JP4494669B2 - プラスティック成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスティック成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来技術において、複数のレーザ光線から出射された各ビームを偏向手段及び結像手段を介してそれぞれ感光体上に導き、該感光体上にて画像情報に応じて画像形成する多色画像形成装置の光走査装置が存在する。
【0003】
このような多色画像形成装置の光走査装置に関し、近年、多色画像形成装置の高速化、高画質化に対応するために、4つの感光体ドラムを出力紙の搬送方向に配列させ、各感光体ドラムに対応したビームで同時露光し、各々異なる色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の現像器で現像した画像を順次、転写し、重ね合わせてカラー画像を形成するデジタル複写機やレーザプリンタが実用化されている。
【0004】
このような画像出力機にて光走査する際、複数の走査手段が用いられるが、その走査手段を配置するために大きなスペースが必要になり、装置全体が大型化することから、特開平4−127115号公報に開示されているように、複数のビームを単一の偏向器に入射して走査し、結像レンズを積み重ねて配置する方法が提案されている。
【0005】
さらに、特開平10−148777号公報では、特開平4−127115号公報の欠点を補うために、複数のビームを単一の偏向器に入射して走査し、各々対応する感光体に結像させる結像手段を各ビーム毎に設け、該結像手段を構成する結像素子を副走査方向に層状に重ねて一体的に構成する方法が提案されている。
【0006】
特開平10−148777号公報では、結像素子を副走査方向に層状に重ねて一体的に構成することにより、偏光手段(ポリゴンミラー)を重ねる間隔が短縮でき、あるいは1枚のポリゴンミラーで兼ねることも可能となるため、ポリゴンミラーを回転させるためのモータの負荷を軽減でき、小型化も可能となるとしている。
【0007】
また、結像素子を副走査方向に層状に重ねて一体的に構成する手段としては、各ビームに対応した結像素子を接合(接着)により一体化する手段(以下、第1の手段という)や層状に重ねた結像素子を樹脂により一体成形で形成する手段(以下、第2の手段という)がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記第1の手段のように、結像素子を接合により一体化する場合、結像素子の接合面に高い平面度が要求されるため、特に、結像素子間で平面度がばらつくと、接合後の結像素子間の配置精度が安定しないという問題が生じる。また、第1の手段では、接着剤塗布量のばらつきに対して敏感になり、少ないと接着強度が低下し、多いと余分な接着剤が接合部から外部に漏れ出たり、あるいは層状に重ねる方向の厚みが変わり、配置精度が悪くなるといった不具合も生じる。
【0009】
そこで、結像素子の接合面に凸部または凹部を設けて接合面積を制限する方法が考えられるが、結像素子がレンズの場合、段差があるとそこを起点に内部歪みが発生し、光学性能を悪化させてしまう。
【0010】
また、第2の手段のように、結合素子を一体成形で製造する場合、各結像素子の配置精度は金型精度で決まるため高いものが得られるが、厚肉な成形品の転写面を高精度に、かつ内部が均質になるように成形するためには、かなり高度な成形技術が必要となる。
【0011】
これは、前記結像素子を射出成形法で製造する場合、加熱溶融された樹脂材料を金型内に射出充填し、冷却工程で金型内の樹脂圧力や樹脂温度が均一になることが、所望の形状精度を確保するために望ましい。しかし、厚肉形状の場合には、樹脂の冷却過程で体積収縮が大きいためにひけが発生しやすい。このひけを防止するために樹脂充填圧力を高くすると、内部歪みが大きくなり、光学性能に悪影響を及ぼすといった不具合が生じる。
【0012】
また、厚肉になると成形時の冷却時間が長くなり、厚みが2倍になれば冷却時間は2倍以上になるため、接合の方が一体成形より安価に製造できることになる。
【0013】
従って、本発明は上記問題に鑑みなされたもので、接合での不具合を解消して、配置精度の高い、低コストなプラスティック成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
係る目的を達成するために、本願発明は、所定の方法で形成した凹部を含む面と、前記凹部を含む面以外の面(以下、前記凹部を含む面以外の面を転写面という。)と、を有するプラスティック成形品を層状に重ねて、接合により一体的に構成することを特徴としている。
【0015】
これにより、請求項1記載の発明では、接合での不具合を解消して、配置精度の高い、低コストなプラスティック成形品を製造することが可能となる。
【0016】
さらに、請求項1記載の発明は、所定の方法が、凹部を含む面を形成するキャビティ駒に少なくとも1つ以上の通気口と、通気口に連通して成形品に圧縮気体を付与する少なくとも1つ以上の連通口と、が設けられ、転写面及びキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持する金型加熱保持工程と、キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する溶融樹脂充填工程と、転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を転写面に密着させる樹脂加圧工程と、樹脂を軟化温度以下に冷却する際に、通気口からキャビティ内の樹脂に圧縮気体を付与して、樹脂と通気口が設けられたキャビティ駒との間に空隙を画成する空隙画成工程と、を有することを特徴としている。
【0017】
これにより、請求項1記載の発明では、低歪みで、且つ転写面の形状精度を確保したプラスティック成形品を製造することが可能となる。
【0018】
さらに、請求項2記載の発明は、所定の方法が、凹部を含む面を形成するキャビティ駒の一部が摺動自在に設けられ、転写面及びキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持する金型加熱保持工程と、キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する溶融樹脂充填工程と、転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面に密着させる樹脂加圧工程と、樹脂を軟化温度以下に冷却する際に、キャビティ駒を樹脂から離隔するように摺動して、樹脂と前記キャビティ駒との間に空隙を画成する空隙画成工程と、を有することを特徴としている。
【0019】
これにより、請求項2記載の発明では、低歪みで、且つ転写面の形状精度を確保したプラスティック成形品を製造することが可能となる。
【0020】
さらに、請求項3記載の発明は、層状に重ねたプラスティック成形品の接合面のうち、どちらか一方、又は、両方に、凹部を含むことを特徴としている。
【0021】
これにより、請求項3記載の発明では、例えば、接着剤により接着をする場合、余分な接着剤が凹部に流れ込み、接着剤が接着面の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、請求項3記載の発明では、余分な接着剤により、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい、配置精度が下がる等の不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0022】
更に、請求項4記載の発明は、凹部を含む面内の一部、又は、全部を、接合面とすることを特徴としている。
【0023】
これにより、請求項4記載の発明では、例えば、接着剤により接着をする場合、余分な接着剤が凹部に流れ込み、接着剤が接合面の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、請求項4記載の発明では、余分な接着剤により、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい、配置精度が下がる等の不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0024】
更に、請求項5記載の発明は、凹部を、接合面とすることを特徴としている。
【0025】
これにより、請求項5記載の発明では、例えば、接着剤により接合をする場合、接着剤が接合面の外部に漏れ出る不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0026】
更に、請求項6記載の発明は、接合面を、接着剤により接合することを特徴としている。
【0027】
これにより、請求項6記載の発明では、接合面が接着剤により接合される場合において、余分な接着剤が凹部に流れ込み、接着剤が接合面の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、請求項6記載の発明では、余分な接着剤により、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい、配置精度が下がる等の不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0028】
更に、請求項7記載の発明は、接着剤が、光硬化型接着剤であることを特徴としている。
【0029】
これにより、請求項7記載の発明では、接着剤の硬化のタイミングを制御でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0030】
更に、請求項8記載の発明は、接合面を、超音波溶着により接合することを特徴としている。
【0031】
これにより、請求項8記載の発明では、接着剤等の溶剤を使用とすることなく、配置精度の高いプラスティック成形品を、低コストで得ることが可能となる。
【0032】
更に、請求項9記載の発明は、プラスティック成形品において、接合面以外の面の一部に、接合時の位置決め用の突起を設け、突起に基づいて、プラスティック成形品の位置を決定することを特徴としている。
【0033】
これにより、請求項9記載の発明では、重ねるプラスティック成形品同士の位置決めが容易となり、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0034】
更に、請求項10記載の発明は、プラスティック成形品において、接合面の一部に、接合時の位置決め用の凹凸を設け、凹凸に基づいて、プラスティック成形品の位置を決定することを特徴としている。
【0035】
これにより、請求項10記載の発明では、重ねるプラスティック成形品同士の位置決めが容易となり、また、プラスティック成形品のみで位置決めが可能となるため、位置決め用の冶具を使用することなく、配置精度の高いプラスティック成形品を低コストで得ることが可能となる。
【0036】
更に、請求項11記載の発明は、転写面のうち少なくとも1面を、光学鏡面として形成することを特徴としている。
【0037】
これにより、請求項11記載の発明では、転写面のうち、少なくとも1面が光学鏡面である場合でも、低歪みで、且つ高い形状精度と配置精度とが実現されたプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0038】
【発明の実施の形態】
〔本発明の特徴〕
以下に本発明の特徴を先に述べる。
【0039】
本発明は、1つ以上の転写面と、該転写面以外の面の一部に所定方法で形成した凹部を有するプラスティック成形品を層状に重ねて、接合により一体的に構成したことを特徴としている。
【0040】
更に、本発明は、上記の凹部を形成する方法として、該凹部を含む面を形成するキャビティ駒に少なくとも1つ以上の通気口と、該通気口に連通して成形品に圧縮気体を付与する少なくとも1つ以上の連通口を設け、該連通口には金型外部に設けた圧縮気体供給装置を連結し、転写面及びキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を準備し、該金型を樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填し、次いで、前記転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面に密着させた後、該樹脂を軟化温度以下に冷却するときに、前記通気口からキャビティ内の樹脂に圧縮気体を付与して、樹脂と前記通気口が設けられたキャビティ駒の間に強制的に空隙を画成する工程を有している。
【0041】
また、上記の凹部を形成する方法としては、該凹部を含む面を形成するキャビティ駒の一部が摺動自在に設けられ、転写面およびキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を準備し、該金型を樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填し、次いで、前記転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面に密着させた後、該樹脂を軟化温度以下に冷却するときに、前記摺動自在に設けられたキャビティ駒を樹脂から離隔するように摺動して、樹脂とキャビティ駒の間に強制的に空隙を画成する工程としてもよい。
【0042】
更に、上記において、接合面のうちどちらか一方、もしくは両方が、前記凹部を含む面であることを特徴としている。
【0043】
更に、上記において、凹部を含む面内の一部に形成された転写面を、接合面とすることを特徴としている。
【0044】
更に、上記において、凹部を、接合面とすることを特徴としている。
【0045】
更に、上記において、接合面が、接着剤により接合されたことを特徴としている。
【0046】
更に、上記において、接着剤が光硬化型接着剤により接合されたことを特徴としている。
【0047】
また、上記の接合面が、超音波溶着により接合されたとしてもよい。
【0048】
更に、接合面以外の面の一部に、接合時の位置決め用の突起を設けたことを特徴としている。
【0049】
又は、接合面の一部に、接合時の位置決め用の凹凸を設けてもよい。
【0050】
更に、上記において、転写面のうち少なくとも1面が光学鏡面の光学素子であることを特徴としている。
【0051】
このような特徴を有する本発明によるプラスティック成形品の製造方法を好適に実施した形態について、以下に図面を用いて詳細に説明する。
【0052】
〔一実施形態〕
まず、本発明の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0053】
ここで、本実施形態では、2層式のプラスティック成形品について説明するが、本発明はこれに限定されず、種々変形されるものである。即ち、本発明の主題は、1つ以上の転写面と、該転写面以外の面の一部に所定方法で形成した凹部を有するプラスティック成形品を層状に重ねて、接合により一体的に構成することにある。従って、層数を3層以上とした場合でも、その層間ごとに接合をすることができるため優位性は失われない。また、同様に転写面形状に関しても、平面、凹面、凸面、球面、非球面、自由曲面など面形状に依らず適用可能である。
【0054】
まず、図1を用いて、接合する前のプラスティック成形品の形状と形成方法について説明する。
【0055】
上記の特徴に示すように、本発明は、1つ以上の転写面1と、該転写面以外の面の一部に所定方法で形成した凹部2を有するプラスティック成形品3を層状に重ねて、接合により一体的に構成するものである。
【0056】
(凹部を形成する方法)
・圧縮気体により凹部を形成する方法
ここで、成形品3に圧縮気体を付与することで(成形時の不完全転写により)凹部2を形成する方法について、以下に図2及び図3を用いて詳細に説明する。
【0057】
本凹部を形成する方法では、図2及び図3に示すように、凹部2を含む面を形成するキャビティ駒6に少なくとも1つ以上の通気口5と、該通気口5に連通して成形品3に圧縮気体を付与する少なくとも1つ以上の連通口5’を設け、該連通口5’には金型4外部に設けた圧縮気体供給装置(図示せず)を連結し、転写面1およびキャビティ駒6によって少なくとも1つ以上のキャビティ(成形品3の形成部)が画成された一対の金型4を準備する。
【0058】
そして、この金型4を樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する。次いで、前記転写面1に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面1に密着させた後、該樹脂を軟化温度以下に冷却する。このときに、前記通気口5からキャビティ内の樹脂に圧縮気体を付与して、樹脂と前記通気口5が設けられたキャビティ駒6との間に強制的に空隙を画成することにより、凹部2が形成される。
【0059】
つまり、樹脂とキャビティ駒6との間に強制的に空隙が画成されることで、空隙に面した樹脂部分の樹脂面が自由面となり、他の金型4に接した面よりも動き易くなる。この結果、冷却によって生じる収縮はこの部分の樹脂が動くことによって吸収され、空隙に面した樹脂部分が優先的にひけて、転写面1にひけが生じることを防止することができる。また、内部歪みも緩和することができる。
【0060】
ここで、前記通気口5を任意の形状に配置、配列することにより凹部2を形成する領域を制御することができ、上述の特徴にあるように、「凹部を含む面内の一部に転写面を形成する」ことができる。
【0061】
・摺動により凹部を形成する方法
次に、上記の方法とは異なり、成形品3の前記凹部2を含む面を形成するキャビティ駒6の一部を摺動させることで(成形時の不完全転写により)凹部2を形成する方法について、以下に図4及び図5を用いて詳細に説明する。
【0062】
本凹部を形成する方法では、図4及び図5に示すように、該凹部2を含む面を形成するキャビティ駒6の一部が摺動自在に設けられ、転写面1及びキャビティ駒6によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型4を準備する。
【0063】
そして、この金型4を樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する。次いで、前記転写面1に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面1に密着させた後、該樹脂を軟化温度以下に冷却する。このときに、前記摺動自在に設けられたキャビティ駒6(摺動する部材8)を樹脂から離隔するように摺動して、樹脂とキャビティ駒6との間に強制的に空隙7を画成することにより、凹部2が形成される。
【0064】
これは、低圧低充填で成形を行い、非転写面1にひけを誘導し、内部歪みを低減しながら転写面1の形状精度を確保する方法である。
【0065】
また、本成形品3は、射出成形法のほか、射出圧縮成形法、ガスアシスト成形法など様々なプラスティック成形法を用いて作製することができるが、特に厚肉、偏肉なプラスティック成形品を効率よく生産できる点と、任意の位置にひけを形成しやすいという点から射出成形法が望ましい。
【0066】
また、射出成形法では、樹脂充填直後に表層部は固化し、内部は溶融状態となっているため、樹脂と金型キヤビティ壁面の離隔によって不完全転写面、いわゆる「ひけ」を容易に形成することができる。また、内部歪みも緩和することができる。
【0067】
ここで、摺動するキャビティ駒6(摺動する部材8)が任意の形状をしていることにより凹部2を形成する領域を制御することができ、上記の特徴にあるように、「凹部を含む面内の一部に転写面を形成する」ことができる。
【0068】
(接合する方法)
・次に、上記のように形成した成形品3を接合する方法について、以下に図面を用いて詳細に説明する。
【0069】
この方法で、問題となるのがどこを接合面とするかである。
【0070】
まず、接合面のうちどちらか一方、もしくは両方が、凹部2を含む面である場合の方法を図6を用いて説明する。
【0071】
ここで、上述の特徴にある、凹部2を含む面内の一部に形成された転写面1を接合面9とする方法では、図7の(a)に示すように、図1の側面斜線部以外を接合領域とすることになる。また、凹部2を接合面9とする方法では、図7の(b)に示すように、図1の側面斜線部を接合領域とすることになる。さらに、図7の(c)に示すように、その両方を接合面9とする場合もある。ここで、図7は図6を上から見た図を示している。
【0072】
・接着により接合する方法
以下に、上記のような場合に、各成形品3を接着により接合する方法について説明する。ここで、接着剤の種類としては、合成ゴム系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤などが考えられる。但し、接着剤を使用する場合には、プラスティック成形品の使用環境に応じて、引っ張りせん断強度、線膨張係数などに留意して、接着剤の種類を選別しなければならない。
【0073】
また、接着剤を塗布する領域(接着剤添付領域)10としては、上述の特徴にある、凹部2を含む面内の一部に形成された転写面1を接合面9とする場合には、図8の(a)に示すような前記転写面1全面に塗布をする方法、また、図8の(b)に示すような前記転写面1の一部に塗布する方法、更に、図8の(c)に示すような前記凹部2を囲むように塗布する方法などがある。ここで、図8の(c)のように凹部2を囲むように塗布することで、余分な接着剤が凹部2に流れ込んでしまい、接着剤が接合面9の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、図8の(c)に示す方法では、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい配置精度が下がるなどの不具合を防止することも可能となる。
【0074】
また、上述の特徴に示したように、接着剤として光硬化型接着剤12を使用することで、接着剤の硬化のタイミングを制御することができるため、正確な位置決めをした後、光源11より光を照射し、光硬化型接着剤12を硬化させることで、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることができる。この方法を図9に示す。但し、図9に示す場合では、当然、透明な材料で成形品3を形成する必要がある。
【0075】
・超音波溶着により接着する方法
また、上記の方法とは異なり、超音波溶着による接合について、以下に図10を用いて説明する。
【0076】
この超音波溶着とは、超音波により接合部表面の樹脂を溶解し、再び固化させることで樹脂の接合をする方法である。超音波の発生と検出には、振動装置13として、水晶振動子・電歪振動子・磁歪振動子などを用いるとよい。また、振動装置13と成形品3との間は工具ホーン14等により連結させることで、超音波を効率的に成形品3に伝達することが可能となる。
【0077】
この超音波溶着は、他の溶着に比べてバリの発生が少なく、また接着剤などの溶剤を使用することなく、溶着部15を接合でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることができる方法である。
【0078】
(位置決め用の突起を有する場合)
次に、成形品3に位置決め用の突起17を設ける場合について、以下に図11を用いて説明する。
【0079】
・位置決め用の冶具を用いる場合
図11は、上記の特徴にもあるように、接合面以外の面の一部に位置決め用の突起17を設ける場合の例を示す図である。この場合は位置決め用の冶具16に基づいて、接合し合う成形品3の位置決めをしている。
【0080】
・成形品に凹凸を設ける場合
また、上記のように、接合し合う成形品3の位置を決めるための冶具を用いず、2つ(3つ以上でもよい)の成形品3を接合する場合を図12に示す。図12では、上述の特徴にも記述したように、接合面の一部に位置決め用の凹凸18が設けられている。
【0081】
このように、互いに接合する成形品3の接合面の一部に位置決め用の凹凸18を設けることで、成形品3同士を位置決めすることができるため、位置決め用の冶具16を必要としない。
【0082】
ここで、突起、凹凸は位置決めをすることが目的であるため、突起、凹凸の形状、大きさは任意に設計することができる。また、突起を受ける冶具側の凹部2に関しても、必要な位置決めができる範囲においては、任意に設計することができる。
【0083】
(樹脂)
また、本実施形態において、成形品3に使用される樹脂としては、透明性が要求される光学素子を成形する場合には、軟化温度がそのガラス転移温度である非晶性樹脂、例えば、ポリメタアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式アクリル樹脂、環状ポリオレフィンコポリマー(例、日本ゼオン(株) 商品名:ゼオネックス)等を使用することができる。また、光学素子以外の用途としてであれば、軟化温度がその融解温度である結晶性樹脂を使用することも可能である。
【0084】
(レーザビームプリンタの2層式fθレンズを製造する場合)
上記の内容を踏まえて、レーザビームプリンタの2層式fθレンズを製造する方法の例を以下に説明する。
【0085】
・成形品の形成方法
まず、本例における、図1に図示した接合前の成形品3の成形方法について説明する。
【0086】
成形品3の配置精度を考慮すると、接合面には余分な接着剤を逃がすことができる凹部2を有することが望ましい。その点、図4に図示したように、凹部2を含む面を形成するキャビティ駒6の一部を摺動させる射出成形法は、低圧低充填で成形を行え、非転写面にひけを誘導し凹部2を形成でき、内部歪みを低減しながら転写面1の形状精度を確保することができる。
【0087】
さらに、図5に図示したように、凹部2の形状は摺動させるキャビティ駒6の形状によって任意に設定することができる。
【0088】
また、本例において、成形用の樹脂には、透明性、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、成形性などのバランスを考慮してゼオネックスを使用した。
【0089】
・接合する方法
次に、成形後のレンズ(成形品3)2枚をUV硬化型接着剤により接着する方法について説明する。
【0090】
本例において、2枚のレンズの配置としては、図6の(a)に図示するように、接合面のうち両方が凹部2を含む面であるように配置し、凹部2にUV硬化型接着剤を塗布した。
【0091】
また、位置決めには、図11に図示したような接合面以外の一部に位置決め用の突起17を設けることで、配置のバラツキを防止することができた。
【0092】
このように位置決めをした後、図9に図示したように、UV硬化型接着剤塗布領域にUV照射することで接着した。UV硬化型接着剤を使用することで、接着剤の硬化のタイミングを制御することができるため、正確な位置決めをした後、UV照射し、良好な配置精度の2層式fθレンズを得ることができた。
【0093】
【発明の効果】
以上、説明したように、本願発明は、所定の方法で形成した凹部を含む面と、前記凹部を含む面以外の面(転写面)と、を有するプラスティック成形品を層状に重ねて、接合により一体的に構成することを特徴とし、これにより、接合での不具合を解消して、配置精度の高い、低コストなプラスティック成形品を製造することが可能となる。
【0094】
さらに、請求項1記載の発明によれば、所定の方法が、凹部を含む面を形成するキャビティ駒に少なくとも1つ以上の通気口と、通気口に連通して成形品に圧縮気体を付与する少なくとも1つ以上の連通口と、が設けられ、転写面及びキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持する金型加熱保持工程と、キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する溶融樹脂充填工程と、転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を転写面に密着させる樹脂加圧工程と、樹脂を軟化温度以下に冷却する際に、通気口からキャビティ内の樹脂に圧縮気体を付与して、樹脂と通気口が設けられたキャビティ駒との間に空隙を画成する空隙画成工程と、を有することを特徴とし、これにより、低歪みで、且つ転写面の形状精度を確保したプラスティック成形品を製造することが可能となる。
【0095】
さらに、請求項2記載の発明によれば、所定の方法が、凹部を含む面を形成するキャビティ駒の一部が摺動自在に設けられ、転写面及びキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持する金型加熱保持工程と、キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する溶融樹脂充填工程と、転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面に密着させる樹脂加圧工程と、樹脂を軟化温度以下に冷却する際に、キャビティ駒を樹脂から離隔するように摺動して、樹脂と前記キャビティ駒との間に空隙を画成する空隙画成工程と、を有することを特徴とし、これにより、低歪みで、且つ転写面の形状精度を確保したプラスティック成形品を製造することが可能となる。
【0096】
さらに、請求項3記載の発明によれば、層状に重ねたプラスティック成形品の接合面のうち、どちらか一方、又は、両方に、凹部を含むことを特徴とし、これにより、例えば、接着剤により接着をする場合、余分な接着剤が凹部に流れ込み、接着剤が接着面の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、請求項3記載の発明によれば、余分な接着剤により、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい、配置精度が下がる等の不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0097】
更に、請求項4記載の発明によれば、凹部を含む面内の一部、又は、全部を、接合面とすることを特徴とし、これにより、例えば、接着剤により接着をする場合、余分な接着剤が凹部に流れ込み、接着剤が接合面の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、請求項4記載の発明によれば、余分な接着剤により、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい、配置精度が下がる等の不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0098】
更に、請求項5記載の発明によれば、凹部を、接合面とすることを特徴とし、これにより、例えば、接着剤により接合をする場合、接着剤が接合面の外部に漏れ出る不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0099】
更に、請求項6記載の発明によれば、接合面を、接着剤により接合することを特徴とし、これにより、接合面が接着剤により接合される場合において、余分な接着剤が凹部に流れ込み、接着剤が接合面の外部に漏れ出る不具合を防止することが可能となる。更に、請求項6記載の発明によれば、余分な接着剤により、層状に重ねる方向の厚みが増加してしまい、配置精度が下がる等の不具合を防止でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0100】
更に、請求項7記載の発明によれば、接着剤が、光硬化型接着剤であることを特徴とし、これにより、接着剤の硬化のタイミングを制御でき、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0101】
更に、請求項8記載の発明によれば、接合面を、超音波溶着により接合することを特徴とし、これにより、接着剤等の溶剤を使用とすることなく、配置精度の高いプラスティック成形品を、低コストで得ることが可能となる。
【0102】
更に、請求項9記載の発明によれば、プラスティック成形品において、接合面以外の面の一部に、接合時の位置決め用の突起を設け、突起に基づいて、プラスティック成形品の位置を決定することを特徴とし、これにより、重ねるプラスティック成形品同士の位置決めが容易となり、配置精度の高いプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【0103】
更に、請求項10記載の発明によれば、プラスティック成形品において、接合面の一部に、接合時の位置決め用の凹凸を設け、凹凸に基づいて、プラスティック成形品の位置を決定することを特徴とし、これにより、重ねるプラスティック成形品同士の位置決めが容易となり、また、プラスティック成形品のみで位置決めが可能となるため、位置決め用の冶具を使用することなく、配置精度の高いプラスティック成形品を低コストで得ることが可能となる。
【0104】
更に、請求項11記載の発明によれば、転写面のうち少なくとも1面を、光学鏡面として形成することを特徴とし、これにより、転写面のうち、少なくとも1面が光学鏡面である場合でも、低歪みで、且つ高い形状精度と配置精度とが実現されたプラスティック成形品を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態において層状に重ねる成形品の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態において圧縮気体により凹部を形成する方法を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態において圧縮気体により凹部を形成する方法を説明するための図であり、(a)は成形品に凹部を形成するための金型の側面図であり、(b)は形成された成形品の側面図である。
【図4】本発明の一実施形態において摺動により凹部を形成する方法を説明するための図であり、(a)は摺動する前段階の図であり、(b)は摺動により成形品とキャビティ駒との間に空隙が形成された図である。
【図5】本発明の一実施形態において摺動により凹部を形成する方法を説明するための図であり、(a)は成形品に凹部を形成するための金型の側面図であり、(b)は形成された成形品の側面図である。
【図6】本発明の一実施形態において成形品を接合する方法を説明するための図であり、(a)は接合面の一方に凹部を設ける場合の例であり、(b)は接合面の両方に凹部を設ける場合の例である。
【図7】本発明の一実施形態において成形品におけるいずれの面を接合面とするかを説明するための図であり、(a)は凹部が含まれる転写面の凹部以外の面を接合面とする場合の例であり、(b)は凹部を接合面とした場合の例であり、(c)は凹部を含む転写面全体を接合面とした場合の例である。
【図8】本発明の一実施形態において接着剤を添付する領域を説明するための図であり、(a)は接合面の凹部以外の領域全体に接着剤を添付する例であり、(b)は接合面の凹部以外の領域の一部に接着剤を添付する例であり、(c)は接合面の凹部の周囲の領域に接着剤を添付する例である。
【図9】本発明の一実施形態において接着剤に光硬化型接着剤を使用した場合を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態において超音波溶着により接合する場合を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施形態において冶具を用いて位置決めを行う場合の例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態において接合面に凹凸を設けて位置決めを行う場合の例を示す図である。
【符号の説明】
1 転写面
2 凹部
3 成形品
4 金型
5 通気口
5’ 連通口
6 キャビティ駒
7 空隙
8 摺動する部材
9 接合面
10 接着剤添付領域
11 光源
12 光硬化型接着剤
13 振動装置
14 工具ホーン
15 溶着部
16 位置決め用の冶具
17 位置決め用の突起
18 位置決め用の凹凸
Claims (11)
- 所定の方法で形成した凹部を含む面と、前記凹部を含む面以外の面(以下、前記凹部を含む面以外の面を転写面という。)と、を有するプラスティック成形品を層状に重ねて、接合により一体的に構成するプラスティック成形品の製造方法であって、
前記所定の方法は、前記凹部を含む面を形成するキャビティ駒に少なくとも1つ以上の通気口と、該通気口に連通して成形品に圧縮気体を付与する少なくとも1つ以上の連通口と、が設けられ、前記転写面及び前記キャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持する金型加熱保持工程と、
前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する溶融樹脂充填工程と、
前記転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面に密着させる樹脂加圧工程と、
前記樹脂を軟化温度以下に冷却する際に、前記通気口からキャビティ内の樹脂に圧縮気体を付与して、樹脂と前記通気口が設けられたキャビティ駒との間に空隙を画成する空隙画成工程と、
を有することを特徴とするプラスティック成形品の製造方法。 - 所定の方法で形成した凹部を含む面と、前記凹部を含む面以外の面(以下、前記凹部を含む面以外の面を転写面という。)と、を有するプラスティック成形品を層状に重ねて、接合により一体的に構成するプラスティック成形品の製造方法であって、
前記所定の方法は、前記凹部を含む面を形成するキャビティ駒の一部が摺動自在に設けられ、前記転写面及び前記キャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持する金型加熱保持工程と、
前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填する溶融樹脂充填工程と、
前記転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を該転写面に密着させる樹脂加圧工程と、
前記樹脂を軟化温度以下に冷却する際に、前記キャビティ駒を樹脂から離隔するように摺動して、前記樹脂と前記キャビティ駒との間に空隙を画成する空隙画成工程と、
を有することを特徴とするプラスティック成形品の製造方法。 - 前記層状に重ねたプラスティック成形品の接合面のうち、どちらか一方、又は、両方に、前記凹部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記凹部を含む面内の一部、又は、全部を、接合面とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記凹部を、接合面とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記接合面を、接着剤により接合することを特徴とする請求項4から5のいずれか1項に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記接着剤は、光硬化型接着剤であることを特徴とする請求項6記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記接合面を、超音波溶着により接合することを特徴とする請求項3又は4に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記プラスティック成形品において、接合面以外の面の一部に、接合時の位置決め用の突起を設け、該突起に基づいて、前記プラスティック成形品の位置を決定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記プラスティック成形品において、接合面の一部に、接合時の位置決め用の凹凸を設け、該凹凸に基づいて、前記プラスティック成形品の位置を決定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のプラスティック成形品の製造方法。
- 前記転写面のうち少なくとも1面を、光学鏡面として形成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のプラスティック成形品の製造方法。
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