JPWO2011136237A1 - ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
又、アクリル酸の占める割合が高い、言い換えれば、吸水性樹脂はプロピレン(石油)の価格に大きく依存するという問題、又、紙オムツ等の使い捨て用途に主に使用される吸水性樹脂のため、上記問題に加えて、吸水性樹脂はアクリル酸を主成分とするため、コスト中の原料の供給安定性も有していた。そこで、澱粉やセルロース架橋して吸水性樹脂、例えば、カルボキシメチルセルロース架橋体等を得る手法も知られているが、ポリアクリル酸(塩)に比べて諸物性は低い。
(1)CRC(ERT441.2−02)が10[g/g]以上
(2)AAP(ERT442.2−02)が20[g/g]以上
(3)Ext(ERT470.2−02)が35重量%以下
(4)Residual Monomers(ERT410.2−02)が1000ppm以下
(5)PSD(ERT420.2−02)による粒子径が150μm以上850μm未満の粒子が90重量以上
(6)FSRが0.15g/g/sec以上
又、本発明は上記課題を解決するため、加速器質量分析法によって測定される炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満及び14C/Cが1.0×10−14以上である、ポリアクリル酸(塩)、特にポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。尚、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸水倍率)が通常5[g/g]以上であることをいい、又、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExt(水可溶分)が通常0〜50重量%であることをいう。
本発明における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位としてアクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分とする吸水性樹脂を意味する。
又、「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の上位概念として定義され、本発明においては水溶性のポリアクリル酸(塩)も含まれる。即ち、ポリアクリル酸(塩)が水に実質100質量%溶解する場合は、ポリアクリル酸(塩)系水溶性ポリマー或いは水溶性ポリアクリル酸(塩)と称する。尚、本発明における「ポリアクリル酸(塩)」は、水溶性ポリアクリル酸(塩)或いは水不溶性水膨潤性ポリアクリル酸(塩)(別称;ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂)から選ばれ、効果の観点からもポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が好ましい。
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)である吸水性樹脂の測定方法(EDANA Recommended Test Method)の略称である。尚、本発明においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(以下、「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布製袋中の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する30分間の自由膨潤後更に遠心分離機で水切りした後の吸水倍率(単位;[g/g])である。
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する1時間、2.06kPaでの荷重下膨潤後の吸水倍率(単位;[g/g])であるが、本発明においては、1時間、4.83kPa荷重下での吸水倍率(単位;[g/g])とする。
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200gに対して、吸水性樹脂1gを加え、500rpmで16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
「FSC」は、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に吸水性樹脂0.20gを30分浸漬した後、遠心分離機で水切りを行わないで測定した吸水倍率(単位;[g/g])である。
「Residual Monomers」とは、吸水性樹脂中に残存しているモノマー量を意味する。具体的には、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200cm3に吸水性樹脂1.0gを投入し500rpmで1時間攪拌後、該水溶液に溶出したモノマー量を高速液体クロマトグラフィーで測定した値(単位;ppm)である。
「PSD」とは、Particle Size Distributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。尚、質量平均粒子径(D50)及び粒子径分布幅は欧州公告特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
荷重下又は無荷重下における膨潤ゲルの粒子間を流れる液の流れを「通液性」という。この「通液性」の代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity)や、GBP(Gel Bed Permeability)がある。
本発明における「初期色調」とは、製造直後の吸水性樹脂又はユーザー出荷直後の吸水性樹脂の色調をいい、通常、工場出荷前の色調で管理する。色調の測定方法については、国際公開第2009/005114号に記載される方法(Lab値、YI値、WB値等)を例示することができる。
本発明における「バイオマス」とは、枯渇性資源ではない、現生生物構成体物質起源の産業資源のことをいい、再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたものをいう。
本発明における「炭素安定同位体比(δ13C)」とは、自然界に存在する炭素原子の3種類の同位体(存在比 12C:13C:14C=98.9:1.11:1.2×10−12 単位;%)のうち、12Cに対する13Cの割合をいい、炭素安定同位体比は、標準物質に対する偏差で表され、以下の式で定義される値(δ値)をいう。
伝播の状態や範囲を追跡調査するための微量添加物質や性質をいう。本発明では吸水性樹脂に特定範囲の13C、更に好ましくは14Cを使用するが、市販ないし公知の吸水性樹脂と13C(及び14C量)で判別できる範囲においてトレーサビリティーを有しており、よって、製造後ないし販売後の吸水性樹脂の追跡調査(13C及び14C量の分析)の有無に関わらず、本発明の特定13C量を示す吸水性樹脂は本発明の権利範囲である。
尚、製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と該ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造に用いた重合前の原料のアクリル酸の同定方法としては、予めポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造に用いた重合前の原料であるアクリル酸の炭素安定同位体比(δ13C)を加速器質量分析法によって測定しておけば、この測定値と、製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の炭素安定同位体比(δ13C)を測定した値とを、比較することによって、判定することができる。
又、製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂から該ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造に用いた重合前のアクリル酸を追跡する方法についても同様に、予めポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造に用いた重合前の原料であるアクリル酸や製造過程における中間生成物の炭素安定同位体比(δ13C)を測定しておけば、製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の炭素安定同位体比(δ13C)から、中間生成物や原料を追跡することができる。したがって、製品(吸水性樹脂)から原料や製造過程を追跡できるため、製品に不具合が生じている場合には、製造ラインや原料等の調査等が容易にできるようになる。
本発明におけるバイオマス由来の炭素は、大気中に二酸化炭素として存在していた炭素が、植物中に取り込まれ、これを原料として合成されたアクリル酸中に存在する炭素を示すものであり、放射性炭素(即ち、炭素14)を測定することによって同定できる。
又、バイオマス由来成分の含有割合は、放射性炭素(炭素14)の測定を行うことによって特定することができる。即ち、石油等の化石原料中には炭素14原子が殆ど残っていないため、対象となる試料中における炭素14の濃度を測定し、大気中の炭素14の含有割合(107pMC(percent modern carbon))を指標として逆算することで、試料中に含まれる炭素のうちのバイオマス由来炭素の割合を求めることができる。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上、Y以下」であることを意味する。又、重量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味し、更に、特に注釈のない限り、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味し、「質量」と「重量」、「質量%」と「重量%」及び「質量部」と「重量部」は同義語として扱う。更に、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
(2−1)アクリル酸製造工程
本工程は、ポリアクリル酸(塩)、特にポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の原料として用いるアクリル酸、特にバイオマスからアクリル酸を得る工程である。
本発明は、加速器質量分析法によって測定される炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満であり、かつ、14C/Cが1.0×10−14以上であるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、更に下記(1)〜(6)に規定する物性を満たすポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を提供するものである。
(1)CRC(ERT441.2−02)が10[g/g]以上
(2)AAP(ERT442.2−02)が20[g/g]以上
(3)Ext(ERT470.2−02)が35重量%以下
(4)Residual Monomers(ERT410.2−02)が1000ppm以下
(5)PSD(ERT420.2−02)による粒子径が150μm以上850μm未満の粒子が90重量以上
(6)FSRが0.15[g/g/s]以上
アクリル酸の原料として天然物(非化石原料)を使用する場合、又は、後述の化石原料のアクリル酸と非化石原料のアクリル酸を併用する場合、米国特許出願公開第2007/219521号に準じて、得られた吸水性樹脂の非化石原料の比率は、得られるポリアクリル酸の14C(放射性炭素)/C(炭素)で特定できる。従来の化石原料(特に石油、更にプロピレン)から得られるアクリル酸(塩)系吸水性樹脂では14C/Cが1.0×10−14未満であるのに対して、本発明の吸水性樹脂は14C/Cが好ましくは1.0×10−14以上、更に好ましくは1.0×10−13以上、特に好ましくは1.0×10−12である。ほぼ100質量%が非化石原料の場合、上限は1.2×10−12であるが、適宜、ブランク天然物(例えば、シュウ酸標準体等)を実測して、その14C/C量を求めて比較すればよい。かかる14C/C量の分析によって、ポリアクリル酸中の非化石原料率が測定できる。当該14C/Cはアイソトープ・マススペクトロフィー等で測定でき、例えば、米国特許第3885155号、同第4427884号、同第5438194号、同第5661299号に示される。
尚、13C、14Cを多く含むアクリル酸は、その分、分子量が大きくなる(12C由来のアクリル酸の分子量は72)ため、沸点が若干高くなる(通常、アクリル酸の沸点は143℃)。従って、質量(分子量)比由来の沸点差(分子量が小さい方が低沸点となる)を利用して、13C、14C量を調整することができる。具体的には、アクリル酸の原料(グリセリン、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸)や中間体であるアクロレインの気相酸化反応時の気化や、当該反応で得られたアクリル酸の蒸留精製で、所定の13C、14C量を有するアクリル酸とすることができる。
上記13C及び14Cに加えて、水素位体比を調整ないし測定して更にトレーサビリティーを向上させてもよい。水素位体比は例えば−500〜0‰、特に−300〜0‰、更に−300〜−15‰(δD‰,vs SMOW:Standard Mean Ocean Water)の範囲でアクリル酸原料を選択することで、制御できる。例えば、C3植物でも米は−30‰前後、小麦は−100〜−70‰前後、じゃが芋は−100〜−70‰前後(δD‰,vs SMOW)の水素同位体比を有する。
本発明で炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を得るために、単量体としてアクリル酸を主成分とし、単量体として炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満であればよい。
ここで、アクリル酸の炭素安定同位体比(δ13C)は主に原料の炭素安定同位体比(δ13C)に依存するため、異なる炭素同位体比のアクリル酸原料(異なる植物原料由来の上記原料)を適宜混合(例えば、炭素源としてC4植物の併用等)して、得られるアクリル酸及びポリアクリル酸(塩)の炭素安定同位体比(δ13C)を調整してもよい。原料主成分とされるC3植物は炭素源の50重量%を越えて、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%、特に100重量%とされる。ここで、炭素源の50重量%を越えてC3植物とは、例えば、植物由来のグリセリンからアクリル酸を得る場合、グリセリンの50重量%超える量がC3植物由来であることを指す。
植物は、その光合成炭酸固定経路における二酸化炭素の初期固定産物の種類から、C3植物、C4植物及び多肉植物型光合成(CAM/Crassulacean Acid Metabolism)植物の3種類に分類される。作物ではトウモロコシや雑穀類がC4植物であり、イネやコムギといった主要作物はC3植物であり、サボテン(Cactaceae)、弁慶草(Crassulaceae)、トウザイクサ(Euphorbiaceae)等がCAM植物である。
脂肪酸とグリセリンのエステルである油脂として、米油、ぬか油等のC3植物由来の油脂も知られており、又、コーン油,大豆油,胡麻油,ひまわり油等のC4植物由来の油脂、更には鯨油、鮫油、肝油等の動物由来の油脂が知られている、又、バイオディーゼル(BDF)の原料として、菜種油、(油椰子やココ椰子から得られる)パーム油、オリーブ油、ひまわり油、落花生油、胡麻油、大豆油、コメ油、ヘンプ・オイル(大麻油)等の植物油、魚油や豚脂、牛脂等の獣脂及び廃食用油(いわゆる天ぷら油等)等、様々なC3植物/C4植物/動物から由来の油脂がバイオディーゼル(PDF)燃料の原料となりうる。欧州では菜種油、中国ではオウレンボク等、北米及び中南米では大豆油、東南アジアではアブラヤシやココヤシ、ナンヨウアブラギリから得られる油が利用されている。
本発明でアクリル酸の製造方法は炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満である限り特に問わず、例えば、C3植物から得られた非化石原料、特に天然物を脱水、酸化ないし発酵等してアクリル酸を得てもよい。
非化石原料からのかかるアクリル酸系吸水性樹脂の製造方法は、例えば、国際公開第2006/092271号、同第2006/092272号、同第2006/136336号、同第2008/023039号、同第2008/023040号、同第2007/109128号等に例示されている。これら6件の特許文献はなんら13C量やそのトレーサビリティーになんら着目するものではなく、本願吸水性樹脂の製造方法を示唆しない。又、米国特許出願公開第2007/0219521号については上記の通りである。
現在、アクリル酸の原料として使用されているプロピレンについて、化石資源である原油のクラッキング法に代わり、バイオマス由来とする製造方法が例示される。具体的には、ブテンとエチレンとのメタセシス反応、プロパノールの脱水反応、グリセリンの脱水還元反応、ブテンの接触分解、バイオガス(合成ガス)のGTL合成反応、バイオガス(合成ガス)からのメタノール合成を経たMTO合成反応、バイオエタノール又はその脱水物であるバイオエチレンを経由してのバイオプロピレン、バイオマスプロパンの脱水素反応等が挙げられる。所定の13C量のバイオプロピレンを得たのち、通常のアクリル酸製造方法にしたい、プロピレンよりアクロレイン更にはアクリル酸を得ればよい。
所定δ13Cのアクリル酸を得るために、所定δ13Cの上記バイオマスより、グルコース等を経て、3−ヒドロキシプロピオン酸や2−ヒドロキシプロピオン酸を得たのち、脱水してアクリル酸を得ればよい。
グリセリンから3−ヒドロキシプロピオン酸(3−HPA)を得る方法は、例えば、米国特許第6852517号、特開2007−082476号、特開2005−102533号に示されている。グリセリンから2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)を得る方法は、例えば、特開平4−356436号に示されている。β−アラニンから3−ヒドロキシプロピオン酸を得る方法は、国際公開第2002/042418号、同第2007/042494号に示されている。3−ヒドロキシプロピオン酸を得る際に、国際公開第2010/0118743号に開示の手法でヒドロキシプロピオン酸への耐性を向上させてもよいし、国際公開第2010/0118743号に開示の手法でヒドロキシプロピオン酸がアルデヒドアルデヒドに変換されることを阻害することも好ましい。一例として、オキサロ酢酸を脱炭酸し、マロン酸セミアルデヒドを生成した後、3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼを用いて3−ヒドロキシプロピオン酸を生成する方法が挙げられる。
ヒドロキシプロピオン酸から脱水でアクリル酸を得る方法は、例えば、国際公開第2002/090312号、同第2003/08795号、同第2005/095320号、同第2007/106099号、同第2008/1042958号、米国特許出願公開第2007/219391号等に例示されている。脱水される未中和ヒドロキシプロピオン酸は酸ないしその塩(特に一価塩、更にはナトリウム塩やアンモニム塩)が使用され、その際、溶媒は使用してもよく未使用でもよい。得られたアクリル酸は晶析や蒸留等で精製すればよく、アクリル酸の晶析法は層状又は分散型で連続又は回分で行われ、例えば、国際公開第2008/023039号等に示されている。尚、ヒドロキシプロピオン酸アンモニム塩からの脱水にはアクリルアミドの副生に注意する必要がある。
バイオマス由来のアクリル酸を用いる場合、アルデヒド分や飽和カルボン酸(特に酢酸やプロピオン酸)が増加する傾向にあり、吸水性樹脂に使用する場合、それらをより低く制御することが好ましい。制御方法としては、アクリル酸の製造方法や精製方法、蒸留方法や晶析方法を適宜制御すればよく、好ましくは晶析方法を制御することであり、更に好ましくは晶析方法として多段晶析を行うことである。
尚、質量(分子量)比由来の沸点差を利用して、上述したように蒸留(精留)の前後で炭素安定同位体比(δ13C)を変化させてもよい。
本発明では目的の炭素安定同位体比(δ13C)を示す範囲で、異なる炭素安定同位体比(δ13C)のアクリル酸を混合して水溶性不飽和単量体を得ることも好ましい。即ち、上記13Cのアクリル酸以外に、所定の微量成分(特にプロピオン酸)を含む単量体ないしアクリル酸を簡便に安価に得るために、異なる製造方法の複数のアクリル酸(以下複数のアクリル酸)を混合して単量体を調製することも好ましい。又、C3植物由来の原料を用いて特定炭素安定同位体比(δ13C)を示すアクリル酸を得るだけでなく、異なる炭素安定同位体比(δ13C)のアクリル酸を混合して所定の特定炭素安定同位体比(δ13C)、即ち、C3植物の単体では達成し得ない炭素安定同位体比(δ13C)を含め、より特定の炭素安定同位体比(δ13C)とすることで、得られる吸水性樹脂のトレーサビリティーを更に高めることが好ましい。即ち、異なる炭素安定同位体比(δ13C)の原料を用いると、その炭素安定同位体比を分析して得られる統計解析値は固有のものとなるため、他の原料と区別することができ、したがってそのような原料から製造された吸水性樹脂の炭素安定同位体比も固有の分析値を有することとなり、同定、追跡が容易となる。
尚、異なる炭素安定同位体比(δ13C)を有する複数のアクリル酸を混合して使用する場合、最終製品として精製アクリル酸の段階で混合してもよく、その前段階である粗製アクリル酸を混合した後、精製(蒸留や晶析、又はこれらの併用)してもよく、又、気相酸化段階で異なるアクロレインを混合した後に酸化してアクリル酸としてもよい。
上記アクリル酸製造工程と吸水性樹脂の製造工程は好ましくは近接、更には連結される。又、油脂由来のグリセリンからアクリル酸を得る場合、油脂から脂肪酸誘導体(例;バイオディーゼル)とグリセリンを同時に得て更にアクリル酸、更には吸水性樹脂とすればよく、これらの工程も好ましくは近接、更に直結される。又、CO2低減の観点から、上記特定13Cの植物原料の近隣でアクリル酸、更には吸水性樹脂を製造することが好ましく、輸送へのエネルギー低減から上記特定13Cの植物原料について「地産地消」でアクリル酸を製造及び重合する。
重合の安定性や速度面から、アクリル酸を用いた単量体は所定量の重合禁止剤を含有することが好ましく、0を超えて200ppm以下がより好ましく、更には1〜160ppmが好ましく、特に10〜100ppmが好ましく、更により好ましくは15〜80ppmの重合禁止剤を含有することである。重合禁止剤としては、好ましくはメトキシフェノール類、特にp−メトキシトキシフェノールを含有する。多量の重合禁止剤は重合速度遅延や製造後の着色の問題があるが、少なすぎると単量体の安定性のみならず、かえって重合が遅くなることもある。又、所定量の含有はトレーサビリティーやゲルの耐候性の点からも好ましいことがある。
当該重合禁止剤(特にp−メトキシフェノール)は、アクリル酸等の単量体に所定量含有しているが、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造過程(特に重合工程)でその一部が消費され、得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂には一部が残存する。
重合禁止剤の残存量、即ち、吸水性樹脂中の含有量は、重合時間や重合開始剤量、乾燥温度等で適宜決定されるが、p−メトキシフェノールの含有量として5〜60ppmが好ましく、6〜40ppmがより好ましく、8〜30ppmが更に好ましく、8〜20ppmが特に好ましい。重合禁止剤の残存量の制御方法として、具体的には、上記範囲の重合禁止剤を含有するアクリル酸を用いた単量体を重合した後、得られた含水ゲル状架橋重合体を後述の乾燥温度150〜250℃、乾燥時間10〜120分間で含水率20質量%以下となるまで乾燥し、乾燥後の吸水性樹脂粉末100質量部に対して、表面架橋剤を0.001〜10質量部を混合し、70〜300℃、1〜120分間加熱処理することが挙げられる。p−メトキシフェノール等の微量成分の定量は、大過剰の水又は生理食塩水を用いて抽出することができ、濾液を必要により濃縮等の処理を行った後、液体クロマトグラフィー等を用いて濾液中の濃度を測定すればよい。
尚、米国特許出願公開第2007/0219521号の実施例2にはメトキシフェノール類の使用が開示されていないが、これらの化合物が未使用の場合、物性のフレやトレーサビリティーの低下を伴う虞がある。
本工程は、上記(2−1)アクリル酸製造工程で得られたアクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液を重合して、含水ゲル状重合体、特に含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
本発明で得られるポリアクリル酸(塩)、特にポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、その原料(単量体)として、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液を使用し、通常、水溶液状態で重合される。該単量体水溶液中の単量体濃度は、通常10〜90重量%であり、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは40〜60重量%である。
上記単量体としてのアクリル酸又は重合後の重合体(含水ゲル)の中和に用いられる塩基性物質としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物や炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩等の一価の塩基性物質が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。又、中和時の温度(中和温度)についても、特に制限されず、10〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。尚、上記以外の中和処理条件等については、国際公開第2006/522181号に開示されている条件等が、本発明に好ましく適用される。中和の塩(NaOH)等は所定量以下のFeを含有することが好ましく、後述の範囲とされる。
アクリル酸は上記範囲の微量成分とされ、上記範囲の重合禁止剤を含む。又、吸水性樹脂の着色や劣化の抑制の観点から上記中和塩を主な由来とする鉄量(Fe2O3換算)は好ましくは0〜5ppm、更に好ましくは0〜2ppm、特に好ましくは0〜1ppmであり、下限は重合速度から少量の含有、好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.02ppm以上である。更に、上記アクリル酸中の3−HPA、特に3−HPA由来のアクリル酸に加えて、アクリル酸製造後に副生するアクリル酸ダイマー(オリゴマー)や3−HPAも、残存モノマーの観点から少ないほど好ましく、単量体中にそれぞれ好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下とされる。
・3−ヒドロキキシプロピオン酸の含有量が1000ppm以下
・重合禁止剤の含有量が1〜160ppm
・Fe含有量が0〜2ppm
・モノ又はジヒドロキシアセトンの含有量が0〜10ppm以下
本発明においては、目的とするポリアクリル酸(塩)が、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の場合、得られる吸水性樹脂の吸水性能の観点から、架橋剤(以下、「内部架橋剤」と称することもある)を使用することが特に好ましい。使用できる内部架橋剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸との重合性架橋剤や、カルボキシル基との反応性架橋剤、それらを併せ持った架橋剤等を例示することができる。具体的には、重合性架橋剤として、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等、分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物が例示できる。又、反応性架橋剤として、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;プロパンジオール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール等の共有結合性架橋剤、アルミニウム塩等の多価金属化合物であるイオン結合性架橋剤が例示できる。これらの中でも、吸水性能の観点から、アクリル酸との重合性架橋剤が好ましく、特に、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤が好適に使用される。これらの内部架橋剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記内部架橋剤の使用量は、物性面から、架橋剤を除く上記単量体に対して、0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%が更に好ましく、0.03〜0.5モル%が特に好ましい。
本発明で得られる吸水性樹脂の諸物性を改善するために、任意成分として、上記単量体水溶液に、以下の物質を添加することができる。即ち、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン等の水溶性樹脂あるいは吸水性樹脂を、単量体に対して、例えば0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%、更に好ましくは0〜3重量%、特に0〜1重量%添加することができる。更に、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、各種キレート剤、ヒドロキシカルボン酸や還元性無機塩等の添加剤を、単量体に対して、例えば0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加することができる。
尚、本発明のポリアクリル酸(塩)では、特定量の13C/14Cを有するアクリル酸が主成分とされるが、少量の天然物グラフト成分(例えば、澱粉)を使用することもできる。当該天然物グラフト成分を有意に含まない場合、又は、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%の場合、ポリアクリル酸(塩)の13C/14C量は、実質的にアクリル酸の13C/14C量で決定される。
本発明において使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜選択され、特に限定されない。例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、熱分解型重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物等が挙げられる。又、光分解型重合開始剤としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。更に、レドックス系重合開始剤としては、上記過硫酸塩や過酸化物に、L−アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等の還元性化合物を組み合わせた系が挙げられる。上記熱分解型重合開始剤と光分解型重合開始剤とを併用することも、好ましい態様として挙げることができる。これらの重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、0.0001〜1モル%が好ましく、0.001〜0.5モル%がより好ましい。重合開始剤の使用量が1モル%を超える場合、吸水性樹脂の着色を引き起こすことがあるため好ましくない。又、重合開始剤の使用量が0.0001モル%を下回る場合、残存モノマーを増加させるおそれがあるため好ましくない。
本発明においては、上記単量体水溶液を重合するに際して、得られる吸水性樹脂の吸水性能や重合制御の容易性等の観点から、通常、水溶液重合又は逆相懸濁重合が採用されるが、好ましくは水溶液重合、より好ましくは連続水溶液重合が採用される。中でも、吸水性樹脂の1ラインあたりの生産量が多い巨大スケールでの製造に好ましく適用される。該生産量として、好ましくは0.5[t/hr]以上であり、より好ましくは1[t/hr]以上、更に好ましくは5[t/hr]以上、特に好ましくは10[t/hr]以上である。又、上記水溶液重合の好ましい形態として、連続ベルト重合(米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に開示)、連続ニーダー重合、バッチニーダー重合(米国特許第6987151号、同第6710141号等に開示)等が挙げられ、これらの中でも、連続ベルト重合が特に好ましい。
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルを解砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。
上記重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体、又はゲル細粒化工程で得られた解砕ゲルを、所望する樹脂固形分量まで乾燥することができれば、その方法について特に制限されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動床乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の乾燥方法を採用することができる。
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥物を、粉砕・分級して、吸水性樹脂を得る工程である。
本工程は、上記粉砕工程、分級工程で得られた吸水性樹脂の表面近傍を、吸水性能向上のために、表面架橋剤を用いて架橋(表面架橋反応)する工程である。本表面架橋処理によって、着色の少ない白色度の高い吸水性樹脂が得られ、特に高温表面架橋での吸水性樹脂に好ましく適用される。更に、本発明で得られる吸水性樹脂を衛生用品(特に紙オムツ)の原材料として使用する場合、本表面架橋処理によって、AAP(加圧下吸水倍率)を、好ましくは20[g/g]以上に高めればよい。
物性向上やトレーサビリティーの観点から、多価金属(多価カチオン)、ポリアミンポリマー、水不溶性微粒子が好ましく使用され、その使用量は吸水性樹脂100質量部に対して好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.001〜5質量部、更に好ましくは0.01〜3質量部の範囲で適宜決定される。尚、多価金属はカチオン量(例えば、Al3+)として抽出して測定できる。例えば、吸水性樹脂中の多価金属量は抽出多価金属カチオンとして定量でき、特開2005−113117号公報(欧州特許第1641883号)に記載の方法で定量できる。
又、別の方法として、例えば、電子線マイクロ分析法(EPMA)は、吸水性樹脂の表面近傍に存在する元素の定性分析ができるため、多価金属の種類を判別することができる。未知のサンプルについて、一次スクリーニングとして当該分析手法を用いるのが好ましい。即ち、複数の未知のサンプルから、トレース対象の吸水性樹脂を判別するために先ず上記分析を行って選別し、残ったサンプルについて、炭素同位体比を測定してもよい。
本発明においては、必要により微紛回収を行ってもよい。本工程は、乾燥工程及び必要により粉砕工程、分級工程で発生する微粉(特に粒子径150μm以下の粉体を70重量%以上含む微粉)を分離した後、そのままの状態で、あるいは水和して重合工程や乾燥工程にリサイクルする工程をいい、米国特許出願公開第2006/247351号や米国特許第6228930号に記載された方法等を適用することができる。
上記工程以外に、必要により、多価金属の表面処理工程、蒸発モノマーのリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程等を設けてもよい。更に、経時色調の安定性効果やゲル劣化防止等のために、上記各工程のいずれか又は全部に、上記添加剤を必要により使用してもよい。
本発明のバイオマスからアクリル酸を得る場合、アクリル酸中の飽和有機酸、特に酢酸及びプロピオン酸、特にプロピオン酸が従来のアクリル酸より増加することがある。かかる飽和有機酸について、本発明ではプロピオン酸(沸点141℃;760mmHg)は重合時に存在してもよいが、重合後には酸臭等の原因となることもある。又、酢酸やプロピオン酸等の飽和有機カルボン酸はアクリル酸(沸点141℃;同)と化学構造や沸点が近いため、アクリル酸製造時の晶析や蒸留での分離精製が困難であり、アクリル酸の製造コスト上昇や収率低下の問題を伴うものであった。そこで、飽和有機カルボン酸が重合しないことを利用して、飽和有機カルボン酸は重合中ないし重合後、特に重合後のポリアクリル酸(塩)から除去することが好ましい。
プロピオン酸や酢酸はヒドロキシプロピオン酸に比べて低沸点であるため、本発明で得られた吸水性樹脂に臭気(酸臭)の問題がある場合、プロピオン酸や酢酸が多いアクリル酸(例;400ppm以上)を使用する場合、好ましくは、重合工程の後に塩基性物質を添加する工程を更に含む。
本発明は、その目的や効果の観点から、水不溶性水膨潤性のポリアクリル酸(塩)(別称;ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂)が最も好ましく適用されるが、水溶性のポリアクリル酸(塩)にも適用することができる。
本発明は、上述したポリアクリル酸(塩)及びその製造方法を提供するが、分子量測定やTg(ガラス転移点)の測定が不可能なため、分析(トレース)が特に困難であったポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂に好ましく適用される。以下、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を中心に述べる。
本発明で得られる吸水性樹脂は、紙オムツ等の衛生用品の原材料として使用するため、白色粉末であることが好ましい。したがって、分光式色差計によるハンターLab表色系測定において、初期色調として、L値(Lightness/明度)が、85以上が好ましく、87以上がより好ましく、89以上が更に好ましい。又、a値は、−2〜2が好ましく、−1〜1がより好ましく、−0.5〜1が更に好ましく、0〜1が特に好ましい。更に、b値は、−5〜10が好ましく、−5〜5がより好ましく、−4〜4が更に好ましい。尚、上記L値の上限は100であるが、85以上を示せば、衛生用品等において色調による問題が発生しない。又、YI(Yellow Index)値は、10以下が好ましく、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。更に、WB(White Balance)値は、70以上が好ましく、75以上がより好ましく、77以上が更に好ましい。
本発明にかかる吸水性樹脂は、上述した通り、紙オムツ等の衛生用品の原材料として使用するため、高温多湿条件下での長期貯蔵状態においても、清浄な白色状態を維持することが好ましい。したがって、分光式色差計によるハンターLab表色系測定において、経時色調として、L値(Lightness/明度)が少なくとも80を示すことが好ましく、81以上がより好ましく、82以上が更に好ましく、83以上が特に好ましい。又、a値は、−3〜3が好ましく、−2〜2がより好ましく、−1〜1が更に好ましい。更に、b値は、0〜15が好ましく、0〜12がより好ましく、0〜10が更に好ましい。尚、上記L値の上限は100であるが、80以上を示せば、高温多湿条件下での長期保存状態において実質上問題が発生しない。
本発明で得られる吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)はERT441.2−02測定法で10[g/g]以上が好ましく、20[g/g]以上がより好ましく、25[g/g]以上が更に好ましく、30[g/g]以上が特に好ましい。CRCの上限値は、特に限定されないが、50[g/g]以下が好ましく、45[g/g]以下がより好ましく、40[g/g]以下が更に好ましい。上記CRCが10[g/g]未満の場合、吸水性樹脂の吸水量が低く、紙オムツ等、衛生用品中の吸収体への使用に適さないおそれがある。又、上記CRCが50[g/g]を超える場合、かような吸水性樹脂を吸収体に使用すると、液の取り込み速度に優れる衛生用品を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。尚、CRCは、上述した内部架橋剤や表面架橋剤等で適宜制御することができる。
本発明で得られる吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記粒度制御と表面架橋を達成手段の一例として、好ましくは1.9kPa、更に好ましくは4.8kPaの加圧下において、20[g/g]以上が好ましく、22[g/g]以上がより好ましく、24[g/g]以上が更に好ましい。AAPの上限値は、特に限定されないが、他の物性とのバランスから40[g/g]以下が好ましい。上記AAPが20[g/g]未満の場合、かような吸水性樹脂を吸収に使用すると、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り(通常、「リウェット(Re−Wet)」とも称される)が少ない衛生用品を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。尚、AAPは、上述した表面架橋剤や粒度等で適宜制御することができる。
本発明で得られる吸水性樹脂のSFC(食塩水流れ誘導性)は、紙オムツでのモレを防止するため、上記粒度制御と表面架橋を達成手段の一例として、加圧下において、1[×10−7・cm3・s・g−1]以上が好ましく、10[×10−7・cm3・s・g−1]以上がより好ましく、50[×10−7・cm3・s・g−1]以上が更に好ましく、70[×10−7・cm3・s・g−1]以上が特に好ましく、100[×10−7・cm3・s・g−1]以上が最も好ましい。SFCの上限値は、特に限定されないが、3000[×10−7・cm3・s・g−1]以下が好ましく、2000[×10−7・cm3・s・g−1]以下がより好ましい。上記SFCが3000[×10−7・cm3・s・g−1]を超える場合、かような吸水性樹脂を吸水体に使用すると、吸水体で液漏れが発生するおそれがあるため、好ましくない。尚、SFCは、上述した乾燥方法等で適宜制御することができる。
本発明で得られる吸水性樹脂のExt(水可溶分)はERT470.2−02の測定法で35重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、15重量%以下が更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。上記Extが35重量%を超える場合、得られる吸水性樹脂のゲル強度が弱く、液透過性に劣ったものとなるおそれがある。又、かような吸水性樹脂を吸水体に使用すると、吸水体に圧力が加わった際の液の戻り(リウェット)が少ない吸水性樹脂を得ることができないおそれがあるため、好ましくない。尚、Extは、上述した内部架橋剤等で適宜制御することができる。
本発明で得られる吸水性樹脂のResidual Monomers(残存モノマー)はERT410.2−02測定法で1000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、400ppm以下が更に好ましく、300ppm以下が特に好ましく、200ppm以下が最も好ましい。尚、Residual Monomersは、上述した重合方法等で適宜制御することができる。
生理食塩水に対する20倍膨潤時間で規定される吸水速度は好ましくは0.1[g/g/s]以上、更に好ましくは0.15[g/g/s]以上、より好ましく0.20[g/g/s]以上、より更に好ましくは0.30[g/g/s]以上である。上限は他の物性とのバランスから、好ましくは2.00[g/g/s]以下、更に好ましくは1.00[g/g/s]程度である。
上記(2−5)粉砕工程、分級工程に記載した範囲の粒度とすることが好ましい。かかる粒度となることで、吸水速度、通液性、加圧下吸水倍率等に優れた吸水性樹脂となる。
本発明で得られた吸水性樹種は残存モノマー以外の微量成分として、残存モノマーの観点から3−HPAは1000ppm以下が好ましく、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下、特に100ppm以下が好ましい。又、酸臭低減の観点からプロピオン酸(好ましくは酢酸)も1000ppm以下であり、これらは上記範囲に低減されることが好ましい。更に、着色抑制の観点からFeや(ジ)ヒドロキシプロピオン酸や重合禁止剤(特にp−メトキシフェノール)も上記範囲に低減されることが好ましい。微量成分は残存モノマーに準じて吸水性樹脂より抽出して液体クロマトクラフィィー(HPLC)等で定量できる。
・3−ヒドロキキシプロピオン酸の含有量が1000ppm以下、更には上記(3−9)に記載の範囲である。
・重合禁止剤(特にp−メトキシフェノール)の含有量が1〜160ppm、更には上記(2−1)に記載の範囲、5〜60ppm、6〜40ppm、8〜30ppm、特に8〜20ppmの範囲である。
・Fe含有量が0〜2ppm、更には上記(2−2)に記載の範囲である。
・モノ又はジヒドロキシアセトンの含有量が0〜10ppm以下、更には上記(2−1)に記載の範囲である。
又、トレーサビリティーと物性(特に通液性やAnti−caking)の面から、多価金属塩、ポリアミンポリマー、水不溶性無機粒子から選ばれる1種以上の表面処理剤で被覆されてなることが好ましい。
本発明は、製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の同定方法であって、該吸水性樹脂中の13C量及び14C量を定量する、吸水性樹脂の同定方法を提供する。同定するには、おむつ等に組み込まれた吸水性樹脂や、土中に埋められた吸水性樹脂を取り出し、13C量及び14C量を定量すればよい。吸水性樹脂の同定ないし追跡の精度を高めるために、吸水性樹脂の物性を測定したり、微量成分を定量すればよい。又、必要により上記分析される物性としては、吸水倍率、加圧下吸水倍率、粒度分布、可溶成分、粒度、通液性等が例示され、分析される微量成分としては残存モノマー、残存飽和有機酸(特にプロピオン酸)、残存架橋剤等である。好ましくは複数、更に好ましくは3種類以上、特に好ましくは5種類以上の物性や微量成分について吸水性樹脂を分析し、過去の標準サンプル(保管された吸水性樹脂ないしその同等品)と比較することで、吸水性樹脂の同定/あるいは追跡を行うことができる。尚、吸水性樹脂の物性や微量成分の測定法は本発明に記載に限定されず、本発明の目的を達成する範囲において、適宜、上記特許文献1〜21等に記載の類似、同等又は新規の測定法や分析法を用いて、標準サンプルと比較すればよい。
本発明にかかる製造方法により得られる吸水性樹脂の用途は、特に限定されず、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生用品、農園芸用保水剤、廃液固化剤や、工業用止水材等、吸収性物品に使用することができる。
又、非化石原料由来でありながら従来の天然物系吸水性樹脂に比べて格段に高物性であり、更に、石油価格に大きく依存する従来の吸水性樹脂に対して、原料コストを適宜調整できる。
本発明のポリアクリル酸(塩)は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とした粉末又は水溶液(濃度は例えば1〜80重量%)であって、ビルダー、増粘剤、液体洗剤、分散剤、パップ等に使用できる。本発明では製造後や各種用途でのトレーサビリティーをより高めることができる。
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
(b)「AAP」(ERT442.2−02)−荷重1.9kPa更には4.9kPa
(c)「Ext」(ERT470.2−02)
(d)「FSC」(ERT440.2−02)
(e)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
(f)「PSD」(ERT420.2−02)
SFC(生理食塩水流れ誘導性)は、膨潤した吸水性樹脂の液透過性を示す値であり、値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。尚、SFCの測定は、米国特許第5849405号明細書に開示された方法にしたがって行った。
底面の直径が約50mmのアルミカップに、吸水性樹脂1.00gを量り取り、試料(吸水性樹脂及びアルミカップ)の総重量W8[g]を測定した。
以下の目開きを有するJIS標準篩を用いて吸水性樹脂10.00gを分級し、ふるい毎の重量を測定し、粒子径150μm未満の重量百分率を算出した。又、各粒度の残留百分率Rを数確率紙にプロットし、このグラフからR=50重量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。尚。質量平均粒子径(D50)は、米国特許第5051259号明細書等に開示されているように、粒子全体の50重量%に対応する標準篩の粒子径のことをいう。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記の式にしたがって算出した。尚、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
吸水性樹脂の色調評価は、ハンターLab表色系で実施した。尚、測定装置(分光式色差計)としては、HunterLab社製のLabScan(登録商標)XEを使用し、その測定条件としては、反射測定を選択した。又、粉末・ペースト試料用容器(内径30mm、高さ12mm)、粉末・ペースト用標準丸白板No.2及び30Φ投光パイプを用いた。
米国材料試験協会(American Society of Testing and Materials)で規定される前処理方法(ASTM D6866/MethodB)により、試料をCO2化させた後、鉄触媒を用いた完全還元処理によりC(グラファイト)化し、加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry)法により、炭素安定同位体比(δ13C)を求めた。尚、計算式には、(1−7)「炭素安定同位体比(δ13C)」及び数1を参照する。又、PDBは、Pee Dee Belmniteの略称であり、13C/12Cの標準体を指す。
又、14C濃度の標準体として、米国国内率標準技術研究所が提供しているシュウ酸標準物質(HOxII)から合成したグラファイトを用いた。加速器質量分析によって試料及び標準体の炭素同位体比(14C/12C比,13C/12C比)を測定し、それらの測定結果から14C濃度を算出した。測定により得られた試料の14C濃度を用いて、試料中に含まれる炭素について、バイオマス由来の炭素と化石原料由来の炭素の混合割合を評価できる。
即ち、ポリアクリル酸(塩)を構成する炭素をCO2化、或いは得られたCO2を更にグラファイト(C)としたのち、炭素同位体比の加速器質量分析することで、本発明のポリアクリル酸(塩)は同定又は追跡が可能である。又、水素同位体比もポリアクリル酸(塩)を構成する水素をH2化した後、別途、分析できる。
上記(e)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)に準じて、吸水性樹脂又はポリアクリル酸(塩)を生理食塩水に分散させて濾過した抽出液について、抽出液中のヒドロキシプロピオン酸、プロピオン酸、p−メトキシフェノール量等を液体クロマトグラフィーで分析した。液体クロマトグラフィーのカラムや溶離液や検量線は微量成分にあわせて適宜設定される。
国際公開第2011/040530号の段落[0305]〜[0309]に準じて、吸水性樹脂3.0gから得られた20倍膨潤ゲル60gに対して、照射強度60[mW/cm2]で1分間、室温で紫外線を照射し、紫外線を照射による膨潤ゲルの水可溶分の増加量(%)を特定することで、耐候性(耐光性)とした。
国際公開第2011/040530号の段落[0317]に従い測定した。
C4植物であるサトウキビを出発原料とするグルコースから3−ヒドロキシプロピオン酸を経て、更に脱水及び精製を行うことで、炭素安定同位体比(δ13C)が−13‰、水素同位体比が−200‰(対SMOW)、放射性炭素(14C/C)が約1×10−12のアクリル酸を得た。
化石資源である原油のクラッキングにより得られたプロピレンガスを出発原料として合成されたアクリル酸を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。
C3植物(パーム油)由来の天然油脂を出発原料として、該天然油脂のエステル交換反応によりグリセリンを得、次いで、得られたグリセリンの発酵反応により3−ヒドロキシプロピオン酸を得、更に、得られた3−ヒドロキシプロピオン酸の脱水反応によりアクリル酸を得た。
実施例1において、C4植物由来(トウモロコシ)の天然油脂を出発原料として、該天然油脂のエステル交換反応によりグリセリンを得た以外は同様に、グリセリンからアクリル酸更に重合によって比較吸水性樹脂(3)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(3)の炭素安定同位体比(δ13C)は−12‰及び14C/Cは約1.2×10−12(炭素中の非化石原料(現代炭素率;pMC)がほぼ100%)であった。又、比較吸水性樹脂(3)の物性は吸水性樹脂(1)と同程度であった。
実施例1において、850〜150μmの分級工程に代えて、850〜425μmで分級した以外は同様に操作したところ、δ13C及び14C/Cは同じであり、吸水速度(FSR)は0.13[g/g/s]となった。
実施例1で用いたC3物由来のアクリル酸(非化石原料)と、比較例2で用いたアクリル酸(化石原料)とを1:1で混合して得られたアクリル酸を用いた以外は、実施例1に同様に重合・乾燥・粉砕・分級・表面架橋等を行うことで、炭素安定同位体比(δ13C)が−31‰及び14C/Cは約0.6×10−12である吸水性樹脂(2)を得た。吸水性樹脂(2)の物性は吸水性樹脂(1)と同程度(実質同じ)であったが、かかる吸水性樹脂(2)は、実施例1の吸水性樹脂(1)とは異なるδ13C及び14C/Cを有することにより、独自の炭素安定同位体比を示し、容易に特定できることが判る。尚、14C/Cよりポリアクリル酸中の炭素の非化石原料と化石原料の比が1:1であることが判明した。その他の物性は、実施例1とほぼ同等であり、本発明の要件を満たしていた。
実施例1で用いたC3植物由来のアクリル酸(非化石原料)と、比較例2で用いたアクリル酸(化石原料)とを3:1で混合して得られたアクリル酸を用いた以外は、実施例1に同様に重合・乾燥・粉砕・分級・表面架橋等を行うことで、炭素安定同位体比(δ13C)が−28‰及び14C/Cは約0.9×10−12である吸水性樹脂(3)を得た。吸水性樹脂(3)の物性は吸水性樹脂(1)と同程度(実質同じ)であったがかかる吸水性樹脂(3)は、実施例1の吸水性樹脂(1)とは異なるδ13C及び14C/Cを有することにより、独自の炭素安定同位体比を示し、容易に特定できることが判る。尚、14C/Cよりポリアクリル酸中の炭素の非化石原料(pMC)と化石原料の比が3:1であることが判明した。その他の物性は、実施例1とほぼ同等であり、本発明の要件を満たしていた。
米国国内で市販の紙おむつ(パンパース(登録商標);製造元プロクターアンドギャンブル)より、吸水性樹脂を取り出し分析したところ、部分中和ポリアクリル酸ナトリウム塩であり、その炭素安定同位体比は−25‰であり、14C/Cは1.0×10−14未満であった。本発明の吸水性樹脂は製造後も、容易に特定できることが判る。
実施例1で得られた吸水性樹脂(1)100重量部について、27.5重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)1.17重量部、60重量%乳酸ナトリウム水溶液0.196重量部、プロピレングリコール0.029重量部からなる表面架橋剤溶液(イオン結合性表面架橋剤)を均一に混合した。硫酸アルミニウムを添加することで通液性(SFC)を90まで向上するとともに、アルミニウム元素(アルミニウムカチオン量)やより高い通液性で他の吸水性樹脂との区別がより容易かつ確実になり、13C及び14Cに加えてトレーサビリティーがより向上した。尚、比較例1において測定したその他の物性との比較ではほぼ同等であった。
C3植物であるパーム油から得られたコーンオイルのバイオディーセル化で得られたグリセリンを気相脱水してアクロレインを得て、ついでアクリル酸に気相酸化したのち、蒸留及び晶析することで、パーム油由来のアクリル酸(δ13Cが−34‰、14C/Cより100%が天然物(現代炭素))を得た。
上記アクリル酸に重合禁止剤及びトレーサーとしてp−メトキシフェノール70ppmを添加した。上記得られたアクリル酸に、NaOH水溶液を中和温度60℃で添加し、中和率75モル%で濃度38質量%のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。更に、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクレート0.05モル%を添加したのち、単量体水溶液20℃にしたのち、重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.12g/モル、L−アスコルビン酸0.005g/モルを添加して重合を行い、更に、実施例1と同様に乾燥・粉砕・分級した。ついで、吸水性樹脂100重量部に、表面架橋剤としてグリセリン0.5重量部/硫酸アルミニウム16水和物0.2重量部/水2重量部/イソプロパノール0.5重量部からなる表面架橋剤水溶液を添加して更に180℃で30分加熱することで、表面架橋された吸水性樹脂(5)を得た。
得られた吸水性樹脂(5)のハンターLab表色系のL値は89の白色であった。又、炭素安定同位体比(δ13C)は−34‰であった。更に、CRCは27[g/g]、AAP(荷重50[g/cm2])は21[g/g]、SFCが50[×10−7・cm3・s・g−1]、FSRが0.20[g/g/s]であった。又、プロピオン酸含有量は1300ppm、p−メトキシフェノールは10ppm、可溶分は10質量%、残存モノマーは300ppmで、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子の割合が99重量%、質量平均粒子径(D50)が380μmであった。又、14C/Cが1.2×10−12であり、実質100%が非化石原料由来であることもわかる。尚、多価カチオン量(Al3+)は吸水性樹脂から抽出して測定することでほぼ添加量と一致した。
実施例5において、化石原料として石油由来のプロピレンから気相酸化で得られたアクリル酸を使用することで同様に行い、比較吸水性樹脂(6)(δ13Cが−27‰、14C/Cが1.0×10−14未満(実質的に100%が化石原料由来))を得た。尚、比較吸水性樹脂(6)の物性は吸水性樹脂(5)と同等であった。
実施例5において、米国特許公開2007/0219521号及びその実施例2(20−240mesh;850−53μm)に準じて、粒度を850−53μmとしたところ、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子の割合が91質量%となった。SFCが実施例5の50[×10−7・cm3・s・g−1]から、実施例6で得られた吸水性樹脂(6)は粒度を変えることで42[×10−7・cm3・s・g−1]に低下した。他の物性や他素同位体比や14C/Cの値は実施例5と同程度であり、本発明の要件を満たしていた。
実施例5において、米国特許公開2007/0219521号及びその実施例2(表面架橋剤はエチレンカーボネートのみ。多価金属である硫酸アルミニウムは未使用)に準じてグリセリンのみで表面架橋を行った。多価金属を使用しないことで、SFCが実施例5の50[×10−7・cm3・s・g−1]から表面架橋剤を変えることで、得られた吸水性樹脂(7)のSFCは30[×10−7・cm3・s・g−1]に低下した。他の物性や他素同位体比や14C/Cの値は実施例5と同程度であり、本発明の要件を満たしていた。
実施例5において、米国特許公開2007/0219521号及びその実施例2(重合時のp−メトキシフェノールは未使用)に準じて、p−メトキシフェノールなしで重合を行った。得られた吸水性樹脂(8)は実施例5の吸水性樹脂(5)とほぼ同程度の物性であったが、p−メトキシフェノールは検出されず、結果、耐光性も約10%低下(30倍膨潤ゲルに対する紫外線照射で可溶分増加量で規定)していた。
実施例5において、表面架橋剤に硫酸アルミニウム16水和物0.2重量部を使用せず、表面架橋後の吸水性樹脂100重量部に水不溶性無機微粒子として、アエロジル200(日本アエロジル社製シリカ微粒子)0.3重量部を乾式混合した。AAP(荷重50[g/cm2])は19[g/g]に低下し、SFCが55[×10−7・cm3・s・g−1]となった以外は実施例5と同様な吸水性樹脂(9)が得られた。
実施例5において、表面架橋剤に硫酸アルミニウム16水和物0.2重量部を使用せず、表面架橋後の吸水性樹脂100重量部にポリエチレンイミン(P−1000、日本触媒)0.3重量部を水溶液で混合した。AAP(荷重50[g/cm2])は20[g/g]に低下し、SFCが53[×10−7・cm3・s・g−1]となった以外は実施例5と同様な吸水性樹脂(10)が得られた。
実施例5で用いたアクリル酸を用いて水溶性ポリアクリル酸(塩)を得た。
即ち、冷却管を取付けた300mlフラスコにイソプロパノール(以下、IPAと略する。)55g、純水42g、過硫酸アンモニウム(以下APSと略する。)1.1gを仕込み攪拌しながら80℃に加熱した。ここに実施例5で用いたアクリル酸90g、10重量%APS水溶液11.0gを各々独立に、かつ同時に4時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間熟成を行い、熟成後IPA及び水を系内より共沸留去した。留去量は70gで、このときフラスコ中のIPA濃度は0.5重量%以下となった。冷却後、40重量%のNaOH水溶液125gを加え、中和し、更に系内pHが10になるように40重量%のNaOH水溶液を添加した。そののち45gの水を加え、40重量%ポリアクリル酸ソーダ水溶液を得た。このポリアクリル酸ソーダ水溶液からポリアクリル酸ソーダ(13Cが−34‰)が得られた。。その炭素安定同位体比は−34‰であり、14C/Cは約1.0×10−12であった。この水溶性ポリアクリル酸ソーダは、従来の石油由来のポリアクリル酸(塩)や、C4植物由来のポリアクリル酸(塩)と区別することができる。
本発明の吸水性樹脂のトレーサビリティーを確認するため、下記の仮想実験を行った。
即ち、2009年に米国で入手した紙オムツ(全10サンプル)から吸水性樹脂を取り出し、それら10サンプルのうち、ひとつのサンプルが実施例4で製造された吸水性樹脂(4)であると仮定する。
上記10サンプルを先ず電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて、吸水性樹脂表面の存在する元素を分析したところ、5サンプルでアルミニウムが検出された。アルミニウムが検出された5サンプルについて、SFCを測定したところ、3サンプルについてSFCが0〜10[×10−7・cm3・s・g−1]、残りの2サンプルについてSFCが25〜35[×10−7・cm3・s・g−1]であった。更にSFCが高い値を示した2サンプルについて、CRC、AAP、Ext、残存モノマーを測定したところ、ほぼ同じ値を示した。次いで、この2サンプルについて13C及び14Cを測定したところ、一方のδ13Cが−27‰、14C/Cが1.0×10−14未満であり、他方のδ13Cが−34‰、14C/Cが約1.0×10−12であった。以上の結果から、δ13C値が−34‰のサンプルが吸水性樹脂(4)であることが分かる。
本実施例12では、アルミニウムの有無により一次スクリーニングを行い、サンプルの測定点数を絞った上で、炭素安定同位体比を測定する方法を示している。
Claims (20)
- 加速器質量分析法によって測定される炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満で、かつ、放射性炭素年代測定法によって測定される14C/Cが1.0×10−14以上である、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であって、更に下記(1)〜(6)に規定する物性を満たすことを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
(1)CRC(ERT441.2−02)が10[g/g]以上
(2)AAP(ERT442.2−02)が20[g/g]以上
(3)Ext(ERT470.2−02)が35重量%以下
(4)Residual Monomers(ERT410.2−02)が1000ppm以下
(5)PSD(ERT420.2−02)による粒子径が150μm以上850μm未満の粒子が90重量以上
(6)FSRが0.15[g/g/s]以上 - 前記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂中のプロピオン酸含有量が2000ppm以下である、請求項1に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
- 前記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、有機表面架橋剤で更に表面架橋され、更に必要により、多価金属塩、ポリアミンポリマー、水不溶性無機粒子から選ばれる表面処理剤で被覆されてなる、請求項1又は2に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
- 前記炭素安定同位体比(δ13C)が−40〜−26‰である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
- 前記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、更に、下記のいずれかひとつ以上の含有量を満たすものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
・3−ヒドロキキシプロピオン酸の含有量が1000ppm以下
・重合禁止剤の含有量が1〜160ppm
・Fe含有量が0〜2ppm
・モノ又はジヒドロキシアセトンの含有量が0〜10ppm以下 - 更に、前記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、SFCが10[×10−7・cm3・s・g−1]以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
- 水素同位体比(δD‰,vsSMOW)が−15〜−300‰である、請求項1〜6の何れか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂。
- 加速器質量分析法によって測定される、炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満で且つ14C/Cが1.0×10−14以上である、ポリアクリル酸(塩)。
- 前記炭素安定同位体比(δ13C)が−40〜−26‰である、請求項8に記載のポリアクリル酸(塩)。
- 水溶性不飽和単量体の重合工程、得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
前記重合工程では、水溶性不飽和単量体として、
炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満かつ放射性炭素(14C/C)が1.0×10−14以上のアクリル酸を重合することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。 - 製造ライン、製造時間、製品品番のいずれかによって、前記重合工程におけるアクリル酸の炭素安定同位体比(δ13C)を変化させる、請求項10に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
- 前記アクリル酸の原料主成分がC3植物由来のバイオマスから得られるものである、請求項10又は11に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
- 前記水溶性不飽和単量体は、異なる炭素安定同位体比(δ13C)を有するアクリル酸を混合したものである請求項10〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記乾燥工程後に、乾燥工程で得られた乾燥物は、有機表面架橋剤で更に表面架橋され、更に必要により、多価金属塩、ポリアミンポリマー、水不溶性無機粒子から選ばれる表面処理剤で被覆されてなる、請求項10〜13のいずれか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
- 更に、前記水溶性不飽和単量体が下記のいずれかひとつ以上を満たす、請求項10〜14のいずれか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
・3−ヒドロキキシプロピオン酸の含有量が1000ppm以下
・重合禁止剤の含有量が1〜160ppm
・Fe含有量が0〜2ppm
・モノ又はジヒドロキシアセトンの含有量が0〜10ppm以下 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を含む、衛生用品。
- 水溶性不飽和単量体の重合工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
前記重合工程では、水溶性不飽和単量体として、炭素安定同位体比(δ13C)が−20‰未満かつ放射性炭素(14C/C)が1.0×10−14以上のアクリル酸を重合することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)の製造方法。 - 製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の同定方法であって、
該製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の13C量及び14C量と、該ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造に用いた重合前のアクリル酸の13C量及び14C量とを、13C量は加速器質量分析法によって定量すると共に、14C量は放射性炭素年代測定法によって定量することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の同定方法。 - 更に、その他の微量成分及び/又は複数の物性を測定する、請求項18に記載のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の同定方法。
- 製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の追跡方法であって、
該製造後のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂中の13C量及び14C量と、該ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造に用いた重合前のアクリル酸の13C量及び14C量とを、13C量は加速器質量分析法によって定量すると共に、14C量は放射性炭素年代測定法によって定量することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の追跡方法。
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