(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図1乃至図7を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る塗布装置1は、塗布対象物である基板2を収容する基板収容部3と、基板2に対してインク等の溶液(第1の溶液)を複数の液滴として噴射し、基板2上に各液滴を塗布する液滴噴射部としての液滴噴射モジュール4と、塗布後の基板2に対して減圧乾燥を行う減圧乾燥部としての減圧乾燥モジュール5と、減圧乾燥済の基板2に対して再溶解及び再乾燥を行う復潤乾燥部としての復潤乾燥モジュール6と、再溶解及び再乾燥済の基板2である塗布体2aを収容する塗布体収容部7と、それらの基板収容部3、液滴噴射モジュール4、減圧乾燥モジュール5、復潤乾燥モジュール6及び塗布体収容部7の各間の基板搬送を行う搬送部8とを備えている。
基板収容部3は、複数の基板2を収容する階層構造の収容棚3aを備えている。この収容棚3aは、架台3b上に着脱可能に取り付けられている。このような基板収容部3は、収容棚3aの各段に一枚ずつ載置することにより複数の基板2を収容している。なお、収容棚3a内の基板2は搬送部8により液滴噴射モジュール4に搬送される。
液滴噴射モジュール4は架台4c上に設けられており、基板2に向けてインクの液滴を噴射し塗着させるインク塗布ボックス4aと、インク塗布ボックス4aにインクを供給するインク供給ボックス4bとを備えている。インク塗布ボックス4aは、液滴を噴射する複数の液滴噴射ヘッドFを具備している。このような液滴噴射モジュール4は、各液滴噴射ヘッドFにより、インク供給ボックス4bから送液されたインクを液滴(インク滴)化して噴射し、基板2の表面に所定のドットパターンを塗着する。インク塗布ボックス4aの内部は、湿度が一定に、例えば70%程度に保たれている。これにより、基板2の塗布途中及び基板2の搬送途中に、基板2上に着弾した各液滴が乾燥してしまうことを抑止する。塗布済の基板2は、搬送部8により液滴噴射モジュール4から減圧乾燥モジュール5に搬送される。
減圧乾燥モジュール5は、塗布済の基板2を収容する真空チャンバ等の収容室5aと、その収容室5a内の気体を排気する排気部5bとを備えている。この減圧乾燥モジュール5は架台5c上に設けられている。このような減圧乾燥モジュール5は、排気部5bにより収容室5a内の気体を排気して収容室5a内を減圧し、収容室5a内に収容した塗布済の基板2上の各液滴の溶媒を蒸発させる。これにより、基板2上の各液滴が乾燥し、溶質とわずかな溶媒成分で構成される残留物が基板2上に残る。乾燥済の基板2は、搬送部8により減圧乾燥モジュール5から復潤乾燥モジュール6に搬送される。
復潤乾燥モジュール6は架台6e上に設けられており、基板2を保持して移動させる基板移動機構6aと、移動する基板2の塗布面に対して溶解用気体を吹き付ける溶解吹付部6bと、その溶解吹付部6bより基板2の移動方向の下流側に設けられ、移動する基板2上の塗布面に対して乾燥気体を吹き付ける乾燥吹付部6cと、溶解吹付部6bと乾燥吹付部6cとの間の気体を排気する排気部6dとを備えている。復潤乾燥モジュール6は、基板移動機構6aにより基板2を移動させながら、溶解吹付部6bにより基板2の塗布面に溶解用気体を吹き付け、その後、乾燥吹付部6cにより基板2の塗布面に乾燥気体を吹き付ける。これにより、減圧乾燥によって各液滴が乾燥し、基板2上に残留した各残留物(第1の溶液の残留物の群)は、溶解用気体に含まれている溶媒成分により再溶解して複数の液滴物(第2の溶液の液滴の群)となり、それらの液滴物(塗着体)が乾燥気体により再乾燥し、基板2上に残る複数の溶質物の群体となる。ここで、復潤とは、溶媒の付与により残留物である溶質の流動性を回復させることであり、溶質や溶媒の種類を問わない。溶解用気体は残留物を溶解可能な溶媒を成分として含む気体であり、乾燥気体は液滴物中に取り込まれた溶媒を乾燥させる気体である。再溶解及び再乾燥済の基板2は搬送部8により復潤乾燥モジュール6から塗布体収容部7に搬送される。
塗布体収容部7は、再溶解及び再乾燥済の基板2である塗布体2aを収容する階層構造の収容棚7aを有している。この収容棚7aは架台7b上に着脱可能に取り付けられている。このような塗布体収容部7は、搬送部8により復潤乾燥モジュール6から搬送された塗布体2aを収容棚7aの各段に一枚ずつ載置することにより収容する。
搬送部8は、上下方向に移動可能な昇降軸8aと、その昇降軸8aの上端部に連結されて水平面(X−Y平面)内で回動可能なリンク8b、8cと、そのリンク8b、8cの先端部に取り付けられたアーム8dとを有している。この搬送部8は、昇降軸8aの昇降及びリンク8b、8cの回動を行い、基板収容部3の収容棚3aから基板2を取り出して液滴噴射モジュール4に搬送し、さらに、塗布済の基板2を液滴噴射モジュール4から減圧乾燥モジュール5に搬送して収容室5a内に載置し、加えて、減圧乾燥済の基板2を減圧乾燥モジュール5内から取り出して復潤乾燥モジュール6に載置し、最後に、再溶解及び再乾燥済の基板2である塗布体2aを塗布体収容部7に搬送して収容棚7a内に載置する。複数の基板2を搬送する場合には、各々の基板2が前述の順番で場所を変運するように一枚ずつ取り扱うように制御される。このような搬送部8の内部は、湿度が一定に、例えば70%程度に保たれている。これにより、基板2の搬送途中に、基板2上の各液滴が乾燥してしまうことを防止することができる。
次いで、液滴噴射モジュール4が備えるインク塗布ボックス4a及びインク供給ボックス4bについて説明する。
図2に示すように、インク塗布ボックス4aの内部には、基板2を保持してX軸方向及びY軸方向に移動させる基板移動機構11と、液滴噴射ヘッドFをそれぞれ有する3つのインクジェットヘッドユニット12と、それらのインクジェットヘッドユニット12を一体にX軸方向に移動させるユニット移動機構13と、各液滴噴射ヘッドFを清掃するヘッドメンテナンスユニット14と、インクを収容する3つのインクバッファタンク15とが設けられている。
基板移動機構11は、Y軸方向ガイド板16、Y軸方向移動テーブル17、X軸方向移動テーブル18及び基板保持テーブル19が積層されて構成されている。これらのY軸方向ガイド板16、Y軸方向移動テーブル17、X軸方向移動テーブル18及び基板保持テーブル19は平板状に形成されている。
Y軸方向ガイド板16は、架台4cの上面に固定されて設けられている。このY軸方向ガイド板16の上面には、複数のガイド溝16aがY軸方向に沿って設けられている。これらのガイド溝16aが、Y軸方向にY軸方向移動テーブル17を案内する。
Y軸方向移動テーブル17は、各ガイド溝16aにそれぞれ係合する複数の突起部(図示せず)を下面に有しており、Y軸方向ガイド板16の上面にY軸方向に移動可能に設けられている。また、Y軸方向移動テーブル17の上面には、複数のガイド溝17aがX軸方向に沿って設けられている。このようなY軸方向移動テーブル17は、送りネジと駆動モータとを用いた送り機構(図示せず)により各ガイド溝16aに沿ってY軸方向に移動する。
X軸方向移動テーブル18は、各ガイド溝17aに係合する突起部(図示せず)を下面に有しており、Y軸方向移動テーブル17の上面にX軸方向に移動可能に設けられている。このX軸方向移動テーブル18は、送りネジと駆動モータとを用いた送り機構(図示せず)により各ガイド溝17aに沿ってX軸方向に移動する。
基板保持テーブル19は、X軸方向移動テーブル18の上面に固定されて設けられている。この基板保持テーブル19は、基板2を吸着する吸着機構(図示せず)を備えており、その吸着機構により上面に基板2を固定して保持する。吸着機構としては、例えばエアー吸着機構等を用いる。なお、基板保持テーブル19は、X軸方向移動テーブル18と共にY軸方向に往復移動し、基板2に対してインク滴の塗布を行う塗布位置(図1及び図2中の基板2の位置)と、基板保持テーブル19上に基板2を載せ降ろしする載置位置とに移動する。
ユニット移動機構13は、架台4cの上面に立設された一対の支柱20と、それらの支柱20の上端部間に連結されてX軸方向に延出するX軸方向ガイド板21と、そのX軸方向ガイド板21にX軸方向に移動可能に設けられ各インクジェットヘッドユニット12を支持するベース板22とを有している。
一対の支柱20は、X軸方向においてY軸方向ガイド板16を挟むように設けられている。また、X軸方向ガイド板21の前面には、ガイド溝21aがX軸方向に沿って設けられている。このガイド溝21aが、X軸方向にベース板22を案内する。ベース板22は、ガイド溝21aに係合する突起部(図示せず)を背面に有しており、X軸方向ガイド板21にX軸方向に移動可能に設けられている。このベース板22は、送りネジと駆動モータとを用いた送り機構(図示せず)によりガイド溝21aに沿ってX軸方向に移動する。このようなベース板22の前面には、3つのインクジェットヘッドユニット12が取り付けられている。
各インクジェットヘッドユニット12は、ベース板22に垂設されており、それぞれ液滴噴射ヘッドFを具備している。これらの液滴噴射ヘッドFは、各インクジェットヘッドユニット12の先端にそれぞれ着脱可能に設けられている。液滴噴射ヘッドFは、貫通孔である複数のノズルを有し、それらの各ノズルから液滴を基板2に向けて噴射する。このようなインクジェットヘッドユニット12には、基板2面に対して垂直方向、すなわちZ軸方向に液滴噴射ヘッドFを移動させるZ軸方向移動機構12aと、液滴噴射ヘッドFをY軸方向に移動させるY軸方向移動機構12bと、液滴噴射ヘッドFをθ方向に回転させるθ方向回転機構12cとが設けられている。これにより、液滴噴射ヘッドFは、Z軸方向及びY軸方向に移動可能であり、θ軸方向に回転可能である。
ヘッドメンテナンスユニット14は、各インクジェットヘッドユニット12の移動方向の延長線上であってY軸方向ガイド板16から離反させて配設されている。このヘッドメンテナンスユニット14は、各インクジェットヘッドユニット12の液滴噴射ヘッドFを清掃する。なお、ヘッドメンテナンスユニット14は、各インクジェットヘッドユニット12の液滴噴射ヘッドFがヘッドメンテナンスユニット14に対向する待機位置に停止した状態で、各液滴噴射ヘッドFを自動的に清掃する。
インクバッファタンク15は、その内部に貯留したインクの液面と液滴噴射ヘッドFのノズル面との水頭差(水頭圧)を利用し、ノズル先端のインクの液面(メニスカス)を調整する。これにより、インクの漏れ出しや吐出不良が防止されている。
インク供給ボックス4bの内部には、インクをそれぞれ収容する複数のインクタンク23が着脱可能に取り付けられている。各インクタンク23は、供給パイプ24によりインクバッファタンク15を介してそれぞれ液滴噴射ヘッドFに接続されている。すなわち、液滴噴射ヘッドFは、インクタンク23からインクバッファタンク15を介してインクの供給を受ける。
架台4cの内部には、塗布装置1の各部を制御するための制御部25及び各種のプログラムを記憶する記憶部(図示せず)等が設けられている。制御部25は、各種のプログラムに基づいて、Y軸方向移動テーブル17の移動、X軸方向移動テーブル18の移動、ベース板22の移動、Z軸方向移動機構12aの駆動、Y軸方向移動機構12bの駆動及びθ方向回転機構12cの駆動等の制御を行う。これにより、基板保持テーブル19上の基板2と、各インクジェットヘッドユニット12の液滴噴射ヘッドFとの相対位置を色々と変化させることができる。さらに、制御部25は、各種のプログラムに基づいて、減圧乾燥モジュール5の駆動、復潤乾燥モジュール6の駆動及び搬送部8の駆動等の制御を行う。
次いで、減圧乾燥モジュール5が備える収容室5a及び排気部5bについて説明する。
図3に示すように、収容室5aは、開閉可能なドア31を有する箱状に形成されている。このドア31から塗布済の基板2が収容室5a内に収容される。まず、ドア31が開かれ、塗布済の基板2が収容室5a内に収容され、その後、そのドア31は気密となるように閉じられる。乾燥後、再びドア31が開けられ、乾燥済の基板2が取り出される。なお、基板2は、収容室5aの底面に設けられた支持ピン等により支持される。また、収容室5aには、複数の貫通孔を有する分散板(図示せず)が設けられている。これにより、収容室5a内の気流の発生を抑えることができる。
排気部5bは、収容室5aの底面に接続された排気経路である排気パイプ32と、その排気パイプ32を開閉する開閉弁33と、排気パイプ32を介して収容室5a内の気体を吸引する吸引部34と、開閉弁33と吸引部34との間に位置付けられて排気径路中に設けられた減圧タンク35とを有している。この排気部5bは、排気速度及び到達真空度等が変更可能に形成されている。
排気パイプ32は、収容室5aの底面の略中央に接続されている。開閉弁33は、制御部25により制御され、排気パイプ32を開閉する。この開閉弁33としては、例えば、バタフライ弁や電磁弁等を用いる。吸引部34は、収容室5aに開閉弁33及び減圧タンク35を介して排気パイプ32により接続されている。この吸引部34としては、例えば吸引ポンプ等を用いる。このような吸引部34は、制御部25により制御され、排気パイプ32を介して収容室5a及び減圧タンク35内の気体を吸引して排気する。減圧タンク35は、吸引部34により、例えば数kPaの所定の真空圧まで吸引され、真空状態となる。
このような減圧乾燥モジュール5は、排気部5bにより減圧タンク35内を所定の真空圧にし、その後、開閉弁33により排気パイプ32を開放し、収容室5a内から気体を排気し、収容室5aを真空にする。これにより、塗布済の基板2上の各液滴は乾燥し、複数の残留物が基板2上に残る。
次いで、復潤乾燥モジュール6が備える基板移動機構6a、溶解吹付部6b、乾燥吹付部6c及び排気部6dについて図4及び図5を参照して説明する。
復潤乾燥モジュール6は、塗布対象物上に配置されたいくつもの微細な溶質の塊に対し、この溶質が溶解可能な溶媒を含ませて個々の塊内での溶質の流動性を回復させ、個別に流動性を有する微細な溶質の群に対し、均質な乾燥状態を与えて再び乾燥させるプロセスを提供するものである。このため、溶質の塊の個別性を保ったままで溶媒を付与して流動性を付与する復潤ユニットと基板とを相対変位させる機構と、溶質の流動性が付与された塊の各々から溶媒を蒸発させる乾燥ユニットと基板とを相対変位させる機構とが必要である。これを実現する手段としては、塗布対象物を固定して復潤ユニットや乾燥ユニットを塗布対象物がなす面と平行に変位させるよう構成しても実現可能である。本実施の形態においては、移動させるものの構造の単純さや重量を考慮し、所定距離離間して固定的に配置される復潤ユニット(溶解吹付部6b)と乾燥ユニット(乾燥吹付部6c)、及びこれらの復潤ユニットと乾燥ユニットを連通して単軸方向にテーブルを移動させるテーブル機構(基板移動機構6a)を具備することにより、塗布対象物と復潤ユニット、塗布対象物と乾燥ユニットの相対変位を実現している。
図4に示すように、基板移動機構6aは、Y軸方向ガイド板41A及び基板保持テーブル42が積層されて構成されている。この基板移動機構6aが、溶解吹付部6b及び乾燥吹付部6cと基板2とを相対移動させる移動機構として機能する。
Y軸方向ガイド板41Aは、架台6eの上面に固定されて設けられている。このY軸方向ガイド板41Aの上面には、複数のガイド溝41aがY軸方向に沿って並行に設けられている。これらのガイド溝41aが、Y軸方向に基板保持テーブル42を案内する。
基板保持テーブル42は、Y軸方向ガイド板41Aの上面を各ガイド溝41aに沿ってY軸方向に移動可能に設けられている。この基板保持テーブル42は、送りネジと駆動モータとを用いた送り機構(図示せず)により各ガイド溝41aに沿ってY軸方向に移動する。また、基板保持テーブル42は、基板2を吸着する吸着機構(図示せず)を備えており、その吸着機構により上面に基板2を固定して保持する。吸着機構としては、例えばエアー吸着機構等を用いる。さらに、基板保持テーブル42は、基板2を支持する突没可能な複数の支持ピンを備えており、基板2の受け渡しを行う場合、それらの支持ピンにより基板2を支持する。このような基板保持テーブル42は、Y軸方向に往復移動し、減圧乾燥済の基板2を載置する載置位置と、再溶解及び再乾燥後の基板2である塗布体2aを受け渡す受渡位置とに移動する。なお、基板保持テーブル42の移動速度は、例えば数十mm/s程度である。
溶解吹付部6bは、基板保持テーブル42上の基板2に対して溶解用気体を吹き出す溶解吹出ヘッド43と、その溶解吹出ヘッド43を基板移動機構6aに対向させて支持する支持部44と、溶解吹出ヘッド43に溶解用気体を供給する溶解用気体供給部45と、溶解吹出ヘッド43と溶解用気体供給部45とを接続し溶解用気体が通過する溶解用気体供給管46とを備えている。この溶解吹付部6bは、溶解用気体の濃度や風量等が変更可能に形成されている。
溶解吹出ヘッド43は、開口する吹出口43a(図5参照)を有する箱状に形成されている。この吹出口43aは、スリット状に形成されている。このような溶解吹出ヘッド43は、図5に示すように、吹出口43aから溶解用気体を吹き出し、移動する基板2上の各残留物に吹き付ける。この溶解用気体により、基板2上の各残留物は再溶解して複数の液滴物となる。ここで、溶解吹出ヘッド43と基板2の表面との離間距離H1は、例えば数mm程度であり、基板2に対して溶解用気体を吹き出す方向ベクトルと基板2がなす平面に含まれる基板2の相対移動方向のベクトルとのなす角である吹出角度θ1は、例えば90度程度である(図5参照)。
支持部44は、溶解吹出ヘッド43に固定させて取り付けられた一対のアーム部材44aと、それらのアーム部材44aをそれぞれ支持する一対の支柱44bとにより構成されている。一対のアーム部材44aは、溶解吹出ヘッド43と一対の支柱44bとを連結している。また、一対の支柱44bは、架台6eの上面に立設されている。これらの支柱44bは、一対のアーム部材44aを回動可能に、さらに、それらのアーム部材44aを一対の支柱44bの高さ方向に移動可能に支持している。すなわち、溶解吹出ヘッド43は、基板保持テーブル42上の基板2に対する溶解吹出ヘッド43の相対位置、例えば、基板2に対する吹出角度θ1や基板2に対する離間距離H1等が変更可能に形成されている。したがって、一対のアーム部材44aの回動により吹出角度θ1が調整され、一対の支柱44bの移動により離間距離H1が調整される。
溶解用気体供給部45は、溶解用気体を収容しており、その溶解用気体を送風ポンプ等により溶解用気体供給管46を介して溶解吹出ヘッド43に供給する装置である。ここで、溶解用気体としては、噴射された液滴の溶質が溶ける溶媒を含む気体、例えば水等の溶媒を含む気体を用いる。なお、この溶解用気体の濃度や風量(=平均風速×吹出口43aの開口面積)等を調整することにより、基板2上に残る各溶質物の厚さ方向の断面形状を調整することができる。例えば、風速は数m/s程度である。なお、気化された溶媒を用いずに、液状の溶媒を保持するようにし、必要に応じて気化させる構成としてもよい。
溶解用気体供給管46は、溶解吹出ヘッド43と溶解用気体供給部45とを接続し、溶解用気体供給部45から溶解吹出ヘッド43に溶解用気体を供給するための流路である。この溶解用気体供給管46としては、例えばチューブやパイプ等を用いる。このような溶解用気体供給管46の外周面には、熱を供給するヒータNが設けられている。このヒータNとしては、シート状のヒータが用いられており、溶解用気体供給管46の外周面に巻かれて設けられている。このヒータNの発熱を制御することにより、溶解用気体供給管46及び管内雰囲気の温度を流通する気体の露点より高く保つ。その結果、管内での溶媒の結露やミスト化を防止し、溶解用気体の溶媒濃度を一定に保つことを容易にする。特に、ミスト化は液体が霧状に空中を漂っている状態であるため、そのミスト化を防止することで液体が基板2上や他の装置箇所に付着してしまうことを抑止することができる。
乾燥吹付部6cは、基板保持テーブル42上の基板2に対して乾燥気体を吹き出す乾燥吹出ヘッド47と、その乾燥吹出ヘッド47を基板移動機構6aに対向させて支持する支持部48と、乾燥吹出ヘッド47に乾燥気体を供給する乾燥気体供給部49と、乾燥吹出ヘッド47と乾燥気体供給部49とを接続し乾燥気体が通過する乾燥気体供給管50とを備えている。この乾燥吹付部6cは、乾燥気体の濃度や風量等が変更可能に形成されている。
乾燥吹出ヘッド47は、開口する吹出口47a(図5参照)を有する箱状に形成されている。この吹出口47aは、スリット状に形成されている。このような乾燥吹出ヘッド47は、図5に示すように、吹出口47aから乾燥気体を吹き出し、移動する基板2上の各液滴物に吹き付ける。この乾燥気体により各液滴物は再乾燥し、基板2上に残る複数の溶質物となる。ここで、乾燥吹出ヘッド47と基板2の表面との離間距離H2は、例えば数mm〜十数mm程度であり、基板2に対して乾燥気体を吹き出す方向ベクトルと基板2がなす平面に含まれる基板2の相対移動方向のベクトルとのなす角である吹出角度θ2は、例えば40度〜70度程度である(図5参照)。
支持部48は、乾燥吹出ヘッド47に固定させて取り付けられた一対のアーム部材48aと、それらのアーム部材48aをそれぞれ支持する一対の支柱48bとにより構成されている。一対のアーム部材48aは、乾燥吹出ヘッド47と一対の支柱48bとを連結している。また、一対の支柱48bは、架台6eの上面に立設されている。これらの支柱48bは、一対のアーム部材48aを回動可能に、さらに、それらのアーム部材48aを一対の支柱48bの高さ方向に移動可能に支持している。すなわち、乾燥吹出ヘッド47は、基板保持テーブル42上の基板2に対する乾燥吹出ヘッド47の相対位置、例えば、基板2に対する吹出角度θ2や基板2に対する離間距離H2等が変更可能に形成されている。したがって、一対のアーム部材48aの回動により吹出角度θ2が調整され、一対の支柱48bの移動により離間距離H2が調整される。
乾燥気体供給部49は、乾燥気体を収容しており、その乾燥気体を送風ポンプ等により乾燥気体供給管50を介して乾燥吹出ヘッド47に供給する装置である。ここで、乾燥気体としては、例えば、窒素(N2)等の乾燥状態の気体を用いる。なお、この乾燥気体の濃度や風量(=平均風速×吹出口47aの開口面積)等を調整することにより、基板2上に残る各溶質物の厚さ方向の断面形状を調整することができる。例えば、風速は数m/s程度である。
乾燥気体供給管50は、乾燥吹出ヘッド47と乾燥気体供給部49とを接続し、乾燥気体供給部49から乾燥吹出ヘッド47に乾燥気体を供給するための流路である。この乾燥気体供給管50としては、例えばチューブやパイプ等を用いる。
排気部6dは、溶解吹出ヘッド43と乾燥吹出ヘッド47との間の気体を吸引する吸引ヘッド51と、その吸引ヘッド51を基板移動機構6aに対向させて支持する支持部52と、吸引ヘッド51に吸引力を供給する吸引部53と、吸引ヘッド51と吸引部53とを接続し、吸引した気体が通過する排気管54とを備えている。この排気部6dは、吸引する気体の風量、すなわち吸引力が変更可能に形成されている。
吸引ヘッド51は、開口する吸気口51a(図5参照)を有する箱状に形成されている。この吸気口51aは、例えば長方形状に形成されている。このような吸引ヘッド51は、図5に示すように、吸気口51aから気体を吸引する。これにより、溶解吹出ヘッド43と乾燥吹出ヘッド47との間の気体が吸引され、その間の湿度上昇が抑えられ、高湿度雰囲気の拡散を抑止する。ここで、吸引ヘッド51と基板2の表面との離間距離H3は、例えば数mm〜十数mm程度であり、基板2に対する角度であって気体を吸引する方向ベクトルと基板2がなす平面に含まれる基板2の相対移動方向のベクトルとのなす角である吸気角度θ3は、例えば90度程度である(図5参照)。
なお、吸引ヘッド51の内部には、複数の貫通孔を有する多孔質板が1枚又は複数枚(例えば3枚)、吸気口51aの開口面に略平行にして設けられる場合もある。特に、複数の多孔質板を設ける場合には、それらの多孔質板は、吸気口51aから排気口に向かって貫通孔の数が減少するように配置される。なお、吸引ヘッド51の排気口は、排気管54に接続されている開口である。このように多孔質板を設けることにより、風速分布を無くし、吸気口51aから均一な吸引を行うことができる。なお、湿度分布が大きい場合には、その湿度分布に合わせて、多孔質板の貫通孔の数や貫通孔の形成位置等を調整し、風速分布を形成する場合もある。例えば、吸気口51aの両端付近の湿度が低く、その中央付近の湿度が高い場合には、吸気口51aの両端側を低く、その中央部が高くなるように風速分布を形成する。
支持部52は、吸引ヘッド51に固定させて取り付けられた一対のアーム部材52aと、それらのアーム部材52aをそれぞれ支持する一対の支柱52bとにより構成されている。一対のアーム部材52aは、吸引ヘッド51と一対の支柱52bとを連結している。また、一対の支柱52bは、架台6eの上面に立設されている。これらの支柱52bは、一対のアーム部材52aを回動可能に、さらに、それらのアーム部材52aを一対の支柱52bの高さ方向に移動可能に支持している。すなわち、吸引ヘッド51は、基板保持テーブル42上の基板2に対する吸引ヘッド51の相対位置、例えば、基板2に対する吸気角度θ3や基板2に対する離間距離H3等が変更可能に形成されている。したがって、一対のアーム部材52aの回動により吸気角度θ3が調整され、一対の支柱52bの移動により離間距離H3が調整される。
吸引部53は、排気ポンプ等により排気管54を介して吸引ヘッド51に吸引力を供給する装置である。なお、この吸引力、すなわち吸引する気体の風量(=平均風速×吸気口51aの開口面積)を調整することにより、基板2上に残る各溶質物の厚さ方向の断面形状を調整することができる。例えば、風速は数m/s程度である。
排気管54は、吸引ヘッド51と吸引部53とを接続し、吸引ヘッド51により吸引された気体を排気するための流路である。この排気管54としては、例えばチューブやパイプ等を用いる。
次に、前述の塗布装置1の液滴塗布処理、すなわち塗布装置1による塗布体(物品)2aの製造工程について説明する。塗布装置1の制御部25は各種のプログラムに基づいて液滴塗布処理を実行する。
塗布体2aの製造工程は、基板2に向けて第1の溶媒に溶質を含ませた第1の溶液であるインクを液滴化して噴射し、基板2に複数の液滴を塗着する塗布工程と、基板2上の各液滴から第1の溶媒を蒸発させる乾燥工程と、各液滴が乾燥し基板2上に残留した各残留物(第1の溶液の残留物の群)を第2の溶媒によって再溶解し、残留物を含む第2の溶液である液滴物(第2の溶液の液滴の群)を形成し、基板2上に形成した各液滴物をあらためて乾燥させる復潤乾燥工程(図5参照)とにより構成されている。なお、復潤乾燥工程は、基板2上に残留した各残留物に対して溶解用気体を吹き付け、液体状の各液滴物を形成する溶解吹付工程と、形成した基板2上の各液滴物に対して乾燥気体を吹き付ける乾燥吹付工程とを有している。
ここで、インクの主成分は、基板2上に残留物として残留する溶質と、その溶質を溶解(あるいは分散)させる溶媒とにより構成されている。このインクは、例えば、水及び吸水性低蒸気圧溶媒(例えばEG等)の他、添加剤として、水溶性高分子材料(例えば、PVP:ポリビニルピロリドンやPVA:ポリビニルアルコール等)及び水溶性膜材料等を含む。添加された水溶性高分子材料は液滴の辺縁がなす着弾径を着弾時に拡がった際の最大値に近いとこで固定するピニング剤として機能する。
このインクには、残留物の一部として基板2上に残留する界面活性剤が、溶質として添加されている。この界面活性剤は、減圧乾燥の工程において揮発しない程度の質量を有する材料とする。また、界面活性剤としては、第2の溶媒の表面張力を有意な程度に低減する作用を有するものを選択する。例えば、水を用いる場合にはポリアクリル酸アンモニウム等の陰イオン性界面活性剤を用いるのが好ましい。
溶液に界面活性剤を添加することによって、各残留物の再溶解時に、界面活性剤も同時に溶解し、液滴物の表面張力を下げることが可能になる。これにより、液滴を乾燥させる際に他の溶質が液滴の中心部に寄り集まることなく一様に析出されやすくなるので、膜厚分布が均一化され、平坦な塗膜(例えば、薄膜)を形成することが容易になる。特に、溶媒として水を用いた場合には、液滴物の表面張力が大きくなり、周辺の厚みが大きい膜が形成されやすい傾向にあるが、溶液に界面活性剤を添加することによって、平坦な溶質物(例えば、薄膜)を形成することができる。
界面活性剤は溶媒の表面張力を有意位な程度に低下させることが目的であり、目的にかなう範囲内で溶媒にあわせて適宜選択することができる。ただし、インクを構成する第1の溶質や塗布装置1の各部品と作用して化学反応を起こさないものを選択する観点から、界面活性剤のカウンターイオンとして、アルカリ金属類や金属類・ハロゲン類が用いられているものは避け、アンモニウムイオンやテトラメチルアンモニウムイオンなどが利用されているものを用いることが好ましい。
図6に示すように、制御部25は、搬送部8を制御し、基板収容部3の収容棚3aから基板2を取り出して液滴噴射モジュール4に搬送し、その基板2を液滴噴射モジュール4の基板保持テーブル19上に載置する(ステップS1)。このとき、基板保持テーブル19は載置位置に待機しており、基板2は吸着機構により基板保持テーブル19上に保持される。
次いで、制御部25は、液滴噴射モジュール4を制御し、基板保持テーブル19上の基板2に液滴を噴射して塗布する(ステップS2)。詳述すると、制御部25は、液滴噴射モジュール4を制御し、基板保持テーブル19を載置位置から塗布位置に移動させ、各インクジェットヘッドユニット12を待機位置から基板2に対向する位置まで移動させる。その後、制御部25は、Y軸方向移動テーブル17及びX軸方向移動テーブル18を制御し、加えて、各インクジェットヘッドユニット12の液滴噴射ヘッドFを制御し、各液滴噴射ヘッドFにより基板2に向かって液滴を噴射する噴射動作を行う。各液滴噴射ヘッドFは、インクを液滴として各ノズルからそれぞれ噴射し、移動する基板2にそれらの液滴を着弾させ、所定のパターンのドット列を順次形成する。その後、制御部25は、各インクジェットヘッドユニット12を待機位置まで戻し、基板保持テーブル19を塗布位置から載置位置に移動させる。
ここで、基板2上の各液滴の厚さ方向の断面形状は、図7に示すように、断面形状D1のような半円状になる。このとき、液滴が含むピニング剤(PVP)の作用により、液滴の着弾径(直径)は固定されている。
その後、制御部25は、搬送部8を制御し、載置位置に待機する基板保持テーブル19から塗布済の基板2を取り出して減圧乾燥モジュール5に搬送し、その基板2を減圧乾燥モジュール5の収容室5a内に載置する(ステップS3)。この基板2は、収容室5a内に密封状態で収容される。
次いで、制御部25は、減圧乾燥モジュール5を制御し、その収容室5a内に収容した塗布済の基板2上の各液滴を減圧乾燥させる(ステップS4)。詳述すると、制御部25は、排気部5bを制御し、まず、減圧タンク35内を例えば数kPaの所定の真空圧にし、その後、開閉弁33により排気パイプ32を開放し、収容室5a内から気体を排気し、収容室5aを真空にする。これにより、収容室5a内が真空状態になり、塗布済の基板2上の各液滴は乾燥し、複数の残留物が基板2上に残る。
ここで、基板2上に残留した各残留物、特に基板2の周辺部の各残留物の厚さ方向の断面形状は、図7に示すように、乾燥前の液滴の着弾径を維持したまま、断面形状D2のような中央部が凹む形状になる。このとき、基板2の中央部の各残留物の厚さ方向の断面形状と、基板2の周辺部の各残留物の厚さ方向の断面形状とは異なっている。
なお、基板2上に液滴を塗布した際には、液滴が含むPVPの作用により液滴の着弾径が固定され、その後、減圧乾燥により、遅い乾燥の進行に伴う縮退が起きる前に、液滴が含む溶質が液滴の外周部に集中する。このとき、水はほとんど蒸発するのに対し、EGは微少量残存する。このように、液滴の着弾径が維持された状態で、残留物が生成されるので、基板2上の各残留物の直径を均一化することができる。
その後、制御部25は、搬送部8を制御し、減圧乾燥モジュール5の収容室5a内から乾燥済の基板2を取り出して復潤乾燥モジュール6に搬送し、その基板2を復潤乾燥モジュール6の基板保持テーブル42上に載置する(ステップS5)。このとき、基板保持テーブル42は載置位置に待機しており、基板2は吸着機構により基板保持テーブル42上に保持される。
制御部25は、復潤乾燥モジュール6を制御し、移動する基板保持テーブル42上の基板2の表面である塗布面に対して溶解用気体を吹き付け、その後、乾燥気体を吹き付ける(ステップS6)。詳述すると、制御部25は、基板移動機構6aを制御し、基板保持テーブル42を載置位置から受渡位置に移動させながら、溶解吹付部6b、乾燥吹付部6c及び排気部6dを制御し、移動する基板2上の減圧乾燥済の各残留物に溶解用気体を吹き付け、続けて、余剰分の溶解用気体を排気しながら、移動する基板2上の溶解済の各液滴物に乾燥気体を吹き付ける。
これにより、減圧乾燥済の各残留物は溶解用気体により再溶解し、基板2上の各液滴物となり、その後、それらの液滴物が乾燥気体により再乾燥し、基板2上に残る各溶質物(塗膜)となる。このとき、基板2の中央部の各溶質物の厚さ方向の断面形状と、基板2の周辺部の各溶質物の厚さ方向の断面形状とは同じになる。すなわち、再乾燥後の各溶質物の厚さ方向の断面形状は、基板2の中央部や周辺部等の着弾位置に依らずほぼ均一になる。また、溶解吹付部6bにより吹き付けられた溶解用気体のうち、各液滴物の形成に寄与しない余剰分の溶解用気体が排気され、高湿度雰囲気の拡散が防止される。なお、各液滴物に向けて吹き付けられた乾燥気体を吸引して排気するようにしてもよい。この場合には、乾燥気体及び乾燥寄与後の溶媒が含まれた気体の拡散を抑制しやすくなる。
ここで、各液滴物の厚さ方向の断面形状は、図7に示すように、減圧乾燥前の液滴の直径を維持したまま、断面形状D3のような半円状になる。これは、残留物内のEGが加湿により給水し、残留物は着弾径を保持したまま、その形状が元の形状(図7に示す断面形状D1)にリセットされる(これを復潤と呼ぶ)ためである。このときの液組成は、最初の組成よりも水が多くなり、EGが少なくなっている組成である。また、再溶解により、液滴の周辺部のEGと溶質が液滴内に分布する。なお、水が多くなっているので、再乾燥時の湿度制御により、断面形状を制御することが容易になる。このとき、形状が着弾当初のものに完全に戻る必要はない。溶質が流動性を回復する程度でよい場合もあり、復潤に用いる溶媒の性質ともあわせて適宜調整される。
また、各溶質物の厚さ方向の断面形状は、図7に示すように、減圧乾燥前の液滴の直径を維持したまま、断面形状D4のような上端部が平坦となる台形状になる。このとき、水が多い中央部とEGが多い周辺部との表面張力差によってマランゴニ対流が発生し、乾燥に伴う外側への流れとバランスを取ることになるので、基板2の表面付近に流れが発生しなくなり、断面形状は平坦化される。加えて、界面活性剤が液滴物内に溶解し、液滴物の表面張力が下がるため、液滴物の再乾燥時に溶質は中央部に寄り集まることなく一様に析出されるので、断面形状は平坦化される。なお、溶質物内に界面活性剤が残留し、問題が生じる場合には、基板2上の各溶質物に対してベーク処理(例えば、400〜500℃程度のベーク処理)を施し、界面活性剤を熱分解する。
その後、制御部25は、搬送部8を制御し、受渡位置に待機する基板保持テーブル42から塗布体2aを取り出して塗布体収容部7に搬送し、その基板2を塗布体収容部7の収容棚7a内に載置する(ステップS7)。
最後に、制御部25は、所定数の基板2に対する塗布が完了したか否かを判断する(ステップS8)。ここでは、塗布体2aの数をカウントし、そのカウント値が所定値に達しているか否かを判断している。所定数の基板2に対する塗布が完了したと判断した場合には(ステップS8のYES)、処理を終了する。一方、所定数の基板2に対する塗布が完了していないと判断した場合には(ステップS8のNO)、処理をステップS1に戻し、前述の処理を繰り返す。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、基板2上に残留した複数の残留物を溶解し、残留物をそれぞれ含む複数の液滴物を形成し、形成した各液滴物を乾燥させる復潤乾燥モジュール6を設けることによって、基板2上の各残留物が一様な条件で溶解して乾燥し、各溶質物(塗膜)が基板2上に残るので、着弾から乾燥完了までの経過が着弾する領域によってさまざまであった従来に比べ、どこに着弾した液滴でも一様な現象で乾燥することになる。これにより、溶質物の厚さ方向の断面形状を塗布対象面内の各液滴についてほぼ均一にし、それらのばらつきを抑えることが可能になり、塗布対象面内で各溶質物の状態を均一化することができる。その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を防止することができる。
このように、個別の残留物の流動性を一時的に回復させ、即座に乾燥させる。乾燥気体を流動させて乾燥過程の周辺雰囲気を強制的に移動させるため、周辺液滴の溶媒蒸発との干渉効果が低減され、一滴のみを乾燥させたときと同様の状態に近づけられる。基板全域でこの局所的な形状リセット及び乾燥現象を起こすことによって面均一を得ることができる。
また、塗布工程において、残留物の一部として基板2上に残留する界面活性剤を含む溶液を液滴化して噴射することによって、残留物の再溶解時に界面活性剤も同時に溶解し、液滴物の表面張力が下がるので、液滴物の再乾燥時に溶質は中央部に寄り集まることなく一様に析出される。これにより、平坦な溶質物(例えば、薄膜)を形成することができる。特に、溶媒として水を用い、液滴物の表面張力が大きい場合でも、平坦な溶質物を形成することができる。
また、復潤乾燥モジュール6は、基板2上の各残留物に対し、残留物を溶解する溶解用気体を吹き付ける溶解吹付部6bと、基板2上の各液滴物に対し、液滴物を乾燥させる乾燥気体を吹き付ける乾燥吹付部6cとを具備していることから、簡単な構成により、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきを確実に抑えることができる。さらに、溶解用気体や乾燥気体の濃度や風量等を変更することにより、各溶質物の厚さ方向の断面形状を調整することが可能になるので、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきを確実に抑えることができる。
特に、溶解吹付部6bは、溶解用気体の風量(例えば、基板2の移動方向と水平面内で垂直な方向における溶解用気体の流量分布)が変更可能に形成されており、また、乾燥吹付部6cは、乾燥気体の風量(例えば、基板2の移動方向と水平面内で垂直な方向における乾燥気体の流量分布)が変更可能に形成されていることから、溶解用気体の風量や乾燥気体の風量を変更することにより、各溶質物の厚さ方向の断面形状を調整することが可能になるので、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきを確実に抑えることができる。
また、溶解吹付部6bは、溶解用気体を吹き出す溶解吹出ヘッド43と、溶解吹出ヘッド43に溶解用気体を供給する溶解用気体供給部45と、溶解吹出ヘッド43と溶解用気体供給部45とを接続し溶解用気体が通過する溶解用気体供給管46とを具備しており、乾燥吹付部6cは、乾燥気体を吹き出す乾燥吹出ヘッド47と、乾燥吹出ヘッド47に乾燥気体を供給する乾燥気体供給部49と、乾燥吹出ヘッド47と乾燥気体供給部49とを接続し乾燥気体が通過する乾燥気体供給管50とを具備していることから、簡単な構成により、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきを抑えることができる。さらに、溶解吹出ヘッド43及び乾燥吹出ヘッド47と基板2とを相対移動させる基板移動機構6aを設けることによって、溶解吹付部6b及び乾燥吹付部6cを小型化することも可能になるので、装置全体の大型化を防止することができる。
また、溶解用気体供給管46は、その外周面に設けられたヒータNを有している。溶解用気体の温度と復潤乾燥モジュール6内との温度差に大きな変動があると、溶解用気体に含まれる溶媒の濃度の算定が困難になるため、復潤乾燥モジュール6内に設けた温度センサと、溶解用気体供給管46内に設けた温度センサとにより溶解用気体の温度が適正化されるように、ヒータNによって溶解用気体の温度を調整する制御が行われる。なお、溶解用気体供給管46の温度を制御することによって、溶解用気体が溶解用気体供給管46を通過する際に、その温度が低下してしまうことを防止することも可能になるので、結露の発生等を抑えることもできる。
また、復潤乾燥モジュール6は、溶解吹付部6bにより吹き付けられた溶解用気体のうち、各液滴物の形成に寄与しない余剰分の溶解用気体を排気する排気部6dを具備していることから、高湿度雰囲気の拡散を防止することが可能になるので、乾燥が終了した部分の塗膜に影響を与え難くなり、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきを確実に抑えることができる。
また、排気部6dは、溶解吹出ヘッド43と乾燥吹出ヘッド47との間の気体を吸引する吸引ヘッド51と、吸引ヘッド51に吸引力を供給する吸引部53と、吸引ヘッド51と吸引部53とを接続し、吸引した気体が通過する排気管54とを具備していることから、溶解吹出ヘッド43と乾燥吹出ヘッド47との間の気体が吸引され、その間の湿度上昇が抑えられるので、簡単な構成により、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきを確実に抑えることができる。
また、溶解吹出ヘッド43は、基板2に対する相対位置が変更可能に設けられていることから、基板2に対する溶解吹出ヘッド43の相対位置を変更し、各溶質物の厚さ方向の断面形状を容易に調整することができる。特に、溶解吹出ヘッド43は、基板2に対して溶解用気体を吹き出す吹出角度θ1が変更可能に設けられていることから、その吹出角度θ1を変更することにより各溶質物の厚さ方向の断面形状を容易に調整することができる。また、溶解吹出ヘッド43は、基板2に対する離間距離H1が変更可能に設けられていることから、その離間距離H1を変更することにより各溶質物の厚さ方向の断面形状を容易に調整することができる。
また、乾燥吹出ヘッド47は、基板2に対する相対位置が変更可能に設けられていることから、基板2に対する乾燥吹出ヘッド47の相対位置を変更し、各溶質物の厚さ方向の断面形状を容易に調整することができる。特に、乾燥吹出ヘッド47は、基板2に対して乾燥気体を吹き出す吹出角度θ2が変更可能に設けられていることから、その吹出角度θ2を変更することにより各溶質物の厚さ方向の断面形状を容易に調整することができる。また、乾燥吹出ヘッド47は、基板2に対する離間距離H2が変更可能に設けられていることから、その離間距離H2を変更することにより各溶質物の厚さ方向の断面形状を容易に調整することができる。
また、インク内の溶質はインクを構成する液体に溶けない粒子でも同様に使用でき、これも広義での溶質とみなす。したがって、インクにはコロイドも含まれる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図8乃至図11を参照して説明する。
本発明の第2の実施の形態は第1の実施の形態の変形である。したがって、特に、第1の実施の形態と異なる部分、すなわち復潤乾燥モジュール6について説明する。なお、第2の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図8及び図9に示すように、復潤乾燥モジュール6は、基板移動機構6a、溶解吹付部6b、乾燥吹付部6c及び排気部6dに加え、基板移動機構6aにより移動する基板2の表面(塗布面)に対する離間距離(第1の離間距離)H4を検出する検出部6fを備えている。
基板移動機構6aは、Y軸方向ガイド板41B及び基板保持テーブル42が積層されて構成されている。この基板移動機構6aが、溶解吹付部6b、乾燥吹付部6c、排気部6d及び検出部6fと基板2とを相対移動させる移動機構として機能する。
Y軸方向ガイド板41Bは、架台6eの上面に固定されて設けられている。このY軸方向ガイド板41Bの内部には、送りネジ41bと駆動モータ41cとを用いた送り機構が設けられている。この送り機構が基板保持テーブル42をY軸方向に移動させる。
基板保持テーブル42は、Y軸方向ガイド板41Bの上面側にY軸方向に移動可能に設けられている。この基板保持テーブル42は、送りネジ41bと駆動モータ41cとを用いた送り機構によりY軸方向に移動する。また、基板保持テーブル42は、基板2を支持する突没可能な複数の支持ピン(リフトアップピン)を備えており、それらの支持ピンにより基板2を支持して、その状態のまま搬送動作を行う。このような基板保持テーブル42は、Y軸方向に往復移動する。なお、第2の実施の形態では、減圧乾燥済の基板2を載置する載置位置と、再溶解及び再乾燥後の基板2である塗布体2aを受け渡す受渡位置とは同じ位置になる。基板保持テーブル42の移動速度は、例えば数十mm/s程度である。
支持ピンで支持したまま処理を行う理由としては、以下のようなものがある。基板保持テーブル42に基板2を吸着する場合には、基板2脱着用のリフトピンが挿通可能に形成された孔が基板保持テーブル42の載置面上に設けられるが、この孔による放熱条件の違いは塗膜の形状に影響を与え、素子抵抗に反映されてしまう。また、基板保持テーブル42が金属である場合には、基板保持テーブル42は熱伝導性が良く、基板2の面積が広くなるとその基板2の温度分布に差が生じやすい。また、基板2の平坦度が基板保持テーブル42の平坦度と異なっている場合には、基板2と基板保持テーブル42とがあたるところとあたらないところが生じる。これらの問題を防止するため、支持ピンにより基板2を保持し、その状態で処理を行う構成にする必要がある。
溶解吹付部6bは、溶解吹出ヘッド43、支持部44、溶解用気体供給部45及び溶解用気体供給管46に加え、溶解用気体供給管46の経路途中に設けられた経路切替部61と、溶解用気体を液体として収容するタンク62と、経路切替部61とタンク62とを連通する排気管63と、その排気管63の経路途中に設けられた負荷調整バルブ64とを備えている。さらに、溶解吹付部6bは、溶解吹出ヘッド43から吹出された溶解用気体を受ける気体受け部65と、その気体受け部65を溶解吹出ヘッド43に対する接離方向であるZ軸方向に移動させる受け部移動機構66と、気体受け部65とタンク62とを連通する排気管67とを備えている(図9参照)。
経路切替部61は、制御部25の制御に応じて、溶解用気体供給部45と溶解用気体供給管46とが連通する第1の経路と、溶解用気体供給部45と排気管63とが連通する第2の経路とを切り替える。例えば、溶解及び乾燥を行う場合には、溶解用気体供給部45と溶解用気体供給管46とが接続されて第1の経路が選択され、検出部6fによる検出を行う場合には、溶解用気体供給部45と排気管63とが接続されて第2の経路が選択される。これにより、検出を行う場合、溶解吹付部6bがその下方を通過する基板2を加湿してしまうことを防止することが可能になる。
タンク62は、排気管63及び排気管67から流入する溶解用気体を液体として収容する収容部である。排気管63は、経路切替部61とタンク62とを接続する流路であり、特に、溶解吹出ヘッド43に溶解用気体を供給しない場合、タンク62に溶解用気体を排出するための流路である。この排気管63としては、例えばチューブやパイプ等を用いる。
負荷調整バルブ64は、制御部25の制御に応じて、排気管63を通過する溶解用気体の流量を調整する。このとき、負荷調整バルブ64の抵抗値(流量)は、溶解吹出ヘッド43と同等の抵抗値(流量)に調整される。これにより、経路が切り替えられた場合でも、溶解用気体供給部45に対する抵抗は変化しないので、経路の切替により生じる溶解用気体供給部45における温度や湿度の変動を抑制することが可能になる。なお、溶解用気体供給部45は、供給する溶解用気体の温度や湿度を例えば47.5±0.5℃、85%±1%の範囲で調整し、調整された溶解用気体を供給する。
気体受け部65は、例えば、開口部65aを有する箱状に形成されている。この気体受け部65は、その開口部65aが溶解吹出ヘッド43に対向する位置に位置付けられ、基板移動機構6aの内部に設けられている。また、気体受け部65は、溶解吹出ヘッド43に対して接離方向であるZ軸方向に移動可能に設けられており、受け部移動機構66により移動する。
受け部移動機構66は、基板2及び基板保持テーブル42の移動を妨げない位置に位置付けられ、基板移動機構6aの内部に設けられている。この受け部移動機構66は、制御部25による制御に応じて、基板2及び基板保持テーブル42がY軸方向に移動する場合には、それらの基板2及び基板保持テーブル42の移動を妨げない退避位置に気体受け部65を移動させ、基板2及び基板保持テーブル42が移動しない場合には、気体受け部65に近接して溶解用気体を受ける気体受け位置に気体受け部65を移動させる。すなわち、受け部移動機構66は、気体受け部材65を溶解吹出ヘッド43に対して溶解用気体の吹出方向に接離可能に移動させる機構として機能する。
排気管67は、気体受け部65とタンク62とを接続する流路であり、特に、基板2に対する溶解及び乾燥を実行しない場合、溶解吹出ヘッド43により吹き出された溶解用気体を気体受け部65からタンク62に排出するための流路である。この排気管67としては、例えばチューブやパイプ等を用いる。ここで、排気管67は、排気の圧力を細かく制御するため、気体受け部65の長手方向に複数本並べて配置されている。これらの排気管67には、それぞれに流量調整用のバルブが接続されている。これにより、風速分布を調整することが可能になる。
このような溶解吹付部6bの溶解用気体供給部45は常時稼働状態となる。これは、溶解用気体供給部45が一度停止すると、再び溶解用気体(加湿雰囲気)の温度や湿度等を安定させるまで数十分程度の長い時間が必要となる場合があるので、その待機時間を無くすためである。溶解用気体供給部45が稼働状態で、基板2及び基板保持テーブル42が移動しない場合には、気体受け部65が気体受け位置に存在しており、気体受け部65は、溶解吹出ヘッド43から吹き出された溶解用気体を開口部65aから受け取り、排気管67を介して吸引して液化したうえで空気と溶媒に分解し、溶媒をタンク62に液体として排出する。これにより、溶解用気体(加湿雰囲気)が塗布乾燥システム全域に拡散してしまうことが防止される。
検出部6fは、その設置位置から、Y軸方向に移動する基板2の表面(塗布面)までの離間距離(第1の離間距離)H4をそれぞれ検出する複数の距離センサ71と、それらの距離センサ71を基板移動機構6aに対向させて支持する支持部72とを備えている。
距離センサ71は、例えば3個設けられている。これらの距離センサ71は、基板2の表面上の画素領域R1を避けた外周領域R2に対して離間距離H4の検出を行う(図10参照)。例えば、2個の距離センサ71が外周領域R2において画素領域R1を挟みY軸方向に伸びる一対の領域に対してそれぞれ離間距離H4の測定を行う。残り1個の距離センサ71が外周領域R2において画素領域R1を挟みX軸方向に伸びる一対の領域に対して離間距離H4の測定を行う。なお、距離センサ71としては、例えば、反射式のセンサや超音波式のセンサ等を用いる。
ここで、画素領域R1には、配線や素子、各残留物等が存在している。このため、画素領域R1に対して離間距離H4の測定を行うと、正確に離間距離H4を測定することは困難である。したがって、基板2の表面上の画素領域R1を避けた外周領域R2に対して離間距離H4の測定を行うことによって、正確に離間距離H4を測定することが可能となる。
この距離センサ71は、制御部25の制御に応じて、移動する基板2の表面との離間距離H4の測定を連続的に行い、基板2の表面のうねり(一直線上のうねり)を検出する(図10参照)。ここで、基板表面のうねりは、基板2の厚さばらつき、基板2の反り及び基板保持テーブル42の平面度等が要因となり発生している。例えば、離間距離H4は、基板2の面内で0.4mm程度変動し、基板間で0.2mm程度変動する。なお、距離センサ71の分解能は例えば10μm程度である。
支持部72は、各距離センサ71が固定された支持板72aと、その支持板72aを支持する一対の支柱72bとにより構成されている。これらの支柱72bは、基板移動機構6aの上面に設けられている。支持板72aは、基板2が通過する位置に各距離センサ71を対向させて支持しており、一対の支柱72bに架け渡されて設けられている。
ここで、溶解吹付部6bの支持部44は、溶解吹出ヘッド43を支持し、その溶解吹出ヘッド43を基板移動機構6aに対する離間距離H1(第2の離間距離)が変化する方向(すなわちZ軸方向)に移動させる第1のヘッド移動機構として機能する。また、乾燥吹付部6cの支持部48は、乾燥吹出ヘッド47を支持し、その乾燥吹出ヘッド47を基板移動機構6aに対する離間距離H2(第3の離間距離)が変化する方向(すなわちZ軸方向)に移動させる第2のヘッド移動機構として機能する。
このような復潤乾燥モジュール6は、基板移動機構6aにより基板2をY軸方向に移動させながら、検出部6fの各距離センサ71により基板2の塗布面に対する離間距離H4を順次測定し、測定データを取得する。このとき、基板2は検出部6f、乾燥吹付部6c、排気部6d及び溶解吹付部6bの下方を順次通過して待機位置(載置位置の逆側の位置)で停止する。なお、このような離間距離H4の測定を行う場合には、溶解吹付部6bの下方を通過する基板2を加湿しないように経路切替部61により溶解用気体供給部45と排気管63とが接続され、第2の経路が選択される。また、このとき、乾燥吹付部6cは停止状態である。
その後、復潤乾燥モジュール6は、再び、基板移動機構6aにより基板2を前述と逆方向に移動させ、さらに、測定データに基づいて溶解吹付部6bの溶解吹出ヘッド43の移動及び乾燥吹付部6cの乾燥吹出ヘッド47の移動を制御しながら、溶解吹出ヘッド43により基板2の塗布面に溶解用気体を吹き付け、その後、乾燥吹出ヘッド47により基板2の塗布面に乾燥気体を吹き付ける。このとき、基板2は溶解吹付部6b、排気部6d、乾燥吹付部6c及び検出部6fの下方を順次通過して受渡位置(載置位置)で停止する。なお、このような溶解及び乾燥を行う場合には、溶解吹付部6bの下方を通過する基板2を加湿するために経路切替部61により溶解用気体供給部45と溶解用気体供給管46とが接続され、第1の経路が選択される。また、このとき、乾燥吹付部6cは駆動状態である。
次に、前述の塗布装置1の液滴塗布処理、すなわち塗布装置1による塗布体(物品)2aの製造工程について説明する。塗布装置1の制御部25は各種のプログラムに基づいて液滴塗布処理を実行する。
通常、溶解用気体供給部45は生産中、常時駆動状態となる。このとき、基板2及び基板保持テーブル42が移動しない場合には、気体受け部65が気体受け位置に存在しており、気体受け部65は、溶解吹出ヘッド43から吹き出された溶解用気体を受け取り、排気管67を介してタンク62に液体として供給する。これにより、溶解用気体(加湿雰囲気)の拡散が防止されている。なお、乾燥気体供給部49は停止状態である。
図11に示すように、制御部25は、ステップS1〜ステップS5まで第1の実施の形態と同様に処理を行う。ステップS5の後、制御部25は、経路切替部61により経路を排出経路である第2の経路に切り替える(ステップS11)。すなわち、制御部25は、経路切替部61を制御し、溶解用気体供給部45と溶解用気体供給管46とが連通する第1の経路を、溶解用気体供給部45と排気管63とが連通する第2の経路に切り替える。さらに、制御部25は、受け部移動機構66により気体受け部65を待機位置に移動させる。
その後、制御部25は、検出部6fにより、Y軸方向に移動する基板2に対する離間距離H4を測定する(ステップS12)。すなわち、制御部25は、検出部6fを制御し、Y軸方向に移動する基板2の表面との離間距離H4を連続的に測定する。検出部6fは、各距離センサ71により、基板2の表面上の画素領域R1を避けた外周領域R2に対して離間距離H4の測定を行い、基板2の表面のうねり(一直線上のうねり)を検出する。なお、ここでは、距離センサ71の分解能は、例えば10mm程度であるが、この分解能を上げ、より精度が高い移動制御を実現するようにしてもよい。
次いで、制御部25は、測定した離間距離H4のデータである測定データを処理する(ステップS13)。例えば、制御部25は、検出部6fの各距離センサ71からそれぞれ取得した測定データをY軸方向の測定点毎に平均し、その測定データを溶解及び乾燥を行う場合の搬送方向に合わせて反転させる処理を行う。
次に、制御部25は、経路切替部61により経路を吹出経路である第1の経路に切り替える(ステップS14)。すなわち、制御部25は、経路切替部61を制御し、溶解用気体供給部45と排気管63とが連通する第2の経路を、溶解用気体供給部45と溶解用気体供給管46とが連通する第1の経路に切り替える。さらに、制御部25は、乾燥気体供給部49を駆動状態にする。これにより、溶解用気体が溶解吹出ヘッド43から吹き出され、乾燥気体が乾燥吹出ヘッド47から吹き出され、溶解及び乾燥を行う準備が整う。
その後、制御部25は、ステップS6〜ステップS8まで第1の実施の形態と同様に処理を行う。なお、このときの基板2の搬送方向は、第1の実施の形態と逆方向となる。また、ステップS6の後、制御部25は、受け部移動機構66により気体受け部65を気体受け位置に移動させる。気体受け部65は、溶解吹出ヘッド43から吹き出された溶解用気体を受け取り、排気管67を介してタンク62に液体として供給する。これにより、溶解用気体(加湿雰囲気)の拡散が防止される。
このように、基板2の厚さばらつき、基板2の反り及び基板保持テーブル42の平面度等により基板2の表面にうねりが存在する場合でも、基板2の移動に応じて検出部6fにより基板2の表面との離間距離H4が検出され、その離間距離H4に基づいて、基板2の表面に対する溶解吹出ヘッド43の離間距離H1及び乾燥吹出ヘッド47の離間距離H2が一定になるように溶解吹出ヘッド43の移動及び乾燥吹出ヘッド47の移動が制御される。これにより、基板2のY軸方向の移動に応じて溶解吹出ヘッド43及び乾燥吹出ヘッド47がZ軸方向に移動し、離間距離H1及び離間距離H2が一定となるので、基板2の全面に亘って加湿及び乾燥が一様に行われる。これにより、基板2の面内で各溶質物の凹凸率の均一性を向上させることができる。
また、通常、溶解用気体供給部45は生産中、常時駆動状態である。このとき、溶解吹出ヘッド43から溶解用気体が吹き出されるが、気体受け部65が気体受け位置に存在し、溶解吹出ヘッド43から吹き出された溶解用気体を受け取り、排気管67を介してタンク62に液体として供給する。これにより、溶解用気体(加湿雰囲気)が拡散することを防止することができる。さらに、検出部6fによる離間距離H4の測定を行う場合には、経路切替部61により溶解用気体供給部45と排気管63とが接続され、溶解吹出ヘッド43による溶解用気体の吹出しが防止され、Y軸方向に移動する基板2に対する加湿が行われることを防止することが可能になるので、基板2に対して不要な加湿の実行を防止することができる。加えて、溶解用気体供給部45の駆動状態を維持することが可能になるので、溶解用気体(加湿雰囲気)が安定するまでの待機時間が必要なくなり、生産性を向上させることができる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、相対移動する基板2の表面に対する離間距離H4を検出する検出部6fと、相対移動する基板2の表面と溶解吹出ヘッド43との離間距離H1が変化する方向に溶解吹出ヘッド43を移動させるヘッド移動機構である支持部44と、相対移動する基板2の表面と乾燥吹出ヘッド47との離間距離H2が変化する方向に乾燥吹出ヘッド47を移動させるヘッド移動機構である支持部48と、検出した離間距離H4に基づいて、移動する基板2に対し、離間距離H1が一定になるように支持部44を制御し、離間距離H2が一定になるように支持部48を制御する制御部25とを設けることによって、基板2の表面にうねりが存在していても、移動する基板2に対する離間距離H1及び離間距離H2は一定となり、基板2の全面に亘って加湿及び乾燥を一様に行うことが可能になる。これにより、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性を向上させることができ、その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を防止することができる。
また、溶解吹付部6bは、溶解用気体供給管46の途中に接続され、溶解用気体供給部45から溶解吹出ヘッド43に供給される溶解用気体を排気するための排気管63と、溶解用気体供給部45と溶解用気体供給管46とが連通する第1の経路と、溶解用気体供給部45と排気管63とが連通する第2の経路とを切り替える経路切替部61と具備することから、基板2に対する離間距離H4の測定を行う場合には、溶解用気体供給部45と排気管63とが接続され、基板2に対する加湿が行われず、溶解用気体供給部45の駆動状態が維持される。これにより、基板2に対する加湿が行われないので、基板2に対して不要な加湿の実行を防止することができ、加えて、溶解用気体供給部45の駆動状態が維持されるので、溶解用気体(加湿雰囲気)が安定するまでの待機時間が必要なくなり、生産性を向上させることができる。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態について図12及び図13を参照して説明する。
本発明の第3の実施の形態は第1の実施の形態の変形である。したがって、特に、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。なお、第3の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図12に示すように、スリット調整部81が溶解吹出ヘッド43に設けられている。この溶解吹出ヘッド43の内部には、開口部である吹出口43aに連通する吹出用流路F1が設けられている。すなわち、溶解吹出ヘッド43は、スリット状の吹出用流路F1を形成する内面Wa及びその内面Waに対向する外面Wbを有するヘッド基体43Aを具備している。なお、吹出用流路F1は溶解用気体供給管46に連通している。その溶解用気体供給管46から流入した溶解用気体は、吹出用流路F1を通過して吹出口43aから吹き出される。
吹出用流路F1は、溶解用気体が流れる方向に対して垂直方向に長いスリット(細長い隙間)状に形成されており、溶解吹出ヘッド43の吹出口43aは長方形状となる。溶解吹出ヘッド43は、その吹出口43aの長手方向(スリット長手方向)を基板2の移動方向に平面内で直交する方向に平行にして設けられている。
ここで、基板2の大型化に伴って溶解吹出ヘッド43も大型化し、その吹出口43aの長手方向の大きさも例えば1000mm程度と大きくなっている。このため、吹出口43aの平面形状を長方形にすることは困難であり、特に、吹出口43aの短手方向の幅(スリット間隔)が一定とならないことが多い。この場合には、溶解用気体を一様(均一)に吹き出すことが困難となり、基板2の面内で各溶質物の凹凸率の均一性が低下してしまう。このため、吹出口43aの短手方向の幅(スリット間隔)を一定に調整するスリット調整部81が必要となる。
スリット調整部81は、ヘッド基体43Aに設けられたベース部材82と、ヘッド基体43Aの外面Wb(図12中の左側の外面)を吹出用流路F1が狭くなる方向に押す複数の押圧部材83と、ヘッド基体43Aの外面Wbを吹出用流路F1が広がる方向に引っ張る複数の引張部材84とにより構成されている。
ベース部材82は、ヘッド基体43Aの外面Wbから離間して略平行にスリット長手方向に伸びる基準部82aを有している。このベース部材82はヘッド基体43Aより曲げ強度が高くなるように形成されており、基準部82aはスリット間隔を調整する際の基準位置となる。なお、ベース部材82としては、例えば断面形状がL字型に形成された部材等を用いる。
基準部82aには、複数の貫通孔N1、N2が設けられている。これらの貫通孔N1、N2は、溶解用気体が吹出用流路F1を通過する方向に垂直な方向、すなわちスリット長手方向に並べて二列にそれぞれ設けられている。また、ヘッド基体43Aの外面Wbには、各貫通孔N2に対向させて複数の穴部N3が設けられている。これらの穴部N3もスリット長手方向に一列に並ぶことになる。各貫通孔N1及び各貫通孔N2には、らせん状の溝がそれぞれ形成されており、各貫通孔N1及び各貫通孔N2が雌ネジとして機能する。また、穴部N3には、引張部材84を回転可能に保持するベアリング等の軸受(図示せず)が設けられている。
各押圧部材83は、基準部82aの各貫通孔N1に挿入されてスリット長手方向に並んでおり、ヘッド基体43Aの外面Wbを押圧可能にそれぞれ設けられている。各引張部材84も、基準部82aの各貫通孔N2及びヘッド基体43Aの各穴部N3に挿入されてスリット長手方向に並んでおり、ヘッド基体43Aの外面Wbを引張可能にそれぞれ設けられている。各押圧部材83及び各引張部材84としては、例えば雄ネジ等を用いる。
このようなスリット調整部81では、各押圧部材83及び各引張部材84が操作者等により回転させられ、ヘッド基体43Aの外面Wbを押す押圧力及びその外面Wbを引っ張る引張力が調整される。これにより、ヘッド基体43Aの内面Waは変形し、スリット間隔も変化する。このとき、スリット状の吹出口43aの平面形状を長方形、すなわち溶解吹出ヘッド43の吹出用流路F1の流路断面形状が長方形になるように押圧力及び引張力が調整される。これにより、溶解吹出ヘッド43が一様(均一)に溶解用気体を吹き出すことが可能になる。
ここで、図13に示すように、吹出用流路F1が広がる方向にその吹出用流路F1を構成する壁面(内面Wa)を押す複数の押圧部材85と、吹出用流路F1が狭くなる方向にその吹出用流路F1を構成する壁面(内面Wa)を引っ張る複数の引張部材86とが溶解吹出ヘッド43のヘッド基体43Aに直接設けられている場合がある。この場合には、各押圧部材85及び各引張部材86が吹出用流路F1内に存在し、その吹出用流路F1を通過する溶解用気体の流れを妨げることになる。特に、押圧部材85及び引張部材86はそれぞれ複数個一列状に設けられているため、溶解用気体の一様な吹き出しを著しく阻害することになる。
一方、図12に示すように、前述のスリット調整部81を用いることによって、各押圧部材83及び各引張部材84は吹出用流路F1内に存在せず、その吹出用流路F1を通過する溶解用気体の流れを妨げることがなくなる。これにより、各押圧部材85及び引張部材86が吹出用流路F1内に存在する場合に比べ、溶解用気体を一様に吹き出すことが可能になる。その結果、基板2の全面に亘って加湿が一様に行われるので、基板2の面内で各溶質物の凹凸率の均一性を向上させることができる。
このようにスリットの間隔を可変とすることで、基板2の進行方向(ワーク進行方向)に平面内で垂直な方向でみたときの気体流量調整を可能にしているが、スリット調整部81の各押圧部材85及び各引張部材84は、スリット長手方向に離散的に複数箇所にわたって配置されるため、スリット長手方向での流量分布を完全に単調にかつ再現性をもって調整することは難しい。したがって、溶解吹出ヘッド43と乾燥吹出ヘッド47との少なくとも一方がスリット長手方向に変位可能に設けられており、スリット調整部81における流量分布のばらつきは溶解吹出ヘッド43と乾燥吹出ヘッド47との相対位置の調整により補われている。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、スリット調整部81を設けることによって、溶解吹出ヘッド43の吹出用流路F1のスリット間隔を調整することが可能になるので、溶解吹出ヘッド43からの溶解用気体の一様な吹き出し、すなわち吹付風速分布(流量分布)の均一化を実現することができる。これにより、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性をさらに向上させることができ、その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を確実に防止することができる。なお、乾燥吹出ヘッド47でも同様な問題が生じることがあるため、乾燥吹出ヘッド47にスリット調整部81を設けることが好ましい。
また、本実施の形態では、各押圧部材83及び各引張部材84を設けているが、これに限るものではなく、各押圧部材83だけを設けるようにしても良い。この場合には、各押圧部材83の押圧力が弱められると、溶解吹出塗布ヘッド43のヘッド基体43Aの復元力により吹出用流路F1のスリット間隔が広がることになる。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態について図14を参照して説明する。
本発明の第4の実施の形態は第1の実施の形態の変形である。したがって、特に、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。なお、第4の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図14に示すように、バッファボックス91が溶解吹出ヘッド43に設けられている。このバッファボックス91は、溶解吹出ヘッド43に対して一様に溶解用気体を流入させるためのボックスであり、緩衝部として機能する。これにより、溶解吹出ヘッド43からの溶解用気体の一様な吹き出しが実現されている。
溶解吹出ヘッド43は、長方形状の吹出口43aに加え、連通用の開口43bを複数有している。これらの開口43bは吹出口43aの長手方向に平行に一直線上に設けられている。また、バッファボックス91も、連通用の開口91aを複数有している。これらの開口91aは溶解吹出ヘッド43の各開口43bにそれぞれ対応させて設けられている。バッファボックス91の上面(図14中)には、溶解用気体供給管46が接続されている。この溶解用気体供給管46から供給された溶解用気体は、バッファボックス91内に流入して拡散し、その後、各開口91a及び各開口43bを介して溶解吹出ヘッド43内に流入し、溶解吹出ヘッド43の吹出口43aから吹き出される。これにより、溶解用気体を一様に吹き出すことが可能になり、基板2の全面に亘って加湿が一様に行われるので、基板2の面内で各溶質物の凹凸率の均一性を向上させることができる。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、バッファボックス91を設けることによって、溶解吹出ヘッド43に対して一様に溶解用気体を流入させることが可能になるので、溶解吹出ヘッド43からの溶解用気体の一様な吹き出し、すなわち吹付風速分布の均一化を実現することができる。これにより、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性をさらに向上させることができ、その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を確実に防止することができる。なお、乾燥吹出ヘッド47でも同様な問題が生じることがあるため、乾燥吹出ヘッド47にバッファボックス91を設けることが好ましい。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態について図15及び図16を参照して説明する。
本発明の第5の実施の形態は第1の実施の形態の変形である。したがって、特に、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。なお、第5の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図15に示すように、吸引ヘッド51Aが溶解吹出ヘッド43に対応させて基板2の搬送方向の下流側に設けられており、吸引ヘッド51Bが乾燥吹出ヘッド47に対応させて基板2の搬送方向の下流側に設けられている。さらに、吸引ヘッド51Aには、吸引する際の吸引風速分布(排気風速分布)を調整するための吸引風速分布調整部121Aが設けられており、同様に、吸引ヘッド51Bにも、吸引風速分布調整部121Bが設けられている。
ここで、溶解吹出ヘッド43及び乾燥吹出ヘッド47は基板2の表面に対して傾けて設けられている。なお、基板2に対して溶解用気体を吹き出す吹出角度θ1は、例えば45度程度であり、基板2に対して乾燥気体を吹き出す吹出角度θ2も、例えば45度程度である。また、溶解吹出ヘッド43及び乾燥吹出ヘッド47には、例えば、第3の実施の形態に係るスリット調整部81や第4の実施の形態に係るバッファボックス91が設けられている(なお、第3及び第4の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する)。
吸引ヘッド51Aは、溶解吹出ヘッド43に設けられたバッファボックス91との制約から溶解吹出ヘッド43に対して所定距離だけ離間するように設けられている。したがって、吸引ヘッド51Aは、溶解吹出ヘッド43から吹き出された溶解用気体を確実に吸引するため、溶解吹出ヘッド43の吹出口43aの近傍まで伸びる突出部T1を有している。すなわち、吸引ヘッド51Aにおける溶解吹出ヘッド43側の側壁W1は、Z軸方向に伸びる側壁W1aと、その側壁W1aから溶解吹出ヘッド43の吹出口43aに向けて徐々に傾斜する傾斜壁W1bとにより構成されている。この傾斜壁W1bが突出部T1として機能する。これにより、吸引ヘッド51Aの吸気口51aが溶解吹出ヘッド43の吹出口43aに隣接する状態となることから、吹出口43aから吹き出された溶解用気体を確実に吸引することが可能となるので、溶解用気体の拡散を確実に防止することができる。
吸引ヘッド51Bは、乾燥吹出ヘッド47に設けられたバッファボックス91との制約から乾燥吹出ヘッド47に対して所定距離だけ離間するように設けられている。したがって、吸引ヘッド51Bは、乾燥吹出ヘッド47から吹き出された乾燥気体を確実に吸引するため、乾燥吹出ヘッド47の吹出口47aの近傍まで伸びる突出部T2を有している。すなわち、吸引ヘッド51Bにおける乾燥吹出ヘッド47側の側壁W2は、Z軸方向に伸びる側壁W2aと、その側壁W2aから乾燥吹出ヘッド47の吹出口47aに向けて徐々に傾斜する傾斜壁W2bとにより構成されている。この傾斜壁W2bが突出部T2として機能する。これにより、吸引ヘッド51Bの吸気口51bが乾燥吹出ヘッド47の吹出口47aに隣接する状態となることから、吹出口47aから吹き出された乾燥気体を確実に吸引することが可能となるので、乾燥気体の拡散を確実に防止することができる。
吸引風速分布調整部121Aは吸引ヘッド51Aに接続されており、吸引風速分布調整部121Bは吸引ヘッド51Bに接続されている。これらの吸引風速分布調整部121A及び吸引風速分布調整部121Bは同じ構造である。したがって、吸引風速分布調整部121Aを例にして説明する。
図16に示すように、吸引風速分布調整部121Aは、吸引ヘッド51Aの長手方向に平行に伸びる箱形状の3本のバッファ121a、121b、121cと、吸引ヘッド51Aとバッファ121aとをそれぞれ連通する8本のパイプP1と、バッファ121aとバッファ121bとをそれぞれ連通する4本のパイプP2と、バッファ121bとバッファ121cとをそれぞれ連通する2本のパイプP3と、バッファ121cに接続されて吸引部53に連通する1本のパイプP4と、8本のパイプP1にそれぞれ設けられた8個のバルブV1とを備えている。これらのバルブV1は、それぞれ対応するパイプP1を通過する気体の流量を調整するバルブである。各バルブとしては、例えばニードルバルブを用いる。ここで、バッファ数を増やして段数を増加させれば、吸引風速分布の均一性を向上させることが可能であるが、調整装置自体が大型化するため、設置スペースなどを考慮して段数が選択される。
この吸引風速分布調整部121Aは、各バッファ121a、121b、121c及び各パイプP1、P2、P3により吸引ヘッド51Aから排気管54としてのパイプP4まで伸びる複数の排気経路(気体流路)を有することになり、それらの排気経路の長さが同じになるように構成されており、さらに、パイプの接続数が吸引ヘッド51AからパイプP4に向かってバッファ121a、121b、121cを介する度に減少するように(例えば二分の一になるように)構成されている。これにより、吸込による吸引風速分布を均一化することができる。また、各バルブV1が各パイプP1にそれぞれ設けられていることから、吸引風速分布を均一化するために微調整することができ、加えて、吸引風速分布を意図的に不均一化することもできる。
ここで、吸引風速分布(排気風速分布)が生じると、塗布対象面内で各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきが発生してしまう。この場合には、吸引風速分布を均一に調整する。一方、吸引風速分布が均一であっても、溶解用気体や乾燥気体の吹付風速分布が不均一になると、塗布対象面内で各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきが発生してしまう。この場合には、そのばらつきの発生を抑えるように、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率に応じて吸引風速分布を不均一に調整する。
吸引風速分布を調整する場合には、オペレータ等の調整者は、例えば熱線の温度変化により風速を計測する熱線風速計(図示せず)を用いて、吸引ヘッド51Aの吸気口51aの近傍に熱線を近づけて、その吸気口51aの長手方向に等ピッチで移動させながら、各箇所での風速を計測する。その後、調整者は、計測した風速に基づいて各バルブV1を微調整して、例えば、吸引風速分布を均一にしたり、あるいは、各バルブV1を調整して、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率に合わせて吸引風速分布を意図的に不均一化したりする。吸引ヘッド51Bでも同様の調整が行われる。
以上説明したように、本発明の第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、吸引ヘッド51Aに突出部T1を設けることによって、吸引ヘッド51Aの吸気口51aが溶解吹出ヘッド43の吹出口43aに隣接する状態となることから、吹出口43aから吹き出された溶解用気体を確実に吸引することが可能となるので、溶解用気体の拡散を確実に防止することができる。同様に、吸引ヘッド51Bに突出部T2を設けることによって、吸引ヘッド51Bの吸気口51bが乾燥吹出ヘッド47の吹出口47aに隣接する状態となることから、吹出口47aから吹き出された乾燥気体を確実に吸引することが可能となるので、乾燥気体の拡散を確実に防止することができる。
また、各吸引風速分布調整部121A、121Bを設けることによって、各吸引ヘッド51A、51Bの吸引風速分布を調整し、各吸引ヘッド51A、51Bにより一様に気体を吸引することが可能になるので、各吸引ヘッド51A、51Bによる気体の一様な吸引、すなわち吸引風速分布の均一化を実現することができる。これにより、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性をさらに向上させることができ、その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を確実に防止することができる。加えて、吸引風速分布は均一であるが、溶解用気体や乾燥気体の吹付風速分布が不均一であるため、塗布対象面内で各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきが発生した場合でも、各溶質物の凹凸率に合わせて各吸引ヘッド51A、51Bの吸引風速分布を調整することが可能になるので、溶解用気体や乾燥気体の吹付風速分布の不均一に起因し、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性が低下してしまうことを抑止することができる。
特に、排気部6dは、直方体の箱形状のヘッドであって、吹き付けられた溶解用気体を吸引する長方形状の吸気口51aを有する吸引ヘッド51Aと、吸気口51aの長手方向に平行にされ、吸気口51aの長手方向及び短手方向の両方に垂直な方向に並べられそれぞれ設けられた複数のバッファ121a、121b、121cと、吸気口51aの長手方向に並べられ、隣接する吸引ヘッド51Aとバッファ121aとの間を接続し、かつ、隣接するバッファ121a、121bの間及び隣接するバッファ121b、121cの間を接続する複数のパイプP1、P2、P3と、吸引ヘッド51Aから一番遠くに位置するバッファ121cに接続されたパイプ(排気管)P4とを具備しており、各パイプP1、P2、P3は、吸引ヘッド51AからパイプP4まで伸びる複数の排気経路が同じ長さになるように、かつ、パイプの接続数が吸引ヘッド51AからパイプP4に向かってバッファ121a、121b、121cを介する度に減少するように(例えば二分の一になるように)配設されている。これにより、吸引ヘッド51Aによる気体の一様な吸引、すなわち吸引風速分布の均一化を実現することができる。なお、吸引ヘッド51Bにおいても、同様な構成により吸引ヘッド51Aによる気体の一様な吸引、すなわち吸引風速分布の均一化が実現される。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態について図17乃至図19を参照して説明する。
本発明の第6の実施の形態は第1の実施の形態の変形である。したがって、特に、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。なお、第6の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図17乃至図19に示すように、基板保持テーブル42は、凹部42a(図18参照)を有する基体42bと、凹部42aの底面に設けられ基板2を支持する複数のピン部材42c(図18参照)と、基体42b上に凹部42aを避けて枠状に配置された複数の板部材42dと、それらの板部材42dの位置を決める複数の位置決めピン42e、42fとを備えている。
各ピン部材42cは、例えばプロキシピンである。これらのピン部材42cは、基板2と基体42bとの間に空間を形成する。これにより、基板2が基体42bに直接接触することがなくなり、基板2における接触部分と不接触部分との温度差の発生が抑えられるので、温度差に起因する各溶質物の凹凸率の不均一化を抑止することができる。各板部材42dは、例えばダミー用のガラス基板である。また、各位置決めピン42e、42fの中には、1枚の板部材42d毎に、3つの固定ピン42eと、それらの固定ピン42eに基板2を押し付けて固定する1つの可動ピン42fとが存在している。この可動ピン42fの回転板42g(図19参照)は、その中心から回転軸がずらされ回転可能に形成されている。
各板部材42dが基板保持テーブル42上の基板2の周囲、すなわち基板2が載置される載置領域を囲むように設けられている。これにより、各板部材42dが存在しない場合に比べ、基板2の中央付近及び基板2の縁付近における気体の当たり方や気体の拡散の仕方が同じになるので、基板2の中央付近及び基板2の縁付近における各溶質物の厚さ方向の断面形状を同じにすることが可能になる。ここで、各板部材42dが存在しない場合には、基板2の中央付近及び基板2の縁付近における気体の当たり方や気体の拡散の仕方が異なるため、基板2の中央付近及び基板2の縁付近における各溶質物の厚さ方向の断面形状が異なってしまう。
以上説明したように、本発明の第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、基板保持テーブル42上の基板2の周囲に各板部材42dを設けることによって、各板部材42dが存在しない場合に比べ、基板2の中央付近及び基板2の縁付近における気体の当たり方や気体の拡散の仕方が同じになるので、基板2の中央付近及び基板2の縁付近における各溶質物の厚さ方向の断面形状を同じにすることが可能になる。これにより、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性をさらに向上させることができ、その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を確実に防止することができる。
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態について図20乃至図25を参照して説明する。
本発明の第7の実施の形態は第1の実施の形態の変形であり、本発明の第7の実施の形態に係る流体吹出装置101Aは第1の実施の形態に係る溶解吹出ヘッド43あるいは乾燥吹出ヘッド47に適応することができる。したがって、第1の実施の形態と異なる部分、流体吹出装置101Aについて説明する。なお、第7の実施の形態においては、第1の実施の形態で説明した部分と同じ部分の説明を省略する。
図20乃至図22に示すように、本発明の第7の実施の形態に係る流体吹出装置101Aは、基体となる一対の第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102と、それらの間に設けられた一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104と、弾性を有する枠状の弾性部材105と、基体上に弾性部材105を介して設けられた蓋部材106とを備えている。この流体吹出装置101Aは、その吹出口Kの長手方向(スリット長手方向)を基板2の移動方向に平面内で直交する方向に平行にして設けられている。
第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102は、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を介してボルト等の複数の固定部材B1(図20参照)により互いに固定されて基体となる。第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104は第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102の長手方向の両端部にそれぞれ位置付けられて設けられている。これにより、吹出用流路F1(図22参照)が、流体(溶解用気体あるいは乾燥気体)が流れる方向に対して垂直方向に長いスリット(細長い隙間)状に形成され、流体吹出装置101Aの吹出口Kが長方形状となる。蓋部材106は、ボルト等の複数の固定部材B2(図20参照)により基体としての第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102に固定されて設けられている。なお、第1ブロック部材101、第2ブロック部材102、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104の材料としては、例えばステンレス等を用いる。
第1ブロック部材101は、直方体形状に形成された部材であり、長手方向に平行な第1ブロック主面M1a、第1ブロック主面M1aに垂直で長手方向に平行な第1ブロック長手側面M1b、第1ブロック主面M1bに垂直で短手方向に平行な第1ブロック短手側面M1c、第1ブロック主面M1aから第1ブロック長手側面M1bに連続して傾斜する第1ブロック傾斜面M1d、第1ブロック短手側面M1cから長手方向に伸びる第1ブロック流路101a、その第1ブロック流路101aより細く第1ブロック主面M1aから第1ブロック流路101aに直交する方向にそれぞれ伸びて連通し長手方向に並ぶ複数の第1ブロック細流路101bを有している。
第1ブロック流路101aは、第1ブロック部材101の第1ブロック短手側面M1cに長手方向に伸びる穴を形成することにより生成されている。この第1ブロック流路101aには、流体を供給する供給管(例えば溶解用気体供給管46あるいは乾燥気体供給管50)が接続される。また、各第1ブロック細流路101bは、蓋部材106の凹部106aの底面に向かってそれぞれ開口しており、その底面に向かって流体を吹き出す。これらの第1ブロック細流路101bは、第1ブロック部材101の第1ブロック主面M1aに第1ブロック流路101aに直交する方向に伸びる穴(オリフィス)を複数形成することにより生成されている。
第2ブロック部材102は、直方体形状に形成された部材であり、長手方向に平行な第2ブロック主面M2a、第2ブロック主面M2aに垂直で長手方向に平行な第2ブロック長手側面M2b、第2ブロック主面M2bに垂直で短手方向に平行な第2ブロック短手側面M2c、第2ブロック主面M2aから第2ブロック長手側面M2bに連続して傾斜する第2ブロック傾斜面M2d、第2ブロック短手側面M2cから長手方向に伸びる第2ブロック流路102a、その第2ブロック流路102aより細く第2ブロック主面M2aから第2ブロック流路102aに直交する方向にそれぞれ伸びて連通し長手方向に並ぶ複数の第2ブロック細流路102bを有している。
第2ブロック流路101bは、第2ブロック部材102の第2ブロック短手側面M2cに長手方向に伸びる穴を形成することにより生成されている。この第2ブロック流路102aには、流体を供給する供給管(例えば溶解用気体供給管46あるいは乾燥気体供給管50)が接続される。また、各第2ブロック細流路102bは、蓋部材106の凹部106aの底面に向かってそれぞれ開口しており、その底面に向かって流体を吹き出す。これらの第2ブロック細流路102bは、第2ブロック部材102の第2ブロック主面M2aに第2ブロック流路102aに直交する方向に伸びる穴(オリフィス)を複数形成することにより生成されている。
第1スペーサ部材103は、板状の部材であり、第1ブロック長手側面M1aと第2ブロック長手側面M2aとを向け合わせた状態の第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102の長手方向の一端部に位置付けられ、その板厚方向が第1ブロック長手側面M1a及び第2ブロック長手側面M2aに垂直にされて、第1ブロック長手側面M1aと第2ブロック長手側面M2aとの間に気密に設けられている。
第2スペーサ部材104は、第1スペーサ部材103と同じ厚さを有する板状の部材であり、前述の一端部に対する他端部に位置付けられ、その板厚方向が第1ブロック長手側面M1a及び第2ブロック長手側面M2aに垂直にされて、第1ブロック長手側面M1aと第2ブロック長手側面M2aとの間に気密に設けられている。
蓋部材106は、直方体形状の部材であり、長手方向に伸びる凹部106a(図22参照)を有し、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を介して組み立てられた状態の第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102における第1ブロック主面M1a及び第2ブロック主面M2a上に弾性部材105を介して、凹部106aが第1ブロック主面M1aの各第1ブロック細流路101b及び第2ブロック主面M2aの各第2ブロック細流路102bを覆うように設けられている。
また、第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102には、図20及び図22に示すように、各固定部材B2がそれぞれ挿入される複数の穴部h1が設けられており、弾性部材105には、各固定部材B2がそれぞれ挿入される複数の貫通孔h2が設けられている。さらに、蓋部材106にも、各固定部材B2がそれぞれ挿入される複数の貫通孔h3が設けられている。各穴部h1は各ブロック部材101、102の周縁に等ピッチで設けられており、各貫通孔h2も弾性部材105の形状に沿って等ピッチで設けられており、各貫通孔h3も蓋部材106の周縁に等ピッチで設けられている。各穴部h1には、らせん状の溝が形成されており、各穴部h1は雌ネジとして機能する。したがって、各固定部材B2としては、例えば雄ネジを用いる。
ここで、第1ブロック流路101a及び第2ブロック流路102aの直径は、例えば12mmである。第1ブロック細流路101b及び第2ブロック細流路102bの直径は、例えば2mm±0.005mmであり、第1ブロック細流路101b及び第2ブロック細流路102bのピッチは、例えば10mmである。また、吹出用流路F1のスリット間隔(スリットの短手方向の幅)は、例えば0.5mmあるいは1.5mmである。すなわち、一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104の厚さが、例えば0.5mmあるいは1.5mmである。このように一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を他の厚さを有する一対のスペーサ部材に交換するだけでスリット間隔を変更することが可能である。したがって、各種の厚さを有する一対のスペーサ部材を用意しておくことにより、容易にさらに精度良くスリット間隔を変更することができる。
このような流路構造によれば、流体(例えば溶解用気体あるいは乾燥気体)は第1ブロック流路101a及び第2ブロック流路102aから各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bに流れることになるので、その流体の圧力損失が大きくなる。これにより、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bからの吹出風速が一定となる。さらに、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bを通過した流体は、蓋部材106の凹部106aの底面に当接して分散された後、第1ブロック傾斜面M1d及び第2ブロック傾斜面M2dにより導かれて吹出用流路F1に到達するので、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bの影響を受けない均一な流速分布(吹付風速分布)を得ることができる。
蓋部材106は、長手方向に伸びる凹部106aに加え、第1ブロック部材101における第1ブロック長手側面M1bに対向する第1ブロック対向側面M1eに沿って離間する基準部106bと、その基準部106bに第1ブロック対向側面M1eを押圧可能に長手方向に並べて設けられた複数の押圧部材B3とを具備している。
各押圧部材B3は、第1ブロック部材101の外面(図22中の左側の外面)である第1ブロック対向側面M1eを吹出用流路F1が狭くなる方向にそれぞれ押す部材である。また、基準部106bは、第1ブロック部材101の第1ブロック対向側面M1eから離間して略平行に長手方向に伸びている。この基準部106bは第1ブロック部材101より曲げ強度が高くなるように形成されており、基準部106bはスリット間隔を調整する際の基準位置となる。
基準部106bには、各押圧部材B3がそれぞれ挿入される複数の貫通孔h4が設けられている。これらの貫通孔h4は、流体が吹出用流路F1を通過する方向に垂直な方向、すなわち長手方向に並べて一列にそれぞれ設けられている。また、第1ブロック部材101の第1ブロック対向側面M1eには、各貫通孔h4に対向させて複数の穴部101cが設けられている。これらの穴部101cも長手方向に一列に並ぶことになる。各貫通孔h4には、らせん状の溝がそれぞれ形成されており、各貫通孔h4は雌ネジとして機能する。したがって、各押圧部材B3としては、例えば雄ネジを用いる。各押圧部材B3は各貫通孔h4及び各穴部101cにそれぞれ挿入されて設けられている。
また、基準部106bには、その基準部106a2の長手方向と同じ方向(スリット長手方向)に伸びる補強部106cが設けられている。これにより、基準部106bの反り等が防止されている。ここで、蓋部材106及び基準部106bを有する流体吹出装置101Aは支持部材(例えば支持部44)により支持されるため、その重量は軽いことが望ましい。このため、基準部106bができるだけ薄くなるように形成されるため、基準位置となる基準部106bに反りが生じてしまうことがある。そこで、その基準部106bの反りを防止するため、基準部106bを肉厚にする補強部106cが設けられている。これにより、重量の増加を抑制しながら、基準部106bの強度を増加させることができる。なお、重量より強度の向上を目的とする場合には、補強部106cに加え、その補強部106cに対して垂直な複数の補強部を等ピッチで設けるようにしてもよい。
ここで、図21に示すように、流体吹出装置101Aの長手方向の長さL1は、例えば1000mmであり、流体吹出装置101Aの短手方向の長さ(例えば、70mm程度)に比べ非常に長い。このため、反りが流体吹出装置101Aの長手方向に発生しやすいので、補強部106cを設ける必要がある。この補強部106cは、その厚さL2が5mmとなるように形成され、長さL3が30mm、長さL4が30mmとなるように設けられている。なお、各固定部材B2のピッチL5は、例えば40mmであり、各押圧部材B3のピッチL6は、例えば30mmである。
なお、基板2の大型化に伴って流体吹出装置101Aも大型化し、その吹出口Kの長手方向の大きさも例えば1000mm程度と大きくなっている。このため、吹出口Kの平面形状を長方形にすることは困難であり、特に、吹出口Kの短手方向の幅(スリット間隔)が一定とならないことが多い。この場合には、溶解用気体を一様(均一)に吹き出すことが困難となり、基板2の面内で各溶質物の凹凸率の均一性が低下してしまう。このため、吹出口Kの短手方向の幅(スリット間隔)を一定に調整することが必要となる。
スリット間隔の調整を行う場合には、各押圧部材B3が操作者等により回転させられ、流体吹出装置101Aの第1ブロック部材101の外面(第1ブロック対向側面M1e)を押す押圧力が調整され、吹出用流路F1のスリット間隔が変更される。このとき、スリット状の吹出口Kの平面形状を長方形、すなわち流体吹出装置101Aの吹出用流路F1の流路断面形状が長方形になるように押圧力が調整される。これにより、吹付風速分布の微調整を行うことが可能になる。なお、この押圧力が弱められると、第1ブロック部材101の復元力により吹出用流路F1のスリット間隔が広がることになる。
ここで、吹付風速分布が生じると、塗布対象面内で各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきが発生してしまう。また、吹付風速分布が均一でない場合には、風速の弱い部分に合わせて風速条件を設定しなれければならず、気体を必要以上に消費するため、ランニングコストが悪化してしまう。したがって、吹付風速分布を均一に調整する必要がある。
吹付風速分布を調整する場合には、オペレータ等の調整者は、例えば熱線の温度変化により風速を計測する熱線風速計(図示せず)を用いて、流体吹出装置101Aの吹出口Kの近傍に熱線を近づけて、その吹出口Kの長手方向に等ピッチで移動させながら、各箇所での風速を計測する。詳述すると、調整者は、まず、左端の押圧部材B3の下方(図21中)からスリットの長手方向に沿って30mmピッチで熱線を移動させ、順次、押圧部材B3の下方の風速を計測する。次いで、調整者は、押圧部材B3の間の中央(左端の押圧部材B3から15mmの位置)の下方からスリットの長手方向に沿って30mmピッチで熱線を移動させ、順次、押圧部材B3の間の下方の風速を計測する。その後、調整者は、計測した風速に基づいて各押圧部材B3を微調整し、吹付風速分布を均一にする。なお、溶解用気体の風速は、用いるインクの種類等に応じて調整されるが、例えば1.5m/s±0.05m/sであり、同様に、乾燥気体の風速も、用いるインクの種類等に応じて調整されるが、例えば3.0m/s±0.05m/sである。
また、吹付風速分布の調整負担、すなわちスリット間隔調整負担を軽減するためには、スリット間隔(吹出口Kの短手方向の幅)があらかじめ一定になっていることが好ましい。そのスリット間隔を一定にするためには、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104が互いに同じ平坦度を有することが好ましく、さらに、吹出用流路F1を形成する壁面を平行にするためには、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104の表裏面が平行になることが好ましい。したがって、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を同時に研磨する研磨加工が行われる。
すなわち、一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104の研磨工程では、図23に示すように、一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104が載置台111A上に載置され、その状態で荒削り用の研磨部材112Aにより研磨される(第1研磨)。次いで、図24に示すように、第1研磨後の一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104が載置台111B上に載置され、その状態で砥石のラップ盤等の研磨部材112Bにより研磨される(第2研磨)。最後に、図25に示すように、第2研磨後の一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104が載置台111C上に載置され、その状態でバフ研磨用の研磨部材112Cにより研磨される(第3研磨)。
このように、スリット状の吹出用流路F1を形成するために一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を用いることによって、それらの第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を同時に研磨することが可能になるので、一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104の互いの平坦度を同じにすることができ、さらに、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104の表裏面の平行度を向上させることができる。特に、一対の第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104が一対の第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102に比べ非常に小さい板部材であることから、それらの第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104に対して複数の研磨工程を同時に行うことが可能になるので、所望の面精度(例えば、平坦度0.02mm以下)を得ることができる。
したがって、第1スペーサ部材103及び第2スペーサ部材104を第1ブロック部材101及び第2ブロック部材102と別体にして流体吹出装置101Aを構成することから、それらの部材が一体である場合に比べ、所望の面精度を容易に得ることができる。各部材のいずれかあるいは全てを一体に構成する場合には、スライス加工等が用いられることになるため、面精度は例えば、平坦度0.1mm程度となって悪く、所望の面精度(例えば、平坦度0.02mm以下)を得ることは難しい。
以上説明したように、本発明の第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第1ブロック流路101a、第2ブロック流路102a、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bを設けることによって、流体(例えば溶解用気体あるいは乾燥気体)は第1ブロック流路101a及び第2ブロック流路102aから各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bに流れるので、流体の圧力損失が大きくなり、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bからの吹出風速が一定となる。加えて、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bが蓋部材106の凹部106aの底面に向けて流体を吹き出すことから、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bを通過した流体は、その凹部106aの底面に当接して分散された後、吹出用流路F1に到達する。これらのことから、各第1ブロック細流路101b及び各第2ブロック細流路102bの影響を受けずに均一な吹付風速分布(流量分布)を得ることができる。このようにして、塗布対象面内で各溶質物の凹凸率の均一性をさらに向上させることができ、その結果、各溶質物の厚さ方向の断面形状のばらつきに起因する塗布体2aの製造不良の発生を確実に防止することができる。
また、蓋部材106に基準部106bを設け、その基準部106bに各押圧部材B3を長手方向に並べて設けることによって、流体吹出装置101Aの吹出用流路F1のスリット間隔を調整することが可能になるので、流体吹出装置101Aからの流体(例えば溶解用気体あるいは乾燥気体)の一様な吹き出し、すなわち吹付風速分布の均一化をより確実に実現することができる。さらに、各押圧部材B3が吹出用流路F1内に存在せず、各押圧部材が吹出用流路F1内に存在する場合に比べ、その吹出用流路F1を通過する流体の流れを妨げることがなくなるので、流体を一様に吹き出すことができる。したがって、流体が溶解用気体である場合には、基板2の全面に亘って加湿が一様に行われるので、基板2の面内で各溶質物の凹凸率の均一性を向上させることができる。
なお、本発明の実施の形態では、流体吹出装置101Aを溶解吹出ヘッド43あるいは乾燥吹出ヘッド47等の気体吹出装置に適応させているが、これに限るものではなく、例えば、流体として液体を吹き出す液体吹出装置に適応させることも可能である。
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、前述の実施の形態においては、溶解吹付部6bの溶解吹出ヘッド43、乾燥吹付部6cの乾燥吹出ヘッド47及び排気部6dの吸引ヘッド51に対して基板2を移動させるようにしているが、これに限るものではなく、例えば、基板2に対して溶解吹出ヘッド43、乾燥吹出ヘッド47及び吸引ヘッド51を移動させるようにしてもよく、溶解吹出ヘッド43、乾燥吹出ヘッド47及び吸引ヘッド51と基板2とを相対移動させるようにすればよい。
また、前述の実施の形態においては、溶解吹付部6bの溶解吹出ヘッド43、乾燥吹付部6cの乾燥吹出ヘッド47及び排気部6dの吸引ヘッド51を基板2に対する各々の相対位置を変更可能に設けているが、これに限るものではなく、例えば、基板2に対する各々の相対位置を固定して設けるようにしてもよい。
また、前述の実施の形態においては、溶解吹出ヘッド43と吸引ヘッド51と別体として設けているが、これに限るものではなく、例えば、溶解吹出ヘッド43と吸引ヘッド51とを連結して一体構造にするようにしてもよい。
また、前述の実施の形態においては、排気部6d(吸引ヘッド51及び排気管54等)を設けているが、これに限るものではなく、加湿量を適正に維持することや、処理ごとに強制的に装置内の雰囲気を置換すること等を行うことにより、装置内で局所的に湿度が徐々に上がるようなことがなくなる場合には、排気部6d(吸引ヘッド51及び排気管54等)を設けないようにしてもよい。
また、前述の実施の形態においては、第2の溶媒を気化して吹き付けているが、これに限るものではなく、溶媒の飛散が十分に防げるように設計されたならば、霧化した溶媒を、乾燥した気体によって溶質に吹き付けるように構成してもよい。
また、前述の実施の形態においては、第1の溶液を噴射して被塗布物に付着させた後、減圧乾燥させる工程を経てから第2の溶媒によって溶質を溶解する工程を示しているが、これに限るものではなく、物品を製造する上で減圧乾燥させる必要がない場合には、その工程を省略するようにしてもよい。
また、第1の溶媒と第2の溶媒とは、同じ組成の液体であってもよいし、異なる組成の液体であってもよい。なお、通常、第1の溶媒としては、液滴噴射ヘッドFからの液離れ性が良好な溶媒を用い、第2の溶媒としては、作業環境保全の観点から水を用いることが好ましい。溶媒としては、特段の事情がない限り、溶質と化学的な反応をして反応産物が形成されない物質が選択されるが、必要に応じて溶媒を適宜選択してもよい。
また、前述の実施の形態においては、検出部6fの各距離センサ71の下方を通過する基板2を往復移動させ、往路で離間距離H4を順次測定し、復路で測定データに基づいて溶解及び乾燥を行っているが、これに限るものではなく、例えば、往路で測定、溶解及び乾燥の全てを行うようにしてもよい。この場合には、往路で離間距離H4を順次測定し、その測定データに基づいて溶解及び乾燥をリアルタイムで順次行う。
また、前述の実施の形態においては、支持部44及び支持部48により溶解吹出ヘッド43及び乾燥吹出ヘッド47を水平にZ軸方向に移動させているが、これに限るものではなく、それらに傾きを持たせてZ軸方向に移動させるようにしてもよい。この場合には、両側に位置する2つの距離センサ71により測定された2つの測定データを平均することなく、そのまま用いることが可能になる。これにより、移動する基板2に対する離間距離H1及び離間距離H2を精度良く一定にすることが可能になるので、基板2の全面に亘って加湿及び乾燥をより一様に行うことができる。
また、前述の実施の形態においては、基板収容部3、液滴噴射モジュール4、減圧乾燥モジュール5、復潤乾燥モジュール6、塗布体収容部7及び搬送部8をモジュール化し、1つのシステムとして構成しているが、これに限るものではなく、例えば、基板収容部3、液滴噴射モジュール4、減圧乾燥モジュール5、復潤乾燥モジュール6、塗布体収容部7及び搬送部8を1つの装置として一体に構成するようにしてもよく、さらに、それらのうちの一部、例えば液滴噴射モジュール4、減圧乾燥モジュール5、復潤乾燥モジュール6だけを1つの装置として一体に構成するようにしてもよい。
最後に、前述の実施の形態においては、各種の数値を挙げているが、それらの数値は例示であり、限定されるものではない。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、各部の具体的構成等は、適宜変更可能である。また、実施形態に記載された作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。本発明は、例えば、塗布対象物に向けて液滴を噴射する装置やこの液滴の溶質が付着する塗布体の製造方法、流体を吹き出す装置等で用いられる。