JP5121300B2 - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関し、特に低発熱性に優れる上、熱的安定性を向上させることが可能なゴム組成物に関するものである。
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなりつつあり、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、低ロス性(低発熱性)に優れたゴム組成物が求められている。また、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物においては、低ロス性に加え、加硫戻りに対する耐性や高温領域(約200℃)での耐熱性等の熱的安定性に優れることが求められる。
一方、天然ゴムは、その優れた物理特性を生かして種々の用途に使用されており、例えば天然ゴムラテックスにビニル系単量体を添加してグラフト重合する技術が知られている(特許文献1〜4参照)。しかしながら、この技術で得られたグラフト化天然ゴムを用いたゴム組成物は、発熱性を改良することはできるものの、加硫戻りに対する耐性や高温領域での耐熱性等の熱的安定性に関し、未変性の天然ゴムを用いた場合と同程度の物理特性しか得られないという問題があった。
特開平5−287121号公報 特開平6−329702号公報 特開平9−25468号公報 特開2002−138266号公報
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、低発熱性に優れる上、熱的安定性を大幅に向上させることが可能なゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物を用いた、低発熱性と熱的安定性が両立された空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、極性基含有単量体を天然ゴム分子にグラフト重合させて得た変性天然ゴムに対し、特定の重量平均分子量及びビニル結合量を有する低分子量共役ジエン系重合体を配合することで、得られるゴム組成物の低発熱性及び熱的安定性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のゴム組成物は、天然ゴムラテックスに、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を有する極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムに対し、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜200,000で且つ共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%以上の低分子量共役ジエン重合体を配合してなることを特徴とする。
本発明のゴム組成物においては、前記低分子量共役ジエン重合体の配合量が、前記変性天然ゴム100質量部に対して1〜60質量部であることが好ましい。
また、本発明の空気入りタイヤは、上記のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。
本発明によれば、極性基含有単量体を天然ゴム分子にグラフト重合させて得た変性天然ゴムに対し、特定の重量平均分子量及びビニル結合量を有する低分子量共役ジエン系重合体を配合することで、低発熱性に優れる上、熱的安定性を大幅に向上させることが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物を適用した、低発熱性と熱的安定性が両立された空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムに対し、未変性又は変性剤で変性された重合体であって、未変性又は変性前のゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜200,000で且つ共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%以上の低分子量共役ジエン系重合体を配合してなることを特徴とする。
本発明のゴム組成物において、上記極性基含有単量体をグラフト重合により天然ゴム分子に導入した変性天然ゴムは、未変性の天然ゴムに比べてカーボンブラックやシリカ等の充填剤に対する親和性が高い。そのため、上記変性天然ゴムをゴム成分として用いたゴム組成物は、ゴム成分に対する充填剤の分散性が高く、充填剤の補強効果が十分に発揮されて、低ロス性を大幅に向上させている。一方、ゴム成分として天然ゴム等の主鎖に二重結合を含むジエン系ゴムは、高温で切断され易く、熱的安定性が低い。しかしながら、本発明のゴム組成物において、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が高い低分子量共役ジエン系重合体は、上記変性天然ゴムと相溶性が高いため、ビニル部のゲル化を起こす。このため、高温にさらされ切断した架橋硫黄が、上記低分子量共役ジエン系重合体と再架橋を形成する。従って、上記低分子量共役ジエン系重合体と架橋硫黄との再架橋により、熱によるゴム成分の分子量の低下が抑えられ、ヒステリシスロスの悪化や弾性率の低下を防止することができる。これによって、本発明のゴム組成物は、低発熱性と高温領域での熱的安定性とを両立させることができる。また、該ゴム組成物をタイヤ、特にタイヤのトレッドに用いることで、転がり抵抗を大幅に低減しつつ、熱的安定性を著しく改善することができる。
上記変性天然ゴムの製造に用いる天然ゴムラテックスとしては、特に限定されず、例えば、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱タンパク質ラテックス、及びこれらを組み合せたもの等を用いることができる。
上記天然ゴムラテックスに添加される極性基含有単量体は、分子内に少なくとも一つの極性基を有し、天然ゴム分子とグラフト重合できる限り特に制限されるものでない。ここで、該極性基含有単量体は、天然ゴム分子とグラフト重合するために、分子内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましく、極性基含有ビニル系単量体であることが好ましい。上記極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基及びアルコキシシリル基等を好適に挙げることができる。これら極性基を含有する単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記アミノ基を含有する単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を含有する重合性単量体が挙げられる。該アミノ基を有する重合性単量体の中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。これらアミノ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
ここで、第1級アミノ基含有単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、4-ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、第2級アミノ基含有単量体としては、(1)アニリノスチレン、β-フェニル-p-アニリノスチレン、β-シアノ-p-アニリノスチレン、β-シアノ-β-メチル-p-アニリノスチレン、β-クロロ-p-アニリノスチレン、β-カルボキシ-p-アニリノスチレン、β-メトキシカルボニル-p-アニリノスチレン、β-(2-ヒドロキシエトキシ)カルボニル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-p-アニリノスチレン、β-ホルミル-β-メチル-p-アニリノスチレン、α-カルボキシ-β-カルボキシ-β-フェニル-p-アニリノスチレン等のアニリノスチレン類、(2)1-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン、3-アニリノフェニル-2-メチル-1,3-ブタジエン、1-アニリノフェニル-2-クロロ-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-メチル-1,3-ブタジエン、2-アニリノフェニル-3-クロロ-1,3-ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類、(3)N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN-モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
更に、第3級アミノ基含有単量体としては、N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ここで、上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。一方、上記N,N-ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
上記ニトリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。これらニトリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ヒドロキシル基を含有する単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等が挙げられる。ここで、ヒドロキシル基含有単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数は、例えば、2〜23である)のモノ(メタ)アクリレート類;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、m-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、p-ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が特に好ましい。ここで、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸等のエステルが特に好ましい。これらヒドロキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記カルボキシル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;フタル酸、コハク酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。これらカルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記エポキシ基を含有する単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらエポキシ基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記含窒素複素環基を含有する単量体において、該含窒素複素環としては、ピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、該含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を含有する単量体としては、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。これら含窒素複素環基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記アルコキシシリル基を含有する単量体としては、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6-トリメトキシシリル-1,2-ヘキセン、p-トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
本発明においては、上記極性基含有単量体の天然ゴム分子へのグラフト重合を、乳化重合で行う。ここで、該乳化重合においては、一般的に、天然ゴムラテックスに水及び必要に応じて乳化剤を加えた溶液中に、上記極性基含有単量体を加え、更に重合開始剤を加えて、所定の温度で撹拌して極性基含有単量体を重合させることが好ましい。なお、上記極性基含有単量体の天然ゴムラテックスへの添加においては、予め天然ゴムラテックス中に乳化剤を加えてもよいし、極性基含有単量体を乳化剤で乳化した後に天然ゴムラテックス中に加えてもよい。なお、天然ゴムラテックス及び/又は極性基含有単量体の乳化に使用できる乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
上記重合開始剤としては、特に制限はなく、種々の乳化重合用の重合開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に制限はない。一般に用いられる重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低下させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いることが好ましい。かかるレドックス系重合開始剤において、過酸化物と組み合せる還元剤としては、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。レドックス系重合開始剤における過酸化物と還元剤との好ましい組み合せとしては、tert-ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組み合せ等が挙げられる。
上記変性天然ゴムにカーボンブラックやシリカ等の充填剤を配合して、ゴム組成物の加工性を低下させることなく低ロス性及び耐摩耗性を向上させるには、各天然ゴム分子に上記極性基含有単量体が少量且つ均一に導入されることが重要であるため、上記重合開始剤の添加量は、上記極性基含有単量体に対し1〜100mol%の範囲が好ましく、10〜100mol%の範囲が更に好ましい。
上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させることで、天然ゴム分子に上記極性基含有単量体がグラフト共重合した変性天然ゴムラテックスが得られる。また、該変性天然ゴムラテックスを凝固させ、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することで変性天然ゴムが得られる。ここで、変性天然ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。
上記変性天然ゴムラテックス及び変性天然ゴムにおいて、上記極性基含有単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%の範囲が好ましく、0.01〜1.0質量%の範囲が更に好ましい。極性基含有単量体のグラフト量が0.01質量%未満では、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を十分に改良できないことがある。また、極性基含有単量体のグラフト量が5.0質量%を超えると、粘弾性、S−S特性(引張試験機における応力−歪曲線)等の天然ゴム本来の物理特性を大きく変えてしまい、天然ゴム本来の優れた物理特性が損なわれると共に、ゴム組成物の加工性が大幅に悪化するおそれがある。
一方、本発明のゴム組成物の低分子量共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%以上であることを要し、50%〜90%であることが好ましく、60%〜80%であることが更に好ましい。共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%未満では、ゴム組成物の熱的安定性の改良効果が小さく、一方、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が高くなり過ぎ、例えば、90%を超えてしまうと、ゴム組成物のガラス転移点(Tg)が上昇し、低温領域での物理特性が悪化する場合がある。
上記低分子量共役ジエン系重合体は、未変性又は変性剤で変性された重合体であって、未変性又は変性前のゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜200,000であることを要し、20,000〜180,000であることが好ましく、40,000〜150,000であることが更に好ましい。ここで、ポリスチレン換算重量平均分子量が2,000未満では、ヒステリシスロスが高まり、一方、200,000を超えると、ゴム組成物の粘度が高くなり加工性が低下する。
上記低分子量共役ジエン系重合体としては、特定の重量平均分子量及び共役ジエン化合物部分のビニル結合量を有する限り特に限定されないが、共役ジエン化合物の単独重合体、又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体が好ましい。ここで、単量体としての共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。一方、単量体としての芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。従って、上記低分子量共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ポリブタジエンが更に好ましい。なお、これら単量体は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記低分子量共役ジエン系重合体は、分子中に少なくとも一つの官能基を有するのが好ましく、ここで、該官能基としては、カーボンブラックやシリカ等の充填剤と親和性を有する官能基が好ましく、窒素を含む官能基、スズを含む官能基及びケイ素を含む官能基が更に好ましい。かかる低分子量共役ジエン系重合体を変性して得た一つ以上の官能基を有する重合体をゴム組成物に配合することで、貯蔵弾性率(G')を更に向上させつつ、損失正接(tanδ)を更に低減することができる。
上記低分子量共役ジエン系重合体は、特に制限されず、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体である共役ジエン化合物を単独で、又は単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との混合物を重合して得ることができるが、該低分子量共役ジエン系重合体の分子中に少なくとも一つの官能基を導入する場合においては、(1)単量体を重合開始剤を用いて(共)重合させ、重合活性部位を有する(共)重合体を生成させた後、該重合活性部位を各種変性剤で変性する方法や、(2)単量体を官能基を有する重合開始剤を用いて(共)重合させる方法で得ることができる。
上記低分子量共役ジエン系重合体の合成に用いる重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が更に好ましい。なお、重合開始剤として有機リチウム化合物を用いた場合、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とは、アニオン重合で重合される。重合開始剤としてヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である重合体が得られ、該重合体は、変性剤で変性することなく、本発明における少なくとも一つの官能基を有する低分子量共役ジエン系重合体として用いることができる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられ、これらの中でも、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。
一方、上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられ、これらの中でも、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが特に好ましい。
上記重合開始剤を用いて、共役ジエン系重合体を製造する方法としては、上述のとおり、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体を重合させることで該重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、(共)重合体の共役ジエン化合物部分のミクロ構造を制御することができ、より具体的には、(共)重合体の共役ジエン化合物部分のビニル結合量を制御したり、共重合体中の共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とをランダム化する等の作用を有する。上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、重合開始剤1モル当り0.01〜100モル当量の範囲が好ましい。
上記アニオン重合は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲が更に好ましい。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を併用する場合、単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含有率は、目的とする共重合体の芳香族ビニル化合物量に応じて適宜選択することができる。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。
上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うことが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧することが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いることが好ましい。
更に、上記重合活性部位を有する(共)重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、窒素含有化合物、ケイ素含有化合物及びスズ含有化合物が好ましい。この場合、変性反応により、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基又はスズ含有官能基を導入することができる。
上記変性剤として用いることができる窒素含有化合物は、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有することが好ましい。該変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物,4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
また、上記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらケイ素含有化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該ケイ素含有化合物のの部分縮合物も用いることができる。
更に、上記変性剤としては、下記式(I):
1 aZXb ・・・ (I)
[式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0〜3で、bは1〜4で、但し、a+b=4である]で表されるカップリング剤も好ましい。式(I)のカップリング剤で変性することで、重合体(B)の耐コールドフロー性を改良することができる。なお、式(I)のカップリング剤で変性して得られる重合体(B)は、少なくとも一種のスズ−炭素結合又はケイ素−炭素結合を有する。
式(I)のR1として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、式(V)のカップリング剤として、具体的には、SnCl4、R1SnCl3、R1 2SnCl2、R1 3SnCl、SiCl4、R1SiCl3、R1 2SiCl2、R1 3SiCl等が好ましく、SnCl4及びSiCl4が特に好ましい。
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、(共)重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲が更に好ましい。
本発明においては、上記低分子量ジエン系重合体を上記変性天然ゴムと別々に用いて配合してもよいし、上記低分子量ジエン系重合体を上記変性天然ゴムと予めブレンドされた混合物として用いてもよい。
本発明のゴム組成物においては、上記変性天然ゴム100質量部に対して、上記低分子量ジエン系重合体を1〜60質量部の割合で配合することが好ましい。変性天然ゴム100質量部に対する低分子量ジエン系重合体の配合量が1質量部未満では、ゴム組成物の作業性が悪化し、60質量部を超えると、加硫ゴムの破壊特性が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、マトリクスのゴム成分として上記変性天然ゴムを使用することを要するが、該変性天然ゴムに一般的なゴム成分をブレンドすることができ、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体等をブレンドすることができる。
本発明のゴム組成物は、上記変性天然ゴムを用いたことを特徴とし、更に充填剤を含有することが好ましい。ここで、充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、上記変性天然ゴム100質量部に対して5〜100質量部の範囲が好ましく、10〜70質量部の範囲が更に好ましい。充填剤の配合量が5質量部未満では、充分な補強性が得られない場合があり、100質量部を超えると、加工性が悪化する場合がある。ここで、充填剤としては、カーボンブラック及びシリカが好ましい。なお、カーボンブラックとしては、GPF,FEF,SRF,HAF,ISAF,SAFグレードのものが好ましく、HAF,ISAF,SAFグレードのものが更に好ましい。一方、シリカとしては、湿式シリカ及び乾式シリカ等が好ましく、湿式シリカが更に好ましい。これら補強性の充填剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
本発明のゴム組成物には、上記変性天然ゴム、低分子量ジエン系重合体、一般的なゴム成分、充填剤の他に、例えば、軟化剤、老化防止剤、シランカップリング剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等のゴム工業界で通常使用される添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。上記ゴム組成物は、上記変性天然ゴムに、上記低分子量ジエン系重合体と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とし、上記ゴム組成物をトレッドに用いることが好ましい。上記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低発熱性及び熱的安定性に優れる。なお、本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<変性天然ゴムの合成>
(天然ゴムラテックスの変性反応工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、これらを窒素置換しながら常温で30分間撹拌した。次に、重合開始剤としてtert-ブチルハイドロパーオキサイド1.2gとテトラエチレンペンタミン1.2gとを加え、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
(凝固及び乾燥工程)
上記変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムを得た。このようにして得られた変性天然ゴムの質量から、単量体として加えたN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が100%であることが確認された。また、該変性天然ゴムを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を試みたが、抽出物を分析したところホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。従って、得られた変性天然ゴムにおける単量体のグラフト量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.5質量%である。
次に、以下の方法で重合体A〜Eを合成し、得られた重合体のビニル結合量及び重量平均分子量(Mw)を下記の方法で測定した。
(1)ビニル結合量
合成された重合体のブタジエン部分のビニル結合量は、赤外法で分析した。
(2)重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、各重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
<重合体Dの合成>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロへキサン300g、1,3-ブタジエン40g、ジテトラヒドロフリルプロパン0.66mmolを注入し、更にn-ブチルリチウム(n-BuLi)1.32mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して重合体Dを得た。分析値を表1に示す。
<重合体A〜C及びEの合成>
重合開始時の1,3-ブタジエン及びジテトラヒドロフリルプロパンの仕込み量、並びにn-ブチルリチウムの使用量を変えた他は、上記重合体Dと同様にして重合体A〜C及びEを合成した。分析値を表1に示す。
Figure 0005121300
得られた変性天然ゴム及び重合体A〜Eを用いて、表2に示す配合処方のゴム組成物を常法に従って調製し、該ゴム組成物の熱的安定性(加硫戻りに対する耐性)を下記の方法により測定し、更に、通常の条件で分間加硫して得た加硫ゴムに対し、発熱性及び熱的安定性(耐熱性)を下記の方法により測定した。結果を表3に示す。
Figure 0005121300
*1 上記の方法で合成した重合体A〜E又はスピンドルオイル,使用した重合体の種類を表3に示す.
*2 N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*3 N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
(3)熱的安定性(加硫戻りに対する耐性)
レオメーターを用いて、200℃でゴム組成物のトルクを測定し、トルクの最大値と一定時間後のトルクとの差を求めた。比較例1のゴム組成物のトルクの差の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、熱的安定性(加硫戻りに対する耐性)に優れることを示す。
(4)熱的安定性(耐熱性)
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、温度200℃でtanδを測定し、比較例1のゴム組成物のtanδを100として指数表示した。指数値が大きい程、耐熱性に優れることを示す。
(5)発熱性
レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて、温度50℃でtanδを測定し、比較例1のゴム組成物のtanδを100として指数表示した。指数値が小さい程、低発熱性に優れることを示す。
Figure 0005121300
表3から、スピンドルオイルに代えて、重量平均分子量が2,000〜200,000で且つ共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%以上の重合体C〜Eを用いた実施例1〜3のゴム組成物は、スピンドルオイルを用いた比較例1のゴム組成物と比べて、低発熱性が同程度に優れる上、加硫戻りに対する耐性及び耐熱性の熱的安定性が大幅に向上していることが分かる。一方、比較例2〜3のゴム組成物は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%未満であるため、加硫戻りに対する耐性及び耐熱性の熱的安定性の改良効果が得られないことが分かる。

Claims (3)

  1. 天然ゴムラテックスに、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を有する極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムに対し、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜200,000で且つ共役ジエン化合物部分のビニル結合量が40%以上の低分子量共役ジエン重合体を配合してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記低分子量共役ジエン重合体の配合量が、前記変性天然ゴム100質量部に対して1〜60質量部であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
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