JPH09153360A - リチウム二次電池用正極とその製造方法およびリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用正極とその製造方法およびリチウム二次電池

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JPH09153360A
JPH09153360A JP7301053A JP30105395A JPH09153360A JP H09153360 A JPH09153360 A JP H09153360A JP 7301053 A JP7301053 A JP 7301053A JP 30105395 A JP30105395 A JP 30105395A JP H09153360 A JPH09153360 A JP H09153360A
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positive electrode
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堅次 中根
Hironori Nishida
裕紀 西田
Kenichiro Kami
謙一郎 加美
Tomoari Sato
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】大きな放電容量を示すニッケル酸リチウムを正
極活物質として用いて、正極の密度が大きく、限られた
電池缶容積に充填できる活物質量を多くできるリチウム
二次電池用正極とその製造方法および該正極を用いた優
れた充放電特性をもつリチウム二次電池。 【解決手段】リチウム化合物とニッケル化合物とを混合
して、350〜800℃で焼成して、得られたニッケル
酸リチウムであり、水100cm3 とニッケル酸リチウ
ム5gとをガラス容器中で5分間混合した後、30秒間
静置して得られた上澄み液を測定したpHが12.00
以下であるニッケル酸リチウムを正極の活物質として用
いるリチウム二次電池用正極。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はリチウム二次電池用
正極特にシート状正極とその製造方法およびリチウム二
次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウ
ムは、酸素イオン最密充填層の垂直方向にリチウムイオ
ンとコバルトイオンまたはニッケルイオンとが交互に層
状に規則配列した、いわゆるα−NaFeO2 型構造を
もつ化合物である。その構造のために層内のリチウムイ
オンの拡散が比較的容易であり、リチウムイオンを電気
化学的にドープ・脱ドープすることが可能である。この
性質を利用して、次世代の高性能小型二次電池、将来的
には電気自動車用電源、またはロ−ドレベリング用電力
貯蔵装置として期待されているリチウム二次電池の正極
材料としての応用が検討されている。
【0003】コバルト酸リチウムは既に一部の携帯用電
話やビデオカメラの電源用リチウム二次電池の正極材料
として実用化されている。しかし、材料コストの面か
ら、高価なコバルト化合物を原料とするコバルト酸リチ
ウムよりも、資源的に豊富で安価であるニッケル化合物
を用いるニッケル酸リチウムの方が有利である。ところ
が、ニッケル酸リチウムはその合成法により充放電特性
が大きく異なり、一般にコバルト酸リチウムに比べて大
きな放電容量を示すニッケル酸リチウムの合成は難しい
とされていた。これはニッケル酸リチウムではリチウム
サイトにニッケルが入るタイプの置換が起こりやすく、
このため適当な合成条件を選ばないとリチウムサイトに
ニッケルが存在する化合物となってしまい、このニッケ
ルがリチウムイオンの拡散を阻害して充放電特性に悪影
響を与えるためだと説明されている。
【0004】近年、合成条件の最適化により、大きな放
電容量を示すニッケル酸リチウムを得ようという検討が
なされている。例えば、特開平5−290851号公報
には、水酸化リチウムと水酸化ニッケルとを、水酸化ニ
ッケル1モルに対して水酸化リチウム1.15〜1.7
5モルの所定の比率で混合した後、空気中450〜90
0℃で加熱処理することによりLix NiOy (1.1
5≦x≦1.75、y>0)を得る方法が開示されてい
る。同公報によれば、この方法で得られたLi x NiO
y は大きな放電容量(150mAh/g以上)を示すこ
とが記載されている。また、ヨーロッパ公開特許第57
3040号明細書には、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、
水酸化ニッケル、およびオキシ水酸化ニッケルのうち少
なくともひとつのニッケル化合物1モルと、硝酸リチウ
ム、炭酸リチウム、水酸化リチウムのうち少なくともひ
とつの1モルよりも過剰のリチウム化合物とを混合して
焼成することによりニッケル酸リチウムを得る方法が開
示されており、1<Li/Ni≦1.4の範囲で大きな
放電容量が得られると記載されている。
【0005】リチウム二次電池には液体または固体の電
解質が用いられるが、それらはニッケル−カドミウム電
池やニッケル−水素電池に用いられている水溶液系の電
解質に比べて電導度が小さい。そこで内部抵抗を小さく
し、取り出せる電流値を大きくするために通常は正およ
び負の電極をシート状にして電極面積を大きくし、それ
らをセパレータを介して積層あるいは巻回すことにより
電池としている。したがって、製造工程に活物質をシー
ト電極化する工程が含まれることになる。しかしなが
ら、上記のような大きな放電容量を示すニッケル酸リチ
ウムを含む粉末を正極活物質とした場合、正極活物質を
導電材、バインダー、溶媒とともに混練してペーストと
し、シート状の集電体に塗布して電極とする工程におい
て、シート状正極の密度が低くなる傾向があり、その結
果限られた電池缶容積に充填できる活物質量が少なくな
って十分な性能のリチウム二次電池が得られないという
問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、大き
な放電容量を示すニッケル酸リチウムを正極活物質とし
て用いて、正極特にシート状正極の密度が大きく、限ら
れた電池缶容積に充填できる活物質量を多くできるリチ
ウム二次電池用正極とその製造方法および該正極を用い
た優れた充放電特性をもつリチウム二次電池を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような事情をみて、
本発明者らは鋭意検討をおこなった結果、正極の活物質
としてニッケル酸リチウムを用いた場合、正極活物質を
導電材、バインダー、溶媒とともに混練してペースト化
する工程において該ニッケル酸リチウム粉末を水中に分
散した際のpHの値を12.00以下とすることによ
り、ペーストを塗布して得られるシート電極の密度を高
くできることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は(1)リチウム化合物
とニッケル化合物とを混合して、350〜800℃で焼
成して、得られたニッケル酸リチウムであり、かつ水1
00cm3 とニッケル酸リチウム5gとをガラス容器中
で5分間混合した後、30秒間静置して得られた上澄み
液を測定したpHが12.00以下であるニッケル酸リ
チウムを正極の活物質として用いるリチウム二次電池用
正極に係るものである。また、本発明は(2)ニッケル
酸リチウムが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、C
u、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnからなる
群から選ばれた少なくとも1種の金属のモル数とニッケ
ル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、前記の
少なくとも1種の金属が0.1〜5モル%であるように
該金属を含む複合ニッケル酸リチウムである(1)記載
のリチウム二次電池用正極に係るものである。更に、本
発明は(3)リチウム化合物とニッケル化合物とを混合
して、または更にこれらとTi、V、Cr、Mn、F
e、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、Inおよび
Snからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の化
合物とを混合して、350〜800℃で焼成して、ニッ
ケル酸リチウムまたは複合ニッケル酸リチウムを得て、
該ニッケル酸リチウムまたは該複合ニッケル酸リチウム
を二酸化炭素ガスを含む雰囲気で処理して得られたニッ
ケル酸リチウムまたは複合ニッケル酸リチウムを用いる
(1)または(2)記載のリチウム二次電池用正極の製
造方法に係るものである。
【0009】また、本発明は(4)リチウム化合物とニ
ッケル化合物とを混合して、または更にこれらとTi、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、A
l、Ga、InおよびSnからなる群から選ばれた少な
くとも1種の金属の化合物とを混合して、350〜80
0℃で焼成して、ニッケル酸リチウムまたは複合ニッケ
ル酸リチウムを得て、二酸化炭素ガスを含む雰囲気下で
該ニッケル酸リチウムまたは該複合ニッケル酸リチウム
を解砕して得られたニッケル酸リチウムまたは複合ニッ
ケル酸リチウムを用いる(1)または(2)記載のリチ
ウム二次電池用正極の製造方法に係るものである。更
に、本発明は(5)二酸化炭素ガスを含む雰囲気下にお
いて、ニッケル酸リチウムまたはTi、V、Cr、M
n、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、In
およびSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金
属のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との
和に対して、前記の少なくとも1種の金属が0.1〜5
モル%であるように該金属を含む複合ニッケル酸リチウ
ム、導電材およびバインダーを溶媒とともに混練してペ
ーストとなし、該ペーストを集電材に塗布し、ペースト
が塗布された集電材を乾燥するリチウム二次電池用正極
の製造方法に係るものである。更に、本発明は(6)リ
チウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を活物質と
して含む正極と、リチウム金属、リチウム合金、または
リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を活物質
として含む負極と、液体または固体の電解質とを有する
リチウム二次電池において、該正極として(1)または
(2)記載のリチウム二次電池用正極を用いるリチウム
二次電池に係るものである。以下、本発明をさらに詳細
に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のリチウム二次電池用正極
は、正極の活物質としてニッケル酸リチウムを用いる。
該ニッケル酸リチウムは、リチウム化合物とニッケル化
合物とを混合して、350〜800℃で焼成して、得ら
れたニッケル酸リチウムであり、水100cm3 にニッ
ケル酸リチウム5gをガラス容器中で5分間混合した
後、30秒間静置して得られた上澄み液を測定したpH
が12.00以下であることを特徴とする。該pHの測
定方法は、JIS K5101のB法に準じて処理した
後、JIS Z8802の7によってpHを測定する。
ただし、pH計は、形式Iのものを、電極は常温用のも
のを用いる。また、好ましくは正極の活物質としてニッ
ケル酸リチウムが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、C
o、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnか
らなる群から選ばれた少なくとも1種の金属のモル数と
ニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、
前記の少なくとも1種の金属が0.1〜5モル%である
ように該金属を含む複合ニッケル酸リチウムが挙げられ
る。該複合ニッケル酸リチウムを用いると、高容量での
使用におけるサイクル性が向上するので好ましい。本発
明のリチウム二次電池用正極は、工業的に高密度化しや
すく、扱いやすいのでシート状の正極が好ましい。
【0011】本発明のリチウム二次電池用正極は、前述
したニッケル酸リチウムを活物質として含み、具体的に
は、該ニッケル酸リチウム、導電材としての炭素質材
料、バインダーとしての熱可塑性樹脂などを含有するも
のが挙げられる。該炭素質材料としては、天然黒鉛、人
造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどが挙げられ
る。導電材として、それぞれ単独で用いてもよいし、例
えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いると
いった複合導電材系を選択してもよい。本発明で使用す
るバインダーとしては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱
可塑性樹脂の中でも、均一な混合が容易であるという点
で溶媒に可溶のフッ素樹脂またはフッ素ゴムを用いるこ
とが好ましい。フッ素樹脂としてはポリフッ化ビニリデ
ン(以下、PVDFということがある。)、四フッ化エ
チレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重
合体などが挙げられる。またフッ素ゴムとしては六フッ
化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化
エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体など
が挙げられる。これらをそれぞれ単独で用いてもよい
し、二種以上を混合して用いてもよい。活物質に対する
導電材およびバインダーの混合比率としては、活物質に
対して導電材5〜15重量%、バインダー1〜10重量
%の範囲が好ましい。これより少量だと効果が充分では
なく、またこの範囲を超えるとシート正極の重量あたり
の容量が小さくなってしまう。さらに具体的には、本発
明のリチウム二次電池用正極の製造方法としては、ニッ
ケル酸リチウム、導電材およびバインダーを溶媒ととも
に混練してペーストとなし、該ペーストを集電材に塗布
し、ペーストが塗布された集電材を乾燥する方法が挙げ
られる。ここで使用する溶媒としては、1−メチル−2
−ピロリドン(以下、NMPということがある。)など
が挙げられる。本発明で使用する集電材としては、A
l、Ni、ステンレスなどが挙げられるが、Alが好ま
しい。
【0012】本発明におけるニッケル酸リチウムの製造
方法としては、リチウム化合物とニッケル化合物とを混
合して焼成する方法が用いられる。また、本発明におけ
る複合ニッケル酸リチウムの製造方法としては、リチウ
ム化合物とニッケル化合物と、Ti、V、Cr、Mn、
Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、Inおよ
びSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の
化合物とを混合して焼成する方法が用いられる。使用す
るリチウム化合物、ニッケル化合物および前記の少なく
とも1種の金属の化合物については、それぞれの炭酸
塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物などを使用することがで
きる。リチウム化合物とニッケル化合物との混合割合、
またはリチウム化合物とニッケル化合物、前記の金属化
合物との混合割合は、大きな放電容量が得られる点でリ
チウム過剰とすることが好ましい。
【0013】焼成温度は、いずれの場合も、350℃以
上800℃以下であり、好ましくは600℃以上750
℃以下である。焼成温度が800℃を超えると、ニッケ
ル酸リチウムにリチウムイオンとニッケルイオンとが不
規則に配列した岩塩型ドメインが混入する割合が大きく
なり、可逆的な充放電が阻害されるので好ましくない。
また、焼成温度が350℃未満であるとニッケル酸リチ
ウムの生成反応がほとんど進行しないため好ましくな
い。焼成時間は、2時間以上が好ましく、5時間以上が
さらに好ましい。焼成雰囲気としては酸素を含む雰囲気
が好ましく、より好ましくは酸素中で、さらに好ましく
は酸素気流中で行われる。
【0014】本発明のリチウム二次電池用正極の製造方
法は、前記のようにして得られたニッケル酸リチウムま
たは複合ニッケル酸リチウムを二酸化炭素ガスを含む雰
囲気で処理して得られたニッケル酸リチウムまたは複合
ニッケル酸リチウムを用いることを特徴とする。この処
理に使用される装置は二酸化炭素ガス雰囲気に置換可能
な加熱機器であればよく、特に制限はない。例として真
空乾燥器、ロータリーエバポレーター等が挙げられる。
処理温度および処理時間にも特に制限はないが、通常の
真空乾燥器が使用できるという点で室温から200℃ま
での処理温度が好ましい。
【0015】また、本発明のリチウム二次電池用正極の
製造方法は、前記のようにして得られたニッケル酸リチ
ウムまたは複合ニッケル酸リチウムを二酸化炭素ガスを
含む雰囲気下で解砕してして得られたニッケル酸リチウ
ムまたは複合ニッケル酸リチウムを用いることを特徴と
する。この方法は室温で実施することができ、解砕時間
は所望の粒度が得られる時間として設定すればよい。こ
れはおそらく水中に分散した際のpHを低下させる反応
の界面が解砕により随時更新されるため、該反応に要す
る時間が短くてよいものと思われるが、未だ詳細は明ら
かではない。該解砕に使用される装置は二酸化炭素ガス
雰囲気に置換可能な機器であればよく、特に制限はな
い。例としてボールミル、ジェットミル等が挙げられ
る。本発明において、二酸化炭素ガスを含む雰囲気と
は、通常の大気または大気よりも高い含有率の二酸化炭
素を含む雰囲気であればよいが、二酸化炭素ガスを20
体積%以上含む雰囲気が好ましく、二酸化炭素ガスを5
0体積%以上含む雰囲気が更に好ましい。また、処理の
簡便さから、市販の二酸化炭素ボンベを用いることが好
ましい。
【0016】また、本発明のリチウム二次電池用正極の
製造方法は、二酸化炭素ガスを含む雰囲気下においてニ
ッケル酸リチウム、導電材およびバインダーを溶媒とと
もに混練してペーストとなし、該ペーストを集電材に塗
布し、ペーストが塗布された集電材を乾燥することを特
徴とする。本発明で使用する導電材としては、天然黒
鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどの炭
素質材料が挙げられる。それぞれ単独で用いてもよい
し、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用
いるといった複合導電材系を選択してもよい。本発明で
使用するバインダーとしては、熱可塑性樹脂が挙げられ
る。熱可塑性樹脂の中でも、均一な混合が容易であると
いう点で溶媒に可溶のフッ素樹脂またはフッ素ゴムを用
いることが好ましい。フッ素樹脂としてはポリフッ化ビ
ニリデン(以下、PVDFということがある。)、四フ
ッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン
系共重合体などが挙げられる。またフッ素ゴムとしては
六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四
フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合
体などが挙げられる。これらをそれぞれ単独で用いても
よいし、二種以上を混合して用いてもよい。本発明で使
用する溶媒としては、1−メチル−2−ピロリドン(以
下、NMPということがある。)などが挙げられる。本
発明で使用する集電材としては、Al、Ni、ステンレ
スなどが挙げられるが、Alが好ましい。活物質に対す
る導電材およびバインダーの混合比率としては、活物質
に対して導電材5〜15重量%、バインダー1〜10重
量%の範囲が好ましい。これより少量だと効果が充分で
はなく、またこの範囲を超えると正極の重量あたりの容
量が小さくなってしまう。このペースト化工程に使用さ
れる装置は、二酸化炭素ガス雰囲気に置換可能な機器で
あればよく、特に制限はない。例としてボールミル、ビ
ーズミル等が挙げられる。本発明によって正極活物質を
導電材、バインダー、溶媒とともに混練してペーストと
する工程においてペーストを塗布して得られるシート電
極の密度を高くできる理由については、二酸化炭素ガス
がペーストの粘度上昇を抑制することが関係していると
思われるが、未だ明らかではない。
【0017】次に、本発明のリチウム二次電池は、リチ
ウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を活物質とし
て含む正極と、リチウム金属、リチウム合金、またはリ
チウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を活物質と
して含む負極と、液体または固体の電解質とを有するリ
チウム二次電池において、該正極として前記のリチウム
二次電池用正極を用いることを特徴とする。
【0018】本発明のリチウム二次電池の負極として
は、リチウム金属、リチウム合金、またはリチウムイオ
ンをドープ・脱ドープ可能な材料が用いられる。リチウ
ムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料としては、天然
黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分
解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭
素質材料が挙げられる。炭素質材料として、電位平坦性
が高く、また平均放電電位が低いため正極と組み合わせ
た場合大きなエネルギー密度が得られるという点で、天
然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材
料が好ましい。本発明のリチウム二次電池の負極として
は、リチウム金属、リチウム合金、またはリチウムイオ
ンをドープ・脱ドープ可能な材料が用いられる。リチウ
ムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料としては、天然
黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分
解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭
素質材料が挙げられる。炭素質材料として、電位平坦性
が高く、また平均放電電位が低いため正極と組み合わせ
た場合大きなエネルギー密度が得られるという点で、天
然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材
料が好ましい。黒鉛材料を用いる場合、初期充放電時に
おける不可逆容量を小さくしてリチウムの利用効率を向
上することができるという理由から、黒鉛材料をシラン
カップリング剤で処理することおよび/または黒鉛材料
と擬黒鉛質カーボンブラックとを混合して用いることが
好ましい。該シランカップリング剤としては、ビニルト
リエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル
トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタアク
リロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイド
プロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシ
シクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
処理に用いるシランカップリング剤の量は黒鉛材料10
0重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、さ
らに好ましくは0.1〜10重量部であり、特に好まし
くは0.5〜5重量部である。該擬黒鉛質カーボンブラ
ックとしては、X線回折における格子間隔d002 が3.
38〜3.46Åであり、真比重が1.9〜2.1、揮
発分が0.5重量%以下、数平均粒子径が10〜100
nm程度のものが好ましく、また窒素吸着法による比表
面積は10〜300m2 /g程度が好ましい。例とし
て、クレオソート油、エチレンボトム油、天然ガス等を
原料にしたファーネスブラックやアセチレンを原料とし
たアセチレンブラック等のカーボンブラックを2500
〜2800℃程度の高温で熱処理したものが挙げられ
る。黒鉛材料と擬黒鉛質カーボンブラックとの混合割合
は、黒鉛材料70〜99重量%に対して擬黒鉛質カーボ
ンブラック30〜1重量%が好ましく、さらに好ましく
は黒鉛材料80〜97重量%に対して擬黒鉛質カーボン
ブラックが20〜3重量%であり、特に好ましくは黒鉛
材料90〜96重量%に対して擬黒鉛質カーボンブラッ
クが10〜4重量%である。また、電解液として、エチ
レンカーボネートを含有しないときには、ポリエチレン
カーボネートを含有した負極を用いると、サイクル特性
と大電流充放電特性が向上するので好ましい。炭素質材
料の形状は薄片状、球状、繊維状、または微粉末の凝集
体などのいずれでもよく、必要に応じてバインダーとし
ての熱可塑性樹脂を添加することができる。熱可塑性樹
脂としては、PVDF、ポリエチレン、ポリプロピレン
などが挙げられる。
【0019】本発明のリチウム二次電池の電解質として
は、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質溶
液、または固体電解質のいずれかから選ばれる公知のも
のが用いられる。リチウム塩としては、LiClO4
LiPF6 、LiAsF6 、LiSbF6 、LiBF
4 、LiCF3 SO3 、LiC(CF3 SO23 、L
iN(CF3 SO22 、Li210Cl10、低級脂肪
族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4 などのうち一
種または二種以上の混合物が挙げられる。
【0020】有機溶媒としてはプロピレンカーボネー
ト、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジ
エチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−
トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オ
ン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンな
どのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,
3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチ
ルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒ
ドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチ
ル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニト
リル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど
のアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカ
ーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、
1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物が挙げら
れるが、通常はこれらのうちの二種以上を混合して用い
る。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、
環状カーボネートと非環状カーボネート、または環状カ
ーボネートとエーテル類の混合溶媒がさらに好ましい。
環状カーボネートと非環状カーボネートの混合溶媒と
しては、動作温度範囲が広く、負荷特性に優れ、かつ負
極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を用
いた場合でも難分解性であるという点で、エチレンカー
ボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカ
ーボネートを含む混合溶媒が好ましい。
【0021】固体電解質としてはポリエチレンオキサイ
ド系、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシア
ルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物な
どの高分子電解質、またはLi2 S−SiS2 、Li2
S−GeS2 、Li2 S−P 25 、Li2 S−B2
3 などの硫化物系電解質、またはLi2 S−SiS2
Li3 PO4 、Li2 S−SiS2 −Li2 SO4 など
の硫化物を含む無機化合物系電解質が挙げられる。ま
た、高分子に非水電解質溶液を保持させた、いわゆるゲ
ルタイプのものを用いることもできる。なお、本発明の
リチウム二次電池の形状は特に限定されず、ペーパー
型、コイン型、円筒型、角型などのいずれであってもよ
い。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるもの
ではない。なお、特に断らない限り、充放電試験用の電
極と平板型電池の作製は下記の方法によった。活物質で
あるニッケル酸リチウム粉末88wt(重量)%、導電
材としてアセチレンブラック(商品名デンカブラック5
0%プレス品、電気化学工業株式会社製)6wt%、バ
インダーとしてフッ素樹脂(商品名テフロン30−J、
三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)6wt%を
水を用いて混練してペーストとし、集電体となる#20
0ステンレスメッシュに該ペーストを塗布して150℃
で8時間真空乾燥を行い、電極を得た。
【0023】正極として得られた電極を、電解液として
プロピレンカーボネート(以下、PCということがあ
る。)と1,2−ジメトキシエタン(以下、DMEとい
うことがある。)の1:1混合液に過塩素酸リチウムを
1モル/リットルとなるように溶解したものを、セパレ
ーターとしてポリプロピレン多孔質膜を、また対極(負
極)として金属リチウムを組み合わせて平板型電池を作
製した。また、pHの測定方法は、JIS K5101
のB法に準じて、水100cm 3 にニッケル酸リチウム
5gをガラス容器中で5分間混合した後、30秒間静置
して得られた上澄み液のpHを、JIS Z8802の
7によって測定した。pHの測定装置として、東亜電波
工業株式会社製ガラス電極式水素イオン濃度計HM−4
0Vを使用し、27℃で測定した。
【0024】比較例1 硝酸リチウム(和光純薬工業株式会社、試薬特級グレー
ド)144.8gを水100gに溶解させ、さらに塩基
性炭酸ニッケル〔NiCO3 ・2Ni( OH)2・4H2
O、ただしNi含有量43.9重量%:和光純薬工業株
式会社、試薬グレード、平均粒径20μm〕267.4
gを加えてよく分散させた後、ロータリーエバポレータ
ーを用いて水を蒸発させ、ムライト炉心管を使用した管
状炉に入れ、酸素流量750cm3 /minの酸素気流
中において720℃で6時間焼成した。得られたニッケ
ル酸リチウム粉末は、粉末X線回折によりα−NaFe
2 型構造を有することが確認された。また、水中に分
散した際のpHは12.03であった。得られた粉末を
用いて平板型電池を作製し、充電最大電圧4.2V、放
電最小電圧2.5V、0.17mA/cm2 の定電流で
充放電試験を実施した。3サイクル目の放電容量は16
9mAh/gであり、良好なサイクル特性を示した。
【0025】次に円筒型電池とするため、活物質である
ニッケル酸リチウム粉末と導電材としての人造黒鉛粉末
(商品名KS−15、Lonza社製)の混合物に、バ
インダーとしてPVDFの1−メチル−2−ピロリドン
(以下、NMPということがある。)溶液を、活物質:
導電材:バインダー=87:10:3(重量比)の組成
となるように加えて、ポリエチレン製ポットに入れ、1
5mmφナイロン被覆スチールボールを用いてボールミ
ルにより大気雰囲気で混練した。このとき、PVDFの
NMP溶液の濃度は重量比でPVDF:NMP=3:4
5とした。続いてドクターブレードによりAl箔に塗布
し、真空乾燥させた後ロールプレスを行ってシート状正
極とした。得られたシート状正極の密度は3.21g/
cm3 であった。
【0026】実施例1 比較例1で得られたニッケル酸リチウム粉末を、ロータ
リーエバポレーターの中に入れ、そこへ二酸化炭素ガス
ボンベから高純度二酸化炭素ガスを5cm3 /minで
流しながら、室温で3時間処理した。処理後の粉末を水
中に分散した際のpHは11.96であった。得られた
粉末を用いて平板型電池を作製し、比較例と同様の条件
で充放電試験を実施した。3サイクル目の放電容量は1
74mAh/gであり、良好なサイクル特性を示した。
次に円筒型電池とするため、比較例1と同様にしてシー
ト状正極を作製した。得られたシート状正極の密度は
3.35g/cm3 であった。
【0027】実施例2 比較例1で得られたニッケル酸リチウム粉末を真空乾燥
器に入れ、真空脱気した後、二酸化炭素ガスボンベから
高純度二酸化炭素ガスを供給して、高純度二酸化炭素ガ
スに置換し、180℃で3時間保持した。処理後の粉末
を水中に分散した際のpHは11.85であった。得ら
れた粉末を用いて平板型電池を作製し、比較例1と同様
の条件で充放電試験を実施した。3サイクル目の放電容
量は171mAh/gであり、良好なサイクル特性を示
した。次に円筒型電池とするため、比較例1と同様にし
てシート状正極を作製した。得られたシート状正極の密
度は3.39g/cm3 であった。
【0028】実施例3 比較例1で得られたニッケル酸リチウム粉末を真空乾燥
器に入れ、真空脱気した後、二酸化炭素ガスボンベから
高純度二酸化炭素ガスを供給して、高純度二酸化炭素ガ
スに置換し、200℃で3時間保持した。処理後の粉末
を水中に分散した際のpHは11.66であった。得ら
れた粉末を用いて平板型電池を作製し、比較例1と同様
の条件で充放電試験を実施した。3サイクル目の放電容
量は172mAh/gであり、良好なサイクル特性を示
した。次に円筒型電池とするため、比較例1と同様にし
てシート状正極を作製した。得られたシート状正極の密
度は3.41g/cm3 であった。
【0029】実施例4 比較例1と同様にして焼成を行った後、得られた焼成物
をアルミナ製ボールミルに入れ、二酸化炭素ガスボンベ
から高純度二酸化炭素ガスを供給して、アルミナ製ボー
ルミルを高純度二酸化炭素ガスで置換した。該高純度二
酸化炭素雰囲気でアルミナボールミルで解砕し、ニッケ
ル酸リチウム粉末を得た。得られた粉末はX線回折測定
でα−NaFeO2 型構造をもつことが確認された。ま
た水中に分散した際のpHは11.89であった。得ら
れた粉末を用いて平板型電池を作製し、比較例1と同様
の条件で充放電試験を実施した。3サイクル目の放電容
量は170mAh/gであり、良好なサイクル特性を示
した。次に円筒型電池とするため、比較例1と同様にし
てシート状正極を作製した。得られたシート状正極の密
度は3.39g/cm3 であった。
【0030】実施例5 比較例1で得られたニッケル酸リチウム粉末を用いて、
シート状正極の混練雰囲気を高純度二酸化炭素雰囲気と
した以外は比較例1と同様にして、シート状正極を作製
した。得られたシート状正極の密度は3.40g/cm
3 であった。
【0031】実施例6 比較例1と同様にして焼成を行った後、得られた焼成物
をアルミナ製ボールミルに入れ、二酸化炭素ガスボンベ
から高純度二酸化炭素ガスを供給して、アルミナ製ボー
ルミルを高純度二酸化炭素ガスで二酸化炭素ガス濃度が
約50%となるように置換した。該高純度二酸化炭素を
約50%含む雰囲気でアルミナボールミルで解砕し、ニ
ッケル酸リチウム粉末を得た。得られた粉末はX線回折
測定でα−NaFeO2 型構造をもつことが確認され
た。また水中に分散した際のpHは11.90であっ
た。得られた粉末を用いて平板型電池を作製し、比較例
1と同様の条件で充放電試験を実施した。3サイクル目
の放電容量は171mAh/gであり、良好なサイクル
特性を示した。次に円筒型電池とするため、比較例1と
同様にしてシート状正極を作製した。得られたシート状
正極の密度は3.39g/cm3 であった。
【0032】比較例2 まず硝酸ガリウム(Ga( NO3 )3 ・6.2H2 O:
高純度化学研究所株式会社製、試薬3Nグレード)1
1.02gを水150gに溶解させ、続いて水酸化リチ
ウム一水塩(LiOH・H2 O:和光純薬工業株式会社
製、試薬特級グレード)4.53gを加えて溶解させ
た。溶液はいったん白濁した後、ほぼ透明となった。さ
らに硝酸リチウム(和光純薬工業株式会社製、試薬特級
グレード)101.2gを溶解させ、続いて塩基性炭酸
ニッケル〔NiCO3 ・2Ni( OH)2・4H2 O、た
だしNi含有量43.9重量%:和光純薬工業株式会社
製、試薬グレード、平均粒径20μm 〕196.6gを
加えてよく分散させた後、ロータリーエバポレーターを
用いて水を蒸発させ、ムライト炉心管を使用した管状炉
に入れ、酸素流量750cm3 /minの酸素気流中に
おいて660℃で15時間焼成した。このときガリウム
のガリウムとニッケルとの和に対するモル比は0.02
となるようにした。
【0033】得られた粉末を用いて平板型電池を作製
し、以下の条件で定電流定電圧充電、定電流放電による
充放電試験を実施した。ただし、電解液はエチレンカー
ボネート(以下、ECということがある。)とジメチル
カーボネート(以下、DMCということがある。)とエ
チルメチルカーボネート(以下、EMCということがあ
る。)との30:35:35混合液にLiPF6 を1モ
ル/リットルとなるように溶解したもの(以下、LiP
6 /EC+DMC+EMCということがある。)を用
いた。充放電の条件は、充電最大電圧4.3V、充電時
間8時間、充電電流0.3mA/cm2 、放電最小電圧
3.0V、放電電流0.3mA/cm2 であった。この
試料ではガリウムの添加により高容量での使用における
サイクル性が向上しており、11サイクル目の放電容量
は183mAh/g、11回目から20回目までの容量
維持率(=20回目の放電容量/11回目の放電容量)
は1.005であった。またこの粉末を水中に分散した
際のpHは12.04であった。次に円筒型電池とする
ため、比較例1と同様にしてシート状正極を作製した。
得られたシート状正極の密度は3.24g/cm3 であ
った。
【0034】実施例7 比較例2で得られたガリウムを添加したニッケル酸リチ
ウム粉末を用いて、シート状正極の混練雰囲気を高純度
二酸化炭素雰囲気とした以外は比較例1と同様にして、
シート状正極を作製した。得られたシート状正極の密度
は3.38g/cm3 であった。このように、本発明は
ニッケル酸リチウムが性能改善のための添加物(本実施
例ではガリウム)を含む場合についても適用可能であ
る。
【0035】比較例3 まず硝酸リチウム(和光純薬工業株式会社製、試薬特級
グレード)12.07gを水16.7gに溶解させた。
続いてメタスズ酸(H2 SnO3 :日本化学産業株式会
社製、純度95%)0.56gと塩基性炭酸ニッケル
〔NiCO3 ・2Ni(OH)2 ・4H2 O、ただしN
i含有量43.9重量%:和光純薬工業株式会社製、試
薬グレード、平均粒径20μm 〕21.84gを加えて
よく分散させた後、ロータリーエバポレーターを用いて
水を蒸発させ、アルミナ炉心管を使用した管状炉に入
れ、酸素流量50cm3 /minの酸素気流中において
660℃で15時間焼成した。このときスズのスズとニ
ッケルとの和に対するモル比は0.02となるようにし
た。
【0036】得られた粉末を用いて平板型電池(電解液
はLiPF6 /EC+DMC+EMC)を作製し、比較
例2と同様の条件で定電流定電圧充電、定電流放電によ
る充放電試験を実施した。この試料ではスズの添加によ
り高容量での使用におけるサイクル性が向上しており、
11サイクル目の放電容量は191mAh/g、11回
目から20回目までの容量維持率(=20回目の放電容
量/11回目の放電容量)は0.984であった。また
この粉末を水中に分散した際のpHは12.05であっ
た。次に円筒型電池とするため、比較例1と同様にして
シート状正極を作製した。得られたシート状正極の密度
は3.23g/cm3 であった。
【0037】実施例8 比較例3で得られたスズを添加したニッケル酸リチウム
粉末を真空乾燥器に入れ、真空脱気した後、二酸化炭素
ガスボンベから高純度二酸化炭素ガスを供給して、二酸
化炭素ガスに置換し、180℃で3時間保持した。処理
後の粉末を水中に分散した際のpHは11.76であっ
た。 次に円筒型電池とするため、比較例1と同様にし
てシート状正極を作製した。得られたシート状正極の密
度は3.40g/cm3 であった。このように、本発明
はニッケル酸リチウムが性能改善のための添加物(本実
施例ではスズ)を含む場合についても適用可能である。
なお、実施例1、2、3、4、6、8におけるpHと正
極密度を示す点および比較例1、2、3におけるpHと
正極密度を示す点を図1に示す。
【0038】
【発明の効果】本発明のリチウム二次電池用シート状正
極は、シート状正極の密度が大きく、限られた電池缶容
積に充填できる活物質量を多くできる。該シート状正極
を用いたリチウム二次電池は、優れた充放電特性を有す
るので工業的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例におけるpHと正極密度と
関係を示す図。
【符号の説明】
1、2、3、4、6、8・・・それぞれ実施例1、2、
3、4、6、8におけるpHと正極密度を示す点。C
1、C2、C3・・・それぞれ比較例1、2、3におけ
るpHと正極密度を示す点。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 朋有 茨城県つくば市北原6 住友化学工業株式 会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リチウム化合物とニッケル化合物とを混合
    して、350〜800℃で焼成して、得られたニッケル
    酸リチウムであり、かつ水100cm3 とニッケル酸リ
    チウム5gとをガラス容器中で5分間混合した後、30
    秒間静置して得られた上澄み液を測定したpHが12.
    00以下であるニッケル酸リチウムを正極の活物質とし
    て用いることを特徴とするリチウム二次電池用正極。
  2. 【請求項2】ニッケル酸リチウムが、Ti、V、Cr、
    Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、I
    nおよびSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の
    金属のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数と
    の和に対して、前記の少なくとも1種の金属が0.1〜
    5モル%であるように該金属を含む複合ニッケル酸リチ
    ウムであることを特徴とする請求項1記載のリチウム二
    次電池用正極。
  3. 【請求項3】リチウム化合物とニッケル化合物とを混合
    して、または更にこれらとTi、V、Cr、Mn、F
    e、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、Inおよび
    Snからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の化
    合物とを混合して、350〜800℃で焼成して、ニッ
    ケル酸リチウムまたは複合ニッケル酸リチウムを得て、
    該ニッケル酸リチウムまたは該複合ニッケル酸リチウム
    を二酸化炭素ガスを含む雰囲気で処理して得られたニッ
    ケル酸リチウムまたは複合ニッケル酸リチウムを用いる
    ことを特徴とする請求項1または2記載のリチウム二次
    電池用正極の製造方法。
  4. 【請求項4】リチウム化合物とニッケル化合物とを混合
    して、または更にこれらとTi、V、Cr、Mn、F
    e、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、Inおよび
    Snからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の化
    合物とを混合して、350〜800℃で焼成して、ニッ
    ケル酸リチウムまたは複合ニッケル酸リチウムを得て、
    二酸化炭素ガスを含む雰囲気下で該ニッケル酸リチウム
    または該複合ニッケル酸リチウムを解砕して得られたニ
    ッケル酸リチウムまたは複合ニッケル酸リチウムを用い
    ることを特徴とする請求項1または2記載のリチウム二
    次電池用正極の製造方法。
  5. 【請求項5】二酸化炭素ガスを含む雰囲気下において、
    ニッケル酸リチウムまたはTi、V、Cr、Mn、F
    e、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、Inおよび
    Snからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属のモ
    ル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対
    して、前記の少なくとも1種の金属が0.1〜5モル%
    であるように該金属を含む複合ニッケル酸リチウム、導
    電材およびバインダーを溶媒とともに混練してペースト
    となし、該ペーストを集電材に塗布し、ペーストが塗布
    された集電材を乾燥することを特徴とするリチウム二次
    電池用正極の製造方法。
  6. 【請求項6】リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な
    材料を活物質として含む正極と、リチウム金属、リチウ
    ム合金、またはリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能
    な材料を活物質として含む負極と、液体または固体の電
    解質とを有するリチウム二次電池において、該正極とし
    て請求項1または2記載のリチウム二次電池用正極を用
    いることを特徴とするリチウム二次電池。
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