JP3875475B2 - プラスチック成形品の製造方法及び射出成形金型 - Google Patents

プラスチック成形品の製造方法及び射出成形金型 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチック成形品の製造方法及び射出成形金型に関し、詳細にはレーザ方式のデジタル複写機、レーザプリンタ、又はファクシミリ装置の光学走査系、ビデオカメラ等の光学機器、光ディスク等に用いられ、高精度な鏡面を有する厚肉形状、偏肉形状のプラスチックレンズ、或いはプラスチックミラー等のプラスチック成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、射出成形法は金型温度を成形用樹脂の軟化温度未満とした一定容積のキャビティ内に溶融樹脂を射出充填し、保圧を制御しながら冷却した後、金型を開いて成形品を取り出す方法である。この方法は、樹脂が冷却固化する時に、金型内の樹脂圧力や樹脂温度が均一になることが、所望の形状精度を確保するために望ましいことである。しかし、成形品が偏肉形状の場合、冷却時に厚肉部と薄肉部で樹脂温度が不均一になり、薄肉部に残圧が発生したり、或いは厚肉部に不完全転写面(所謂、ひけ)が発生してしまうという欠点があった。また、厚肉形状の場合には、樹脂の冷却過程で体積収縮量が多いためにひけが発生しやすく、ひけ発生を防止するために充填圧力を大きくすると、残留歪みが大きくなり、高精度な成形品が得られないという欠点があった。
【0003】
このような欠点を解決するために、例えば特開平6−304973号公報(以下従来例1と称す)に記載の射出成形金型が提案されている。この従来例1に記載の射出成形金型は、転写面(鏡面)以外の面に通気口を設け、転写面と通気口部との間に圧力差を発生させ通気口部にひけを発生させ、内部歪みを発生させることなく、鏡面にひけが発生することを防止するようになっている。
【0004】
また、特開平11−28745号公報(以下従来例2と称す)には、転写面以外の面を形成するキャビティ駒を樹脂から離隔するように摺動させることにより、樹脂とキャビティ駒の間に強制的に空隙を形成し、空隙に面した樹脂部分に意図的にひけを発生させ、転写面のひけを防止するとともに、内部歪みの小さな成形品を得ることができるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例1、2ともに、強制的に発生させた空隙部の冷却速度が他のキャビティ面と比較して遅くなるため、成形品内部に温度分布が生じ、成形品を変形させてしまうという問題点があった。また、空隙部での熱のこもりにより冷却時間(成形サイクル)が長くなり、生産性を悪化させてしまうという問題点もあった。
【0006】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、厚肉または偏肉形状の成形品であっても、低コストで、高精度な成形品を製造できるプラスチック成形品の製造方法及び射出成形金型を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するために、所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する射出成形金型を用いてプラスチック成形品を製造する、本発明に係るプラスチック成形品の製造方法によれば、キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動する可動入れ子を設け、溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填し、溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に、可動入れ子を樹脂から離隔するように摺動させて非転写面側に空隙を形成し、この空隙を強制的に冷却して空隙と接する非転写面を冷却する。よって、空隙の冷却速度を他のキャビティ面と同等にして、成形品内部の温度分布を小さくすることができる。また、空隙での熱のこもりによる冷却時間(成形サイクル)の増大も防ぐことができ、これにより、高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。また、可動入れ子を樹脂から離隔するように摺動させることにより、確実に所定領域に所定容積の空隙を形成することができ、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0009】
更に、空隙内に気体を注入し、かつ空隙内の気体を排気して空隙を強制的に冷却することにより、確実に空隙と接する非転写面を冷却することができ、冷却時間の減少を実現し、そして高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。
【0010】
また、空隙内に注入する気体の温度を調節することにより、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0011】
更に、空隙内に注入する気体の流量を調節することにより、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0012】
また、可動入れ子自体を冷却して、非転写面を形成する可動入れ子のキャビティ面で形成する空隙を冷却することにより、射出成形金型の構造上の制約により空隙内に対する気体の注入及び排出機構を設けることができない場合でも空隙を冷却することができる。
【0013】
更に、空隙を形成する可動入れ子のキャビティ面が空隙を含む非転写面の形状と略相似形状であることにより、成形品の温度分布が不均一になることを防止できる。
【0014】
また、可動入れ子のキャビティ面と、キャビティ面と隣接する転写面とを所定の距離以上、例えば1mm以上離間することにより、或いは可動入れ子のキャビティ面と隣接する転写面の一部に切欠き部を設けることにより、空隙形成による成形品内部の温度分布が転写面に影響しないようにでき、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0015】
更に、所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する、別の発明に係る射出成形金型は、溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填する樹脂充填手段と、キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動し、溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に非転写面に空隙を形成する可動入れ子と、空隙を強制的に冷却して空隙と接する非転写面を冷却する冷却手段とを有する。よって、空隙の冷却速度を他のキャビティ面と同等にして、成形品内部の温度分布を小さくすることができる。また、空隙での熱のこもりによる冷却時間(成形サイクル)の増大も防ぐことができ、これにより、高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。
【0016】
また、空隙内に気体を注入する通気路、又は空隙内の気体を排気する排気路のいずれか一方を可動入れ子に設け、他方を可動入れ子に隣接するキャビティ駒に設けた。または、空隙内に気体を注入する通気路、及び空隙内の気体を排気する排気路を可動入れ子に設けた。あるいは、空隙内に気体を注入する通気路、及び空隙内の気体を排気する排気路を可動入れ子に隣接するキャビティ駒に設けた。よって、確実に空隙と接する非転写面を冷却することができ、冷却時間の減少を実現し、そして高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。
【0017】
更に、空隙内に注入する気体の温度を調節する気体温度制御手段を設けた。また、空隙内に注入する気体の流量を調節する気体流量制御手段を設けた。よって、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0018】
また、可動入れ子に冷却用媒体を流す流路を設けたことにより、または可動入れ子自体を冷やすヒートパイプ等の冷却部材を設けたことにより、射出成形金型の構造上の制約により空隙内に対する気体の注入及び排出機構を設けることができない場合でも空隙を冷却することができる。
【0019】
更に、可動入れ子のキャビティ面が空隙を含む非転写面の形状と略相似形状であることにより、成形品の温度分布が不均一になることを防止できる。
【0020】
また、可動入れ子のキャビティ面と、キャビティ面と隣接する転写面とを所定の距離以上、例えば1mm以上離間することにより、或いは可動入れ子のキャビティ面と隣接する転写面の一部に切欠き部を設けることにより、空隙形成による成形品内部の温度分布が転写面に影響しないようにでき、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する射出成形金型を用いてプラスチック成形品を製造する、本発明に係るプラスチック成形品の製造方法によれば、キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動する可動入れ子を設け、溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填し、溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に、可動入れ子を樹脂から離隔するように摺動させて非転写面側に空隙を形成し、この空隙を強制的に冷却して空隙と接する非転写面を冷却する。
【0023】
【実施例】
図1は本発明の第1の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である。図2は可動入れ子摺動時の様子を示す概略断面図である。図1の(a),(b)及び図2において、本実施例の射出成形金型1を形成する複数の固定駒と、所定容積のキャビティ11を画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面12を有し、キャビティ11内に開口してキャビティ内に溶融した樹脂材料を射出充填する図示しないゲートを有し、転写面以外のキャビティ面である非転写面13を画成し、隣接するキャビティ駒の壁面に沿って移動可能な可動入れ子14とを含んで構成されている。この可動入れ子14には、可動入れ子14を摺動可能とするための圧力制御装置15が連結されている。また、可動入れ子14のキャビティ11を画成するキャビティ面は、形状において非転写面13の形状と略相似であるか、あるいは面積の広さとして非転写面13の全面を覆う広さを有する。更に、可動入れ子14の内部には、キャビティ11内と連通し、かつ温度調節装置18及び流量調節弁19を介して気体供給源20に連通される通気路16が設けられている。この通気路16のキャビティ11内と連通する通気口は溶融樹脂を射出充填する際当該溶融樹脂にて閉鎖されている。また、可動入れ子14に隣接する固定駒には排気路17が設けられており、この排気路17のキャビティ11側の開口は可動入れ子14が摺動することで開く。なお、図1の(a)内の点線円で囲まれた部分の拡大図である図1の(b)に示すように、転写面以外のキャビティ面である非転写面13を画成する可動入れ子14の面の端部から隣接する転写面12までの距離dが1mm以上になるように可動入れ子14を転写面12から離しておく。よって、空隙形成による成形品内部の温度分布が転写面に影響しないようにでき、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。また、図1の(c)に示すように、転写面12の可動入れ子14側の一端を切り欠いて切欠き部21を設けて転写面12と非転写面13が離間することでも図1の(b)と同様な効果が得れることは言うまでもない。
【0024】
次に、本実施例の射出成形金型を用いたプラスチック成形品の製造工程について図1及び図2に基づいて以下に説明する。
先ず、溶融樹脂が図示しないゲートを介してキャビティ11内に射出充填され、キャビティ11内に発生する樹脂圧力によって転写面12を転写する。そして、冷却固化した後に成形品を取出すわけだが、その際に可動入れ子14は連結されている圧力制御装置15によってキャビティ11内に溶融樹脂を射出充填する際にキャビティ11内に発生する最大樹脂圧力以上の押圧力が付与され、射出圧力によって可動入れ子14が移動しないように固定されている。次いで、図2に示すようにキャビティ11内に射出充填された樹脂の冷却固化が進み、樹脂圧力が所定圧力になった時、可動入れ子14を成形面から離す方向(図2の矢印A方向)に移動(後退)させ、可動入れ子14と成形品の間に空隙部22を形成する。この空隙部22に面した部分の樹脂が他の部分より動きやすくなるため、冷却によって生じる応力を吸収しながら非転写面が凹形状または凸形状のひけ23になり、よって転写面において歪みの少ない成形品を得ることができる。
【0025】
しかし、空隙部22は断熱層となるため、成形中に熱がこもり成形品の温度が上昇し、空隙部22の冷却速度が他のキャビティ面と比較して遅くなるため、成形品内部に温度分布が生じ、成形品を変形させてしまう。また、通常の射出成形の場合と比較して冷却時間(成形サイクル)が長くなり、成形品コストの増大を招く。そこで、本実施例によれば、可動入れ子14が摺動した時にキャビティ11内と連通し、かつ気体発生源20と連通されている通気路16から気体を空隙部22に流入させることで、空隙部22と接する非転写面を強制的に冷却し、上述したような空隙形成による不具合を防ぐことができる。また、可動入れ子14が隣接する転写面からの距離dが1mm以上離れていることで、上述の空隙形成による成形品の変形が転写面12にまで及ぼすことを軽減できるため、より形状精度の高い成形品を得ることができる。
【0026】
図1及び図2に示す上記第1の実施例の射出成形金型1は、通気路16を可動入れ子14に、排気路17を可動入れ子14に隣接する固定駒に、各々設けたものであるが、これに限定する必要はなく、第2の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である図3に示すように通気路16及び排気路17を可動入れ子14に設けても同様な効果が得られる。すなわち、図3からわかるように、可動入れ子14が矢印A方向に摺動することにより、通気路16及び排気路17の各開口における溶融樹脂による閉鎖が解除される。そして、通気路16及び排気路17は、可動入れ子14の摺動によって形成される空隙部22を介して互いに連通し、空隙部22と接する非転写面を冷却するのである。また、第3の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である図4に示すように、通気路16及び排気路17を可動入れ子14に隣接する固定駒に設けても同様な効果が得られる。すなわち、図4からわかるように、可動入れ子14が矢印A方向に摺動することにより、通気路16及び排気路17の各開口における可動入れ子14による閉鎖が解除される。そして、通気路16及び排気路17は、可動入れ子14の摺動によって形成される空隙部22を介して互いに連通し、空隙部22と接する非転写面を冷却するのである。図3に示す第2の実施例によれば通気路16及び排気路17を可動入れ子14に設けたことにより、また図4に示す第3の実施例によれば通気路16及び排気路17を固定駒に設けたことにより、キャビティ駒を簡単に加工することができると共に金型構造も複雑にならない。
【0027】
一方、空隙部22と接する非転写面を冷却する場合、冷却速度を速くしすぎると成形品内部には逆の温度分布が発生させてしまう。図1〜図4に示す各実施例では、気体供給源20に備えられている流量調節弁19を調節し、気体の流量を変えることで容易に複雑な機構を要せずに、空隙部22の温度をコントロールし、成形品の冷却速度を適宜最適に制御することができる。また、温度調節装置18で気体の温度を変えることで、上述した流量コントロールより更に冷却速度の制御性を向上させることができる。なお、通気路16又は/及び排気路17をキャビティ駒の樹脂と接する位置に設ける場合には、通気路16又は/及び排気路17の開口径は、0.005〜0.05mmが望ましい。これによって、射出充填時に樹脂が通気路16又は/及び排気路17に侵入して、バリが発生するのを防ぐことができる。
【0028】
次に、空隙部を形成する面を画成する可動入れ子を冷却することでも同様の効果を得ることができる。金型構造等の制約により空隙部内に気体を流すことができない場合には有効な手段となる。可動入れ子14を冷却する方法としては、本発明の第4の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である図5に示すように射出成形金型1の外部に冷媒用温度調節機24を備え、可動入れ子14の内部に形成された流路25に冷却用媒体を流すことで容易に実施することができる。冷却用媒体は使用温度域によって、例えば100℃以下なら水、100℃以上なら油と言ったように使い分けることで大きな温度範囲をカバーすることができる。
【0029】
また、本発明の第5の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である図6に示すように空隙部22を形成する面を画成する可動入れ子14の内部にヒートパイプ26を埋め込み、そしてヒートパイプ25に冷却フィン27を設けることでヒートパイプ26を効率良く空冷することにより、空隙部22を冷却することができる。この場合は金型外部に冷却媒体を流すことができるため、金型に冷却配管等を設ける必要がなく、金型構造が複雑にならない。
【0030】
上記各実施例において、使用する樹脂は特に限定されるものではなく、結晶性樹脂、非晶性樹脂のいずれの樹脂も使用できる。また、上記第1、第2の実施例で使用される気体も特に限定されるものではないが、空気または窒素ガスが安全、かつ安価な方法である。さらに、気体は圧縮された気体を送り込む方法の他、排気口からの吸引によって気体を引き込む方法で、空隙部に流す方法がある。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する射出成形金型を用いてプラスチック成形品を製造する、本発明に係るプラスチック成形品の製造方法によれば、キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動する可動入れ子を設け、溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填し、溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に、可動入れ子を樹脂から離隔するように摺動させて非転写面側に空隙を形成し、この空隙を強制的に冷却して空隙と接する非転写面を冷却する。よって、空隙の冷却速度を他のキャビティ面と同等にして、成形品内部の温度分布を小さくすることができる。また、空隙での熱のこもりによる冷却時間(成形サイクル)の増大も防ぐことができ、これにより、高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。また、可動入れ子を樹脂から離隔するように摺動させることにより、確実に所定領域に所定容積の空隙を形成することができ、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0034】
更に、空隙内に気体を注入し、かつ空隙内の気体を排気して空隙を強制的に冷却することにより、確実に空隙と接する非転写面を冷却することができ、冷却時間の減少を実現し、そして高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。
【0035】
また、空隙内に注入する気体の温度を調節することにより、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0036】
更に、空隙内に注入する気体の流量を調節することにより、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0037】
また、可動入れ子自体を冷却して、非転写面を形成する可動入れ子のキャビティ面で形成する空隙を冷却することにより、射出成形金型の構造上の制約により空隙内に対する気体の注入及び排出機構を設けることができない場合でも空隙を冷却することができる。
【0038】
更に、空隙を形成する可動入れ子のキャビティ面が空隙を含む非転写面の形状と略相似形状であることにより、成形品の温度分布が不均一になることを防止できる。
【0039】
また、可動入れ子のキャビティ面と、キャビティ面と隣接する転写面とを所定の距離以上、例えば1mm以上離間することにより、或いは可動入れ子のキャビティ面と隣接する転写面の一部に切欠き部を設けることにより、空隙形成による成形品内部の温度分布が転写面に影響しないようにでき、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【0040】
更に、所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する、別の発明に係る射出成形金型は、溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填する樹脂充填手段と、キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動し、溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に非転写面に空隙を形成する可動入れ子と、空隙を強制的に冷却して空隙と接する非転写面を冷却する冷却手段とを有する。よって、空隙の冷却速度を他のキャビティ面と同等にして、成形品内部の温度分布を小さくすることができる。また、空隙での熱のこもりによる冷却時間(成形サイクル)の増大も防ぐことができ、これにより、高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。
【0041】
また、空隙内に気体を注入する通気路、又は空隙内の気体を排気する排気路のいずれか一方を可動入れ子に設け、他方を可動入れ子に隣接するキャビティ駒に設けた。または、空隙内に気体を注入する通気路、及び空隙内の気体を排気する排気路を可動入れ子に設けた。あるいは、空隙内に気体を注入する通気路、及び空隙内の気体を排気する排気路を可動入れ子に隣接するキャビティ駒に設けた。よって、確実に空隙と接する非転写面を冷却することができ、冷却時間の減少を実現し、そして高精度なプラスチック成形品を低コストに生産することができる。
【0042】
更に、空隙内に注入する気体の温度を調節する気体温度制御手段を設けた。また、空隙内に注入する気体の流量を調節する気体流量制御手段を設けた。よって、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
また、可動入れ子に冷却用媒体を流す流路を設けたことにより、または可動入れ子自体を冷やすヒートパイプ等の冷却部材を設けたことにより、射出成形金型の構造上の制約により空隙内に対する気体の注入及び排出機構を設けることができない場合でも空隙を冷却することができる。
【0043】
更に、可動入れ子のキャビティ面が空隙を含む非転写面の形状と略相似形状であることにより、成形品の温度分布が不均一になることを防止できる。
【0044】
また、可動入れ子のキャビティ面と、キャビティ面と隣接する転写面とを所定の距離以上、例えば1mm以上離間することにより、或いは可動入れ子のキャビティ面と隣接する転写面の一部に切欠き部を設けることにより、空隙形成による成形品内部の温度分布が転写面に影響しないようにでき、高精度なプラスチック成形品を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である。
【図2】可動入れ子摺動時の様子を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である。
【図6】本発明の第5の実施例に係る射出成形金型の概略断面図である。
【符号の説明】
1;射出成形金型、11;キャビティ、12;転写面、13;非転写面、
14;可動入れ子、15;圧力制御装置、16;通気路、17;排気路、
18;温度調節装置、19;流量調節弁、20;気体供給源、
21;切欠き部、22;空隙部、23;ひけ、24;冷媒用温度調節機、
25;流路、26;ヒートパイプ、27;冷却フィン。

Claims (19)

  1. 所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、前記キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する射出成形金型を用いてプラスチック成形品を製造するプラスチック成形品の製造方法において、
    前記キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動する可動入れ子を設け、
    溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填し、
    溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に、前記可動入れ子を樹脂から離隔するように摺動させて非転写面側に空隙を形成し、
    該空隙を強制的に冷却して前記空隙と接する非転写面を冷却することを特徴とするプラスチック成形品の製造方法。
  2. 前記空隙内に気体を注入し、かつ前記空隙内の気体を排気して前記空隙を強制的に冷却することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
  3. 前記空隙内に注入する気体の温度を調節することを特徴とする請求項2に記載のプラスチック成形品の製造方法。
  4. 前記空隙内に注入する気体の流量を調節することを特徴とする請求項2又は3に記載のプラスチック成形品の製造方法。
  5. 前記可動入れ子自体を冷却して、前記非転写面を形成する前記可動入れ子のキャビティ面で形成する前記空隙を冷却することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック成形品の製造方法。
  6. 前記空隙を形成する前記可動入れ子のキャビティ面が、前記空隙を含む非転写面の形状と略相似形状であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
  7. 前記可動入れ子のキャビティ面と、該キャビティ面と隣接する前記転写面とを所定の距離以上離間することを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
  8. 前記可動入れ子のキャビティ面と隣接する前記転写面の一部に切欠き部を設けることを特徴とする請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
  9. 所定容積のキャビティを画成するキャビティ面に少なくとも1つ以上の転写面を有し、前記キャビティ内に発生する樹脂圧力によって転写面を転写する射出成形金型において、
    溶融した樹脂の軟化温度以下に加熱された金型に溶融の樹脂を射出充填する樹脂充填手段と、
    前記キャビティ内の転写面以外のキャビティ面である非転写面を画成すると共に樹脂から離隔するように摺動し、溶融の樹脂が軟化温度未満まで冷却する時に前記非転写面に空隙を形成する可動入れ子と、
    前記空隙を強制的に冷却して前記空隙と接する非転写面を冷却する冷却手段とを有することを特徴とする射出成形金型。
  10. 前記空隙内に気体を注入する通気路、又は前記空隙内の気体を排気する排気路のいずれか一方を前記可動入れ子に設け、他方を前記可動入れ子に隣接する前記キャビティ駒に設けたことを特徴とする請求項9に記載の射出成形金型。
  11. 前記空隙内に気体を注入する通気路、及び前記空隙内の気体を排気する排気路を前記可動入れ子に設けたことを特徴とする請求項9に記載の射出成形金型。
  12. 前記空隙内に気体を注入する通気路、及び前記空隙内の気体を排気する排気路を前記可動入れ子に隣接する前記キャビティ駒に設けたことを特徴とする請求項9に記載の射出成形金型。
  13. 前記空隙内に注入する気体の温度を調節する気体温度制御手段を設けたことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の射出成形金型。
  14. 前記空隙内に注入する気体の流量を調節する気体流量制御手段を設けたことを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の射出成形金型。
  15. 前記可動入れ子に冷却用媒体を流す流路を設けたことを特徴とする請求項9に記載の射出成形金型。
  16. 前記可動入れ子自体を冷やす冷却部材を設けたことを特徴とする請求項9に記載の射出成形金型。
  17. 前記可動入れ子のキャビティ面が、前記空隙を含む非転写面の形状と略相似形状であることを特徴とする請求項9、15又は16のいずれか一項に記載の射出成形金型。
  18. 前記可動入れ子のキャビティ面と、該キャビティ面と隣接する前記転写面とを所定の距離以上離間することを特徴とする請求項9に記載の射出成形金型。
  19. 前記可動入れ子のキャビティ面と隣接する前記転写面の一部に切欠き部を設けることを特徴とする請求項9記載の射出成形金型。
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