JP3654757B2 - 新規なゴム変性スチレン系樹脂組成物、及びその成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量が20ppm以下であることを特徴とする、新規なゴム変性スチレン系樹脂組成物に関するものである。
更に詳細には、本発明は(1) 上記の新規なゴム変性スチレン系樹脂組成物より成形された、温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規なゴム変性スチレン系樹脂シート及びフィルム、(2) 上記の新規なスチレン系樹脂組成物より成形された、温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規なスチレン系樹脂収縮フィルム、(3) 上記の新規なゴム変性スチレン系樹脂組成物より成形された、温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規な食品包装材、(4) 上記の新規なゴム変性スチレン系樹脂組成物より成形された、温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規な医療器具を構成する部材、を提供する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂は、透明性、成形性、剛性に優れた樹脂であることから、以前から食品容器、包装材等の成形材料として広く用いられてきた。
利用分野が拡大するに従い、温水、スチーム接触時の白化現象を抑えることが強く求められるようになった。
これまで透明で強度の高いスチレン系樹脂としては、スチレン系単量体と共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルを導入し、これら単量体からなる重合体を連続相とし、スチレン−ブタジエン共重合体またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散相として、分散層と連続層の屈折率を合わせたゴム変性スチレン系樹脂が知られており、食品容器、包装材等の成形材料として広く用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの用途の中には、容器、器具または内容物の殺菌を目的として、容器、器具を、または容器に内容物を充填後、スチームや温水で70〜100℃に加熱することをひつようとする使用法があり、従来のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルを連続相とし、スチレン−ブタジエン共重合体またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂では、温水やスチーム接触後に白化現象を起こして、製品の透明性が低下するなどの問題が生じることがあった。
【0004】
また、収縮フィルムの用途においても、スチレン系単量体と共重合可能な(メタ)アクリル酸エステルを導入し、これら単量体からなる重合体を連続相とし、スチレン−ブタジエン共重合体またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散相とする透明なゴム変性スチレン系樹脂が使用されているが、フィルムを収縮させるために70〜100℃の温水またはスチームに直接接触させる使用法があり、従来のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルを連続相とし、スチレン−ブタジエン共重合体またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂では、温水やスチーム接触後に白化現象を起こして問題となっていた。
【0005】
この白化現象を抑制するために、市場では温水やスチームとの接触を避けるような使用法等を用いる場合もあるが、用途が限定されてしまう。また、安価な加熱、殺菌方法であるスチームや温水を使用することへの要求が強く、スチームや温水と接触しても透明性が低下しないゴム変性スチレン系樹脂への要望が高まっている。
本発明者は検討の結果、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルを連続相とし、スチレン−ブタジエン共重合体またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂では、樹脂組成物中にゴム状弾性体重合時の触媒由来のリチウムが多量に含まれており、これが原因で白化現象を起こしていることを見出した。
【0006】
なお、ゴム状弾性体重合時に、チグラー・ナッタ系の触媒を用いることにより、樹脂組成物中のリチウムをゼロにすることが出来るが、この触媒系ではスチレンを実用的な条件で共重合できないため、スチレン−ブタジエン共重合体が工業的には製造することが出来ない。
また、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルを連続相とし、ゴム状弾性体を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂では、ゴム状弾性体がポリブタジエンの場合、分散相と連続相の屈折率を合わせて透明性を出すためには連続相中のスチレン系単量体の量が非常に少なくなり、非常に流動性が悪く、スチレン系樹脂の特徴である成形性が損なわれ、実用的な物性の樹脂組成物は得られない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者はかかる現状を鑑み、鋭意検討した結果、スチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散粒子として含有し、かつ連続相がスチレン系単量体20〜80重量部、(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜20重量部よりなるゴム変性スチレン系樹脂において、ゴム変性スチレン系樹脂中のリチウムの量を20ppm以下にすることにより、(1) 水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規なスチレン系樹脂シート及びフィルム、(2) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規なスチレン系樹脂収縮フィルム、(3) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規な食品包装材、(4) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規な医療器具を構成する部材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散粒子として含有し、かつ連続相がスチレン系単量体20〜80重量部、(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜20重量部よりなるゴム変性スチレン系樹脂において、ゴム変性スチレン系樹脂中のリチウムの量が20ppm以下であることを特徴とするゴム変性ス
チレン系樹脂組成物である。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
連続相を形成するスチレン系単量体の量は20〜80重量部、好ましくは30〜70重量部、更に好ましくは40〜60重量部の範囲である。この量が20重量部未満の場合は吸湿水分量が多くなり、成型時に乾燥工程が必要となり、生産性を著しく悪くすることと、流動性が非常に悪くなるので好ましくない。また、80重量部を越える場合は、高い透明性、強度、成形性のバランスに優れた樹脂が得られず好ましくない。
【0010】
スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合は、連続相の屈折率が、用いるゴム状弾性体の屈折率に合うように設定される。高い透明性を要求される用途では、連続相とゴム状弾性体の屈折率の差は0.010以内、好ましくは0.008以内であるように制御することが望ましい。
本発明において、スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等が用いられる。これらは単独で用いてもよく、またこれらを混合して用いることもできる。
【0011】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が用いられる。これらは単独で用いてもよく、またこれらを混合して用いることもできる。
本発明のスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体としては、スチレン含有量は10重量%〜50重量%であるものが好ましい。更に好ましくは20重量%〜45重量%の範囲である。また、ゴム状弾性体の分子量、分岐等は特に制約されるものではない。
【0012】
そして、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量は20ppm以下であることが必要である。より好ましくは16ppm以下である。20ppmを越える場合は温水、スチーム接触時の白化現象が著しいだけでなく、シートもしくはフィルム、成形体の表面が非常に荒れて外観を著しく損ない好ましくない。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量は、原子吸光分光光度計を用いた原子吸光分光分析により測定することができる。
【0013】
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量を20ppm以下にする方法は特に限定されないが、脱灰処理が一般的である。
ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるリチウムの量が20ppm以下であれば、特に脱灰処理方法は限定されるものではないが、例えば、脱灰処理として、ゴム状弾性体を溶媒、例えばノルマルヘキサン等に溶解し、そのゴム状弾性体溶液を水中に微分散させ、ゴム状弾性体中の未反応リチウムを水酸化物として水側に移行させた後、水とゴム状弾性体溶液を分離する。この操作を、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量が本発明で必要とする量より少なくなるまで繰り返した後、溶媒を分離し、ゴム状弾性体を得る方法を用いることができる。
【0014】
本発明の分散相の粒子径は、0.1μm〜2.0μm、好ましくは0.1μm〜1.5μm、更に好ましくは0.3μm〜1.0μmの範囲であり、0.1μm未満であると強度補強効果が発現しない、あるいは、強度補強効果が非常に小さい。一方、分散粒子径が2.0μmを越える場合は、強度補強効果は大きいがシート表面、成形体表面の外観が悪く、透明性が悪くなり、好ましくない。本発明で言う粒子径は、特に断らない限り、体積平均粒子径を意味する。
【0015】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状弾性体の量は1〜20重量%であり、好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは4〜14重量%の範囲である。ゴム状弾性体の量が1重量%未満の場合は強度補強効果が発現しない。また、20重量%を越える場合は、透明性の低下と剛性が低下して、使用用途が大きく制約を受けるので好ましくない。
【0016】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物に有機ポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン及び、これらの重合体の末端あるいは分子鎖中にエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ビニル基、アミノ基、アルコキシ基等を導入したものを添加することができる。有機ポリシロキサンの含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物100重量部あたり0.002〜0.5重量部の範囲が好ましい使用量である。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物にテルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、又、これらを構成するモノマー単位と、スチレンやα−メチルスチレンなどの芳香族炭化水素との共重合体、及びそれらを部分水素添加したものなど添加することもできる。
【0017】
例えばテルペン系樹脂は、柑橘系皮質から得られるd−リモネン、または生松脂から得られるα−ピネンの異性化で得られるジペンテンと芳香族炭化水素をフリーデルクラフツ型触媒(例えば、塩化アルミ、三フッ化硼素等)を用いてカチオン重合を行うことにより得られる。そして、この重合体を水素添加することにより得られる樹脂も本発明で言うテルペン系樹脂に含まれる。水素添加率には特に制約はない。芳香族炭化水素としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が好適に用いられる。
【0018】
テルペン系樹脂の重合度に特に制約はないが、重合度1000以下好ましくは500以下、更に好ましくは200以下である。重合度が高くなるとゴム変性スチレン系樹脂との相溶性が低下し、その結果透明性が低下し好ましくない。テルペン系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製のYSレジンTO−125、TO−115、TO−105、TO−85及び、クリアロンM−115、M−105、P−85(以上、商品名)等を用いることが出来る。
テルペン系樹脂の含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂100重量部当たり0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部であり、更に好ましくは1〜15重量部の範囲である。
【0019】
また石油樹脂の例としては、石油類のスチームクラッキングにより副正する分解留分のうち、C5留分、C9留分を原料にして、フリーデルクラフト型触媒によりカチオン重合して得られる樹脂が挙げられる。石油樹脂中のC9留分の割合が30重量%以上であることが必要である。好ましくは40重量%以上である。C9留分の割合が30重量%未満の場合は、ゴム変性スチレン系樹脂組成物との相溶性が低下し、その結果として透明性が低下し、かつ、強度低下、シート、フィルム、成形体の相剥離現象を招くことになり好ましくない。
【0020】
石油樹脂の重合度は特に制約はないが、重合度1000以下、好ましくは500以下、更に好ましくは200以下である。重合度が高くなると、ゴム変性スチレン系樹脂との相溶性が低下し、可塑効果も低下し、また、シート、フィルム成形体の透明性も悪化する。石油樹脂としては、トーネックス株式会社製の「テルペンECR231C(商品名)」等を用いることができる。
石油樹脂の含有量は、ゴム変性スチレン系樹脂100重量部当たり0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部であり、更に好ましくは1〜15重量部の範囲である。
【0021】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂を得るには、ゴム補強ポリスチレン(HIPS樹脂)の製造で多用されている方法を用いることが出来る。
すなわち、ゴム状弾性体をスチレン系単量体または(メタ)アクリル酸エステル単量体または重合溶媒または重合開始剤からなる原料溶液に溶解し、このゴム状弾性体が溶解した原料溶液を攪拌機付反応器に供給し、重合を行う。分散粒子の粒子径の制御は一般的に行われている方法、例えば攪拌羽根の攪拌数を変化させることにより制御される。また、透明性を維持する方法として、一般的な方法、例えば重合途中に必要に応じて単量体を添加するか、あるいは連続的に追添加する等の方法が用いられる。
【0022】
ゴム状弾性体の含有量は、目標とする含有量に原材料、重合率を調整することにより達成することができる。また、高濃度のゴム状弾性体を含むゴム変性スチレン系樹脂を上記の方法で製造し、別に製造したゴム状弾性体を含まない、あるいはゴム状弾性体の少ないスチレン系樹脂と混合することによっても達成できる。但し、本発明の構成要件を全て満たすことは当然である。
【0023】
この場合、重合溶媒、例えば、エチルベンゼン、トルエン、キシレン等を用いることも可能である。また、スチレン系重合体の重合に多用されている有機過酸化物を用いても、また、途中添加してもよい。重合方法は、スチレン系重合体の製法で常用されている塊状重合、または溶液重合が用いられる。回分式重合法、連続式重合法いずれの方法も用いることができる。
反応器を出た重合溶液は、回収系に導かれ、未反応単量体、重合溶媒等を除去し、ペレット化される。
【0024】
本発明において、ゴム変性スチレン系樹脂製造時の未反応単量体及び/または重合溶媒を回収する前または後の任意の段階、あるいはゴム変性スチレン系樹脂を成形する段階においてスチレン系樹脂に慣用されている添加剤、例えば酸化防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤等を添加できる。
また、本発明のゴム変性スチレン系樹脂組成物と他のスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等を混合して使用することも可能である。但し、本発明の構成要件を全て満たすことは当然である。
本発明でいうフィルム、シートとは、厚さ0.02mm〜2.00mmのものである。成形方法は特に限定されない。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例で更に詳しく説明するが、これらによって限定されるものではない。
(実施例1)
〔ゴム変性スチレン系樹脂組成物1〕
B−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロック)で、スチレン含有量が30重量%であるゴム状弾性体の10重量%ノルマルヘキサン溶液と水を1:5で混合し、超音波ホモジナイザーで10分間微分散させる。混合液を静置し、デカンテーションによって水を分離した後、再び水と1:5で混合し、超音波ホモジナイザーで10分間微分散させる。この脱灰の操作を10回繰り返す。
【0026】
10回脱灰した混合液をデカンテーションによって水と分離後、10倍量の90℃の温水中へ滴下し、溶媒を揮発させ、ゴム状弾性体を回収する。更に80℃で8時間真空乾燥し、残留溶媒、水分を除去する。
攪拌機を備えた反応機2機を直列連結し、その後に2段ベント付き押出機を配置した重合装置を用いてゴム変性スチレン系樹脂を製造する。スチレン47.5重量部、ブチルアクリレート10.0重量部、メチルメタクリレート33.2重量部、上記脱灰処理を行ったゴム状弾性体6.5重量部、エチルベンゼン2.8重量部、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01重量部からなる原料溶液を反応機に供給し、重合を行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物1を得る。
【0027】
〔ゴム変性スチレン系樹脂組成物2〕
脱灰の操作を7回にする以外、ゴム変性スチレン系樹脂組成物1と同様に操作し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物2を得る。
〔ゴム変性スチレン系樹脂組成物3〕
脱灰の操作を4回にする以外、ゴム変性スチレン系樹脂組成物1と同様に操作し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物3を得る。
【0028】
(比較例1)
〔ゴム変性スチレン系樹脂組成物4〕
脱灰の操作を1回にする以外、ゴム変性スチレン系樹脂組成物1と同様に操作し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物4を得る。
〔ゴム変性スチレン系樹脂組成物5〕
攪拌機を備えた反応機2機を直列連結し、その後に2段ベント付き押出機を配置した重合装置を用いてゴム変性スチレン系樹脂を製造する。スチレン47.5重量部、ブチルアクリレート10.0重量部、メチルメタクリレート33.2重量部、B−Sタイプ(B:ブタジエンブロック、S:スチレンブロック)で、スチレン含有量が30重量%であるゴム状弾性体ゴム状弾性体6.5重量部、エチルベンゼン2.8重量部、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.01重量部からなる原料溶液を反応機に供給し、重合を行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物5を得る。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物1〜5の物性を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例2)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物1を用い、押出機でTダイより0.3mmの原反を作成する。得られたシートを、60℃の温水中に60分間浸し、その後、表面状態、透明性を観察する。同様に、各々70℃温水中に60分間、80℃温水中に60分間、90℃温水中に60分間、100℃温水中に60分間浸した後の表面状態、透明性を観察する。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量を、原子吸光分光光度計を用いた原子吸光分光分析により測定した。
【0031】
(実施例3)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物2を用い、実施例1と同様に操作、評価を行った。
(実施例4)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物3を用い、実施例1と同様に操作、評価を行った。
(比較例2)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物4を用い、実施例1と同様に操作、評価を行った。
(比較例3)
ゴム変性スチレン系樹脂組成物5を用い、実施例1と同様に操作、評価を行った。
実施例1〜3、比較例1・2の評価結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
ここで、表面状態は、目視で透明度、表面状態を観察し、使用の可否を以下の基準に基づき定めた。
○:温水白化しない(実使用に耐え得るレベル)
△:温水白化する、表面状態は平滑。(実使用に耐え難いレベル)
×:温水白化する、表面荒れが激しい。(実使用に耐え難いレベル)
脱灰処理を行って、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量が20ppm以下である組成物を用いた実施例1〜3は、70℃以上の温水に接触しても温水白化が抑制され、実使用に耐え得る透明性、表面平滑性を保持するのに対し、ゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量が20ppmを越える比較例1・2は、70℃以上の温水と接触すると温水白化が生じ、透明性、表面平滑性が実使用に耐え難いレベルにまで低下してしまう。
【0034】
【発明の効果】
スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体からなるスチレン系重合体を連続相とし、スチレン−ブタジエン共重合体またはスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散相とするゴム変性スチレン系樹脂組成物中のリチウムの量を20ppm以下にする事により、(1) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規なスチレン系樹脂シート及びフィルムが得られること、(2) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規なスチレン系樹脂収縮フィルムが得られること、(3) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規な食品包装材が得られること、(4) 温水、スチーム接触時の白化現象を抑えた、透明性の優れた新規な医療器具を構成する部材が得られた。
Claims (5)
- スチレン−ブタジエンブロック共重合体からなるゴム状弾性体を分散粒子として含有し、かつ連続相がスチレン系単量体20〜80重量部、(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜20重量部よりなるゴム変性スチレン系樹脂において、ゴム変性スチレン系樹脂中のリチウムの量が20ppm以下であることを特徴とするゴム変性スチレン系樹脂組成物。
- 請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物からなる、スチレン系樹脂フィルム、もしくはシート。
- 請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物より成形された、シートまたはフィルムを、少なくとも1軸以上の方向に延伸して作られた収縮性フィルム。
- 請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物より成形された食品包装材。
- 請求項1記載のゴム変性スチレン系樹脂組成物より成形された医療器具を構成する部材。
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