本発明は、焦げ付き検知機能を備えた誘導加熱調理器及びその制御方法に関するものである。
焦げ付き検知機能を備えた従来技術に係る加熱調理器は、例えば煮込み料理モードなどの特定の調理モードにおいて、鍋底の温度を検知するセンサの温度上昇から、鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する(例えば、特許文献1参照)。
図5は、特許文献1に記載された従来技術に係る誘導加熱調理器における、焦げ付き検知機能に関連する部分を示すブロック図であり、図6は、特許文献1に記載された従来技術に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。図5、6を用い、従来技術に係る誘導加熱調理器を説明する。
図5において、操作部100は、加熱開始キー101と制御モード選択部102から成る。図6において、ステップS301にて、電源スイッチ105を用いて電源がオンされ、ステップS302に進む。ステップS302にて、制御モード選択部102を用いて動作モードが選択され、ステップS303に進む。ステップS303にて、加熱開始キー101がオンされると、ステップS304へ進む。ステップS304で、ステップS302にて選択された動作モードが、煮込みモードであった場合、ステップS306へ進み、制御部103は、焦げ付き検知部104に焦げ付き検知機能を動作させるように指示する。焦げ付き検知部104にて、焦げ付きが検知されると、制御部103は、加熱出力を低減するかまたは加熱動作を停止する。また、ステップS302で、煮込みモード以外の、例えば利用者が加熱出力を設定して加熱する加熱モードが選択された場合、ステップS304からステップS305へ進み、制御部103は、焦げ付き検知部104に、焦げ付き検知機能を停止させるよう出力する。
しかしながら、従来技術に係る誘導加熱調理器の構成によれば、焦げ付き検知機能が動作する調理モードが煮込み料理のときに限定されていた。従って、利用者は、焦げ付き検知機能を使用するとき、煮込みモードを選択しなくてはならないという課題を有していた。
本発明の目的は、前記従来技術の課題を解決し、利用者が、特定の調理モードを選択することなく、利用者が加熱出力を設定して加熱する加熱モードで加熱調理を行っても、焦げ付き検知機能を利用でき、かつ、調理中に誤動作なく、焦げ付き検知機能を正常に機能させることのできる誘導加熱調理器及びその制御方法を提供することにある。
本発明に係る誘導加熱調理器は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋を加熱する誘導加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋の底から放射されて前記トッププレートを透過した赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、前記出力電圧に基づき、前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知すると焦げ付き情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の出力設定値の中から、ひとつの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータの加熱動作を制御するとともに前記出力設定部により前記出力設定値が変更可能な制御モードである加熱モードを有し、前記加熱モードで動作中に前記焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する制御部とを備えた誘導加熱調理器であって、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ、前記出力電圧が所定の第2出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲外の値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。
これによって、利用者が選択した出力設定値に応じて第1の焦げ付き検知動作を禁止しまたは行うことにより、湯沸しや炒め物に代表される高出力調理時や、あえて焦げをつけたい調理時などにおいて、焦げつきの誤検知を避けられる。また、利用者が、焦げ付き検知機能が不必要な高出力調理から、焦げ付き検知機能が必要な低出力調理に出力設定値を変更したとき、第1の焦げ付き検知動作を行うことにより焦げ付き検知機能を働かせることが出来るため、利用者が、違和感なく調理を継続することが出来る。
また、本発明に係る誘導加熱調理器は、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲内で、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第2出力電圧値未満に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うことを特徴とする。従って、例えば、加熱開始時に鍋が高温であったり、所定の出力設定範囲より高出力の設定から前記所定の出力設定範囲内に出力設定値が変更されたりした場合に、出力電圧が第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、鍋に負荷(調理物)が投入されたときでも、再び第1の焦げ付き検知動作を行うので、正確に焦げ付きを検知できる。
本発明の誘導加熱調理器によれば、利用者が選択した出力設定値に応じて焦げ付き検知動作を禁止しまたは行うため、利用者は、特定の調理モードを選択することなく、利用者が加熱出力を設定して加熱する加熱モードで加熱調理を行っても、焦げ付き検知機能を利用出来、かつ、調理中の誤動作がなく、違和感なく調理を行うことができる。
本発明の実施の形態1、2、3に係る誘導加熱調理器のブロック図である。
本発明の実施の形態1、2、3に係る誘導加熱調理器の加熱モードにおける加熱処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態2における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
本発明の実施の形態3における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
従来技術に係る誘導加熱調理器における、焦げ付き検知機能に関連する部分のブロック図である。
従来技術に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
第1の発明は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋を加熱する誘導加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋の底から放射されて前記トッププレートを透過した赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、前記出力電圧に基づき、前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知すると焦げ付き情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の出力設定値の中から、ひとつの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータの加熱動作を制御するとともに前記出力設定部により前記出力設定値が変更可能な制御モードである加熱モードを有し、前記加熱モードで動作中に前記焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する制御部とを備えた誘導加熱調理器であって、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ、前記出力電圧が所定の第2出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲外の値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。従って、第1の焦げ付き検知動作は、出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ行われるため、焦げ付き検知機能が不要な調理シーンにおいて、焦げ付き検知機能を停止させることができる。例えば、高出力で野菜を加熱しているときは、鍋の温度と野菜の温度の差が大きくなり、鍋の温度が高温度なりやすいので焦げ付きの誤検知が発生しやすいが、本発明によれば、このような誤検知を回避することが出来る。このため、利用者は、煮込みモードなどの特定のモードを選択することなく、加熱モードのような出力設定値を変更して加熱を行う調理において、焦げ付き検知機能を使用して焦げ付きが悪化することを防止することが出来る。また、利用者が、調理中に、第1の焦げ付き検知動作を行わない所定の出力設定範囲外の値から、第1の焦げ付き検知動作を行う所定の出力設定範囲内の値へ、出力設定値を変更すると、第1の焦げ付き検知動作を行うので、利用者は、加熱モードでの通常の加熱調理において、違和感なく、焦げ付き検知機能を使用することが出来る。
第2の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲内の別の出力設定値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を継続することを特徴とする。従って、出力設定値が、所定の出力設定範囲内で異なる出力設定値に変更された場合においても、第1の焦げ付き検知動作を始めから行うことなく、継続して行うことが出来る。これにより、すでに検知された出力電圧情報を利用し、正確に焦げ付き検知を行うことが出来る。また、すでに検知された出力電圧情報を利用出来るので、高温での加熱開始と判定されず、焦げ付き検知機能を使用できる範囲が従来技術に比較して広がるため、利用者の使い勝手が向上する。
第3の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より大きいときは、前記第1の焦げ付き検知動作を禁止し、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より大きい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。これにより、所定の出力設定範囲よりも大きい、第1の焦げ付き検知動作を行わない出力設定値から、焦げ付き検知機能が必要な所定の出力設定範囲内の出力設定値に変更されたときも、高温での加熱開始時の焦げ付きの誤検知などを回避しながら、焦げ付き検知機能を使うことが可能となる。
第4の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第2出力電圧値よりも小さい所定の第3出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第2の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より小さい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。従って、誤作動なく、正確な焦げ付き検知が可能となる。
第5の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲内で、前記出力電圧が前記第1出力電圧値以上になった後に、前記第2出力電圧値未満に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うことを特徴とする。従って、正確な焦げ付き検知が可能となる。
第6の発明は、特に、第1または第5の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第3出力電圧値以下に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うことを特徴とする。従って、一旦、焦げ付きを検知した後にも、鍋に負荷(調理物)が投入された場合などを考慮し、自動的に第1の焦げ付き検知動作を開始することが出来るので、利用者の使い勝手が向上する。
第7の発明は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋を加熱する誘導加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋の底から放射されて前記トッププレートを透過した赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、前記出力電圧に基づき、前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知すると焦げ付き情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の出力設定値の中から、ひとつの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータの加熱動作を制御するとともに前記出力設定部により前記出力設定値が変更可能な制御モードである加熱モードを有し、前記加熱モードで動作中に前記焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する制御部とを備えた誘導加熱調理器の制御方法であって、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ、前記出力電圧が所定の第2出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲外の値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を行うステップを含むことを特徴とする。
第8の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲内の別の出力設定値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を継続するステップをさらに含むことを特徴とする。
第9の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より大きいときは、前記第1の焦げ付き検知動作を禁止し、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より大きい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うステップをさらに含むことを特徴とする。
第10の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第2出力電圧値よりも小さい所定の第3出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第2の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より小さい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うステップをさらに含むことを特徴とする。
第11の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲内で、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第2出力電圧値未満に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うステップをさらに含むことを特徴とする。
第12の発明は、特に、第7または第11の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第3出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第3出力電圧値未満に低下すると、前記第2の焦げ付き検知動作を再度行うステップをさらに含むことを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1〜3に係る誘導加熱調理器のブロック図である。
図1の誘導加熱調理器は、焦げ付き検知機能を有する。図1において、鍋1は、トッププレート2に載置され、誘導加熱コイル3はトッププレート2の下方に設けられる。出力設定部7は、誘導加熱コイル3の加熱出力に対応する出力設定値Pを1段階だけ上げるアップキー10と、出力設定値Pを1段階だけ下げるダウンキー11とを含む。利用者は、出力設定部7を用いて、誘導加熱コイル3の複数の出力設定値Pの中からひとつの出力設定値Pを選択できる。また、インバータ4はスイッチング素子(図示せず)と、共振コンデンサ(図示せず)と、誘導加熱コイル3とを含む。出力設定部7により出力設定値Pが選択されると、制御部9は、加熱出力が選択された出力設定値Pに対応した値になるように、インバータ4を構成するスイッチング素子を制御して必要な大きさの高周波電流を誘導加熱コイル3に供給する。インバータ4には商用電源が入力される。また、誘導加熱コイル3は、高周波電流が供給されると高周波磁界を発生する。鍋1の底面にその高周波磁界が鎖交すると鍋1の底面に渦電流が誘起され、渦電流はジュール熱を発生して底面が誘導加熱される。さらに、トッププレート2の下方に設けられた赤外線センサ5によって、鍋1の底から放射されトッププレート2を透過した赤外線が検知され、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが電圧検知部8に出力される。さらに、電圧検知部8は、出力電圧Vを検知し、当該検知結果を焦げ付き検知部6に出力する。焦げ付き検知部6は、赤外線センサ5から出力され電圧検知部8により検知された出力電圧Vに基づき、鍋1の内側の底部に調理物が焦げ付いたことを検知し、当該焦げ付きを示す焦げ付き情報を制御部9に出力する。制御部9は、誘導加熱コイル3に高周波電流を供給しかつ加熱出力が選択された出力設定値Pに対応する加熱出力となるようにインバータ4の加熱動作を制御すると共に出力設定部7により出力設定値Pが変更可能な制御モードである加熱モードを含む複数の動作モードを有し、加熱モードで動作中に焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する。なお、図1の誘導加熱調理器は、利用者が動作モードを選択するための選択手段(図示せず)と、利用者が加熱動作の開始を指示するための加熱キー(図示せず)とを備える。
なお、鍋1の底面の温度検知のための素子には、トッププレート2の裏面に当接し、トッププレート2の裏面温度を検出するサーミスタよりも、鍋1からの赤外線量を測定することで鍋1の底面温度を直接検出できる赤外線センサ5を用いることが好ましい。赤外線センサ5は、InGaAsピンフォトダイオード、シリコンフォトダイオード、及びサーモパイル等の、トッププレート2を透過する赤外線を検出し、鍋1内の調理物の加熱開始時から当該調理物が焦げ付くときまでの温度範囲内の温度を検知できるものであればよい。なお、赤外線センサ5の出力電圧Vは、鍋1の底面温度の上昇に伴ってべき乗関数(V=aTb)(aは正の実数であり、bは例えば6以上9以下の正の実数であり、Tは鍋1の底面温度である)に従って増加する特性を有する。
図2を参照して、以上説明したように構成された誘導加熱調理器の動作、及び作用を説明する。
図2は、本発明の実施の形態1〜3に係る誘導加熱調理器の加熱モードにおける加熱処理を示すフローチャートである。
図2において、始めに、ステップS10において、制御部9は、利用者により加熱モードが選択され、かつ加熱キーがオンされたか否かを判断し、YESのときはステップS11に進む一方、NOのときはステップS10の処理を繰り返して実行する。ステップS11において、制御部9は、選択された出力設定値Pで加熱動作を開始する。次に、ステップS12において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内であるか否かを判断し、YESのときは、ステップS13に進む。一方、ステップS12においてNOのときはステップS21に進む。
さらに、ステップS13において、焦げ付き検知部6は、赤外線センサ5によって検知された鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vを電圧検知部8を介して入力し、出力電圧Vが所定の第2出力電圧値V2未満であるか否かを判断し、YESのときはステップS16に進む一方、NOのときは、ステップS26に進む。電圧検知部8は例えばアナログ電圧をデジタル電圧に変換する。なお、ステップS13の処理を、初期出力電圧判定処理という。ステップS16において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲外に変更されたか否かを判断し、YESのときはステップS12に戻る一方、NOのときはステップS17に進む。さらに、ステップS17において、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが所定の第2出力電圧値V2以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS19に進む一方、NOのときはステップS16に戻り、ステップS16とステップS17の処理を繰り返して実行する。ステップS19において、焦げ付き検知部6は、鍋1の鍋底に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き情報を、制御部9に出力する(焦げ付き確定)。これに応答して、制御部9は、ステップS20において、加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制して加熱処理を終了する。なお、ステップS13、S16、S17における処理を、第1の焦げ付き検知動作という。第1の焦げ付き検知動作において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内にあるときに、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上に増加したことを検知すると鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する。
また、図2のステップS21において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さいか否かを判断し、YESのときはステップS23に進む一方、NOのときはステップS26に進む。ステップS23において、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが第3出力電圧値V3未満であるか否かを判断し、YESのときはステップS24に進む一方、NOのときは、ステップS26に進む。なお、ステップS23の処理を、ステップS13の処理と同様に、初期出力電圧判定処理という。次にステップS24において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが変更されたか否かを判断し、YESのときはステップS12に戻る一方、NOのときはステップS25に進む。ステップS25では、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが所定の第3出力電圧値V3以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS19に進む一方、NOのときはステップS24、S25の処理を繰り返して実行する。なお、ステップS23〜S25における処理を、第2の焦げ付き検知動作という。第2の焦げ付き検知動作において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さいときに、出力電圧Vが第2出力電圧値V2よりも小さい第3出力電圧値V3以上に増加したことを検知すると鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する。
さらに、図2のステップS26において、焦げ付き検知部6は、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止して行わずに、加熱動作を継続してステップS27に進む。また、ステップS27において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが変更されたか否かを判断し、NOのときはステップS28に進む一方、YESのときはステップS12に戻る。ステップS28において、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが所定の第2出力電圧値V2未満であるか否かを判断し、NOのときはステップS27、S28の処理を繰り返して実行する。また、ステップS28においてYESのときは、ステップS12に戻る。
なお、詳細後述するように、第3出力電圧値V3は、第2出力電圧値V2よりも小さい所定値に設定される。
次に、ステップS12、S16及びS21において用いられる出力設定範囲が、500W以上かつ1000W以下の加熱出力に対応する出力設定値Pの範囲であるときの図2の加熱処理を、具体的に説明する。
図2において、加熱開始前に、動作モードの選択において加熱モードでの加熱調理が選択され、加熱キーがオンされると、焦げ付き検知部6は、ステップS12及びS21において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内である(ステップS12でYES)か、出力設定範囲より小さい(ステップS21でYES)か、又は、出力設定範囲より大きい(ステップS21でNO)か、を判断する。ステップS12において、出力設定部7で設定された出力設定値Pが、所定の出力設定範囲内であった場合、ステップS13に進む。
一方、ステップS21において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さい場合、ステップS23に進む一方、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きい場合、ステップS26に進み、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止して、焦げ付き検知機能を無効化して加熱を継続する。
例えば、利用者が、出力設定部7で、700Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS12において、選択された出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値であることを検知することにより、第1の焦げ付き検知動作を行う必要がある調理が実行されると判定し、ステップS12でYESの場合に、第1の焦げ付き検知動作を開始する。また、利用者が、出力設定部7で、370Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS21において、選択された出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さい値であることを検知することにより、一般に焦げ付きが懸念される低出力の調理が実行されると判定する。一方、利用者が、出力設定部7で、2000Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、選択された出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きい値であることを検知することにより、炒め物や湯沸しなどの高出力調理を始めたと判定し、ステップS26に進み、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止して停止し、加熱調理を継続する。
なお、予め設定された所定の出力設定範囲は、焦げ付き検知動作の必要性、すなわち、利用者が不在で焦げ付きが懸念される調理がなされる出力であるかを考慮し、かつ、誤動作の起こりにくい加熱出力に決めておけばよく、上述した例では、500W以上かつ1000W以下の加熱出力に対応する出力設定値Pの範囲としたが、これに限ったものではない。予め設定された出力設定範囲より大きい出力設定値Pは、例えば、焦げ付きの起こらない湯沸し及び炒め物調理などの高出力設定での調理で利用される。高出力での調理時は、利用者が鍋1の傍にいる場合が多いと考えられる。また、高出力での調理は、利用者が調理物にあえて焦げ色をつけたい場合にも行われる。また、高出力での調理時は、検知される出力電圧Vは、加熱開始時の低い出力電圧から、急激に高い出力電圧へ上昇するため、調理物と鍋1の温度差が大きくなって鍋1の温度が高温になりやすく、一般に、焦げ付きでないのに焦げ付きであると誤検知しやすく、第1及び第2の焦げ付き検知動作を停止させておく必要がある。
ステップS13の初期出力電圧判定処理において、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが、予め設定された第2出力電圧値V2未満であったとき、ステップS16に進んで第1の焦げ付き検知動作を行う。また、ステップS23の初期出力で軟圧判定処理において、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが、予め設定された第3出力電圧値V3未満であったとき、ステップS24へ進み、第2の焦げ付き検知動作を行う。ステップS13において、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上の場合、もしくはステップS23において、出力電圧Vが第3出力電圧値V3以上の場合、焦げ付き検知部6は、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止する。これにより、第1及び第2の焦げ付き検知動作の開始時又は加熱出力変更時に調理物の温度が高いことによる、焦げ付きの誤検知を防ぐ。この場合には、利用者は鍋1の前にいるので焦げ付き検知動作を禁止することによる問題は起きにくい。
また、ステップS16において、出力設定部7にて、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の別の出力設定値Pに変更されたと判断された(ステップS16においてNO)場合は、継続して第1の焦げ付き検知動作を行いステップS17に進む。一方、出力設定値Pが所定の出力設定範囲外の出力設定値Pに変更された場合(ステップS16においてYES)、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻る。
例えば、利用者が、出力設定部7で、700Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS12において、選択された出力設定値Pが所定の設定出力範囲内であることを検知することにより、第1の焦げ付き検知動作を行う必要がある調理が行われると判定し、ステップS13でYESの場合に、第1の焦げ付き検知動作を開始する。ステップS19に進むまでの間に、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値である500Wの加熱出力に対応する出力設定値Pに変更された場合は、加熱開始時の処理(ステップS12)に戻らず、第1の焦げ付き検知動作を継続する。例えば、利用者は、700Wの加熱出力に対応する出力設定値Pで煮込み調理を行っているときに、加熱出力が強いと判断し、500Wの加熱出力に対応する出力設定値Pに変更する。このとき、継続して、第1の焦げ付き検知機能を行うことにより、出力設定値Pの変更前に検知された出力電圧Vの情報を利用できるため、正確にまた簡素な制御シーケンスで焦げ付きを検知できる。
以上説明したように、所定の出力設定範囲内の所定の出力設定値Pから、所定の出力設定範囲内の別の出力設定値Pに変更された場合、継続して第1の焦げ付き検知動作を行うことにより、焦げ付き検知の誤検知を避けることが出来、かつ、利用者は、違和感なく調理を継続することが出来る。
また、第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、加熱出力が700Wから2000Wに変更された場合、ステップS16において、YESと判断されるので、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻る。一方、第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、加熱出力が700Wから、所定の出力設定範囲に対応する500W以上かつ1000W以下の加熱出力に変更された場合は、第1の焦げ付き検知動作は継続して行われる。例えば、加熱出力が700Wから2000Wに変更された場合に、ステップS12の加熱開始直後の処理に戻らず、継続して第1の焦げ付き検知動作を行った場合、2000Wの加熱出力によって、出力電圧Vは急激に上昇し、第2出力電圧値V2まで上昇するので、焦げ付き情報が出力されてしまう。従って、例えば、利用者が、700Wの加熱出力で煮込み調理を行っているときに、最後に煮汁を飛ばすために2000Wに加熱出力を上げたとき、利用者が加熱停止を行う前に、焦げ付き検知部6が焦げ付き情報を出力し、制御部9が加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制してしまう。しかし、本実施の形態によれば、加熱出力が、700Wから、所定の出力設定範囲より高い出力設定値Pに対応する2000Wに変更されたときは、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻るので、ステップS21でNOと判断され、第1の焦げ付き検知動作は停止されるものの加熱動作は継続され、利用者は、継続して調理を行うことが出来る。
また、第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、加熱出力が700Wから370Wに変更された場合、ステップS16において、YESと判断されるので、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻り、ステップS23〜S25において第3出力電圧値V3を用いる第2の焦げ付き検知動作が行われる。第3出力電圧値V3は、鍋1を低出力でじっくり加熱したときの調理で起こりうる低粘度の調理物の煮込み時に生じる、焦げ付きに対応した値を予め測定し、設定しておく。所定の出力設定範囲より小さい出力設定値Pでの加熱時は、所定出力設定範囲内の出力設定値Pでの加熱時よりも、鍋1で消費される電力が少なく、焦げ付くまでの温度上昇が緩やかである一方で、焦げ付いた後の温度上昇は急激である。このため、焦げ付きが生じてから、当該焦げ付きを、所定出力設定範囲内の出力設定値Pでの加熱時よりも早めに検知するために、第3出力電圧値V3は、第2出力電圧より小さい値に設定される。そのため、加熱出力が700Wから370Wに変更された場合に、ステップS12に戻らずに第1の焦げ付き検知動作を継続した場合、第2出力電圧値V2に到達するまで加熱され、焦げ付き状態が悪化し焦げつき検知が正確でなくなる。本実施の形態によれば、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さい出力設定値Pに変更された場合、ステップS12に戻り、第2の焦げ付き検知動作を行うので、正確に焦げ付きを検知することが可能となる。
ステップS23からステップS25に進むまでの間において、出力設定部7にて、出力設定値Pが変更された場合、ステップS24においてYESと判断され、ステップS12に戻る。
例えば、利用者が、出力設定部7で、370Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS21において、選択された出力設定値Pが所定の設定出力範囲より小さい値であることを検知することにより、一般に焦げ付きが懸念される低出力の調理が実行されると判定し、ステップS23で第2の焦げ付き検知動作を開始する。しかし、出力電圧Vが第3出力電圧値V3に到達する前に、出力設定値Pが変更された場合、ステップS24においてYESと判断され、ステップS12に戻る。
例えば、利用者が370Wの加熱出力で調理している途中で、調理物への加熱出力が足りないと判断し、加熱出力を、所定の出力設定範囲内の出力設定値Pに対応する500Wに上げたとする。このとき、ステップS12の調理開始直後の処理に戻らずに第2の焦げ付き検知動作を継続した場合、焦げ付きを検知するために用いる出力電圧値は、第2出力電圧値V2より低い第3出力電圧値V3のままであり、焦げ付きが起こっていない状態で、焦げ付きが確定されて焦げ付き情報が出力されてしまい、調理に不具合を生じる。一方、本実施の形態によれば、加熱出力が370Wから500Wに変更されたとき、ステップS12に戻るので、第2出力電圧値V2を用いる第1の焦げ付き検知動作が行われ、正確に焦げ付きを検知することが可能となる。
また、370Wに対応する出力設定値Pで加熱動作を開始し、2000Wに対応する出力設定値Pに変更したとする。370Wでの加熱動作時は、出力電圧Vが第3出力電圧値V3に達すると、加熱動作は停止され、または加熱出力は抑制される。例えば、散らし寿司などに盛り付けられるにんじんの加熱調理時のように、比較的少量の調理物(負荷)の煮込みをした後に高出力で水分を飛ばしたい調理時に、利用者は加熱出力を370Wから2000Wに変更する。この変更時に、ステップS12の処理に戻らずに第2の焦げ付き検知動作を継続した場合、水分を飛ばしている途中で、検知された出力電圧Vが第3出力電圧値V3に達し、焦げ付き情報が出力されるので、加熱動作は停止されるかまたは加熱出力は抑制されてしまい、調理に不具合が生じる。一方、本実施の形態によれば、加熱出力が370Wから2000Wに変更されるとステップS12の処理に戻り、ステップS21でNOと判断され、ステップS26において第1及び第2の焦げ付き動作を禁止し、加熱動作を継続するため、利用者は、継続して調理を行うことが可能となる。
また、ステップS21において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きい値であると判断されたとき、焦げ付き検知部6は、第1及び第2の焦げ付き動作を禁止して行わないが、加熱動作は継続されるので、調理を継続できる。第1及び第2の焦げ付き動作を禁止して加熱している間に、出力設定部7にて、加熱出力が変更された場合は(ステップS27でYES)、ステップS12に戻る。
例えば、利用者が、出力設定部7で、2000Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択したとする。焦げ付き検知部6は、ステップS21において、選択された出力設定値Pが所定の設定出力範囲より大きい値であることを検知し、制御部9に、当該検知結果を含む情報を出力する。制御部9は、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止し、加熱動作を継続する。その後、加熱出力が、2000Wから、第1の焦げ付き検知動作を行う加熱出力の範囲内の加熱出力である700Wに変更されたとする。例えば、このような調理シーンとして挙げられる炒め煮などの場合、利用者は、調理物を高出力で炒めたのちに、調味液を投入し、煮込みのためにより小さい出力に変更する。2000Wの加熱出力時には第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止したが、700W加熱出力での煮込み時には、焦げ付き検知を行う必要がある。本実施の形態によれば、加熱出力が2000Wから700Wに変更されたときは、ステップS12の加熱開始直後の処理に戻り、第1の焦げ付き動作を行うので、出力電圧値Vが第2出力電圧値V2未満である場合(ステップS13でYES)には、焦げ付きを検知できる。
これにより、高出力での調理時や湯沸かし時のように、第1及び第2の焦げ付き検知動作が禁止されている所定の出力設定値Pから、所定の出力設定範囲の、または当該出力設定範囲より小さい出力設定値Pに変更された場合でも、変更されたときの鍋1の温度が焦げ付き情報を判別する温度より高温でなければ、変更後の出力設定値Pで第1または第2の焦げ付き動作を行うことが出来る。
ステップS17において、出力電圧Vが予め設定された第2出力電圧値V2へ到達すると、焦げ付き検知部6は、焦げ付きが生じたことを検知し、焦げ付き情報を出力する。これに応答して、制御部9は、加熱動作を停止するか、もしくは加熱出力を低下させるなどの制御を行う。また、第2出力電圧値V2の設定値は、焦げ付きの状態を少なくするには、焦げ付きが起こりうる、例えば、160℃に対応する値に設定することが好ましい。ただし、鍋1の種類によって、調理の途中で焦げ付きを検知してしまう調理等もあるため、焦げ付きの誤検知をなくし、かつ、焦げ付きの状態を少なくする最適の温度(例えば、195℃)を予め実験によって求めて当該温度に対応する出力電圧Vを第2出力電圧値V2に設定すればよい。
第1の焦げ付き検知動作において、出力電圧Vが第2出力電圧値に到達するまで、ステップS16とステップS17の処理を繰り返して実行する。また、ステップS13からステップS17に進むまでの間に、出力設定部7によって、出力設定値Pが所定の出力設定範囲外の値に変更された場合、ステップS16においてYESと判断され、ステップS12に戻る。
ステップS25において、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが、第3出力電圧値V3に達した場合、焦げ付き検知部6は、焦げ付きが発生したことを検知し、焦げ付き情報を出力する。これに応答して、制御部9は、加熱動作を停止するか、もしくは加熱出力を抑制(低下)させるなどの制御を行う。
なお、焦げ付き検知部6が鍋底内側に焦げ付きが生じたと確定して焦げ付き情報を出力したとき、制御部9はステップS20において、加熱動作を停止するか、もしくは加熱出力を抑制(低下)したが、本発明はこれに限られない。ステップS20において、制御部は、所定の表示又は所定の警告音などによって利用者へ焦げ付きを報知してもよく、ステップS20における処理は、加熱出力制御に限ったものではない。
また、図2の加熱処理において、出力設定値Pの変更時に当該設定変更を検知し、ステップS12の加熱開始直後の処理に戻ったが、本発明はこれに限られず、マイコンの割り込み処理等を利用してもよい。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
図3において、曲線12は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値に設定されているときの、第1の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す。
実施の形態1と同様の部分については、説明を省略し、異なる部分について説明する。
実施の形態1において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値に設定されているとき、出力電圧Vが第2出力電圧以上V2に増加したことを検知すると鍋1の鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行う。しかしながら、加熱開始時の鍋1が高温で、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上になる場合がある。この場合には、第1の焦げ付き検知動作が停止するので、出力電圧Vが第2出力電圧値V2のまま加熱が継続される。例えば、図3に示すように、利用者により、時刻t1において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きな値(例えば、2000W)から所定の出力設定範囲内の値(例えば、500W)に変更され、同時に調理物が攪拌されたり、水が投入されたりするなどの理由により、出力電圧Vが第2出力電圧値V2を超えた状態から、第2出力電圧値V2未満に下がることがある。本実施の形態に係る第1の焦げ付き検知動作において、焦げ付き検知部1は、第1の焦げ付き検知が停止した状態で、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上になっているときに、第2出力電圧値V2未満になったことを検知したときに、第1の焦げ付き検知動作を行い、出力電圧Vが第2出力電圧値V2に到達するか否かを検知する(図2のステップS28でYES→ステップS12でYES→ステップS13でYES→ステップS16でNO→ステップS17)。本実施の形態によれば、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値に設定されているときには、第1の焦げ付き検知が停止した状態で、かつ出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上になって加熱継続中であっても、第2出力電圧値V2未満になったことを検知したときに、第1の焦げ付き検知動作を行うので、鍋1に調理物(負荷)が投入されたと判断し、自動的に第1の焦げ付き検知動作を行うことが出来るため、利用者の使い勝手が向上する。誤検知なく、正確な焦げ付き検知が可能となる。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
図4において、曲線13は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定され、かつ第2の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す。
実施の形態1、2と同様の部分については、説明を省略し、異なる部分について説明する。
実施の形態1において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定されているとき、前記出力電圧Vが第2出力電圧値V2よりも小さい第3出力電圧値V3以上に増加したことを検知すると鍋1の鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する第2の焦げ付き検知動作を行う。しかしながら、加熱開始時の鍋1が高温で、出力電圧Vが第3出力電圧値V3以上になる場合がある。この場合には、第1の焦げ付き検知動作が停止するので、出力電圧Vが第2出力電圧値V2のまま加熱が継続される。図4に示すように、利用者によって、時刻t2において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値(例えば、1000W)から所定の出力設定範囲内の値(例えば、370W)に変更され、同時に、冷水などの負荷が鍋1に投入されて調理物の温度が低下した場合、図4に示すように、出力電圧Vは、第3出力電圧値V3以上の値から第3出力電圧値V3以下の値まで低下する。本実施の形態において、焦げ付き検知部6は、第2の焦げ付き検知動作が停止された状態で、出力電圧Vが、第3出力電圧値V3以上になっているときに、第3出力電圧値V3未満に低下したことを検知すると、第1の焦げ付き検知動作を行い、出力電圧Vが第3出力電圧値V3に到達するか否かを検知する(図2のステップS28でYES→ステップS12でNO→ステップS21でYES→ステップS23でNO→ステップS24でNO→ステップS25)。本実施の形態によれば、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定されているときには、第2の焦げ付き検知が停止した状態で、かつ出力電圧Vが第3出力電圧値V3以上になって加熱継続中であっても、第3出力電圧値V3未満になったことを検知したときに、第2の焦げ付き検知動作を行うので、誤検知なく、正確な焦げ付き検知が可能となる。
以上説明したように、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定されているときに、赤外線センサ5により、第3出力電圧値V3以上の値を検知した状態で加熱を継続している時でも、その後、出力電圧Vが第3出力電圧値V3未満に低下したことを検知することにより、鍋1に調理物(負荷)が投入されたと判断し、自動的に第2の焦げ付き検知動作を行うことが出来るため、利用者の使い勝手が向上する。
以上説明したように、本発明に係る誘導加熱調理器及びその制御方法は、利用者が選択した出力設定値によって、利用者の望む調理シーンを判別することにより、焦げ付きの誤検知をなくし、継続して調理を行うことが出来るので、焦げ付きが生じる加熱調理器等の用途にも適用できる。
1 鍋
2 トッププレート
3 誘導加熱コイル
4 インバータ
5 赤外線センサ
6 焦げ付き検知部
7 出力設定部
8 電圧検知部
9 制御部
10 アップキー
11 ダウンキー
12 出力設定値が所定の出力設定出力範囲内の値に設定されているときで、かつ第1の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す曲線
13 出力設定値が所定の出力設定出力範囲よりも小さい値に設定されているときで、第1の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す曲線
本発明は、焦げ付き検知機能を備えた誘導加熱調理器及びその制御方法に関するものである。
焦げ付き検知機能を備えた従来技術に係る加熱調理器は、例えば煮込み料理モードなどの特定の調理モードにおいて、鍋底の温度を検知するセンサの温度上昇から、鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する(例えば、特許文献1参照)。
図5は、特許文献1に記載された従来技術に係る誘導加熱調理器における、焦げ付き検知機能に関連する部分を示すブロック図であり、図6は、特許文献1に記載された従来技術に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。図5、6を用い、従来技術に係る誘導加熱調理器を説明する。
図5において、操作部100は、加熱開始キー101と制御モード選択部102から成る。図6において、ステップS301にて、電源スイッチ105を用いて電源がオンされ、ステップS302に進む。ステップS302にて、制御モード選択部102を用いて動作モードが選択され、ステップS303に進む。ステップS303にて、加熱開始キー101がオンされると、ステップS304へ進む。ステップS304で、ステップS302にて選択された動作モードが、煮込みモードであった場合、ステップS306へ進み、制御部103は、焦げ付き検知部104に焦げ付き検知機能を動作させるように指示する。焦げ付き検知部104にて、焦げ付きが検知されると、制御部103は、加熱出力を低減するかまたは加熱動作を停止する。また、ステップS302で、煮込みモード以外の、例えば利用者が加熱出力を設定して加熱する加熱モードが選択された場合、ステップS304からステップS305へ進み、制御部103は、焦げ付き検知部104に、焦げ付き検知機能を停止させるよう出力する。
しかしながら、従来技術に係る誘導加熱調理器の構成によれば、焦げ付き検知機能が動作する調理モードが煮込み料理のときに限定されていた。従って、利用者は、焦げ付き検知機能を使用するとき、煮込みモードを選択しなくてはならないという課題を有していた。
本発明の目的は、前記従来技術の課題を解決し、利用者が、特定の調理モードを選択することなく、利用者が加熱出力を設定して加熱する加熱モードで加熱調理を行っても、焦げ付き検知機能を利用でき、かつ、調理中に誤動作なく、焦げ付き検知機能を正常に機能させることのできる誘導加熱調理器及びその制御方法を提供することにある。
本発明に係る誘導加熱調理器は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋を加熱する誘導加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋の底から放射されて前記トッププレートを透過した赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、前記出力電圧に基づき、前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知すると焦げ付き情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の出力設定値の中から、ひとつの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータの加熱動作を制御するとともに前記出力設定部により前記出力設定値が変更可能な制御モードである加熱モードを有し、前記加熱モードで動作中に前記焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する制御部とを備えた誘導加熱調理器であって、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ、前記出力電圧が所定の第2出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲外の値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。
これによって、利用者が選択した出力設定値に応じて第1の焦げ付き検知動作を禁止しまたは行うことにより、湯沸しや炒め物に代表される高出力調理時や、あえて焦げをつけたい調理時などにおいて、焦げつきの誤検知を避けられる。また、利用者が、焦げ付き検知機能が不必要な高出力調理から、焦げ付き検知機能が必要な低出力調理に出力設定値を変更したとき、第1の焦げ付き検知動作を行うことにより焦げ付き検知機能を働かせることが出来るため、利用者が、違和感なく調理を継続することが出来る。
また、本発明に係る誘導加熱調理器は、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲内で、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第2出力電圧値未満に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うことを特徴とする。従って、例えば、加熱開始時に鍋が高温であったり、所定の出力設定範囲より高出力の設定から前記所定の出力設定範囲内に出力設定値が変更されたりした場合に、出力電圧が第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、鍋に負荷(調理物)が投入されたときでも、再び第1の焦げ付き検知動作を行うので、正確に焦げ付きを検知できる。
本発明の誘導加熱調理器によれば、利用者が選択した出力設定値に応じて焦げ付き検知動作を禁止しまたは行うため、利用者は、特定の調理モードを選択することなく、利用者が加熱出力を設定して加熱する加熱モードで加熱調理を行っても、焦げ付き検知機能を利用出来、かつ、調理中の誤動作がなく、違和感なく調理を行うことができる。
本発明の実施の形態1、2、3に係る誘導加熱調理器のブロック図である。
本発明の実施の形態1、2、3に係る誘導加熱調理器の加熱モードにおける加熱処理を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態2における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
本発明の実施の形態3における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
従来技術に係る誘導加熱調理器における、焦げ付き検知機能に関連する部分のブロック図である。
従来技術に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
第1の発明は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋を加熱する誘導加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋の底から放射されて前記トッププレートを透過した赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、前記出力電圧に基づき、前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知すると焦げ付き情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の出力設定値の中から、ひとつの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータの加熱動作を制御するとともに前記出力設定部により前記出力設定値が変更可能な制御モードである加熱モードを有し、前記加熱モードで動作中に前記焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する制御部とを備えた誘導加熱調理器であって、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ、前記出力電圧が所定の第2出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲外の値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。従って、第1の焦げ付き検知動作は、出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ行われるため、焦げ付き検知機能が不要な調理シーンにおいて、焦げ付き検知機能を停止させることができる。例えば、高出力で野菜を加熱しているときは、鍋の温度と野菜の温度の差が大きくなり、鍋の温度が高温度なりやすいので焦げ付きの誤検知が発生しやすいが、本発明によれば、このような誤検知を回避することが出来る。このため、利用者は、煮込みモードなどの特定のモードを選択することなく、加熱モードのような出力設定値を変更して加熱を行う調理において、焦げ付き検知機能を使用して焦げ付きが悪化することを防止することが出来る。また、利用者が、調理中に、第1の焦げ付き検知動作を行わない所定の出力設定範囲外の値から、第1の焦げ付き検知動作を行う所定の出力設定範囲内の値へ、出力設定値を変更すると、第1の焦げ付き検知動作を行うので、利用者は、加熱モードでの通常の加熱調理において、違和感なく、焦げ付き検知機能を使用することが出来る。
第2の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲内の別の出力設定値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を継続することを特徴とする。従って、出力設定値が、所定の出力設定範囲内で異なる出力設定値に変更された場合においても、第1の焦げ付き検知動作を始めから行うことなく、継続して行うことが出来る。これにより、すでに検知された出力電圧情報を利用し、正確に焦げ付き検知を行うことが出来る。また、すでに検知された出力電圧情報を利用出来るので、高温での加熱開始と判定されず、焦げ付き検知機能を使用できる範囲が従来技術に比較して広がるため、利用者の使い勝手が向上する。
第3の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より大きいときは、前記第1の焦げ付き検知動作を禁止し、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より大きい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。これにより、所定の出力設定範囲よりも大きい、第1の焦げ付き検知動作を行わない出力設定値から、焦げ付き検知機能が必要な所定の出力設定範囲内の出力設定値に変更されたときも、高温での加熱開始時の焦げ付きの誤検知などを回避しながら、焦げ付き検知機能を使うことが可能となる。
第4の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第2出力電圧値よりも小さい所定の第3出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第2の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より小さい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うことを特徴とする。従って、誤作動なく、正確な焦げ付き検知が可能となる。
第5の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲内で、前記出力電圧が前記第1出力電圧値以上になった後に、前記第2出力電圧値未満に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うことを特徴とする。従って、正確な焦げ付き検知が可能となる。
第6の発明は、特に、第1または第5の発明の誘導加熱調理器において、前記焦げ付き検知部は、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第3出力電圧値以下に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うことを特徴とする。従って、一旦、焦げ付きを検知した後にも、鍋に負荷(調理物)が投入された場合などを考慮し、自動的に第1の焦げ付き検知動作を開始することが出来るので、利用者の使い勝手が向上する。
第7の発明は、鍋を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋を加熱する誘導加熱コイルを含むインバータと、前記トッププレートの下に設けられ、前記鍋の底から放射されて前記トッププレートを透過した赤外線を検知して前記鍋の底面温度に対応する出力電圧を出力する赤外線センサと、前記出力電圧に基づき、前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知すると焦げ付き情報を出力する焦げ付き検知部と、複数の出力設定値の中から、ひとつの前記出力設定値を選択するための出力設定部と、前記誘導加熱コイルに高周波電流を供給しかつ加熱出力が前記選択された出力設定値に対応する加熱出力となるように前記インバータの加熱動作を制御するとともに前記出力設定部により前記出力設定値が変更可能な制御モードである加熱モードを有し、前記加熱モードで動作中に前記焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する制御部とを備えた誘導加熱調理器の制御方法であって、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が所定の出力設定範囲内の値であるときにのみ、前記出力電圧が所定の第2出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲外の値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を行うステップを含むことを特徴とする。
第8の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲内の別の出力設定値に変更されると、前記第1の焦げ付き検知動作を継続するステップをさらに含むことを特徴とする。
第9の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より大きいときは、前記第1の焦げ付き検知動作を禁止し、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より大きい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うステップをさらに含むことを特徴とする。
第10の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第2出力電圧値よりも小さい所定の第3出力電圧値以上に増加したことを検知すると前記鍋底に前記調理物が焦げ付いたことを検知する第2の焦げ付き検知動作を行い、前記出力設定値が、前記所定の出力設定範囲より小さい値から前記所定の出力設定範囲内の値に変更されると、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を禁止する一方、前記出力電圧が前記第2出力電圧値未満であるときは前記第1の焦げ付き検知動作を行うステップをさらに含むことを特徴とする。
第11の発明は、特に、第7の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲内で、前記出力電圧が前記第2出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第2出力電圧値未満に低下すると、前記第1の焦げ付き検知動作を再度行うステップをさらに含むことを特徴とする。
第12の発明は、特に、第7または第11の発明の誘導加熱調理器の制御方法において、前記焦げ付き検知部が、前記選択された出力設定値が前記所定の出力設定範囲より小さいとき、前記出力電圧が前記第3出力電圧値以上になって加熱継続中に、前記第3出力電圧値未満に低下すると、前記第2の焦げ付き検知動作を再度行うステップをさらに含むことを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1〜3に係る誘導加熱調理器のブロック図である。
図1の誘導加熱調理器は、焦げ付き検知機能を有する。図1において、鍋1は、トッププレート2に載置され、誘導加熱コイル3はトッププレート2の下方に設けられる。出力設定部7は、誘導加熱コイル3の加熱出力に対応する出力設定値Pを1段階だけ上げるアップキー10と、出力設定値Pを1段階だけ下げるダウンキー11とを含む。利用者は、出力設定部7を用いて、誘導加熱コイル3の複数の出力設定値Pの中からひとつの出力設定値Pを選択できる。また、インバータ4はスイッチング素子(図示せず)と、共振コンデンサ(図示せず)と、誘導加熱コイル3とを含む。出力設定部7により出力設定値Pが選択されると、制御部9は、加熱出力が選択された出力設定値Pに対応した値になるように、インバータ4を構成するスイッチング素子を制御して必要な大きさの高周波電流を誘導加熱コイル3に供給する。インバータ4には商用電源が入力される。また、誘導加熱コイル3は、高周波電流が供給されると高周波磁界を発生する。鍋1の底面にその高周波磁界が鎖交すると鍋1の底面に渦電流が誘起され、渦電流はジュール熱を発生して底面が誘導加熱される。さらに、トッププレート2の下方に設けられた赤外線センサ5によって、鍋1の底から放射されトッププレート2を透過した赤外線が検知され、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが電圧検知部8に出力される。さらに、電圧検知部8は、出力電圧Vを検知し、当該検知結果を焦げ付き検知部6に出力する。焦げ付き検知部6は、赤外線センサ5から出力され電圧検知部8により検知された出力電圧Vに基づき、鍋1の内側の底部に調理物が焦げ付いたことを検知し、当該焦げ付きを示す焦げ付き情報を制御部9に出力する。制御部9は、誘導加熱コイル3に高周波電流を供給しかつ加熱出力が選択された出力設定値Pに対応する加熱出力となるようにインバータ4の加熱動作を制御すると共に出力設定部7により出力設定値Pが変更可能な制御モードである加熱モードを含む複数の動作モードを有し、加熱モードで動作中に焦げ付き情報が出力されると加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制する。なお、図1の誘導加熱調理器は、利用者が動作モードを選択するための選択手段(図示せず)と、利用者が加熱動作の開始を指示するための加熱キー(図示せず)とを備える。
なお、鍋1の底面の温度検知のための素子には、トッププレート2の裏面に当接し、トッププレート2の裏面温度を検出するサーミスタよりも、鍋1からの赤外線量を測定することで鍋1の底面温度を直接検出できる赤外線センサ5を用いることが好ましい。赤外線センサ5は、InGaAsピンフォトダイオード、シリコンフォトダイオード、及びサーモパイル等の、トッププレート2を透過する赤外線を検出し、鍋1内の調理物の加熱開始時から当該調理物が焦げ付くときまでの温度範囲内の温度を検知できるものであればよい。なお、赤外線センサ5の出力電圧Vは、鍋1の底面温度の上昇に伴ってべき乗関数(V=aTb)(aは正の実数であり、bは例えば6以上9以下の正の実数であり、Tは鍋1の底面温度である)に従って増加する特性を有する。
図2を参照して、以上説明したように構成された誘導加熱調理器の動作、及び作用を説明する。
図2は、本発明の実施の形態1〜3に係る誘導加熱調理器の加熱モードにおける加熱処理を示すフローチャートである。
図2において、始めに、ステップS10において、制御部9は、利用者により加熱モードが選択され、かつ加熱キーがオンされたか否かを判断し、YESのときはステップS11に進む一方、NOのときはステップS10の処理を繰り返して実行する。ステップS11において、制御部9は、選択された出力設定値Pで加熱動作を開始する。次に、ステップS12において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内であるか否かを判断し、YESのときは、ステップS13に進む。一方、ステップS12においてNOのときはステップS21に進む。
さらに、ステップS13において、焦げ付き検知部6は、赤外線センサ5によって検知された鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vを電圧検知部8を介して入力し、出力電圧Vが所定の第2出力電圧値V2未満であるか否かを判断し、YESのときはステップS16に進む一方、NOのときは、ステップS26に進む。電圧検知部8は例えばアナログ電圧をデジタル電圧に変換する。なお、ステップS13の処理を、初期出力電圧判定処理という。ステップS16において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲外に変更されたか否かを判断し、YESのときはステップS12に戻る一方、NOのときはステップS17に進む。さらに、ステップS17において、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが所定の第2出力電圧値V2以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS19に進む一方、NOのときはステップS16に戻り、ステップS16とステップS17の処理を繰り返して実行する。ステップS19において、焦げ付き検知部6は、鍋1の鍋底に調理物が焦げ付いたことを示す焦げ付き情報を、制御部9に出力する(焦げ付き確定)。これに応答して、制御部9は、ステップS20において、加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制して加熱処理を終了する。なお、ステップS13、S16、S17における処理を、第1の焦げ付き検知動作という。第1の焦げ付き検知動作において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内にあるときに、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上に増加したことを検知すると鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する。
また、図2のステップS21において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さいか否かを判断し、YESのときはステップS23に進む一方、NOのときはステップS26に進む。ステップS23において、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが第3出力電圧値V3未満であるか否かを判断し、YESのときはステップS24に進む一方、NOのときは、ステップS26に進む。なお、ステップS23の処理を、ステップS13の処理と同様に、初期出力電圧判定処理という。次にステップS24において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが変更されたか否かを判断し、YESのときはステップS12に戻る一方、NOのときはステップS25に進む。ステップS25では、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが所定の第3出力電圧値V3以上であるか否かを判断し、YESのときはステップS19に進む一方、NOのときはステップS24、S25の処理を繰り返して実行する。なお、ステップS23〜S25における処理を、第2の焦げ付き検知動作という。第2の焦げ付き検知動作において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さいときに、出力電圧Vが第2出力電圧値V2よりも小さい第3出力電圧値V3以上に増加したことを検知すると鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する。
さらに、図2のステップS26において、焦げ付き検知部6は、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止して行わずに、加熱動作を継続してステップS27に進む。また、ステップS27において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが変更されたか否かを判断し、NOのときはステップS28に進む一方、YESのときはステップS12に戻る。ステップS28において、焦げ付き検知部6は、出力電圧Vが所定の第2出力電圧値V2未満であるか否かを判断し、NOのときはステップS27、S28の処理を繰り返して実行する。また、ステップS28においてYESのときは、ステップS12に戻る。
なお、詳細後述するように、第3出力電圧値V3は、第2出力電圧値V2よりも小さい所定値に設定される。
次に、ステップS12、S16及びS21において用いられる出力設定範囲が、500W以上かつ1000W以下の加熱出力に対応する出力設定値Pの範囲であるときの図2の加熱処理を、具体的に説明する。
図2において、加熱開始前に、動作モードの選択において加熱モードでの加熱調理が選択され、加熱キーがオンされると、焦げ付き検知部6は、ステップS12及びS21において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内である(ステップS12でYES)か、出力設定範囲より小さい(ステップS21でYES)か、又は、出力設定範囲より大きい(ステップS21でNO)か、を判断する。ステップS12において、出力設定部7で設定された出力設定値Pが、所定の出力設定範囲内であった場合、ステップS13に進む。
一方、ステップS21において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さい場合、ステップS23に進む一方、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きい場合、ステップS26に進み、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止して、焦げ付き検知機能を無効化して加熱を継続する。
例えば、利用者が、出力設定部7で、700Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS12において、選択された出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値であることを検知することにより、第1の焦げ付き検知動作を行う必要がある調理が実行されると判定し、ステップS12でYESの場合に、第1の焦げ付き検知動作を開始する。また、利用者が、出力設定部7で、370Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS21において、選択された出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さい値であることを検知することにより、一般に焦げ付きが懸念される低出力の調理が実行されると判定する。一方、利用者が、出力設定部7で、2000Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、選択された出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きい値であることを検知することにより、炒め物や湯沸しなどの高出力調理を始めたと判定し、ステップS26に進み、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止して停止し、加熱調理を継続する。
なお、予め設定された所定の出力設定範囲は、焦げ付き検知動作の必要性、すなわち、利用者が不在で焦げ付きが懸念される調理がなされる出力であるかを考慮し、かつ、誤動作の起こりにくい加熱出力に決めておけばよく、上述した例では、500W以上かつ1000W以下の加熱出力に対応する出力設定値Pの範囲としたが、これに限ったものではない。予め設定された出力設定範囲より大きい出力設定値Pは、例えば、焦げ付きの起こらない湯沸し及び炒め物調理などの高出力設定での調理で利用される。高出力での調理時は、利用者が鍋1の傍にいる場合が多いと考えられる。また、高出力での調理は、利用者が調理物にあえて焦げ色をつけたい場合にも行われる。また、高出力での調理時は、検知される出力電圧Vは、加熱開始時の低い出力電圧から、急激に高い出力電圧へ上昇するため、調理物と鍋1の温度差が大きくなって鍋1の温度が高温になりやすく、一般に、焦げ付きでないのに焦げ付きであると誤検知しやすく、第1及び第2の焦げ付き検知動作を停止させておく必要がある。
ステップS13の初期出力電圧判定処理において、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが、予め設定された第2出力電圧値V2未満であったとき、ステップS16に進んで第1の焦げ付き検知動作を行う。また、ステップS23の初期出力で軟圧判定処理において、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが、予め設定された第3出力電圧値V3未満であったとき、ステップS24へ進み、第2の焦げ付き検知動作を行う。ステップS13において、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上の場合、もしくはステップS23において、出力電圧Vが第3出力電圧値V3以上の場合、焦げ付き検知部6は、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止する。これにより、第1及び第2の焦げ付き検知動作の開始時又は加熱出力変更時に調理物の温度が高いことによる、焦げ付きの誤検知を防ぐ。この場合には、利用者は鍋1の前にいるので焦げ付き検知動作を禁止することによる問題は起きにくい。
また、ステップS16において、出力設定部7にて、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の別の出力設定値Pに変更されたと判断された(ステップS16においてNO)場合は、継続して第1の焦げ付き検知動作を行いステップS17に進む。一方、出力設定値Pが所定の出力設定範囲外の出力設定値Pに変更された場合(ステップS16においてYES)、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻る。
例えば、利用者が、出力設定部7で、700Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS12において、選択された出力設定値Pが所定の設定出力範囲内であることを検知することにより、第1の焦げ付き検知動作を行う必要がある調理が行われると判定し、ステップS13でYESの場合に、第1の焦げ付き検知動作を開始する。ステップS19に進むまでの間に、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値である500Wの加熱出力に対応する出力設定値Pに変更された場合は、加熱開始時の処理(ステップS12)に戻らず、第1の焦げ付き検知動作を継続する。例えば、利用者は、700Wの加熱出力に対応する出力設定値Pで煮込み調理を行っているときに、加熱出力が強いと判断し、500Wの加熱出力に対応する出力設定値Pに変更する。このとき、継続して、第1の焦げ付き検知機能を行うことにより、出力設定値Pの変更前に検知された出力電圧Vの情報を利用できるため、正確にまた簡素な制御シーケンスで焦げ付きを検知できる。
以上説明したように、所定の出力設定範囲内の所定の出力設定値Pから、所定の出力設定範囲内の別の出力設定値Pに変更された場合、継続して第1の焦げ付き検知動作を行うことにより、焦げ付き検知の誤検知を避けることが出来、かつ、利用者は、違和感なく調理を継続することが出来る。
また、第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、加熱出力が700Wから2000Wに変更された場合、ステップS16において、YESと判断されるので、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻る。一方、第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、加熱出力が700Wから、所定の出力設定範囲に対応する500W以上かつ1000W以下の加熱出力に変更された場合は、第1の焦げ付き検知動作は継続して行われる。例えば、加熱出力が700Wから2000Wに変更された場合に、ステップS12の加熱開始直後の処理に戻らず、継続して第1の焦げ付き検知動作を行った場合、2000Wの加熱出力によって、出力電圧Vは急激に上昇し、第2出力電圧値V2まで上昇するので、焦げ付き情報が出力されてしまう。従って、例えば、利用者が、700Wの加熱出力で煮込み調理を行っているときに、最後に煮汁を飛ばすために2000Wに加熱出力を上げたとき、利用者が加熱停止を行う前に、焦げ付き検知部6が焦げ付き情報を出力し、制御部9が加熱動作を停止しまたは加熱出力を抑制してしまう。しかし、本実施の形態によれば、加熱出力が、700Wから、所定の出力設定範囲より高い出力設定値Pに対応する2000Wに変更されたときは、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻るので、ステップS21でNOと判断され、第1の焦げ付き検知動作は停止されるものの加熱動作は継続され、利用者は、継続して調理を行うことが出来る。
また、第1の焦げ付き検知動作を行っているときに、加熱出力が700Wから370Wに変更された場合、ステップS16において、YESと判断されるので、加熱開始直後の処理であるステップS12に戻り、ステップS23〜S25において第3出力電圧値V3を用いる第2の焦げ付き検知動作が行われる。第3出力電圧値V3は、鍋1を低出力でじっくり加熱したときの調理で起こりうる低粘度の調理物の煮込み時に生じる、焦げ付きに対応した値を予め測定し、設定しておく。所定の出力設定範囲より小さい出力設定値Pでの加熱時は、所定出力設定範囲内の出力設定値Pでの加熱時よりも、鍋1で消費される電力が少なく、焦げ付くまでの温度上昇が緩やかである一方で、焦げ付いた後の温度上昇は急激である。このため、焦げ付きが生じてから、当該焦げ付きを、所定出力設定範囲内の出力設定値Pでの加熱時よりも早めに検知するために、第3出力電圧値V3は、第2出力電圧より小さい値に設定される。そのため、加熱出力が700Wから370Wに変更された場合に、ステップS12に戻らずに第1の焦げ付き検知動作を継続した場合、第2出力電圧値V2に到達するまで加熱され、焦げ付き状態が悪化し焦げつき検知が正確でなくなる。本実施の形態によれば、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より小さい出力設定値Pに変更された場合、ステップS12に戻り、第2の焦げ付き検知動作を行うので、正確に焦げ付きを検知することが可能となる。
ステップS23からステップS25に進むまでの間において、出力設定部7にて、出力設定値Pが変更された場合、ステップS24においてYESと判断され、ステップS12に戻る。
例えば、利用者が、出力設定部7で、370Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択した場合、焦げ付き検知部6は、ステップS21において、選択された出力設定値Pが所定の設定出力範囲より小さい値であることを検知することにより、一般に焦げ付きが懸念される低出力の調理が実行されると判定し、ステップS23で第2の焦げ付き検知動作を開始する。しかし、出力電圧Vが第3出力電圧値V3に到達する前に、出力設定値Pが変更された場合、ステップS24においてYESと判断され、ステップS12に戻る。
例えば、利用者が370Wの加熱出力で調理している途中で、調理物への加熱出力が足りないと判断し、加熱出力を、所定の出力設定範囲内の出力設定値Pに対応する500Wに上げたとする。このとき、ステップS12の調理開始直後の処理に戻らずに第2の焦げ付き検知動作を継続した場合、焦げ付きを検知するために用いる出力電圧値は、第2出力電圧値V2より低い第3出力電圧値V3のままであり、焦げ付きが起こっていない状態で、焦げ付きが確定されて焦げ付き情報が出力されてしまい、調理に不具合を生じる。一方、本実施の形態によれば、加熱出力が370Wから500Wに変更されたとき、ステップS12に戻るので、第2出力電圧値V2を用いる第1の焦げ付き検知動作が行われ、正確に焦げ付きを検知することが可能となる。
また、370Wに対応する出力設定値Pで加熱動作を開始し、2000Wに対応する出力設定値Pに変更したとする。370Wでの加熱動作時は、出力電圧Vが第3出力電圧値V3に達すると、加熱動作は停止され、または加熱出力は抑制される。例えば、散らし寿司などに盛り付けられるにんじんの加熱調理時のように、比較的少量の調理物(負荷)の煮込みをした後に高出力で水分を飛ばしたい調理時に、利用者は加熱出力を370Wから2000Wに変更する。この変更時に、ステップS12の処理に戻らずに第2の焦げ付き検知動作を継続した場合、水分を飛ばしている途中で、検知された出力電圧Vが第3出力電圧値V3に達し、焦げ付き情報が出力されるので、加熱動作は停止されるかまたは加熱出力は抑制されてしまい、調理に不具合が生じる。一方、本実施の形態によれば、加熱出力が370Wから2000Wに変更されるとステップS12の処理に戻り、ステップS21でNOと判断され、ステップS26において第1及び第2の焦げ付き動作を禁止し、加熱動作を継続するため、利用者は、継続して調理を行うことが可能となる。
また、ステップS21において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きい値であると判断されたとき、焦げ付き検知部6は、第1及び第2の焦げ付き動作を禁止して行わないが、加熱動作は継続されるので、調理を継続できる。第1及び第2の焦げ付き動作を禁止して加熱している間に、出力設定部7にて、加熱出力が変更された場合は(ステップS27でYES)、ステップS12に戻る。
例えば、利用者が、出力設定部7で、2000Wの加熱出力に対応する出力設定値Pを選択したとする。焦げ付き検知部6は、ステップS21において、選択された出力設定値Pが所定の設定出力範囲より大きい値であることを検知し、制御部9に、当該検知結果を含む情報を出力する。制御部9は、第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止し、加熱動作を継続する。その後、加熱出力が、2000Wから、第1の焦げ付き検知動作を行う加熱出力の範囲内の加熱出力である700Wに変更されたとする。例えば、このような調理シーンとして挙げられる炒め煮などの場合、利用者は、調理物を高出力で炒めたのちに、調味液を投入し、煮込みのためにより小さい出力に変更する。2000Wの加熱出力時には第1及び第2の焦げ付き検知動作を禁止したが、700W加熱出力での煮込み時には、焦げ付き検知を行う必要がある。本実施の形態によれば、加熱出力が2000Wから700Wに変更されたときは、ステップS12の加熱開始直後の処理に戻り、第1の焦げ付き動作を行うので、出力電圧値Vが第2出力電圧値V2未満である場合(ステップS13でYES)には、焦げ付きを検知できる。
これにより、高出力での調理時や湯沸かし時のように、第1及び第2の焦げ付き検知動作が禁止されている所定の出力設定値Pから、所定の出力設定範囲の、または当該出力設定範囲より小さい出力設定値Pに変更された場合でも、変更されたときの鍋1の温度が焦げ付き情報を判別する温度より高温でなければ、変更後の出力設定値Pで第1または第2の焦げ付き動作を行うことが出来る。
ステップS17において、出力電圧Vが予め設定された第2出力電圧値V2へ到達すると、焦げ付き検知部6は、焦げ付きが生じたことを検知し、焦げ付き情報を出力する。これに応答して、制御部9は、加熱動作を停止するか、もしくは加熱出力を低下させるなどの制御を行う。また、第2出力電圧値V2の設定値は、焦げ付きの状態を少なくするには、焦げ付きが起こりうる、例えば、160℃に対応する値に設定することが好ましい。ただし、鍋1の種類によって、調理の途中で焦げ付きを検知してしまう調理等もあるため、焦げ付きの誤検知をなくし、かつ、焦げ付きの状態を少なくする最適の温度(例えば、195℃)を予め実験によって求めて当該温度に対応する出力電圧Vを第2出力電圧値V2に設定すればよい。
第1の焦げ付き検知動作において、出力電圧Vが第2出力電圧値に到達するまで、ステップS16とステップS17の処理を繰り返して実行する。また、ステップS13からステップS17に進むまでの間に、出力設定部7によって、出力設定値Pが所定の出力設定範囲外の値に変更された場合、ステップS16においてYESと判断され、ステップS12に戻る。
ステップS25において、鍋1の底面温度に対応する出力電圧Vが、第3出力電圧値V3に達した場合、焦げ付き検知部6は、焦げ付きが発生したことを検知し、焦げ付き情報を出力する。これに応答して、制御部9は、加熱動作を停止するか、もしくは加熱出力を抑制(低下)させるなどの制御を行う。
なお、焦げ付き検知部6が鍋底内側に焦げ付きが生じたと確定して焦げ付き情報を出力したとき、制御部9はステップS20において、加熱動作を停止するか、もしくは加熱出力を抑制(低下)したが、本発明はこれに限られない。ステップS20において、制御部は、所定の表示又は所定の警告音などによって利用者へ焦げ付きを報知してもよく、ステップS20における処理は、加熱出力制御に限ったものではない。
また、図2の加熱処理において、出力設定値Pの変更時に当該設定変更を検知し、ステップS12の加熱開始直後の処理に戻ったが、本発明はこれに限られず、マイコンの割り込み処理等を利用してもよい。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
図3において、曲線12は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値に設定されているときの、第1の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す。
実施の形態1と同様の部分については、説明を省略し、異なる部分について説明する。
実施の形態1において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値に設定されているとき、出力電圧Vが第2出力電圧以上V2に増加したことを検知すると鍋1の鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する第1の焦げ付き検知動作を行う。しかしながら、加熱開始時の鍋1が高温で、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上になる場合がある。この場合には、第1の焦げ付き検知動作が停止するので、出力電圧Vが第2出力電圧値V2のまま加熱が継続される。例えば、図3に示すように、利用者により、時刻t1において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲より大きな値(例えば、2000W)から所定の出力設定範囲内の値(例えば、500W)に変更され、同時に調理物が攪拌されたり、水が投入されたりするなどの理由により、出力電圧Vが第2出力電圧値V2を超えた状態から、第2出力電圧値V2未満に下がることがある。本実施の形態に係る第1の焦げ付き検知動作において、焦げ付き検知部1は、第1の焦げ付き検知が停止した状態で、出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上になっているときに、第2出力電圧値V2未満になったことを検知したときに、第1の焦げ付き検知動作を行い、出力電圧Vが第2出力電圧値V2に到達するか否かを検知する(図2のステップS28でYES→ステップS12でYES→ステップS13でYES→ステップS16でNO→ステップS17)。本実施の形態によれば、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値に設定されているときには、第1の焦げ付き検知が停止した状態で、かつ出力電圧Vが第2出力電圧値V2以上になって加熱継続中であっても、第2出力電圧値V2未満になったことを検知したときに、第1の焦げ付き検知動作を行うので、鍋1に調理物(負荷)が投入されたと判断し、自動的に第1の焦げ付き検知動作を行うことが出来るため、利用者の使い勝手が向上する。誤検知なく、正確な焦げ付き検知が可能となる。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における赤外線センサ5の出力電圧曲線のグラフである。
図4において、曲線13は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定され、かつ第2の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す。
実施の形態1、2と同様の部分については、説明を省略し、異なる部分について説明する。
実施の形態1において、焦げ付き検知部6は、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定されているとき、前記出力電圧Vが第2出力電圧値V2よりも小さい第3出力電圧値V3以上に増加したことを検知すると鍋1の鍋底に調理物が焦げ付いたことを検知する第2の焦げ付き検知動作を行う。しかしながら、加熱開始時の鍋1が高温で、出力電圧Vが第3出力電圧値V3以上になる場合がある。この場合には、第1の焦げ付き検知動作が停止するので、出力電圧Vが第2出力電圧値V2のまま加熱が継続される。図4に示すように、利用者によって、時刻t2において、出力設定値Pが所定の出力設定範囲内の値(例えば、1000W)から所定の出力設定範囲内の値(例えば、370W)に変更され、同時に、冷水などの負荷が鍋1に投入されて調理物の温度が低下した場合、図4に示すように、出力電圧Vは、第3出力電圧値V3以上の値から第3出力電圧値V3以下の値まで低下する。本実施の形態において、焦げ付き検知部6は、第2の焦げ付き検知動作が停止された状態で、出力電圧Vが、第3出力電圧値V3以上になっているときに、第3出力電圧値V3未満に低下したことを検知すると、第1の焦げ付き検知動作を行い、出力電圧Vが第3出力電圧値V3に到達するか否かを検知する(図2のステップS28でYES→ステップS12でNO→ステップS21でYES→ステップS23でNO→ステップS24でNO→ステップS25)。本実施の形態によれば、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定されているときには、第2の焦げ付き検知が停止した状態で、かつ出力電圧Vが第3出力電圧値V3以上になって加熱継続中であっても、第3出力電圧値V3未満になったことを検知したときに、第2の焦げ付き検知動作を行うので、誤検知なく、正確な焦げ付き検知が可能となる。
以上説明したように、出力設定値Pが所定の出力設定範囲よりも小さい値に設定されているときに、赤外線センサ5により、第3出力電圧値V3以上の値を検知した状態で加熱を継続している時でも、その後、出力電圧Vが第3出力電圧値V3未満に低下したことを検知することにより、鍋1に調理物(負荷)が投入されたと判断し、自動的に第2の焦げ付き検知動作を行うことが出来るため、利用者の使い勝手が向上する。
以上説明したように、本発明に係る誘導加熱調理器及びその制御方法は、利用者が選択した出力設定値によって、利用者の望む調理シーンを判別することにより、焦げ付きの誤検知をなくし、継続して調理を行うことが出来るので、焦げ付きが生じる加熱調理器等の用途にも適用できる。
1 鍋
2 トッププレート
3 誘導加熱コイル
4 インバータ
5 赤外線センサ
6 焦げ付き検知部
7 出力設定部
8 電圧検知部
9 制御部
10 アップキー
11 ダウンキー
12 出力設定値が所定の出力設定出力範囲内の値に設定されているときで、かつ第1の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す曲線
13 出力設定値が所定の出力設定出力範囲よりも小さい値に設定されているときで、第1の焦げ付き検知動作が停止されている時の出力電圧Vの時間変化を示す曲線