JPH08174380A - 工作機械の熱変位補正方法及びその装置 - Google Patents
工作機械の熱変位補正方法及びその装置Info
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Abstract
械の熱変位補正方法及びその装置を提供する。 【構成】 発熱源の影響を受ける機体10の温度変化を
温度センサS1 ,S2 により検出し、この検出された温
度変化を用いて、工作機械1の熱変位の時定数と略同じ
時定数を有する温度変化を演算し、この演算された温度
変化に対応して変化する熱変位に基づいて加工誤差を補
正する。
Description
法及びその装置に関する。
例えば主軸の軸受のころがり摩擦熱や、切削部分からの
発熱など数多い。これらの熱は機体各部に伝導して機体
を変形させるが、この機体の変形は加工精度に大きく影
響する。そこで、これら各種原因による機体の熱変位を
予測して熱変位による誤差の分をサーボ系にフィードバ
ックして補正する補正方法やその装置が種々提案されて
いる。
械の運転に伴う熱変位を如何に正確に見込むかが重要で
あり、そのために種々の試みがなされている。例えば、
主軸の回転数等の運転条件から熱変位を予測するもの、
あるいは機体に組込んだ変位センサで直接熱変位を検出
するもの等がある。
及び特開平3−79256号公報で、機体温度から熱変
位を算出する方式の工作機械の熱変位補正方法を提案し
た。この方法における熱変位の算出は、基本的には次式
(1)の原理に基づいている。 ΔL=L×線膨張係数×温度変化 ……(1) ここで、ΔL:機体構成部分の熱変位 L:機体構成部分の長さ である。
補正後の加工精度としては、20乃至30〔μm〕程度
が限界である。ところが、近年の工作機械ユーザーから
は、補正後の精度として10〔μm〕以下の加工誤差に
抑えることが一般的に要求されている。これは、セラミ
ック材など新素材や、さらに小型化された工作物等を高
精度で加工する必要性があるからである。
の構成部分の長さLを見込み、その温度変化を長さLの
中央位置から検出しているので、温度センサの取付位置
に制約があった。さらに、精度よく熱変位を見込むに
は、機体を細かな構成部分に分割する必要が生じ、それ
ぞれの部分の温度変化を算出するために多数の温度セン
サを要した。また、機体構成部分の長さLの測定や、各
機体構成材料それぞれの線膨張係数の確認作業が必要で
あった。これらは、機体温度から熱変位を算出する方式
の工作機械の熱変位補正装置を実装する上での障害とな
っていた。
は、工作機械と熱的相似の金属片を用いて、その温度を
工作機械を代表する温度と見做して、冷却用噴射空気の
温度を制御することにより、工作機械の熱変位の補正を
する熱変位補正装置が提案されている。しかしながら、
この場合には熱的相似の金属片を別途準備しなければな
らなかった。さらに、特開昭60−9634号公報に
は、Y軸熱変位の特性に合わせた熱的時定数を持った温
度センサを使用する熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置では、熱変位の特性に合わせた熱
的時定数を持つ温度センサの詳細が明らかにされていな
い。
場合、主軸の軸受にかけられている予圧のばらつき、主
軸の取付け場所による温度の伝わり方の違い、及び軸受
潤滑の状態等の理由で、各主軸の伸びに違いが生じるこ
とが多い。そのため、例えば主軸に取付けられた複数の
工作物を同一形状に同時に粗仕上げ加工をしたのち、仕
上げ加工では使用する主軸を1本に限定し、これ以外の
主軸を停止させる。これにより、主軸の発熱を抑えると
ともに使用する主軸の熱変形にのみ着目して熱変位補正
を行ない、仕上げ加工をしていた。この場合、停止中の
主軸の把持する工具が工作物と干渉するのを防止するた
めに、この停止中の工具を予め取外しておく作業も必要
である。したがって、仕上げ加工の作業能率が極めて悪
かった。特開平5−84628号公報には、複数の主軸
を有する工作機械の熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置による熱変位補正には限界があ
り、補正後の加工誤差を限りなく零に近づけることは困
難であった。
されたもので、熱による加工誤差に対する補正を高精度
で行なうことができる工作機械の熱変位補正方法及びそ
の装置を提供することを目的とする。また、本発明の別
の目的は、工作機械の機体構成部分の長さ測定や、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業を不要とし、且つ、実
機を用いた熱変位特性の抽出の実測作業を簡略化するこ
とである。更に、本発明の別の目的は、温度センサの取
付け位置の制約を大幅に緩和すると同時に、少数の温度
センサで熱変位を精度よく見込むことのできる自由度の
高い工作機械の熱変位補正方法及びその装置を提供する
ことである。更に本発明の別の目的は、複数の主軸を有
する工作機械の場合に、複数の工作物を高精度で同時加
工するとともに作業能率を大幅に向上させることであ
る。
め、本発明では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の所定軸方向の伸びによる熱変位又は主軸傾きによる
熱変位を検出すると同時に、機体の適当箇所の温度変化
を温度センサにより検出する。この温度変化と前記熱変
位が時系列的に同じであれば、温度変化と熱変位は単純
にリニアの相関になるので、温度変化から熱変位を容易
に見積もることが可能であることを前提にしている。し
かしながら、機体の適当箇所から検出した温度変化が有
する時定数は、必ずしも所定軸方向の熱変位が有する時
定数と同じではない。そのため、この温度変化のデータ
を適宜加工して前記熱変位が有する時定数に一致させる
手法が求められる。そこで、本発明に係る熱変位補正方
法は、発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検出し、
検出されたこの温度変化を用いて、工作機械の熱変位の
時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算し、算出
されたこの温度変化と前記熱変位との関係を定める関数
を用いて得た熱変位に基づいて加工誤差を補正してい
る。なお、「工作機械の熱変位」とは、理想としては工
具による加工点における熱変位であるが、現実的には、
例えば主軸先端部又は主軸先端部に一時的に装着された
テストバーの適当箇所における熱変位のことである。そ
して、前記補正方法を実現するための熱変位補正装置
は、発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検出する温
度検出手段と、この温度検出手段で検出された前記温度
変化を用いて、工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定
数を有する温度変化を演算する温度演算手段と、この温
度演算手段で算出された前記温度変化と前記熱変位との
関係を定める関数を用いて熱変位を演算する熱変位演算
手段と、この熱変位演算手段で算出された前記熱変位に
基づいて加工誤差を補正する補正手段とを備えている。
位が有する時定数に一致させるデータ加工法の一例とし
て、「ミックス手法」と「ダミー手法」を使用してい
る。ミックス手法では、まず、工作機械に任意の主軸回
転数を与えた際の熱変位を検出する。これと同時に、こ
の熱変位の時定数より小さい温度変化の時定数を持つ箇
所の温度変化と、この熱変位の時定数より大きな温度変
化の時定数を持つ箇所の温度とを検出する。そして、こ
れら少なくとも二箇所の互いに時定数の異なる温度変化
を合成して熱変位の時定数と同じ時定数を有する合成温
度変化を創成する。なお、ミックス手法では、前記合成
温度変化を創成する際に、一旦複数の合成温度変化を創
成し、この複数の合成温度変化を更に合成して、熱変位
の時定数と略同じ時定数を有する合成温度変化を創成し
てもよい。ところで、ミックス手法では、前記合成温度
変化を創成する際に、温度データには時々刻々に温度セ
ンサから得られるデータを直接用いている。そのため、
合成温度変化の精度の信頼性が高い反面、それぞれの温
度変化の時定数の間に位置する熱変位の時定数しか合成
することができない。
任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検出すると同時
に、この熱変位の時定数より小さい温度変化の時定数を
持つ適当箇所の温度変化を検出する。そして、この検出
温度変化より遅れて表われる熱変位の時定数と略同じ時
定数を有する架空の遅れ温度変化を、温度変化に遅れを
見込んだ繰り返し演算により創成する手法である。な
お、ダミー手法では、前記遅れ温度変化を創成する際
に、一旦他の遅れ温度変化を創成し、この遅れ温度変化
に更に遅れを見込んで、熱変位の時定数と略同じ時定数
を有する遅れ温度変化を創成してもよい。このように、
ダミー手法では、温度変化に遅れを見込んだ繰り返し演
算により遅れ温度変化を算出している。したがって、演
算式が簡単である反面、粗い近似計算となり精度の信頼
性に若干欠ける。
有する創成温度変化と熱変位とのリニアな相関は、主軸
回転に伴う主軸頭部の発熱がコラム等に伝わる影響、又
は室温等の他の熱源の影響等による、熱変位の遅れ応答
成分により、徐々に壊れてくる場合がある。そこで、創
成温度変化と熱変位とのあいだのリニアの相関を長時間
維持するために、ミックス手法あるいはダミー手法で創
成した温度変化で見積もった熱変位に、徐々に現われて
くる熱変位の遅れ応答成分を加算して見積もることが行
なわれる。例えば、発熱源の影響を受けて互いに時定数
の異なる温度変化をする少なくとも二箇所から検出した
温度データを用いて、ミックス手法で合成温度変化を創
成するとともに、この合成温度変化とリニアの相関で得
られる熱変位を演算する。そして、先の温度データの一
方あるいは別途検出した比較的穏やかな温度変化をする
箇所から検出した温度データを用いて、温度変化に遅れ
を十分見込んで創成した遅れ温度変化とリニアの相関で
得られる変位の遅れ応答成分を演算する。ミックス手法
とダミー手法との組合せ手法で創成した温度変化による
熱変位の見積もりは、精度の信頼性が高くなるので好ま
しい。また、発熱源近傍の温度が急激に且つ大きく変化
する箇所から検出した温度データを用いて、ダミー手法
で第1の遅れ温度変化を創成するとともに、この遅れ温
度変化とリニアの相関で得られる熱変位を演算する。そ
して、先の温度データあるいは別途検出した比較的穏や
かな温度変化をする箇所から検出した温度データを用い
て、温度変化の遅れを十分見込んで創成した第2の遅れ
温度変化とリニアの相関で得られる変位の遅れ応答成分
を演算する。ダミー手法とダミー手法との組合せ手法で
創成した温度変化による熱変位の見積もりは、ミックス
手法とダミー手法との組合せ手法で創成した温度変化に
よる見積もりよりも、精度の信頼性が若干欠ける。
ー手法とダミー手法を組合せる手法について、主軸頭を
発熱源とするマシニングセンタ(以下、MCと記載)、
又は主軸台内に発熱源を内蔵する数値制御旋盤(以下、
NC旋盤と記載)を例にして詳細に述べる。まず、ミッ
クス手法とダミー手法の組合せでは、MC等を運転し
て、任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検出する。
これと同時に、この熱変位の時定数より小さい温度変化
の時定数を持つノーズ位置、及び前記熱変位の時定数よ
り大きな温度変化の時定数を持つヘッド位置における機
体の温度変化をそれぞれ検出する。そして、ミックス手
法で前記熱変位の時定数と同じ時定数を有する合成温度
変化を創成し、この合成温度変化に対応して変化する熱
変位を演算する。また、ダミー手法とダミー手法の組合
せでは、MC等を運転して、任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を検出する。これと同時に、この熱変位の時
定数より小さい温度変化の時定数を持つノーズ位置にお
ける機体の温度変化を検出する。そして、ダミー手法で
前記熱変位の時定数と同じ時定数を有する遅れ温度変化
を創成し、この遅れ温度変化に対応して変化する熱変位
を演算する。次いで、ミックス手法とダミー手法の組合
せ、及びダミー手法とダミー手法の組合せのいずれの場
合も、以下のダミー手法が更に付加される。即ち、MC
等の前記主軸頭位置で検出された温度変化に遅れを見込
んで、実際の熱変位と、合成温度変化あるいは遅れ温度
変化を用いて先に演算された熱変位とが徐々にずれてい
く変位の遅れ応答成分と略同じ経時特性を有する遅れ温
度変化を繰り返し演算で創成する。この遅れ温度変化に
対応して変化する遅れ応答成分を演算する。
有する時定数に略一致させるデータ加工法を発展させた
ものに「リニアライズ(LINEARIZE)手法」があり、本発
明はこの手法も使用している。リニアライズ手法では、
工作機械に任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検出
する。これと同時に、発熱源の発熱による影響を受けて
温度変化をする機体の適当箇所の温度変化を検出する。
この検出温度変化を用いて前記発熱源における温度変化
を演算する。そして、この発熱源の温度変化を用いて熱
変位の時定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演
算する。なお、リニアライズ手法では、前記創成温度変
化を演算する際に、発熱源における温度変化を用いて一
旦他の創成温度変化を演算し、この創成温度変化を用い
て、熱変位の時定数と同じ時定数を有する創成温度変化
を演算してもよい。リニアライズ手法では、必ずしも熱
変位の時定数よりも小さい温度変化の時定数を持つ箇所
の温度変化を検出する必要がない。このため、温度セン
サを配設する位置の自由度が高い反面、創成温度変化を
演算する手順が若干複雑になる。
合せた手法では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を検出する。これと同時に、発熱源の発熱の
影響を受けて温度変化する機体の適当箇所の温度変化を
検出する。そして、リニアライズ手法で前記熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算し、こ
の創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算する。
次いで、前記検出温度変化又は別途検出した比較的穏や
かな温度変化をする箇所から検出した温度データに遅れ
を見込んで、実際の熱変位と、創成温度変化を用いて先
に演算された熱変位とが徐々にずれていく変位の遅れ応
答成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を繰り返
し演算で創成する。この遅れ温度変化に対応して変化す
る遅れ応答成分を演算する。
定数の一つは熱変位の時定数より小さいことが条件にあ
り、ダミー手法でも検出温度変化の時定数は熱変位の時
定数より小さくなくてはならない。したがって、これら
の手法で創成した温度変化で熱変位を見積もる場合は、
温度変化を検出する位置に制約が生じる。これに対し
て、リニアライズ手法は、検出される温度変化の時定数
の大きさに条件がなく、且つ、一個の発熱源に対して検
出温度は一個でよい。したがって、温度変化に比べて熱
変位が敏感に表われる主軸頭を持つMC及びNC旋盤、
あるいは加工精度に影響を与える発熱源を複数有してい
る工作機械における創成温度の演算に有利である。例え
ば、NC旋盤は、工作物又は工具を把持する主軸と、こ
の主軸を軸支する加工位置側の前軸受及び反加工位置側
の後軸受を介して前記主軸を回転自在に支持する主軸台
と、前記前,後の軸受の間に配設され、前記主軸台に内
蔵されて前記主軸を回転駆動するビルトインモータとを
備えている。そして、NC旋盤では、前記後軸受は前記
主軸を中心軸方向に対して位置決めし、前記前軸受は熱
変位で伸縮する前記主軸を前記中心軸方向に摺動可能に
保持し、発熱源となる前記前,後の軸受及び前記ビルト
インモータの各近傍で温度変化をそれぞれ検出する3本
の温度センサを前記主軸台に取付けた構成になってい
る。このような多熱源を有する工作機械にリニアライズ
手法を適用した場合には、各温度センサによる検出温度
変化を用いて、それぞれの発熱源における温度変化を演
算する。そして、この温度変化を用いて、各発熱源の発
熱影響による熱変位の時定数と同じ時定数を有するそれ
ぞれの創成温度変化を演算する。このようにして演算さ
れた各創成温度変化は、それぞれの発熱源の影響による
熱変位とリニアの相関が成立する。
動モータ等の発熱源から発熱が起こり、これが機体の構
成部分に伝導し、結果として温度変化をきたす。通常の
工作機械では構造材料として鋳鉄又は鋼材を主として用
いている。したがって、温度変化があると、これら構造
材料が持つ線膨張係数に比例した熱変位が各部で発生す
る。これら各部の熱変位が加算されて、工作機械の加工
精度を低下させる。また、工作機械の主軸回転に伴う温
度変化は、発熱源近傍で早く表れるが、ヘッド(主軸
頭),ヘッド取付け部及びコラムなど発熱源から離れる
ほど遅れて表れることになり、それぞれ温度変化の経時
特性が異なる。このため、機体の任意箇所の温度変化と
熱変位とは、通常は直接結びつかない。
えた際の熱変位の時系列データ、及び発熱源の発熱の影
響を受ける機体の適当箇所から検出された温度変化の時
系列データに、近似的に単一の一次遅れ要素のステップ
入力応答関数を当てはめると、変化が飽和する迄の時定
数をそれぞれ抽出することができる。この熱変位の時定
数と温度変化の時定数とのバランスは、主軸回転数の広
い領域にわたって共通する当該工作機械の熱特性を代表
するものになる。そこで、温度変化のデータを適宜加工
して、熱変位が有する時定数に略一致した時定数を有す
る創成温度変化を演算する手法を用いる。すると、この
創成温度変化と熱変位とはリニアな相関が成立するの
で、温度変化から間接的に熱変位をかなり正確に見込む
ことが可能になる。熱変位現象を単一の一次遅れ要素の
温度変化による作用であるとして近似仮定すると、実際
の機体構成の複雑さとの違いによる熱変位見積もり誤差
が生じる。そこで、この誤差成分を更に異なる単一の一
次遅れ要素の温度変化による作用であるとして近似仮定
することによって、同じ作業を繰り返し適用することが
できる。したがって、機体の適当箇所から検出した温度
変化データから熱変位を十分高精度に見込むことができ
る。
抽出するため、予備テストで任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を電気マイクロメータ等を用いて検出する。
これと同時に、発熱源の発熱の影響を受けて温度変化を
する機体の適当箇所の温度変化をサーミスタ温度センサ
等を用いて検出する。次いで、この変化が略飽和するま
でのそれぞれの時系列データに、一次遅れ要素のステッ
プ入力応答関数を当てはめてそれぞれの時定数を抽出す
る。この温度変化のデータを用いて、熱変位の時定数と
同じ時定数を持つ温度変化を創り出すために用意したミ
ックス手法,ダミー手法,リニアライズ手法,あるいは
これらを組合せた手法の一つを適宜選択し、それぞれの
手法において決定される温度変換式の係数を計算する。
選択された手法における温度変換式に、先の温度変化の
時系列データを与えて書き直すと、熱変形と同じ時定数
を持つ創成温度変化になる。この創成温度変化と先の熱
変形データとはリニアの相関が成立し、その傾斜が創成
温度変化から熱変位を算出する比例定数になる。機械稼
動時の熱変位補正では、先に温度変化を検出した箇所か
ら時々刻々検出される温度変化のデータを、先の選択さ
れた手法における温度変換式を用いて、創成温度変化に
随時変換する。次いで、この創成温度変化に、先に算出
された比例定数を掛けて、補正すべき熱変位を求めるこ
とになる。
づいて説明する。 (第1,第2実施例)図1乃至図17は本発明の第1,
第2実施例を説明するための図である。例えば図1に示
す数値制御(NC)工作機械は立形のマシニングセンタ
(MC)1であるが、MC以外の他の種類のNC工作機
械であってもよい。ベッド2上にはコラム3が立設され
ており、コラム3には主軸頭5がZ軸方向に移動可能に
取付けられている。コラム3は、ベッド2上をY軸方向
に移動できるようになっている。主軸頭5には主軸6が
Z軸方向に向けて設けられており、主軸6の先端には工
具7が装着されている。主軸6は、主軸頭5に取付けら
れた主軸モータ4により回転駆動される。ベッド2上に
設けられたテーブル8に載置された工作物9が工具7に
より切削加工される。テーブル8はベッド2上をX軸方
向に移動する。なお、主軸6の軸線方向をZ軸とし、こ
れに直交して直交座標系をなす各方向をX軸,Y軸とす
る。
る温度検出手段が設けられている。第1実施例では、主
軸頭5の主軸前端側のノーズ位置の温度を検出するノー
ズ温度センサS1 と、ノーズ位置より離れた任意の位置
に配置されて主軸頭5の温度を検出するヘッド温度セン
サS2 がそれぞれ取付けられている。温度検出手段とし
ての温度センサS1 ,S2 はどのタイプでもよいが、外
乱に強いサーミスタ温度センサが望ましい。ノーズ温度
センサS1 は、主な発熱源である主軸6の主軸受に近い
ので温度変化が直ぐに表われることとなり、時定数が小
さい。一方、ヘッド温度センサS2は、主軸受より離れ
ているので温度変化はゆっくりと表われ、したがって時
定数が大きい。第2実施例では、前記ノーズ温度センサ
S1 と、発熱源の発熱の影響が機体10にゆっくりと及
ぶ箇所の温度を検出する温度検出手段としての温度セン
サS3が、それぞれ取付けられている。
を説明する。本発明によれば、X,Y,Zの各軸方向の
熱変位に対する補正ができるが、例えばX軸方向につい
ては、コラム3及び主軸頭5がX軸に対して左右対称形
の構造を有しているため、X軸方向の補正は通常必要な
い。以下の説明では、Y軸,Z軸のうち主にZ軸方向の
補正を例にとって説明する。
る。 ΔZ=a・(ΔZ1 +ΔZ2 ) ……(2) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 a :全体補正係数 (この係数“a”は、演算式(2)の結果と実際の精度
との差を修正するための係数) ΔZ1 :Z軸熱変位の即時応答成分 ΔZ2 :Z軸熱変位の遅れ応答成分 である。
に熱変位が予測できる即時応答成分ΔZ1 と、遅れを伴
って熱変位が表われる遅れ応答成分ΔZ2 とを含んでい
る。前記温度変化は、各温度センサで検出されて出力さ
れる温度から基準温度を差引いた温度差として算出され
る。基準温度としては、MC1の電源投入時における1
回目の温度センサの出力、又はこの出力を複数回加算し
たものの平均値、あるいは例えば20〔℃〕のような絶
対基準等が採用される。温度センサ毎の基準温度がRA
M11内に保存される。ところで、工作機械を設置した
環境の温度変化が比較的ゆっくりしたものである場合に
は、室温変化による工作機械全体の熱変形は、工具と工
作物を含めて略相似形に変化する。即ち、このようなゆ
っくりした室温変化では加工誤差は生じないので、この
室温変化を含んだ温度変化から熱変形を予測したもの
は、実際の熱変形とは異なる。したがって、この場合に
は、工作機械のベッド等に別途設けた温度センサで検出
した時々刻々の温度を基準温度として採用し、各温度セ
ンサから出力される温度からこの基準温度を差し引いた
ものを温度変化として使用する。このようにすれば、室
温変化があっても、精度のよい熱変位補正ができる。
時応答成分ΔZ1 のみに基づく演算式を使用することも
できる。又は、式(4)に示すように、遅れ応答成分Δ
Z2のみに基づく演算式を使用することもできる。 ΔZ=a・ΔZ1 ……(3) ΔZ=a・ΔZ2 ……(4)
れる。 ΔZ1 =b・ΔT1 +c・ΔT2 ……(5) ここで、ΔT1:温度センサS1の出力から基準温度を差
引いた温度変化〔℃〕 ΔT2:温度センサS2の出力から基準温度を差引いた温
度変化〔℃〕 b :内部補正係数〔±μm/℃〕 c :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
所に設置された温度センサの出力により機体10の熱変
位を演算する式である。そして、ノーズ温度センサS1
で検出された温度から算出される温度変化ΔT1 と、ヘ
ッド温度センサS2 で検出された温度から算出される温
度変化ΔT2 とから、即時応答成分ΔZ1 を演算するこ
とになる。なお、即時応答成分ΔZ1 の演算には、温度
センサの設置箇所は少なくとも二箇所あればよいが、発
熱源の数に応じて適宜追加される。また、温度センサの
設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受ける箇所ならば、
ノーズ位置とヘッド位置以外の場所であってもよい。
下記の通りである。 ΔZ2 =e・Y1 +f・Y2 ……(6) ここで、e :内部補正係数〔±μm/℃〕 f :内部補正係数〔±μm/℃〕 Y1 :第1の遅れ温度変化〔℃〕 Y2 :第2の遅れ温度変化〔℃〕 である。式(6)は、第1と第2の遅れ温度変化により
機体10の熱変位を演算する式である。
で、内部補正係数fの値は零となる。そして、ヘッド温
度センサS2 で検出された温度の温度変化ΔT2 に遅れ
を見込んで演算した遅れ温度変化Y1 から、遅れ応答成
分ΔZ2 を演算することになる。第2実施例では遅れ温
度変化は2個使用される。ノーズ温度センサS1 で検出
された温度の温度変化ΔT1 に遅れを見込んで演算した
第1の遅れ温度変化Y1と、コラム温度センサS3 で検
出された温度の温度変化ΔT2 に遅れを見込んで演算し
た遅れ温度変化Y2 とから、遅れ応答成分ΔZ2 を演算
することになる。なお、遅れ応答成分ΔZ2 の演算で使
用する温度情報としては、1個又は2個あればよいが、
発熱源の数に応じて適宜追加される。
ク図である。図示するように、各温度センサS1 ,S2
の各出力信号は、回路36,37を介して熱変位補正装
置12のA/D変換器13に入力し、入力したアナログ
信号はここでディジタル信号に変換される。A/D変換
器13からのディジタル信号は演算記憶部14に入力さ
れて、ここで熱変位が演算される。演算された熱変位に
基づいて、補正手段33により加工誤差が補正される。
補正手段33の出力信号は、プログラマブルコントロー
ラ15を介して数値制御装置16に送信され、サーボ系
にフィードバックされて位置補正される。即ち、補正手
段33は、数値制御装置16の移動指令値に外部からオ
フセットを与える外部オフセット手段に、演算結果を出
力する。その結果、例えば直交座標系の原点位置がオフ
セットされて、数値制御装置16は、MC1の工具7の
軌跡を制御する。なお、プログラマブルコントローラ1
5は、数値制御装置16の指令を受けてMC1の動作シ
ーケンスを管理する。
D変換器13を介して演算記憶部14で演算され、その
指令によりRAM11内の各温度センサS1 ,S2 用に
指定されたメモリ番地に書き込まれる。さらにRAM1
1には、各温度センサS1 ,S2 が一定時間毎にサンプ
リングした温度データが記憶されている。この温度デー
タは数値制御装置16の表示部に表示される。ROM1
7には、本発明に係る熱変位を演算するためのプログラ
ムや補正係数等が記憶されている。クロック18は通常
のクロックであり、各温度センサS1,S2 の検出の時
間を決定するためのものである。
S2 で検出された温度の温度変化を用いて、熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する仮想の位置P1 における合
成温度変化を演算する合成温度演算手段31と、この合
成温度演算手段31で演算された合成温度変化に対応し
て変化する即時応答成分ΔZ1 即ち熱変位を演算する熱
変位演算手段32と、この熱変位演算手段32で算出さ
れた熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段33
とを備えている。
補正装置12は、温度センサS2 で検出された温度の温
度変化より遅れて表れる遅れ温度変化を、前記温度変化
に遅れを見込んで演算する遅れ温度演算手段34を、更
に備えている。熱変位演算手段32は、遅れ温度演算手
段34で演算された遅れ温度変化に対応して変化する遅
れ応答成分ΔZ2 を算出し、この遅れ応答成分を先の即
時応答成分ΔZ1 に加算する。補正手段33は、この加
算された合計値即ち熱変位に基づいて加工誤差を補正す
る演算をし、その結果を出力する。また、遅れ温度演算
手段34の最終演算結果と工作機械の電源のオフ時間を
同時に記憶する記憶手段35によって、遅れ温度の演算
が中断した場合の補償を与えている。
本発明の熱変位補正方法は、式(3)に基づく方法であ
る。即時応答成分ΔZ1 に遅れ即時応答成分ΔZ2 を考
慮した式(2)に基づく熱変位補正方法の方が、より高
精度に補正できるので好ましい。
ク図である。第2実施例の熱変位補正方法は、遅れ応答
成分ΔZ2 のみを考慮した場合の式(4)に基づく方法
である。第2実施例にかかる熱変位補正装置12aは、
温度センサS1 で検出された温度の温度変化に遅れを見
込んで、熱変位の時定数と略同じ時定数を有する仮想の
位置P1 における温度変化を演算する第1の遅れ温度演
算手段34aと、この第1の遅れ温度演算手段34aで
演算された第1の遅れ温度変化に対応して変化する遅れ
応答成分ΔZ2 を演算する熱変位演算手段32と、この
熱変位演算手段32で算出された熱変位に基づいて加工
誤差を補正する補正手段33とを備えている。
補正装置12aは、発熱源の発熱の影響が機体10にゆ
っくり及ぶ箇所に設置した温度センサS3 で検出された
温度の温度変化より遅れて表れる遅れ温度変化を、前記
温度変化に遅れを見込んで演算する第2の遅れ温度演算
手段34bを、更に備えている。熱変位演算手段32
は、第2の遅れ温度演算手段34bで演算された遅れ温
度変化に対応して変化する第2の遅れ応答成分を算出
し、この第2の遅れ応答成分を先の遅れ応答成分ΔZ2
に加算する。補正手段33は、この加算された合計値即
ち熱変位に基づいて加工誤差を補正し、その結果を出力
する。第2実施例では、1本の温度センサS1 の出力の
みで熱変位の補正をすることができるが、別途設置した
温度センサS3 の出力を加味した熱変位補正方法の方
が、より高精度に補正できるので好ましい。本第2実施
例においては、第1実施例と同一又は相当機能部分の説
明は省略する。
を図3乃至図13に基づいて説明する。図3は第1実施
例の動作を示すフローチャート、図4は第2実施例の動
作を示すフローチャート、図5はZ軸熱変位の経時変化
を示すグラフ、図6はノーズ位置とヘッド位置で検出さ
れた温度の温度変化と、合成された合成温度変化を示す
グラフである。図7はノーズ温度変化とZ軸熱変位との
関係を示すグラフ、図8はヘッド温度変化とZ軸熱変位
との関係を示すグラフ、図9は合成温度変化に対するZ
軸熱変位を示すグラフである。図10は遅れ温度変化を
算出する手法を説明するグラフ、図11は温度変化から
遅れ応答成分を算出する手法を示すグラフ、図12は演
算されたZ軸熱変位と実測されたZ軸熱変位との関係を
示すグラフ、図13は遅れ温度変化に対するZ軸熱変位
を示すグラフである。
データに基づいて、MC1における例えばZ軸方向の熱
変位の時定数を算出しておく。図5の横軸は時間、縦軸
はZ軸方向の熱変位である。Z軸方向の熱変位の時定数
を算出する場合には、MC1を主軸回転数S(例えば、
S=10,000〔min-1〕)で連続運転する。そして、
主軸6の先端部、又は主軸先端部に一時的に装着された
テストバーの適当箇所における、Z軸方向の熱変位を時
系列データ39として実測する。なお、発熱によって主
軸が傾斜する場合には、例えばテストバーの根元部と先
端部などにおける熱変位を実測するのが好ましい。前記
データ39(図中「○」印)には、通常は室温変化の影
響が含まれているので、室温変化の影響を補正した、飽
和値40(例えば、43〔μm〕)を有する室温補正デ
ータ41(図中「●」印)を演算する。「時定数」と
は、「線形一次遅れシステムにおいて、ステップ状入力
を加えた時、出力が飽和値の63.2%に達するのに要
する時間」である。したがって、室温補正データ41
に、最小二乗法で一次遅れ要素のステップ入力応答関数
を当てはめて、Z軸方向の熱変位時定数τz (例えば、
τz =0.57〔h〕)を得る。
同時にノーズ温度センサS1 とヘッド温度センサS2 で
検出される温度の温度変化のデータに基づいて、それぞ
れの温度変化の時定数を算出する。時定数を算出する手
順は、先のZ軸方向の熱変位の時定数を算出したものと
同じである。図6の横軸は時間、縦軸は温度変化であ
る。図示するように、発熱源に近いノーズ温度変化TN
は速やかに飽和温度変化“A”(A=6.5〔℃〕)に
達するので、そのノーズ温度時定数τN も0.39
〔h〕と小さい。一方、発熱源より遠い位置のヘッド温
度変化TH は遅れて温度変化をする。したがって、飽和
温度変化“B”(B=3.7〔℃〕)に達するのに時間
がかかるので、そのヘッド温度時定数τH は1.31
〔h〕と大きい。
を起動して工具7により工作物9の切削加工を開始する
(ステップ101)。ノーズ位置及びヘッド位置の温度
をそれぞれ検出して(ステップ102)、検出結果を合
成温度演算手段31に入力する。次いで、「ミックス手
法」によりノーズ温度変化TN とヘッド温度変化TH の
各温度変化を合成して、図5に示すZ軸方向の熱変位デ
ータの時定数τZ (τZ=0.57〔h〕)と同じ時定
数を有する仮想の温度変化TZ を演算する。
N 及びヘッド温度変化TH の各温度混合比MNZ,M
HZは、例えば次式により算出される。なお、次式は混合
方法の一つの例であり他にも種々の混合方法がある。こ
れら温度混合比は工作機械毎に固有の値であり、主軸回
転数等運転条件が変わっても値は変わらないので、一度
温度混合比を算出する作業をしておけばよい。 ノーズ温度混合比MNZ =(τH −τZ )/(τH −τN )・(k/A) =(1.31−0.57)÷(1.31−0.39)×(10/6.5) =1.24 ……(7) ヘッド温度混合比MHZ =(τZ −τN )/(τH −τN )・(k/B) =(0.57−0.39)÷(1.31−0.39)×(10/3.7) =0.53 ……(8) ここで、k:任意の係数(ここではk=10とした)で
ある。
軸方向の熱変位の時定数τY =1.15〔h〕を算出す
ると、図6に示すようにY軸方向に関する合成温度変化
TYも同様にして演算できる。この場合のノーズ温度変
化TN 及びヘッド温度変化TH の各温度混合比MNY,M
HYは、次式で算出される。 ノーズ温度混合比MNY =(τH −τY )/(τH −τN )・(k/A) =(1.31−1.15)÷(1.31−0.39)×(10/6.5) =0.27 ……(9) ヘッド温度混合比MHY =(τY −τN )/(τH −τN )・(k/B) =(1.15−0.39)÷(1.31−0.39)×(10/3.7) =2.23 ……(10) ここで、k:任意の係数(ここではk=10とした)で
ある。
(8)で算出された温度混合比MNZ,MHZと各温度変化
TN ,TH とに基づいて、次式により合成温度変化TZ
を演算している(ステップ103)。式(11)は温度
変換式であり、MNZ,MHZはその係数になる。 TZ =MNZ・TN +MHZ・TH =1.24×TN +0.53×TH ……(11)
の横軸はヘッド温度変化TH をそれぞれ示しており、図
7,図8の縦軸はZ軸方向の熱変位を示している。図示
するように、それぞれの温度変化TN ,TH とZ軸熱変
位とは、比例などの対応関係はない。
度変化TZ とZ軸熱変位とは、傾斜α(α=3.88)
を有する直線42で代表されるリニアな相関を持つ領域
が生じる。この傾斜αは、合成温度変化TZ から即時応
答成分ΔZ1 を算出する際の比例定数であり、結局次式
が成立する。 ΔZ1 =α・TZ ……(12) 熱変位演算手段32では、式(12)を用いて、合成温
度変化TZ に対応して変化する即時応答成分ΔZ1 を算
出する(ステップ104)。
かを判別し(ステップ105)、考慮しない場合には、
熱変位演算手段32で演算した結果に基づいて、補正手
段33で加工誤差を補正する。具体的には、例えば直交
座標系の原点位置をオフセットする(ステップ10
6)。その後、補正を終了させるか否か判別し(ステッ
プ107)、終了させる場合にはMC1を停止して(ス
テップ108)、全体の手順が終了する。補正が終了し
ない場合にはステップ102に戻る。
れ応答成分ΔZ2 を考慮する場合には、ヘッド温度セン
サS2 で検出されたヘッド位置の温度を、遅れ温度演算
手段34に入力する。コラム3等は、その質量が大き
く、また主な発熱源である主軸6とも離れているので、
温度変化が遅れるヘッド位置よりさらに遅れて温度変化
が表われる。この遅れ温度変化は、例えば図9では長時
間経過した領域Dで、合成温度変化TZとZ軸熱変位と
のリニアな相関関係に対して、誤差を与えている。
ミー手法」があり、ヘッド温度変化TH よりさらに遅れ
て表われる遅れ温度変化Yの挙動を、ダミーの熱容量C
を設定して見込む。具体的には、微分方程式(13)の
近似解で得られる。 C・dY/dt+Y=TH ……(13)
を示しており、図10より次式が得られる。 Y=Y0 +(dY0 /dt+dY/dt)/2・Δt ……(14)
tを算出して、式(14)に代入すると、遅れ温度変化
Yを算出する式は、次式(15)になる。この式(1
5)は温度変換式であり、符号Cはその係数に相当す
る。式(15)で演算される遅れ温度変化も仮想の温度
変化であり、先の式(11)による合成温度変化と同じ
く創成温度変化の一種である。 Y=[TH0+TH +(C/Δt)・Y0−Y0]/[(C/Δt)+1]…(15) ここで、Δt:演算インターバル TH :ヘッド温度変化入力 TH0:前回のヘッド温度変化入力 Y :遅れ温度変化出力 Y0 :前回の遅れ温度変化出力 C :ダミー熱容量 である。なお、遅れ温度変化出力Yの単位は〔℃〕なの
で、遅れ応答成分ΔZ2 を算出するには、温度と熱変位
の変換係数を意味する内部補正係数eを用いる。 ΔZ2 =e・Y ……(16)
軸はヘッド温度変化、右側の零から下の縦軸は遅れ応答
成分である。図中には、図7に示したヘッド温度変化の
時系列データ43と、図9においてZ軸熱変位から直線
42の縦軸の値を差し引いた誤差44と、ヘッド温度変
化の時系列データ43を用いて式(15)と式(16)
を介して得た演算結果45とが、示されている。前記誤
差44と前記演算結果45は、それぞれ遅れ応答成分Δ
Z2 の実データと演算データに該当する。即ち、式(1
5)に含まれるダミー熱容量C、及び式(16)の内部
補正係数eを適宜選択することにより、演算データを実
データに近づけることが可能になり、最良値がそれぞれ
決定できる。ここで決まる熱容量Cと係数eの値は工作
機械毎に固有の値であり、主軸の回転数等運転条件が変
わってもその値は変わらないので、この作業は一度行な
っておけばよい。例えば、前記ヘッド温度変化の時系列
データ43に基づいて、繰り返し演算により遅れ応答成
分ΔZ2 を算出すれば、C=900,e=−4として表
1の結果を得る。表1の遅れ応答成分ΔZ2 の値は、コ
ラム3等の遅れ応答成分であり、図9におけるZ軸熱変
位と直線42との縦軸方向の誤差に相当する。
Cが確定した式(15)を用いて、ヘッド温度変化TH
に対応する遅れ温度変化Yを演算する(ステップ10
9)。次いで、この遅れ温度変化Yを、内部補正係数e
が確定した式(16)に代入すると、遅れ応答成分ΔZ
2 が得られる(ステップ110)。先に、式(12)を
用いて即時応答成分ΔZ1 を算出した熱変位演算手段3
2では、このようにして算出した遅れ応答成分ΔZ2 を
即時応答成分ΔZ1 に加算して、Z軸熱変位ΔZを演算
する(ステップ111)。
測されたZ軸熱変位であり、横軸は温度センサS1 ,S
2 で検出した温度データを用いて、ステップ111まで
の手順を経て見積もったZ軸熱変位ΔZである。この熱
変位ΔZの演算には、式(2)の全体補正係数“a”を
1として、即時応答成分ΔZ1 を、式(11)と式(1
2)で展開した次式を用いている。 ΔZ=4.8×TN +2.1×TH +ΔZ2 ……(17)
項の係数、及びヘッド温度変化THの項の係数は、先の
式(5)の内部補正係数b,cにそれぞれ該当するもの
で、次式で算出される。これらの係数の値は、機体10
から検出した温度を用いて、即時応答成分を演算する場
合の、当該工作機械の熱特性を集約したものになる。 b=α・MNZ=3.88×1.24=4.8 ……(18) c=α・MHZ=3.88×0.53=2.1 ……(19) また、式(17)の遅れ応答成分ΔZ2 は表1に示した
結果を用いている。
と、式(17)で求めた横軸のZ軸熱変位ΔZの値と
は、45度の傾きの直線46上で略一致する。これは両
者が同じ値であることを意味しており、したがって、機
体10から検出した比較的少ない温度データを用いた演
算により、Z軸熱変位を十分高精度に予測することがで
きる。このようにして、ステップ111で演算されたZ
軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差を補正
することにより熱変位の補正がなされて(ステップ11
2)、工作物9を高精度で切削加工することができる。
その後、補正終了か否かを判別し(ステップ107)、
終了させる場合にはMC1を停止して(ステップ10
8)、全体の手順が終了する。補正が終了しない場合に
はステップ102に戻る。
お、第2実施例では、熱変位あるいは温度変化の時定数
を予め算出しておく必要はない。図2及び図4に示すよ
うに、MC1を起動して工具7により工作物9の切削加
工を開始する(ステップ201)。第1の箇所例えばノ
ーズ位置の温度を検出して(ステップ202)、この検
出信号を第1の遅れ温度演算手段34aに入力する。次
いで、先の「ダミー手法」により、ノーズ温度変化TN
より遅れて表れるZ軸熱変位の時定数と同じ時定数を有
する第1の遅れ温度変化Y1 の挙動を、ダミーの熱容量
C1 を設定して見込む。
行なうと、第1の遅れ温度変化Y1を算出する式は次式
になる。 Y1=[TNO+TN+(C1/Δt)・Y10−Y10]/[(C1/Δt)+1] ……(20) ここで、Δt:演算インターバル TN :ノーズ温度変化入力 TNO:前回のノーズ温度変化入力 Y1 :第1の遅れ温度変化出力 Y10:前回の第1の遅れ温度変化出力 C1 :ダミー熱容量 である。
遅れ温度変化Y1 とは傾斜eを有する直線47で代表さ
れるリニアな相関を持つ領域が生じる。この傾斜eは、
第1の遅れ温度変化Y1 に対応するZ軸熱変位を算出す
る際の比例定数であり、ここで算出されるZ軸熱変位
は、先の式(6)の第1項に該当する。この第1項の繰
り返し演算の結果が、先の図5に示したZ軸熱変位の時
系列データに一致するように、ダミー熱容量C1 と内部
補正係数eの値が適宜選択される。ここで決まる熱容量
C1 と係数eの値は工作機械毎に固有の値であり、この
作業は一度行なっておけばよい。第1の遅れ温度演算手
段34aでは、ダミー熱容量C1 の確定した式(20)
を用いて、ノーズ温度変化TN に対応する第1の遅れ温
度変化Y1 を演算する(ステップ203)。熱変位演算
手段32では、この遅れ温度変化Y1 を,内部補正係数
eが確定した式(6)の第1項に代入して、第1の遅れ
応答成分を算出する(ステップ204)。
かを判別し(ステップ205)、考慮しない場合には、
熱変位演算手段32で演算した結果に基づいて、補正手
段33で加工誤差を補正する(ステップ206)。その
後、補正を終了させるか否かを判別し(ステップ20
7)、終了させる場合にはMC1を停止して(ステップ
208)、全体の手順が終了する。補正が終了しない場
合にはステップ202に戻る。
2の遅れ応答成分を考慮する場合には、温度センサS3
で第2箇所例えばコラム位置の温度変化TC を検出して
(ステップ209)、第2の遅れ温度演算手段34bに
入力する。コラム位置に表れる温度変化TC は、例えば
図13の長時間経過した領域Dで、第1の遅れ温度変化
Y1 とZ軸熱変位とのリニアな相関関係に誤差を与え
る。前述の「ダミー手法」を再度用いて、コラム温度変
化TC より第2の遅れ温度変化Y2 の挙動を、ダミーの
熱容量C2 を設定して見込む。第2の遅れ温度変化Y2
を算出する式は次式になる。 Y2=[TCO+TC+(C2/Δt)・Y20−Y20]/[(C2/Δt)+1] ……(21) ここで、Δt:演算インターバル TC :コラム温度変化入力 TCO:前回のコラム温度変化入力 Y2 :第2の遅れ温度変化出力 Y20:前回の第2の遅れ温度変化出力 C2 :ダミー熱容量 である。
するZ軸熱変位は、温度と熱変位の変換係数fを含んだ
先の式(6)の第2項に該当する。この第2項の繰り返
し演算の結果が、図13において、Z軸熱変位から直線
47を差し引いた誤差に一致するように、ダミー熱容量
C2 と係数fの値が適宜選択される。ここで決まる熱容
量C2 と係数fの値は工作機械毎に固有の値であり、こ
の作業は一度行なっておけばよい。第2の遅れ温度演算
手段34bでは、ダミー熱容量C2 が確定した式(2
1)を用いて、コラム温度変化TC に対応する第2の遅
れ温度変化Y2 を演算する(ステップ210)。次い
で、内部補正係数fが確定した式(6)の第2項に第2
の遅れ温度変化Y2 を代入して、第2の遅れ応答成分を
算出する(ステップ211)。先に式(6)の第1項に
該当する第1の遅れ応答成分を算出した熱変位演算手段
32では、このようにして算出した第2の遅れ応答成分
を加算して、Z軸熱変位ΔZ2 を演算する(ステップ2
12)。
Z2 に基づいて補正手段33で加工誤差を補正すること
により熱変位に対する補正がなされて(ステップ21
3)、工作物9を高精度で加工することができる。その
後、補正終了か否かを判別し(ステップ207)、終了
させる場合にはMC1を停止して(ステップ208)、
全体の手順が終了する。補正が終了しない場合にはステ
ップ202に戻る。
場合の実測データである。図14はZ軸熱変位のデータ
を示すグラフ、図15はZ軸熱変位の他のデータを示す
グラフ、図16はY軸熱変位のデータを示すグラフ、図
17はY軸熱変位の他のデータを示すグラフである。い
ずれも主軸6の回転数Sは、S=10,000〔min
-1〕であり、図14及び図16は連続運転の場合を示
している。図15及び図17は、タイムチャート線51
に示すように、約50分間回転、10分間停止(途中一
回70分間の停止あり)の場合の熱変位を示している。
図14乃至図17の横軸は時間である。
48,52で示す補正前の熱変位は最大約40〔μm〕
であった。これに対して、本発明では、補正後の熱変位
の目標値を零に近づけることができる。即ち、本発明に
よる熱変位の補正を行なった場合は、図中破線49,5
3で示すように±5〔μm〕以下にまで残留熱変位を小
さくすることができる。なお、補正前の熱変位が100
〔μm〕以上の場合も、本発明によれば補正後の熱変位
を±5〔μm〕以下にまで小さくできることが確認され
ている。このように、本発明は熱変位の補正を高精度で
行なうことができる。また、図15及び図17に示すよ
うに断続運転を行なった場合も、本発明によれば、破線
50,54に示すように補正後の残留熱変位を±5〔μ
m〕以下にすることができる。
施例を説明するための図である。例えば、図18に示す
ように、MC1aは、工具7が装着される主軸6と、主
軸受20及び上部軸受(他の軸受)22を介して主軸6
を回転自在に支持する主軸頭5aとを備えている。主軸
6を回転駆動するビルトインモータ21は、両軸受2
0,22の間に配設されて、両軸受とともに主軸頭5a
に内蔵されている。主軸受20は主軸6を中心軸方向に
位置決めし、上部軸受22は熱変位で伸縮する主軸6を
中心軸方向に摺動可能に保持している。したがって、上
部軸受22及びモータ21が回転により発熱しても、主
軸6は上方に伸びるので工具7には影響を与えない。そ
の結果、MC1aの場合には主軸受20のみを発熱源と
考えて熱変位補正をすればよいことになる。主軸受20
の温度変化を検出する温度検出手段としてのヘッド温度
センサS2 を、主軸頭5aに取付けている。なお、発熱
源である主軸受20による温度変化が表われる場所であ
れば、ヘッド位置以外の例えばノーズまたはコラムの温
度を検出してもよい。また、主軸が工作物を把持するタ
イプの工作機械の場合であってもよい。なお、第1,第
2実施例と同一または相当部分には同一符号を付してそ
の説明を省略する。
原理を説明する。第1,第2実施例と同様にZ軸方向の
補正を例にとって説明する。第3実施例におけるZ軸方
向の熱変位の演算式は次式で示される。 ΔZ=a・(ΔZ3 +ΔZ4 ) ……(22) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) ΔZ3 :Z軸熱変位の創成変位成分 ΔZ4 :Z軸熱変位の遅れ応答成分 である。即ち、演算式(22)は、温度変化から熱変位
の時定数と同じ時定数を有する創成温度変化を基に演算
した創成変位成分ΔZ3 と、温度変化に対し遅れを伴っ
て熱変位が表れる遅れ応答成分ΔZ4 とを含んでいる。
ここで扱われる温度変化は、各温度センサから出力され
る温度と基準温度との差で算出する。基準温度には、先
の第1,第2実施例で考慮されたものが同じく採用され
る。
創成変位成分ΔZ3 のみに基づく演算式を使用すること
もできる。 ΔZ=a・ΔZ3 ……(23) 創成変位成分ΔZ3 は、次式により算出される。 ΔZ3 =g・Y3 ……(24) ここで、Y3 :創成温度変化〔℃〕 g :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
箇所に設置された温度センサの出力により機体10の熱
変位を演算する式である。そして、ヘッド温度センサS
2 で検出された温度の温度変化Tを展開して得た創成温
度変化Y3 から創成変位成分ΔZ3 を演算することにな
る。なお、温度センサの設置箇所は少なくとも一箇所あ
ればよいが、発熱源の数に応じて適宜追加される。ま
た、温度センサの設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受
ける箇所ならば、主軸頭5a以外の場所であってもよ
い。
下記の通りである。 ΔZ4 =h・Y4 ……(25) ここで、Y4 :遅れ温度変化〔℃〕 h :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。式(25)では、ヘッド温度センサS2 で検出
された温度の温度変化Tに遅れを見込んで演算した遅れ
温度変化Y4 から、遅れ応答成分ΔZ4 を演算すること
になる。なお、温度センサの設置箇所は少なくとも一箇
所あればよいが、発熱源の数に応じて適宜追加される。
ック図である。第3実施例の熱変位補正装置12bは、
温度センサS2 で検出された温度を展開して熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する仮想の位置P1 における温
度変化を演算する創成温度演算手段31aと、この創成
温度演算手段31aで演算された創成温度変化に対応し
て変化する創成変位成分ΔZ3 を演算する熱変位演算手
段32と、この熱変位演算手段32で算出された熱変位
に基づいて加工誤差を補正する補正手段33とを備えて
いる。
bは遅れ温度演算手段34を更に備えている。遅れ温度
演算手段34は、温度センサS2 で検出された温度の温
度変化より遅れて表れる遅れ温度変化を、前記温度変化
に遅れを見込んで演算する。熱変位演算手段32は、遅
れ温度演算手段34で演算された遅れ温度変化に対応し
て変化する遅れ応答成分ΔZ4 を算出し、先の創成変位
成分ΔZ3 に加算する。この加算された熱変位に基づい
て、補正手段33で加工誤差が補正され、その信号が出
力される。本第3実施例においては、先の第1,第2実
施例と同一又は相当機能部分の説明は省略する。
9乃至図28により説明する。図19は第3実施例の動
作を示すフローチャート、図20は、Z軸熱変位と、ヘ
ッド位置で検出された温度の温度変化Tの代表例(サン
プル温度変化)との経時変化を示すグラフ、図21はサ
ンプル温度変化とZ軸熱変位との標準的関係を示すグラ
フである。図22は、サンプル温度変化と、サンプル温
度変化より時定数の小さい温度変化“A”と、サンプル
温度変化より時定数の大きい温度変化“B”とを示すグ
ラフである。図23は図22に示した温度変化に加え
て、サンプル温度変化を用いて創成した創成温度変化Y
3A,Y3B(図中「○」印)を示すグラフである。図24
は創成温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフ、図2
5は、Z軸熱変位が遅れ応答成分を含んでいる場合の、
創成温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフである。
図26はサンプル温度変化と、サンプル温度変化より遅
れて表れる遅れ温度変化Cと、サンプル温度変化を用い
て創成した遅れ温度変化Y4 (図中「○」印)とを示す
グラフ、図27は遅れ温度変化に対する遅れ応答成分を
示すグラフである。図28は創成温度変化及び遅れ温度
変化から見積もった熱変位に対するZ軸熱変位を示すグ
ラフである。
検出する。これと同時に、ヘッド温度センサS2 で検出
される温度の温度変化のデータに基づいて、それぞれの
時定数を算出しておく。時定数を算出する手順は、先の
第1実施例においてZ軸方向の熱変位の時定数を算出し
たものと同じである。図20は、主軸が一定回転(回転
数S=10,000〔min -1〕)の下で、ヘッド温度セ
ンサS2 で検出した温度の温度変化Tの代表例(サンプ
ル温度変化)と、2つの例に係るZ軸熱変位(熱変位
“A,B”)の時系列データを示している。Z軸熱変位
の時定数がサンプル温度変化Tの時定数τS より小さい
場合、即ち熱変位が早く表れる場合には、熱変位“A”
(時定数τA )となる。一方、前記熱変位時定数が前記
時定数τS より大きい場合、即ち、ゆっくりと熱変位が
表れる場合には、熱変位“B”(時定数τB )となる。
したがって、MC1aの熱変位特性により、実際には熱
変位“A,B”のうちどちらか一方のデータになる。こ
こで抽出されたZ軸熱変位の時定数とサンプル温度変化
Tの時定数との値のバランスは、工作機械毎に固有の熱
特性を表すものであり、主軸回転数等運転条件が変わっ
ても変化が少ない。したがって、一度両時定数を算出す
る作業を行なっておけばよい。
C1aを起動して工具7により工作物9の切削を開始す
る(ステップ301)。また、ヘッド位置の温度を検出
して(ステップ302)、創成温度演算手段31aに入
力する。
づいて、サンプル温度変化Tと熱変位“A”との関係、
及びサンプル温度変化Tと熱変位“B”との関係を表す
と、図21に示すように、それぞれ弓状曲線55,56
になる。即ち、これらサンプル温度変化TとZ軸熱変位
とが単純なリニアの関係にならないので、ヘッド位置か
ら随時検出した温度の温度変化から直ちに熱変位を見込
むことができない。
ッド位置から検出した温度の温度変化を用いて、熱変位
の時定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算す
る。図22は、時定数をτS とするサンプル温度変化5
7と、熱変位“A”と同じ時定数τA を有する温度変化
“A”の模擬例58と、熱変位“B”と同じ時定数τB
を有する温度変化“B”の模擬例59とを示している。
曲線57乃至59で示す温度変化は、いずれも値Tmax
で飽和するようになっており、各時定数の一例を以下に
示す。 τA = 5〔min〕 τS =10〔min〕 τB =15〔min〕
は、下記の微分方程式(26)乃至(28)でそれぞれ
表現できる。 τS ・dT/dt+T=X ……(26) τA ・dY3A/dt+Y3A=X ……(27) τB ・dY3B/dt+Y3B=X ……(28) なお、式(27),(28)は微分方程式の一般式(2
9)で表わすことができる。 τZ ・dY3 /dt+Y3 =X ……(29) ここで、T :ヘッド温度センサS2 で検出される温度
変化〔℃〕 X :発熱部の温度変化〔℃〕 Y3 :創成温度変化〔℃〕 Y3A:温度変化“A”を創成する創成温度変化〔℃〕 Y3B:温度変化“B”を創成する創成温度変化〔℃〕 τZ :Z軸熱変位の時定数〔min〕 である。
から発熱部の温度変化Xが分かるので、この値Xを式
(29)に代入する。すると、サンプル温度変化の時定
数τSとは異なった時定数τZ を有する創成温度変化Y
3 が得られる。時定数τZ は、MC1aの熱特性で定ま
るものであり、工作機械毎に固有の値である。
で演算する場合には、微分方程式(26),(29)を
それぞれ離散化した次式(30),(31)の繰り返し
演算で解を算出することになる(ステップ303)。 X =τS ・(T−T0)/Δt+T0 ……(30) Y3=(2X0+2X+2τZ・Y30/Δt−Y30)/(2τZ/Δt+1) ……(31) ここで、Δt:演算インターバル〔min〕 T0 :前回のサンプル温度変化T入力〔℃〕 X0 :前回の温度変化X入力〔℃〕 Y30:前回の創成温度変化Y3 出力〔℃〕 である。
化“A,B”に加えて、式(30),(31)によりサ
ンプル温度変化Tを用いて創成した創成温度変化Y3
(具体的には、創成温度変化Y3A又はY3B)を「○」印
で表示している。この「○」印は、測定間隔即ち演算イ
ンターバルΔtが1.0〔min〕 の場合を示している。
このように式(30),(31)を用いた繰り返し演算
により、任意の時定数を有する熱変位と略同じ時定数を
有する創成温度変化を創成することができる。
を有しているので、図24の直線60に示すように、Z
軸熱変位とリニアの関係になる。直線の傾きgが、創成
温度変化Y3 と熱変位の相関を表している。熱変位演算
手段32では、式(24)を用いて創成温度変化Y3 か
ら熱変位(即ち、創成変位成分ΔZ3 )を算出する(ス
テップ304)。
基本的には時定数の小さい敏感な熱変位を、例えば発熱
源から離れたヘッド位置で検出した温度の温度変化Tか
ら見込むものである。この手法により算出される創成変
位成分ΔZ3 は、式(2)の即時応答成分ΔZ1 に相当
するものであり、この手法単独でも精度のよい熱変位補
正ができる。次に、遅れ応答成分ΔZ4 を考慮するか否
かを判別し(ステップ305)、考慮しない場合には、
熱変位演算手段32で演算した結果に基づいて、補正手
段33で加工誤差を補正する(ステップ306)。その
後、補正を終了するか否かを判別し(ステップ30
7)、終了させる場合にはMC1aを停止して(ステッ
プ308)、全体の手順が終了する。補正が終了しない
場合にはステップ302に戻る。
応答成分ΔZ4 を考慮する場合には、ヘッド温度センサ
S2 で検出されたヘッド位置の温度を、遅れ温度演算手
段34に入力する。コラム3等は、その質量が大きく、
また主な発熱源である主軸6とも離れているので、温度
変化が遅れるヘッド位置よりさらに遅れて温度変化が表
れる。この遅れ温度変化は、第1及び第2実施例の図
9,図13で示したものと同様に、図25の長時間経過
した領域Dで、創成温度変化Y3 とZ軸熱変位とのリニ
アな相関に誤差を与える。
前述の「ダミー手法」を用いて、ヘッド温度センサS2
で検出した温度の温度変化Tより遅れて表れる遅れ温度
変化Y4 の挙動を、ダミーの熱容量C4 を設定して見込
む。遅れ温度変化Y4 を算出する式は次式になる。 Y4 =[T0+T+(C4/Δt)・Y40−Y40]/[(C4/Δt)+1] ……(32) ここで、Δt:演算インターバル〔min〕 T :ヘッド温度センサS2 で検出される温度の温度変
化入力 T0 :前回の温度変化T入力〔℃〕 Y4 :遅れ温度変化出力〔℃〕 Y40:前回の遅れ温度変化Y4 出力〔℃〕 C4 :ダミー熱容量〔min〕 である。
出された温度の温度変化Tの代表例であるサンプル温度
変化57と、遅れ応答成分と同じ熱的挙動を示す遅れ温
度変化の模擬例61(温度変化C、時定数τC )とを示
している。更に、図26には、式(32)によりサンプ
ル温度変化Tを用いて創成した遅れ温度変化Y4 を、
「○」印で表示している。温度変化Cは長時間経過する
と、飽和値Tmax でサンプル温度変化Tに等しくなるこ
とを前提にしており、「○」印は、測定間隔即ち演算イ
ンターバルΔtが1.0〔min〕の場合を示している。こ
のように、式(32)の熱容量C4 を適宜選択した繰り
返し演算により、任意の時定数τC (τC >τS )の温
度変化Cと略同じ温度変化の挙動をする遅れ温度変化Y
4 を創成することができる。
は、図27に示すようにリニアの関係の直線62になる
ので、先の式(25)が成立する。実際には、温度変化
Cを抽出する手順を踏む必要は特にはない。例えば、サ
ンプル温度変化Tを用いて、式(32)のダミー熱容量
C4 及び式(25)の内部補正係数hを適宜選択した繰
り返し演算結果が、先の図25におけるZ軸熱変位(領
域Dを含む線)から直線60を差し引いた誤差に一致す
るように、熱容量C4 と係数hの最良値が決定される。
ここで決まる熱容量C4 と係数hの値は工作機械毎に固
有の値であり、この作業は一度行なっておけばよい。遅
れ温度演算手段34では、ダミー熱容量C4 が確定した
式(32)を用いて、ヘッド温度センサS2で検出され
る温度の温度変化Tに対応する遅れ温度変化Y4を演算
する(ステップ309)。次いで、この遅れ温度変化Y
4 を、内部補正係数hが確定した式(25)に代入する
と、遅れ応答成分ΔZ4 が得られる(ステップ31
0)。先に、式(24)を用いて創成変位成分ΔZ3 を
算出した熱変位演算手段32では、このようにして算出
した遅れ応答成分ΔZ4 を創成変位成分ΔZ3 に加算し
て、Z軸熱変位ΔZを演算する(ステップ311)。
り、横軸はサンプル温度変化Tを用いてステップ311
までの手順を経て見積もったZ軸熱変位ΔZである。こ
の熱変位ΔZの演算には、全体補正係数“a”を1とし
た次式を用いている。 ΔZ=g・Y3 +h・Y4 ……(33) 図28に示す実測された縦軸のZ軸熱変位と、式(3
3)で求めた横軸のZ軸熱変位ΔZの値とは、45°の
傾きの直線63上で略一致する。これは両者が同じ値で
あることを意味している。したがって、機体10の主軸
受20の発熱の影響を受ける箇所に設置したヘッド温度
センサS2 の温度データにより、Z軸熱変位を十分高精
度に予測することができる。
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位補正がなされて(ステップ
312)、工作物9を高精度で切削加工することができ
る。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ30
7)、終了させる場合にはMC1aを停止して(ステッ
プ308)、全体の手順が終了する。補正が終了しない
場合にはステップ302に戻る。
応用した第4実施例を、図29乃至図32により説明す
る。前記第1乃至第3実施例では、主として、熱変位の
原因となる発熱源の数が1個の例を説明したが、本発明
では、熱変位の原因となる発熱源が複数あって、且つ発
熱源の影響が互いに独立していると想定される場合に
も、展開可能な式の構成になっている。本第4実施例
は、複数の発熱源(いわゆる多熱源)が互いに影響し合
いながら熱変位を発生させる工作機械の場合であり、先
の各実施例では説明されていなかった部分を補足する。
図である。NC旋盤64は、機体としての主軸台66を
発熱源とする工作機械である。図示するように、NC旋
盤64は、チャック65及び爪67を介して工作物68
を把持する主軸69と、主軸台66と、ビルトインモー
タ70とを備えている。主軸台66は、主軸69を軸支
する加工位置側の前軸受71及び反加工位置側の後軸受
72を介して主軸69を回転自在に支持している。ロー
タ70aを含むモータ70は、前,後の軸受71,72
の間に配設されるとともに主軸台66に内蔵されて、主
軸69を回転駆動する。後軸受72には、主軸69を中
心軸方向01 に対して位置決めするアンギュラ玉軸受が
使用されている。熱変位で伸縮する主軸69は、前軸受
71内を中心軸方向O1 に伸縮可能になっている。工作
物68に近い前軸受71には大きな荷重がかかるので、
この荷重に耐えて切削性能を向上させるために、前軸受
71には定格荷重の大きい複列円筒ころ軸受が使用され
ている。なお、ここで示した構造は、主軸69をベルト
で駆動する構造のものと比べて、ビルトインモータ70
で主軸69を直接駆動しているので高速回転が可能であ
る。また、主軸69の振動を抑えることができるので高
精度な切削加工ができる。
70のロータ70aを回転させ、前,後の軸受71,7
2及びロータ70aがそれぞれ発熱すると、主軸69は
前方(図中右方)に伸びて工作物68を中心軸方向O1
に移動させて加工精度を低下させることになる。そのた
め、熱変位補正装置12bでは、発熱源となる前,後の
軸受71,72,及びモータ70のステータの各近傍に
それぞれ位置するように3本の温度センサs1,s2, s
3 を、主軸台66に取付けている。
1 )の熱変位に影響する発熱源が複数ある場合も、例え
ば前記リニアライズ手法を応用することによって高精度
な熱変位補正ができる。温度検出手段としての温度セン
サs1,s2, s3 の各出力信号は、回路36a,36
b,36cを介してA/D変換器13に入力し、A/D
変換器13からの出力信号は、創成温度演算手段31a
及び遅れ温度演算手段34に入力される。なお、その他
の構成については第3実施例と同様であるので、説明を
省略する。
位を、熱変位演算手段32により個別に演算する。Z軸
方向の総合熱変位Δzは次の一般式で示される。 Δz=a・(Δz1 +Δz2 +……+Δzn ) ……(34) Δz1 =β1 ・YA1+γ1 ・YB1 Δz2 =β2 ・YA2+γ2 ・YB2 … … Δzn =βn ・YAn+γn ・YBn ここで、Δz:Z軸総合熱変位 Δz1 乃至Δzn :第1番目乃至第n番目の発熱源によ
るZ軸方向の熱変位 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) β1 乃至βn :創成温度変化に係る内部補正係数 γ1 乃至γn :遅れ温度変化に係る内部補正係数 YA1乃至YAn:創成温度変化 YB1乃至YBn:遅れ温度変化 である。したがって、第3実施例の式(33)は、式
(34)の第1項の熱変位Δz1に相当する。また、第
3実施例では発熱源が1個なので、式(34)の第2項
以下の項を零として演算したことになる。
3となり、式(34)は以下のように展開できる。 Δz=a・(Δz1 +Δz2 +Δz3 ) ……(35) Δz1 =K1 ・Δz Δz2 =K2 ・Δz ……(36) Δz3 =K3 ・Δz K1 =P・T1 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) K2 =Q・T2 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) …(37) K3 =R・T3 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) ここで、T1 :温度センサs1 で検出された温度の温度
変化 T2 :温度センサs2 で検出された温度の温度変化 T3 :温度センサs3 で検出された温度の温度変化 P,Q,R:内部補正係数 である。
数P,Q,Rは、各温度変化T1 乃至T3 の重みを意味
しており、3回以上の発熱条件を変えたテストにおける
サンプル温度変化の飽和値の違いから下式により決定さ
れる。ここで決まる係数P,Q,Rの値のバランスは、
工作機械のタイプ毎に固有の熱特性を表すものであり、
主軸回転数等の運転条件が変わっても変化が少ないの
で、この作業は一度行なっておけばよい。 P・T1S+Q・T2S+R・T3S=Δz ……(38) ここで、T1S:サンプル温度変化T1 の飽和値 T2S:サンプル温度変化T2 の飽和値 T3S:サンプル温度変化T3 の飽和値 である。
に代入することによって、係数K1,K2 ,K3 の値が
定まるので、三つの式(36)は図31のように表現で
きる。この結果、発熱源71,72,70aの影響によ
る各熱変位Δz1 ,Δz2 ,Δz3 と各サンプル温度変
化との相関関係は、リニアライズ手法等によってリニア
にすることが可能になる。図31は各発熱源のZ軸熱変
位を示すグラフである。NC旋盤など旋削工作機械は、
通常は熱容量が小さいためMCと比べて熱変位が敏感に
表われるので、温度センサの取付け位置の制約のない第
3実施例の手法は特に有効である。また、第3実施例の
手法を用いれば、一つの発熱源につき一個の温度センサ
を設ければよいので、多熱源を有するNC旋盤64等の
場合に温度センサの数を減らすことができる。
を組合せてNC旋盤64を実機運転した場合の、Z軸熱
変位の実測データを示すグラフである。図示するよう
に、図中実線73,74で示す補正前の熱変位は約70
〔μm〕であった。これに対して、本発明に係る熱変位
の補正を行なった場合は、図中破線73a,74aで示
すように、熱変位は±10〔μm〕以下にまで小さくな
る。なお、図中の符号Sは主軸回転数を意味する。
乃至図37により説明する。第5実施例では、本発明に
係る前述の各手法のいずれかを、複数の主軸を有する工
作機械に適用して熱変位補正を行なっている。主軸は工
作物及び工具のいずれか一方を把持している。この主軸
の温度を温度調節装置により調節して各主軸の熱変位を
略均等にし、温度検出手段により少なくとも一つの主軸
について機体の温度変化を検出して、熱変位補正を行な
っている。なお、第5実施例において、前記各実施例と
同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を省略
する。
ドを有する立形のMC75であり、4個の工作物を4本
の工具で同一形状に同時加工するのに使用される。ベッ
ド76に固定され床面上に立設しているコラム77の上
部には、Y軸方向即ち水平方向に向けて配設されたクロ
スレール78が固定されている。クロスレール78に
は、サドル79がY軸方向に移動可能に取付けられてお
り、クロスレール78に設けられたY軸サーボモータ8
0によりサドル79は往復移動する。サドル79には主
軸頭81がZ軸方向に移動可能に取付けられている。主
軸頭81は、サドル79に設けられたZ軸サーボモータ
82によりサドル79に対してZ軸方向に往復移動し、
クロスレール78に対してはサドル79とともにY軸方
向に往復移動する。主軸頭81には、Z軸方向を向いて
いる複数(例えば4本)の主軸6a乃至6dが並設され
ており、各主軸の先端には工具7a乃至7dがそれぞれ
装着されている。
個)の工作物9a乃至9dを載置するためのテーブル8
3が、X軸方向に移動可能に取付けられている。テーブ
ル83は、ベッド76に設けられたX軸サーボモータ8
4により往復移動する。コラム77の横には、冷却油供
給装置85が設置されている。この冷却油供給装置85
は、主軸6a乃至6dの温度を調節して各主軸の熱変位
を略均等にするための温度調節装置としての主軸冷却装
置を構成している。
る。図示するように、主軸6a乃至6dの軸受近傍に
は、冷却油を流して軸受を冷却するための流路85a乃
至85dがそれぞれ形成されている。冷却油供給装置8
5から供給された冷却油は、配管88a乃至88dをそ
れぞれ流れ、手動又は自動で操作される流量調整弁89
a乃至89dで流量を調整される。これにより、各主軸
6a乃至6dの温度が個別に調節される。冷却油は、流
路85a乃至85dを流れ、主軸6a乃至6dの軸受を
冷却したのち、供給装置85に戻ってここで冷却されて
再び循環使用される。なお、流量調節の代わりに又はこ
れに加えて冷却油温度を供給装置85で調節することに
より、主軸温度を主軸毎に調節するようにしてもよい。
また、冷却油の代わりにクーラント(切削油剤)又は水
を使用してもよい。
変位を比較すると、図中左右両側の主軸6a,6dの熱
変位の方が、内側の主軸6b,6cよりも通常は小さ
い。これは各主軸の取付け場所の違いによるためであ
る。即ち、両側の主軸6a,6dの軸受で発生した熱
は、主軸頭81に速やかに伝導して、この主軸6a,6
dの温度上昇を抑えるからである。そこで、熱変位の最
も小さい代表主軸6aの発熱部近傍に位置するように主
軸頭81に温度検出手段としてのノーズ温度センサS1
を取付けている。このセンサS1 で機体86の温度変化
を検出することにより、前記各実施例における熱変位補
正装置12,12a,12bを用いた手法で、代表主軸
6aに対する熱変位補正を行なっている。そして、流量
調整弁89a乃至89dで流量調節(及び/又は、油の
温度調節)をして各主軸を冷却することによって、他の
3本の主軸6b乃至6dの熱変位を代表主軸6aの熱変
位に略一致させ、これにより、主軸間の熱変位のばらつ
きをなくしている。なお、代表主軸6aは熱変位が最小
なので、この主軸6aの冷却はしないか又はわずかに冷
却し、他の主軸6b乃至6dの冷却油を調節すれば、供
給装置85からの油の供給量が全体として少なくなるの
で好ましい。
加熱装置90を温度調節装置として用いた場合を示して
いる。図示するように、主軸6a乃至6dの近傍に、ヒ
ータ91a乃至91dなど加熱部材をそれぞれ配設して
いる。各ヒータ91a乃至91dに流れる電流を電流制
御装置91により個別に制御することにより、ヒータ9
1a乃至91dの発熱量を調節している。電流制御の方
が、冷却油の量や温度の制御より容易で応答も早く、し
かも主軸加熱装置全体がコンパクトになるので好まし
い。この場合には、熱変位が最大の主軸例えば6bを代
表主軸にしてこの主軸6bの近傍にノーズ温度センサS
1 を取付けて、機体86の温度変化を検出している。そ
して、電流制御装置91で電流を制御して各主軸を加熱
することによって、他の3本の主軸6a,6c,6dの
熱変位を代表主軸6bの熱変位に略一致させて、主軸間
の熱変位のばらつきをなくしている。なお、代表主軸6
bを加熱しないか又はわずかに加熱して、他の主軸の温
度を調節すれば、主軸加熱装置90全体の電流が少なく
なるので好ましい。
位置より離れた任意の位置(例えば、主軸頭81の適当
箇所)に配置されてこの位置の機体86の温度変化を検
出するヘッド温度センサS2 が、必要に応じて取付けら
れる。したがって、ミックス手法単独又はミックス手法
とダミー手法とを組合せた前述の各方法による熱変位補
正もできる。各センサS1 ,S2 の出力信号は、熱変位
補正装置12,12a,12bのA/D変換器13に入
力したのち、前記各実施例と同様に処理される。なお、
図34,図35に鎖線で示すように、代表主軸以外の各
主軸の近傍にも温度センサS10をそれぞれ取付け、各主
軸の温度を検出することが好ましい。センサS10で検出
された温度の温度変化は熱変位補正には用いないが、こ
の温度変化から各主軸の熱変位を推定して、主軸冷却装
置87又は主軸加熱装置90により、主軸間の熱変位の
ばらつきをなくする管理をすることができる。
の本実施例の手順を示すフローチャートである。なお、
下記説明中のカッコ内には、主軸加熱装置90を用いた
場合を記載している。まず初めに、調節弁89a乃至8
9dを操作して、各主軸6a乃至6dに流れる冷却油の
流量(又は、ヒータ91a乃至91dの電流)を必要最
少限に絞る(ステップ401)。次いで、全主軸の同期
回転を開始する(ステップ402)。一定の回転数で運
転して所定時間経過後、各主軸の伸びによる主軸先端部
におけるZ軸方向の熱変位を実測する(ステップ40
3)。各主軸の熱変位即ち伸び量が略同一になるよう
に、各主軸の流路85a乃至85dに流れる流量を調節
弁89a乃至89dにより(又は、ヒータ91a乃至9
1dの電流を電流制御装置91により)調節して、この
調節量を設定する(ステップ404)。全主軸の回転を
停止し、機体86全体が十分に放熱するまで運転を停止
する(ステップ405)。
ップ404で設定された調節量に従って冷却油(又は電
流)を各主軸にそれぞれ流す(ステップ406)。次
に、代表主軸6a(又は6b)の先端部におけるZ軸方
向の熱変位を時系列データとして実測するとともに、機
体86の温度変化をセンサS1 ,S2 の一方又は両方に
より検出する(ステップ407)。こうして検出された
温度変化を用い、前記各実施例と同様にして、ノーズ温
度時定数τN ,ヘッド温度時定数τH ,サンプル温度時
定数τS 等を抽出し、さらにダミー熱容量及び内部補正
係数を算出する。そして、これらの値を熱変位補正装置
12,12a,12bにセットする(ステップ40
8)。ステップ409で補正を開始し、代表主軸による
熱変位補正を実行する(ステップ410)。ステップ4
11で補正を終了する場合は全主軸の同期回転を停止し
(ステップ412)、全体の手順が終了する。停止しな
い場合にはステップ410に戻る。
a,12bで算出して補正された代表主軸の熱変位は、
プログラマブルコントローラ15を介して数値制御装置
16に送信され、Z軸サーボモータ82にフィードバッ
クされる。これにより、Z軸サーボモータ82が、主軸
頭81をZ軸方向に微小距離移動させて位置補正をす
る。主軸冷却装置87(又は、主軸加熱装置90)によ
り、代表主軸と他の主軸との熱変位を略均等にしている
ので、4個の工作物9a乃至9dを主軸6a乃至6dに
装着した工具7a乃至7dにより高精度に同時加工する
ことができる。
面構造を含むブロック図で、第5実施例の応用例であ
る。図示する工作機械は多軸NC旋盤92であり、第4
実施例と同様の構造の主軸台66及び主軸69を2組備
えている。したがって、このNC旋盤92は多熱源及び
多軸を有していることになる。ベッド93上には、2台
の主軸台66が並設され、且つ、サドル94がZ軸方向
に移動可能に取付けられている。サドル94はZ軸サー
ボモータ95により往復移動する。サドル94上には、
クロススライド96がX軸方向に移動可能に取付けられ
ており、X軸サーボモータ97により往復移動する。ク
ロススライド96上には、工具98を有するブロック9
9が複数取付けられている。チャック65等を介して工
作物を把持する主軸69が回転することにより、工作物
を工具98で切削加工する。ベッド93には、図34に
示す主軸冷却装置87と同様の原理の主軸冷却装置を構
成する冷却油供給装置100が設置されている。この主
軸冷却装置は、2本の主軸69の温度を個別に調節し
て、両主軸の熱変位を略均等にするためのものである。
ビルトインモータ70(図30)の近傍には、冷却油を
流して主軸の伸びを抑えるための流路が主軸台66内に
形成されている。主軸冷却装置は、図34と同様の配管
及び流量調節弁を有しており、各主軸69への流量の調
節を個別にできるようになっている。一方の主軸台66
には、センサs1 ,s2 ,s3 が第4実施例と同じよう
に取付けられているので、熱変位補正装置12bにより
第4実施例と同様にして熱変位補正がなされる。センサ
s1 ,s2 ,s3 が取付けられている方の主軸69を代
表主軸とし、主軸冷却装置によりこの代表主軸69と他
方の主軸69の熱変位を略一致させて、主軸間の熱変位
のばらつきをなくしている。図36に示す手順と同様に
して代表主軸の熱変位補正をすれば、代表主軸69と他
方の主軸69にそれぞれ把持されている工作物を、各工
具98により高精度で同時加工することができる。な
お、第5実施例では代表主軸が1本の場合を示したが、
同時加工を行なわない場合には、複数の代表主軸をそれ
ぞれ独立して熱変位補正してもよい。また、ペルチェ効
果を応用した冷却装置又は加熱装置を温度調節装置とし
て使用してもよい。
発熱による主軸の伸びを少なくするために、多量の冷却
油等を各主軸軸受近傍の流路に流して強力に冷却するも
のもある。この手法は、各主軸の熱変位を物理的に零に
近づけることにより、各主軸の熱変位とばらつきとを同
時に吸収しようとするものである。しかしながら、この
手法での熱変位の吸収には限界があり、熱変位を+10
〔μm〕以下にすることは不可能である。また、多量の
冷却油を循環させるので、大容量の冷却装置が必要であ
り、大量のエネルギが無駄になる。また、強い冷却効果
により軸受にひずみが生じて主軸が焼付く虞もある。こ
れに対して、第5実施例は、各主軸の熱変位を物理的に
零に近づけるのではなく、各主軸間の熱変位のばらつき
をなくするように、代表主軸と他の主軸の熱変位を略一
致させるとともに、代表主軸の熱変位補正を行なってい
る。したがって、補正後の加工誤差を零に近づけること
ができ、主軸冷却装置85は小型のもので十分であり、
エネルギ消費も少ない。また、冷却効果が弱いので軸受
が焼付くこともない。
算を行なっている。したがって、図1,図2,図18,
図29,図37に示すように、前回の演算結果を記憶
し、工作機械の電源をオフして再度オンするまでの間の
時間も記憶する記憶手段35を、熱変位補正装置12,
12a,12bに設けることが好ましい。記憶手段35
は、遅れ温度演算手段34,34a,34b,創成温度
演算手段31aとの間でデータの授受を行なうことにな
る。このようにすれば、電源をオフした場合でも、熱変
位補正の演算の経歴が保存されるので繰り返し演算が有
効になる。
法,又はリニアライズ手法と組合せるダミー手法を用い
る場合に、工作機械のコラム,ベッド,クロスレール等
に別途設けた温度センサにより機体の温度変化を検出し
てもよい。なお、本発明における温度検出手段としては
温度センサの代わりに、温度変化による機体の伸縮を検
出するひずみゲージ(Strain gauge)を使用してもよ
い。即ち、機体の温度変化を温度センサにより直接検出
する代りに、温度変化と同様の出力特性を有するひずみ
ゲージを機体に取付ける。そして、このゲージの出力信
号をA/D変換器13に入力させれば、実質的に温度変
化を検出するのと同じことになり同様の作用効果を奏す
る。ところで、各実施例における相関は一定の対応関係
があればよく、一次の相関以外の場合でもよい。
さを使用していないので、機体構造上の長さの制約がな
く、また、機体構成部分の長さ測定や回転数を種々変え
てデータの実測作業をする必要はない。したがって、回
転数の測定は1回のみでよいことになり、実機を用いた
熱変位特性抽出の実測作業が簡略化される。また、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業も不要である。
よいので、温度センサの取付位置の制約が緩和されると
同時に、少数(例えば、一つの発熱源について1本又は
2本)の温度センサのみで熱変位を精度よく見込むこと
ができる自由度の高いものにすることができる。また、
機体の温度に基づいて補正をしており、室温を直接検出
していない。したがって、例えば冬季に部屋の扉を開け
たり夏季にクーラーを運転するなどして室温が急激に変
化しても、室温による影響がなくなり、補正の精度を高
精度に維持することができる。また、本発明の熱変位補
正方法及びその装置は、熱変位が機械の精度や性能に悪
影響を与える他の種類の機械、例えば印刷機械,プレ
ス,レーザ加工機等の自動制御機械に適用しても、同様
の作用効果を奏する。この自動制御機械は、NC装置等
の自動制御装置によって制御されている。なお、各図中
同一符号は同一又は相当部分を示す。
変位に対する補正を高精度で行なうことができる。
る。
る。
温度の温度変化と、合成温度変化を示すグラフである。
ラフである。
ラフである。
である。
フである。
示すグラフである。
位との関係を示すグラフである。
フである。
る。
ある。
る。
ある。
る。
る。
フである。
すグラフである。
示すグラフである。
び創成温度変化を示すグラフである。
ラフである。
の、創成温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグラフで
ある。
した遅れ温度変化を示すグラフである。
グラフである。
た熱変位と、Z軸熱変位との関係を示すグラフである。
る。
る。
を有する工作機械の平面構造を含むブロック図である。
Claims (26)
- 【請求項1】 発熱源の影響を受ける機体の温度変化を
検出し、 この検出された温度変化を用いて、工作機械の熱変位の
時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算し、 この演算された温度変化に対応して変化する熱変位に基
づいて加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の
熱変位補正方法。 - 【請求項2】 発熱源の影響を受ける機体の温度変化を
検出し、 この検出された温度変化を用いて、工作機械の熱変位の
時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算し、 この演算された温度変化に対応して変化する熱変位を演
算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出された温度変化に遅れを見込んで、前記熱変位
と前記演算された熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答
成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演算し、 この遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答成分を、
前記演算された熱変位に加算して得た合計値に基づい
て、加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱
変位補正方法。 - 【請求項3】 発熱源の影響を受けて互いに時定数の異
なる温度変化をする少なくとも二箇所における機体の温
度変化を検出し、 この検出された各温度変化を合成して、工作機械の熱変
位の時定数と略同じ時定数を有する合成温度変化を演算
し、 この合成温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて
加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位
補正方法。 - 【請求項4】 発熱源近傍の機体の温度変化を検出し、 この検出された温度変化に遅れを見込んで、工作機械の
熱変位の時定数と略同じ時定数を有する遅れ温度変化を
演算し、 この遅れ温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて
加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位
補正方法。 - 【請求項5】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の
温度変化を検出し、 この検出された温度変化を用いて前記発熱源の温度変化
を演算し、 この発熱源の温度変化を用いて、工作機械の熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算し、 この創成温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて
加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位
補正方法。 - 【請求項6】 発熱源の影響を受けて互いに時定数の異
なる温度変化をする少なくとも二箇所における機体の温
度変化を検出し、 この検出された各温度変化を合成して、工作機械の熱変
位の時定数と略同じ時定数を有する合成温度変化を演算
し、 この合成温度変化に対応して変化する熱変位を演算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出された温度変化に遅れを見込んで、前記熱変位
と前記演算された熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答
成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演算し、 この遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答成分を、
前記演算された熱変位に加算して得た合計値に基づい
て、加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱
変位補正方法。 - 【請求項7】 発熱源近傍の機体の温度変化を検出し、 この検出された温度変化に遅れを見込んで、工作機械の
熱変位の時定数と略同じ時定数を有する第1の遅れ温度
変化を演算し、 この第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位を演
算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出された温度変化に遅れを見込んで、前記熱変位
と前記演算された熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答
成分と略同じ経時特性を有する第2の遅れ温度変化を演
算し、 この第2の遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答成
分を、前記演算された熱変位に加算して得た合計値に基
づいて、加工誤差を補正することを特徴とする工作機械
の熱変位補正方法。 - 【請求項8】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の
温度変化を検出し、 この検出された温度変化を用いて前記発熱源の温度変化
を演算し、 この発熱源の温度変化を用いて、工作機械の熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算し、 この創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出された温度変化に遅れを見込んで、前記熱変位
と前記演算された熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答
成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演算し、 この遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答成分を、
前記演算された熱変位に加算して得た合計値に基づい
て、加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱
変位補正方法。 - 【請求項9】 前記工作機械は、主軸頭を前記発熱源と
するマシニングセンタ、及び主軸台を前記発熱源とする
NC旋盤のいずれか一方であることを特徴とする請求項
1乃至8のいずれかの項に記載の工作機械の熱変位補正
方法。 - 【請求項10】 工作物及び工具のいずれか一方を把持
する主軸と、 この主軸を軸支する加工位置側の主軸受及び反加工位置
側の他の軸受を介して前記主軸を回転自在に支持する主
軸頭と、 前記両軸受の間に配設され、前記主軸頭に内蔵されて前
記主軸を回転駆動するビルトインモータとを備え、 前記主軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決め
し、前記他の軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中
心軸方向に摺動可能に保持し、 前記発熱源の影響を受けるヘッド位置で前記温度変化を
検出するヘッド温度センサを前記主軸頭に取付けたこと
を特徴とする請求項1,2,5又は8に記載の工作機械
の熱変位補正方法。 - 【請求項11】 工作物及び工具のいずれか一方を把持
する主軸と、 この主軸を軸支する加工位置側の前軸受及び反加工位置
側の後軸受を介して前記主軸を回転自在に支持する主軸
台と、 前記前,後の軸受の間に配設され、前記主軸台に内蔵さ
れて前記主軸を回転駆動するビルトインモータとを備
え、 前記後軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決め
し、前記前軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中心
軸方向に摺動可能に保持し、 前記発熱源となる前記前,後の軸受及び前記ビルトイン
モータの各近傍で温度変化をそれぞれ検出する3本の温
度センサを前記主軸台に取付けたことを特徴とする請求
項1,2,5又は8に記載の工作機械の熱変位補正方
法。 - 【請求項12】 工作物及び工具のいずれか一方を把持
し且つ同期して回転する複数の主軸を主軸頭に有し、 前記複数の主軸の回転に伴う発熱特性の違いを、前記各
主軸のノーズ部に設けたジャケットに流れる冷却油量又
は冷却油温度を制御するか、あるいは前記各主軸のノー
ズ部に設けたヒータの通電量を制御して、熱変位の均一
化した主軸頭を有する構成であって、 前記主軸の少なくとも一つを前記発熱源に採用したこと
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかの項に記載の工
作機械の熱変位補正方法。 - 【請求項13】 前記温度変化は、検出された温度から
基準温度を差引いて算出されることを特徴とする請求項
1乃至12のいずれかの項に記載の工作機械の熱変位補
正方法。 - 【請求項14】 発熱源の影響を受ける機体の温度変化
を検出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された前記温度変化を用いて、
工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する温度
変化を演算する温度演算手段と、 この温度演算手段で演算された前記温度変化に対応して
変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 この熱変位演算手段で演算された前記熱変位に基づいて
加工誤差を補正する補正手段とを備えたことを特徴とす
る工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項15】 発熱源の影響を受ける機体の温度変化
を検出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された温度変化を用いて、工作
機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する温度変化
を演算する温度演算手段と、 この温度演算手段で演算された前記温度変化に対応して
変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途検出
する温度検出手段と、 前記いずれかの温度検出手段で検出された前記温度変化
に遅れを見込んで、前記熱変位と前記熱変位演算手段の
出力とが徐々にずれていく遅れ応答成分と略同じ経時特
性を有する遅れ温度変化を演算する遅れ温度演算手段と
を備え、 前記熱変位演算手段により、前記遅れ温度変化に対応し
て変化する遅れ応答成分を演算するとともに、この遅れ
応答成分を前記熱変位に加算して合計値を算出し、 この合計値に基づいて、補正手段により加工誤差を補正
することを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項16】 発熱源の影響を受けて互いに時定数の
異なる温度変化をする少なくとも二箇所における機体の
温度変化を検出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された前記各温度変化を合成し
て、所定軸方向の熱変位の時定数と略同じ時定数を有す
る合成温度変化を演算する合成温度演算手段と、 この合成温度演算手段で演算された前記合成温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 この熱変位演算手段で演算された前記所定軸方向の前記
熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段とを備え
たことを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項17】 発熱源近傍の機体の温度変化を検出す
る温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された前記温度変化に遅れを見
込んで、所定軸方向の熱変位の時定数と略同じ時定数を
有する遅れ温度変化を演算する遅れ温度演算手段と、 この遅れ温度演算手段で演算された前記遅れ温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 この熱変位演算手段で演算された前記所定軸方向の前記
熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段とを備え
たことを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項18】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所
の温度変化を検出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された温度変化を用いて前記発
熱源の温度変化を演算し、この発熱源の温度変化を用い
て所定軸方向の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する
創成温度変化を演算する創成温度演算手段と、 この創成温度演算手段で演算された前記創成温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 この熱変位演算手段で演算された前記所定軸方向の前記
熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段とを備え
たことを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項19】 発熱源の影響を受けて互いに時定数の
異なる温度変化をする少なくとも二箇所における機体の
温度変化を検出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された前記温度変化を合成し
て、所定軸方向の熱変位の時定数と略同じ時定数を有す
る合成温度変化を演算する合成温度演算手段と、 この合成温度演算手段で演算された前記合成温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途検出
する温度検出手段と、 前記いずれかの温度検出手段で検出された前記温度変化
に遅れを見込んで、前記所定軸方向の熱変位と前記熱変
位演算手段の出力とが徐々にずれていく遅れ応答成分と
略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演算する遅れ温
度演算手段とを備え、 前記熱変位演算手段により、前記遅れ温度変化に対応し
て変化する遅れ応答成分を演算するとともに、この遅れ
応答成分を前記熱変位に加算して合計値を算出し、 この合計値に基づいて、補正手段により加工誤差を補正
することを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項20】 発熱源近傍の機体の温度変化を検出す
る温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された前記温度変化に遅れを見
込んで、所定軸方向の熱変位の時定数と略同じ時定数を
有する遅れ温度変化を演算する第1の遅れ温度演算手段
と、 この第1の遅れ温度演算手段で演算された前記遅れ温度
変化に対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手
段と、 前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途検出
する温度検出手段と、 前記いずれかの温度検出手段で検出された前記温度変化
に遅れを見込んで、前記所定軸方向の熱変位と前記熱変
位演算手段の出力とが徐々にずれていく遅れ応答成分と
略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演算する第2の
遅れ温度演算手段とを備え、 前記熱変位演算手段により、前記第2の遅れ温度演算手
段で演算された前記遅れ温度変化に対応して変化する遅
れ応答成分を演算するとともに、この遅れ応答成分を前
記熱変位に加算して合計値を算出し、 この合計値に基づいて、補正手段により加工誤差を補正
することを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項21】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所
の温度変化を検出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された温度変化を用いて前記発
熱源の温度変化を演算し、前記発熱源の温度変化を用い
て所定軸方向の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する
創成温度変化を演算する創成温度演算手段と、 この創成温度演算手段で演算された前記創成温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途検出
する温度検出手段と、 前記いずれかの温度検出手段で検出された前記温度変化
に遅れを見込んで、前記所定軸方向の熱変位と前記熱変
位演算手段の出力とが徐々にずれていく遅れ応答成分と
略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演算する遅れ温
度演算手段とを備え、 前記熱変位演算手段により、前記遅れ温度変化に対応し
て変化する遅れ応答成分を演算するとともに、この遅れ
応答成分を前記熱変位に加算して合計値を算出し、 この合計値に基づいて、補正手段により加工誤差を補正
することを特徴とする工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項22】 前記工作機械は、主軸頭を前記発熱源
とするマシニングセンタ、及び主軸台を前記発熱源とす
るNC旋盤のいずれか一方であることを特徴とする請求
項14乃至21のいずれかの項に記載の工作機械の熱変
位補正装置。 - 【請求項23】 工作物及び工具のいずれか一方を把持
する主軸と、 この主軸を軸支する加工位置側の主軸受及び反加工位置
側の他の軸受を介して前記主軸を回転自在に支持する主
軸頭と、 前記両軸受の間に配設され、前記主軸頭に内蔵されて前
記主軸を回転駆動するビルトインモータとを備え、 前記主軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決め
し、前記他の軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中
心軸方向に摺動可能に保持し、 前記発熱源の影響を受けるヘッド位置で前記温度変化を
検出するヘッド温度センサを前記主軸頭に取付けたこと
を特徴とする請求項14,15,18又は21に記載の
工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項24】 工作物及び工具のいずれか一方を把持
する主軸と、 この主軸を軸支する加工位置側の前軸受及び反加工位置
側の後軸受を介して前記主軸を回転自在に支持する主軸
台と、 前記前,後の軸受の間に配設され、前記主軸台に内蔵さ
れて前記主軸を回転駆動するビルトインモータとを備
え、 前記後軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決め
し、前記前軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中心
軸方向に摺動可能に保持し、 前記発熱源となる前記前,後の軸受及び前記ビルトイン
モータの各近傍で温度変化をそれぞれ検出する3本の温
度センサを前記主軸台に取付けたことを特徴とする請求
項14,15,18又は21に記載の工作機械の熱変位
補正装置。 - 【請求項25】 工作物及び工具のいずれか一方を把持
し且つ同期して回転する複数の主軸を主軸頭に有し、 前記複数の主軸の回転に伴う発熱特性の違いを、前記各
主軸のノーズ部に設けたジャケットに流れる冷却油量又
は冷却油温度を制御するか、あるいは前記各主軸のノー
ズ部に設けたヒータの通電量を制御して、熱変位の均一
化した主軸頭を有する構成であって、 前記主軸の少なくとも一つを前記発熱源に採用したこと
を特徴とする請求項14乃至21のいずれかの項に記載
の工作機械の熱変位補正装置。 - 【請求項26】 前記温度変化は、検出された温度から
基準温度を差引いて算出されることを特徴とする請求項
14乃至25のいずれかの項に記載の工作機械の熱変位
補正装置。
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