JP2000084945A - プラスチック成形品およびその成形方法 - Google Patents

プラスチック成形品およびその成形方法

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JP2000084945A JP25892198A JP25892198A JP2000084945A JP 2000084945 A JP2000084945 A JP 2000084945A JP 25892198 A JP25892198 A JP 25892198A JP 25892198 A JP25892198 A JP 25892198A JP 2000084945 A JP2000084945 A JP 2000084945A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、プラスチック成形品およびその成
形方法に関し、不完全転写により樹脂内圧や内部歪みが
残存することなどを少なくして、厚肉あるいは偏肉形状
などであっても、薄肉成形品と同程度の生産コストかつ
高精度のプラスチック成形品を提供することを目的す
る。 【解決手段】 射出成形法により金型30の被転写面3
2a、33aを転写した鏡面11、12を有するプラス
チックレンズ10の側面13に、金型30の可動入子3
6を後退させてキャビティ31形状を不完全転写した凹
形状または凸形状の不完全転写部31を形成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック成形
品およびその成形方法に関し、例えば、レーザ方式のデ
ジタル複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ装置等の
光学走査系やビデオカメラ等の光学機器などに適用され
るプラスチック成形品、特に、高精度な鏡面を有する厚
肉、偏肉形状のプラスチックレンズあるいはプラスチッ
クミラー等のプラスチック成形品を、低コストかつ高精
度に成形可能にするものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、レーザ方式のデジタル複写
機、プリンタ、ファクシミリ装置等の光書き込みユニッ
トには、レーザビームの結像および各種補正機能を有す
る矩形状のレンズやミラー等の光学素子が用いられてい
る。近年、これらの光学素子は、製品のコストダウンの
要求に伴って、ガラスからプラスチック製へと変化し、
また複数の機能を最小限の素子でまかなうために、その
鏡面形状も球面のみならず複雑な非球面形状に形成され
るようになってきている。また、レンズの場合には、そ
のレンズ厚を厚く、また長手方向にレンズ厚が一定では
ない偏肉形状に設計される場合も多い。
【0003】このようなプラスチック成形品は、特殊形
状であっても、成形品形状に形成された金型のキャビテ
ィ内に樹脂母材を挿入または溶融樹脂を射出充填するこ
とにより、低コストに大量生産することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のプラスチック成形にあっては、金型のキャビ
ティ内の溶融樹脂材料を冷却固化させる工程において、
キャビティ内での樹脂圧力や樹脂温度を均一にすること
がプラスチック成形品を所望の形状に精度よく成形する
のに望ましいのであるが、成形品の形状によっては、例
えば、レンズが偏肉形状の場合にはレンズ厚みの違いに
より樹脂の冷却速度が部位によって異なって体積収縮量
に差が生じることにより、形状精度が悪化するととも
に、レンズ厚の厚いところではひけが生じてしまう場合
がある。例えば、図7に示す厚肉、偏肉形状のプラスチ
ックレンズ10を成形する場合に、図8に示すように、
鏡面(転写面)11、12、側面(非転写面)13を問
わずにひけ14が発生してしまう。
【0005】この問題を解消するために、溶融樹脂を金
型のキャビティ内に射出充填する射出成形法において、
溶融樹脂の射出圧力を大きくして射出充填量を多くする
と、プラスチック成形品の内部ひずみが大きくなり、特
に、厚肉、偏肉形状の場合には薄肉部で内部ひずみが大
きくなって光学性能などに悪影響を及ぼすことになるお
それがある。
【0006】すなわち、内部ひずみを小さくするために
射出圧力を低くして溶融樹脂の射出充填量を少なくする
と、厚肉部などでひけが生じてしまう一方、溶融樹脂の
射出圧力を大きくして射出充填量を多くすると、薄肉部
などで内部ひずみが大きくなってしまうおそれがある。
これに対して、射出成形法では、キャビティ壁面を構成
する入子を金型内で移動可能にすることによって、充填
された樹脂の冷却に伴う体積収縮、例えば、レンズ厚に
偏差があることによるその長手方向の各部で生じる体積
収縮量の差にその可動入子を追従するように前進させて
圧力を補って均等な圧力をかけることにより形状精度を
確保する、いわゆる射出圧縮成形法も行われている。
【0007】しかし、この射出圧縮成形法でも、可動入
子を精度よく追従させることは難しく、鏡面の一部にひ
けが生じるなどして形状精度が確保できない場合がある
などという問題があった。このことから、射出成形法や
射出圧縮成形法の欠点を改善することが研究されてお
り、例えば、特開平2−175115号公報や特開平6
−304973号公報に開示されているように転写面以
外にひけを発生させる成形法が提案されている。
【0008】しかし、この成形法でも、偏肉、厚肉、大
口径、異形状のプラスチックレンズなどの製造にそのま
ま適用した場合には、冷却速度の差から転写面に隣接す
る厚肉部にひけが生じることになって、薄肉部に樹脂内
圧や内部歪みが残存することがあることから、形状精度
を悪化させるとともに複屈折を増加させてレンズの光学
的精度の低下を招く可能性がある。
【0009】そこで、本発明は、転写面以外の発生箇所
を制御した位置に不完全転写により形成する凹形状や凸
形状を設けることにより、樹脂内圧や内部歪みが残存す
ることなどをなくして、厚肉あるいは偏肉形状などであ
っても、薄肉成形品と同程度の生産コストかつ高精度の
プラスチック成形品を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本
発明は、1つまたは2つ以上の被転写面を有する金型の
キャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させて該被転写面
を転写することにより転写面を形成したプラスチック成
形品において、少なくとも1つまたは2つ以上の樹脂内
圧や内部ひずみが発生しやすい部位、例えば、肉薄部分
に金型のキャビティ形状を不完全転写することにより凹
形状または凸形状に形成した不完全転写部を有すること
を特徴とするものである。
【0011】この場合、樹脂内圧や内部ひずみが発生し
やすい部位であっても、不完全転写部が、金型のキャビ
ティ形状の不完全転写により、樹脂圧力に応じた凹形状
または凸形状になって樹脂内圧や内部ひずみの発生を防
止する。したがって、不完全転写部を設けるだけで、形
状精度の必要な部分の転写面と共に光学的精度などを容
易に確保することができる。
【0012】不完全転写部は、転写面以外の部位に形成
することにより、転写面全体の形状精度を確保すること
ができ、また、転写面の延長面に形成することにより、
面内の一部が転写面であってもその形状精度を確保する
ことができる。なお、転写面でも形状精度の不要な部位
には不完全転写部を設けてもよい。この不完全転写部の
縁形状は、転写面の平面または湾曲面形状に沿うように
形成することにより、転写面を構成するように延在する
部分の樹脂内圧や内部ひずみの発生を均一に防止するこ
とができ、また、転写面に挟まれる部位でその転写面の
形状に沿うように形成することにより、大面積でその樹
脂内圧や内部ひずみの発生を防止することができ、形状
精度および光学的精度などをより向上させることができ
る。これは、不完全転写部を転写面以外の同一面に2つ
以上形成することによっても、同様に、大面積の部分で
樹脂内圧や内部ひずみの発生を均一に防止したり、樹脂
内圧や内部ひずみの発生を局所的に防止することがで
き、形状精度および光学的精度などをより向上させるこ
とができる。
【0013】そして、転写面の1つまたは2つ以上を光
学鏡面に形成することにより、形状精度および光学的精
度に優れる光学素子のプラスチック成形品を作製するこ
とができる。このプラスチック成形品は、例えば、射出
成形法により不完全転写部を形成する金型のキャビティ
内に樹脂を射出充填することにより成形してもよく、例
えば、そのキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させて
被転写面を転写した後に、キャビティ形状に対する局部
的離型収縮を発生させることにより不完全転写部の凹形
状を、また、キャビティ形状に対する局部的樹脂圧力開
放を発生させることにより不完全転写部の凸形状を形成
することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて説
明する。図1および図2は本発明に係るプラスチック成
形品およびその成形方法の第1実施形態を示す図であ
り、図1はそのプラスチック成形品を示す斜視図、図2
はその成形方法を実施する成形金型を示す断面図であ
る。なお、本実施形態は、請求項1、2、8〜11に記
載の発明に対応する。
【0015】図1において、10はプラスチックレンズ
(光学素子)であり、プラスチックレンズ10は一面側
の中央を厚肉になるように湾曲させた光学的鏡面(転写
面)11と、その一面に対面する他面側を平面に形成し
た鏡面12と、鏡面11,12間の側面(非転写面)1
3と、を有する偏肉形状に作製されており、このプラス
チックレンズ10には、図2に示す成形金型30を用い
る射出成形法により成形することにより側面13に凹形
状または凸形状の不完全転写部21が形成されている。
【0016】なお、プラスチックレンズ(本発明に係る
プラスチック成形品)10は、射出成形法に限らず、圧
縮成形法、ブロー成形法などの多様なプラスチック成形
法を用いることができるが、射出成形法では、キャビテ
ィ内の溶融樹脂は射出充填直後に内部が溶融状態のまま
表層部は固化することから、後述するように、高精度な
転写面を形成する状態のまま内部歪みを低減させるよう
に、任意の位置における樹脂と金型のキャビティ壁面と
の離隔により不完全転写部を容易に作ることができ、ま
た、厚肉、偏肉の成形品を効率よく生産することができ
る。このことから、本実施形態のように射出成形法を選
択するのが好ましい。
【0017】成形金型30は、図2に示すように、上下
一対の金型により開閉可能なキャビティ31を画成して
その内部に溶融樹脂100を射出充填するようになって
おり、キャビティ31は上下の固定入子32、33の鏡
面に形成されている被転写面32a、33aと側壁面3
4、35とにより画成され、その側壁面34の内方には
プラスチックレンズ10の不完全転写部21に対応する
断面形状でキャビティ31内に向かって前進・後退可能
に構成された可動入子36が設けられている。
【0018】この成形金型30は、自動または手動によ
り開閉および可動入子36の移動を制御して射出成形法
によるプラスチックレンズ10の成形方法を行うように
なっており、図2(a)に示すように通常の射出成形法
と同様に、溶融樹脂100をキャビティ31内に射出充
填した後に、キャビティ31内の溶融樹脂100の冷却
固化が進んでその樹脂圧力が所定圧力になったときに、
図2(b)に示すように、可動入子36をキャビティ3
1内の樹脂100から離隔する方向に後退させその可動
入子36の側壁面と樹脂100との間に空隙Sを設ける
ように使用することができる。
【0019】これによって、成形金型30のキャビティ
31内に射出充填された溶融樹脂100は、キャビティ
31の壁面に対して樹脂圧力を発生させて鏡面32a、
33aと側壁面34、35に密着して冷却固化するが、
この後の一定時間経過後に、可動入子36が後退してそ
の側壁面が離隔することにより、対応する部分が樹脂圧
力に応じて変形する。このとき、樹脂100は、樹脂圧
力が残っていればその離隔部分が局部的圧力開放により
可動入子36の側壁面に縁部分が相似する凸形状にな
り、樹脂圧力が大気圧以下であれば局部的離型収縮によ
り相似する凹形状となって、不完全転写部21を形成さ
れたプラスチックレンズ10となる。
【0020】なお、可動入子36の側壁面が離隔した樹
脂100の離隔部分は、自由面となって容易に変形する
ことができ、また可動入子36では熱が逃げ難いことか
ら、他のキャビティ31の壁面に接触している部分より
も高温となって優先的に樹脂移動と収縮が生じて凹形状
になるため、離隔直後に凸形状となっても最終的にも必
ずしも凸形状となるわけではない。特に、そのキャビテ
ィ31内への溶融樹脂100の充填圧力は、内部ひずみ
が光学性能に影響を与えない程度に低圧にする必要があ
ることから、低圧で成形するとその離隔部分に冷却収縮
による凹形状、すなわち、ひけが優先的に発生する。
【0021】したがって、プラスチックレンズ10は、
成形金型30を用いる射出成形法により、可動入子36
の側壁面に対応する部分に樹脂圧力に応じて凸形状また
は凹状になる不完全転写部21を形成するだけで、樹脂
内圧や内部ひずみが残存することがなく、要求される形
状精度で形成した鏡面11、12を有する光学的精度に
優れたものとすることができる。
【0022】また、この不完全転写部21は、鏡面1
1、12と別の側面に形成することにより、全体を高精
度に形成することができる。また、成形金型30のキャ
ビティ31を画成する側壁面34の内方を可動入子36
の側壁面とすることにより、不完全転写部21は、鏡面
11、12に連続して隣接する位置をその縁部としてい
ないので、鏡面11、12に回り込んでしまうこともな
く、低ひずみで形状精度の良好なプラスチックレンズ1
0とすることができる。
【0023】なお、プラスチックレンズ10を作製する
樹脂としては、透明性が要求される場合には、軟化温度
がそのガラス転移温度である非晶性樹脂、例えば、ポリ
メタアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式アク
リル樹脂、環状ポリオレフィンコポリマー(例えば、日
本ゼオン(株) 商品名:ゼオネックス)等を使用するこ
とができる。また、光学素子以外の用途としては、軟化
温度がその融解温度である結晶性樹脂を使用することも
可能である。
【0024】このように本実施形態においては、プラス
チックレンズ10は、不完全転写部21を有することに
より、厚肉、偏肉形状であっても樹脂内圧や内部ひずみ
が残存することのない優れた形状精度および光学的精度
などを備えるとともに、製造コストが低く大量生産に適
した射出成形法により、薄肉成形品と同程度の生産コス
トで作製することができる。
【0025】次に、図3は本発明に係るプラスチック成
形品およびその成形方法の第2実施形態を示す図であ
り、上述実施形態で説明した成形方法により成形したプ
ラスチック成形品を示す斜視図である。なお、本実施形
態は、請求項1〜3、6〜11に記載の発明に対応す
る。本実施形態では、上述実施形態と略同様にプラスチ
ック成形品を成形しているので、その成形方法の説明は
図2を流用して簡単に説明する(以降で説明する実施形
態においても同様)。
【0026】図3において、本実施形態のプラスチック
レンズ10は、鏡面11、12および側面13を有する
とともに、その側面13には、不完全転写部21に代え
て、長手方向中央に取付基準面(転写面)15と、この
取付基準面15の両側の薄肉部に凹形状または凸形状の
不完全転写部22と、が形成されている。このプラスチ
ックレンズ10は、成形金型30を用いる射出成形法に
より、そのキャビティ31を画成する側壁面34の内方
に設けられた固定入子の被転写面を密着転写して取付基
準面15を形成されるとともに、その固定入子の両側に
配置された可動入子がキャビティ31内に射出充填した
溶融樹脂100の表層の冷却固化および樹脂圧力の所定
圧力時に後退して空隙Sを設けることによりその樹脂圧
力に応じた局部的圧力開放による凸形状または局部的離
型収縮による凹形状の不完全転写部22が形成されてい
る。
【0027】したがって、プラスチックレンズ10は、
不完全転写部22により転写面11、12と共に取付基
準面15を高い形状精度で形成することができ、従来の
射出成形法でひけを誘導する方法等による場合には面全
体が凹形状になって形状精度が出ていないためにその面
を取付基準として固定することができないのに対して、
不完全転写部22の間の同一側面(延長面)13に取付基
準面15を設けることにより、取付精度をも確保するこ
とができる。
【0028】この不完全転写部22は、プラスチックレ
ンズ10の薄肉部に設けるので、全体として樹脂内圧や
内部ひずみが残存しないようにするとともに、その薄肉
部に樹脂内圧や内部ひずみが発生しないように局所的に
防止することができる。また、不完全転写部22は、2
個所に設けるので凸形状または凹形状に変形させる面積
を稼ぐことができ、光の透過領域に影響するその高さや
深さを小さくすることができる。
【0029】このように本実施形態においては、上述実
施形態の作用効果に加えて、プラスチックレンズ10
は、側面13に取付基準面15を有する場合でも、不完
全転写部22を設けることにより、その取付基準面15
の高い形状精度により取付精度を確保しつつ、薄肉部に
おける樹脂内圧や内部ひずみをも効果的に緩和して光学
的精度をより向上させることができる。
【0030】なお、本実施形態の他の態様として、図4
に示すように、取付基準面15を設ける必要がない場合
にも適用することができることはいうまでもない。次
に、図5は本発明に係るプラスチック成形品およびその
成形方法の第3実施形態を示す図であり、上述実施形態
で説明した成形方法により成形したプラスチック成形品
を示す斜視図である。なお、本実施形態は、請求項1、
2、6〜11に記載の発明に対応する。
【0031】図5において、本実施形態のプラスチック
レンズ10は、鏡面11、12および側面13を有する
とともに、その側面13には、不完全転写部21に代え
て、長手方向中央に大円形の凹形状または凸形状の不完
全転写部23と、この不完全転写部23の両側の薄肉部
に小円形の凹形状または凸形状の不完全転写部24と、
が形成されている。
【0032】このプラスチックレンズ10は、成形金型
30を用いる射出成形法により、そのキャビティ31を
画成する側壁面34の内方に設けられた3つの可動入子
がキャビティ31内に射出充填した溶融樹脂100の表
層の冷却固化・樹脂圧力の所定圧力時に後退して空隙S
を設けることによりその樹脂圧力に応じた局部的圧力開
放による凸形状または局部的離型収縮による凹形状の不
完全転写部23、24が形成されている。
【0033】したがって、プラスチックレンズ10は、
不完全転写部23、24により凸形状または凹形状に変
形させる面積を稼いで光の透過領域に影響するその高さ
や深さを小さくしつつ全体として樹脂内圧や内部ひずみ
が残存しないようにするとともに、不完全転写部23に
より薄肉部に樹脂応力や内部ひずみが発生しないように
局所的に防止することができる。
【0034】また、不完全転写部23、24は、形状を
特に限定するものではないが、その縁部を円形に形成す
ることにより、金型の加工が安易になるというメリット
がある。このように本実施形態においては、上述実施形
態の作用効果に加えて、薄肉部の不完全転写部24に加
えて大径の不完全転写部23を設けることにより、より
効果的に樹脂内圧や内部ひずみを緩和することができ、
光学的精度をより向上させることができる。
【0035】次に、図6は本発明に係るプラスチック成
形品およびその成形方法の第4実施形態を示す図であ
り、上述実施形態で説明した成形方法により成形したプ
ラスチック成形品を示す斜視図である。なお、本実施形
態は、請求項1、2、4〜6、8〜11に記載の発明に
対応する。図6において、本実施形態のプラスチックレ
ンズ10は、鏡面11、12および側面13を有すると
ともに、その鏡面11、12に挟まれる側面13には、
不完全転写部21に代えて、鏡面11、12に隙間を介
して隣接してその湾曲面・平面形状に沿うように縁部を
形成した相似形状の不完全転写部25が形成されてい
る。
【0036】このプラスチックレンズ10は、成形金型
30を用いる射出成形法により、そのキャビティ31を
画成する側壁面34の内方に設けられた断面形状が相似
形状の可動入子がキャビティ31内に射出充填した溶融
樹脂100の表層の冷却固化・樹脂圧力の所定圧力時に
後退して空隙Sを設けることによりその樹脂圧力に応じ
た局部的圧力開放による凸形状または局部的離型収縮に
よる凹形状の不完全転写部25が形成されている。
【0037】したがって、プラスチックレンズ10は、
不完全転写部25により凸形状または凹形状に変形させ
る面積を稼いで光の透過領域に影響するその高さや深さ
を小さくしつつ全体として樹脂内圧や内部ひずみが残存
しないようにするとともに、薄肉部においても樹脂応力
や内部ひずみの発生を均一に防止することができる。こ
のように本実施形態においては、上述実施形態の作用効
果に加えて、不完全転写部21〜24よりも大面積の不
完全転写部25を設けることにより、より効果的に樹脂
内圧や内部ひずみを緩和することができ、光学的精度を
より向上させることができる。
【0038】なお、本実施形態の他の態様としては、図
示することは省略するが、例えば、大きなプラスチック
レンズ10を作製する場合には、鏡面11、12毎にそ
の湾曲面・平面形状に沿う不完全転写部を形成してもよ
く(請求項4)、この不完全転写部は樹脂応力や内部ひ
ずみの発生を防止するのに必要な面積となるように縁部
を形成すればよい。この場合には、樹脂応力や内部ひず
みの発生を効果的に防止することができるとともに、長
手方向に均一な鏡面11、12を形成することができ
る。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、樹脂内圧や内部ひずみ
が発生しやすい肉薄部分などに設ける不完全転写部が、
成形時に、金型のキャビティ形状を不完全転写するよう
に樹脂圧力に応じて凹形状または凸形状になることによ
り、その部分に樹脂内圧や内部ひずみが残存することを
防止することができ、また、例えば、厚肉、偏肉、大口
径、異形状などの成形品であっても、従来法では低滅で
きなかった薄肉部などの樹脂内圧や内部ひずみを小さく
することができる。
【0040】したがって、任意の位置に不完全転写部を
設定することにより、形状精度および光学的精度などを
確保したプラスチック成形品を容易に得ることができ
る。この不完全転写部は、転写面以外に形成すれば、転
写面全体の形状精度を確保することができ、転写面を延
長した同一面内に形成すれば、例えば、面内の一部を組
付の基準面として精度よく形成し、その組付精度を確保
することができる。
【0041】また、不完全転写部は、その縁形状を転写
面の形状に沿うように、また、転写面の形状に沿わせて
大面積に形成したり、同一面に複数形成することによ
り、その部分の樹脂内圧や内部ひずみを効果的に緩和し
て、形状精度および光学的精度などをより向上させるこ
とができる。これによって、例えば、転写面として光学
鏡面を形成することにより、低ひずみで高精度な形状を
要求される光学素子を容易かつ低コストに作製すること
ができる。
【0042】また、不完全転写部は、製造コストが低く
大量生産に適した射出成形法により形成することがで
き、例えば、金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発
生させて被転写面を転写した後に、キャビティ形状に対
する局部的離型収縮を発生させることにより不完全転写
部の凹形状を、また、キャビティ形状に対する局部的樹
脂圧力開放を発生させることにより不完全転写部の凸形
状を形成することができる。
【0043】この結果、不完全転写部を形成するだけの
構成により、薄肉成形品と同程度の生産コストで、かつ
高精度なプラスチック成形品を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラスチック成形品およびその成
形方法の第1実施形態を示す図であり、そのプラスチッ
ク成形品を示す斜視図である。
【図2】その成形方法を実施する成形金型を示す断面図
である。
【図3】本発明に係るプラスチック成形品およびその成
形方法の第2実施形態を示す図であり、そのプラスチッ
ク成形品を示す斜視図である。
【図4】その他の態様を示すプラスチック成形品の斜視
図である。
【図5】本発明に係るプラスチック成形品およびその成
形方法の第3実施形態を示す図であり、そのプラスチッ
ク成形品を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るプラスチック成形品およびその成
形方法の第4実施形態を示す図であり、そのプラスチッ
ク成形品を示す斜視図である。
【図7】従来のプラスチック成形品を示す斜視図であ
る。
【図8】その課題を説明するプラスチック成形品を示す
斜視図である。
【符号の説明】
10 プラスチックレンズ(プラスチック成形品) 11、12 鏡面(転写面) 13 側面 15 取付基準面(転写面) 21〜25 不完全転写部 30 成形金型 31 キャビティ 32、33 固定入子 32a、33a 被転写面 34、35 側壁面 36 可動入子

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1つまたは2つ以上の被転写面を有する金
    型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させて該被転
    写面を転写することにより転写面を形成したプラスチッ
    ク成形品において、 少なくとも1つまたは2つ以上の樹脂内圧や内部ひずみ
    が発生しやすい部位に金型のキャビティ形状を不完全転
    写することにより凹形状または凸形状に形成した不完全
    転写部を有することを特徴とするプラスチック成形品。
  2. 【請求項2】前記不完全転写部を、前記転写面以外の部
    位に形成したことを特徴とする請求項1に記載のプラス
    チック成形品。
  3. 【請求項3】前記不完全転写部を、前記転写面の延長面
    に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の
    プラスチック成形品。
  4. 【請求項4】前記不完全転写部の縁形状を、前記転写面
    の平面または湾曲面形状に沿うように形成したことを特
    徴とする請求項1または2に記載のプラスチック成形
    品。
  5. 【請求項5】前記転写面を2つ以上有し、 前記不完全転写部を該転写面に挟まれる部位に形成する
    とともに当該縁形状を該転写面の双方の平面または湾曲
    面形状に沿うように形成したことを特徴とする請求項4
    に記載のプラスチック成形品。
  6. 【請求項6】前記不完全転写部を、肉薄部分に形成した
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のプ
    ラスチック成形品。
  7. 【請求項7】前記不完全転写部を、前記転写面以外の同
    一面に2つ以上形成したことを特徴とする請求項1から
    4または6のいずれかに記載のプラスチック成形品。
  8. 【請求項8】前記転写面の1つまたは2つ以上を光学鏡
    面に形成した光学素子であることを特徴とする請求項1
    から7のいずれかに記載のプラスチック成形品。
  9. 【請求項9】上記請求項1から8のいずれかに記載のプ
    ラスチック成形品の成形方法であって、 前記金型のキャビティ内に樹脂を射出充填する射出成形
    法により成形することを特徴とするプラスチック成形品
    の成形方法。
  10. 【請求項10】上記請求項1から8のいずれかに記載の
    プラスチック成形品の成形方法であって、 前記金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させて
    前記被転写面を転写した後に、該キャビティ形状に対す
    る局部的離型収縮を発生させて前記不完全転写部の凹形
    状を形成することを特徴とするプラスチック成形品の成
    形方法。
  11. 【請求項11】上記請求項1から8のいずれかに記載の
    プラスチック成形品の成形方法であって、 前記金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させて
    前記被転写面を転写した後に、該キャビティ形状に対す
    る局部的樹脂圧力開放を発生させて前記不完全転写部の
    凸形状を形成することを特徴とするプラスチック成形品
    の成形方法。
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