【発明の詳細な説明】
巨核球の成長と分化を刺激する組成物とその方法
発明の分野
本発明は、Mpl リガンドまたはMGDFと同義の新規タンパク質であって、巨核球
の成長を刺激し、巨核球の分化または成熟を増大させて、最終的に血小板を増大
させる新規タンパク質に関する。また、天然資源から前記タンパク質を均一な状
態で得る方法と、組み換え遺伝子技術によって前記タンパクを製造する方法につ
いても提供する。
本発明におけるその他の目的として、MGDF分子が水溶性ポリマーに付加してい
るような新規クラスのMGDF誘導体、かかる分子の調製方法についても広く関連し
ている。さらに別の目的としては、本発明は、MGDF誘導体が1 つまたはそれ以上
のポリエチレングリコール(PEG)基に付着しているMGDF誘導体と、かかる誘導体
の調製方法にも関する。
発明の背景
本発明には、少なくとも2 つの広範な研究領域が関与している。最初の領域は
巨核球の発生とこれに付随する血小板の産生に関する領域であり、2 つ目の領域
は成長因子受容体ファミリ
ーのポリペプチド構成因子、すなわち本発明におけるMpl レセプターおよびその
リガンドに関する領域である。以上研究領域のそれぞれについて、次に概説する
。
A.巨核球からの血小板産生
血液中の血小板は、出血の防止と血液凝固に欠くことのできない循環細胞であ
る。巨核球は細胞性の血小板供給源であり、一連の血液細胞を生み出す通常の前
駆細胞から発生する。この通常の前駆細胞は、分化可能な幹細胞またはPPSCとし
て知られる。
巨核球細胞前駆体細胞の階層付けは、適正な成長因子に反応してからIN VITRO
培養系に発生する巨核球(MK)コロニーの発生するまでの時間と大きさに基づいて
定義される。バースト形成ユニット巨核球(BFU-MK)は、もっとも原始的な巨核球
前駆体細胞である。BFU-MKは、きわめて多数のコロニー形成ユニット巨核球(CFU
-MK)を最終的に産生すると考えられており、さらに分化の進んだMK前駆細胞であ
る。
MK細胞は付随する分化過程を進行するにつれて有糸分裂能を失い、核内複製能
力を獲得していく。核内複製(または核内分裂)は、細胞分裂の起こらない状態
で核分裂を起こしている細
胞に起こる現象である。核内複製は、最終的に倍数体の巨核球形成を起こす。さ
らなるMKの成熟により、血小板を特徴づける細胞質オルガネラと膜構成要素を獲
得する。
血小板は、現在までにほとんど定義されていないMKの生理的断片化の最終的過
程又はその他のメカニズムにより、成熟MKから産生される。巨核球内において伸
展する膜構造を観察することにより、血小板形成のモデルをもたらし、前記モデ
ルにおいて、境界線を形作る膜系は、細胞内の発生期の血小板を形づくっている
。このほかに血小板形成のモデルとしては、巨核球が長い細胞質の過程であって
、おそらくは、血小板の大きさに相当する間隙から骨髄内および/または肺内の
血流圧によって収縮される過程を観察することによって発達したモデルがある。
前記の細胞質の過程は、血小板形成における仮定の役割を反映して、Becker & D
eBruynによって前血小板と命名されている。Becker and DeBruynらについては、
Amer.J.Anat.145:183(1976)を参照。
図1は、巨核球および血小板の発育に関与するさまざまな前駆細胞の概観を示
す。図の左側に描かれた細胞はPPSCであり、図中でPPSCの右側に位置している細
胞はBFU-MK、続いてCFU-MK
を示す。核内複製に関わる細胞は、図中PPSCのすぐ右側に位置している成熟巨核
球である。核内分裂の結果、この細胞が倍数体となった。その右隣の構造は前記
成熟巨核球の倍数体より発生した長い細胞質過程を含む。図の一番右には、前記
細胞質過程の断片化によって産生された多数の血小板を示す。
以下は、前述した巨核球分化および血小板産生に関する先行出版物の要約であ
る。
1.Williams,N.and Levine,R,F.,British Journal of Haematology 52:173-180
(1982)
2.Levin,J.,Molecular Biology and Differentiation of Megakaryocytes,pu
b Wiley-Liss,Inc.:1-10(1990).
3.Gewirtz,A.M.,The biology of Haematopoiests,pub Wiley-Liss,Inc.:123-1
32(1990).
4.Han,Z.C.,ET AL.,Int.J.Haematol.54:3-14(1991).
5.Nieuwenhuis,H.K.and Sixma,J.,New Eng.J.of Med.3271812-1813(1992).
6.Long,M.,Stem Cells 11:33-40(1993).
B.血小板形成の制御
多数の研究室から出された多大なデータからは、血小板産生
が体液性要因によって制御されていることが示唆される。この生物学的過程での
複雑さは、根本的に予測されておらず、現在、多数のヒト成長因子がこの能力を
保有しているようだ。
巨核球の制御は、多様な細胞レベルで生じる。多数のサイトカインが前駆細胞
のプールを拡大させることによって血小板産生を増強させている。ヒト成長因子
における二つ目のグループが、分化の進んだ細胞に作用する成熟因子としてはた
らき、核内複製を促進する。さらに、これら過程を制御する独立した2 つのバイ
オフィードバックのループがあるようだ。
いくつかの一族の非特異的造血成長因子が、MKの成熟に重要な役割を果たして
いる。顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン3(
IL-3)、IL-6、IL-11、白血病阻害因子(LIF)、およびエリトロポエチン(EPO)は、
各々がMKの大きさ、数または倍数性に及ぼす影響により決定づけられるように
、各々がIN VITROにおいて別個にヒトMKの成熟を促進する。LIF 、IL-6、および
IL-11 がMKの成熟に及ぼす影響は、IL-3が及ぼす影響に対して部分的に相乗効果
を呈する(LIFおよびIL-6)か、または全体的に相乗効果を呈する(IL-11)かのいず
れかである。in vivo のMK成熟を促進するには、複数の
サイトカインを組み合わせる必要のあることを上記先行文献のデータが示唆して
いる。
以下は、巨核球および血小板の産生における制御に関する先行出版物の要約で
ある。
7.Hoffman,R.et al.,Blood Cells 13:75-86(1987).
8.Murphy,M.J,Hematology/Oncology Clinics of North America 3(3):465-478
(1988).
9.Hoffman,R.,Blood 74(4):1196-1212(1989).
10.Mazur,E.m.and Cohen,j.l,Clin.Pharmacol,Ther.,46(3)465-478(1988).
11.Gewirtz,A.M.and Calabretta,B.,Int.J,Cell Cloning 8267-276((1990).
12.Williams,N.,Progress in Growtj Factor Research 2:81-95(1990).
13.Gordon,M.S.and Hoffman,R.,Blood 80(2):302-307(1992).
14.Hunt,P,et al.,Exp.Hematol.21:372-281(1993).
15.Hunt,P.et al.,Exp.Hematol.21:1295-1304(1993).
また(文献16参照)、ヒト無形成性血清が、IL-3顆粒球−コロニー刺激因子お
よびリンパ球のコンディション媒地中の因子
とは明らかに識別される巨核球コロニー刺激活性を有することも報告されている
。しかし、この活性に関与する分子は、優先する技術において単離されておらず
、定性も行われていなかった。
16.Mazur,E.m.,et al.,Blood 76 290-297(1990).
C.Mplレセプター
骨髄増殖型白血病ウイルス(MPLV)は、感染した哺乳動物に急性白血病を引き起
こすネズミ複製欠損型レトロウイルスである。MPLVによって発現される遺伝子は
、GM-CSF、G-CSF およびEPOのレセプター等の、サイトカインレセプターファミ
リーに関連する配列に融合するウイルスのレトロウイルスエンベロープ(または
外部タンパク皮膜)をコードする遺伝子の一部を構成していることが発見されて
いる。
前述のMPLV遺伝子の発現は、様々なタイプのマウス前駆細胞に対し、増殖およ
び最終的成熟の両方とに依存しないような成長因子を、迅速に獲得させるという
興味深い生物学的特徴を備えている。さらには、MPLVによって急激に形質転換さ
せた骨髄細胞の培養液は巨核球を含み、前記MPLV遺伝子と巨核球の成長および分
化との間に、ある種の関係があることが示唆されてい
る。
現在では、(V-Mplと呼ばれる)前記MPLVウイルス遺伝子がほ乳類細胞内で相同
部分を有することが認識されており、細胞性Mpl 遺伝子(またはc-Mpl)と呼ばれ
る。V-Mpl 誘導型プローブを使い、ヒトc-Mpl 遺伝子に対応するcDNAがクローニ
ングされた。PCT 公開特許WO92/07074(1992年4 月30日公開、後述)を参照のこ
と。配列の解析により、前記c-Mpl 遺伝子産物がコードしているタンパク質は、
相同型v-Mpl 遺伝子産物のような、高度に保存されたサイトカインレセプターの
スーパーファミリーに属することがわかった。
この細胞性遺伝子c-Mpl は、他の組織ではなく正常マウス由来の骨髄、脾臓、
胎児肝においてRNase プローブ保護試験およびRT-PCR試験により発現が見い出さ
れたという観察に基づいてみると、造血において機能的な役割を演じていると考
えられる。特に、c-Mpl は巨核球において発現している。また、ヒト細胞性遺伝
子であるヒトc-Mpl は、精製巨核球および血小板を含むCD34陽性細胞において発
現している。CD34は初期造血性前駆細胞であることを示す抗原である。さらには
、CD34陽性細胞をc-Mpl mRNA又はメッセージに対しアンチセンスな合成オリゴデ
オキシヌクレオチドに曝露すると、CFU-MK巨核球前駆体のコロニー形成能を有意
に阻害するが、赤芽球または顆粒球マクロファージ前駆体に対して全く影響を及
ぼさない。
前述のデータおよび観察から、c-Mpl が、細胞表面分子すなわちMpl レセプタ
ーをコードし、前記レセプターを活性化するリガンドに結合していると示唆され
、巨核球の産生および/または生育をもたらすと示唆されている。
PCT 特許WO 92/07074 は、ヒトとマウス両方のc-Mpl 遺伝子が産生するタンパ
クのアミノ産配列に関する。この遺伝子産物は、前述のようにレセプターである
と考えられており、細胞外ドメイン、膜透過ドメインおよび細胞内(または細胞
質)ドメインの3 つの一般的領域またはドメインからできている。これらドメイ
ンが一緒付加することにより、生(intact)のMpl レセプターを構成する。このPC
T はまた、成熟型c-Mpl タンパクの細胞外ドメインと実質上対応する可溶性の形
態のレプターにも言及している。細胞内ドメインは、前記タンパクの細胞外ドメ
インへ膜透過領域を介して付着する場合、そのタンパクに全体として凝集しやす
くさせ、不溶性を帯びさせる疎水性領域を含有している。一方で、c-Mpl 遺伝子
産物の細胞外ドメインは、
膜透過ドメインおよび細胞内ドメインから分離している時には可溶性を呈し、こ
れによって前記タンパクの細胞外形態はレセプターの「可溶」型とみなされる。
以下は、v-Mpl およびc-Mpl レセプターならびに遺伝子類に関する前述の説明
に関連した先行出版物の要約である。
17.Wending,F.,et al.,Leukemia 3(7):475-480(1989).
18.Wending,F.,et al.,Blood 73(5):1161-1167(1989).
19.Souyri,.,et al.,Cell 63 1137-1147(1990).
20.Vigon,I.,et al.,Proc,Natl.Acad.Sci.usa 89 5640-5644(1992).
21.Skoda,RC.,et al.,The EMBO Journal 12(7): 2645-2653(1993).
22.Ogawa,M.,Blood 81(11):2844-2853(1993).
23.Methia,N,et al.,Blood 82(5):1395-1401(1993).
24.Wending,F,et al,,Blood 80 264a(1993).
D.血小板産生刺激能を備えた薬品に対する需要
最近の報告では、北米、西欧および日本の医療施設において、血小板輸血の割
合が増大している。Gordon,M.S.and Hoffman,R,,Blood 80(2):302-307(1992)を
参照のこと。血小板輸血の割
合がこのように増加している原因は、医療技術の進歩と、心臓外科手術、骨髄、
心肺移植等の技術へアクセスする機会が増えたことが大きい。癌患者への交付療
法としての集中投与法やHIV-1 の流行もまた、血小板の供給に対する需要を拡大
させている。
血小板の利用は、同種免疫化(ALLOIMMUNIZATION)と同様に、血液を介した感
染症を多く伝播する恐れを増大させている。さらには、精製血小板の製造に多額
の金がかかるため、この血小板の使用が医療費全体を押し上げている。この結果
、人体に適用する血小板を産生するための、新規かつ改良型の方法が迅速に出現
するよう望まれている。
以下には実例として、血小板産生を増強させる目的で先行しているアプローチ
が記述されている。
米国特許第5,032,396 号は、インターロイキン 7(IL-7)に血小板産生を刺激す
る能力があると報告している。インターロイキン7 はリンホポエチン−1として
も知られ、骨髄においてB−細胞およびT−細胞前駆体の増殖を刺激する能力を
備えたリンパ球生成に関わる成長因子である。1988年10月19日に提出された公開
PCT 特許連番88/03747号、および1988年10月24日に
提出された欧州特許出願第88309977.2号は、組換えDNA 技術によってほ乳類IL-7
タンパク質を産生するためのDNA,ベクター、および関連工程を開示している。
前記米国特許に示したデータは、IL-7が正常マウスおよび致死量に近い放射線を
照射したマウスの循環血小板の量を増大させたと報告している。
米国特許第5,087,448 号は、ほ乳動物をインターロイキン6 で処理することに
よって、巨核球および血小板の増殖を刺激することが可能であると開示している
。ヒト組み換えインターロイキン6 は、多様な生物活性を備えた分子量26,000の
糖タンパクである。上述の特許が示すデータは、IL-6がIN VITROにおいて巨核球
のコロニーを増大させる効果を有することを示している。
前述の特許のいずれにおいても、本発明に関与するMpl リガンドについては全
く言及していない。
上記の開示にもかかわらず、哺乳動物において巨核球および/または血小板の
新規な刺激剤への需要は依然として強い。
E.化学的に修飾されたMGDFに関する背景
組み換えDNA 技術が進歩を遂げた結果、現在では、治療目的
に利用されるタンパク質類を、適切な形態で適量入手できるようになりつつある
。かかるタンパク質類の化学修飾体は、タンパク分解性酵素がタンパク質の構造
枠自体と物理的に接触するのを効果的にブロックして、分解を防ぎ得る。付加的
利点には、特定の環境下において、治療用タンパク質類の安定度と循環時間を増
大させ、免疫原性を低下させる点がある。しかし、特定タンパク質を修飾した場
合の効果を予言するのは不可能である点に留意すべきである。タンパク質の修飾
と融合タンパクについて記述した総説には、Fransis,Focus on Growth Factors
34-10(May 1992)(Mediscript発行、Mountview Court,Friern Barnet Lane,Lo
ndon N20,OLD,UK)がある。
ポリエチレングリコール(″PEG″または″peg″)は、治療用タンパク質製品の
調製に利用されてきた化学的部分の1 例である。
デアミナーゼ処方物であり、重症合併免疫不全症の治療用に許可されてきた。PE
G 付加スーパーオキシドジスムターゼは、頭部傷害の治療を目的とした臨床治験
において、PEG 付加α−インターフェロンは肝炎の治療に向けて試験されてきた
。PEG 付加グルコセレブロシダーゼおよびPEG 付加ヘモグロビンは前臨
床試験の段階にあると報告されている。若干のタンパク質向けには、Sada,et al
.,J.fermentation Bioengineering 71:137-139(1991)において、ポリエチレン
グリコールを付加することにより、タンパク溶解から保護することが示されてお
り、ある種のポリエチレングリコール部分の付加方法を入手できる。1979年12月
18日発行の米国特許第4,179,337 のDavis et al.,“Non-Immunogenic Polypept
ides”および1977年1 月11日発行の米国特許第4,002,531 号のRoyer,“Modifyi
ng enzymes with Polyethylene Glycol and Product Produced Thereby ”を参
照。総説には、Abuchowski et alのin Enzymes as Drugs(J.S.Holcerberg and J
.Roberts,eds,pp367-383(1981))がある。
エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチル
セルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポ
リ-1,3- ジオキソラン、ポリ-1,3,6- トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸
コポリマー、およびポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのい
ずれか)のような他の水溶性ポリマーが、タンパク質を修飾するために使われて
きている。
ポリエチレングリコールでは、ポリエチレングリコール分子
をタンパク質に結合させるために様々な手段が利用されつつある。一般に、ポリ
エチレングリコール分子はタンパク質上に見い出される反応性の基を介してタン
パク質に結合する。リジン残基上のアミノ基またはN末端上のアミノ基のような
アミノ基は、かかる結合に好都合である。たとえば、Royer ら(米国特許第4,00
2,531,前述)では、酵素にポリエチレングリコール分子を結合させるために還元
的アルキル化を提唱している。1993年4 月28日に公開されたEP O 539 167 Wrigh
t の“ PegImidates and Protein Derivaies Thereof”は、ペプチドおよび遊離
アミノ基を伴う有機化合物が、PEG のイミデート誘導体または関連する水溶性有
機ポリマーで修飾されていると提唱している。1990年2 月27日に発行されたShaw
の米国特許第4.904.584 号は、反応性アミノ基を介してポリエチレングリコール
分子と結合するタンパク質における、リジン残基の数の修飾に関連する。
化学的に修飾された特異的治療用タンパク質の1つは、顆粒球コロニー刺激因
子“G-CSF”である。欧州特許EP O 401 384,EP O 473,268,およびEPO 335 423
を参照のこと。
その他の例としては、PEG 付加IL-6であり、EP O 442 724の
標題″Modified hIL-6″(U.S.S.N 07/632,070 の同時係属特許)では、IL-6に付
加したポリエチレングリコールについて開示している。1985年9 月11日に公告さ
れたEP O 154 316は、リンホカインとポリエチレングリコールのアルデヒドとの
反応性について報告している。
MGDFの修飾能力については業界において未知であるが、これは、各々のタンパ
ク質における修飾への感受性が、かかるタンパク質の特異的な構造パラメータに
よって決定されるためである。さらには、各々のタンパク質の生物学的特徴に及
ぼすかかる修飾の効果が、従来技術においては予測不能であるためである。本明
細書において説明されているごとく、MGDFは広く臨床応用されているために、異
なる特徴を備えた誘導体化MGDF産物が望まれる。かかる分子では、その他の特徴
に加え、半減期が長くなり、および/またはIN VIVO における活性が増大してい
る。
タンパク質分子にPEG を付加すると、その結果として化学的に修飾されたタン
パク質分子の混合物が発生する。1例では、リジン残基5 個とN−末端部に遊離
アミノ基を有するタンパク質分子を前述の方法において反応させると、ポリエチ
レングリ
コール部分6 個、5 個、4 個、3 個、2 個及び1 個をもつタンパク質分子、およ
び一つももたないタンパク分子の不均質混合物が生じる。さらに、いくつかのポ
リエチレングリコール部分をもつ分子のなかには、ポリエチレングリコール部分
が異なる分子の同じ位置には結合しないものがでてくる。実質的に、PEG のよう
な化学的部分の数および/または位置が様々に異なった被修飾タンパク質種の1
つ又は少数(例えば2〜3)を含むような、均一な産物を得ることが、頻繁に要
求されるようになる。やはり、例えばPEG が1 個、2 個、および/または3 個付
加した種の混合物が望まれるか、またはかかる治療適用に耐えうる。
治療用PEG 付加タンパク産物を開発する際には、ロット間に生じる混合物の差
異が欠点となる。かかる開発においては、生物学的活性の予測性が重要となる。
たとえば、スーパーオキシドジスムターゼとポリエチレングリコールとの非選択
的コンジュゲーションの場合、修飾された酵素のいくつかの画分は全く活性を示
さなかった(P.McGoff et al.,Chem.Pharm.Bull.363079-3091(1988))。また、
Rose et al.,Bioconjugate Chemistry 2:154-159(1991)は、結合基カルボヒドラ
ジドのタンパク
質基質(インシュリン)のC−末端部のカルボキシル基への選択的結合について
報告している。治療用タンパク質においてロット間で組成の差異が生じるか否か
について予測することは不可能である。ポリエチレングリコール部分の中にはほ
かの位置ほどに安定してある位置に結合しないものもあり、この結果、かかるタ
ンパクからポリエチレングリコール部分が解離することになる。もちろん、かか
る部分が無作為に結合して、無作為に解離するならば、治療用タンパク産物の薬
動力学を正確に予測することはできない。
また、ポリマー部分およびMGDF部分間に結合部分がない誘導型MGDF産物も強く
望まれている。前述の方法において問題になるのは、タンパク質とポリエチレン
グリコール分子との間の結合部分を特に必要とする点にある。これら結合部分は
抗原性を帯びており、治療用タンパクを開発する際にはそれが欠点となる。
結合基の関与しない方法については、 Fransis et al.,“Stability of prot
ein pharmaceuticals:in vivo pathways of degradation and strategies for p
rotein stabilization ”(Eds.Ahern.,T.and Manning,M.C.)Plenum,New York,19
91 年)
に記述されている。また、Delgado et al.の″Coupling of PEG to Protein By
Activation Cell Preparation″,およびFisher et al.,ed.,Separations Biolog
y and Biotechnology,Plenum Press,N.Y.,N.Y.1989 pp.211-213 において、トレ
シルクロライドの利用について述べており、ここではポリエチレングリコール部
分とタンパク部分との間に結合基の存在しないことが報告されている。この方法
では、トレシルクロライドの利用によって、毒性の副生成が生じるため、治療用
製品を産生するために利用することは困難と考えられる。
Chamow et al.,は、Bioconjugate Chem.5:133-140(1994)で、還元性のアルキ
ル化を介したモノ−メトキシ−ポリエチレングリコール(“MePEG グリコール”
)とCD4 イムノアドヘジン(imunoadhesin)の修飾について報告している。著者ら
は、CD4-Igの50% がN-末端部のα−アミノ基において選択的反応によりmePEG 修
飾を受けたとId.137ページで報告している。著者らはまた、(タンパク質gp120
に対する)修飾CD4-Igのin vitroでの結合能力が、MePEG 化の程度に相関して低
くなっていると報告している。
しかるに、MGDF誘導体、特にPEG 化したMGDFの需要がある。
また、かかる誘導体を合成する方法についても需要がある。
発明の要約
本発明の1つの態様では、巨核球の成長および/または発育(Mpl リガンドま
たはMGDFs)を特異的に促進する、実質的に他のタンパク質、例えばほ乳類を発
生源とするMpl リガンドのケースのほ乳類タンパク質を含まない(から単離した
)新規ポリペプチドを提供する。かかるタンパクは、自然発生的または他の因子
による誘導時にかかる因子を産生する細胞源から精製する。また、組み換え遺伝
子工学技術によっても産生される。Mpl リガンドは、さらに化学技術により合成
されるか、前述した技術の組み合わせによっても合成される。
本発明におけるMpl リガンドは、ほ乳類ソースから天然型として取得できる。
イヌ無形成性血漿から単離された2 つの実例となるMpl リガンドは、実施例のセ
クションに説明されている。しかし、本明細書ではたがいに近似した関係にある
Mpl リガンドが、ヒトおよびブタソースの両方から得た無形成性血漿中に存在す
ることがその他の実施例で示されている。留意すべきは、ヒト、ブタ、およびイ
ヌのMpl リガンドの各々の活性が、ネズミMpl レセプターの可溶化型によって特
異的に阻害されること
であり、これらMpl リガンドのすべてが(ネズミを含むほかのほ乳類ソースから
のものと同様に)構造と活性レベルの両面で密接に関連していることを示してい
る。
ヒト、ブタ、およびその他のほ乳類におけるMpl リガンドが、事実上本発明に
おいて詳細に記述されている方法により、天然ソースから単離され得ることが期
待されている。実施例10を参照のこと。したがって、本発明は一般に、イヌ、ブ
タ、ヒト、マウス、ウマ、ヒツジ、およびウサギ等のほ乳類Mpl リガンドを含む
。特に、イヌ、ブタ、およびヒトからのMpl リガンドが望ましい。
さらには、ヒトMpl リガンドをコードする遺伝子は、実施例に記述されている
ように、ヒト胎児腎および肝のライブラリーからクローニングされ、塩基配列が
決定されている。2つのヒト由来ポリペプチド配列が、細胞を基本とするアッセ
イにおいて活性を有することが決定されている(実施例4参照)。これら2 つの
配列は長さがことなっているが、アミノ酸配列の広範な部分において同一性が認
められている。この同一部分は、エリトロポエチンと相同性を有する。Mpl リガ
ンドはまた、本明細書において巨核球の増殖および発育の因子(MGDFs)として
言及されている。Mpl リガンドに関する総合参考文献はすべて、MGDFs に関する
参考文献としても互いに適用可能である。“MGDFポリペプチド”とは、巨核球の
増殖および/または発育を特異的に刺激または抑制する活性を有するポリペプチ
ドを意味している。かかるポリペプチドの実例は本発明において開示されている
。
本発明のMpl リガンドは、後述の実施例2および実施例4のアッセイにて提示
されているように、巨核球の一族において特異活性を示し、巨核球の成熟および
/または増殖を増強する。「特異的に」とは、前記ポリペプチドが、その他の細
胞のタイプと比較して相対的に大きい巨核球に対する生物学的活性を有すること
を意味している。同時に、巨核球に対して刺激性という意味は、巨核球の成熟お
よび分化を刺激することを介して、血小板産生をin vivo において刺激する活性
を有することを意味する。
イヌをソースとする二つの好適なMpl リガンドは、非還元条件において、ドデ
シル硫酸ナトリウムのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって測定
された見掛分子量が約25kdおよび31kdである。両タンパクは、以下の実施例セク
ションに
詳述したように、同一の精製プロトコルを通じて精製されている。
二つの好適なヒトMpl リガンドであるMGDF-1およびMGDF-2は、長さがそれぞれ
332 アミノ酸および173 アミノ酸であり、21個のアミノ酸の推定シグナルペプチ
ドを含有していない。これら配列、および3 つめの関連分子MGDF-3を、図11およ
び図12に示す。
本発明のさらなる態様は、哺乳動物由来の、好ましくは全血、血清または血漿
由来のMpl リガンドまたはそのフラグメントを単離、精製する方法である。無形
成性血液、血清又は血漿は原料材料として特に好ましい。無形成性血液、血清ま
たは血漿は、コバルト−60等の放射線源を用いて400-800rads で哺乳動物を照射
し、それら動物を無形成性にする方法によって得られる。かかる方法は、当業界
において知られており、以下の実施例1において引用した出版物において例証さ
れる。ヒトの場合、放射線照射された血液、血漿、または血清は、例えば癌治療
のために放射線照射を受けた後の患者から入手し得る。
その後、無形成性血液、血清または血漿は、精製工程にかけられる。本発明に
おいて提供される精製工程は、レクチンアフ
ィニティクロマトグラフィーおよびMpl レセプターアフィニティクロマトグラフ
ィーのキープロセスから構成される。各々の工程により、イヌの無形成性血漿か
ら25kdおよび31kdのタンパクが約300-500 倍に精製される。その他の標準的タン
パク精製工程は、前述の工程に含まれ得、以下に詳述するごとくさらにMpl リガ
ンドを高度に精製する。
本発明の他の態様には、哺乳動物類Mpl リガンドタンパク質の発現をコードす
るポリヌクレオチドも含まれる。かかるDNA配列は、以下詳述するごとく、哺乳
動物類Mpl リガンドタンパク質の発現をコードする単離されたDNA 配列を含み得
る。このDNA 配列は、Mpl リガンドコード配列の側面に位置する、5′および3′
の哺乳動物類非コード配列をも含み得る。このDNA 配列は、さらにアミノ末端シ
グナルペプチドをもコードし得る。かかる配列は、完全または部分的な化学的合
成法を含むあらゆる既知の方法によって調製することが可能である。コドンは、
発現用に選択した(E.coliまたはCHO 細胞等の)宿主細胞における発現に対して
最適化し得る。
本発明においては、組み換えDNA 分子も提供されており、各々がベクターDNA
および哺乳動物類Mpl リガンドをコードする
DNA 配列を含む。このDNA 分子は、選択された宿主細胞内において、Mpl リガン
ドの複製と発現に関係し得る制御配列と操作可能に作用するMpl リガンドDNA
を提供する。組み換えMpl リガンドタンパク質を発現させる目的で、かかるDNA
分子を使って形質転換された宿主細胞(バクテリア、哺乳動物類、昆虫、酵母、
または植物細胞等)もまた、本発明において提供される。
本発明のDNA 分子および形質転換細胞は、別の目的で、組み換え哺乳動物類Mp
l リガンドタンパク質またはそのペプチドフラグメントを産生させるための新規
な方法に適用される。この方法において、前記タンパク質の発現を制御する能力
をもった適切な制御配列または発現調節配列と操作可能に作用する関係を保ちつ
つ、Mpl リガンドタンパク質またはそのフラグメントの発現をコードしているDN
A 配列(あるいは前述のごとき組み換えDNA 分子)で形質転換させた細胞系は、
組み換えDNA の発現を可能とする適切な条件下で培養される。特許請求されてい
るこの方法は、タンパク質の発現用の宿主細胞として多数の既知細胞を使用し得
る。Mpl リガンドの産生に好適とされる現在の細胞系は、哺乳動物類の細胞系(
CHO 細胞等)およびバクテリア細胞(E.coli)等である。
Mpl リガンドのE.coli産生にとっては、発現産物の収率が高まるので、タンパ
ク質のN-末端にMet 及びLys 残基を擁することが好ましい。特に好適な発現産物
は、総数165 個のアミノ酸を有するMet-Lys ヒトMGDF(即ち、Met-2−Lys-1[1-
163]MGDF(成熟タンパクの最初のアミノ酸から連番をつけている)である。E.col
i等のバクテリア細胞内において発現した前記産物を精製したのち、ジペプチダ
ーゼ(例えばカテプシンC)等の酵素による処理によって末端Met-Lys 残基を除
去する。
発現されたMpl リガンドタンパク質を、適切な慣用手段を使って宿主細胞、細
胞溶解物、培養液から回収する。コンディションメディウムを、無形成性血漿か
らMpl リガンドを単離した場合と同一の精製工程またはその変法にて加工する(
実施例7参照)。
さらに、本発明の一態様としては、組み換えMpl リガンドタンパク質が提供さ
れる。これらタンパクは、実質上他の哺乳動物類由来物質、特にタンパクを含ま
ない。本発明のMpl リガンドタンパクはまた、ここで説明するような1つ以上の
物理的、生化学的、薬学的または生物学的活性を有することにより特徴付けられ
る。
本発明は、少なくとも一つの水溶性ポリマーに結合しているMGDFタンパク部分
で構成される化学修飾MGDFと、かかる組成物の調製法および利用法にも関連する
。特に、本発明は、MGDF種が反応性ポリエチレングリコール分子と反応して、PE
G をMGDFに付加させた化学修飾したMGDFを含む。かかる付加は、以下論じられる
ように、アシル化またはアルキル化等のPEG 化反応によって完成され得る。PEG
を使用するアシル化またはアルキル化は、主要生成物がモノPEG 付加またはポリ
PEG 付加を呈するような条件下にて行われる。ポリPEG 付加では一般に、リジン
残基のε−アミノ基へPEG が付加し、さらにポリペプチドのN-末端部にPEG が付
加し得る。モノPEG 付加では、好ましくはタンパク質のN-末端にあるα−アミノ
基へPEG が付加する。かかるモノPEG 化反応の収率および均一性は、MGDFタンパ
ク質部分のN-末端残基のα−アミノ基を選択的に修飾するような還元的アルキル
化を介して増強され、これによりタンパク質のN-末端に水溶性ポリマーの付加が
提供される。これによって、(ポリエチレングリコールを使うと)、タンパク部
分へ直接結合したポリエチレングリコール部分が付加するようなPEG 付加MGDFの
調製と同様に、ポリマー/MGDFタンパクコンジュゲート分子と
ート分子の実質上均質な製剤が提供される。
本発明のその他の態様では、単離された天然または組み換え型のMpl リガンド
を治療上有効量含む医薬組成物であって、Mpl リガンドはポリエチレングリコー
ル等の水溶性ポリマーで誘導体化されており、組成物は薬学上受容可能な担体、
希釈剤、または賦形剤を更に含む医薬組成物が提供される。以上の医薬組成物は
、巨核球および/または血小板の欠損によって特徴づけられる疾患状態を、in v
ivoにおいてMpl リガンドの欠損によって特徴付けられる疾患状態と同様に治療
する方法において適用され得る。また、(例えば外科手術により)、予測される
巨核球または血小板の欠乏症を改善させるために予防的に採用することもできる
。
しかるに、本発明のMpl リガンドは、(エイズ患者または癌化学治療中の患者
等の)血小板産生が不完全な患者において、例えば血小板産生を増加する目的で
、無形成性貧血の治療において利用されうる。Mpl リガンドは血小板減少症等の
血液疾患の治療に利用されうる。Mpl リガンドは、骨髄移植患者の補助療法に適
用されうる。かかる患者はヒトまたはその他の哺乳動物である。一つの種からの
Mpl リガンドはまた、別の種におい
ても有効であることが期待される。
本発明におけるその他の態様としては、前述のごとく治療上有効量の医薬組成
物を患者に投与して、血小板欠損に由来する各種病態を治療する方法を提供する
ことである。これら治療方法には、Mpl リガンドと、少なくとも1 つの、上記以
外の巨核球コロニー刺激因子、サイトカイン(例えばEPO)、可溶化Mpl レセプ
ター、ヘマトポエチン、インターロイキン、成長因子、または抗体との同時投与
または連続的投与を含み得る。
本発明におけるその他の態様には、哺乳動物類Mpl リガンドまたはリガンドフ
ラグメントに対する(と反応性の)抗体(例えばポリクローナル、モノクローナ
ル、ヒト化、組み換え体)、抗体フラグメントの提供がある。この態様の一部と
して、かかる抗体を分泌できる細胞の提供が含まれる(モノクローナル抗体のケ
ースにおけるハイブリドーマ等)、その産生方法、診断または治療方法における
利用がある。
本発明におけるその他の態様には、Mpl リガンドの存在下のための体液のアッ
セイがある。かかるアッセイでは、単一抗体または「サンドイッチ」フォーマッ
トによって、Mpl リガンドを特異的に認識する抗体を使用することが含まれる。
かかるア
ッセイでは、ある患者においてMpl リガンドを体外から供給することを要するか
否か、および/またはかかる患者が血小板不足または障害状態を経験しているか
否かの検討を行うことができる。かかるアッセイは、キット形態としても含まれ
、陽性対照および陰性対照、抗体(単数および複数)、その他標準的キット構成
要素を含んでいる。
本発明におけるこのほかの目的および利点としては、以下の好適な実施例につ
いて考慮することによって明らかとなる。
図面の簡単な説明
以下の図面を参照することにより、本発明が多数の特徴と利点とを備えている
ことが明らかとなる。
図1 は、巨核球および血小板の発生ならびに成熟を概観している。
図2 は、可溶化マウスMpl レセプターが、実質上、放射線照射したイヌ(「無
形成性のイヌ」、または「APK9」)の血漿の能力を完全に抑制し、巨核球の発育
を誘導することを示す。巨核球の生育に対するアッセイは実施例2 に示した。
図3 は、レクチンアフィニティクロマトグラフィーおよびMpl レセプターアフ
ィニティクロマトグラフィー(「Mpl リガ
ンド」)によって増幅された活性が、1A6.1 細胞の増殖を刺激すること及び可溶
化マウスMpl レセプターがその生育をブロックすることを示す。
図4 は、無形成性のイヌ血漿から25kdおよび31kd形態のイヌMpl レセプターを
精製に含まれる精製ステップ概観を示す。
図5 は、逆相HPLC(RP-HPLC )によるMpl リガンドの精製を示す。フラクショ
ン21は、高度に精製した31kdMpl リガンドを、フラクション22は31kdと25kdのMp
l リガンドの混合物を、フラクション23は高度に精製された25kdのMpl リガンド
を含む。
図6 は、25kdおよび/または31kdのMpl リガンドタンパク質を含む逆相HPLC(C
4 カラム)画分におけるMpl リガンドの活性を比較したものである。
図7 は、APK9,Mplリガンドおよび様々なその他の因子で刺激したCD34-選択末
梢血の培養液から産生した巨核球の総数を示す。
図8 は、APK9,Mplリガンドおよびその他の各種因子で刺激した、CD34−選択末
梢血細胞の培養から産生した総白血球の総数を示す。
図9 は、APK9,Mplリガンドおよびその他の各種因子で刺激した、CD34選択末梢
血細胞の培養から産生した巨核球の百分率を
示す。
図10は、ヒトIL-3がMpl リガンド誘導性の巨核球の発育に関与していないこと
を示す。
図11は、ヒトMGDF-1およびMGDF-2のcDNAおよび推論されるアミノ酸配列を示す
。
図12は、ヒトMGDF-3のcDNAおよび推論されるアミノ酸配列を示す。
図13は、イヌを発生源とする(A)およびマウスを発生源とする(B)MGDF-1と MGD
Fs(Mpl リガンド)との比較を示す。
図14は、モノメトキシ−ポリエチレングリコールのN-ヒドロキシスクシニミジ
ル(NHS)活性エステルを使い、MGDFをアシル化してポリPEG 化産物を得た例を示
す。
図15は、モノメトキシ−ポリエチレングリコールアルデヒドを使い、MGDFを非
特異的に還元的アルキル化してポリ-PEG化産物を得た例を示す。
図16は、モノ−メトキシ−ポリエチレングリコールアルデヒドを使い、N-末端
残基のα−アミノ基でMGDFを部位特異的に還元的アルキル化して実質的にモノ−
PEG 化産物を得た例を示す。
図17は、分子量20kDa のMePEG の活性化誘導体を使って調製
したMePEG-MGDFコンジュゲートをサイズ排除(SEC)HPLC 解析したものを示す。
A:MePEG(PEG11)のNHS エステルでMGDFをアシル化して調製したポリ−MePEG-MG
DFコンジュゲート。
B:MePEG アルデヒド(PEG20)でMGDFをアルキル化して調製したポリ−MePEG-MGD
Fコジュゲート。
C:MePEG アルデヒド(PEG16)でMGDFをアルキル化して調製したモノ−MePEG-MGD
Fコンジュゲート。
図18は、組み換えヒトMGDFで処理したマウス由来の血小板計数値を示す。黒ダ
イヤ印=CHO 由来22-353MGDF、白丸印=PEGの付加していないE.coli 22-184 MGD
F(すなわち1-163MGDF )、白丸印=PEG 化したE.coli 22-184 MGDF。
図19は、r-HuMGDFの精製フローチャートを示す。
図20は、マウスカルボプラチンモデルにおける血小板計数値に及ぼすr-HuMGDF
(E.coli 1-163)の影響を示す。Balb/cマウスにDay 0 においてカルボプラチンを
単一回腹腔内投与(1.25mg/mouse)した。賦形剤のみグループにはカルボプラチン
を投与しなかった。24時間後、カルボプラチン処理マウスへ賦形剤または100ug/
kgの r-HGDF のいずれかを残りの試験期間にわたって
連日皮下投与した。(各群n=10匹とし、1回の試験実施時刻ごとに5 匹から採
血した。)
図21は、放射線照射後のマウスにおける血小板計数値に及ぼすr-HuMGDF(E.co
li 1-163)の影響を示す。Day 0 でBalb/cマウスにガンマ線(セシウム線源)を
500ラド単一回照射した。賦形剤のみのグループには照射しなかった。24時間後
、残りの試験期間にわたって照射マウスに賦形剤または100ug/kg r-HuMGDFを連
日皮下注射した。(各群n=8 匹とし、1回の試験実施時刻ごとに4 匹から採血
した。)
図22は、放射線照射およびカルボプラチンの組合せで処理したマウスにおける
血小板計数値に及ぼすr-HuMGDF(E.coli 1-163 )の影響を示す。Balb/cマウス
にDay 0 において500 ラドのガンマ線(セシウム線源)を単一回照射およびカル
ボプラチン(1.25mg/mouse)を投与した。24時間後、残りの試験期間にわたってマ
ウスに賦形剤または100ug/kg r-HuMGDF を連日皮下注射した。(各群n=8 匹と
した。)r-HuMGDFによる補足を行わなかった場合、マウスのほとんどは試験期間
中生存できなかった。対照群において、8 匹中1 匹が生存した。処理群において
、8 匹中8 匹が生存した。
図23は、アカゲザルにおける放射線誘導型血小板減少症に及ぼすr-HuMGDF(E.
coli 1-163)の影響を示す。アカゲザルを(700cGy Co-80の)放射線照射に曝露
した。照射後24時間を経過してから、連続18日間、r-HuMGDF(n=3)またはヒト血
清アルブミン(n=9 匹)(1匹あたり25ug/kg/day)を皮下投与した。電気血液細
胞解析装置を使って血液細胞を解析した。各記号は平均値(+/- sem)を示す。
図24は、カルボプラチンおよび放射線照射処理したマウスの血小板計数値に及
ぼすPEG 化およびグリコシル化r-HuMGDFの効果を示す。図22で行った試験で説明
したように、マウスにカルボプラチンおよび放射線照射の併用処理を行った。傷
害を受けた24時間後より、指示したr-HuMGDF製剤(50ug/kg/day)の皮下注射を試
験期間中連日行なった。電気的細胞計数装置(Sysmex,Baxter)を使って指定した
日に血液細胞を計数した。
図25は、E.coli最適化コドンを有する組み換えヒトMGDFの合成遺伝子配列、ア
ミノ酸1-163 を示す。
発明の詳細な説明
本発明の付加的な目的および利点としては、本発明の詳細を記述した以下の説
明を考慮することによって当業者には明らか
となろう。
本発明において提供される、新規な哺乳動物類巨核球の増殖促進、および/ま
たは血小板産生因子、すなわちMpl リガンドは、その他のタンパク質様物質を実
質的に含まない均一なタンパク質である。このタンパク質がその他のタンパク質
に90% 以上制約を受けないのが好ましく、さらには、約95% 制約を受けず、さら
にはその他のタンパク質に98% 以上制約を受けないのが好ましい。これらタンパ
ク質は、治療への適用に有効な純粋かつ活性なMpl リガンドを大量に産生するた
めに、組み換え技術を介して産生することが可能である。あるいは、かかるタン
パクを哺乳動物類の無形成性血液、血漿または血清から、もしくはMpl リガンド
を分泌または発現する哺乳動物細胞系から均一な形状で得ることができる。さら
には、Mpl リガンドまたはその活性フラグメントは、化学的に合成され得る。
一般には、本発明において使用される「Mpl リガンド」は、ここに開示される
Mpl リガンド及びその活性フラグメントおよびその変異体を示し、以下詳細に記
述される。
イヌを発生源としてするMpl リガンドは、好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウ
ムポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)で
測定した場合、分子量約25kdおよび31kdを有する。両タンパクは、実施例のセク
ションで詳述されるごとく、同一の精製プロトコルに従って精製される。しかる
に、たとえば、これらMpl リガンドは共にコムギ胚芽レクチンおよび固定化Mpl
レセプターに結合する。25kdの形態は、以下のアミノ酸配列を含む。
Ala-Pro-Pro-Ala-Xaa-Asp-Pro-Arg-Leu-Leu-Asn-Lys-Met-Leu-Arg-Asp-Ser-His-
Val-Leu-His-Xaa-Arg-Leu-Xaa-Gln-Xaa-Pro-Asp-Ile-Tyr(SEQ ID NO:1 )。
31kdの形態は、以下のアミノ酸配列を含む。
Ala -Pro-Pro-Ala-Xaa-Asp-Pro-Arg-Leu-Leu-Asn-Lys-Met-Leu-Arg-Asp-Ser-His
-Val-Leu-His(SEQ ID NO:2)。
SEQ ID NOS:1および2 に示した″Xaa″なるアミノ酸は、確実には分かってい
ないが、システイン、セリン、スレオニン、または(可能性は極めて低いが)ト
リプトファンであることが予測されている。
前述の配列から、31kdのリガンドは少なくとも25kdの形態の一部によって構成
されていることが分かる。特に、31kdのタンパク質の最初の21個のアミノ酸は、
25kdのタンパク質のアミノ酸と明らかに同一である。これと、特に両タンパク質
がMpl リ
ガンド活性のアッセイにおいて活性を呈した事実とによって、両タンパク質が極
めて近似した構造と活性を有するとの結論に達する。31kdのタンパク質は25kdの
タンパク質とC-末端配列において異なり、グリコシレーションおよび/または、
このタンパクをコードしている遺伝子のスプライシングにおいても異なっている
。
前述の配列情報に加え、(逆相HPLC法による)最終精製段階に先だって行われ
た25kdのバンドの配列決定中において、別の配列決定が行われた。この配列は、
非還元的条件において25kdのバンドと関連することが判明したが、還元条件下で
は関連性を認めなかったことから、これは(例えばプロテアーゼによって)25kd
のタンパク質が二つの部分に開裂したことと、二つの部分がジスルフィド結合に
よって結合されていることの結果であることを示唆する。この配列は以下のとお
りである。
25kdのタンパク質における上記SEQ ID NO:3 の正確な位置づけは明らかではな
いが、エリトロポエチン等のほかのサイトカインとのアナロジーによると、この
配列が25kdタンパク質の
114 番目付近のアミノ酸の位置にくる可能性が支持される。まだ証明されていな
いが、SEQ ID NO:3 は31kdのタンパク質中にも存在し、おそらく114 番目のアミ
ノ酸付近から始まっていると予測される。この配列情報については、実施例7に
おいて詳述されている。
イヌ由来のリガンドを対象とする初回の精製実験以来、前に要約したとおり、
イヌ由来のリガンドをコードする遺伝子が現在クローニングされている。この結
果、このイヌ由来リガンド全体のアミノ酸配列は、図13Aに示すごとく決定され
た。分子量計算をもとにすると、25Kd及び31kdのイヌ由来リガンドは図13A に示
す全長リガンドのC-末端がプロセシングされた形態であると予測される。さらに
、図13Bに示す配列を有するマウスMpl リガンドが得られた。
かかる精製リガンドは、実施例2に示すヒト巨核球アッセイにおいて、少なく
とも約 5.7×109巨核球単位/mg の特異的活性を有することを特徴とする。巨核
球単位とは、実施例2に記述したアッセイを使用して、APK9標準対照の1ul に相
当する巨核球を産生する物質の量であると定義される。
精製リガンドはまた、実施例4に示すMpl-依存性の細胞増殖
アッセイにおいて、少なくとも約 6.9×109細胞増殖単位/mgの特異的活性を示
すことで特徴づけられる。「細胞増殖単位」は、実施例4 のアッセイにおいて、
200 1A6.1 細胞を増殖させるのに必要なリガンドの量であると定義される。
次の表1 は、本発明において実際に調製された精製イヌMpl リガンドの活性を
特異的に計算した付加例である。
上記の情報を要約すると、本発明における例示的なMpl リガンドは、以下に示
す生化学的および生物学的特徴を1 つ以上備えている。
(a) かかるイヌ由来リガンドは、イヌの無形成性血漿から単離される。
(b) かかるMpl リガンドは、非還元条件において12-14%ドデシル硫酸ナトリウ
ムのポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-
PAGE)にて測定すると、約25Kdおよび31Kdの見掛分子量を有する。
(c) Mpl リガンドは、次に示すアミノ酸配列を有する。25Kdタンパク質の場合
はSEQ ID NO:1 、または31Kdタンパク質の場合はSEQ ID NO:2 である。
(d) Mpl リガンドは、さらにSEQ ID NO:3(特に25Kdタンパクにおいて望まし
い)を含む。
(e) Mpl リガンドはコムギ胚芽レクチンに結合する。
(f) Mpl リガンドは固定化した可溶性マウスMpl リセプターに結合する。
(g) Mpl リガンドの活性は、in vitroにおいて可溶性Mpl レセプターによって
阻害される。
(h) Mpl リガンドは約8-9 のPHにおいて陰イオン交換カラムに結合する。
本発明において好適なMpl リガンドの生物活性は、実施例2における巨核球増
殖促進アッセイにおいて、巨核球の成長と発生を特異的に刺激する活性によって
示される。このアッセイにおいて、MPL リガンドはヒト末梢血CD34+ 細胞(免疫
吸着により選択したCD-34 細胞)の分化を、8 日間の培養期間中に刺激
する。巨核球は、特異的抗血小板抗原抗体で染色し同定され、顕微鏡下で計数さ
れる。MPL リガンドはまた、因子依存性細胞系1A6.1 の増殖を刺激する。Mpl リ
ガンドがない場合、そ系細胞は死ぬ。1A6.1 細胞の数は、Mpl リガンドを入れた
培養中にて培養2 日後に測定する。
前述したMpl リガンドは、表1 で述べた特異的活性を有する。
Mpl リガンドの発生源は、無形成性状態にある哺乳動物類の血液、血漿、また
は血清中と決定されてきた。しかし、かかるリガンドの発生源はかかる既知発生
源とするに限定されず、その他の哺乳動物類における体液、および体液から抽出
した細胞も含まれ得る。
哺乳動物類を発生源とする未処理(native)Mplリガンドの精製は、次の2 ステ
ップを基本としている。
(a) 好ましくはコムギ胚芽アグルチニンを使ったレクチン・アフィニティ・ク
ロマトグラフィー
(b) 固定化Mpl レセプターアフィニティ・クロマトグラフィー。
タンパク質をさらに精製するためには、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル
濾過クロマトグラフィー、および逆相クロマ
トグラフィー等の付加的ステップが含まれ得る。
イヌの無形成性血漿からのMpl リガンドを得るために実際に使用された精製技
術は、以下のステップから構成される(実施例7参照)。
(a) レクチンアフィニティ・クロマトグラフィー(特にコムギ胚芽アグルチニ
ン・クロマトグラフィーが好ましい)。
(b) 可溶性Mpl レセプター(Mpl-X)アフィニティクロマトグラフィー(固定化
マウスMpl-X が好ましい)。
(c) イオン(陰イオンまたは陽イオン)交換クロマトグラフィー(陰イオン交
換クロマトグラフィー、特にモノQ カラムを用いるのが好ましい)。
(d) 解離条件におけるゲル濾過クロマトグラフィー(Superde x 200 プラスSD
S の使用が好ましい)。
(e) 逆相クロマトグラフィー(C-4 カラムを使用するのが好ましい)。
ヒト由来リガンドを含む均一な哺乳動物類Mpl リガンドは、無形成性血液、血
清、または血漿もしくはその他の哺乳動物類Mpl リガンドの発生源、例えば細胞
または組織源に対して上記精製ステップを応用することによって得られる。ステ
ックスは
特定な順序である必要はないが、一覧した順序はあるほうが好ましい。Mpl リガ
ンドを産生することが分かっている細胞(または組織)培養方法は当業者に公知
であり、たとえば、反応開始物質の供給を拡大するために使用することができる
。
Mpl リガンドまたは一つ以上のそのペプチドフラグメントは、組み換え技術に
よっても入手することができる。特定のMpl リガンドにとってのDNA 配列を得る
ためには、精製Mpl リガンドを還元し、トリプシン等のプロテアーゼを使って任
意に消化する。慣用技術を使って酵素処理フラグメントを単離し配列決定する。
あるいは、実施例において例証したように、生の精製タンパクを、入手できるタ
ンパクの量に基づいて可能な範囲まで直接配列決定し、以下の段階において配列
の分かっているトリプシン処理したフラグメントに対し配列決定領域を相似的に
使用する。遺伝子コードを使ってオリゴヌクレオチドプローブを合成し、配列決
定されたフラグメントのアミノ酸配列をコードする可能性のある配列すべての予
測に使用する。好ましくは、いくつかの変性配列は、プローブとして生成される
。Mpl リガンド遺伝子はこれらプローブを使って同定され、哺乳動物類のゲノム
ライブラリーまたはその他のソースをスクリーニングす
る。あるいは、Mpl リガンドの細胞発生源からのmRNAを使い、プローブを使って
スクリーニングされ得るcDNAライブラリーを作り、Mpl リガンドポリペプチドを
コードするcDNAを同定する。さらには、PCR 技術を使って、適切なプラリマー利
用によるcDNA配列を伸展させる。
これらプローブを使ってゲノムライブラリーをスクリーニングし、DNA クロー
ンを得る。完全な長さのクローンを得るには、得られたDNA 配列に基づくプロー
ブを使って、ライブラリーを再度スクリーニングし、完全な長さのMpl リガンド
DNA 配列へハイブリダイズする。
Mpl リガンドに対するヒトのcDNAは、完全な長さのヒトゲノムクローンを発現
ベクターにサブクローニングし、COS 細胞中へ形質移入し、形質移入したこれら
のCOS 細胞からcDNAライブラリーを作って、Mpl リガンドcDNAとハイブリダイズ
させてスクリーニングすることによって得ることができる。cDNA全体を一旦同定
すれば、Mpl リガンドの活性フラグメントをコードしているcDNA自体またはその
一部を、さまざまな発現ベクターのなかの一つへ導入して、Mpl リガンドまたは
その1つ以上のそのフラグメントの発現系ができあがる。
かかる組み換え技術を使うことによって、Mpl リガンドポリペプチドをコード
する好適なDNA 配列を得ることができる。本発明はまた、これらDNA 配列を含み
、これはその他のタンパク質をコードするDNA 配列を含まず(単離され)、Mpl
リガンド活性(例えば巨核球の増殖および/または発育)を備えたMpl リガンド
ポリペプチドの発現をコードする。これらDNA 配列は、Mpl リガンド全部または
そのフラグメントをコードする配列と、好ましくは緊縮条件下においてcDNA配列
へハイブリダイズする配列を含む[T.Maniatis et al.,Molecular cloning(A L
aboratory Manual);Cold Spring Harbour Laboratory(1982),387-389 ページ]
。
実例となる緊縮ハイブリダイゼーション条件は、62−67℃で 4×SSC でのハイ
ブリダイゼーション、続いて62−67℃における 0.1×SSC での約1 時間の洗浄で
ある。あるいは、緊縮条件の例となるハイブリダイゼーションは、45−55%ホル
ムアミド、40−45℃で 4×SSC である。
緩和的(relaxed)ハイブリダイゼーションの条件下におけるMpl リガンドの配
列へハイブリダイズし、Mpl リガンドの生物学的特徴を備えたMpl リガンドペプ
チドをコードするDNA 配列
は、本発明における新規なMpl リガンドポリペプチドをもコードしている。かか
る緊縮度を緩和したハイブリダイゼーション条件の例には、45−55℃における 4
×SSC 、または、40−45℃での30-40%ホルムアミドでのハイブリダイゼーション
がある。たとえば、Mpl リガンドの配列と有意な相同性を有する領域、すなわち
グリコシル化またはジスルフィド結合部位を有し、1つ以上のMpl リガンドの生
物学的特徴を備えているDNA 配列は、Mpl リガンド配列に厳格にハイブリダイズ
しなくても、明らかにMpl リガンドポリペプチドをコードしている。アミノ酸を
変化させたりさせなかったりするある種の集団内での自然発生的塩基交換のよう
な、Mpl リガンドのペプチド配列をコードしているDNA 配列の対立遺伝子におけ
る多様性は、その類似物または誘導体と同様に、本発明に含まれる。同様に、Mp
l リガンドペプチドをコードしていても、または、点突然変異あるいは活性増強
、半減期又はそれにコードされたポリペプチドの産生のために修飾された誘導に
よってMpl リガンドのDNA 配列において遺伝子コードの退化変異が生じた結果、
コードの利用法に違いが生じたDNA 配列であっても、本発明に包まれる。
実施例11に示されたクローニング過程は、引き続いて実施さ
れ、その結果ヒトタンパク質MGDF-1,MGDF-2,およびMGDF-3のアミノ酸およびcDNA
配列が合成される。MGDF-1は図11においてアミノ酸22−353 に相当し、332 のア
ミノ酸を含む。MGDF-2はMGDF-1の一部を欠いた部分であり、図11のアミノ酸22-1
95に示される。よってMGDF-2は174 のアミノ酸を含む。MGDF-3は図12のアミノ酸
22-289に示され、268 のアミノ酸を含む。ここで開示された各々のMGDFにおいて
、シグナルペプチドを含む分子は、図11および図12の両方でアミノ酸1-21として
示され、本発明に置いて発明されたポリペプチドの一部であるが、巨核球の増殖
および提示活性の増大のため除去されるのが好ましい。要約すると、MGDF1-3 は
以下のように定義される。
MGDF-1 アミノ酸 22-353 図11
MGDF-2 アミノ酸 22-195 図11
MGDF-3 アミノ酸 22-289 図12
ここに示すアッセイにおいて、MGDF-3が活性を呈さない一方で、MGDF-1およびMG
DF-2は活性を呈した。
ここに示した活性データに基づくと、ヒトMGDFがIN VIVO において実質上不活
性または可変型C−末端アミノ酸を含む活性の小さい前駆体ポリペプチドである
と仮定される。(シグナルペプチドと同様に)、C−末端部アミノ酸の開裂にお
いて、こ
の分子の加工された形態が活性を呈するか、またはさらに活性が上昇した。前述
の仮定に基づいて考えると、その活性を発揮するためには、MGDF-1が(例えはプ
ロテアーゼによって開裂されるという)加工を施される必要があると考えられる
。MGDF-1の一部を欠いた形態(MGDF-2)が活性であるという事実が、この仮説を支
持している。
ヒト腎由来293 細胞から採取し、MGDF-1遺伝子で形質転換させたコンディショ
ンメディウム(インビトロジェン)は、実施例4 に示す細胞アッセイの活性を示
す。一方、32D 細胞等のほかの細胞系においては、この分子の活性を認めること
はなかった。これは、おそらく部分的欠損によって293 細胞がMGDF-1分子を加工
する能力を有すると仮定され、32D 細胞がこの分子を加工できないことに対して
、この活性に本質的に関わると考えられる分子が部分的欠損を起こした形態であ
るとの仮定される。
上記の仮説をもとにすると、さまざまな活性化分子がMGDF-1(図11)として説
明された配列が一部欠損した結果生じたと考えられる。エリトロポエチン(EPO
)等のサイトカインファミリー中に保持されている構造特徴には、4本のα−ヘ
リックスバンドルと4 つのシステインがある。MGDF-1配列にあてはめると、Cys1
72は、最も進化の過程で保護され、機能的にみても欠
くことのできない構造であるC−末端エレメントである。しかるに、MGDF-1にと
って好適な部分的欠損による変化体は、(シグナルペプチドの開裂の他に)アミ
ノ酸 173-353からのC-末端部分欠損体である。好ましくは、MGDF-1の配列がC−
末端から50-185に相当するアミノ酸が除去され、さらに好ましくは、C−末端か
ら90-172に相当するアミノ酸が除去される。ここで開示されるように、シグナル
ペプチドの長さは21アミノ酸であると考えられる。しかし、MGDF-1の配列に基づ
いて考えると、シグナルペプチドの長さは23アミノ酸になる。よって、ここに提
示されているものと対応するけれども、図11または図12の位置24から始まるポリ
ペプチドも、特異的に包含される。
以下に、活性(巨核球および/または血小板の増殖を促進する活性;または天
然型レセプターに対する阻害/刺激性活性)を呈し得る好適なMGDF-1の特異的変
異体を若干示す。
MGDF-4 アミノ酸 22-172 図11
MGDF-5 アミノ酸 22-177 図11
MGDF-6 アミノ酸 22-191 図11
MGDF-7 アミノ酸 22-198 図11
MGDF-8 アミノ酸 22-265 図11
MGDF-11 アミノ酸 22-184 図11
クローンの中には、MGDF-1配列のアミノ酸133-136 の部分が欠けたものもあり
、前述の配列に対応する配列は、これらアミノ酸を欠いていても(C−末端のア
ミノ酸番号が4つ欠けていても)、活性を呈する。
192 の位置に終末コドンを含む1 つのクローンにおいては、図11の位置191 が
示されているように、Thr 残基の代わりにAla 残基が発見された。しかるに、本
発明は、Thr の代わりにAla が191 の位置にくるようなMGDF分子の変化体を含ん
でいる。
MGDF-3は、IVS-5(介在配列-5)と言及される配列を除去してできた配列である
が、これは、この配列の5番目のエクソン内においてスプライスされているため
である。IVS-5 の5′末端がコドン中に発生した場合、これの除去によってMGDF
の残りの配列にフレームシフトが発生し、これはMGDF-3の160 の位置からこの分
子の末端部にかけて見ることができる。
MGDF-3自体を293 細胞へ形質移入しても、活性は見い出されず、実施例4の細
胞アッセイにおいて生じたコンディションメディウムを試験しても活性がない。
明らかにMGDF-1とは異なり、293 細胞はMGDF-3を活性体へ加工することはできな
い。にもかかわらず、MGDF-1に関する前述の部分的欠損の仮説に基づくと、
MGDF-3からC−末端のアミノ酸を部分的に欠損させても、活性が生じることとな
る。たとえば、MGDF-3の40-102アミノ酸をC−末端部において部分的に欠くと、
活性を生じた。50-90 アミノ酸が除去されることが望ましい。MGDF-2について好
適な変化体とは、以下のとおりである。
MGDF-9 22-179 図12
MGDF-10 22-190 図12
前述のMGDFの実例を含み、ここにおいて開示されているMpl リガンドすべてに
おいて、特にかかるペプチドがバクテリアの宿主細胞において発現している場合
は、N-末端にはメチオニル残基が存在し得る。
Mpl リガンドポリペプチドは既知の慣用化学的合成法によっても産生できる。
本発明におけるポリペプチドを合成手段によって構築する方法は、当業者に知ら
れている。合成法によって構築したMpl リガンドポリペプチド配列は、1 次、2
次、または3 次構造及びコンホーメーション上の特徴をMel リガンドポリペプチ
ドと共有しているおかげで、共通のMpl リガンドの生物学的特徴を備えているこ
とになる。よって、治療上及び免疫上の過程において、これらペプチドは、天然
型または精製
型のMpl リガンドポリペプチドに対して生物学的に活性な、または免疫的な代替
物として扱われ得る。
ペプチドまたはMpl リガンドをコードするDNA 配列の修飾は、既知の技術を使
って当業者が熟知の方法によって行われる。Mpl リガンド配列中、関心の集まる
修飾としては、コード配列における選択アミノ酸残基の置換、挿入または欠失が
あげられる。かかる置換、挿入または欠失を行うための突然変異誘発技術は、当
業者において周知となっている技術である(米国特許第4,518,584 参照)。1-20
アミノ酸における保守的変化が望ましい。好適なペプチドは、タンパク溶解酵素
または直接的化学合成によって発生し得る。かかる変化体は、本発明のMpl リガ
ントポリペプチド及びポリヌクレオチドの定義に含まれ得る。
Mpl リガンドポリペプチド配列における特異的突然変異体は、グリコシル化の
起こる部位(セリン、スレオニン、またはアスパラギン等)の修飾も含み得る。
グリコシル化が起こらないか、または部分的なグリコシル化しか起こらないのは
、アスパラギンが連関したグリコシル化認識部位において、あるいはO-結合炭水
化物が付加することによって修飾された分子の部位におい
て、アミノ酸の置換または欠失が起こった結果である。アスパラギンの連関して
いるグリコシル化認識部位は、適切な細胞性グリコシル化酵素によって特異的に
認識されたトリペプチド配列から構成される。このトリペプチド配列は、Asn-Xa
a-Thr またはAsn-Xaa-Ser であり、ここでいうXaa はプロリン以外のあらゆるア
ミノ酸が該当する。さまざまなアミノ酸の置換または欠失が、グリコシル化認識
部位の1 番目または3 番目のアミノ酸位置のうちいずれか一方または両方におい
て起こっていた場合(および/または2 番目の位置においてアミノ酸欠失がおき
ていた場合)、修飾されたトリペプチド配列においてはグリコシル化が起こらな
い。かかる変化ヌクレオチド配列は、その部位においてグリコシル化されない変
化体を発現する。MGDF の付加的アナログ
/誘導体
MGDF(Mplリガンド)配列におけるその他のアナログまたは誘導体は、全体とし
て、または部分的に(MGDFMpl リガンド)活性を保持しており、本明細書におけ
る開示により当業者により調製され得る。かかる修飾もまた、本発明に含まれる
。
特に、本発明はまた、化学修飾したMGDF組成物およびその製造法、ならびに利
用法をも含む。この開示によって、MGDFを修
飾し、その特徴を増強させることが可能になる。
本発明における一つの態様は、少なくとも1 つの水溶性ポリマー部分に結合し
たMGDFタンパク質を含むMGDF産物に関する。
本発明におけるもう一つの態様は、MGDFタンパク質が少なくとも1 つのポリエ
チレングリコール分子に結合したMGDF産物に関する。
本発明におけるその他の態様は、アシルまたはアルキル結合を介して少なくと
も1 つのポリエチレングリコール分子に結合したMGDF分子に関する。
MGDFのPEG 化は、当業界で周知となっているPEG 化反応を利用して達成され得
る。たとえば、Focus on Growth Factors 3(2):4-10(1992)、EP O 154 316;EP O
401 384 およびその他本発明において引用されているその他のPEG 化関連出版
物を参照のこと。好ましくは、反応性ポリエチレングリコール分子(または類似
の反応性水溶性ポリマー)を用いるアシル化またはアルキル化反応を介して、PE
G 化を行うのがよい。ポリエチレングリコールを使用した誘導体化の好ましい手
段について、以下に詳細に記述する。アシル化
アシル化によるPEG 化には、一般に、ポリエチレングリコール(PEG)の活性エ
ステル誘導体と、MGDFタンパク質との反応を含む。あらゆる既知または付随して
発見された反応性PEG 分子は、MGDFのPEG 化に利用され得る。好適な活性化PEG
エステルは、PEG をN-ヒドロキシスクシンイミドへエステル化したものである。
ここでいう「アシル化」は、MGDFとPEG 、アミド、カルバメート、ウレタン等の
水溶性ポリマーとの結合型を含むがこれに限定されない。Bioconjugate Chem.5:
133-140(1994)を参照のこと。反応条件は、PEG 化技術において既知の条件、ま
たはPEG 化に付随して開発されたあらゆる条件から選択されるが、修飾すべきMG
DF種を不活化するような温度、溶媒、およびPH等の条件を避けなくてはならない
。MGDFs のPEG 化に一般的に適用される反応条件を、以下に述べる。モノメトキ
シ-PEGのNHS エステルとの実例反応を、図14に概観する。
アシル化によるPEG 付加反応では、一般に、多数のPEG が付加したMGDF産物が
生じ、そこではアシル結合基を介してリジンε−アミノ基にPEG 付加が起こる。
接続する結合はアミドであることが好ましい。また、生じる産物は、実質上、PE
G1個の付
加物、PEG2個の付加物またはPEG3個の付加物のみ(例えば>95%)であることが好
ましい。しかし、適用されている特定条件によっては、高度にPEG 付加された種
(MGDFのリジンにおけるε−アミノ酸基への最大付加数と、MGDFのアミノ末端部
のα−アミノ基1個に付加する数までの)が形成され得るのが普通である。希望
するならば、透析、塩析、限外濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾
過クロマトグラフィーおよび電気泳動を含む標準的技術その他の技術を適用する
ことによって、混合物または未反応種のなかから、より精製されたPEG 付加種が
分離され得る。アルキル化
アルキル化によるPEG 化には、一般に、PEG の末端アルデヒド誘導体と、MGDF
等のタンパク質とを、還元剤の存在下で反応させることを含む。前述のアシル化
のように反応条件を下記する。
アルキル化によるPEG 付加を行うと、多数のPEG が付加したMGDFが発生する。
ポリPEG 化した産物を得るためのMGDFとの還元的アルキル化反応の実例を図15に
示す。さらに、前述のごとく、MGDF種のN-末端にあるα−アミノ基においてのみ
実質的に
PEG 化を行う(モノPEG 化された種)ような反応条件に操作することができる。
PEG1個が付加した産物を得るためのMGDFとの還元的アルキル化反応について、そ
の実例を図16に示す。PEG1個の付加反応、またはPEG が多数付加する反応のいず
れかにおいては、 -CH2 -NH-基を介してPEG 基がタンパク質に結合しているのが
望ましい。特に -CH2‐基を参照するにあたり、この結合型をここでは「アルキ
ル」結合と呼ぶ。
PEG1個が付加した産物を産生するための還元アルキル化を介した誘導体化では
、MGDFの誘導体合成において利用できる(N−末端に対するリジンなどの)異な
るタイプの1 級アミノ基の反応性が異なることを利用する。この反応は、(後述
する)PHにおいて、リジン残基におけるε−アミノ基と、タンパク質におけるN-
末端残基のα−アミノ基との間におけるpKa の値に差があることを利点として実
行することができる。かかる選択的誘導体化法によって、タンパク質へのアルデ
ヒドなどの反応基を含む水溶性ポリマーの結合を制御する。ポリマーとのコンジ
ュゲーションは、タンパク質のN-末端部において優位に発生し、リジンの側鎖の
アミノ基などのその他の反応基においては有位な修飾が起こらない。本発明にお
ける重要な目的には、実質上、
モノポリマー/MGDFタンパク質コンジュゲート分子の均質な製剤を提供する(実
質上、単一の位置のみ(>95%)においてMGDFタンパクがポリマー分子に結合す
ることを意味する)ことがある。さらに特定的には、ポリエチレングリコールを
使用するならば、本発明は、抗原性を有し得る結合基を含まず、MGDFタンパク質
へ直接結合するポリエチレングリコール分子を有する PEG 付加MGDFタンパク質
を提供する。
しかるに、本発明において好適な態様は、PEG 付加したMGDFであって、PEG 基
がアシル基またはアルキル基を介して結合することに関する。前述のごとく、か
かる産物は、PEG が一つまたは複数結合している(例えば2-6 個、好ましくは 2
-5個のPEG を含むことが)。PEG 基は一般にアミノ酸のα−アミノ基またはε−
アミノ基においてタンパク質と結合するが、このPEG 基はタンパク質に結合して
いるあらゆるアミノ基と結合することができると予期されており、これは適正な
条件下において十分な反応性を呈し、PEG 基と結合できるようになる。
アシル化とアルキル化の両反応において利用されているポリマー分子は、水溶
性ポリマーまたはその混合物から選択される。選択されたポリマーは、水溶性で
なくてはならず、付加される
タンパク質は生理的環境のような水溶性の環境において沈殿しない。選択された
ポリマーは、アシル化用の活性エステル、またはアルキル化用のアルデヒドのよ
うに、単一の反応基を有するよう修飾されなくてはならず、好ましくは、本発明
において示される方法によって重合度が制御される必要がある。好適な反応性PE
G アルデヒドはポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド(水に対して安定
)か、またはそれのモノC1-C10アルコキシまたはアーリールオキシ誘導体である
(米国特許第5,252,714 参照)。ポリマーは枝分かれしているか、または枝分か
れしていないもののいずれかとし得る。治療用の最終産物としてのポリマーにお
いては、前記ポリマーが薬学上受容されうるものとするのが望ましい。水溶性ポ
リマーは、たとえばポリエチレングリコール、モノメトキシ−ポリエチレングリ
コール、デキストラン、ポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、
プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシ
ドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(すなわちグリセロール)および
ポリビニルアルコールから構成されるグループより選択され得る。アシル化反応
に向けては、単一の反応性エステル基を有するポリマーが
選択されなくてはならない。本発明における還元的アルキル化においては、選択
されるポリマーが単一の反応性アルデヒドを有ななくてはならない。一般に、天
然型のグリコシル残基から水溶性ポリマーが選択されることはないであろうが、
これは、これらがほ乳動物類の組み換え発現系を使って簡便に合成されているた
めである。このポリマーはいかなる分子量でもよく、枝分かれしていることもあ
るし、枝分かれしていないこともある。
利用する上で特に好適な水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール、略して
PEG である。ここで利用されているように、ポリエチレングリコールは、モノ(
C1-C10)アルコキシまたはアリールオキシ−ポリエチレングリコール等のほかの
タンパク質の誘導体化に使われてきたPEG のいかなる形態を含むものとする。
ここで利用されるように、MGDFは前述のごとくあらゆる形態のMGDFを含むもの
と定義される。たとえば、完全な長さであるか、または部分欠損されているか、
グリコシル化または非グリコシル化された形態のMGDFすべてが含まれる。以下は
、誘導体化されるべき望ましいMGDF分子である(各々の例において、番
号づけは図11に従ってつけられたアミノ酸を示す)。
MGDF-1 アミノ酸 22-353 図11
MGDF-2 アミノ酸 22-195 図11
MGDF-4 アミノ酸 22-172 図11
MGDF-11 アミノ酸 22-184 図11
MGDF-12 アミノ酸 27-353 図11
MGDF-13 アミノ酸 27-195 図11
MGDF-14 アミノ酸 27-172 図11
MGDF-15 アミノ酸 27-184 図11
前述の好適な種は、グリコシル化、非グリコシル化、または脱グリコシル化され
ており、グリコシル化されていないのが好ましい。これらはバクテリア(E.coli
等)またはほ乳動物類細胞(CHO 等)を使って遺伝子組み換えによって得られる
。
以下は、本発明において特に好適な化学的誘導体分子のサブクループである(
かかる例においては、アシル基またはアルキル基を介して結合したモノ−又はポ
リ−(例えば 2〜4)PEG部分である)
PEG 付加MGDF-11
PEG 付加MGDF-4
PEG 付加MGDF-2
一般に、生物活性を有する物質と、活性化ポリマー分子とを反応させるのに使
う適正な条件下におくことによって化学的誘導体化が行われ得る。PEG 付加MGDF
の調製法は、一般に、(a)MGDFポリペプチドとポリエチレングリコール(PEG の
反応性エステルまたはアルデヒド誘導体等)との間の反応を、MGDFが1 個または
2 個以上のPEG 基と結合する条件で行なうステップと、(b)反応産物を得るステ
ップからなる。一般に、アシル化反応にとって最適の条件は、既知のパラメータ
と希望する結果とによって、ケース・バイ・ケースで決定される。たとえば、PE
G :タンパクの比が高くなると、ポリPEG 化産物の割合が高くなる。
モノポリマー/MGDFタンパク質コンジュゲート分子の実質上均質な集団を産生
させるための還元的アルキル化反応は、一般に、(a)MGDFタンパク質と反応性PEG
分子とを適正な還元的アルキル化条件下で、前記MGDFタンパク質のアミノ末端
におけるα−アミノ基を選択的に修飾するのに適したpHで反応させるステップと
、(b)反応産物を得るステップとから構成される。
モノポリマー/MGDFタンパク質コンジュゲード分子の実質上均質である集団に
とって、還元性アルキル化反応の条件では、
水溶性ポリマー部分を選択的にMGDFのN-末端部に結合させることができるもので
ある。かかる反応条件は、一般に、リジンのアミノ基とN-末端のα−アミノ基と
の間にあるpKa に違いをもたらす(pKa は、アミノ基の50% がプロトン化され、
残り50% がプロトン化されていないpHである)。pHはまた、使用すべきタンパク
質に対するポリマーの比にも影響を及ぼす。一般に、pHが低い場合、タンパク質
に対して過剰のポリマーが望まれる(N-末端部のα−アミノ基の反応性が下がる
と、最適な条件を達成するためにより多くのポリマーが必要になる)。pHが高く
なると、ポリマー:タンパク質の比を高くする必要がなくなる(反応性に富む基
が多くなると、ポリマー分子の必要量が低下する)。本発明の目的においては、
pHが3-9 の間にあり、3-6 であれば好ましい。
さらに重要な考慮点は、ポリマーの分子量である。一般に、ポリマーの分子量
が高くなると、タンパク質に付加し得るポリマー分子の数が少なくなる。同様に
、これらパラメータを最適化するには、ポリマーの枝分かれについても考慮しな
くてはならない。一般に、分子量が高くなると(または枝分かれが増えると)、
ポリマー:タンパクの比が高くなる。一般に、ここで
意図されているPEG 化反応では、好適な平均分子量は約2kDaから約10kDa である
(ここでいう「約」という語は、±1kDaのことである)。好ましい平均分子量は
約5kDaから約50kDa であり、約12kDa から約25kDa の間であればなおよい。水溶
性ポリマー対MGDFタンパク質の比は、一般に1:1 から100:1 ならよく、(ポリPE
G 化の場合)1:1 から20:1、(モノPEG 化では)1:1 から5:1 であればなおよい
。
前述の条件を用いて、還元的アルキル化反応を、ポリマーがアミノ末端部にお
いてα‐アミノ基を有するMGDFタンパク質へ選択的に結合することを提供し、モ
ノポリマー/MGDFタンパク質コンジュゲートの実質上均質な製剤を提供する。「
モノポリマー/MGDFタンパク質コンジュゲート」という語は、単一のポリマー分
子がMGDFタンパク1 分子に付加して構成されている組成物を示す。モノポリマー
/MGDFタンパク質コンジュゲートは、N-末端部にポリマー分子が付いていれば好
適であるが、リジンのアミノ側鎖基上でないほうがよい。この製剤は90% 以上の
モノポリマー/MGDFタンパク質コンジュゲートであるのが望ましく、95% 以上の
モノポリマーMGDFタンパク質コンジュゲートならばなおよく、観察可能な残りの
分子は未反応である(ポリマ
ー部分を欠いたタンパク質)。以下の実施例は、少なくとも90% がモノポリマー
/MGDFタンパク質コンジュゲートであり、約10% が未反応のタンパク質である。
モノポリマー/タンパク質コンジュゲートには生物活性がある。
ここでいう還元的アルキル化反応に向けては、還元剤が水性溶液中で安定であ
るべきであり、還元的アルキル化反応の初反応段階において形成されたシッフ塩
基のみを還元できるのが好ましい。好適な還元剤は、ソディウムボロヒドリド、
ソディウムシアノボロヒドリド、ジメチルアミン・ボラン、トリメチルアミンボ
ランおよびピリジンボラーンで構成されるグループから選択されるのがよい。特
に望ましい還元剤はソディウムシアノボロヒドリドである。
その他の溶媒、反応時間、温度などの反応パラメータ、および産物の精製方法
は、タンパクの水溶性ポリマーによる誘導体化に関する公開情報(本報における
出版物参照)にもとづいて、ケース・バイ・ケースで決定することができる。実
施例の項に具体例を示してある。
アシル化および/またはアルキル化法を選択することによって、ポリマー/タ
ンパク質コンジュゲート分子混合物を製造で
きるが、ここで提供できる利点は、混合物中に含まれるモノポリマー/タンパク
質コンジュゲートの比率を選択できることにある。よって、希望するならば、結
合させるポリマー分子の数(ジ−、トリ−、テトラ−など)を変化させて様々な
タンパクの混合物を調製することができ、ここで示す方法を利用して、モノポリ
マー/タンパク質コンジュゲート物質と組み合わせ、あらかじめ設定したモノポ
リマー/タンパク質コンジュゲート比の混合物を調製できる。
以下に提示した実施例は、化学修飾したMGDF製剤と、アシル化およびアルキル
化を介したPEG 化MGDFの製剤とを提供する。よって、本発明は、これらの製剤に
も関する。
一般に、本発明のポリマー/MGDFを投与することによって軽減または調節され
得る条件には、一般に前述のMGDF分子についての条件が含まれる。しかし、ここ
に開示されるポリマー/MGDF分子には、非誘導体化分子と比較した場合に、別の
活性増強されたまたは減弱された活性、あるいはほかの特徴を有し得る。
本発明におけるさらに他の態様には、前述の化学修飾を施したMGDF分子から構
成される医薬組成物の提供がある。かかる医
薬組成物は、非誘導体化MGDF分子に対して特定された成分を含み得る。
さらに詳細な検討が重ねられるにつれて、多様な患者を対象とした多様な病状
の治療に対する適正な投薬レベルが生み出され、治療上のコンテクスト、被投薬
者の年齢および全身の健康状態を考慮した通常の熟練作業者は、適正な投与量を
確定できると考えられる。一般に、投薬量は0.01μg/kg体重(タンパク質量のみ
から計算し、化学修飾を考慮しない場合)から 300ug/kg(前記と同様)の間で
あろう。より好適な投薬量は、5ug/kg体重から100ug/kg体重であり、さらに好適
な投薬量は10ug/kg から75ug/kg の間となる。
本発明はまた、MGDF(すなわちMpl リガンド)ポリペプチドまたはその活性フ
ラグメントの産生方法についても提供している。本発明における一つの方法には
、Mpl リガンドポリペプチドをコードするcDNAを発現ベクター中へ導入して、Mp
l リガンド用の発現系を作ることにある。選択された宿主細胞をベクターで形質
移入して、培養する。本発明における方法は、既知の制御配列の制御のもとに、
Mpl リガンドポリペプチドの発現をコードするDNA 配列を形質移入させておいた
、適正な細胞また
は細胞系を培養することから構成される。制御配列には、プロモーターフラグメ
ント、終末フラグメント、およびその他の適正な宿主細胞内においてタンパクの
発現を指示/制御する配列が含まれる。発現された因子は、当業者にとって既知
となっている適切手段によって培地から回収され、単離および精製される(細胞
内で発現していれば細胞から)。さらに、米国特許第5,272,071 号ではまた、本
発明のポリヌクレオチド/ポリペプチドに応用されるべく意図されている方法が
開示されている。
適正な細胞または細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO )または
3T3 細胞等のほ乳動物類細胞であり得る。ほ乳動物類由来宿主細胞および形質転
換の方法、培養、増幅、スクリーニングおよび産物の産生および精製方法の選択
は、公知である。Gething and Sambrook,Nature 293:620-625(1981)を参照する
か、代わりにKauhfman et al.,Mol,Cell.Biol.,5(7):1750-1759(1985)またはHow
ley et al.,米国特許第4,419,446号を参照のこと。その他の適正なほ乳動物類細
胞系としては、サルCOS-1,COS-7 細胞系、またはCV-1細胞系がある。さらに実例
となるほ乳動物類細胞系には、形質転換細胞系を含む霊長類の細胞系およびげっ
歯類の細胞系がある。正常2 倍体細胞、原
発組織のIN VITRO培養由来の細胞株は、原発性外移植片同様に適する。試験候補
となる細胞は選択された遺伝子において遺伝子型的に欠損し得るか、または優先
的に発現する選択遺伝子を含み得る。その他の適正なほ乳類細胞系には、これに
限定されないが、HeLa、マウスL929細胞、スイス・Balb/cマウス由来またはNIH
由来の3T3 系、BHK またはHaK ハムスター細胞系がある。
本発明に適する宿主細胞として、バクテリア由来細胞が同様に有用である。た
とえば、バイオテクノロジーの分野では、さまざまなE.coliの菌株(HB101,DH5
α、DH10,およびMC1061など)が宿主細胞として周知になっている。B.Subtills
,Pseudomonas spp.,Bacillus spp.およびStreptomyces spp.,および同様の菌
株も、本法において利用される。
当業者に周知となっている酵母細胞の多くの菌株も、本発明におけるポリペプ
チドの発現において宿主細胞として利用できる。Miller et al.,のGenetic Engi
neering 8:277-298(1986)および本明細書で示した文献を参照のこと。
本発明ではまた、新規Mpl リガンドポリペプチドの発現法において利用するた
めの組み換え分子またはベクターを提供する。
これらベクターは、Mpl リガンドDNA 配列を含み、そのリガンド配列は単独また
はその他の配列との組合せで本発明のMpl リガンドポリペプチド又はその活性フ
ラグメントをコードしている(シグナルペプチドを含む場合と含まない場合があ
る)。あるいは、前述のごとく被修飾配列を含むベクターはまた、本発明におけ
る具体例の一つをなし、Mpl リガンドポリペプチドを産生する上で有用である。
本発明において利用されているベクターは、本発明のDNA コード配列と操作可能
に結合し選択された宿主細胞内において、複製及び発現を指示する選択された制
御配列をも含む。
1 つのベクターとしてpXM があり、これは、特にCOS 細胞内の発現に好ましい
[Y.C.Yang et al.,Cell 47:3-10(1986)]。ほ乳類細胞例えばCHO 細胞内におけ
る発現に望ましいのはpEMC2B1 である。ここで開示されているほ乳類細胞発現ベ
クターは、当業者に周知の技術を利用して合成され得る。ベクターの構成要素、
例えばレプリコン、選択遺伝子、エンハンサー、プロモーター等は、天然ソース
から得るか、または既知の工程を経て合成され得る。Kaufman et al.,J.Mol.Bio
l.159:511-521(1982)、およびKaufman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:689-693
(1985)を参照のこと。また、あるいは、ベクターDNA はウシパピローマウイルス
のゲノム全部またはその一部を含み得[Lusky et al.,Cell 36:391-401(1984)]、
および安定エピソーム成分としてのC127マウス細胞などの細胞系内において複製
され得る。これらベクターを適正な宿主細胞へ形質移入すると、Mpl リガンドポ
リペプチドを発現させることができる。
多様なタイプの適正な発現ベクターは、ほ乳類、昆虫、酵母、真菌および細菌
発現などにおいて公知であり、この目的を果たすべく利用することができる。
本発明における方法および組成物によって処理される病状は、一般に、現状に
おいて巨核球/血小板を欠損しているか、または将来において巨核球/血小板の
欠損が予測されることを含む(予定された手術のため)。かかる諸病状は、通常
、in vivo において活性Mpl リガンドが(一時的または永久に)欠損した結果で
ある。血小板欠損という語は、血小板減少症であり、本発明の方法及び組成物は
一般に血小板減少症の治療に利用できる。
血小板減少症(血小板欠乏症)はさまざまな理由により存在し、様々な薬物に
よる化学療法やその他の治療、放射線療法、
外科手術、事故による失血、その他特別な疾病状態をもその理由に含む。血小板
減少症を含み、かつ本発明により治療され得る特異的病態とは、無形成性貧血、
特発性血小板減少症、血小板減少症を伴なう転移した腫瘍、全身性エリテマトー
デス、巨脾腫症、Fanconi 症候群、ビタミンB12 欠乏症、葉酸欠乏症、May-Hegg
lin 奇形、Wiskott-Aldrich 症候群、および近位夜行性ヘモグロビン尿症がある
。また、エイズを対象としてある治療(AZT 等)を行った結果、血小板減少症に
罹患することがある。ある損傷治癒不全に陥ったことが、血小板の増加にとって
有利に作用することがある。
予測される血小板欠損症、たとえば将来の外科手術が原因となるものには、本
発明のMpl リガンドを、血小板が必要になるのに先だって数日から数時間投与す
ることが可能である。急性の刺激、例えば不慮の大量な失血においては、Mpl リ
ガンドが血液または精製血小板と共に投与される。
本発明のMpl リガンドは、巨核球以外のある細胞タイプがMpl レセプターを発
現することが判明するならば、その細胞を刺激するのに有効である。Mpl レセプ
ターを発現するようなかかる細胞に関連する病態は、Mpl リガンドによる刺激に
関わっ
ているのであれば、本発明の範囲内に該当する。
本明細書において示した活性試験アッセイにおいて、それ自体が活性でないMG
DF分子は、IN VITROまたはIN VIVO においてMpl レセプターのモジュレータ(阻
害因子または刺激因子)として有用であるといえる。
本発明のポリペプチドは、前述のごとく認識された病態において、単独で用い
られるか、またはその他のサイトカイン、可溶性Mpl レセプター、造血因子、イ
ンターロイキン類、成長因子または抗体と組み合わせて用いられる。
よって、本発明におけるその他の態様には、前述の病態に関する治療用組成物
がある。かかる組成物は、薬学上受容しうる担体とともに治療上の薬効量に相当
するMpl リガンドポリペプチド、または治療上有効なフラグメントから構成され
る。この担体の材料は、注射用蒸留水であり得、好ましくは哺乳動物を対象とし
た投与液に慣用のその他の材料を添加したものとするのが好ましい。代表的には
、Mpl リガンド治療薬は、精製タンパクと一種以上の生理学上受容できる担体、
賦形剤または希釈剤組合せた形態で投与される。中性の緩衝生理食塩液、または
血清アルブミンを混合した生理食塩液は、適正な担体の例であ
る。前記産物が適正な賦形剤(ショ糖等)を利用した凍結乾燥品として処方され
ているのが好ましい。その他の標準担体、希釈剤、および賦形剤が希望に応じて
含まれる。その他の組成物の例には、トリス緩衝液pH8.0 、酢酸塩緩衝液pH 5.0
が含まれ、それらには場合によってはソルビトールも含まれる。
本組成物は、非経口法により全身投与する。非経口法の代わりとしては、前記
組成物を静注または皮下法によって投与する。全身投与した場合、本発明におい
て使用される治療用組成物は、発熱性物質を含まない、非経口で受容される水溶
液の形で存在し得る。かかる薬学上受容できるタンパク溶液の製造は、pH、等張
性、安定性等に関して当業界の技術内である。
前述の病態を治療するための治療法に関与する投与方法は、薬物の作用を変化
させる年齢、病態、体重、性別および患者の食事状況、あらゆる感染症の重症度
、薬物投与の時間その他臨床上の因子など、様々な因子を考慮しながら、主治医
によって決定される。一般に、一日投与量は0.1-1000μg のMpl リガンドタンパ
ク質またはそのフラグメントを体重1kg あたり投与する。
本発明における治療方法、組成物およびポリペプチドは、血
小板減少と同様、その他の症状によって特徴づけられる疾病状態の治療において
、ポリペプチド単独か、またはその他のサイトカイン、可溶性Mpl レセプター、
造血因子、インターロイキン類、成長因子または抗体と組み合わせて利用される
。Mpl リガンド分子はIL-3またはGM-CSF等の一般的な造血刺激剤と組み合わせて
、血小板減少症の病態を治療する上で有用であることが証明されるであろう。そ
の他の巨核球刺激因子、すなわちmeg-CSF 、幹細胞因子(SCF)、白血病阻害因子(
LIF)、オンコスタチンM(OSM)、または巨核球刺激活性を呈するその他の分子類も
また、Mpl リガンドと共に用いられる。さらに併用投与の実例となるサイトカイ
ンまたは造血因子には、α−型IL-1、β−型IL-1、IL-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,I
L-11、コロニー刺激因子−1(CSF-1)、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF
)、EPO 、α−インターフェロン(IFN-α)、IFN-βまたはIFN-γがある。さらに
、薬効量に相当する可溶性ほ乳類Mpl レセプターを、同時または連続して投与す
ると、一旦巨核球が成熟型に到達すれば、巨核球をフラグメントに分裂させて血
小板に到達させる上で有効である。よって、Mpl リガンドを(成熟巨核球の数を
増やすために)投与し、次いで可溶性Mpl レセプター
(リガンドを不活化させ、成熟巨核球に血小板を産生させるために)を投与する
と、血小板産生を刺激する上で極めて効果的な手段となると期待される。前述し
た投薬量は、治療用組成物に付加する成分を補正するために調整される。治療を
受けた患者における疾病の進行は、慣用試験法によって監視される。
これら新規ポリペプチドの利用法には、ほかに、標準法によって生成した抗体
の開発における利用がある。よって、本発明のMpl リガンドと反応する抗体は、
かかる抗体の反応性フラグメントと同様に本発明として意図されている。前記抗
体はポリクローナル、モノクローナル、組み換え体、キメラ体、一本鎖および/
またはバイスペシフィック等であり得る。ここでいう抗体フラグメントは、Fab,
Fab′等の本発明のMpl リガンドと反応するあらゆるフラグメントであり得る。
本発明においては、Mpl リガンドまたはそのフラグメントを選択された哺乳動物
に対する抗原として提供し、続いて動物細胞(脾臓細胞等)とある種の癌細胞と
を融合させ、既知の技術を利用して生存し続ける細胞系を生成することによって
発生したハイブリドーマも提供される。かかる細胞系及び本発明におけるヒト由
来Mpl リガンドペプチドの全部または一部に対する抗体を発生させる方法
についても、本発明に含まれる。
前記抗体は、Mpl リガンドとそのレセプターとの結合を阻害する目的で治療用
に使用され得る。更に、この抗体は、in vivoおよびin vitroにおける診断用と
して、体液中にMpl リガンドが存在するかを検出するために、標識体の形で利用
され得る。
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するために含まれるものである。さ
らに、これら実施例は本発明において好ましい具体例を提供するが、指示のない
限りは、かかる発明の目的に限定されることはない。以下の実施例に記述されて
いる過程の多く、または適正な代用法は、たとえば、Sambrook et al.,Molecula
r Cloning,Second Edition,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1987)およ
びAusubel et al.,(Eds),Current Protocols in Molecular Biology,Greene ass
ociates/Wiley Interscience,New York(1990)等において、分子生物学における
周知のマニュアルとして提供されている。
実施例1
形成不全性イヌ血漿
ヘパリン処理した、形成不全性イヌ血漿“APK9″および正常
イヌ血漿“NK9″は、次の報文にしたがって調製した。ただし、検体に対して、4
50 ラドの全身照射を行なった。
1.Mazur,E.and South,K.Exp.Hematol.13:1164-1172(1985)
2.Arriaga,M.,South,K.,Cohen,J.L.,and Mazur,E.M.Blood 69:486-492(1987
)
3.Mazur,E.,Basilico,D.,Newton,J.L,,Cohen,J.L.,Charl and,C.,Sohl,
P.A.,and Narendran,A.Blood 76:1771-1782(1990)
実施例2
ヒト巨核球アッセイ
APK9および分画したAPK9は、CD34+始原細胞からヒト巨核球への発生分化促進
能をアッセイした。CD34- 選択細胞は、報文(Hokom,M.H.,Choi,E.,Nichol,J.L
.,Hornkohl,A.,Arakawa,T.,and Hunt,P.Molecular Biology of Haematopoie
sis 3:15-31,1994)にしたがって末梢血細胞から採取し、次に示す培養液でイン
キュベートした:Iscove′s modified Dulbecco′smedium(IMDM; GIBCO,Grand
Island,NY)に、1%グルタミンPen-strep(Irvine Scientific,Santa Ana,CA)と
、10% のヘパリン処理・血小板乏・ヒトAB型血漿を添加し、。さらに、2-
メルカプトエタノール(10-4M)、ピルビン酸(110μg/ml)、コレステロール(7.8μ
g/ml)、アデノシン、グアニン、シチジン、ウリジン、チミジン、2-デオキシシ
トシン、2-デオキシアデノシン、2-デオキシグアノシン(以上は各々10μg/ml,S
igma)、 ;ヒト・組換型(recombinant)・インシュリン(10μg/ml)、ヒト・トラン
スフェリン(300μg/ml)、大豆油脂(1%,Boehringer Mannheim,Indianapolis,I
N)、 ;ヒト,組換型・塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF,2ng/ml,Genzyme,Camb
ridge,MA)、 ;ヒト・組換型・上皮成長因子(15ng/ml)、;血小板由来成長因子
(10ng/ml,Amgen,Inc.,Thousand Oaks,CA )を加えた培養液。CD34- 選択細
胞は、2×105個/ml(培養液)の濃度で、最終容量15ulとして、テラサキ型・マイ
クロタイター(microtiter)プレート(Vanguard,Inc.,Neptune,NJ)のウェル(we
ll)に配置(plate)した。細胞は、1%グルタルアルデヒドで直接培地のウェルに固
定し、5%CO2を含む空気を流した調湿ボックスで、37℃、8 日間、インキュベー
トし、モノクローナル抗体反応溶液(抗GPIb、抗GPIIb、(Biodesign)と抗 GPIb(
Dako,Carpinteria,CA))とともにインキュベートした。免疫反応はストレプト
・アビジン- ベータ- ガラクトシダーゼ
の検出系(HistoMark,Kirkegaard and Perry )で展開した。青色で同定される
巨核球は、100 倍率にした倒立顕微鏡でカウントした。結果は、ウェル当たりの
巨核球数の平均値+/- 平均標準誤差(SEM)として、示した。場合によって、デー
タは“巨核球ユニット/ml ”で示すことがあり、ここでは、与えられたサンプル
が誘導した巨核球発生分化の度合いが、APK9のポジティブコントロールに対して
正規化(normalize)される。すなわち、1 ユニットは、1ul のAPK9スタンダード
がもたらす巨核球と同じ数の巨核球を生じる物質の量として、定義する。活性が
、もしも5-10μg/mlの MPL-X(可溶性Mpl レセプター)でブロックされれば、活
性がMPL リガンドに基づいていることが認められる。
APK9は、ヒト巨核球の発生分化を刺激する(いくつかの)因子を、この系に含
んでいることが示唆されている。10%NK9で、8 日間インキュベートしたCD34- 選
択細胞は、無視できるぐらいの数の青染色巨核球しか示さないが、これに対して
10%APK9で、8 日間インキュベートしたCD34- 選択細胞は、非常に多数の青染色
巨核球を示す。
図2 は、ヒト巨核球培養系に加えたMpl-X の濃度が増大する
につれ、巨核球発生のブロックも増大していることを示している。Mpl-X の濃度
が5 μg/ml以上で、阻害は完全である。この実験で、CD34- 選択細胞は、5%APK9
で刺激を受けた。これは、Mpl-X(おそらくMpl リガンド)と相互作用する、ある
活性が、ヒト巨核球の発生分化に必要であることを証明しており、Mpl リガンド
はAPK9そのものに含まれていることを意味している。
本明細書において、ヒト巨核球の発生分化に必要なMpl リガンド活性がAPK9に
存在することがさらに示される。APK9(135ml)をIscove′s培養液で6 倍に希釈し
、Mpl-X のアフィニティーカラムに加えた。非結合物質(フロースルー)を集め
、アッセイの前に、元のボリュームに濃縮した。結合物質は10mlの1MNaClで溶出
し、プールの20% をダイアフィルトレーションし、アッセイ用に4 倍に濃縮した
。培養液だけでインキュベートしたCD34- 選択細胞は、巨核球に分化しなかった
。5%APK9(カラムに加えたものと同じプール)でインキュベートした細胞は、ウ
ェル当たり48+/-8個の巨核球に分化した。10% の非結合物質でインキュベートし
た細胞は、巨核球に分化しなかった。10% の溶出プールでインキュベートした細
胞は、ウェル当たり120+/-44個の巨核球に分化した。カラムにロードしたものお
よび溶
出プールの両活性はともに、5 μg/mlのMpl-X でのアッセイで、実質的に完全に
阻害された。
実施例3
マウスおよびヒトMpl レセプターのマウス細胞系
への遺伝子導入
A.マウスMpl レセプター
Moloney マウス肉腫ウィルスのLTR に由来する転写プロモーターを含んでいる
発現ベクターに、完全長のマウスMpl レセプターcDNAをサブクローニングした。
この構成物5 μg と、選択マーカープラスミド pWLNeo(Stratagene)1μg を、IL
-3依存性マウス細胞系(32D,Clone 23; Greenberger et al.,PNAS 80:2931-293
6(1983))に、エレクトロポアレーションした。細胞は、回復のために5日間培養
した後、800 μg/mlのGeneticin(G418,Sigma)と 1ng/mlのマウスIL-3を含む選択
培地でインキュベートした。生き残っている細胞は、 2×105個づつのプールに
分割し、個々の集団が続いての分析に使えるように生育するまで培養した。ポリ
クローナルウサギ抗ペプチド血清を用いるFACS分析によって、6 個の集団の、Mp
l レセプターの表面発現についてテストした。一つの集団を、前記と同じ抗ペプ
チド血清を用
いるFACS分別により選んだ。10%APK9 とGeneticin の存在下での生育によって、
親細胞系の単細胞クローンを選択した。APK9存在下で35日間の選択後、細胞を1n
g/mlのマウスIL-3存在下で維持した。サブクローンの一つ、1A6.1 を、この一連
の研究に用いた。
B.ヒトMpl レセプター
Moloney マウス肉腫ウィルスの転写プロモーターを含んでいる発現ベクター(
マウスレセプターの場合と同じベクター)中に、完全長のヒトMpl レセプターの
配列(Vigon,I.,et al.,PNAS 89:5640-5644(1992))をサブクローニングした
。この構成物6 μgと、両種性のレトロウィルスのパッケージング構成物(Landa
u,N.R.,Littman,D.R.,J.Virology 66:5110-5113(1992))6 μg を、CaPO2哺乳
動物遺伝子導入キット(Stratagene)を用いて、3×106個の293 細胞に遺伝子導入
した。同じ細胞群に、2 日後に再導入し、4 日後にもまた行った。最後の遺伝子
導入の翌日、293 細胞を、IL-3依存性マウス細胞系(32D,Clone 23;Greenberge
r et al.,PNAS 80:2931-2936(1983))とともに、共培養した。24時間後、32D 細
胞を解放し、BSA 勾配(Path-o-cyte;Miles Inc.)でバンド化した。細胞は1ng/ml
の
IL-3存在下で増幅され、20%APK9 在下での生育によって選択された。細胞は、ポ
リクローナルウサギ抗ペプチド血清を用いるFACSによって、レセプターの細胞表
面発現につて分別された。これらの細胞は、続いて各種のアッセイに用いた。
実施例4
Mplリガンドのための1A6.1 アッセイ
1A6.1 細胞は、培養液IL-3が無くなるまで洗浄し、テラサキ型のマイクロタイ
タープレートの中の、10% 牛胎児血清(FCS)、Geneticin(800μg/ml)およびテス
トサンプル用を1:1 で連続希釈した1%pen/strep(Gibco)を添加したアルファ MEM
(Gibco)に再配置した(1000個の細胞/15ul 総容量/ウェル)。48時間後、ウェ
ル当たりの生存細胞数を顕微鏡で算定した。活性の1 ユニット(U)を、ウェル当
たり200 の生存細胞数をもたらす活性量と定義した。アッセイにおいて、もしも
5-10μg/mlのMpl-X で完全にブロックされれば、その活性がMpl リガンドに基づ
いているものと定義した。APK9中のMpl リガンド活性は、形成不全性血漿では、
平均4400+/-539 U/ml であった。特にことわらない限り、Mpl リガンド活性のユ
ニットは1A6.1 アッセイで定義されているとうりである。
ヒトMpl レセプター遺伝子(実施例3B)を導入された細胞のアッセイは、1A6.
1 細胞を用いた方法と基本的に同様に行った。
実施例5
Mpl リガンドが、マウス、イヌ、ブタそしてヒトの
形成不全性の血漿や血清に存在することの証明
Mpl リガンドは、マウス、イヌ、ブタそしてヒトの形成不全性の血漿や血清に
存在している (表2)。前照射と12日後の後照射(500ラド)を受けたBDF1マウスか
ら、血漿を採取した。血漿は1A6.1 アッセイによれば、2000 U/ml の活性を示し
、これは実質的にMpl-X(10ug/ml)で完全に阻害された。照射を受けたマウスの血
漿は、またヒト巨核球のアッセイでもポジティブで、1833 U/ml の活性を示した
。前照射と10日後の後照射(450ラド)を受けたイヌから、血漿を採取した。血漿
を1A6.1 アッセイとヒト巨核球アッセイの両法でテストした。活性は検出され、
両アッセイにおいてMpl-X(10ug/ml)で完全に阻害された。前照射と10日後の後照
射(650ラド)を受けたブタから、血漿を採取した。血漿を1A6.1 アッセイとヒト
巨核球アッセイの両法でテストした。両アッセイにおいてMpl リガンド活性(10
μg/mlのMpl-X で阻害される)は、形成不全性のイヌ血漿からの値に匹
敵した。形成不全性のヒトから血清を得た。この血清は骨髄移植患者から集めた
。6 名の患者からの血清を、1A6.1 アッセイでみると、903 U/mlの活性を示した
が、Mpl リガンド活性(10ug/ml のMpl-X で阻害される)は、その88% だった。
14名の形成不全性の患者から集めた血清も、ヒト巨核球アッセイでテストした。
それらは、群として、実質的に活性941 meg U/mlを示したが、これは10ug/ml の
Mpl-X で完全に阻害される量であった。1A6.1 アッセイの特異性を証明するため
に、マウスIL-3のデータを挿入した。この組換型・サイトカインは細胞系の生育
を促進するが、10ug/ml のMpl-X でブロックされない。
実施例6
Mpl リガンドは1A6.1 細胞の成長および巨核球の
発生分化を促進する
Mpl リガンド(レクチンおよびアフィニティクロマトグラフィーによって、少
なくとも約100,000 倍に活性を強化した; 実施例7を参照)は、1A6.1 細胞系の
成長と、CD-34 選択末梢血細胞から巨核球への発生分化を、投与量依存的に、促
進する。両アッセイにおける活性はMpl-X によって完全にブロックされ
るので、図2 と3 に示すように、活性の本体はMpl リガンドに起因する。
FACSで純化した末梢血CD34+細胞を、Mpl リガンド存在下でインキュベートす
ると(この場合、100 U/mlで9 日間)、表現型としては正常で成熟した巨核球に
分化することも、発明者らによって、すでに明らかにされている。このことは、
純化したMpl リガンドは巨核球に対してクルードAPK9同じ効果を有することを立
証する。なお、CD-34 選択細胞ではCD34+の純度は一般に30-50%しかないのに対
して、この実験では純化したCD34+細胞(100% CD34+)を使った。
実施例7
イヌMpl リガンドの精製
I.概要
Mpl レセプターに対するリガンドと予想される活性を現すタンパク質(25kd と
31kd)を精製した。照射されたイヌの血漿から、小麦胚芽凝集素(WGA)・アフィニ
ティクロマトグラフィー、Mpl レセプター・アフィニティクロマトグラフィー、
陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、そしてC4逆相
HPLCという手順で、これらのタンパク質を精製した。
この精製スキームを一覧にまとめた図4 を参照せよ。25kdと31kdのMpl リガンド
は、見かけ上単一にまで高度に純化し、本明細書に開示した各アミノ酸配列を含
有することが確認された。
II.方法
A.血漿の清浄化
照射されたイヌ(実施例 1を参照)の凍結血漿(全20リットル)を、4℃で一
夜かけて、解凍した; 大きいボトルを解凍する際、冷室に入れる前に室温に数時
間放置した。不溶物は、11,000xg、6 時間の遠心分離によって除去した。血漿は
、リン酸塩でpHを7.3 にあわせた0.01% アジ化ナトリウム含有生理食塩水(PBS/a
zide)で希釈し、1.2μm のフィルターを通して濾過した。清浄化操作によって、
大体、スタート時の約2 倍に希釈された。
B.小麦胚芽凝集素アフィニティクロマトグラフィー
全操作は4 ℃で行った。清浄化血漿(2バッチ)を、PBS/azide で平衡化した固
定化小麦胚芽凝集素のカラム(1リットル、10×12cm、E Y Laboratories)に加
えた。サンプルを添加後、非結合物質はPBS/azide でカラムから洗い出し、続い
て0.5 M NaClを含む 20 mM Tris-HCl(pH 8)で洗い出した。WGA
カラムに結合したMpl リガンド活性は、0.35M N-アセチルグルコサミン(GLcNAc)
と0.5M NaCl を含む 20mM Tris-HCl(pH 8)で溶出させた。Mpl リガンド活性は、
フロースルーと洗浄フラクションには検出されなかった。
C.Mpl-Xレセプター・アフィニティクロマトグラフィー
用いた可溶性のマウスMpl レセプター(Mpl-X)は、Mpl レセプターの細胞外ド
メイン全体から483 位のTrp を減じたものに相当した(Vigon,et al,8: 2607-2
615(1993)を参照)。Mpl-X レセプター・アフィニティカラムにMpl リガンドを最
適に結合させるために、WGA 溶出プールは、メンブレン・ウルトラフィルター(
分子量カットオフ、10,000、YM-10,Amicon)を用いて濃縮し、その後の希釈によ
ってNaCl濃度を0.2 M に調整した。濃縮したWGA プールは、20mlのm-Mpl-X(マウ
スMpl 可溶性レセプター)/CNBr活性化セファロースカラム(2.6 x 4.2cm,1,5mg m
-Mpl-X/ml)に、流速0.9ml/min で通した。カラムを40mlのPBS/azide 、流速1.5m
l/min で洗い、続いて405ml の高塩洗浄(10mM Tris-HCl,1M NaCl,1mM CHAPS,
pH 8.0)を行なった。その後、カラムは、20mM CAPS,1M NaCl,5mM CHAPS(pH10.
5)で溶出させた。適当なフラクションを集めた。pHを中和
するために、各フラクションにはTrisを加えた。
SDS-PAGEおよび280nm の吸光度によるMpl-X レセプター・アフィニティカラム
の溶出プロファイルは、初期のタンパク質のピークをフラクション1-4 に示すの
に対して、Mpl リガンド活性の大部分はフラクション5 以降に溶出した。
D.Mono-Q 陰イオン交換クロマトグラフィー
数回のMpl-X レセプター・アフィニティカラムにより得た、最も純度の高いフ
ラクションを合わせて、濃縮し、そして20mM Tris-HCl,5 mM CHAPS(pH 8.7)に
よりダイアフィルトレーションした。最終液量は58.5mlだった。プールのタンパ
ク質濃度は、280nm の吸光度から、0.12mg/ml(全タンパク質量は約 7mg)と概
算した。このプールを、20mM Tris-HCl,5mM CHAPS(pH 8,7)で平衡化したMono Q
HR 5/5 カラム(Pharmacia)に、0.5ml/min でロードした。カラムは同バッファ
ー中で、27分間で、0.36M NaClまでの直線勾配で溶出させ、続いて6 分間で、0.
54M NaClまでの勾配で洗浄し、最後に0.9 M NaClで洗った。1ml づつのフラクシ
ョンを集めた。
Mono Qカラムの溶出プロファイルは、フロースルーおよび洗浄フラクションに
は、Mpl リガンドが全く検出されず、タンパ
ク質もほとんど検出されないことを示している。Mpl リガンド活性の多くは、最
初のNaCl勾配において、フラクション5-7 に溶出している。活性の“ショルダー
”がフラクション8-10にみられ、続いて2 番目の大きなピークがフラクション11
-15 にみられる。
活性フラクションにおいて、SDS-PAGE(非還元)により、はっきりした25kdの
バンドがみられる。バンドの強さは、フラクション中のMpl リガンド活性に直接
一致する。フラクション3と4(活性はない)にはバンドもなかった。バンドはフラ
クション5 と6(1A6.1 活性ピーク)では特に目立ち、同じように強く染色された
バンドがフラクション11-14(1A6.1 活性ピーク)にあった。フラクション15と16
のプールはバンドも薄く、フラクション16の、明らかな低活性に一致する。
E.ゲル溶出実験
Mono Qフラクション5 と6 、およびMono Qフラクション13と14のそれぞれ一部
を用いて、ゲル溶出実験を行った。この実験のために、フラクション5 と6 のプ
ール(各 6μl)および13と14のプール(各 7.5μl)をつくり、SDS-PAGEのサンプ
ルバッファー(非還元)と混合し、12%SDSゲルに加えた。電気泳動の
終了直後、興味深いレーンをスライスし(1mm),このスライスをカミソリの刃で
さいころ状の小片にきざんだ。0.5ml PBS/5mM CHAPSの入った1.5ml のマイクロ
除去(microfuge)チューブに、この小片を移し、4℃で一夜、穏やかに撹拌した。
翌日、チューブを軽く振り、一部を取って、このサンプルを、キャリアタンパク
質としてBSA を添加したIscove′s培養液に対してダイアフィルトレーションし
た。ダイアフィルトレーションしたサンプルをアッセイに供した。
結果として、Mpl リガンド活性の二つのピークが観察できる。一つのピークは
ゲルの25kd域に一致し、Mpl リガンド活性の二つ目のピークは31kd域にみられる
。
F.Superdex 200ゲル濾過
Mono-Q陰イオン交換カラムからのフラクション13-16 を、2回目のMono-Q分画
の同じフラクションと合わせて、メンブレン・ウルトラフィルター(Centricon-1
0,Amicon)を用いて濃縮した。SDS を終濃度0.1%になるように加え、このサンプ
ルをSuperdex 200HR 10/30(Pharmacia)カラムに注入した。カラムは流速0.3ml/m
in で、50mM Tris-HCl,0.1% SDS(pH 7.5)中で平衡化し、室温で操作した。1分
づつフラクションを集めた。結果
として、サンプル中のほとんどのタンパク質がフラクション32-40 に溶出したの
に対して、Mpl リガンド活性はフラクション42-46 に検出された。フラクション
のSDS-PAGE分析は、活性フラクションにはっきりした25kdバンドを示した。
G.C4逆相HPLC
Superdex 200フラクション43-46 を合わせて、およびフラクション42は単独で
、メンブレン・ウルトラフィルター(Microcon-10,Amicon)を用いて濃縮した。
この濃縮したプールを、別々に、1 x 100mm C4逆相マイクロボア(microbore)カ
ラム(Syn Chropak RP-4)に加えた。カラムは0.04% TFA 水(A バッファー)で平
衡化しており、B バッファーは80% アセトニトリル中0.035%TFA であった。サン
プルを注入後、4 分間で45%Bに上げる直線勾配を実施し、続いて40分間で75%Bに
上げる直線勾配を実施した。流速は75μl/min であった。フラクション42の精製
結果を図5 に掲げる。フラクション21-23 にはっきりしたMplリガンド活性のピ
ークがみられた。これらのフラクションを、還元および非還元条件下で、14% ポ
リアクリルアミドゲルで分析した。フラクション21は単独の31kdバンドからなり
、フラクション23は単独でブロードな25kdバンドからなり、フラクショ
ン22は25kdと31kdの両バンドを含んでいた。他の明瞭なバンドは見えなかった。
先のゲル溶出実験で、Mpl リガンド活性がこれら両部分にあったことを、思い起
こして欲しい。単独でマイナーな高分子量のバンドが、非還元ゲルの全フラクシ
ョンにみられたが、還元ゲルでは見えなかった。
H.25kdおよび31kd MplリガンドのN-末端配列分析
活性を有するC4 RP-HPLCのフラクションについてN-末端配列分析を行った。こ
れらタンパク質の決定された配列は上記に報告してある。25kdバンド(添加した
サンプル全体の少なくとも90% )に相当する主な配列に加えて、配列分析では二
つのマイナーな配列(これらは上記のpart Gで述べたマイナーなコンタミネート
したバンドに関連している)を検出した。既知の配列との比較によって、マイナ
ーな配列はイヌIg重鎖とカッパー鎖(κ)であることが分かった。もし必要なら
、これらのマイナーな不純物は、他の精製ステップ、好ましくは例えばゲル濾過
ステップをもう一度行うと、量的にさらに減少させることができる。
I.C4で精製したフラクションにおけるMpl リガンド活性の比較
C4 RP-HPLCクロマトグラフィーのステップにおけるフラクシ
ョン22と23にある活性は、実質的に同等であることを示しているデータが図6 で
ある。フラクション22は25および31kdのバンドの混合物であるのに対し、フラク
ション23は25kdバンドのみを含んでいる。各フラクションの一部を45000 倍に希
釈した。この希釈したフラクションは、1A6.1 細胞の成長を実質的に等しく促進
した(フラクション22がウェル当たり5400細胞; フラクション23がウェル当たり
6000細胞)。この希釈したフラクションを種々の濃度のMpl-X と共にインキュベ
ートした。フラクションはMpl-X による阻害に対して等しく感応し、両フラクシ
ョンは7-1.4 μg/ml量で完全にブロックされていた。これは、各フラクションに
ある活性タンパク質が同等な生物学的活性を有するMpl リガンド種であることを
指し示している。
実施例8
巨核球の発生分化における、Mpl リガンドと
他のファクターの比較
多くの組換型ファクターやホルボールミリスティック・アセテート(PMA)のよ
うな有機化合物は、巨核球の成長や発生分化に、影響を与えると報告されている
。それゆえに、CD-34 選択末梢血細胞に対する、これらファクターの影響を調べ
た。ヒト
・組換型・インターロイキン3(IL-3,1-2 ng/ml)、幹細胞因子(SCF,50 ng/ml)
、インターロイキン6(IL-6,25 ng/ml)、エリトロポイエチン(EPO,1 Unit/ml)
、白血球阻止因子(leukemia inhibitory factor; LIF,10 ng/ml)、そして顆粒
球- マクロファージ・コロニー‐刺激因子(GM-CSF,25 ng/ml,Amgen,Inc,);イ
ンターロイキン11(IL-11,25ng/ml,R+D Systems,Minneapolis,MN); ホルボー
ル・ミリスティック・アセテート(PMA,10-10M,Sigma)を上記にしめしたように
、培地に加えた。Mpl リガンドは275 U/mlを、APK9は5%(220 U/ml に等しい)を
使った。ファクターを組み合わせてテストする場合は、個々にテストした場合と
同じ濃度を使った。培養8 日後に、細胞はウェルに直接固定し、巨核球を染色し
たり(条件当たりn=6 ウェル)、あるいは全細胞数をカウントした(条件当たり
n=3 ウェル)。データは平均+/-SEMで表した。
図7 は、APK9とMpl リガンドが、ウェル当たりの最大数の巨核球をもたらした
ことを示している。IL-3もまた、特にSCF との組み合わせにおいて、巨核球の発
生分化に効果を示した。IL-6、IL-11 、およびEPO は、それぞれ単独でも、ある
いはIL-3との組み合わせにおいても、巨核球数にほとんど効果をもたな
かった。PMA 、LIF 、そしてGM-CSFもほとんど効果をもたなかった。図8 は、同
じ実験から得たデータであり、ウェル当たりにみられた全細胞数(“セルラリテ
ィー”)を示している。APK9とMpl リガンドはセルラリティーにおいてほとんど
効果がないのに対し、IL-3とSCF はわずかに効果をもっていた。SCFとIL-3の組
み合わせは、最大の効果をもっていた。図7 と8 に示したデータを使って、ウェ
ル当たりの巨核球をパーセントで表したものが、図9 である。培地のウェル当た
りの巨核球の最大パーセントをもたらしているファクターは、明らかに、APK9の
活性成分であるMpl リガンドである。これは、巨核球に対するMpl リガンドの特
異性を指し示している。
実施例9
Mpl リガンドの巨核球発生分化促進活性は、ヒトIL-3に依存し
ない
Mpl リガンドは、実施例 2に記述したように培養液に添加すると、ヒト巨核球
の発生分化を促進する。IL-3は培地の構成成分ではないが、培地に存在する正常
ヒト血漿には検出できないぐらいの低レベルで含まれている。しかし、もしあっ
たとしても、IL-3は、Mpl リガンド- 誘導性の造巨核球(megakaryopoie
sis)にはかかわらない。これを図10に示す。2ng/mlのIL-3は、ヒト・メガ・アッ
セイ(human meg assay)において、14,900 meg U/ml の活性を持つ。この活性の9
7% が抗IL-3(3.3ug/ml;Genzyme,Cambridge,MA)によって阻害される。8203 meg U
/mlの活性を持つMpl リガンドは、抗IL-3によって阻害されなかった。
実施例10
ブタMpl リガンドの分析
I.概要
WGA ・アフィニティクロマトグラフィー、Mpl レセプター・アフィニティクロ
マトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、そしてC4逆相HPLCによって、
照射されたブタの血漿から得た、Mpl リガンド活性をもつタンパク質の特質を明
らかにした。この活性の特質は、また、SDS-ポリアクリルアミド・ゲルにより得
られたスライスからの溶出によっても明らかにされた。クロマトグラフィー
コメント
WGA ・アフィニティカラム 添加 ; 4.4X106U
回収 ; 3.4X106U
Mpl レセプター・カラム 添加 ; 2.7X106U
回収 ; 2.4X106U
Mono Sイオン交換pH 6.0 添加 ; 2.4X106U
回収 ; 4.4X106U
C4逆相HPLC 活性はフラクション 23-25にて回収
ゲル溶出実験 二つの活性は明らかに区別され、
一つは約18kd,他は約28kd
実施例11
ヒトMpl リガンド、ヒトMGDFのクローニング
二つのアプローチのあらましを次に記述する。
I.一つ目のクローニングアプローチの実例
A.ヒトMGDFプローブの作製
多くの縮重したPCR プライマーを、イヌタンパク質のアミノ末端配列をもとに
作った。ヒトゲノムDNA からMGDF遺伝子を増幅させるために、いくつかのプライ
マーペアを用いた。イヌタ
ンパク質(SEQ ID NO; 1)の初めの5 アミノ酸をコードしている、5′GCN CCN CCN
GCN TGY GA 3′(SEQ ID NO: 4)をセンス・プライマーとして、SEQ ID NO: 1の1
6から21のアミノ酸をコードしている、5′GCA RTG YAA CAC RTG NGA RTC 3′(SE
Q ID NO: 5)をアンチセンス・プライマーとして、40サイクルの増幅の後、PCR
産物はTBE バッファー中の2.0%アガロース・ゲルで泳動した。
アガロース・ゲルから63bpバンドを切り出し、同じプライマーセットで再増幅
した。このPCR 産物を、PCR IIベクター(Invitrogen,San Diego)でクローニング
した。多数のコロニーをDNA シーケンシングによりスクリーニングした。イヌMG
DFタンパク質に類似したペプチドをコードするプラスミドDNA を、cDNAライブラ
リーをスクリーニングする放射性プローブ作製のソースとして用いた。遺伝子フ
ラグメントによって、コードされたアミノ酸配列は次のとおりである:
ヒトMGDFを含むアガロースバンドをホットPCR によるプローブ作製に用いた。
典型的な100 μl のPCR 反応は、次のような
成分を含んである:
増幅条件は次のようである:
initial heating 94℃, 2 min
anneal 53℃, 30 sec
extension 72℃, 30 sec
denaturation 94℃, 30 sec
40サイクルの増幅は、Perkin Elmer GeneAmp System 9600で行った。
産物はプッシュカラム(Stratagene,San Diego)を通して精製した。1 μl の
プローブを一つシンチレイション・カウンターでカウントした。ml当たり1-3 百
万カウントを含むプローブをハイブリダイゼイション・ミックスに加えた。
B.胎児肝ライブラリーのコンストラクション
ヒト胎児肝 polyA+ RNA は、Clontech laboratories から購入した。約4 μg
のRNA をcDNA合成に使った。ランダムヘキサマー、5′GTA CGC GTT CTA GAN NNN
NNT 3′(SEQ ID NO: 7)を、Xba I サイトを含むオリゴに付けて、プライミング
を行った。
ダブルストランドのcDNA作製には、Gibco-BRL のプロトコールを使った。Eco
R I-Bst X I アダプター(Invitrogen,SanDiego )をダブルストランドのcDNA
にライゲーションした後制限酵素、Xba I でダイジェストした。cDNAのサイズ選
択は、S500 Sephacrylカラム(Life Technologies,Inc.)で行った。400bp 以上の
cDNAを、既にEco R I とXba I でダイジェストしてある哺乳動物の発現ベクター
、v19.8(Martin,F,,Cell 63:203-211(1990))とライゲーションさせた。受容能
力を持つE.
coli DH10セルを形質転換させ、得られたcDNAライブラリーは、100,000cDNA づ
つ7 個のプールに分けた。
C.ラムダライブラリーのスクリーニング
ラムダgt11に組み込まれた、力価 650×P106pfu/mlのヒト胎児腎ライブラリ
ーを、Clontechから購入した。約 2×106プラークを、PCR で作製したプローブ
(上記参照)を用いて、スクリーニングした。ハイブリダイゼイションは、6XSC
C,5 X Denhardt,0,1%SDS,100 μg/mlのシングルストランドサーモンスパーム
(Salmon sperm)DNA 中で、56℃、15時間、行った。
何回かのスクリーニングを行った。DNA はシングルプラークから増幅され、SE
Q ID NO: 6の7 から13のアミノ酸をコードしているインターナル・プライマー5
′AGT TTA CTG AGG ACT CGG AGG 3′(SEQ ID NO: 8)と、ハイブリダイズされ、
真にポジティブと同定された。
D.cDNA末端の3 プライム・ラピッド・アンプリフィケイション(RACE)
ヒト胎児腎および胎児肝からのポリアデニル化RNA は、Clontechから購入した
。オリゴ5′TTC GGC CGG ATA GGC CTT TTT TTT TTT TTT 3′(SEQ ID NO: 9)をプ
ライマーとして用いて、1
μg のRNA を逆転写した。
ファーストストランドのcDNAを作製するため、 Gibco-BRLcDNA合成キット(Lif
e Technologies,Inc.,Cat.#18267-013)を用いた。最終容量は30μl だった。50
0mM EDTAを終濃度10mMになるように加えて、反応を止め、-20 ℃に保った。
イニシャルPCR では、反応当たりのテンプレートとして0.5μl のcDNAを使っ
た。SEQ ID NO: 6のアミノ酸5 から11をコードしているオリゴヌクレオチド5′T
GC GAC CTC CGA GTC CTC AG 3′(SEQ ID NO: 11)をセンス・プライマーとして用
いたのに対し、SEQ ID NO: 9のプライマーと、オリゴ5′TTC GGC CGG ATA GGC C
TT TTT TTT TTT TT-P 3′(SEQ ID NO: 10)のコンペティターを、アンチセンス・
プライマーとして用いた。40サイクルの増幅は、次のプロトコールを用いて行っ
た: 94℃で予め2 分インキュベーションした後、94℃、30sec;65℃、30sec;72℃
、30sec 。増幅は、Perkin Elmer GeneAmp System 9600で行った。
ネスティング(nesting)は、SEQ ID NO: 6のアミノ酸8 から14をコードしてい
るセンスプライマー5′GAG TCC TCA GTA AAC TGC TTC GT 3′(SEQ ID NO: 12)を
用いて行ったが、SEQ IDNO: 9 とSEQ ID NO: 10は、アンチセンス・プライマー
として
作用した。65℃でアニーリングして、40サイクルの増幅を行った。PCR 産物は0.
8%アガロースゲルで泳動し、UV光のもとで撮影した。バンドは0.8 から1.2kb あ
たりに見えた。
PCR 産物は、ベクターPCR II(Invitrogen)でクローニングされた。それぞれの
コロニーを取り上げ、プラスミドはQiagenのキット、cat # 12143 および12145
を用いて、単離した。ダブルストランドのダイプライムド(dye primed)・シーケ
ンシングは、ベクター・プライマーを用いて行った。シーケンスは種々のタイプ
のGCG ソフトウェアで分析した。
E.5′と3′のプライマー・エクステンション
完全長MGDF遺伝子のシーケンスを単離するために、テンプレートとして胎児肝
ライブラリーの各プールを用いて、3′と5′のプライマー・エクステンションを
行った。cDNAの5 のプライマーを増幅させるために、各プールから20ngのcDNAを
テンプレートとして使った。SEQ ID NO: 6のアミノ酸12から17をコードしている
、MGDFに特異的なアンチセンス・プライマー5′GGA GTC ACG AAG CAG TTT AC 3
′(SEQ ID NO: 13)と、5′ベクター v19.8センス・プライマー5′CCT TTA CTT C
TA GGC CTG 3′(SEQ ID NO:14)を用いた。53℃でアニーリングして、30サイク
ルの増幅を
行った。ネスティングは、SEQ ID NO: 6のアミノ酸1 から6 をコードしているア
ンチセンス・プライマー5′GAG GTC ACA AGCAGG AGG A 3′(SEQ ID NO: 15)と、
ベクター・プライマーSEQID NO: 14用いて行った。
MGDF cDNAの3′末端のプライマー・エクステションのために、アンチセンス・
ベクター・プライマー 5′GGC ATA GTC CGG GAC GTC G 3′(SEQ ID NO: 16)と、
SEQ ID NO.6のアミノ酸1 から6 をコードしているMGDFに特異的なプライマー5
′TCC TCC TGC TTG TGA CCT C 3(SEQ ID NO: 17)を、用いた。58℃でアニーリン
グして、30サイクルの増幅を行った。
MGDFプライマーSEQ ID NO: 12とベクター・プライマー SEQ ID NO: 16を用い
て、30サイクルのネスティング増幅を行った。PCR IIベクターでクローニングさ
れた、プール番号1 、7 および8 に、特異的なバンドが現れた。シングルコロニ
ーから精製したプラスミドは純化され、シーケンシングされた。
F.ヒトMGDFの完全長・クローンの単離
部分的なMGDFシーケンスをプライミングとネスティングに用いたので、はじめ
に取ったクローンの多くはMGDFのアミノ末端部分を欠いていた。配列を上記の5
のプライマー・エクステン
ション実験で得た、プライマー5′CCA GGA AGG ATT CAG GGG A 3′(SEQ ID NO:
18)をセンス・プライマーとして使った。ベクター・プライマーSEQ ID NO: 16を
アンチセンス・プライマーとして使った。58℃でアニーリングして、35サイクル
の増幅を行った。Sal I サイトとして、MGDFに特異的なプライマー5′CAA CAA G
TC GAC CGC CAG CCA GAC ACC CCG 3′(SEQ ID NO: 19)と、ベクター・プライマ
ー (SEQ ID NO: 15)を35サイクルのネスティングに使った。PCR産物は、PCR II
ベクターでクローニングされ、シーケンシングされた。
II.二つ目のクローニングアプローチの実例
A.イヌMGDFのN-末端cDNAのクローニング
先のセクションに記述したように、縮重したオリゴヌクレオチドプライマーを
、イヌMGDFのN- 末端のアミノ酸配列に基づいてデザインし、MGDFをコードして
いる cDNA 配列を増幅させるためのポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR
)のプライマーとして使った。イヌ腎臓サンプルから、ChomzynskiとSacchiのグ
アニジン・イソチオシアネート法(Biochem.162156-159(1987))によって、トー
タルRNA を調製した。ファースト・ストランドのcDNAは、MoMULV逆転写酵素を用
いて、ラン
ダム・プライマー・アダプター5′GGC CGG ATA GGC CAC TCN NNN NNT 3′(SEQ I
D NO: 20)で調製し、次に続くPCR のテンプレートとして使った。
SEQ ID NO: 1 のアミノ酸1-6 をコードしているセンス・ストランド・プライ
マーであるプライマーA 5′GCN CCN CCN GCN TGY GA 3′(SEQ ID NO: 4)と、SEQ
ID NO: 1のアミノ酸16-21をコードしているアンチセンス・ストランド・プライ
マーでありアニール時の安定性を増強するために5′末端に3 つのエキストラ・
ヌクレオチドをもっているプライマーB 5′GCA RTG NAG NAC RTG NGA RTC 3′(S
EQ ID NO: 5)、またはプライマーC 5′ GCA RTG YAA NAC RTG NGA RTC 3′(SEQ
ID NO: 21)を用いて、0.5 μl 、約50ngのcDNAで、PCR を行った。Taq ポリメラ
ーゼを用いるPCR は、アガロース・ゲル電気泳動分析で産物のバンドが見えるま
で、35-45 サイクル、行った。初めの2 サイクルのPCR は、再アニーリングステ
ップを37℃で、2 分間、行った;あとのサイクルは、再アニーリングは、50℃で
、1 分間だった。各反応において、多重の産物のバンドが見られた。およそ予想
されるサイズ(66bp)のバンドを含んでいるゲルの部分をパスツールピペットのチ
ップで集め、同じプライマー・ペアで再増幅
させた。DNA 産物を、製造社のインストラクションにしたがって、ベクターPCR
II(Invitrogen)にクローニングした。3 つのクローンがシーケンスされ、1 つの
リーディング・フレームに、予想されたイヌMGDF配列の1-21残基をコードするこ
とが分かった。この方法で、コドン6 の3 番目のヌクレオチドから、コドン15の
3 番目のヌクレオチドまで、領域にわたる、ユニークなイヌMGDF cDNA を得た。
これらクローンの1つを、イヌ MGDF cDNAのラベル化プローブを調製するための
テンプレートとして使った。
B.ヒト胎児肝からのcDNAライブラリーのコンストラクション
ヒト胎児肝(International Institute for the Advancement of Medicine,Ex
ton,PA)から、5.5Mグアニジン・イソチオシアネートによる組織の溶解およびCs
TFA(Pharmacia)遠心分離を経る精製によって、RNA を単離した。ポリアデニル化
RNA は、オリゴ(dT)25ダイナビーズ(dynabeads)(Dynal、製造社の指示にしたが
った)を用いて選択した。ダブルストランドのcDNAを、cDNA合成用 Superscript
plasmid system(Life Technology,Inc.)を用いて、このRNA から作った。ただし
、別のリンカー・アダプター:5′TTG GTG TGC ACT TGT G 3′(SEQ ID NO: 22)
および5′CAC AAG TGC ACA CCA ACC CC 3′(SEQ ID NO: 23)を使った。サイズ・
セレクションした後、哺乳動物発現ベクターpBCB(pBCBはプラスミド Rc/CMV か
ら誘導された、Invitrogen,puc19 バックボーン、CMV プロモーター、BGH ポリ
アデニレーション・サイトを含んでいる)のBst XIおよびNot I サイトに、この
cDNAを直接挿入した。ライゲートされたDNA はエレクトロ・コンピーテント・バ
クテリア株10B(Life Technology,Inc,)にエレクトロポアレートされた。
C.MGDFのためのヒト胎児肝cDNAライブラリーのスクリーニング
ヒト胎児肝cDNAライブラリーのフィルター・レプリカを、イヌMGDF N- 末端cD
NAの放射活性なラベル化PCR産物(5x SSPE, 2x Denhardt′s,0.05% Na pyropho
sphate,0.5% SDS,100μg/ml yeast tRNA lysate and 100μg/ml denatured sa
lmonsperm DNA )と、64℃で、18時間ハイブリダイズさせた。フィルターは64℃
で、5x SSPE,0.5% SDS で洗い、一夜感光させた。このプローブとハイブリダイ
ズしている2つの異なったクローンが単離され、分析された。
D.ヒトMGDFのcDNAクローンの発現
MGDF cDNA クローンから精製されたDNA を、293 EBNAセル
(Invitrogen)に、遺伝子導入した。1.5 μg のDNAを7.5ul のLipofectamine(Lif
e Technology,Inc.)と、100ul の血清フリーのDMEM中で、混合した。室温で20
分インキュベートした後、このDNA-Lipofectamine 混合物を、400ul のDMEM、1%
血清(Fetal Clone II)中の 5×105細胞/ウェル(24ウェル・スクエアのGreiner
plate)に加え、37℃で6 時間インキュベートした。500ul のDMEM、20%血清(Fet
al Clone II)をこれらの細胞に加えた。16時間後、培養液を吸い取り、500ul の
DMEM、1%血清(Fetal Clone II)を加えた。72時間後、順化培地を集め、0.22ミ
クロンのスピン・フィルターを通して、遠心分離した。この順化培地をMGDFの生
物学的活性についてアッセイした。
III.ヒトMGDFクローンの説明と活性
上記のクローニング・ストラテジーに基づいて、図11(MGDF-1およびMGDF-2:
SEQ ID NOS: 24、25;および26、27)と図12(MGDF-3; SEQ ID NOS: 28、29)に
示したヒトcDNAクローンを得た。図のこれら配列の各々は、アミノ酸1-21の推定
されるシグナル・配列を含み、どの場合にも成熟したタンパク質はアミノ酸22か
ら始まる。
上記、実施例4Aに記述した、細胞に基づくアッセイを用い
て、MGDF1-3 の活性をアッセイした結果を下記の表3 および4 に掲げた。表3 で
は、各コンストラクトを遺伝子導入された293 EBNAセルから、培養2 日後に順化
培地を集め、1A6.1 細胞(32D/mur-MPL+)+/-10ug/ml mur-MPL-Xでテストした。表
4 では、各コンストラクトを遺伝子導入された293 EBNAセルから、培養4 日後に
順化培地を集め、32D/mur-MPL+細胞(実施例3A)および32D/hu-MPL+ 細胞(実
施例3B)でテストした。見れば分かるように、ヒトMGDF-1とMGDF-2は、マウス
およびヒト型のMpl を発現している細胞系に活性であり、MGDF-3は活性でない。
マウスMPL レセプターを発現している細胞系よりも、ヒトMPL レセプターを発現
している細胞系は、ヒトMGDF-1とMGDF-2によく感応する。
次の表5 は、32D/hu-MPL+ 細胞(実施例 3B)に対するヒトMGDF-1とMGDF-2の
活性は、可溶性のヒトmpl レセプター(hu-MPL-X )で、実質的に、完全に阻害
されることを示している。Hu-MPL-Xは、タンパク質を産生しているCHO 細胞から
集めた順化培地として存在した。CHO hu-MPL-X順化培地を120 倍に濃縮し、培養
に6.6 %になるように加えた。コントロールのCHO 培養からの順化培地は、アッ
セイに効果はなかった。アッセイは、生き残った細胞を3 日後に評価したこと以
外は、実施例4Bに記述したように行った。
ヒト巨核球アッセイ
MGDF-1とMGDF-2は、末梢血CD34- 選択細胞からの巨核球形成を誘導し、MGDF-3
は誘導しなかった。表6 に示した実験は、末梢血細胞を水簸せずにCD34- 選択し
たことと、培養を7 日後に収集したこと以外は、基本的に実施例2 に記述したよ
うに行っ
た。各293 EBNA MGDF コンストラクトからの順化培地は、最終20%ボリューム+/
-30ug/ml mur-MPL-Xで使った。APK9コントロールは、最終6 %ボリュームで使っ
た。
実施例12
この実施例では、12種のPEG 化(pegylated)MGDF分子、PEG9-PEG12とPEG14-PEG
21 の合成について記述する。各ケースにおいて、PEG 化されたMGDF分子は、E.
coli 由来のMGDF-11(シグナルペプチドの始まりから数えてアミノ酸22-184、あ
るいは成熟したタンパク質の始まりから数えてアミノ酸1-163)である。これら全
てのPEG 化種に関する詳細は、下記の表7-10に概略し
てある。12.1 MGDF を活性化MePEG 誘導体でアシル化した、poly-MePEG-MGDF コ
ンジュゲートの調製
poly-MePEG(20kDa)-MGDF コンジュゲート(PEG11)の調製
0.1M BICINE バッファー、pH8 中の冷却した(4℃)MGDF(2.5mg/ml)溶液を、10
倍モル過剰の固形 MePEGスクシンイミジルプロピオナート(MW 20kDa)(Shearwate
r Polymers,Inc.)に加えた。ポリマーを穏やかな撹拌によって溶解し、反応は
室温でさらに続けた。
反応中におけるタンパク質の修飾度合いは、Superdex 200HR 10/30カラム(Pha
rmacia Biotech)を用いた、サイズ排除(SEC)HPLCによってモニターした。溶離は
、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー、pH6.9 を用いて、流速0.7ml/min で行った
。
30分時点での反応混合物のSEC HPLC分析は、反応混合物中にフリーのタンパク
質は残っていないことを示した。この時点で反応混合物のタンパク質濃度を、滅
菌水を加えて、1mg/mlに下げ、数滴の0.5M酢酸を滴下して混合物のpHを4 に調整
した。
MePEG-MGDFコンジュゲートは、SP Sepharose HP(Pharmacia Biotech)イオン交
換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって、過剰のMePEG と他の反
応副生物から分離させた。
反応混合物をカラムにロード(2.5 mg/ml(樹脂))した。未反応のMePEG は、3
カラム容量のスタートバッファーA(20mMリン酸ナトリウム、pH7.2、15% グリセ
ロール)で溶出させた。その後、MePEG-MGDFコンジュゲートを、10カラム容量で
、エンドバッファーB(バッファーA中、1M NaCl)の、0%から30%の直線勾配を
用いて溶出させた。溶出液は280nm でモニターした。poly-MePEG-MGDF コンジュ
ゲートを含んでいるフラクションをプールし、濃縮、滅菌濾過した。
精製したpoly-MePEG-MGDF コンジュゲートは、TSK-GEL G4000SWXL とG2000SWX
L のゲル濾過カラムを連結した、HPLC SECで、分析した。タンパク質は280nm に
おけるUV吸収によって検出した。球状タンパク質の分子量マーカーとして、BIO-
RAD ゲル・フィルトレーション・スタンダードを使った。
図17A に見られるように、HPLC SECでは、調製物には二つの主な成分(およそ
2 対1 の割合)が含まれており、その溶出位置は、それぞれ、370.9kDaと155.0k
Daの球状タンパク質に相当した。下記の表8 を参照せよ。
MW=6-50kDaのMePEGsのスクシンイミジル・エステルによる、MGDFのアシル化で
調製した、コンジュゲートPEG9、PEG10 およ
びPEG12 も同じように行った。これらの調製に用いた主な反応パラメータは、表
7 に要約してある。
これらのコンジュゲートのHPLC SEC分析の結果は、表8 に示してある。
12.2 MGDFをMePEG アルデヒドで還元的アルキル化することによる、poly-MePEG
-MGDF コンジュゲートの調製
poly-MePEG(20kDa)-MGDF コンジュゲート(PEG20)の調製
20mM NaCNBH3を含む、100mM リン酸ナトリウム、pH5 、中の MGDF(2ml,2.5m
g/ml)冷却(4℃)、撹拌溶液に、10倍モル過剰のモノメトキシ−ポリエチレングリ
コールアルデヒド(平均分子量 20kDa)を加えた。反応混合物の撹拌は、同じ温
度で続けた。
反応中におけるタンパク質の修飾度合いは、Superdex 200HR 10/30カラム(Pha
rmacia Biotech)を用いた、SEC HPLCによってモニターした。溶離は0.1Mリン酸
ナトリウムバッファー、pH6.9 を用いて、流速0.7ml/min で行なった。
16時間後、SEC HPLC分析は、タンパク質の初めの量の90% 以上が修飾されてい
ることを示した。この時点で反応混合物のタンパク質濃度は、反応混合物を滅菌
水で希釈することによって、
1mg/mlに下げ、0.5M酢酸で混合物のpHを4 に調整した。
MePEG-MGDFコンジュゲートは、SP Sepharose HP(Pharmacia Biotech)イオン交
換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって、過剰のMePEG と他の反
応副生物から分離させた。
反応混合物をカラムにロード(2.5 mg/ml(樹脂))した。未反応のMePEG は、3
カラム容量のスタートバッファーA(20mMリン酸ナトリウム、pH7.2、15% グリセ
ロール)で溶出させた。その後、MePEG-MGDFコンジュゲートは、10カラム容量で
、エンドバッファーB(バッファーA中、1M NaCl )の、0%から30%の直線勾配
を用いて溶出させた。溶出液は280nm でモニターした。poly-MePEG-MGDF コンジ
ュゲートを含んでいるフラクションをプールし、濃縮、滅菌濾過した。
精製したpoly-MePEG-MGDF コンジュゲートは、TSK-GEL G4000SWXL とG2000SWX
L のゲル濾過カラムを連結した、HPLC SECで、分析した。タンパク質は280nm に
おけるUV吸収によって検出した。球状タンパク質の分子量マーカーとして、BIO-
RAD ゲル・フィルトレーション・スタンダードを使った。
図17B に見られるように、HPLC SECでは、調製物には二つの主な成分(全量の
52% と47% )が含まれており、その溶出位置
は、それぞれ、359.4kDaと159.3kDaの球状タンパク質に相当した。表8 を参照せ
よ。
MW=6-25kDaのMePEG アルデヒドによる、MGDFの還元的アルキル化で調製した、
コンジュゲートPEG18 、PEG19 およびPEG21も同じように行った。これらの調製
に用いた主な反応パラメータは、表7 に要約してある。
これらのコンジュゲートのHPLC SEC分析の結果は、表8 に示してある。
12.3 N-末端α−アミノ基に付着部位を有する、モノメトキシ−ポリエチレング
リコールMGDFコンジュゲートの調製
mono-MePEG(20kDa)-MGDF コンジュゲート(PEG16)の調製
20mM NaCNBH3を含む、100mM リン酸ナトリウム、pH5 、中のMGDF(2 ml,2.5 m
g/ml)冷却(4℃)、撹拌溶液に、5 倍モル過剰のメトキシポリエチレングリコール
アルデヒド(MePEG)(平均分子量 20kDa)を加えた。反応混合物の撹拌は、同じ温
度で続けた。
反応中におけるタンパク質の修飾度合いは、Superdex 200HR 10/30カラム(Pha
rmacia Biotech)を用いた、SEC HPLCによってモニターした。溶離は0,1Mリン酸
ナトリウムバッファー、
pH6.9 を用いて、流速0.7ml/minで行った。
16時間後、SEC HPLC分析は、タンパク質の初めの量の約90%が修飾されている
ことを示した。この時点で反応混合物のタンパク質濃度は、滅菌水で希釈するこ
とによって、1mg/mlに下げ、0.5M酢酸で反応混合物のpHを4 に調整した。
mono-MePEG(20kDa)-MGDFコンジュゲートは、SP SepharoseHP(Pharmacia Biote
ch)イオン交換樹脂を用いたイオン交換クロマトグラフィーによって、過剰のMeP
EG と他の反応副生物から分離させた。
反応混合物をカラムにロード(2.5mg/ml(樹脂))した。未反応のMePEG は、3
カラム容量のスタートバッファーA(20mMリン酸ナトリウム、pH7.2 、15% グリセ
ロール)で溶出させた。その後、MePEG-MGDFコンジュゲートは、20カラム容量で
、エンドバッファーB(バッファーA中、1M NaCl)の、0%から25%の直線勾配
を用いて溶出させた。溶出液は280nm でモニターした。poly-MePEG-MGDF コンジ
ュゲートを含んでいるフラクションをプールし、濃縮、滅菌濾過した。
mono-MePEG-MGDF コンジュゲートの等質性は、4-20% のプレキャスト・勾配・
ゲル(NOVEX)を用いたSDS-PAGE(ナトリウム
・ドデシル・スルファート・ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で判定した。46
.9kDa のタンパク質の位置に相当する、1本のメジャーバンドが現れた。
精製したpoly-MePEG-MGDF コンジュゲートは、TSK-GEL G4000SWXL とG2000SWX
L のゲル濾過カラムを連結した、HPLC SECで、分析した。タンパク質は280nm に
おけるUV吸収によって検出した。球状タンパク質の分子量マーカーとして、BIO-
RAD ゲル・フィルトレーション・スタンダードを使った。
図17C に見られるように、HPLC SECでは、調製物には一つの主な成分が含まれ
ており、その溶出位置は、181,1kDaの球状タンパク質に相当した。表9 を参照せ
よ。
MW=6-25kDaのMePEG アルデヒドによる、MGDFの還元的アルキル化で調製した、
mono-MePEG-MGDF コンジュゲートPEG14 、PEG15 およびPEG17 も同じように行っ
た。これらの調製に用いた主な反応パラメータは、表7 に要約してある。
これらのコンジュゲートのHPLC SEC分析の結果は、表9 に示してある。
12.4 MGDFをメトキシ−ポリ(エチレングリコール)アルデヒドで還元化アルキ
ル化することによる、DiMePEG(12kDa)-MGDFコンジュゲート(PEG22)の調製
次の操作によって、本明細書でPEG22 と称する、精製された分子を得た。
5 ℃に保った100mM 酢酸ナトリウム、pH5 中の、2.5 mg/mlのMGDF(E.coli由
来、1-163)溶液に、5 倍過剰モルのメトキシ−ポリエチレングリコールアルデヒ
ド(MePEG; i.e.,OHC-(CH2)2O-(CH2-CH2O)n-CH3;ここでnは、分子量が約12
kDa となる繰り返し数である)(Shearwater Polymers)を加えた。10分間混合し
た後、十分量のNaCNBH3(ナトリウム−シアノボロヒドリド)(Aldrich)を、反応
混合物中の濃度が20mMになるように、加えた。
この混合物をおよそ5 ℃で、16時間、撹拌した。16時間経過後、十分量の純水
、USP を加えて、MGDF濃度を1mg/mlにした。これを0.2 ミクロンの減圧・フィル
ターを通して濾過した。このようにして、90mgの反応生成物を調製した。少量の
1.0M−塩基性ホスファート(monobasic phosphate)と1N NaOH 溶液を、この反応
生成物の混合物に加えて、pH6.8 、10mMのホスファー
ト溶液にした。
コンジュゲートは、陽イオン交換カラムで精製した。40mlのSP-Sepharose Hig
h Performance カラムを、ベッド高7.5cm で、作成した。カラムは、平衡化バッ
ファー(10mM ホスファート、pH6.8 、15% グリセロール)で平衡化しておいた。
カラムに、2.2 mg/ml(樹脂)、0.15CV(カラムボリューム)/分でロードした。ベ
ースラインが安定するまで平衡化バッファーで洗浄した。カラムは、バッファー
A(20mMホスファート、pH7.2 、15% グリセロール)からバッファーB(バッファ
A中、0.3M NaCl)への、10カラム容量の直線勾配で溶出させた。流速は0.15CV
(カラムボリューム)/分を維持した。溶出液は280nmでモニターした。
SDS-PAGEゲルでフラクションを調べ、DiPEG コンジュゲートを含んでいるフラ
クションをプールし、0.2 ミクロン・ユニットを通して濾過した。
実施例13
PEG 化MGDF分子の生物学的活性
A.PEG-9 - PEG-12 そして PEG-14 - PEG-21
組換型・ヒトMGDFを処方されたマウスの血小板数を測定した、
その結果は図18に掲げる。図の記述に指示された濃度で、CHO由来22-353(オー
プンダイヤモンド)、非PEG 化E.coli22-184(オープンサークル)、そしてPEG
化E.coli22-184(クローズドサークル)の各MGDFを、5 日間、毎日1 回、正常Ba
lb/cマウスに皮下投与した。最終投与の24時間後、尾静脈の側方を小さくカット
して、出血検体を集めた。血球の分析はSysmexエレクトロニック・ブラッド・セ
ル・アナライザー(Baxter Diagnostics,Inc.Irvine,CA)で行った。データは4
検体の測定の平均と、+/- 平均標準誤差で表した。総白血球数や赤血球数のよ
うな他の血球パラメータは、この処理で影響を受けなかった。
組換型・ヒトMGDFの他のフォームも上記のようにテストした。指定したフォー
ムの r-HuMGDF を50ug/kg/day または10ug/kg/day で処理されたマウスの血小板
数を、次の表10に示してある。データは4 検体の平均で、平均標準誤差はイタリ
ックで表した。
表10の手引き
上記実施例12に記述したように、次のそれぞれにおいて、PEG 化されたMGDF
分子は、E.coli 由来のMGDF-11(シグナルペプチドの始まりから数えてアミノ酸
22-184、あるいは成熟したタンパク質の始まりから数えてアミノ酸1-163)である
:
基準値は、何らの物質も投与されていない、正常検体からのものである。
組換型・ヒトMGDFのPEG 化は、実験個体の血小板数を上げるというこの分子の
能力に不利な影響を与えないことは明らかであり、事実、E.coli 生成物22-184
の活性を上げており、CHO-由来の22-353分子で見られる活性と、同等もしくは上
回ると見てよい。
B.PEG-22
PEG-22で得た結果を図24に掲げる。とりわけ、PEG-22による
血小板数の正常化は、完全長のCHO-由来MGDFN PEG-16、あるいはPEG-17よりも、
数日も早く起こっている。
実施例14
組換型・ヒトMGDF[1-163]のE.coliでの発現
r-HuMGDFをE.coli で発現させるために、成熟タンパク質の初めの163 アミノ
酸をコードしているシーケンスを、E.coli の最適コドンを使って、化学的に合
成した。付け加えて、アミノ酸のメチオニンとリジンをコードしているDNA シー
ケンスを、ジーンの5′末端に加えた。したがって、このシーケンスがコードし
ているr-HuMGDFタンパク質は、Met-Lys で始まる全長165アミノ酸で成っている
。このジーンのシーケンスは図25に示してある。
r-HuMGDF(1-163)ジーン遺伝子の合成は、数ステップで達成した。最初に、ジ
ーンの隣接フラグメントに相当する相補的オリゴヌクレオチド(長さ60-70bp)を
、E.coli の最適コドンを使って、化学的に合成した。この合成に際して、アミ
ノ酸のメチオニンとリジンのコドンを、成熟遺伝子の5′末端に置き、ストップ
・コドンをジーンの3′末端に置いた。さらに、制限酵素XbaIと HindIIIの切断
サイトを、それぞれ、ジーンの末端の5′
と3′に置き、合成リボゾームの結合部位を、初めのメチオニンの上流の、適し
た場所に置いた。次ぎに、各ジーン・フラグメントの相補的なオリゴヌクレオチ
ドをアニールした。3 番目に、これら個々の合成ジーン・フラグメントを、ポリ
メラーゼ・チェイン・リアクションを用いて増幅させた。4 番目に、増幅させた
フラグメントを適当なベクターにサブクローニングした。5 番目に、サブクロー
ニングしたフラグメントのシーケンスを確認した。6 番目に、完全長のr-HuMGDF
(1-163)ジーンをリコンストラクトできるように、個々のフラグメントを一斉に
ライゲートし、適当なベクターにサブクローニングした。最後に、リコンストラ
クトしたジーンのシーケンスを確認した。
5′と3′末端において、それぞれ、XbaIとHindIIIの制限部位に隣接している
、合成r-HuMGDFジーン・フラグメントは、リボゾーム結合部位、ATG スタート・
コドン、成熟したMet-Lys r-HuMGDFタンパク質をコードしているシーケンス、そ
してストップ・コドンを持っている。
上記のフラグメントを、ラクトース- インデューシブル発現ベクターであるpA
MG11のXbaIおよびHindIIIの両サイトにクローニングした。pAMG11 ベクターは、
pR100-由来の複製起点を
持つ、低コピー数のプラスミドである。発現プラスミドpAMG11は、PCR 重複オリ
ゴ・変位誘発による、一連の部位特異的な塩基変換を作ることによって、プラス
ミドpCFM1656(ATCC# 69576,1994.2,24 供託)から、誘導することができる。プラ
スミド複製プロモーターPcopB の5′に近接したBgIIIサイト(plasmidbp # 180
)から始め、プラスミド複製ジーンに向かうことにより、塩基対の変換は次のよ
うになる:
そして、ユニークなAatII とClaIの切断サイト間のDNA シーケンスを、次のオリ
ゴヌクレオチドで置換すると:
pAMG11にクローニングされたr-HuMGDFの発現は、以下のシーケンスをもつPs4
のような、合成ラクトース- インデューシブル・プロモーターによって、推進さ
れる:
このPs4 プロモーターは、E.coli lacIジーンの産生物であるラクトース・リプ
レッーサー(LacI)によって、抑制される。
pAMG11-r-HuMGDF プラスミドは、続いてlacIqアレレを含ん
でいる E.coli K-12 株に形質転換される。lacIqアレレは、LacIの発現を増大
するlacIプロモーター内の変異であり、Ps4プロモーターからタンパク質の発現
のより厳密なコントロールをもたらす。したがって、この株では、ラクトースが
なければ、r-HuMGDFの発現はLacIによって抑制される。ラクトースを加えると、
Ps4 プロモーターのオペレーター・サイトに結合しているLacIタンパク質が減少
し、Ps4 からr-HuMGDFの転写が始まる。この実施例に使ったE.coli・ホスト・
セルは、ATCC# 69717として、1994.11.30に供託してある。
E.coli・ホストATCC# 69717 は、pAMG11-r-HuMGDF プラスミドで形質転換し
、次のような発酵手法にしたがって、生育させた。Luria 肉汁にイノキュレート
されたE.coli 株は、およそ12時間、30℃でインキュベートされる。セルはその
後、無菌的にバッチ・培地(20 g/Lイースト・エキス; 3.4 g/L クエン酸; 15 g/
L K2HPO4; 15 ml Dow P2000; 5 g/Lグルコース; 1 g/L MgSO4・7H2O; 5.5 ml/L
微量金属類; 5.5 ml/Lビタミン類)の入った発酵槽に移される。バッチ・フェイ
ズのプロセスは培養が、600nm で5.0+/-1.0 の最適密度に達するまで続く。流加
培養(fed-batch)・フェイズは、第1の流動培地(feed
medium)(700 g/Lグルコース; 6.75 g/L MgSO4・7H2O)の供給開始で、始められ
る。流量は確立されたスケジュールにあわせて2 間毎に調節する。培養が600nm
20-25 の最適密度に達すると、第2 流動培地(129 g/Lトリプチカーゼ・ペプトン
; 58 g/L イースト・エキス)の供給開始が始まる。初めの流動培地が調節され続
けたのに対し、第2 流動培地は、一定流量を維持する。全発酵中を通じて、温度
はおよそ30℃を維持する。培養は、必要に応じて、酸や塩基を添加してpHを7 維
持する。望ましい溶存酸素レベルを、発酵槽のアジテーション、空気注入および
酸素注入の各速度を調節して維持する。培養の最適密度が600nm 57-63 達すると
、第3 流動培地の供給が始まる。第3 流動培地(300 g/L クトース)は一定流量
で発酵槽に導入される; 第1の流動培地の供給は中止し、第2 の流動培地の流量
は新たな一定流量に変える。発酵は第3 の流動培地の供給が始まってから、およ
そ10時間で終わる。発酵の終わりに、培養は15+/-5℃に冷却する。セルは遠心分
離によって収集される。得られたペーストは、−60℃以下でパックしたまま、保
存する。
上記のようにE coliで産生した組換型・MGDFの精製は次のよ
うに行った。1,800gのセル・ペーストを約18リットルの 10mM EDTAに懸濁させ、
15,000psi で高圧ホモジナイザーに通した。破砕されたセル懸濁液を遠心分離し
、得られたペレット10l の10mM EDTA に再懸濁させた。懸濁液を遠心分離し、得
られた200gのペレットを2 リットルの10mM Tris、8Mグアニジン塩酸塩、10mMDTT
、5mM EDTA、pH8.7 に溶解させた。この溶液を、200 リットルの10mM CAPS 、3M
尿素、30% グリセロール、3mMシスタミン、1mM システイン、pH10.5で穏やかに
希釈した。
希釈した溶液を室温で16時間、穏やかに撹拌し、pHを6.8 に調節した。pHを調
節した溶液を清浄化して、10mMリン酸ナトリウム、1.5M尿素、15% グリセロール
、pH6.8 で平衡化した2 リットルの CM Sepharose カラムに加えた。ロード後、
カラムは10mMリン酸ナトリウム、15% グリセロール、pH7.2 で洗った。MGDFは0
から0.5MのNaClの勾配、10mMリン酸ナトリウム、pH7.2 で溶出させた。
CM溶出液は、分子量10,000カットオフメンブレンを用いて、濃縮し、10mMリン
酸ナトリウム、pH6.5 にバッファー交換した。約2mg/mlに濃縮した溶液をカテプ
シン C(500:1 のモル比)で室温、90分間処理した。
この溶液を、10mMリン酸ナトリウム、15% グリセロール、pH7.2 で平衡化した
1.2 リットルの SP High Performance Sepharoseカラムにロードした。ロード後
、MGDFは0.1 から0.25M のNaClの勾配、10mMリン酸ナトリウム、pH7.2 で溶出さ
せた。
SP High Perlormance カラムからの溶出液に、0.6Mになるように硫酸アンモニ
ウムを加えた。この溶出液を、10mMリン酸ナトリウム、0.6M硫酸アンモニウム、
pH7.2 で平衡化した1.6 リットルのPhenyl Toyopearl カラムにロードした。MG
DFピークは0.6 から0Mの硫酸アンモニウムの勾配、10mMリン酸ナトリウム、pH7.
2 で溶出させた。
Phenyl Toyopearl溶出液は、分子量10,000カットオフメンブレンを用いて、濃
縮し、10mM Tris 、5%ソルビトール、pH7.5にバッファー交換した。
実施例15
r-HuMGDF(E.coli 1-163)のin vivo の生物学的性質
上記の実施例14で述べたように調製した、r-HuMGDF(E.coli 1-163)の生
物学的効力を、齧歯類で評価した。正常メスBalb/cマウスに、種々の用量のr-Hu
MGDFを、5 日連続で皮下投与した。用量は15ug/kg/day から1500ug/kg/day であ
った。最
後の投与から24時間後に、血球数のカウントをエレクトロニック・セル・カウン
ター(Sysmex,Baxter)を用いて行った。サイトカインの対数的濃度増大につれ、
血小板数は直線的に増大した。この系の1500μg/kg/dayで、血小板数は基準値の
300%に増大した。白血球や赤血球およびヘマトクリットのような、他の血液細胞
パラメータは、この処理によって、影響されなかった。
300 μg/kg/dayのr-HuMGDF(E.coli 1-163)を6日間、皮下投与したラットから
、血小板を収集して、ADP に応答する凝集能を評価した。データは、両集団が、
血小板アゴニストであるADP に等しく感応するという点で、処理動物からの血小
板が対照動物からの血小板と実質的に区別がつかなかったことを指し示している
。
r-HuMGDFはまた、化学療法や照射に関連する血小板減少症への効能について、
評価した。人に深刻な血小板減少症を引き起こす化学療法剤であるカーボプラチ
ン(Carbplatin)をこれらの実験に用いた。この実験の初めに、Balb/cマウスに、
1.25mgのカーボプラチンを皮下投与した。24時間後から、実験の残りの期間は毎
日、マウスに100ug/kg/dayでr-HuMGDF(E.coli 1-163)または賦形剤を注射投与し
た。9日以内に、血小板数は、賦形
剤投与マウスでは正常値のおよそ15% に落ちたが、r-HuMGDF投与マウスでは基準
値を維持した(図20を参照)。照射実験については、マウスは500 ラドの単1線
量のガンマー線(セシウム線源)を照射された。これは亜致死の線量で、この照
射によって11日以内に血小板数は90% 減少する。血小板数は21日目まで正常値に
回復しない。照射されたマウスに1日目から20日目まで毎日1回、r-HuMGDF(E.
coli 1-163)を投与(100ug/kg/day)すると、血小板数減少はそれほど深刻ではな
く、賦形剤を投与されたマウスよりも早く基準値に回復した(図21)。極端で、
長引いた血小板減少症のモデルで、r-HuMGDFをテストするために、カーボプラチ
ンと照射を組み合わせて適用した(図22)。このような処置によって、血小板数
は極端な低レベル(正常値の3-5%)に落ち、ほとんどの検体(7/8)は生き残れな
かった。しかし、これらの検体にr-HuMGDFを実験期間中毎日、皮下投与(100ug/k
g/day)すると、血小板減少症は著しく改善され、基準値への回復も早まり、r-Hu
MGDF投与マウスの全て(8/8)が生き残った。
r-HuMGDFはまた、アカゲザル(rhesus monkey)についても評価した。正常なア
カゲザルに、2.5 あるいは25μg/kg/dayで10
日間(0〜9日目)皮下投与した。低用量グループでは血小板数は12日目で400%
に増え、高用量グループでは血小板数は12日目で700%に増えた。投与をやめると
、血小板数は25〜30日で正常値に回復した。白血球数と赤血球数は、この処理で
影響されなかった。
r-HuMGDF(E.coli 1-163)はまた、霊長類の深刻な血小板減少症モデルでも、
テストした(図23)。検体は照射(700 ラド、コバルト線源)を受け、この照射
によって血小板数は15日目までに正常の1-2%に減少した。35〜40日目までに、血
小板数は正常値に回復した。対照的に、毎日、r-HuMGDFを投与(25ug/kg/day )
された照射検体の血小板数は、正常値の10% に落ちたに過ぎず、平均でも、血小
板減少症患者に血小板を輸液する臨界値である、20,000/μl 以下にはならなか
った。基準値への回復も、r-HuMGDF投与検体では早く、20日目までに回復した。
齧歯類と霊長類の実験による、これらのin vivo データは、r-HuMGDF(E.coli
1-163)が、臨床的に有意味な血小板減少症に明らかに効果を示す可能性をもつ
、有力な治療薬であるという概念を十分に支持してくれる。
実施例16
CHOセル・培養による、r-HuMGDF 1-332の生産法
ふさわしいプロモーターの存在下、MGDF 1-332のcDNAを発現している、遺伝子
導入されたチャイニーズ・ハムスター・卵巣細胞からグリコシル化r-HuMGDF 1-3
32を産生し、増殖可能な選択マーカー、DHFRをコードするジーンとを連結させた
。CHO 細胞でのMGDFの発現にふさわしいプロモーターは、SRαである。Mol.Cel
l.Biol.8: 466-472(1988)およびWO 91/13160(1991)を参照。CHO 細胞でのMGDF
の発現にふさわしいベクターは、pDSRα2 である。WO 90/14363(1990)を参照。
典型的なCHO 細胞系は、標準的な細胞培地中で、10-20mg/L 程度の分泌(secrete
d)MGDFを産生できるが、25から100mg/L程度以上に増加させることができる。典
型的な細胞系でMGDFを産生するために、関連する生育モードで(in adherent gro
wth mode)、懸濁培養器中で、又は、組織培養器中で、継代させることにより培
養を拡大することができる。上記生育モードで用いる培地は、等量のDMEM(Dulbe
cco′s Modified Eagle′s Medium)とDMEM/F12,(Ham′s F12,Gibco)である。更
に、添加物として、5-10% のFBS(ウシ胎児血清)あるいは透析したウシ胎児血清
、そして選
択圧を維持するためのMTX(メトトレキセート)(もし必要なら;典型的なMTX 濃度
は200-600nM である)を加える。この培地には、さらに、非必須アミノ酸(NEAA′
s)とグルタミンを添加しなけらばならない。懸濁培養は、1-4×105セル/ml のイ
ノキュレーション(分割)密度及び最大密度約1×106セル/ml の間で容易に繁殖
できる。この時、特定の分割密度において、培養を初期密度をもった大容量培養
に希釈することで、カルチャーを容易に拡大できる。
ローラーボトルでMGDFを生産するためには、(調温環境(37+/- 1 ℃)に置い
たマグネティックスターラー付きのスピンナー・ベッセル、あるいは(機器化さ
れ、撹拌などを調節できる)タンク・バイオリアクター・システムを用いて、適
当な容量と細胞密度で懸濁培養を行わなければならない。(850 cm2Falconロー
ラーボトルのような)ローラーボトルは、1.5×107から 3×107セル/ボトルの
初期密度で細胞をうえつけ、さらに3-4 日後に、コンフルエント・モノレイヤー
になるのに適した量(ボトル当たり150-300ml)の正確培地(5-10% FBS,1X NEAA,
及び 1X L-グルタミンの入った、DMEM/F12)を追加しなけばならない。生育培地
は、分圧60-90mmHg の炭酸ガスと平衡
を保つように、重炭酸ナトリウムでpHを6.9 から7.2 に適宜バッファライズしな
ければならない。ボトルには10% CO2/エアーでガスを入れ、ローラー・ラック
(〜1 rpm )で、37 +/- 1℃で3-4 日、インキュベートする。コンフルエントに
なれば、ローラーボトルに、生育培地を注ぎ入れるか、吸入するかして、血清フ
リーのプロダクション・培地に移す;Dulbecco′sフォスフェート・バッファー
ド・サリン(D-PBS)のような、アイソトニックバッファーでボトルを洗い(ボト
ル当たり50-100ml);続いて、重炭酸塩でバッファライズされた、血清フリーの
DMEM/F12(1:1)の適当量(ボトル当たり200-300ml)を加える。DMEM/F12にはNEAA′
sとL-グルタミン、共有結合的なアグリゲーションを抑えるための硫酸銅(1-20
μM)を加えておく。ボトルには10% CO2/エアーでガスを入れ、ローラー・ラッ
ク(〜1 rpm )で、37 +/- 1℃で6 +/- 1 日、インキュベートするか、あるいは
代謝活性によってグルコース・レベルが0.5 g/L 以下に、もしくはpHが6.6 以下
になるまでインキュベートする。コンディション・培地は注ぎ出すか、吸引する
かして、ボトルから収集し、追加的な収集のために上記の血清フリーのプロダク
ション・培地に換える。この操作は、細胞がそれ以上血清フリーのプ
ロダクションを維持できなくなるまで、そして細胞がローラーボトルから抜け落
ちるまで、続行する。
収集されたコンディション・培地は、0.45umおよび/又は0.2um のフィルター
(Sartorius Sarlobran pH or Pall)を通すデッド- エンド・マイクロフィルトレ
ーションによって、精製操作へと移されていく。濾過されたコンディション・培
地は4 ℃で冷やした後、一時的に4 ℃で保存するか、またはすぐに濃縮して、ク
ロス- フロー・ウルトラフィルトレーション・システム(例えば、Filtron YM-5
0)を用いて、低イオン強度になるように透析する。ウルトラフィルトレーショ
ンと透析濾過は、タンパク質の分解を抑えるために、4 ℃で行う。コンディショ
ン・培地は、クロマトグラフィーによる精製ステップに先立って、バッファー水
溶液(例えば、10mMリン酸カリウム)で透析しておく。
コンディション・培地に含まれるプロダクトの質は、非還元のSDS-PAGEウェス
タン・ブロットでモニターするのが最適である。この方法では、サンプル中に存
在する、MGDFのアグリゲート、モノマー、(タンパク質分解酵素による)分解物
のそれぞれのおよその量を知ることができる。
CHO 細胞からMGDFを産生する、他の方法は、MGDFを発現している細胞系をGibc
o S-SFM IIのような血清フリーの培地に適応させることである。細胞は、最小限
の血清添加あるいは無添加における、連続継代によって適応させることができる
。もしも、このような培地中で、妥当な量のMGDFを分泌しながら、維持されつつ
成長する細胞系が見つかれば、連続継代を経て次々に大きな容量へとスケールア
ップして、最後には適したサイズのプロダクション・ベッセル(機器化され、撹
拌などを調節できる、タンク・バイオリアクター)にイノキュレートする接種培
地によって、生産を進めることができる。また、このような細胞系が見つかれば
、最適な生育コンディション(pH,栄養素類、温度、酸素、シェア)で、最適な
生息密度で増殖する培養をも、可能にする。(プロダクトの量と質を実験的に測
定して決まる)最適な産生条件を用いて、培養はバイオリアクターから収集され
、細胞はミクロン- スケール・デプス・フィルトレーション、またはサブ- ミク
ロン・クロス- フロー・マイクロフィルトレーションによって、コンディション
・培地から除去される。上記の濃縮と透析に先立って、デプス・フィルトレーシ
ョンを使えば、サブ- ミクロン・デッド- エンド・フィルトレーション
を使うよりも、培地をさらに清浄化することができる。
本発明を、一般におよび好ましい実施例によって、上記に記したが、上記の記
述に照らして、当該技術者は変更や改良を容易に成しえるものと理解する。した
がって、添付した請求項は、請求する本発明の範囲内に生じ得る変更の全てをカ
バーするものとみなす。
さらに、本発明の背景を説明するために引用した資料と出版物、および特にそ
の実施に関する追加的詳細を供給する場合には、リファレンスとして、ここに組
み込まれる。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07K 14/52 C07K 16/24
16/24 17/08
17/08 C12N 1/21
C12N 1/21 C12P 21/02 C
5/10 21/08
C12P 21/02 C12N 5/00 B
21/08 A61K 37/02 AED
(31)優先権主張番号 08/321,488
(32)優先日 1994年10月12日
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/347,780
(32)優先日 1994年11月30日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,
LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,MN,M
W,MX,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,
UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 ボツセルマン,ロバート・エー
アメリカ合衆国、カルフオルニア・91362、
サウザンド・オークス、バツカラツト・ス
トリート・3301
(72)発明者 ハント,パメラ
アメリカ合衆国、カルフオルニア・91362、
サウザンド・オークス、マツクレア・ロー
ド・2431
(72)発明者 キンストラー,オアフ・ビー
アメリカ合衆国、カルフオルニア・91360、
サウザンド・オークス、ノース・オークツ
リー・ユニツト・エー・533
(72)発明者 サーマル,バブル・ビー
アメリカ合衆国、カルフオルニア・93021、
モアパーク、ブロードビユー・ドライブ・
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