JPH11135226A - 嵌合型接続端子の製造方法 - Google Patents

嵌合型接続端子の製造方法

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JPH11135226A
JPH11135226A JP9294075A JP29407597A JPH11135226A JP H11135226 A JPH11135226 A JP H11135226A JP 9294075 A JP9294075 A JP 9294075A JP 29407597 A JP29407597 A JP 29407597A JP H11135226 A JPH11135226 A JP H11135226A
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plating layer
layer
terminal
copper
tin
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JP9294075A
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English (en)
Inventor
Atsushi Nakamura
篤 中村
Jun Shiotani
準 塩谷
Atsuhiko Fujii
淳彦 藤井
Yoshifumi Saka
喜文 坂
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Sumitomo Wiring Systems Ltd
AutoNetworks Technologies Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Wiring Systems Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Harness System Technologies Research Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銅亜鉛合金の母材を使用した場合であっても
安定した接触抵抗を維持したまま端子の挿入力を低下で
きる嵌合型接続端子の製造方法を提供する。 【解決手段】 母材1の表面に近い側から順にニッケル
めっき層2、銅めっき層3、錫めっき層4を形成する。
これに150℃以上170℃以下の温度条件において熱
処理を施す。この温度域では、銅は錫中を容易に拡散し
て錫めっき層4と銅めっき層3との界面近傍からCu6
Sn5層5が生成され、合金化が促進される。Cu6Sn
5層5は錫めっき層4の表面と平行に均一に成長するた
め、錫めっき層2を薄く残留させるような熱処理条件と
すれば、端子表面の見かけの硬度を高めることができ、
安定した接触抵抗を維持したまま端子の挿入力を低下す
ることができる。ニッケルめっき層2は、亜鉛の拡散防
止層として作用し、母材1中の亜鉛が錫めっき層4の表
面まで拡散して、酸化亜鉛を形成するのを防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、産業機器
などの電気配線に用いられる嵌合型接続端子の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、一般に、自動車、産業機器な
どの電気配線において電線同士の接続に用いられる嵌合
型接続端子には、錫めっきが施されてきた。これは、端
子の接続時に、錫めっきの表面酸化皮膜を摩擦によって
破壊し、新鮮な錫を凝着させることにより、低い接触抵
抗を安定して得ることを目的としたものである。
【0003】また、自動車のABS(アンチロックブレ
ーキシステム)やエアバックなど、特に重要な信号回路
に用いられる電気配線には、接続端子に金めっきを施し
て使用していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記錫めっきの凝着
は、錫の硬度が低い(ビッカース硬度40〜80)こと
に起因するものである。しかし、錫の硬度が低いこと
は、接続時の挿入力を上昇させるという問題の原因とも
なっている。すなわち、端子の嵌合接続時には錫めっき
の凝着磨耗が発生し、錫の変形抵抗に逆らって嵌合させ
るため、挿入力が上昇することとなる。
【0005】ところで、自動車などの電気配線では複数
の電線の束(以下、「ワイヤーハーネス」と称する)を
1つのコネクタで接続するのが一般的であり、コネクタ
の接続に必要な力は、端子1個当たりの挿入力に電線の
本数(従来は、一般に10極〜20極)を乗じた値とし
て概算することができる。従って、端子1個当たりの挿
入力が高いと、コネクタの接続に必要な力はワイヤーハ
ーネスの電線数に応じた大きな値となる。
【0006】特に、近年のカーエレクトロニクスの著し
い進歩・発展は、自動車に搭載する電子機器やCPUの
数を飛躍的に増加させ、それに伴ってワイヤーハーネス
の電線本数を増加し、コネクタの多極化(30極〜40
極)を図りたいとの要望も強まっている。
【0007】しかしながら、上述の如く、コネクタを多
極化すると当該コネクタの接続に必要な力も電線本数に
比例して上昇し、ボルトやてこなどの補助機構なしで
は、コネクタの接続ができなくなる。このため、端子を
小型化しても、補助機構がコネクタの小型化・軽量化を
阻害することとなる。
【0008】端子の挿入力を低減するには、接点圧力
(嵌合部で接点に与える押しつけ力)を低下させること
が考えられるが、この場合は、安定した低い接触抵抗が
得られなくなる。換言すれば、安定した接触抵抗を維持
したまま端子の挿入力を低下させることが困難であるた
め、コネクタを多極化する際に補助機構が不可欠とな
り、コネクタの小型化・軽量化を阻害する要因となって
いる。
【0009】なお、接続端子に金めっきを使用すれば、
低い接点圧力でも低い接触抵抗が安定して得られるた
め、端子の挿入力を低くすることができ、コネクタを多
極化してもその接続に要する力が著しく上昇することは
ないが、金めっきは錫めっきに比較して数倍〜数十倍の
コストを要するため、特に多極化したコネクタには適し
ない。
【0010】そこで、本発明者等は、銅または銅合金の
母材の表面に錫めっき層を形成した後、熱処理を行い、
銅と錫めっき層との界面近傍にCu6Sn5金属間化合物
を生成させることによって端子の見かけの表面硬度を上
昇させることにより、端子挿入力を低下させる技術を案
出した。この技術によれば、安定した低い接触抵抗を維
持したまま端子の挿入力を低下させることができる。
【0011】ところが、母材として銅亜鉛合金を使用し
た場合には、熱処理中に亜鉛が銅錫金属間化合物中を極
めて容易に拡散し、上記錫めっき層の表面において酸化
亜鉛の層を形成する。この現象は良く知られており、一
般に当該現象を防ぐためには、錫めっき層の下地めっき
として純銅のめっき層を形成する。
【0012】しかし、本発明者等が案出した技術におけ
る熱処理では、下地めっきの純銅層がすべて銅錫金属間
化合物となるため、亜鉛は容易に表面まで拡散し、酸化
亜鉛の層を形成する。そして、酸化亜鉛の層が形成され
ると、端子の接触抵抗が上昇するという不具合を生じ
る。
【0013】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
であり、銅亜鉛合金の母材を使用した場合であっても安
定した接触抵抗を維持したまま端子の挿入力を低下でき
る嵌合型接続端子の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1の発明は、銅亜鉛合金を母材とする雄部品
および雌部品の嵌合によって電気的接触を得る嵌合型接
続端子の製造方法であって、(a)前記雄部品または前記
雌部品のうち少なくとも一方の銅亜鉛合金母材の表面に
ニッケルめっき層を形成するニッケルめっき工程と、
(b)前記ニッケルめっき層の表面に銅めっき層を形成す
る銅めっき工程と、(c)前記銅めっき層の表面に錫めっ
き層を形成する錫めっき工程と、(d)前記錫めっき層が
形成された前記銅亜鉛合金母材に熱処理を行って前記錫
めっき層のうち前記銅めっき層との界面近傍のみをCu
6Sn5に合金化する熱処理工程と、を備えている。
【0015】また、請求項2の発明は、請求項1の発明
に係る嵌合型接続端子の製造方法において、前記熱処理
を150℃以上170℃以下で行っている。
【0016】また、請求項3の発明は、請求項1または
請求項2の発明に係る嵌合型接続端子の製造方法におい
て、前記熱処理工程に、前記雄部品または前記雌部品の
うちの一方の前記嵌合による摺動部分に0.1μm〜
0.3μmの厚さの錫めっき層を残留させ、他方の前記
嵌合による摺動部分に0.1μm以上の厚さの錫めっき
層を残留させる工程を含ませている。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の
実施の形態について詳細に説明する。
【0018】<A.嵌合型接続端子の形態>図1は本発
明に係る製造方法によって製造された嵌合型接続端子の
側面図であり、また、図2は当該嵌合型接続端子の接続
部分の一部切欠平面図である。
【0019】図示のように、本発明に係る嵌合型接続端
子は雄端子10と雌端子20とで構成されている。雄端
子10は、電線との圧着部であるワイヤバレル11と、
雌端子20との嵌合部であるタブ12とを形成してい
る。また、タブ12の上面および下面は平滑な摺動面と
している。
【0020】雌端子20は、電線との圧着部であるワイ
ヤバレル24と、雄端子10との嵌合部25とを形成し
ている。嵌合部25は、中空の箱形状であり、舌片2
1、エンボス22およびビード23とをその内部に備え
ている。なお、図2は、嵌合部25の内部を示した一部
切欠平面図である。
【0021】エンボス22は、舌片21の上部に設けら
れた凸状の部材であり、雄端子10との嵌合時には、タ
ブ12の摺動面と点接触する。舌片21は、接点圧力す
なわちエンボス22をタブ12に押しつける圧力を作用
させるバネとしての機能を有している。また、ビード2
3も凸状の部材であり、タブ12とエンボス22が接触
する面と反対側の摺動面で接触し、当該エンボス22が
タブ12に及ぼす接点圧力を受ける。
【0022】雄端子10を雌端子20に嵌合させる際に
は、タブ12をエンボス22とビード23との間隙に挿
入する。そして、このときにタブ12の上下面のうちの
一方はエンボス22と、他方はビード23と摺動する。
エンボス22はタブ12と点接触しているため、エンボ
ス22の摺動部分は点であり、また、タブ12の摺動部
分は線である。また、ビード23についてはタブ12と
の接触部分がそのまま摺動部分となり、タブ12側の摺
動部分は上記同様線となる。
【0023】<B.嵌合型接続端子の製造方法>次に、
嵌合型接続端子の製造方法について説明する。本実施形
態における嵌合型接続端子は、母材として亜鉛を含む銅
合金を使用し、例えば丹銅(亜鉛の含有量が20%以下
の銅亜鉛合金)、黄銅(亜鉛の含有量30%〜40%の
銅亜鉛合金)、洋白(銅ニッケル亜鉛合金)などを使用
する。製造工程としては、まず母材となる板状の条材に
めっき処理を行った後、その条材を上記形態に加工し、
さらに加工後の端子に熱処理を施して嵌合型接続端子を
製造する。
【0024】<B−1.めっき工程>まず、めっき層の
密着性を高めるため、板状の条材表面の洗浄や酸化皮膜
の除去などの前処理を行う。そして、次に、条材の表面
にめっき処理を施し、めっき層を形成する。本実施形態
でのめっき工程は、 ニッケルめっき 銅めっき 錫めっき の順に行われ、母材表面に近い側から順にニッケルめっ
き層、銅めっき層、錫めっき層を形成する。
【0025】このときに、ニッケルめっき層の厚さは
0.3μm以上1.0μm以下とし、銅めっき層の厚さ
は0.3μm以上0.8μm以下とし、錫めっき層の厚
さは0.5μm以上2.0μm以下としている。ニッケ
ルめっき層の厚さを0.3μm以上1.0μm以下とし
ているのは、0.3μm未満では後述する亜鉛の遮蔽効
果が不足し、1.0μmより大きいとき端子への加工時
における加工性が低下するからである。また、銅めっき
層の厚さを0.3μm以上0.8μm以下としているの
は、0.3μm未満では後述する合金化の制御が困難と
なり、0.8μmより大きいとめっき層のき裂が発生し
て耐食性が低下するおそれがあるからである。さらに、
錫めっき層の厚さを0.5μm以上2.0μm以下とし
ているのは、銅めっき層と同様に、0.5μm未満では
合金化の制御が困難となり、2.0μmより大きいとめ
っき層のき裂が発生して耐食性が低下するおそれがある
からである。
【0026】また、めっきの手法としては、電気めっ
き、無電解めっきなどの湿式めっきが適用可能な他に蒸
着やスパッタリングなどの乾式めっきを用いてもよい。
【0027】上記の各めっき処理後、条材を加工して図
1および図2に示すような形態の雄端子10および雌端
子20に成形する。熱処理前に成形加工を行うのは、後
述するように熱処理後は錫めっき層の一部が金属間化合
物に合金化されて硬化し、成形性が劣化するからであ
る。
【0028】<B−2.熱処理工程>次に、成形後の端
子の熱処理を行う。熱処理時の錫めっき層の変化につい
て図3を用いて説明する。
【0029】熱処理前においては、図3(a)に示す如
く、銅亜鉛合金の母材1の表面に近い側から順にニッケ
ルめっき層2、銅めっき層3、錫めっき層4が形成され
た状態となっている。そして、この状態で150℃以上
170℃以下の温度条件において熱処理を施す。錫中に
おける銅の拡散係数は常温においても比較的大きいが、
150℃以上170℃以下の温度条件ではさらに大きく
なり、銅は錫中を容易に拡散して錫めっき層4と銅めっ
き層3との界面近傍から順にCu6Sn5層5が生成さ
れ、合金化が促進される(図3(b)の状態)。ここ
で、熱処理の温度条件を150℃以上170℃以下にし
ているのは、150℃未満では錫中における銅の拡散速
度が遅く合金化に長時間を要し、また170℃より大き
いと錫めっき層4と銅めっき層3との界面近傍からCu
3Snが生成されるからである。
【0030】170℃よりも大きい温度領域では、低温
域あるいは早期にできた金属間化合物Cu6Sn5が金属
間化合物Cu3Snに変化して成長するのであるが、こ
の金属間化合物Cu3Sn層6は柱状に成長する(図3
(c)の状態)。このような状態になると、端子の表面
の凹凸が激しくなるため、端子の接触抵抗が上昇する。
なお、図3(c)において点線で示しているのは、熱処
理前の錫めっき層4の表面である。
【0031】これに対して、Cu6Sn5層5は錫めっき
層4の表面と平行に均一に成長するため、錫めっき層4
の表面が凹凸になることもなく、また、錫めっき層4の
表面は純錫のみであるため耐食性が低下することもな
い。
【0032】熱処理中、金属間化合物Cu6Sn5層5は
時間とともに成長し、それに従って残留錫めっき層4の
厚さが薄くなる。錫めっき層2が完全に金属間化合物C
6Sn5層5に変化すると、当該金属間化合物Cu6
5層5は硬度が高いため、端子の接触抵抗が高くなる
こともある。そこで、本実施形態では、熱処理温度と時
間とを調節して錫めっき層4を残留させるとともに、端
子挿入力の低下を目的としてその残留厚さを制御してい
る。この技術についてはさらに後述する。
【0033】ところで、銅亜鉛合金の母材1の表面に直
接錫めっき層4を形成し、150℃以上170℃以下の
温度条件において熱処理を行っても、Cu6Sn5層5を
生成させることはできる(図3(d)の状態)。しかし
ながら、既述したように、この場合は熱処理中に母材1
中の亜鉛がCu6Sn5層5内を極めて容易に拡散し、錫
めっき層4の表面において酸化亜鉛を形成し、端子の接
触抵抗を上昇させることとなる。
【0034】これに対して、本実施形態では、母材1の
直上にはニッケルめっき層2を形成している。亜鉛はニ
ッケル中においてはほとんど拡散しないため、母材1中
の亜鉛が錫めっき層4の表面まで拡散して、酸化亜鉛を
形成することはなくなり、その結果端子の接触抵抗の上
昇を抑制することができる。すなわち、ニッケルめっき
層2は亜鉛の拡散防止層としての役割を果たすこととな
る。
【0035】ここで、亜鉛の拡散防止という観点から
は、ニッケルめっき層2の代わりに銅のめっき層を使用
することもできるが、銅のめっき層は錫との反応速度が
速く、急速に銅錫金属間化合物に変換され、亜鉛の拡散
防止層としての役割を果たせなくなる。これに対して、
ニッケルは銅に比べて錫との反応速度が遅いため、熱処
理中においても純ニッケルの層が残留し、亜鉛の拡散を
防止する。
【0036】<B−3.残留錫めっき層の厚さ制御>残
留錫めっき層4の厚さ制御は、主として端子の挿入力低
下の観点から行われる。すなわち、安定して低い接触抵
抗を得るためには錫めっき層4を残留させる必要がある
が、当該錫めっき層4が厚いと既述したように錫の凝着
に起因して挿入力が上昇する。
【0037】そこで本実施形態においては、錫めっき層
4を厚さ0.1μm〜1.0μmの範囲内で残留させる
ことによって端子の接触部分の見かけの硬度を高くし、
挿入力を低減させている。このことを以下に示す実験結
果を使用して説明する。
【0038】実験は、雄端子10および雌端子20の残
留錫めっき層4の厚さをそれぞれ0.1μm〜1.0μ
mまで変化させ、当該雄端子10を雌端子20に嵌合さ
せるときの挿入力を測定して行った。次の表1はその実
験結果である。
【0039】
【表1】
【0040】従来における端子への錫めっき厚さを1.
0μmとすると、端子挿入力は0.74kgfである。
以下、この従来の挿入力を基準値として説明を続ける。
【0041】実験結果が示すように、雄端子10または
雌端子20のうちの一方の錫めっき層4の厚さを0.1
μm〜0.3μmとし、他方の錫めっき層4の厚さを
0.1μm以上とすると、基準値と比較して挿入力を少
なくとも10%以上低減(0.67kgf以下)でき
る。これは、錫めっき層4が薄くなるにしたがって、金
属間化合物Cu6Sn5層5の硬度が端子の硬度に影響す
るようになり、端子の見かけの硬度が高くなる。そし
て、端子の見かけの硬度が高くなることによって、錫め
っきの凝着が抑制され、挿入力が低くなったものであ
る。
【0042】また、発明者等は、錫めっき層4の厚さが
0.1μm以上あれば、耐食性および接触抵抗について
端子に要求される条件を満たすことを実験によって確認
している。
【0043】従って、必要な挿入力低減効果を得るため
には、雄端子10および雌端子20の錫めっき層4を所
定の厚さだけ残留させるように熱処理の温度および時間
を制御すればよい。以下、一例として、雌端子20の錫
めっき層4の厚さを1.0μmとしたとき(雌端子20
についてはめっき処理のままで熱処理を行わない)に、
雄端子10の熱処理条件を変化させて所定の厚さの錫め
っき層4を残留させ、必要な挿入力低減効果を得る手法
について説明する。
【0044】図4は、雌端子20の錫めっき層4の厚さ
を1.0μmとしたときの、雄端子10の残留錫めっき
層4の厚さと端子挿入力との相関を示す図である。な
お、この図は表1の結果の一部を示したものである。
【0045】図4より、端子挿入力を10%低減するた
めには雄端子10の錫めっき層4の厚さを0.40μ
m、また、20%低減するためには0.23μm、30
%低減するためには0.16μmそれぞれ残留させれば
よいことが分かる。
【0046】次に、図5は、熱処理時間と残留錫めっき
層4の厚さとの相関を示す図である。なお、この図は初
期の錫めっき層4の厚さを1.0μmとして予め行った
実験から求められた結果である。
【0047】図5によれば、雄端子10の残留錫めっき
層4の厚さを0.40μmに(端子挿入力を10%低
減)するためには、温度150℃で2.7時間、温度1
60℃では1.6時間、温度170℃では0.8時間そ
れぞれ熱処理を行えばよい。また、雄端子10の残留錫
めっき層4の厚さを0.23μmに(端子挿入力を20
%低減)するためには、温度160℃で3.8時間、温
度170℃で2時間熱処理を行えばよい。さらに、雄端
子10の残留錫めっき層4の厚さを0.16μmに(端
子挿入力を30%低減)するためには、温度170℃で
3.5時間熱処理を行えばよい。
【0048】なお、上記熱処理パターンは一例であり、
雄端子10または雌端子20のうちの一方または両方に
ついて同様の熱処理を行い、所定の錫めっき層4の厚さ
を残留させるようにして、必要な挿入力低減効果を得れ
ばよい。例えば、初期の錫めっき層4の厚さが1.0μ
m以外の場合は、図5の相関関係が異なるため、それに
応じた熱処理時間とする必要がある。
【0049】以上、本発明の実施の形態について説明し
たが、この発明は上記の例に限定されるものではない。
例えば、雄端子10および雌端子20の形態は図1およ
び図2に記載した形態に限定されるものではなく、雄端
子および雌端子の嵌合によって電気的接触を得る嵌合型
接続端子であればよい。
【0050】また、端子の成型加工は熱処理後に行って
もよい。もっとも、熱処理後は金属間化合物Cu6Sn5
層5が生成して加工性が低下するため、本実施形態のよ
うに、端子の成型加工はめっき処理後熱処理前に行う方
が好ましい。
【0051】また、亜鉛の拡散防止層としては、ニッケ
ルめっき層2に限らず、導電性を有しかつ亜鉛を拡散さ
せることのない物質層であればよく、例えばチタンナイ
トライドなどであってもよい。
【0052】さらに、雄端子10および雌端子20の摺
動部分にのみ錫めっき層4を形成した後、熱処理を行え
ば、当該摺動部分については上記の効果が得られ、摺動
部分以外については金属間化合物が形成されないため、
電線との圧着時の加工性が低下するのを防止することが
できる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よれば、雄部品または雌部品のうち少なくとも一方の銅
亜鉛合金母材の表面にニッケルめっき層を形成するニッ
ケルめっき工程と、当該ニッケルめっき層の表面に銅め
っき層を形成する銅めっき工程と、当該銅めっき層の表
面に錫めっき層を形成する錫めっき工程と、錫めっき層
が形成された銅亜鉛合金母材に熱処理を行って錫めっき
層のうち銅めっき層との界面近傍のみをCu6Sn5に合
金化する熱処理工程と、を備えているため、厚さの薄い
錫めっき層を残留させることができ、安定した接触抵抗
を維持したまま端子の挿入力を低下することができる。
また、母材は銅亜鉛合金であるが、亜鉛はニッケル中に
おいてはほとんど拡散しないため、母材中の亜鉛が錫め
っき層の表面まで拡散して、酸化亜鉛を形成することは
なくなり、その結果安定した接触抵抗を維持することが
できる。
【0054】また、請求項2の発明によれば、熱処理を
150℃以上170℃以下で行っているため、Cu6
5を安定して成長させることができる。
【0055】また、請求項3の発明によれば、雄部品ま
たは雌部品のうちの一方の嵌合による摺動部分に0.1
μm〜0.3μmの厚さの錫めっき層を残留させ、他方
の嵌合による摺動部分に0.1μm以上の厚さの錫めっ
き層を残留させているため、従来と比較して挿入力を少
なくとも10%以上低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る製造方法によって製造された嵌合
型接続端子の側面図である。
【図2】図1の嵌合型接続端子の接続部分の一部切欠平
面図である。
【図3】熱処理時の錫めっき層の変化を説明するための
図である。
【図4】雄端子の残留錫めっき層の厚さと端子挿入力と
の相関を示す図である。
【図5】熱処理時間と残留錫めっき層の厚さとの相関を
示す図である。
【符号の説明】
1 母材 2 ニッケルめっき層 3 銅めっき層 4 錫めっき層 5 Cu6Sn5層 10 雄端子 12 タブ 20 雌端子 21 舌片 22 エンボス 23 ビード 25 嵌合部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塩谷 準 愛知県名古屋市南区菊住1丁目7番10号 株式会社ハーネス総合技術研究所内 (72)発明者 藤井 淳彦 愛知県名古屋市南区菊住1丁目7番10号 株式会社ハーネス総合技術研究所内 (72)発明者 坂 喜文 愛知県名古屋市南区菊住1丁目7番10号 株式会社ハーネス総合技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅亜鉛合金を母材とする雄部品および雌
    部品の嵌合によって電気的接触を得る嵌合型接続端子の
    製造方法であって、 (a) 前記雄部品または前記雌部品のうち少なくとも一方
    の銅亜鉛合金母材の表面にニッケルめっき層を形成する
    ニッケルめっき工程と、 (b) 前記ニッケルめっき層の表面に銅めっき層を形成す
    る銅めっき工程と、 (c) 前記銅めっき層の表面に錫めっき層を形成する錫め
    っき工程と、 (d) 前記錫めっき層が形成された前記銅亜鉛合金母材に
    熱処理を行って前記錫めっき層のうち前記銅めっき層と
    の界面近傍のみをCu6Sn5に合金化する熱処理工程
    と、を備えることを特徴とする嵌合型接続端子の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の嵌合型接続端子の製造方
    法において、 前記熱処理は150℃以上170℃以下で行うことを特
    徴とする嵌合型接続端子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の嵌合型接
    続端子の製造方法において、 前記熱処理工程は、前記雄部品または前記雌部品のうち
    の一方の前記嵌合による摺動部分に0.1μm〜0.3
    μmの厚さの錫めっき層を残留させ、他方の前記嵌合に
    よる摺動部分に0.1μm以上の厚さの錫めっき層を残
    留させる工程を含むことを特徴とする嵌合型接続端子の
    製造方法。
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