JPWO2010038835A1 - グラフト共重合体の製造方法、その方法で得られたグラフト共重合体、及び該グラフト共重合体を含むゴム組成物とタイヤ - Google Patents

グラフト共重合体の製造方法、その方法で得られたグラフト共重合体、及び該グラフト共重合体を含むゴム組成物とタイヤ Download PDF

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Abstract

本発明は、水性媒体中において、重合制御剤の存在下、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分に、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させることを特徴とする、グラフト共重合体の製造方法、この方法で得られたグラフト共重合体を含有するゴム組成物及び該ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いてなるタイヤであり、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムに、ラジカル重合性単量体、特に官能基含有ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させて、グラフト共重合体を効率よく製造する方法、この方法で得られたグラフト共重合体を含む、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いてなる上記性状を有するタイヤを提供するものである。

Description

本発明は、水性媒体中において、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムに、特に官能基含有ビニル系単量体をリビンクラジカル重合によりグラフト重合させ、グラフト共重合体(変性ゴム重合体)ラテックスを効率よく製造する方法、上記ラテックスから得られたグラフト共重合体を含む、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いてなる上記性状を有するタイヤに関するものである。
近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてより発熱性の低い材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
このような発熱性の低いゴム組成物を得るために、これまで、シリカやカーボンブラックを充填材とするゴム組成物用の変性ゴムの技術開発が多くなされてきた。その中でも特に、有機リチウムを用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端を充填材と相互作用する官能基を含有するアルコキシシラン誘導体で変性する方法が有効なものとして提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
しかし、これらの多くは重合体末端のリビング性が容易に確保できるポリマーへの適用であり、シリカやカーボンブラックを配合したゴム組成物における変性効果は必ずしも充分なものが得られていない。また、従来の変性手法の多くは、主鎖に対する分岐付与を充分行なうことが出来ないため、実用に供する際に、コールドフローが大きな障害になり、これに対処するために部分カップリングを行なうと、必然的に変性効果が低減するという問題があった。
ところで、リビング重合は、生長反応は進行するが、停止反応、連鎖移動反応は起こらない重合であって、リビングポリマーの生長末端はモノマーが消費されたあとも活性を保っており、モノマーを追加すると再び重合を開始する。ポリマーの分子量はモノマーの消費量に比例して増大し、分子量の揃ったポリマーが得られ、また、ポリマーの活性末端に、種々の官能基の導入が容易である。このリビング重合は、アニオン重合及びカチオン重合では、比較的容易に実現することができる。
一方、ラジカル重合は、工業的に極めて重要な重合法であり、アニオン重合ではできない極性モノマーを、多数導入できるという利点があるが、生長ラジカルの寿命が極めて短く、二分子停止反応といったイオン重合にはない重合停止機構があるため、従来リビング重合は不可能であると考えられていた。しかしながら、近年、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカルなどの空気の存在下でも安定なラジカルが見出されて以来、リビングラジカル重合の研究が積極的に行われるようになってきた。このリビングラジカル重合においては、通常のラジカル重合で生じるポリマー同士の結合(ゲル化)を抑制し、極性モノマーグラフトを共重合体に導入することができる。なお、ゲル量が多いポリマーをゴム組成物に用いた場合には、破壊特性が著しく低下する。
また、極性基を主鎖に導入するよりも、グラフト重合によって側鎖に導入した方が、該極性基の運動性が高くなると共に、数多く導入することができる。従って、このものを、ゴム組成物に用いた場合、カーボンブラックや無機充填材との親和性が大きく向上する。
このようなリビングラジカル重合においては、得られる重合体の分子量の制御が容易であって、分子量分布が狭く、かつ末端変性が可能で、様々な官能基を末端に導入することができるなどの利点がある。
リビングラジカル重合に関しては、例えば(1)水性媒体中で、特定の有機テルル化合物、界面活性剤及び/又は分散剤を用いて、ビニルモノマーを重合する、ポリマーを含む水性液の製造方法(例えば、特許文献3参照)、(2)特定の有機テルル化合物からなるリビングラジカル重合開始剤を用いて、ビニルモノマーを重合して得られたリビングラジカルポリマー(マクロリビングラジカル重合開始剤)と、特定の有機ジテルリド化合物との混合物を用いて、ビニルモノマーを重合するリビングラジカルポリマーの製造方法(例えば、特許文献4参照)などが開示されている。
さらに、重合制御剤の存在下での重合(リビング重合)として、[1](a)少なくとも1種のモノマー、(b)重合制御剤及び乳化剤を含む水性重合媒質を調製すること、ここで、乳化剤は水性重合媒質中においてその場で製造される:及び[2]該モノマーの重合を水性重合媒質中で開始することを含む、乳化重合法(例えば、特許文献5参照)が開示されている。
しかしながら、これらの技術を適用し、水性媒体中で、天然ゴムや合成ジエン系ゴムに、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させた例は知られていない。
特公平6−53763号公報 特公平6−57767号公報 特開2006−225524号公報 特開2006−299278号公報 特表2006−512459号公報
本発明は、このような状況下で、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムに、ラジカル重合性単量体、特に官能基含有ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させて、グラフト共重合体を効率よく製造する方法、この方法で得られたグラフト共重合体を含む、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いてなる上記性状を有するタイヤを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
(1)リビングラジカルグラフト重合を、水系での乳化重合で実施する場合、有機溶媒中での重合に比べて、より重合度の高いポリマーを生成することができ、グラフト部分のより一層長いポリマーの生成が可能であること、
(2)リビングラジカル重合は、重合制御剤の存在下に行われるが、重合を水系で実施するには、該重合制御剤は、水に対して不活性であることが好ましいこと、
(3)上記重合制御剤としては、安定遊離ラジカル形成化合物、原子移動ラジカル重合剤、可逆付加−開裂連鎖移動剤、イニファータ、有機テルル化合物及び有機ヨウ素化合物などが好ましく、特に有機テルル化合物が好適であること、
(4)グラフトさせるラジカル重合性単量体としては、分子内に官能基を有するものが好ましく、この官能基を選択することにより、得られるグラフト共重合体を含むゴム組成物は、その中のカーボンブラックや無機充填材の分散性が良好となり、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などの優れたものになること、
(5)上記ゴム組成物を、タイヤ部材のいずれかに用いることにより、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れるタイヤが得られること、
を見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)水性媒体中において、重合制御剤の存在下、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分に、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させることを特徴とする、グラフト共重合体の製造方法、
(2)上記(1)に記載の方法で得られたことを特徴とするグラフト共重合体ラテックス、
(3)タイヤ用である上記(2)に記載のグラフト共重合体ラテックス、
(4)上記(2)又は(3)に記載のグラフト共重合体ラテックスを、凝固及び乾燥してなるグラフト共重合体、
(5)タイヤ用である上記(4)に記載のグラフト共重合体、
(6)上記(4)又は(5)に記載のグラフト共重合体を含有することを特徴とするゴム組成物、
(7)タイヤ用である上記(6)に記載のゴム組成物、
(8)(A)グラフト共重合体を含むゴム成分と、その100質量部に対して、(B)カーボンブラック及び/又は無機充填材を、5〜100質量部の割合で含む上記(6)又は(7)に記載のゴム組成物、
(9)無機充填材に対し、シランカップリング剤を1〜20質量%の割合で含む上記(8)に記載のゴム組成物、及び
(10)上記(6)〜(9)のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とするタイヤ、
を提供するものである。
本発明のグラフト共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤは、下記の効果を奏する。
(1)本発明のグラフト共重合体の製造方法によれば、水性媒体中において、天然ゴムや合成ジエン系ゴムに、ラジカル重合性単量体をリビングラジカル重合によりグラフト重合させることにより、グラフト共重合体(変性ゴム重合体)ラテックスを効率よく製造することができる。
特に、リビングラジカル重合を、水系での乳化重合(水性媒体中のミセル内(有機溶媒)やミセル表面での重合)で実施する場合、有機溶媒中での重合に比べて、より重合度の高いポリマーを生成することができ、グラフト部分のより一層長いポリマーの生成が可能であり、且つゲル分(トルエン不溶分)が少なくなる。
(2)リビングラジカルグラフト重合を行うのに用いる重合制御剤として、水に不活性なもの、特に特定の構造を有する有機テルル化合物を用いることにより、上記(1)のグラフト共重合体ラテックスを、より効果的に製造することができる。該有機テルル化合物は、水系において良好な安定性を有する上、分子量制御性、官能基適合性、リビングポリマー末端の変性容易性などを有している。
(3)グラフトさせるラジカル重合性単量体として、分子内に官能基を有するものを用い、この官能基を選択することにより、得られるグラフト共重合体を、ゴム組成物に含まれるカーボンブラックや無機充填材に対する相互作用に優れるものにし、ゴム組成物用のゴム成分として好適なものにすることができる。
(4)上記(3)のグラフト共重合体を含有するゴム組成物は、その中に含まれるカーボンブラックや無機充填材の分散性が良好となり、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性に優れるものになる。
(5)上記(4)のゴム組成物を、タイヤ部材のいずれかに用いることにより、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れるタイヤが得られる。
まず、本発明のグラフト共重合体の製造方法について説明する。
[グラフト共重合体の製造方法]
本発明のグラフト共重合体の製造方法(以下、単に本発明の方法と称することがある。)は、水性媒体中において、重合制御剤の存在下、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分に、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させることを特徴とする。
(原料ゴム成分)
本発明のグラフト共重合体の製造方法においては、グラフトされる原料ゴム成分として、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムが用いられるが、本発明におけるリビングラジカルグラフト重合は、水性媒体中で実施され、乳化重合が好ましいことから、上記原料ゴム成分は、ラテックスの形態で使用することが好ましい。
天然ゴムのラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンパク質ラテックス、及びこれらを組み合わせたもの等を用いることができる。
一方、合成ジエン系ゴムのラテックスとしては特に制限はなく、例えばブタジエンゴム(BR)ラテックス、イソプレンゴム(IR)ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)ラテックス、ニトリルゴム(NBR)ラテックスなどを用いることができる。
上記合成ジエン系ゴムのラテックスの由来については特に制限はなく、乳化重合によって得られたもの、溶液重合物を水性媒体に分散させたもの及び固形ゴムを溶解・乳化してラテックス化したものなど、いずれであってもよい。
本発明においては、前記の各ラテックスは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(重合制御剤)
本発明の方法においては、反応系に重合制御剤を存在させてリビングラジカルグラフト重合を行い、前記ゴム成分の側鎖に、グラフト鎖を導入するが、この場合、上記重合制御剤の存在によりリビングラジカル重合となり、上記グラフト鎖として、末端活性のリビングポリマーが導入される。
上記重合制御剤に特に制限はなく、従来リビングラジカル重合において、重合制御剤として知られている公知の化合物の中から、任意のものを適宜選択することができるが、本発明においては、水性媒体中でリビングラジカルグラフト重合を行う上から、水に対して不活性であるもの、すなわち水の存在により失活しないものであることが好ましい。
本発明の方法において、リビングラジカルグラフト重合に用いる重合制御剤としては、例えば安定遊離ラジカル形成化合物、原子移動ラジカル重合剤、可逆付加−開裂連鎖移動剤、イニファータ、有機テルル化合物及び有機ヨウ素化合物などを挙げることができる。反応性の観点から、安定遊離ラジカル形成化合物、イニファータ及び有機テルル化合物が好ましい。これらの中で、水系における安定性の観点から、有機テルル化合物が特に好ましい。
<安定遊離ラジカル形成化合物>
安定遊離ラジカル形成化合物は、ニトロキシラジカル(R2N−O・)などの安定遊離ラジカルを形成し、該ラジカルの作用により、リビングラジカル重合を進行させる化合物である。ニトロキシラジカルの作用によるラジカル重合は、NMPと呼ばれている。
安定遊離ラジカルであるニトロキシラジカルとしては、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや、2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカルなど、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシラジカルが好ましい。なお、置換基としてはメチル基やエチル基などの炭素数4以下のアルキル基が適当である。例えばフェニル−t−ブチルニトロンが挙げられる。また、ニトロキシラジカル以外の安定遊離ラジカルを形成する化合物として、例えば1−ジフェニルエチレンが知られている。
この安定遊離ラジカルの作用によるリビングラジカル重合では、ポリマー生長末端の弱い結合の解離、生長、結合生成の速いサイクルにより生長種が断続的に活性をもち、二分子停止及び連鎖移動による失活が抑制される。
<原子移動ラジカル重合剤>
重合制御剤として、原子移動ラジカル重合剤を用いる原子移動ラジカル重合(ATRP)は、成長しているポリマー鎖と重合制御剤との間の不安定なラジカルが容易に移動することを媒介して、リビングラジカル重合を行う触媒可逆的レドックス法である。
この原子移動ラジカル重合剤としては、例えば有機ハロゲン化物と遷移金属錯体との組合わせを用いることができる。上記有機ハロゲン化物としては、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する化合物(例えばα位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物など)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物などが好適である。
一方、遷移金属錯体としては、特に制限はないが、好ましくは周期表第7〜11族に属する元素を中心金属とする金属錯体であり、より好ましくは0価又は1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、2価のニッケルの錯体であり、特に好ましくは銅の錯体である。
<可逆付加−開裂連鎖移動剤>
可逆付加−開裂連鎖移動(RAFT)による制御された重合は、成長しているポリマーラジカルと不活発なポリマー鎖との間の急速連鎖移動反応によって生じる。重合開始後、重合制御剤は、不活発なポリマー鎖の一部となる。
このRAFTによる制御された重合に用いる重合制御剤としては、例えばジチオエステル、トリチオカーボネート、キサンテート、ジチオアシルヒドラゾン、ジベンジルトリチオカーボネートなどを挙げることができる。
RAFT重合では、重合開始剤は、重合性モノマーと続いて反応する遊離ラジカルを生成する。モノマーラジカルは他のモノマーと反応し、成長して鎖を形成し、これは上記ジチオエステルのような重合制御剤と反応することができる。重合制御剤はばらばらになり、R・を形成し、新たに形成する別のモノマーと反応したり、あるいは成長し続けることができる。理論的には、成長はモノマーがなくなるまで続き、そして停止段階となる。
<イニファータ>
グラフトされる重合体の側鎖に、リビングラジカルグラフト重合の開始点となる化合物残基(イニファータ)を導入し、ラジカル重合性単量体をリビングラジカル重合させることにより、リビングポリマーからなるグラフト鎖が形成される。
上記イニファータを形成する化合物としては、例えばジチオカルバメート系化合物や、スチレン/ニトロキシド系化合物などが用いられる。
<有機テルル化合物>
有機テルル化合物は、リビングラジカル重合における重合制御剤として、最近見出された化合物であり、水系において良好な安定性を有する上、分子量制御性、官能基適合性、リビングポリマー末端の変性容易さなどの観点から、本発明においては、各種重合制御剤の中で最も好適なものとして用いる。以下、当該有機テルル化合物について詳述する。
本発明において、重合制御剤として用いる有機テルル化合物としては、一般式(1)
Figure 2010038835
(式中、R1は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R4は、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
で表される有機テルル化合物(I)及び/又は一般式(2)
(R5Te)2 ・・・・・(2)
(式中、R5は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示し、2つのR5はたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機テルル化合物(II)を、好ましく挙げることができる。
上記一般式(1)において、R1で示される基は具体的には、次のとおりである。
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、より好ましくは、メチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等、置換アリール基としては置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等、芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−COR6で示されるカルボニル含有基(R6=炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。好ましいアリール基としては、フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基である。また、これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位が好ましい。
上記一般式(1)において、R2及びR3のうちの炭素数1〜8のアルキル基としては、上記R1で示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
上記一般式(1)において、R4で示される基は、具体的には次のとおりである。
アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基としては、上記R1で示した基と同様のものを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、−COOR7(R7=水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基)で示される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
好ましいR4で示される各基としては、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアリール基は、フェニル基であり、好ましい置換アリール基は、ハロゲン原子置換フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基である。また、これら置換基は、ハロゲン原子の場合は、1〜5個置換しているのが良い。アルコキシ基やトリフルオロメチル基の場合は、1個又は2個置換しているのが良く、1個置換の場合は、パラ位若しくはオルト位が好ましく、2個置換の場合は、メタ位が好ましい。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が好ましい。
好ましい一般式(1)で示される有機テルル化合物としては、R1が、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2及びR3が、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R4が、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基で示される化合物である。特に好ましくは、R1が、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2及びR3が、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R4が、フェニル基、置換フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基である。
一般式(1)で示される有機テルル化合物(I)としては、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プリピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチル−2−メチルテラニル−プロパナール、3−メチル−3−メチルテラニル−2−ブタノン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル-2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(フェニルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−フェニルテラニル−プロピル)ベンゼン等を挙げることができる。また上記において、メチルテラニル、1−メチルテラニル、2−メチルテラニルの部分がそれぞれエチルテラニル、1−エチルテラニル、2−エチルテラニル、ブチルテラニル、1−ブチルテラニル、2−ブチルテラニルと変更した化合物も全て含まれる。
好ましくは、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−5−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(エチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−エチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−エチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−エチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−エチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−エチルテラニルプロピオニトリル、(n−ブチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−n−ブチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−n−ブチルテラニル−メチル)ベンゼン、2−n−ブチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−n−ブチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−n−ブチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−n−ブチルテラニルプロピオニトリルを挙げることができる。
これらの有機テルル化合物(I)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、上記一般式(2)において、R5は、上記一般式(1)におけるR1と同じであるが、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基である。2つのR5は、たがいに同一でも異なっていてもよいが、製造の容易さの観点から、同一であることが好ましい。
この一般式(2)で表される有機テルル化合物(II)としては、例えばジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドがあり、特に好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリドである。
これらの有機テルル化合物(II)は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、重合制御剤として、上記の有機テルル化合物(I)のみを用いてもよいし、有機テルル化合物(II)のみを用いてもよく、あるいは有機テルル化合物(I)と(II)とを併用してもよい。
<有機ヨウ素化合物>
有機ヨウ素化合物は、デジェネレイティブ移動(DT)による制御された重合における制御剤として用いられる。DTによる制御された重合は、増殖しているマクロラジカル鎖間の原子又は基の直接交換によって生じる。この場合、重合制御剤は、DTに必要な原子又は基を提供するものであり、有機ヨウ素化合物が好適に用いられる。この有機ヨウ素化合物としては、例えばアルキルヨウ化物、ペルフルオロアルキルヨウ化物、活性有機ヨウ化物などを挙げることができる。
(重合開始剤)
本発明のグラフト共重合体の製造方法においては、上述の各種重合制御剤と共に別の重合開始剤を併用しても良い。
この重合開始剤としては、特に制限はなく、各種ラジカル重合開始剤が用いられる。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロペルオキシド、tert−ブチルハイドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、他のアゾ系開始剤及びレドックス系開始剤等が挙げられる。
上述のうち、水性媒体中でリビングラジカルグラフト重合を行う観点からアゾ系開始剤及びレドックス系開始剤が好適である。
<アゾ系開始剤>
アゾ系開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
これらのアゾ系開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、反応条件に応じて適宜選択することが好ましい。
例えば、低温重合(0〜50℃程度)の場合は2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、中温重合(50〜70℃程度)の場合は2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、高温重合(70〜100℃程度)の場合は1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]を用いるのがよい。
<レドックス系開始剤>
レドックス系開始剤としては、過酸化物と還元剤との組合わせが用いられる。過酸化物としては、例えば過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシドなどの水溶性有機過酸化物、各種の水溶性アゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられ、これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、還元剤としては、例えばテトラエチレンペンタミンなどのポリアミン類、メルカプタン類、アスコルビン酸、Fe2+塩などの還元性金属イオンを形成する塩などが挙げられ、これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
レドックス系開始剤における過酸化物と還元剤との使用割合は、使用する過酸化物と還元剤の種類にもよるが、モル比で、通常10:1〜1:10程度、好ましくは1:5〜3:1である。
レドックス系開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組合わせの例としては、tert−ブチルヒドロペルオキシドとテトラエチレンペンタミンとの組合わせを挙げることができる。
このレドックス系開始剤を用いる場合、重合温度は、通常0〜80℃程度、好ましくは0〜60℃である。
(ラジカル重合性単量体)
本発明のグラフト共重合体の製造方法において、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分に、リビングラジカルグラフト重合させるラジカル重合性単量体としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子の中から選ばれる少なくとも一種を含む官能基を分子内に少なくとも一つ有する化合物又は芳香族ビニル化合物を挙げることができる。
上記の官能基の例としては、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アミノ基、イミノ基、スルホン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオカルボキシ基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホルミル基、チオホルミル基、シラノール基、ヒドロカルビルオキシ基、ニトリル基、ピリジル基、アミド基、イミド基、イミダゾリル基、アンモニウム基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ケチミン基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキシカルボニル基(エステル結合)、カルボニルチオ基(チオエステル結合)、オキシ基(エーテル結合)、グリシドキシ基、スルフィド基(チオエーテル結合)、ジスルフィド基、メルカプト基、ヒドロカルビルチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、イミン残基、他の含窒素複素環式基、含酸素複素環式基、含硫黄複素環式基、ヒドロカルビルオキシシリル基、有機スズ基、塩素原子及び臭素原子などを挙げることができる。これらの官能基は、ラジカル重合性単量体の中に一種含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
本発明においては、得られるグラフト共重合体をゴム組成物に用いた場合、該組成物に含まれるカーボンブラックや無機充填材に対する相互作用の観点から、上記官能基の中で、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ピリジル基、イミン残基、他の含窒素複素環式基などの窒素原子を含むものが好ましく、特にイソシアネート基、ピリジル基が好適である。
上記官能基を有するラジカル重合性単量体としては、分子内に上記官能基を有し、かつラジカル重合性基を有する化合物であればよく、特に制限はないが、官能基としてイソシアネート基やピリジル基を有するラジカル重合性単量体を好ましいものとして挙げることができる。このような単量体としては、例えばイソシアナトメチル(メタ)アクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート、イソシアナトメチル(メタ)アクリルアミド、イソシアナトエチル(メタ)アクリルアミド、イソシアナトプロピル(メタ)アクリルアミド、イソシアナトブチル(メタ)アクリルアミド、1−イソシアナト−2−ビニルベンゼン、1−シアナト−3−ビニルベンゼン、1−イソシアナト−4−ビニルベンゼン、2−ビニルピリジン(2−VP)、4−ビニルピリジン(4−VP)等を挙げることができる。
また、酸素原子を含む官能基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(N−)モノアルキル(メタ)アクリルアミド類(例えば、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチルビニルケトン(MVK)等が挙げられ、窒素原子を含む官能基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばアクリロニトリル等が挙げられ、酸素原子及び窒素原子を含む官能基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、金属原子を含む官能基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばアリル−トリ−n−ブチルスズ等が挙げられ、ヒドロカルビルオキシシリル基を有するラジカル重合性単量体としては、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
上述の官能基を有するラジカル重合性単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ラジカル重合性単量体として、芳香族ビニル化合物も好ましい。この芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン(St)、α−メチルスチレン(α−MeSt)、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−tert−ブチル−α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる。
(グラフト共重合体の製造)
本発明のグラフト共重合体の製造方法においては、水性媒体中において、重合制御剤の存在下、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分に、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させることにより、グラフト共重合体を製造するが、当該グラフト共重合体を効率よく製造するには、下記の条件を採用することが好ましい。
<リビングラジカルグラフト重合の好ましい条件>
(1)リビングラジカルグラフト重合を乳化重合で行うのがよく、したがって、原料のゴム成分は、ラテックス形態で用い、界面活性剤及び/又は分散剤の存在下に乳化重合を行う。
(2)重合制御剤として、前述の有機テルル化合物(I)及び/又は有機テルル化合物(II)を用いると共に、重合開始剤として、前述のアゾ系開始剤又はレドックス系開始剤を用い、リビングラジカルグラフト重合を行う。
(3)グラフトさせるラジカル重合性単量体として、分子内に前述の官能基を有するものを用いる。重合禁止剤を含む市販品を用いる場合には、予め適切な手法で重合禁止剤を取り除くことが好ましい。
(4)ラジカル重合性単量体のグラフト量が、得られるグラフト共重合体中のゴム成分に対し、0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%になるように制御する。
次に、上記条件を採用したリビングラジカルグラフト重合によるグラフト共重合体の製造について、具体的に説明する。
まず、ゴム成分にリビングラジカルグラフト重合させる官能基含有ラジカル重合性単量体と、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤などの乳化剤と、必要に応じポリビニルアルコール類のような水溶性高分子化合物などの分散剤と、水性媒体とを混合し、乳化装置などを用いて乳化処理して単量体乳化液を調製する。
次いで、天然ゴムラテックス及び/又は合成ジエン系ゴムラテックスと、上記単量体乳化液と、水性媒体とを混合したのち、これに重合制御剤として有機テルル化合物(I)及び/又は(II)と、重合開始剤としてアゾ系開始剤又はレドックス系開始剤を加えて反応用液を調製する。
次に、この反応用液を所定の温度で加熱してリビングラジカルグラフト重合を行う。重合開始剤として、アゾ系開始剤を用いた場合、重合温度は、通常0〜100℃程度、好ましくは40〜90℃であり、レドックス系開始剤を用いた場合、重合温度は、通常0〜80℃程度、好ましくは0〜70℃である。
反応時間は、反応温度、用いるゴム成分、ラジカル重合性単量体、乳化剤、重合制御剤及び重合開始剤などの種類に応じ、重合反応が完結するように適宜選定すればよい。好ましくは24時間以内である。
なお、上記重合制御剤や重合開始剤は、単量体乳化液の調製工程で加えておいてもよい。
上記水性媒体としては、例えば水を始め、無機塩を含む中性水、アルカリを含むアルカリ性水、酸を含む酸性水、アルコールなどの極性溶媒を含む水などを用いることができる。
上記乳化剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ジオクチルコハク酸塩、ラウリルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリルリン酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤などを用いることができる。
上記分散剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロース誘導体等のノニオン系高分子化合物、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸及び/又はその塩との共重合体等のアニオン系高分子化合物などの水溶性高分子化合物等を用いることができる。
上記反応用液中の天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分の濃度は、重合性などの観点から、通常5〜80質量%程度、好ましくは10〜65質量%である。該反応用液中の乳化剤(固形分)の量は、ゴム成分及びラジカル重合性単量体の合計量に対し、通常0.3〜50質量%程度、好ましくは0.5〜30質量%である。
また、重合制御剤の量は、リビングラジカル重合性の観点から、仕込みラジカル重合性単量体100質量部に対して、通常0.01〜30質量部程度、好ましくは0.1〜20質量部である。重合開始剤としてアゾ系開始剤を用いる場合、その量は、仕込みラジカル重合性単量体100質量部に対して、通常0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部である。レドックス系開始剤を用いる場合、過酸化物と還元剤との合計量は、仕込みラジカル重合性単量体100質量部に対して、通常0.001〜5質量部程度、好ましくは0.01〜1質量部である。
官能基含有ラジカル重合性単量体の使用量は、該ラジカル重合性単量体のグラフト量が、得られるグラフト共重合体中のゴム成分(グラフト共重合体のグラフト成分を除く主鎖成分)に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.01〜20質量%になるように制御されることが望ましい。このグラフト量が0.01質量%以上であれば、該グラフト共重合体をゴム組成物に含有させた場合、ゴム組成物の低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性の改良効果が発揮され、20質量%以下であれば、ゴム成分本来の特性があまり損なわれることがなく、またゴム組成物の加工性の悪化を抑制することができる。
なお、上記グラフト量は、下記のようにして算出した値である。
<グラフト量の算出>
得られたグラフト共重合体を石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出し、得られた抽出物を分析してラジカル重合性単量体及び/又はそのホモポリマー量を算出した。
グラフト量(質量%)={[(反応に用いたラジカル重合性単量体の質量)−(抽出物中のラジカル重合性単量体の質量)−(抽出物中のホモポリマーの質量)]/(グラフト共重合体中のゴム成分の質量)}×100
このようにして、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムに、リビングラジカルポリマーがグラフトしたグラフト共重合体をラテックスの形態で得ることができる。本発明方法により得られたグラフト共重合体は、ゲル分(トルエン不溶分)が少ないという特徴を有する。
本発明においては、グラフトされたリビングラジカルポリマーの数平均分子量は、通常5,000〜3,000,000程度、好ましくは10,000〜2,000,000である。また、該リビングラジカルポリマーを構成するラジカル重合性単量体単位を、官能基が導入されたものにすることができる。
従来リビングアニオン重合で得られたポリマーの活性末端を変性して、所定の官能基を導入することが行われているが、これに対し、本発明の方法では、得られるグラフト共重合体は、グラフト鎖のリビングラジカルポリマーを構成する単量体単位を官能基を有するものにし得ることから、ポリマー中の官能基の数は、従来のリビングアニオン重合で得られたポリマーの活性末端を変性したものに比べて、はるかに多くすることができる。したがって、当該グラフト共重合体は、ゴム組成物に含まれるカーボンブラックや無機充填材に対する相互作用が極めて高く、ゴム組成物に含有させた場合、該ゴム組成物に含まれるカーボンブラックや無機充填材の分散性が良好となり、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れるゴム組成物を与えることができる。
本発明はまた、前述した本発明の方法で得られたことを特徴とするグラフト共重合体ラテックスをも提供する。このグラフト共重合体ラテックスは、特にタイヤ用として好適である。
[グラフト共重合体]
本発明のグラフト共重合体は、上記グラフト共重合体ラテックスを、凝固及び乾燥してなるものである。
本発明のグラフト共重合体を得るための具体的な方法としては、前述の方法により作製したグラフト共重合体ラテックスを、凝固剤、例えばギ酸、硫酸などの酸や、塩化ナトリウムなどの塩を用いて凝固させ、洗浄したのち、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤーなどの乾燥機を用いて乾燥することで、固形状態のグラフト共重合体を得ることができる。
本発明のグラフト共重合体としては、ゴム組成物のゴム成分として用いる場合には、ゴム組成物に補強材などとして含まれるカーボンブラックや無機充填材に対して、高い相互作用が得られる観点から、ラジカル重合性単量体として、分子内にイソシアネート基やピリジル基などの窒素原子を含む官能基を有する単量体を、天然ゴムや合成ジエン系ゴムにリビングラジカルグラフト重合させたものであることが好ましい。上記ラジカル重合性単量体としては、前述したグラフト共重合体の製造方法において、好ましいラジカル重合性単量体として例示したものを用いることができる。本発明のグラフト共重合体は、特にタイヤ用として好適である。
本発明のグラフト共重合体は、リビングラジカルグラフト重合によって得られるため、通常のラジカルグラフト重合によって得られたグラフト共重合体に比べてトルエン不溶分(ゲル分)がはるかに少ない。例えば、グラフト量が3〜5質量%程度の場合、SBRを原料とする本発明のグラフト共重合体のトルエン不溶分は、通常数質量%程度である。これに対し、SBRを原料とし、通常のラジカルグラフト重合で得られるグラフト共重合体では、グラフト量が3〜5質量%程度の場合、トルエン不溶分は、通常10数質量%程度である。なお、トルエン不溶分の測定方法については、後で説明する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、上記本発明のグラフト共重合体を含有することを特徴とし、具体的には、(A)当該グラフト共重合体を含むゴム成分と、その100質量部に対して、(B)カーボンブラック及び/又は無機充填材を、5〜100質量部の割合で含むゴム組成物を挙げることができる。
((A)ゴム成分)
本発明のゴム組成物における(A)ゴム成分としては、当該グラフト共重合体を10質量%以上含むものが好ましく、50質量%以上含むものがより好ましい。ゴム成分中の当該グラフト共重合体の含有量が10質量%以上であれば、ゴム組成物は低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などの向上効果が発揮される。なお、当該グラフト共重合体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
この(A)ゴム成分において、当該グラフト共重合体と併用される他のゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム及びこれらの混合物などが挙げられる。また、その一部が多官能型、例えば四塩化スズ、四塩化珪素のような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
((B)カーボンブラック及び/又は無機充填材)
本発明のゴム組成物においては、(B)成分の補強用充填材として、カーボンブラックを含んでいてもよいし、無機充填材を含んでいてもよく、あるいはその両方を含んでいてもよい。
<カーボンブラック>
カーボンブラックとしては特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が用いられ、ヨウ素吸着量(IA)が60mg/g以上、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましいが、耐摩耗性に優れるHAF、N339、IISAF、ISAF、SAFが特に好ましい。IAはJIS K 6217−1:2001に準拠し、DBPはJIS K 6217−4:2001に準拠して測定される。
<無機充填材>
無機充填材は、シリカ及びシリカ以外の無機充填材に分けることができる。
シリカとしては特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填材として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。
このシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。この湿式シリカは、補強性、加工性、ウェットグリップ性、耐摩耗性のバランスなどの面から、BET法(ISO 5794/1)による窒素吸着比表面積(N2SA)が140〜280m2/gであることが好ましく、150〜250m2/gであることがより好ましい。好適な湿式シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)製のAQ、VN3、LP、NA等、デグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)等が挙げられる。
一方、シリカ以外の無機充填材としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物を挙げることができる。
mM1・xSiOy・zH2O ・・・・・(3)
(式中、M1は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、m、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。尚、上記式において、x、zがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物又は金属水酸化物となる。)
上記式で表される無機フィラーとしては、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が使用できる。また、上記一般式(3)中のM1がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
上記式で表されるこれらの無機フィラーは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明のゴム組成物においては、この(B)成分のカーボンブラック及び/又は無機充填材の含有量は、上記(A)ゴム成分100質量部に対して、5〜100質量部の範囲が好ましい。この含有量が5質量部以上であれば補強効果が発揮され、100質量部以下であれば加工性の低下を抑えることができる。該(B)成分のより好ましい含有量は10〜70質量部である。
本発明のゴム組成物においては、(B)成分として無機充填材を用いる場合には、その補強効果をさらに向上させる目的で、下記のシランカップリング剤を含有させることができる。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられるが、これらの中で補強性改善効果等の点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが好適である。
本発明のゴム組成物においては、上記シランカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。その含有量は、シランカップリング剤や無機充填材の種類などにより異なるが、無機充填材に対して、通常1〜20質量%の範囲で選定される。この量が少ないとカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、多いとゴム成分のゲル化を引き起こすおそれがある。カップリング剤としての効果及びゲル化防止などの観点から、このシランカップリング剤の好ましい配合量は、5〜15質量%の範囲である。
(他の任意成分)
本発明のゴム組成物は、硫黄架橋性であることが好ましく、加硫剤として硫黄が好適に用いられる。その使用量としては、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分(硫黄及び硫黄供与剤の硫黄分の合計量)を0.1〜10質量部配合することが好ましい。この範囲であれば、加硫ゴム組成物の必要な弾性率及び強度を確保すると共に低燃費性を得ることができるからである。この観点から、硫黄分を0.5〜5質量部配合することが更に好ましい。
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば硫黄以外の加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を含有させることができる。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜3.0質量部である。
また、本発明のゴム組成物で使用できる軟化剤として用いるプロセス油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)が悪化するのを抑制することができる。
更に、本発明のゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜6.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜5.0質量部である。
本発明のゴム組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び任意成分であるシランカップリング剤や他のゴム用配合剤を、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることによって調製することができる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、天然ゴムや合成ジエン系ゴムに、官能基含有ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させてなる、カーボンブラックや無機充填材に対して相互作用の高いグラフト共重合体を含むことにより、上記カーボンブラックや無機充填材の分散性が良好であって、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性などに優れている。したがって、本発明のゴム組成物は、特にタイヤ用に好適に用いられる。
[タイヤ]
本発明のタイヤは、前述した本発明のゴム組成物を、タイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。
具体的には、各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でタイヤの各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
上記タイヤ部材に特に制限はないが、トレッドに本発明のゴム組成物を用いることが好ましい。当該ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性に優れたものになる。また、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の空気、あるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られたグラフト共重合体の性状及びゴム組成物の物性を以下に示す方法により求めた。
<グラフト共重合体の性状>
(1)グラフト量
明細書本文記載の方法に従って求めた。
(2)トルエン不溶分
グラフト共重合体0.2gをトルエン20ml中に加えて、室温にて24時間放置したのち、日立工機社製遠心分離機「CP70G」を用い、ローター温度10℃、回転数35,000rpm、90分間の条件でトルエン不溶ゲル分を分離する。その後、分離したゲル分を、50℃にて真空乾燥したのち秤量し、用いたグラフト共重合体の質量に対する割合を求め、トルエン不溶分として百分率で示す。
<ゴム組成物の物性>
(3)ムーニー粘度
JIS K 6300−1:2001に準拠して、130℃にてムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定した。
(4)加硫ゴムの切断時引張応力(TSb)
ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、JIS K 6251:2004に準拠して引張試験を行い、切断時引張応力(TSb)を測定した。TSbの値が大きいほど、耐破壊特性が良好であることを示す。
(5)加硫ゴムの損失正接(tanδ)
ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、動歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定し、参考例3、参考例5のtanδを100として指数表示した。値が小さいほど、低発熱性(低ロス性)に優れることを示す。
製造例1 ジメチルジテルリド(DMeDT)の製造
金属テルル[Aldrich社製、商品名「Tellurium(−40mesh)]3.19g(25mmol)をテトラヒドロフラン(THF)25mlに懸濁させ、メチルリチウム[関東化学(株)製、ジエチルエーテル溶液]25ml(28.5mmol)を0℃でゆっくり加えた(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで攪拌した(10分間)。この反応溶液に塩化アンモニウム溶液20mlを室温で加え、1時間攪拌した。有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで3回抽出した。集めた有機層を芒硝で乾燥後、減圧濃縮し、黒紫色油状物2.69g(9.4mmol:収率75質量%)を得た。
製造例2 エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート(BTEE)の製造
金属テルル〔Aldrich製、商品名「Tellurium」(−40mesh)〕6.38g(50mmol)をTHF 50mlに懸濁させ、これにn−ブチルリチウム(Aldrich製、1.6Mヘキサン溶液)34.4ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート 10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物8.98g(収率59.5質量%)を得た。
製造例3 ジブチルジテルリド(DBDT)の製造
製造例1におけるメチルリチウムの代わりにブチルリチウムを等モル量用いることにより製造例1と同様にしてジブチルジテルリド(DBDT)を得た。
製造例4 エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート(MTEE)の製造
金属テルル〔Aldrich製、商品名:Tellurium(−40mesh)〕6.38g(50mmol)をTHF 50mlに懸濁させ、これにメチルリチウム(上記と同じ)52.9ml(1.04Mジエチルエーテル溶液、55mmol)を、室温でゆっくり滴下した(10分間)。この反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート 10.7g(55mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物6.53g(収率51質量%)を得た。
実施例1
ジメチルジテルリド(DMeDT)を用いたリビングラジカル2−イソシアナトエチルメタクリレート(2−IEM)グラフトSBRの製造
SBRラテックスとして「PCL/SBラテックス2108(JSR製、全固形分40質量%)」を500g、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いた2−イソシアナトエチルメタクリレート(Aldrich 製)20g(0.126mol、SBRの10質量%)を予め80mlの水と1.2gの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)に加えて乳化したものを420mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、製造例1で得られたジメチルジテルリド(DMeDT)を1.358g(5mmol、重合開始剤の5倍等量モル分)加え、その直後に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)164.21mg(1mmol)を加えて、60℃で6時間反応させることにより、グラフトSBRラテックスを得た。このラテックスに25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥して、実施例1のリビングラジカル2−1EMグラフトSBRを得た。
実施例2
エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート(BTEE)を用いたリビングラジカル2−IEMグラフトSBRの製造
実施例1において、ジメチルジテルリド(DMeDT)を、製造例2で得たエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート(BTEE)のAIBNの5倍等量モル分に変更した以外は実施例1と同様にリビングラジカル重合を行い、実施例2のリビングラジカル2−1EMグラフトSBRを得た。
実施例3
フェニル−t−ブチルニトロン(PBN)を用いたリビングラジカル2−IEMグラフトSBRの製造
実施例1において、ジメチルジテルリド(DMeDT)とAIBNを、フェニル−t−ブチルニトロン(PBN)の0.2gに変更した以外は実施例1と同様にリビングラジカル重合を行い、実施例3のリビングラジカル2−1EMグラフトSBRを得た。
実施例4
ATRP系重合制御剤を用いたリビングラジカル2−IEMグラフトSBRの製造
実施例1において、ジメチルジテルリド(DMeDT)とAIBNを、遷移金属化合物(CuBr2)0.63gと4,4'−ジピリジル0.38gと2−ブロモ酢酸エチル0.47gとの混合物に変更した以外は実例1と同様にリビングラジカル重合を行い、実施例4のリビングラジカル2−1EMグラフトSBRを得た。
実施例5
RAFT系重合制御剤を用いたリビングラジカル2−IEMグラフトSBRの製造
実施例1において、ジメチルジテルリド(DMeDT)を、ジベンジルトリチオカーボネート0.144gに変更した以外は実施例1と同様にリビングラジカル重合を行い、実施例5のリビングラジカル2−1EMグラフトSBRを得た。
実施例6
1,1−ジフェニルエチレン(DPE)を用いたリビングラジカル2−IEMグラフトSBRの製造
実施例1において、ジメチルジテルリド(DMeDT)を、1,1−ジフェニルエチレン(DPE)0.114g(0.63mmol)に変更した以外は実施例1と同様にリビングラジカル重合を行い、実施例6のリビングラジカル2−1EMグラフトSBRを得た。
比較例1
リビングラジカルではない2−IEMグラフトSBRの製造
SBRラテックスとして「PCL/SBラテックス2108(JSR製、全固形分40質量%)」を500g、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いた2−イソシアナトエチルメタクリレート(Aldrich 製)20g(0.126mol、SBRの10質量%)を予め80mlの水と1.2gの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)に加えて乳化したものを420mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)164.21mg(1mmol)を加え、60℃で6時間反応させることにより、グラフトSBRラテックスを得た。このラテックスに25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥して、比較例1の2−1EMグラフトSBRを得た。
参考例1
グラフトなしSBR(スチレン−ブタジエン共重合体)の製造
PCL(ペーパーコーティング用ラテックス)(商品名「PCL/SBラテックス2108(JSR製、全固形分40質量%)」に25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥してグラフトなしSBRを得た。
実施例7
DMeDTを用いたリビングラジカルα−メチルスチレン(α−MeSt)グラフトSBRの製造
SBRラテックスとして「PCL/SBラテックス2108(JSR製、全固形分40質量%)」を500g、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたα−メチルスチレン(α−MeSt)22.7gを予め80mlの水と1.2gの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)に加えて乳化したものを420mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、製造例1で得られたジメチルジテルリド(DMeDT)を1.358g(5mmol)加え、その直後に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)308.42mg(1mmol)(和光純薬製、商品名「V−70」)を加え、40℃で6時間反応させることにより、グラフトSBRラテックスを得た。このラテックスに25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥して、実施例7のリビングラジカルα−MeStグラフトSBRを得た。
比較例2
リビングラジカルではないα−MeStグラフトSBRの製造
SBRラテックスとして「PCL/SBラテックス2108(JSR製、全固形分40質量%)」を500g、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたα−メチルスチレン(α−MeSt)22.7gを予め80mlの水と1.2gの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)に加えて乳化したものを420mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)308.42mg(1mmol)(和光純薬製、商品名「V−70」)を加え、40℃で6時間反応させることにより、グラフトSBRラテックスを得た。このラテックスに25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥して、比較例2のα−MeStグラフトSBRを得た。
実施例8
DMeDTを用いたリビングラジカルスチレン(St)グラフトハイシスBRの製造
乾燥及び窒素置換された、ゴム詮付容積100mLのガラスびんに、以下の順番に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2質量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56mol/L)0.59mL、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ社製、商品名「PMAO」)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23mol/L)10.32mL、水素化ジイソブチルアルミ[関東化学(株)製]のヘキサン溶液(0.90mol/L)7.77mLを投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ[関東化学(株)製]のヘキサン溶液(0.95mol/L)1.45mLを加え室温で、時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.11mol/L(M)であった。次に、約900ミリリットル容積のゴム栓付きガラスびんを乾燥及び窒素置換し、乾燥精製された1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンを各々投入し、1,3-ブタジエン 12.5質量%のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次に、前記調製した触媒溶液 2.28mL(ネオジム換算0.025mmol)を投入し、50℃の温水浴中で1.0時間重合を行った。
次に、第1次変性剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランをヘキサン溶液(1.0mol/L)として、23.5当量(ネオジム対比)投入し、50℃で60分間処理した。続いて、ソルビタントリオレイン酸エステル[関東化学(株)製]を単体で1.2mL加えて、さらに50℃で1時間変性反応を行った後、重合系にイソプロパノール2mLを加えて反応を停止させてシス1,4結合含有量の高い変性ハイシスポリブタジエンゴム(変性ハイシスBR)のヘキサン溶液を得た。
この溶液を、BR濃度が50質量%になるまで室温にてヘキサンを揮発させ、その溶液100gに水350ml、乳化剤(エマルゲン1108、花王株式会社製)を3g(BR量の6質量%)加えて30分間室温にて撹拌し、乳化させた。その乳化溶液に、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたスチレン(関東化学製)5g(mol、BR量の10質量%)を予め20mlの水と0.3gの乳化剤(エマルゲン1108、花王株式会社製)に加えて乳化したものを130mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。
次に、製造例1で得られたジメチルジテルリド(DMeDT)を1.358g(5mmol、重合開始剤の5倍等量モル分)加え、その直後に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)41.05mg(0.25mmol)を加え、60℃で6時間反応させることにより、グラフトBRラテックスを得た。このラテックスに25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥して、実施例8のリビングラジカルStグラフトハイシスBRを得た。
比較例3
リビングラジカルではないStグラフトハイシスBRの製造
ジメチルジテルリド(DMeDT)を加えない以外は実施例8と同様にして比較例3のStグラフトハイシスBRを得た。
参考例2
グラフトなし変性ハイシスBR
実施例8で得られたシス1,4結合含有量の高い変性ハイシスポリブタジエンゴム(変性ハイシスBR)のヘキサン溶液を、ラジカルグラフト重合することなく、更に微量の2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(大内新興化学(株)製、商品名「ノクラックNS−5」)を含むイソプロパノール中で再沈殿を行ない、ドラム乾燥することによりグラフトなし変性ハイシスBRを得た。
実施例9
DMeDTを用いたリビングラジカルアクリル酸(AA)グラフト末端変性SBRの製法
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン 300g、1,3-ブタジエン 40g、スチレン 14g、ジテトラヒドロフリルプロパン 0.2mmol及びヘキサメチレンイミン(HMI)0.48mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)0.48mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、重合反応系に、変性剤として四塩化スズ 0.12mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間変性反応を行った。その後、重合反応系に、イソプロパノール0.5mLを加えて重合反応を停止させて、四塩化スズ末端変性SBRのシクロヘキサン溶液を得た。
このシクロヘキサン溶液をSBR濃度が50質量%になるまで室温にてヘキサンを揮発させ、その溶液100gに水350ml、乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)を3g(SBRの量の6質量%)加えて30分間室温にて撹拌し、乳化させた。その乳化溶液に、ラジカル重合性単量体として減圧蒸留したアクリル酸(AA、関東化学製)5g(0.07mol、SBR量の10質量%)を予め20mlの水と0.3gの乳化剤(エマルゲン1108、花王株式会社製)に加えて乳化したものを130mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。
次に、製造例1で得られたジメチルジテルリド(DMeDT)を0.679g(2.5mmol、重合開始剤の10倍等量モル分)加え、その直後に重合開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO、Aldrich製)60.55mg(0.25mmol)を加え、70℃で6時間反応させることにより、グラフトSBRラテックスを得た。このラテックスに25質量%食塩水、続いて1質量%の硫酸を注いでゴムを凝固させ、水洗、50℃で真空乾燥して、リビングラジカルAAグラフト末端変性SBRを得た。
比較例4
リビングラジカルではないAAグラフト末端変性SBRの製法(開始剤 BPO)
ジメチルジテルリド(DMeDT)を加えない以外は実施例9と同様にして比較例4のAAグラフト末端変性SBRを得た。
実施例10
DMeDTを用いたアクリルアミド(AAM)グラフト末端変性SBRの製法
実施例9において、ラジカル重合性単量体であるアクリル酸の代わりに再結晶で精製したアクリルアミド(AAM)5gを用い、更にジメチルジテルリド(DMeDT)0.679g(2.5mmol、重合開始剤の10倍等量モル分)を加えた直後で且つ重合開始剤投入前にテトラエチレンペンタミン(TEPA)19mgを加え、重合開始剤としてBPOの代わりにクメンハイドロパーオキサイド(CHP、Aldrich製)38mg(0.25mmol)を用い、重合温度を5℃にした以外は実施例9と同様にリビングラジカルグラフト重合を行い、リビングラジカルAAMグラフト末端変性SBRを得た。
比較例5
リビングラジカルではないAAMグラフト末端変性SBRの製法
ジメチルジテルリド(DMeDT)を加えない以外は実施例10と同様にして比較例4のAAMグラフト末端変性SBRを得た。
実施例11
DMeDTを用いたAAMグラフト末端変性SBRの製法
実施例9において、ラジカル重合性単量体であるアクリル酸の代わりに再結晶で精製したアクリルアミド(AAM)5gを用い、更にジメチルジテルリド(DMeDT)0.679g(2.5mmol、重合開始剤の10倍等量モル分)を加えた直後で且つ重合開始剤投入前にテトラメチルエチレンジアミン[TMEDA、東京化成工業(株)製]を0.06ml(0.403mmol)を加え、重合開始剤としてBPOのかわりに過硫酸アンモニウム(AP、Aldrich製)を57mg(0.25mmol)用い、重合温度を5℃にした以外は実施例9と同様にリビングラジカルグラフト重合を行い、リビングラジカルAAMグラフト末端変性SBRを得た。
比較例6
リビングラジカルではないAAMグラフト末端変性SBRの製法
ジメチルジテルリド(DMeDT)を加えない以外は実施例11と同様にして比較例6のAAMグラフト末端変性SBRを得た。
参考例3
グラフトなし四塩化スズ末端変性SBRの製法
実施例9で得られた四塩化スズ末端変性SBRのシクロヘキサン溶液を、ラジカルグラフト重合することなく更に常法に従って乾燥することによりグラフトなし四塩化スズ末端変性SBRを得た。
実施例12
BTEEを用いたリビングラジカル2−ビニルピリジン(2−VP)グラフトNRの製法
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60質量%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)を、予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いた2−ビニルピリジン(2−VP)1.7gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。
次に、製造例2で得られたBTEE38.0g(133mmol、tBuHpの10倍モル等量)を加え、その直後に重合開始剤としてtert−ブチルハイドロパーオキサイド(tBuHp)1.2g(13.3mmol)とテトラエチレンペンタミン(TEPA)1.2gとを加え、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
この変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して、実施例12のリビングラジカル2−VPグラフトNRを得た。
比較例7
リビングラジカルではない2−VPグラフトNRの製法
BTEEを加えない以外は実施例12と同様にして比較例7の2−VPグラフトNRを得た。
実施例13
BTEEを用いたリビングラジカルアリル−トリ−n−ブチルスズ(AllylSn)グラフトNRの製法
実施例12において、2−ビニルピリジン(2−VP)1.7gの代わりに、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたアリル−トリ−n−ブチルスズ(AllylSn)5.5gを加える以外は、実施例12と同様にしてリビングラジカルアリル−トリ−n−ブチルスズ(AllylSn)グラフトNRを得た。
比較例8
リビングラジカルではないアリル−トリ−n−ブチルスズ(AllylSn)グラフトNRの製法
BTEEを加えない以外は実施例13と同様にして比較例8のアリル−トリ−n−ブチルスズ(AllylSn)グラフトNRを得た。
実施例14
BTEEを用いたリビングラジカルγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)グラフトNRの製法
実施例12において、2−ビニルピリジン(2−VP)1.7gの代わりに、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)(Gelest社製、FW248.35)4.1gを加える以外は、実施例12と同様にしてリビングラジカルMPTMSグラフトNRを得た。
比較例9
リビングラジカルではないMPTMSグラフトNRの製法
BTEEを加えない以外は実施例14と同様にして比較例8のMPTMSグラフトNRを得た。
実施例15
BTEEを用いたラジカル重合性単量体仕込み量の多いリビングラジカル2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)グラフトNRの製法
実施例12において、乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)90mg、2−ビニルピリジン(2−VP)1.7g、tert−ブチルハイドロパーオキサイド(tBuHp)1.2g(13.3mmol)及びテトラエチレンペンタミン(TEPA)1.2gを、乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)1g、予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いた2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)30g、tBuHp 17g及びTEPA 17gに変更した以外は、実施例12と同様にして実施例15のHEMA仕込み量の多いリビングラジカルHEMAグラフトNRを得た。
比較例10
リビングラジカルでないHEMA仕込み量の多いHEMAグラフトNRの製法
BTEEを加えない以外は実施例15と同様にして比較例10のHEMAグラフトNRを得た。
実施例16
BTEEを用いたリビングラジカル2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)グラフトNRの製法
実施例12において、2−ビニルピリジン(2−VP)1.7gの代わりに、ラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたHEMA 2.1gを加える以外は、実施例12と同様にしてリビングラジカルHEMAグラフトNRを得た。
比較例11
リビングラジカルでないHEMAグラフトNRの製法
BTEEを加えない以外は実施例16と同様にして比較例11のHEMAグラフトNRを得た。
実施例17
BTEEを用いたリビングラジカルN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)グラフトNRの製法
実施例12において、2−ビニルピリジン(2−VP)1.7gの代わりに、ラジカル重合性単量体として減圧蒸留したDEAEMA 3.0gを加える以外は、上記実施例12と同様にしてリビングラジカルDEAEMAグラフトNRを得た。
比較例12
リビングラジカルではないDEAEMAグラフトNRの製法
BTEEを加えない以外は実施例17と同様にして比較例12のDEAEMAグラフトNRを得た。
実施例18
DMeDTを用いたリビングラジカル2−IEMグラフト変性NRの製法
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60質量%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め80mlの水と1.2mgの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)をラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いた2−イソシアナトエチルメタクリレート(2−IEM)48g(0.302mol、NRの8質量%)に加えて乳化したものを920mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。
次に、製造例1で得られたジメチルジテルリド(DMeDT)3.259g(12mmol、重合開始剤の5倍モル等量)を加え、その直後に重合開始剤としてAIBN394mg(2.4mmol)を加え、60℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
この変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して、実施例18のリビングラジカル2−IEMグラフトNRを得た。
比較例13
リビングラジカルでない2−IEMグラフト変性NRの製法
DMeDTを加えない以外は実施例18と同様にして比較例13のDEAEMAグラフトNRを得た。
実施例19
ジブチルジテルリド(DBDT)を用いたリビングラジカルアクリル酸(AA)グラフトNRの製法
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60質量%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め80mlの水と1.2mgの乳化剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン1108」)をラジカル重合性単量体として予めt−ブチルカテコール用インヒビターリムーバー(Aldrich製)を用いて重合禁止剤を取り除いたアクリル酸48g(0.667mol)に加えて乳化したものを920mlの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。
次に、製造例3で得られたジブチルジテルリド(DBDT)3.259g(12mmol、重合開始剤の5倍モル等量)を加え、その直後に重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製、商品名「V−70」)740mg(2.4mmol)を加え、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
この変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して、実施例19のリビングラジカルAAグラフトNRを得た。
比較例14
リビングラジカルではないAAグラフトNRの製法
DBDTを加えない以外は実施例19と同様にして比較例14のAAグラフトNRを得た。
実施例20
エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピネート(MTEE)を用いたリビングラジカルアクリル酸(AA)グラフトNRの製法
実施例19において、DBDTの代わりに製造例4で得られたエチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート(MTEE)3.091g(12mmol、重合開始剤の5倍モル等量)を用い、重合開始剤V−70の代わりに過硫酸アンモニウム(AP)547mg(2.4mmol)とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA、東京化成工業(株)製)を0.576ml(3.866mmol)を用い、重合温度を5℃にした以外は実施例19と同様にリビングラジカルグラフト重合を行い、リビングラジカルAAグラフトNRを得た。
比較例15
リビングラジカルではないAAグラフトNRの製法
MTEEを加えない以外は実施例20と同様にして比較例15のAAグラフトNRを得た。
参考例4
未変性の天然ゴム(NR)の製造
フィールドラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、該ラテックスを凝固させ、更に、得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化し、未変性の天然ゴム(NR)を得た。
以上のようにして得られた実施例1〜20及び比較例1〜15のグラフト共重合体について、グラフト量及びトルエン不溶分を評価した。また、参考例1〜4のゴムについてトルエン不溶分を評価した。
更に、実施例1〜20、比較例1〜15及び参考例1〜4のグラフト共重合体及びグラフトなしのゴムを用いて第2表に示す配合組成の78種類のゴム組成物を調製した。
各ゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定すると共に、各ゴム組成物を、145℃、33分間の条件で加硫し、加硫ゴムの切断時引張応力(TSb)及び損失正接(tanδ)を測定した。これらの結果を第1表に示す。
Figure 2010038835
[注]
ATRP: CuBr2/4,4'−ジピリジル/2−ブロモ酢酸エチル
RAFT: ジベンジルトリチオカーボネート
Figure 2010038835
[注]
1)グラフト仕込み量:グラフト共重合体中のゴム成分(グラフト共重合体のグラフト成分を除く主鎖成分)に対するラジカル重合性単量体の仕込み量(質量%)
2)SBR:スチレンブタジエン共重合体
3)変性NdBR:ネオジム系触媒変性ハイシスポリブタジエンゴム
4)変性SBR:末端変性スチレンブタジエン共重合体
5)NR:天然ゴム
Figure 2010038835
[注]
*1 実施例1〜20及び比較例1〜15のグラフト共重合体、並びに参考例1〜4のグラフトなしのゴム
*2 カーボンブラック:N339カーボンブラック(N2SA=92m2/g)
*3 シリカ:東ソー・シリカ(株)製、商標「ニプシールAQ」
*4 シランカップリング剤:デグサ社製、商標「Si69」、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
*5 老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*6 加硫促進剤DM:ジベンゾチアジルジスルフィド
*7 加硫促進剤DG:ジフェニルグアニジン
*8 加硫促進剤NS:N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
第1表から、以下に示すことが分かる。
リビングラジカルグラフト重合で得られた実施例1〜20のリビングラジカルグラフト共重合体はいずれも、それぞれ対応する通常のラジカルグラフト重合で得られた比較例1〜15のラジカルグラフト共重合体と比較して、トルエン不溶分(ゲル量)がはるかに少ない。
また、実施例1〜20のリビングラジカルグラフト共重合体はいずれも、それぞれ対応する比較例1〜15のラジカルグラフト共重合体と比較して、カーボンブラック配合組成物及びシリカ配合組成物のいずれにおいてもムーニー粘度が低下すると共に、損失正接(tanδ)が低下し、より優れた低発熱性を奏することとなり、切断時引張応力(TSb)が向上し耐破壊特性もより良好となった。
そして、実施例1〜20のリビングラジカルグラフト共重合体はいずれも、それぞれ対応する参考例1〜4グラフトなしのゴムと比較しても、損失正接(tanδ)が低下し、且つ切断時引張応力(TSb)が向上した。
本発明のグラフト共重合体の製造方法は、天然ゴムや合成ジエン系ゴムに、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させることにより、低発熱性及び耐摩耗性や破壊特性に優れるゴム組成物、ひいてはタイヤを与えることのできる変性ゴムを効率よく製造することができる。

Claims (21)

  1. 水性媒体中において、重合制御剤の存在下、天然ゴム及び/又は合成ジエン系ゴムからなるゴム成分に、ラジカル重合性単量体をリビングラジカルグラフト重合させることを特徴とする、グラフト共重合体の製造方法。
  2. 重合制御剤が、安定遊離ラジカル形成化合物、原子移動ラジカル重合剤、可逆付加−開裂連鎖移動剤、イニファータ、有機テルル化合物及び有機ヨウ素化合物の中から選ばれる請求項1に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  3. 重合制御剤が、水に対して不活性のものである請求項1又は2に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  4. 重合制御剤が、有機テルル化合物である請求項2又は3に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  5. 重合制御剤が、一般式(1)
    Figure 2010038835
    (式中、R1は炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R4は、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)
    で表される有機テルル化合物(I)及び/又は一般式(2)
    (R5Te)2 ・・・・・(2)
    (式中、R5は、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族へテロ環基を示し、2つのR5はたがいに同一であっても異なっていてもよい。)
    で表される有機テルル化合物(II)である請求項4に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  6. 重合制御剤と共に、重合開始剤を用いる請求項1〜5のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法。
  7. リビングラジカルグラフト重合させるラジカル重合性単量体が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子の中から選ばれる少なくとも一種を含む官能基を分子内に少なくとも一つ有する化合物又は芳香族ビニル化合物である請求項1〜6のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法。
  8. 官能基が、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アミノ基、イミノ基、スルホン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオカルボキシ基、カルボニル基、チオカルボニル基、ホルミル基、チオホルミル基、シラノール基、ヒドロカルビルオキシ基、ニトリル基、ピリジル基、アミド基、イミド基、イミダゾリル基、アンモニウム基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ケチミン基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキシカルボニル基(エステル結合)、カルボニルチオ基(チオエステル結合)、オキシ基(エーテル結合)、グリシドキシ基、スルフィド基(チオエーテル結合)、ジスルフィド基、メルカプト基、ヒドロカルビルチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、イミン残基、他の含窒素複素環式基、含酸素複素環式基、含硫黄複素環式基、ヒドロカルビルオキシシリル基、有機スズ基、塩素原子又は臭素原子である請求項7に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  9. 芳香族ビニル化合物が、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−tert−ブチル−α−メチルスチレン又はp−tert−ブチルスチレンである請求項7に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  10. ラジカル重合性単量体のグラフト量が、グラフト共重合体中のゴム成分に対し、0.1〜20質量%である請求項1〜9のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法。
  11. ラジカル重合性単量体のグラフト量が、グラフト共重合体中のゴム成分に対し、0.5〜10質量%である請求項10に記載のグラフト共重合体の製造方法。
  12. リビングラジカルグラフト重合が、界面活性剤及び/又は分散剤の存在下で行われる請求項1〜11のいずれかに記載のグラフト共重合体の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の方法で得られたことを特徴とするグラフト共重合体ラテックス。
  14. タイヤ用である請求項13に記載のグラフト共重合体ラテックス。
  15. 請求項13又は14に記載のグラフト共重合体ラテックスを、凝固及び乾燥してなるグラフト共重合体。
  16. タイヤ用である請求項15に記載のグラフト共重合体。
  17. 請求項15又は16に記載のグラフト共重合体を含有することを特徴とするゴム組成物。
  18. タイヤ用である請求項17に記載のゴム組成物。
  19. (A)グラフト共重合体を含むゴム成分と、その100質量部に対して、(B)カーボンブラック及び/又は無機充填材を、5〜100質量部の割合で含む請求項17又は18に記載のゴム組成物。
  20. 無機充填材に対し、シランカップリング剤を1〜20質量%の割合で含む請求項19に記載のゴム組成物。
  21. 請求項17〜20のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とするタイヤ。
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