JPH08300242A - 工作機械の熱変位補正方法及びその装置 - Google Patents
工作機械の熱変位補正方法及びその装置Info
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- JPH08300242A JPH08300242A JP13289495A JP13289495A JPH08300242A JP H08300242 A JPH08300242 A JP H08300242A JP 13289495 A JP13289495 A JP 13289495A JP 13289495 A JP13289495 A JP 13289495A JP H08300242 A JPH08300242 A JP H08300242A
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- Numerical Control (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 繰り返し演算を行なわないで任意の時に熱変
位に対する補正を高精度に行なう。 【構成】 発熱源の影響を受ける機体10の温度変化を
温度センサS1 ,S2 により検出し、この検出温度変化
から工作機械1の熱変位の時定数と略同じ時定数を有す
る演算温度変化を算出する微分方程式を解いた解の式に
基づいて、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化
を算出し、この演算温度変化に対応して変化する熱変位
に基づいて加工誤差を補正する。
位に対する補正を高精度に行なう。 【構成】 発熱源の影響を受ける機体10の温度変化を
温度センサS1 ,S2 により検出し、この検出温度変化
から工作機械1の熱変位の時定数と略同じ時定数を有す
る演算温度変化を算出する微分方程式を解いた解の式に
基づいて、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化
を算出し、この演算温度変化に対応して変化する熱変位
に基づいて加工誤差を補正する。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は工作機械の熱変位補正方
法及びその装置に関する。
法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】工作機械には機体各部に発熱源があり、
例えば主軸の軸受のころがり摩擦熱や、切削部分からの
発熱など数多い。これらの熱は機体各部に伝導して機体
を変形させるが、この機体の変形は加工精度に大きく影
響する。そこで、これら各種原因による機体の熱変位を
予測して熱変位による誤差の分をサーボ系にフィードバ
ックして補正する補正方法やその装置が種々提案されて
いる。
例えば主軸の軸受のころがり摩擦熱や、切削部分からの
発熱など数多い。これらの熱は機体各部に伝導して機体
を変形させるが、この機体の変形は加工精度に大きく影
響する。そこで、これら各種原因による機体の熱変位を
予測して熱変位による誤差の分をサーボ系にフィードバ
ックして補正する補正方法やその装置が種々提案されて
いる。
【0003】斯かる補正機能を有する工作機械では、機
械の運転に伴う熱変位を如何に正確に見込むかが重要で
あり、そのために種々の試みがなされている。例えば、
主軸の回転数等の運転条件から熱変位を予測するもの、
あるいは機体に組込んだ変位センサで直接熱変位を検出
するもの等がある。
械の運転に伴う熱変位を如何に正確に見込むかが重要で
あり、そのために種々の試みがなされている。例えば、
主軸の回転数等の運転条件から熱変位を予測するもの、
あるいは機体に組込んだ変位センサで直接熱変位を検出
するもの等がある。
【0004】本出願人は、特公平6−22779号公報
及び特開平3−79256号公報で、機体温度から熱変
位を算出する方式の工作機械の熱変位補正方法を提案し
た。この方法における熱変位の算出は、基本的には次式
(1)の原理に基づいている。 ΔL=L×線膨張係数×温度変化 ……(1) ここで、ΔL:機体構成部分の熱変位 L:機体構成部分の長さ である。
及び特開平3−79256号公報で、機体温度から熱変
位を算出する方式の工作機械の熱変位補正方法を提案し
た。この方法における熱変位の算出は、基本的には次式
(1)の原理に基づいている。 ΔL=L×線膨張係数×温度変化 ……(1) ここで、ΔL:機体構成部分の熱変位 L:機体構成部分の長さ である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術における
補正後の加工精度としては、20乃至30〔μm〕程度
が限界である。ところが、近年の工作機械ユーザーから
は、補正後の精度として10〔μm〕以下の加工誤差に
抑えることが一般的に要求されている。これは、セラミ
ック材など新素材や、さらに小型化された工作物等を高
精度で加工する必要性があるからである。
補正後の加工精度としては、20乃至30〔μm〕程度
が限界である。ところが、近年の工作機械ユーザーから
は、補正後の精度として10〔μm〕以下の加工誤差に
抑えることが一般的に要求されている。これは、セラミ
ック材など新素材や、さらに小型化された工作物等を高
精度で加工する必要性があるからである。
【0006】また、前記算出手法では機体の構成からそ
の構成部分の長さLを見込み、その温度変化を長さLの
中央位置から検出しているので、温度センサの取付位置
に制約があった。さらに、精度よく熱変位を見込むに
は、機体を細かな構成部分に分割する必要が生じ、それ
ぞれの部分の温度変化を算出するために多数の温度セン
サを要した。また、機体構成部分の長さLの測定や、各
機体構成材料それぞれの線膨張係数の確認作業が必要で
あった。これらは、機体温度から熱変位を算出する方式
の工作機械の熱変位補正装置を実装する上での障害とな
っていた。
の構成部分の長さLを見込み、その温度変化を長さLの
中央位置から検出しているので、温度センサの取付位置
に制約があった。さらに、精度よく熱変位を見込むに
は、機体を細かな構成部分に分割する必要が生じ、それ
ぞれの部分の温度変化を算出するために多数の温度セン
サを要した。また、機体構成部分の長さLの測定や、各
機体構成材料それぞれの線膨張係数の確認作業が必要で
あった。これらは、機体温度から熱変位を算出する方式
の工作機械の熱変位補正装置を実装する上での障害とな
っていた。
【0007】一方、特開昭58−109250号公報に
は、工作機械と熱的相似の金属片を用いて、その温度を
工作機械を代表する温度と見做して、冷却用噴射空気の
温度を制御することにより、工作機械の熱変位の補正を
する熱変位補正装置が提案されている。しかしながら、
この場合には熱的相似の金属片を別途準備しなければな
らなかった。さらに、特開昭60−9634号公報に
は、Y軸熱変位の特性に合わせた熱的時定数を持った温
度センサを使用する熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置では、熱変位の特性に合わせた熱
的時定数を持つ温度センサの詳細が明らかにされていな
い。
は、工作機械と熱的相似の金属片を用いて、その温度を
工作機械を代表する温度と見做して、冷却用噴射空気の
温度を制御することにより、工作機械の熱変位の補正を
する熱変位補正装置が提案されている。しかしながら、
この場合には熱的相似の金属片を別途準備しなければな
らなかった。さらに、特開昭60−9634号公報に
は、Y軸熱変位の特性に合わせた熱的時定数を持った温
度センサを使用する熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置では、熱変位の特性に合わせた熱
的時定数を持つ温度センサの詳細が明らかにされていな
い。
【0008】ところで、複数の主軸を有する工作機械の
場合、主軸の軸受にかけられている予圧のばらつき、主
軸の取付け場所による温度の伝わり方の違い、及び軸受
潤滑の状態等の理由で、各主軸の伸びに違いが生じるこ
とが多い。そのため、例えば主軸に取付けられた複数の
工作物を同一形状に同時に粗仕上げ加工をしたのち、仕
上げ加工では使用する主軸を1本に限定し、これ以外の
主軸を停止させる。これにより、主軸の発熱を抑えると
ともに使用する主軸の熱変形にのみ着目して熱変位補正
を行ない、仕上げ加工をしていた。この場合、停止中の
主軸の把持する工具が工作物と干渉するのを防止するた
めに、この停止中の工具を予め取外しておく作業も必要
である。したがって、仕上げ加工の作業能率が極めて悪
かった。特開平5−84628号公報には、複数の主軸
を有する工作機械の熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置による熱変位補正には限界があ
り、補正後の加工誤差を限りなく零に近づけることは困
難であった。
場合、主軸の軸受にかけられている予圧のばらつき、主
軸の取付け場所による温度の伝わり方の違い、及び軸受
潤滑の状態等の理由で、各主軸の伸びに違いが生じるこ
とが多い。そのため、例えば主軸に取付けられた複数の
工作物を同一形状に同時に粗仕上げ加工をしたのち、仕
上げ加工では使用する主軸を1本に限定し、これ以外の
主軸を停止させる。これにより、主軸の発熱を抑えると
ともに使用する主軸の熱変形にのみ着目して熱変位補正
を行ない、仕上げ加工をしていた。この場合、停止中の
主軸の把持する工具が工作物と干渉するのを防止するた
めに、この停止中の工具を予め取外しておく作業も必要
である。したがって、仕上げ加工の作業能率が極めて悪
かった。特開平5−84628号公報には、複数の主軸
を有する工作機械の熱変位補正装置が提案されている。
しかし、この補正装置による熱変位補正には限界があ
り、補正後の加工誤差を限りなく零に近づけることは困
難であった。
【0009】本発明は、斯かる課題を解決するためにな
されたもので、熱による加工誤差に対する補正を高精度
で行なうことができる工作機械の熱変位補正方法及びそ
の装置を提供することを目的とする。また、本発明の別
の目的は、工作機械の機体構成部分の長さ測定や、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業を不要とし、且つ、実
機を用いた熱変位特性の抽出の実測作業を簡略化するこ
とである。更に、本発明の別の目的は、温度センサの取
付け位置の制約を大幅に緩和すると同時に、少数の温度
センサで熱変位を精度よく見込むことのできる自由度の
高い工作機械の熱変位補正方法及びその装置を提供する
ことである。更に、本発明の別の目的は、繰り返し演算
を行なわないで任意の時に熱変位の補正を高精度に行な
うことができる工作機械の熱変位補正方法及びその装置
を提供することである。更に本発明の別の目的は、複数
の主軸を有する工作機械の場合に、複数の工作物を高精
度で同時加工するとともに作業能率を大幅に向上させる
ことである。
されたもので、熱による加工誤差に対する補正を高精度
で行なうことができる工作機械の熱変位補正方法及びそ
の装置を提供することを目的とする。また、本発明の別
の目的は、工作機械の機体構成部分の長さ測定や、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業を不要とし、且つ、実
機を用いた熱変位特性の抽出の実測作業を簡略化するこ
とである。更に、本発明の別の目的は、温度センサの取
付け位置の制約を大幅に緩和すると同時に、少数の温度
センサで熱変位を精度よく見込むことのできる自由度の
高い工作機械の熱変位補正方法及びその装置を提供する
ことである。更に、本発明の別の目的は、繰り返し演算
を行なわないで任意の時に熱変位の補正を高精度に行な
うことができる工作機械の熱変位補正方法及びその装置
を提供することである。更に本発明の別の目的は、複数
の主軸を有する工作機械の場合に、複数の工作物を高精
度で同時加工するとともに作業能率を大幅に向上させる
ことである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の所定軸方向の伸びによる熱変位又は主軸傾きによる
熱変位を検出すると同時に、機体の適当箇所の温度変化
を温度センサにより検出する。この温度変化と前記熱変
位が時系列的に同じであれば、温度変化と熱変位は単純
にリニアの相関になるので、温度変化から熱変位を容易
に見積もることが可能であることを前提にしている。し
かしながら、機体の適当箇所から検出した温度変化が有
する「時定数」は、必ずしも所定軸方向の熱変位が有す
る「時定数」と同じではない。そのため、この温度変化
のデータを適宜加工して前記熱変位が有する時定数に一
致させる手法が求められる。そこで、本発明に係る熱変
位補正方法は、発熱源の影響を受ける機体の温度変化を
検出し、検出されたこの温度変化を用いて、工作機械の
熱変位の時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算
し、算出されたこの温度変化と前記熱変位との関係を定
める関数を用いて得た熱変位に基づいて加工誤差を補正
している。例えば、本発明の方法は、発熱源の影響を受
ける機体の温度変化を検出し、この検出温度変化から工
作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する演算温
度変化を算出する微分方程式を解いた解の式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化を算出
し、この演算温度変化に対応して変化する熱変位に基づ
いて加工誤差を補正している。なお、「工作機械の熱変
位」とは、理想としては工具による加工点における熱変
位であるが、現実的には、例えば主軸先端部又は主軸先
端部に一時的に装着されたテストバーの適当箇所におけ
る熱変位のことである。そして、前記補正方法を実現す
るための熱変位補正装置は、発熱源の影響を受ける機体
の温度変化を検出する温度検出手段と、この温度検出手
段で検出された前記温度変化を用いて、工作機械の熱変
位の時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算する
温度演算手段と、この温度演算手段で算出された前記温
度変化と前記熱変位との関係を定める関数を用いて熱変
位を演算する熱変位演算手段と、この熱変位演算手段で
算出された前記熱変位に基づいて加工誤差を補正する補
正手段とを備えている。例えば、本発明の補正装置は、
発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検出する温度検
出手段と、この温度検出手段で検出された前記温度変化
から工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する
演算温度変化を算出する微分方程式を解いた解の式に基
づいて、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化を
算出する温度演算手段と、この温度演算手段で演算され
た前記演算温度変化に対応して変化する熱変位を演算す
る熱変位演算手段と、この熱変位演算手段で演算された
前記熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段とを
備えている。
め、本発明では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の所定軸方向の伸びによる熱変位又は主軸傾きによる
熱変位を検出すると同時に、機体の適当箇所の温度変化
を温度センサにより検出する。この温度変化と前記熱変
位が時系列的に同じであれば、温度変化と熱変位は単純
にリニアの相関になるので、温度変化から熱変位を容易
に見積もることが可能であることを前提にしている。し
かしながら、機体の適当箇所から検出した温度変化が有
する「時定数」は、必ずしも所定軸方向の熱変位が有す
る「時定数」と同じではない。そのため、この温度変化
のデータを適宜加工して前記熱変位が有する時定数に一
致させる手法が求められる。そこで、本発明に係る熱変
位補正方法は、発熱源の影響を受ける機体の温度変化を
検出し、検出されたこの温度変化を用いて、工作機械の
熱変位の時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算
し、算出されたこの温度変化と前記熱変位との関係を定
める関数を用いて得た熱変位に基づいて加工誤差を補正
している。例えば、本発明の方法は、発熱源の影響を受
ける機体の温度変化を検出し、この検出温度変化から工
作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する演算温
度変化を算出する微分方程式を解いた解の式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化を算出
し、この演算温度変化に対応して変化する熱変位に基づ
いて加工誤差を補正している。なお、「工作機械の熱変
位」とは、理想としては工具による加工点における熱変
位であるが、現実的には、例えば主軸先端部又は主軸先
端部に一時的に装着されたテストバーの適当箇所におけ
る熱変位のことである。そして、前記補正方法を実現す
るための熱変位補正装置は、発熱源の影響を受ける機体
の温度変化を検出する温度検出手段と、この温度検出手
段で検出された前記温度変化を用いて、工作機械の熱変
位の時定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算する
温度演算手段と、この温度演算手段で算出された前記温
度変化と前記熱変位との関係を定める関数を用いて熱変
位を演算する熱変位演算手段と、この熱変位演算手段で
算出された前記熱変位に基づいて加工誤差を補正する補
正手段とを備えている。例えば、本発明の補正装置は、
発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検出する温度検
出手段と、この温度検出手段で検出された前記温度変化
から工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する
演算温度変化を算出する微分方程式を解いた解の式に基
づいて、前記検出温度変化を用いて前記演算温度変化を
算出する温度演算手段と、この温度演算手段で演算され
た前記演算温度変化に対応して変化する熱変位を演算す
る熱変位演算手段と、この熱変位演算手段で演算された
前記熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段とを
備えている。
【0011】検出された前記温度変化のデータを、熱変
位が有する時定数に一致させるデータ加工法の一例とし
て、「ダミー手法」を使用している。このダミー手法
は、工作機械に任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を
検出すると同時に、この熱変位の時定数より小さい温度
変化の時定数を持つ適当箇所の温度変化を検出する。そ
して、この検出温度変化より遅れて表われる遅れ温度変
化の挙動を、ダミーの時定数を設定して見込むもので、
遅れて表われる熱変位の時定数と略同じ時定数を有する
架空の遅れ温度変化を、検出温度変化に遅れを見込んだ
微分方程式に基づく繰り返し演算、又はこの微分方程式
を解いた解の式に基づく演算により創成する手法であ
る。なお、ダミー手法では、前記遅れ温度変化を創成す
る際に、一旦他の遅れ温度変化を創成し、この遅れ温度
変化に更に遅れを見込んで、熱変位の時定数と略同じ時
定数を有する遅れ温度変化を創成してもよい。このよう
に、ダミー手法では、温度変化に遅れを見込んだ微分方
程式を解いた解の式に基づく演算により、遅れ温度変化
を算出している。
位が有する時定数に一致させるデータ加工法の一例とし
て、「ダミー手法」を使用している。このダミー手法
は、工作機械に任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を
検出すると同時に、この熱変位の時定数より小さい温度
変化の時定数を持つ適当箇所の温度変化を検出する。そ
して、この検出温度変化より遅れて表われる遅れ温度変
化の挙動を、ダミーの時定数を設定して見込むもので、
遅れて表われる熱変位の時定数と略同じ時定数を有する
架空の遅れ温度変化を、検出温度変化に遅れを見込んだ
微分方程式に基づく繰り返し演算、又はこの微分方程式
を解いた解の式に基づく演算により創成する手法であ
る。なお、ダミー手法では、前記遅れ温度変化を創成す
る際に、一旦他の遅れ温度変化を創成し、この遅れ温度
変化に更に遅れを見込んで、熱変位の時定数と略同じ時
定数を有する遅れ温度変化を創成してもよい。このよう
に、ダミー手法では、温度変化に遅れを見込んだ微分方
程式を解いた解の式に基づく演算により、遅れ温度変化
を算出している。
【0012】工作機械の熱変位の時定数と同じ時定数を
有する創成温度変化と熱変位とのリニアな相関は、主軸
回転に伴う主軸頭部の発熱がコラム等に伝わる影響、又
は室温等の他の熱源の影響等による、熱変位の遅れ応答
成分により、徐々に壊れてくる場合がある。そこで、創
成温度変化と熱変位とのあいだのリニアの相関を長時間
維持するために、ダミー手法で創成した温度変化で見積
もった熱変位に、徐々に現われてくる熱変位の遅れ応答
成分を加算して見積もることが行なわれる。例えば、発
熱源近傍の温度が急激に且つ大きく変化する箇所から検
出した温度データを用いて、ダミー手法で第1の遅れ温
度変化を創成するとともに、この遅れ温度変化とリニア
の相関で得られる熱変位を演算する。そして、先の温度
データあるいは別途検出した比較的穏やかな温度変化を
する箇所から検出した温度データを用いて、温度変化の
遅れを十分見込んで創成した第2の遅れ温度変化とリニ
アの相関で得られる変位の遅れ応答成分を演算する。
有する創成温度変化と熱変位とのリニアな相関は、主軸
回転に伴う主軸頭部の発熱がコラム等に伝わる影響、又
は室温等の他の熱源の影響等による、熱変位の遅れ応答
成分により、徐々に壊れてくる場合がある。そこで、創
成温度変化と熱変位とのあいだのリニアの相関を長時間
維持するために、ダミー手法で創成した温度変化で見積
もった熱変位に、徐々に現われてくる熱変位の遅れ応答
成分を加算して見積もることが行なわれる。例えば、発
熱源近傍の温度が急激に且つ大きく変化する箇所から検
出した温度データを用いて、ダミー手法で第1の遅れ温
度変化を創成するとともに、この遅れ温度変化とリニア
の相関で得られる熱変位を演算する。そして、先の温度
データあるいは別途検出した比較的穏やかな温度変化を
する箇所から検出した温度データを用いて、温度変化の
遅れを十分見込んで創成した第2の遅れ温度変化とリニ
アの相関で得られる変位の遅れ応答成分を演算する。
【0013】ダミー手法とダミー手法を組合せる手法に
ついて、主軸頭を発熱源とするマシニングセンタ(以
下、MCと記載)、又は主軸台内に発熱源を内蔵する数
値制御旋盤(以下、NC旋盤と記載)を例にして詳細に
述べる。ダミー手法とダミー手法の組合せでは、MC等
を運転して、任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検
出する。これと同時に、この熱変位の時定数より小さい
温度変化の時定数を持つノーズ位置における機体の温度
変化を検出する。そして、ダミー手法で前記熱変位の時
定数と同じ時定数を有する遅れ温度変化を創成し、この
遅れ温度変化に対応して変化する熱変位を演算する。次
いで、以下のダミー手法が更に付加される。即ち、MC
等の前記主軸頭位置で検出された温度変化に遅れを見込
んで、実際の熱変位と、遅れ温度変化を用いて先に演算
された熱変位とが徐々にずれていく変位の遅れ応答成分
と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を、微分方程式
に基づく繰り返し演算、又はこの微分方程式を解いた解
の式を用いた演算により創成する。この遅れ温度変化に
対応して変化する遅れ応答成分を演算する。
ついて、主軸頭を発熱源とするマシニングセンタ(以
下、MCと記載)、又は主軸台内に発熱源を内蔵する数
値制御旋盤(以下、NC旋盤と記載)を例にして詳細に
述べる。ダミー手法とダミー手法の組合せでは、MC等
を運転して、任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検
出する。これと同時に、この熱変位の時定数より小さい
温度変化の時定数を持つノーズ位置における機体の温度
変化を検出する。そして、ダミー手法で前記熱変位の時
定数と同じ時定数を有する遅れ温度変化を創成し、この
遅れ温度変化に対応して変化する熱変位を演算する。次
いで、以下のダミー手法が更に付加される。即ち、MC
等の前記主軸頭位置で検出された温度変化に遅れを見込
んで、実際の熱変位と、遅れ温度変化を用いて先に演算
された熱変位とが徐々にずれていく変位の遅れ応答成分
と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を、微分方程式
に基づく繰り返し演算、又はこの微分方程式を解いた解
の式を用いた演算により創成する。この遅れ温度変化に
対応して変化する遅れ応答成分を演算する。
【0014】検出された温度変化のデータを、熱変位が
有する時定数に略一致させるデータ加工法を発展させた
ものに「リニアライズ(LINEARIZE)手法」があり、本発
明はこの手法も使用している。リニアライズ手法では、
工作機械に任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検出
する。これと同時に、発熱源の発熱による影響を受けて
温度変化をする機体の適当箇所の温度変化を検出する。
この検出温度変化を用いて前記発熱源における温度変化
を演算する。そして、この発熱源の温度変化を用いて熱
変位の時定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演
算する。なお、リニアライズ手法では、前記創成温度変
化を演算する際に、発熱源における温度変化を用いて一
旦他の創成温度変化を演算し、この創成温度変化を用い
て、熱変位の時定数と同じ時定数を有する創成温度変化
を演算してもよい。リニアライズ手法では、必ずしも熱
変位の時定数よりも小さい温度変化の時定数を持つ箇所
の温度変化を検出する必要がない。このため、温度セン
サを配設する位置の自由度が高い。
有する時定数に略一致させるデータ加工法を発展させた
ものに「リニアライズ(LINEARIZE)手法」があり、本発
明はこの手法も使用している。リニアライズ手法では、
工作機械に任意の主軸回転数を与えた際の熱変位を検出
する。これと同時に、発熱源の発熱による影響を受けて
温度変化をする機体の適当箇所の温度変化を検出する。
この検出温度変化を用いて前記発熱源における温度変化
を演算する。そして、この発熱源の温度変化を用いて熱
変位の時定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演
算する。なお、リニアライズ手法では、前記創成温度変
化を演算する際に、発熱源における温度変化を用いて一
旦他の創成温度変化を演算し、この創成温度変化を用い
て、熱変位の時定数と同じ時定数を有する創成温度変化
を演算してもよい。リニアライズ手法では、必ずしも熱
変位の時定数よりも小さい温度変化の時定数を持つ箇所
の温度変化を検出する必要がない。このため、温度セン
サを配設する位置の自由度が高い。
【0015】また、リニアライズ手法とダミー手法を組
合せた手法では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を検出する。これと同時に、発熱源の発熱の
影響を受けて温度変化する機体の適当箇所の温度変化を
検出する。そして、リニアライズ手法で前記熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算し、こ
の創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算する。
次いで、前記検出温度変化又は別途検出した比較的穏や
かな温度変化をする箇所から検出した温度データに遅れ
を見込んで、実際の熱変位と、創成温度変化を用いて先
に演算された熱変位とが徐々にずれていく変位の遅れ応
答成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を、微分
方程式を用いた繰り返し演算、又は微分方程式を解いた
解の式を用いた演算により創成する。この遅れ温度変化
に対応して変化する遅れ応答成分を演算する。
合せた手法では、工作機械に任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を検出する。これと同時に、発熱源の発熱の
影響を受けて温度変化する機体の適当箇所の温度変化を
検出する。そして、リニアライズ手法で前記熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算し、こ
の創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算する。
次いで、前記検出温度変化又は別途検出した比較的穏や
かな温度変化をする箇所から検出した温度データに遅れ
を見込んで、実際の熱変位と、創成温度変化を用いて先
に演算された熱変位とが徐々にずれていく変位の遅れ応
答成分と略同じ経時特性を有する遅れ温度変化を、微分
方程式を用いた繰り返し演算、又は微分方程式を解いた
解の式を用いた演算により創成する。この遅れ温度変化
に対応して変化する遅れ応答成分を演算する。
【0016】前記ダミー手法では、検出温度変化の時定
数は熱変位の時定数より小さくなくてはならない。した
がって、この手法で創成した温度変化で熱変位を見積も
る場合は、温度変化を検出する位置に制約が生じる。こ
れに対して、リニアライズ手法は、検出される温度変化
の時定数の大きさに条件がなく、且つ、一個の発熱源に
対して検出温度は一個でよい。したがって、温度変化に
比べて熱変位が敏感に表われる主軸頭を持つMC及びN
C旋盤、あるいは加工精度に影響を与える発熱源を複数
有している工作機械における創成温度の演算に有利であ
る。主軸回転数及び主軸位置の頻繁な変更及び移動を伴
う工作機械(例えば、旋削機)の場合には、回転体の熱
変位を敏感に補正する必要があるが、このリニアライズ
手法によれば、初期の熱変位を敏感に捉えて補正するこ
とが可能になる。例えば、NC旋盤は、工作物又は工具
を把持する主軸と、この主軸を軸支する加工位置側の前
軸受及び反加工位置側の後軸受を介して前記主軸を回転
自在に支持する主軸台と、前記前,後の軸受の間に配設
され、前記主軸台に内蔵されて前記主軸を回転駆動する
ビルトインモータとを備えている。そして、NC旋盤で
は、前記後軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決
めし、前記前軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中
心軸方向に摺動可能に保持し、発熱源となる前記前,後
の軸受及び前記ビルトインモータの各近傍で温度変化を
それぞれ検出する3本の温度センサを前記主軸台に取付
けた構成になっている。このような多熱源を有する工作
機械にリニアライズ手法を適用した場合には、各温度セ
ンサによる検出温度変化を用いて、それぞれの発熱源に
おける温度変化を演算する。そして、この温度変化を用
いて、各発熱源の発熱影響による熱変位の時定数と同じ
時定数を有するそれぞれの創成温度変化を演算する。こ
のようにして演算された各創成温度変化は、それぞれの
発熱源の影響による熱変位とリニアの相関が成立する。
工作機械においては、主軸を含む機体の発熱による熱変
位成分だけではなく、ボールねじ等の発熱による熱変位
成分も大きいので、これらの各熱変位成分を考慮した総
合的な熱変位補正を行なう必要がある。特にリニアライ
ズ手法では多熱源に対処可能なので、かかる総合的な熱
変位補正を良好に行なうことができる。
数は熱変位の時定数より小さくなくてはならない。した
がって、この手法で創成した温度変化で熱変位を見積も
る場合は、温度変化を検出する位置に制約が生じる。こ
れに対して、リニアライズ手法は、検出される温度変化
の時定数の大きさに条件がなく、且つ、一個の発熱源に
対して検出温度は一個でよい。したがって、温度変化に
比べて熱変位が敏感に表われる主軸頭を持つMC及びN
C旋盤、あるいは加工精度に影響を与える発熱源を複数
有している工作機械における創成温度の演算に有利であ
る。主軸回転数及び主軸位置の頻繁な変更及び移動を伴
う工作機械(例えば、旋削機)の場合には、回転体の熱
変位を敏感に補正する必要があるが、このリニアライズ
手法によれば、初期の熱変位を敏感に捉えて補正するこ
とが可能になる。例えば、NC旋盤は、工作物又は工具
を把持する主軸と、この主軸を軸支する加工位置側の前
軸受及び反加工位置側の後軸受を介して前記主軸を回転
自在に支持する主軸台と、前記前,後の軸受の間に配設
され、前記主軸台に内蔵されて前記主軸を回転駆動する
ビルトインモータとを備えている。そして、NC旋盤で
は、前記後軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決
めし、前記前軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中
心軸方向に摺動可能に保持し、発熱源となる前記前,後
の軸受及び前記ビルトインモータの各近傍で温度変化を
それぞれ検出する3本の温度センサを前記主軸台に取付
けた構成になっている。このような多熱源を有する工作
機械にリニアライズ手法を適用した場合には、各温度セ
ンサによる検出温度変化を用いて、それぞれの発熱源に
おける温度変化を演算する。そして、この温度変化を用
いて、各発熱源の発熱影響による熱変位の時定数と同じ
時定数を有するそれぞれの創成温度変化を演算する。こ
のようにして演算された各創成温度変化は、それぞれの
発熱源の影響による熱変位とリニアの相関が成立する。
工作機械においては、主軸を含む機体の発熱による熱変
位成分だけではなく、ボールねじ等の発熱による熱変位
成分も大きいので、これらの各熱変位成分を考慮した総
合的な熱変位補正を行なう必要がある。特にリニアライ
ズ手法では多熱源に対処可能なので、かかる総合的な熱
変位補正を良好に行なうことができる。
【0017】以下に、本発明にかかる熱変位補正方法及
びその装置の好ましい態様を列挙する。 (1)発熱源近傍の機体の温度変化を検出し、この検出
温度変化に遅れを見込んで工作機械の熱変位の時定数と
略同じ時定数を有する第1の遅れ温度変化を演算する第
1の微分方程式を解いた第1の解の式に基づいて、前記
検出温度変化を用いて前記第1の遅れ温度変化を算出
し、この第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位
を演算し、前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、こ
の検出温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変位
と前記演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分の
時定数と略同じ時定数を有する第2の遅れ温度変化を演
算する第2の微分方程式を解いた第2の解の式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記第2の遅れ温度変化
を算出し、この第2の遅れ温度変化に対応して変化する
前記遅れ応答成分を、前記演算熱変位に加算して得た合
計値に基づいて、加工誤差を補正する。 (2)発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の温度変化
を検出し、この検出温度変化から前記発熱源の温度変化
を算出する第3の微分方程式による前記発熱源温度変化
を用いて工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有
する創成温度変化を算出する第4の微分方程式とを解い
た第3の解の式に基づいて、前記検出温度変化を用いて
前記創成温度変化を算出し、この創成温度変化に対応し
て変化する熱変位を演算し、前記機体の適当箇所の温度
変化を検出し、この検出温度変化に遅れを見込んで、前
記工作機械熱変位と前記演算熱変位とが徐々にずれてい
く遅れ応答成分の時定数と略同じ時定数を有する第2の
遅れ温度変化を演算する第5の微分方程式を解いた第4
の解の式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前記第
2の遅れ温度変化を算出し、この第2の遅れ温度変化に
対応して変化する前記遅れ応答成分を、前記演算熱変位
に加算して得た合計値に基づいて、加工誤差を補正す
る。 (3)前記工作機械は、主軸頭を前記発熱源とするマシ
ニングセンタ、及び主軸台を前記発熱源とするNC旋盤
のいずれか一方である。
びその装置の好ましい態様を列挙する。 (1)発熱源近傍の機体の温度変化を検出し、この検出
温度変化に遅れを見込んで工作機械の熱変位の時定数と
略同じ時定数を有する第1の遅れ温度変化を演算する第
1の微分方程式を解いた第1の解の式に基づいて、前記
検出温度変化を用いて前記第1の遅れ温度変化を算出
し、この第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位
を演算し、前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、こ
の検出温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変位
と前記演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分の
時定数と略同じ時定数を有する第2の遅れ温度変化を演
算する第2の微分方程式を解いた第2の解の式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記第2の遅れ温度変化
を算出し、この第2の遅れ温度変化に対応して変化する
前記遅れ応答成分を、前記演算熱変位に加算して得た合
計値に基づいて、加工誤差を補正する。 (2)発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の温度変化
を検出し、この検出温度変化から前記発熱源の温度変化
を算出する第3の微分方程式による前記発熱源温度変化
を用いて工作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有
する創成温度変化を算出する第4の微分方程式とを解い
た第3の解の式に基づいて、前記検出温度変化を用いて
前記創成温度変化を算出し、この創成温度変化に対応し
て変化する熱変位を演算し、前記機体の適当箇所の温度
変化を検出し、この検出温度変化に遅れを見込んで、前
記工作機械熱変位と前記演算熱変位とが徐々にずれてい
く遅れ応答成分の時定数と略同じ時定数を有する第2の
遅れ温度変化を演算する第5の微分方程式を解いた第4
の解の式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前記第
2の遅れ温度変化を算出し、この第2の遅れ温度変化に
対応して変化する前記遅れ応答成分を、前記演算熱変位
に加算して得た合計値に基づいて、加工誤差を補正す
る。 (3)前記工作機械は、主軸頭を前記発熱源とするマシ
ニングセンタ、及び主軸台を前記発熱源とするNC旋盤
のいずれか一方である。
【0018】(4)前記工作機械は、工作物及び工具の
いずれか一方を把持する主軸と、この主軸を軸支する加
工位置側の主軸受及び反加工位置側の他の軸受を介して
前記主軸を回転自在に支持する主軸頭と、前記両軸受の
間に配設され、前記主軸頭に内蔵されて前記主軸を回転
駆動するビルトインモータとを備え、前記主軸受は前記
主軸を中心軸方向に対して位置決めし、前記他の軸受は
熱変位で伸縮する前記主軸を前記中心軸方向に摺動可能
に保持し、前記発熱源の影響を受けるヘッド位置で前記
温度変化を検出するヘッド温度センサを前記主軸頭に取
付けている。 (5)多熱源を有する場合の前記工作機械は、工作物及
び工具のいずれか一方を把持する主軸と、この主軸を軸
支する加工位置側の前軸受及び反加工位置側の後軸受を
介して前記主軸を回転自在に支持する主軸台と、前記
前,後の軸受の間に配設され、前記主軸台に内蔵されて
前記主軸を回転駆動するビルトインモータとを備え、前
記後軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決めし、
前記前軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中心軸方
向に摺動可能に保持し、前記発熱源となる前記前,後の
軸受及び前記ビルトインモータの各近傍で温度変化をそ
れぞれ検出する3本の温度センサを前記主軸台に取付け
ている。 (6)複数の主軸を有する場合の前記工作機械は、工作
物及び工具のいずれか一方を把持し且つ同期して回転す
る複数の主軸を主軸頭に有し、前記複数の主軸の回転に
伴う発熱特性の違いを、前記各主軸のノーズ部に設けた
ジャケットに流れる冷却油量又は冷却油温度を制御する
か、あるいは前記各主軸のノーズ部に設けたヒータの通
電量を制御して、熱変位の均一化した主軸頭を有する構
成であって、前記主軸の少なくとも一つを前記発熱源に
採用している。 (7)熱変位補正装置は、発熱源の影響を受ける機体の
温度変化を検出する温度検出手段と、この温度検出手段
で検出された温度変化を用いて、工作機械の熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算する温度演
算手段と、この温度演算手段で演算された前記温度変化
に対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段
と、前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途
検出する温度検出手段と、前記いずれかの温度検出手段
で検出された前記温度変化に遅れを見込んで、前記工作
機械熱変位と前記熱変位演算手段の出力とが徐々にずれ
ていく遅れ応答成分の時定数と略同じ時定数を有する遅
れ温度変化を演算する微分方程式を解いた解の式に基づ
いて、前記検出温度変化を用いて前記遅れ温度変化を算
出する遅れ温度演算手段とを備え、前記熱変位演算手段
により、前記遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答
成分を演算するとともに、この遅れ応答成分を前記熱変
位に加算して合計値を算出し、この合計値に基づいて、
補正手段により加工誤差を補正している。
いずれか一方を把持する主軸と、この主軸を軸支する加
工位置側の主軸受及び反加工位置側の他の軸受を介して
前記主軸を回転自在に支持する主軸頭と、前記両軸受の
間に配設され、前記主軸頭に内蔵されて前記主軸を回転
駆動するビルトインモータとを備え、前記主軸受は前記
主軸を中心軸方向に対して位置決めし、前記他の軸受は
熱変位で伸縮する前記主軸を前記中心軸方向に摺動可能
に保持し、前記発熱源の影響を受けるヘッド位置で前記
温度変化を検出するヘッド温度センサを前記主軸頭に取
付けている。 (5)多熱源を有する場合の前記工作機械は、工作物及
び工具のいずれか一方を把持する主軸と、この主軸を軸
支する加工位置側の前軸受及び反加工位置側の後軸受を
介して前記主軸を回転自在に支持する主軸台と、前記
前,後の軸受の間に配設され、前記主軸台に内蔵されて
前記主軸を回転駆動するビルトインモータとを備え、前
記後軸受は前記主軸を中心軸方向に対して位置決めし、
前記前軸受は熱変位で伸縮する前記主軸を前記中心軸方
向に摺動可能に保持し、前記発熱源となる前記前,後の
軸受及び前記ビルトインモータの各近傍で温度変化をそ
れぞれ検出する3本の温度センサを前記主軸台に取付け
ている。 (6)複数の主軸を有する場合の前記工作機械は、工作
物及び工具のいずれか一方を把持し且つ同期して回転す
る複数の主軸を主軸頭に有し、前記複数の主軸の回転に
伴う発熱特性の違いを、前記各主軸のノーズ部に設けた
ジャケットに流れる冷却油量又は冷却油温度を制御する
か、あるいは前記各主軸のノーズ部に設けたヒータの通
電量を制御して、熱変位の均一化した主軸頭を有する構
成であって、前記主軸の少なくとも一つを前記発熱源に
採用している。 (7)熱変位補正装置は、発熱源の影響を受ける機体の
温度変化を検出する温度検出手段と、この温度検出手段
で検出された温度変化を用いて、工作機械の熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する温度変化を演算する温度演
算手段と、この温度演算手段で演算された前記温度変化
に対応して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段
と、前記機体の適当箇所の温度変化を必要に応じて別途
検出する温度検出手段と、前記いずれかの温度検出手段
で検出された前記温度変化に遅れを見込んで、前記工作
機械熱変位と前記熱変位演算手段の出力とが徐々にずれ
ていく遅れ応答成分の時定数と略同じ時定数を有する遅
れ温度変化を演算する微分方程式を解いた解の式に基づ
いて、前記検出温度変化を用いて前記遅れ温度変化を算
出する遅れ温度演算手段とを備え、前記熱変位演算手段
により、前記遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答
成分を演算するとともに、この遅れ応答成分を前記熱変
位に加算して合計値を算出し、この合計値に基づいて、
補正手段により加工誤差を補正している。
【0019】
【作用】工作機械の主軸回転に伴い、主軸軸受や主軸駆
動モータ等の発熱源から発熱が起こり、これが機体の構
成部分に伝導し、結果として温度変化をきたす。通常の
工作機械では構造材料として鋳鉄又は鋼材を主として用
いている。したがって、温度変化があると、これら構造
材料が持つ線膨張係数に比例した熱変位が各部で発生す
る。これら各部の熱変位が加算されて、工作機械の加工
精度を低下させる。また、工作機械の主軸回転に伴う温
度変化は、発熱源近傍で早く表れるが、ヘッド(主軸
頭),ヘッド取付け部及びコラムなど発熱源から離れる
ほど遅れて表れることになり、それぞれ温度変化の経時
特性が異なる。このため、機体の任意箇所の温度変化と
熱変位とは、通常は直接結びつかない。
動モータ等の発熱源から発熱が起こり、これが機体の構
成部分に伝導し、結果として温度変化をきたす。通常の
工作機械では構造材料として鋳鉄又は鋼材を主として用
いている。したがって、温度変化があると、これら構造
材料が持つ線膨張係数に比例した熱変位が各部で発生す
る。これら各部の熱変位が加算されて、工作機械の加工
精度を低下させる。また、工作機械の主軸回転に伴う温
度変化は、発熱源近傍で早く表れるが、ヘッド(主軸
頭),ヘッド取付け部及びコラムなど発熱源から離れる
ほど遅れて表れることになり、それぞれ温度変化の経時
特性が異なる。このため、機体の任意箇所の温度変化と
熱変位とは、通常は直接結びつかない。
【0020】しかし、工作機械に任意の主軸回転数を与
えた際の熱変位の時系列データ、及び発熱源の発熱の影
響を受ける機体の適当箇所から検出された温度変化の時
系列データに、近似的に単一の一次遅れ要素のステップ
入力応答関数を当てはめると、変化が飽和する迄の時定
数をそれぞれ抽出することができる。この熱変位の時定
数と温度変化の時定数とのバランスは、主軸回転数の広
い領域にわたって共通する当該工作機械の熱特性を代表
するものになる。そこで、温度変化のデータを適宜加工
して、熱変位が有する時定数に略一致した時定数を有す
る創成温度変化を演算する手法を用いる。すると、この
創成温度変化と熱変位とはリニアな相関が成立するの
で、温度変化から間接的に熱変位をかなり正確に見込む
ことが可能になる。熱変位現象を単一の一次遅れ要素の
温度変化による作用であるとして近似仮定すると、実際
の機体構成の複雑さとの違いによる熱変位見積もり誤差
が生じる。そこで、この誤差成分を更に異なる単一の一
次遅れ要素の温度変化による作用であるとして近似仮定
することによって、同じ作業を繰り返し適用することが
できる。したがって、機体の適当箇所から検出した温度
変化データから熱変位を十分高精度に見込むことができ
る。
えた際の熱変位の時系列データ、及び発熱源の発熱の影
響を受ける機体の適当箇所から検出された温度変化の時
系列データに、近似的に単一の一次遅れ要素のステップ
入力応答関数を当てはめると、変化が飽和する迄の時定
数をそれぞれ抽出することができる。この熱変位の時定
数と温度変化の時定数とのバランスは、主軸回転数の広
い領域にわたって共通する当該工作機械の熱特性を代表
するものになる。そこで、温度変化のデータを適宜加工
して、熱変位が有する時定数に略一致した時定数を有す
る創成温度変化を演算する手法を用いる。すると、この
創成温度変化と熱変位とはリニアな相関が成立するの
で、温度変化から間接的に熱変位をかなり正確に見込む
ことが可能になる。熱変位現象を単一の一次遅れ要素の
温度変化による作用であるとして近似仮定すると、実際
の機体構成の複雑さとの違いによる熱変位見積もり誤差
が生じる。そこで、この誤差成分を更に異なる単一の一
次遅れ要素の温度変化による作用であるとして近似仮定
することによって、同じ作業を繰り返し適用することが
できる。したがって、機体の適当箇所から検出した温度
変化データから熱変位を十分高精度に見込むことができ
る。
【0021】具体的には、まず当該工作機械の熱特性を
抽出するため、予備テストで任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を電気マイクロメータ等を用いて検出する。
これと同時に、発熱源の発熱の影響を受けて温度変化を
する機体の適当箇所の温度変化をサーミスタ温度センサ
等を用いて検出する。次いで、この変化が略飽和するま
でのそれぞれの時系列データに、一次遅れ要素のステッ
プ入力応答関数を当てはめてそれぞれの時定数を抽出す
る。この温度変化のデータを用いて、熱変位の時定数と
同じ時定数を持つ温度変化を創り出すために用意したミ
ックス手法,ダミー手法,リニアライズ手法,あるいは
これらを組合せた手法の一つを適宜選択し、それぞれの
手法において決定される温度変換式の係数を計算する。
選択された手法における温度変換式に、先の温度変化の
時系列データを与えて書き直すと、熱変形と同じ時定数
を持つ創成温度変化になる。この創成温度変化と先の熱
変形データとはリニアの相関が成立し、その傾斜が創成
温度変化から熱変位を算出する比例定数になる。機械稼
動時の熱変位補正では、先に温度変化を検出した箇所か
ら時々刻々検出される温度変化のデータを、先の選択さ
れた手法における温度変換式を用いて、創成温度変化に
随時変換する。次いで、この創成温度変化に、先に算出
された比例定数を掛けて、補正すべき熱変位を求めるこ
とになる。
抽出するため、予備テストで任意の主軸回転数を与えた
際の熱変位を電気マイクロメータ等を用いて検出する。
これと同時に、発熱源の発熱の影響を受けて温度変化を
する機体の適当箇所の温度変化をサーミスタ温度センサ
等を用いて検出する。次いで、この変化が略飽和するま
でのそれぞれの時系列データに、一次遅れ要素のステッ
プ入力応答関数を当てはめてそれぞれの時定数を抽出す
る。この温度変化のデータを用いて、熱変位の時定数と
同じ時定数を持つ温度変化を創り出すために用意したミ
ックス手法,ダミー手法,リニアライズ手法,あるいは
これらを組合せた手法の一つを適宜選択し、それぞれの
手法において決定される温度変換式の係数を計算する。
選択された手法における温度変換式に、先の温度変化の
時系列データを与えて書き直すと、熱変形と同じ時定数
を持つ創成温度変化になる。この創成温度変化と先の熱
変形データとはリニアの相関が成立し、その傾斜が創成
温度変化から熱変位を算出する比例定数になる。機械稼
動時の熱変位補正では、先に温度変化を検出した箇所か
ら時々刻々検出される温度変化のデータを、先の選択さ
れた手法における温度変換式を用いて、創成温度変化に
随時変換する。次いで、この創成温度変化に、先に算出
された比例定数を掛けて、補正すべき熱変位を求めるこ
とになる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図29に基
づいて説明する。 (第1実施例)図1乃至図9は本発明の第1実施例を説
明するための図である。例えば図1に示す数値制御(N
C)工作機械は立形のマシニングセンタ(MC)1であ
るが、MC以外の他の種類のNC工作機械であってもよ
い。ベッド2上にはコラム3が立設されており、コラム
3には主軸頭5がZ軸方向に移動可能に取付けられてい
る。コラム3は、ベッド2上をY軸方向に移動できるよ
うになっている。主軸頭5には主軸6がZ軸方向に向け
て設けられており、主軸6の先端には工具7が装着され
ている。主軸6は、主軸頭5に取付けられた主軸モータ
4により回転駆動される。ベッド2上に設けられたテー
ブル8に載置された工作物9が工具7により切削加工さ
れる。テーブル8はベッド2上をX軸方向に移動する。
なお、主軸6の軸線方向をZ軸とし、これに直交して直
交座標系をなす各方向をX軸,Y軸とする。
づいて説明する。 (第1実施例)図1乃至図9は本発明の第1実施例を説
明するための図である。例えば図1に示す数値制御(N
C)工作機械は立形のマシニングセンタ(MC)1であ
るが、MC以外の他の種類のNC工作機械であってもよ
い。ベッド2上にはコラム3が立設されており、コラム
3には主軸頭5がZ軸方向に移動可能に取付けられてい
る。コラム3は、ベッド2上をY軸方向に移動できるよ
うになっている。主軸頭5には主軸6がZ軸方向に向け
て設けられており、主軸6の先端には工具7が装着され
ている。主軸6は、主軸頭5に取付けられた主軸モータ
4により回転駆動される。ベッド2上に設けられたテー
ブル8に載置された工作物9が工具7により切削加工さ
れる。テーブル8はベッド2上をX軸方向に移動する。
なお、主軸6の軸線方向をZ軸とし、これに直交して直
交座標系をなす各方向をX軸,Y軸とする。
【0023】MC1には、機体10の温度変化を検出す
る温度検出手段が設けられている。第1実施例では、主
軸頭5の主軸前端側のノーズ位置の温度を検出するノー
ズ温度センサS1 と、発熱源の発熱の影響が機体10に
ゆっくりと及ぶ箇所の温度を検出する温度検出手段とし
てのコラム温度センサS2 が、それぞれ取付けられてい
る。温度検出手段としての温度センサS1 ,S2 はどの
タイプでもよいが、外乱に強いサーミスタ温度センサが
望ましい。
る温度検出手段が設けられている。第1実施例では、主
軸頭5の主軸前端側のノーズ位置の温度を検出するノー
ズ温度センサS1 と、発熱源の発熱の影響が機体10に
ゆっくりと及ぶ箇所の温度を検出する温度検出手段とし
てのコラム温度センサS2 が、それぞれ取付けられてい
る。温度検出手段としての温度センサS1 ,S2 はどの
タイプでもよいが、外乱に強いサーミスタ温度センサが
望ましい。
【0024】ここで、本発明における熱変位補正の原理
を説明する。本発明によれば、X,Y,Zの各軸方向の
熱変位に対する補正ができるが、例えばX軸方向につい
ては、コラム3及び主軸頭5がX軸に対して左右対称形
の構造を有しているため、X軸方向の補正は通常必要な
い。以下の説明では、Y軸,Z軸のうち主にZ軸方向の
補正を例にとって説明する。
を説明する。本発明によれば、X,Y,Zの各軸方向の
熱変位に対する補正ができるが、例えばX軸方向につい
ては、コラム3及び主軸頭5がX軸に対して左右対称形
の構造を有しているため、X軸方向の補正は通常必要な
い。以下の説明では、Y軸,Z軸のうち主にZ軸方向の
補正を例にとって説明する。
【0025】Z軸方向の熱変位の演算式は次式で示され
る。 ΔZ=a・(ΔZ1 +ΔZ2 ) ……(2) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 a :全体補正係数(この係数“a”は、演算式
(2)の結果と実際の精度との差を修正するための係
数) ΔZ1 :第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位 ΔZ2 :第2の遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応
答成分 である。
る。 ΔZ=a・(ΔZ1 +ΔZ2 ) ……(2) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 a :全体補正係数(この係数“a”は、演算式
(2)の結果と実際の精度との差を修正するための係
数) ΔZ1 :第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位 ΔZ2 :第2の遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応
答成分 である。
【0026】即ち、演算式(2)は、第1の遅れ温度変
化に対応して変化する熱変位ΔZ1と、第2の遅れ温度
変化に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ2 とを含んで
いる。前記温度変化は、各温度センサで検出されて出力
される温度から基準温度を差引いた温度差として算出さ
れる。基準温度としては、MC1の電源投入時における
1回目の温度センサの出力、又はこの出力を複数回加算
したものの平均値、あるいは例えば20〔℃〕のような
絶対基準等が採用される。温度センサ毎の基準温度がR
AM11内に保存される。ところで、工作機械を設置し
た環境の温度変化が比較的ゆっくりしたものである場合
には、室温変化による工作機械全体の熱変形は、工具と
工作物を含めて略相似形に変化する。即ち、このような
ゆっくりした室温変化では加工誤差は生じないので、こ
の室温変化を含んだ温度変化から熱変形を予測したもの
は、実際の熱変形とは異なる。したがって、この場合に
は、工作機械のベッド等に別途設けた温度センサで検出
した時々刻々の温度を基準温度として採用し、各温度セ
ンサから出力される温度からこの基準温度を差し引いた
ものを温度変化として使用する。このようにすれば、室
温変化があっても、精度のよい熱変位補正ができる。
化に対応して変化する熱変位ΔZ1と、第2の遅れ温度
変化に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ2 とを含んで
いる。前記温度変化は、各温度センサで検出されて出力
される温度から基準温度を差引いた温度差として算出さ
れる。基準温度としては、MC1の電源投入時における
1回目の温度センサの出力、又はこの出力を複数回加算
したものの平均値、あるいは例えば20〔℃〕のような
絶対基準等が採用される。温度センサ毎の基準温度がR
AM11内に保存される。ところで、工作機械を設置し
た環境の温度変化が比較的ゆっくりしたものである場合
には、室温変化による工作機械全体の熱変形は、工具と
工作物を含めて略相似形に変化する。即ち、このような
ゆっくりした室温変化では加工誤差は生じないので、こ
の室温変化を含んだ温度変化から熱変形を予測したもの
は、実際の熱変形とは異なる。したがって、この場合に
は、工作機械のベッド等に別途設けた温度センサで検出
した時々刻々の温度を基準温度として採用し、各温度セ
ンサから出力される温度からこの基準温度を差し引いた
ものを温度変化として使用する。このようにすれば、室
温変化があっても、精度のよい熱変位補正ができる。
【0027】なお、本発明は、式(3)に示すように、
第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位ΔZ1 の
みに基づく演算式を使用することもできる。 ΔZ=a・ΔZ1 ……(3)
第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位ΔZ1 の
みに基づく演算式を使用することもできる。 ΔZ=a・ΔZ1 ……(3)
【0028】第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱
変位ΔZ1 は、次式により算出される。 ΔZ1 =b・Y1 ……(4) ここで、Y1 :第1の遅れ温度変化〔℃〕 b :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
変位ΔZ1 は、次式により算出される。 ΔZ1 =b・Y1 ……(4) ここで、Y1 :第1の遅れ温度変化〔℃〕 b :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
【0029】第1実施例で使用される式(4)は、ノー
ズ位置に設置された温度センサの出力により機体10の
熱変位を演算する式である。そして、ノーズ温度センサ
S1で検出された温度から算出される温度変化Y1 から
熱変位ΔZ1 を演算することになる。なお、温度センサ
の設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受ける箇所なら
ば、ノーズ位置以外の場所であってもよい。
ズ位置に設置された温度センサの出力により機体10の
熱変位を演算する式である。そして、ノーズ温度センサ
S1で検出された温度から算出される温度変化Y1 から
熱変位ΔZ1 を演算することになる。なお、温度センサ
の設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受ける箇所なら
ば、ノーズ位置以外の場所であってもよい。
【0030】一方、第2の遅れ温度変化に対応して変化
する遅れ応答成分ΔZ2 を演算する式は下記の通りであ
る。 ΔZ2 =c・Y2 ……(5) ここで、c :内部補正係数〔±μm/℃〕 Y2 :第2の遅れ温度変化〔℃〕 である。
する遅れ応答成分ΔZ2 を演算する式は下記の通りであ
る。 ΔZ2 =c・Y2 ……(5) ここで、c :内部補正係数〔±μm/℃〕 Y2 :第2の遅れ温度変化〔℃〕 である。
【0031】第1実施例では遅れ温度変化は2個使用さ
れる。ノーズ温度センサS1 で検出された温度の温度変
化ΔT1 に遅れを見込んで演算した第1の遅れ温度変化
Y1と、コラム温度センサS2 で検出された温度の温度
変化ΔT2 に遅れを見込んで演算した遅れ温度変化Y2
とから、熱変位ΔZ1 と遅れ応答成分ΔZ2 を演算する
ことになる。
れる。ノーズ温度センサS1 で検出された温度の温度変
化ΔT1 に遅れを見込んで演算した第1の遅れ温度変化
Y1と、コラム温度センサS2 で検出された温度の温度
変化ΔT2 に遅れを見込んで演算した遅れ温度変化Y2
とから、熱変位ΔZ1 と遅れ応答成分ΔZ2 を演算する
ことになる。
【0032】図1は、本発明の第1実施例を示すブロッ
ク図である。図示するように、各温度センサS1 ,S2
の各出力信号は、回路36,37を介して熱変位補正装
置12aのA/D変換器13に入力し、入力したアナロ
グ信号はここでディジタル信号に変換される。A/D変
換器13からのディジタル信号は演算記憶部14に入力
されて、ここで熱変位が演算される。演算された熱変位
に基づいて、補正手段33により加工誤差が補正され
る。補正手段33の出力信号は、プログラマブルコント
ローラ15を介して数値制御装置16に送信され、サー
ボ系にフィードバックされて位置補正される。即ち、補
正手段33は、数値制御装置16の移動指令値に外部か
らオフセットを与える外部オフセット手段に、演算結果
を出力する。その結果、例えば直交座標系の原点位置が
オフセットされて、数値制御装置16は、MC1の工具
7の軌跡を制御する。なお、プログラマブルコントロー
ラ15は、数値制御装置16の指令を受けてMC1の動
作シーケンスを管理する。
ク図である。図示するように、各温度センサS1 ,S2
の各出力信号は、回路36,37を介して熱変位補正装
置12aのA/D変換器13に入力し、入力したアナロ
グ信号はここでディジタル信号に変換される。A/D変
換器13からのディジタル信号は演算記憶部14に入力
されて、ここで熱変位が演算される。演算された熱変位
に基づいて、補正手段33により加工誤差が補正され
る。補正手段33の出力信号は、プログラマブルコント
ローラ15を介して数値制御装置16に送信され、サー
ボ系にフィードバックされて位置補正される。即ち、補
正手段33は、数値制御装置16の移動指令値に外部か
らオフセットを与える外部オフセット手段に、演算結果
を出力する。その結果、例えば直交座標系の原点位置が
オフセットされて、数値制御装置16は、MC1の工具
7の軌跡を制御する。なお、プログラマブルコントロー
ラ15は、数値制御装置16の指令を受けてMC1の動
作シーケンスを管理する。
【0033】各温度センサS1 ,S2 の検出値は、A/
D変換器13を介して演算記憶部14で演算され、その
指令によりRAM11内の各温度センサS1 ,S2 用に
指定されたメモリ番地に書き込まれる。さらにRAM1
1には、各温度センサS1 ,S2 が一定時間毎にサンプ
リングした温度データが記憶されている。この温度デー
タは数値制御装置16の表示部に表示される。ROM1
7には、本発明に係る熱変位を演算するためのプログラ
ムや補正係数等が記憶されている。クロック18は通常
のクロックであり、各温度センサS1,S2 の検出の時
間を決定するためのものである。
D変換器13を介して演算記憶部14で演算され、その
指令によりRAM11内の各温度センサS1 ,S2 用に
指定されたメモリ番地に書き込まれる。さらにRAM1
1には、各温度センサS1 ,S2 が一定時間毎にサンプ
リングした温度データが記憶されている。この温度デー
タは数値制御装置16の表示部に表示される。ROM1
7には、本発明に係る熱変位を演算するためのプログラ
ムや補正係数等が記憶されている。クロック18は通常
のクロックであり、各温度センサS1,S2 の検出の時
間を決定するためのものである。
【0034】熱変位補正装置12aは、温度センサ
S1 ,S2 で検出された温度の温度変化を用いて、熱変
位の時定数と略同じ時定数を有する仮想の位置P1 にお
ける温度変化を演算する第1の遅れ温度演算手段34a
と、この第1の遅れ温度演算手段34aで演算された温
度変化に対応して変化する熱変位ΔZ1 を演算する熱変
位演算手段32と、この熱変位演算手段32で算出され
た熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段33と
を備えている。
S1 ,S2 で検出された温度の温度変化を用いて、熱変
位の時定数と略同じ時定数を有する仮想の位置P1 にお
ける温度変化を演算する第1の遅れ温度演算手段34a
と、この第1の遅れ温度演算手段34aで演算された温
度変化に対応して変化する熱変位ΔZ1 を演算する熱変
位演算手段32と、この熱変位演算手段32で算出され
た熱変位に基づいて加工誤差を補正する補正手段33と
を備えている。
【0035】好ましい態様として、第1実施例の熱変位
補正装置12aは、温度センサS2で検出された温度の
温度変化より遅れて表れる第2の遅れ温度変化を、前記
温度変化に遅れを見込んで演算する第2の遅れ温度演算
手段34bを、更に備えている。熱変位演算手段32
は、第2の遅れ温度演算手段34bで演算された第2の
遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ2 を
算出し、この遅れ応答成分を先の熱変位ΔZ1 に加算す
る。補正手段33は、この加算された合計値即ち熱変位
に基づいて、加工誤差を補正する演算をし、その結果を
出力する。また、第1の遅れ温度演算手段34a及び第
2の遅れ温度演算手段34bの最終演算結果と、次に運
転を再開するまでの工作機械の電源のオフ時間とを、同
時に記憶する記憶手段35によって、遅れ温度の演算が
中断した場合の補償を与えている。
補正装置12aは、温度センサS2で検出された温度の
温度変化より遅れて表れる第2の遅れ温度変化を、前記
温度変化に遅れを見込んで演算する第2の遅れ温度演算
手段34bを、更に備えている。熱変位演算手段32
は、第2の遅れ温度演算手段34bで演算された第2の
遅れ温度変化に対応して変化する遅れ応答成分ΔZ2 を
算出し、この遅れ応答成分を先の熱変位ΔZ1 に加算す
る。補正手段33は、この加算された合計値即ち熱変位
に基づいて、加工誤差を補正する演算をし、その結果を
出力する。また、第1の遅れ温度演算手段34a及び第
2の遅れ温度演算手段34bの最終演算結果と、次に運
転を再開するまでの工作機械の電源のオフ時間とを、同
時に記憶する記憶手段35によって、遅れ温度の演算が
中断した場合の補償を与えている。
【0036】第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱
変位ΔZ1 のみを考慮した場合の本発明の熱変位補正方
法は、式(3)に基づく方法である。この熱変位ΔZ1
に遅れ即時応答成分ΔZ2 を考慮した式(2)に基づく
熱変位補正方法の方が、より高精度に補正できるので好
ましい。
変位ΔZ1 のみを考慮した場合の本発明の熱変位補正方
法は、式(3)に基づく方法である。この熱変位ΔZ1
に遅れ即時応答成分ΔZ2 を考慮した式(2)に基づく
熱変位補正方法の方が、より高精度に補正できるので好
ましい。
【0037】以下に、第1実施例の具体的な手順を図2
乃至図8に基づいて説明する。図2は第1実施例の動作
を示すフローチャート、図3はZ軸熱変位の経時変化を
示すグラフ、図4は、ノーズ位置で検出された温度の温
度変化と、Z軸熱変位を示すグラフである。図5はノー
ズ温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグラフ、図6は
第1の遅れ温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフ、
図7はコラム温度変化から遅れ応答成分を算出する手法
を示すグラフ、図8は第1,第2の遅れ温度変化から見
積もった熱変位とZ軸熱変位との関係を示すグラフであ
る。
乃至図8に基づいて説明する。図2は第1実施例の動作
を示すフローチャート、図3はZ軸熱変位の経時変化を
示すグラフ、図4は、ノーズ位置で検出された温度の温
度変化と、Z軸熱変位を示すグラフである。図5はノー
ズ温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグラフ、図6は
第1の遅れ温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフ、
図7はコラム温度変化から遅れ応答成分を算出する手法
を示すグラフ、図8は第1,第2の遅れ温度変化から見
積もった熱変位とZ軸熱変位との関係を示すグラフであ
る。
【0038】第1実施例では、まず初めに、予め図3の
データに基づいて、MC1における例えばZ軸方向の熱
変位の時定数を算出しておく。図3の横軸は時間、縦軸
はZ軸方向の熱変位である。Z軸方向の熱変位の時定数
を算出する場合には、MC1を主軸回転数S(例えば、
S=10,000〔min-1〕)で連続運転する。そして、
主軸6の先端部、又は主軸先端部に一時的に装着された
テストバーの適当箇所における、Z軸方向の熱変位を時
系列データ39として実測する。なお、発熱によって主
軸が傾斜する場合には、例えばテストバーの根元部と先
端部などにおける熱変位を実測するのが好ましい。前記
データ39(図中「○」印)には、通常は室温変化の影
響が含まれているので、室温変化の影響を補正した、飽
和値40(例えば、43〔μm〕)を有する室温補正デ
ータ41(図中「●」印)を演算する。「時定数」と
は、「線形一次遅れシステムにおいて、ステップ状入力
を加えた時、出力が飽和値の63.2%に達するのに要
する時間」である。したがって、室温補正データ41
に、最小二乗法で一次遅れ要素のステップ入力応答関数
を当てはめて、Z軸方向の熱変位時定数τz (例えば、
τz =0.57〔h〕)を得る。
データに基づいて、MC1における例えばZ軸方向の熱
変位の時定数を算出しておく。図3の横軸は時間、縦軸
はZ軸方向の熱変位である。Z軸方向の熱変位の時定数
を算出する場合には、MC1を主軸回転数S(例えば、
S=10,000〔min-1〕)で連続運転する。そして、
主軸6の先端部、又は主軸先端部に一時的に装着された
テストバーの適当箇所における、Z軸方向の熱変位を時
系列データ39として実測する。なお、発熱によって主
軸が傾斜する場合には、例えばテストバーの根元部と先
端部などにおける熱変位を実測するのが好ましい。前記
データ39(図中「○」印)には、通常は室温変化の影
響が含まれているので、室温変化の影響を補正した、飽
和値40(例えば、43〔μm〕)を有する室温補正デ
ータ41(図中「●」印)を演算する。「時定数」と
は、「線形一次遅れシステムにおいて、ステップ状入力
を加えた時、出力が飽和値の63.2%に達するのに要
する時間」である。したがって、室温補正データ41
に、最小二乗法で一次遅れ要素のステップ入力応答関数
を当てはめて、Z軸方向の熱変位時定数τz (例えば、
τz =0.57〔h〕)を得る。
【0039】さらに、Z軸方向の熱変位を検出する際に
同時にノーズ温度センサS1 で検出される温度の温度変
化のデータに基づいて、温度変化の時定数を算出する。
時定数を算出する手順は、先のZ軸方向の熱変位の時定
数を算出したものと同じである。図4の横軸は時間、縦
軸は温度変化及びZ軸熱変位である。図示するように、
発熱源に近いノーズ温度変化TN は速やかに飽和温度変
化“A”(A=6.5〔℃〕)に達するので、そのノー
ズ温度時定数τN も0.39〔h〕と小さい。図5の横
軸はノーズ温度変化TN を示しており、縦軸はZ軸方向
の熱変位を示している。図示するように、温度変化TN
とZ軸熱変位とは、比例などの対応関係はない。
同時にノーズ温度センサS1 で検出される温度の温度変
化のデータに基づいて、温度変化の時定数を算出する。
時定数を算出する手順は、先のZ軸方向の熱変位の時定
数を算出したものと同じである。図4の横軸は時間、縦
軸は温度変化及びZ軸熱変位である。図示するように、
発熱源に近いノーズ温度変化TN は速やかに飽和温度変
化“A”(A=6.5〔℃〕)に達するので、そのノー
ズ温度時定数τN も0.39〔h〕と小さい。図5の横
軸はノーズ温度変化TN を示しており、縦軸はZ軸方向
の熱変位を示している。図示するように、温度変化TN
とZ軸熱変位とは、比例などの対応関係はない。
【0040】図1及び図2に示すように、MC1を起動
して工具7により工作物9の切削加工を開始する(ステ
ップ201)。第1の箇所例えばノーズ位置の温度を温
度センサS1 により検出して(ステップ202)、この
検出信号を第1の遅れ温度演算手段34aに入力する。
次いで、「ダミー手法」により遅れ温度変化を演算す
る。即ち、ノーズ温度変化TN より遅れて表われるZ軸
熱変位の時定数と同じ時定数を有する第1の遅れ温度変
化Y1 の挙動を、ダミーの時定数τD を設定して見込
む。
して工具7により工作物9の切削加工を開始する(ステ
ップ201)。第1の箇所例えばノーズ位置の温度を温
度センサS1 により検出して(ステップ202)、この
検出信号を第1の遅れ温度演算手段34aに入力する。
次いで、「ダミー手法」により遅れ温度変化を演算す
る。即ち、ノーズ温度変化TN より遅れて表われるZ軸
熱変位の時定数と同じ時定数を有する第1の遅れ温度変
化Y1 の挙動を、ダミーの時定数τD を設定して見込
む。
【0041】即ち、検出温度変化(例えば、ノーズ温度
変化TN )に遅れを見込んでMC1の熱変位の時定数と
略同じ時定数を有する第1の遅れ温度変化Y1 を演算す
る第1の微分方程式(6)を解いた第1の解の式(7)
を用いている。 τD ・dY1 /dt+Y1 =TN ……(6) Y1 =TN ・[1−EXP(−t/τD )] ……(7) そして、第1の遅れ温度演算手段34aでは第1の解の
式(7)に基づいて、前記検出温度変化TN を用いて第
1の遅れ温度変化Y1 を算出する。
変化TN )に遅れを見込んでMC1の熱変位の時定数と
略同じ時定数を有する第1の遅れ温度変化Y1 を演算す
る第1の微分方程式(6)を解いた第1の解の式(7)
を用いている。 τD ・dY1 /dt+Y1 =TN ……(6) Y1 =TN ・[1−EXP(−t/τD )] ……(7) そして、第1の遅れ温度演算手段34aでは第1の解の
式(7)に基づいて、前記検出温度変化TN を用いて第
1の遅れ温度変化Y1 を算出する。
【0042】図6に示すように、Z軸熱変位と第1の遅
れ温度変化Y1 とは傾斜bを有する直線47で代表され
るリニアな相関を持つ領域が生じる。この傾斜bは、第
1の遅れ温度変化Y1 に対応するZ軸熱変位を算出する
際の比例定数であり、ここで算出されるZ軸熱変位は、
先の式(4)に該当する。この演算の結果が、先の図3
に示したZ軸熱変位の時系列データに一致するように、
ダミー時定数τD と内部補正係数bの値が適宜選択され
る。ここで決まる時定数τD と係数bの値は工作機械毎
に固有の値であり、この作業は一度行なっておけばよ
い。第1の遅れ温度演算手段34aでは、ダミー時定数
τD の確定した式(7)を用いて、ノーズ温度変化TN
に対応する第1の遅れ温度変化Y1 を演算する(ステッ
プ203)。
れ温度変化Y1 とは傾斜bを有する直線47で代表され
るリニアな相関を持つ領域が生じる。この傾斜bは、第
1の遅れ温度変化Y1 に対応するZ軸熱変位を算出する
際の比例定数であり、ここで算出されるZ軸熱変位は、
先の式(4)に該当する。この演算の結果が、先の図3
に示したZ軸熱変位の時系列データに一致するように、
ダミー時定数τD と内部補正係数bの値が適宜選択され
る。ここで決まる時定数τD と係数bの値は工作機械毎
に固有の値であり、この作業は一度行なっておけばよ
い。第1の遅れ温度演算手段34aでは、ダミー時定数
τD の確定した式(7)を用いて、ノーズ温度変化TN
に対応する第1の遅れ温度変化Y1 を演算する(ステッ
プ203)。
【0043】熱変位演算手段32では、内部補正係数b
が確定した式(4)にこの遅れ温度変化Y1 を代入し
て、熱変位を算出する(ステップ204)。この熱変位
が、第1の遅れ温度変化Y1 に対応して変化する第1の
遅れ応答成分に該当している。次に、第2の遅れ応答成
分を考慮するか否かを判別し(ステップ205)、考慮
しない場合には、熱変位演算手段32で演算した結果に
基づいて、補正手段33で加工誤差を補正する。具体的
には、例えば直交座標系の原点位置をオフセットする
(ステップ206)。その後、補正を終了させるか否か
を判別し(ステップ207)、終了させる場合にはMC
1を停止して(ステップ208)、全体の手順が終了す
る。補正が終了しない場合にはステップ202に戻る。
が確定した式(4)にこの遅れ温度変化Y1 を代入し
て、熱変位を算出する(ステップ204)。この熱変位
が、第1の遅れ温度変化Y1 に対応して変化する第1の
遅れ応答成分に該当している。次に、第2の遅れ応答成
分を考慮するか否かを判別し(ステップ205)、考慮
しない場合には、熱変位演算手段32で演算した結果に
基づいて、補正手段33で加工誤差を補正する。具体的
には、例えば直交座標系の原点位置をオフセットする
(ステップ206)。その後、補正を終了させるか否か
を判別し(ステップ207)、終了させる場合にはMC
1を停止して(ステップ208)、全体の手順が終了す
る。補正が終了しない場合にはステップ202に戻る。
【0044】一方、ステップ205の判断において、第
2の遅れ応答成分を考慮する場合には、温度センサS2
で第2箇所例えばコラム位置の温度変化TC を検出して
(ステップ209)、第2の遅れ温度演算手段34bに
入力する。コラム位置に表れる温度変化TC は、例えば
図6の長時間経過した領域Dで、第1の遅れ温度変化Y
1 とZ軸熱変位とのリニアな相関関係に対して誤差を与
えている。前述の「ダミー手法」を再度用いて、コラム
温度変化TC より第2の遅れ温度変化Y2 の挙動を、ダ
ミーの時定数τDCを設定して見込む。
2の遅れ応答成分を考慮する場合には、温度センサS2
で第2箇所例えばコラム位置の温度変化TC を検出して
(ステップ209)、第2の遅れ温度演算手段34bに
入力する。コラム位置に表れる温度変化TC は、例えば
図6の長時間経過した領域Dで、第1の遅れ温度変化Y
1 とZ軸熱変位とのリニアな相関関係に対して誤差を与
えている。前述の「ダミー手法」を再度用いて、コラム
温度変化TC より第2の遅れ温度変化Y2 の挙動を、ダ
ミーの時定数τDCを設定して見込む。
【0045】この場合には、第2の遅れ温度変化Y2 を
演算する第2の微分方程式(8)を解いた第2の解の式
(9)を用いている。 τDC・dY2 /dt+Y2 =TC ……(8) Y2 =TC ・[1−EXP(−t/τDC)] ……(9) ここで、TC :コラム温度変化入力 Y2 :第2の遅れ温度変化出力 τDC:ダミー時定数 である。なお、この第2の遅れ温度変化Y2 に対応する
Z軸熱変位は、温度と熱変位の変換係数cを含んだ先の
式(5)に該当する。
演算する第2の微分方程式(8)を解いた第2の解の式
(9)を用いている。 τDC・dY2 /dt+Y2 =TC ……(8) Y2 =TC ・[1−EXP(−t/τDC)] ……(9) ここで、TC :コラム温度変化入力 Y2 :第2の遅れ温度変化出力 τDC:ダミー時定数 である。なお、この第2の遅れ温度変化Y2 に対応する
Z軸熱変位は、温度と熱変位の変換係数cを含んだ先の
式(5)に該当する。
【0046】図7の横軸は時間、左側の零から上の縦軸
はコラム温度変化、右側の零から下の縦軸は遅れ応答成
分である。図中には、コラム温度変化の時系列データ4
3と、図6においてZ軸熱変位から直線47の縦軸の値
を差し引いた誤差44と、コラム温度変化の時系列デー
タ43を用いて式(5)と式(9)を介して得た演算結
果45とが、示されている。前記誤差44と前記演算結
果45は、それぞれ遅れ応答成分ΔZ2 の実データと演
算データに該当する。即ち、式(9)に含まれるダミー
時定数τDC、及び式(5)の内部補正係数cを適宜選択
することにより、演算データを実データに近づけること
が可能になり、最良値がそれぞれ決定できる。ここで決
まる時定数τDCと係数cの値は工作機械毎に固有の値で
あり、主軸の回転数等運転条件が変わってもその値は変
わらないので、この作業は一度行なっておけばよい。
はコラム温度変化、右側の零から下の縦軸は遅れ応答成
分である。図中には、コラム温度変化の時系列データ4
3と、図6においてZ軸熱変位から直線47の縦軸の値
を差し引いた誤差44と、コラム温度変化の時系列デー
タ43を用いて式(5)と式(9)を介して得た演算結
果45とが、示されている。前記誤差44と前記演算結
果45は、それぞれ遅れ応答成分ΔZ2 の実データと演
算データに該当する。即ち、式(9)に含まれるダミー
時定数τDC、及び式(5)の内部補正係数cを適宜選択
することにより、演算データを実データに近づけること
が可能になり、最良値がそれぞれ決定できる。ここで決
まる時定数τDCと係数cの値は工作機械毎に固有の値で
あり、主軸の回転数等運転条件が変わってもその値は変
わらないので、この作業は一度行なっておけばよい。
【0047】第2の遅れ温度演算手段34bでは、ダミ
ー時定数τDCが確定した式(9)を用いて、コラム温度
変化TC に対応する第2の遅れ温度変化Y2 を演算する
(ステップ210)。次いで、内部補正係数cが確定し
た式(5)に第2の遅れ温度変化Y2 を代入して、第2
の遅れ応答成分を算出する(ステップ211)。先に式
(4)に該当する熱変位を算出した熱変位演算手段32
では、このようにして算出した第2の遅れ応答成分を加
算して、合計値即ちZ軸熱変位ΔZ2 を演算する(ステ
ップ212)。
ー時定数τDCが確定した式(9)を用いて、コラム温度
変化TC に対応する第2の遅れ温度変化Y2 を演算する
(ステップ210)。次いで、内部補正係数cが確定し
た式(5)に第2の遅れ温度変化Y2 を代入して、第2
の遅れ応答成分を算出する(ステップ211)。先に式
(4)に該当する熱変位を算出した熱変位演算手段32
では、このようにして算出した第2の遅れ応答成分を加
算して、合計値即ちZ軸熱変位ΔZ2 を演算する(ステ
ップ212)。
【0048】図8の縦軸は実測されたZ軸熱変位であ
り、横軸はノーズ温度変化TN とコラム温度変化TC と
を用いてステップ212までの手順を経て見積もったZ
軸熱変位ΔZである。図8に示す実測された縦軸のZ軸
熱変位と、式(4),(5)で求めた横軸のZ軸熱変位
ΔZの値とは、45°の傾きの直線46上で略一致す
る。これは両者が同じ値であることを意味している。し
たがって、各温度センサS1 ,S2 の温度データによ
り、Z軸熱変位を十分高精度に予測することができる。
り、横軸はノーズ温度変化TN とコラム温度変化TC と
を用いてステップ212までの手順を経て見積もったZ
軸熱変位ΔZである。図8に示す実測された縦軸のZ軸
熱変位と、式(4),(5)で求めた横軸のZ軸熱変位
ΔZの値とは、45°の傾きの直線46上で略一致す
る。これは両者が同じ値であることを意味している。し
たがって、各温度センサS1 ,S2 の温度データによ
り、Z軸熱変位を十分高精度に予測することができる。
【0049】このようにして、ステップ212で演算さ
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位に対する補正がなされて
(ステップ213)、工作物9を高精度で加工すること
ができる。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ
207)、終了させる場合にはMC1を停止して(ステ
ップ208)、全体の手順が終了する。補正が終了しな
い場合にはステップ202に戻る。
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位に対する補正がなされて
(ステップ213)、工作物9を高精度で加工すること
ができる。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ
207)、終了させる場合にはMC1を停止して(ステ
ップ208)、全体の手順が終了する。補正が終了しな
い場合にはステップ202に戻る。
【0050】図9はMC1を実機運転した場合の実測デ
ータであり、横軸は時間,縦軸は熱変位を示している。
主軸6の回転数Sは、S=10,000〔min -1〕であ
り、連続運転の場合を示している。図9に示すように、
図中実線48で示す補正前のZ軸方向の熱変位と、実線
52で示す補正前のY軸方向の熱変位は、それぞれ最大
約130及び約60〔μm〕であった。これに対して、
本発明では、補正後の熱変位の目標値を零に近づけるこ
とができる。即ち、本発明による熱変位の補正を行なっ
た場合は、図中破線49,53で示すように、±5〔μ
m〕程度にまでZ軸方向及びY軸方向の残留熱変位を小
さくすることができる。
ータであり、横軸は時間,縦軸は熱変位を示している。
主軸6の回転数Sは、S=10,000〔min -1〕であ
り、連続運転の場合を示している。図9に示すように、
図中実線48で示す補正前のZ軸方向の熱変位と、実線
52で示す補正前のY軸方向の熱変位は、それぞれ最大
約130及び約60〔μm〕であった。これに対して、
本発明では、補正後の熱変位の目標値を零に近づけるこ
とができる。即ち、本発明による熱変位の補正を行なっ
た場合は、図中破線49,53で示すように、±5〔μ
m〕程度にまでZ軸方向及びY軸方向の残留熱変位を小
さくすることができる。
【0051】(第2実施例)図10乃至図20は第2実
施例を説明するための図である。例えば、図10に示す
ように、MC1aは、工具7が装着される主軸6と、主
軸受20及び上部軸受(他の軸受)22を介して主軸6
を回転自在に支持する主軸頭5aとを備えている。主軸
6を回転駆動するビルトインモータ21は、両軸受2
0,22の間に配設されて、両軸受とともに主軸頭5a
に内蔵されている。主軸受20は主軸6を中心軸方向に
位置決めし、上部軸受22は熱変位で伸縮する主軸6を
中心軸方向に摺動可能に保持している。したがって、上
部軸受22及びモータ21が回転により発熱しても、主
軸6は上方に伸びるので工具7には影響を与えない。そ
の結果、MC1aの場合には主軸受20のみを発熱源と
考えて熱変位補正をすればよいことになる。主軸受20
の温度変化を検出する温度検出手段としてのヘッド温度
センサS3 を、主軸頭5aに取付けている。ヘッド温度
センサS3 の出力信号は回路38を介してA/D変換器
13に入力し、A/D変換器13からの出力信号は創成
温度演算手段31a及び遅れ温度演算手段34に入力す
る。なお、発熱源である主軸受20による温度変化が表
われる場所であれば、ヘッド位置以外の例えばノーズま
たはコラムの温度を検出してもよい。また、主軸が工作
物を把持するタイプの工作機械の場合であってもよい。
なお、第1実施例と同一または相当部分には同一符号を
付してその説明を省略する。
施例を説明するための図である。例えば、図10に示す
ように、MC1aは、工具7が装着される主軸6と、主
軸受20及び上部軸受(他の軸受)22を介して主軸6
を回転自在に支持する主軸頭5aとを備えている。主軸
6を回転駆動するビルトインモータ21は、両軸受2
0,22の間に配設されて、両軸受とともに主軸頭5a
に内蔵されている。主軸受20は主軸6を中心軸方向に
位置決めし、上部軸受22は熱変位で伸縮する主軸6を
中心軸方向に摺動可能に保持している。したがって、上
部軸受22及びモータ21が回転により発熱しても、主
軸6は上方に伸びるので工具7には影響を与えない。そ
の結果、MC1aの場合には主軸受20のみを発熱源と
考えて熱変位補正をすればよいことになる。主軸受20
の温度変化を検出する温度検出手段としてのヘッド温度
センサS3 を、主軸頭5aに取付けている。ヘッド温度
センサS3 の出力信号は回路38を介してA/D変換器
13に入力し、A/D変換器13からの出力信号は創成
温度演算手段31a及び遅れ温度演算手段34に入力す
る。なお、発熱源である主軸受20による温度変化が表
われる場所であれば、ヘッド位置以外の例えばノーズま
たはコラムの温度を検出してもよい。また、主軸が工作
物を把持するタイプの工作機械の場合であってもよい。
なお、第1実施例と同一または相当部分には同一符号を
付してその説明を省略する。
【0052】ここで、第2実施例における熱変位補正の
原理を説明する。第1実施例と同様にZ軸方向の補正を
例にとって説明する。第2実施例におけるZ軸方向の熱
変位の演算式は次式で示される。 ΔZ=a・(ΔZ3 +ΔZ4 ) ……(10) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) ΔZ3 :Z軸熱変位の創成変位成分 ΔZ4 :Z軸熱変位の遅れ応答成分 である。即ち、演算式(10)は、温度変化から熱変位
の時定数と同じ時定数を有する創成温度変化を基に演算
した創成変位成分ΔZ3 と、温度変化に対し遅れを伴っ
て熱変位が表れる遅れ応答成分ΔZ4 とを含んでいる。
ここで扱われる温度変化は、温度センサから出力される
温度と基準温度との差で算出する。基準温度には、先の
第1実施例で考慮されたものが同じく採用される。
原理を説明する。第1実施例と同様にZ軸方向の補正を
例にとって説明する。第2実施例におけるZ軸方向の熱
変位の演算式は次式で示される。 ΔZ=a・(ΔZ3 +ΔZ4 ) ……(10) ここで、ΔZ :Z軸熱変位 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) ΔZ3 :Z軸熱変位の創成変位成分 ΔZ4 :Z軸熱変位の遅れ応答成分 である。即ち、演算式(10)は、温度変化から熱変位
の時定数と同じ時定数を有する創成温度変化を基に演算
した創成変位成分ΔZ3 と、温度変化に対し遅れを伴っ
て熱変位が表れる遅れ応答成分ΔZ4 とを含んでいる。
ここで扱われる温度変化は、温度センサから出力される
温度と基準温度との差で算出する。基準温度には、先の
第1実施例で考慮されたものが同じく採用される。
【0053】なお、本発明は、式(11)に示すように
創成変位成分ΔZ3 のみに基づく演算式を使用すること
もできる。 ΔZ=a・ΔZ3 ……(11) 創成変位成分ΔZ3 は、次式により算出される。 ΔZ3 =d・Y3 ……(12) ここで、Y3 :創成温度変化〔℃〕 d :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
創成変位成分ΔZ3 のみに基づく演算式を使用すること
もできる。 ΔZ=a・ΔZ3 ……(11) 創成変位成分ΔZ3 は、次式により算出される。 ΔZ3 =d・Y3 ……(12) ここで、Y3 :創成温度変化〔℃〕 d :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。
【0054】第2実施例で使用される式(12)は、一
箇所に設置された温度センサの出力により機体10の熱
変位を演算する式である。そして、ヘッド温度センサS
3 で検出された温度の温度変化Tを展開して得た創成温
度変化Y3 から創成変位成分ΔZ3 を演算することにな
る。なお、温度センサの設置箇所は少なくとも一箇所あ
ればよいが、発熱源の数に応じて適宜追加される。ま
た、温度センサの設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受
ける箇所ならば、主軸頭5a以外の場所であってもよ
い。
箇所に設置された温度センサの出力により機体10の熱
変位を演算する式である。そして、ヘッド温度センサS
3 で検出された温度の温度変化Tを展開して得た創成温
度変化Y3 から創成変位成分ΔZ3 を演算することにな
る。なお、温度センサの設置箇所は少なくとも一箇所あ
ればよいが、発熱源の数に応じて適宜追加される。ま
た、温度センサの設置箇所は、発熱源の発熱の影響を受
ける箇所ならば、主軸頭5a以外の場所であってもよ
い。
【0055】一方、遅れ応答成分ΔZ4 を演算する式は
下記の通りである。 ΔZ4 =e・Y4 ……(13) ここで、Y4 :遅れ温度変化〔℃〕 e :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。式(13)では、ヘッド温度センサS3 で検出
された温度の温度変化Tに遅れを見込んで演算した遅れ
温度変化Y4 から、遅れ応答成分ΔZ4 を演算すること
になる。
下記の通りである。 ΔZ4 =e・Y4 ……(13) ここで、Y4 :遅れ温度変化〔℃〕 e :内部補正係数〔±μm/℃〕 である。式(13)では、ヘッド温度センサS3 で検出
された温度の温度変化Tに遅れを見込んで演算した遅れ
温度変化Y4 から、遅れ応答成分ΔZ4 を演算すること
になる。
【0056】図10は、本発明の第2実施例を示すブロ
ック図である。第2実施例の熱変位補正装置12bは、
温度センサS3 で検出された温度を展開して熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する仮想の位置P1 における温
度変化を演算する創成温度演算手段31aと、この創成
温度演算手段31aで演算された創成温度変化に対応し
て変化する創成変位成分ΔZ3 を演算する熱変位演算手
段32と、この熱変位演算手段32で算出された熱変位
に基づいて加工誤差を補正する補正手段33とを備えて
いる。
ック図である。第2実施例の熱変位補正装置12bは、
温度センサS3 で検出された温度を展開して熱変位の時
定数と略同じ時定数を有する仮想の位置P1 における温
度変化を演算する創成温度演算手段31aと、この創成
温度演算手段31aで演算された創成温度変化に対応し
て変化する創成変位成分ΔZ3 を演算する熱変位演算手
段32と、この熱変位演算手段32で算出された熱変位
に基づいて加工誤差を補正する補正手段33とを備えて
いる。
【0057】好ましい態様として、熱変位補正装置12
bは遅れ温度演算手段34を更に備えている。遅れ温度
演算手段34は、温度センサS3 で検出された温度の温
度変化より遅れて表れる遅れ温度変化を、前記温度変化
に遅れを見込んで演算する。熱変位演算手段32は、遅
れ温度演算手段34で演算された遅れ温度変化に対応し
て変化する遅れ応答成分ΔZ4 を算出し、先の創成変位
成分ΔZ3 に加算する。この加算された熱変位に基づい
て、補正手段33で加工誤差が補正され、その信号が出
力される。本第3実施例においては、先の第1実施例と
同一又は相当機能部分の説明は省略する。
bは遅れ温度演算手段34を更に備えている。遅れ温度
演算手段34は、温度センサS3 で検出された温度の温
度変化より遅れて表れる遅れ温度変化を、前記温度変化
に遅れを見込んで演算する。熱変位演算手段32は、遅
れ温度演算手段34で演算された遅れ温度変化に対応し
て変化する遅れ応答成分ΔZ4 を算出し、先の創成変位
成分ΔZ3 に加算する。この加算された熱変位に基づい
て、補正手段33で加工誤差が補正され、その信号が出
力される。本第3実施例においては、先の第1実施例と
同一又は相当機能部分の説明は省略する。
【0058】以下に、第2実施例の具体的な手順を図1
1乃至図20により説明する。図11は第2実施例の動
作を示すフローチャート、図12は、Z軸熱変位と、ヘ
ッド位置で検出された温度の温度変化Tの代表例(サン
プル温度変化)との経時変化を示すグラフ、図13はサ
ンプル温度変化とZ軸熱変位との標準的関係を示すグラ
フである。図14は、サンプル温度変化と、サンプル温
度変化より時定数の小さい温度変化“A”と、サンプル
温度変化より時定数の大きい温度変化“B”とを示すグ
ラフである。図15は図14に示した温度変化に加え
て、サンプル温度変化を用いて創成した創成温度変化Y
3A,Y3B(図中「○」印)を示すグラフである。図16
は創成温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフ、図1
7は、Z軸熱変位が遅れ応答成分を含んでいる場合の、
創成温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフである。
図18は、サンプル温度変化と、サンプル温度変化より
遅れて表れる遅れ温度変化Cと、サンプル温度変化を用
いて創成した遅れ温度変化Y4 (図中「○」印)とを示
すグラフ、図19は遅れ温度変化に対する遅れ応答成分
を示すグラフである。図20は創成温度変化及び遅れ温
度変化から見積もった熱変位に対するZ軸熱変位を示す
グラフである。
1乃至図20により説明する。図11は第2実施例の動
作を示すフローチャート、図12は、Z軸熱変位と、ヘ
ッド位置で検出された温度の温度変化Tの代表例(サン
プル温度変化)との経時変化を示すグラフ、図13はサ
ンプル温度変化とZ軸熱変位との標準的関係を示すグラ
フである。図14は、サンプル温度変化と、サンプル温
度変化より時定数の小さい温度変化“A”と、サンプル
温度変化より時定数の大きい温度変化“B”とを示すグ
ラフである。図15は図14に示した温度変化に加え
て、サンプル温度変化を用いて創成した創成温度変化Y
3A,Y3B(図中「○」印)を示すグラフである。図16
は創成温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフ、図1
7は、Z軸熱変位が遅れ応答成分を含んでいる場合の、
創成温度変化に対するZ軸熱変位を示すグラフである。
図18は、サンプル温度変化と、サンプル温度変化より
遅れて表れる遅れ温度変化Cと、サンプル温度変化を用
いて創成した遅れ温度変化Y4 (図中「○」印)とを示
すグラフ、図19は遅れ温度変化に対する遅れ応答成分
を示すグラフである。図20は創成温度変化及び遅れ温
度変化から見積もった熱変位に対するZ軸熱変位を示す
グラフである。
【0059】第2実施例では、予めZ軸方向の熱変位を
検出する。これと同時に、ヘッド温度センサS3 で検出
される温度の温度変化のデータに基づいて、それぞれの
時定数を算出しておく。時定数を算出する手順は、先の
第1実施例においてZ軸方向の熱変位の時定数を算出し
たものと同じである。図12は、主軸が一定回転(回転
数S=10,000〔min -1〕)の下で、ヘッド温度セ
ンサS3 で検出した温度の温度変化Tの代表例(サンプ
ル温度変化)と、二つの例に係るZ軸熱変位(熱変位
“A,B”)の時系列データを示している。Z軸熱変位
の時定数がサンプル温度変化Tの時定数τS より小さい
場合、即ち熱変位が早く表れる場合には、熱変位“A”
(時定数τA )となる。一方、前記熱変位時定数が前記
時定数τS より大きい場合、即ち、ゆっくりと熱変位が
表れる場合には、熱変位“B”(時定数τB )となる。
したがって、MC1aの熱変位特性により、実際には熱
変位“A,B”のうちどちらか一方のデータになる。こ
こで抽出されたZ軸熱変位の時定数とサンプル温度変化
Tの時定数との値のバランスは、工作機械毎に固有の熱
特性を表すものであり、主軸回転数等運転条件が変わっ
ても変化が少ない。したがって、一度両時定数を算出す
る作業を行なっておけばよい。
検出する。これと同時に、ヘッド温度センサS3 で検出
される温度の温度変化のデータに基づいて、それぞれの
時定数を算出しておく。時定数を算出する手順は、先の
第1実施例においてZ軸方向の熱変位の時定数を算出し
たものと同じである。図12は、主軸が一定回転(回転
数S=10,000〔min -1〕)の下で、ヘッド温度セ
ンサS3 で検出した温度の温度変化Tの代表例(サンプ
ル温度変化)と、二つの例に係るZ軸熱変位(熱変位
“A,B”)の時系列データを示している。Z軸熱変位
の時定数がサンプル温度変化Tの時定数τS より小さい
場合、即ち熱変位が早く表れる場合には、熱変位“A”
(時定数τA )となる。一方、前記熱変位時定数が前記
時定数τS より大きい場合、即ち、ゆっくりと熱変位が
表れる場合には、熱変位“B”(時定数τB )となる。
したがって、MC1aの熱変位特性により、実際には熱
変位“A,B”のうちどちらか一方のデータになる。こ
こで抽出されたZ軸熱変位の時定数とサンプル温度変化
Tの時定数との値のバランスは、工作機械毎に固有の熱
特性を表すものであり、主軸回転数等運転条件が変わっ
ても変化が少ない。したがって、一度両時定数を算出す
る作業を行なっておけばよい。
【0060】次に、図10及び図11に示すように、M
C1aを起動して工具7により工作物9の切削を開始す
る(ステップ301)。また、ヘッド位置の温度を検出
して(ステップ302)、創成温度演算手段31aに入
力する。
C1aを起動して工具7により工作物9の切削を開始す
る(ステップ301)。また、ヘッド位置の温度を検出
して(ステップ302)、創成温度演算手段31aに入
力する。
【0061】しかしながら、例えば図12のデータに基
づいて、サンプル温度変化Tと熱変位“A”との関係、
及びサンプル温度変化Tと熱変位“B”との関係を表す
と、図13に示すように、それぞれ弓状曲線55,56
になる。即ち、これらサンプル温度変化TとZ軸熱変位
とが単純なリニアの関係にならないので、ヘッド位置か
ら随時検出した温度の温度変化から直ちに熱変位を見込
むことができない。
づいて、サンプル温度変化Tと熱変位“A”との関係、
及びサンプル温度変化Tと熱変位“B”との関係を表す
と、図13に示すように、それぞれ弓状曲線55,56
になる。即ち、これらサンプル温度変化TとZ軸熱変位
とが単純なリニアの関係にならないので、ヘッド位置か
ら随時検出した温度の温度変化から直ちに熱変位を見込
むことができない。
【0062】そこで、「リニアライズ手法」により、ヘ
ッド位置から検出した温度の温度変化を用いて、熱変位
の時定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算す
る。図14は、時定数をτS とするサンプル温度変化5
7と、熱変位“A”と同じ時定数τA を有する温度変化
“A”の模擬例58と、熱変位“B”と同じ時定数τB
を有する温度変化“B”の模擬例59とを示している。
曲線57乃至59で示す温度変化は、いずれも値Tmax
で飽和するようになっており、各時定数の一例を以下に
示す。 τA = 5〔min〕 τS =10〔min〕 τB =15〔min〕
ッド位置から検出した温度の温度変化を用いて、熱変位
の時定数と略同じ時定数を有する創成温度変化を演算す
る。図14は、時定数をτS とするサンプル温度変化5
7と、熱変位“A”と同じ時定数τA を有する温度変化
“A”の模擬例58と、熱変位“B”と同じ時定数τB
を有する温度変化“B”の模擬例59とを示している。
曲線57乃至59で示す温度変化は、いずれも値Tmax
で飽和するようになっており、各時定数の一例を以下に
示す。 τA = 5〔min〕 τS =10〔min〕 τB =15〔min〕
【0063】また、各温度変化57乃至59の挙動関係
は、下記の微分方程式(14)乃至(16)でそれぞれ
表現できる。 τS ・dT/dt+T=X ……(14) τA ・dY3A/dt+Y3A=X ……(15) τB ・dY3B/dt+Y3B=X ……(16) なお、式(15),(16)は微分方程式の一般式(1
7)で表わすことができる。 τZ ・dY3 /dt+Y3 =X ……(17) ここで、T :ヘッド温度センサS2 で検出される温度
変化〔℃〕 X :発熱部の温度変化〔℃〕 Y3 :創成温度変化〔℃〕 Y3A:温度変化“A”を創成する創成温度変化〔℃〕 Y3B:温度変化“B”を創成する創成温度変化〔℃〕 τZ :Z軸熱変位の時定数〔min〕 である。
は、下記の微分方程式(14)乃至(16)でそれぞれ
表現できる。 τS ・dT/dt+T=X ……(14) τA ・dY3A/dt+Y3A=X ……(15) τB ・dY3B/dt+Y3B=X ……(16) なお、式(15),(16)は微分方程式の一般式(1
7)で表わすことができる。 τZ ・dY3 /dt+Y3 =X ……(17) ここで、T :ヘッド温度センサS2 で検出される温度
変化〔℃〕 X :発熱部の温度変化〔℃〕 Y3 :創成温度変化〔℃〕 Y3A:温度変化“A”を創成する創成温度変化〔℃〕 Y3B:温度変化“B”を創成する創成温度変化〔℃〕 τZ :Z軸熱変位の時定数〔min〕 である。
【0064】式(14)によれば、サンプル温度変化T
から発熱部の温度変化Xが分かるので、この値Xを式
(17)に代入する。すると、サンプル温度変化の時定
数τSとは異なった時定数τZ を有する創成温度変化Y
3 が得られる。時定数τZ は、MC1aの熱特性で定ま
るものであり、工作機械毎に固有の値である。
から発熱部の温度変化Xが分かるので、この値Xを式
(17)に代入する。すると、サンプル温度変化の時定
数τSとは異なった時定数τZ を有する創成温度変化Y
3 が得られる。時定数τZ は、MC1aの熱特性で定ま
るものであり、工作機械毎に固有の値である。
【0065】実際に創成温度演算手段31a(図10)
で演算する場合には、検出温度変化(例えば、サンプル
温度変化T)から発熱源の温度変化Xを算出する第3の
微分方程式(14)と、この発熱源温度変化Xを用いて
MC1aの熱変位の時定数と略同じ時定数を有する創成
温度変化Y3 を算出する第4の微分方程式(17)とを
解いた第3の解の式を用いている。第3,第4の微分方
程式(14),(17)を解くと、次式(18),(1
9)がそれぞれ得られる。 T=X・[1−EXP(−t/τS )] ……(18) Y3 =X・[1−EXP(−t/τz )] ……(19) 式(18)によりXが分かるので、この値を式(19)
に代入すると第3の解の式(20)が得られる。 Y3 =T・[1−EXP(−t/τz )]/[1−EXP(−t/τS )] ……(20) ここで、t:MC1aの電源投入時からの経過時間〔mi
n 〕 である。
で演算する場合には、検出温度変化(例えば、サンプル
温度変化T)から発熱源の温度変化Xを算出する第3の
微分方程式(14)と、この発熱源温度変化Xを用いて
MC1aの熱変位の時定数と略同じ時定数を有する創成
温度変化Y3 を算出する第4の微分方程式(17)とを
解いた第3の解の式を用いている。第3,第4の微分方
程式(14),(17)を解くと、次式(18),(1
9)がそれぞれ得られる。 T=X・[1−EXP(−t/τS )] ……(18) Y3 =X・[1−EXP(−t/τz )] ……(19) 式(18)によりXが分かるので、この値を式(19)
に代入すると第3の解の式(20)が得られる。 Y3 =T・[1−EXP(−t/τz )]/[1−EXP(−t/τS )] ……(20) ここで、t:MC1aの電源投入時からの経過時間〔mi
n 〕 である。
【0066】図15は、サンプル温度変化T及び温度変
化“A,B”に加えて、式(18),(19)によりサ
ンプル温度変化Tを用いて創成した創成温度変化Y3
(具体的には、創成温度変化Y3A又はY3B)を「○」印
で表示している。この「○」印は、測定間隔即ち演算イ
ンターバルが1.0〔min〕 の場合を示している。この
ように式(18),(19)を用いた演算により、任意
の時定数を有する熱変位と略同じ時定数を有する創成温
度変化を創成することができる。そして、創成温度演算
手段31aでは第3の解の式(20)に基づいて、検出
温度変化Tを用いて創成温度変化Y3 を算出する(ステ
ップ303)。即ち、繰り返し演算を行なわないので、
必要な任意の時点で演算を行なって熱変位の補正ができ
る。
化“A,B”に加えて、式(18),(19)によりサ
ンプル温度変化Tを用いて創成した創成温度変化Y3
(具体的には、創成温度変化Y3A又はY3B)を「○」印
で表示している。この「○」印は、測定間隔即ち演算イ
ンターバルが1.0〔min〕 の場合を示している。この
ように式(18),(19)を用いた演算により、任意
の時定数を有する熱変位と略同じ時定数を有する創成温
度変化を創成することができる。そして、創成温度演算
手段31aでは第3の解の式(20)に基づいて、検出
温度変化Tを用いて創成温度変化Y3 を算出する(ステ
ップ303)。即ち、繰り返し演算を行なわないので、
必要な任意の時点で演算を行なって熱変位の補正ができ
る。
【0067】創成温度変化Y3 は、熱変位と同じ時定数
を有しているので、図16の直線60に示すように、Z
軸熱変位とリニアの関係になる。直線の傾きdが、創成
温度変化Y3 と熱変位の相関を表している。熱変位演算
手段32では、式(12)を用いて創成温度変化Y3 か
ら熱変位(即ち、創成変位成分ΔZ3 )を算出する(ス
テップ304)。
を有しているので、図16の直線60に示すように、Z
軸熱変位とリニアの関係になる。直線の傾きdが、創成
温度変化Y3 と熱変位の相関を表している。熱変位演算
手段32では、式(12)を用いて創成温度変化Y3 か
ら熱変位(即ち、創成変位成分ΔZ3 )を算出する(ス
テップ304)。
【0068】以上述べたように、リニアライズ手法は、
基本的には時定数の小さい敏感な熱変位を、例えば発熱
源から離れたヘッド位置で検出した温度の温度変化Tか
ら見込むものである。この手法により算出される創成変
位成分ΔZ3 は、式(12)の創成変位成分ΔZ3 に相
当するものであり、この手法単独でも精度のよい熱変位
補正ができる。次に、遅れ応答成分ΔZ4 を考慮するか
否かを判別し(ステップ305)、考慮しない場合に
は、熱変位演算手段32で演算した結果に基づいて、補
正手段33で加工誤差を補正する(ステップ306)。
その後、補正を終了するか否かを判別し(ステップ30
7)、終了させる場合にはMC1aを停止して(ステッ
プ308)、全体の手順が終了する。補正が終了しない
場合にはステップ302に戻る。
基本的には時定数の小さい敏感な熱変位を、例えば発熱
源から離れたヘッド位置で検出した温度の温度変化Tか
ら見込むものである。この手法により算出される創成変
位成分ΔZ3 は、式(12)の創成変位成分ΔZ3 に相
当するものであり、この手法単独でも精度のよい熱変位
補正ができる。次に、遅れ応答成分ΔZ4 を考慮するか
否かを判別し(ステップ305)、考慮しない場合に
は、熱変位演算手段32で演算した結果に基づいて、補
正手段33で加工誤差を補正する(ステップ306)。
その後、補正を終了するか否かを判別し(ステップ30
7)、終了させる場合にはMC1aを停止して(ステッ
プ308)、全体の手順が終了する。補正が終了しない
場合にはステップ302に戻る。
【0069】一方、ステップ305の判断において遅れ
応答成分ΔZ4 を考慮する場合には、ヘッド温度センサ
S3 で検出されたヘッド位置の温度を、遅れ温度演算手
段34に入力する。コラム3等は、その質量が大きく、
また主な発熱源である主軸6とも離れているので、温度
変化が遅れるヘッド位置よりさらに遅れて温度変化が表
われる。この遅れ温度変化は、第1実施例の図6で示し
たものと同様に、図17の長時間経過した領域Dで、創
成温度変化Y3 とZ軸熱変位とのリニアな相関に誤差を
与える。
応答成分ΔZ4 を考慮する場合には、ヘッド温度センサ
S3 で検出されたヘッド位置の温度を、遅れ温度演算手
段34に入力する。コラム3等は、その質量が大きく、
また主な発熱源である主軸6とも離れているので、温度
変化が遅れるヘッド位置よりさらに遅れて温度変化が表
われる。この遅れ温度変化は、第1実施例の図6で示し
たものと同様に、図17の長時間経過した領域Dで、創
成温度変化Y3 とZ軸熱変位とのリニアな相関に誤差を
与える。
【0070】遅れ応答成分ΔZ4 を考慮する場合には、
前述の「ダミー手法」を用いて、ヘッド温度センサS3
で検出した温度の温度変化Tより遅れて表れる遅れ温度
変化Y4 の挙動を、ダミーの時定数τDHを設定して見込
む。この場合には、検出温度変化(例えば、ヘッド位置
又はコラム位置の温度変化)TH に遅れを見込んで、工
作機械の熱変位と演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ
応答成分の時定数と略同じ時定数を有する第2の遅れ温
度変化Y4 を演算する第5の微分方程式(21)を解い
た第4の解の式(22)を用いている。 τDH・dY4 /dt+Y4 =TH ……(21) Y4 =TH ・[1−EXP(−t/τDH)] ……(22) ここで、TH :温度センサで検出される温度変化〔℃〕 Y4 :第2の遅れ温度変化〔℃〕 τDH:ダミー時定数〔min〕 である。
前述の「ダミー手法」を用いて、ヘッド温度センサS3
で検出した温度の温度変化Tより遅れて表れる遅れ温度
変化Y4 の挙動を、ダミーの時定数τDHを設定して見込
む。この場合には、検出温度変化(例えば、ヘッド位置
又はコラム位置の温度変化)TH に遅れを見込んで、工
作機械の熱変位と演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ
応答成分の時定数と略同じ時定数を有する第2の遅れ温
度変化Y4 を演算する第5の微分方程式(21)を解い
た第4の解の式(22)を用いている。 τDH・dY4 /dt+Y4 =TH ……(21) Y4 =TH ・[1−EXP(−t/τDH)] ……(22) ここで、TH :温度センサで検出される温度変化〔℃〕 Y4 :第2の遅れ温度変化〔℃〕 τDH:ダミー時定数〔min〕 である。
【0071】図18は、先のヘッド温度センサS3 で検
出された温度の温度変化Tの代表例であるサンプル温度
変化57と、遅れ応答成分と同じ熱的挙動を示す遅れ温
度変化の模擬例61(温度変化C、時定数τC )とを示
している。更に、図18には、式(22)によりサンプ
ル温度変化Tを用いて創成した遅れ温度変化Y4 を、
「○」印で表示している。温度変化Cは長時間経過する
と、飽和値Tmax でサンプル温度変化Tに等しくなるこ
とを前提にしており、「○」印は測定間隔即ち演算イン
ターバルが1.0〔min 〕の場合を示している。このよ
うに、式(22)のダミー時定数τDHを適宜選択した繰
り返し演算により、任意の時定数τC (τC >τS )の
温度変化Cと略同じ温度変化の挙動をする遅れ温度変化
Y4 を創成することができる。
出された温度の温度変化Tの代表例であるサンプル温度
変化57と、遅れ応答成分と同じ熱的挙動を示す遅れ温
度変化の模擬例61(温度変化C、時定数τC )とを示
している。更に、図18には、式(22)によりサンプ
ル温度変化Tを用いて創成した遅れ温度変化Y4 を、
「○」印で表示している。温度変化Cは長時間経過する
と、飽和値Tmax でサンプル温度変化Tに等しくなるこ
とを前提にしており、「○」印は測定間隔即ち演算イン
ターバルが1.0〔min 〕の場合を示している。このよ
うに、式(22)のダミー時定数τDHを適宜選択した繰
り返し演算により、任意の時定数τC (τC >τS )の
温度変化Cと略同じ温度変化の挙動をする遅れ温度変化
Y4 を創成することができる。
【0072】この遅れ温度変化Y4 と遅れ応答成分と
は、図19に示すようにリニアの関係の直線62になる
ので、先の式(13)が成立する。実際には、温度変化
Cを抽出する手順を踏む必要は特にはない。例えば、サ
ンプル温度変化Tを用いて、式(22)のダミー時定数
τDH及び式(13)の内部補正係数eを適宜選択した繰
り返し演算結果が、先の図17におけるZ軸熱変位(領
域Dを含む線)から直線60を差し引いた誤差に一致す
るように、時定数τDHと係数eの最良値が決定される。
ここで決まる時定数τDHと係数eの値は工作機械毎に固
有の値であり、この作業は一度行なっておけばよい。遅
れ温度演算手段34では、ダミー時定数τDHが確定した
式(22)を用いて、ヘッド温度センサS3で検出され
る温度の温度変化Tに対応する遅れ温度変化Y4を演算
する(ステップ309)。次いで、この遅れ温度変化Y
4 を、内部補正係数eが確定した式(13)に代入する
と、遅れ応答成分ΔZ4 が得られる(ステップ31
0)。先に、式(12)を用いて創成変位成分ΔZ3 を
算出した熱変位演算手段32では、このようにして算出
した遅れ応答成分ΔZ4 を創成変位成分ΔZ3 に加算し
て、Z軸熱変位ΔZを演算する(ステップ311)。
は、図19に示すようにリニアの関係の直線62になる
ので、先の式(13)が成立する。実際には、温度変化
Cを抽出する手順を踏む必要は特にはない。例えば、サ
ンプル温度変化Tを用いて、式(22)のダミー時定数
τDH及び式(13)の内部補正係数eを適宜選択した繰
り返し演算結果が、先の図17におけるZ軸熱変位(領
域Dを含む線)から直線60を差し引いた誤差に一致す
るように、時定数τDHと係数eの最良値が決定される。
ここで決まる時定数τDHと係数eの値は工作機械毎に固
有の値であり、この作業は一度行なっておけばよい。遅
れ温度演算手段34では、ダミー時定数τDHが確定した
式(22)を用いて、ヘッド温度センサS3で検出され
る温度の温度変化Tに対応する遅れ温度変化Y4を演算
する(ステップ309)。次いで、この遅れ温度変化Y
4 を、内部補正係数eが確定した式(13)に代入する
と、遅れ応答成分ΔZ4 が得られる(ステップ31
0)。先に、式(12)を用いて創成変位成分ΔZ3 を
算出した熱変位演算手段32では、このようにして算出
した遅れ応答成分ΔZ4 を創成変位成分ΔZ3 に加算し
て、Z軸熱変位ΔZを演算する(ステップ311)。
【0073】図20の縦軸は実測されたZ軸熱変位であ
り、横軸はサンプル温度変化Tを用いてステップ311
までの手順を経て見積もったZ軸熱変位ΔZである。こ
の熱変位ΔZの演算には、全体補正係数“a”を1とし
た次式を用いている。 ΔZ=d・Y3 +e・Y4 ……(23) 図20に示す実測された縦軸のZ軸熱変位と、式(2
3)で求めた横軸のZ軸熱変位ΔZの値とは、45°の
傾きの直線63上で略一致する。これは両者が同じ値で
あることを意味している。したがって、機体10の主軸
受20の発熱の影響を受ける箇所に設置したヘッド温度
センサS3 の温度データにより、Z軸熱変位を十分高精
度に予測することができる。
り、横軸はサンプル温度変化Tを用いてステップ311
までの手順を経て見積もったZ軸熱変位ΔZである。こ
の熱変位ΔZの演算には、全体補正係数“a”を1とし
た次式を用いている。 ΔZ=d・Y3 +e・Y4 ……(23) 図20に示す実測された縦軸のZ軸熱変位と、式(2
3)で求めた横軸のZ軸熱変位ΔZの値とは、45°の
傾きの直線63上で略一致する。これは両者が同じ値で
あることを意味している。したがって、機体10の主軸
受20の発熱の影響を受ける箇所に設置したヘッド温度
センサS3 の温度データにより、Z軸熱変位を十分高精
度に予測することができる。
【0074】このようにして、ステップ311で演算さ
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位補正がなされて(ステップ
312)、工作物9を高精度で切削加工することができ
る。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ30
7)、終了させる場合にはMC1aを停止して(ステッ
プ308)、全体の手順が終了する。補正が終了しない
場合にはステップ302に戻る。
れたZ軸熱変位ΔZに基づいて補正手段33で加工誤差
を補正することにより熱変位補正がなされて(ステップ
312)、工作物9を高精度で切削加工することができ
る。その後、補正終了か否かを判別し(ステップ30
7)、終了させる場合にはMC1aを停止して(ステッ
プ308)、全体の手順が終了する。補正が終了しない
場合にはステップ302に戻る。
【0075】(第3実施例)次に、リニアライズ手法を
応用した第3実施例を、図21乃至図24により説明す
る。第1,第2実施例では、主として、熱変位の原因と
なる発熱源の数が1個の例を説明したが、本発明では、
熱変位の原因となる発熱源が複数あって、且つ発熱源の
影響が互いに独立していると想定される場合にも、展開
可能な式の構成になっている。本第3実施例は、複数の
発熱源(いわゆる多熱源)が互いに影響し合いながら熱
変位を発生させる工作機械の場合であり、先の各実施例
では説明されていなかった部分を補足する。
応用した第3実施例を、図21乃至図24により説明す
る。第1,第2実施例では、主として、熱変位の原因と
なる発熱源の数が1個の例を説明したが、本発明では、
熱変位の原因となる発熱源が複数あって、且つ発熱源の
影響が互いに独立していると想定される場合にも、展開
可能な式の構成になっている。本第3実施例は、複数の
発熱源(いわゆる多熱源)が互いに影響し合いながら熱
変位を発生させる工作機械の場合であり、先の各実施例
では説明されていなかった部分を補足する。
【0076】図21はブロック図、図22は主軸台断面
図である。NC旋盤64は、機体としての主軸台66を
発熱源とする工作機械である。図示するように、NC旋
盤64は、チャック65及び爪67を介して工作物68
を把持する主軸69と、主軸台66と、ビルトインモー
タ70とを備えている。主軸台66は、主軸69を軸支
する加工位置側の前軸受71及び反加工位置側の後軸受
72を介して主軸69を回転自在に支持している。ロー
タ70aを含むモータ70は、前,後の軸受71,72
の間に配設されるとともに主軸台66に内蔵されて、主
軸69を回転駆動する。後軸受72には、主軸69を中
心軸方向01 に対して位置決めするアンギュラ玉軸受が
使用されている。熱変位で伸縮する主軸69は、前軸受
71内を中心軸方向O1 に伸縮可能になっている。工作
物68に近い前軸受71には大きな荷重がかかるので、
この荷重に耐えて切削性能を向上させるために、前軸受
71には定格荷重の大きい複列円筒ころ軸受が使用され
ている。なお、ここで示した構造は、主軸69をベルト
で駆動する構造のものと比べて、ビルトインモータ70
で主軸69を直接駆動しているので高速回転が可能であ
る。また、主軸69の振動を抑えることができるので高
精度な切削加工ができる。
図である。NC旋盤64は、機体としての主軸台66を
発熱源とする工作機械である。図示するように、NC旋
盤64は、チャック65及び爪67を介して工作物68
を把持する主軸69と、主軸台66と、ビルトインモー
タ70とを備えている。主軸台66は、主軸69を軸支
する加工位置側の前軸受71及び反加工位置側の後軸受
72を介して主軸69を回転自在に支持している。ロー
タ70aを含むモータ70は、前,後の軸受71,72
の間に配設されるとともに主軸台66に内蔵されて、主
軸69を回転駆動する。後軸受72には、主軸69を中
心軸方向01 に対して位置決めするアンギュラ玉軸受が
使用されている。熱変位で伸縮する主軸69は、前軸受
71内を中心軸方向O1 に伸縮可能になっている。工作
物68に近い前軸受71には大きな荷重がかかるので、
この荷重に耐えて切削性能を向上させるために、前軸受
71には定格荷重の大きい複列円筒ころ軸受が使用され
ている。なお、ここで示した構造は、主軸69をベルト
で駆動する構造のものと比べて、ビルトインモータ70
で主軸69を直接駆動しているので高速回転が可能であ
る。また、主軸69の振動を抑えることができるので高
精度な切削加工ができる。
【0077】NC旋盤64を起動してビルトインモータ
70のロータ70aを回転させ、前,後の軸受71,7
2及びロータ70aがそれぞれ発熱すると、主軸69は
前方(図中右方)に伸びて工作物68を中心軸方向O1
に移動させて加工精度を低下させることになる。そのた
め、熱変位補正装置12bでは、発熱源となる前,後の
軸受71,72,及びモータ70のステータの各近傍に
それぞれ位置するように3本の温度センサs1,s2, s
3 を、主軸台66に取付けている。
70のロータ70aを回転させ、前,後の軸受71,7
2及びロータ70aがそれぞれ発熱すると、主軸69は
前方(図中右方)に伸びて工作物68を中心軸方向O1
に移動させて加工精度を低下させることになる。そのた
め、熱変位補正装置12bでは、発熱源となる前,後の
軸受71,72,及びモータ70のステータの各近傍に
それぞれ位置するように3本の温度センサs1,s2, s
3 を、主軸台66に取付けている。
【0078】このようにZ軸方向(即ち、中心軸方向O
1 )の熱変位に影響する発熱源が複数ある場合も、例え
ば前記リニアライズ手法を応用することによって高精度
な熱変位補正ができる。温度検出手段としての温度セン
サs1,s2, s3 の各出力信号は、回路36a,36
b,36cを介してA/D変換器13に入力し、A/D
変換器13からの出力信号は、創成温度演算手段31a
及び遅れ温度演算手段34に入力される。なお、その他
の構成については第2実施例と同様であるので、説明を
省略する。
1 )の熱変位に影響する発熱源が複数ある場合も、例え
ば前記リニアライズ手法を応用することによって高精度
な熱変位補正ができる。温度検出手段としての温度セン
サs1,s2, s3 の各出力信号は、回路36a,36
b,36cを介してA/D変換器13に入力し、A/D
変換器13からの出力信号は、創成温度演算手段31a
及び遅れ温度演算手段34に入力される。なお、その他
の構成については第2実施例と同様であるので、説明を
省略する。
【0079】多熱源の場合、各発熱源の影響による熱変
位を、熱変位演算手段32により個別に演算する。Z軸
方向の総合熱変位Δzは次の一般式で示される。 Δz=a・(Δz1 +Δz2 +……+Δzn ) ……(24) Δz1 =β1 ・YA1+γ1 ・YB1 Δz2 =β2 ・YA2+γ2 ・YB2 … … Δzn =βn ・YAn+γn ・YBn ここで、Δz:Z軸総合熱変位 Δz1 乃至Δzn :第1番目乃至第n番目の発熱源によ
るZ軸方向の熱変位 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) β1 乃至βn :創成温度変化に係る内部補正係数 γ1 乃至γn :遅れ温度変化に係る内部補正係数 YA1乃至YAn:創成温度変化 YB1乃至YBn:遅れ温度変化 である。したがって、第2実施例の式(23)は、式
(24)の第1項の熱変位Δz1に相当する。また、第
2実施例では発熱源が1個なので、式(24)の第2項
以下の項を零として演算したことになる。
位を、熱変位演算手段32により個別に演算する。Z軸
方向の総合熱変位Δzは次の一般式で示される。 Δz=a・(Δz1 +Δz2 +……+Δzn ) ……(24) Δz1 =β1 ・YA1+γ1 ・YB1 Δz2 =β2 ・YA2+γ2 ・YB2 … … Δzn =βn ・YAn+γn ・YBn ここで、Δz:Z軸総合熱変位 Δz1 乃至Δzn :第1番目乃至第n番目の発熱源によ
るZ軸方向の熱変位 a :全体補正係数(式(2)のものに同じ) β1 乃至βn :創成温度変化に係る内部補正係数 γ1 乃至γn :遅れ温度変化に係る内部補正係数 YA1乃至YAn:創成温度変化 YB1乃至YBn:遅れ温度変化 である。したがって、第2実施例の式(23)は、式
(24)の第1項の熱変位Δz1に相当する。また、第
2実施例では発熱源が1個なので、式(24)の第2項
以下の項を零として演算したことになる。
【0080】本第3実施例では発熱源が三個なのでn=
3となり、式(24)は以下のように展開できる。 Δz=a・(Δz1 +Δz2 +Δz3 ) ……(25) Δz1 =K1 ・Δz Δz2 =K2 ・Δz ……(26) Δz3 =K3 ・Δz K1 =P・T1 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) K2 =Q・T2 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) …(27) K3 =R・T3 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) ここで、T1 :温度センサs1 で検出された温度の温度
変化 T2 :温度センサs2 で検出された温度の温度変化 T3 :温度センサs3 で検出された温度の温度変化 P,Q,R:内部補正係数 である。
3となり、式(24)は以下のように展開できる。 Δz=a・(Δz1 +Δz2 +Δz3 ) ……(25) Δz1 =K1 ・Δz Δz2 =K2 ・Δz ……(26) Δz3 =K3 ・Δz K1 =P・T1 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) K2 =Q・T2 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) …(27) K3 =R・T3 /(P・T1 +Q・T2 +R・T3 ) ここで、T1 :温度センサs1 で検出された温度の温度
変化 T2 :温度センサs2 で検出された温度の温度変化 T3 :温度センサs3 で検出された温度の温度変化 P,Q,R:内部補正係数 である。
【0081】前記三つの式(27)における内部補正係
数P,Q,Rは、各温度変化T1 乃至T3 の重みを意味
しており、3回以上の発熱条件を変えたテストにおける
サンプル温度変化の飽和値の違いから下式により決定さ
れる。ここで決まる係数P,Q,Rの値のバランスは、
工作機械のタイプ毎に固有の熱特性を表すものであり、
主軸回転数等の運転条件が変わっても変化が少ないの
で、この作業は一度行なっておけばよい。 P・T1S+Q・T2S+R・T3S=Δz ……(28) ここで、T1S:サンプル温度変化T1 の飽和値 T2S:サンプル温度変化T2 の飽和値 T3S:サンプル温度変化T3 の飽和値 である。
数P,Q,Rは、各温度変化T1 乃至T3 の重みを意味
しており、3回以上の発熱条件を変えたテストにおける
サンプル温度変化の飽和値の違いから下式により決定さ
れる。ここで決まる係数P,Q,Rの値のバランスは、
工作機械のタイプ毎に固有の熱特性を表すものであり、
主軸回転数等の運転条件が変わっても変化が少ないの
で、この作業は一度行なっておけばよい。 P・T1S+Q・T2S+R・T3S=Δz ……(28) ここで、T1S:サンプル温度変化T1 の飽和値 T2S:サンプル温度変化T2 の飽和値 T3S:サンプル温度変化T3 の飽和値 である。
【0082】内部補正係数P,Q,Rの値を式(27)
に代入することによって、係数K1,K2 ,K3 の値が
定まるので、三つの式(26)は図23のように表現で
きる。この結果、発熱源71,72,70aの影響によ
る各熱変位Δz1 ,Δz2 ,Δz3 と各サンプル温度変
化との相関関係は、リニアライズ手法等によってリニア
にすることが可能になる。図23は各発熱源のZ軸熱変
位を示すグラフである。NC旋盤など旋削工作機械は、
通常は熱容量が小さいためMCと比べて熱変位が敏感に
表われるので、温度センサの取付け位置の制約のない第
2実施例の手法は特に有効である。また、第2実施例の
手法を用いれば、一つの発熱源につき一個の温度センサ
を設ければよいので、多熱源を有するNC旋盤64等の
場合に温度センサの数を減らすことができる。
に代入することによって、係数K1,K2 ,K3 の値が
定まるので、三つの式(26)は図23のように表現で
きる。この結果、発熱源71,72,70aの影響によ
る各熱変位Δz1 ,Δz2 ,Δz3 と各サンプル温度変
化との相関関係は、リニアライズ手法等によってリニア
にすることが可能になる。図23は各発熱源のZ軸熱変
位を示すグラフである。NC旋盤など旋削工作機械は、
通常は熱容量が小さいためMCと比べて熱変位が敏感に
表われるので、温度センサの取付け位置の制約のない第
2実施例の手法は特に有効である。また、第2実施例の
手法を用いれば、一つの発熱源につき一個の温度センサ
を設ければよいので、多熱源を有するNC旋盤64等の
場合に温度センサの数を減らすことができる。
【0083】図24は、リニアライズ手法とダミー手法
を組合せてNC旋盤64を実機運転した場合の、Z軸熱
変位の実測データを示すグラフである。図示するよう
に、図中実線73,74で示す補正前の熱変位は約70
〔μm〕であった。これに対して、本発明に係る熱変位
の補正を行なった場合は、図中破線73a,74aで示
すように、熱変位は±10〔μm〕以下にまで小さくな
る。なお、図中の符号Sは主軸回転数を意味する。
を組合せてNC旋盤64を実機運転した場合の、Z軸熱
変位の実測データを示すグラフである。図示するよう
に、図中実線73,74で示す補正前の熱変位は約70
〔μm〕であった。これに対して、本発明に係る熱変位
の補正を行なった場合は、図中破線73a,74aで示
すように、熱変位は±10〔μm〕以下にまで小さくな
る。なお、図中の符号Sは主軸回転数を意味する。
【0084】(第4実施例)次に、第4実施例を図25
乃至図29により説明する。第4実施例では、本発明に
係る前述の各手法のいずれかを、複数の主軸を有する工
作機械に適用して熱変位補正を行なっている。主軸は工
作物及び工具のいずれか一方を把持している。この主軸
の温度を温度調節装置により調節して各主軸の熱変位を
略均等にし、温度検出手段により少なくとも一つの主軸
について機体の温度変化を検出して、熱変位補正を行な
っている。なお、第4実施例において、前記各実施例と
同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を省略
する。
乃至図29により説明する。第4実施例では、本発明に
係る前述の各手法のいずれかを、複数の主軸を有する工
作機械に適用して熱変位補正を行なっている。主軸は工
作物及び工具のいずれか一方を把持している。この主軸
の温度を温度調節装置により調節して各主軸の熱変位を
略均等にし、温度検出手段により少なくとも一つの主軸
について機体の温度変化を検出して、熱変位補正を行な
っている。なお、第4実施例において、前記各実施例と
同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を省略
する。
【0085】例えば、図25に示す工作機械は多軸ヘッ
ドを有する立形のMC75であり、4個の工作物を4本
の工具で同一形状に同時加工するのに使用される。ベッ
ド76に固定され床面上に立設しているコラム77の上
部には、Y軸方向即ち水平方向に向けて配設されたクロ
スレール78が固定されている。クロスレール78に
は、サドル79がY軸方向に移動可能に取付けられてお
り、クロスレール78に設けられたY軸サーボモータ8
0によりサドル79は往復移動する。サドル79には主
軸頭81がZ軸方向に移動可能に取付けられている。主
軸頭81は、サドル79に設けられたZ軸サーボモータ
82によりサドル79に対してZ軸方向に往復移動し、
クロスレール78に対してはサドル79とともにY軸方
向に往復移動する。主軸頭81には、Z軸方向を向いて
いる複数(例えば4本)の主軸6a乃至6dが並設され
ており、各主軸の先端には工具7a乃至7dがそれぞれ
装着されている。
ドを有する立形のMC75であり、4個の工作物を4本
の工具で同一形状に同時加工するのに使用される。ベッ
ド76に固定され床面上に立設しているコラム77の上
部には、Y軸方向即ち水平方向に向けて配設されたクロ
スレール78が固定されている。クロスレール78に
は、サドル79がY軸方向に移動可能に取付けられてお
り、クロスレール78に設けられたY軸サーボモータ8
0によりサドル79は往復移動する。サドル79には主
軸頭81がZ軸方向に移動可能に取付けられている。主
軸頭81は、サドル79に設けられたZ軸サーボモータ
82によりサドル79に対してZ軸方向に往復移動し、
クロスレール78に対してはサドル79とともにY軸方
向に往復移動する。主軸頭81には、Z軸方向を向いて
いる複数(例えば4本)の主軸6a乃至6dが並設され
ており、各主軸の先端には工具7a乃至7dがそれぞれ
装着されている。
【0086】ベッド76上には、主軸と同数(例えば4
個)の工作物9a乃至9dを載置するためのテーブル8
3が、X軸方向に移動可能に取付けられている。テーブ
ル83は、ベッド76に設けられたX軸サーボモータ8
4により往復移動する。コラム77の横には、冷却油供
給装置85が設置されている。この冷却油供給装置85
は、主軸6a乃至6dの温度を調節して各主軸の熱変位
を略均等にするための温度調節装置としての主軸冷却装
置を構成している。
個)の工作物9a乃至9dを載置するためのテーブル8
3が、X軸方向に移動可能に取付けられている。テーブ
ル83は、ベッド76に設けられたX軸サーボモータ8
4により往復移動する。コラム77の横には、冷却油供
給装置85が設置されている。この冷却油供給装置85
は、主軸6a乃至6dの温度を調節して各主軸の熱変位
を略均等にするための温度調節装置としての主軸冷却装
置を構成している。
【0087】図26は主軸冷却装置87の説明図であ
る。図示するように、主軸6a乃至6dの軸受近傍に
は、冷却油を流して軸受を冷却するための流路85a乃
至85dがそれぞれ形成されている。冷却油供給装置8
5から供給された冷却油は、配管88a乃至88dをそ
れぞれ流れ、手動又は自動で操作される流量調整弁89
a乃至89dで流量を調整される。これにより、各主軸
6a乃至6dの温度が個別に調節される。冷却油は、流
路85a乃至85dを流れ、主軸6a乃至6dの軸受を
冷却したのち、供給装置85に戻ってここで冷却されて
再び循環使用される。なお、流量調節の代わりに又はこ
れに加えて冷却油温度を供給装置85で調節することに
より、主軸温度を主軸毎に調節するようにしてもよい。
また、冷却油の代わりにクーラント(切削油剤)又は水
を使用してもよい。
る。図示するように、主軸6a乃至6dの軸受近傍に
は、冷却油を流して軸受を冷却するための流路85a乃
至85dがそれぞれ形成されている。冷却油供給装置8
5から供給された冷却油は、配管88a乃至88dをそ
れぞれ流れ、手動又は自動で操作される流量調整弁89
a乃至89dで流量を調整される。これにより、各主軸
6a乃至6dの温度が個別に調節される。冷却油は、流
路85a乃至85dを流れ、主軸6a乃至6dの軸受を
冷却したのち、供給装置85に戻ってここで冷却されて
再び循環使用される。なお、流量調節の代わりに又はこ
れに加えて冷却油温度を供給装置85で調節することに
より、主軸温度を主軸毎に調節するようにしてもよい。
また、冷却油の代わりにクーラント(切削油剤)又は水
を使用してもよい。
【0088】ところで、4本の主軸が回転した場合の熱
変位を比較すると、図中左右両側の主軸6a,6dの熱
変位の方が、内側の主軸6b,6cよりも通常は小さ
い。これは各主軸の取付け場所の違いによるためであ
る。即ち、両側の主軸6a,6dの軸受で発生した熱
は、主軸頭81に速やかに伝導して、この主軸6a,6
dの温度上昇を抑えるからである。そこで、熱変位の最
も小さい代表主軸6aの発熱部近傍に位置するように主
軸頭81に温度検出手段としてのノーズ温度センサS1
を取付けている。このセンサS1 で機体86の温度変化
を検出することにより、前記各実施例における熱変位補
正装置12a,12bを用いた手法で、代表主軸6aに
対する熱変位補正を行なっている。そして、流量調整弁
89a乃至89dで流量調節(及び/又は、油の温度調
節)をして各主軸を冷却することによって、他の3本の
主軸6b乃至6dの熱変位を代表主軸6aの熱変位に略
一致させ、これにより、主軸間の熱変位のばらつきをな
くしている。なお、代表主軸6aは熱変位が最小なの
で、この主軸6aの冷却はしないか又はわずかに冷却
し、他の主軸6b乃至6dの冷却油を調節すれば、供給
装置85からの油の供給量が全体として少なくなるので
好ましい。
変位を比較すると、図中左右両側の主軸6a,6dの熱
変位の方が、内側の主軸6b,6cよりも通常は小さ
い。これは各主軸の取付け場所の違いによるためであ
る。即ち、両側の主軸6a,6dの軸受で発生した熱
は、主軸頭81に速やかに伝導して、この主軸6a,6
dの温度上昇を抑えるからである。そこで、熱変位の最
も小さい代表主軸6aの発熱部近傍に位置するように主
軸頭81に温度検出手段としてのノーズ温度センサS1
を取付けている。このセンサS1 で機体86の温度変化
を検出することにより、前記各実施例における熱変位補
正装置12a,12bを用いた手法で、代表主軸6aに
対する熱変位補正を行なっている。そして、流量調整弁
89a乃至89dで流量調節(及び/又は、油の温度調
節)をして各主軸を冷却することによって、他の3本の
主軸6b乃至6dの熱変位を代表主軸6aの熱変位に略
一致させ、これにより、主軸間の熱変位のばらつきをな
くしている。なお、代表主軸6aは熱変位が最小なの
で、この主軸6aの冷却はしないか又はわずかに冷却
し、他の主軸6b乃至6dの冷却油を調節すれば、供給
装置85からの油の供給量が全体として少なくなるので
好ましい。
【0089】図27は、主軸冷却装置87に代えて主軸
加熱装置90を温度調節装置として用いた場合を示して
いる。図示するように、主軸6a乃至6dの近傍に、ヒ
ータ91a乃至91dなど加熱部材をそれぞれ配設して
いる。各ヒータ91a乃至91dに流れる電流を電流制
御装置91により個別に制御することにより、ヒータ9
1a乃至91dの発熱量を調節している。電流制御の方
が、冷却油の量や温度の制御より容易で応答も早く、し
かも主軸加熱装置全体がコンパクトになるので好まし
い。この場合には、熱変位が最大の主軸例えば6bを代
表主軸にしてこの主軸6bの近傍にノーズ温度センサS
1 を取付けて、機体86の温度変化を検出している。そ
して、電流制御装置91で電流を制御して各主軸を加熱
することによって、他の3本の主軸6a,6c,6dの
熱変位を代表主軸6bの熱変位に略一致させて、主軸間
の熱変位のばらつきをなくしている。なお、代表主軸6
bを加熱しないか又はわずかに加熱して、他の主軸の温
度を調節すれば、主軸加熱装置90全体の電流が少なく
なるので好ましい。
加熱装置90を温度調節装置として用いた場合を示して
いる。図示するように、主軸6a乃至6dの近傍に、ヒ
ータ91a乃至91dなど加熱部材をそれぞれ配設して
いる。各ヒータ91a乃至91dに流れる電流を電流制
御装置91により個別に制御することにより、ヒータ9
1a乃至91dの発熱量を調節している。電流制御の方
が、冷却油の量や温度の制御より容易で応答も早く、し
かも主軸加熱装置全体がコンパクトになるので好まし
い。この場合には、熱変位が最大の主軸例えば6bを代
表主軸にしてこの主軸6bの近傍にノーズ温度センサS
1 を取付けて、機体86の温度変化を検出している。そ
して、電流制御装置91で電流を制御して各主軸を加熱
することによって、他の3本の主軸6a,6c,6dの
熱変位を代表主軸6bの熱変位に略一致させて、主軸間
の熱変位のばらつきをなくしている。なお、代表主軸6
bを加熱しないか又はわずかに加熱して、他の主軸の温
度を調節すれば、主軸加熱装置90全体の電流が少なく
なるので好ましい。
【0090】本実施例では、センサS1 とは別に、主軸
位置より離れた任意の位置(例えば、主軸頭81の適当
箇所)に配置されてこの位置の機体86の温度変化を検
出するヘッド温度センサS3 が、必要に応じて取付けら
れる。したがって、ミックス手法単独又はミックス手法
とダミー手法とを組合せた前述の各方法による熱変位補
正もできる。各センサS1 ,S3 の出力信号は、熱変位
補正装置12a,12bのA/D変換器13に入力した
のち、前記各実施例と同様に処理される。なお、図2
6,図27に鎖線で示すように、代表主軸以外の各主軸
の近傍にも温度センサS10をそれぞれ取付け、各主軸の
温度を検出することが好ましい。センサS10で検出され
た温度の温度変化は熱変位補正には用いないが、この温
度変化から各主軸の熱変位を推定して、主軸冷却装置8
7又は主軸加熱装置90により、主軸間の熱変位のばら
つきをなくする管理をすることができる。
位置より離れた任意の位置(例えば、主軸頭81の適当
箇所)に配置されてこの位置の機体86の温度変化を検
出するヘッド温度センサS3 が、必要に応じて取付けら
れる。したがって、ミックス手法単独又はミックス手法
とダミー手法とを組合せた前述の各方法による熱変位補
正もできる。各センサS1 ,S3 の出力信号は、熱変位
補正装置12a,12bのA/D変換器13に入力した
のち、前記各実施例と同様に処理される。なお、図2
6,図27に鎖線で示すように、代表主軸以外の各主軸
の近傍にも温度センサS10をそれぞれ取付け、各主軸の
温度を検出することが好ましい。センサS10で検出され
た温度の温度変化は熱変位補正には用いないが、この温
度変化から各主軸の熱変位を推定して、主軸冷却装置8
7又は主軸加熱装置90により、主軸間の熱変位のばら
つきをなくする管理をすることができる。
【0091】図28は、主軸冷却装置87を用いた場合
の本実施例の手順を示すフローチャートである。なお、
下記説明中のカッコ内には、主軸加熱装置90を用いた
場合を記載している。まず初めに、調節弁89a乃至8
9dを操作して、各主軸6a乃至6dに流れる冷却油の
流量(又は、ヒータ91a乃至91dの電流)を必要最
少限に絞る(ステップ401)。次いで、全主軸の同期
回転を開始する(ステップ402)。一定の回転数で運
転して所定時間経過後、各主軸の伸びによる主軸先端部
におけるZ軸方向の熱変位を実測する(ステップ40
3)。各主軸の熱変位即ち伸び量が略同一になるよう
に、各主軸の流路85a乃至85dに流れる流量を調節
弁89a乃至89dにより(又は、ヒータ91a乃至9
1dの電流を電流制御装置91により)調節して、この
調節量を設定する(ステップ404)。全主軸の回転を
停止し、機体86全体が十分に放熱するまで運転を停止
する(ステップ405)。
の本実施例の手順を示すフローチャートである。なお、
下記説明中のカッコ内には、主軸加熱装置90を用いた
場合を記載している。まず初めに、調節弁89a乃至8
9dを操作して、各主軸6a乃至6dに流れる冷却油の
流量(又は、ヒータ91a乃至91dの電流)を必要最
少限に絞る(ステップ401)。次いで、全主軸の同期
回転を開始する(ステップ402)。一定の回転数で運
転して所定時間経過後、各主軸の伸びによる主軸先端部
におけるZ軸方向の熱変位を実測する(ステップ40
3)。各主軸の熱変位即ち伸び量が略同一になるよう
に、各主軸の流路85a乃至85dに流れる流量を調節
弁89a乃至89dにより(又は、ヒータ91a乃至9
1dの電流を電流制御装置91により)調節して、この
調節量を設定する(ステップ404)。全主軸の回転を
停止し、機体86全体が十分に放熱するまで運転を停止
する(ステップ405)。
【0092】その後、全主軸の同期回転を再開し、ステ
ップ404で設定された調節量に従って冷却油(又は電
流)を各主軸にそれぞれ流す(ステップ406)。次
に、代表主軸6a(又は6b)の先端部におけるZ軸方
向の熱変位を時系列データとして実測するとともに、機
体86の温度変化をセンサS1 ,S3 の一方又は両方に
より検出する(ステップ407)。こうして検出された
温度変化を用い、前記各実施例と同様にして、ノーズ温
度時定数τN ,ヘッド温度時定数τH ,サンプル温度時
定数τS 等を抽出し、さらにダミー時定数及び内部補正
係数を算出する。そして、これらの値を熱変位補正装置
12a,12bにセットする(ステップ408)。ステ
ップ409で補正を開始し、代表主軸による熱変位補正
を実行する(ステップ410)。ステップ411で補正
を終了する場合は全主軸の同期回転を停止し(ステップ
412)、全体の手順が終了する。停止しない場合には
ステップ410に戻る。
ップ404で設定された調節量に従って冷却油(又は電
流)を各主軸にそれぞれ流す(ステップ406)。次
に、代表主軸6a(又は6b)の先端部におけるZ軸方
向の熱変位を時系列データとして実測するとともに、機
体86の温度変化をセンサS1 ,S3 の一方又は両方に
より検出する(ステップ407)。こうして検出された
温度変化を用い、前記各実施例と同様にして、ノーズ温
度時定数τN ,ヘッド温度時定数τH ,サンプル温度時
定数τS 等を抽出し、さらにダミー時定数及び内部補正
係数を算出する。そして、これらの値を熱変位補正装置
12a,12bにセットする(ステップ408)。ステ
ップ409で補正を開始し、代表主軸による熱変位補正
を実行する(ステップ410)。ステップ411で補正
を終了する場合は全主軸の同期回転を停止し(ステップ
412)、全体の手順が終了する。停止しない場合には
ステップ410に戻る。
【0093】図25に示すように、補正装置12a,1
2bで算出して補正された代表主軸の熱変位は、プログ
ラマブルコントローラ15を介して数値制御装置16に
送信され、Z軸サーボモータ82にフィードバックされ
る。これにより、Z軸サーボモータ82が、主軸頭81
をZ軸方向に微小距離移動させて位置補正をする。主軸
冷却装置87(又は、主軸加熱装置90)により、代表
主軸と他の主軸との熱変位を略均等にしているので、4
個の工作物9a乃至9dを主軸6a乃至6dに装着した
工具7a乃至7dにより高精度に同時加工することがで
きる。
2bで算出して補正された代表主軸の熱変位は、プログ
ラマブルコントローラ15を介して数値制御装置16に
送信され、Z軸サーボモータ82にフィードバックされ
る。これにより、Z軸サーボモータ82が、主軸頭81
をZ軸方向に微小距離移動させて位置補正をする。主軸
冷却装置87(又は、主軸加熱装置90)により、代表
主軸と他の主軸との熱変位を略均等にしているので、4
個の工作物9a乃至9dを主軸6a乃至6dに装着した
工具7a乃至7dにより高精度に同時加工することがで
きる。
【0094】図29は複数の主軸を有する工作機械の平
面構造を含むブロック図で、第4実施例の応用例であ
る。図示する工作機械は多軸NC旋盤92であり、第3
実施例と同様の構造の主軸台66及び主軸69を2組備
えている。したがって、このNC旋盤92は多熱源及び
多軸を有していることになる。ベッド93上には、2台
の主軸台66が並設され、且つ、サドル94がZ軸方向
に移動可能に取付けられている。サドル94はZ軸サー
ボモータ95により往復移動する。サドル94上には、
クロススライド96がX軸方向に移動可能に取付けられ
ており、X軸サーボモータ97により往復移動する。ク
ロススライド96上には、工具98を有するブロック9
9が複数取付けられている。チャック65等を介して工
作物を把持する主軸69が回転することにより、工作物
を工具98で切削加工する。ベッド93には、図26に
示す主軸冷却装置87と同様の原理の主軸冷却装置を構
成する冷却油供給装置100が設置されている。この主
軸冷却装置は、2本の主軸69の温度を個別に調節し
て、両主軸の熱変位を略均等にするためのものである。
面構造を含むブロック図で、第4実施例の応用例であ
る。図示する工作機械は多軸NC旋盤92であり、第3
実施例と同様の構造の主軸台66及び主軸69を2組備
えている。したがって、このNC旋盤92は多熱源及び
多軸を有していることになる。ベッド93上には、2台
の主軸台66が並設され、且つ、サドル94がZ軸方向
に移動可能に取付けられている。サドル94はZ軸サー
ボモータ95により往復移動する。サドル94上には、
クロススライド96がX軸方向に移動可能に取付けられ
ており、X軸サーボモータ97により往復移動する。ク
ロススライド96上には、工具98を有するブロック9
9が複数取付けられている。チャック65等を介して工
作物を把持する主軸69が回転することにより、工作物
を工具98で切削加工する。ベッド93には、図26に
示す主軸冷却装置87と同様の原理の主軸冷却装置を構
成する冷却油供給装置100が設置されている。この主
軸冷却装置は、2本の主軸69の温度を個別に調節し
て、両主軸の熱変位を略均等にするためのものである。
【0095】両主軸69の前,後の軸受71,72及び
ビルトインモータ70(図22)の近傍には、冷却油を
流して主軸の伸びを抑えるための流路が主軸台66内に
形成されている。主軸冷却装置は、図26と同様の配管
及び流量調節弁を有しており、各主軸69への流量の調
節を個別にできるようになっている。一方の主軸台66
には、センサs1 ,s2 ,s3 が第3実施例と同じよう
に取付けられているので、熱変位補正装置12bにより
第3実施例と同様にして熱変位補正がなされる。センサ
s1 ,s2 ,s3 が取付けられている方の主軸69を代
表主軸とし、主軸冷却装置によりこの代表主軸69と他
方の主軸69の熱変位を略一致させて、主軸間の熱変位
のばらつきをなくしている。図28に示す手順と同様に
して代表主軸の熱変位補正をすれば、代表主軸69と他
方の主軸69にそれぞれ把持されている工作物を、各工
具98により高精度で同時加工することができる。な
お、第4実施例では代表主軸が1本の場合を示したが、
同時加工を行なわない場合には、複数の代表主軸をそれ
ぞれ独立して熱変位補正してもよい。また、ペルチェ効
果を応用した冷却装置又は加熱装置を温度調節装置とし
て使用してもよい。
ビルトインモータ70(図22)の近傍には、冷却油を
流して主軸の伸びを抑えるための流路が主軸台66内に
形成されている。主軸冷却装置は、図26と同様の配管
及び流量調節弁を有しており、各主軸69への流量の調
節を個別にできるようになっている。一方の主軸台66
には、センサs1 ,s2 ,s3 が第3実施例と同じよう
に取付けられているので、熱変位補正装置12bにより
第3実施例と同様にして熱変位補正がなされる。センサ
s1 ,s2 ,s3 が取付けられている方の主軸69を代
表主軸とし、主軸冷却装置によりこの代表主軸69と他
方の主軸69の熱変位を略一致させて、主軸間の熱変位
のばらつきをなくしている。図28に示す手順と同様に
して代表主軸の熱変位補正をすれば、代表主軸69と他
方の主軸69にそれぞれ把持されている工作物を、各工
具98により高精度で同時加工することができる。な
お、第4実施例では代表主軸が1本の場合を示したが、
同時加工を行なわない場合には、複数の代表主軸をそれ
ぞれ独立して熱変位補正してもよい。また、ペルチェ効
果を応用した冷却装置又は加熱装置を温度調節装置とし
て使用してもよい。
【0096】ところで、多軸形の従来の工作機械には、
発熱による主軸の伸びを少なくするために、多量の冷却
油等を各主軸軸受近傍の流路に流して強力に冷却するも
のもある。この手法は、各主軸の熱変位を物理的に零に
近づけることにより、各主軸の熱変位とばらつきとを同
時に吸収しようとするものである。しかしながら、この
手法での熱変位の吸収には限界があり、熱変位を+10
〔μm〕以下にすることは不可能である。また、多量の
冷却油を循環させるので、大容量の冷却装置が必要であ
り、大量のエネルギが無駄になる。また、強い冷却効果
により軸受にひずみが生じて主軸が焼付く虞もある。こ
れに対して、第4実施例は、各主軸の熱変位を物理的に
零に近づけるのではなく、各主軸間の熱変位のばらつき
をなくするように、代表主軸と他の主軸の熱変位を略一
致させるとともに、代表主軸の熱変位補正を行なってい
る。したがって、補正後の加工誤差を零に近づけること
ができ、主軸冷却装置85は小型のもので十分であり、
エネルギ消費も少ない。また、冷却効果が弱いので軸受
が焼付くこともない。
発熱による主軸の伸びを少なくするために、多量の冷却
油等を各主軸軸受近傍の流路に流して強力に冷却するも
のもある。この手法は、各主軸の熱変位を物理的に零に
近づけることにより、各主軸の熱変位とばらつきとを同
時に吸収しようとするものである。しかしながら、この
手法での熱変位の吸収には限界があり、熱変位を+10
〔μm〕以下にすることは不可能である。また、多量の
冷却油を循環させるので、大容量の冷却装置が必要であ
り、大量のエネルギが無駄になる。また、強い冷却効果
により軸受にひずみが生じて主軸が焼付く虞もある。こ
れに対して、第4実施例は、各主軸の熱変位を物理的に
零に近づけるのではなく、各主軸間の熱変位のばらつき
をなくするように、代表主軸と他の主軸の熱変位を略一
致させるとともに、代表主軸の熱変位補正を行なってい
る。したがって、補正後の加工誤差を零に近づけること
ができ、主軸冷却装置85は小型のもので十分であり、
エネルギ消費も少ない。また、冷却効果が弱いので軸受
が焼付くこともない。
【0097】なお、第1乃至第4実施例で微分方程式を
用いた演算を行なった場合には、工作機械の電源をオフ
すると演算の経過が失われる。そのため、図1,図1
0,図21,図29に示すように、前回の演算結果を記
憶し、工作機械の電源をオフして再度オンするまでの間
の時間も記憶する記憶手段35を、熱変位補正装置12
a,12bに設けることが好ましい。記憶手段35は、
遅れ温度演算手段34,34a,34b,創成温度演算
手段31aとの間でデータの授受を行なうことになる。
このようにすれば、電源をオフした場合でも、熱変位補
正の演算の経歴が保存されるので、その再開始時点にお
ける熱変位補正の演算を直ちに且つ容易に行なうことが
可能になる。
用いた演算を行なった場合には、工作機械の電源をオフ
すると演算の経過が失われる。そのため、図1,図1
0,図21,図29に示すように、前回の演算結果を記
憶し、工作機械の電源をオフして再度オンするまでの間
の時間も記憶する記憶手段35を、熱変位補正装置12
a,12bに設けることが好ましい。記憶手段35は、
遅れ温度演算手段34,34a,34b,創成温度演算
手段31aとの間でデータの授受を行なうことになる。
このようにすれば、電源をオフした場合でも、熱変位補
正の演算の経歴が保存されるので、その再開始時点にお
ける熱変位補正の演算を直ちに且つ容易に行なうことが
可能になる。
【0098】また、リニアライズ手法と組合せるダミー
手法を用いる場合に、工作機械のコラム,ベッド,クロ
スレール等に別途設けた温度センサにより機体の温度変
化を検出してもよい。なお、本発明における温度検出手
段としては温度センサの代わりに、温度変化による機体
の伸縮を検出するひずみゲージ(Strain gauge)を使用
してもよい。即ち、機体の温度変化を温度センサにより
直接検出する代りに、温度変化と同様の出力特性を有す
るひずみゲージを機体に取付ける。そして、このゲージ
の出力信号をA/D変換器13に入力させれば、実質的
に温度変化を検出するのと同じことになり同様の作用効
果を奏する。ところで、各実施例における相関は一定の
対応関係があればよく、一次の相関以外の場合でもよ
い。
手法を用いる場合に、工作機械のコラム,ベッド,クロ
スレール等に別途設けた温度センサにより機体の温度変
化を検出してもよい。なお、本発明における温度検出手
段としては温度センサの代わりに、温度変化による機体
の伸縮を検出するひずみゲージ(Strain gauge)を使用
してもよい。即ち、機体の温度変化を温度センサにより
直接検出する代りに、温度変化と同様の出力特性を有す
るひずみゲージを機体に取付ける。そして、このゲージ
の出力信号をA/D変換器13に入力させれば、実質的
に温度変化を検出するのと同じことになり同様の作用効
果を奏する。ところで、各実施例における相関は一定の
対応関係があればよく、一次の相関以外の場合でもよ
い。
【0099】本発明は、従来のような機体構成部分の長
さを使用していないので、機体構造上の長さの制約がな
く、また、機体構成部分の長さ測定や回転数を種々変え
てデータの実測作業をする必要はない。したがって、回
転数の測定は1回のみでよいことになり、実機を用いた
熱変位特性抽出の実測作業が簡略化される。また、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業も不要である。
さを使用していないので、機体構造上の長さの制約がな
く、また、機体構成部分の長さ測定や回転数を種々変え
てデータの実測作業をする必要はない。したがって、回
転数の測定は1回のみでよいことになり、実機を用いた
熱変位特性抽出の実測作業が簡略化される。また、機体
構成材料の線膨張係数の確認作業も不要である。
【0100】また、温度センサは任意の位置に取付けて
よいので、温度センサの取付位置の制約が緩和されると
同時に、少数(例えば、一つの発熱源について1本又は
2本)の温度センサのみで熱変位を精度よく見込むこと
ができる自由度の高いものにすることができる。本発明
では、必要な温度センサの数を少なくできるので、演算
に使用する温度データが少なくなって外乱の入り込む余
地が減少し、これにより演算の精度が向上する。特にダ
ミー手法及びリニアライズ手法は温度センサの数が少な
いので、高精度な熱変位補正ができる。また、機体の温
度に基づいて補正をしており、室温を直接検出していな
い。したがって、例えば冬季に部屋の扉を開けたり夏季
にクーラーを運転するなどして室温が急激に変化して
も、室温による影響がなくなり、補正の精度を高精度に
維持することができる。また、本発明の熱変位補正方法
及びその装置は、熱変位が機械の精度や性能に悪影響を
与える他の種類の機械、例えば印刷機械,プレス,レー
ザ加工機等の自動制御機械に適用しても、同様の作用効
果を奏する。この自動制御機械は、NC装置等の自動制
御装置によって制御されている。なお、各図中同一符号
は同一又は相当部分を示す。
よいので、温度センサの取付位置の制約が緩和されると
同時に、少数(例えば、一つの発熱源について1本又は
2本)の温度センサのみで熱変位を精度よく見込むこと
ができる自由度の高いものにすることができる。本発明
では、必要な温度センサの数を少なくできるので、演算
に使用する温度データが少なくなって外乱の入り込む余
地が減少し、これにより演算の精度が向上する。特にダ
ミー手法及びリニアライズ手法は温度センサの数が少な
いので、高精度な熱変位補正ができる。また、機体の温
度に基づいて補正をしており、室温を直接検出していな
い。したがって、例えば冬季に部屋の扉を開けたり夏季
にクーラーを運転するなどして室温が急激に変化して
も、室温による影響がなくなり、補正の精度を高精度に
維持することができる。また、本発明の熱変位補正方法
及びその装置は、熱変位が機械の精度や性能に悪影響を
与える他の種類の機械、例えば印刷機械,プレス,レー
ザ加工機等の自動制御機械に適用しても、同様の作用効
果を奏する。この自動制御機械は、NC装置等の自動制
御装置によって制御されている。なお、各図中同一符号
は同一又は相当部分を示す。
【0101】
【発明の効果】本発明は上述のように構成したので、繰
り返し演算を行なわないで任意の時に熱変位に対する補
正を高精度で行なうことができる。
り返し演算を行なわないで任意の時に熱変位に対する補
正を高精度で行なうことができる。
【図1】本発明の第1実施例を示すブロック図である。
【図2】第1実施例の動作を示すフローチャートであ
る。
る。
【図3】Z軸熱変位の経時変化を示すグラフである。
【図4】ノーズ位置で検出された温度の温度変化と、Z
軸熱変位を示すグラフである。
軸熱変位を示すグラフである。
【図5】ノーズ温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグ
ラフである。
ラフである。
【図6】第1の遅れ温度変化に対するZ軸熱変位を示す
グラフである。
グラフである。
【図7】コラム温度変化から遅れ応答成分を演算する手
法を示すグラフである。
法を示すグラフである。
【図8】第1,第2の遅れ温度変化から見積もった熱変
位とZ軸熱変位との関係を示すグラフである。
位とZ軸熱変位との関係を示すグラフである。
【図9】Z軸熱変位の実測データを示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施例を示すブロック図であ
る。
る。
【図11】第2実施例の動作を示すフローチャートであ
る。
る。
【図12】サンプル温度変化及びZ軸熱変位を示すグラ
フである。
フである。
【図13】サンプル温度変化とZ軸熱変位との関係を示
すグラフである。
すグラフである。
【図14】サンプル温度変化及び温度変化“A,B”を
示すグラフである。
示すグラフである。
【図15】サンプル温度変化,温度変化“A,B”,及
び創成温度変化を示すグラフである。
び創成温度変化を示すグラフである。
【図16】創成温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグ
ラフである。
ラフである。
【図17】Z軸熱変位が遅れ応答成分を含んでいる場合
の、創成温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグラフで
ある。
の、創成温度変化とZ軸熱変位との関係を示すグラフで
ある。
【図18】サンプル温度変化,遅れ温度変化,及び創成
した遅れ温度変化を示すグラフである。
した遅れ温度変化を示すグラフである。
【図19】遅れ温度変化と遅れ応答成分との関係を示す
グラフである。
グラフである。
【図20】創成温度変化及び遅れ温度変化から見積もっ
た熱変位と、Z軸熱変位との関係を示すグラフである。
た熱変位と、Z軸熱変位との関係を示すグラフである。
【図21】第3実施例を示すブロック図である。
【図22】NC旋盤の主軸台の断面図である。
【図23】各発熱源のZ軸熱変位を示すグラフである。
【図24】Z軸熱変位の実測データを示すグラフであ
る。
る。
【図25】第4実施例を示すブロック図である。
【図26】主軸冷却装置の説明図である。
【図27】主軸加熱装置の説明図である。
【図28】第4実施例の動作を示すフローチャートであ
る。
る。
【図29】第4実施例の応用例を示す図で、複数の主軸
を有する工作機械の平面構造を含むブロック図である。
を有する工作機械の平面構造を含むブロック図である。
【符号の説明】 1,1a,75 立形マシニングセンタ(工作機械) 10,66,86 機体 12a,12b 熱変位補正装置 31a 創成温度演算手段(温度演算手段) 32 熱変位演算手段 33 補正手段 34 遅れ温度演算手段(温度演算手段) 34a 第1の遅れ温度演算手段(温度演算手段) 34b 第2の遅れ温度演算手段(温度演算手段) 64 NC旋盤(工作機械) 92 多軸NC旋盤(工作機械) S1 ノーズ温度センサ(温度検出手段) S2 コラム温度センサ(温度検出手段) S3 ヘッド温度センサ(温度検出手段) s1 乃至s3 温度センサ(温度検出手段) T,TH ,TN ,TC 検出温度変化 Y1 遅れ温度変化 Y2 遅れ温度変化 Y3 創成温度変化 Y4 遅れ温度変化 t 工作機械の電源投入時からの経過時間 τD ,τDC,τDH ダミーの時定数 τS 検出温度変化の時定数 τZ 創成温度変化の時定数
Claims (7)
- 【請求項1】 発熱源の影響を受ける機体の温度変化を
検出し、 この検出温度変化から工作機械の熱変位の時定数と略同
じ時定数を有する演算温度変化を算出する微分方程式を
解いた解の式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前
記演算温度変化を算出し、 この演算温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて
加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位
補正方法。 - 【請求項2】 発熱源近傍の機体の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで工作機械の熱変位の
時定数と略同じ時定数を有する第1の遅れ温度変化を演
算する第1の微分方程式を解いた第1の解の式に基づい
て前記第1の遅れ温度変化を算出し、 この第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位に基
づいて加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の
熱変位補正方法。 - 【請求項3】 発熱源近傍の機体の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで工作機械の熱変位の
時定数と略同じ時定数を有する第1の遅れ温度変化を演
算する第1の微分方程式を解いた第1の解の式に基づい
て、前記検出温度変化を用いて前記第1の遅れ温度変化
を算出し、 この第1の遅れ温度変化に対応して変化する熱変位を演
算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変
位と前記演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分
の時定数と略同じ時定数を有する第2の遅れ温度変化を
演算する第2の微分方程式を解いた第2の解の式に基づ
いて、前記検出温度変化を用いて前記第2の遅れ温度変
化を算出し、 この第2の遅れ温度変化に対応して変化する前記遅れ応
答成分を、前記演算熱変位に加算して得た合計値に基づ
いて、加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の
熱変位補正方法。 - 【請求項4】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の
温度変化を検出し、 この検出温度変化から前記発熱源の温度変化を算出する
第3の微分方程式による前記発熱源温度変化を用いて工
作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する創成温
度変化を算出する第4の微分方程式を解いた第3の解の
式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前記創成温度
変化を算出し、 この創成温度変化に対応して変化する熱変位に基づいて
加工誤差を補正することを特徴とする工作機械の熱変位
補正方法。 - 【請求項5】 発熱源の影響を受ける機体の適当箇所の
温度変化を検出し、 この検出温度変化から前記発熱源の温度変化を算出する
第3の微分方程式による前記発熱源温度変化を用いて工
作機械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する創成温
度変化を算出する第4の微分方程式とを解いた第3の解
の式に基づいて、前記検出温度変化を用いて前記創成温
度変化を算出し、 この創成温度変化に対応して変化する熱変位を演算し、 前記機体の適当箇所の温度変化を検出し、 この検出温度変化に遅れを見込んで、前記工作機械熱変
位と前記演算熱変位とが徐々にずれていく遅れ応答成分
の時定数と略同じ時定数を有する第2の遅れ温度変化を
演算する第5の微分方程式を解いた第4の解の式に基づ
いて、前記検出温度変化を用いて前記第2の遅れ温度変
化を算出し、この第2の遅れ温度変化に対応して変化す
る前記遅れ応答成分を、前記演算熱変位に加算して得た
合計値に基づいて、加工誤差を補正することを特徴とす
る工作機械の熱変位補正方法。 - 【請求項6】 前記第1の解の式は、 Y1 =TN ・[1−EXP(−t/τD )] 前記第2の解の式は、 Y2 =TC ・[1−EXP(−t/τDC)] 前記第3の解の式は、 Y3 =T・[1−EXP(−t/τZ )]/[1−EXP
(−t/τS )] 前記第4の解の式は、 Y4 =TH ・[1−EXP(−t/τDH)] ここで、T,TH ,TN ,TC :検出温度変化 Y1 :第1の遅れ温度変化 Y3 :創成温度変化 Y2 :第2の遅れ温度変化 Y4 :遅れ温度変化 t :工作機械の電源投入時からの経過時間 τD ,τDC,τDH:ダミーの時定数 τS :検出温度変化の時定数 τZ :創成温度変化の時定数 であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記
載の工作機械の熱変位補正方法。 - 【請求項7】発熱源の影響を受ける機体の温度変化を検
出する温度検出手段と、 この温度検出手段で検出された前記温度変化から工作機
械の熱変位の時定数と略同じ時定数を有する演算温度変
化を算出する微分方程式を解いた解の式に基づいて、前
記検出温度変化を用いて前記演算温度変化を算出する温
度演算手段と、 この温度演算手段で演算された前記演算温度変化に対応
して変化する熱変位を演算する熱変位演算手段と、 この熱変位演算手段で演算された前記熱変位に基づいて
加工誤差を補正する補正手段とを備えたことを特徴とす
る工作機械の熱変位補正装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13289495A JPH08300242A (ja) | 1995-05-07 | 1995-05-07 | 工作機械の熱変位補正方法及びその装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13289495A JPH08300242A (ja) | 1995-05-07 | 1995-05-07 | 工作機械の熱変位補正方法及びその装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08300242A true JPH08300242A (ja) | 1996-11-19 |
Family
ID=15092043
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13289495A Pending JPH08300242A (ja) | 1995-05-07 | 1995-05-07 | 工作機械の熱変位補正方法及びその装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH08300242A (ja) |
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100470399B1 (ko) * | 2002-12-09 | 2005-02-05 | 재단법인서울대학교산학협력재단 | 열변형 모델 획득방법, 열변형 추정치 획득방법, 열변형보상치 획득방법, 그리고 그 기록매체 |
JP2005088126A (ja) * | 2003-09-17 | 2005-04-07 | Matsuura Machinery Corp | 回転主軸の変位補正方法 |
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