JP3520145B2 - 工作機械の熱変位補正方法 - Google Patents

工作機械の熱変位補正方法

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JP3520145B2
JP3520145B2 JP29201595A JP29201595A JP3520145B2 JP 3520145 B2 JP3520145 B2 JP 3520145B2 JP 29201595 A JP29201595 A JP 29201595A JP 29201595 A JP29201595 A JP 29201595A JP 3520145 B2 JP3520145 B2 JP 3520145B2
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肇 櫻庭
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株式会社森精機ハイテック
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は工作機械の熱変位補
正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】工作機械には機体各部に発熱源があり、
例えば主軸の軸受のころがり摩擦熱や、切削部分からの
発熱など数多い。これらの熱は機体各部に伝導して機体
を変形させるが、この機体の変形は加工精度に大きく影
響する。そこで、これら各種原因による機体の熱変位を
予測して熱変位による誤差の分をサーボ系にフィードバ
ックして補正する補正方法やその装置が種々提案されて
いる。
【0003】斯かる補正機能を有する工作機械では、機
械の運転に伴う熱変位を如何に正確に見込むかが重要で
あり、そのために種々の試みがなされている。例えば、
主軸の回転数等の運転条件から熱変位を予測するもの、
あるいは機体に組込んだ変位センサで直接熱変位を検出
するもの等がある。
【0004】本出願人は、特公平6−22779号公報
及び特開平3−79256号公報で、機体温度から熱変
位を算出する方式の工作機械の熱変位補正方法を提案し
た。この方法における熱変位の算出は、基本的には次式
(1)の原理に基づいている。 ΔLa = La ×線膨張係数×温度変化 ……(1) ここで、ΔLa :機体構成部分の熱変位 La :機体構成部分の長さ である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術における
補正後の加工精度としては、20乃至30〔μm〕程度
が限界である。ところが、近年の工作機械ユーザーから
は、補正後の精度として10〔μm〕以下の加工誤差に
抑えることが一般的に要求されている。これは、セラミ
ック材など新素材や、さらに小型化された工作物等を高
精度で加工する必要性があるからである。
【0006】また、前記算出手法では機体の構成からそ
の構成部分の長さLa を見込み、その温度変化を長さL
a の中央位置から検出しているので、温度センサの取付
位置に制約があった。さらに、精度よく熱変位を見込む
には、機体を細かな構成部分に分割する必要が生じ、そ
れぞれの部分の温度変化を算出するために多数の温度セ
ンサを要した。また、機体構成部分の長さLa の測定
や、各機体構成材料それぞれの線膨張係数の確認作業が
必要であった。これらは、機体温度から熱変位を算出す
る方式の工作機械の熱変位補正装置を実装する上での障
害となっていた。
【0007】一方、特開昭58−109250号公報に
は、工作機械と熱的相似の金属片を用いて、その温度を
工作機械を代表する温度と見做して、冷却用噴射空気の
温度を制御することにより、工作機械の熱変位の補正を
する熱変位補正装置が提案されている。しかしながら、
この場合には熱的相似の金属片を別途準備しなければな
らなかった。さらに、特開昭60−9634号公報に
は、Y軸熱変位の特性に合わせた熱的時定数を持った温
度センサを使用する熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置では、熱変位の特性に合わせた熱
的時定数を持つ温度センサの詳細が明らかにされていな
い。
【0008】本発明は、斯かる課題を解決するためにな
されたもので、熱変位による加工誤差に対する補正を高
精度で行なうことができる工作機械の熱変位補正方法を
提供することを目的とする。また、本発明の別の目的
は、工作機械の機体構成部分の長さ測定や、機体構成材
料の線膨張係数の確認作業を不要とし、且つ、実機を用
いた熱変位特性の抽出の実測作業を簡略化することであ
る。更に、本発明の別の目的は、温度センサの取付け位
置の制約を大幅に緩和すると同時に、少数の温度センサ
で熱変位を精度よく見込むことのできる自由度の高い工
作機械の熱変位補正方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の所定軸方向の伸びによる熱変位又は主軸傾きによる
熱変位を検出すると同時に、機体の適当箇所の温度変化
を温度センサにより検出する。この温度変化と前記熱変
位が時系列的に同じであれば、温度変化と熱変位は単純
にリニアの相関になるので、温度変化から熱変位を容易
に見積もることが可能であることを前提にしている。し
かしながら、機体の適当箇所から検出した温度変化が有
する「時定数」等の熱特性は、必ずしも所定軸方向の熱
変位が有する「時定数」等の熱特性と同じではない。そ
のため、この熱変位の熱的挙動は検出温度変化の挙動に
一致しないので、この温度変化のデータを適宜加工して
前記熱変位が有する熱的挙動を検出温度変化の挙動に一
致させる手法が求められる。
【0010】そこで、本発明に係る熱変位補正方法は、
発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検出し、検出さ
れたこの温度変化を用いて、ある時定数等の熱特性を有
する工作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をするよ
うな温度変化を演算し、算出されたこの演算温度変化と
前記熱変位との関係を定める関数を用いて得た熱変位に
基づいて加工誤差を補正している。例えば、本発明の方
法は、発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検出し、
この検出温度変化から工作機械の熱変位の熱的挙動と略
同じ挙動をする演算温度変化を算出する微分方程式を用
いた繰り返し演算,又はこの微分方程式を解いた解の式
による演算により、前記検出温度変化を用いて前記演算
温度変化を算出し、この演算温度変化に対応して変化す
る熱変位に基づいて加工誤差を補正している。なお、
「工作機械の熱変位」とは、理想としては工具による加
工点における熱変位であるが、現実的には、例えば主軸
先端部又はこの主軸先端部に一時的に装着されたテスト
バーの適当箇所における熱変位のことである。
【0011】そして、前記補正方法を実現するための熱
変位補正装置は、発熱源の影響を受ける機体の温度変化
を検出する温度検出手段と、この温度検出手段で検出さ
れた前記温度変化を用いて、ある時定数等の熱特性を有
する工作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をするよ
うな演算温度変化を算出する微分方程式を用いた繰り返
し演算,又はこの微分方程式を解いた解の式による演算
により、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化を
算出する温度演算手段と、この温度演算手段で算出され
た前記演算温度変化に対応して変化する熱変位を演算す
る熱変位演算手段と、この熱変位演算手段で算出された
前記熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段とを
備えている。
【0012】本発明では、検出された前記温度変化のデ
ータの挙動を、熱変位の熱的挙動に略一致させるデータ
加工法の一例として、「ダミー手法」を使用している。
このダミー手法は、工作機械に任意の主軸回転数(例え
ば、主軸の最高回転数)を与えた際の熱変位を検出する
と同時に、この熱変位の時定数より小さい温度変化の時
定数を持つ適当箇所の温度変化を検出する。そして、こ
の検出温度変化より遅れて表われる遅れ温度変化の挙動
を、ダミーの時定数を設定して見込むもので、遅れて表
われる熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする架空の遅れ
温度変化を、検出温度変化に遅れを見込んだ微分方程式
に基づく繰り返し演算、又はこの微分方程式を解いた解
の式に基づく演算により創成する手法である。なお、ダ
ミー手法では、前記遅れ温度変化を創成する際に、一旦
他の遅れ温度変化を創成し、この遅れ温度変化に更に遅
れを見込んで、熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする遅
れ温度変化を創成してもよい。このように、ダミー手法
では、温度変化に遅れを見込んだ微分方程式に基づく演
算により、遅れ温度変化を算出している。例えばダミー
手法を用いた熱変位補正方法は、発熱源近傍の機体の温
度変化を検出し、この検出温度変化に遅れを見込んで工
作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする遅れ温度
変化を演算する第1の微分方程式に基づいて前記遅れ温
度変化を算出し、この遅れ温度変化に対応して変化する
熱変位に基づいて加工誤差を補正する。
【0013】ところで、工作機械の熱変位の熱的挙動と
略同じ挙動をするように創成された遅れ温度変化と熱変
位とのリニアな相関は、主軸回転に伴う主軸頭部の発熱
がコラム等に伝わる影響、又は室温等の他の熱源の影響
等に基づく熱変位の遅れ応答成分により、徐々に崩れて
くる場合がある。そこで、創成された遅れ温度変化と熱
変位とのあいだのリニアの相関を長時間維持するため
に、ダミー手法で創成した遅れ温度変化で見積もった熱
変位に、徐々に現われてくる熱変位の遅れ応答成分を加
算して見積もることが行なわれる。例えば、発熱源近傍
の温度が急激に且つ大きく変化する箇所から検出した温
度データを用いて、ダミー手法で第1の遅れ温度変化を
創成するとともに、この遅れ温度変化とリニアの相関で
得られる熱変位を演算する。そして、先の温度データあ
るいは別途検出した比較的穏やかな温度変化をする箇所
から検出した温度データを用いて、温度変化の遅れを十
分見込んで創成した第2の遅れ温度変化とリニアの相関
で得られる変位の遅れ応答成分を演算する。
【0014】このようにダミー手法とダミー手法を組合
せる手法を、主軸頭を発熱源とするマシニングセンタ
(以下、MCと記載)、又は主軸台内に発熱源を内蔵す
る数値制御旋盤(以下、NC旋盤と記載)に適用するこ
とができる。この場合には、MC等を運転して、任意の
主軸回転数を与えた際の熱変位を検出する。これと同時
に、この熱変位の時定数より小さい温度変化の時定数を
持つノーズ位置における機体の温度変化を検出する。そ
して、前記ダミー手法で前記熱変位の熱的挙動と略同じ
挙動をする遅れ温度変化を演算し、この遅れ温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する。次いで、以下のダ
ミー手法が更に付加される。即ち、MC等の前記主軸頭
位置で検出された温度変化に遅れを見込んで、実際の熱
変位と、遅れ温度変化を用いて先に演算された熱変位と
が徐々にずれていく変位の遅れ応答成分と略同じ経時特
性を有する遅れ温度変化を算出する。この遅れ温度変化
に対応して変化する遅れ応答成分を前記演算熱変位に加
算して得た合計値に基づいて加工誤差を補正する。
【0015】次に、「リニアライズ手法」について説明
する。検出された温度変化のデータの挙動を熱変位の熱
的挙動に略一致させるデータ加工法を発展させたものに
「リニアライズ(LINEARIZE)手法」があり、本発明はこ
の手法も使用している。このリニアライズ手法では、工
作機械に任意の主軸回転数(例えば、主軸の最高回転
数)を与えた際の熱変位を検出する。これと同時に、発
熱源の発熱による影響を受けて温度変化をする機体の適
当箇所の温度変化を検出する。この検出温度変化を用い
て前記発熱源における温度変化を演算する。そして、こ
の発熱源の温度変化を用いて工作機械の熱変位の熱的挙
動と略同じ挙動をする創成温度変化を演算し、この創成
温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて加工誤差
を補正する。なお、リニアライズ手法では、前記創成温
度変化を演算する際に、発熱源における温度変化を用い
て一旦他の創成温度変化を演算し、この創成温度変化を
用いて、熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする創成温度
変化を演算してもよい。
【0016】例えばリニアライズ手法を用いた熱変位補
正方法は、発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の温度
変化を検出し、この検出温度変化から前記発熱源の温度
変化を算出する第3の微分方程式による前記発熱源温度
変化を用いて工作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動
をする創成温度変化を算出する第4の微分方程式に基づ
いて、前記検出温度変化を用いて前記創成温度変化を算
出し、この創成温度変化に対応して変化する熱変位に基
づいて加工誤差を補正する。
【0017】また、リニアライズ手法とダミー手法を組
合せた手法では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を検出する。これと同時に、発熱源の発熱の
影響を受けて温度変化する機体の適当箇所の温度変化を
検出する。そして、リニアライズ手法で前記熱変位の熱
的挙動と略同じ挙動をする創成温度変化を演算し、この
創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算する。次
いで、前記検出温度変化又は別途検出した比較的穏やか
な温度変化をする箇所から検出した温度変化のデータに
遅れを見込んで、実際の熱変位と、創成温度変化を用い
て先に演算された熱変位とが徐々にずれていく変位の遅
れ応答成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を演
算する。そして、この遅れ温度変化に対応して変化する
遅れ応答成分を演算し、この遅れ応答成分を前記演算熱
変位に加算して得た合計値に基づいて、加工誤差を補正
する。
【0018】前記ダミー手法では、検出温度変化の時定
数は工作機械の熱変位の時定数より常に小さくなければ
ならない。したがって、このダミー手法で創成した温度
変化で熱変位を見積もる場合は、温度変化を検出する位
置に制約が生じる。これに対して、リニアライズ手法
は、必ずしも工作機械の熱変位の時定数よりも小さい温
度変化の時定数を持つ箇所の温度変化を検出する必要が
ないので、検出される温度変化の時定数の大きさに条件
がなく、且つ、一個の発熱源に対して検出温度は一個で
よい。これにより、温度センサを配設する位置の自由度
がダミー手法よりも高くなるので、温度変化に比べて熱
変位が敏感に表われる主軸頭を持つMC及びNC旋盤、
あるいは加工精度に影響を与える発熱源を複数有してい
る工作機械における創成温度変化の演算に有利である。
主軸回転数及び主軸位置の頻繁な変更及び移動を伴う工
作機械(例えば、旋削機)の場合には、回転体の熱変位
を敏感に補正する必要があるが、このリニアライズ手法
によれば、初期の熱変位を敏感に捉えて補正することが
可能になる。
【0019】以下に、本発明にかかる熱変位補正方法等
の好ましい態様を列挙する。 (1)発熱源の影響を受けて温度が急激に且つ大きく変
化する箇所の機体の温度変化を検出し、この検出温度変
化に遅れを見込んで工作機械の熱変位の熱的挙動と略同
じ挙動をする第1の遅れ温度変化を演算する第1の微分
方程式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前記第1
の遅れ温度変化を算出し、この第1の遅れ温度変化に対
応して変化する熱変位を演算し、前記機体の適当箇所の
温度変化を検出し、この検出温度変化に遅れを見込ん
で、前記工作機械熱変位と前記演算熱変位とが徐々にず
れていく遅れ応答成分の熱的挙動と略同じ挙動をする第
2の遅れ温度変化を演算する第2の微分方程式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記第2の遅れ温度変化
を算出し、この第2の遅れ温度変化に対応して変化する
前記遅れ応答成分を前記演算熱変位に加算して得た合計
値に基づいて、加工誤差を補正する。 (2)発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の温度変化
を検出し、この検出温度変化から前記発熱源の温度変化
を算出する第3の微分方程式による前記発熱源温度変化
を用いて工作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をす
る創成温度変化を算出する第4の微分方程式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記創成温度変化を算出
し、この創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算
し、前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、この検出
温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変位と前記
演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分の熱的挙
動と略同じ挙動をする遅れ温度変化を演算する第2の微
分方程式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前記遅
れ温度変化を算出し、この遅れ温度変化に対応して変化
する前記遅れ応答成分を前記演算熱変位に加算して得た
合計値に基づいて、加工誤差を補正する。
【0020】(3)前記第1の微分方程式は、 τD ・dY1 1/P/dt + Y1 1/P = TN 1/P 前記第2の微分方程式は、 τDC・dY2 1/Q/dt + Y2 1/Q = (TC −L)
1/Q 前記第3の微分方程式は、 τNS・dTN 1/M/dt + TN 1/M = X1/M 前記第4の微分方程式は、 τSA・dY3 1/N/dt + Y3 1/N = X1/N ここで、 L :室温変形特性係数 M,P,Q :温度特性係数 N :熱変位特性係数 TN ,TC :検出温度変化 X :発熱源温度変化 Y1 ,Y2 :遅れ温度変化 Y3 :創成温度変化 t :工作機械の電源投入時からの経過時間 τD ,τDC:ダミーの時定数 τNS:サンプル温度変化の時定数 τSA:サンプル熱変位の時定数 である。
【0021】(4)前記工作機械は、工作物及び工具の
いずれか一方を把持する主軸と、この主軸を軸支する加
工位置側の主軸受及び反加工位置側の他の軸受を介して
前記主軸を回転自在に支持する主軸頭と、前記主軸を回
転駆動するモータとを備え、前記主軸受は前記主軸を中
心軸方向に対して位置決めし、前記発熱源の影響を受け
るヘッド位置で前記温度変化を検出するヘッド温度セン
サが前記主軸頭に取付けられている。 (5)熱変位補正装置は、発熱源の影響を受ける機体の
温度変化を検出する温度検出手段と、この温度検出手段
で検出された温度変化を用いて、工作機械の熱変位の熱
的挙動と略同じ挙動をする温度変化を演算する温度演算
手段と、この温度演算手段で演算された前記温度変化に
対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、
前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途検出
する温度検出手段と、前記いずれかの温度検出手段で検
出された前記温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械
熱変位と前記熱変位演算手段の出力とが徐々にずれてい
く遅れ応答成分の熱的挙動と略同じ挙動をする遅れ温度
変化を演算する微分方程式に基づいて、前記検出温度変
化を用いて前記遅れ温度変化を算出する遅れ温度演算手
段とを備え、前記熱変位演算手段により、前記遅れ温度
変化に対応して変化する遅れ応答成分を演算するととも
に、この遅れ応答成分を前記熱変位に加算して合計値を
算出し、この合計値に基づいて、補正手段により加工誤
差を補正している。 (6)複数の主軸を有する場合の前記工作機械は、工作
物及び工具のいずれか一方を把持し且つ同期して回転す
る複数の主軸を主軸頭に有し、前記複数の主軸の回転に
伴う発熱特性の違いを、前記各主軸のノーズ部に設けた
ジャケットに流れる冷却油量又は冷却油温度を制御する
か、あるいは前記各主軸のノーズ部に設けたヒータの通
電量を制御して、熱変位の均一化した主軸頭を有する構
成であって、前記主軸の少なくとも一つを前記発熱源に
採用している。 (7)前記工作機械は、主軸頭を前記発熱源とするマシ
ニングセンタ、及び主軸台を前記発熱源とするNC旋盤
のいずれか一方である。また、前記検出温度変化は、前
記機体の適当箇所で検出された温度から、ベッドで検出
され基準となる基準温度を差引いて算出される
【0022】
【発明の実施の形態】工作機械の主軸回転に伴い、主軸
軸受や主軸駆動モータ等の発熱源から発熱が起こり、こ
れが機体の構成部分に伝導し、結果として温度変化をき
たす。通常の工作機械では構造材料として鋳鉄又は鋼材
を主として用いている。したがって、温度変化がある
と、これら構造材料が持つ線膨張係数に比例した熱変位
が各部で発生する。これら各部の熱変位が加算されて、
工作機械の加工精度を低下させる。また、工作機械の主
軸回転に伴う温度変化は、発熱源近傍で早く表れるが、
ヘッド(主軸頭),ヘッド取付け部及びコラムなど発熱
源から離れるほど遅れて表れることになり、それぞれ温
度変化の挙動即ち経時特性が異なる。このため、機体の
任意箇所の温度変化と熱変位とは、通常は直接結びつか
ない。
【0023】ところが、工作機械に任意の主軸回転数を
与えた際の熱変位の時系列データ、及び発熱源の発熱の
影響を受ける機体の適当箇所から検出された温度変化の
時系列データに、近似的に高次遅れ要素のステップ入力
応答関数を当てはめると、変化が飽和する迄の時定数等
の熱特性をそれぞれ抽出することができる。この熱変位
の時定数等の熱特性と温度変化の時定数等の熱特性との
バランスは、主軸回転数の広い領域にわたって共通する
当該工作機械の熱特性を代表するものになる。そこで、
温度変化のデータを適宜加工して、ある時定数等の熱特
性を有する熱変位の熱的挙動に略一致した挙動をするよ
うな創成温度変化を演算することにより、熱変位の熱的
挙動と創成温度変化の挙動とを略一致させる手法を用い
る。すると、この創成温度変化と熱変位とはリニアな相
関が成立するので、温度変化から間接的に熱変位をかな
り正確に見込むことが可能になる。熱変位現象を高次遅
れ要素の温度変化による作用であるとして近似仮定して
も、実際の機体構成の複雑さとの違いによる熱変位見積
もり誤差が生じる。そこで、この誤差成分を更に異なる
高次遅れ要素の温度変化による作用であるとして近似仮
定することによって、同じ作業を繰り返し適用すること
ができる。したがって、機体の適当箇所から検出した温
度変化データから熱変位を十分高精度に見込むことがで
きる。
【0024】具体的には、まず当該工作機械の熱特性を
抽出するため、予備テストで任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を電気マイクロメータ等を用いて検出する。
これと同時に、発熱源の発熱の影響を受けて温度変化を
する機体の適当箇所の温度変化をサーミスタ温度センサ
等を用いて検出する。次いで、この温度変化が略飽和す
るまでのそれぞれの時系列データに、高遅れ要素のステ
ップ入力応答関数を当てはめてそれぞれの時定数等の熱
特性を抽出する。この温度変化のデータを用いて、熱変
位の熱的挙動と略同じ挙動をする温度変化を創り出すた
めに用意したダミー手法,リニアライズ手法,これらを
組合せた「ダミー手法+ダミー手法」又は「リニアライ
ズ手法+ダミー手法」のうちの一つを適宜選択し、それ
ぞれの手法において決定される温度変換式の係数を決定
する。選択された手法における温度変換式に、先の温度
変化の時系列データを与えて書き直すと、熱変形の熱的
挙動と略同じ挙動をする創成温度変化になる。この創成
温度変化と先の熱変形データとはリニアの相関が成立
し、その傾斜が創成温度変化から熱変位を算出する比例
定数になる。機械稼動時の熱変位補正では、先に温度変
化を検出した箇所から時々刻々検出される温度変化のデ
ータを、先の選択された手法における温度変換式を用い
て、創成温度変化に随時変換する。次いで、この創成温
度変化に、先に算出された比例定数を掛けて、補正すべ
き熱変位を求めることになる。
【0025】以下、本発明にかかる実施の形態の具体例
を図1乃至図27に基づいて説明する。 (第1の実施形態)図1乃至図8は本発明の第1の実施
形態を説明するための図である。第1の実施形態では、
ダミー手法単独又は「ダミー手法+ダミー手法」を用い
ている。図1は、本発明の第1の実施形態を示すブロッ
ク図である。図1に示す数値制御(NC)工作機械は立
形のマシニングセンタ(MC)1であるが、横形MCで
あってもMC以外の他の種類のNC工作機械であっても
よい。ベッド2上にはコラム3が立設されており、コラ
ム3には主軸頭5がZ軸方向に移動可能に取付けられて
いる。コラム3は、ベッド2上をY軸方向に移動できる
ようになっている。主軸頭5には主軸6がZ軸方向に向
けて設けられており、主軸6の先端には工具7が装着さ
れている。主軸6は、主軸頭5に取付けられた主軸モー
タ4により回転駆動される。ベッド2上に設けられたテ
ーブル8に載置された工作物(ワーク)9が工具7によ
り切削加工される。テーブル8はベッド2上をX軸方向
に移動する。なお、主軸6の軸線方向をZ軸とし、これ
に直交して直交座標系をなす各方向をX軸,Y軸とす
る。
【0026】MC1には、機体10の温度変化を検出す
る温度検出手段が設けられている。第1の実施形態で
は、主軸頭5の主軸前端側のノーズ位置の温度を検出す
るノーズ温度センサS1 と、発熱源の発熱の影響が機体
10にゆっくりと及ぶ箇所例えばコラム位置の温度を検
出するコラム温度センサS2 が、それぞれ取付けられて
いる。温度検出手段としての温度センサS1 ,S2 はど
のタイプでもよいが、外乱に強いサーミスタ温度センサ
が望ましい。
【0027】次に、本発明における熱変位補正の原理を
説明する。本発明によれば、X,Y,Zの各軸方向の熱
変位に対する補正ができるが、例えばX軸方向について
は、コラム3及び主軸頭5がX軸に関して左右対称形の
構造を有しているため、X軸方向の補正は通常必要な
い。以下の説明では、Y軸,Z軸のうち主にZ軸方向の
補正を例にとって説明する。
【0028】Z軸方向の熱変位の演算式は次式で示され
る。 ΔZ = a・(ΔZ1 +ΔZ2 ) ……(2) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 ΔZ1 :第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位 ΔZ2 :第2の遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応
答成分 a :全体補正係数(この係数“a”は、演算式
(2)の結果と実際の精度との差を修正するための係
数) である。
【0029】即ち、演算式(2)は、第1の遅れ温度変
化に対応して変化する熱変位ΔZ1と、第2の遅れ温度
変化に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ2 とを含んで
いる。前記温度変化は、各温度センサで検出されて出力
される温度から基準温度を差引いた温度差として算出さ
れる。「基準温度」としては、MC1の電源投入時にお
ける1回目の温度センサの出力、又はこの出力を複数回
加算したものの平均値、あるいは例えば20〔℃〕のよ
うな絶対基準等が採用される場合がある。温度センサ毎
の基準温度はRAM11内に保存される。ところで、工
作機械を設置した環境の温度変化が比較的ゆっくりした
ものである場合には、室温変化による工作機械全体の熱
変形は、工具と工作物を含めて略相似形に変化する。即
ち、このようなゆっくりした室温変化では加工誤差は生
じないので、この室温変化を含んだ温度変化から熱変形
を予測したものは、実際の熱変形とは異なる。したがっ
て、この場合には、工作機械1のベッド2に別途設けた
基準温度用センサS3 で検出した時々刻々の温度を基準
温度として採用し、各温度センサS1,S2 から出力さ
れる温度から、ベッド2で検出されて基準となるこの基
準温度を差し引いたものを検出温度変化として使用する
のが好ましい。このようにすれば、室温変化があって
も、精度のよい熱変位補正ができる。
【0030】なお、本発明は、式(3)に示すように、
第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位ΔZ1
みに基づく演算式を使用することもできる。 ΔZ = a・ΔZ1 ……(3)
【0031】第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱
変位ΔZ1 は、次式により算出される。 ΔZ1 = b・Y1 ……(4) ここで、Y1 :第1の遅れ温度変化〔℃〕 b :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
【0032】第1の実施形態で使用される式(4)は、
ノーズ位置に設置された温度センサS1 の出力により機
体10の熱変位を演算する式である。そして、ノーズ温
度センサS1 で検出された温度から算出される温度変化
1 から熱変位ΔZ1 を演算することになる。なお、温
度センサの設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受ける箇
所ならば、ノーズ位置以外の場所であってもよい。
【0033】一方、第2の遅れ温度変化に対応して変化
する遅れ応答成分ΔZ2 を演算する式は下記の通りであ
る。 ΔZ2 = c・Y2 ……(5) ここで、Y2 :第2の遅れ温度変化〔℃〕 c :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
【0034】第1の実施形態の「ダミー手法+ダミー手
法」では遅れ温度変化は二個使用される。ノーズ温度セ
ンサS1 で検出された温度の温度変化TN に遅れを見込
んで演算した第1の遅れ温度変化Y1 と、コラム温度セ
ンサS2 で検出された温度の温度変化TC に遅れを見込
んで演算した遅れ温度変化Y2 とから、熱変位ΔZ1
遅れ応答成分ΔZ2 を演算することになる。
【0035】図1に示すように、各温度センサS1 ,S
2 ,S3 の各出力信号は、回路36,37,38を介し
て熱変位補正装置12のA/D変換器13に入力し、入
力したアナログ信号はここでディジタル信号に変換され
る。A/D変換器13からのディジタル信号は演算記憶
部14に入力されて、ここで熱変位が演算される。演算
された熱変位に基づいて、補正手段33により加工誤差
が補正される。補正手段33の出力信号は、プログラマ
ブルコントローラ15を介して数値制御装置16に送信
され、サーボ系にフィードバックされて位置補正され
る。即ち、補正手段33は、数値制御装置16の移動指
令値に外部からオフセットを与える外部オフセット手段
に、演算結果を出力する。その結果、例えば直交座標系
の原点位置がオフセットされて、数値制御装置16は、
MC1の工具7の軌跡を制御する。なお、プログラマブ
ルコントローラ15は、数値制御装置16の指令を受け
てMC1の動作シーケンスを管理する。
【0036】各温度センサS1 ,S2 ,S3 の検出値
は、A/D変換器13を介して演算記憶部14で演算さ
れ、その指令によりRAM11内の各温度センサS1
2 ,S3 用に指定されたメモリ番地に書き込まれる。
さらにRAM11には、各温度センサS1 ,S2 ,S3
が一定時間毎にサンプリングした温度データが記憶され
ている。この温度データは数値制御装置16の表示部に
表示される。ROM17には、本発明に係る熱変位を演
算するためのプログラムや補正係数等が記憶されてい
る。クロック18は通常のクロックであり、各温度セン
サS1,S2 ,S3 の検出の時間を決定するためのもの
である。
【0037】熱変位補正装置12は、温度センサS1
2 で検出された温度の温度変化を用いて、工作機械の
熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をするような仮想の位置
1における温度変化を演算する第1の遅れ温度演算手
段34aと、この第1の遅れ温度演算手段34aで演算
された温度変化に対応して変化する熱変位ΔZ1 を演算
する熱変位演算手段32と、この熱変位演算手段32で
算出された熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手
段33とを備えている。
【0038】好ましい態様として、熱変位補正装置12
は、温度センサS2 で検出された温度の温度変化より遅
れて表れる第2の遅れ温度変化Y2 を、前記検出温度変
化に遅れを見込んで演算する第2の遅れ温度演算手段3
4bを、更に備えている。熱変位演算手段32は、第2
の遅れ温度演算手段34bで演算された第2の遅れ温度
変化に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ2 を算出し、
この遅れ応答成分ΔZ2 を先の熱変位ΔZ1 に加算す
る。補正手段33は、この加算された合計値即ち熱変位
に基づいて加工誤差を補正する演算をし、その結果を出
力する。また、第1の遅れ温度演算手段34a及び第2
の遅れ温度演算手段34bの最終演算結果と、次に運転
を再開するまでの工作機械の電源のオフ時間とを同時に
記憶する記憶手段35によって、遅れ温度の演算が中断
した場合の補償を与えている。
【0039】第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱
変位ΔZ1 のみを考慮した場合の本発明の熱変位補正方
法は、式(3)に基づく方法である。この熱変位ΔZ1
に遅れ応答成分ΔZ2 を考慮した式(2)に基づく熱変
位補正方法の方が、より高精度に補正できるので好まし
い。
【0040】次に、第1の実施形態の具体的な手順を図
2乃至図7に基づいて説明する。図2は第1の実施形態
の手順を示すフローチャート、図3はノーズ位置で検出
された温度のノーズ温度変化とZ軸熱変位を示すグラ
フ、図4はダミー手法の手順を示すグラフである。図5
は第1の遅れ温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラ
フ、図6はコラム温度変化から遅れ応答成分を算出する
手法を示すグラフ、図7は第1,第2の遅れ温度変化か
ら見積もった熱変位とZ軸熱変位との関係を示すグラフ
である。
【0041】本実施形態では、まず初めに、MC1を主
軸回転数S(例えば、S=10,000〔min-1 〕)で
連続運転する。そして、主軸6の先端部、又は主軸先端
部に一時的に装着されたテストバーの適当箇所におけ
る、Z軸方向の熱変位を時系列データ(例えば、時定数
0.57〔h〕)として実測する。なお、発熱によって
主軸が傾斜する場合には、例えばテストバーの根元部と
先端部などにおける熱変位を実測するのが好ましい。
【0042】さらに、Z軸方向の熱変位を検出する際に
同時にノーズ温度センサS1 で検出される温度の温度変
化のデータを得る。図3の横軸は時間、縦軸は温度変化
及びZ軸熱変位である。図示するように、発熱源に近い
ノーズ温度変化TN は速やかに飽和温度変化“A”に達
するので、そのノーズ温度時定数も例えば0.39
〔h〕と小さい。図4に示すように、ダミー手法は、こ
のような予備テストで得られたノーズ温度変化39を用
いて、同時に得られたZ軸熱変位40をデータ41のよ
うに計算で再現できるように、温度と熱変位の変換に高
次遅れ要素を表す関数を当てはめて、ダミーの時定数と
温度特性係数を適宜設定するものである。即ち、Z軸熱
変位40と熱的特性が略同じ遅れ温度変化Y1 を考え、
これに温度と変位の変換係数bを掛けるとZ軸熱変位Δ
1 が演算できるとしている。図3及び図4の手順で得
られたダミー時定数等の熱特性は、主軸回転数の広い領
域にわたって共通するものであることが認められる。
【0043】熱変位補正の手順としては、図1及び図2
に示すように、MC1を起動して工具7により工作物9
の切削加工を開始する(ステップ101)。第1の箇所
例えばノーズ位置の温度を温度センサS1 により検出し
て(ステップ102)、この検出信号を第1の遅れ温度
演算手段34aに入力する。次いで、「ダミー手法」に
より遅れ温度変化を演算する。即ち、ノーズ温度変化T
N より遅れて表われるZ軸熱変位の熱的挙動と略同じ挙
動をするように、第1の遅れ温度変化Y1 を、ダミーの
時定数τD ,温度特性係数Pを設定して見込む。
【0044】即ち、検出温度変化(例えば、ノーズ温度
変化TN )に遅れを見込んでMC1の熱変位の熱的挙動
と略同じ挙動をする第1の遅れ温度変化Y1 を演算する
第1の微分方程式(6)を解いた解の式(7)を用いて
いる。 τD ・dY1 1/P/dt + Y1 1/P = TN 1/P ……(6) Y1 = TN ・[1−EXP(−t/τD )]P ……(7) ここで、P:温度特性係数 t:工作機械(MC1)の電源投入時からの経過時間 である。そして、第1の遅れ温度演算手段34aでは解
の式(7)に基づいて、前記検出温度変化TN を用いて
第1の遅れ温度変化Y1 を算出する。
【0045】図5に示すように、第1の遅れ温度変化Y
1 とZ軸熱変位とは傾斜bを有する直線47で代表され
るリニアな相関を持つ領域が生じる。この傾斜bは、第
1の遅れ温度変化Y1 に対応するZ軸熱変位を算出する
際の比例定数であり、ここで算出されるZ軸熱変位は、
先の式(4)に該当する。この演算の結果が、先の図4
に示したZ軸熱変位の時系列データに一致するように、
ダミー時定数τD ,温度特性係数P及び内部補正係数b
の値が適宜選択される。ここで決まる時定数τD と係数
P,bの値は工作機械毎に固有の値であり、この作業は
一度行なっておけばよい。第1の遅れ温度演算手段34
aでは、ダミー時定数τD ,係数Pの確定した式(7)
を用いて、ノーズ温度変化TN に対応する第1の遅れ温
度変化Y1 を演算する(ステップ103)。
【0046】熱変位演算手段32では、内部補正係数b
が確定した式(4)にこの遅れ温度変化Y1 を代入し
て、熱変位を算出する(ステップ104)。この熱変位
が、第1の遅れ温度変化Y1 に対応して変化する第1の
遅れ応答成分に該当している。次に、第2の遅れ応答成
分を考慮するか否かを判別し(ステップ105)、考慮
しない場合には、熱変位演算手段32で演算した結果に
基づいて、補正手段33で加工誤差を補正する。具体的
には、例えば直交座標系の原点位置をオフセットする
(ステップ106)。その後、補正を終了させるか否か
を判別し(ステップ107)、終了させる場合にはMC
1を停止して(ステップ108)、全体の手順が終了す
る。補正が終了しない場合にはステップ102に戻る。
【0047】一方、ステップ105の判断において、第
2の遅れ応答成分Y2 を考慮する場合には、コラム温度
センサS2 で第2の箇所例えばコラム位置の温度変化T
C を検出して(ステップ109)、第2の遅れ温度演算
手段34bに入力する。コラム位置に表れる温度変化T
C は、例えば図5に示す長時間経過した領域Dで、第1
の遅れ温度変化Y1 とZ軸熱変位とのリニアな相関関係
に対して誤差を与えている。そこで、前述の「ダミー手
法」を再度用いて、コラム温度変化TCより第2の遅れ
温度変化Y2 の挙動を、ダミーの時定数τDCを設定して
見込む。
【0048】この場合には、第2の遅れ温度変化Y2
演算する第2の微分方程式(8)を解いた解の式(9)
を用いている。 τDC・dY2 1/Q/dt + Y2 1/Q = (TC −L)1/Q ……(8) Y2 = (TC −L)・[1−EXP(−t/τDC)]Q ……(9) ここで、L :室温変形特性係数(L=0も可) Q :温度特性係数 TC :コラム温度変化入力(検出温度変化) Y2 :第2の遅れ温度変化出力 τDC:ダミー時定数 である。なお、この第2の遅れ温度変化Y2 に対応する
Z軸熱変位は、温度と熱変位の変換係数(内部補正係
数)cを含んだ先の式(5)に該当する。
【0049】図6の横軸は時間、左側の零から上の縦軸
はコラム温度変化、右側の零から下の縦軸は遅れ応答成
分である。図中には、コラム温度変化の時系列データ4
3と、図5においてZ軸熱変位から直線47の縦軸の値
を差し引いた誤差44と、コラム温度変化の時系列デー
タ43を用いて式(5)と式(9)を介して得た演算結
果45とが、示されている。前記誤差44と前記演算結
果45は、それぞれ遅れ応答成分ΔZ2 の実データと演
算データに該当する。即ち、式(9)に含まれるダミー
時定数τDC,係数L,Q,及び式(5)の内部補正係数
cを適宜選択することにより、演算データを実データに
近づけることが可能になり、最良値がそれぞれ決定でき
る。ここで決まる時定数τDCと係数L,Q,cの値は工
作機械毎に固有の値であり、主軸の回転数等運転条件が
変わってもその値は変わらないので、この作業は一度行
なっておけばよい。
【0050】第2の遅れ温度演算手段34bでは、ダミ
ー時定数τDC,係数L,Q,cが確定した式(9)を用
いて、コラム温度変化TC に対応する第2の遅れ温度変
化Y2 を演算する(ステップ110)。次いで、内部補
正係数cが確定した式(5)に第2の遅れ温度変化Y2
を代入して、第2の遅れ応答成分ΔZ2 を算出する(ス
テップ111)。先に式(4)に該当する熱変位ΔZ1
を算出した熱変位演算手段32では、式(2)を用い、
このようにして算出した第2の遅れ応答成分ΔZ2 を演
算熱変位ΔZ1 に加算して、合計値即ちZ軸熱変位ΔZ
を算出する(ステップ112)。
【0051】図7の縦軸は実測されたZ軸熱変位であ
り、横軸はノーズ温度変化TN とコラム温度変化TC
を用いてステップ112までの手順を経て見積もったZ
軸熱変位ΔZである。図7に示す実測された縦軸のZ軸
熱変位と、式(4),(5)で求めた横軸のZ軸熱変位
ΔZの値とは、45°の傾きの直線46上で略一致す
る。これは両者が同じ値であることを意味している。し
たがって、各温度センサS1 ,S2 の温度データと温度
センサS3 の基準温度のデータとにより、Z軸熱変位を
十分高精度に予測することができる。
【0052】このようにして、ステップ112で演算さ
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位に対する補正がなされて
(ステップ113)、工作物9を高精度で加工すること
ができる。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ
107)、終了させる場合にはMC1を停止して(ステ
ップ108)、全体の手順が終了する。補正が終了しな
い場合にはステップ102に戻る。
【0053】図8はMC1を実機運転した場合の実測デ
ータであり、横軸は時間,縦軸は熱変位を示している。
主軸6の回転数Sは、例えばS=10,000〔min
-1 〕であり、連続運転の場合を示している。図示する
ように、図中実線48で示す補正前のZ軸方向の熱変位
と、実線52で示す補正前のY軸方向の熱変位は、それ
ぞれ最大約130及び約60〔μm〕であった。これに
対して、本発明では、補正後の熱変位の目標値を零に近
づけることができる。即ち、本発明による熱変位の補正
を行なった場合は、図中破線49,53で示すように、
±5〔μm〕程度にまでZ軸方向及びY軸方向の残留熱
変位を小さくすることができる。
【0054】(第2の実施形態)図9乃至図27は第2
の実施形態を説明するための図で、図9はブロック図で
ある。第2の実施形態では、リニアライズ手法単独又は
「リニアライズ手法+ダミー手法」を用いている。図9
に示すように、発熱源である軸受の発熱の影響を受ける
機体10の適当箇所の温度変化を検出する温度検出手段
としてのノーズ温度センサS1 と、発熱源の発熱の影響
が機体10にゆっくりと及ぶ箇所例えばコラム位置の温
度を検出するコラム温度センサS2 が、それぞれ取付け
られている。ノーズ温度センサS1 ,コラム温度センサ
2 ,基準温度用センサS3 の出力信号は、回路36,
37,38を介してA/D変換器13にそれぞれ入力
し、A/D変換器13からの出力信号は創成温度演算手
段31a及び遅れ温度演算手段34に入力する。なお、
発熱源である軸受の発熱による温度変化が表われる場所
であれば、ノーズ温度センサS1 はノーズ位置以外の例
えばヘッドの温度を検出してもよい。また、主軸が工作
物を把持するタイプの工作機械の場合であってもよい。
なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号
を付してその説明を省略する。
【0055】次に、第2の実施形態における熱変位補正
の原理を説明する。第1の実施形態と同様にZ軸方向の
補正を例にとって説明する。第2の実施形態におけるZ
軸方向の熱変位の演算式は次式で示される。 ΔZ = a・(ΔZ3 + ΔZ4 ) ……(10) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 ΔZ3 :Z軸熱変位の創成変位成分 ΔZ4 :Z軸熱変位の遅れ応答成分 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) である。即ち、演算式(10)は、検出温度変化から工
作機械の熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする創成温度
変化を基に演算した創成変位成分ΔZ3 と、検出温度変
化に対し遅れを伴って熱変位が表れる遅れ応答成分ΔZ
4 とを含んでいる。ここで扱われる検出温度変化は、ノ
ーズ温度センサS1 及びコラム温度センサS2 から出力
される温度と、基準温度用センサS3 から出力される基
準温度との差で算出するのが好ましい。
【0056】なお、本発明は、次式に示すように創成変
位成分ΔZ3 のみに基づく演算式を使用することもでき
る。 ΔZ = a・ΔZ3 ……(11) 創成変位成分ΔZ3 は、次式により算出される。 ΔZ3 = d・Y3 ……(12) ここで、Y3 :創成温度変化〔℃〕 d :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
【0057】第2の実施形態で使用される式(12)
は、一箇所に設置された温度センサ(例えば、ノーズ温
度センサS1 )の出力により機体10の熱変位を演算す
る式である。そして、ノーズ温度センサS1 で検出され
た温度の温度変化を展開して得た創成温度変化Y3 から
創成変位成分ΔZ3 を演算することになる。なお、ノー
ズ温度センサS1 の設置箇所は少なくとも一箇所あれば
よいが、発熱源の数に応じて適宜追加される。
【0058】一方、遅れ応答成分ΔZ4 を演算する式は
下記の通りである。 ΔZ4 = e・Y2 ……(13) ここで、Y2 :遅れ温度変化〔℃〕 e :内部補正係数(即ち、温度変位変換係数)〔±μ
m/℃〕 である。式(13)では、コラム温度センサS2 で検出
された温度の温度変化に遅れを見込んで演算した遅れ温
度変化Y2 から、遅れ応答成分ΔZ4 を演算することに
なる。
【0059】第2の実施形態の熱変位補正装置12a
は、温度センサS1 で検出された検出温度変化を展開し
て熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする仮想の位置P1
における温度変化を演算する創成温度演算手段31a
と、この創成温度演算手段31aで演算された創成温度
変化に対応して変化する創成変位成分ΔZ3 を演算する
熱変位演算手段32と、この熱変位演算手段32で算出
された熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段3
3とを備えている。
【0060】好ましい態様として、熱変位補正装置12
aは遅れ温度演算手段34を更に備えている。遅れ温度
演算手段34は、温度センサS2 で検出された温度の温
度変化より遅れて表れる遅れ温度変化Y2 を、前記温度
変化に遅れを見込んで演算する。熱変位演算手段32
は、遅れ温度演算手段34で演算された遅れ温度変化Y
2に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ4 を算出し、先
の創成変位成分ΔZ3 に加算する。加算して得た合計値
に基づいて、補正手段33で加工誤差が補正され、その
信号が出力される。本第2実施形態においては、第1実
施形態と同一又は相当機能部分の説明は省略する。
【0061】以下に、第2の実施形態の具体的な手順を
図10乃至図27により説明する。図10は本実施形態
の手順を示すフローチャート、図11は、ノーズ位置で
検出された温度の温度変化TN と、ヘッド位置で検出さ
れた温度の温度変化TH の経時変化を示すグラフ、図1
2は二種類のZ軸熱変位A1 ,B1 と、Z軸熱変位の代
表例(曲線22で示すサンプル熱変位ZS )の経時変化
を示すグラフ、図13は検出温度変化TN ,TH とサン
プル熱変位ZS との温度変位相関ANA,AHAを示すグラ
フである。
【0062】発熱はMC1の主軸部において主に生じる
ので、MC1を主軸回転数S(例えば、S=10,00
0〔min-1 〕で連続運転すると、図11に示すように、
温度変化の飽和温度がAO になる発熱入力23に対し
て、発熱源近傍(例えば、ノーズ位置)で検出した温度
変化TN は飽和温度がAO となる挙動を示し、発熱源か
ら離れた箇所(例えば、ヘッド位置)で検出した温度変
化TH は飽和温度がAOより低めのBO となる挙動を示
すことが一般的に知られている。前記温度変化TN を検
出するノーズ位置としては、例えば工具7側の主軸受の
アウターレースの直近を検出位置にすれば、主軸受の温
度変化が温度検出値に直ちに反映される。発熱入力23
によって主軸部に生じる熱変位は、工作機械の種類や機
体構造の大きさの違い等により異なる挙動を示す。
【0063】図12には、極端な例として二つのZ軸熱
変位(熱変位A1 ,B1 )の時系列データと、概ねその
中間のサンプル熱変位ZS で代表される熱変位の挙動と
を示している。図示するように、熱変位が早く表れる機
体構造の工作機械の場合には熱変位A1 となる。一方、
ゆっくりと熱変位が表れる機体構造の工作機械の場合に
は熱変位B1 となる。サンプル熱変位ZS は、主軸6が
一定回転(例えば、回転数S=10,000〔min
-1 〕)している時のZ軸熱変位を代表した時系列デー
タであり、その飽和値はCO である。
【0064】第2の実施の形態では、図11に示すノー
ズ位置で検出された温度の温度変化TN に、高次遅れ要
素のステップ入力応答関数を当てはめて、時定数と温度
特性係数の組合せを適宜選択することにより、最適な時
定数と温度特性係数を抽出する。同じく、図12に示す
サンプル熱変位ZS に、同様の高次遅れ要素のステップ
入力応答関数を当てはめて、時定数と熱変位特性係数の
組合せを適宜選択することにより、最適な時定数と熱変
位特性係数を抽出する。これら抽出された時定数等の熱
特性は、主軸回転数の広い領域に渡って共通するもので
あることが認められている。また、温度変化の時定数と
温度特性係数の組合せと、熱変位の時定数と熱変位特性
係数の組合せとのバランスも、工作機械毎に固有のもの
であり、主軸回転数など運転条件が変わっても変化が少
ない。したがって、これら時定数等の熱特性を抽出する
作業は一度行なっておけばよい。
【0065】熱変位補正の手順としては、図9及び図1
0に示すように、MC1を起動して工具7により工作物
9の切削を開始する(ステップ201)。また、温度セ
ンサS1 によりノーズ位置の温度を検出(又は、図示し
ない温度センサによりヘッド位置の温度を検出してもよ
い)して(ステップ202)、検出温度変化を創成温度
演算手段31aに入力させる。しかしながら、例えば図
11及び図12のデータに基づいて、検出温度変化TN
とサンプル熱変位ZS との関係、及び検出温度変化TH
とサンプル熱変位ZSとの関係を表すと、図13に示す
ように、それぞれ弓状曲線の温度変位相関ANA,AHA
なり、いずれも直線にはならない。即ち、これら検出温
度変化TN ,TH とサンプル熱変位ZS とが単純なリニ
アの関係にはならないので、ノーズ位置の温度センサS
1 (又は、ヘッド位置に設ける温度センサ)から随時検
出した温度の温度変化から直ちに熱変位を見込むことが
できない。
【0066】そこで、本実施形態では「リニアライズ手
法」により、ノーズ位置から検出した温度の温度変化T
N を用いて、熱変位の熱的挙動と略同じ挙動をする創成
温度変化Y3 を演算する。先ず、サンプル熱変位ZS
挙動は下記の微分方程式で表現できる。 τSA・dZS 1/N/dt + ZS 1/N = CO 1/N ……(14) この微分方程式を解くと下記の解の式が得られる。 ZS = CO ・[1−EXP(−t/τSA)]N ……(15) ここで、CO :サンプル熱変位ZS の飽和値 N :熱変位特性係数 t :工作機械(MC1)の電源投入時からの経過時間 τSA:サンプル熱変位の時定数 である。
【0067】図12に示すサンプル熱変位ZS の曲線2
2と略同じ経時変化をするように解の式(15)をあて
はめれば、飽和値CO 、サンプル熱変位ZS の時定数τ
SA及び熱変位特性係数Nが決定される。この時定数τSA
及び係数Nは、MC1の熱特性で定まるものであり、工
作機械毎に固有の値である。こうして時定数τSA,係数
N及び飽和値CO が定められた解の式(15)を用いて
熱変位ZS を演算すれば、図14に示すように創成変位
21のデータ(図中「○」印)が作成される。図14
は、サンプル熱変位ZS と、これと同じ経時変化をする
創成変位21のデータとを示している。
【0068】次に、MC1の発熱源近傍から検出された
図15に示す曲線の第1のサンプル温度変化TNSは先の
検出温度変化TN (図11)に相当するものであり、そ
の挙動は下記の第3の微分方程式で表現できる。 τNS・dTN 1/M/dt + TN 1/M = X1/M ……(16) この微分方程式を解くと下記の解の式が得られる。 TN = X・[1−EXP(−t/τNS)]M ……(17) ここで、M :温度特性係数 TN :ノーズ位置の検出温度変化 X :発熱源温度変化 τNS:サンプル温度変化の時定数 である。
【0069】図15に示すサンプル温度変化TNSの曲線
24と略同じ経時変化をするように解の式(17)をあ
てはめれば、飽和温度AO ,サンプル温度変化TNSの時
定数τNS及び温度特性係数Mが決定される。ここで、サ
ンプル熱変位ZS (図14)の熱的挙動と略同じ挙動の
熱特性を有する第1の温度変化モデルTM1の挙動(即
ち、創成温度変化Y3 )は、下記の第4の微分方程式で
表現できる。したがって、この温度変化モデルTM1は、
サンプル熱変位ZS の時定数τSAと同じ時定数を有して
いることになる。 τSA・dY3 1/N/dt + Y3 1/N = X1/N ……(18) この微分方程式を解くと下記の解の式が得られる。 Y3 = X・[1−EXP(−t/τSA)]N ……(19) 式(17)によれば、ノーズ温度変化TN から発熱部の
温度変化Xが分かるので、この値Xを式(19)に代入
すると解の式(20)が得られ、この式(20)によ
り、ノーズ温度変化TN とは異なった時定数を有する創
成温度変化Y3 が算出される。 Y3 = TN ・[1−EXP(−t/τSA)]N /[1−EXP(−t/τNS)]M ……(20) こうして時定数τSA,τNS,係数M,N等の熱変位特性
係数が定められた解の式(20)を用いて、創成温度演
算手段31aでノーズ温度変化TN から創成温度変化Y
3 を演算する。これら時定数等は、MC1の熱特性で定
まるものであり、工作機械毎に固有の値である。即ち、
創成温度演算手段31a(図9)で演算する場合には、
検出温度変化(例えば、ノーズ温度変化TN )から発熱
源の温度変化Xを算出する第3の微分方程式(16)
と、この発熱源温度変化Xを用いてMC1の熱変位の熱
的挙動と略同じ挙動をする創成温度変化Y3 を算出する
第4の微分方程式(18)とを解いた解の式(20)を
用いている。
【0070】図15は、サンプル温度変化TNS及び温度
変化モデルTM1に加えて、式(20)によりサンプル温
度変化TNSを用いて創成した創成温度変化Y3 を「○」
印で表示している。この「○」印は、測定間隔即ち演算
インターバルが例えば1.0〔min 〕の場合を示してい
る。このように解の式(20)を用いた演算により、ノ
ーズ位置検出温度TN から任意の時定数を有する熱変位
と略同じ挙動をするような熱特性を有する創成温度変化
3 を創成することができる。創成温度演算手段31a
(図9)では解の式(20)に基づいて、検出温度変化
としてのノーズ温度変化TN を用いて創成温度変化Y3
を算出することができるが、以下に述べるように、他の
箇所から検出した温度変化を用いて創成温度変化を算出
することもできる。
【0071】MC1の発熱源から離れた箇所で検出され
た図16に示す曲線25の第2のサンプル温度変化THS
は、先の検出温度変化TH (図11)に相当するもので
あり、その挙動は下記の微分方程式で表現できる。 τHS・dTH 1/M/dt + TH 1/M = X1/M ……(21) この微分方程式を解くと下記の解の式が得られる。 TH = X・[1−EXP(−t/τHS)]M ……(22) ここで、M :温度特性係数 TH :ヘッド位置の検出温度変化 X :発熱源温度変化 τHS:サンプル温度変化の時定数 である。
【0072】図16に示す第2のサンプル温度変化THS
の曲線25と略同じ経時変化をするように解の式(2
2)をあてはめれば、飽和温度BO ,サンプル温度変化
HSの時定数τHS及び温度特性係数Mが決定される。飽
和温度BO を持ち、サンプル熱変位ZS (図14)の熱
的挙動と略同じ挙動の熱特性を有する第2の温度変化モ
デルTM2の挙動(即ち、創成温度変化Y3A)は、下記の
微分方程式(23)で表現できる。したがって、この温
度変化モデルTM2は、サンプル熱変位ZS の時定数τSA
と略同じ時定数を有していることになる。 τSA・dY3A 1/N/dt + Y3A 1/N = X1/N ……(23) この微分方程式を解くと下記の解の式が得られる。 Y3A = X・[1−EXP(−t/τSA)]N ……(24) 式(22)によれば、ヘッド温度変化TH から発熱部の
温度変化Xが分かるので、この値Xを式(24)に代入
すると、先の解の式(20)と実質的に同じ解の式(2
5)が得られ、この式(25)により創成温度変化Y3A
が算出される。 Y3A = TH ・[1−EXP(−t/τSA)]N /[1−EXP(−t/τHS)]M ……(25)
【0073】図16は、サンプル温度変化THS及び温度
変化モデルTM2に加えて、式(25)によりサンプル温
度変化THSを用いて創成した創成温度変化Y3Aを「○」
印で表示している。この「○」印は、測定間隔即ち演算
インターバルが例えば1.0〔min 〕の場合を示してい
る。このように解の式(25)を用いた演算により、ヘ
ッド位置検出温度TH から任意の時定数を有する熱変位
と略同じ挙動をするような熱特性を有する創成温度変化
3Aを創成することができる。したがって、サンプル温
度変化の検出箇所は、発熱源の影響を受ける位置であれ
ば、時定数の小さいノーズ位置でも、時定数の大きいヘ
ッド位置でも、その他のいずれの箇所であってもよいこ
とが分かる。即ち、工作機械の熱変位補正に関して、多
種の熱変形挙動に対して適用できる計算式を採用するこ
とによって、精度と汎用性を高めることができる。本実
施形態の創成温度演算手段31a(図9)では、時定数
τSA,τNS,係数M,N等の熱変位特性係数が定められ
た解の式(20)に基づいて、ノーズ温度センサS1
検出されたノーズ温度変化TN を検出温度変化として用
いて、創成温度変化Y3 を算出している(ステップ20
3)。
【0074】創成温度変化Y3 ,Y3Aは、いずれもサン
プル熱変位ZS (図12,図14)と同じ時定数等の熱
特性をそれぞれ有している。したがって、図17に示す
ように、創成温度変化Y3 とサンプル熱変位ZS との関
係,及び創成温度変化Y3Aとサンプル熱変位ZS との関
係は、それぞれ温度変位相関ANB,AHBになり、傾きを
それぞれα1 ,α2 とするリニアな相関として表すこと
ができる。即ち、検出温度変化TN ,TH から単純に熱
変位を予測することが可能になる。なお、各温度変位相
関ANB,AHBの傾きα1 ,α2 は次式により算出され
る。 α1 = CO /AO ……(26) α2 = CO /BO ……(27) 熱変位演算手段32では、式(20)(又は、式(2
5))を用いて、創成温度変化Y3 から熱変位(即ち、
創成変位成分ΔZ3 )を算出する(ステップ204)。
【0075】以上述べたように、リニアライズ手法は、
基本的には時定数の小さい敏感な熱変位を、発熱源から
離れた位置の温度センサで検出した温度の温度変化から
見込むものである。この手法により算出される創成変位
成分ΔZ3 は、式(12)に相当するものであり、この
手法単独でも精度のよい熱変位補正ができる。次に、遅
れ応答成分ΔZ4 を考慮するか否かを判別し(ステップ
205)、考慮しない場合には、熱変位演算手段32で
演算した結果に基づいて、補正手段33で加工誤差を補
正する(ステップ206)。その後、補正を終了するか
否かを判別し(ステップ207)、終了させる場合には
MC1を停止して(ステップ208)、全体の手順が終
了する。補正が終了しない場合にはステップ202に戻
る。一方、ステップ205の判断において、遅れ応答成
分ΔZ4 を考慮する場合には、コラム温度センサS2
検出されたコラム位置の温度を、遅れ温度演算手段34
に入力する。
【0076】図17に示す温度変位相関ANBは原点を通
る直線になっている。ところが、図18に示すように、
前記温度特性の係数等を抽出するために測定されたノー
ズ位置のサンプル温度変化TN が、温度測定の初期値に
誤差を含む場合がある。即ち、工作機械の熱変位に対応
する真実のノーズ位置温度変化は、図示する曲線26で
あるのに対して、サンプル温度変化TN の測定値は原点
を通らずにその全体が例えば約10%ほど上にシフトし
ている。この原因としては、機体10が十分に放熱しな
いうちに温度変化の測定をする場合や、熱変位の測定時
とサンプル温度変化TN の測定時とのタイミングがずれ
た場合等が考えられる。そのため、本来の温度変化は曲
線26で示すものであるはずなのに、実測した経時変化
のデータTN は、図18に示すようにずれることにな
る。
【0077】このように、温度変化測定値が初期値誤差
を含んだ場合には、間違ったデータに基づいて創成温度
変化が計算されることになる。その結果、図19に示す
ように、創成温度変化Y3 とサンプル熱変位ZS とのリ
ニアな相関をなす温度変位相関ANBは、本来の傾きα1
を有する直線27から、傾きα1Aを有する直線28に変
化した温度変位相関になる。飽和値CO における創成温
度変化Y3 のずれの量は、例えば0.1×AO になって
いる。この場合には、前述の解の式(17)は下記の解
の式で表現できる。 TN = Ao ・[1−EXP(−t/τNS)]M + f・Ao ……(28) ここで、f :誤差の係数 である。図18,図19では、係数f=0.1の場合即
ち誤差が10%の場合を示している。
【0078】また、原点を通る直線状の温度変位相関A
NB(図17)に関して、前記熱特性の係数等を抽出する
ために測定されたサンプル熱変位ZS が、熱変位測定の
初期値に誤差を含む場合がある。即ち、図20に示すよ
うに、工作機械(MC1)の真実の熱変位は曲線26a
であるのに対して、サンプル熱変位ZS の測定値は原点
を通らずにその全体が例えば約10%ほど上にシフトし
ている。この原因は上述した測定時のタイミングのずれ
等が考えられる。そのため、本来の熱変位は曲線26a
で示すものであるはずなのに、実測した経時変化のデー
タZS は、図20に示すようにずれることになる。
【0079】このように、熱変位測定値が初期値誤差を
含んだ場合には、間違ったデータに基づいて計算されて
しまう。その結果、図21に示すように、創成温度変化
3とサンプル熱変位ZS とのリニアな相関をなす温度
変位相関ANBは、本来の傾きα1 を有する直線27か
ら、例えば0.1×CO だけ上にシフトした線28aに
変化した温度変位相関になる。この場合には、前述の解
の式(15)は下記の解の式で表現できる。 ZS = CO ・[1−EXP(−t/τSA)]N + g・CO ……(29) ここで、g :誤差の係数 である。図20,図21では、係数g=0.1の場合即
ち誤差が10%の場合を示している。
【0080】したがって、機械の温度特性や熱特性を抽
出する作業は、機体が十分に放熱した状態から開始する
ことが望ましい。また、図19に示すように直線の傾き
が変わったり、図21に示すように原点を通らないよう
なグラフが作成されると、サンプル温度測定やサンプル
熱変位測定が間違っていることが分かる。
【0081】上述の図11乃至図21では、特性係数の
抽出作業中は室温が一定であると仮定した場合について
説明したが、実際には抽出作業中に室温は変化している
ことが多いので、この室温変化を考慮する場合について
以下に説明する。検出温度変化と主軸部の熱変位とが同
じ比率γで変化する時には、両者のリニアな相関は保た
れており、例えば図22に示すような温度変位相関A
NBA になる。そして、前述の解の式(17),(15)
はそれぞれ下記の解の式(30),(31)で表現でき
る。 TN = AO ・[1−EXP(−t/τNS)]M × γ ……(30) ZS = CO ・[1−EXP(−t/τSA)]N × γ ……(31) ここで、γ :変化する比率 である。これは、室温変化が生じても温度変化に伴って
それに応じた熱変位が同時に生じる時は、リニアな相関
は崩れないことを意味する。即ち、比率γで温度変化が
変わると、主軸部熱変位も同じ割合γで変化することに
なり、その結果として温度変位相関ANBA のグラフは室
温の上昇により領域Eの部分が直線状に伸びるだけであ
り、直線の傾きα1 は室温変化の影響を受けないことが
分かる。なお、図22中の符号AO は、室温が変化しな
い場合のサンプル温度変化の飽和温度、符号DO は、室
温が変化(例えば、温度上昇)した後のサンプル温度変
化の飽和温度である。ところで、室温変化が工作機械の
全ての構造を一様に変化させた時には、熱変形は相似形
で変化する。この時はワークも同様に変形するので、室
温変化が機械構造全体に及ぼす熱的影響は無視できる。
温度変化の基準となる基準温度には、機体10のうち最
も温度変化が少ない箇所であるベッド2の温度を採用す
れば、最適な変形予測を得て、NC装置に正確な補正量
をフィードバックすることができることから、本発明で
は、ベッド2の温度変化を温度センサS3 により検出し
ている。
【0082】上述のように、室温の変化は主軸部での温
度変位相関の傾きに影響を与えないので、主軸部の熱変
位と検出温度変化のリニアな相関は保たれることが分か
っている(図22)。ところが、ボールねじ等を組み込
んだ工作機械の構造によっては、室温が変化する条件の
下で測定したサンプル温度変化とサンプル熱変位の相関
例として、図23に示すような曲線になる温度変位相関
NBB がある。これは、室温変化が、主軸近傍部以外の
機械構造例えばボールねじ構造部に影響した結果、図2
3の領域Fでの温度変位相関ANBB に変化が生じたこと
を意味し、この変化分が遅れ応答成分ΔZ4 に該当する
ことになる。
【0083】この遅れ応答成分ΔZ4 を考慮する場合に
は、前述の「ダミー手法」を用いて、コラム温度センサ
2 で検出したコラム位置の温度の温度変化TC より遅
れて表れる遅れ温度変化Y2 の挙動を、ダミーの時定数
τDCを設定して見込む。この場合には、検出温度変化T
C に遅れを見込んで、工作機械の実際の熱変位と演算熱
変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分の熱的挙動と遅
れ温度変化Y2が略同じ挙動をするように、遅れ応答成
分と略同じ熱特性を有する遅れ温度変化Y2 を演算する
第2の微分方程式(32)を解いた下記の解の式(3
3)を用いている。 τDC・dY2 1/Q/dt + Y2 1/Q = (TC −L)1/Q ……(32) Y2 = (TC −L)・[1−EXP(−t/τDC)]Q ……(33) ここで、L :室温変形特性係数(L=0も可) Q :温度特性係数 TC :温度センサS2 で検出される室温変化〔℃〕 Y2 :遅れ温度変化〔℃〕 τDC:ダミー時定数〔min〕 である。
【0084】図24は、主軸の発熱部近傍の構造による
熱変位を示すサンプル熱変位ZS (図12,図14)を
変位要素G1 とし、室温変化に影響された主軸部以外の
機械構造例えばボールねじによる熱変形を変位要素G2
とし、その両変位要素G1 ,G2 を合成したものをサン
プル熱変位ZS1として、図示している。即ち、サンプル
熱変位ZS1は、二つの熱的要素G1 ,G2 から成り立っ
ていることを示している。図23のデータANBB の領域
Fは、温度センサS2 で検出されたコラム温度変化(室
温変化)TC とサンプル熱変位ZS1との相関に対応して
いる。
【0085】図25は、温度センサS2 で検出された室
温変化TC と、変位要素G2 (時定数τDC)とを示して
いる。更に、図25には、式(33)により室温変化T
C を用いて創成した遅れ温度変化Y2 を式(13)に代
入して得た遅れ応答成分ΔZ4 が、「○」印で表示され
ている。遅れ応答成分ΔZ4 は長時間経過すると、飽和
値EO になることを前提にしており、「○」印は室温の
測定間隔即ち演算インターバルが例えば1.0〔min 〕
の場合を示している。このように、式(33)のダミー
時定数τDC,室温変形特性係数L,温度特性係数Q,及
び式(13)の内部補正係数eを適宜選択することによ
り、任意の時定数等の熱特性を持つ変位要素G2 と略同
じ挙動をするような遅れ応答成分ΔZ4 を創成する。こ
れにより、室温変形特性係数L,温度特性係数Q,ダミ
ー時定数τDC及び係数eが抽出される。
【0086】この遅れ温度変化Y2 と遅れ応答成分ΔZ
4 とは、図26に示すように傾きをeとしたリニアの関
係の温度変位相関ANBC の直線56になるので、先の式
(13)が成立する。ここで決まる時定数τDCと係数
L,Q,eの値は工作機械毎に固有の値であり、この作
業は一度行なっておけばよい。式(13)により算出さ
れる遅れ応答成分ΔZ4 は、室温変化TC によって影響
を受けるボールねじ等による変形分である。遅れ温度演
算手段34では、ダミー時定数τDC,係数L,Qが確定
した式(33)を用いて、温度センサS2 で検出される
温度の温度変化TC に対応する遅れ温度変化Y2 を演算
する(ステップ209)。次いで、この遅れ温度変化Y
2 を、係数eが確定した式(13)に代入すると、遅れ
応答成分ΔZ4 が得られる(ステップ210)。先に、
式(12)を用いて創成変位成分ΔZ3 を算出した熱変
位演算手段32では、このようにして算出した遅れ応答
成分ΔZ4 を式(10)により創成変位成分ΔZ3 に加
算して、合計値即ちZ軸熱変位ΔZを演算する(ステッ
プ211)。
【0087】図27の縦軸は実測されたZ軸熱変位であ
り、横軸は室温変化TC を用いてステップ211までの
手順を経て見積もったZ軸熱変位ΔZである。この熱変
位ΔZの演算には、全体補正係数“a”を1として式
(12),(13)を式(10)に代入して得た次式を
用いている。 ΔZ = d・Y3 + e・Y2 ……(34) 図27に示す実測された縦軸のZ軸熱変位と、式(3
4)で求めた横軸のZ軸熱変位ΔZの値とは、45°の
傾きの直線57上で略一致する。これは両者が同じ値で
あることを意味している。したがって、室温変化によっ
て影響を受けるボールねじ等による熱変形があっても、
機体10の主軸受の発熱の影響を受ける箇所とコラムに
それぞれ設置したノーズ温度センサS1 とコラム温度セ
ンサS2 の温度データにより、Z軸熱変位を十分高精度
に予測することができる。
【0088】このようにして、ステップ211で演算さ
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位補正がなされて(ステップ
212)、工作物9を高精度で切削加工することができ
る。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ20
7)、終了させる場合にはMC1を停止して(ステップ
208)、全体の手順が終了する。補正が終了しない場
合にはステップ202に戻る。
【0089】なお、第1,第2実施形態で微分方程式を
用いた演算を行なった場合には、工作機械の電源をオフ
すると演算の経過が失われる。そのため、図1,図9に
示すように、前回の演算結果を記憶し、工作機械の電源
をオフして再度オンするまでの間の時間も記憶する記憶
手段35を、熱変位補正装置12,12aに設けること
が好ましい。記憶手段35は、遅れ温度演算手段34,
34a,34b,創成温度演算手段31aとの間でデー
タの授受を行なうことになる。このようにすれば、電源
をオフした場合でも、熱変位補正の演算の経歴が保存さ
れるので、その再開始時点における熱変位補正の演算を
直ちに且つ容易に行なうことが可能になる。
【0090】また、リニアライズ手法と組合せるダミー
手法を用いる場合に、工作機械のコラム,ベッド,クロ
スレール等に別途設けた温度センサにより機体の温度変
化を検出してもよい。なお、本発明における温度検出手
段としては温度センサの代わりに、温度変化による機体
の伸縮を検出するひずみゲージ(Strain gauge)を使用
してもよい。即ち、機体の温度変化を温度センサにより
直接検出する代りに、温度変化と同様の出力特性を有す
るひずみゲージを機体に取付ける。そして、このゲージ
の出力信号をA/D変換器13に入力させれば、実質的
に温度変化を検出するのと同じことになり同様の作用効
果を奏する。ところで、各実施形態における相関は一定
の対応関係があればよく、一次の相関以外の場合でもよ
い。
【0091】本発明は、従来のような機体構成部分の長
さを使用していないので、機体構造上の長さの制約がな
く、また、機体構成部分の長さ測定や回転数を種々変え
てデータの実測作業をする必要はない。したがって、回
転数の測定は1回のみでよいことになり、実機を用いた
熱変位特性抽出の実測作業が簡略化される。また、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業も不要である。
【0092】また、温度センサは任意の位置に取付けて
よいので、温度センサの取付位置の制約が緩和されると
同時に、少数(例えば、一つの発熱源について1本又は
2本)の温度センサのみで熱変位を精度よく見込むこと
ができる自由度の高いものにすることができる。本発明
では、必要な温度センサの数を少なくできるので、演算
に使用する温度データが少なくなって外乱の入り込む余
地が減少し、これにより演算の精度が向上し、高精度な
熱変位補正ができる。また、機体の温度に基づいて補正
をしており、室温を直接検出していない。したがって、
例えば冬季に部屋の扉を開けたり夏季にクーラーを運転
するなどして室温が急激に変化しても、室温による影響
がなくなり、補正の精度を高精度に維持することができ
る。また、本発明に係る前述の各手法のいずれかを、複
数の主軸を有する工作機械に適用することもできる。更
に、本発明の熱変位補正方法は、熱変位が機械の精度や
性能に悪影響を与える他の種類の機械、例えば印刷機
械,プレス,レーザ加工機等の自動制御機械のほか計測
機器や油圧機器に適用しても、同様の作用効果を奏す
る。前記自動制御機械は、NC装置等の自動制御装置に
よって制御されている。
【0093】
【実施例】図28乃至図30は、第2の実施形態に関す
る実験データで、第2実施形態と同一又は相当部分には
同一符号を付している。図28は図23のグラフに相当
するデータを示しており、リニアライズ手法単独で熱変
位補正を行なった場合である。ノーズ位置で検出された
温度変化と式(20)等を用いて、図示する温度変位相
関ANBB を得ている。図28の縦軸は実測したZ軸熱変
位である。実測したデータは「○」印で示しているが、
原点を通っておらず、また領域Fの部分ではリニアの相
関が崩れていることが分かる。
【0094】図29は図25のグラフに相当するデータ
であり、「リニアライズ手法+ダミー手法」の場合を示
している。室温変化TC と実測された変位要素G2
「●」印で示し、室温変化TC 等と式(33)を用いて
遅れ温度変化Y2 を算出している。更に内部補正係数e
と式(13)を用いて遅れ応答成分ΔZ4 を得ている。
図示するように、演算された遅れ応答成分ΔZ4 と変位
要素G2 とが、かなり正確に一致していることが分か
る。
【0095】図30は、「リニアライズ手法+ダミー手
法」をMC1に適用して実機運転した場合の補正前と補
正後の実測データであり、横軸は時間,縦軸はZ軸熱変
位を示している。主軸6の回転数Sは、例えばS=1
0,000〔min-1 〕であり、連続運転をした。図示す
るように、図中実線60で示す補正前のZ軸方向の熱変
位は最大約130〔μm〕であった。これに対して、本
発明では、補正後の熱変位の目標値を零に近づけること
ができる。即ち、本発明による熱変位の補正を行なった
場合は、図中破線61で示すように、±5〔μm〕以下
にまで残留熱変位を小さくすることができることを確認
した。なお、各図中同一符号は同一又は相当部分を示
す。
【0096】
【発明の効果】本発明は上述のように構成したので、熱
変位による加工誤差に対する補正を高精度で行なうこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を説明
するための図で、図1はブロック図である。
【図2】第1の実施形態の手順を示すフローチャートで
ある。
【図3】ノーズ位置で検出された温度のノーズ温度変化
とZ軸熱変位の経時変化を示すグラフである。
【図4】ダミー手法の手順をグラフである。
【図5】第1の遅れ温度変化に対するZ軸熱変位を示す
グラフである。
【図6】コラム温度変化から遅れ応答成分を演算する手
法を示すグラフである。
【図7】第1,第2の遅れ温度変化から見積もった熱変
位とZ軸熱変位との関係を示すグラフである。
【図8】補正前と補正後のZ軸熱変位の実測データを示
すグラフである。
【図9】図9乃至図27は第2の実施形態を説明するた
めの図で、図9はブロック図である。
【図10】第2の実施形態の手順を示すフローチャート
である。
【図11】ノーズ位置で検出された温度の温度変化とヘ
ッド位置で検出された温度の温度変化の経時変化を示す
グラフである。
【図12】二種類のZ軸熱変位と、Z軸熱変位の代表例
(サンプル熱変位)の経時変化を示すグラフである。
【図13】検出温度変化とサンプル熱変位との温度変位
相関を示すグラフである。
【図14】サンプル熱変位と創成変位とを示すグラフで
ある。
【図15】第1のサンプル温度変化と第1の温度変化モ
デルと創成温度変化とを示すグラフである。
【図16】第2のサンプル温度変化と第2の温度変化モ
デルと創成温度変化とを示すグラフである。
【図17】二つの温度変位相関ANB,AHBを示すグラフ
である。
【図18】真実の温度変化とシフトしたサンプル温度変
化とを示すグラフである。
【図19】サンプル温度変化がシフトした場合の温度変
位相関ANBを示すグラフである。
【図20】真実の熱変位とシフトしたサンプル熱変位と
を示すグラフである。
【図21】サンプル熱変位がシフトした場合の温度変位
相関ANBを示すグラフである。
【図22】室温変化の影響を考慮した場合の温度変位相
関ANBA を示すグラフである。
【図23】室温変化及びボールねじ等の影響がある場合
の温度変位相関ANBB を示すグラフである。
【図24】変位要素G1 ,G2 とサンプル熱変位ZS1
を示すグラフである。
【図25】室温変化と変位要素G2 と遅れ応答成分ΔZ
4 とを示すグラフである。
【図26】室温変化及びボールねじ等の影響を考慮した
場合の温度変位相関ANBC を示すグラフである。
【図27】創成温度変化及び遅れ温度変化から見積もっ
た熱変位と、Z軸熱変位との関係を示すグラフである。
【図28】図28乃至図30は第2の実施形態に関する
実施例を示す図である。図28は温度変位相関ANBB
示す実験データのグラフで図23に相当する図である。
【図29】室温変化と変位要素G2 と遅れ応答成分ΔZ
4 とを示す実験データのグラフで図25に相当する図で
ある。
【図30】補正前と補正後のZ軸熱変位の実測データを
示すグラフである。
【符号の説明】 1 立形マシニングセンタ(工作機械) 2 ベッド 10 機体 12,12a 熱変位補正装置 31a 創成温度演算手段(温度演算手段) 32 熱変位演算手段 33 補正手段 34 遅れ温度演算手段(温度演算手段) 34a 第1の遅れ温度演算手段(温度演算手段) 34b 第2の遅れ温度演算手段(温度演算手段) L 室温変形特性係数 M,P,Q 温度特性係数 N 熱変位特性係数 S1 ノーズ温度センサ(温度検出手段) S2 コラム温度センサ(温度検出手段) S3 基準温度用センサ(温度検出手段) TN ,TC ,TNS 検出温度変化 X 発熱源温度変化 Y1 ,Y2 遅れ温度変化 Y3 ,Y3A 創成温度変化 t 工作機械の電源投入時からの経過時間 τD ,τDC ダミーの時定数 τNS サンプル温度変化の時定数 τSA サンプル熱変位の時定数

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発熱源の影響を受けて温度が急激に且つ
    大きく変化する箇所の機体の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで工作機械の熱変位の
    熱的挙動と同じ挙動をする第1の遅れ温度変化を演算す
    る第1の微分方程式に基づいて、前記検出温度変化を用
    いて前記第1の遅れ温度変化を算出し、 この第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位を演
    算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変
    位と前記演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分
    の熱的挙動と同じ挙動をする第2の遅れ温度変化を演算
    する第2の微分方程式に基づいて、前記検出温度変化を
    用いて前記第2の遅れ温度変化を算出し、 この第2の遅れ温度変化に対応して変化する前記遅れ応
    答成分を前記演算熱変位に加算して得た合計値に基づい
    て、加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱
    変位補正方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の微分方程式は、 τ ・dY 1/P /dt 1/P =T
    1/P 前記第2の微分方程式は、 τ DC・dY 1/Q /dt 1/Q =(T
    −L) 1/Q ここで、 L :室温変形特性係数 P,Q :温度特性係数 ,T :検出温度変化 ,Y :遅れ温度変化 t :工作機械の電源投入時からの経過時間 τ ,τ DC:ダミーの時定数 であることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の熱
    変位補正方法。
  3. 【請求項3】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の
    温度変化を検出し、 この検出温度変化から前記発熱源の温度変化を算出する
    第3の微分方程式による前記発熱源温度変化を用いて工
    作機械の熱変位の熱的挙動と同じ挙動をする創成温度変
    化を算出する第4の微分方程式に基づいて、前記検出温
    度変化を用いて前記創成温度変化を算出し、 この創成温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて
    加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位
    補正方法。
  4. 【請求項4】 前記第3の微分方程式は、 τ NS・dT 1/M /dt 1/M =X
    1/M 前記第4の微分方程式は、 τ SA・dY 1/N /dt 1/N =X
    1/N ここで、 M :温度特性係数 N :熱変位特性係数 :検出温度変化 X :発熱源温度変化 :創成温度変化 t :工作機械の電源投入時からの経過時間 τ NS:サンプル温度変化の時定数 τ SA:サンプル熱変位の時定数 であることを特徴とする請求項3に記載の工作機械の熱
    変位補正方法。
  5. 【請求項5】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の
    温度変化を検出し、 この検出温度変化から前記発熱源
    の温度変化を算出する第3の微分方程式による前記発熱
    源温度変化を用いて工作機械の熱変位の熱的挙動と同
    挙動をする創成温度変化を算出する第4の微分方程式に
    基づいて、前記検出温度変化を用いて前記創成温度変化
    を算出し、 この創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変
    位と前記演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分
    の熱的挙動と同じ挙動をする遅れ温度変化を演算する第
    2の微分方程式に基づいて、前記検出温度変化を用いて
    前記遅れ温度変化を算出し、 この遅れ温度変化に対応して変化する前記遅れ応答成分
    を前記演算熱変位に加算して得た合計値に基づいて、加
    工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位補
    正方法。
  6. 【請求項6】記第2の微分方程式は、 τDC・dY 1/Q/dt + Y 1/Q=(T
    −L)1/Q 前記第3の微分方程式は、 τNS・dT 1/M/dt + T 1/M=X
    1/M 前記第4の微分方程式は、 τSA・dY 1/N/dt + Y 1/N=X
    1/N ここで、 L :室温変形特性係数M,Q :温度特性係数 N :熱変位特性係数 T,T:検出温度変化 X :発熱源温度変化 :遅れ温度変化 Y:創成温度変化 t :工作機械の電源投入時からの経過時間τ DC :ダミーの時定数 τNS:サンプル温度変化の時定数 τSA:サンプル熱変位の時定数 であることを特徴とする請求項5に記載の工作機械の熱
    変位補正方法。
  7. 【請求項7】 前記検出温度変化は、前記機体の適当箇
    所で検出された温度から、ベッドで検出され基準となる
    基準温度を差引いて算出されることを特徴とする請求項
    1乃至6のいずれかに記載の工作機械の熱変位補正方
    法。
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