JPH08183858A - ポリフェニレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィドの製造方法

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JPH08183858A
JPH08183858A JP6337557A JP33755794A JPH08183858A JP H08183858 A JPH08183858 A JP H08183858A JP 6337557 A JP6337557 A JP 6337557A JP 33755794 A JP33755794 A JP 33755794A JP H08183858 A JPH08183858 A JP H08183858A
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Hiroyuki Sato
浩幸 佐藤
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/02Polythioethers
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    • C08G75/025Preparatory processes
    • C08G75/0254Preparatory processes using metal sulfides

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】高分子量かつ粒状のポリフェニレンスルフィド
を短時間に効率よく、高収率で製造する。 【構成】有機アミド溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハ
ロ芳香族化合物とを反応させてポリフェニレンスルフィ
ドを製造する方法において、 (1)工程1:アルカリ金属硫化物1モル当たり0.5
〜2.0モルの水を含有する有機アミド溶媒中で、アル
カリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを170〜27
0℃の温度範囲内で反応させ、少なくとも220℃から
240℃までの間を平均0.1〜1℃/分の昇温速度で
昇温させながら反応させ、ジハロ芳香族化合物の転化率
が70〜98モル%にさせる工程、及び (2)工程2:アルカリ金属硫化物1モル当たり2.1
〜10モルの水が存在する状態となるように、反応系に
水を少なくとも235℃以上の温度で添加するととも
に、245〜290℃の温度範囲内で高分子量ポリフェ
ニレンスルフィドに転換する工程。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリフェニレンスルフ
ィド(以下、PPSと略記)の製造方法に関し、さらに
詳しくは、高分子量かつ粒状のPPSを短時間に効率よ
く、しかも高収率で製造する方法に関する。また、本発
明は、PPSを工業的規模で安全かつ経済的に製造する
方法に関する。
【0002】
【従来技術】PPSは、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機
械的強度、電気的特性、寸法安定性等に優れたエンジニ
アリングプラスチックであり、射出成形、押出成形、圧
縮成形等の各種成形法により、各種成形品、フィルム、
シート、繊維等に成形可能であるため、電気・電子機
器、自動車機器等の広範な分野において幅広く用いられ
ている。
【0003】PPSの製造方法として、特公昭45−3
368号には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機
アミド溶媒中で、硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化
物とp−ジクロロベンゼン等のジハロ芳香族化合物とを
反応させる方法が提案されている。しかしながら、該公
報に開示された方法では、低分子量で溶融粘度が小さい
PPSしか得ることができない。このような低分子量P
PSは、重合後、空気の存在下で加熱し、酸化硬化(キ
ュアー)すれば高分子量化することができるが、得られ
た硬化PPSは、機械的物性が不十分であり、しかも線
状ではないため、シート、フィルム、繊維などに成形加
工することが困難である。
【0004】近年、重合時に高分子量のPPSを得るた
めに、前記方法を改善した各種の製造方法が提案されさ
れている。PPSの重合方法の改善手段として、有機ア
ミド溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物
とを反応させるに際し、各種の重合助剤を添加する方法
が提案されている。例えば、重合助剤として、アルカリ
金属カルボン酸塩(特公昭52−12240号)、芳香
族カルボン酸のアルカリ土類金属(特開昭59−219
332号)、アルカリ金属ハライド(米国特許第4,0
38,263号)、脂肪族カルボン酸のナトリウム塩
(特開平1−161022号)などを使用する方法が提
案されている。
【0005】これらの方法によれば、重合により線状で
高分子量のPPSを得ることができるが、比較的多量の
重合助剤を添加しなければならない。前記各文献には、
重合助剤の添加量について、少量から多量までの幅広い
範囲が示されているが、十分に高分子量のPPSを得る
には、比較的多量の重合助剤の添加が必要である。しか
も、より高分子量のPPSを得るためには、重合助剤の
なかでも高価な酢酸リチウムや安息香酸ナトリウムを多
量に使用することが必要であり、そのため、重合助剤の
回収に多大のコストがかかり、工業的規模での生産方法
として望ましいものではない。
【0006】これに対して、特公昭63−33775号
には、有機アミド溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ
芳香族化合物とを反応させてPPSを得る方法におい
て、特定の二段階重合法を採用することが提案されてい
る。即ち、該公報には、前段重合工程として、仕込みア
ルカリ金属硫化物1モル当たり0.5〜2.4モルの水
が存在する状態で、180〜235℃の温度で反応させ
て、ジハロ芳香族化合物の転化率を50〜98モル%と
して低粘度のプレポリマーを生成させた後、後段重合工
程として、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり2.
5〜7モルの水が存在する状態となるように反応系に水
を添加するとともに、245〜290℃の温度に昇温し
て、反応を継続する二段階重合法が提案されている。
【0007】この二段階重合法によれば、重合助剤を添
加しなくとも、高分子量のPPSを得ることができる。
しかしながら、この方法では、前段重合工程での重合温
度が低いため、比較的長時間の重合時間が必要である。
重合時間を短縮するために、前段重合工程の重合温度を
高くすると、急激な発熱反応の進行に伴い望ましくない
副反応が生じ、生成ポリマー及び溶媒の変質が起こり易
く、ポリマー品質が低下したりする等の問題を引き起こ
す。また、前段重合工程の重合温度を高くすると、反応
が暴走して、急激な反応缶内圧力の上昇を引き起こす危
険性が大きい。後段重合工程では、比較的低温で水を添
加するため、反応系の温度が急に低下して、生成したプ
レポリマーが析出し、その結果、反応速度が低下した
り、重合反応が不均一になる等の問題点がある。したが
って、高分子量かつ粒状のPPSを短時間に効率よく高
収率で製造するためのより改善された方法が強く望まれ
ている。
【0008】特開平4−255721号には、有機極性
溶媒中でアルカリ金属硫化物等の硫黄源とポリハロゲン
化芳香族化合物とを反応させてPPSを得る方法におい
て、反応溶液を220℃以下の温度から260℃以上に
昇温する時に、硫黄源中のS(硫黄原子)1モル当たり
0.3モル未満の水とアルカリ金属カルボン酸塩の存在
下、平均して0.5℃/分以下の昇温速度で反応を行な
う方法が提案されている。しかしながら、この方法で
は、重合助剤として多量のアルカリ金属カルボン酸塩を
使用する必要があり、しかも水を硫黄源中の硫黄原子1
モル当たり0.3モル未満にしなければならないため、
脱水時のエネルギーコストが高くなり、かつ脱水時間が
長くなる等問題点が多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高分
子量かつ粒状のポリフェニレンスルフィドを短時間に効
率よく、しかも高収率で製造する方法を提供することに
ある。本発明の他の目的は、白色度に優れた高品位のポ
リフェニレンスルフィドの製造方法を提供することにあ
る。本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するた
めに鋭意研究した結果、特定の二段階重合法によりPP
Sを製造する方法において、前段重合工程における重合
反応を170〜270℃の温度範囲で行うとともに、2
20〜240℃の間を平均0.1〜1℃/分の昇温速度
で昇温させながら反応させることにより、急激な発熱反
応を抑制しながら、全体の重合時間を大幅に短縮するこ
とができ、高分子量かつ粒状のPPSを高収率で得られ
ることを見いだした。本発明の方法によれば、重合条件
を選択することにより、従来よりも白色度の高いPPS
を得ることが可能である。本発明は、これらの知見に基
づいて完成するに至ったものである。
【0010】
【問題を解決するための手段】本発明によれば、有機ア
ミド溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物
とを反応させてポリフェニレンスルフィドを製造する方
法において、該反応を少なくとも下記の工程1及び2に
より行うことを特徴とするポリフェニレンスルフィドの
製造方法が提供される。
【0011】(1)工程1:仕込みアルカリ金属硫化物
1モル当たり0.5〜2.0モルの水を含有する有機ア
ミド溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合
物とを170〜270℃の温度範囲内で反応させ、その
際、少なくとも220℃から240℃までの間を平均
0.1〜1℃/分の昇温速度で昇温させながら反応さ
せ、さらに必要に応じて240〜270℃の温度範囲内
で反応を継続して、ジハロ芳香族化合物の転化率が70
〜98モル%になるようにし、ポリフェニレンスルフィ
ドのプレポリマーを生成させる工程、及び (2)工程2:仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり
2.1〜10モルの水が存在する状態となるように、反
応系に水を少なくとも235℃以上の温度で添加すると
ともに、245〜290℃の温度範囲内で0.5〜10
時間反応を継続して、前記プレポリマーを高分子量ポリ
フェニレンスルフィドに転換する工程。
【0012】以下、本発明について詳述する。アルカリ金属硫化物 本発明で使用されるアルカリ金属硫化物としては、硫化
リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジ
ウム、硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物を
好ましいものとして挙げることができる。特に好ましい
ものは、硫化ナトリウムである。これらのアルカリ金属
硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無
水物の形で用いることができる。また、アルカリ金属水
硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系において
n situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いる
ことができる。本発明では、仕込みアルカリ金属硫化物
の量は、脱水操作などにより反応開始前にアルカリ金属
硫化物の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量か
ら当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとす
る。
【0013】ジハロ芳香族化合物 本発明で使用されるジハロ芳香族化合物としては、p−
ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロ
モベンゼンなどのジハロベンゼン、1−メトキシ−2,
5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸など
のハロゲン以外の置換基をも含むジハロ芳香族化合物な
どが挙げられる。なかでも、p−ジクロロベンゼンに代
表されるp−ジハロベンゼンを主成分にするジハロ芳香
族化合物が好ましい。特に好ましくは、p−ジクロロベ
ンゼンを80〜100モル%含むものである。また、異
なる2種以上のジハロ芳香族化合物を組み合わせて、共
重合体とすることも可能である。
【0014】分子量調節剤、分岐・架橋剤 生成重合体の末端を形成させ、あるいは重合反応や分子
量を調節する等のために、モノハロ化合物(必ずしも芳
香族化合物でなくともよい)を併用することができる。
また、分岐または架橋重合体を形成させるために、トリ
ハロ以上のポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でな
くともよい)、活性水素含有ハロゲン芳香族化合物、ハ
ロゲン芳香族ニトロ化合物等を併用することも可能であ
る。
【0015】重合溶媒 本発明では、重合溶媒として有機アミド溶媒を使用す
る。有機アミド溶媒としては、例えば、N−メチル−2
−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等のN−ア
ルキルピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム等
のカプロラクタム類、1,3−ジアルキル−2−イミダ
ゾリジノン、テトラアルキル尿素、ヘキサアルキル燐酸
トリアミド等、に代表されるアプロチック有機アミド溶
媒、及びこれらの混合物等が、反応の安定性が高いため
に好ましい。これらの中でもN−メチル−2−ピロリド
ン(以下、NMPと略記)は、特に好ましい。本発明に
おける重合溶媒の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物
1モル当たり0.2〜1kgの範囲が好ましい。
【0016】重合助剤 本発明では、必要に応じて反応を促進させ、高重合度の
PPSをより短時間で得るために、重合助剤を用いるこ
とができる。重合助剤の具体例としては、一般にPPS
の重合助剤として知られているアルカリ金属カルボン酸
塩、ハロゲン化リチウム等を挙げることができる。特に
好ましいものは、アルカリ金属カルボン酸塩である。重
合助剤の使用量は、比較的少量でよい。
【0017】アルカリ金属カルボン酸塩は、一般式R
(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有する
アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキル
アリール基、またはアリールアルキル基である。Mは、
リチリウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及び
セシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは、1〜
3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ
金属カルボン酸塩は、水和物または水溶液としても用い
ることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例と
しては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸
カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチリウ
ム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p
−トルイル酸カリウム、及びそれらの混合物などを挙げ
ることができる。アルカリ金属カルボン酸塩は、有機ア
ミド溶媒中で、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸ア
ルカリ金属塩、及び重炭酸アルカリ金属塩よりなる群か
ら選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ
添加して、反応させることにより形成させてもよい。ア
ルカリ金属カルボン酸塩の中でも、安価で入手し易いこ
とから、特に、酢酸ナトリウムが好ましく用いられる。
【0018】これら重合助剤の使用量は、仕込みアルカ
リ金属硫化物1モルに対し、通常、0.02モル以上、
好ましくは0.02〜0.2モル、より好ましくは0.
03〜0.15モル、特に好ましくは0.04〜0.1
0モルである。0.02モル未満では、効果が不十分で
あり、0.2モル超過では、経済的に不利益である。こ
れら重合助剤は、少なくとも後段重合工程(工程2)に
おける反応系に含有されていればよい。したがって、そ
の添加時期は、前段重合開始前の脱水工程の前か、前段
重合開始時から後段重合途中の間、あるいはこれらの任
意の組合せの時期でよい。
【0019】重合安定剤 重合反応系を安定化し、副反応の防止を目的として重合
安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応
系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。
副反応の一つの目安としてチオフェノールの生成が挙げ
られる、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成
を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ
土類金属水酸化物、及びアルカリ土類金属炭酸塩などの
化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムなどのアルカ
リ金属水酸化物が好ましい。前述のアルカリ金属カルボ
ン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用
する安定剤の一つに入る。
【0020】これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あ
るいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重
合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し
て、通常、0.05〜0.2モル、好ましくは0.05
5〜0.1モル、より好ましくは0.06〜0.09モ
ルの割合で使用する。この割合が少ないと安定化効果が
不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であった
り、粒状ポリマー収率が低下するので好ましくない。重
合安定剤の添加時期は、前段重合開始前の脱水工程の前
か、前段重合開始時から後段重合途中の間、あるいはこ
れらの任意の組合わせの時期でよい。好ましくは脱水工
程の前あるいは前段重合開始時である。なお、脱水操作
時にアルカリ金属硫化物の一部が分解して、硫化水素が
発生する場合、その結果、生成したアルカリ金属水酸化
物も重合安定剤となり得る。
【0021】重合反応 本発明では、有機アミド溶媒中でアルカリ金属硫化物と
ジハロ芳香族化合物とを反応させてPPSを製造する方
法において、該反応を少なくとも下記の工程1及び2で
行なう。前処理工程や後処理工程等の付加的な工程があ
ってもよい。
【0022】<工程1>工程1(前段重合工程)では、
仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.5〜2.0
モルの水を含有する有機アミド溶媒中で、アルカリ金属
硫化物とジハロ芳香族化合物とを170〜270℃の温
度範囲内で反応させ、その際、少なくとも220℃から
240℃までの間を平均0.1〜1℃/分の昇温速度で
昇温させながら反応させ、さらに必要に応じて240〜
270℃の温度範囲内で反応を継続して、ジハロ芳香族
化合物の転化率が70〜98モル%になるようにし、P
PSのプレポリマーを生成させる。
【0023】工程1を開始するに際し、望ましくは不活
性ガス雰囲気下、常温〜220℃、好ましくは100〜
220℃の温度範囲で、有機アミド溶媒にアルカリ金属
硫化物とジハロ芳香族化合物を加える。これらの原料の
仕込み順序は、順不同であってもよく、同時でもさしつ
かえない。アルカリ金属硫化物は、通常、水和物の形で
使用されるが、その含有水量が仕込みアルカリ金属硫化
物1モル当たり0.5モルより少ない場合には、必要量
を添加して補充する。アルカリ金属硫化物の含有水量が
多すぎる場合には、ジハロ芳香族化合物を添加する前
に、有機アミド溶媒とアルカリ金属化合物を含む混合物
を昇温し、過剰量の水を系外に除去する。この操作によ
り水を除去し過ぎた場合には、不足分を添加して補充す
る。
【0024】工程1における反応系の共存水量は、仕込
みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.5〜2.0モ
ル、好ましくは1.0〜1.9モルの範囲である。共存
水量が0.5モル未満では、生成PPSの分解等の望ま
しくない反応が起こり易く、逆に、2.0モルを超過す
ると、重合速度が著しく小さくなったり、有機アミド溶
媒や生成PPSの分解が生じ易くなるので、いずれも好
ましくない。重合は、170〜270℃、好ましくは1
80〜265℃の温度範囲内で行なわれる。重合温度が
低すぎると、重合速度が遅くなり過ぎ、逆に、270℃
を越える高温になると、生成PPSと有機アミド溶媒が
分解を起こし易く、生成するPPSの重合度が極めて低
くなる。
【0025】本発明の方法では、220℃から240℃
までの間を連続的に限定された速度で昇温する。即ち、
220℃から240℃までの温度範囲は、アルカリ金属
硫化物とジハロ芳香族化合物との反応が急激に起こり、
反応熱の発生量が非常に大きくなるため、制御された速
度で昇温する。より具体的には、平均して0.1〜1℃
/分、好ましくは0.15〜0.6℃/分、より好まし
くは0.2〜0.5℃/分の昇温速度で昇温する。昇温
速度が0.1℃/分以下では、反応時間が長くなり効率
的でなく、1℃/分超過では、急激な発熱反応が起こる
ので、いずれも好ましくない。
【0026】ここで、連続的に昇温するとは、二段階以
上の多段階的に昇温する場合をも含むものとする。段階
的に昇温する場合には、急激な発熱反応を避けるため
に、好ましくは三段階以上、より好ましくは四段階以上
の多段階で昇温することが好ましい。反応操作上は、一
定の昇温速度で連続昇温することが特に好ましい。17
0〜220℃までの昇温速度は、任意であるが、急激な
反応を避けるために、1℃/分以下の昇温速度で昇温す
ることが好ましい。また、240℃まで連続的に昇温し
た後、必要に応じて240〜270℃の温度範囲内で反
応を継続することができるが、240℃超過の温度にま
で昇温する場合には、急激な反応を避けるために、1℃
/分以下の昇温速度で昇温することが好ましい。170
〜220℃の温度範囲では、ジハロ芳香族化合物のハロ
ゲン基の反応率を通常0〜45%、好ましくは20〜4
0%、より好ましくは25〜35%とする。220℃に
昇温後、240℃まで連続的に昇温する際のジハロ芳香
族化合物のハロゲン基の反応率は、通常60〜90%、
好ましくは70〜85%になるように反応させることが
望ましい。これらの反応率の設定によって、より安定し
た反応を行なうことができる。
【0027】ジハロ芳香族化合物の使用量(仕込み量)
は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり、通常0.
9〜2.0モル、好ましくは0.95〜1.5モルの範
囲とすることが、高分子量のPPSを得るのに望まし
い。この使用割合が0.9モル未満または2.0モル超
過の場合には、加工に適した高粘度(高重合度)のPP
Sを得ることが困難となるので好ましくない。工程1か
ら工程2に切り換える時点は、系内のジハロ芳香族化合
物の転化率が70〜98モル%に達した時点である。転
化率が70モル%未満では、工程2における後段重合の
際、分解等の望ましくない反応が起こり易く、逆に、転
化率が98モル%を超過すると、後段重合を行なっても
高重合度のPPSを得難い。転化率を85〜95モル%
程度とすることが、安定的に高重合度のPPSが得られ
るので好ましい。
【0028】ここで、ジハロ芳香族化合物(DHAと略
記)の転化率は、以下の式で算出した値である。DHA
残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求める
ことができる。 (a)ジハロ芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対し
モル比で過剰に添加した場合 転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モ
ル)〕/〔DHA仕込み量(モル)−DHA過剰量(モ
ル)〕 (b)上記(a)以外の場合 転化率=〔DHA仕込み量(モル)−DHA残存量(モ
ル)〕/〔DHA仕込み量(モル)〕
【0029】ジハロ芳香族化合物のハロゲン基の反応率
とは、アルカリ金属硫化物の2倍のモル数に対する生成
ハロゲン塩のモル数の割合である。生成ハロゲン塩のモ
ル数は、例えば、硝酸銀滴定法によって求めることがで
きる。工程1では、通常、溶融粘度(310℃、剪断速
度1200/secで測定)が0.1〜30Pa・s程
度の比較的低分子量のPPSが生成する。そこで、この
段階で生成するPPSをプレポリマーと称する。
【0030】<工程2>工程2(後段重合工程)では、
仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり2.1〜10モ
ルの水が存在する状態となるように反応系に水を添加
し、かつ、245〜290℃の温度範囲内で0.5〜1
0時間反応を継続し、ジハロ芳香族化合物の転化率を上
昇させるとともに、工程1で生成したPPSプレポリマ
ーを高分子量PPSに転換する。本発明では、少なくと
も後段重合時に、反応系にアルカリ金属カルボン酸塩等
の重合助剤を仕込むことが、それによって、重合時間を
さらに短縮できたり、高重合度化が可能となるため、好
ましい。
【0031】工程2において、反応系中の共存水量が
2.1モル未満または10モル超過になると、生成PP
Sの重合度が低下する。特に、共存水量が2.2〜7モ
ルの範囲で後段重合を行なうと、高重合度のPPSが得
られ易いので好ましい。工程2での重合温度が245℃
未満では、高重合度のPPSが得られにくく、290℃
を越えると、生成PPSや有機アミド溶媒が分解するお
それがある。特に、250〜270℃の温度範囲が高重
合度のPPSが得られ易いので好ましい。本発明におけ
る後段重合工程は、前段重合工程で生成したPPSプレ
ポリマーの単なる分別・造粒の工程ではなく、PPSプ
レポリマーの重合度の上昇を起こさせるためのものであ
る。
【0032】工程2の重合時間は、0.5〜10時間、
好ましくは1〜6時間、より好ましくは1〜5時間であ
る。後段重合工程での重合時間が短過ぎると、低重合度
のPPSしか得られず、逆に、長過ぎても生成PPSや
有機アミド溶媒の分解が起こり易くなる。前段重合工程
から後段重合工程への切り換えは、前段重合工程で得ら
れたスラリーを別の反応容器に移して後段重合工程の条
件にして行なってもよいし、前段重合工程と後段重合工
程とを同一の反応容器中で重合条件を変更することによ
って行なってもよい。水を添加する時期は、前段重合工
程の後、反応系を後段重合工程の温度にする直前でもよ
いし、あるいは後段重合工程の温度にしてからでもよい
が、その後、0.5時間以上重合を続けることが望まれ
る。本発明の二段階工程による重合反応により、通常1
Pa・s以上、好ましくは30〜100Pa・s、場合
によっては、それ以上の溶融粘度(310℃、剪断速度
1200/secで測定)を有する高分子量PPSを得
ることができる。
【0033】後処理 本発明の重合方法における後処理は、常法によって行な
うことができる。例えば、後段重合反応の終了後、冷却
した生成物スラリーをそのまま、あるいは水分などで稀
釈してから濾別し、水洗濾過を繰り返して乾燥すること
により、PPSを得ることができる。生成物スラリー
は、高温状態のままでポリマーを篩分してもよい。ま
た、上記濾別・篩分後、PPSを重合溶媒と同じ有機ア
ミド溶媒やケトン類、アルコール類等の有機溶媒、及び
高温水で洗浄処理してもよい。PPSを酸や塩化アンモ
ニウムのような塩で処理することもできる。
【0034】生成PPS 本発明の方法により、平均粒径150〜3000μm
で、計量等の各種取り扱いや成形加工が容易な粒状PP
Sが収率よく得ることができる。本発明の方法により得
られるPPSは、直鎖状に高分子量化されているので、
射出成形品のみならず、押出成形により、シート、フィ
ルム、繊維、パイプ等の押出成形品に成形することがで
きる。また、本発明の方法により、白色度に優れ、調色
が容易な高品位のPPSを得ることが可能である。本発
明の方法により得られるPPSは、単独でも使用できる
が、所望により各種無機充填剤、繊維状充填剤、各種合
成樹脂を配合して用いてもよい。
【0035】
【実施例】以下、実施例及び比較例により、本発明につ
いてさらに具体的に説明する。なお、物性の測定は以下
の通りである。 (1)粒状ポリマーの収率 重合反応終了後の生成物は、次のように目開きの異なる
スクリーンで篩別し、分別した。目開き径150μm
(100メッシュ)のスクリーンで捕集したものを「粒
状ポリマー」とし、100メッシュを通過したが、目開
き径38μm(390メッシュ)のスクリーンで捕集し
たものを「微粉体」とした。粒状ポリマーと微粉体の収
率は、脱水工程後のオートクレーブ中の硫化ナトリウム
が全てPPSに転化したと仮定した重量(理論量)を基
準とした。硫化ナトリウムがジハロ芳香族化合物よりも
過剰に仕込まれた場合は、すべてPPSに転化すること
はあり得ない場合もあるが、その場合でも一応硫化ナト
リウムの量を基準として考えることとする。 (2)ポリマーの白色度 ポリマーの白色度は、YI(黄色度)で表す。YIは、
JIS K−7103に準拠して測定する。ポリマー
2.2gを内径32mm、高さ5mmのアルミリングに
入れ、油圧成形機で圧縮する。このようにして得られた
タブレットについて、その表面のYI(黄色度)を色差
計で測定する。
【0036】[実施例1]20Lのオートクレーブに、
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)6000g、4
6.20重量%の硫化ナトリウム(Na2S)を含む硫
化ナトリウム・5水塩結晶を3800g、及び純度97
%の水酸化ナトリウム9.5gを仕込み、窒素ガスで置
換後、約3.5時間かけて、撹拌機の回転数を250r
pmで撹拌しながら、徐々に200℃まで昇温して、水
1542g、NMP1116g、及び0.440モルの
硫化水素を留出させた。缶内の硫化ナトリウム(仕込み
硫化ナトリウム)は、22.05モルとなり、硫化ナト
リウム1モル当たりの水酸化ナトリウムの量は、0.0
5モルとなった。
【0037】上記脱水工程の後、170℃まで冷却し、
p−ジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略記)33
71g(1.04モル/硫化ナトリウム1モル)と、N
MP3385g、及び水109gを加えたところ(缶内
の合計水量=1.5モル/硫化ナトリウム1モル)、缶
内温度は140℃になった。引き続き撹拌機の回転数2
50rpmで撹拌しながら180℃まで30分かけて昇
温し、さらに、180℃から220℃までの間は、60
分間かけて昇温した(ジハロ芳香族化合物のハロゲン基
の反応率は、29%となった)。次いで、220℃から
240℃まで間を60分間かけて連続昇温(平均昇温速
度0.33℃/分)した(ジハロ芳香族化合物のハロゲ
ン基の反応率は、78%となった)。さらに、240℃
から260℃までの間を30分かけて昇温し(平均昇温
速度0.67℃/分)、前段重合を行なった。別途、同
じ手順で前段重合を行ない、得られた重合スラリーをサ
ンプリングし、残存p−DCB量をガスクロマトグラフ
法によって測定した。そして、前記の転化率の算出式
(a)に従って転化率を求めたところ、91.8%であ
った。
【0038】前段重合終了後、ただちに撹拌機の回転数
を400rpmに上げ、水449gを260℃で圧入し
た(缶内の合計水量=2.7モル/硫化ナトリウム1モ
ル)。水圧入後、缶内温度は243℃まで低下したが、
255℃まで昇温し、その温度で4時間反応させ後段重
合を行なった。後段重合時のp−DCBの転化率は、1
00%であった。前段重合工程における重合温度220
℃の時点から後段重合終了までの合計時間は、約6時間
であった。後段重合終了後、反応混合物を室温付近まで
冷却してから、内容物を100メッシュのスクリーンで
粒状ポリマーを篩別し、アセトン洗いして、さらに水洗
を3回行い、洗浄ポリマーを得た。この洗浄ポリマーを
2%塩化アンモニウム水溶液に浸漬し、40℃で30分
間処理した後、水洗した。粒状ポリマーは、105℃で
3時間乾燥した。このようにして得られた粒状PPSポ
リマーは、平均粒子径528μm、収率81%、溶融粘
度64Pa・sであった。このポリマーのYI値は、6
であった。
【0039】[実施例2]水酸化ナトリウム30.8g
をさらに加えた他は実施例1と同様に仕込み、脱水工程
を行なったところ、水1603g、NMP1046g、
及び0.458モルのH2Sが留出した。缶内の硫化ナ
トリウム(仕込み硫化ナトリウム)は、22.04モル
となり、硫化ナトリウム1モルに対する水酸化ナトリウ
ムの量は、0.075モルとなった。次いで、実施例1
と同様にして、p−DCB3369g(1.04モル/
硫化ナトリウム1モル)、NMP3311g、及び水1
70gを加えたところ(缶内の合計水量=1.5モル/
硫化ナトリウム1モル)、缶内温度は約140℃になっ
た。180℃まで30分かけて昇温し、さらに180℃
から220℃までの間を60分間かけて昇温した(ジハ
ロ芳香族化合物のハロゲン基の反応率は、約30%とな
った)。そして、220℃から240℃までの間を60
分間かけて連続昇温(平均昇温速度0.33℃/分)し
た(ジハロ芳香族化合物のハロゲン基の反応率は、約8
0%となった)。さらに、240℃から260℃までの
間を30分かけて昇温(平均昇温速度0.67℃/分)
し、前段重合を行なった。実施例1と同様にして求めた
前段重合終了時のp−DCBの転化率は、91.7%で
あった。
【0040】前段重合終了後、ただちに撹拌機の回転数
を400rpmに上げ、水488gを圧入し(缶内の合
計水量=2.8モル/硫化ナトリウム1モル)、265
℃に昇温し、2時間反応させ、後段重合を行なった。後
段重合時のp−DCBの転化率は、100%であった。
前段重合220℃から後段重合終了までの合計温度は約
4時間であった。実施例1と同様に生成物を処理し、平
均粒子径485μm、溶融粘度49Pa・sの粒状ポリ
マーを収率92%で得た。このポリマーのYI値は、5
であった。
【0041】[実施例3]実施例1と同一の処方で仕込
み、脱水工程を行なったところ、水1532g、NMP
1040g、及び0.481モルのH2Sが留出した。
缶内の有効硫化ナトリウム(仕込み硫化ナトリウム)
は、22.01モルとなった。次いで、実施例1と同様
にして、p−DCB3365g(1.04モル/硫化ナ
トリウム1モル)、NMP3294g、及び水99gを
加えたところ(缶内の合計水量=1.5モル/硫化ナト
リウム1モル)、缶内温度は約140℃になった。18
0℃まで30分かけて昇温し、さらに180℃から22
0℃までの間を60分間かけて昇温した(ジハロ芳香族
化合物のハロゲン基の反応率は、約30%となった)。
そして、220℃から240℃までの間を60分間かけ
て連続昇温(平均昇温速度0.33℃/分)した(ジハ
ロ芳香族化合物のハロゲン基の反応率は、約80%とな
った)。次いで、240℃から260℃までの間を30
分かけて昇温し(平均昇温速度0.67℃/分)、前段
重合を行なった。前段重合終了時のp−DCBの転化率
は、91.7%であった。
【0042】前段重合終了後、ただちに撹拌機の回転数
を400rpmに上げ、酢酸ナトリウム無水物(純度9
8.5%)183g(0.1モル/硫化ナトリウム1モ
ル)と水448gからなる混合液を圧入し(缶内の合計
水量=2.8モル/硫化ナトリウム1モル)、低下した
缶内温度を255℃に昇温し、4時間反応させ、後段重
合を行なった。後段重合時のp−DCBの転化率は、1
00%であった。前段重合の220℃から後段重合終了
までの合計時間は、約6時間であった。実施例1と同様
に生成物を処理し、平均粒子径1630μm、溶融粘度
78Pa・sの粒状ポリマーを収率87%で得た。この
ポリマーのYI値は、7であった。
【0043】[比較例1]実施例2と同様に仕込み、脱
水工程及び前段重合を行なった。ただし前段重合は、2
20℃に昇温した後、この温度に保持して行なった。p
−DCBの反応率が実施例1と同様の91.8%になる
には、4時間30分が必要であった。前段重合終了後、
ただちに撹拌機の回転数を400rpmに上げ、水48
8gを圧入した(缶内の合計水量=2.8モル/硫化ナ
トリウム1モル)。重合缶内の温度は210℃まで低下
した。別の実験から、この水の添加期間中、プレポリマ
ーの析出が観察された。実施例1と単位時間当たり同じ
熱量を加えても、210℃から255℃に昇温するのに
約1時間かかった。255℃で4時間反応させ、後段重
合を行った。後段重合時のp−DCBの転化率は、10
0%であった。前段重合の220℃から後段重合終了ま
での合計時間は9時間30分であった。実施例1と同様
に生成物を処理し、平均粒子径550μm、溶融粘度5
1Pa・sの粒状ポリマーを収率83%で得た。このポ
リマーのYI値は、13であった。
【0044】[比較例2]比較例1と同様にして、仕込
み、脱水工程、前段重合、及び後段重合を行なった。た
だし、後段重合時間を1時間に短縮した。前段重合の2
20℃から後段重合終了までの合計時間は6時間30分
であった。実施例1と同様に生成物を処理し、平均粒子
径500μm、溶融粘度30Pa・sの粒状ポリマーを
収率71%で得た。
【0045】[比較例3]比較例1と同様にして、仕込
み、脱水工程、及び前段重合を行なった。ただし、重合
時間を短縮をするため、前段重合の220℃から240
℃までの間を昇温速度2℃/分で昇温した。しかし、途
中から急激な発熱反応のため、昇温速度が急に速くな
り、反応温度の制御が不可能になった。圧力も急上昇し
たため、前段重合を緊急停止した。
【0046】これらの実施例及び比較例の結果から、本
発明のように特定の条件下で重合反応を行なうことによ
り、高分子量かつハンドリング性に優れる粒状ポリマー
を短時間(実施例1〜3と比較例1の比較)で高収率
(実施例1〜3と比較例2の比較)で製造可能なことが
わかる。また、特定量の重合安定剤(実施例2)や重合
助剤(実施例3)を用いると、さらに収率が向上し、重
合度やポリマー粒子径を大きくすることが可能である。
本発明の方法によれば、ポリマーの白色度がより高いポ
リマーが得られる。
【0047】
【発明の効果】本発明によれば、高分子量かつ粒状のP
PSを短時間に効率よく、しかも高収率で製造する方法
が提供される。したがって、本発明の製造方法は、工業
的規模でのPPSの製造方法として好適である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機アミド溶媒中でアルカリ金属硫化物
    とジハロ芳香族化合物とを反応させてポリフェニレンス
    ルフィドを製造する方法において、該反応を少なくとも
    下記の工程1及び2により行うことを特徴とするポリフ
    ェニレンスルフィドの製造方法。 (1)工程1:仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり
    0.5〜2.0モルの水を含有する有機アミド溶媒中
    で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを17
    0〜270℃の温度範囲内で反応させ、その際、少なく
    とも220℃から240℃までの間を平均0.1〜1℃
    /分の昇温速度で昇温させながら反応させ、さらに必要
    に応じて240〜270℃の温度範囲内で反応を継続し
    て、ジハロ芳香族化合物の転化率が70〜98モル%に
    なるようにし、ポリフェニレンスルフィドのプレポリマ
    ーを生成させる工程、及び (2)工程2:仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり
    2.1〜10モルの水が存在する状態となるように、反
    応系に水を少なくとも235℃以上の温度で添加すると
    ともに、245〜290℃の温度範囲内で0.5〜10
    時間反応を継続して、前記プレポリマーを高分子量ポリ
    フェニレンスルフィドに転換する工程。
  2. 【請求項2】 工程1において、170〜220℃の温
    度範囲内でジハロ芳香族化合物のハロゲン基の反応率が
    0〜45%になるよう反応させた後、少なくとも220
    ℃から240℃までの間を平均0.1〜1℃/分の昇温
    速度で昇温して、ジハロ芳香族化合物のハロゲン基の反
    応率が60〜90%になるまで反応させる請求項1に記
    載の製造方法。
  3. 【請求項3】 工程1及び工程2の少なくとも一方にお
    いて、反応系に、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属
    炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、及びアルカリ土類
    金属炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化
    合物を、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.0
    5〜0.2モルの割合で存在させる請求項1〜2に記載
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 工程1及び工程2の少なくとも一方にお
    いて、反応系に、アルカリ金属カルボン酸塩及びハロゲ
    ン化リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の
    化合物を、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.
    02〜0.2モルの割合で存在させる請求項1ないし3
    のいずれか1項に記載の製造方法。
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