すキャンバー角マップ572bからθxと読み出し(S58)、この読み出したキャンバー角θxを車輪2に付与する(S59)。
これにより、車輪2の発揮する摩擦係数の変更を必要最低限の摩擦係数に制御することができるので、加速制動性能や旋回性能を必要な分だけ確保しつつも、転がり抵抗をより小さな値に抑制して、より一層の省燃費を達成することができる。
一方、S57の処理において、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下ではないと判断される場合には(S57:No)、次いで、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S60)。その結果、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S60:Yes)、車輪2に対し、0度のキャンバー角を付与して(S61)、このキャンバー制御処理を終了する。
具体的には、S56の処理において算出された必要摩擦係数μyが最小値μbよりも小さい場合(μy<μb)には(S60:Yes)、必要摩擦係数μyに対応するキャンバー角を図45に示すキャンバー角マップ572bから例えばθyと読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバー角を0度と決定し、これを車輪2に付与する(S61)。
このように、この第22実施の形態におけるキャンバー角マップ572b(図45参照)によれば、0度よりポジティブキャンバー側における摩擦係数が最小値μbに維持されるので、S56の処理において算出された必要摩擦係数μyが車輪2の発揮できる摩擦係数の最小値μbを下回っている場合、車輪2に0度よりもポジティブキャンバー側に絶対値の大きなキャンバー角を付与しても、それ以上の転がり抵抗の低減(省燃費走行の達成)を見込めないと判断し、その結果として、車輪2に対し、0度のキャンバー角を付与する。
よって、車輪2へ付与されるキャンバー角が0度よりポジティブキャンバー側に大きくされず、不必要に大きなキャンバー角の付与が回避され、車両1の走行安定性を確保することができる。
さらに、本実施の形態では、車輪2のキャンバー角を0度とすることにより、最小の摩擦係数(即ち、最小の転がり抵抗)を発揮できるよう構成されているので、車輪2のキャンバー角を0度よりポジティブキャンバー側にする必要がなく、その結果、車輪2にキャンバー角を付与するために実行すべき制御を、ポジティブキャンバー側については省略し、ネガティブキャンバー側の制御だけとすることができ、制御を簡素化することができる。
なお、上述のように、車輪2のキャンバー角を0度よりポジティブキャンバー側にする必要がない車両1では、ネガティブキャンバー側(マイナス方向)のキャンバー角を付与する機構のみが必須であって、ポジティブキャンバー側(プラス方向)のキャンバー角を付与する機構を省略することが可能となり、機構を簡素化することも可能である。
一方、S60の処理において、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断されない場合には(S60:No)、必要摩擦係数が最大値μaよりも大きいということであるので、この場合には(S60:No)、第2キャンバー角を車輪2に付与すると共に(S62)、報知処理(S63)を実行して、このキャンバー制御処理を終了する。
具体的には、S56の処理において算出された必要摩擦係数μzが最大値μaよりも大きい場合(μb<μz)には(S60:No)、必要摩擦係数μzに対応するキャンバー角を図45に示すキャンバー角マップ572bから例えばθzと読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバー角を第2キャンバー角θaと決定し、これを車輪2に付与する(S62)。
このように、本実施の形態では、図45に示すように、S56の処理において算出された必要摩擦係数μzが車輪2の発揮できる摩擦係数の最大値μaを越えている場合、車輪2に第2キャンバー角θaよりも絶対値が大きなキャンバー角を付与しても、それ以上の摩擦係数の増加(グリップ性能の向上)を見込めないと判断し、車輪2には、最大値μaを発揮可能な範囲内で最も小さい角度(0度に近い角度)、即ち、第2キャンバー角θaを付与する。これにより、キャンバー角が不必要に大きくなることを回避して、車両1の走行安定性を確保することができる。
ここで、報知処理(S63)では、急加速や急制動などによって、車輪2がスリップやロックしている(又はするおそれのある)旨をスピーカーから出力すると共にモニター装置へ表示することで、運転者に対して報知する。なお、車両1が加速状態にある場合には、車両1の速度を低下させる手段(例えば、制動装置の作動による車両1の制動やエンジン等の出力を低下させる)をS63の処理において実行しても良い。これにより、車両1の速度を運転者の操作に寄らず機械的に低下させることができ、安全性の向上に寄与できる。
次いで、図47及び図48を参照して、第23実施の形態について説明する。第22実施の形態では、車輪2に第1トレッド21及び第2トレッド22が設けられる場合を説明したが、第23実施の形態では、上述した第20実施の形態の場合と同様に、車輪302に第1トレッド221、第2トレッド22及び第3トレッド323が設けられている。
なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第23実施の形態では、第20実施の形態における車両301(車輪302、図39又は図40参照)を第22実施の形態における車両用制御装置500で制御する場合を例に説明する。但し、第23実施の形態では、第22実施の形態に対して、後述するように、キャンバー角マップの構成が異なる。
図47は、第23実施の形態におけるキャンバー角マップの内容を模式的に図示した模式図である。キャンバー角マップは、車輪302の摩擦係数及び転がり抵抗とキャンバー角との関係を記憶したマップであり、車輪302を使用した予備試験で実測された値が記憶されている。CPU71は、上述した第22実施の形態の場合と同様に、このキャンバー角マップの内容に基づいて、車輪302に付与すべきキャンバー角を算出する。
なお、図47において、実線601は摩擦係数に、実線602は転がり抵抗に、それぞれ対応する。また、第23実施の形態におけるキャンバー角マップには、第22実施の形態の場合と同様に、路面状況スイッチの3種類の操作状態に対応して、3種類のマップが記憶されているが、図47では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類についてはその図示を省略している。
第23実施の形態におけるキャンバー角マップによれば、図47に示すように、キャンバー角が0度の状態(即ち、第2トレッド22のみが接地し、第1及び第3トレッド221,323が走行路面から離間している状態)から、ネガティブキャンバー側(θbn側)へ向けて変化した場合、キャンバー角がθbnまでの間は、第2トレッド22のみが接地し、第1トレッド221(及び第3トレッド323)は走行路面から離間しているので、摩擦係数は最小値μbに維持される。なお、転がり抵抗についても同様であり、この区間においては、最小値を維持する。
そして、キャンバー角がθbnから、ネガティブキャンバー側(θan側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ特性の第1トレッド221の接地圧が漸次増加する(低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が漸次減少する)ことで、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次増加する。
その後、キャンバー角がθan(以下、「第3キャンバー角θan」と称す。)に達すると、第2トレッド22が走行路面から離間され、第1トレッド221のみが走行路面に接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。
この場合、キャンバー角が第3キャンバー角θanからネガティブキャンバー側(図47右側)へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に走行路面から離間されており、走行路面に接地するのは第1トレッド221のみであるので、摩擦係数の変化はほとんど生じず、摩擦係数は最大値μaに維持される。また、転がり抵抗の変化も同様であり、キャンバー角が第3キャンバー角θanに達した時点で最大値となり、その後はほぼ一定値を維持する。
同様に、図47に示すように、キャンバー角が0度の状態(即ち、第2トレッド22のみが接地し、第1及び第3トレッド221,323が走行路面から離間している状態)から、ポジティブキャンバー側(θbp側)へ向けて変化した場合、キャンバー角がθbpまでの間は、第2トレッド22のみが接地し、第3トレッド323(及び第1トレッド221)は走行路面から離間しているので、摩擦係数は最小値μbに維持される。なお、転がり抵抗についても同様であり、この区間においては、最小値を維持する。
そして、キャンバー角がθbpから、ポジティブキャンバー側(θap側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、高グリップ特性の第3トレッド323の接地圧が漸次増加する(低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が漸次減少する)ことで、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次増加する。
その後、キャンバー角がθap(以下、「第4キャンバー角θap」と称す。)に達すると、第2トレッド22が走行路面から離間され、第3トレッド323のみが走行路面に接地した状態となることで、摩擦係数が最大値μaに達する。
この場合、キャンバー角が第4キャンバー角θapからポジティブキャンバー側(図47左側)へ向けて更に変化しても、第2トレッド22が既に走行路面から離間されており、走行路面に接地するのは第3トレッド323のみであるので、摩擦係数の変化はほとんど生じず、摩擦係数は最大値μaに維持される。また、転がり抵抗の変化も同様であり、キャンバー角が第4キャンバー角θapに達した時点で最大値となり、その後はほぼ一定値を維持する。
次いで、図48を参照して、第23実施の形態におけるキャンバー制御処理について説明する。図48は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置500の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
第23実施の形態では、CPU71は、キャンバー制御処理に関し、第22実施の形態の場合と同様に、路面状況を判断した後(S51)、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の操作状態を検出し(S52)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ572a(図44参照)から読み出す(S53)。
S53の処理を実行した後は、車輪302の舵角及び車両1の対地速度(車速)を検出し(S54)、その検出した舵角及び車速から必要横摩擦係数を算出した後(S55)、必要前後摩擦係数及び必要横摩擦係数に基づいて、必要摩擦係数を算出し(S56)、その算出した必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S57)。
その結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S57:Yes)、次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の旋回(急旋回)が運転者により指示されているか否かを判断する(S601)。
その結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S601:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、スリップのおそれがあると判断し、本実施の形態では、必要摩擦係数に対応する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバー角であって、旋回外輪がネガティブキャンバーとなり、かつ、旋回内輪がポジティブキャンバーとなるキャンバー角を図47に示すキャンバー角マップから読み出し(S658)、その読み出したキャンバー角を車輪302に付与して(S59)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第3実施の形態の場合と同様に、左右の車輪320がいずれも旋回内方側に傾斜するように、キャンバー角を付与することができる(図40参照)。その結果、左右両輪302にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪302の横力を旋回力として利用することができ、旋回性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S601の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S601:No)、急旋回は指示されておらず、比較的緩やかな旋回又は直進走行であると判断し、本実施の形態では、必要摩擦係数に対応する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバー角であって、左右両輪がネガティブキャンバーとなるキャンバー角を図47に示すキャンバー角マップから読み出し(S602)、その読み出したキャンバー角を車輪302に付与して(S59)、このキャンバー制御処理を終了する。これにより、車両301の姿勢を安定に保つことができる。
一方、S57の処理において、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下ではないと判断される場合には(S57:No)、次いで、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断し(S60)。必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S60:Yes)、キャンバー定常角を車輪302に付与して(S661)、このキャンバー制御処理を終了する。
なお、本実施の形態では、キャンバー定常角が0度に設定される。これにより、第1トレッド221及び第3トレッド323が走行路面から離れた状態で、第2トレッド22のみを接地させることができるので、車輪302全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。また、この場合には、第1トレッド221及び第3トレッド323が接地せず、かつ、キャンバー角が0度で第2トレッド22が接地されることで、これら各トレッド221,22,323の摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができる。更に、キャンバー角が不必要に大きくなることを回避して、車両1の走行安定性を確保することができる。
一方、S60の処理において、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断されない場合、即ち、必要摩擦係数が最大値μaよりも大きい場合には(S60:No)、次いで、ステアリング54の操作角は所定値以上であるか否か、即ち、所定以上の旋回(急旋回)が運転者により指示されているか否かを判断する(S603)。
その結果、ステアリング54の操作角が所定値以上であると判断される場合には(S604:Yes)、急旋回が運転者より指示されており、スリップのおそれがあると判断し、本実施の形態では、旋回外輪に上述した第3キャンバー角を付与すると共に旋回内輪に上述した第4キャンバー角を付与する(S605)。
これにより、旋回外輪がネガティブキャンバーとなり、かつ、旋回内輪がポジティブキャンバーとなり、第3実施の形態の場合と同様に、左右の車輪320がいずれも旋回内方側に傾斜するように、キャンバー角を付与することができる(図40参照)。その結果、左右両輪302にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪302の横力を旋回力として利用することができ、旋回性能のより一層の向上を図ることができる。
一方、S603の処理において、ステアリング54の操作角が所定値に達していないと判断される場合には(S603:No)、急旋回は指示されておらず、比較的緩やかな旋回又は直進走行であると判断し、本実施の形態では、左右両輪に第3キャンバー角を付与する(S604)。これにより、左右両輪にネガティブキャンバーを付与して、車両301の姿勢を安定に保つことができる。
なお、本実施の形態では、上述した第22実施の形態の場合と同様に、S56の処理において算出された必要摩擦係数が車輪2の発揮できる摩擦係数の最大値μaを越えている場合、車輪302に第3又は第4キャンバー角よりも絶対値が大きなキャンバー角を付与しても、それ以上の摩擦係数の増加(グリップ性能の向上)を見込めないと判断し、車輪302には、最大値μaを発揮可能な範囲内で最も小さい角度(0度に近い角度)、即ち、第3又は第4キャンバー角を付与する。これにより、キャンバー角が不必要に大きくなることを回避して、車両301の走行安定性を確保することができる。
S604又はS605の処理を実行した後は、報知処理(S63)を実行して、このキャンバー制御処理を終了する。
次いで、図49及び図50を参照して、第24実施の形態について説明する。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、この第24実施の形態では、第18実施の形態における車両1(車輪2)を第22実施の形態における車両用制御装置500で制御する場合を例に説明する。但し、第24実施の形態では、第22実施の形態に対して、後述するように、キャンバー角マップの構成が異なる。
図49は、第24実施の形態におけるキャンバー角マップの内容を模式的に図示した模式図である。キャンバー角マップは、車輪2の摩擦係数及び転がり抵抗とキャンバー角との関係を記憶したマップであり、車輪2における第1トレッド21の幅と第2トレッド22の幅との製造上のばらつきや、荷重による車輪2の潰れなど、車輪2の各種状態が考慮されている。CPU71は、上述した第22実施の形態の場合と同様に、このキャンバー角マップの内容に基づいて、車輪2に付与すべきキャンバー角を算出する。
なお、図49において、実線701は摩擦係数に、実線702は転がり抵抗に、それぞれ対応する。また、第24実施の形態におけるキャンバー角マップには、第22実施の形態の場合と同様に、路面状況スイッチの3種類の操作状態に対応して、3種類のマップが記憶されているが、図49では、図面を簡素化して理解を容易とするべく、1種類のマップ(乾燥舗装路用マップ)のみを代表例として図示し、他の2種類についてはその図示を省略している。
この第24実施の形態におけるキャンバー角マップ(図49)は、上述した第22実施の形態におけるキャンバー角マップ572bとは異なり、0度よりポジティブキャンバー側において、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次減少する範囲が存在する。
即ち、図49に示すように、この第24実施の形態におけるキャンバー角マップによれば、キャンバー角が0度の状態(即ち、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、ポジティブキャンバー側(θb側)へ向けて変化すると、かかる変化に伴って、低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が漸次増加する(高グリップ特性の第1トレッド21の接地圧が漸次減少する)ことで、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次減少するように規定されている。そして、キャンバー角がθb(以下、「第1キャンバー角θb」と称す。)に達すると、摩擦係数が最小値μbに達し、その後は、摩擦係数はほぼ一定値を維持する。
一方、キャンバー角が0度の状態(即ち、第1トレッド21と第2トレッド22とが均等に接地している状態)から、ネガティブキャンバー側(θa側)へ向けて変化する場合には、上述した第22実施の形態におけるキャンバー角マップ572bと同様に、ネガティブキャンバー側への変化に伴って、高グリップ特性の第1トレッド21の接地圧が漸次増加する(低転がり抵抗の第2トレッド22の接地圧が漸次減少する)ことで、摩擦係数(及び転がり抵抗)が漸次増加し、キャンバー角が第2キャンバー角θaに達すると、上述した理由により摩擦係数が最大値μaに達する。
なお、図49で図示を省略した未舗装路面用マップ及び雨天舗装路面用マップについては、乾燥路面用マップの実線を摩擦係数が小さくなる方向へ平行移動した特性である。即ち、いずれのマップにおいても、摩擦係数が最小値となるキャンバー角は第1キャンバー角θbであり、摩擦係数が最大値となるキャンバー角は第2キャンバー角θaである。
次いで、図50を参照して、第24実施の形態におけるキャンバー制御処理について説明する。図50は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置500の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、第22実施の形態の場合と同様に、路面状況を判断した後(S51)、アクセルペダル52及びブレーキペダル53の操作状態を検出し(S52)、その検出した操作状態に対応する必要前後摩擦係数を摩擦係数マップ572a(図44参照)から読み出す(S53)。
S53の処理を実行した後は、車輪2の舵角及び車両1の対地速度(車速)を検出し(S54)、その検出した舵角及び車速から必要横摩擦係数を算出した後(S55)、必要前後摩擦係数及び必要横摩擦係数に基づいて、必要摩擦係数を算出し(S56)、その算出した必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であるか否かを判断する(S57)。
S57において判断した結果、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下であると判断される場合には(S57:Yes)、必要摩擦係数に対応する(即ち、必要摩擦係数と同等の摩擦係数となる)キャンバー角を、本実施の形態におけるキャンバー角マップ(図49参照)から読み出し(S58)、その読み出したキャンバー角を車輪2に付与して(S59)、このキャンバー制御処理を終了する。
即ち、S59の処理では、本実施の形態におけるキャンバー角マップ(図49参照)から、必要摩擦係数μx(μb≦μx≦μa)に対応するキャンバー角をθxと読み出して、その読み出したキャンバー角θxを車輪2に付与する。
一方、S57の処理において、必要摩擦係数が最小値μb以上かつ最大値μa以下ではないと判断される場合には(S57:No)、次いで、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいか否かを判断する(S60)。
S60の処理において、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断されない場合、即ち、必要摩擦係数が最大値μaよりも大きい場合には(S60:No)、第22実施の形態と同様に第2キャンバー角を車輪2に付与すると共に(S62)、第22実施の形態と同様の報知処理(S63)を実行して、このキャンバー制御処理を終了する。
一方で、S60の処理において、必要摩擦係数が最小値μbよりも小さいと判断される場合には(S60:Yes)、第1キャンバー角を車輪2に付与して(S161)、このキャンバー制御処理を終了する。
具体的には、S56の処理において算出された必要摩擦係数μyが最小値μbよりも小さい場合(μy<μb)には(S60:Yes)、必要摩擦係数μyに対応するキャンバー角を図49に示すキャンバー角マップから例えばθyと読み出すのではなく、車輪2に付与するキャンバー角を第1キャンバー角θbと決定し、これを車輪2に付与する(S161)。
このように、第24実施の形態のキャンバー角マップによれば、第1キャンバー角θbよりポジティブキャンバー側において最小値μbに維持されるので、S56の処理において算出された必要摩擦係数μyが車輪2の発揮できる摩擦係数の最小値μbを下回っている場合、車輪2に第1キャンバー角θbよりも絶対値が大きなキャンバー角を付与しても、それ以上の転がり抵抗の低減(省燃費走行の達成)を見込めないと判断し、その結果として、車輪2に対して付与するキャンバー角を、最小値μbを発揮可能な範囲内で最も小さい角度(0度に近い角度)、即ち、第1キャンバー角θbとする。
よって、この第24実施の形態によれば、キャンバー角がネガティブキャンバー側にもポジティブキャンバー側にも変化されるという点において、上述した第22実施の形態のような制御の簡素化は見込めないが、車輪2へ付与されるキャンバー角が不必要に大きくされることが回避されるので、車両1の走行安定性を確保することができるという点において、第22実施の形態と同様に有効である。
次いで、図51及び図52を参照して、第25実施の形態について説明する。なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第25実施の形態では、第18実施の形態における車両1(車輪2)を車両用制御装置700で制御する場合を例に説明する。
また、本実施の形態では、車輪2には、通常、ポジティブキャンバーが付与され、低転がり抵抗の第2トレッド22が使用される一方、所定条件を満たした場合には、ネガティブキャンバーが付与され、高グリップ特性の第1トレッド21が使用される。これにより、省燃費走行と加速・制動性能や旋回性能の向上との両立が図られる。
図51は、第25実施の形態における車両用制御装置700の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置700は、図51に示すように、CPU71、EEPROM772及びRAM73を備え、これらはバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。
EEPROM772は、CPU71により実行される制御プログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能に記憶するための不揮発性のメモリであり、電源オフ後もデータを保持可能に構成されている。このEEPROM772には過去メモリ772aが設けられている。
過去メモリ772aは、スリップ履歴情報およびステア操作情報を位置情報に対応付けて記憶するメモリであり、CPU71は、後述するように、この過去メモリ772aの内容に基づいて、車両1の現在位置がスリップ頻度やステア操作頻度の高い場所であるか否かを判断する(図52のS87〜S90参照)。
なお、CPU71は、車両用制御装置700の電源がオンされている間、車輪2のスリップ状態や車両1のステア操作状態を所定間隔毎に定期的に検出し、その検出結果を位置情報に対応付けた状態で過去メモリ772aに書き込むことで、スリップ履歴情報およびステア操作情報の内容が逐次更新(蓄積)されている。
ナビゲーション装置758は、車両1の現在位置や目的地までの経路案内などを表示可能な装置であり、GPS衛星から位置情報(例えば、緯度情報及び経度情報)を受信するGPS受信機(図示せず)と、VICSセンタなどの情報センタや渋滞情報などの蓄積されたデータベースなどから渋滞情報などの交通情報を受信する交通情報受信機(図示せず)と、マンマシンインターフェイス装置(操作スイッチ、LCD装置およびスピーカ装置)と、地図データなどの種々の情報が記憶されたDVDから情報を読み取るDVD装置と、車両1の回転角速度を検出するジャイロスコープとを主に備える。
CPU71は、ナビゲーション装置758から入力される位置情報及び回転角速度と車両速度センサ装置32から入力される移動速度(対地速度)とに基づいて、車両1の現在位置を求めることができ、また、DVD装置から入力される地図データに基づいて、車両1の走行経路の状況(例えば、所定距離先に交差点、踏切、料金所等があるか否かなど)を取得することができる。
車間距離センサ装置759は、対象物までの距離及び速度の計測を行い、その結果をCPU71へ出力する装置であり、ミリ波(30GHzから300GHz程度の電磁波)を発信する発信部と、対象物から反射してきた電磁波を受信する受信部と、その受信部で受信した電磁波に基づいて、元信号との周波数差を計測する計測部とを備える(いずれも図示せず)。
CPU71は、計測部で計測された周波数差に基づいて、対象物までの距離及び速度(対象物との間の相対速度)を取得することができる。なお、本実施の形態では、車両1の前方に1つのミリ波レーダー759が設けられており、車両1の前方を走行(又は停止)する他車との間の相対的位置関係(例えば、車間距離や相対速度)を計測するように構成されている。
次いで、図52を参照して、第25実施の形態におけるキャンバー制御処理について説明する。図52は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置700の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、まず、車両1の現在位置を検出し、走行経路の状況を取得する(S71)。なお、現在位置及び走行経路の状況は、上述したように、ナビゲーション装置758を利用して取得する。また、走行経路の状況とは、ナビゲーション装置758により案内される車両1の走行経路上の状況であって、その車両1の現在位置に対して所定距離だけ進行方向前方(本実施の形態では、50m先)の状況に対応する。
S71の処理において走行経路の状況を取得した後は、次いで、その取得した走行経路の状況が交差点であるか否かを判断する(S72)。その結果、交差点であると判断される場合には(S72:Yes)、次いで、その走行経路の状況が直進であるか否か、即ち、ナビゲーション装置758により案内されている走行経路が交差点を直進するものであるか否かを判断する(S73)。
その結果、直進ではないと判断される場合には(S73:No)、ナビゲーション装置758により案内されている走行経路が交差点を右折又は左折するものであり、車両1が交差点を右折又は左折するために減速(制動)動作及び旋回動作を行うと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の制動性能及び旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S73の処理において、直進である判断される場合には(S73:Yes)、ナビゲーション装置758により案内されている走行経路が交差点を通過するものである。この場合には(S73:Yes)、過去メモリ772aから交差点走行情報を読み出し(S74)、通過予定の交差点における停止頻度が所定値以上であるか否かを判断する(S75)。
その結果、通過予定の交差点における停止頻度が所定値以上であると判断される場合には(S75:Yes)、その交差点における停止(例えば、信号による停止又は信号はないが左右確認のための停止など)の頻度が高く、車両1が交差点において減速(制動)動作を行う可能性が高いと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の制動性能の向上を図ることができる。
一方、S75の処理において、通過予定の交差点における停止頻度が所定値に満たないと判断される場合には(S75:No)、その交差点における停止(例えば、信号による停止又は信号はないが左右確認のための停止など)の頻度が低く、車両1が交差点をそのままの速度で通過すると推定されるので、次いで、S77の処理へ移行して、走行経路の状況が踏切であるか否かを判断する(S77)。
また、S72の処理において、走行経路の状況が交差点ではないと判断される場合には(S72:No)、上述した交差点における右左折や一時停止等のための動作は必要ないと推定されるとので、次いで、S77の処理へ移行して、走行経路の状況が踏切であるか否かを判断する(S77)。
その結果、踏切であると判断される場合には(S77:Yes)、車両1が踏切での一時停止のために減速(制動)動作を行うと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の制動性能の向上を図ることができる。
一方、S77の処理において、踏切ではないと判断される場合には(S77:No)、踏切での一時停止は必要ないと推定されるので、次いで、走行経路の状況が料金所であるか否かを判断する(S78)。
その結果、料金所であると判断される場合には(S78:Yes)、車両1が料金所での一時停止(又は、ETCレーンでの減速走行)のために減速(制動)動作を行うと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の制動性能の向上を図ることができる。
一方、S78の処理において、料金所ではないと判断される場合には(S78:No)、料金所での一時停止や減速は必要ないと推定されるので、次いで、走行経路の状況がカーブであるか否かを判断する(S79)。
その結果、カーブであると判断される場合には(S79:Yes)、車両1がカーブへの進入に際して減速(制動)動作を行うと推定されると共にカーブ通過の際の車輪2のスリップを防止する必要があると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S79の処理において、カーブではないと判断される場合には(S79:No)、カーブに対する減速等の準備は必要ないと推定されるので、次いで、走行経路の状況が傾斜路であるか否かを判断する(S80)。
その結果、傾斜路(例えば、上り坂や下り坂)であると判断される場合には(S80:Yes)、例えば、車両1が下り坂への進入に際して減速(制動)動作を行うと推定されると共に上り坂での登坂時における車輪2のスリップや下り坂での制動時における車輪2のロックを防止する必要があると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速・制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S80の処理において、傾斜路ではないと判断される場合には(S80:No)、傾斜路に対する減速等の準備は必要ないと推定されるので、次いで、走行経路の状況が合流・分岐であるか否かを判断する(S81)。
その結果、合流・分岐であると判断される場合には(S81:Yes)、車両1が合流・分岐に際して加速動作・減速(制動)動作や旋回動作を行うと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速・制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S81の処理において、合流・分岐ではないと判断される場合には(S81:No)、合流・分岐に対する加速等の準備は必要ないと推定されるので、次いで、走行経路の状況が未舗装路であるか否かを判断する(S82)。
その結果、未舗装路であると判断される場合には(S82:Yes)、路面の摩擦係数が低く、車両1(車輪2)がスリップするおそれがあると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速・制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S82の処理において、未舗装路ではないと判断される場合には(S82:No)、走行路面の状態は良好でありスリップのおそれは低いと推定されるので、次いで、走行経路の状況が渋滞であるか否かを判断する(S83)。
なお、走行経路の状況が渋滞であるか否かは、上述したように、ナビゲーション装置758が備える交通情報受信機を利用し、この交通情報受信機がVICSセンタから受信した渋滞情報に基づいて判断する。
その結果、渋滞であると判断される場合には(S83:Yes)、例えば、前車が渋滞により低速走行しており、その前車との衝突を回避するために車両1が急制動動作を行うおそれがあると共に、渋滞中の低速走行時には車両1がその後に加速する可能性も高いと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速性能や制動性能の向上を図ることができる。
一方、S83の処理において、渋滞ではないと判断される場合には(S83:No)、渋滞に対する減速等の準備は必要ないと推定されるので、次いで、走行経路の状況が走行規制中であるか否かを判断する(S84)。
なお、走行経路の状況が走行規制中であるか否かは、上述したように、ナビゲーション装置758が備える交通情報受信機を利用し、この交通情報受信機がVICSセンタから受信した交通情報に基づいて判断する。
その結果、走行規制中であると判断される場合には(S84:Yes)、例えば、前車が走行規制により低速走行しており、その前車との衝突を回避するために車両1が急制動動作を行うおそれがあると共に、走行規制中の低速走行時には車両1がその後に加速する可能性も高いと推定され、また、雨・雪情報区間の場合、スリップするおそれがあると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速性能や制動性能の向上を図ることができる。
一方、S84の処理において、走行規制中ではないと判断される場合には(S84:No)、走行規制に対する減速等の準備は必要ないと推定されるので、次いで、車間距離センサ装置759の検出結果を確認し(S85)、前車との車間距離が所定値以下であるか否かを判断する(S86)。
その結果、前車との車間距離が所定値以下であると判断される場合には(S86:Yes)、前車との間の車間距離が不十分で、前車が減速した際などにその前車との衝突を回避するために車両1が急制動動作を行うおそれがあると推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の制動性能の向上を図ることができる。
一方、S86の処理において、車間距離が所定値を越えていると判断される場合には(S86:No)、前車との間の車間距離が十分に確保されており、減速等に対する準備は必要ないと推定されるので、次いで、過去メモリ772aからスリップ履歴情報を読み出し(S87)、走行経路におけるスリップ頻度が所定値以上であるか否かを判断する(S88)。
その結果、走行経路におけるスリップ頻度が所定値以上であると判断される場合には(S88:Yes)、その走行経路におけるスリップの頻度が高く(例えば、ナビゲーション装置758の地図情報では舗装路となっているが、近隣環境の影響等により砂やオイル等が浮いている路面である場合など)、車両1(車輪2)がスリップするおそれが高いと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速・制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S88の処理において、走行経路におけるスリップ頻度が所定値よりも低いと判断される場合には(S88:No)、その走行経路におけるスリップの頻度が低く、車両1(車輪2)がスリップするおそれは低いと推定されるので、次いで、過去メモリ772aからステア履歴情報を読み出し(S89)、走行経路におけるステア頻度が所定値以上であるか否かを判断する(S90)。
その結果、走行経路におけるステア頻度が所定値以上であると判断される場合には(S90:Yes)、その走行経路におけるステア操作の頻度が高く(例えば、走行経路上に障害物(例えば、走行路面上の陥没穴など)が存在し、その障害物を回避するためにステア操作を行う必要がある走行経路など)、車両1(車輪2)がスリップするおそれが高いと推定されるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S76)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地圧Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性を利用して、車両1の加速・制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。
一方、S90の処理において、走行経路におけるステア頻度が所定値よりも低いと判断される場合には(S90:No)、その走行経路におけるステア操作の頻度が低く、車両1(車輪2)がスリップするおそれは低いと推定されるので、車輪2にポジティブキャンバーを付与して(S91)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地圧Rinが減少されると共に第2トレッド22の接地圧Routが増加されることで(図33参照)、第2トレッド21の低転がり抵抗を利用して、車輪2の転がり効率を向上させることができ、車両1の省燃費性能の向上を図ることができる。
このように、本実施の形態によれば、キャンバー角調整装置4により車輪2のキャンバー角を調整して、第1トレッド21における接地圧Rinと第2トレッド22における接地圧Routとの比率を変更することで、加速性能及び制動性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができる。
次いで、図53及び図54を参照して、第26実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車輪2のキャンバー角θR,θLを調整して、走行性能(加速性能及び制動性能)と省燃費性能との両立を図る場合を説明したが、第26実施の形態では、車輪2のキャンバー角θR,θLを調整して、タイヤノイズの抑制による静粛性能の向上と低燃費走行との両立を図る。
なお、上記した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。また、第26実施の形態では、第1実施の形態における車両1(車輪2)を車両用制御装置800で制御する場合を例に説明する。
また、本実施の形態では、車輪2には、通常、ポジティブキャンバーが付与され、低転がり抵抗の第2トレッド22が使用される一方、所定条件を満たした場合には、ネガティブキャンバーが付与され、高グリップ特性の第1トレッド21が使用される。これにより、省燃費走行と静粛性能の向上との両立が図られる。
図53は、第26実施の形態における車両用制御装置800の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置800のEEPROM772には、図23に示すように、過去メモリ772aと静粛性要求メモリ772bとが設けられている。
静粛性要求メモリ772bは、静粛性要求レベル情報を位置情報に対応付けて記憶するメモリであり、CPU71は、後述するように、この静粛性要求メモリ772bの内容に基づいて、車両1の現在位置がどの程度の静粛性を要求するエリアであるか(本実施の形態では、タイヤノイズを抑制して走行する静粛走行が終日要求されるエリア(静粛性第1要求エリア)であるのか、或いは、特定の時間帯でのみ静粛走行が要求されるエリア(静粛性第2要求エリア)であるのか)を判断する(図54のS803,S807参照)。
走行モードスイッチセンサ装置860は、走行モードスイッチ(図示せず)の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、走行モードスイッチの操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、走行モードスイッチとは、運転者により操作されるスイッチ(操作部材)であり、その操作状態(操作位置)に応じて、車両1の走行モードが設定される。即ち、走行モードスイッチがオンされると、走行モードとして静粛走行モードが選択され、車両1の状況が所定の条件となった場合(例えば、細街路を走行する場合や病院等の施設近傍を通過する場合など)に、静粛走行が実行される。一方、走行モードスイッチがオフされると、静粛走行モードが解除され、省燃費走行モードが選択される(図54のS801参照)。
手動切換スイッチセンサ装置861は、手動切換スイッチ(図示せず)の操作状態を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、手動切換スイッチの操作状態(操作位置)を検出するポジショニングセンサ(図示せず)と、そのポジショニングセンサの検出結果を処理してCPU71に出力する制御回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、手動切換スイッチは、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(操作位置)に応じて、キャンバー角調整装置4の作動制御が行われる。即ち、運転者は、手動切換スイッチをオンすることで、車輪2の特性を静粛性(即ち、ゴム硬度が低いトレッド)が選択された状態に強制的に設定することができる(図54のS808参照)。
次いで、図54を参照して、第26実施の形態におけるキャンバー制御処理について説明する。図54は、キャンバー制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置800の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2ms間隔で)実行される処理である。
CPU71は、キャンバー制御処理に関し、まず、車両1の走行モードが静粛走行モードに設定されているか否かを判断する(S801)。なお、この判断は、上述したように、運転者が走行モードスイッチをオンして静粛走行モードを選択しているか否か、即ち、走行モードスイッチセンサ装置860(図53参照)による走行モードスイッチセンサの検出結果に基づいて判断する。
S801の処理による判断の結果、車両1の走行モードが静粛走行モードに設定されていると判断される場合には(S801:Yes)、車両1が静粛走行を実行する状況にあるか否かを確認するべく、まず、車両1の現在位置を取得し(S802)、次いで、車両1の現在位置が静粛性第1要求エリア内であるか否かを判断する(S803)。なお、現在位置は、上述したように、ナビゲーション装置758を利用して取得する。
S803の処理で判断した結果、車両1の現在位置が静粛性第1要求エリア内にあると判断される場合には(S803:Yes)、タイヤノイズを抑制して走行する静粛走行が終日(24時間)要求されるエリア内に車両1があるということなので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S804)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性(ゴム硬度の高いトレッド)を利用して、タイヤノイズを抑制することができ、その結果、車両1の静粛性能の向上を図ることができる。
なお、車両1が静粛性第1要求エリア内にあるか否かは、S802の処理により取得した車両1の現在位置(位置情報)と、静粛性要求メモリ772b(図53参照)に記憶される静粛性要求レベル情報とに基づいて判断する。また、静粛性第1要求エリアとしては、例えば、病院や学校等の施設から所定範囲内のエリアが例示される。
一方、S803の処理による判断の結果、車両1が静粛性第1要求エリア内にないと判断される場合には(S803:No)、車両1が、所定時間帯の間でのみ静粛走行を要求するエリア内か、或いは、静粛走行が要求されていないエリア内のいずれかにあるということである。
よって、この場合には(S803:No)、まず、現在時刻を取得し(S805)、現在時刻が深夜(本実施の形態では、22時から6時の時間帯)であるか否かを判断する(S806)。そして、現在時刻が深夜であると判断される場合には(S806:Yes)、次いで、車両1の現在位置が静粛性第2要求エリア内にあるか否か、即ち、所定の時間帯(即ち、深夜)の間でのみ静粛走行を要求するエリア内に車両1があるか否かを判断する(S807)。
S807の処理により判断した結果、車両1が静粛第2要求エリア内にあると判断される場合には(S807:Yes)、車両1の現在位置は現在時刻において静粛走行を要求するエリア内にあるということであるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S804)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性(ゴム硬度の高いトレッド)を利用して、タイヤノイズを抑制することができ、その結果、車両1の静粛性能の向上を図ることができる。
なお、車両1が静粛性第2要求エリア内にあるか否かは、上述した場合と同様に、S802の処理により取得した車両1の現在位置(位置情報)と、静粛性要求メモリ772b(図53参照)に記憶される静粛性要求レベル情報とに基づいて判断する。また、静粛性第2要求エリアとしては、例えば、住宅から所定範囲内のエリアが例示される。また、現在時刻の取得は、CPU71に内蔵される計時装置を用いても良く、或いは、ナビゲーション装置758に内蔵される計時装置を用いても良い。
一方、S806の処理により判断した結果、現在時刻が深夜ではないと判断される場合には(S806:No)、例えば車両1が静粛性第2要求エリア内にあっても時間外であるので静粛走行を行う必要はない。よって、この場合には(S806:No)、S807の処理をスキップして、S808の処理へ移行する。
S808の処理では、手動切換スイッチがオンされているか否か、即ち、静粛走行を行うことが運転者より指示されているか否かを判断する(S808)。その結果、手動切換スイッチがオンされていると判断される場合には(S808)、車両1は静粛走行が要求されるエリア内になく、静粛走行を行う必要はないが、運転者により静粛走行の指示がなされているということであるので、車輪2にネガティブキャンバーを付与して(S804)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)Rinが増加されると共に第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)Routが減少されることで(図32参照)、第1トレッド21の高グリップ性(ゴム硬度の高いトレッド)を利用して、タイヤノイズを抑制することができ、その結果、車両1の静粛性能の向上を図ることができる。
一方、手動切換スイッチがオンされていない(オフである)と判断される場合には(S808)、車両1は静粛走行が要求されるエリア内になく、静粛走行を行う必要がなく、かつ、運転者による静粛走行の指示もなされているということであるので、車輪2にポジティブキャンバーを付与して(S809)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)Rinが減少されると共に第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)Routが増加されることで(図33参照)、第2トレッド21の低転がり抵抗を利用して、車輪2の転がり効率を向上させることができ、車両1の省燃費性能の向上を図ることができる。
また、S801の処理による判断の結果、車両1の走行モードが静粛走行モードに設定されていないと判断される場合には(S801:No)、走行モードスイッチがオフされており、運転者により省燃費走行モードが指示されているということであるので、車輪2にポジティブキャンバーを付与して(S809)、このキャンバー制御処理を終了する。
これにより、第1トレッド21の接地(接地圧又は接地面積)Rinが減少されると共に第2トレッド22の接地(接地圧又は接地面積)Routが増加されることで(図33参照)、第2トレッド21の低転がり抵抗を利用して、車輪2の転がり効率を向上させることができ、車両1の省燃費性能の向上を図ることができる。
このように、本実施の形態によれば、キャンバー角調整装置4により車輪2のキャンバー角を調整して、第1トレッド21における接地(接地圧又は接地面積)Rinと第2トレッド22における接地(接地圧又は接地面積)Routとの比率を変更することで、静粛性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態における構成の一部または全部を他の実施の形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
例えば、上記第18から第26実施の形態で説明した各キャンバー制御処理によりキャンバー角を制御するタイヤとして、上記第1から第17実施の形態で説明したタイヤ100〜1700を適用することは当然可能である。
例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記第1実施の形態および第8実施の形態から第12実施の形態では、第1ベルト151,851,951,1051,1151,1251の厚みT1が第2ベルト152,852,952,1052,1152,1252の厚みT2よりも厚く設定されることで、第1ベルト151,851,951,1051,1151,1251の剛性が第2ベルト152,852,952,1052,1152,1252の剛性よりも高く構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1ベルト151,851,951,1051,1151,1251のコードの線径を第2ベルト152,852,952,1052,1152,1252のコードの線径よりも太くすることにより、或いは、第1ベルト151,851,951,1051,1151,1251のコードの本数を第2ベルト152,852,952,1052,1152,1252のコードの本数よりも多くすることにより、第1ベルト151,851,951,1051,1151,1251の剛性を第2ベルト152,852,952,1052,1152,1252の剛性より高くしても良い。
上記第1実施の形態および第8実施の形態から第12実施の形態では、トレッドパタン及び損失正接tanδに加え、ベルト部150,850,950,1050,1150,1250の剛性により、第1トレッド141,841,941,1041,1141,1241、第2トレッド142,842,942,1042,1142,1242及び中間トレッド143,1043が転がり抵抗の小さい特性またはグリップ力の高い特性に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、トレッドパタン又は損失正接tanδ或いはベルト部150,850,950,1050,1150,1250の剛性の内いずれか1つにより、第1トレッド141,841,941,1041,1141,1241、第2トレッド142,842,942,1042,1142,1242及び中間トレッド143,1043を転がり抵抗の小さい特性またはグリップ力の高い特性に構成しても良く、トレッドパタン又は損失正接tanδ或いはベルト部150,850,950,1050,1150,1250の剛性の内いずれか2つを組み合わせて転がり抵抗の小さい特性またはグリップ力の高い特性に構成しても良い。
上記第1実施の形態および第10実施の形態では、第2トレッド142,1042のトレッドパタンがラグタイプとして、中間トレッド143,1043のトレッドパタンがブロックタイプとして、それぞれ構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2トレッド142,1042のトレッドパタンをブロックタイプとして、中間トレッド143,1043のトレッドパタンをラグタイプとして、それぞれ構成しても良い。同様に、上記第8及び第11実施の形態では、第2トレッド842,1142のトレッドパタンがラグタイプとして、第9及び第12実施の形態では、第2トレッド942,1242のトレッドパタンがブロックタイプとして、それぞれ構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第8及び第11実施の形態における第2トレッド842,1142のトレッドパタンをブロックタイプとして、第9及び第12実施の形態における第2トレッド942,1242のトレッドパタンをラグタイプとして、それぞれ構成しても良い。
上記第11及び第12実施の形態では、第1トレッド1141,1241と第2トレッド1142,1242とが異なる損失正接tanδのトレッドゴムで構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1トレッド1141,1241と第2トレッド1142,1242とを同一のトレッドゴムで構成しても良い。この場合には、タイヤ1100,1200の製造を簡素化できると共に、タイヤ1100,1200のコスト低減を図ることができる。
上記第11及び第12実施の形態では、第1トレッド1141,1241と第2トレッド1142,1242とが異なるトレッドパタンで構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1トレッド1141,1241と第2トレッド1142,1242とを同一のトレッドパタンで構成しても良い。この場合には、タイヤ1100,1200の製造を簡素化できると共に、タイヤ1100,1200のコスト低減を図ることができる。
上記第11及び第12実施の形態では、第1ベルト1151,1251の剛性が第2ベルト1152,1252の剛性よりも高く構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1ベルト1151,1251の剛性と第2ベルト1152,1252の剛性とを同一の剛性で構成しても良い。この場合には、タイヤ1100,1200の製造を簡素化できると共に、タイヤ1100,1200のコスト低減を図ることができる。
上記第11実施の形態では、第1トレッド1141のトレッド幅W1内にタイヤ中心線CLが位置し、上記第12実施の形態では、第1トレッド1241と第2トレッド1242との接続位置Pがタイヤ中心線CL上に位置するように構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2トレッド1142,1242のトレッド幅W2内にタイヤ中心線CLが位置するように構成しても良い。この場合には、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態で接地面中心GCを第2トレッド1142,1242とすることができる。これにより、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態において、第2トレッドの特性、即ち、グリップ力の高い特性をタイヤ1100,1200に付与して、グリップ性能の向上を図ることができる。
上記第18から第20実施の形態では、運転者によるアクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作量(踏み込み量)が所定値以上の場合に車輪2にネガティブキャンバーを付与する場合を説明したが(図34S2、S3及びS6参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態量に基づいて車輪2のキャンバ角を決定するように構成することは当然可能である。
ここで、他の状態量としては、例えば、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の操作速度が例示される。例えば、アクセルペダル52又はブレーキペダル53の踏み込み量が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い(遅い)場合には、ネガティブキャンバー(ポジティブキャンバー)を付与するように構成しても良い。
或いは、他の状態量としては、例えば、変速機のシフト操作が例示される。例えば、変速機の減速度を上げるシフト操作(シフトダウン操作)が行われた場合に、そのシフト操作により比較的大きな加減速が発生すると判断して、車輪2にネガティブキャンバーを付与するように構成しても良い。これにより、車輪2のスリップやロックを抑制して、車両1の加速性能や制動性能の向上を図ることができる。
上記第18から第20実施の形態では、運転者によるステアリング54の操作角が所定値以上の場合に車輪2にネガティブキャンバーを付与する場合を説明したが(図34S4及びS6参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態量に基づいて車輪2のキャンバ角を決定するように構成することは当然可能である。
ここで、他の状態量としては、例えば、ステアリング54の操作速度が例示される。例えば、ステアリング54の操作角が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い(遅い)場合には、ネガティブキャンバー(ポジティブキャンバー)を付与するように構成しても良い。
上記第18から第20実施の形態では、加減速状態判断手段として、各ペダル52,53の操作状態に基づいて判断する処理を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両速度センサ装置32(前後方向加速度センサ32a、左右方向加速度センサ32b)により検出された実際の加減速度に基づいて判断することは当然可能である。即ち、車両に所定値以上の加減速度が発生した場合に、車輪2にネガティブキャンバーを付与し、所定値に達していない場合にポジティブキャンバーを付与するように構成しても良い。この場合には、車両前後方向と車両左右方向との両方向の加減速度に基づいて判断しても良く、或いは、これら両方向のいずれか一方の加減速度のみに基づいて判断しても良い。
上記第18から第20実施の形態では、路面判断手段として、ワイパースイッチ55の操作状態に基づいて判断する処理を例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、雨量センサにより降雨量を検出し、その検出値が所定値以上の場合に、車輪2にネガティブキャンバーを付与するように構成しても良い。或いは、非接触の光学式センサ等で路面の状態を検出し、その検出結果(路面の水膜状態、路面の積雪状態、路面の凍結状態、或いは、舗装状態など)に基づいて、車輪にネガティブキャンバー又はポジティブキャンバーを付与するように構成しても良い。
上記第18から第20実施の形態では、ネガティブキャンバーを付与するか否かの判断順序として、ワイパースイッチ55の状態、アクセルペダル52の状態、ブレーキペダル53の状態、車両速度の状態、ウィンカスイッチ56の状態、高グリップスイッチ57の状態、ステアリング54の状態の順としたが(S1からS4参照)、この順序に限られるものではなく、これらを入れ替えて他の順序とすることは当然可能である。また、これらの判断ステップの一部を省略することも当然可能である。
上記各実施の形態では、左右の車輪2に付与するキャンバ角θR,θLが同じ角度である場合を説明したが(θR=θL)、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の車輪2にそれぞれ異なるキャンバ角θR,θLを付与することは当然可能である(θR<θL又はθL<θR)。
上記第1から第20実施の形態では、第1トレッド21,221が車両内側に、第2トレッド22が車両外側に、それぞれ配設される場合を説明したが、この位置関係に限定されるものではなく、各車輪2毎に適宜変更することは当然可能である。
例えば、第1トレッド21,221が車両外側に、第2トレッド22が車両内側に、それぞれ配設されていても良く、前輪では第1トレッド21,221が車両外側に、後輪では第2トレッド22を車両内側に、それぞれ配設されていても良い。或いは、各車輪2毎にこの位置関係が異なっていても良い。
上記第19から第21実施の形態では、キャンバー定常角が0°の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、キャンバー定常角をポジティブキャンバー又はネガティブキャンバーに設定することは当然可能である。
上記各実施の形態では、車輪が2種類のトレッドを有する場合と3種類のトレッドを有する場合とを説明したが、これらの車輪を組み合わせることは当然可能である。例えば、前輪には2種類のトレッドを有する車輪2、202を使用し、後輪には3種類のトレッドを有する車輪303を使用しても良く、この逆でも良い。
上記各実施の形態では、第1又は第3のトレッド21,221,323が第2のトレッド22に比して高グリップ性の特性を有し、第2のトレッド22が第1又は第3のトレッド21,221,323に比して低転がり性の特性を有する場合を説明したが、これら各トレッド21,221,22,323に他の特性を持たせて構成することは当然可能である。例えば、2種類のトレッドパターン(溝)を設けることで、一のトレッドは排水性の高い特性とし、他のトレッドはノードノイズの小さい特性をするものが例示される。
上記第21実施の形態では、車輪2がスリップしているか否かに応じて車輪2のキャンバ角を制御する場合を説明したが(図42S43からS45参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、他の状態に基づいて車輪2のキャンバ角を制御することは当然可能である。
他の状態としては、例えば、車輪2が走行する路面の摩擦係数μが例示される。なお、摩擦係数μは上述したように接地荷重センサ装置34により推定することができる。或いは、車輪2がロックしているか否かに基づいて、車輪2のキャンバ角を制御する(ロック時にネガティブキャンバーを付与する)ようにしても良い。
上記第22から第24実施の形態では、摩擦係数マップ572aにおいて、アクセル操作量に対する必要前後摩擦係数の変化と、ブレーキ操作量に対する必要前後摩擦係数の変化とが同じ変化となるように構成する場合を説明したが(図44参照)、かかる構成は一例であり、他の構成とすることは当然可能である。
例えば、アクセル操作量100%における必要前後摩擦係数の最大値とブレーキ操作量100%における必要前後摩擦係数の最大値とが異なる値であっても良い。また、アクセル操作量等の変化に対して必要前後摩擦係数が直線的に変化する場合を説明したが、かかる変化を曲線とすることは当然可能である。
上記第22から第24実施の形態では、車両用制御装置500が1の摩擦係数マップ572aのみを備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、複数の摩擦係数マップを備えることは当然可能である。
例えば、路面の状況に対応してそれぞれ異なる内容で構成される複数の摩擦係数マップ(例えば、路面状況スイッチの操作範囲に対応する乾燥舗装路用マップ、未舗装用マップ及び雨天舗装路用マップの3種類)を準備し、S53(図46,図48,図50)の処理においては、路面状況スイッチの操作状態に対応するマップから必要前後摩擦係数を読み出すように構成しても良い。
同様に、上記第22から第24実施の形態では、1の路面状況(例えば、乾燥舗装路)に対して1のキャンバー角マップを用いるように構成したが、1の路面状況に対し、車輪2の状態に応じて複数のキャンバー角マップを用いるように構成してもよい。例えば、乾燥舗装路用のキャンバー角マップとして、第22実施の形態におけるキャンバー角マップ572b(図45参照)と、第24実施の形態におけるキャンバ角マップ(図49参照)とを記憶しておき、車輪2の状態に応じてこれらのキャンバー角マップを使い分けるように構成してもよい。
また、上記第24実施の形態におけるキャンバー角マップ(図49)では、第1キャンバー角θbにおいて摩擦係数が最小値μbに達し、第1キャンバー角θbよりポジティブキャンバー側のキャンバー角では、摩擦係数がほぼ一定値となるよう構成した。ここで、第1キャンバー角θbを、第1トレッド21が走行路面から離間され、第2トレッド22のみが走行路面に接地した状態となるキャンバー角として設定してもよい。
上記第25実施の形態では、走行経路が交差点である場合に、その交差点を直進し且つ停止頻度が所定値に満たない場合には、ネガティブキャンバーを付与しない構成を説明したが(図52のS72〜S75参照)、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、走行経路が交差点である場合には(S72:Yes)、交差点で停止する準備として、常に(即ち、S73〜S75の処理を実行することなく)、車輪2にネガティブキャンバーを付与する(S76)ように構成しても良い。
上記第25実施の形態では、車両1の走行経路の状況を、ナビゲーション装置758により案内される車両1の走行経路に基づいて判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の情報に基づいて車両1の走行経路の状況を判断するように構成することは当然可能である。
即ち、ナビゲーション装置758による案内の有無に関わらず、車両1の現在位置の近傍における状況の状況(例えば、車両1の所定半径(例えば、50m)以内における状況、車両1の走行経路の所定距離前方(例えば、50m)における状況、車両1の走行経路の所定距離後方(例えば、50m)における状況、或いは、これらの各状況の組み合わせなど)に基づいて判断しても良い。
上記各実施の形態では、第1及び第2トレッド21,221,22の特性より得られる2つの性能として、高グリップ性より得られる走行性能(加速力・制動力・旋回力)と低転がり性(低転がり抵抗)より得られる省燃費性能との2つの性能を例に説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の2つの性能を発揮するように各トレッド21,221,22を構成することは当然可能である。
例えば、他の2つの性能としては、路面にできた水膜の除去に適した溝パターンより得られる排水性能とパターンノイズの低減に適した溝パターンより得られる低ノイズ性能との2つの性能、未舗装路における路面に食い込むブロックパターンより得られる未舗装路でのグリップ性能と溝を有さず接地面積を確保したトレッドより得られる乾燥舗装路でのグリップ性能との2つの性能、或いは、積雪路や凍結路において駆動力・制動力を発揮する性能と常温における舗装路面で駆動力・制動力を発揮する性能との2つの性能などが例示される。
上記第26実施の形態では、その説明を省略したが、車輪2の各トレッド21,221,22のトレッドパターン(溝と切り込みで構成された柄や模様)はそれぞれのトレッド21,221,22が同じパターンであっても良く、或いは、異なるパターンであっても良い。この場合には、第1トレッド21,221と第2トレッド22との両者のトレッドパターンが同じ場合には両者のゴム硬度を異ならせ、第1トレッド21,221と第2トレッド22との両者のトレッドパターンが異なる場合には両者のゴム硬度は異なっていても同じであっても良い。即ち、一方のトレッドが他方のトレッドよりも静粛性能に優れ、他方のトレッドが一方のトレッドよりも省燃費性能に優れるものであれば良い。
上記各実施の形態では、その説明を省略したが、車輪2の各トレッド21,221,22にはトレッドパターン(溝と切り込みで構成された柄や模様)が設けられていても良く、或いは、省略されていても良い。この場合には、第1トレッド21,221と第2トレッド22との両者にトレッドパターンの形成を省略する(いわゆるスリックタイヤとする)場合には両者のゴム硬度を異ならせ、第1トレッド21,221と第2トレッド22とのいずれか一方のみにトレッドパターンを設ける場合には両者のゴム硬度は異なっていても同じであっても良い。即ち、一方のトレッドが他方のトレッドよりも静粛性能に優れ、他方のトレッドが一方のトレッドよりも省燃費性能に優れるものであれば良い。
上記第26実施の形態では、走行モードが静粛走行モードでない場合(即ち、走行モードスイッチがオンされていない場合)には、省燃費走行を行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、走行モードスイッチがオフされている(即ち、静粛走行モードが選択されていない)場合には、第7実施の形態におけるキャンバー制御処理を実行するように構成しても良い。
即ち、運転者に操作される操作部材(上記実施の形態では走行モードスイッチ)が第1の操作をされている場合(上記実施の形態ではオンされている場合)には、図54のキャンバー制御処理を実行し、操作部材(上記実施の形態では走行モードスイッチ)が第2の操作をされている場合(上記実施の形態ではオフされている場合)には、図23のキャンバー制御処理を実行するようにしても良い。この場合には、図54においてS801の処理を省略する。
上記第26実施の形態では、車両1の速度に関わらず、所定の条件(S803:Yes、S807:Yes、S808:Yes)を満たせば一律に車輪2にネガティブキャンバーを付与する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両1の速度が所定速度(例えば、時速10km)よりも低速であれば、車輪2にポジティブキャンバーを付与するように構成しても良い。低速であれば、タイヤノイズによる騒音は抑制されるので、静粛性を確保することができる。よって、静粛性能と省燃費性能との両立を図ることができる。
上記第26実施の形態では、車両1が静粛性第2要求エリア内にある場合に、車輪2にネガティブキャンバーを付与するか否かは、現在時刻が深夜であるか否かに基づいて判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両1のライトがオンされているか否かに基づいて判断するように構成しても良い。
以下に本発明の変形例を示す。車輪と、その車輪のキャンバー角を調整するキャンバー角調整装置とを備える車両に対し、前記キャンバー角調整装置を作動させて、前記車輪のキャンバー角を制御する車両用制御装置であって、前記キャンバー角調整装置の作動状態を制御する作動制御手段を備え、前記車輪は、第1トレッドと、その第1トレッドと特性が異なる第2トレッドとを少なくとも備え、前記第1トレッドが前記車輪の幅方向において前記第2トレッドよりも前記車両の内側又は外側に配置され、前記第1トレッドは、前記第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性に構成されると共に、前記第2トレッドは、前記第1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性に構成され、前記作動制御手段が前記キャンバー角調整装置の作動状態を制御して、前記車輪のキャンバー角を調整することで、前記車輪の前記第1トレッドにおける接地圧と前記第2トレッドにおける接地圧との比率を変更することを特徴とする車両用制御装置A。
車両用制御装置Aによれば、作動制御手段によってキャンバー角調整装置が作動制御され、車輪のキャンバー角がマイナス方向(ネガティブキャンバー方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地圧が増加される一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地圧が減少される。
これに対し、車輪のキャンバー角がプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地圧が減少される一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地圧が増加される。
このように、本発明の車両用制御装置によれば、作動制御手段によってキャンバー角調整装置の作動状態を制御して、車輪のキャンバー角を調整することで、車輪の第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を任意のタイミングで変更することができるので、第1トレッドの特性より得られる性能と第2トレッドの特性より得られる性能との2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
ここで、第1及び第2トレッドの特性より得られる2つの性能としては、例えば、高グリップ性より得られる走行性能(加速力・制動力)と低転がり性より得られる省燃費性能との2つの性能、路面にできた水膜の除去に適した溝パターンより得られる排水性能とパターンノイズの低減に適した溝パターンより得られる低ノイズ性能との2つの性能、未舗装路における路面に食い込むブロックパターンより得られる未舗装路でのグリップ性能と溝を有さず接地面積を確保したトレッドより得られる乾燥舗装路でのグリップ性能との2つの性能、或いは、積雪路や凍結路において駆動力・制動力を発揮する性能と常温における舗装路面で駆動力・制動力を発揮する性能との2つの性能などが例示される。
なお、このように互いに背反する2つの性能の両立は、従来の車両では達成することが不可能であり、それぞれの性能に対応する2種類のタイヤを履き替える必要があったところ、本発明のように、第1及び第2トレッドを有する車輪のキャンバー角が、作動制御手段によるキャンバー角調整装置の作動状態の制御により調整される構成とすることで初めて達成可能となったものであり、これにより、互いに背反する2つの性能の両立を達成することができる。
また、本発明の車両用制御装置によれば、複数種類のトレッドが車輪の幅方向に並設されているので、キャンバー角調整装置の作動状態を制御して、車輪のキャンバー角を調整することで、各トレッドの特性より得られる複数の性能をそれぞれ発揮させることができるという効果がある。
即ち、本発明によれば、第1トレッドが、第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性に構成されると共に、第2トレッドが、第1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性に構成されているので、車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、走行性能(例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは雨天時や積雪路などでの車両安定性など)と省燃費性能との2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
また、グリップ力の高い特性に構成されるトレッドは第1トレッドとして車両の内側に配設されているので、かかる第1トレッドを利用する場合には、車輪にネガティブキャンバーを付与した状態とすることができ、その結果、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置Aにおいて、前記作動制御手段は、前記車両の対地速度を判断する対地速度判断手段と、その対地速度検出手段により前記車両の対地速度が所定速度以下であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する低速時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置B。
車両用制御装置Bによれば、車両用制御装置Aの奏する効果に加え、対地速度判断手段により車両の対地速度が所定速度以下であると判断される場合には、低速時作動制御手段がキャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、加速性能・制動性能の向上を図ることができるという効果がある。
即ち、対地速度が所定値以下であるということは、車両1がその後に減速し停車する可能性や加速する可能性も高いといえる。よって、これらの場合には車両(車輪)のグリップ力や停止力を予め確保しておく必要がある。
このような状況において、本発明によれば、車両の対地速度が所定値以下になった場合には、第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させて、第1トレッドの高グリップ性を利用することで、車輪のグリップ力を確保して、加速性能・制動性能の向上を図ることができる。なお、この場合の低速時作動手段によるキャンバー角の調整は、第1トレッドにおける接地圧が第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように行っても良い。
また、車両が停車した後は、第1トレッドの高グリップ性を利用して、車両(車輪)の停止力を確保することができるので、車両を安定した状態で停車させておくことができる。更に、その停車後に再発進する場合には、予め第1トレッドの接地圧が増加されていることで、車輪がスリップすることを防止して、車両の再発進をスムーズ且つ高レスポンスに行うことができる。
一方、対地速度判断手段により車両の対地速度が所定地以下であるとは判断されない場合には、車両(車輪)に作用する駆動力・制動力は上述の場合と比較して比較的小さい。このような場合に、本発明によれば、キャンバー角調整装置を作動させて、車輪のキャンバー角を調整することで、第2トレッドにおける接地圧を増加させる(即ち、第1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができる。なお、この場合の低速時作動手段によるキャンバー角の調整は、第2トレッドにおける接地圧が第1トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように行っても良い。
このように、本発明によれば、作動制御手段(低速時作動制御手段)によって、車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、加減速性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
なお、車両速度判断手段により車両の対地速度が所定速度以下であると判断される場合(判断されない場合)とは、車両速度センサ装置により測定された車両の実際の対地速度が既に所定速度以下に達している場合(達していない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル或いはシフトの操作状態)などに基づいて、車両の対地速度が所定速度以下になる(所定量以下とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
車両用制御装置A又はBにおいて、前記作動制御手段は、運転者が操作する操作部材の操作状態を判断する操作状態判断手段と、その操作状態判断手段により前記操作部材の操作状態が所定の条件を満たしていると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を調整する操作時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置C。
車両用制御装置Cによれば、車両用制御装置A又はBの奏する効果に加え、操作状態判断手段により操作部材の操作状態が所定の条件を満たしていると判断される場合には、操作時作動制御手段がキャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、加速性能・制動性能・旋回性能の向上を図ることができるという効果がある。
例えば、ウィンカスイッチ(操作部材)のオン(所定の条件)によって、操作時作動制御手段が第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、右左折や車線変更を行う際に、第1トレッドの高グリップ性を利用して、車輪のグリップ力を確保することができるので、車両の旋回性能の向上を図ることができる。
また、例えば、高グリップスイッチ(操作部材)のオン(所定の条件)によって、操作時作動制御手段が第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、センサ装置の検出精度などに起因して、路面状態(積雪・凍結など)を適正に認識できない場合であっても、運転者の指示に基づいて、車輪のグリップ力を確保することができるので、車輪のスリップやロックを防止して、車両の制動性能や加速性能、或いは旋回性能の向上を図ることができる。
また、例えば、アクセルペダルやブレーキペダル(操作部材)の踏み込み量が所定値以上となること(所定の条件)によって、操作時作動制御手段が第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、加速や制動を行う際に、第1トレッドの高グリップ性を利用して、車輪のグリップ力を確保することができるので、車輪のスリップやロックを防止して、車両の加速性能・制動性能の向上を図ることができる。
なお、所定の条件は、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量が所定値以上の場合だけでなく、他の状態量であっても良い。例えば、アクセルペダルやブレーキペダルの操作速度が例示される。例えば、アクセルペダル又はブレーキペダルの踏み込み量が同一であっても、その操作速度が基準値よりも速い場合を所定条件を満たしている場合としても良い。
また、例えば、変速機の減速度を上げるシフト(操作部材)操作が行われたこと(所定の条件)によって、操作時作動制御手段が第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる構成であれば、シフト操作に伴う加減速を行う際に、第1トレッドの高グリップ性を利用して、車輪のグリップ力を確保することができるので、車輪のスリップやロックを防止して、車両の加速性能・制動性能の向上を図ることができる。
車両用制御装置Aにおいて、前記作動制御手段は、前記車両の加減速状態を判断する加減速判断手段と、その加減速判断手段により前記車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を調整する加減速時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置1。なお、加減速時作動制御手段は、加減速判断手段により前記車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を調整するものであっても良い。
車両用制御装置1によれば、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合には、加減速時作動制御手段がキャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、加速性能・制動性能の向上を図ることができるという効果がある。
一方、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であるとは判断されない場合には、キャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角を調整することで、第2トレッドにおける接地圧を第1トレッドにおける接地圧よりも大きくする(即ち、第1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
このように、本発明によれば、作動制御手段(加減速時作動制御手段)によって、車輪のキャンバ角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、加減速性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
なお、車両用制御装置1の発明において、加減速判断手段により車両の加減速状態が所定量以上であると判断される場合(判断されない場合)とは、例えば、加速度センサにより計測された車両の実際の加減速状態が既に所定量以上に達している場合(達していない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状態)などに基づいて、車両の加減速状態が所定量以上になる(所定量以上とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
車両用制御装置Aまたは車両用制御装置1において、前記作動制御手段は、前記車両の旋回状態を判断する旋回判断手段と、その旋回判断手段により前記車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を調整する旋回時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置2。なお、旋回時作動制御手段は、旋回判断手段により前記車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を調整するものであっても良い。
車両用制御装置2によれば、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合には、旋回時作動制御手段がキャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、旋回性能の向上を図ることができるという効果がある。
一方、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であるとは判断されない場合には、キャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角を調整することで、第2トレッドにおける接地圧を第1トレッドにおける接地圧よりも大きくする(即ち、第1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
このように、本発明によれば、作動制御手段(旋回時作動制御手段)によって、車輪のキャンバ角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、旋回性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
なお、車両用制御装置2の発明において、旋回判断手段により車両の旋回状態が所定量以上であると判断される場合(判断されない場合)とは、車両の実際の旋回状態が既に所定量以上に達している場合(達していない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、ステアリングの操作状態)などに基づいて、車両の旋回状態が所定量以上になる(所定量以上とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
車両用制御装置Aまたは車両用制御装置1若しくは2において、前記作動制御手段は、前記車輪が走行する路面の状態を判断する路面判断手段と、その路面判断手段により前記車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるように、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を調整する路面変化時作動制御手段と、を備えていることを特徴とする車両用制御装置3。なお、路面変化時作動制御手段は、路面判断手段により前記車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合に、前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバ角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバ角を調整するものであっても良い。
車両用制御装置3によれば、路面判断手段により車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合には、路面変化時作動制御手段がキャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角を調整することで、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることができるので、高グリップの第1トレッドを利用して、走行性能(例えば、雨天時、路面積雪時、路面凍結時或いは未舗装路走行時などの走行安定性)の向上を図ることができるという効果がある。
一方、路面判断手段により車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であるとは判断されない場合には、キャンバ角調整装置を作動させて車輪のキャンバ角を調整することで、第2トレッドにおける接地圧を第1トレッドにおける接地圧よりも大きくする(即ち、第1トレッドにおける接地圧を減少させる)ことができるので、低転がり抵抗の第2トレッドを利用して、省燃費走行の実現を図ることができるという効果がある。
このように、本発明によれば、作動制御手段(路面変化時作動制御手段)によって、車輪のキャンバ角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、走行安定性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
なお、車両用制御装置3の発明において、路面判断手段により車輪が走行する路面の状態が所定条件を満たす状態であると判断される場合(判断されない場合)とは、路面の状態が既に所定条件を満たす状態となっている場合(なっていない場合)のみでなく、運転者により操作される操作部材(例えば、ワイパ操作レバーの操作状態)などに基づいて、路面の状態が所定の条件を満たす状態になる(所定の条件を満たす状態とはならない)と予測される場合も含む趣旨である。
車両用制御装置Aまたは車両用制御装置1から3のいずれかにおいて、前記車輪は、前記第2トレッドにおける外径が車輪幅方向に略一定に構成されると共に、前記第1トレッドにおける外径が前記第2トレッド側から前記車両の内側又は外側に向かうに従って漸次縮径して構成されていることを特徴とする車両用制御装置4。
車両用制御装置4によれば、第2トレッドにおける外径が車輪幅方向に略一定に構成されると共に、第1トレッドにおける外径が第2トレッド側から車両の内側又は外側に向かうに従って漸次縮径して構成されているので、車輪に大きなキャンバ角を付与しなくても(例えば、キャンバ角を0°に設定しても)、第1トレッドが路面から離れた状態で、第2トレッドのみを接地させることができる。
これにより、車輪全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。同時に、第1トレッドが接地せず、かつ、第2トレッドがより小さなキャンバ角で接地されることで、これら両トレッドの摩耗をそれぞれ抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
一方、車輪にマイナス方向又はプラス方向へのキャンバ角(ネガティブキャンバー又はポジティブキャンバー)を付与して、第1トレッドを接地させる場合には、かかる第1トレッドの外径が漸次縮径されていることから、第1トレッドにおける接地圧を幅方向全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中しないので、高グリップの第1トレッドを効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置4において、前記車輪は、少なくとも前記第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性に構成される第3トレッドを備え、前記第1トレッドが前記車両の内側に配置されると共に、前記第3トレッドが前記車両の外側に配置され、前記第2トレッドが前記第1トレッドと第3トレッドとの間に配置されるものであり、前記第3トレッドにおける外径が前記第2トレッド側から前記車両の外側に向かうに従って漸次縮径して構成されていることを特徴とする車両用制御装置5。
車両用制御装置5によれば、第3トレッドにおける外径が第2トレッド側から車両の外側に向かうに従って漸次縮径して構成されているので、第1及び第2トレッドに加えて第3トレッドを更に設ける場合であっても、車輪に大きなキャンバ角を付与することなく(例えば、キャンバ角を0°に設定しても)、第1トレッド及び第3トレッドが路面から離れた状態で、第2トレッドのみを接地させることができる。
これにより、車輪全体としての転がり抵抗をより小さくして、省燃費性能のより一層の向上を図ることができる。同時に、第1トレッド及び第2トレッドが接地せず、かつ、第2トレッドがより小さなキャンバ角で接地されることで、これら各トレッドの摩耗をそれぞれ抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
一方、車輪にプラス方向へのキャンバ角(ポジティブキャンバー)を付与して、第3トレッドを接地させる場合には、かかる第3トレッドの外径が漸次縮径されていることから、第3トレッドにおける接地圧を幅方向全域において均等化することができ、トレッド端部に接地圧が集中しないので、高グリップの第3トレッドを効率的に利用して、走行性能(旋回性能、加速性能、制動性能、雨天時の走行安定性など)のより一層の向上を図ることができると共に、偏摩耗を抑制して、高寿命化を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置5において、前記車輪は、前記車両の左右に配置され、前記作動制御手段は、前記車両が旋回される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させ、前記左右の車輪がいずれも旋回内方側に傾斜するようにキャンバ角を調整することで、旋回外輪では前記第1トレッドにおける接地圧が前記第2トレッド及び第3トレッドにおける接地圧よりも大きくなり、かつ、旋回内輪では前記第3トレッドにおける接地圧が前記第1トレッド及び第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにする旋回第1作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置6。なお、旋回第1作動制御手段は、旋回外輪では前記第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加し、かつ、旋回内輪では前記第3トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、キャンバ角調整装置を作動させるものであっても良い。
車両用制御装置6によれば、第1から第3トレッドを有する車輪が車両の左右に配置され、車両が旋回される場合には、旋回第1作動制御手段により、左右の車輪がいずれも旋回内方側に傾斜する(即ち、旋回外輪がネガティブキャンバーとなり旋回内輪がポジティブキャンバーとなる)ようにキャンバ角を調整するので、左右両輪にそれぞれ横力を発生させて、それら両輪の横力を旋回力として利用することができるので、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置Aまたは車両用制御装置1から4のいずれかにおいて、前記車輪は、前記車両の左右に配置され、前記作動制御手段は、前記車両が旋回される場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させ、前記左右の車輪の内の旋回外輪となる車輪のキャンバ角を調整することで、前記旋回外輪の第1トレッドにおける接地圧が前記旋回外輪の第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにする旋回第2作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置7。なお、旋回第2作動制御手段は、前記左右の車輪の内の旋回外輪となる車輪のキャンバ角を調整することで、前記旋回外輪の第1トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するように、前記キャンバ角調整装置を作動させるものであっても良い。
車両用制御装置7によれば、第1及び第2トレッドを有する車輪が車両の左右に配置され、車両が旋回される場合には、旋回第2作動制御手段により、左右の車輪の内の旋回外輪のキャンバ角を調整(例えば、旋回外輪のみを旋回内方側(ネガティブキャンバー側)へ傾斜させ、旋回内輪は直進走行時と同様のキャンバ角を維持する)するので、旋回性能を確保しつつ、制御駆動コストの削減を図ることができるという効果がある。
即ち、本発明によれば、旋回外輪では、第1トレッドにおける接地圧を第2トレッドにおける接地圧よりも大きくすることで、高グリップ性能の第1トレッドを利用して、旋回性能を確保することができる。一方、旋回内輪では、そのキャンバ角の調整を不要とする(直進走行時のキャンバ角をそのまま維持する)ことで、車両用制御装置の制御コスト或いはキャンバ角調整装置の駆動コストの削減を図ることができる。
車両用制御装置Aまたは車両用制御装置1から7のいずれかにおいて、前記車両の対地速度を検出する対地速度検出手段と、前記車輪の回転速度を検出する回転速度検出手段と、それら対地速度検出手段および回転速度検出手段により検出された対地速度および回転速度に基づいて、前記車輪がスリップしているか否かを判断するスリップ判断手段とを備え、前記作動制御手段は、前記スリップ判断手段により前記車輪がスリップしていると判断された場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させ、前記車輪のキャンバ角を調整することで、前記第1トレッド又は第3トレッドにおける接地圧が前記第2トレッドにおける接地圧よりも大きくなるようにするスリップ時作動制御手段を備えていることを特徴とする車両用制御装置8。なお、スリップ時作動制御手段は、前記スリップ判断手段により前記車輪がスリップしていると判断された場合に、前記キャンバ角調整装置を作動させ、前記車輪のキャンバ角を調整することで、前記第1トレッド又は第3トレッドにおける接地圧が少なくとも増加するようにものであっても良い。
車両用制御装置8によれば、車輪がスリップしているとスリップ判断手段によって判断された場合には、スリップ時作動制御手段がスリップしている車輪のキャンバ角を調整して、第1トレッド又は第3トレッドの接地圧を増加させることができるので、グリップ力を回復させて、車両の走行安定性を高めることができるという効果がある。
車輪と、その車輪のキャンバー角を調整するキャンバー角調整装置とを備える車両に対し、前記キャンバー角調整装置を作動させて、前記車輪のキャンバー角を制御する車両用制御装置であって、前記キャンバー角調整装置の作動状態を制御する作動制御手段を備え、前記車輪は、第1トレッドと、その第1トレッドに対して前記車輪の幅方向に並設され前記車両の内側又は外側に配置される第2トレッドと、を備えると共に、前記第1トレッドと第2トレッドとが互いに異なる特性に構成され、前記第1トレッドは、前記第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性に構成されると共に、前記第2トレッドは、前記第1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性に構成され、前記作動制御手段は、前記車輪に走行路面との間で滑りを生じさせないために必要な摩擦係数を前記車両の走行状態に基づいて算出する必要摩擦係数算出手段と、その算出手段により算出された前記摩擦係数に基づいて前記車輪のキャンバー角を算出するキャンバー角算出手段と、そのキャンバー角算出手段により算出されたキャンバー角に基づいて前記車輪のキャンバー角を調整することで前記車輪の前記第1トレッドにおける接地圧と前記第2トレッドにおける接地圧との比率を変更するキャンバー角変更手段と、を備えることを特徴とする車両用制御装置140−1。
車両用制御装置140−1によれば、作動制御手段によってキャンバー角調整装置が作動制御され、車輪のキャンバー角がマイナス方向(ネガティブキャンバー方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地圧が増加される一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地圧が減少される。
これに対し、車輪のキャンバー角がプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地圧が減少される一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地圧が増加される。
このように、本発明の車両用制御装置によれば、作動制御手段によってキャンバー角調整装置の作動状態を制御して、車輪のキャンバー角を調整することで、車輪の第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を任意のタイミングで変更することができるので、第1トレッドの特性より得られる性能と第2トレッドの特性より得られる性能との2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
ここで、本発明の車両用制御装置によれば、第1トレッドを、第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性とすると共に、第2トレッドを、第1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性とする構成であるので、車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、走行性能(例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは雨天時や積雪路などでの車両安定性など)と省燃費性能との2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
このように互いに背反する2つの性能の両立は、従来の車両では達成することが不可能であり、それぞれの性能に対応する2種類のタイヤを履き替える必要があったところ、本発明のように、第1及び第2トレッドを有する車輪のキャンバー角が、作動制御手段によるキャンバー角調整装置の作動状態の制御により調整される構成とすることで初めて達成可能となったものであり、これにより、互いに背反する2つの性能の両立を達成することができる。
また、本発明によれば、車輪に走行路面との間で滑りを生じさせないために必要な摩擦係数を車両の走行状態に基づいて必要摩擦係数算出手段が算出すると共に、その算出手段が算出した摩擦係数に基づいて車輪のキャンバー角をキャンバー角算出手段が算出し、そのキャンバー角算出手段が算出したキャンバー角に基づいて車輪のキャンバー角をキャンバー角変更手段が調整する構成であるので、省燃費性能の向上を図りつつ、車輪のスリップを抑制するのに必要な摩擦係数を車輪が確実に発揮して、加速性能、制動性能或いは旋回性能の向上をより効果的に図ることができるという効果がある。
ここで、グリップ力の高い特性に構成されるトレッドが第1トレッドとして車両の内側に配設する構成であれば、かかる第1トレッドを利用する場合に、左右の車輪にネガティブキャンバーを付与した状態とすることができるので、その分、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
また、第2トレッドの両側(車輪の幅方向両側)に第1トレッドを配設する構成であれば、かかる第1トレッドを利用する場合に、左右の車輪が共に旋回内側へ傾斜する方向へキャンバー角を付与した状態とすることができるので、その分、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置140−1において、前記キャンバー角算出手段は、少なくとも、前記必要摩擦係数算出手段により算出された前記摩擦係数が前記車輪の発揮できる摩擦係数の範囲内にある場合、前記必要摩擦係数算出手段により算出された前記摩擦係数と同等の摩擦係数を前記車輪が発揮し、かつ、前記車輪の転がり抵抗がより小さくなるキャンバー角を算出することを特徴とする車両用制御装置140−2。
車両用制御装置140−2によれば、車両用制御装置140−1の奏する効果に加え、高グリップ性による加減速・旋回性能と低転がり抵抗による低燃費性能との両立をより一層図ることができるという効果がある。
即ち、車輪の転がり抵抗と摩擦係数との間には相関があり、低転がり抵抗の特性を有する車輪では省燃費を達成できるが、グリップ性能の確保が困難となり、加速性能、制動性能或いは旋回性能の低下を招き、一方、高グリップ特性を有する車輪では加速性能、制動性能或いは旋回性能の向上を図ることができるが、転がり抵抗が増加して、燃費の悪化を招く。
これに対し、本発明によれば、キャンバー角算出手段は、少なくとも、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる摩擦係数の範囲内にある場合、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数と同等の摩擦係数を車輪が発揮し、かつ、車輪の転がり抵抗がより小さくなるキャンバー角を算出する、即ち、車輪の発揮する摩擦係数の変更を必要最低限の摩擦係数に制御することができるので、加速制動性能や旋回性能を確保しつつも、より一層の省燃費を達成することができるという効果がある。
なお、キャンバー角算出手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる最大の摩擦係数を越えている場合、車輪が最大の摩擦係数を発揮するキャンバー角を算出するように構成することが好ましい。この場合には、キャンバー角は車輪が最大の摩擦係数を発揮する範囲で最も小さい角度(0度に近い角度)であることがより好ましい。第2トレッドが走行路面から離れた後はキャンバー角を大きくしても摩擦係数が一定値に収束してそれ以上のグリップ性能の向上は見込めないところ、キャンバー角が不必要に大きくなることを回避して、車両の走行安定性を確保することができるからである。また、この場合には、車輪の発揮できる摩擦係数を超えている旨を運転者に対して報知する報知手段(例えば、警告音の出力やモニター等への警告表示)又は車両速度を低下させる手段(例えば、制動装置による制動指示やエンジン等の出力低下指示)を備えることが好ましい。これにより、車両の走行が限界性能(加速制動性能・旋回性能)を越えていることを運転者に知らせることができる、又は、車両速度を運転者の操作に寄らず機械的に低下させることができ、安全性の向上に寄与できる。
また、キャンバー角算出手段は、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる最小の摩擦係数を下回っている場合、車輪が最小の摩擦係数を発揮するキャンバー角を算出するように構成することが好ましい。この場合には、キャンバー角は車輪が最小の摩擦係数を発揮する範囲で最も小さい角度(0度に近い角度)であることがより好ましい。第1トレッドが走行路面から離れた後はキャンバー角を大きくしても転がり抵抗が一定値に収束してそれ以上の省燃費性能の向上は見込めないところ、キャンバー角が不必要に大きくなることを回避して、車両の走行安定性を確保することができるからである。
特に、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる最小の摩擦係数を下回っている場合には、キャンバー角算出手段は、キャンバー角は車輪が最小の摩擦係数を発揮する範囲で最も小さい角度として0度を算出するように構成することが好ましい。
かかる場合におけるキャンバー角が0度とされることにより、キャンバー角が不必要に大きくなることを回避して、車両の走行安定性を確保することができる上に、車輪にキャンバー角を付与するために実行すべき制御を、0度よりプラス側又は0度よりマイナス側に限定することができる。よって、制御を簡素化することができるからである。
また、必要摩擦係数算出手段により算出された摩擦係数が車輪の発揮できる最小の摩擦係数を下回っている場合に、キャンバー角算出手段が車輪に付与すべきキャンバー角として0度を算出したことにより、車輪に付与されるキャンバー角が0度よりプラス側に限定することができる。かかる場合には、マイナス側のキャンバー角を付与する機構を省略することが可能となる。また、車輪に付与されるキャンバー角が0度よりマイナス側に限定される場合には、プラス側のキャンバー角を付与する機構を省略することが可能となる。よって、これらの場合には、機構の簡素化が可能となる。
車両用制御装置140−1又は140−2において、運転者が前記車両を加速させるために操作する加速操作部材の操作状態を検出する加速検出手段と、運転者が前記車両を制動するために操作する制動操作部材の操作状態を検出する制動検出手段と、を備え、前記必要摩擦係数算出手段は、前記加速検出手段及び制動検出手段により検出された加速操作部材及び制動操作部材の操作状態に基づいて、前記摩擦係数を算出することを特徴とする車両用制御装置140−3。
車両用制御装置140−3によれば、車両用制御装置140−1又は140−2の奏する効果に加え、運転者が車両を加速又は減速させるために操作する加速操作部材及び減速操作部材の操作状態を検出する加速検出手段及び制動検出手段を備え、それら加速検出手段及び制動検出手段により検出された加速操作部材及び制動操作部材の操作状態に基づいて、必要な摩擦係数を必要摩擦係数算出手段が算出する構成であるので、車両の実際の加速状態又は減速状態に応じて、車輪の摩擦係数及び転がり抵抗を制御することができ、その結果、加速・減速性能や旋回性能と省燃費性能との両立を効率良く達成することができるという効果がある。
即ち、加速検出手段及び制動検出手段により検出された加速操作部材及び制動操作部材の操作状態に基づいて、必要な摩擦係数を算出する構成であれば、急加速や急制動が行われる場合には、より大きな摩擦係数が必要であると算出させることができ、この場合には、第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる(即ち、第2トレッドの接地圧を減少させる)ことで、第1トレッドの高グリップ性能を利用して、加速・制動性能や旋回性能の向上を図ることができる。一方、加速・制動が緩やかな場合や定速走行である場合には、必要な摩擦係数としてより小さな値を算出させることができ、この場合には、第2トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる(即ち、第1トレッドの接地圧を減少させる)ことで、第2トレッドの低転がり抵抗を利用して、省燃費の達成を図ることができる。
その結果、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を実際の走行に即した適正な状態で制御することができ、その分、加速・制動性能及び旋回性能と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置140−1から140−3のいずれかにおいて、前記車両の対地速度と前記車輪の舵角とから前記車両の旋回状態を算出する旋回状態算出手段を備え、前記必要摩擦係数算出手段は、前記旋回状態算出手段により算出された前記車両の旋回状態に基づいて、前記摩擦係数を算出することを特徴とする車両用制御装置140−4。
車両用制御装置140−4によれば、車両用制御装置140−4の奏する効果に加え、車両の対地速度と車輪の舵角とから車両の旋回状態を算出する手段を備え、それら旋回状態算出手段により算出された車両の旋回状態に基づいて、必要な摩擦係数を必要摩擦係数算出手段が算出する構成であるので、車両の実際の旋回状態に応じて、車輪の摩擦係数及び転がり抵抗を制御することができ、その結果、旋回性能(及び加速・制動性能)と省燃費性能との両立を効率良く達成することができるという効果がある。
即ち、旋回状態算出手段により算出された車両の旋回状態に基づいて、必要な摩擦係数を算出する構成であれば、急旋回や高速旋回が行われる場合には、より大きな摩擦係数が必要であると算出させることができ、この場合には、第1トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる(即ち、第2トレッドの接地圧を減少させる)ことで、第1トレッドの高グリップ性能を利用して、旋回性能(及び加速・制動性能)の向上を図ることができる。一方、旋回半径が緩やかな場合や低速旋回である場合には、必要な摩擦係数としてより小さな値を算出させることができ、この場合には、第2トレッドにおける接地圧を少なくとも増加させる(即ち、第1トレッドの接地圧を減少させる)ことで、第2トレッドの低転がり抵抗を利用して、省燃費の達成を図ることができる。
その結果、第1トレッドにおける接地圧と第2トレッドにおける接地圧との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を実際の走行に即した適正な状態で制御することができ、その分、旋回性能(及び加速・制動性能)と省燃費性能との互いに背反する2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
車輪と、その車輪のキャンバー角を調整するキャンバー角調整装置とを備える車両に対し、前記キャンバー角調整装置を作動させて、前記車輪のキャンバー角を制御する車両用制御装置であって、前記キャンバー角調整装置の作動状態を制御する作動制御手段を備え、前記車輪は、第1トレッドと、その第1トレッドに対して前記車輪の幅方向に並設され前記車両の内側又は外側に配置される第2トレッドと、を備えると共に、前記第1トレッドと第2トレッドとが互いに異なる特性に構成され、前記第1トレッドは、前記第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性に構成されると共に、前記第2トレッドは、前記第1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性に構成され、前記作動制御手段は、前記車両の周辺における周辺情報を取得する周辺情報取得手段と、その周辺情報取得手段により取得された周辺情報に基づいて、前記車輪に必要とされる特性を判断する特性判断手段と、その判断手段により判断された特性を前記車輪が発揮するように、前記キャンバー角調整装置を作動させて前記車輪のキャンバー角を変更するキャンバー角変更手段と、を備えることを特徴とする車両量制御装置141−1。
車両用制御装置141−1によれば、作動制御手段によってキャンバー角調整装置が作動制御され、車輪のキャンバー角がマイナス方向(ネガティブキャンバー方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地(接地圧又は接地面積)が増加される一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地(接地圧又は接地面積)が減少される。
これに対し、車輪のキャンバー角がプラス方向(ポジティブキャンバー方向)に調整されると、車両の内側に配置されるトレッド(第1トレッド又は第2トレッド)の接地(接地圧又は接地面積)が減少される一方、車両の外側に配置されるトレッド(第2トレッド又は第1トレッド)の接地(接地圧又は接地面積)が増加される。
このように、本発明の車両用制御装置によれば、作動制御手段によってキャンバー角調整装置の作動状態を制御して、車輪のキャンバー角を調整することで、車輪の第1トレッドにおける接地と第2トレッドにおける接地との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を任意のタイミングで変更することができるので、第1トレッドの特性より得られる性能と第2トレッドの特性より得られる性能との2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
ここで、本発明の車両用制御装置によれば、第1トレッドを、第2トレッドに比して、グリップ力の高い特性(ゴム硬度の低い特性)とすると共に、第2トレッドを、第1トレッドに比して、転がり抵抗の小さい特性(ゴム硬度の高い特性)とする構成であるので、車輪のキャンバー角を調整して、第1トレッドにおける接地と第2トレッドにおける接地との比率(一方のトレッドのみが接地し、他方のトレッドが路面から離れている状態を含む)を変更することで、走行性能(例えば、旋回性能、加速性能、制動性能或いは雨天時や積雪路などでの車両安定性など)と省燃費性能との2つの性能の両立または(及び)静粛性と低燃費との2つの性能の両立を図ることができるという効果がある。
このように互いに背反する2つの性能の両立は、従来の車両では達成することが不可能であり、それぞれの性能に対応する2種類のタイヤを履き替える必要があったところ、本発明のように、第1及び第2トレッドを有する車輪のキャンバー角が、作動制御手段によるキャンバー角調整装置の作動状態の制御により調整される構成とすることで初めて達成可能となったものであり、これにより、互いに背反する2つの性能の両立を達成することができる。
また、本発明の車両用制御装置によれば、グリップ力の高い特性に構成されるトレッドは第1トレッドとして車両の内側に配設されているので、かかる第1トレッドを利用する場合には、車輪にネガティブキャンバーを付与した状態とすることができ、その結果、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
ここで、グリップ力の高い特性に構成されるトレッドを第1トレッドとして車両の内側に配設する構成であれば、かかる第1トレッドを利用する場合に、左右の車輪にネガティブキャンバーを付与した状態とすることができるので、その分、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
また、第2トレッドの両側(車輪の幅方向両側)に第1トレッドを配設する構成であれば、かかる第1トレッドを利用する場合に、左右の車輪が共に旋回内側へ傾斜する方向へキャンバー角を付与した状態とすることができるので、その分、旋回性能のより一層の向上を図ることができるという効果がある。
ここで、本発明の車両用制御装置によれば、車両の周辺における周辺情報を取得する周辺情報取得手段を備え、その周辺情報取得手段により取得された周辺情報に基づいて、車輪に必要とされる特性を特性判断手段が判断すると共に、その判断手段により判断された特性を車輪が発揮するように、キャンバー角変更手段がキャンバー角調整装置を作動させて車輪のキャンバー角を変更する構成であるので、車両周辺の状況に応じた制御(車輪のキャンバー角の調整)を行うことができる。
これにより、例えば、車両に走行性能が必要とされる状況においては、第1トレッドによる高グリップ特性の影響を大きくして、走行性能を確保する一方、走行性能が必要とされない状況においては、第2トレッドの低転がり特性の影響を大きくして、省燃費性能を確保することで、これら両トレッドの特性をそれぞれ効率的に発揮させることができ、互いに背反する2つの性能(走行性能と省燃費性能)の両立をより効率良く行うことができるという効果がある。
或いは、例えば、走行中の静粛性が必要とされる状況においては、第1トレッドによる高グリップ特性(即ち、ゴム硬度の低いトレッド)の影響を大きくして、静粛性を確保する一方、静粛性が必要とされない状況においては、第2トレッドの低転がり特性の影響を大きくして、省燃費性能を確保することで、これら両トレッドの特性をそれぞれ効率的に発揮させることができ、互いに背反する2つの性能(静粛性能と省燃費性能)の両立をより効率良く行うことができるという効果がある。
また、本発明のように、車両の周辺における周辺情報を取得し、その周辺情報(車両周
辺の状況)に応じた制御を行う構成であれば、車両周辺の状況に応じたキャンバー角(即ち、走行性能又は静粛性を重視するのか省燃費性能を重視するのかの車輪特性)を車輪に予め与えておくことができるので、車輪の特性を、制御遅延を生じさせることなく適切に制御することができるという効果がある。
車両用制御装置141−1において、前記周辺情報取得手段は、前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記地図データ記憶手段に記憶された地図データ及び前記現在位置検出手段により検出された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両の走行経路の状況を前記周辺情報として取得する状況取得手段と、を備え、前記特性判断手段は、前記状況取得手段により前記周辺情報として取得された前記走行経路の状況に基づいて、前記車輪に必要とされる特性を判断することを特徴とする車両制御装置141−2。
車両用制御装置141−2によれば、車両用制御装置141−1の奏する効果に加え、地図データ記憶手段に記憶された地図データと現在位置検出手段により検出された車両の現在位置とに基づいて、車両の走行経路の状況が周辺情報として状況取得手段により取得されると共に、その状況取得手段により周辺情報として取得された走行経路の状況に基づいて、車輪に必要とされる特性が特性判断手段により判断される構成であるので、車両周辺の状況を容易かつ正確に取得することができるという効果がある。
その結果、車両周辺の状況に応じた制御(車輪のキャンバー角の調整)をより適正に行うことができ、互いに背反する2つの性能(走行性能と省燃費性能または静粛性能と省燃費性能)の両立をより効率良く行うことができる。
また、本発明のように、車両の周辺における周辺情報を、地図データ記憶手段に記憶された地図データと現在位置検出手段により検出された車両の現在位置とに基づいて、取得する構成であれば、かかる車両周辺の情報をより早期に取得することができるという効果がある。その結果、車両周辺の状況に応じたキャンバー角(即ち、走行性能を重視するのか省燃費性能を重視するのか、或いは、静粛性能を重視するのか省燃費性能を重視するのか、という車輪特性)を十分な余裕を持って車輪に与えておくことができるので、車輪の特性の制御における制御遅延を確実に抑制することができる。
車両用制御装置141−1又は141−2において、前記周辺情報取得手段は、前記車両と他車との相対位置関係を前記周辺情報として取得する相対位置取得手段を備え、前記特性判断手段は、前記相対位置取得手段により前記周辺情報として取得された前記他車との相対位置関係に基づいて、前記車輪に必要とされる特性を判断することを特徴とする車両制御装置3。
車両用制御装置141−3によれば、車両用制御装置141−1又は141−2の奏する効果に加え、車両と他車との相対位置関係が周辺情報として相対位置取得手段により取得されると共に、その相対位置取得手段により周辺情報として取得された他車との相対位置関係に基づいて、車輪に必要とされる特性が特性判断手段により判断される構成であるので、他者との相対位置関係に応じた制御(車輪のキャンバー角の調整)を行うことができる。
これにより、他者との相対位置関係において走行性能が必要とされる状況(例えば、車間距離が短くなることに伴って運転者が制動動作を行うと予想される場合や近接した他車との衝突を回避するべく運転者が旋回動作を行うと予想される場合など)においては、第1トレッドによる高グリップ特性の影響を大きくして、走行性能を確保する一方、走行性能が必要とされない状況(例えば、自車から所定範囲内に他車が存在しない場合など)においては、第2トレッドの低転がり特性の影響を大きくして、省燃費性能を確保することで、これら両トレッドの特性をそれぞれ効率的に発揮させることができ、互いに背反する2つの性能(走行性能と省燃費性能)の両立をより効率良く行うことができるという効果がある。
また、本発明のように、他車との相対位置関係を周辺情報として取得する構成であれば、かかる他車との相対位置関係に応じた制御、即ち、制動や旋回動作等を予測して走行性能を重視する必要があるか否かに基づいた制御を行うことができるので、走行性能と省燃費性能との2つの性能の両立を効率的に図りつつ、自車が他車に衝突することの抑制を図ることができるという効果がある。
車両用制御装置141−1又は141−2において、前記作動制御手段は、時刻を取得する時刻取得手段を備え、前記特性判断手段は、前記時刻取得手段により取得された時刻と、前記状況取得手段により取得された周辺情報とに基づいて、前記車輪に必要とされる特性を判断することを特徴とする車両制御装置141−4。
車両用制御装置141−4によれば、車両用制御装置141−1又は141−2の奏する効果に加え、時刻取得手段により時刻を取得すると共に、その時刻取得手段により取得された時刻と、状況取得手段により取得された周辺情報とに基づいて、車輪に必要とされる特性を判断する構成であるので、時刻に応じた制御(車輪のキャンバー角の調整)を行うことができる。
これにより、現在の時刻では静粛性が必要とされる状況(例えば、深夜に住宅街を走行する場合など)であれば、第1トレッドによる高グリップ特性(即ち、ゴム硬度の低いトレッド)の影響を大きくして、静粛性能を確保する一方、現在の時刻であれば静粛性能が必要とされない状況(例えば、住宅街を昼間に走行する場合など)であれば、第2トレッドの低転がり特性(即ち、ゴム硬度の高いトレッド)の影響を大きくして、省燃費性能を確保することで、これら両トレッドの特性をそれぞれ効率的に発揮させることができ、互いに背反する2つの性能(静粛性能と省燃費性能)の両立をより効率良く行うことができるという効果がある。
また、本発明によれば、時刻取得手段により取得した時刻だけに基づいて、車輪に必要とされる特性を判断するのではなく、時刻に加え、状況取得手段により取得された周辺情報も判断の材料とするので、静粛性能と省燃費性能との両立をより効率的に達成することができる。
即ち、本発明のように、車輪の要求特性を時刻のみに基づいて一律に判断するのではなく、時刻と周辺状況とに基づいて判断する構成であれば、例えば、あるエリアに関しては、時刻に関わらず静粛性能のみを重視(又は、省燃費性能のみを重視)する一方で、あるエリアに関しては、時間帯に応じて重視する性能(静粛性能と省燃費性能)を変更するというように、車輪に要求される特性を無駄なく高精度に変更することができるので、静粛性能と省燃費性能との両立をより効率的に達成することができる。
ここで、図34に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS5及びS6の処理が、対地速度判断手段としてはS17の処理が、低速時作動制御手段としてはS6の処理が、操作状態判断手段としてはS1,S2,S3,S18,S19,S4の処理が、操作時作動制御手段としてはS6の処理が、それぞれ該当する。
また、図38に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS25、S26及びS27の処理が、対地速度判断手段としてはS17の処理が、低速時作動制御手段としてはS6の処理が、操作状態判断手段としてはS1,S2,S3,S18,S19,S4の処理が、操作時作動制御手段としてはS6又はS26の処理が、それぞれ該当する。
また、図41に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS25、S27及びS36の処理が、対地速度判断手段としてはS17の処理が、低速時作動制御手段としてはS27の処理が、操作状態判断手段としてはS1,S2,S3,S18,S19,S4の処理が、操作時作動制御手段としてはS27又はS36の処理が、それぞれ該当する。
また、図42に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS44及びS45の処理が該当する。
図46に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS59,S61及びS62の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS56の処理が、キャンバー角算出手段としてはS57,S58及びS60の処理が、キャンバー角変更手段としてはS59,S61及びS62の処理が、加速検出手段としてはS52の処理が、制動検出手段としてはS52の処理が、それぞれ該当する。
ここで、図48に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS59,S604,S605及びS661の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS56の処理が、キャンバー角算出手段としてはS57,S601〜S603及びS658の処理が、キャンバー角変更手段としてはS59,S604,S605及びS661の処理が、加速検出手段S52の処理が、制動検出手段としてはS52の処理が、それぞれ該当する。
また、図50に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS59,S161及びS62の処理が、必要摩擦係数算出手段としてはS56の処理が、キャンバー角算出手段としてはS57,S58及びS60の処理が、キャンバー角変更手段としてはS59,S161及びS62の処理が、加速検出手段S52の処理が、制動検出手段としてはS52の処理が、それぞれ該当する。
また、図54に示すフローチャート(キャンバー制御処理)において、作動制御手段としてはS804及びS809の処理が、周辺情報取得手段としてはS802の処理が、特性判断手段としてはS801,S803及びS806〜S808の処理が、キャンバー角変更手段としてはS804及びS809の処理が、時刻取得手段としてはS805の処理が、それぞれ該当する。
<手段>
この目的を達成するために、技術的思想1のタイヤは、少なくとも走行中にタイヤのキャンバ角が変化する車両に装着されるものであって、第1トレッド及びその第1トレッドに対し前記タイヤの幅方向において連設される第2トレッドを有するトレッド部を備え、前記トレッド部は、前記第1トレッド及び前記第2トレッドが同じ材質のゴム状弾性体から構成され、前記第1トレッドのタイヤ径方向厚さは、前記第2トレッドのタイヤ径方向厚さよりも薄く構成されている。
技術的思想2のタイヤは、技術的思想1記載のタイヤにおいて、前記第1トレッドのトレッド幅内にタイヤ中心線が位置する。
技術的思想3のタイヤは、技術的思想1又は2に記載のタイヤにおいて、前記第1トレッドは、60℃における損失正接が0.15よりも小さく設定されている。
技術的思想4のタイヤは、技術的思想1から3のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記トレッド部の内周側に配置されるベルト部を備えると共に、そのベルト部は、前記第1トレッドの内周側に配置される第1ベルトと、その第1ベルトに連設され前記第2トレッドの内周側に配置される第2ベルトとを備え、前記第1ベルトの剛性が前記第2ベルトの剛性よりも高く構成されている。
技術的思想5のタイヤは、技術的思想1から4のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記第1トレッドがリブタイプのトレッドパタンで構成され、前記第2トレッドがラグタイプ又はブロックタイプのトレッドパタンで構成されている。
技術的思想6のタイヤは、技術的思想1から5のいずれかに記載のタイヤにおいて、車輪を支持する車輪支持装置と、その車輪支持装置に駆動力を付与してタイヤのキャンバ角を変更するキャンバ角変更装置とを備えた車両に装着され、前記キャンバ角変更装置によって少なくとも走行中にキャンバ角を変更して使用される。
<効果>
技術的思想1記載のタイヤによれば、トレッド部は、第1トレッドと、その第1トレッドに対しタイヤの幅方向において連設される第2トレッドとを備え、少なくとも車両の走行中にタイヤのキャンバ角が変化することで、走行路面に対するトレッド部の接地状態が変化し、接地面中心が第1トレッド又は第2トレッドに変更される。
ここで、本技術的思想によれば、トレッド部は、第1トレッド及び第2トレッドが同じ材質のゴム状弾性体から構成されると共に、第1トレッドのタイヤ径方向厚さが第2トレッドのタイヤ径方向厚さよりも薄く構成されているので、第1トレッドを第2トレッドよりも変形し難くして、トレッド部が吸収するエネルギーの内、第1トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合を第2トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合よりも小さくすることができる。よって、第1トレッドにおけるエネルギー損失を第2トレッドにおけるエネルギー損失よりも小さくして、第1トレッドを第2トレッドよりも転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。
一方、トレッド部が吸収するエネルギーの内、第2トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合を第1トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合よりも大きくすることで、第2トレッドを第1トレッドよりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
これにより、少なくとも車両の走行中にタイヤのキャンバ角が変化し、接地面中心が第1トレッドとなることで、第1トレッドの特性、即ち、転がり抵抗の小さい特性をタイヤに付与して、省燃費化を図ることができる。
また、少なくとも車両の走行中にタイヤのキャンバ角が変化し、接地面中心が第2トレッドとなることで、第2トレッドの特性、即ち、グリップ力の高い特性をタイヤに付与して、グリップ性能の向上を図ることができる。
このように、本技術的思想によれば、第1トレッドと第2トレッドとを使い分けることで、各トレッドの特性をタイヤに付与して、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を図ることができるという効果がある。
また、本技術的思想によれば、第1トレッドのタイヤ径方向厚さを第2トレッドのタイヤ径方向厚さよりも薄くすることで第1トレッドを第2トレッドよりも転がり抵抗の小さい特性に構成すると共に第2トレッドを第1トレッドよりもグリップ力の高い特性に構成するので、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を図りつつも、タイヤの軽量化を図ることができるという効果がある。更に、製造段階での省資源化を図り、タイヤのコスト低減を図ることができるという効果がある。
技術的思想2記載のタイヤによれば、技術的思想1記載のタイヤの奏する効果に加え、第1トレッドのトレッド幅内にタイヤ中心線が位置するように構成されているので、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態での接地面中心を第1トレッドとすることができる。これにより、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態において、省燃費化を図ることができるという効果がある。
また、キャンバ角が比較的小さな(0°又はその近傍の)状態での接地面中心を第1トレッドとすることができるので、キャンバスラストの影響を小さくして、効率的に省燃費化を図ることができるという効果がある。
技術的思想3記載のタイヤによれば、技術的思想1又は2に記載のタイヤの奏する効果に加え、第1トレッドは、60℃における損失正接が0.15よりも小さく設定されているので、転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができるという効果がある。
なお、このような損失正接の値では、グリップ力を確保することが困難であるため、従来のタイヤには適用することが不可能であったところ、本発明のようにキャンバ角が変化する車両に装着されるタイヤに適用することで初めて実現可能となったものであり、これにより、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を図ることができる。
技術的思想4記載のタイヤによれば、技術的思想1から3のいずれかに記載のタイヤの奏する効果に加え、トレッド部の内周側に配置されるベルト部を備えると共に、そのベルト部は、第1トレッドの内周側に配置される第1ベルトと、その第1ベルトに連設され第2トレッドの内周側に配置される第2ベルトとを備え、第1ベルトの剛性が第2ベルトの剛性よりも高く構成されているので、第1トレッドを第2トレッドよりも変形し難くして、トレッド部が吸収するエネルギーの内、第1トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合を第2トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合よりも小さくすることができる。よって、第1トレッドにおけるエネルギー損失を第2トレッドにおけるエネルギー損失よりも小さくして、第1トレッドを第2トレッドよりも転がり抵抗の小さい特性に構成することができる。
一方、トレッド部が吸収するエネルギーの内、第2トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合を第1トレッドが吸収するエネルギーの吸収度合よりも大きくすることで、第2トレッドを第1トレッドよりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
これにより、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を効率的に図ることができるという効果がある。
技術的思想5記載のタイヤによれば、技術的思想1から4のいずれかに記載のタイヤの奏する効果に加え、第1トレッドがリブタイプのトレッドパタンで構成され、第2トレッドがラグタイプ又はブロックタイプのトレッドパタンで構成されているので、第1トレッドを第2トレッドよりも転がり抵抗の小さい特性に構成すると共に、第2トレッドを第1トレッドよりもグリップ力の高い特性に構成することができる。
これにより、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を効率的に図ることができるという効果がある。
技術的思想6記載のタイヤによれば、技術的思想1から5のいずれかに記載のタイヤの奏する効果に加え、車輪を支持する車輪支持装置と、その車輪支持装置に駆動力を付与してタイヤのキャンバ角を変更するキャンバ角変更装置とを備えた車両に装着され、キャンバ角変更装置によって少なくとも走行中にキャンバ角を変更して使用されるので、キャンバ角変更装置によりタイヤのキャンバ角を変更して第1トレッドと第2トレッドとを使い分けることで、各トレッドの特性をタイヤに付与して、省燃費化とグリップ性能の向上との両立を図ることができるという効果がある。