JP2004300383A - 樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定のゴム変性スチレン系樹脂にポリエーテルエステルアミドを添加することにより、従来の帯電防止性樹脂と比較して物性バランス、透明性に優れ、持続性のある帯電防止性能を有する樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、剛性に優れた樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にABS樹脂に代表されるスチレン系樹脂は電気、電子機器部品、OA機器、パチンコ部品等に幅広く使用されており、特に機能面、デザイン面で透明性を必要とされる用途には、透明ABSが使用される。一方スチレン系樹脂は、電気固有抵抗値が高いために、成形品にほこりが付着したり、電子機器においては、帯電した電気による誤作動等の静電気障害を生じる問題があり、帯電防止性能が要求されている。そこで、これらの帯電防止方法としては、樹脂に帯電防止剤、カーボンブラック、金属紛を練り込む方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
株式会社プラスチックス・エージ発行「プラスチックスエージ」、
1991年6月号、p.170〜176
【0004】
樹脂に帯電防止剤を練り込む方法は、帯電防止性能を付与する方法として有効であるが、帯電防止効果に持続性がないという欠点がある。一方、カーボンブラックや金属紛を練り込む方法は、帯電防止効果の持続性はあるが、外観、成形加工性、衝撃強度を低下させる問題を有しており、特に透明ABSに対しては、その特長である透明性を失わせるため、使用することが出来ない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性に優れる樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スチレン系樹脂において、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のゴム変性スチレン系樹脂組成物に特定の添加剤を配合することにより、透明性を損なうことなく衝撃強度に優れ、かつ帯電防止性能に優れた樹脂組成物を見出し、本発明に到達したのものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記(A)成分及び(B)成分を(A)/(B)=98/2〜80/20質量比の割合で含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4〜2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2〜2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
(B)成分:(B1)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩、
(B2)次化式(1)〜(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1〜4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
【化4】
【化5】
【化6】
、及び(B3)炭素原子数4〜20のジカルボン酸を共重合してなるポリエーテルエステルアミド
【0008】
特に、(A)成分の 透明なゴム変性共重合樹脂は、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(以下dvとする)が0.4〜2.0μmで、かつ、ゴム粒子径体積積算分布曲線における積算値の75%径(以下dv75とする)と積算値の25%径(以下dv25とする)の差が0.2〜2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂である。
尚、ゴム粒子径体積積算分布曲線とは、横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積積算分布曲線をいうものとする。
また、ゴム粒子径体積積算頻度分布曲線とは、横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積頻度分布曲線をいうものとする。
【0009】
さらに、本発明では、好ましい透明なゴム変性共重合樹脂としては下記の条件を満足するゴム変性共重合樹脂が挙げられる。
即ち、ゴム粒子径体積積算分布曲線において粒子径0.8μm未満のゴム粒子が95〜30体積%を占め、粒子径0.8μm以上のゴム粒子が5〜70体積%を占めることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂である。
【0010】
また、ゴム粒子径体積頻度分布曲線において、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上に、それぞれ少なくともひとつの極大値を有することを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂である。
【0011】
さらに、ゲル分が5〜25質量%であることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂である。
【0012】
膨潤指数が9〜17であることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂である。
【0013】
重量平均分子量(Mw)が8万〜20万であることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂であることがいずれも好ましい条件として挙げられる。
ゴム粒子径体積積算分布曲線において、粒子径0.8μm未満のゴム粒子が95〜30体積%を占め、粒子径0.8μm以上のゴム粒子が5〜70体積%を占める透明なゴム変性共重合樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
また、(A)成分のゴム粒子径体積頻度分布曲線において、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上に、それぞれ少なくともひとつの極大値を有する透明なゴム変性共重合樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
さらには、(A)成分のゲル分が5〜25質量%であって、膨潤指数が9〜17であり、重量平均分子量(Mw)が8万〜20万である透明なゴム変性共重合樹脂を用いることが好ましいことを本発明者らは見出したものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するスチレン系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等を挙げることができるが、好ましくはスチレンである。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
本発明で使用する(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等があげられるが、好ましくは、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートである。これら(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよいが、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートを併用して使用することが最も好ましい。本発明では、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体以外の単量体、例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、メタクリル酸等もスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対し、50質量部未満であれば含有させることができる。
【0018】
スチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の割合は、好ましくはスチレン系単量体5〜95質量部及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体95〜5質量部、更にに好ましくは、スチレン系単量体10〜90質量部及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体90〜10質量部である。但し、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計を100質量部とする。スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体が該範囲外の場合は透明性等が劣る場合がある。
【0019】
本発明で使用するゴム状重合体は、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックゴム、部分水添ポリブタジエン、部分水添スチレン−ブタジエンゴム、部分水添スチレン−ブタジエンブロックゴム等が挙げられるが、好ましくはスチレン含量が20〜50質量%のスチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロックゴムである。また、温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度が、好ましくは15〜200mPa・s、さらに好ましくは20〜60mPa・sである。ブタジエンに基づく不飽和結合のうちの1,2−ビニル結合の割合は、好ましくは8〜25モル%、更に好ましくは12〜16モル%である。
本発明では、スチレン−ブタジエン−スチレン樹脂等のゴム状重合体以外の重合体もゴム状重合体100質量部に対し、50質量部未満であれば含有させることができる。
【0020】
ゴム状重合体の割合は、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対し、好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは3〜15質量部である。ゴム状重合体が該範囲外の場合は耐衝撃性等が劣る等目的を達しない場合がある。
【0021】
本発明では、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られる。ゴム状重合体は、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に溶解した後重合する。
重合温度は、好ましくは80〜170℃、更に好ましくは100〜160℃である。
【0022】
重合時、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の公知の重合開始剤や、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の公知の分子量調整剤を添加することが好ましい。
重合開始剤、分子量調整剤の添加量はスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対し、好ましくは0.005〜5質量部、更に好ましくは0.01〜1質量部である。該範囲外の場合は耐衝撃性が劣る等目的を達しない場合がある。
【0023】
また重合時、ジビニルベンゼン等の公知の架橋剤、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の公知の酸化防止剤等を添加しても差し支えない。
【0024】
本発明では重合時、エチルベンゼン、トルエン等の溶剤をスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対して好ましくは0.1〜50質量部、更に好ましくは5〜15質量部使用する。溶剤の使用により重合時の粘度が下がり、重合制御性が向上する等好ましい場合がある。また、本発明における重合の様式は連続重合様式が好ましい。
【0025】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中にはゴム粒子が分散してなる。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)は0.4〜2μm、好ましくは0.4〜1.5μm、更に好ましくは0.5〜1.2μmである。ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4μm未満の場合は耐衝撃性が低いものとなり、2μmを越えた場合は透明性の劣るものとなる。
本発明の体積平均粒子径(dv)とは、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中のゴム粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数1により得られる平均粒子径とする。
【数1】
尚、体積平均粒子径(dv)の制御は重合時の撹拌数、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
【0026】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、dv75とdv25の差(以下dv75−dv25とする)が0.2〜2.0μm、好ましくは0.4〜1.7μm、更に好ましくは0.5〜1.5μmである。dv75−dv25が0.2μm未満であると耐衝撃性、剛性のバランスが劣り、2.0μmを越えると透明性、剛性のバランスが劣り、さらに透明性の成形条件依存性が大きくなる。dv75−dv25の制御は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
尚、dv75、dv25は、前掲したように横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布の体積積算分布曲線において、積算値がそれぞれ75%、25%に対応する粒子径である。尚、ゴム粒子径は、ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)と同様、樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より粒子径を測定し求めるものとする。また、体積分率は、該粒子径で得られたゴム粒子を球体とみなしたときの体積分率で示したものである。
【0027】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、ゴム粒子径体積積算分布曲線において、粒子径0.8μm未満が95〜30体積%で、粒子径0.8μm以上が5〜70体積%を占めることが好ましい。更に好ましくは、粒子径0.8μm未満が80〜40体積%で、粒子径0.8μm以上が20〜60体積%である。粒子径0.8μm未満が95〜30体積%、粒子径0.8μm以上が5〜70体積%であると、更に透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、透明性の成形条件依存性の良好なものとなる。尚、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上の比率は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
【0028】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂中に分散するゴム粒子は、前掲したように横軸に粒子径、縦軸に体積分率で表示するゴム粒子径分布のゴム粒子径体積頻度分布曲線において、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上に、それぞれ少なくともひとつの極大値を有することが好ましい。粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上に、それぞれ少なくともひとつの極大値を有すると更に透明性、耐衝撃性、剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が少なく良好なものとなる。ゴム粒子径体積頻度分布曲線において、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上に、それぞれ少なくともひとつの極大値の有無は重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、異なる粒子径を有するゴム変性共重合樹脂の混合等で実施できる。
尚、ゴム粒子径体積頻度分布曲線の例として、ゴム粒子径の対数に対する体積基準の頻度分布である一例を図1に示す。
【0029】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂のゲル分は好ましくは5〜25質量%、更に好ましくは15〜23質量%である。ゲル分が5質量%未満であると耐衝撃性が劣り、ゲル分が25質量%を越えると透明性、剛性が劣り、更に透明性の成形条件依存性が大きくなる。ゲル分の調整は、重合時の撹拌条件、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量等で調整できる。
【0030】
尚、本発明におけるゲル分は以下の様に測定する。
試料1gを精秤(a)し、メチルエチルケトン(MEK)100mlに温度25℃で24時間かけて溶解させた後、溶解液を質量を測定した遠心管(b)に移し、温度10℃以下、14000rpmで40分間遠心分離し、上澄み液をデカンテーションにより取り除いた後、温度70℃の真空乾燥器で24時間乾燥させ、乾燥後の遠心管の質量(c)を測定し、下式数2によりゲル分を算出する。
【数2】
【0031】
また、本発明の透明なゴム変性共重合樹脂の膨潤指数は好ましくは9〜17、さらに好ましくは10〜14である。膨潤指数が9未満であると耐衝撃性が劣り、膨潤指数が17を越えると透明性、剛性が劣り、更に透明性の成形条件依存性が大きくなる。膨潤指数の調整は、酸化防止剤の添加や、脱揮槽内の加熱条件等で調整できる。
【0032】
尚、本発明における膨潤指数は以下の様に測定する。
試料約1gをトルエン100mlに温度25℃で24時間かけて溶解させた後、溶解液を質量を測定した遠心管(d)に移し、温度10℃以下、14000rpmで40分間遠心分離し、上澄み液をデカンテーションにより取り除いた後、乾燥前の遠心管の質量を測定する(e)。温度70℃の真空乾燥器で24時間乾燥させ、乾燥後の遠心管の質量(f)を測定し、下式数3により膨潤度を算出する。
【数3】
【0033】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは8万〜20万、更に好ましくは10万〜16万である。Mwが8万未満であると耐衝撃性が劣り、20万を越えると透明性が低下し、更に透明性の成形条件依存性が大きくなる。Mwの調整は、重合開始剤や分子量調整剤の種類や添加量、重合温度条件等で調整できる。
【0034】
次に、本発明において用いられるポリエーテルエステルアミド(B)について説明する。
(B1)は、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩から選ばれる。炭素原子数6以上のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロル酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノエナント酸、1,2アミノドデカン酸が好ましく、ラクタンとしてはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムが好ましい。炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩としては、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩及びヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等が好ましい。特にカプロラクタム、1,2アミノドデカン酸及びヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩が好ましい。
【0035】
(B2)のジオール化合物としては、次化式(1)〜(3)で示される。
【化7】
【化8】
【化9】
【0036】
(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1〜4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
【0037】
具体的な例としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド及び/又はプロピオンオキシド付加物、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ジメチルビスフェノールAのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、テトラメチルビスフェノールAのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクリヘキサンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ハイドロキノンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物及びそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0038】
好ましいジオール化合物としてはハイドロキノンのエチレンキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物及びそのブロック重合体であり、特にビスフェノールAのエチレンオキシド付加物及びそのブロック重合体が好ましい。
【0039】
(B3)のジカルボン酸成分としては、例えば炭素数4〜20のジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びコハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アジピン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
【0040】
(B1)、(B2)、(B3)の使用割合は、(B1)が25〜85質量部、(B2)が15〜70質量部、(B3)が5〜60質量部が好ましい。
【0041】
ポリエーテルエステルアミド(B)の重合方法は、例えば(B1)アミノカルボン酸又はラクタムと(B3)ジカルボン酸を反応させて、両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーをつくり、これに(B2)ジオール化合物を真空下に反応させる方法や前記(B1)、(B2)及び(B3)の各化合物を反応槽に仕込み、高温で反応させ、ジカルボン酸末端のポリアミドプレポリマーを生成させ、その後常圧又は減圧下で重合を進める方法等を用いることができる。
【0042】
次に、本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の、樹脂組成物は、(A/B)=98/2〜80/20質量比であり、(B)成分が98/2質量比(2質量%)未満では帯電防止性能が充分でなく、80/20(20質量%)を超えると衝撃強度が低下し好ましくない。(A)成分と(B)成分の混合方法については特に制限はないが、例えば、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサー等の公知の混合装置にて予備混合した後、単軸押出機または二軸押出機等の押出機を用いて溶融混練を行うことにより、均一に混合することができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。
例えば、流動性や離型性を向上させるために、可塑剤、滑剤、シリコーンオイル等を配合することができる。また、耐候性を付与するために、光安定剤や紫外線吸収剤を配合することができる。その他、酸化防止剤や、着色剤等を配合することができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、透明性、衝撃強度、持続性のある帯電防止性能に優れるので、透光性遊技基板、センターカバー、保護ケース、玉よせ等のパチンコ台部品、照明機器・製氷器・プリンター・シュレッダー等のカバー類、複写機トレーやカセット等のケース類、日用雑貨や玩具、ゲーム機、携帯電話・シェーバー・ラジカセ等の家電製品、冷蔵庫やクーラーボックス等の内装用成形品、アイスクリームカップ、菓子容器、エアゾール製品等のキャップ、人工透析の部品、レンズ、文房具等の射出成形品、銘板、仕切板、食品トレー、卵容器、ブリスターパック、絶縁プレート、IC関連マガジンレール、ICキャリアテープ、レンチキュラーシート、等のカランダー、(異形)押出成形品に好適である。
【0045】
本発明の透明なゴム変性共重合樹脂は、必要に応じて酸化防止剤、耐候剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油、難燃剤等の添加剤を添加することができ、製造時任意の段階で添加することができる。添加剤を添加する方法については特に規定はないが、例えば、重合時添加する方法や押出機にて溶融混練する方法等があげられる。
【実施例】
次に実施例をもって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0046】
参考例1
撹拌機を付した容積約5リットルの第1完全混合型反応器、撹拌機を付した容積約15リットルの第2完全混合型反応器、容積約40リットルの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。ゴム状重合体として旭化成社製アサプレン670A(スチレン−ブタジエンゴム、スチレン含量が40質量%、温度25℃における5質量%スチレン溶液粘度33mPa・s、1,2−ビニル結合の割合13.9モル%)を8質量部、スチレン56質量部、メチルメタアクリレート(以下MMA)39質量部、n−ブチルアクリレート(以下n−BA)5重量部で構成する単量体溶液に対し、エチルベンゼン14質量部、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:118℃)0.05質量部、t−ドデシルメルカプタンを0.1質量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを0.1質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時7kgで温度110℃に制御した第1完全混合型反応器に導入した後連続的に温度130℃に制御した第2完全混合型反応器に供給した。次いで重合液を第2完全混合型反応器より連続的に抜き出しながら、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この重合液を予熱器で加温しながら、1.3kPaに減圧した脱揮槽に導入し、脱揮槽内温度230℃にて未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂を得た。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルa〜eを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0047】
参考例2
第1完全混合型反応器を用いず、かつt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを添加しない原料溶液を第2完全混合型反応器に直接供給した以外は参考例1と同様に行った。第2完全混合型反応器の撹拌数を変更し、ゴム粒子径を制御することによりサンプルf〜gを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0048】
参考例3
t−ドデシルメルカプタンを0.02質量部とし、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの代わりに4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールを0.1質量部を混合し原料溶液とした以外は参考例1と同様に行い、サンプルhを得た。表1に物性評価結果を示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表2に示す配合で40mm単軸押出機を用い温度230℃でストランド状に押出し、ペレタイザーにて切断することによりペレット形状のゴム変性共重合樹脂(A−1〜A−8)を得た。また、表2に物性評価結果を示した。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例1〜6、比較例1〜6
上記の方法で得られたA−1〜A−8とポリエーテルエステルアミドBを表3に示す配合割合にてヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械社製TEM35B、シリンダー温度220℃)を用いて溶融混練してペレットを作成し樹脂組成物を得た。
次いでこのペレットを2オンスインラインスクリュー射出成形機(新潟鉄工所社製SN−51B、シリンダー温度220℃)で射出成形し、得られた成形試片を用いて物性測定を行った。測定値を表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
尚、評価は下記の方法によった。
(1)透明性
東芝機械社製射出成形機(IS−50EPN)を用いて、シリンダー温度200℃及び230℃で厚さ1mm、2mm、3mmの3段プレートを成形した。
この3段プレートの2mm部を用い、ASTM D1003に準拠し、日本電色工業社製HAZEメーター(NDH−1001DP型)を用いて全光線透過率及び曇度を測定した(単位:%)。
(2)耐衝撃性
東芝機械社製射出成形機(IS−80CNV)を用いて、シリンダー温度200℃で12.7×64×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃強度を測定した(単位:J/m)。
(3)剛性
東芝機械社製射出成形機(IS−80CNV)を用いて、シリンダー温度200℃で12.7×127×6.4mm寸法の試験片を成形した。この試験片を用い、ASTM D790に準拠して曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した(単位:MPa)。
(4)重量平均分子量(Mw)
下記記載のGPC測定条件で測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0055】
(5)ゴム粒子の体積平均粒子径(dv)
オスミウム酸で染色した樹脂の超薄切片法透過型電子顕微鏡写真より、写真中の粒子約1000個の粒子径(=(長径+短径)/2)を測定し、次式数4により得られる平均粒子径として求めた。粒子径の計測には、画像処理測定装置Carl Zeiss Vision社製KS400を使用した。
【数4】
【0056】
尚、d75%径とd25%径も上記の測定で得られた粒子径を画像処理測定装置を使用して、整理し得た。
また、ゲル分、膨潤指数は前掲した方法で測定した。
【0057】
(6)帯電防止効果:帯電防止効果は、射出成形した厚さ2mmの角板を用い、次の2条件で測定した表面固有抵抗値で評価した。
(a)成形直後:成形直後の角板を純水中で1分間洗浄し、充分乾燥させた後、JIS K−6911に準拠して温度23℃、湿度50%RHで24時間調湿して表面固有抵抗値を測定した。
(b)300日放置直後:成形した角板を温度23℃、湿度50%RH中に300日間放置した後、純水中で1分間洗浄し、充分乾燥させた後、JIS K−6911に準拠して温度23℃、湿度50%RHで24時間調湿して表面固有抵抗値を測定した。
尚、表面固有抵抗(Ω)と帯電防止効果の相関は、表面固有抵抗値が1011以下あれば帯電防止効果は優れている。表面固有抵抗値が1011を超え1013以下では、帯電防止効果は良好であるが、表面固有抵抗値が1013を超え1014未満では、帯電防止効果が若干不足し、表面固有抵抗値が1014以上では帯電防止効果は不足する。
【0058】
本発明の樹脂組成物に係わる実施例は、何れも、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、及び剛性に優れ、かつ透明性の成形条件依存性が少ない。一方、本発明の条件に合わない比較例では、帯電防止性能、透明性、耐衝撃性、剛性、透明性の成形条件依存性のうちいずれかの物性において劣るものであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、特定のゴム変性スチレン系樹脂にポリエーテルエステルアミドを混合することにより、従来の帯電防止性樹脂と比較して物性バランス、透明性に優れ、持続性のある帯電防止性能を有する樹脂組成物及びその樹脂組成物を成形してなる成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゴム粒子径体積頻度分布曲線の一例である。
Claims (8)
- 下記(A)成分及び(B)成分を(A)/(B)=98/2〜80/20質量比の割合で含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(A)成分:ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られるゴム変性共重合樹脂であって、樹脂中に分散するゴム粒子の体積平均粒子径(dv)が0.4〜2.0μmで、かつゴム粒子径体積積算分布曲線において積算値の75%径(d75)と25%径(d25)の差が0.2〜2.0μmであることを特徴とする透明なゴム変性共重合樹脂。
(B)成分:(B1)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩、
(B2)次化式(1)〜(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1〜4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)
- (A)成分のゴム粒子径体積積算分布曲線において、粒子径0.8μm未満のゴム粒子が95〜30体積%を占め、粒子径0.8μm以上のゴム粒子が5〜70体積%を占める透明なゴム変性共重合樹脂を用いることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- (A)成分のゴム粒子径体積頻度分布曲線において、粒子径0.8μm未満と粒子径0.8μm以上に、それぞれ少なくともひとつの極大値を有する透明なゴム変性共重合樹脂を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- (A)成分のゲル分が5〜25質量%である透明なゴム変性共重合樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- (A)成分膨潤指数が9〜17である透明なゴム変性共重合樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- (A)成分重量平均分子量(Mw)が8万〜20万である透明なゴム変性共重合樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の樹脂組成物を成形して得られた表面固有抵抗値が1010〜1012Ωである成形体。
- 請求項7記載の射出成形してなるパチンコ台部品。
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