JPH0622779B2 - 工作機械の熱変位補正方法 - Google Patents

工作機械の熱変位補正方法

Info

Publication number
JPH0622779B2
JPH0622779B2 JP63192812A JP19281288A JPH0622779B2 JP H0622779 B2 JPH0622779 B2 JP H0622779B2 JP 63192812 A JP63192812 A JP 63192812A JP 19281288 A JP19281288 A JP 19281288A JP H0622779 B2 JPH0622779 B2 JP H0622779B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
deformation
room temperature
nose
base
tool
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP63192812A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0241848A (ja
Inventor
肇 櫻庭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Seiki Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Seiki Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Seiki Co Ltd filed Critical Hitachi Seiki Co Ltd
Priority to JP63192812A priority Critical patent/JPH0622779B2/ja
Publication of JPH0241848A publication Critical patent/JPH0241848A/ja
Publication of JPH0622779B2 publication Critical patent/JPH0622779B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、工作機械の熱変位補正装置に関する。特
に、主軸の軸線方向の伸びを補正する機能を備えた工作
機械の熱変位補正装置に関する。
[従来技術] 工作機械は、機体各部に発熱源を備えている。例えば、
主軸の軸受のころがり摩擦熱、切削部分からの発熱など
数多い。これらの発熱源は、機体各部に伝導し機体を変
形させる。この機体の変形は、加工精度に影響する。工
作機械の機体の熱変形の防止と、変形後の補正装置につ
いては種々の提案が過去されている。マシニングセンタ
の補正装置は、X、Y軸線方向の補正装置が知られてい
る。また、Z軸線方向の伸び、すなわち主軸々線方向の
伸びについての補正装置も提案されている。
特公昭61−59860号公報は、主軸の伸びの実験式
を作り、この実験式をプログラムメモリ内にストアし
て、工作機械の主軸頭、機体部分に設けたセンサにより
温度を検出し、この検出値により記憶されている実験式
で計算して変形量を補正するものである。
[発明が解決しようとする課題] しかし、前記補正装置は、主軸の各要素がどのように変
形するか必ずしも明確でない。単に、近似的直線に変形
量をモデル化したにすぎない。このため、実際の変形量
との間に誤差が生じてしまう。正確に変形誤差を修正す
るには、どの要素が、どのように熱変形するか詳細に分
析し、この分析結果から判断しなければならない。この
発明は、これらの問題点に着目したものである。
この発明の目的は、主軸の軸線方向の熱変形を主軸を構
成する各要素に分解した実験式を作って、熱変形を正確
に予測して補正する工作機械の熱変位補正方法を提案す
るものである。
この発明の他の目的は、熱変形の計算値と実測値とがき
わめて近い工作機械の熱変位補正方法を提案するもので
ある。
[前記課題を解決するための手段および作用] 工作機械の主軸軸線方向の熱変位を、 主軸のノーズ部分の熱変形であるノーズ熱変形、 前記主軸に装着される工具の主軸端部より突出したツー
ル部分の熱変形であるツール熱変形及び 工作機械の基体を構成するベース部分の熱変形であるベ
ース熱変形とに分別し、 前記ノーズ部分の温度、前記ベース部分の温度および室
温から前記熱変形を予測計算して前記主軸軸線方向の熱
変位を求め、この熱変位を補正する工作機械の熱変位補
正方法であって、 ノーズ熱変形はノーズ部の温度変化に対する即時応答等
要素とし、 ツール熱変形はノーズ部の温度変化と室温の変化に対す
る即時応答等要素とし、 ベース熱変形はベース部の温度変化に対する即時応答要
素と室温の変化に対する一時遅れ要素として前記主軸軸
線方向の熱変位を求め、 この熱変位を補正することを特徴とする工作機械の熱変
位補正方法である。
前記ベース熱変形をベース部の温度変化に対する一次遅
れ要素として予測計算するとき、前記室温の変化を直線
近似化して予測計算することを特徴とする工作機械の熱
変位補正方法である。
[この発明の原理] 第1図に示すものは、マシニングセンタのコラム1、主
軸2、ツール3、工作物テーブル4を示したものであ
る。ここでいうノーズとは、主軸2がコラム1から突き
出している部分をいう。ツール3は、主軸2に取り付け
た切削工具などの工具部分をいう。工作物テーブル4
は、ベッド上に設けられ加工時に工作物を載置して機械
加工を行うものである。いずれも、これらの構造は、マ
シニングセンタとして公知の構造である。また、図示し
たものは、主軸が水平タイプの横型マシニングセンタの
例であるが、主軸が垂直タイプの縦型でも軸の名称が変
わるのみで同様である。
以下でいうノーズ熱変形とは、前記コラム1から突き出
た主軸2部分のZ軸線方向の変形をいう。ツール熱変形
とは、主軸2から突き出たツール3部分のZ軸線方向の
突出量をいう。ベース熱変形とは、主軸2のコラム2側
からテーブル4間のZ軸線方向の変形をいう。以下、熱
変形ごとの実測値を示す。日立精機(株)製(HF−3
00)のマシニングセンタを使って、実験を行いデータ
をとった。第2図にその実験装置を示す。実験装置の仕
様は次のとおりである。
装置の主な仕様 イ)温度計 ※メーカ:宝工業(株)製 ※型 式:E641−2 ※入 力:素子互換式サーミスタセンサ5点(T1−T
5)測定範囲−9.18〜+79.2℃(使用範囲0〜
+40.64℃) ※出 力:T1−T5(各出力のON/OFF可 :OFF点はデータO出力)シリアルデータ(バイナリ
16 ビットパラレル:この内7ビットを使用) ストローブ(負論理) データ更新:約1秒/1回 オープンコレクタ ※分解能:0.01℃(使用分解能0.32℃) ロ)インテリジェント・モジュール ※メーカ:日立精機(株)製 ※入 力:汎用パラレル入力ポート8点(標準プルアッ
プ24Vを12Vに変更) ※出 力:標準 RS232C(MAX9600 BP
S) ※言 語:SEIKI−52BASIC ※その他:RAM851Kバイト(電池バックアップ) ハ)非接触変位計(静電容量式) ※メーカ:岩崎通信機(株)製 ※型 式:メータ部ST−3501 プローブ231D ※測定範囲:1.0±0.5mm ※出 力:±5V/±0.5mm ※直線性:±1% ニ)アンバー製マグネットスタンド ※メーカ:日立精機(株)製 ホ)データロガー ※メーカ:日本電気三栄(株)製 ※型 式:7V13 ※入 力:直流±10 ※出 力:データ更新約0.1秒/1点 GP−1B ※分解能:0.001V(使用した分解能0.01V) ヘ)パソコン ※メーカ:NEC ※型 式:本体 PC−98XA カラーディスプレイ
N5923(1120×750ドット) ※入 力:GP−IB、RS232C ※言 語:MS−DOS N88 BASIC (1)ノーズ熱変形 (a)室温一定 主軸回転数を変化させた時の、ノーズ温度とノーズ熱変
形の関係を第3図に示す。同図は、各回転数において連
続運転し、変化が飽和した時のノーズ温度とノーズ熱変
形を、コールドスタート(機械電源を落として機械が十
分安定した状態を基準とする)とホットスタート(油圧
電源投入後、機械が十分安定した状態を基準とする)比
較で示している同図から次の3点が明らかである。
イ)機械の変化が飽和した時点では、ノーズ温度とノー
ズ変形とは1次の関係にある。
ロ)ホットスタートでは、コールドスタートに対し、約
4.5℃ノーズ温度のレベルが高い。これは、主軸冷却
装置の能力に依存する現象と考える。マシニングセンタ
の主軸冷却装置を、機械とのマッチングの上で評価する
1手段となる。
ハ)主軸回転数は、基本的パラメータになっていない。
次に、一定回転数における回転開始から停止に至るまで
のノーズ温度とノーズ変形の関係を第4図に示す。同図
から次の事が言える。
ニ)10分間隔の測定では、ノーズ温度の変化に伴うノ
ーズ変形に遅れは生じない。ノーズ温度とノーズ変形の
間には、上記飽和時と同じ関係がある。
ホ)ノーズ全長Lを105mmとすると、ノーズ変形の線
膨張係数αの値は1.02×10-5[1℃]となり、ノ
ーズを構成している鋳鉄の線膨張係数にほぼ一致する。
すなわち、ノーズ温度とノーズ変形の関係は、次式で表
現される。
ΔL=α×L×ΔT (1) (ΔL:ノーズ変形、α:線膨張係数、L:ノーズ全
長、ΔT:ノーズ温度変化) (b)室温変化 室温変化のある時のノーズ温度とノーズ変形の関係を第
5図に示す。第5図では、ノーズ温度を変える条件とし
て、機械電源OFFの状態から油圧電源を投入してジャ
ケット部に冷却油を循環させ、また設置環境である室温
を図中にあるパターンに従って変化させた。室温変化時
においても、ノーズ温度とノーズ変形の間には、室温一
定時と同じ(1)式で表される線膨張の理論式が成立す
ると言える。
(2)ツール熱変形 (a)室温一定 主軸回転数を変化させた時の、ノーズ温度とツール変形
の関係を第6図に示す。第6図では、各回転数において
連続運転し、変化が飽和した時のノーズ温度とツール変
形の関係位置を○印で示している。また、図の原点から
各飽和位置を直線で結んである。これは、主軸回転数と
ノーズ温度とは直接的な関係が無いものの[(前記ハ)
参照)]、一定回転数におけるノーズ温度とツール変形
の関係はこの線上にあるからである(これについては、
第9図で詳細に説明する)。
さらに、ノーズ温度が8℃(任意)の位置から各線をよ
ぎって0rpmの線との交点Pに至る破線を、縦軸に平行
に記してある。第6図から、各回転数におけるツール変
形の空冷効果量を求めることができる。図中の破線がP
点から各回転数の線と交わる位置までの長さが、0rpm
の空冷効果に対するそれぞれの回転数の空冷効果量を意
味する。回転数とツール空冷効果の関係を第7図に示
す。第7図は、第6図のノーズ温度が8℃におけるツー
ル空冷効果を各回転数毎に示したものである。
回転数が4,000rpm以上では空冷効果の値はほぼ同
じであるが、それ以下の回転数では、空冷効果の値は回
転数の影響を強く受けることがわかる。図中の実線は、
回転数と空冷効果の関係を直線で近似したものである。
第6図の0rpmのツール変形から第7図の空冷効果の値
を差し引いたものが、実際のツール変形となる。ノーズ
温度をパラメータとした、各回転数におけるツール変形
を第8図に示す。第8図は、ノーズ温度が定まれば、
4,000rpm以上の領域では回転数に関わらず一定の
ツール変形量になることを示している。
これは、ツールの変形を予測するのに際して、この領域
では回転数を取り込む必要の無いことを意味する。ま
た、ノーズ温度と回転数とは密接な関係が無い[前記ノ
ーズ熱変形(a)室温一定ハ)参照]とはいえ、4,0
00rpm以下ではノーズ温度は6℃を越えない(第6図
参照)。これは、第8図における4,000rpm以下の
大きなツール変形は、実際には生じないことを示す。ゆ
えに、回転数の全領域にわたって、ノーズ温度とツール
変形の関係を数μmの誤差内で、第6図における4,0
00rpmの線で代表させることが可能である。
すなわち、ノーズ温度とツール変形の関係は次式で表現
される。
(ΔL:ツール変形、ΔT:ノーズ温度変化) 次に、一定回転数における回転開始(コールド)から停
止(コールド)に至るまでのノーズ温度とツール変形の
関係を第9図に示す。回転開始後、時間の経過に伴って
ノーズ温度は上昇しツール変形も進む。このノーズ温度
とツール変形を10分ごとに測定した点は、図の原点か
らある傾斜を持たせて引いた直線上を移動する。変化が
ほぼ飽和した時点で回転を停止すると、約1時間後から
はこれも図の原点から異なる傾斜を持たせて引いた直線
上を点は移動して原点に戻る。同図から次のことが言え
る。
イ)10分間隔の測定では、ノーズ温度の変化に伴うツ
ール変形に遅れは生じない。飽和時を含めて、ノーズ温
度とツール変形とは原点からある傾斜を持たせて引いた
直線で示される関係にある。
ロ)一定回転数におけるノーズ温度とツール変形の関係
が、回転を停止することによって0rpm時のバランス状
態に移行するのに約1時間を要する。
図中の点P1−P5は、10,000rpmの状態から0r
pmのバランス状態へ移行する過程を示すものである。こ
のP1−P5を、各ノーズ温度において0rpm線上の値
から10,000rpm線上の値を引いた数値に対する飽
和率で、経過時間ごとにプロットしたものが第10図で
ある。
飽和率(ノーズ温度)=[ツール伸び(P1−5)−1
0,000rpm読み]/[0rpm読み−1,000rpm読
み] すなわち、第10図は、テストに使用したツール(ツー
ル+主軸端)の0rpmにおけるステップ入熱応答を意味
する。同図より、0rpmにおけるツール系の温度飽和時
定数は約13minである。また、第9図とは逆に0rpm時
のバランス状態から回転時のバランス状態へ移行する過
程を調べることにより、回転時のステップ入熱応答を得
ることができる。しかし、第9図に見るように、10,
000rpmでは回転開始後10minですでにツール変形は
10,000rpm線上にあるので、この時の変位飽和時
定数は数分後以下であることが予想できる。
b)室温変化 室温が変化するとその影響でノーズ温度が変化する。変
化する過程のノーズ温度とツール変形との関係はすでに
明らかにした(第9図)。ここでは、室温の変化がツー
ル変形に直接に与える影響を考える。したがって、室温
変化に伴ってノーズ温度が変化することによる成分は除
いてある。第11図は、主軸回転を停止した状態で室温
を変化させ、変形が飽和した時の室温とツール変形の関
係を示す。同図から次のことが言える。
イ)ツール変形が飽和した時点では、室温変化とツール
変形とは1次の関係にある。これは、ツール長をツール
長110mmとし、素材の線膨張係数αを1.02×10
-5[/℃]として計算した値の約2倍である。
第9図のノーズ温度の場合と同様に、室温が変化する場
合もツール単体の変形だけでなく、主軸端の位置も大き
く変化することがうかがわれる。
次に、第12図に室温変化時のツール変形の経時応答を
示す。同図からの次のことが言える。
ロ)室温変化に対し、0rpm時のツール変形は20分程
度遅れて応答する。
第12図における0rpm時の室温変化に対するツール変
形の遅れは、先の第10図の結果にほぼ等しい。これ
は、両テストで基本的な境界条件に差がないことからも
予測され得る。これより回転時の室温変化に伴うツール
変形時定数は、数分以下であることが予想できる。すな
わち、室温変化とツール変形の関係は次式で表現され
る。
ΔL=2.2×ΔT (3) (ΔL:ツール変形、ΔT:室温変化) (3)ベース熱変形 サーミスタ温度計のセンサをベース(ノーズ元部)に接
着剤で取り付けて温度を検出し、これをベース温度とし
た。同時に、別のサーミスタ温度計センサ部を粘土で包
み、応答を多少鈍くした形で室温を検出した。また、テ
ーブルから電気マイクロメータを用いて測ったベース変
位をベース変形とした。
(a)室温一定 主軸回転数を変化させた時の、ベース温度とベース変形
の関係を第13図に示す。第13図では、各回転数にお
いて連続運転し、変化が飽和した時のベース温度とベー
ス変形の関係位置を○印で示している。同図から次のこ
とが言える。
イ)変化が飽和した時点では、ベース温度とベース変形
とは1次の関係にある。
同じく、変化が飽和した時点では、ベース変形はノーズ
温度ともやや緩い1次の関係が認められた。しかし、ノ
ーズ温度からベース変形を予測すると、再現性を含め数
μmの誤差が出る。テーブルとベース間の変位を検討す
るのに際して、構造の経路であると同時に熱経路でもあ
るその経路内に、代表温度の計測点を設定した方が良い
結果を得る。
次に、回転数を変えて行った時のベース温度とベース変
形の関係を第13図に示す。同図から次のことが言え
る。
ロ)10分間隔の測定では、ベース温度の変化に伴うベ
ース変形に遅れは生じない。
すなわち、ベース温度とベース変形の関係は次式で表現
される。
ΔL=2.5×ΔT (4) (ΔL:ベース変形、ΔT:ベース温度変化) (b)室温変化 室温が変化するとその影響でベース温度が変化する。こ
の変化する過程のベース温度とベース変形の関係はすで
に明らかにした(第14図)。ここでは、室温の変化が
ベース変形に直接与える影響を考える。したがって、室
温変化に伴ってベース温度が変化することによる成分は
除いてある。第15図は、主軸回転を停止した状態で室
温を変化させ、変形が飽和した時の室温変化とベース変
形の関係を示す。また、図中にはコラムをZ軸方向に1
00mm移動した際のデータを含めている。同図から次の
ことが言える。
イ)ベース変形が飽和した時点では、室温変化とベース
変形とは1次の関係にある。しかし、室温が上昇すると
テーブルとベース間が広がる方向に変位し、これまでの
室温上昇に伴うノーズ熱変形およびツール変形を相殺す
る効果を持つ。
ロ)室温とベース変形との関係は、デーブルに対するコ
ラムのZ方向位置、Z軸ボールネジに与えるプリテンシ
ョンの量、スケールフィードバック機能の有無などに影
響される。
ハ)熱変位補正を行う代表的コラム位置の設定から10
0mmコラムを移動させた位置では、室温変化1℃に付き
1μm程度の誤差が生じる。これは、ボールネジ100
mmの熱膨張の理論値にほぼ一致する。
次に、室温変化などのベース変形の経時応答を第17図
に示す。3時間で6℃室温上昇するパターンにしたがっ
て、15分ごとに恒温設備のコントローラを操作した。
本来恒温設備用のコントローラを用いて各種室温変化の
パターンを設定することは難しい。しかし、第17図で
与えたような室温変化のパターン(ランプ入力)は、不
満足ながら比較的容易に作ることができる。同図から次
のことが言える。
ニ)室温変化のランプ入力に対しベース変形は数時間の
遅れで応答し、室温変化の停止後から最終的にベース変
形が飽和するには長時間を要する。
ホ)ベース変形が飽和した時点では、室温変化とベース
変形の関係は先の第15図に示した直線上にある。
今、ベース変形は、ハ)項で示したボールネジのように
室温変化に対し比較的時間遅れの無い熱要素と、ニ)項
で示した長時間経過して変形が飽和する1次遅れ要素の
合成であると仮定する。つまり、現実に機械を構成して
いる熱要素は多くあるが、2個の特徴的な熱要素でこれ
を代表されることになる。この2個の熱要素の室温変化
に対する応答を数式化することに依り、時々刻々の室温
からベース変位を推定することが可能になる。室温変化
である入力の形式は、 数式に含まれる係数を実験値と合わせる必要上、実験
的に設定が容易なものであること。
現実の室温変化のパターンを近似できるものであるこ
と。
の理由からランプ入力とした。すなわち、室温変化とベ
ース変形の関係は、次式で表現される。
ΔL=αK×t+βK{t+τ(1−e−t/τ)}
(5) (ΔL:ベース変形、α:No.1要素線膨張係数、
K:温度勾配、β:No.2要素線膨張係数、t:経過
時間、τ:No.2要素時定数) (5)式に示した関係式は、その中に3個の未知数
(α、β、τ)を含んでいる。これらの未知数を決定す
る手順を以下に説明する。第17図の点Aは室温変化が
停止した時刻を示している。(5)式は室温変化をラン
プ入力とした時のベース変形を示しているので、これは
第17図の点A以下の時間における関係を示したものに
過ぎない。室温変化が停止した点A以降のベース変形
は、即ち次式で表現される。
ΔL=(α+β)K・t+β・K・τ(1−
−t/τ)−(α+β)K(t−φ)−β・K・τ
(1−e−(t−φ/τ)) (6) (ΔL:ベース変形、α:NO1要素線膨張係数、B:
NO2要素線膨張係数、K:温度勾配 t:経過時間、
τ:NO2要素時定数、φ:点Aまでの時間) (6)式の第1項及び第3項は、時々刻々の室温から直
ちに決定される変形成分であり、第2項及び第4項は室
温変化が時間遅れを伴って変形に影響を与える成分であ
る。この第2項及び第4項は、極めて長時間後には0と
なって無視できる成分でもある。すなわち、(6)式で
表現されるベース変形は、長時間後には次式になる。
ΔL=(α+β)K・φ =(α+β)ΔT (7) (ΔL:ベース変形、α:NO1要素線膨張係数、β:
NO2要素線膨張係数、K:温度勾配、φ:点A迄の時
間、ΔT:室温変化) (7)式におけるα+βの値は、第15図の直線の傾斜
から求めることができる。
α+β=−4.3[μm/℃] また、第17図のベース変形が室温のランプ入力と平行
的にシフトした量が時定数τの値になる。第17図では
室温変化のランプ入力に対し、ベース変形が過渡状態の
時点で室温変化を停止しているため、正確なτの値を得
ていない。本来このτの値と先のα+βの値を任意の時
点の(5)式の右辺に代入し、左辺にテストによる変位
実測値を代入することによって、一義的にα及びβの値
を決定する事が可能である。ここでは試行錯誤法により
τの値を決定した。
第17図では、点Aから縦軸に平行に引いた線がベース
変形の軌跡と交わる位置を点Pで示してある。この点P
において適当なτの値を設定し(5)式に代入する。
(5)式から仮のαとβの値を求め、これらα、β、及
び、τの値を(6)式に代入し、任意の時点の変位実測
値との一致度を見る。この様にして求めた室温変化のラ
ンプ入力とベース変位との相関は次式となる。
ΔL=−4.3×K・t+16×K(1−e-t/3.13
ただし、t≦φ +4.3×K(t−φ)−16×K(1−e
−(t−φ)3.13)ただし、φ≦t (8) (ΔL:ベース変形、K:温度勾配、t:経過時間、
φ:点A迄の時間) 室温変化を第17図の直線近似したもので代表させた時
の(8)式による計算値と変形実測との差を第18図に
示す。
(4)総合熱変形 ノーズ温度、ベース温度、および、室温のデータからノ
ーズ熱変形、ツール熱変形、及び、ベース熱変形のそれ
ぞれを式(1)−(8)を用いて算出した。さらにこれ
ら熱変形の和を総合計算値とした。また、テーブルから
非接触変位計で測ったツール先端部の変位をツール先端
実測変位とした。
(a)室温一定 時々刻々の各部熱変形、および、その総合計算値を、ツ
ール先端実測変位と比較させて第19図に示す。同図か
ら次の事が言える。
特定回転数においては、計算値は実測変位と数μmの
誤差内にある。
(b)室温変化 室温変化のある時、この変化を直線近似した結果を用い
て予測した熱変形の総合計算値をツール先端実測変位と
比較させて第20図に示す。すなわち、 40−50μmの熱変形に対し、計算と実測値は約5
μmの誤差を生じる。
(5)マシニングセンタの主軸伸び補正 以上のようなテストを通じて、機械温度と各部の熱変形
の関係を、それぞれの式を示す事によって明らかにし
た。温度から熱変形を予測しこれを補正する方式による
マシニングセンタの主軸伸び補正システムが以下に示す
シミュレーション機構である。
(6)シミュレーション機構 ノーズ熱変形、ツール熱変形、ベース熱変形についてえ
た機械温度と熱変形の関係式は、ここでは基本的に以下
の2種類の熱要素に対する応答式として分類するができ
る。
イ)即時応答要素 ※ノーズ熱変形(ノーズ温度依存分) ΔL=1.02×10-5×L×ΔT (9) (ΔL:ノーズ変形、L:ノーズ長、ΔT:ノーズ温度
変化) ※ツール熱変形(ノーズ温度依存分) ΔL=5.5/8×ΔT (10) (ΔL:ツール変形、ΔT:ノーズ温度変化) ※ツール熱変形(室温依存分) (11) ΔL=2.2×ΔT (ΔL:ツール変形、ΔT:室温変化) ※ベース熱変形(ベース温度依存分) ΔL=2.5×ΔT (12) (ΔL:ベース変形、ΔT:ベース温度変化) ロ)一次遅れ要素 ※ベース熱変形(室温依存分) ΔL=−4.3×K・t+16×K(1−e-t/3.13
(13) (ΔL:ベース変形、K:温度勾配、t:経過時間) (7)室温変化の直線近似 即時応答要素については、簡単に式をプログラム化する
事ができる。しかし、一次遅れ要素に付いては、ソフト
上での若干の問題を解決しておく必要がある。(13)
式はランプ入力に対する一次遅れ要素の応答を意味す
る。実際に同式でΔLの値を決定するには、時間に対す
る温度変化の勾配Kの値、および温度変化が開始してか
らの経過時間tを知る必要がある。すなわち、時々刻々
の室温変化を過去の任意の時点からの傾斜で近似してラ
ンプ入力化(直線近似)する事が要求される。
(イ)モデル室温の直線近似 第21図は、SINカーブを室温変化に見立てて、これ
を直線近似した例である。直線近似には以下の手法を用
いた。
次回の予測温度=今回の温度+K×Δt ΔT>(次回の実際温度−次回の予測温度)(N:カウ
ント数、Δt:測定インターヴァル ΔT:敷居値) この手法は、同一基準温度をもつ直線群を1ブロックと
して扱うことを意味する。次回の実際温度と次回の予測
温度の差が敷居値を越えると(例えば2回連続して)そ
のときの温度(次回の実際温度)を新たな基準温度とし
て採用し、また、カウント数をリセットする。室温を検
出する温度計の分解能と室温外乱を考慮して、センサ感
度をコントロールする(板金カバーに取り付ける、粘土
でコーティングする)とともに、敷居値を適当に選定す
ることによって、室温変化を自動的に数本の直線群で分
解近似することができる。第22図は先の第17図で示
した室温変化をこのソフトで自動直線近似した例であ
る。各直線群の区切りを縦軸に平行な線で示してある。
(ロ)式の積み重ね (13)式で示したものは、室温変化の基準時が1個で
ある時の直線群に対する応答式であって、第21図およ
び第22図に示したように幾つかの直線群に室温が分割
される場合は、2個目以降の直線群に対する応答式を付
加する必要がある。ここでは通常の室温変化に対して最
大5個の直線群が作られるものとしたときの式の構成を
示す。
ΔL=−4.3×T+16×K1{1−exp(−t/
3.13)} −16×K1[1−exp{−(t−φ1)/3.1
3}] +16×K2[1−exp{−(t−φ1)/3.1
3}] −16×K2[1−exp{−(t−φ1−φ2)/
3.13}] +16×K3[1−exp{−(t−φ1−φ2)/
3.13}] −16×K3[1−exp{−(t−φ1−φ2−φ
3)/3.13}] +16×K4[1−exp{−(t−φ1−φ2−φ
3)/3.13}] −16×K4[1−exp{−(t−φ1−φ2−φ3
−φ4)/3.13}] +16×K5[1−exp{−(t−φ1−φ2−φ3
−φ4)/3.13}] (ΔL:ベース変形、T:温度ポテンシャル、t:経過
時間、K1−5:各直線群の温度勾配、φ1−4:K1
−4の継続時間 6個目の直線群が作られた際には、最初の直線群の温度
変化の影響が飽和したものとしてその影響を無視する。
すなわち、常に最新の5個の直線群の影響のみを積み重
ねていることになる。
熱変位制御装置 第23図に示すものは、この発明の工作機械の熱変位補
正方法を実施するための制御回路の機能ブロック図であ
る。マシニングセンタ10には、室温センサ12、1
6、ノーズ温度センサ13、ベース温度15が取り付け
られている。これらのセンサは、どのタイプでも良いが
サーミスタ温度センサが望ましい。室温センサ12は、
スプラッシュカバー内温度、室温センサ16は機械設置
環境温度を検出する。
室温センサ12、16、ノーズ温度センサ13、ベース
温度センサ15の出力は、A/D変換器17に入力され
る。入力されたアナログ信号は、デジタル信号に変換さ
れる。A/D変換器17の出力は、演算器18に入力さ
れる。演算器18は、前記した理論にしたがって、Z軸
方向の熱変位量を演算する。演算器18の出力は、補正
条件設定器19に出力される。補正条件設定器19は、
工作物加工条件に応じた補正タイミングを設定する(一
定時間毎、ツール交換時)。補正条件設定器19の出力
は、数値制御装置20へ出力され機械Z軸原点が補正さ
れる。
[発明の効果] 以上詳記したようにこの発明は、主軸の軸線方向の伸び
を正確に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は主軸の変位測定対象を示す図、第2図は実験装
置を示す図、第3、4、5図はノーズ温度とノーズ変形
の関係を示す図、第6図はノーズ温度とツール変形の関
係を示す図、第7図はツールの空冷効果を示す図、第8
図は主軸回転数とツール変形の関係を示す図、第9図は
ノーズ温度とツール変形の覆歴を示す図、第10図は回
転停止後のツールの変化を示す図、第11図は室温変化
とツール変形の関係を示す図、第12図は室温変化時の
ツール変形を示す図、第13、14図はベース温度とベ
ース変形の関係を示す図、第15図は室温変化とベース
変形の関係を示す図、第16図はテーブルとコラムの位
置関係を示す図、第17図は室温変化時のベース変形の
経時応答を示す図、第18図は計算値と変形実測値との
差を示す図、第19図は各熱変形の実測値および総合計
値を示す図、第20図は室温変化のあるとき熱変形の総
合計算値とツール先端実測変位との関係を示す図、第2
1図はサインカーブを室温変化に見立てて直線近似した
例、第22図は第17図で示した室温変化を自動直線近
似した例を示す図、第23図はこの発明の熱変位制御装
置の実施例を示す図である。 1……コラム、2……主軸、3……ツール、4……工作
物テーブル、10……マシニングセンタ、12、16…
…室温センサ、13……ノーズ温度センサ、15……ベ
ース温度センサ、17……A/D変換器、18……演算
器、19……補正条件設定器、20……数値制御装置

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】工作機械の主軸軸線方向の熱変位を、 主軸のノーズ部分の熱変形であるノーズ熱変形、 前記主軸に装着される工具の主軸端部より突出したツー
    ル部分の熱変形であるツール熱変形及び 工作機械の基体を構成するベース部分の熱変形であるベ
    ース熱変形とに分別し、 前記ノーズ部分の温度、前記ベース部分の温度および室
    温から前記熱変形を予測計算して前記主軸軸線方向の熱
    変位を求め、この熱変位を補正する工作機械の熱変位補
    正方法であって、 ノーズ熱変形はノーズ部の温度変化に対する即時応答等
    要素とし、 ツール熱変形はノーズ部の温度変化と室温の変化に対す
    る即時応答等要素とし、 ベース熱変形はベース部の温度変化に対する即時応答要
    素と室温の変化に対する一時遅れ要素として前記主軸軸
    線方向の熱変位を求め、 この熱変位を補正することを特徴とする工作機械の熱変
    位補正方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記ベース熱変形をベース部の温度変化に対する一次遅
    れ要素として予測計算するとき、前記室温の変化を直線
    近似化して予測計算することを特徴とする工作機械の熱
    変位補正方法。
JP63192812A 1988-08-03 1988-08-03 工作機械の熱変位補正方法 Expired - Lifetime JPH0622779B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP63192812A JPH0622779B2 (ja) 1988-08-03 1988-08-03 工作機械の熱変位補正方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP63192812A JPH0622779B2 (ja) 1988-08-03 1988-08-03 工作機械の熱変位補正方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0241848A JPH0241848A (ja) 1990-02-13
JPH0622779B2 true JPH0622779B2 (ja) 1994-03-30

Family

ID=16297398

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP63192812A Expired - Lifetime JPH0622779B2 (ja) 1988-08-03 1988-08-03 工作機械の熱変位補正方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0622779B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0775937A (ja) * 1993-09-07 1995-03-20 Sodick Co Ltd 工作機械及びその制御方法
JP3792266B2 (ja) * 1994-06-16 2006-07-05 森精機興産株式会社 工作機械の熱変位補正方法及びその装置
KR100427326B1 (ko) * 2001-08-21 2004-04-14 현대자동차주식회사 공작기계 주축계의 열변위 보정방법
JP2003094290A (ja) * 2001-09-26 2003-04-03 Mitsubishi Electric Corp 工作機械及びその熱変位補正方法
JP4878949B2 (ja) * 2006-07-26 2012-02-15 株式会社ソディック 工作機械の熱変位補正に用いられる熱変位量の演算方法、同熱変位量の演算システム、工作機械の熱変位補正方法、および同熱変位補正システム
CN102452020B (zh) * 2010-10-22 2016-08-10 西安交通大学 一种数控机床刀具温度场和热变形定量分析方法
CN113857936B (zh) * 2021-11-08 2022-06-21 东莞市宝科精密机械有限公司 一种基于视觉检测的机床立柱热补偿方法、系统和机床

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5415148A (en) * 1977-07-05 1979-02-03 Mitsubishi Electric Corp Differential protective realy
JPS6334049A (ja) * 1986-07-29 1988-02-13 Kurashiki Kikai Kk 数値制御式横中ぐり盤における中ぐり軸伸び補正方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0241848A (ja) 1990-02-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN100436049C (zh) 机床的热位移修正方法和热位移修正装置
US5111590A (en) Measuring method of machine tool accuracy using a computer aided kinematic transducer link and its apparatus
US8924003B2 (en) Thermal displacement compensation method and thermal displacement compensation device for machine tool
US9945799B2 (en) Thermal displacement correction device for machine tool
JP3407972B2 (ja) 工作機械の熱変位補正方法
CN107861470A (zh) 基于pmc控制的数控机床主轴热伸长误差实时补偿方法
JPH0775937A (ja) 工作機械及びその制御方法
JP4803491B2 (ja) 工作機械における位置補正装置
JP2002018677A (ja) 工作機械の熱変位補正方法
KR20180116361A (ko) 공작기계의 열변위 보정 파라메터 자동 변환 장치 및 변환 방법
CN105397560A (zh) 一种干切数控滚齿机床及工件热变形误差补偿方法
JP2002515995A (ja) 全示差ウエットモデリングを使用する工作機械のリアルタイム誤差補正
JPH0622779B2 (ja) 工作機械の熱変位補正方法
CN104166373A (zh) 数控机床加工误差在线检测方法及系统
JPH05116053A (ja) 工作機械の熱変位補正方法
JPH0747257B2 (ja) 工作機械の熱変位補正方法およびその制御装置
CN112828682A (zh) 机床的误差测量方法以及机床
KR20150041328A (ko) 공작기계의 열변위 보정 파라메터 자동 변환 장치 및 변환 방법
JP4469681B2 (ja) 工作機械の加工誤差の補正方法
JPH08215983A (ja) 工作機械の熱変位補正方法及びその装置
JPH11190617A (ja) 三次元測定機
JP4128929B2 (ja) 工作機械の変位量確認用加工方法及び変位量確認用工作物
JPH07237088A (ja) 加工装置および加工方法
JP4105598B2 (ja) 工作機械の熱変形誤差の補正方法
JEYA CHANDRA et al. Analysis of robot positioning error