JPWO2013051165A1 - X線検出器用増感紙、x線検出器、およびx線検査装置 - Google Patents

X線検出器用増感紙、x線検出器、およびx線検査装置 Download PDF

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Abstract

実施形態のX線検出器6は、検出器本体9の入射部9aに設けられた透過型蛍光発生部11と、検出器本体の入射部9aを除く部分9bに設けられた反射型蛍光発生部13とを具備する。透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13は、中心粒径の?30%以内の粒径を有する粒子比率が45体積%以上のプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子を含有し、その充填率が60体積%以上である蛍光体層を備える増感紙、および中心粒径の?30%以内の粒径を有する粒子比率が45体積%以上のユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子を含有し、その充填率が45体積%以上である蛍光体層を備える増感紙の少なくとも一方を具備する。

Description

本発明の実施形態は、X線検出器用増感紙、X線検出器およびX線検査装置に関する。
一般に、航空機内に荷物を持ち込む際には、航空機の安全運行を確保するために、空港内で予め荷物の検査を行っている。手荷物検査装置としては、X線の透過を利用した透過X線検査装置やX線のコンプトン散乱を利用したコンプトン散乱X線検査装置が一般的に使用されている。透過X線やコンプトン散乱X線を利用したX線検査装置において、透過X線もしくはコンプトン散乱X線はX線検出器に導かれる。これら検出X線は蛍光体で可視光に変換される。可視光の強度は光電子倍増管(ホトマルチプライア)で検出される。可視光の強度に応じて荷物の内部を画像化することで、荷物の検査が実施される。
荷物検査の精度を上げるためには、より鮮明な画像を得る必要がある。そのためには、十分な強度の可視光をホトマルチプライアに入力することが求められる。可視光の強度は、荷物等に照射するX線の強度に応じて高めることができる。ただし、空港荷物検査装置のように、公の場所に設置されるX線検査装置では、照射するX線の強度を高めることで装置が大型化するだけでなく、危険性が増大する。そこで、X線を可視光に変換する効率が高い蛍光体が求められる。可視光への変換効率に優れる蛍光体を使用することで、X線の照射強度を高めることなく、高輝度の可視光を得ることができ、その結果としてホトマルチプライアに十分な強度の可視光を入力することが可能になる。
X線検査装置に使用される蛍光体としては、A22S:D(AはGd、LaおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素、DはTbおよびPrから選ばれる少なくとも1種の元素、あるいはこの元素とCeおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素との混合物)で表される組成を有する希土類酸硫化物蛍光体や、BaFX:E(XはClおよびBrから選ばれる少なくとも1種の元素、EはEuまたはEuとCeおよびYbから選ばれる少なくとも1種の元素との混合物)で表される組成を有するハロゲン化バリウム蛍光体が知られている。これらの蛍光体は透過X線やコンプトン散乱X線を可視光に変換する効率に優れることから、X線検査装置用の蛍光体として有効である。
しかしながら、最近では検査荷物の多様化によって、複雑な形状をより正確に判別することが求められている。検査画像を明瞭化して検査感度の向上を図るために、照射するX線の強度を高めると、上述したようにX線検査装置の大型化を招くと共に、危険性が増大する。このため、比較的低強度の照射X線を用いた場合においても、十分な検出感度が得られるX線検出器が強く望まれている。さらに、このようなX線検出器を用いることで、小型で危険性が少なく、明瞭な検査画像が得られるX線検査装置が強く望まれている。
特開平05−100037号公報
本発明が解決しようとする課題は、比較的低強度のX線で十分な検出感度を得ることを可能にしたX線検出器用増感紙とそれを用いたX線検出器を提供することにあり、さらにそのようなX線検出器を用いることによって、小型で危険性が少なく、明瞭な検査画像を得ることを可能にしたX線検査装置を提供することにある。
実施形態のX線検出器用増感紙は、支持体と、支持体上に形成され、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体からなる蛍光体粒子とバインダとを含有する蛍光体層とを具備する。蛍光体粒子は、その中心粒径D1に対して[D1±0.3D1]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率が45体積%以上である粒度分布を有する。さらに、蛍光体層における蛍光体粒子の充填率は、60体積%以上とされている。
他の実施形態のX線検出器用増感紙は、支持体と、支持体上に形成され、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体からなる蛍光体粒子とバインダとを含有する蛍光体層とを具備する。蛍光体粒子は、その中心粒径D2に対して[D2±0.3D2]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率が45体積%以上である粒度分布を有する。さらに、蛍光体層における蛍光体粒子の充填率は、45体積%以上とされている。
実施形態のX線検査装置の構成を模式的に示す斜視図である。 実施形態のX線検出器の構成を示す断面図である。 実施形態の増感紙の第1の構成例を示す断面図である。 実施形態の増感紙の第2の構成例を示す断面図である。 実施形態の増感紙の第3の構成例を示す断面図である。 実施形態の増感紙で用いるプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の粒度分布の一例を示す図である。 実施形態の増感紙で用いるユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の粒度分布の一例を示す図である。 増感紙の蛍光体層を構成するプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の粒度分布および充填率の組合せと増感紙の発光出力との関係を示す図である。 増感紙の蛍光体層を構成するユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の粒度分布および充填率と増感紙の発光出力との関係を示す図である。 透過型蛍光発生部の増感紙における蛍光体の塗布質量および反射型蛍光発生部の増感紙における蛍光体の塗布質量と相対光出力との関係を示す図である。 透過型蛍光発生部の増感紙および反射型蛍光発生部の増感紙における蛍光体の合計塗布質量と相対光出力との関係を示す図である。 透過型蛍光発生部および反射型蛍光発生部の増感紙の組合せと照射するX線のX線管電圧と相対光出力との関係を示す図である。
以下、実施形態のX線検出器用増感紙、X線検出器、およびX線検査装置について、図面を参照して説明する。図1は実施形態によるX線検査装置の構成を模式的に示す図である。図2は図1に示すX線検査装置で用いられるX線検出器の構成を示す図である。図3ないし図5は図2に示すX線検出器に用いられる増感紙の構成例を示す図である。図1に示すX線検査装置は、例えば空港荷物検査装置に適用される。
図1に示すX線検査装置は、X線照射部としてX線管1を備えている。X線管1から射出されたX線Aは、直線コリメータ2によって、所定の幅を有するスリット状にコリメートされる。コリメートされたX線Bは、半径方向に複数のスリットが設けられた回転コリメータ3によって、直線運動を反復して行うペンシルビーム状に整形される。ペンシルビーム状のX線Cは、例えばコンベア4で移動する被検査物、例えば荷物5に対して走査照射される。被検査物である荷物5は、X線の検出感度に応じた速度で移動する。
荷物5で反射されたX線、すなわちコンプトン散乱X線Dは、散乱X線検出器6によって検出される。荷物5を透過した透過X線Eは、透過X線検出器7によって検出される。散乱X線検出器6により検出されたコンプトン散乱X線Dおよび透過X線検出器7により検出された透過X線Eは、連続的な強度値として測定される。このX線強度に応じて液晶ディスプレー等の表示部8に、荷物5内部の状態が画像化されて表示される。表示部8に表示された画像によって、荷物5の内部の検査が実施される。
散乱X線検出器6および透過X線検出器7は、以下に示すような構成を有している。散乱X線検出器6を例として説明する。なお、透過X線検出器7の基本構造は、散乱X線検出器6と同様である。図2に示すように、ペンシルビーム状のX線Cの通過用間隙が形成されるように、2つの散乱X線検出器6が配置される。散乱X線検出器6の配置形状や配置数はこれに限定されるものではなく、X線Cを通過させることができ、かつ荷物5からの散乱X線を入射させることが可能な構成であればよい。
散乱X線検出器6は、1つの側面を傾斜させた筐体状の検出器本体9を有している。検出器本体9の荷物5と対向する面は、X線の入射部9aとされている。X線入射部9aはX線を透過する材質、例えば樹脂で形成されている。X線入射部9aを除く検出器本体9の他の部分9bは、検出器本体9の強度を維持するために、例えばアルミニウムで構成されている。検出器本体9のX線入射部9aを除く部分9bの外面は、鉛等のX線遮蔽部材10によって覆われている。これは外部からのX線の影響を排除するためである。
検出器本体9のX線入射部9aの内側には、透過型蛍光発生部11が設けられている。透過型蛍光発生部11は、発光方向を検出器本体9の内側に向けた透過型の増感紙12を有している。検出器本体9のX線入射部9aを除く部分9bの内側には、反射型蛍光発生部13が設けられている。反射型蛍光発生部13は、検出器本体9のX線入射部9aを除く部分9bの内壁面に沿って設けられている。反射型蛍光発生部13は、反射型または透過型の増感紙14を有している。反射型の増感紙14は、反射による発光方向が検出器本体9の内側を向くように配置される。透過型の増感紙14を用いる場合、増感紙14の発光を検出器本体9等で反射させることで、発光を検出器本体9の内側に導く。
X線入射面9aと直角を成す検出器本体9の側面Sには、光電変換部としてホトマルチプライア15が設けられている。ホトマルチプライア15は、透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13から発光された可視光を受光するように設置されている。ホトマルチプライア15は、400nm付近に受光感度のピークを有するものが好ましい。このようなホトマルチプライア15の具体例としては、浜松ホトニクス社製のR−1307(商品名)が挙げられる。ただし、これに限られるものではない。
X線検出器6のX線入射部9aに入射したコンプトン散乱X線D1は、透過型蛍光発生部11の増感紙12に照射される。コンプトン散乱X線D1の照射に基づいて、増感紙12は選択した蛍光体に応じた可視光aを発光する。可視光aは検出器本体9の内側に向けて放射される。X線入射部9aを透過したコンプトン散乱X線D2は、反射型蛍光発生部13の増感紙14に照射される。コンプトン散乱X線D2の照射に基づいて、増感紙14は選択した蛍光体に応じた可視光bを発光する。可視光bは検出器本体9の内側に向けて放射される。可視光a、bはホトマルチプライア15により検知され、可視光a、bの合計強度が測定される。このようにして、X線検出器6に入射したコンプトン散乱X線、すなわち荷物5からのコンプトン散乱X線Dの強度が求められる。
コンプトン散乱X線による検査原理は、以下に示す通りである。エネルギーEおよび強度Iを有するX線が、厚さtを有する吸収体を透過した後の強度Iは、以下の式(1)により求められる。
I=I−μt …(1)
式(1)において、μは物質に固有の係数(単位:cm−1)で、線減弱係数と呼ばれるものであり、エネルギーEのX線が1cm進む間に減弱する比率を示す。μは原子番号の大きい物質ほど大きいという性質を有し、式(2)のように分解することができる。
μ=τ+σ+σ+κ …(2)
式(2)において、τは光電効果による吸収係数、σはトムソン散乱による散乱係数、σはコンプトン散乱による散乱係数、κは電子対創生による吸収係数である。
エネルギーEおよび強度Iを有するX線が、吸収体の表面から深さxの位置まで入射した場合、xの位置におけるX線の強度Iは、式(3)により求められる。
=I−μx …(3)
式(3)において、μはエネルギーEを有するX線の線減弱係数である。
xの位置で発生し、かつX線の入射方向に対して角度θの方向に散乱するコンプトン散乱X線の強度Iは、式(4)により求められる。
=aσ …(4)
式(4)において、aは比例定数である。
発生したコンプトン散乱X線が表面から出てくるときの強度Iは、発生した点から表面までの距離がbx(b=1/cosθ)であるので、式(5)から求められる。
=I−μ′bx …(5)
式(5)において、μ′は散乱X線の線減弱係数である。
従って、コンプトン散乱X線の強度Iは、式(3)、式(4)および式(5)式に基づいて、以下の式(6)により求められる。
=aσ−(μ+bμ′)x …(6)
従って、厚さtを有する吸収体を通過した場合のコンプトン散乱X線の総量は、以下の式(7)から求められる。
Figure 2013051165
aIは、原子番号によらない一定値なので、コンプトン散乱X線は物質により変化する、σ/(μ+bμ′)の値によって、その強度が変化する。σ/(μ+bμ′)の値は原子番号が小さい物質ほど大きくなる。従って、コンプトン散乱X線を検出することによって、プラスチック製品のような原子番号が小さい元素から主として構成される物質を見分けることができる。すなわち、プラスチック製品等の検査を実施することができる。
透過型蛍光発生部11や反射型蛍光発生部13に用いられる増感紙12、14は、プラスチックフィルムや不織布等からなる支持体16と、支持体上16に形成された蛍光体層17とを備えている。蛍光体層17は、例えば蛍光体粒子とバインダとのスラリー状混合物を支持体16上に塗布することにより形成される。蛍光体層17を構成するバインダは、一般的に樹脂バインダであり、各種の有機樹脂が用いられる。支持体16上に塗布されたスラリー状混合物(塗布層)は、支持体16と共にプレス機に通すことが好ましい。蛍光体層17は、蛍光体粒子とバインダ(例えば樹脂バインダ)とを含有している。
蛍光体層17を構成する蛍光体粒子は、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体、またはユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体からなる。プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体は、
GdS:Pr …(8)
で表される組成を有することが好ましい。式(8)において、aは酸硫化ガドリニウム(GdS)1モルに対するプラセオジム(Pr)の付活量であり、0.0001〜0.005モルの範囲が好ましい。Prの付活量が0.0001モル未満であると発光中心となる存在が少なく、効率よく発光しない状態になりやすい。Prの付活量が0.005モルを超えると、濃度消光と呼ばれる現象により発光効率が低下しやすい。Prの一部はTb、Yb、Ce等で置換してもよい。Gdの一部はLa、Y等で置換してもよい。
ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体は、
BaFCl:Eu …(9)
で表される組成を有することが好ましい。式(9)において、bはフッ化塩化バリウム(BaFCl)1モルに対するユーロピウム(Eu)の付活量であり、0.003〜0.015モルの範囲が好ましい。Eu付活量が0.003モル未満であると発光中心となる存在が少なく、効率よく発光しない状態になりやすい。Eu付活量が0.015モルを超えると、濃度消光と呼ばれる現象により発光効率が低下しやすい。Euの一部はCe、Yb等で置換してもよい。FおよびClの一部は、Br、I等で置換してもよい。
プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体、およびユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体は、いずれも透過X線やコンプトン散乱X線を可視光に変換する効率に優れるため、X線検出器6の透過型蛍光発生部11や反射型蛍光発生部13に使用する蛍光体として有効である。ただし、検査荷物の多様化によって、X線検査装置には複雑な形状をより正確に判別することが求められている。このような点に対して、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体やユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を含めて、X線検出用蛍光体の発光効率の向上はこれまでに種々なされてきたが、それによるX線検出器の大幅な性能改善は期待できない状況になってきている。
そこで、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体に関しては、蛍光体粒子の中心粒径D1(μm)に対して[D1±0.3D1]の範囲(中心粒径D1の±30%の範囲)内に入る粒径を有する粒子の比率が45体積%以上である粒度分布を有する蛍光体粒子を用いている。さらに、蛍光体層17におけるプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の充填率を60体積%以上としている。このような蛍光体層17を適用することによって、増感紙12、14の発光出力を改善することができる。増感紙12、14の発光出力を高めることで、コンプトン散乱X線Dの検出感度が向上し、これにより被検査物である荷物5の内部をより鮮明に画像化することが可能となる。
プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の中心粒径D1に対して[D1±0.3D1]の範囲(中心粒径D1の±30%の範囲)内に入る粒径を有する粒子の比率は50体積%以上であることがより好ましい。さらに、蛍光体粒子の中心粒径D1は1〜20μmの範囲であることが好ましい。蛍光体粒子の中心粒径D1が1μm未満であると、蛍光体層17の光透過率が低くなり、光出力が低下するおそれがある。一方、中心粒径D1が20μmを超えると、蛍光体の製造時における収率が低下し、製造コストが高くなるおそれがある。中心粒径D1は2〜15μmの範囲がより好ましい。
ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体に関しては、蛍光体粒子の中心粒径D2に対して[D2±0.3D2]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率が45体積%以上である粒度分布を有する蛍光体粒子を用いている。さらに、蛍光体層17におけるユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の充填率を45体積%以上としている。このような蛍光体層17を適用することによって、増感紙12、14の発光出力を改善することができる。増感紙12、14の発光出力を高めることで、コンプトン散乱X線Dの検出感度が向上し、これにより荷物5の内部をより鮮明に画像化することが可能となる。
ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の中心粒径D2に対して[D2±0.3D2]の範囲(中心粒径D2の±30%の範囲)内に入る粒径を有する粒子の比率は50体積%以上であることがより好ましい。さらに、蛍光体粒子の中心粒径D2は1〜20μmの範囲であることが好ましい。蛍光体粒子の中心粒径D2が1μm未満であると、蛍光体層17の光透過率が低くなり、光出力が低下するおそれがある。一方、中心粒径D2が20μmを超えると、蛍光体の製造時における収率が低下し、製造コストが高くなるおそれがある。中心粒径D2は2〜15μmの範囲であることがより好ましい。
上述した蛍光体粒子の粒度分布は、例えば任意の粒度分布を有する蛍光体の小粒子や大粒子を篩分け等により取り除いたり、蛍光体を合成(焼成)するときに蛍光体粒子の成長を制御する融剤の量や種類を選択したり、あるいは粒度分布がシャープな蛍光体原料を使用して蛍光体を合成することにより実現できる。
蛍光体粒子の粒度分布は、電気抵抗法(Electric resistance method)により測定することができる。蛍光体粒子の中心粒径とは、電気抵抗法により測定した累積粒度分布(百分率)に対して、50%の横軸と交差する点の粒子径である。蛍光体層における蛍光体粒子の粒度分布は、増感紙を焼成して蛍光体粒子のみを得た後に測定することができる。具体的には、蛍光板を小さく切り刻んだ後、約400〜600℃で焼成し、有機化合物であるバインダ、支持体、保護膜等を除去することによって、蛍光体粒子のみを得る。あるいは、蛍光板から蛍光体層を削り取った後、上記条件で焼成して蛍光体粒子を得る。場合によっては、蛍光体粒子の分散性を良好にするために、超音波振動を利用する。この後、得られた蛍光体粒子の粒度分布を測定する。
蛍光体粒子の粒度分布は、蛍光体層の断面をSEM観察することにより測定することもできる。具体的には、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体を用いた場合には、蛍光体層の断面の400〜1000倍のSEM写真を撮り、約18000μmの面積から約200個以上の蛍光体粒子を測定し、この測定結果に基づいて粒度分布を評価する。ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を用いた場合には、蛍光体層の断面の600〜1500倍のSEM写真を撮り、約2800μmの面積から約200個以上の蛍光体粒子を測定し、この測定結果に基づいて粒度分布を評価する。
蛍光体層17における蛍光体粒子の充填率Pは、式(10)により求めた値とする。
P=V/V=W/V/ρ …(10)
式(10)において、Vは蛍光体の体積、Vは蛍光体層の体積、Wは蛍光体の質量、ρは蛍光体の密度である。蛍光体層の体積Vは、蛍光体層の大きさ(寸法)と蛍光体層の厚さから求められ、蛍光体層の厚さはSEM写真等から測定される。蛍光体の質量Wは、上述した増感紙の焼成方法を適用して蛍光体粒子のみを得て測定する。
図6にプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の粒度分布の一例(実施例)を、従来の粒度分布(比較例)と対比して示す。図6において、実施例のプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子は、中心粒径D1が11.9μmであり、[D1±0.3D1]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率は62体積%である。比較例のプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子は、中心粒径D1が11.9μmであるものの、[D1±0.3D1]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率は42体積%である。
図7にユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の粒度分布の一例(実施例)を、従来の粒度分布(比較例)と対比して示す。図7において、実施例のユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子は、中心粒径D2が6.4μmであり、[D2±0.3D2]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率は52体積%である。比較例のユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子は、中心粒径D2が6.4μmであるものの、[D2±0.3D2]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率は43体積%である。
図6や図7に示すように、この実施形態で用いられるプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子やユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の特徴は、多くの粒子が中心粒径の近傍の粒径範囲に存在することにある。このような粒度分布を有する蛍光体粒子を使用することによって、蛍光体層17における蛍光体粒子の充填率を高めることができる。プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体に関しては、蛍光体粒子の充填率を60体積%以上とすることができる。ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体に関しては、蛍光体粒子の充填率を45体積%以上とすることができる。
上記したような蛍光体粒子の粒度分布および充填率を実現することによって、増感紙12、14の発光出力、すなわち増感紙12、14に透過X線やコンプトン散乱X線を照射したときに発光する可視光の出力(輝度)が向上する。図8はプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体を用いた増感紙において、蛍光体粒子の粒度分布([D1±0.3D1]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率)と充填率とを変化させた場合の増感紙の発光出力を示す。図9はユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を用いた増感紙において、蛍光体粒子の粒度分布([D2±0.3D2]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率)と充填率とを変化させた場合の増感紙の発光出力を示す。発光出力は、X線管電圧が120kVpのX線を増感紙に照射した際の輝度の相対値である。
図8から明らかなように、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体を用いた増感紙においては、蛍光体粒子の粒度分布が45%以上で、かつ蛍光体粒子の充填率が60体積%以上の場合に高い発光出力が得られる。図9から明らかなように、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を用いた増感紙においては、蛍光体粒子の粒度分布が45%以上で、かつ蛍光体粒子の充填率が45体積%以上の場合に高い発光出力が得られる。このような増感紙を用いてX線検出器6、7を構成することによって、ホトマルチプライア15に入力される可視光の輝度を高めることができる。すなわち、透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13の光出力を改善することができる。従って、X線検出器6、7によるコンプトン散乱X線や透過X線の検出感度が向上し、これにより被検査物である荷物5の内部をより鮮明に画像化することが可能となる。
プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子を用いる場合において、蛍光体層17における蛍光体粒子の充填率は60〜75体積%の範囲とすることが好ましい。蛍光体粒子の充填率が60体積%未満であると、増感紙12、14の発光出力を十分に高めることができない。一方、蛍光体粒子の充填率が75体積%を超えると、蛍光体粒子の破壊が起こる可能性があり、光出力が低下するおそれがある。蛍光体層17における蛍光体粒子の体積割合(充填率)を60〜75%の範囲としたとき、バインダの体積割合は5〜15%の範囲、空隙の体積割合は10〜35%の範囲とすることが好ましい。
プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子を用いる場合において、蛍光体粒子の体積割合(充填率)を高めるために、バインダの体積割合は少ない方が好ましく、具体的には15%以下が好ましい。ただし、バインダの体積割合が少なすぎると蛍光体層17の強度が失われるおそれがある。このため、バインダの体積割合は5%以上とすることが好ましい。蛍光体粒子とバインダとの接触を増やし、蛍光体層17の強度を維持するために、空隙の体積割合は少ない方が好ましく、具体的には35%以下が好ましい。ただし、空隙の体積割合を零にすることは、必要以上に製造工程の負荷が大きくなり、製造コストが増大するおそれがある。上述した蛍光体粒子を用いた場合、空隙の体積割合が10〜35%の範囲であれば、安定した特性を得ることができる。
ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子を用いる場合において、蛍光体層17における蛍光体粒子の充填率は45〜60体積%の範囲とすることが好ましい。蛍光体粒子の充填率が45体積%未満であると、増感紙12、14の発光出力を十分に高めることができない。一方、蛍光体粒子の充填率が60体積%を超えると、蛍光体粒子の破壊が起こる可能性があり、光出力が低下するおそれがある。蛍光体層17における蛍光体粒子の体積割合(充填率)を45〜60%の範囲としたとき、バインダの体積割合は10〜20%の範囲、空隙の体積割合は20〜45%の範囲とすることが好ましい。
ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子を用いた場合において、蛍光体粒子の体積割合(充填率)を高めるために、バインダの体積割合は少ない方が好ましく、具体的には20%以下が好ましい。ただし、バインダの体積割合が少なすぎると蛍光体層17の強度が失われるおそれがある。このため、バインダの体積割合は10%以上とすることが好ましい。蛍光体粒子とバインダとの接触を増やし、蛍光体層17の強度を維持するために、空隙の体積割合は少ない方が好ましく、具体的には45%以下が好ましい。ただし、空隙の体積割合を零にすることは、必要以上に製造工程の負荷が大きくなり、製造コストが増大するおそれがある。上述した蛍光体粒子を用いた場合、空隙の体積割合が20〜45%の範囲であれば、安定した特性を得ることができる。
蛍光体層17における蛍光体粒子の充填率を向上させるためには、バインダ量を減らして蛍光体粒子の割合を高めることに加えて、蛍光体層17を形成する際に適切な条件下でプレスすることも有効である。支持体16上に蛍光体粒子とバインダとのスラリー状混合物を塗布した後、混合物の塗布層に60〜80℃の温度を加えつつ、30〜50MPaの圧力で20〜40分間プレスすることによって、蛍光体粒子の充填率を向上させることができる。また、90〜110℃に加熱したローラー間を通して連続プレスすることによっても、蛍光体粒子の充填率を向上させることができる。連続プレス時の圧力は5〜25MPaとすることが好ましく、ライン速度は0.4〜0.6m/分とすることが好ましい。
プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体とユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体との充填率の違いは、主に蛍光体粒子の形状に依存する。プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子は球状に近い形状を有するのに対して、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子は異形の粒子を比較的多く含んでいる。このため、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の方が充填率を高めやすく、増感紙12、14の発光出力がより向上する。ただし、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体は、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体に比べて安価であるため、増感紙12、14の低コスト化に寄与する。プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体およびユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体は、それらの特徴に応じて適宜選択して使用することができる。
蛍光体層17における蛍光体の塗布質量は、増感紙12、14を適用する透過型蛍光発生部11または反射型蛍光発生部13に応じて設定することが好ましい。透過型蛍光発生部11の増感紙12の蛍光体の塗布質量を多くしすぎると、蛍光体層17の内部で光吸収が起こることによって、蛍光の発光出力が低下する。さらに、コンプトン散乱X線の吸収も起こるため、反射型蛍光発生部13へのコンプトン散乱X線の入射量が減少し、可視光の合計量が減少する。反射型蛍光発生部13においては、増感紙14の蛍光体の塗布質量を増大させるにつれて発光出力が上がるものの、あまり塗布質量を多くしすぎてもそれ以上の効果が得られず、製造コストの増加等を招くだけになる。
図10に、透過型蛍光発生部11の増感紙12および反射型蛍光発生部13の増感紙14にそれぞれユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を用いた場合の光出力を示す。なお、光出力はバイアルカリ光電面を有するホトマルチプライア・R−980(商品名、浜松ホトニクス社製)を用いて、X線管電圧120kVpで測定した。図10の縦軸はLaOBr:Tb蛍光体の光出力を100としたときの相対光出力である。図10に示されるように、透過型蛍光発生部11または反射型蛍光発生部13に応じて、蛍光体の塗布質量を適宜に設定することが好ましい。
上述したように、透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13の全体としての可視光量は、増感紙12および増感紙14における蛍光体の塗布質量の兼ね合いによって変化する。このため、透過型蛍光発生部11の増感紙12および反射型蛍光発生部13の増感紙14における蛍光体の塗布質量をそれぞれ考慮した上で、蛍光体の合計塗布質量を設定することが好ましい。図11に、各蛍光体の組合せによる増感紙12、14の蛍光体の合計塗布質量と相対光出力との関係を示す。蛍光体の組合せによって若干異なるものの、蛍光体の合計塗布質量は80 〜300mg/cmの範囲とすることが好ましい。このような範囲の蛍光体の合計塗布質量を適用することで、良好な光出力を得ることができる。
図12は代表的な蛍光体の組合せによる増感紙12、14に照射するX線のX線管電圧と相対光出力との関係を示す。図12に示されるように、X線管電圧や蛍光体の組合せによって相対光出力が若干変化するものの、実施形態の透過型蛍光発生部11の増感紙12および反射型蛍光発生部13の増感紙14は、幅広いX線管電圧に対応可能であることが分かる。従って、各種のX線検査装置に適用することができる。さらに、透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13の増感紙12、14と蛍光体との組合せは、特に限定されるものではない。増感紙12、14はプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体またはユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体が適用されていればよい。
この実施形態の散乱X線検出器6は、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体を増感紙12、14のそれぞれに適用した透過型蛍光発生部11と反射型蛍光発生部13との組合せ、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体を増感紙12に適用した透過型蛍光発生部11とユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を増感紙14に適用した反射型蛍光発生部13との組合せ、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を増感紙12に適用した透過型蛍光発生部11とプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体を増感紙14に適用した反射型蛍光発生部13との組合せ、またはユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体を増感紙12、14のそれぞれに適用した透過型蛍光発生部11と反射型蛍光発生部13との組合せのいずれかを備えている。透過X線検出器7も同様である。
前述したように、増感紙12、14は支持体16とその上に形成された蛍光体層17とを備えている。図4に示すように、増感紙12、14は蛍光体層17上に形成された保護膜18を備えていてもよい。蛍光体層17を保護膜18で覆うことによって、蛍光体層17からの蛍光体粒子の脱落や蛍光体層17の剥離等を抑制することができる。支持体16および保護膜18は、透明または不透明な樹脂フィルムからなることが好ましい。透過型の増感紙は、支持体16および保護膜18の一方もしくは両方に透明な樹脂フィルムを適用する。反射型の増感紙を構成する場合、支持体16および保護膜18の一方に透明な樹脂フィルムを適用し、他方に不透明な樹脂フィルムを適用する。
透過型蛍光発生部11は、透過型の増感紙12を備える。支持体16および保護膜18の一方に透明な樹脂フィルムを適用した透過型の増感紙12は、透明な樹脂フィルムが検出器本体9の内側を向くように配置される。反射型蛍光発生部13には、基本的に反射型の増感紙14が適用される。ただし、X線検出器6、7が増感紙14の発光を検出器本体9、あるいは検出器本体9と増感紙14との間に配置された反射部材等で反射させることが可能な構成を有する場合には、反射型蛍光発生部13に透過型の増感紙14を適用することができる。特に、支持体16および保護膜18の両方に透明な樹脂フィルムを適用した透過型の増感紙14は、支持体16側および保護膜18側の両方から発光が得られるため、発光出力をより一層向上させることができる。
プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体やユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体は水分で劣化しやすいため、蛍光体層17を支持体16や保護膜18で覆うと共に、支持体16および保護膜18に水分を透過しにくい樹脂フィルムを使用することが好ましい。支持体16および保護膜18は、空気中の水分等による蛍光体の劣化を抑制するために、水蒸気透過率が20g/m2/24hr/0.1mm以下の水蒸気透過率を有する樹脂フィルムで形成することが好ましく、さらにそのような水蒸気透過率を有するポリエチレンテレフタレートフィルムで形成することがより好ましい。
さらに、図5に示すように、支持体16の端部16aと保護膜18の端部18aとを重ね合わせ、その部分に熱と圧力を加えて密閉部19を形成することも有効である。蛍光体層17を保護膜18で覆っただけでは、蛍光体層17と空気中の水分等との接触を完全に防ぐことはできない。これに対して、蛍光体層17を樹脂フィルムからなる支持体16および保護膜18で覆うと共に、それらの端部16a、18aを熱圧着して密閉することによって、蛍光体層17を空気中の水分等から遮断することができる。従って、蛍光体層17を構成するプラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体やユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体の水分による劣化を大幅に抑制することが可能となる。
この実施形態のX線検出器の具体例として、透過型蛍光発生部11の増感紙12と反射型蛍光発生部13の増感紙14との各種組合せを表1に示す。表1は増感紙12と増感紙14とを各種条件で組合せた場合の相対光出力を示している。相対光出力は前述した方法にしたがって測定したものである。表1において、粒度分布は蛍光体粒子の中心粒径Dに対して[D±0.3D]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率(体積%)である。支持体の欄において、PET1は透明なポリエチレンテレフタレートフィルム、PET2は白色(不透明)のポリエチレンテレフタレートフィルムである。
表1のプレス条件の欄は、蛍光体粒子とバインダとのスラリー状混合物を支持体上に塗布した後にプレスする際の条件を示している。プレス条件の欄において、条件1はプレス機を用いて温度60℃、圧力5MPa、時間10分の条件でプレス、またはロールプレス機を用いて温度80℃、圧力1MPa、ライン速度1m/分の条件で連続プレスしたものである。条件2は、プレス機を用いて温度70℃、圧力40MPa、時間30分の条件でプレス、またはロールプレス機を用いて温度100℃、圧力10MPa、ライン速度0.5m/分の条件で連続プレスしたものである。
Figure 2013051165
表1から明らかなように、透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13のそれぞれに、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の粒度分布が45体積%以上、充填率が60体積%以上の蛍光体層を有する増感紙、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の粒度分布が45%以上、充填率が45体積%以上の蛍光体層を有する増感紙、またはこれらの組合せを適用することで、高い光出力が得られることが分かる。透過型蛍光発生部11および反射型蛍光発生部13の光出力を高めることによって、コンプトン散乱X線の検出感度が向上する。透過X線の検出感度についても同様である。従って、X線検査装置で荷物5の内部をより鮮明に画像化することができ、より正確な検査を実施することが可能となる。蛍光発生部11、13の光出力を高めることによって、X線管1を低容量化することもできる。これはX線検査装置の小型化に寄与する。
上述した実施形態では、主として散乱X線検出器6について説明したが、透過X線検出器7についても同様である。プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体粒子の粒度分布が45体積%以上、充填率が60体積%以上の蛍光体層を有する増感紙や、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体粒子の粒度分布が45%以上、充填率が45体積%以上の蛍光体層を有する増感紙を、透過X線検出器7に適用することによって、透過X線の検出感度を向上させることができる。散乱X線検出器6や透過X線検出器7を備えるX線検査装置は、空港荷物検査装置に限らず、各種のセキュリティシステムに利用可能である。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (20)

  1. 支持体と、
    前記支持体上に形成され、プラセオジム付活酸硫化ガドリニウム蛍光体からなる蛍光体粒子とバインダとを含有する蛍光体層とを具備するX線検出器用増感紙であって、
    前記蛍光体粒子は、前記蛍光体粒子の中心粒径D1に対して[D1±0.3D1]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率が45体積%以上である粒度分布を有し、かつ前記蛍光体層における前記蛍光体粒子の充填率が60体積%以上であることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  2. 請求項1記載のX線検出器用増感紙において、
    前記蛍光体粒子の中心粒径D1は1μm以上20μm以下の範囲であることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  3. 請求項1記載のX線検出器用増感紙において、
    前記蛍光体層における前記蛍光体粒子の充填率は60体積%以上75体積%以下の範囲であることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  4. 請求項1記載のX線検出器において、
    前記蛍光体層は、60体積%以上75体積%以下の範囲の前記蛍光体粒子と、5体積%以上15体積%以下の範囲の前記バインダと、10体積%以上35体積%以下の範囲の空隙とを含有することを特徴とするX線検出器用増感紙。
  5. 請求項1記載のX線検出器用増感紙において、
    さらに、前記蛍光体層上に設けられた保護膜を具備し、
    前記支持体および前記保護膜は、透明または不透明な樹脂フィルムからなることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  6. 請求項5記載のX線検出器において、
    前記樹脂フィルムは、20g/m2/24hr/0.1mm以下の水蒸気透過率を有するポリエチレンテレフタレートフィルムからなることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  7. 請求項5記載のX線検出器において、
    前記蛍光体層は、前記樹脂フィルムからなる前記支持体および前記保護膜で密閉されていることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  8. 支持体と、
    前記支持体上に形成され、ユーロピウム付活フッ化塩化バリウム蛍光体からなる蛍光体粒子とバインダとを含有する蛍光体層とを具備するX線検出器用増感紙であって、
    前記蛍光体粒子は、前記蛍光体粒子の中心粒径D2に対して[D2±0.3D2]の範囲内に入る粒径を有する粒子の比率が45体積%以上である粒度分布を有し、かつ前記蛍光体層における前記蛍光体粒子の充填率が45体積%以上であることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  9. 請求項8記載のX線検出器用増感紙において、
    前記蛍光体粒子の中心粒径D2は1μm以上20μm以下の範囲であることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  10. 請求項8記載のX線検出器用増感紙において、
    前記蛍光体層における前記蛍光体粒子の充填率は45体積%以上60体積%以下の範囲であることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  11. 請求項8記載のX線検出器用増感紙において、
    前記蛍光体層は、45体積%以上60体積%以下の範囲の前記蛍光体粒子と、10体積%以上20体積%以下の範囲の前記バインダと、20体積%以上45体積%以下の範囲の空隙とを含有することを特徴とするX線検出器用増感紙。
  12. 請求項8記載のX線検出器用増感紙において、
    さらに、前記蛍光体層上に設けられた保護膜を具備し、
    前記支持体および前記保護膜は、透明または不透明な樹脂フィルムからなることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  13. 請求項12記載のX線検出器において、
    前記樹脂フィルムは、20g/m2/24hr/0.1mm以下の水蒸気透過率を有するポリエチレンテレフタレートフィルムからなることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  14. 請求項12記載のX線検出器において、
    前記蛍光体層は、前記樹脂フィルムからなる前記支持体および前記保護膜で密閉されていることを特徴とするX線検出器用増感紙。
  15. X線の入射部を有する筐体状の検出器本体と、
    前記入射部に設けられた透過型蛍光発生部と、
    前記検出器本体の前記入射部を除く部分に設けられた反射型蛍光発生部と、
    前記検出器本体内に設置された光電変換部とを具備するX線検出器であって、
    前記透過型蛍光発生部および前記反射型蛍光発生部は、それぞれ請求項1記載のX線検出器用増感紙を備えることを特徴とするX線検出器。
  16. X線の入射部を有する筐体状の検出器本体と、
    前記入射部に設けられた透過型蛍光発生部と、
    前記検出器本体の前記入射部を除く部分に設けられた反射型蛍光発生部と、
    前記検出器本体内に設置された光電変換部とを具備するX線検出器であって、
    前記透過型蛍光発生部および前記反射型蛍光発生部は、それぞれ請求項8記載のX線検出器用増感紙を備えることを特徴とするX線検出器。
  17. X線の入射部を有する筐体状の検出器本体と、
    前記入射部に設けられた透過型蛍光発生部と、
    前記検出器本体の前記入射部を除く部分に設けられた反射型蛍光発生部と、
    前記検出器本体内に設置された光電変換部とを具備するX線検出器であって、
    前記透過型蛍光発生部および前記反射型蛍光発生部の一方は、請求項1記載のX線検出器用増感紙を備え、
    前記透過型蛍光発生部および前記反射型蛍光発生部の他方は、請求項8記載のX線検出器用増感紙を備えることを特徴とするX線検出器。
  18. 被検査物にX線を照射するX線照射部と、
    前記被検査物からのコンプトン散乱X線、または前記被検査物を透過した透過X線を検出するX線検出部と、
    前記X線検出部により測定したX線強度に基づいて、前記被検査物内部を画像化して表示する表示部とを具備するX線検査装置であって、
    前記X線検出部は、請求項15記載のX線検出器を備えることを特徴とするX線検査装置。
  19. 被検査物にX線を照射するX線照射部と、
    前記被検査物からのコンプトン散乱X線、または前記被検査物を透過した透過X線を検出するX線検出部と、
    前記X線検出部により測定したX線強度に基づいて、前記被検査物内部を画像化して表示する表示部とを具備するX線検査装置であって、
    前記X線検出部は、請求項16記載のX線検出器を備えることを特徴とするX線検査装置。
  20. 被検査物にX線を照射するX線照射部と、
    前記被検査物からのコンプトン散乱X線、または前記被検査物を透過した透過X線を検出するX線検出部と、
    前記X線検出部により測定したX線強度に基づいて、前記被検査物内部を画像化した表示する表示部とを具備するX線検査装置であって、
    前記X線検出部は、請求項17記載のX線検出器を備えることを特徴とするX線検査装置。
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