JPWO2014157610A1 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置、有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜と組成物及び発光方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置、有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜と組成物及び発光方法 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、発光効率が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。また、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する照明装置及び表示装置を提供することである。また、発光性薄膜、組成物及び発光方法を提供することである。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子10、101は、一対の電極105及び107と、一対の電極間に一または複数の有機層106が具備された有機エレクトロルミネッセンス素子10、101であって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と、当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を促進し蛍光発光を増強する外部重原子効果を及ぼす重原子化合物とを、それぞれ、有機層106のいずれかに含有していることを特徴とする。

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置、有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜、有機ルミネッセンス素子用組成物及び発光方法に関し、特には発光量子収率、外部量子収率及び寿命が改善された有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置、表示装置、有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜、有機ルミネッセンス素子用組成物及び発光方法に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electro luminescence:以下「EL」と記す)を利用した有機EL素子(「有機電界発光素子」ともいう。)は、平面発光を可能とする新しい発光システムとしてすでに実用化されている技術である。有機EL素子は、電子ディスプレイはもとより、最近では照明機器にも適用され、その発展が期待されている。
このような有機EL素子のプロトタイプ(蛍光発光材料を利用するタイプ)が発表されたのは1987年である。さらに、一重項励起子と三重項励起子のすべてをエレクトロルミネッセンスに利用し、高発光効率を実現するリン光発光材料を用いた有機EL素子が発表されたのは1998年である。
リン光発光性有機EL素子において、緑色発光及び赤色発光については、発光効率と発光寿命の両方で実用域の材料や技術が開発され、電子ディスプレイや照明などに活用されている。
一方、青色発光は、赤や緑に比べ発光材料自体の三重項エネルギーを高くする必要があることから、基底状態と励起状態のエネルギー準位のギャップを広くする必要がある。結果として分子が脆弱化し発光素子寿命が短くなることが知られている(例えば、非特許文献1)。
また、発光色をより純青又は青紫に近づけようとすると、さらにその前記ギャップを広くしなければならず、発光波長の短波化と発光素子の長寿命化は完全にトレードオフの関係になり、現状では、両者の両立は達成されていない。
有機EL素子に利用することができる発光材料として、リン光発光材料の他に蛍光を発する蛍光発光材料が従来知られている。この蛍光材料についても近年新しい動きが出てきた。
例えば、特許文献1には、二つの三重項励起子の衝突融合により一重項励起子が生成する現象(以下、Triplet−Triplet Fusion:「TTF現象」と呼ぶ。)に着目し、TTF現象を効率的に起こして蛍光素子の高効率化を図る技術が開示されている。この技術により青色の蛍光発光材料の電力効率は従来の蛍光発光材料の2〜3倍まで向上しているが、励起三重項エネルギー準位から励起一重項エネルギー準位への変換率はもともと50%であることから、前記高発光効率のリン光発光材料のレベルに到達するには原理的に限界がある。
さらに特許文献2には、銅錯体を用いた遅延蛍光化合物を利用し、発光効率を向上させる技術が開示されている。しかしながら、ここで使用されている化合物は、緑から赤色の発光を示し、かつ従来の蛍光発光材料に比して発光効率の向上は見られるものの、前記高発光効率のリン光発光材料のレベルには程遠い状況である。
また、最近では遅延蛍光化合物の一つであるが、その発光スキームが異なる熱活性化型蛍光発光化合物(以下、TADF化合物ともいう。)の有機EL素子への利用の可能性等が発見された(例えば、非特許文献2〜7及び特許文献3参照)。
このTADF化合物の発光機構の特徴は、図1に示すようなTADF化合物の特異なエネルギーダイヤグラムにある。すなわち、通常の蛍光発光材料に比べ、一重項励起エネルギー準位と三重項励起エネルギー準位の差が小さい(図1では、ΔEst(TADF)がΔEst(F)よりも小さい)ことが特徴である。したがって、この準位間のエネルギー差が小さいことで、電界励起により75%の確率で発生する三重項励起子が、本来なら発光に寄与できないところ、有機EL素子の駆動時の熱で一重項励起状態に遷移し、その状態から基底状態へ輻射失活(「輻射遷移」又は「放射失活」ともいう。)し蛍光発光を起こすものである。
しかしながら、この場合でも、三重項励起エネルギーT(TADF)は必ず一重項励起エネルギーS(TADF)よりも小さい(即ち、安定とも言える)。このため、75%の三重項励起子の一部又は大部分は一重項に項間交差することはできずに、熱的に失活してしまうものと考えられる。
当該TADF化合物を利用する有機EL素子は、もともとIrやPtなどのレアメタルを使わないことが技術的な特徴として考案されたものではあるが、前記のようにどうしても残留する三重項励起子ができてしまうため、リン光発光性金属錯体を用いた高発光効率の有機EL素子と同等の発光効率を得るのには原理上無理があると考えられる。
国際公開第2012/133188号 国際公開第2011/161425号 特開2011−213643号公報
「照明に向けた燐光有機EL技術の開発」応用物理 第80巻、第4号、2011年 H.Uoyama, et al., Nature, 2012, 492,234‐238 S.Y.Lee et al., Applied Physics Letters, 2012, 101, 093306-093309 Q.Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 14706-14709 T.Nakagawa et al., Chem. Commun., 2012, 48, 9580-9582 A.Endo et al., Adv. Mater., 2009, 21, 4802-4806 有機EL討論会 第10回例会予稿集 p11-12, 2010
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、発光効率が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。また、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する照明装置及び表示装置を提供することである。また、有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜、有機ルミネッセンス素子用組成物及び発光方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物(TADF化合物)の三重項励起子の無輻射失活を抑制し、できるだけ有効に活用することはできないかという観点から、上記問題の原因等について検討したところ、当該TADF化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差に対しイリジウムや白金等が外部重原子効果を及ぼし蛍光発光を増強することを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明にかかる上記課題は、以下の手段により解決される。
1.一対の電極と、前記一対の電極間に一または複数の有機層が具備された有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と、当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を促進し蛍光発光を増強する外部重原子効果を及ぼす重原子化合物とを、それぞれ、前記有機層のいずれかに含有していることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
2.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記重原子化合物とが、前記外部重原子効果を発現できる距離範囲内に近接して配置されていることを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記重原子化合物が、リン光発光性金属錯体であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物が蛍光を発し、かつ前記リン光発光性金属錯体がリン光を発することを特徴とする第3項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記リン光発光性金属錯体とが、それぞれ少なくとも一種類、前記有機層のいずれかに含有されており、かつ当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物(TADF)の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と当該リン光発光性金属錯体(P)の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とが、相互の準位間においてエネルギー又は電子が移動できる範囲内にあることを特徴とする第3項又は第4項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー準位(S(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(1)で表される範囲内であることを特徴とする第3項から第5項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(1): −0.2eV≦[S(TADF)−T(P)]≦1.0eV
7.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー準位(S(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(2)で表される範囲内であることを特徴とする第3項から第6項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(2): 0eV≦[S(TADF)−T(P)]≦0.2eV
8.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(3)で表される範囲内であることを特徴とする第3項から第7項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(3): −0.2eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.5eV
9.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(4)で表される範囲内であることを特徴とする第3項から第8項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
式(4): 0eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.1eV
10.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))が、2.4〜3.5eVの範囲内であることを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記リン光発光性金属錯体が、同一の発光層内に含有されていることを特徴とする第3項から第10項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.前記リン光発光性金属錯体が、下記一般式(I)で表される構造を有することを特徴とする第3項から第11項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2014157610
(一般式(I)中、MはIr、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsを表す。A及びAは各々炭素原子又は窒素原子を表す。環ZはA及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環基、又は5員若しくは6員の芳香族複素環基を表す。B〜Bは5員の芳香族複素環基を形成する原子群であり、置換基を有していてもよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。LはMに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。mは0〜2の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、m+nは2又は3である。mおよびnが2以上のとき、環Z及びB〜Bで表される芳香族複素環基及びLは各々同じでも異なっていてもよい。)
13.第1項から第12項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする照明装置。
14.第1項から第12項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする表示装置。
15.発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜であって、
熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有していることを特徴とする有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜。
16.発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用組成物であって、
熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有していることを特徴とする有機ルミネッセンス素子用組成物。
17.同一の有機ルミネッセンス素子内において、物理的又は化学的作用によって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物による蛍光を発光させ、かつリン光発光性金属錯体からリン光を発光させることを特徴とする発光方法。
本発明の上記手段により発光効率が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。また、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を具備する照明装置及び表示装置を提供することができる。また、有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜、有機ルミネッセンス素子用組成物及び発光方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構、作用機構については明確にはなっていないが、以下のように推察される。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物(TADF化合物)と、当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を促進し蛍光発光を増強する外部重原子効果を及ぼす重原子化合物とを、それぞれ、有機層のいずれかに含有する。これにより、当該TADF化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差に対し重原子化合物が外部重原子効果を及ぼすため、三重項励起状態で留まっていた三重項励起子を用いて蛍光発光を増強することができ、発光効率を向上させることができるものと考えている。
リン光発光性金属錯体を併用する場合のTADF化合物のエネルギーダイヤグラムを示した模式図 リン光発光性金属錯体によるTADF化合物の活性化を示した模式図 TADF化合物からリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動を示した模式図 リン光発光性金属錯体によるTADF化合物の活性化における発光強度の増加を示した概念図 有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図 アクティブマトリクス方式による表示装置の模式図 画素の回路を示した概略図 パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図 照明装置の概略図 照明装置の模式図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、一対の電極と、前記一対の電極間に一または複数の有機層が具備された有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と、当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を促進し蛍光発光を増強する外部重原子効果を及ぼす重原子化合物とを、それぞれ、前記有機層のいずれかに含有していることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項17までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記重原子化合物とが、前記外部重原子効果を発現できる距離範囲内に近接して配置されていることが好ましい。これにより、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を重原子化合物の外部重原子効果により、効果的に促進し、蛍光発光を増強することができる。
また、本発明においては、前記重原子化合物が、リン光発光性金属錯体であることが好ましい。これにより、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物に効果的に重原子効果を及ぼすことができる。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物が蛍光を発し、かつ前記リン光発光性金属錯体がリン光を発することが好ましい。これにより、蛍光及びリン光による異なる波長の発光を得ることができる。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記リン光発光性金属錯体とが、それぞれ少なくとも一種類、前記有機層のいずれかに含有されており、かつ当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物(TADF)の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と当該リン光発光性金属錯体(P)の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とが、相互の準位間においてエネルギー又は電子が移動できる範囲内にあることが好ましい。これにより、リン光発光性金属錯体(P)から熱活性化型遅延蛍光発光性化合物(TADF)に重原子効果を効果的に及ぼすことが出来るとともに、TADF化合物の75%の三重項励起子のうち熱的に失活してしまうエネルギーを効果的にリン光発光性金属錯体が捕捉することが出来る。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー準位(S(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(1)で表される範囲内であることが好ましい。
式(1): −0.2eV≦[S(TADF)−T(P)]≦1.0eV
これにより、リン光発光性金属錯体から熱活性化型遅延蛍光発光性化合物に重原子効果を及ぼす際に、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物からリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動が支配的になることなく効果的に重原子効果を及ぼすことが出来る。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー準位(S(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(2)で表される範囲内であることが好ましい。
式(2): 0eV≦[S(TADF)−T(P)]≦0.2eV
これにより、リン光発光性金属錯体から熱活性化型遅延蛍光発光性化合物に重原子効果を及ぼす際に、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物からリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動が支配的になることなく、さらに効果的に重原子効果を及ぼすことが出来る。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(3)で表される範囲内であることが好ましい。
式(3): −0.2eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.5eV
これにより、リン光発光性金属錯体から熱活性化型遅延蛍光発光性化合物に重原子効果を及ぼす際に、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物からリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動が支配的になることなく効果的に重原子効果を及ぼすことが出来るとともに、TADFの75%の三重項励起子のうち熱的に失活してしまうエネルギーを効果的にリン光発光性金属錯体が捕捉することが出来る。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(4)で表される範囲内であることが好ましい。
式(4): 0eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.1eV
これによりリン光発光性金属錯体から熱活性化型遅延蛍光発光性化合物に重原子効果を及ぼす際に、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物からリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動が支配的になることなく効果的に重原子効果を及ぼすことが出来るとともに、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の75%の三重項励起子のうち熱的に失活してしまうエネルギーをさらに効果的にリン光発光性金属錯体が捕捉することが出来る。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))が、2.4〜3.5eVの範囲内であることが好ましい。これにより、青〜青緑色発光する熱活性化型遅延蛍光発光性化合物に本発明の一般式(I)で表されるリン光発光性金属錯体が効果的に重原子効果を及ぼすことが出来るとともに、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の75%の三重項励起子のうち熱的に失活してしまうエネルギーを効果的にリン光発光性金属錯体が捕捉することが出来る。
また、本発明においては、前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記リン光発光性金属錯体が、同一の発光層内に含有されていることが好ましい。これにより、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差をリン光発光性金属錯体の外部重原子効果により、さらに効果的に促進し、蛍光発光を増強することができる。
また、本発明においては、前記リン光発光性金属錯体が、下記一般式(I)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2014157610
(一般式(I)中、MはIr、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsを表す。A及びAは各々炭素原子又は窒素原子を表す。環ZはA及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環基、又は5員若しくは6員の芳香族複素環基を表す。B〜Bは5員の芳香族複素環基を形成する原子群であり、置換基を有していてもよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。LはMに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。mは0〜2の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、m+nは2又は3である。mおよびnが2以上のとき、環Z及びB〜Bで表される芳香族複素環基及びLは各々同じでも異なっていてもよい。)
これにより、該リン光発光性金属錯体は、比較的量子収率の高い、安定性に優れ、TADF化合物と近接して存在する場合、効果的な重原子効果を及ぼし、かつTADF化合物の75%の三重項励起子のうち熱的に失活してしまうエネルギーを効果的に捕捉することが出来る。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、照明装置に好適に具備され得る。これにより、発光効率が改善された照明装置を得ることができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、表示装置に好適に具備され得る。これにより、発光効率が改善された表示装置を得ることができる。
本発明の発光性薄膜は、発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜であって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有していることが好ましい。これにより、有機ELのみならず、例えばフォトルミネッセンスにおいても前記リン光発光性金属錯体によるTADF化合物への外部重原子効果を及ぼすことで、TADF化合物からの高い量子収率が期待出来る。
本発明の組成物は、発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用組成物であって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有していることが好ましい。これにより、リン光発光性金属錯体から熱活性化型遅延蛍光発光性化合物への外部重原子効果と熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の75%の三重項励起子のうち熱的に失活してしまうエネルギーを効果的に捕捉することが出来る組成物となり、この組成物を用いて高い量子収率または外部取り出し量子収率の得られる薄膜や発光層を形成することが出来る。
本発明の発光方法は、同一の有機ルミネッセンス素子内において、物理的又は化学的作用によって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物による蛍光を発光させ、かつリン光発光性金属錯体からリン光を発光させることが好ましい。これにより、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物による蛍光のみならず、リン光発光性金属錯体から発光するリン光成分が加わり、全体的に量子収率や外部取り出し量子収率を高めることが出来る。
以下、本発明とその構成要素および本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用する。
<熱活性化型遅延蛍光発光の原理とエネルギー準位>
TADF化合物とリン光発光性金属錯体とのエネルギー準位の関係を説明する。
TADF化合物のような蛍光発光性化合物については、通常、一重項状態から一重項状態への遷移及び三重項状態から三重項状態への遷移は許容遷移であり、通常その速度定数は大きい。しかし、一重項状態から三重項状態への遷移及び三重項状態から一重項状態への遷移は禁制遷移であり、その速度定数は小さい。つまり遷移が起こりにくいことになる。
一方で、リン光発光性金属錯体においては、一重項励起状態から基底状態に輻射失活するいわゆる蛍光発光が観測されず、三重項励起状態から基底状態に輻射失活するいわゆるリン光発光が高い効率かつ早い速度で起こることが知られている。これは、中心金属である遷移金属(例えば、イリジウムや白金)の重原子効果によるものである。
この重原子効果は、必ずしも同一分子内のみで起こる(内部重原子効果)ものではなく、隣接または近接する分子にもその効果を及ぼすことができる(外部重原子効果)ことが知られている。
すなわち、図2の模式図で示す通り、TADF化合物の近傍にリン光発光性金属錯体が共存すると、TADF化合物の主要メカニズムである熱活性化による逆項間交差(T(TADF)→S(TADF))は加速されることになり、TADF(熱活性化型遅延蛍光発光)は助長されることになる。
さらに、逆項間交差又は輻射失活せずに残留してしまう三重項励起子は、リン光発光性金属錯体が共存しない場合には熱を放出し無輻射失活するのみであるが、リン光発光性金属錯体が共存することにより、T(TADF)→T(P)のエネルギー移動が起こり、リン光発光性金属錯体が発光する。これは三重項状態から三重項状態への許容遷移であるため、エネルギーの移動速度が速く、T(TADF)とT(P)のエネルギー準位が逆転していなければ即座に起こるものである。
ここで、この三重項状態から三重項状態への遷移は許容遷移であることから、T(P)が必ずしもT(TADF)よりも小さくある必要はない。具体的には、同等または多少T(P)の方が高いエネルギーレベルであってもこのエネルギー移動、すなわちリン光発光性金属錯体からの発光は起こる。T(P)とT(TADF)との差の絶対値の許容幅は、0〜0.5eVの範囲内であればよく、特に、0〜0.2eVの範囲内が好ましい。この範囲内であれば本発明の本質であるTADF化合物からの蛍光発光とリン光発光性金属錯体からのリン光発光の両方を同時に得られることがわかった。
外部重原子効果を発現しうる材料としては、周期表第6周期以降の元素を含む化合物であれば特に制限はないが、Ir、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsのうち少なくとも1種を含む化合物が好ましい。更に好ましいのはOs、Pt、Ir又はAuのうち少なくとも1種を含む有機金属錯体である。その中でも特に好ましいのはOs、Pt、Ir及びAuのうち少なくとも1種を含むリン光発光性金属錯体である。
リン光発光性金属錯体の中でも、室温(約25℃)でリン光発光を示す錯体が最も好ましい。すなわち、外部重原子効果を発揮するためには、TADF化合物と相互作用し易い有機化合物を含むことが重要であり、更には内部重原子効果により一重項励起状態と三重項励起状態のスピンが混ざり合う(スピン軌道相互作用)ことも重要である。さらに、TADF化合物の三重項励起状態からの熱失活のエネルギーをリン光発光に変換する為には室温でリン光発光することも重要である。
TADF化合物と併用するリン光発光性金属錯体の発光波長は、T(TADF)からT(P)へのエネルギー移動の観点からは、上記の好ましい範囲内であれば、リン光発光性金属錯体の方が長波長であれば特に問題はない。例えば、TADF化合物からの青色の蛍光発光と、リン光発光性金属錯体からの橙色のリン光発光を同時に発生させ、全体として白色に近い発光を得ることもできる。また、TADF化合物からは短波長発光である純青の発光を、リン光発光性金属錯体ではそれよりも長波長なライトブルーの発光を発生させ、全体として青色の発光を得ることもできる。このような、同一の有機ルミネッセンス素子内において、物理的又は化学的作用によって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物による蛍光を発光させ、かつリン光発光性金属錯体からリン光を発光させることも本発明の発光方法の一つである。
このように、TADF化合物とリン光発光性金属錯体の選択は、リン光発光性金属錯体のTエネルギー準位が上記の好ましい範囲内であれば、いかなる組合せでも適用できる。とりわけ、現状の技術領域においては、電子ディスプレイの色再現域を拡げるためにも、また、照明装置の色温度を高めるためにも、高効率かつ長寿命な短波長成分を含有する青色発光を得ることの要望が高い。産業上の観点ではTADF化合物に純青から青紫の発光をさせ、共存するリン光発光性金属錯体にはライトブルーの発光をさせることでその要望を満足させるのが最も良好な活用方法であると言える。
[最低励起一重項エネルギーS(TADF)]
TADF化合物の最低励起一重項エネルギーSについては、本発明においても通常の手法と同様にして算出されるもので定義される。すなわち、測定対象となる化合物を石英基板上に蒸着して試料を作製し、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸光度、横軸:波長とする。)を測定する。この吸収スペクトルの長波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値に基づいて、所定の換算式から算出される。但し、本発明において使用するTADF化合物は、分子自体の凝集性が比較的高いため、薄膜の測定においては凝集による誤差を生じる可能性がある。本発明におけるTADF化合物はストークスシフトが比較的小さいこと、さらに励起状態と基底状態の構造変化が極めて小さいことも考慮し、本発明における最低励起一重項エネルギーは、室温(約25℃)におけるTADF化合物の溶液状態の発光波長のピーク値を近似値として用いた。ここで、使用する溶媒は、TADF化合物の凝集状態に影響を与えない、すなわち溶媒効果の影響が小さい溶媒、例えばシクロヘキサンやトルエン等の非極性溶媒等を用いることができる。
また、TADF化合物が熱活性化型遅延蛍光発光(TADF)を示すためには、ΔEst=(S(TADF)−T(TADF))の絶対値が1.0eV以下であることが好ましく、より好ましくは0.5eV以下である。ΔEstの値は、TADF化合物の主要メカニズムである熱活性化による逆項間交差(T(TADF)→S(TADF))の起こりやすさと直結するため、熱活性化型遅延蛍光発光を示すためには非常に大きい要因と言える。
TADF化合物の最低励起一重項エネルギーは必ずその最低励起三重項エネルギーよりも大きいため、リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位との差[S(TADF)−T(P)]は[T(TADF)−T(P)]よりも必ず大きくなる。その範囲はΔEst=[S(TADF)−T(TADF)]と[T(TADF)−T(P)]の和で定義される。
従って、[S(TADF)−T(P)]の好ましい範囲としては、例えば、好ましいΔEstを0.5eV以下、好ましいT(TADF)−T(P)を0.5eV以下とすれば1.0eV以下であることが好ましい。具体的には、−0.2eV≦[S(TADF)−T(P)]≦1.0eVの範囲内、特に、0eV≦[S(TADF)−T(P)]≦0.2eVの範囲内が好ましい。この範囲であれば、TADF化合物の近傍にリン光発光性金属錯体が共存すると、TADF化合物の主要メカニズムである熱活性化による逆項間交差(T(TADF)→S(TADF))は加速されることになり、熱活性化型遅延蛍光発光は助長されることになる。
[最低励起三重項エネルギーT(TADF)]
TADF化合物の最低励起三重項エネルギーについては、溶液もしくは薄膜のフォトルミネッセンス(PL)特性により算出した。例えば薄膜における算出方法としては、希薄状態のTADF化合物の分散物を薄膜にした後に、ストリークカメラを用い、過渡PL特性を測定することで、蛍光成分とリン光成分の分離を行い、そのエネルギー差をΔEstとして最低励起一重項エネルギーから最低励起三重項エネルギーを求めることが出来る。また、TADF化合物の温度依存性を利用することもできる。例えば低温(8.5K)状態では最低励起三重項エネルギーからの発光がメインであるため、低温状態でのメインの発光から直接最低励起三重項エネルギーを求めることもできる。
[最低励起三重項エネルギーT(P)]
本発明においてリン光発光性金属錯体の、最低励起三重項エネルギーT(P)は、測定対象となる化合物を溶媒に溶解させた試料を低温(77K)でリン光スペクトル(縦軸:リン光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、このリン光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値に基づいて、所定の換算式(E≒1240/λ[eV]、λ:波長[nm])から算出した。
測定・評価にあたって、絶対PL量子収率の測定については、絶対PL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)を用いた。発光寿命は、ストリークカメラC4334(浜松ホトニクス社製)を用いて、サンプルをレーザー光で励起させながら測定した。
次にリン光発光性金属錯体のTエネルギーの下限について説明する。図3にはその模式図を示す。
前記のとおり、原理的にはリン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー(T(P))は、共存するTADF化合物の最低励起三重項エネルギー(T(TADF))よりも小さければエネルギー移動は起こるため原理上の下限値はないと言える。しかし、実際にはそれらの差(ΔEt(P))が0.5eV以下であれば最適な速度でリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動が起こる。これにより、TADF化合物の三重項励起子は一重項励起子に項間交差することなく、全てリン光発光性金属錯体に移ってしまい、そもそものTADF現象が起こりにくくなることを抑制することができる。
以上の理由から、TADF化合物とリン光発光性金属錯体の両方を同時に発生させる観点からは、両者の最低励起三重項エネルギー準位(T)は、
−0.2eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.5eV
であることが好ましい。
さらに、TADF化合物から短波長な青色発光を発生させ、リン光発光性金属錯体からライトブルー発光を両方同時に発生させるためには、
0eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.1eV
の条件を満たすことが好ましいことが我々の研究開発の成果からわかってきた。
また、前記のような発光機構から考えると、TADF化合物とリン光発光性金属錯体は近接して存在することが効果的である。近接とはTADF化合物とリン光発光性金属錯体間でのエネルギー移動(外部重原子効果)を及ぼすために必要な距離であり、デクスター機構によるエネルギー移動のためには0.3〜1nmの範囲内にTADF化合物とリン光発光性金属錯体が接近していることが好ましい。また、フェルスター機構によるエネルギー移動のためには1〜10nmの範囲内にTADF化合物とリン光発光性金属錯体が存在していることが好ましい。前者では同一層内にTADF化合物とリン光発光性金属錯体が存在する必要があるが、後者の場合、TADF化合物とリン光発光性金属錯体を隣接する層にそれぞれを存在させるか、又は、同一層内に共存させることが好ましい。
本発明では、TADF化合物とリン光発光性金属錯体が外部重原子効果を発現できる距離範囲内に近接して配置されていればよく、単一層であっても、各々が隣接する2層に含まれていてもよい。
本発明で使用するリン光発光性金属錯体の好ましい濃度としては、リン光発光性金属錯体がTADF化合物に対し外部重原子効果を示せるよう近接して存在することができる濃度であれば特に制限はないが、TADF化合物とリン光発光性金属錯体との三重項エネルギーの差によるエネルギー移動の起こりやすさも鑑みて、TADF化合物の含有量に対し0.05質量%以上25質量%以下の範囲内で任意に選ばれる。その中で好ましくは0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、最も好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。その中でも、T(TADF)−T(P)との関係から下記の一般式で示される濃度A以下で使用されることが好ましい。
A(TADF化合物に対するリン光発光性金属錯体の質量%)=17−20×(T(TADF)−T(P))
具体的には、T(TADF)−T(P)が大きい場合、すなわちTADF化合物とリン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギーの差が大きい場合には、TADF化合物の最低励起三重項エネルギー準位からリン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位に容易にエネルギー移動できる。このため、TADFの項間交差の妨げとならないようリン光発光性金属錯体の濃度は低い方が好ましく、逆に、T(TADF)−T(P)が大きい場合、すなわちTADF化合物とリン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギーの差が小さい場合には、TADF化合物の最低励起三重項エネルギー準位とリン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位が混合し易いため、リン光発光性金属錯体の濃度は前者に比べ比較的高い方が好ましい。
また、リン光発光性金属錯体とTADF化合物が隣接層にそれぞれ存在する場合には、層界面でのエネルギー移動が起こるために必要な濃度であれば特に制限はないが、効果を最大限に発揮するためにも同一層に共存する場合よりも高濃度であることが好ましい。好ましいリン光発光性金属錯体の濃度は、隣接層のTADF化合物に対し0.5質量%以上、25質量%以下であることが好ましい。TADF化合物とリン光発光性金属錯体を用いた有機EL素子を作製する場合においては、便宜的に上述のリン光発光性金属錯体の濃度範囲を体積%に置き換えて用いることも可能である。
次にリン光発光性金属錯体によるTADF化合物の活性化における発光強度の増加を示した概念図を図4に示す。すなわち、図4には、−0.2eV≦[S(TADF)−T(P)]≦1.0eVの関係又は−0.2eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.5eVの関係を満たし、かつ適切な濃度でTADF化合物とリン光発光性金属錯体がエネルギー又は電子が移動できる範囲内に存在する場合の発光スペクトルの発光強度が増加する機構を表している。
具体的には、破線で示すTADF化合物の励起三重項エネルギー準位から励起一重項エネルギー準位への項間交差は、リン光発光性金属錯体によって活性化される(図2参照)。
そして、TADF化合物の三重項励起エネルギー準位からの熱失活成分をリン光発光性金属錯体が捕捉することで、TADF化合物が単独で発光するよりもTADF化合物による蛍光発光の発光強度が増加し、かつリン光発光の両方を得ることができる。
ここまで記載したことは、有機EL素子を前提としているが、本発明は電界励起が必要条件ではなく、例えば、光励起(Photoexcitation)や電磁場(Electromagnetic excitation)による励起又は熱励起(Thermal excitation)でも発現する現象である。
また、TADF化合物からの蛍光発光とリン光発光性金属錯体のリン光発光を共に得るには、双方が同一系内に存在することが好ましいため、TADF化合物とリン光発光性金属錯体が共存する有機ルミネッセンス素子用組成物を用いる場合も本発明の一つである。
また、TADF化合物及びリン光発光性金属錯体は、どちらも自身の凝集が起こることで、三重項状態においても一重項状態においても、本来の準位よりも低い新たな安定準位が形成されてしまう場合がある。この場合、本発明の機能を発現しないことになるため、必要に応じてバインダーやホスト化合物などを併用することも可能であり、むしろそれらを共存させることが好ましい。
<TADF化合物>
本発明で使用できる熱活性化型遅延蛍光化合物(TADF化合物)は次のような特徴を有する。
(1)室温(298K)での発光寿命が、マイクロ秒レベルである
(2)室温(298K)での発光波長が、低温(77K)の発光波長よりも短い
(3)室温(298K)での発光寿命が、低温(77K)の発光寿命より大幅に短い
(4)温度の上昇により、発光強度が向上する
その他には、非特許文献2〜7で示されるように最低励起一重項エネルギー準位と最低励起三重項エネルギー準位とのエネルギー差ΔEst(TADF)が非常に小さいことも特徴である。その許容幅は0〜1.0eVの範囲内と言われているが、好ましくは0eV≦ΔEst(TADF)≦0.5eVである。さらに、構造の最適化により、基底状態と励起状態もしくは一重項励起状態と三重項励起状態の構造変化を限りなく小さくし、無輻射失活(Knr)を抑制することで、量子収率を向上させることも出来る。
TADF化合物の最低励起エネルギーは所望の波長によってそれぞれ異なるが、用途によって好ましい最低励起エネルギーの化合物を用いることが出来る。例えばTADF化合物と共に発光するリン光発光性金属錯体がスカイブルーの発光をする場合には、TADF化合物はライトグリーンからディープブルーの発光を示す、すなわちTADF化合物の最低励起エネルギー準位(S(TADF))が2.4〜3.5eVの範囲内であることが好ましい。
本発明に用いられる好ましい熱活性型遅延蛍光化合物を例に挙げるが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2014157610
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Figure 2014157610
Figure 2014157610
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<リン光発光性金属錯体>
本発明において、好ましく用いられるリン光発光性金属錯体は一般式(I)で表される。
Figure 2014157610
一般式(I)中、MはIr、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsを表す。A及びAは各々炭素原子又は窒素原子を表す。環ZはA及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環基、又は5員若しくは6員の芳香族複素環基を表す。B〜Bは5員の芳香族複素環基を形成する原子群であり、置換基を有していてもよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。LはMに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。mは0〜2の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、m+nは2又は3である。mおよびnが2以上のとき、環Z及びB〜Bで表される芳香族複素環基及びLは各々同じでも異なっていてもよい。
一般式(I)において、環ZはA及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。Zにより形成される5員又は6員の芳香族複素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環及びチアゾール環等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ベンゼン環である。
環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。
一般式(I)で表されるリン光発光性金属錯体において、環Zが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基のうち、好ましいものはアルキル基若しくはアリール基である。
〜Bは、炭素原子、窒素原子、酸素原子若しくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。これら5つの原子により形成される芳香族含窒素複素環としては単環が好ましい。例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサジアゾール環及びチアジアゾール環等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ピラゾール環、イミダゾール環であり、特に好ましくはB及びBが窒素原子であるイミダゾール環である。これらの環は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。置換基として好ましいものはアルキル基及びアリール基であり、更に好ましくはアリール基である。
LはMに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。Lで表されるモノアニオン性の二座配位子の具体例としては、例えば、置換又は無置換のフェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボル、ピコリン酸及びアセチルアセトン等が挙げられる。これらの基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
また、mは0〜2の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、m+nは2又は3である。中でも、mは0である場合が好ましい。
Mで表される金属元素としては、元素周期表の8〜10族の遷移金属元素(単に遷移金属ともいう)、例えば、Ir、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsが用いられるが、中でもイリジウム及び白金が好ましく、更に好ましくはイリジウムである。
一般式(I)においてB〜Bで形成される芳香族複素環は、下記一般式(Ia)、(Ib)及び(Ic)のいずれかで表されることが好ましい。
Figure 2014157610
一般式(Ia)、(Ib)及び(Ic)において、*1はAとの結合部位を表し、*2はMとの結合部位を表す。
Rb〜Rbは水素原子又は置換基を表し、Rb〜Rbで表される置換基としては、前述の一般式(I)における環Zが有する置換基と同義の基が挙げられる。
また、一般式(Ia)におけるB及びBは、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも1つが炭素原子である。
一般式(Ic)におけるBおよびBは、炭素原子又は窒素原子であり、より好ましくは少なくとも1つが炭素原子である。
以下に、本発明に係るリン光発光性金属錯体として、一般式(I)、(Ia)、(Ib)及び(Ic)で表される化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2014157610
Figure 2014157610
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Figure 2014157610
Figure 2014157610
また、これらのリン光発光性金属錯体の発光極大波長(nm)及び三重項励起エネルギー(eV)を表1から表3に示す。
Figure 2014157610
Figure 2014157610
Figure 2014157610
以下に、一般式(I)で表される化合物の合成例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。上記した具体例のうちP−14の合成方法を例にとって以下に説明する。
[P−14の合成方法]
P−14は、以下の工程に従って合成できる。
窒素雰囲気下で2−フェニル−(2,3,6−トリメチルフェニル)−1H−イミダゾール、18g(0.06861モル)を2−エトキシエタノール350mlに溶解した溶液に、塩化イリジウム3水和物、8.1g(0.02297モル)及び100mlの水を加え、窒素雰囲気下で5時間還流した。反応液を冷却し、メタノール500mlを加え、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を更にメタノールで洗浄し、乾燥後15.2g(収率88.4%)の錯体Aを得た。
窒素雰囲気下で錯体A、14.5g(0.009662モル)及び炭酸ナトリウム、14.5gを2−エトキシエタノール350mlに懸濁させた。この懸濁液にアセチルアセトン3.9g(0.03895モル)を加え、窒素雰囲気下で2時間還流した。反応液を冷却後、減圧濾過によって炭酸ナトリウム及び無機塩を除去した。溶媒を減圧濃縮した後に得られた固体に水1Lを加えて懸濁後、固体をろ取した。得られた結晶を更にメタノール/水=1/1混合溶液で洗浄し、乾燥後14.7g(収率93.6%)の錯体Bを得た。
窒素雰囲気下で錯体B、7.5g(0.009214モル)及び2−フェニル−(2,4,6−トリメチルフェニル)−1H−イミダゾール、6.0g(0.002287モル)をグリセリン400mlに懸濁させた。窒素雰囲気下で反応温度150〜160℃の間で2時間反応させ、錯体Bの消失を確認したところで反応終了とした。反応液を冷却し、メタノール500mlを加え、析出した結晶をろ取した。得られた結晶を更にメタノールで洗浄し、乾燥後収量7.1g(収率78.9%)の粗生成物を得た。この粗生成物を少量の塩化メチレンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製(展開溶媒:塩化メチレン)し、6.5g(収率72.2%)のP−14を得た。
Figure 2014157610
[ホスト化合物]
本発明で使用できる好ましいホスト化合物について述べる。本発明に使用できるホスト化合物としては特に制限はないが、TADF化合物と共に使用する場合、TADF化合物の最低励起一重項エネルギーより大きな励起エネルギーを持つものが好ましい。
更には、本発明に係るホスト化合物が、下記一般式(II)で示される化合物が好ましい。これは、下記式(II)で表される化合物は、縮環構造を有するためにキャリア輸送性が高く、また前記の広い三重項エネルギー(リン光の0−0バンド)を有するためである。
Figure 2014157610
上記一般式(II)において、Xは、NR′、酸素原子、硫黄原子、CR′R″又はSiR′R″を表す。y及びyは、各々CR′又は窒素原子を表す。R′及びR″は、各々水素原子又は置換基を表す。Ar及びArは、各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n1は0〜4の整数を表す。本発明に係る一般式(II)で表されるホスト化合物としては、特に、カルバゾール誘導体であることが好ましい。
一般式(II)におけるX、y及びyにおいて、R′及びR″で各々表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
中でも、LUMOのエネルギー準位が浅く、電子輸送性に優れる構造として、一般式(II)中でXが、NR′または酸素原子である化合物が好ましい。すなわち、(アザ)カルバゾール環または(アザ)ジベンゾフラン環を有する化合物であることが好ましい。より好ましくは、より電子輸送性に優れる(アザ)カルバゾール環を有する化合物である。ここでR′としては、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、又は芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)が特に好ましい。
上記の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、各々一般式(II)のXにおいて、R′及びR″で各々表される置換基を有してもよい。
一般式(II)において、y及びyで表される原子としては、CR′または窒素原子が挙げられるが、より好ましくはCR′である。このような化合物は正孔輸送性にも優れ、陽極・陰極から注入された正孔・電子を効率よく発光層内で再結合・発光させることができる。
一般式(II)において、Ar及びArにより表される芳香環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、該芳香環は単環でもよく、縮合環でもよく、更に未置換でも、一般式(II)のXにおいて、R′及びR″で各々表される置換基を有してもよい。
一般式(II)において、Ar及びArにより表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
一般式(II)で表される部分構造において、Ar及びArにより表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
これらの環は、更に一般式(II)において、R′及びR″で各々表される置換基を有してもよい。
上記の中でも、一般式(II)において、Ar及びArにより表される芳香環として、好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環、ベンゼン環であり、更に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ベンゼン環であり、より好ましくは置換基を有するベンゼン環であり、特に好ましくはカルバゾリル基を有するベンゼン環が挙げられる。
また、一般式(II)において、Ar及びArにより表される芳香環としては、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様であり、3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。なお、これらの環は、更に上記の置換基を有していてもよい。
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。なお、これらの環は更に置換基を有していてもよい。
また、一般式(II)において、n1は0〜4の整数を表すが、0〜2であることが好ましく、特に、Xが、酸素原子または硫黄原子である場合には、1〜2であることが好ましい。
本発明においては、特に、ジベンゾフラン環とカルバゾール環をともに有するホスト化合物が好ましい。
本発明に係るホスト化合物として、前記一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。すなわち、3位がフェニル基で置換されたカルバゾール環を有する化合物であることが好ましい。このような化合物は、特にキャリア輸送性に優れる傾向があるためである。
Figure 2014157610
上記一般式(III)において、Ar〜Arは各々芳香環を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。n2は0〜4の整数を表し、n3は0〜5の整数を表す。
Ar〜Arで表される芳香環は、前記一般式(III)においてAr及びArにより表される芳香環と同様のものを挙げることができる。
以下に、リン光スペクトルにおける0−0遷移バンドに帰属される発光波長が414〜459nm(2.7〜3.0eV)の範囲にある本発明に係るホスト化合物として、一般式(II)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物及びその他の構造からなる化合物例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2014157610
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<有機EL素子の構成層>
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明に係る発光層は、単層または複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
本発明に係る電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
本発明に係る正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
(タンデム構造)
また、本発明に係る有機EL素子は、少なくとも一層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニットおよび第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また2つの発光ユニットが同じであり、残る1つが異なっていてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiOx、VOx、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の二層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報及び国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
[発光層]
本発明に係る発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に係る発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲内に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲内に調整される。
また、本発明の個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲内に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲内に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲内に調整される。
本発明に係る発光層には、前述のTADF化合物及びリン光発光性金属錯体を発光ドーパント(以下、発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう。)として含有し、前述のホスト化合物(マトリックス材料又は単にホストともいう)とを含有することが好ましい。
[電子輸送層]
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明の電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲内であり、より好ましくは2〜500nmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜200nmの範囲内である。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総膜厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の膜厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に膜厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という。)としては、電子の注入性または輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の1つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許出願公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
本発明におけるより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
[正孔阻止層]
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に係る正孔阻止層の膜厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
[電子注入層]
本発明に係る電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう。)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記の如く陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な膜であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、リチウム8−ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
[正孔輸送層]
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明の正孔輸送層の総膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性または輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖または側鎖に導入した高分子材料またはオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマーまたはオリゴマー(例えばPEDOT/PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPDに代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、所謂p型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖または側鎖に導入した高分子材料またはオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許出願公開第2003/0162053号明細書、米国特許出願公開第2002/0158242号明細書、米国特許出願公開第2006/0240279号明細書、米国特許出願公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許出願公開第2008/0124572号明細書、米国特許出願公開第2007/0278938号明細書、米国特許出願公開第2008/0106190号明細書、米国特許出願公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
[電子阻止層]
電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明に係る電子阻止層の膜厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も電子阻止層に好ましく用いられる。
[正孔注入層]
本発明に係る正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう。)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記の如く陽極と発光層、又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
[添加物]
前述した本発明における有機層は、更に他の添加物が含まれていてもよい。
添加物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
添加物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
[有機層の形成方法]
本発明の有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明の有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、且つ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・ツー・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
本発明に係る有機EL材料を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度を50〜450℃の範囲内、真空度を10−6〜10−2Paの範囲内、蒸着速度0.01〜50nm/秒の範囲内、基板温度−50〜300℃の範囲内、層厚0.1nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
本発明の有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
[陽極]
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
[陰極]
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
[支持基板]
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう。)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/m・24h・atm以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/m・24h以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温(25℃)における外部取り出し効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
[封止]
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、たとえば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウムおよびタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムはJIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m・24h以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%)が、1×10−3g/m・24h以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化および熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱および化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、たとえば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。
さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相および液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、たとえば、金属酸化物(たとえば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(たとえば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(たとえば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(たとえば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物および過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
[保護膜、保護板]
有機層を挟み支持基板と対向する側の前記封止膜あるいは前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
[光取り出し向上技術]
有機エレクトロルミネッセンス素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などが挙げられる。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。またさらに1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面又は、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な一次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でも良いが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、二次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
[集光シート]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、支持基板(基板)の光取出し側に、例えばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは、所謂集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を二次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
[用途]
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。
発光光源として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
本発明の有機EL素子や本発明に係る化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタオプティクス(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
また、本発明の有機EL素子が白色素子の場合には、白色とは、2度視野角正面輝度を上記方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がX=0.33±0.07、Y=0.33±0.1の領域内にあることをいう。
<表示装置>
本発明の表示装置は、本発明の有機EL素子を具備したものである。本発明の表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法又は印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、スピンコート法及び印刷法である。
表示装置に具備される有機EL素子の構成は、必要に応じて上記の有機EL素子の構成例の中から選択される。
また、有機EL素子の製造方法は、上記の本発明の有機EL素子の製造の一態様に示したとおりである。
このようにして得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ又は各種発光光源として用いることができる。表示デバイス又はディスプレイにおいて、青、赤及び緑発光の三種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス又はディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示及び自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
発光光源としては、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図5は有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
ディスプレイ1は複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B、表示部Aと制御部Bとを電気的に接続する配線部C等を有する。
制御部Bは表示部Aと配線部Cを介して電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線ごとの画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図6はアクティブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部Cと複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図6においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示していない)。
画素3は走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。図7は画素の回路を示した概略図である。
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサー13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色及び青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図7において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサー13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサー13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサー13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
即ち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子10の発光は複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。また、コンデンサー13の電位の保持は次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図8は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図8において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が図れる。
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光効率が向上した表示装置が得られた。
<照明装置>
本発明の照明装置について説明する。本発明の照明装置は上記有機EL素子を有する。
本発明の有機EL素子は、共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、パッシブマトリクス方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。又は、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を二種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
また、本発明のTADF化合物及びリン光発光性金属錯体は、照明装置として、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。複数の発光材料(TADF化合物及びリン光発光性金属錯体)により複数の発光色を同時に発光させて、混色することで白色発光を得ることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色及び青色の3原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また、本発明の有機EL素子の形成方法は、発光層、正孔輸送層あるいは電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよい。他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法及び印刷法等で、例えば、電極膜を形成でき、生産性も向上する。
この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が発光白色である。
[本発明の照明装置の一態様]
本発明の有機EL素子を具備した、本発明の照明装置の一態様について説明する。
本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図9及び図10に示すような照明装置を形成することができる。
図9は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子101はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。)。
図10は、照明装置の断面図を示し、図10において、105は陰極、106は有機層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光効率が向上した照明装置が得られた。
<発光性薄膜>
さらに、発光材料として本発明に用いられる熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体は、有機エレクトロルミネッセンス素子用発光性薄膜に用いることもできる。
ここで、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子素子用発光性薄膜(以下、発光性薄膜ともいう。)について説明する。
本発明の発光性薄膜は、発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜であって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有している。
本発明の発光性薄膜は、有機EL素子の製造過程において、発光層を構成する膜として形成してもよいし、当該製造工程の前にあらかじめ有機EL素子用発光性薄膜として独立的に形成し、提供することもできる。
本発明の発光性薄膜は、前記発光層の形成方法と同様に作製することができる。
本発明の発光性薄膜の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・ツー・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
本発明に用いられる発光材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度を50〜450℃の範囲内、真空度を10−6〜10−2Paの範囲内、蒸着速度0.01〜50nm/秒の範囲内、基板温度−50〜300℃の範囲内、層厚0.1nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
また、成膜にスピンコート法を採用する場合、スピンコーターを100〜1000rpmの範囲内、10〜120秒の範囲内で、乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、本発明の発光性薄膜を表示装置及び照明装置に用いることもできる。
これにより、発光効率が改善された表示装置及び照明装置が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
また、各実施例における化合物の体積%は、作製する層厚を水晶発振子マイクロバランス法により測定し、質量を算出することで、比重から求めている。
予め、TADF−3をトルエンに溶解させ、300Kにおける絶対フォトルミネッセンス(PL)量子収率及び発光寿命を測定した。
測定・評価にあたって、絶対PL量子収率については、絶対PL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。
溶液試料の発光寿命の測定は、過渡PL特性を測定することによって行った。過渡PL特性の測定には、小型蛍光寿命測定装置(浜松Photonics社製C11367−03)を使用した。
具体的には、遅い減衰成分はフラッシュランプ励起によるM9003−01モードにて、速い減衰成分は、340nmのLEDを励起光源としたTCC900モードにて測定した。ここで、蛍光成分はナノ秒に観測され、リン光発光および三重項状態に由来する遅延蛍光成分はマイクロもしくはミリ秒単位で観測される。
無酸素状態における発光寿命は5nsおよび270μsの2成分が観測されたが、酸素雰囲気下での発光寿命は5nsの1成分のみ観測された。
これはTADF−3の発光に三重項状態が関与していることを示しており、室温でマイクロ秒の発光寿命が観測されていることも併せ、TADF−3は熱活性化型遅延蛍光化合物(TADF)であることが確認された。
[実施例1]
(薄膜1−1の作製方法)
50mm×50mm、厚さ0.7mmの石英基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、TADF化合物としてTADF−3、ホスト化合物として下記に示すbis(2-(diphenylphosphino)phenyl)ether oxide(DPEPO)を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、DPEPO及びTADF−3が、それぞれ90体積%、10体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚30nmの薄膜を作製した。
Figure 2014157610
(薄膜1−2の作製方法)
DPEPO、TADF−3、リン光発光性金属錯体としてP−10それぞれ89.9%、10%、0.1%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着した以外は1−1と同様の方法で薄膜1−2を作製した。
この場合のS(TADF)−T(P)は0.79であり、T(TADF)−T(P)は0.47であった。
(薄膜1−3の作製方法)
リン光材料としてP−9をP−10の代わりに用いた以外は、薄膜1−2と同様の方法で薄膜1−3を作製した。
この時のS(TADF)−T(P)は1.29であり、T(TADF)−T(P)は0.97であった。
(薄膜1−1〜1−3の評価)
薄膜1−1〜1−3の試料に対し薄膜のPLスペクトルを測定した。PL測定には絶対PL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)を用い、室温にて350nmの励起波長で測定を行った。その結果、薄膜1−1においてはTADF−3に由来する423nmの発光が観測された。
また、薄膜1−2においてはTADF−3の蛍光とP−10の両方のスペクトルが観測された。また、TADF−3の蛍光強度は、TADF−3単独での薄膜に比べ1.10倍まで増加した。この場合、TADF−3の発光スペクトルの長波側とP−10の発光スペクトルの短波側は重なっているが、発光スペクトルが離れているために、その重なりがTADF−3のピーク波長には影響していない。
一方、薄膜1−3においてはTADF−3の蛍光は弱く、P−9のスペクトルが主に観測された。なお、薄膜1−1、薄膜1−2、薄膜1−3の絶対量子収率はそれぞれ0.80、0.90、0.83であった。結果を表4に示す。
Figure 2014157610
(効果)
以上のことから、薄膜1−2ではTADF化合物の光励起による三重項エネルギー準位から一重項エネルギー準位への項間交差がリン光材料の外部重原子効果により活性化され、PL強度が増大するが、エネルギーレベルが大きく異なるリン光発光性金属錯体を用いた薄膜1−3の場合、S(TADF)−T(P)及びT(TADF)−T(P)が薄膜1−2よりも大きいため、TADF化合物からリン光発光性金属錯体へのエネルギー移動が支配的となり、TADF化合物の発光を抑制していると考えられる。
[実施例2]
(薄膜2−1の作製方法)
TADF化合物としてTADF−1を用い、薄膜1−1と同様の方法で石英基板上に30nmの膜厚で薄膜2−1を作製した。この薄膜のPLスペクトルを測定したところ、421nmにTADF−1由来の蛍光が観測された。
(薄膜2−2の作製方法)
TADF化合物としてTADF−1、リン光発光性金属錯体としてP−64を用い、薄膜1−2と同様の方法で薄膜2−2を作製した。
この時のS(TADF)−T(P)及びT(TADF)−T(P)を表5に示す。この薄膜のPLスペクトルを測定したところ、TADF−1に由来する421nmの発光と、P−64に由来する524nmの両方が観測された。
(薄膜2−3〜2−6の作製方法)
薄膜2−2で使用したリン光発光性金属錯体を、P−49、P−108に変えた以外は薄膜2−2と同様の方法で薄膜2−3及び2−4を作製した。また、薄膜2−2で使用したリン光発光性金属錯体を、P−108に変更し、DPEPO、TADF−1、P−108をそれぞれ89.7%、10%、0.3%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着した以外は薄膜2−2と同様の方法で薄膜2−5を作製した。また、薄膜2−2で使用したリン光発光性金属錯体を、P−17に変更し、DPEPO、TADF−1、P−17をそれぞれ89.5%、10%、0.5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着した以外は薄膜2−2と同様の方法で薄膜2−6を作製した。
(薄膜2−1〜2−6の評価)
薄膜2−1〜2−6の試料に対し、薄膜1−1〜1−3と同様の方法で、薄膜のPLスペクトルを測定した。
(薄膜2−1〜2−6の評価)
薄膜2−1〜2−6で作製した薄膜のPLスペクトルを測定した結果を表5に示す。
薄膜2−1におけるTADF−1の発光強度を100とし、薄膜2−2から2−6における発光強度を相対値で示した。
Figure 2014157610
(効果)
以上のことから、TADF化合物とリン光発光性金属錯体を組み合わせることにより、TADF化合物単独で用いるよりもTADF化合物の発光強度を高めることが出来る。
本実施例の組み合わせの中には、TADF化合物とリン光発光性金属錯体の発光ピーク波長が極めて近いものもあり、その場合蛍光発光とリン光発光の区別は出来ないが、TADF化合物の発光を増強もしくは維持したままリン光材料も発光するために、トータルとしてその波長領域の発光強度を高めることが出来ると考えられる。
[実施例3]
(有機EL素子3−1の作製方法)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚40nmの正孔注入輸送層を形成した。次いで1,3-bis(9-carbazolyl)benzene(mCP)の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層上に蒸着し、層厚10nmの中間層を形成した。
次いで、2,8-bis(diphenylphosphoryl)dibenzo[b,d]thiophene(PPT)、2CzPN(TADF)が、それぞれ95%、5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚20nmの発光層を形成した。
その後、PPTを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚40nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.8nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子3−1を作製した。
(有機EL素子3−2の作製方法)
PPT、化合物2CzPN、P−111が、それぞれ94.5%、5%、0.5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚20nmの発光層を形成した以外は有機EL素子3−1と同様の方法で有機EL素子3−2を作製した。ここで、リン光発光性金属錯体P−111は低温ではリン光発光を示すが、室温では発光を示さない化合物である。
なお、S(TADF)−T(P)は−0.02eVであった。
(有機EL素子3−1及び3−2の評価)
有機EL素子3−1及び3−2について、下記の評価を行った。
(ELスペクトルの測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後のELスペクトルを、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。結果を表6に示した。
有機EL素子3−2の素子は2CzPN由来の強い発光を示し、その発光強度は2CzPNのみを用いた有機EL素子3−1に比べ1.18倍であった。
Figure 2014157610
(効果)
以上のことから、有機EL素子3−2ではリン光発光性金属錯体P−111による外部重原子効果により、2CzPN(TADF化合物)の電界励起による三重項エネルギー準位から一重項エネルギー準位への項間交差が活性化され、発光強度が増大している。このことは、室温では発光を示さないようなリン光発光性金属錯体であっても、TADF化合物に近接することで外部重原子効果を発揮する機能を有していることを示している。
[実施例4]
(有機EL素子4−1の作製方法)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、下記に示すα−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚30nmの正孔注入輸送層を形成した。
Figure 2014157610
次いで、CBP(ホスト化合物)の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層上に蒸着し、層厚10nmの中間層を形成した。
次いで、CBP(ホスト化合物)、4CzIPN(TADF)が、それぞれ95%、5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの発光層を形成した。
その後、TPBiを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚50nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.8nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子4−1を作製した。
(有機EL素子4−2の作製方法)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚30nmの正孔輸送注入層を形成した。
次いで、CBP(ホスト化合物)、リン光発光性金属錯体P−9が、それぞれ99.75%、0.25%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚10nmの第1発光層を形成した。
次いで、CBP、4CzIPNが、それぞれ95%、5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、膜厚35nmの第2発光層を形成した。
その後、TPBiを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚50nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.8nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子4−2を作製した。
(有機EL素子4−3〜4−6の作製方法)
実施例4−1で使用したホスト化合物、第1発光層のリン光発光性金属錯体及び第2発光層のTADF化合物を表7に示す化合物に変え、表7に記載の体積%で有機EL素子4−2と同様にして有機EL素子4−3〜4−6を作製した。
(評価)
作製した有機EL素子の評価は以下のように行った。
(ELスペクトルの測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後のELスペクトルを、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。有機EL素子4−1におけるTADF化合物4CzIPN由来の発光強度を100として、各素子の発光強度を相対値で示した。結果をS(TADF)−T(P)及びT(TADF)−T(P)の値と共に表7に示す。
Figure 2014157610
有機EL素子4−2は4CzIPN由来の強い発光を示し、その発光強度は4CzIPNのみを用いた4−1の有機EL素子に比べ1.06倍であった。
(効果)
以上のことから、有機EL素子4−2〜4−6では隣接層にドープしたリン光発光性金属錯体による外部重原子効果により、4CzIPN及びspiro−CNのTADF機能が活性化され、発光強度が増大している。このことは、同一層のみならず、隣接層にドープしたリン光発光性金属錯体であっても、TADF化合物に近接することで外部重原子効果を発揮する機能を有していることを示している。
[実施例5]
(有機EL素子4−1、4−1a、4−1b及び4−2の作製)
有機EL素子4−1及び4−2は、実施例4で作製したものを用いた。なお、有機EL素子4−1の発光層は、リン光発光性化合物を含んでいないため、便宜的に第2発光層として表8に示した。
有機EL素子4−1a及び4−1bは、有機EL素子4−1の発光層(第2発光層)の層厚を表8に示すように、30nm及び20nmに変更したものを作製した。
(有機EL素子5−1〜5−5の作製)
有機EL素子4−2の作製において第2発光層の層厚を変化させた有機EL素子5−1〜5−5を作製した。
(評価)
作製した有機EL素子の評価は以下のように行った。
(ELスペクトルの測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後のELスペクトルを、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。
4−1の素子におけるTADF化合物4CzIPN由来の発光強度を100として、各素子の発光強度を相対値で表8に示した。
Figure 2014157610
有機EL素子4−1から第2発光層の層厚を5nmずつ減らした有機EL素子4−1a及び4−1bは、大幅に発光強度が低下している。これは、第2発光層の層厚が薄くなることで、第2発光層に含有される発光性化合物の量が減少するため、比較例の有機EL素子の発光輝度が低下していると考えられる。
これに対し、有機EL素子5−1〜5−5の第2発光層の層厚を有機EL素子4−2の第2発光層の層厚(35nm)から5nmずつ減らしても発光強度は維持されていることがわかった。これは、リン光発光性化合物を含有する第1発光層がTADF化合物を含有する第2発光層に隣接することで、隣接層間での重原子効果が働き、第2発光層の層厚が薄くなっても発光輝度の低下を抑制しているものと考えられる。
(効果)
このことから、外部重原子効果を用いたTADF化合物の活性化により、有機層の層厚を低下させることが出来る。これはデバイス作製のコスト削減やデバイスの駆動電圧低下にも大きく寄与することが出来る。
[実施例6]
(有機EL素子6−1の作製)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚40nmの正孔注入輸送層を形成した。
次いで、CBP(ホスト化合物)、4CzTPNが、それぞれ95%、5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの発光層を形成した。
その後、BCPを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.5nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子6−1を作製した。
(有機EL素子6−2の作製)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚40nmの正孔輸送注入層を形成した。
次いで、CBP(ホスト化合物)、4CzTPN、P−13が、それぞれ94.5%、5%、0.5%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの発光層を形成した。
その後、BCPを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.5nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子6−2を作製した。
(有機EL素子6−3の作製)
有機EL素子6−2で使用したリン光発光性金属錯体を表9に示す化合物に変えた以外は有機EL素子6−2と同様にして有機EL素子6−3を作製した。
(有機EL素子6−4作製)
95mgのCBPと、5mgのCu(dnbp)(DPEPhos)BFと、0.5mgのP−14をテトラフルオロイソプロパノール20mlで溶解した溶液を調整し、回転速度1000rpmで正孔輸送層上に層厚35nmの発光層を形成した。
その後、BCPを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚45nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.5nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子6−4を作製した。
(有機EL素子6−5〜6−7の作製)
有機EL素子6−4で使用したホスト化合物、リン光発光性金属錯体及びTADF化合物を表9に記載の割合に変えた以外は実施例実施例6−4と同様にして有機EL素子6−5〜6−7を作製した。
(評価)
作製した有機EL素子6−1〜6−7の評価は以下のように行った。
(発光輝度の測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。
次いで、比較例である6−1の発光輝度を100とした相対発光輝度を求め、これを発光効率(外部量子効率)の尺度とした。数値が大きいほど、発光効率に優れていることを表す。
(初期駆動電圧の測定)
各サンプルに対し、室温(約25℃)で、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各サンプルの発光輝度を測定し、発光輝度1000cd/mにおける初期駆動電圧を求めた。求めた結果を表に示す。
なお、表9では、有機EL素子6−1の初期駆動電圧を100として、有機EL素子6−2〜6−7の初期駆動電圧を相対値で示している。表中、数値が小さいほど、初期駆動電圧が低い事を表す。
(連続駆動安定性(半減寿命)の評価)
各サンプルを半径5cmの円柱に巻きつけ、その後各サンプルを折り曲げた状態で連続駆動させ、上記分光放射輝度計CS−2000を用いて輝度を測定し、測定した輝度が半減する時間(LT50)を求めた。
駆動条件は、連続駆動開始時に4000cd/mとなる電流値とした。
有機EL素子6−1のLT50を100とした相対値を求め、これを連続駆動安定性の尺度とした。その評価結果を表に示す。表中、数値が大きいほど、連続駆動安定性に優れている(長寿命である)ことを表す。
各評価結果をS(TADF)−T(P)もしくはT(TADF)−T(P)の値と共に表9に示す。
Figure 2014157610
(効果)
表9に示すとおり、有機EL素子6−2〜6−7では、外部量子収率が高く、駆動電圧が低くなっており、さらには寿命も向上している。特に、本発明の特定構造を有するリン光発光性金属錯体を用いることによって、この効果は顕著に表れていると言える。すなわち、有機EL素子6−2〜6−7で用いたリン光発光性金属錯体は安定性と量子収率が非常に高いため、外部重原子効果を効果的に発揮できたものと考えられる。
その効果はS(TADF)−T(P)もしくはT(TADF)−T(P)が小さいほど顕著に表れ、TADF化合物のTからの熱失活エネルギーによるリン光材料の発光と外部重原子効果によるTADF化合物の活性化のバランスに優れるためであると考えられる。
[実施例7]
(有機EL素子6−1及び6−2の作製)
有機EL素子6−1及び6−2は、実施例6で作製したものを用いた。
(有機EL素子6−1a及び6−1bの作製)
有機EL素子6−1の発光層の作製において、発光層の層厚を表10に示すように、20nm及び10nmに変更した有機EL素子6−1a及び6−1bを作製した。
(有機EL素子7−1〜7−5の作製)
有機EL素子6−2の素子において発光層の層厚を変化させた有機EL素子7−1〜7−5を作製した。
(評価)
作製した有機EL素子の評価は以下のように行った。
(ELスペクトルの測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後のELスペクトルを、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。6−1の素子におけるTADF化合物4CzPN由来の発光強度を100として、各素子の発光強度を相対値で表10に示した。
発光層にリン光発光性化合物を含有しない、比較例の有機EL素子6−1、6−1a及び6−1bについては、発光層の層厚の減少により、発光強度が大幅に減少した。一方で、有機EL素子6−2及び7−1〜7−5については、発光層の層厚を5nmずつ減らすことによる発光輝度の低下は見られるが、有機EL素子6−1の半分以下の層厚であっても、高い発光強度を維持していることがわかった。これは、単一の発光層内にTADF化合物とリン光発光性化合物が共存することで、重原子効果が働いたためであると考えられる。
Figure 2014157610
(効果)
このことから、外部重原子効果を用いたTADF化合物の活性化により、有機層の層厚を低下させることが出来る。これはデバイス作成のコスト削減やデバイスの駆動電圧低下にも大きく寄与することが出来る。
[実施例8]
実施例4の4−2〜4−6と使用化合物は同一にして、表11に示す体積%になるようにした以外は実施例3と同様にして有機EL素子8−1〜8−5を作製した。
(評価)
作製した有機EL素子の評価は以下のように行った。
(ELスペクトルの測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。
次いで、有機EL素子4−2で作製した有機EL素子の発光輝度を100とした相対発光輝度を求め、これを発光効率(外部量子効率)の尺度とした。結果を実施例4の4−2〜4−6の発光輝度と併せて表11に示す。
Figure 2014157610
(効果)
有機EL素子8−1〜8−5では、TADF化合物とリン光発光性金属錯体が同一層に存在しているため、フェルスター型のエネルギー移動に加え、デクスター型のエネルギー移動も加わり、より効果的なTADF化合物のTからの熱失活成分をトラップすることが出来、発光効率が向上している。
また、TADF化合物とリン光発光性金属錯体は同一層に存在しているために、リン光発光性金属錯体の濃度は隣接層に存在するよりも低い方が良好な結果が得られることが実施例4と8の比較から明らかである。
[実施例9]
(有機EL素子9−1〜9−3の作製)
実施例8の有機EL素子8−1においてTADF化合物及びリン光発光性金属錯体を表12に記載の化合物を用い、使用するリン光発光性金属錯体を、表12に示す体積%になるようにした以外は有機EL素子8−1と同様にして有機EL素子9−1〜9−3を作製した。
(評価)
作製した有機EL素子の評価は以下のように行った。
(ELスペクトルの測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。
次いで、実施例8の8−1で作製した有機EL素子の発光輝度を100とした相対発光輝度を求め、これを発光効率(外部量子効率)の尺度とした。
Figure 2014157610
(効果)
有機EL素子9−1〜9−3では、TADF化合物とリン光発光性金属錯体が同一層に存在しているため、フェルスター型のエネルギー移動に加え、デクスター型のエネルギー移動も加わり、より効果的なTADF化合物のTからの熱失活成分をトラップすることが出来、発光効率が向上している。特に、本発明の特定構造を有するリン光発光性金属錯体を用いることによって、この効果は顕著に表れていると言える。すなわち、有機EL素子9−1〜9−3で用いたリン光発光性金属錯体は安定性と量子収率が非常に高いため、外部重原子効果を効果的に発揮できたものと考えられる。
[実施例10]
(有機EL素子10−1の作製)
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで製膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚40nmの正孔注入輸送層を形成した。
次いで、DEPEO(ホスト化合物)、TADF−3(TADF)が、それぞれ90%、10%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの発光層を形成した。次いで、DEPEOを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚10nmの第1電子輸送層を形成した。
その後、TPBiを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの第2電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.5nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子10−1を作製した。
(有機EL素子10−2〜10−19の作製)
TADF−3、リン光発光性金属錯体を表13に示すような体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの発光層を形成した以外は有機EL素子10−1と同様の方法で有機EL素子10−2から10−19を作製した。
(評価)
有機EL素子10−1から10−19について、下記の評価を行った。
(発光輝度の測定)
上記作製した各有機EL素子を、室温(約25℃)で、2.5mA/cmの定電流条件下で発光させ、発光開始直後の発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタオプティクス社製)を用いて測定した。
次いで、有機EL素子10−1の発光輝度を100とした相対発光輝度を求め、これを発光効率(外部量子効率)の尺度とした。数値が大きいほど、発光効率が優れていることを表す。
(初期駆動電圧の測定)
各サンプルに対し、室温(約25℃)で、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各サンプルの発光輝度を測定し、発光輝度1000cd/mにおける初期駆動電圧を求めた。求めた結果を表13に示す。
なお、表13では、有機EL素子10−1の初期駆動電圧を100として、有機EL素子10−2から10−19の初期駆動電圧を、相対値で示している。表中、数値が小さいほど、初期駆動電圧が低いことを表す。
(連続駆動安定性(半減寿命)の評価)
各サンプルを半径5cmの円柱に巻きつけ、その後各サンプルを折り曲げた状態で連続駆動させ、上記分光放射輝度計CS−2000を用いて輝度を測定し、測定した輝度が半減する時間(LT50)を求めた。駆動条件は、連続駆動開始時に4000cd/mとなる電流値とした。
有機EL素子10−1のLT50を100とした相対値を求め、これを連続駆動安定性の尺度とした。その評価結果を表に示す。表中、数値が大きいほど、連続駆動安定性に優れている(長寿命である)ことを表す。
各評価結果をS(TADF)−T(P)及びT(TADF)−T(P)と共に表に示す。
Figure 2014157610
(4)効果
表13に示すとおり、有機EL素子10−2〜10−5、10−7〜10−12及び10−14〜10−19では、TADF化合物のみを用いた場合と比べ外部量子収率が高く、駆動電圧が低くなっており、さらには寿命も向上している。特に、本発明の特定構造を有するリン光発光性金属錯体を用いることによって、この効果は顕著に表れていると言える。すなわち、有機EL素子10−2〜10−5、10−7〜10−12及び10−14〜10−19で用いたリン光発光性金属錯体は安定性と量子収率が非常に高いため、外部重原子効果を効果的に発揮できたものと考えられる(図4参照)。その効果はΔ[T(TADF)−T(P)]が小さいほど顕著に表れ、TADF化合物のTからの熱失活エネルギーによるリン光材料の発光と外部重原子効果によるTADF化合物の活性化のバランスであると考えられる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子により、発光効率が向上した有機EL素子を得ることができ、当該有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイや、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等の広い発光光源として好適に利用できる。
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサー
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機EL層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部
C 配線部

Claims (17)

  1. 一対の電極と、前記一対の電極間に一または複数の有機層が具備された有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と、当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を促進し蛍光発光を増強する外部重原子効果を及ぼす重原子化合物とを、それぞれ、前記有機層のいずれかに含有していることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
  2. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記重原子化合物とが、前記外部重原子効果を発現できる距離範囲内に近接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記重原子化合物が、リン光発光性金属錯体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物が蛍光を発し、かつ前記リン光発光性金属錯体がリン光を発することを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記リン光発光性金属錯体とが、それぞれ少なくとも一種類、前記有機層のいずれかに含有されており、かつ当該熱活性化型遅延蛍光発光性化合物(TADF)の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と当該リン光発光性金属錯体(P)の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とが、相互の準位間においてエネルギー又は電子が移動できる範囲内にあることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー準位(S(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(1)で表される範囲内であることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    式(1): −0.2eV≦[S(TADF)−T(P)]≦1.0eV
  7. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起一重項エネルギー準位(S(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(2)で表される範囲内であることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    式(2): 0eV≦[S(TADF)−T(P)]≦0.2eV
  8. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(3)で表される範囲内であることを特徴とする請求項3から請求項7までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    式(3): −0.2eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.5eV
  9. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))と前記リン光発光性金属錯体の最低励起三重項エネルギー準位(T(P))とのエネルギー差が、下記式(4)で表される範囲内であることを特徴とする請求項3から請求項8までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    式(4): 0eV≦[T(TADF)−T(P)]≦0.1eV
  10. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T(TADF))が、2.4〜3.5eVの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 前記熱活性化型遅延蛍光発光性化合物と前記リン光発光性金属錯体が、同一の発光層内に含有されていることを特徴とする請求項3から請求項10までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 前記リン光発光性金属錯体が、下記一般式(I)で表される構造を有することを特徴とする請求項3から請求項11までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2014157610
    (一般式(I)中、MはIr、Pt、Rh、Ru、Ag、Cu又はOsを表す。A及びAは各々炭素原子又は窒素原子を表す。環ZはA及びAと共に形成される6員の芳香族炭化水素環基、又は5員若しくは6員の芳香族複素環基を表す。B〜Bは5員の芳香族複素環基を形成する原子群であり、置換基を有していてもよい炭素原子、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。LはMに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。mは0〜2の整数を表し、nは1〜3の整数を表し、m+nは2又は3である。mおよびnが2以上のとき、環Z及びB〜Bで表される芳香族複素環基及びLは各々同じでも異なっていてもよい。)
  13. 請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする照明装置。
  14. 請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子が備えられていることを特徴とする表示装置。
  15. 発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜であって、
    熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有していることを特徴とする有機ルミネッセンス素子用発光性薄膜。
  16. 発光方式が異なる二種類以上の発光材料を含有する有機ルミネッセンス素子用組成物であって、
    熱活性化型遅延蛍光発光性化合物とリン光発光性金属錯体を含有していることを特徴とする有機ルミネッセンス素子用組成物。
  17. 同一の有機ルミネッセンス素子内において、物理的又は化学的作用によって、熱活性化型遅延蛍光発光性化合物から蛍光を発光させ、かつリン光発光性金属錯体からリン光を発光させることを特徴とする発光方法。
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