JP6418852B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド Download PDF

Info

Publication number
JP6418852B2
JP6418852B2 JP2014181358A JP2014181358A JP6418852B2 JP 6418852 B2 JP6418852 B2 JP 6418852B2 JP 2014181358 A JP2014181358 A JP 2014181358A JP 2014181358 A JP2014181358 A JP 2014181358A JP 6418852 B2 JP6418852 B2 JP 6418852B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sulfide
alkali metal
polymerization
pas
dihaloaromatic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2014181358A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016056232A (ja
Inventor
鈴木 賢司
賢司 鈴木
義克 佐竹
義克 佐竹
鈴木 康弘
康弘 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
Priority to JP2014181358A priority Critical patent/JP6418852B2/ja
Priority to US14/845,420 priority patent/US9422402B2/en
Publication of JP2016056232A publication Critical patent/JP2016056232A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6418852B2 publication Critical patent/JP6418852B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/14Polysulfides
    • C08G75/16Polysulfides by polycondensation of organic compounds with inorganic polysulfides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/02Polythioethers

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

本発明は、ジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、「PAS」ということがある。」)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気特性、寸法安定性などに優れたエンジニアリングプラスチックである。PASは、押出成形、射出成形、圧縮成形などの一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であるため、電気・電子機器、自動車機器等の広範な分野において汎用されている。
PASの代表的な製造方法としては、p−ジクロロベンゼン(以下、「PDCB」ということがある。)等のジハロ芳香族化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ということがある。)等の極性有機溶媒を含む水性混合物として、加熱下(例えば175〜350℃程度の温度条件下)で重合反応させてPPS等のPASを得る方法が知られている(特許文献1及び特許文献2)。また、高分子量のPASを製造するために、重合温度及び重合反応系に存在する水分量を変更して重合反応を行う2段階重合法も知られている(特許文献3及び特許文献4)。
ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源とを、極性有機溶媒を含む水性混合物として、加熱下で重合反応させるPASの製造方法によれば、PASの生成は、概略以下の反応が進行することによる。すなわち、ジハロ芳香族化合物としてPDCB(「Cl−φ−Cl」と表記する。)を使用し、アルカリ金属を含有する硫黄源として硫化ナトリウム(NaS)を使用し、極性有機溶媒としてNMPを使用する場合、以下の(式1);
(式1) nCl−φ−Cl+nNaS → ―(−φ−S−)−+2nNaCl
に従って、PPS〔―(−φ−S−)−〕が生成し、同時に、得られるPPSの2n倍モル量という多量のNaClが副生物として生成する。このため、重合装置(重合缶)当りの生産量を高めにくい。さらに、副生物であるNaClは、NMPに溶解しないため通常重合反応系で固体として存在するので、撹拌されることにより重合装置、例えば重合缶の壁面に付着して汚染したり、該壁面を摩耗したりなどの原因ともなっている。また、NaClは洗浄により除去することが必要であるので、後処理工程の負担も大きなものがある。
なお、PASの代表的な製造方法としては、この他に、ジフェニルスルフィドと塩化硫黄を鉄、アルミニウム、アルミニウムアマルガム、ルイス酸、プロトン酸より成る群より選ばれた少なくとも1種の物質の存在下縮合させてPPS(ポリチオエーテル類)を得る方法(特許文献5)や、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルフィドと4,4’−ジハロジフェニルスルフィドを炭酸アルカリまたは重炭酸アルカリの存在下、200〜400℃の温度に保持して溶媒中で重合させることを特徴とするPPSの製法(特許文献6)、更にはチオフェノール類とハロゲン化芳香族化合物とを重合させる方法などが知られているが、これらのPASの製造方法は、硫黄源を異にするもので、上に説明した反応機構と全く異なる機構により重合反応が進行する。
ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源とを、極性有機溶媒を含む水性混合物として、加熱下で重合反応させるPASの製造方法においては、重合速度を高めるために、可能な限り重合温度を高めることが求められるが、より高温の極性有機溶媒中での重合反応を伴うことなどから、厳密な条件選定が求められる。例えば、ジハロ芳香族化合物、アルカリ金属を含有する硫黄源及び極性有機溶媒との使用割合の最適化等が行われている。重合温度を高めると、種々の副反応が生じやすくなる。例えば、極性有機溶媒であるNMPが開環して、該開環物がジハロ芳香族化合物であるPDCBと反応して生成する副反応生成物〔クロロフェニルメチルアミノブタン酸(以下、「CPMABA」ということがある。)等〕が、PASの分子末端に結合すること等によって重合反応の進行が阻害され、高分子量のPASを得ることができなくなったり、PASの原料であるジハロ芳香族化合物(PDCB)の前記副反応による消費によって収率の低下を招いたりするおそれがある。
ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源との重合反応は、重合反応系に存在する水分量によって影響を受ける。特に、高い反応速度を得るために高温下で重合反応を行う場合、多量の水とアルカリ金属を含有する硫黄源が重合反応系に存在していると、分解反応等の異常反応が起こりやすい。したがって、重合反応に供するジハロ芳香族化合物、アルカリ金属を含有する硫黄源及び極性有機溶媒及び水との混合物(以下、「仕込み混合物」ということがある。)を調製する工程(以下、「仕込み工程」ということがある。)に先だって、脱水工程が必要とされることが多い。脱水工程においては、アルカリ金属を含有する硫黄源及び極性有機溶媒とを、例えば150〜210℃程度の温度まで昇温しながら常圧下に、水の不要量を系外に追い出す。アルカリ金属を含有する硫黄源、例えば、硫化ナトリウム(NaS)等は結晶水を有することが多いので、通常は該結晶水を減少させることも必要となる。多くの場合実施が必要とされる脱水工程は、重合反応を行う装置を使用して実施され、また、重合時間の20〜50%を占める場合もあり、PASの生産性を高めるために解決すべき問題の一つともなっている。
耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気特性、寸法安定性などに優れたエンジニアリングプラスチックであるPPS等のPASが広範な分野において汎用されるようになるに従って、一層効率的なPASの製造方法が求められるようになっている。すなわち、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源とを、極性有機溶媒である有機アミド溶媒中で重合させるPASの製造方法において、CPMABA等の副反応生成物の生成を抑制し、より高収率で、実用上の有用性に優れるPASを製造する方法、更には、PAS製造の副生成物であるNaClの生成量を抑制することができる重合方法や、脱水工程を省略可能とすることにより、短時間で生産性が高く、PASを製造することができる方法も求められている。
特公昭45−3368号公報 特公平6−51793号公報 特開昭61−7332号公報 特開昭63−39926号公報 特公昭46−27255号公報 特開昭64−33138号公報
本発明の課題は、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させるPPS等のポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法において、より高収率で、副生成物であるNaClの生成量を抑制するとともに、脱水工程を省略可能とすることにより、短時間で生産性が高く、実用上の有用性に優れるPASを製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の側面によれば、(1)式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法が提供される。
また、本発明の前記第1の側面によれば、発明の具体的な態様として、以下(2)〜(16)のPASの製造方法が提供される。
(2)前記式中、Arはフェニレン基であり、Xは塩素である前記(1)のPASの製造方法。
(3)前記式中、n=1〜5である前記(1)または(2)のPASの製造方法。
(4)アルカリ金属を含有する硫黄源が、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物の一方または両方を含む前記(1)〜(3)のいずれかのPASの製造方法。
(5)下記工程1:
工程1:有機アミド溶媒、ジハロ芳香族スルフィド化合物、アルカリ金属を含有する硫黄源、及び水を含有する仕込み混合物を調製する仕込み工程を備える前記(1)〜(4)のいずれかのPASの製造方法。
(6)下記工程2及び工程3:
工程2:仕込み混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上のプレポリマーを生成させる前段重合工程;及び、
工程3:有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態で、加熱して重合反応を継続する後段重合工程;
を備える前記(5)のPASの製造方法。
(7)仕込み工程において、アルカリ金属を含有する硫黄源1モル当り0.9〜1.5モルのジハロ芳香族スルフィド化合物を含有する仕込み混合物を調製する前記(5)または(6)のPASの製造方法。
(8)仕込み工程において、有機アミド溶媒1kg当り0.1〜7モルを含有する仕込み混合物を調製する前記(5)〜(7)のいずれかのPASの製造方法。
(9)仕込み工程において、アルカリ金属を含有する硫黄源1モル当り0.75〜1.2モルのアルカリ金属水酸化物を含有する仕込み混合物を調製する前記(5)〜(8)のいずれかのPASの製造方法。
(10)前段重合工程において、仕込み工程で調製した仕込み混合物を温度150〜270℃に加熱して重合反応させる前記(6)〜(9)のいずれかのPASの製造方法。
(11)前段重合工程において、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が50〜100%のプレポリマーを生成させる前記(6)〜(10)のいずれかのPASの製造方法。
(12)後段重合工程において、温度245〜290℃に加熱して重合反応を継続する前記(6)〜(11)のいずれかのPASの製造方法。
(13)相分離剤の存在下で行う前記(1)〜(12)のいずれかのPASの製造方法。
(14)相分離剤が、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(13)のPASの製造方法。
(15)後段重合工程において、反応系内がポリマー濃厚相とポリマー希薄相とに相分離した状態で重合反応を継続する前記(6)〜(14)のいずれかのPASの製造方法。
(16)仕込み工程の前に、有機アミド溶媒及びアルカリ金属を含有する硫黄源を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程を配置する前記(5)〜(15)のいずれかのPASの製造方法。
更に本発明の別の側面によれば、以下(17)のPASが提供される。
(17)式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするPASの製造方法によって得られる
平均粒径10〜5000μm、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度0.1〜3000Pa・s、かつ、窒素含有量500ppm以下であるPAS。
本発明の第1の側面によれば、式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするPASの製造方法であることにより、
ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させるPPS等のPASの製造方法において、より高収率で、副生成物であるNaClの生成量を従来の半分以下に低減するとともに、脱水工程を省略可能とすることにより、短時間で生産性が高く、実用上の有用性に優れるPASを製造する方法が提供されるという効果が奏される。
また、本発明の別の側面によれば、
式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするPASの製造方法によって得られる
平均粒径10〜5000μm、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度0.1〜3000Pa・s、かつ、窒素含有量500ppm以下であるPASであることにより、不純物が少なく高品質で取扱い性に優れるPASを提供することができるという効果が奏される。
I.ポリアリーレンスルフィドの製造方法
本発明のPASの製造方法は、
式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とする。
1.ジハロ芳香族スルフィド化合物:
本発明のPASの製造方法は、ジハロ芳香族化合物として、
式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物を使用する。
〔芳香族基〕
本発明で使用される前記式で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物において、Ar、すなわち置換基を有してもよい芳香族基における芳香族基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、好ましくはフェニレン基である。複数のArは同じでも異なってもよい。Arにおける置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基等の官能基等が挙げられ、芳香族基が有する置換基は1または複数でよく、該置換基が複数である場合、置換基が結合位置は特に限定されない。なお、Ar、すなわち置換基を有してもよい芳香族基は、いうまでもなく置換基を有しない芳香族基でもよい。
〔ArとSの結合〕
前記式で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物において、−Ar−S−における、Ar、すなわち置換基を有してもよい芳香族基に対するS原子の結合の位置は、特に限定されないが、反応性等の観点から、p−位の位置関係となるものであることが好ましい。
〔nの数〕
前記式で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物において、n=1〜10である。n<1であると、PASを製造するためのジハロ芳香族化合物として、実質的にジハロ芳香族スルフィド化合物を含まないこととなる結果、より高収率で、副生成物であるNaClの生成量を従来の半分以下に低減するとともに、脱水工程を省略可能とすることにより、短時間で生産性が高く、実用上の有用性に優れるPASを製造することができない。n>10であると、ジハロ芳香族スルフィド化合物の調製が工業上及び/または商業上難しく、取扱い性が困難となる。前記式で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物としては、先に説明した観点等から、n=1〜5が好ましく、n=1または2がより好ましく、更に好ましくはn=1である。したがって、特に好ましいジハロ芳香族スルフィド化合物は、X−Ar−S−Ar−Xで表されるジハロスルフィドである(2つのArは同じでも異なってもよい。)。
〔−Ar−S−〕
先に説明したように、前記式で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物において、複数のArは同じでも異なってもよいものであるが、更にnが2以上である場合には、複数の−Ar−S−は、同じでも異なってもよい。すなわち、本発明で使用されるジハロ芳香族スルフィド化合物としては、芳香族基、置換基及びS原子の結合位置が同一であるジハロ芳香族スルフィド化合物でもよいし、芳香族基、置換基及び/またはS原子の結合位置において構造が異なる−Ar−S−の組み合わせとすることもできる。
〔ハロゲン原子(X)、及びArとXの結合〕
本発明で使用されるジハロ芳香族スルフィド化合物において、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれる元素を指し、反応性及び取扱い性等の観点から、塩素が好ましい。1種のジハロ芳香族スルフィド化合物が有する2つのハロゲン原子は、同じでも異なってもよく、さらに2種以上のジハロ芳香族スルフィド化合物が有する各2つのハロゲン原子は、同じでも異なってもよい。反応性及び取扱い性等の観点から、すべてのハロゲン原子が塩素(Cl)であることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、Ar、すなわち置換基を有してもよい芳香族基に対する、2つのハロゲン原子(X)の結合の位置は、特に限定されないが、反応性等の観点から、Arが結合するS原子に対してp−位の位置関係となるものであることが好ましく、更に2つのハロゲン原子(X)がいずれも、Arが結合するS原子に対してp−位の位置関係となるものであることがより好ましい。
〔ジハロ芳香族スルフィド化合物の具体例〕
以上説明したところから、本発明で使用されるジハロ芳香族スルフィド化合物としては、n=1であるビス(4−ハロフェニル)スルフィド、ビス(4’−ハロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)スルフィド、ビス(6−ハロナフタレン−2−イル)スルフィドや、これらの芳香族基の一部または全部が置換基を有するもの等が挙げられる。また、n=2である、1、4−ビス((4−ハロフェニル)チオ)ベンゼン、4,4’−ビス((4’−ハロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)チオ)−1,1’−ビフェニル、2,6−ビス((6−ハロナフタレン−2−イル)チオ)ナフタレンや、これらの芳香族基の一部または全部が置換基を有するもの等が挙げられる。同様に、n=3である、ビス(4−((4−ハロフェニル)チオ)フェニル)スルフィド、ビス(4’−((4’−ハロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)チオ)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)スルフィド、ビス(6−((6−ハロナフタレン−2−イル)チオ)ナフタレン−2−イル)スルフィドや、n=4である1,4−ビス((4−((4−ハロフェニル)チオ)フェニル)チオ)ベンゼン、4,4’−ビス((4’−((4’−ハロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)チオ)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)チオ)−1,1’−ビフェニル、2,6−ビス((6−((6−ハロナフタレン−2−イル)チオ)ナフタレン−2−イル)チオ)ナフタレンや、n=5であるビス(4−((4−((4−ハロフェニル)チオ)フェニル)チオ)フェニル)スルフィド、ビス(4’−((4’−((4’−ハロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)チオ)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)チオ)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)スルフィド、ビス(6−((6−((6−ハロナフタレン−2−イル)チオ)ナフタレン−2−イル)チオ)ナフタレン−2−イル)スルフィド、更にこれらの芳香族基の一部または全部が置換基を有するもの等が挙げられる。反応性及び取扱い性等の観点から、好ましくはn=1または2であるビス(4−ハロフェニル)スルフィドまたは1、4−ビス((4−ハロフェニル)チオ)ベンゼン等が挙げられ、より好ましくはビス(4−クロロフェニル)スルフィドまたは1、4−ビス((4−クロロフェニル)チオ)ベンゼン等が挙げられ、特に好ましくはビス(4−クロロフェニル)スルフィド(「4,4’−ジクロロジフェニルスルフィド」と表記することもある。)である。これらのジハロ芳香族スルフィド化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔ジハロ芳香族スルフィド化合物の調製〕
本発明で使用されるジハロ芳香族スルフィド化合物は、例えば、PDCB等のジハロ芳香族化合物を、水硫化ナトリウムと反応させる以下の(式2);
(式2) 2Cl−φ−Cl+NaSH → Cl−φ−S−φ−Cl+NaCl+HCl
によって調製することができるが、市販のジハロ芳香族スルフィド化合物を購入して入手することができる。
〔他のジハロ芳香族化合物等の使用〕
なお、本発明のPASの製造方法においては、硫黄源と反応するジハロゲン芳香族化合物として、前記式で表される特定のジハロ芳香族スルフィド化合物のみを使用することが好ましいが、本発明の目的を阻害しない限り、該ジハロ芳香族スルフィド化合物以外のジハロ芳香族化合物、例えばPDCB等を、該ジハロ芳香族スルフィド化合物100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下の量で併用してもよい。
2.アルカリ金属を含有する硫黄源:
本発明のPASの製造方法は、硫黄源としてアルカリ金属を含有する硫黄源を使用する。アルカリ金属を含有する硫黄源としては、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物の一方または両方を含む硫黄源を使用することができる。
アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、硫化ナトリウム及び硫化リチウムが好ましい。これらのアルカリ金属硫化物は、通常、水和物として市販され、使用される。水和物としては、例えば、硫化ナトリウム9水塩(NaS・9HO)、硫化ナトリウム5水塩(NaS・5HO)等が挙げられる。アルカリ金属硫化物は、水性混合物として使用してもよい。
アルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で、水硫化ナトリウム及び水硫化リチウムが好ましい。
アルカリ金属硫化物は、硫化水素またはアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、有機アミド溶媒中で、in situで調製することもできる。アルカリ金属硫化物の中には、少量のアルカリ金属水硫化物が含有されていてもよい。アルカリ金属水硫化物の中には、少量のアルカリ金属硫化物が含有されていてもよい。これらの場合、アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物とからなるアルカリ金属を含有する硫黄源の総モル量が、必要により配置する脱水工程後の、重合工程で重合反応に供される硫黄源、すなわち「仕込み硫黄源」になる。アルカリ金属硫化物とアルカリ金属水硫化物とを混合して用いる場合には、当然、両者が混在したものが仕込み硫黄源となる。
硫黄源がアルカリ金属水硫化物を含有するものである場合、アルカリ金属水酸化物を併用する。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムが好ましい。
3.分子量調節剤、分岐・架橋剤:
所望によっては、得られるPASに特定構造の末端を形成したり、また重合反応や分子量を調節したりする等のために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)を併用することができる。得られるPASに分岐または架橋構造を導入するために、3個以上のハロゲン原子が結合したポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物等を併用することも可能である。分岐・架橋剤としてのポリハロ化合物として、好ましくはトリハロベンゼンが挙げられる。
4.有機アミド溶媒:
本発明のPASの製造方法においては、重合反応の溶媒として、非プロトン性極性有機溶媒である有機アミド溶媒を用いる。有機アミド溶媒は、高温でアルカリに対して安定なものが好ましい。有機アミド溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン化合物またはN−シクロアルキルピロリドン化合物;1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。これらの有機アミド溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの有機アミド溶媒の中でも、N−アルキルピロリドン化合物、N−シクロアルキルピロリドン化合物、N−アルキルカプロラクタム化合物、及びN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物が好ましく、特に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチル−ε−カプロラクタム、及び1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられ、NMPが特に好ましい。
5.重合助剤:
本発明のPASの製造方法においては、重合反応を促進させ、高重合度のPASをより短時間で得るために、必要に応じて各種重合助剤を用いることができる。重合助剤の具体例としては、一般にPASの重合助剤として公知の水、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウムなどのアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類、及びこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。有機カルボン酸金属塩としては、アルカリ金属カルボン酸塩が好ましい。アルカリ金属カルボン酸塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、及びこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。アルカリ金属カルボン酸塩としては、安価で入手しやすいことから、酢酸ナトリウムが特に好ましい。
本発明のPASの製造方法に用いられる重合助剤の使用量は、化合物の種類により異なるが、仕込み硫黄源1モルに対し、通常0.01〜5モル、好ましくは0.015〜2モル、より好ましくは0.02〜1.8モル、特に好ましくは0.025〜1.7モルの範囲である。重合助剤が、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸塩、及びアルカリ金属ハライドである場合には、その使用量の上限は、仕込み硫黄源1モルに対し、好ましくは0.7モル以下、より好ましくは0.6モル以下であることが望ましい。
6.相分離剤
本発明のPASの製造方法において、重合反応を促進させ、高重合度のPASを短時間で得るために、または相分離を生起し粒状PASを得るために、各種相分離剤を用いることができる。相分離剤とは、それ自体でまたは少量の水の共存下に、有機アミド溶媒に溶解し、PASの有機アミド溶媒に対する溶解性を低下させる作用を有する化合物である。相分離剤自体は、PASの溶媒ではない化合物である。
相分離剤としては、相分離剤として機能することが知られている公知の化合物を用いることができる。相分離剤には、前記の重合助剤として使用される化合物も含まれるが、ここでは、相分離剤とは、相分離状態で重合反応を行う工程、すなわち相分離重合工程で相分離剤として機能し得る量比、または重合終了後その存在下で相分離を生起せしめるに十分な量比、で用いられる化合物を意味する。相分離剤の具体例としては、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム等のアルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類、及び水から群より選ばれる少なくとも1種などが好ましく挙げられる。有機カルボン酸金属塩としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩が好ましい。これらの相分離剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの相分離剤の中でも、コストが安価で、後処理が容易な水、または水とアルカリ金属カルボン酸塩などの有機カルボン酸金属塩との組み合わせが、特に好ましい。
相分離剤として水を使用する場合でも、相分離重合を効率的に行う観点から、水以外の他の相分離剤を重合助剤として併用することができる。相分離重合工程において、水と他の相分離剤とを併用する場合、その合計量は、相分離を起こすことができる量であればよい。相分離剤は、少なくとも一部は、重合反応成分の仕込み時から共存していてもかまわないが、重合反応の途中で相分離剤を添加して、又は重合反応後に相分離を形成するのに充分な量に調整することが望ましい。
本発明のPASの製造方法が、相分離剤の存在下で行うものである場合、用いられる相分離剤の使用量は、相分離剤の種類により異なるが、有機アミド溶媒1kgに対し、通常0.01〜30モル、好ましくは0.015〜20モル、より好ましくは0.02〜15モル、特に好ましくは0.15〜12モルの範囲である。
II.ポリアリーレンスルフィドの製造工程
本発明のPASの製造方法は、
式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とする。すなわち、本発明においては、有機アミド溶媒中で、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを重合反応させる重合工程が必須である。
本発明のPASの製造方法によれば、PASを生成する重合反応は、概略以下のように反応が進行する。すなわち、ジハロ芳香族スルフィド化合物として、Ar=フェニレン基、X=塩素(Sに対してp−位に結合)、n=1であるビス(4−クロロフェニル)スルフィド(先に説明したとおり、「4,4’−ジクロロジフェニルスルフィド」と表記することもある。以下、「DCDPS」ということがあり、「Cl−φ−S−φ−Cl」と表記することがある。)を使用し、アルカリ金属を含有する硫黄源として硫化ナトリウム(NaS)を使用し、有機アミド溶媒としてNMPを使用する場合、以下の(式3);
(式3) n/2・Cl−φ−S−φ−Cl+n/2・Na
→ ―(−φ−S−)−+nNaCl
に従って、PPS〔―(−φ−S−)−〕が生成し、得られるPPSに対してn倍モル量のNaClが副生物として生成する。先に説明したとおり、ジハロ芳香族化合物としてPDCBを使用する場合は、得られるPPSの2n倍モル量のNaClが副生物として生成するので、副生成物であるNaCl量が半減している。したがって、本発明のPASの製造方法によれば、重合缶当りのPASの生産量を高めることが可能となる。
本発明のPASの製造方法における重合方法自体としては、本発明を損なわない限り、いかなる重合方法でもよい。一般には、粒状PASを製造する重合方法としては、大別して(i)重合工程が相分離重合工程を含み、相分離重合後、徐冷する方法、(ii)重合反応後、相分離剤を添加し、徐冷する方法、(iii)塩化リチウム等の重合助剤を用いる方法、及び(iv)反応缶気相部分の冷却を行う方法等がある。
中でも、重合条件を制御して、相分離剤の存在下、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とが混在する相分離状態で行う重合反応の工程(以下、「相分離重合工程」と略記することがある。)を含む重合方法により粒状PASを製造した場合は、重合度の高い粒状PASが得られるため、分離工程での篩分効率が高くなり、収率や生産性が向上する。したがって、重合度の高い粒状製品のPASの収率を高める上で有利な重合方法となっている。この場合の重合工程を、以下詳述する。
1.仕込み工程
PASの製造方法に含まれる重合工程は、以下の仕込み工程を経て実施することができる。仕込み工程(工程1)は、有機アミド溶媒、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物、及び、アルカリ金属を含有する硫黄源、及び水を含有する仕込み混合物を調製する工程であり、前記の混合物の成分に、更に必要に応じてアルカリ金属水酸化物とを添加して、これらの所定組成の混合物、すなわち仕込み混合物を調製する。
前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の使用量(仕込み混合物中における使用割合)は、アルカリ金属を含有する硫黄源1モルに対し、通常0.9〜1.5モル、好ましくは0.92〜1.1モル、より好ましくは0.95〜1.05モルの比率(以下、「仕込みモル比」ということがある。)である。アルカリ金属を含有する硫黄源に対する前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の仕込みモル比が大きくなりすぎると、高分子量のPASを生成させることが困難になる。他方、アルカリ金属を含有する硫黄源に対する前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の仕込みモル比が小さくなりすぎると、分解反応が生じやすくなり、安定的な重合反応の実施が困難となる。
仕込み工程において、アルカリ金属水酸化物を添加する場合は、アルカリ金属水酸化物を、アルカリ金属を含有する硫黄源1モル当り0.75〜1.2モル含有する仕込み混合物を調製することが好ましく、同じく0.8〜1.1モル含有するものとすることがより好ましい。また、仕込み工程において、有機アミド溶媒1kg当り0.1〜7モルの水を含有する仕込み混合物を調製することが好ましく、0.2〜5モルの水を含有するものとすることがより好ましい。
さらに、仕込み工程において、有機アミド溶媒の量は、アルカリ金属を含有する硫黄源1モル当り、通常0.1〜10kg、好ましくは0.15〜2kg、より好ましくは0.2〜1kgの範囲とすることが望ましい。
2.重合工程
本発明のPASの製造方法においては、仕込み工程(工程1)に続いて重合工程を行う。重合工程は、1段階で行うことも可能であるが、前段重合工程と後段重合工程との2段階工程で行うことが好ましく、具体的には、仕込み混合物を好ましくは温度150〜270℃、より好ましくは温度180〜265℃に加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上、好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%のプレポリマーを生成させる前段重合工程(工程2)、及び、温度245〜290℃、より好ましくは温度255〜285℃に加熱して、通常は有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態で、重合反応を継続する後段重合工程(工程3)を備えることが好ましい。また、重合工程における反応時間は、一般に10分間〜20時間、好ましくは30分間〜10時間である。
本発明のPASの製造方法は、
式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることにより、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源との重合反応が速く進行するので、従来より短時間で高分子量のPASを得ることができる。さらに、従来PASの製造方法において問題となっていた、有機アミド溶媒であるNMPが開環して、該開環物がジハロ芳香族化合物と反応することにより、原料であるジハロ芳香族化合物が副反応に消費されることや、該開環物や該副反応生成物がPASの分子末端と反応することにより重合反応の進行を阻害されることが、著しく抑制される。したがって、PASの原料であるジハロ芳香族スルフィド化合物の副反応への消費や重合反応の進行の阻害による収率の低下が、従来より著しく抑制される。
本発明のPASの製造方法は、相分離剤の存在下で行うことが好ましく、特に、重合工程において、有機アミド溶媒中で、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、相分離剤の存在下で、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とに相分離した状態で重合反応を行う重合工程を含んでもよい。相分離剤としては、先に述べた水や、相分離剤として機能することが知られている化合物等が好ましく用いられる。
また、重合工程において、有機アミド溶媒中で、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、170〜270℃の温度で重合反応させ、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上となった時点で、重合反応混合物中に、相分離剤を添加して、重合反応系内に相分離剤を存在させ、次いで、重合反応混合物を昇温し、245〜290℃の温度で、相分離剤の存在下の重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とに相分離した状態で重合反応を継続させることが、好ましい。
さらには、重合工程において、有機アミド溶媒中で、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを重合反応させて、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上、好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、相分離剤の存在下、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とに相分離した状態で重合反応を継続させる後段重合工程;を含む少なくとも2段階の重合工程により重合反応を行うことが好ましい。
具体的には、重合工程において、有機アミド溶媒中で、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒1kg当り0.1〜7モルの水が存在する状態で、150〜270℃の温度で重合反応させて、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が80〜100%のポリマーを生成させる前段重合工程;並びに、有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態となるように重合反応系内の水量を調整するとともに、245〜290℃の温度に加熱することにより、重合反応系内に生成ポリマー濃厚相と生成ポリマー希薄相とに相分離した状態で重合反応を継続させる後段重合工程;を含む少なくとも2段階の重合工程により重合反応を行うことがより好ましい。
前記のジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率は、以下の式により算出した値である。前記のジハロ芳香族スルフィド化合物を硫黄源よりモル比で過剰に添加した場合は、下記式
転化率=〔〔前記のジハロ芳香族スルフィド化合物仕込み量(モル)−前記のジハロ芳香族スルフィド化合物残存量(モル)〕/〔前記のジハロ芳香族スルフィド化合物仕込み量(モル)−前記のジハロ芳香族スルフィド化合物過剰量(モル)〕〕×100
によって転化率を算出する。それ以外の場合には、下記式
転化率=〔〔前記のジハロ芳香族スルフィド化合物仕込み量(モル)−前記のジハロ芳香族スルフィド化合物残存量(モル)〕/〔前記のジハロ芳香族スルフィド化合物仕込み量(モル)〕〕×100
によって転化率を算出する。
前段重合工程における反応系の共存水量は、先に説明したように、有機アミド溶媒1kg当り0.1〜7モルであり、好ましくは0.2〜5モル、より好ましくは1〜4.5モルである。これは、アルカリ金属を含有する硫黄源(仕込み硫黄源)1モル当り、通常0.01〜5.5モル、好ましくは0.05〜5モル、より好ましくは0.1〜4.5モルの範囲に該当することが多い。
前段重合工程において、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、通常0.1〜30Pa・sのポリマー(「プレポリマー」ということがある。)を生成させることが望ましい。
後段重合工程は、前段重合工程で生成したポリマー(プレポリマー)の単なる分別・造粒の工程ではなく、該ポリマーの重合度の上昇を起こさせるためのものである。
後段重合工程では、相分離剤として、水を使用することが特に好ましく、有機アミド溶媒1kg当り、3.5〜20モル、好ましくは、4.1〜15モル、より好ましくは4.2〜10モルの水が存在する状態となるように、相分離剤としての水を添加して重合反応系内の水の量を調整することが好ましい。後段重合工程において、重合反応系中の共存水分量が有機アミド溶媒1kg当り、3.5モル以下または20モル超過になると、生成するPASの重合度が低下することがある。特に、共存水分量が4.3〜9モルの範囲で後段重合を行うと、高重合度のPASが得られやすいので好ましい。
より好ましい製造方法においては、少量の相分離剤で重合を実施するために、相分離剤として、水と水以外の他の相分離剤を併用することができる。この態様においては、重合反応系内の水量を、有機アミド溶媒1kg当り0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モル、更に好ましくは0.3〜8モル、特に好ましくは0.5〜5モルの範囲内に調整するとともに、水以外の他の相分離剤を、有機アミド溶媒1kg当り0.01〜1モルの範囲内で存在させることが好ましい。水と併用することが特に好ましい他の相分離剤は、有機カルボン酸金属塩、中でも、アルカリ金属カルボン酸塩であり、その場合は、有機アミド溶媒1kg当り、水を0.1〜15モル、好ましくは0.5〜10モル、特に好ましくは0.8〜8モルの範囲内で使用するとともに、アルカリ金属カルボン酸塩を0.001〜0.7モル、好ましくは0.02〜0.6モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルの範囲内で使用すればよい。
後段重合工程での重合温度は、245〜290℃の範囲であり、重合温度が245℃未満では、高重合度のPASが得られにくく、290℃を越えると、PASや有機アミド溶媒が分解するおそれがある。特に、250〜270℃の温度範囲が高重合度のPASが得られやすいので好ましい。
3.所望により配置してもよい脱水工程
本発明のPASの製造方法においては、従来、仕込み工程に先立って、アルカリ金属を含有する硫黄源及び極性有機溶媒とを、例えば150〜210℃程度の温度まで昇温しながら常圧下に、水の不要量を系外に追い出すために実施されていた脱水工程を行うことなく、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源との重合反応が速い速度で進行する。したがって、本発明のPASの製造方法においては、脱水工程は必須の工程ではない。その結果、PASの製造方法において、脱水工程に費やされていた時間が節約されるので、設備及びエネルギーの大幅な節約が期待される。
ただし、例えばアルカリ金属を含有する硫黄源、例えば、硫化ナトリウム(NaS)等に含有される結晶水(水和水)や水媒体、副生水などからなる水分を所望の範囲内になるまで減少させるためなどの目的で、所望によっては、仕込み工程に先立って、脱水工程を配置してもよい。
脱水工程を配置する場合は、望ましくは不活性ガス雰囲気下、有機アミド溶媒とアルカリ金属を含有する硫黄源とを含む混合物を加熱して反応させ、該混合物を含有する系内から、蒸留により、水を含む留出物の少なくとも一部を系外へ排出する方法により実施する。脱水工程では、重合反応系の共存水分量が、有機アミド溶媒1kgに対して、通常0.1〜7モル、好ましくは0.2〜5モル、より好ましくは1〜4.5モルになるまで脱水する。脱水工程を配置する場合は、脱水工程後重合工程開始前の硫黄源を「仕込み硫黄源」と呼ぶ。脱水工程で水分量が少なくなり過ぎた場合は、重合工程の前に水を添加して所望の水分量に調節してもよい。
4.後処理工程(分離工程、洗浄工程、回収工程等):
本発明の製造方法において、重合反応後の後処理工程は、常法によって行うことができる。例えば、重合反応の終了後、生成したPASを含有するスラリーを高温状態のまま、または冷却した後、所望により水等で希釈してから、篩分等によりPASを濾別する分離工程、次いで、分離したPASについて、重合溶媒と同じ有機アミド溶媒やケトン類(例えば、アセトン)、アルコール類(例えば、メタノール)等の有機溶媒や高温水による洗浄と濾過を繰り返す洗浄工程、その後乾燥することにより、PASを回収する回収工程などを行うことができる。生成したPASを、酸や塩化アンモニウムのような塩で処理することもできる。
本発明のPASの製造方法によれば、粒状ポリマーを生成させることもできるため、スクリーンを用いて篩分する方法により粒状ポリマーを反応液から分離することで、副生物やオリゴマーなどから容易に分離することができるので好ましい。また、本発明のPASの製造方法によれば、重合反応によって副生するNaClを粒状ポリマーや排液から洗浄除去するために要する負荷も大幅に軽減される。
III.ポリアリーレンスルフィド
本発明のPASの製造方法によれば、副生成物の生成が抑制され、不純物が少ない高品質のPASを得ることができる。すなわち、本発明によれば、
式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするPASの製造方法によって得られる
平均粒径10〜5000μm、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度0.1〜3000Pa・s、かつ、窒素含有量500ppm以下であるPASを得ることができる。
本発明のPASは、平均粒径が、通常10〜5000μm、好ましくは30〜4000μm、より好ましくは50〜3000μmであり、かつ、温度310℃、せん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が、通常0.1〜3000Pa・s、好ましくは0.5〜2000Pa・s、より好ましくは1〜1000Pa・s、更に好ましくは5〜500Pa・sであることにより取扱い性に優れるPASを高収率で得ることができる。なお、PASの溶融粘度は、乾燥ポリマー約20gを用いてキャピログラフを使用して、所定の温度及びせん断速度条件で測定することができる。
また、本発明のPASは、不純物が少ない高品質のPASであり、PASポリマー中の窒素含有量が500ppm以下のPASである。PASポリマー中の窒素含有量は、ポリマー試料約1mgを精秤し、微量窒素硫黄分析計を用いて元素分析を行うことにより測定することができる。PASポリマー中の窒素含有量は、より好ましくは450ppm以下、更に好ましくは400ppm以下である。PASポリマー中の窒素含有量の下限値は、もちろん0ppmであるが、多くの場合10ppm程度を下限値としてもよい。本発明のPASの製造方法によれば、不純物が少ない高品質のPASを、90質量%を超える高い収率で得ることができる。PASの収率は、脱水工程後の反応缶中に存在する有効硫黄源のすべてがPASポリマーに転換したと仮定したときのポリマー質量(理論量)を基準値として、この基準値に対する実際に回収したPASポリマー質量の割合を算出し、ポリマーの収率とする(単位:質量%)。本発明のPASの製造方法によれば、PASの収率を、91質量%以上、更には92質量%以上とすることができる。PASの収率の上限値は、もちろん100質量%であるが、通常99.5質量%程度である。
本発明のPASの製造方法により得られるPASは、そのまま、または酸化架橋させた後、単独で、または所望により各種無機充填剤、繊維状充填剤、各種合成樹脂を配合し、種々の射出成形品やシート、フィルム、繊維、パイプ等の押出成形品に成形することができる。本発明の製造方法により得られたPASは、色調が良好である。また、本発明の製造方法により得られたPASのコンパウンドは、揮発分の発生量が少なく、揮発分の抑制が期待される電子機器などの分野にも好適である。これらの用途に使用するPASとしては、PPSが特に好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に限られるものではない。各種の特性または物性は以下の測定方法は、以下のとおりである。
(1)ポリマーの収率
PASポリマー(以下、単に「ポリマー」ということがある。)の収率は、仕込み工程に供給した硫黄源(所望により脱水工程を配置する場合は、脱水工程後の反応缶中に存在する硫黄源)のすべてがポリマーに転換したと仮定したときのポリマー質量(理論量)を基準値として、この基準値に対する実際に回収したポリマー質量の割合を算出し、ポリマーの収率とした(単位:質量%)。
(2)溶融粘度
乾燥ポリマー約20gを用いて、東洋精機株式会社製キャピログラフ1−Cにより溶融粘度を測定した。この際、キャピラリーは、1mmφ×10mmLのフラットダイを使用し、設定温度は、310℃とした。ポリマー試料を装置に導入し、5分間保持した後、せん断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した(単位:Pa・s)。
(3)硫黄源の量
硫黄源水溶液中の硫化ナトリウム(Na2S)及び水硫化ナトリウム(NaSH)は、ヨージメトリー法により硫黄分の全量を求め、中和滴定法によりNaSHの量を求めた。硫黄分の全量からNaSHの量を差し引いた残りをNaSの量とした。
(4)窒素含有量
ポリマー中の窒素含有量は、ポリマー試料約1mgを精秤し、微量窒素硫黄分析計(アステック株式会社製、機種「ANTEK7000」)を用いて元素分析を行って求めた(単位:ppm)。
[実施例1]
反応缶に、市販のDCDPS131g(0.51モル)、濃度62.2質量%の水硫化ナトリウム45.9g(0.51モル)、濃度73.3質量%の水酸化ナトリウム28.9g(0.53モル)、NMP508gを投入し(この時点でのNMP1kgに対する水の存在量は4モルである。)、反応缶に備え付けた撹拌機で撹拌しながら、温度180℃で2時間反応させ、その後60分間で230℃に昇温したところ、DCDPSの転化率が99%のプレポリマーが生成された(前段重合工程)。続いて、水27.5gを圧入し、265℃に昇温して2.5時間反応させて(後段重合工程)、PASを製造した。この際、生成した塩化ナトリウムは59.5gであった。
反応終了後、反応混合物を室温付近まで冷却してから、反応液を100メッシュのスクリーンに通して粒状PASを篩分した。分離したPASのポリマーについて、アセトン洗浄を2回、水洗を3回行った後、濃度3.0質量%の酢酸による酸洗浄を1回、水洗を4回行い、洗浄PASを得た。この洗浄ポリマーを温度105℃で13時間乾燥し、粒状PASを得た。得られたPASの粒状ポリマーの収率は91.3%で収量は100.4g、平均粒径は1474μm、溶融粘度は150Pa・s、窒素含有量は137ppmであった。
[比較例1]
i)市販のDCDPSに代えて、市販のPDCB149.9g(1.02モル)を使用し、濃度62.2質量%の水硫化ナトリウム91.8g(1.01モル)、濃度73.3質量%の水酸化ナトリウム57.8g(1.06モル)を投入したこと、ii)脱水工程として、温度140〜195℃まで約2時間、大気圧下で加熱を行ったこと(NMP1kgに対する水の存在量は4モル)、iii)前段重合工程を温度220℃で1時間、220℃から230℃への昇温で0.5時間、230℃で1.5時間反応させるものとしたこと(PDCBの転化率90%のプレポリマーが生成した。)、及び、iv)後段重合工程を温度265℃で3時間反応させるものとしたことを除いて、実施例1と同様にして、PASを製造した(この際、生成した塩化ナトリウムは117.9gであった。)。次いで、粒状PASの篩分、洗浄、水洗を行った。得られたPASの粒状ポリマーの収率は89%で収量は97.0g、平均粒径は1299μm、溶融粘度は140Pa・s、窒素含有量は658ppmであった。
実施例1と比較例1から、式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とする本発明のPASの製造方法によれば、前記のジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源との反応速度が速く、また、従来問題となっていたNMPの開環物とジハロ芳香族化合物(PDCB)との反応生成物(CPMABA)の生成がないことなどから、高純度のPASを高い収率で得られることが分かった。また、PASとともに生成するNaClの生成量が半減するので、PAS生産量の増加が期待されるとともに、脱塩を含む後処理工程の負担が軽減され、生産効率の向上が期待される。
本発明は、式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするPASの製造方法であることにより、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させるPASの製造方法において、より高収率で、副生成物であるNaClの生成量を従来の半分以下に低減するとともに、脱水工程を省略可能とすることにより、短時間で生産性が高く、実用上の有用性に優れるPASを製造する方法を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、式: X−(−Ar−S−)−Ar−X
(式中:Arは置換基を有してもよい芳香族基を表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
で表されるジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするPASの製造方法によって得られる
平均粒径10〜5000μm、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度0.1〜3000Pa・s、かつ、窒素含有量500ppm以下であるPASであることにより、不純物が少なく高品質で取扱い性に優れるPASを提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (16)

  1. 下記工程1:
    工程1:有機アミド溶媒、ジハロ芳香族スルフィド化合物、アルカリ金属を含有する硫黄源、及び水を含有する仕込み混合物を調製する仕込み工程を備え、
    前記ジハロ芳香族スルフィド化合物が、式:
    X−(−Ar−S−)−Ar−X
    (式中:Arはフェニレンを表し、Xはハロゲン原子を表す。n=1〜10)
    で表される化合物であり、
    前記ジハロ芳香族スルフィド化合物と、アルカリ金属を含有する硫黄源とを、有機アミド溶媒中で重合させることを特徴とするポリフェニレンスルフィドの製造方法であり、
    ただし、少なくとも1つのアリーレンスルフィドセグメントと、少なくとも1つのアリーレンスルフィドスルホンセグメントとからなり、
    前記アリーレンスルフィドセグメントが下記式:
    00 −Ar (R) n0 −S−Ar (R n0 ―X 01
    (式中、X 00 及びX 01 は、それぞれフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択されるハロゲンであり、Ar 及びAr は、それぞれアリーレン基であり、R及びR は、それぞれ、水素及び炭化水素基から選択され、前記炭化水素基が、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及びアリール基からなる群より選択され、前記n0が0〜4である。)
    で表されるジハロ芳香族スルフィドに由来し、
    前記アリーレンスルフィドスルホンセグメントが、ジハロ芳香族スルホンに由来する、ランダムコポリマーが、前記ポリフェニレンスルフィドから除かれる、製造方法
  2. 前記式中、Xは塩素である請求項1記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記式中、n=1〜5である請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  4. アルカリ金属を含有する硫黄源が、アルカリ金属硫化物またはアルカリ金属水硫化物の一方または両方を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  5. 下記工程2及び工程3:
    工程2:仕込み混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上のプレポリマーを生成させる前段重合工程;及び、
    工程3:有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態で、加熱して重合反応を継続する後段重合工程;
    を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  6. 仕込み工程において、アルカリ金属を含有する硫黄源1モル当り0.9〜1.5モルのジハロ芳香族スルフィド化合物を含有する仕込み混合物を調製する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  7. 仕込み工程において、有機アミド溶媒1kg当り0.1〜7モルの水を含有する仕込み混合物を調製する請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  8. 仕込み工程において、アルカリ金属を含有する硫黄源1モル当り0.75〜1.2モルのアルカリ金属水酸化物を含有する仕込み混合物を調製する請求項乃至のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  9. 前段重合工程において、仕込み工程で調製した仕込み混合物を温度150〜270℃に加熱して重合反応させる請求項乃至のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  10. 下記工程2及び工程3:
    工程2:仕込み混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上のプレポリマーを生成させる前段重合工程;及び、
    工程3:有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態で、加熱して重合反応を継続する後段重合工程;
    を備え、
    前段重合工程において、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が50〜100%のプレポリマーを生成させる請求項乃至のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  11. 下記工程2及び工程3:
    工程2:仕込み混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上のプレポリマーを生成させる前段重合工程;及び、
    工程3:有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態で、加熱して重合反応を継続する後段重合工程;
    を備え、
    後段重合工程において、温度245〜290℃に加熱して重合反応を継続する請求項乃至10のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  12. 相分離剤の存在下で行う請求項1乃至11のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  13. 相分離剤が、有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、アルカリ金属ハライド、アルカリ土類金属ハライド、リン酸アルカリ金属塩、アルコール類、パラフィン系炭化水素類、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項12記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  14. 下記工程2及び工程3:
    工程2:仕込み混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族スルフィド化合物の転化率が30%以上のプレポリマーを生成させる前段重合工程;及び、
    工程3:有機アミド溶媒1kg当り3.5〜20モルの水が存在する状態で、加熱して重合反応を継続する後段重合工程;
    を備え、
    後段重合工程において、反応系内がポリマー濃厚相とポリマー希薄相とに相分離した状態で重合反応を継続する請求項乃至13のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  15. 仕込み工程の前に、有機アミド溶媒及びアルカリ金属を含有する硫黄源を含有する混合物を加熱して、該混合物を含有する系内から水を含む留出物の少なくとも一部を系外に排出する脱水工程を配置する請求項乃至14のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
  16. 得られる前記ポリフェニレンスルフィドの平均粒径が10〜5000μmであり、温度310℃及びせん断速度1216sec −1 で測定した溶融粘度が0.1〜3000Pa・sであり、窒素含有量が500ppm以下である、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のポリフェニレンスルフィドの製造方法。
JP2014181358A 2014-09-05 2014-09-05 ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド Expired - Fee Related JP6418852B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014181358A JP6418852B2 (ja) 2014-09-05 2014-09-05 ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド
US14/845,420 US9422402B2 (en) 2014-09-05 2015-09-04 Method of producing polyarylene sulfide and polyarylene sulfide

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014181358A JP6418852B2 (ja) 2014-09-05 2014-09-05 ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016056232A JP2016056232A (ja) 2016-04-21
JP6418852B2 true JP6418852B2 (ja) 2018-11-07

Family

ID=55436913

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014181358A Expired - Fee Related JP6418852B2 (ja) 2014-09-05 2014-09-05 ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド

Country Status (2)

Country Link
US (1) US9422402B2 (ja)
JP (1) JP6418852B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101940547B1 (ko) 2016-12-23 2019-01-22 주식회사 엘지화학 폴리페닐렌 설파이드의 제조방법 및 이로부터 제조된 고 점도 폴리페닐렌 설파이드
KR102251791B1 (ko) * 2018-10-26 2021-05-13 주식회사 엘지화학 폴리아릴렌 설파이드의 제조 방법
US11407861B2 (en) 2019-06-28 2022-08-09 Ticona Llc Method for forming a polyarylene sulfide
EP4045567A1 (en) * 2019-10-15 2022-08-24 Solvay Specialty Polymers USA, LLC. Poly(arylene sulfide) polymers and corresponding polymer compositions and articles
EP4045568A1 (en) * 2019-10-15 2022-08-24 Solvay Specialty Polymers USA, LLC. Poly(arylene sulfide) polymers and corresponding polymer compositions and articles
US11319441B2 (en) 2019-12-20 2022-05-03 Ticona Llc Method for forming a polyarylene sulfide
WO2021192413A1 (ja) 2020-03-24 2021-09-30 株式会社クレハ ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP7463838B2 (ja) 2020-05-19 2024-04-09 Dic株式会社 ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法および洗浄方法
CN112574414B (zh) * 2020-12-09 2022-02-01 浙江大学 一种聚芳硫醚树脂的合成方法

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3322834A (en) 1963-11-27 1967-05-30 Phillips Petroleum Co Process for production of diaryl and di(alkaryl) sulfides
US3524835A (en) 1963-11-27 1970-08-18 Phillips Petroleum Co Heat treatment of poly(arylene sulfide) resins
US3354129A (en) 1963-11-27 1967-11-21 Phillips Petroleum Co Production of polymers from aromatic compounds
JPS453368B1 (ja) 1964-11-27 1970-02-04
JPS4627255B1 (ja) 1967-04-25 1971-08-07
JPS617332A (ja) 1984-06-20 1986-01-14 Kureha Chem Ind Co Ltd 高分子量ポリアリ−レンスルフイドの製造法
US4645826A (en) 1984-06-20 1987-02-24 Kureha Kagaku Kogyo Kabushiki Kaisha Process for production of high to ultra-high molecular weight linear polyarylenesulfides
JPH07121985B2 (ja) 1986-08-04 1995-12-25 呉羽化学工業株式会社 ポリアリ−レンスルフイドの製造法
US4767841A (en) 1987-02-24 1988-08-30 Phillips Petroleum Company Arylene sulfide polymer preparation from dehydrated admixture comprising sulfur source, cyclic amide solvent and water
JPS6433138A (en) 1987-07-29 1989-02-03 Seitetsu Kagaku Co Ltd Production of polyphenylene sulfide
US5268449A (en) * 1992-11-16 1993-12-07 Phillips Petroleum Company Random copolymers of poly(arylene sulfide)s and process therefor
JP4700277B2 (ja) * 2003-01-21 2011-06-15 株式会社クレハ ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法
JP5276247B2 (ja) * 2004-02-18 2013-08-28 東レ株式会社 ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法
JP2005298669A (ja) * 2004-04-12 2005-10-27 Polyplastics Co ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物及びその成形品
CN102105512B (zh) * 2008-07-22 2013-01-23 株式会社吴羽 末端卤基含量降低了的聚芳撑硫醚的制造方法
JP6136292B2 (ja) * 2013-01-25 2017-05-31 Dic株式会社 ポリアリーレンスルフィドの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
US9422402B2 (en) 2016-08-23
US20160068636A1 (en) 2016-03-10
JP2016056232A (ja) 2016-04-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6418852B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィド
JP5623277B2 (ja) 粒状ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP5731196B2 (ja) 末端ハロゲン基含量が低減されたポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP3568054B2 (ja) ポリフェニレンスルフィドの製造方法
JP6077175B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP5221877B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP6517337B2 (ja) 粒状ポリアリーレンスルフィドを製造する方法、及び粒状ポリアリーレンスルフィド
US10647818B2 (en) Polyarylene sulfide production method and polyarylene sulfide
JPWO2011145428A1 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法、及びポリアリーレンスルフィド
JP6419311B2 (ja) 微粉ポリアリーレンスルフィドを製造する方法及び微粉ポリアリーレンスルフィド
JP6295379B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドを製造する方法及びポリアリーレンスルフィド
WO2004060973A1 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法及び洗浄方法、並びに洗浄に使用した有機溶媒の精製方法
KR20170093935A (ko) 폴리아릴렌 설파이드의 제조 방법, 및 폴리아릴렌 설파이드
JP7394987B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP6889271B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP7357695B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
WO2020121785A1 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP2020196845A (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170418

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180126

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180206

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180406

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180925

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181009

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6418852

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees