明 細 書
樹脂正立等倍レンズアレイおよびその製造方法 技 術 分 野
本発明は、 一般的には、 樹脂正立等倍レンズアレイおよびその製造方法に関し、 より具体的には 2次元画像を空間伝送する装置に利用できる樹脂正立等倍レンズ アレイおよびその製造方法、 さらには製造に用いる金型の製造方法に関する。 背 景 技 術
複写機, ファクシミリ, プリン夕などに用いられる正立等倍レンズアレイには、 特開昭 5 5 - 9 0 9 0 8号公報に開示されている、 バーレンズを多数本配列した ブロックを 2つ対向して配置したものが既に提案されている。 このようなレンズ アレイは、 例えば、 バーレンズの配置位置に貫通孔があけられたレンズ支持体を、 アクリル樹脂で覆った後、 凹球面を有する型を押圧し、 バ一レンズの端面を形成 している。
また、 特開昭 6 4— 8 8 5 0 2号公報には、 射出成型により製造された、 微小 凸レンズを平面的に規則正しく配列した平面レンズ 2枚を、 対向して配置したレ ンズアレイが開示されている。
また、 通常のマイクロレンズアレイの製造方法として、 特開昭 6 0— 2 9 7 0 3号公報の第 8図には、 窪みをアレイ状に整列した金型を用意し、 この金型上に 重合体を堆積して、 マイクロレンズアレイを製造することが開示されている。 さらに、 特開平 5— 1 5 0 1 0 2号公報には、 平板表面に形成したマスク層に, 作製するレンズの個数と同数の円形微細開口を、 作製するレンズの位置に対応し て設け、 開口部を通して平板表面を部分的に化学的エッチングした後、 マスク層 を取除き、 更に化学的エッチングを施すことにより母型 (マザ一) を作製し、 こ のマザ一からマイク口レンズアレイ成型のための金型を得て、 この金型にシート 状のガラスをプレスして (いわゆる 2 P成型法) 、 片面に微小な凸レンズが密に 形成されたマイクロレンズァレイを製造することが開示されている。
通常の樹脂レンズアレイは、 アレイ状に並べた夕一ゲットに光束を集光するこ
とを目的としている。 従って、 レンズピッチ精度は、 ターゲット位置精度と同等 でなければならない。 このようなレンズピッチの精度が要求される場合には、 2 P成型法で製造しなければならなかった。
樹脂正立等倍レンズアレイは、 複写機, ファクシミリ, プリンタなどへの応用 から、 さらには 2次元の画像を空間に結像させる 2次元画像空間伝送装置、 例え ばタツチレススィツチなどへの応用が考えられる。 このような 2次元画像空間伝 送装置のための樹脂正立等倍レンズアレイでは、 3面以上の球面レンズの光軸が そろっていれば、 その目的を達成することができる。 従って、 レンズピッチには、 高い精度は要求されない。
そこで、 本出願の発明者らは、 2 P成型法によらず、 射出成型を利用して樹脂 正立等倍レンズアレイを製造できるのではないかと考え、 射出成型を利用するこ とについて鋭意研究を重ねた。
発明者らが目指した樹脂正立等倍レンズアレイは、 片面あるいは両面にレンズ 径が 0 . 2〜2 . 0 mmの微小球面レンズが規則的に配列されたレンズプレート を、 少なくとも 3個の球面レンズが 1つの光軸上に並ぶように、 すなわち 2枚以 上重ね合わせた構造であって、 作動距離が 1 0 0 mm以下のものである。 したが つて、 樹脂正立等倍レンズアレイを成す光軸方向の球面レンズは、 それぞれの光 軸を同一とし、 かつ複数の光軸は互いに平行である。
前述したように、 特開昭 6 4 - 8 8 5 0 2号公報には、 平面レンズを射出成型 により製造すると記載されているが、 具体的な方法は開示されていない。 また、 特開平 5— 1 5 0 1 0 2号公報には、 マイクロレンズアレイを作製するための N i金型を作製しているが、 この N i金型は、 本願発明が目指す出射成型に用いら れる金型ではない。 また、 ガラスマザ一を作製する場合に、 クロム膜にピンホー ルが発生していると、 ピンホールを通してガラスがエッチングされ、 ピットが形 成される。 このピンホールによるピットは不所望なものであり、 このようなガラ スマザ一により作製される金型は欠陥を含むことになる。
さらに、 レンズプレートを射出成型により作製した場合に、 レンズプレートに 反りが生じる、 さらには成型収縮が生じる。 このような反りおよび成型収縮のあ るレンズプレートを用いて、 いかにして画像のゆがみの無い樹脂正立等倍レンズ
アレイを組み立てるかが問題となる。 発 明 の 開 示
そこで本発明の目的は、 射出成型に用いる欠陥のない金型を作製し、 これを用 いて射出成型により樹脂正立等倍レンズアレイを製造する方法を提供することに ある。
本発明の他の目的は、 このような製造方法により製造された樹脂正立等倍レン ズアレイを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、 上記樹脂正立等倍レンズアレイに用いるレンズプ レート、 およびレンズプレートを射出成型により製造する方法を提供することに ある。
本発明のさらに他の目的は、 このような射出成型に用いる金型およびその製造 方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、 このような金型を製造するためのマザ一およびそ の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、 このようなマザ一を製造するためのマスタ一およ びその製造方法を提供することにある。
本発明の樹脂正立等倍レンズアレイによれば、 まず、 微小球面レンズが規則的 に配列されたレンズプレートを射出成型により作製する際に用いる金型のマスタ 一を作製する。 その作製方法は、 実質的に平行かつ平坦な面を有するガラス基板 を準備する工程と、 前記ガラス基板にエッチング防止膜を形成する工程と、 前記 エッチング防止膜をパターニングし、 前記微小球面レンズに対応する微小開口を 規則的に形成する工程と、 前記パターニングされたエッチング防止膜をマスクと して、 前記ガラス基板を等方性エッチングして、 前記微小開口の下に、 凹状窪み を形成する工程と、 前記パターニングされたエッチング防止膜を剥離する工程と, 前記ガラス基板を、 さらに等方性エッチングして、 前記微小球面レンズに対応す る凹状窪みを形成する工程とを含んでいる。
次に、 このようにして作製したマスタ一を用いて、 金型を作製する。 その作製 方法は、 マスタ一に離型剤を塗布し、 乾燥する工程と、 前記マスターの凹状窪み
のある面上に、 樹脂を滴下する工程と、 前記樹脂を展開させる工程と、 前記樹脂 を硬化させる工程と、 前記マスターを離型する工程と、 前記硬化樹脂および前記 ガラス基板上に、 導電膜を形成する工程と、 前記導電膜上に金属を所定の厚さに メツキする工程と、 前記メツキされた金属を、 前記硬化榭脂および前記ガラス基 板から離型して金型を得る工程とを含んでいる。
次に、 このような金型を用いてレンズプレートを作製する。 その作製方法は、 金型 2個を、 凹状窪みを有する面が向き合うように対向させ、 それぞれをダイセ ットに取り付ける工程と、 対向する金型の間に所定のギャップを設け、 前記ギヤ ップに樹脂を注入する工程と、 前記金型を離型して、 レンズプレートを取り出す 工程とを含んでいる。
次に、 このようなレンズプレートを用いて樹脂正立等倍レンズアレイを作製す る。 その作製方法は、 ώ状の反りを有するレンズプレート 2枚を重ね合わせる際 に、 互いに凸側を対向させて重ね合わせるか、 あるいは凸側が同じ方向に向くよ うに重ね合わせ、 かつ、 樹脂が注入された方向を合わせて重ね合わせる工程と、 クリップ固定部をクリップで固定する工程とを含んでいる。 図面の簡単な説明
図 1 Α〜 1 Ηは、 ガラスマスター ·マザ一を作製する工程を示す図である。 図 2 Α, 2 Βは、 ピンホールを説明するための図である。
図 3 Α〜3 Εは、 マザ一を作製する工程を示す図である。
図 4 A〜4 Cは、 マザ一を用いて N i金型を作製する工程を示す図である。 図 5は、 N iメツキの方法を説明するための図である。
図 6 A , 6 Bは、 射出成型金型を用いてレンズプレートを作製する工程を示す 図である。
図 7は、 射出成型されて作製されたレンズプレートの平面図である。
図 8 A , 8 Bは、 微小球面レンズの配列状態を示す図である。
図 9 A , 9 Bは、 レンズプレートの重ね合わせの方法を説明する。
図 1 0は、 レンズプレートの成型収縮を説明する図である。
図 1 1は、 嵌合凹部と嵌合凸部のクリアランスを説明する図である。
図 1 2 A〜 1 2 Cは、 レンズプレート 2枚を重ねてレンズアレイを組み立てる 工程を示す図である。
図 1 3 A〜 1 3 Cは、 着色プレートを介在させレンズプレート 2枚を重ねてレ ンズアレイを組み立てる工程を示す図である。
図 1 4は、 樹脂正立等倍レンズアレイによる画像の空間伝送を示す図である。 図 1 5は、 本発明による樹脂正立等倍レンズアレイの M T F特性を示すグラフ である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図 1 A〜 1 Hは、 ガラスマス夕一を作製する工程を示す図である。 以下、 工程 を順を追って説明する。
[ 1 ] ガラスマスターの作製
( a ) ガラス基板の準備
図 1 Aに示すように、 研磨された実質的に平行かつ平坦な面をもつガラス基板 1 0を準備する。 このガラス基板 1 0には、 ソーダライムガラスあるいは石英ガ ラスなどを用いることができる。 この実施の形態では、 石英ガラスを使用する。 石英ガラスを使用する理由は、 ガラス中に不純物が含まれると、 後述するように フッ化水素酸溶液中でガラスをエッチングした場合、 ガラス中の不純物が溶液と 反応し、 フッ化物になり、 不水溶性のバリウム, ボロン等のフッ化物は沈殿物を 生成して溶液の循環を阻害し、 またガラス面に付着し、 形成すべきアレイレンズ が同一球面でなくなるからである。
また、 ガラス基板 1 0の厚さは、 1 . 0 mm以上とするのが望ましい。 これは、 後述するようにガラス基板裏面に、 エツチヤントの浸透を阻止してエッチングを 防止する膜 (以下、 エッチング防止膜という) を形成したとしても、 ガラス基板 のエッチングで板厚が減少し、 後工程の樹脂との離型作業でガラス板の破損を防 ぐためである。
( b ) 第 1のエッチング防止膜形成
次に、 図 1 Bに示すように、 石英ガラス基板 1 0の上面に第 1のエッチング防
止膜として、 クロム系膜 (クロム, 酸化クロムの多層膜) 1 2を成膜する。 クロ ム系膜 1 2の厚さは、 1 0 0〜 5 0 0 0 Aとするのが好ましい。 このような厚さ とする理由は、 ガラス表面の研磨剤残り, 突起, ゴミ, 汚れによる膜ピンホール を低減し、 および膜応力によるクラック発生を防止するためである。
( c ) クロム系膜パターニング
次に、 図 1 Cに示すように、 約 2 m厚さのフォトレジスト 1 4を設け、 フォ トマスク (図示せず) を経て露光し、 現像してパ夕一ニングレジストを形成する。 続いて、 反応性イオンエッチングでクロム系膜をエッチングし、 最終レンズ径に よって異なるが、 直径が 3〜 2 0 j mの円形、 あるいは最大径が 3〜 2 0 mの 多角形の開口を形成し、 クロム系膜をパターニングする。
クロム系膜パ夕一ニングに使用したフォトレジスト 1 4は、 除去するが、 第 2 のエッチング防止膜としてクロム系膜上に残しておくこともできる。 というのは、 フォトレジスト 1 4を除去し、 形成されたクロム系膜パターンでガラス基板 1 0 をエッチングした場合、 もし、 クロム系膜 1 2にピンホールがあれば、 そのピン ホールによりガラス基板に不所望な凹状窪みが形成されるからである。 フオトレ ジストを設けたままにしておけば、 ピンホールはフォトレジストにより覆われる ので、 このような不所望な凹状窪みの形成は防止される。
さらに、 フォトレジスト 1 4にピンホールが存在する場合に、 このピンホール によりクロム系膜 1 2にピンホールが形成される可能性を低減するために、 さら に次の工程 (d ) , ( e ) を付加しても良い。
( d ) 第 2のエッチング防止膜上にフォトレジスト塗布
図 1 Dに示すように、 フォトレジストである第 2のエッチング防止膜 1 4上に、 約 2 m厚さのフォトレジスト (ポジ型) 1 6を設ける。
( e ) クロム系膜パターン裏面露光によるレジストパタ一ニング
次に、 図 1 Eに示すように、 フォトレジスト 1 4によってパタ一ニングされた クロム系膜 1 2をフォトマスクとして用いて膜裏面よりフォトレジスト 1 6を露 光する。 もし、 フォトレジスト 1 4にピンホール (≤ 1 m) が発生していれば, 前記 (c ) の工程でクロム系膜にもピンホールが形成されている。 裏面からの光 によりクロム系膜のピンホールを経てフォトレジスト 1 6が露光されるが、 ピン
ホールの径が小さいので露光領域はフォトレジスト 1 6の上面までは拡がらない。 この状況を図 2 A, 2 Bに示す。 図 2 Aはクロム系膜の正しいパターンに対し 裏面より紫外線を照射したときにフォトレジスト 1 6の露光領域 1 8を示す。 露 光領域 1 8は、 フォトレジスト 1 6の上面まで拡がっている。
図 2 Bは、 フォトレジスト 1 4中に存在するピンホール 2 0が原因となって、 クロム系膜 1 2中にもピンホールが発生している場合に、 ピンホールを通った紫 外線によるフォトレジスト 1 6の露光領域 2 2を示す。 露光領域 2 2は、 フォト レジスト 1 6の上面まで達していない。
露光後、 フォトレジスト 1 6を現像すると、 露光領域 1 8のフォトレジスト 1 6は除去されるが、 ピンホール 2 0上のフォトレジスト 1 6は除去されない。 し たがって図 1 Eに示すフォトレジスト 1 6のパターニングは、 所望の形状であり、 次工程において、 必要とするパターン以外のガラスエッチングを防ぐ第 3のエツ チング防止膜になる。
あるいは、 工程 (c ) で形成したフォトレジスト 1 4を剥離した後、 (d ) , ( e ) の工程と同様の工程を付加し、 第 2のエッチング防止膜を形成しても問題 はない。
( f ) 1回目ガラスエッチング
次に、 エッチング防止膜 1 2 , 1 4 , 1 6を形成したガラス基板をエッチヤン トとしてフッ化水素酸溶液に浸潰し、 エッチング防止膜に形成した開口よりガラ ス基板 1 0を等方性エッチングし、 図 1 Fに示すように、 凹状窪み 1 7を形成す る。
エッチング防止膜の開口径を約 5 i mとし、 8 0分程度のエッチングを行った 場合、 形成される凹状窪み径が 1 5 3 mになった。
( g ) エッチング防止膜剥離
次に、 図 1 Gに示すように、 エッチング防止膜 1 2, 1 4 , 1 6を剥離する。
( h ) 2回目ガラスエッチング
次に、 図 1 Hに示すように、 凹状窪みが形成されたガラス基板をフッ化水素酸 溶液に浸潰し、 ガラス基板を等方性エッチングする。 前記の凹状窪み径 1 5 0 mが形成されたガラス基板を 4 2 0分程度、 等方性エッチングした場合、 凹状窪
み径は 6 0 0 m、 深さは 7 4 程度になった。
このとき、 ガラスの厚み低下を防ぐために、 凹状窪みが形成されている面とは 反対側の裏面に、 フォトレジスト, 金属膜などのエッチング防止膜を設けても良 い。
以上のガラスマス夕一の製造方法では、 クロム系膜には反応性イオンエツチン グで微小開口を形成したが、 この方法に限るものではなく、 電磁波であるレーザ 光を照射し、 加熱, 蒸発させることによって微小開口を形成することもできる。 電磁波であるレーザ光は位相のそろった平行光線で、 単色光である。 レーザ光 はこのような性質から、 レンズで集光することによって、 高いエネルギー密度が 得られる。 発振線の波長範囲は約 2 3 0 0人の紫外線から、 0 . 7 mmのサブミ リ波にわたつており、 その種類も 5 0 0本以上ある。
一方、 物質にはエネルギー (波長) 吸収帯があり、 波長吸収帯内の発振波長を もつレーザ光を選択することにより、 物質を加熱することができる (例えば、 レ 一ザマ一カー、 レーザメスなど) 。 したがって、 クロム系膜とガラス基板との波 長吸収帯が異なることを利用し、 ガラス基板には損傷がなく、 エッチング防止膜 の微小球面レンズに対応する部分にのみ微小開口を形成することが可能となる。 次に、 以上のような工程で作製された図 1 Hのガラスマスターを用いて、 マザ —を作製する工程を、 図 3 A〜3 Eを参照して説明する。 なお、 金型の金属とし ては、 N iまたは N i合金を用いることができるが、 以下の例では、 N iを用い る場合について説明する。
[ 2 ] マザ一作製
( a ) 離型剤塗布および乾燥
図 3 Aに示すように、 ガラスマスタ一 3 0を、 フッ素系離型剤 3 2の入った槽 3 4に浸漬し、 ガラスマスターの表面に離型剤の単分子層を塗布する。 これは、 後工程の離型工程で離型性を良くし、 ガラスの破損を防ぐためである。 離型剤を 塗布後、 乾燥する。
( b ) 樹脂滴下
次に、 図 3 Bに示すように、 樹脂 3 6を、 ガラスマスタ一 3 0上に、 ディスぺ ンサ一により、 泡の巻き込みがないように滴下する。
樹脂 36は、 次のような特性の UV硬化樹脂を用いる。 すなわち、 硬化収縮率 : 6 %以下、 粘度: 1 00〜2000 c P (a t 25° ) 、 硬化後硬度: H〜 5H、 接着強度: 5 KgZ 6 mm φ以上 (ガラス/ガラス, 1 00 im厚) であ る。
UV硬化樹脂以外では、 熱硬化樹脂, 2液性硬化樹脂などを用いることもでき る。
(c) 樹脂展開および UV硬化
次に、 図 3 Cに示すように、 滴下した UV硬化樹脂 36展開するために樹脂上 にガラス基板 38を上方より載せる。 ガラス基板 38は、 平坦度が良く、 後述す る N iメツキ時に発生する応力に変形しないよう、 0. 3mm以上の厚さとする。 ガラス基板 38を樹脂 36の上から降ろしていき、 樹脂とガラス基板とが接し た後は、 圧力をかけ、 樹脂展開を行うが、 そのときの圧力は、 レンズパターン部 以外の樹脂厚みに依存するが、 5〜 1 0 m厚の場合 50〜 1 00 k gZcm2 程度が望ましい。 また、 展開泡巻き込み防止のために、 1 0 zmZs e c以下の 押圧速度で展開する。
次に、 樹脂 36を硬化させるために、 波長300〜400 11111, エネルギー 4 O O OmJ /cm2 の UV光にさらした。
(d) 離型
次に、 図 3Dに示すように、 ガラスマスター 30を、 周辺を開き、 エア一によ り離型する。 図 3 Eに示すように、 マザ一 40が得られる。
次に、 以上のような工程で作製されたマザ一 40を用いて N i金型を作製する 工程を図 4を参照して説明する。
[3] N i金型作製
(a) 導電膜の成膜
図 4 Aに示すように、 マザ一 40の樹脂 36上に導電膜 42を付着させる。 導 電膜は、 例えば N iの無電解メツキで形成することができる。
(b) ニッケル金型作製
次に、 図 4Bに示すように、 導電膜 42上に N iメツキを行う。 このメツキは、 次のように行う。 すなわち、 図 5に示すように、 電解液 (N iメツキ液) 44を
ヒータ加熱し、 適温に保つ。 そして、 陽極側に電着 (メツキ) させようとする N iペレットを、 陰極側に被電着物であるマザ一 40を接続する。 通電すると陽極 側の N iが溶けだし、 陰極側に析出する。 その結果、 マザ一の導電膜 42上に N iメツキ 46が形成される。 N iメツキの厚みは、 射出成型時の金型としての剛 性を保っために、 0. 3 mm以上にする。
(c) 離型および外周加工
次に、 図 4 Cに示すように、 N iメツキ 46を離型し、 離型された N i金型を 射出成型金型として、 ダイセットに取り付けるために、 面取り, 角取り等、 外周 を加工する。
N i金型の作製は、 上記の例に限られるものではなく、 次のようにして作製す ることができる。 すなわち、 ガラスマスター 30の凹状の窪みのある面上に N i の無電解メツキで導電膜を形成する。 これをマザ一として、 前記 (b) , (c) で説明した工程と同様にして N iメツキにより N i金型を作製する。
次に、 以上のような工程で作製された射出成型金型を用いてレンズプレー卜を 作製する工程を図 6 A, 6 Bを参照して説明する。
[4] 射出成型
(a) 金型取り付け
図 6 Aに示すように、 前記工程で作製された N i金型 2個をパターン面が向き 合うように対向させてダイセット (図示せず) にそれぞれ取り付ける。 一方の金 型 50は固定し、 他方の金型 52は可動に取り付ける。 この場合、 表裏芯ズレ公 差 (パターン面の回転を含む) は土 50 mであり、 2個の金型間のギャップ公 差は ± 50 imである。 これら公差内におさまるように、 可動側の金型 52の取 り付け位置を調節する。
(b) 射出成型
このようにして取り付けられた 2個の金型のギャップに成型樹脂 54を射出注 入する。 成型樹脂は、 アクリル系榭脂であり、 その耐熱, 耐温性は適宜選ぶこと ができる。 樹脂の温度は、 約 250° ( 250° 以下が望ましい。 250° を越 えると、 樹脂が変色するため。 ) 、 金型の温度は約 80° とする (1 00° 以下 が望ましい。 1 00° を越えると、 金型が変形するため。 ) 。
( b ) 樹脂の射出注入が終わると、 図 6 Bに示すように、 金型を離型して、 成型 されたレンズプレート 5 6を取り出す。 射出成型の場合、 金型通りに成型できる のはまれであり、 レンズプレートはどちらかに凸状に反る。
図 7に、 射出成型されて作製されたレンズプレート 5 6の一例の平面図を示す。 レンズパターン部は、 図示を省略してある。 このレンズプレート 5 6は、 外形寸 法が 1 4 O mm x 1 1 O mmの矩形状であり、 この矩形状の領域の中に、 径が約 6 0 0 ^ m, 高さが約 7 4 ; m、 曲率半径が約 6 4 7 mのレンズが並び、 プレ ート厚みは、 約 1 . 7 4 mm、 レンズ厚 (表裏のレンズの頂点間の距離) は、 約 1 . 8 8 mmである。 プレートの周縁 6箇所に、 厚みの薄いクリップ固定部 5 8 が設けられている。 また、 片面四隅には、 ァライメント用の嵌合凸部 6 0 , 嵌合 凹部 6 2がそれぞれ 2個ずつ設けられている。 これら嵌合凸部, 凹部の位置精度 は、 ± 1 0 0 i mである。 なお、 これらクリップ固定部、 嵌合凸部, 凹部は、 射 出成型時に同時に成型されている。
以上の例では、 両面に球面レンズが形成されたレンズプレートを射出成型した が、 片面のみに球面レンズを有するレンズプレー卜と形成する場合には、 一方の 金型を、 凹状窪みを有さない平坦な金属板とする。 例えば、 N i板とすることが できる。
図 8 A , 8 Bは、 両面に球面レンズが形成されたレンズプレートにおける球面 レンズの配列状態を示す。 図 8 Aは、 レンズプレート 6 4の面に垂直な方向に、 両面の球面レンズ 6 5の光軸 6 6がー致する配列状態を示す。 図 8 Bは、 レンズ プレート 6 7の面に斜めの方向に、 両面の球面レンズ 6 5の光軸 6 8がー致する 配列状態を示す。
以上のようにして射出成型されたレンズプレートの微小球面レンズのある表面 に反射防止膜を設けるのが好適である。 反射防止膜は、 例えばスパッ夕, 蒸着, 浸漬などによって S i〇2 膜を形成することにより実現される。
また、 射出成型されたレンズプレートの微小球面レンズのある表面に吸水防止 膜を設けるのが好適である。 吸水防止膜は、 例えば T i〇2 , I T〇などをスパ ッ夕, 蒸着, 浸漬などによって形成することにより実現される。
以上の反射防止膜および吸水防止膜のいずれも、 レンズプレートの材料の屈折
率より小さい屈折率を有することが必要である。
次に、 レンズプレート 2枚を重ね合わせてレンズアレイを組み立てる工程を説 明する。
[ 5 ] 組立
レンズプレートの重ね合わせの方法について説明する。 射出成型によりレンズ プレートを形成した場合に、 および成型収縮を生じることについては既に説明し た。
反りを矯正して画像のゆがみのない樹脂正立等倍レンズアレイを組み立てるに は、 図 9 A, 9 Bにそれぞれ示すように、 2枚のレンズプレート 6 6 , 6 7を、 互いに凸側を対向させて重ね合わせるか、 あるいは凸側が同じ方向に向くように 重ね合わせる。 凸側が同じ方向に向くように重ね合わせる場合には、 反りの大き い方のレンズプレートの凸側と他方のレンズプレートの凹側とを対向させて重ね 合わせることが重要である。 というのは、 重ね合わせたときに、 レンズプレート 間に空隙ができるのは適切でないからである。
重ね合わせた後、 後述するようにレンズプレートの周辺をクリップで固定する ことにより反りを矯正している。
また、 成型収縮のあるレンズプレートを用いて、 画像のゆがみの無い樹脂正立 等倍レンズアレイを組み立てるには、 次の点に注意することが必要である。 すな わち、 図 1 0に示すように、 レンズプレートの成型収縮は、 ゲート (図示せず) から樹脂が注入される方向 (矢印 Cで示す) に対し、 ほぼ対称に分布する。 すな わち、 図 1 0において樹脂が注入される方向の中心軸を Dとした場合に、 軸 D (点線で示す) を対称軸としてほぼ対称に、 成型収縮は分布する。 図 1 0には、 成型収縮の方向と量を矢印で示している。
このような成型収縮は、 成型されたレンズプレートについていずれも同程度の 収縮量であるため、 2枚のレンズプレートの重ね合わせ方によって、 球面レンズ の光軸をそろえることができる。
今、 図 6 Bにおいて、 同一の金型により成型されたレンズプレートの面を、 ゲ —ト側を一致させて重ね合わせる。 すなわち、 2枚のレンズプレートは、 樹脂の 流入方向を合わせて重ね合わせる。 このような重ね合わせによれば、 成型収縮の
影響がなくなり正立等倍像が得られる。 それ以外の重ね合わせでは、 成型収縮の 影響により、 2枚のレンズプレー卜の球面レンズの光軸がずれる結果、 画像がゆ がみ、 正立等倍像が得られない。
以上のようにして 2枚のレンズプレートを重ね合わせるが、 正立等倍レンズァ レイを実現するには、 3面以上の球面レンズの光軸がそろう必要がある。 したが つて 2枚のレンズプレートの一方は両面に微小球面レンズが形成されているもの を、 他方は少なくとも片面に微小球面レンズが形成されているものを用いること になる。 したがって、 3面以上の微小球面レンズの光軸をそろえるためには、 2 枚のレンズプレートのァライメントが重要になる。 このために、 図 7に示したよ うに、 レンズプレートの片面四隅には、 ァライメント用の嵌合凸部 6 0, 嵌合凹 部 6 2がそれぞれ 2個ずつ設けられている。 これら凸部, 凹部の嵌合により 2枚 のレンズプレートのァライメントを行うことができる。
図 1 1に示すように、 凸部 6 0の直径と凹部 6 2の内径との間にクリアランス Xを設け、 まず凸部を凹部に嵌合させる粗ァライメントを行い、 続いて 2枚のレ ンズプレートの光軸が一致するようにクリアランス Xの範囲内で精密ァライメン トを行うようにしてもよい。 この場合、 クリアランス Xは、 微小球面レンズ 1個 の範囲内で調整できるように設定される。
図 1 2 Aは、 重ね合わせされる 2枚のレンズプレート 5 6, 5 7を示す。 これ ら各レンズプレートは、 微小球面レンズがある領域以外の部分に、 微小球面レン ズの高さと同等の隆起部 7 6が設けられている。 隆起部は、 レンズ頂点間の距離 を調節するためのものであり、 レンズ頂点間の距離は、 レンズ頂点間がレンズ径 の 1 1 0以上離れると、 画像が劣化するので、 レンズ頂点間の距離の調節は、 極めて重要である。
これらレンズプレートを重ね合わせ、 凸部 6 0, 凹部 6 2の嵌合によりァライ メントした後、 図 1 2 Bに示すように、 サイドよりステンレスまたは鉄系の材料 よりなるクリップ 8 0を、 クリップ固定部 5 8に差し込み、 図 1 2 Cに示すよう にクリップ 8 0で固定する。 隆起部 7 6は、 微小球面レンズの高さと同等である ので、 微小球面レンズの頂点近傍同士が接触することとなる。
次に、 2枚のレンズプレート 5 6, 5 7を重ね合わせるときに、 間に着色スぺ
—サを介在させる例について説明する。
図 1 3 Aに示すように、 2枚のレンズプレート 5 6 , 5 7を、 金属または樹脂 よりなる着色スぺ一サ 7 0を介在させて重ね合わせる。 着色スぺ一サ 7 0は、 レ ンズプレートの球面レンズに対応した開口 7 2および嵌合凸部に対応した開口 7 4が設けられている。 この着色スぺーザの目的は、 ( 1 ) 球面レンズ外を通過す る迷光を遮断する、 (2 ) レンズプレー卜間の距離を、 その厚みで保持すること により、 レンズ頂点間の距離を調整する、 (3 ) レンズプレートの反りの矯正に 寄与する、 (4 ) 2枚のレンズプレートの調芯を行うことにある。 着色スぺーサ の厚みは、 球面レンズ高さ X 2に同等である。 色彩は、 黒色艷消しとした。
2枚のレンズプレート 5 6, 5 7は、 上記した着色スぺーサ 7 0を間に挟んで、 凸部 6 0を凹部 6 2に嵌合させて、 ァライメントを行う。 次に図 1 3 Bに示すよ うにクリップ 8 0をクリップ固定部 5 8に差し込み、 図 1 3 Cに示すように、 サ イドよりクリップ 8 0で固定する。 クリップで固定することにより、 2枚のレン ズプレートの対向する微小球面レンズの頂点間の間隔が一定に保たれる。
さらに、 着色スぺーザの厚みが、 微小球面レンズの高さの 2倍よりも薄い場合、 レンズプレートの周縁をクリップ固定すると、 2枚のレンズプレートの対向した 微小球面レンズ高さよりも、 着色スぺーサを介した 2枚のレンズプレートの周縁 の間隔の方が狭くなるため、 2枚のレンズプレートの対向した微小球面レンズ領 域の最外周同士が支点となり、 2枚のレンズプレートの対向した微小球面レンズ 領域の中心付近の 2枚のレンズプレートの対向する微小球面レンズの頂点間の間 隔が一定に保たれなくなる。 したがって、 着色スぺーサ厚みを含めた、 対向する 2枚のレンズプレートの周縁の間隔が対向する微小球面レンズの高さの 2倍程度 になるように、 レンズプレートの周縁に隆起部を設けてその高さを調整すること が重要である。
このような着色スぺーザが樹脂レンズプレート間にあると、 着色スぺーサと樹 脂レンズプレートとの熱膨張率が異なるので、 着色スぺ一ザと樹脂レンズプレー トとの間に熱膨張係数差による応力が発生する。 このような応力の発生は、 微小 球面レンズの光軸にずれを生じさせるので望ましくない。 したがって着色スぺー ザの熱膨張係数を次式を満たすように選定することが重要である。 すなわち、 レ
ンズプレート材料の熱膨張係数を 0! 1、 着色スぺ一サ材料の熱膨張係数を 0! 2、 レンズプレートのレンズ領域の長辺方向の距離を L、 レンズの最短ピッチを P、 および使用温度範囲を Tとしたとき、
α 2≤ α 1 + 0. 5 X Ρ/ (Τ X L)
である。 ここで係数 0. 5は、 レンズ領域の長辺方向の一端での微小球面レンズ の光軸と着色スぺーザの開口の中心が一致し、 レンズ領域の長辺方向の他端での 微小球面レンズの光軸と着色スぺ一サの開口の中心とのずれを半ピッチ以下にす るための係数である。
例えば、 レンズプレートの熱膨張係数 ο; 1 = 7 X 1 0-5 (アクリル) 、 長辺方 向長さ L= 1 20mm、 レンズピッチ P=0. 6 mm、 使用温度範囲 T = 30で とすると、 着色スぺ一サの熱膨張係数は α 2≤ 1. 53 X 1 0— 4の材料を選定で きる。 一例としてステンレス (a l≤ l . 28 X 1 0"6) を用いることができる。 以上はクリップのみによる固定であつたが、 接着剤と併用してもよい。 この場 合には、 嵌合凹部に接着剤 (溶剤でも可) を流し込む。 そして、 これら嵌合凸部, 凹部を嵌合させて、 ァライメントを行い、 嵌合凸部および嵌合凹部の表面を押し、 2枚のレンズプレートを仮固定する。 サイドよりクリップ 80を、 クリップ固定 部 1 8に差し込み、 クリップ 80で固定する。 このように、 クリップと接着剤と を併用して固定することも可能であるが、 この場合には、 レンズプレートと着色 スぺーサとは接着しないようにすることが必要である。
図 14は、 本発明により製造された樹脂正立等倍レンズアレイ 82により、 物 像画面像を、 空間伝送し、 空間上に画像を結像した状態を示す。 Lは、 空間距離 である。
図 1 5に、 空間距離 Lを 1 0〜 1 0 Ommの範囲内で 1 Omm単位で変化させ、 そのときの樹脂正立等倍レンズアレイの光学特性である MTF (Mo d u 1 a t i o n T r a n s f e r Fu n c t i o n) を、 空間周波数 1 L p/mmの 矩形波で測定した実測値を示す。 MF F 20 %は、 人間の感知できる限界である。 レンズ径が 0. 3〜 1. Ommで、 空間距離 20〜 10 Ommの樹脂正立等倍レ ンズアレイは、 良好な MTF値が得られていることがわかる。 このように、 本発 明の樹脂正立等倍レンズアレイによれば、 画質の良い像面画像が得られる。
以上に、 本発明の実施の形態を説明したが、 本発明は上述した実施の形態に限 定されるものではなく、 当業者であれば本発明の範囲内で種々の変形, 変更が可 能なことは明らかであろう。 産業上の利用の可能性
本発明によれば、 樹脂正立等倍レンズアレイを、 射出成型によりレンズプレー トを作製し、 2個のレンズプレートを組み立てることにより、 極めて簡単に一定 品質のものを安価に製造することが可能となった。