明細書 クリーンルーム用容器 技術分野
本発明は、 クリーンルーム用容器に関する。 より詳しくは、 芳香族ビエル単量 体と共重合可能な他の単量体との共重合体からなるマ卜リックス樹脂中に、 ジェ ン単量体を主成分として重合してなるジェン系ゴム粒子が分散している熱可塑性 樹脂からなり、 該熱可塑性樹脂の灰分が 0 . 2重量%以下であるクリーンルーム 用容器に関する。 背景技術 .
半導体製造プロセスにおけるシリコンウェハ、 液晶パネル製造プロセスにおけ るガラス基板、 ハードディスク製造プロセスにおける金属ディスクなどは汚染を 防止するためクリーンルーム中で取り扱われる。 これらの製造プロセスにおいて は、これらの基板を効率良くハンドリングするための容器が各種使用されている。 例えば、 複数枚の基板を同時に収容して、 クリーンルーム内で特定のプロセスか ら次のプロセスに輸送する場合の容器として使用される場合もあるし、 容器に収 容したまま各種の処理を施す場合もある。
容器の材質として使用される樹脂は、 その目的に応じて様々である。 例えば、 ポリプロピレンは安価であるが、 透明性、 成形時の寸法精度、 剛性などが要求さ れる用途には使用できない。ポリカーボネートは透明で耐衝撃性に優れているが、 透明性を保ったまま永久帯電防止処理をすることは困難であるし、 樹脂コストが 高い。 また、 アクリロニトリル一スチレン共重合体 (A S樹脂) ゃメタクリル酸 メチルースチレン共重合体 (M S樹脂)は、透明であるが、耐衝撃性が劣る上に、 摺動摩擦による磨耗が生じやすく、 パーテイクル汚染が嫌われるクリ一ンルーム
内では使用しにくい。 また、 ポリブチレンテレフタレート (P B T) やポリエー テルエ一テルケトン (P E E K) は、 耐熱性が良好であるが、 不透明であって樹 脂コストも高い。
アクリロニトリル一ブタジエン一スチレン共重合体 (以下、 A B Sということ がある) や、 それに類する樹脂は、 成形時の寸法精度、 成形品表面の平滑性、 剛 性、 耐衝撃性などのバランスに優れ、 しかも比較的樹脂コストの低い汎用樹脂で ある。 以下にも示すように、 永久帯電防止性と透明性を付与することも可能であ る。
例えば、 特開平 9一 9 2 7 1 4号公報には、 特定の形状の半導体ウェハ収納用 帯電防止容器が記載されている。 当該公報の実施例には、 A B S系永久帯電防止 樹脂を用いて 2 3 0 °Cないし 2 4 0 °Cで射出成形した容器の例が記載されている (実施例 1、 3及び 4 )。実施例に記載された容器は良好な帯電防止性を有し、 し かも銘柄によっては透明性にも優れている (実施例 3 )。
特開昭 6 2— 1 1 9 2 5 6号公報には、 ゴム質重合体の存在下に (メタ) ァク リル酸エステル単量体及びこれと共重合可能な他のビニル系単量体からなる共重 合体混合物をグラフト重合させた重合体にポリエーテルエステルアミドを配合し た熱可塑性樹脂組成物が記載されている。 この榭脂組成物は、 永久帯電防止性、 耐衝撃性及び透明性に優れているとされており、 静電気による障害を防止したい 用途、 例えば I Cキャリーケースに使用できることが記載されている。
また、 特開平 9一 5 9 4 6 2号公報には、 残留スチレン系単量体及ぴ残留 4 _ ビニルシク口へキセンがいずれも一定量以下であり、 ゴム粒子の数平均粒子径と その分布が一定範囲にある A B S樹脂組成物が記載されている。 この樹脂組成物 を用いれば衝撃強度及び引張強度に優れ、 良好な光沢を備えた無臭成形品を作れ ることが記載されている。 当該公報には、 A B S樹脂は家電製品のハウジングや 車両成形品に使用されていると記載されている。
特開平 9一 9 2 7 1 4号公報や特開昭 6 2 - 1 1 9 2 5 6号公報に記載されて
いるように、 A B S樹脂からなる半導体ウェハ収納用帯電防止容器は既に知られ ている。 しかしながら、 クリーンルーム用容器に使用される樹脂として、 A B S やそれに類する樹脂は、 現実には、 ほとんど使用されていないのが実態である。 その大きな理由の一つが以下に説明する汚染源の問題である。
クリーンルーム内で使用される容器においては、 収納される物品が汚染を極度 に嫌う場合が多いことから、 容器そのものが汚染源にならないことが非常に重要 である。 汚染のうちでも金属ィオンによる汚染は特に注意が必要なものであり、 例えば、 半導体製造プロセスにおいては熱拡散操作において、 当該金属イオンが 不純物として回路内に拡散して不良品率を向上させるおそれがある。また同時に、 金属ィォン以外の有機物による汚染も防止する必要がある。
しかしながら、 A B S樹脂を製造する際の代表的な方法は、 乳化重合によって 得られるジェン系ゴム粒子をェマルジョン中でグラウト変性するプロセスを含む ものである。 ェマルジョン中での重合反応を円滑に進行させるためには多量の乳 化剤を必要とするが、多くの場合それは金属塩からなる界面活性剤である。また、 得られたグラフト化ゴム粒子を凝固させてェマルジョン液から分離する必要があ るが、 このとき塩析させる場合も多く、 その場合には凝固物中にさらに多量の塩 を含有することになる。 結果として、 現在市販されている A B S樹脂の多くは相 当量の金属塩成分を残存するものになっているのである。 その結果、 汚染源とな る可能性のあるものが敬遠されるクリーンルーム用容器の素材として、 A B Sや それに類する樹脂はほとんど採用されていないのが現状である。
また、 特開平 9一 5 9 4 6 2号公報には、 残留有機物の少ない A B S樹脂が記 載されているが、 家電製品のハウジングや車両成形品での悪臭を問題にしている だけであり、 クリ一ンルーム内の汚染源として捉えられているわけではない。 本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、 A B Sやそれに類す る熱可塑性樹脂からなり、 該熱可塑性樹脂の灰分が少なく、 金属イオンによる汚 染の可能性が低いクリーンルーム用容器を提供することを目的とするものである。
発明の開示
上記課題は、 芳香族ビエル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体から なるマトリックス樹脂中に、 ジェン単量体を重合してなるジェン系ゴム粒子が分 散している熱可塑性樹脂からなり、 該熱可塑性樹脂の灰分が 0 . 2重量%以下で あるクリーンルーム用容器を提供することによつて達成される。
このとき、 前記共重合可能な他の単量体が、 シアン化ビエル単量体及び不飽和 カルボン酸アルキルエステル単量体から選択される 1種以上であることが好適で ある。 また、 前記熱可塑性樹脂がジェン系ゴム 5〜 5 0重量%、 芳香族ビニル単 量体 1 0〜 9 0重量%及び前記共重合可能な他の単量体 1 0〜 9 0重量%を重合 してなるものであることも好適である。
前記熱可塑性樹脂が、 ジェン単量体を重合してなるジェン系ゴム粒子が分散し ているェマルジョン中で、 芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体とを共 重合させてなるグラフト共重合樹脂粒子と、 別途芳香族ビニル単量体と共重合可 能な他の単量体とを共重合してなる樹脂とを溶融混合して得られたものであるこ とが好適な実施態様である。 そして、 このとき、 グラフト共重合樹脂粒子を、 少 なくとも酸を使用して凝固させ、 洗浄してから溶融混合に供してなることがより 好適である。
また、 前記熱可塑性樹脂が、 ジェン単量体を重合してなる'ジェン系ゴムを芳香 族ビニル単量体及び共重合可能な他の単量体に溶解させてから、 前記芳香族ピニ ル単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を重合させて得られたものであるこ とも好適な実施態様である。
前記ジェン単量体が 1, 3—ブタジエンであり、 かつ前記熱可塑性樹脂の 4一 ビエルシクロへキセン含有量が 1 0 0 p p m以下であることが好適である。 前記 熱可塑性榭脂が、 ポリエーテルエステルアミドからなる帯電防止剤あるいは導電 性力一ボンからなる帯電防止剤を含有することも好適である。 成形品から削り出
した試料を 1 5 0 で 1 0分間保持した後、 1 0分以内に発生する有機ガス量が スチレン換算値で 6 0 0 p p m以下であることも好適である。 前記熱可塑性樹脂 が、 厚さ 3 mmの射出成形品にしたときのヘイズが 2 0 %以下の樹脂であること も好適である。 また、 射出成形時のシリンダー設定温度を 2 2 0 °C以下にして射 出成形されてなるものであることも好適である。
本発明の好適な実施態様は、 半導体基板、 ディスプレイ基板及び記録媒体基板 から選択される板状体が収納される上記クリーンルーム用容器である。 以下に、 本発明を詳細に説明する。
本発明のクリーンルーム用容器は、 芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単 量体との共重合体からなるマトリックス樹脂中に、 ジェン単量体を重合してなる ジェン系ゴム粒子が分散している熱可塑性樹脂からなるものである。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、 芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単 量体との共重合体がマトリックス榭脂を形成しているものである。 芳香族ビエル 単量体のみからなる重合体でなぐ他の単量体との共重合体とすることによって、 必要に応じて耐衝撃性、 透明性、 耐熱性、 耐薬品性などに優れた樹脂とすること が容易である。 当該共重合体は、 通常ランダム共重合体である。
ここで使用される芳香族ビニル単量体としては、 スチレン、 α—メチルスチレ ン、 パラメチルスチレン等が挙げられ、 これらを 1種又は 2種以上用いることが できる。 特に好適にはスチレンが用いられる。 共重合可能な他の単量体は、 芳香 族ビエル単量体と共重合することが可能であれば、特に限定されるものではなく、 アクリロニトリル、 メタクリロニ卜リルなどの (メタ) アクリロニトリルに代表 されるシアン化ビニル単量体;メチルァクリレート、 ェチルァクリレート、 メチ ルメタクリレート、 ェチルメタクリレートなどの (メタ) アクリル酸エステル単 量体に代表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;アクリル酸、 メタ クリル酸、 マレイン酸、 マレイン酸無水物、 シトラコン酸無水物などの不飽和力
ルボン酸又は不飽和ジカルボン酸無水物単量体;マレイミド、メチルマレイミド、 ェチルマレイミド、 N—フエニルマレイミド、 0 _クロル一 N—フエニルマレイ ミドなどのマレイミド系単量体などを例示す'ることができる。 これらの共重合可 能な他の単量体も、 1種又は 2種以上を用いることができる。
これらのうちでも、 前記共重合可能な他の単量体が、 シアン化ビニル単量体及 び不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体から選択される 1種以上であること が好適である。 シアン化ビニル単量体を共重合することによって、 耐熱性、 耐薬 品性、 剛性及び寸法安定性が向上する。 また、 不飽和カルボン酸アルキルエステ ル単量体を共重合することによって、 透明性、 硬度、 及び剛性が向上する。 これ らの両者を共重合することも好ましい。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、 前記マトリックス樹脂中に、 ジェン単量体 を重合してなるジェン系ゴム粒子が分散しているものである。 このとき、 ゴム粒 子中のジェン単量体成分の割合は、 5 0重量%以上であることが好ましく、 8 0 重量%以上であることがより好ましい。 使用されるジェン単量体としては、 1, 3—ブタジエン、 イソプレンなどが例示され、 その 1種又は 2種以上を用いるこ とができる。 なかでも性能的にも優れて低コストである 1 , 3—ブ夕ジェンが好 適に使用される。 具体的な重合体としては、 ポリブタジエンゴム、 スチレンーブ 夕ジェンゴム (S B R)、 アクリロニトリル—ブタジエンゴム (N B R)、 ポリイ ソプレンゴムなどが例示され、 特にポリブタジエンゴムが低温耐衝撃性などに優 れた樹脂を提供できて、 しかも低コストであり好適である。 上記ゴム粒子の平均 粒子径についても特に制限はないが、 好ましくは 0 . 0 5〜1 0 /zm、 好ましく は 0 . 0 8〜5 / mである。
本発明で使用する熱可塑性樹脂の組成割合については特に制限はないが、 ジェ -ン系ゴム 5〜5 0重量%、 芳香族ビエル単量体 1 0〜9 0重量%及び前記共重合 可能な他の単量体 1 0〜9 0重量%を重合してなることが好適である。 この組成 割合は、 最終的に成形品にされる熱可塑性樹脂中の各成分の割合を示すものであ
り、 例えば、 予めジェン系ゴムを、 所定量の芳香族ビニル単量体及び共重合可能 な他の単量体でグラフト変性した後で、 さらに別途重合した芳香族ビニル単量体 及び共重合可能な他の単量体からなる共重合体と溶融 合するような場合には、 混合された全量での組成割合を示すものである。
ジェン系ゴムの含有量は 5〜5 0重量%であることが好ましい。 5重量%未満 の場合には、 耐衝撃性が十分でない場合があり、 より好適には 1 0重量%以上で ある。逆に 5 0重量%を超えると、剛性あるいは成形性が低下するおそれがあり、 より好適には 3 0重量%以下、 さらに好適には 2 0重量%以下である。 また、 芳 香族ビエル単量体由来成分の含有量は 1 0〜9 0重量%であることが好ましい。 1 0重量%未満の場合には剛性あるいは成形性が低下するおそれがあり、 より好 適には 2 0重量%以上である。 9 0重量%を超える場合には耐衝撃性が低下する おそれがあり、 より好適には 8 0重量%以下である。 特に透明性が要求される場 合には、 5 0重量%以下であることが好ましく、 3 0重量%以下であることがよ り好ましい。
共重合可能な他の単量体に由来する成分の含有量は 1 0〜9 0重量%であるこ とが好ましい。 より好適には 2 0重量%以上であり、 また、 8 0重量%以下であ る。 特に透明性が要求される場合には、 共重合可能な他の単量体として、 不飽和 カルボン酸アルキルエステル単量体由来成分を含有することが好ましく、 その含 有量が 4 0〜8 0重量%であることがより好ましい。 こうすることによって、 マ トリックス樹脂とゴム粒子との屈折率差を小さくできて、 樹脂全体を透明にする ことができる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂の製造方法は特に限定されず、 乳化重合、 懸濁 重合、 塊状重合、 溶液重合、 又はこれらを組み合わせた重合方法により製造する ことができる。 なかでも、 ジェン系ゴムに対して、 芳香族ビニル単量体と共重合 可能な他の単量体とをグラフト共重合させる工程を含むものが、 ゴム粒子の分散 性や、 ゴム粒子とマトリックス樹脂と界面の強度などの点から好ましい。 ジェン
系ゴムをグラフト変性するに際しては、 ゴムを含有するェマルジヨン (ラテック ス) 中でグラフト変性しても良いし、 ゴムが溶解した溶液中でグラフト変性して も良い。
好適な製造方法の一つは、 ジェン単量体を重合してなるジェン系ゴム粒子が分 散しているェマルジヨン中で、 芳香族ビニル単量体と共重合可能な他の単量体と を共重合させてなるグラフト共重合樹脂粒子と、 別途芳香族ビュル単量体と共重 合可能な他の単量体とを共重合してなる樹脂とを溶融混合する方法である。 エマ ルジョン中でグラフト共重合する場合には、 ゴムの組成、 粒径、 ゲル含有率など のコントロールが容易であり、 透明性、 耐衝撃性及び成形性に優れた高性能の樹 脂が得られやすい。 また、 ェマルジヨン中で合成されたグラフト共重合樹脂粒子 を、 別途塊状 (あるいは溶液) 重合した共重合体で希釈することによって、 エマ ルジョン由来の金属塩成分の量を減らすことができる。
上記製造方法においては、 乳化重合工程において乳化剤、 重合開始剤、 塩析剤 などの各種の添加剤が使用されるが、 多くの場合これらは金属塩であり、 その最 終製品への混入が問題になりやすい。 乳化重合においては、 乳化剤を相当量使用 する必要があるが、 これには高級脂肪酸のアル力リ金属塩ゃスルホン酸のアル力 リ金属塩などが使用されることが多い。また、乳化重合での重合開始剤としては、 過酸化物などが使用できるが、 有機八ィドロバーオキシドを用いたレドックス系 開始剤が使用されることもあり、この場合には鉄塩などが使用されることが多い。 さらに、 乳化重合後に得られたグラフト共重合樹脂粒子を凝固させる際に、 高濃 度のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を添加して塩祈させる場合も多い。 したがって、 最終製品中での金属イオン含有量すなわち灰分を低下させるため には、 上記乳化重合後の凝固工程において、 酸を使用して凝固させることが好ま しい。 使用できる酸としては、 塩酸や硫酸が例示される。 このとき、 補助的に塩 を併用しても構わないが、 塩を使用せず、 酸のみで凝固させることが好ましい。 こうすることによって、 凝固工程における金属塩の混入を避けることができる。
また、 凝固後の洗浄条件を強化するために、 洗浄水の量を増加させたり、 洗浄回 数を増加させたりすることも好ましい。 特に洗浄水を、 洗浄に供するグラフト共 重合樹脂粒子の見掛け体積に対して同体積以上、 好ましくは 2倍以上、 より好ま しくは 3倍以上の体積使用することが好ましく、 また洗浄—脱水の工程を 2回以 上、 さらには 3回以上繰り返して洗浄することが好ましい。 通常の A B S樹脂の 製造プロセスにおいては、 洗浄一脱水工程はその経済性の観点から複数回繰り返 すことはないのが一般的である。
このように、 乳化重合後のグラフト共重合樹脂粒子を、 少なくとも酸を使用し て凝固させ、 十分に洗浄してから、 別途塊状 (あるいは溶液) 重合した共重合体 と溶融混合することによって、 効率的に灰分を低下させることができる。 溶融混 合する方法は特に限定されず、 押出機、 バンパリ一ミキサー、 ロール、 ニーダ一 等の公知の混練装置を用いて混合することができる。 このとき、 同時に帯電防止 剤などの他の成分と混合しても良い。
好適な製造方法の他の一つは、 ジェン単量体を重合してなるジェン系ゴムを芳 香族ビニル単量体及び共重合可能な他の単量体に溶解させてから、 前記芳香族ビ 二ル単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を重合させる方法である。 このと き、他の溶媒を含有しない状態で重合させるのが塊状重合方法であり、他の溶媒、 例えばェチルベンゼンの存在する状態で重合させるのが溶液重合方法であり、 い ずれを採用しても良い。
この方法によれば、 乳化重合工程を経ることなく本発明で使用する熱可塑性樹 脂を製造することができ、 乳化剤ゃ塩析剤に由来する金属塩の残存を少なくでき る。この製造方法は、ゴム粒子の粒径や組成のコントロールが容易でないために、 乳化重合工程を有する製造方法に比べて透明性ゃ耐衝撃性などが不十分になる場 合が多く、 現在必ずしも広く実施されている製造方法ではない。 しかしながら、 残存金属塩の量を少なくできることから本発明の用途に対しては好ましい製造方 法である。
本発明で使用する熱可塑性樹脂の灰分は 0 . 2重量%以下である。該灰分が 0 . 2重量%を超えると、 クリーンルーム内で金属イオンの汚染源となりやすくて好 ましくない。 例えば、 半導体製造工程において、 ウェハキャリアなどのようにゥ ェハが直接触れる容器であればウェハを直接金属汚染する場合があるし、 処理水 などに金属イオンが溶出することもある。 また、 キャリアを内包するケースのよ うにウェハと直接接触することがない容器の場合であっても、 磨耗した粉塵がゥ ェハゃキャリアに付着して同様に悪影響を及ぼすおそれがある。 特に、 半導体製 造プロセスにおいては、 加熱による物質拡散操作等において、 当該金属イオンが 不純物として回路内に拡散して不良品率を上昇させるおそれがある。 当該熱可塑 性樹脂の灰分は好ましくは 0 . 1 8重量%以下であり、 より好ましくは 0 . 1 5 重量%以下である。
また、 本発明で使用する熱可塑性樹脂において、 そこで使用されるジェン単量 体が 1, 3 _ブタジエンであることが好ましいことは前述したとおりである。 こ のとき、 当該熱可塑性樹脂の 4—ビニルシクロへキセン含有量が 1 0 0 p p m以 下であることが好ましい。 4—ビエルシクロへキセンは、 主にジェン単量体を重 合する際に副生されるもので、 1, 3 — 'ブタジエンの環状二量体である。 異臭を 有することから、 発生が望ましくないものであり、 特にクリーンルーム内のよう な閉鎖空間で作業する場合には、 その異臭が特に問題になりやすい。 また、 クリ ーンルームのような閉鎖空間では、 揮発性有機物が滞留しやすいので、 汚染源と しても好ましくないものである。 4ービエルシクロへキセン含有量は、 より好適 には 8 0 ρ p m以下であり、 さらに好適には 6 0 p p m以下である。
乳化重合工程を有する場合には、 1 , 3—ブタジエンの含有量を低下させるた めに、 乳化重合後にェマルジヨンを加熱して未反応のジェン単量体とともに、 副 生した 4一ビニルシク口へキセンを揮発除去させることが好ましい。 加熱方法と しては、 水蒸気蒸留が好適に採用され、 6 0 °C以上、 より好適には 7 0 以上の 温度で、 1 0分以上、 より好適には 3 0分以上の時間、 水蒸気蒸留操作を行うの
が好ましい。 また、 乳化重合後に凝固させた後の洗浄条件を強化することも好ま しい。 このときの好ましい洗浄条件については、 前述したとおりである。
また、 塊状重合や溶液重合においては脱揮工程を強化することにより 4一ビニ ルシクロへキセン含有量を低減することが好ましい。 具体的には、 重合が終了し た後で、 1 8 0 °C以上、 好適には 2 0 0 °C以上の温度で、 l O O T o r r以下、 好適には 5 O T o r r以下に減圧して、 未反応の単量体などとともに 4一ビニル シクロへキセンを除去することが好ましい。 重合時に溶媒を使用している場合に は、 溶媒とともに 4ービニルシクロへキセンを除去することが、 効率良く 4ーピ ニルシクロへキセンを除去できて好ましい。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、 各種の添加剤を含んでいても良い。 本明細 書中では、 添加剤を含んだ組成物も含めて、 熱可塑性樹脂という。 各種の添加剤 のなかでも、 帯電防止剤を含んでいることが、 半導体ウェハの静電破壊を防止で きる点や、 微粒子の付着を防止できる点から好ましい。
このような帯電防止剤としては、 例えば、 アルキルアミン塩等の陽イオン界面 活性剤、 高級アルコールの硫酸塩、 高級アルコールの酸化エチレン付加体の硫酸 エステル塩、 アルキルフエノールの酸化エチレン付加体の硫酸エステル塩、 アル カンスルフォン酸塩、 アルキルベンゼンスルフォン酸塩、 アルキルスルホコ八ク 酸エステル塩、 ナフタリンスルフォン酸ホルマリン縮合体の塩、 高級アルコール の酸化ェチレン付加体の燐酸エステル塩、 アルキルフエノ一ルの酸化ェチレン付 加体の憐酸エステル塩等のァニオン界面活性剤、 高級脂肪酸のソルビタンエステ ル、 高級脂肪酸のモノグリセリンエステル、 高級脂肪酸のモノグリセリンエステ ルの酸化エチレン付加体、 高級アルコールの酸化エチレン付加体、 高級脂肪酸の 酸化エチレン付加体、 アルキルフエノール酸化工チレン付加体、 アミド酸化ェチ レン付加体、 アルキルァミンの酸化エチレン付加体等の非イオン界面活性剤、 ポ リアルキレングリコール、 ポリアルキレンダリコール系共重合体、 ポリエーテル エステルアミド、 導電性カーボン等が挙げられ、 これらの 1種又は 2種以上を用
いることができる。
これらのうち、 ポリエーテルエステルアミドを使用することが好ましい。 ポリ エーテルエステルアミドは塩を形成していないので、 塩が溶出する心配がない。 また、 比較的高分子量であって、 本発明で使用する熱可塑性樹脂との相容性も良 好であることから、 ブリードアウトすることなく、 長期間に亘つて帯電防止効果 が発揮されるからである。 ポリエーテルエステルアミドの具体例としては、 炭素 数 6以上のアミノカルポン酸、 炭素数 6以上のラクタム及びジァミンとジカルポ ン酸とから得られる炭素数 6以上のナイロン塩からなる群より選ばれる少なくと も 1種のポリアミド系化合物 (A 1 ) 及びジカルボン酸 (A 2 ) から誘導される 両末端力ルポキシル基を含有するポリアミド (A) とポリオキシアルキレンダリ コ一ル及び/又はビスフエノール類のェチレンォキシド付加物からなるポリエー テルジオール (B ) とを重縮合させて得られる化合物等が挙げられる。
さらに、 透明性が要求される場合には、 ポリエーテルエステルアミドは、 本発 明で使用する熱可塑性樹脂と屈折率を揃えることが望ましい。 ポリブタジエンの 屈折率が 1 . 5 2であり、 透明性が要求されるときにはマトリックス樹脂の屈折 率はその屈折率に揃えられるから、 ポリエ一テルエステルアミドの屈折率が、 室 温において 1 . 4 8〜1 . 5 6であることが好ましく、 1 . 5 0〜1 . 5 4であ ることがより好ましく、 1 . 5 1〜1 . 5 3であることが最適である。
また、 透明性が要求されない用途であれば、 帯電防止剤として導電性カーボン を使用することも好ましい。 後述するように、 帯電防止剤として有機化合物を用 いる場合には、 僅かとは言えそれが成形時に熱分解するおそれがある。 これに対 し、 グラフアイト粉末、 カーボンブラック、 炭素繊維、 カーボンナノチューブな どの導電性カーボンは、 熱可塑性樹脂の溶融成形時の温度ではほとんど分解する ことがない。 したがって、 クリーンルーム用容器のように、 揮発性の有機物によ る汚染が嫌われる用途においては、 帯電防止剤として導電性カーボン粒子を使用 することも好適である。
また、 上記帯電防止剤の使用割合については特に制限はないが、 その物性バラ ンス面より、本発明の熱可塑性樹脂中に 1〜 3 0重量%含まれることが好ましい。 また、 本発明で使用する熱可塑性樹脂は、 本発明の効果を妨げない範囲内で、 公知の添加剤、 例えば、 酸化防止剤、 紫外線吸収剤、 滑剤、 着色剤、 充填剤など を必要に応じて添加することも可能である。 伹し、 汚染物質を発生しにくいとい う、 本発明めクリーンルーム用容器に要求される性能を考慮すると; このような 添加剤の使用は最低限に留めることが好ましい。
帯電防止剤など、 上記添加剤の配合方法には特に制限はなく、 押出機、 バンバ リーミキサー、 ロール、 二一ダ一等を用いて混合することができる。 前述のよう に、 グラフト共重合樹脂粒子と、 別途共重合してなる樹脂とを溶融混合する場合 には、 そのときに同時に混合することが好ましい。 また、 溶融混合するのと同時 に揮発成分を除去するための脱揮処理を施すことも好ましい。 こうすることによ つて、 樹脂中の揮発成分を効率的に減少させることができる。 脱揮処理方法とし ては、 溶融状態で減圧することが好適な方法として例示される。
具体的には、 減圧ベントを有する押出機を使用して溶融混練することが好まし レ^ 押出機は一軸押出機であっても二軸押出機であってもよい。 また、 ベントは 一箇所だけでなく複数箇所に設置してもよい。このときの好適な溶融混練温度は、 1 6 0〜2 2 0 °Cである。 また、 このような脱揮処理を複数回繰り返すことによ つて、 樹脂中の揮発成分の含有量をさらに減少させることができる。 例えば、 減 圧ベントを有する押出機を使用して溶融混練するのであれば、 溶融混練してペレ ット化したものを再度溶融混練する操作を繰り返すことが好ましい。
本発明で使用される熱可塑性樹脂のメルトフローレイト (2 2 0 °C、 1 0 k g 荷重) は特に限定されないが、 通常 1〜1 0 0 g / 1 O m i nである。 成形性の 点からは 5 g Z l O m i n以上であることが好ましく、 強度の点からは 5 0 g / 1 O m i n以下であることが好ましい。
また、 本発明において内部の視認性が要求される用途に使用される場合には、
熱可塑性樹脂が透明なものであることが好ましい。 例えば、 シリコンウェハキヤ リアなどを内包するケースに使用するような場合がそうである。 この場合には、 当該熱可塑性樹脂が、 厚さ 3 mmの射出成形品にしたときのヘイズが 2 0 %以下 の樹脂であることが好ましい。 当該ヘイズが 2 0 %以下であることによって、 容 器外部から内部を容易に視認することができるし、 外観が美麗である。 また、 例 えばキャリアに貼付したパーコード夕グなどを外部から読取装置で読み取つて生 産管理を行うことも可能である。 また、 全光線透過率で表現すれば、 7 0 %以上 であることが好ましく、 8 0 %以上であることがより好ましい。
こうして得られた熱可塑性樹脂を用いて、 本発明のクリーンルーム用容器が成 形される。 成形方法は特に限定されず、 射出成形、 押出成形、 ブロー成形などの 各種の溶融成形方法を採用することができる。 また、 一旦押出成形したシートな どに対して熱成形などの二次加工を施して成形しても良い。 これらのうちでも、 クリーンルーム用容器は、 比較的複雑で寸法精度が要求されるものが多いことか ら、 射出成形で成形することが好ましい。
射出成形時の成形条件も特に限定されるものではないが、 シリンダー設定温度 を 2 2 0 °C以下にして成形することが好ましい。 通常 A B S樹脂を射出成形する 際には、 2 3 0 °C以上の樹脂温度で射出成形することが多いが、 本発明では 2 2 0 °C以下にすることによって、 樹脂の分解を最低限に抑えることが望ましい。 射 出成形における樹脂の溶融時間は通常それほど長いものではなく、 普通の用途向 けには、 成形性や成形速度を考慮して十分に高温にして成形することが好ましい が、 クリ一ンルーム内で使用するためには、 溶融時の熱分解によって発生する有 機物の量をできるだけ低減することが重要である。 したがって、 成形可能な温度 ぎりぎりまで成形温度を下げることが好ましい。 成形の可能な温度は、 樹脂の組 成やメルトフローレイトなどにより異なり、 それらを考慮して設定される。 例え ば、 樹脂中の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体由来成分の割合が増加す れば、 より低温での成形が可能になりやすい。 射出成形時のシリンダ一設定温度
はより好適には 2 1 0 °C以下であり、さらに好適には 2 0 0 °C以下である。また、 通常 1 6 0 °C以上である。
また、 射出成形時の溶融樹脂温度は、 樹脂中に配合される添加剤の熱分解挙動 にも影響を与える。 例えば、 本発明のクリーンルーム用容器に使用される熱可塑 性樹脂中には帯電防止剤が含有されることが好ましく、 そのなかでもポリエーテ ルエステルアミドが好適なものであることは、 既に述べたとおりである。 溶融成 形時には、 微量ではあるが、 この帯電防止剤も熱分解する。 このとき、 高温で成 形したのでは、 熱分解によって発生する低分子量のアミンゃアミド (ラクタムを 含む) の量が増加する。 アミンゃアミドは水中に溶出し処理液を介して半導体ゥ ェハを汚染しやすく、 しかも、 このような窒素元素を含有する化合物は、 熱拡散 処理などの半導体製造プロセスにおいて、 アンモニアゃァミンなどの塩基性物質 を発生させる可能性があるため、 通常の炭素、 水素、 酸素のみからなる有機化合 物よりも汚染源として嫌われているものである。 したがって、 特にこのような窒 素元素を含有する帯電防止剤を使用する際には、 できるだけ低温で成形すること が好ましいものである。
こうして成形された本発明のクリーンルーム用容器に含まれる分解有機物の量 はできるだけ少ないことが好ましい。 具体的には、 成形品から削り出した試料を 1 5 0 °Cで 1 0分間保持した後、 1 0分以内に発生する有機ガス量がスチレン換 算値で 6 0 0 p p m以下であることが好ましい。 より好適には 4 0 0 p p m以下 であり、 さらに好適には 3 0 0 p p m以下である。 このように分解有機物の量を 低減するには、 前述のように樹脂を製造する際に揮発成分を低減させることが有 効であるとともに、 できるだけ低温で成形することも有効である。
本発明のクリーンルーム用容器は、 クリーンルーム内で使用される容器であつ て、 原料、 中間製品あるいは製品を収容するための容器であれば特に限定されな い。 好適なものとして、 半導体基板、 ディスプレイ基板及び記録媒体基板から選 択される板状体が収納される容器が例示される。
半導体基板としては、 集積回路製造用の基板、 太陽電池製造用の基板などが例 示される。 その材料はシリコンに代表されるが特に限定されるものではない。 ま た、 その形態もシリコンウェハのような円形であっても良いし、 太陽電池セルの ような四角形であっても良い。 また、 シリコンウェハを切断したチップの形態で あっても構わない。
なかでも代表的な実施態様がシリコンウェハ用の容器である。 近年では、 シリ コンウェハの大口径化が進行しており、 それに対応してシリコンウェハ用容器の 寸法も大きくなつてきている。 したがって、 寸法の大きい容器であっても形態を 保持できて損傷されないように、 剛性及び耐衝撃性に優れた榭脂の使用が望まれ ている。 この点で、 本発明のクリーンルーム容器は好適である。 また、 寸法が大 きくなるにしたがって、 成形品全体としての寸法精度の要求レベルも厳しくなる ことから、 寸法精度良く成形できる本発明のクリーンルーム容器が好適である。 したがって、 本発明のクリーンルーム用容器は、 好適には 6インチ以上のシリコ ンウェハ用に、 より好適には 8インチ以上のシリコンウェハ用に、 さらに好適に は 3 0 O mm以上のシリコンウェハ用に使用される。
このとき、 シリコンウェハが直接配列されるキャリアと称される容器である場 合には、 シリコンウェハが直接キャリアに接触するので、 特に金属汚染が問題に なりやすいし、 処理液等を介してクロスコン夕ミネーシヨンを生じやすい。 した がって、 このようなキャリアに対して本発明のクリーンルーム用容器を使用する ことが好ましい。 また、 前記キャリアが内部に収容される、 ケースと称される容 器である場合にも、 金属汚染が嫌われるので本発明のクリーンルーム用容器を使 用することが好ましい。 この場合には、 内部が視認できるように透明な樹脂を使 用することが特に好ましい。 また、 ケースの中に揮発成分がこもりやすいことか ら、 臭気成分などの揮発成分による汚染が少ない事も好ましい。 このようなこと から、 キャリアとケースの役割を同時に果たす一体型の容器に対しても、 本発明 のクリーンル一ム用容器は好適に使用される。
ディスプレイ基板としては、 液晶ディスプレイ製造用の基板、 プラズマデイス プレイ製造用の基板、 エレクト口ルミネッセンス (E L) ディスプレイ製造用の 基板などが例示される。 これらの基板の材料は代表的にはガラスであるが、 その 他のもの、 例えば透明樹脂などであっても構わない。 これらのディスプレイ基板 の場合にも、 画素駆動用の回路が存在し、 金属による汚染が嫌われるから、 本発 明のクリーンルーム容器を採用することが好適である。 また、 ディスプレイ基板 は特に大型のものが多いことから、 前述の大口径シリコンウェハと同様に本発明 のクリーンルーム用容器を使用することが好ましい。
また、 記録媒体基板としては、 ハードディスク基板や光ディスク基板が例示さ れる。 ハードディスク基板の場合の素材は、 金属やガラスなどが代表的に使用さ れるが、'それに限定されるものではない。 また、 光ディスク基板の場合の素材は ポリカーボネートに代表される透明プラスチックが代表的であるが、 それに限定 されるものではない。 これらの記録媒体については、 その記録形式によって記録 膜の組成は異なるが、 近年では記録密度の飛躍的向上によって、 僅かな汚染物質 がその性能に与える影響が大きくなつてきており、 本発明のクリーンルーム容器 が好適に使用される。 図面の簡単な説明
第 1図は、本発明の実施例で成形した容器の全体構造を示す分解斜視図である。 図中、 1は容器を、 2は上ケースを、 3は下ケースをそれぞれ示す。 発明を実施するための最良の形態
以下、 実施例を使用して本発明をさらに詳細に説明する。
合成例 1
窒素置換した重合反応器にポリブタジエンラテックス (重量平均粒子径 0 . 3 0 n、 ゲル含有量 8 5 %) 5 0部 (固形分)、 水 1 5 0部、 エチレンジァミン四酢
酸ニナトリウム塩 0. 1部、 硫酸第 2鉄 0. 001部、 ナトリウムホルムアルデ ヒドスルホキシレート 0. 3部を入れ、 60°Cに加熱後、アクリロニトリル 3部、 スチレン 12部、 メタクリル酸メチル 35部及びキュメンハイド口パーォキサイ ド 0. 2部からなる混合物を 3時間に亘り連続的に添加し、 更に 60°Cで 2時間 重合し、 グラフト共重合体ラテックスを得た。 その後、 該ラテックス 100重量 部 (固形分) に対し塩析剤として硫酸マグネシウム 3. 0重量部を使用して塩析 した後、 グラフト共重合樹脂粒子の 1. 5倍体積の水を加えて撹拌してから脱水 して洗浄した後、 乾燥し、 グラフト共重合樹脂粒子 (1) を得た。
合成例 2
合成例 1において、 重合後に水蒸気蒸留を施した点と、 凝固及び洗浄工程を変 更した点を除いて、 合成例 1と同様にしてグラフト共重合体樹脂粒子を得た。 す なわち、 重合後に得られたグラフト共重合体ラテックスに水蒸気を吹き込んで 1 時間水蒸気蒸留した。 このときのラテックスの温度は 80°Cであった。 水蒸気蒸 留後、 凝固剤として硫酸 1. 0重量部を使用して凝固させ、 さらにグラフト共重 合樹脂粒子の 2. 5倍体積の水を加えて撹拌してから脱水する洗浄操作を 3回繰 り返した。 以上の点以外は合成例 1と同様にして、 グラフト共重合樹脂粒子 (2) を得た。
合成例 3
窒素置換した重合反応器に、 純水 130部及び過硫酸カリウム 0. 3部を仕込 んだ後、 攪拌下に 65°Cに昇温した。 その後、 アクリロニトリル 10部、 スチレ ン 30部、 メタクリル酸メチル 60部及び t—ドデシルメルカブタン 0. 35部 からなる混合モノマー溶液及び不均化ロジン酸力リゥム 2部を含む乳化剤水溶液 30部を各々 4時間に亘つて連続添加した。 その後重合系を 70°Cに昇温し、 2 時間熟成を行いスチレン系重合体ラテックスを得た。 その後、 該ラテックス 10 0重量部 (固形分) に対し塩析剤として硫酸マグネシウム 2. 5重量部を使用し て塩祈した後、 スチレン系重合体の 1. 5倍体積の水を加えて撹拌してから脱水
して洗浄した後、 乾燥し、 スチレン系重合体 (3) を得た。
合成例 4
容量が 20リットルの完全混合型反応槽 1基からなる連続的重合装置を用い、 スチレン 30重量部、 メ夕クリル酸メチル 70重量部、 ェチルベンゼン 10重量 部、 t一ドデシルメル力ブタン 0. 05重量部、 重合開始剤として t一プチルパ 一ォキシ (2—ェチルへキサノエ一ト) 0. 015重量部から成る重合原料をプ ランジャ一ポンプを用いて 13 kgZhで連続的に該反応槽に供給して、 重合温 度を調節して重合を行った。 このときの重合温度は 150°Cであり、 また反応槽 の撹拌回転数は 150 r pmに調整した。 重合に続いて、 反応槽から連続的に抜 き出された重合液を脱揮発分装置に供給した後、 押出機を経てスチレン系重合体 (4) を得た。
合成例 5
容量が 15リツトルのプラグフロ一塔型反応槽(「新ポリマー製造プロセス」(ェ 業調査会、 佐伯康治 Z尾見信三著) 185頁、 図 7. 5 (b) 記載の三井東圧タ イブと同種の反応槽で、 10段に仕切られた C 1ZC 0 = 0. 955を示すもの) に 10リットルの完全混合槽 2基を直列に接続した連続的重合装置を用いて熱可 塑性樹脂を製造した。 プラグフロー塔型反応槽が粒子形成工程を、 第 2の反応槽 である 1基目の完全混合槽が粒子径調整工程を、 第 3の反応槽が後重合工程を構 成する。
前記プラグフロー塔型反応槽にスチレン 65重量部、 アクリロニトリル 22重 量部、 ェチルベンゼン 25重量部、 スチレン一ブタジエンゴム (日本ゼオン株式 会社製 NS 310 S) を 13重量部、 t -ドデシルメル力プ夕ン 0. 2重量部、 1、 1—ビス (t一ブチルパーォキシ) 3、 3、 5—トリメチルシクロへキサン 0. 05重量部からなる原料を調整し、 この原料を 3段の攪拌式重合槽列反応器 に 10 kgZhで連続的に供給して単量体の重合を行った。 なお、 第 1のプラグ フロー塔型反応槽は 88 °C、 第 2の反応槽は 125°C、 第 3の反応槽は 140°C
に設定した。第 3の反応槽より重合液を予熱器(210〜250°C)と減圧室(4 OTo r r) より成る脱揮発分装置に供給した後、 押出機を経てゴム粒子が分散 した熱可塑性樹脂 (5) を得た。 得られたゴム分散相の重量平均粒子径は 0. 5 ; mであった。
実施例 1〜5、 比較例 1〜4
合成例 1〜 5で得られた樹脂と、 下記の帯電防止剤を、 表 1に示された配合割 合で混合し、 ベント付き 40mm二軸押出機 (株式会社日本製鋼所製 「TEX— 44」) を用いて 200°Cで溶融混練して切断し、 ペレットを得た。 すなわち、 本 ペレツトは 1回の脱揮処理が施されたものである。 ここで使用した帯電防止剤は、 三洋化成工業株式会社製 「ペレスタツト NC 6321」 (ポリエーテルエステルァ ミド、 屈折率 516) 及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。 得られたペレツ卜について、 下記の方法にしたがって、 メルトフローレイト、 灰 分及び 4―ピニルシクロへキセン含有量を測定した。 測定結果を表 1に示す。 得られたペレットを使用し、 東芝機械製 I S— 90B射出成形機を用い、 シリ ンダー設定温度 200°Cにて射出成形して試験片を作成し、 下記の方法にしたが つて全光線透過率、 ヘイズ、 耐衝撃性及び帯電防止性の各評価を行った。 評価結 果を表 1に示す。
また、 得られたペレットを使用し、 株式会社日本製鋼所製 J 450E— C 5射 出成形機を用い、 樹脂温度 200°C、 金型温度 50°C、 射出スピード 45mm/ s e c、 射出圧力 1600 kgZcm2、 で射出成形して、 第 1図に示す容器を 作製した。 実施例 1〜 5及び比較例 1〜4のいずれについても外観の良好な成形 品を得ることができた。 ただし、 実施例 4及び 5については白濁していて内部を 視認することが困難であった。 また、 下記の方法にしたがって臭気の官能評価を 行った。 評価結果を表 2に示す。
(1) メリレ卜フローレイ卜
ASTM D— 1238に準じてメルトフローレイト (gZl Omi n) を測
定した。 測定温度は 220°Cで、 荷重は 10 kgである。
(2) 灰分
試料のペレツト約 10 gを乾燥重量を測定した白金るつぼに正確に量り取り、 ドラフトチャンバ一内に設置した電気こんろ上で灰化した後、 800°Cに温度設 定した電気炉内に白金るつぼを移し 4時間放置する。 その後白金るつぼを取り出 しデシケ一夕一中で放冷後その重量を量り、 その重量差から灰分 (%) を算出し た。 .
(3) 4ーピニルシクロへキセン含有量
試料のペレットをジメチルホルムアミドに溶かし、 フレ一ムイオン検出器 (F I D) を付けてある HewlettPackard社製 589 Oil型ガスクロマトグラフィー を用いて、 試料溶液中の 4ービニルシクロへキセン含有量を分析した。 定量に際 しては、 既知の濃度の 4ービニルシクロへキセンの.ジメチルホルムアミド溶液で 作製した検量線を使用した。
(4) 全光線透過率
厚さ 3mmの試験片を用いて、 株式会社村上色彩技術研究所製反射 ·透過率計 HR— 100で測定した。
(5) ヘイズ
全光線透過率測定と同一試験片を用いて、 株式会社村上色彩技術研究所製反 射 ·透過率計 HR _ 100で測定した。
(6) 耐衝撃性
ASTM D— 256に準じてノッチ付アイゾット衝撃強度 (MP a) を測定 した。 ·
(7) 帯電防止性
厚さ 3 mmの試験片を用い、 1ヶ月間 23°C、湿度 50%RH下で状態調整し、 水洗処理前後の表面固有抵抗値 (Ω) を東亞電子工業株式会社製ウルトラメガ一 ムメーター SN 8210にて測定した。
( 8 ) 臭気官能評価
射出成形して得られた容器は開放状態で 2 4時間常温放置した後、 上ケースと 下ケースを嵌合密封し常温で 1時間放置した。 その後、 5名の臭覚敏感なテスト パネラ一により上ケースを開けてその臭気の程度を嗅ぎ、臭気官能評価を行った。 評点は次の基準にしたがつた。
5点 臭いが明らかに強い
4点 かなり臭いを感じる
3点 臭い ¾感じる
2点 わずかに臭いを感じる
1 占 臭いを感じない
実施例 比較例
1 2 3 4 5 1 2 3 4 パネラー I 3点 3点 3点 2点 1点 4点 5点 1点 2点 パネラー π 2点 2点 2点 1点 2点 4点 5点 1点 パネラー m 2点 2点 1点 2点 5点 ττ 1点 パネラー IV 2点 3点 2点 1点 1点 4点 5点 1点 1点 パネラー V 3点 3点 1点 1点 5点 5点 1点 1点 評価平均 2. 4点 2. 6点 2. 6点 1. 2点 1. 4点 4. 4点 5. 0点 1. 4点 1. 2点
以上の結果から明らかなように、 グラフト共重合樹脂粒子を製造する際に酸を 用いて凝固させた上で洗浄操作を強化し、 そうして得られた樹脂粒子を、 溶液重 合したスチレン系重合体と混合して熱可塑性樹脂を製造した実施例 1〜 3では、 低い灰分を示している。 また、 乳化重合工程を有さずにゴム粒子が分散した熱可 塑性樹脂を合成した実施例 4及び 5でも低い灰分を示している。 これに対し、 金 属塩を用いて塩折し、 通常の洗浄操作を施しただけの乳化重合工程を有する比較 例 1及び 2では、 灰分量が高くなつている。
また、 グラフト共重合樹脂粒子を製造する際に水蒸気蒸留操作を施し、 そうし て得られた樹脂粒子を、 溶液重合したスチレン系重合体と混合して熱可塑性樹脂 を製造した実施例 1〜 3では、 4ービニルシクロへキセン含有量が低く、 臭気の 官能評価の結果も良好であった。 また、 乳化重合工程を有さずにゴム粒子が分散 した熱可塑性樹脂を合成し、 所定条件の減圧加熱脱揮操作を施した実施例 4及び 5では、 4ービニルシクロへキセン含有量がさらに低く、 臭気の官能評価の結果 もさらに良好であった。
また、 帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミドを使用した実施例 1及び 5では、 洗浄前後ともに良好な帯電防止効果が得られているが、 帯電防止剤を使 用しなかった実施例 2及び 4では、 洗浄前後ともに表面固有抵ぉ値が高く、 帯電 防止性が十分でない。 帯電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリゥム を使用した実施例 3では、 洗浄前の表面固有抵抗値は低いものの、 洗浄後の表面 固有抵抗値は高くなり、 帯電防止効果の持続性の点で十分でない。 また、 ジェン 系ゴム粒子を含有しない比較例 3及び 4では、 耐衝撃性に劣っていた。
実施例 6〜9 (成形温度の影響)
実施例 1で使用したのと同じ熱可塑性樹脂ペレツトを使用し、 株式会社日本製 鋼所製 J 4 5 0 E— C 5射出成形機にて表 3に示すようにシリンダー設定温度を 変化させ、 金型温度 5 0 ° (:、 射出スピ一ド 4 5 mm/ s e c , 射出圧力 1 6 0 0 k g / c m2で射出成形し、 第 1図に示す容器を製造した。 この容器について、
以下に示す方法にしたがって成形性と分解有機物量を評価した。 その結果を表 3 にまとめて示す。
実施例 10及び 11 (脱揮回数の影響)
実施例 1で得られた熱可塑性樹脂ペレットを、 再度ベント付き 40mm二軸押 出機 (株式会社日本製鋼所製 「TEX—44」) に投入し、 200°Cで溶融混練し てから切断して、 合計 2回の脱揮処理が施されたペレツ卜 (実施例 10) を製造 した。 また、 この脱揮処理操作をさらに繰り返して、 合計 4回の脱揮処理が施さ れたペレット (実施例 11) も製造した。 これらのペレットを使用し、 上記実施 例 8と同じ条件で射出成形し、第 1図に示す容器を製造した。この容器について、 以下に示す方法にしたがって成形性と分解有機物量を評価した。 その結果を表 3 にまとめて示す。
(9) 成形性
樹脂の充填性を観察し、 樹脂が容器形状に完全充填できた場合を〇、 樹脂が容 器形状に完全充填できなかった場合を Xとした。
(10) 分解有機物量
成形後の製品より 1 Omgのサンプルを採取し、 150°Cで 10分間保持した 後 10分以内に発生する有機ガス量を測定した。 測定装置は、 Hewlett Packard 社の G— 180 OA型のガスクロマトグラフィーを用いた。 有機ガス量は、 スチ レン換算にて算出した。
実施例 6 実施例 7 実施例 8 実施例 9 実施例 10 実施例 11 ペレット脱揮回数(回) 1 1 1 1 2 4 シリンダー設定温度 (°c) 240 220 200 180 200 200 成形 金型温度 (°c) 50 50 50 50 50 50 条件 射出スピ ド(mm/sec) 45 45 45 45 45 45 射出圧力(kgん m2) 1600 1600 1600 1600 1600 1600 成形性 〇 〇 〇 X 〇 〇 評価
有機力'、ス量 (ppm) 700 500 400 350 300 150
以上の結果から明らかなように、 成形温度を低下させるにしたがって、 脱ガス の総量が減少することがわかる。 このことは、 射出成形時の有機化合物の分解量 が、 射出温度の上昇にしたがって増加することを示しているものである。 今回成 形に供した熱可塑性樹脂では、 射出成形時の溶融樹脂温度が 1 8 0 °Cの時には成 形性の低下が認められたが、 2 0 0 °Cでは良好な成形品を得ることができた。 ま た、 コンパウンド後に脱揮操作を繰り返すことによって、 成形品中の有機揮発成 分の量が大幅に減少させられることがわかる。 産業上の利用可能性
本発明のクリーンルーム用容器は、 成形時の寸法精度、 成形品表面の平滑性、 剛性、 耐衝撃性などのパランスに優れ、 比較的樹脂コストが低く、 しかも灰分が 少なく金属イオンによる汚染源となる可能性が低いために、 クリーンルーム内で 使用される容器として優れた性能を有する。 したがって、 半導体基板、 ディスプ レイ基板及び記録媒体基板などの容器として特に有用である。