JPH05107253A - 液体の吸引方法 - Google Patents

液体の吸引方法

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JPH05107253A
JPH05107253A JP3271482A JP27148291A JPH05107253A JP H05107253 A JPH05107253 A JP H05107253A JP 3271482 A JP3271482 A JP 3271482A JP 27148291 A JP27148291 A JP 27148291A JP H05107253 A JPH05107253 A JP H05107253A
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雅明 竹田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高粘性の液体試料である赤血球成分の吸引を
行うに際して、吸引時間の短縮化を図る。 【構成】 ノズルチップによって赤血球成分の吸引を行
う場合に、ピストンを最大限引き、最大の吸引力を発生
させて吸引を開始し、その後吸引系の圧力が一定値αに
達したときにピストンを目標吸引量まで戻し、最終的に
目標吸引量の吸引を行う。ポンプの吸引力を最大限用い
ることができるので、吸引を迅速化できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体の吸引方法、特に
高粘性の液体である赤血球成分等の分注を行う分注装置
において採用される液体の吸引方法に関する。
【0002】
【従来の技術】人体から採取された血液試料に対しては
各種検査が行われる。例えば、血液型判定検査等におい
ては、図10に示すように、採取された血液試料10は
試験管12に入れられ、まず、遠心分離処理もしくは放
置がなされ、これによって血液試料10は、およそ血漿
成分14と赤血球成分16とに分離される。なお、実際
には血漿成分14と赤血球成分16との間に、少量の白
血球成分18が表出するが、以下の説明に直接関与しな
いので他の図面においては図示省略されている。
【0003】従来の分注装置で行われる血液試料の分注
方法は、大別して2つの工程から成り、血漿分注工程と
赤血球分注工程とから成る。血漿分注工程においては、
ノズルチップ20によって血漿成分14が吸引され、他
の複数の容器22に血漿成分が所定量ずつ分注される。
また、赤血球分注工程では、ノズルチップ20によって
赤血球成分16が吸引され、その後、図示されていない
希釈用容器に一旦移されて希釈液と混合された後、希釈
された赤血球成分がノズルチップによって再び吸引さ
れ、他の複数の容器24に所定量ずつ分注される。そし
て、血液型判定用の試薬(血漿成分用試薬、赤血球成分
用試薬)が、それぞれ容器22,24に加えられる。次
に、容器22,24は、凝集判定を行う装置に送られ、
光学的もしくは回視的に容器内試料の凝集測定が行わ
れ、その結果からA型,B型,O型,AB型あるいはR
h型等の判定が行われる。
【0004】図11には従来の分注装置における吸引部
の概略構成が示されている。ノズルチップ20には、エ
アホース102を介して吸引圧力及び吐出圧力を発生す
るポンプ104が接続されている。このポンプ104
は、シリンダ106と、ピストン108とから成り、ピ
ストン108を進退させることによって、シリンダ10
6の内部容積が変化し、その内部容積の変化がエアホー
ス102を介してノズルチップ20に吸引力あるいは吐
出力として伝達される。ここにおいて、吸引量(あるい
は吐出量)は、ピストン108の動作量によって決定さ
れる。
【0005】図12には、ポンプ104の動作開始から
の経過時間と、圧力センサ110によって検出される吸
引系の圧力との一般的な関係が示されている。
【0006】図示されるように、ポンプ動作時間内にお
いてピストン108を所定距離移動させた場合、その
後、血液試料の粘性に応じて圧力の下降特性が異なる。
すなわち、ポンプ104にて所定の吸引圧を発生させ、
所定量の血液試料の吸引を行う場合、液体試料の粘性が
大きくなるに従って、待ち時間が増大する。つまり、特
に赤血球成分は周知のように高粘性の液体(場合により
ゲル状の物質)であり、このためノズルチップ20によ
って吸引を行った場合、吸引量はピストン108の動作
量に迅速に追従せず、吸引開始から一定時間経過後に所
定量の吸引が行われるが、その一定時間、すなわち待ち
時間は粘性が大きくなればなるほど増大する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、所定量
の液体試料の吸引を行う場合には、その所定量に合わせ
てピストン108の動作量を決め、ノズルチップ20内
に血液試料が完全に入ることを圧力センサ110によっ
て監視していた。
【0008】従って、高粘性の赤血球成分の吸引を行う
場合には迅速な吸引が行えず、このため、分注装置にお
ける単位時間当たりの分注処理能力を向上させることが
できなかった。
【0009】例えば一例を挙げると、粘度が100cp
程度の液体は、ほぼ1cpである水に対して10倍程度
の待ち時間が必要となる。具体的には、100cp程度
の液体は、1回の分注に5〜10秒程かかることにな
る。従って、例えば自動分注装置のように大量の液体試
料の分注を行う装置においては、上記の場合、単位時間
当たりの分注処理能力が水に比べ1/10になってしま
う。
【0010】本発明は、上記従来の課題に鑑みなされた
ものであり、その目的は、液体試料の吸引を行う吸引装
置において、特に粘性の高い血液試料の吸引を行う際
に、その吸引時間をできるだけ短縮することのできる吸
引方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、液体試料の吸引を行うノズルチップと、
前記ノズルチップに接続されシリンダとピストンとから
成る吸引ポンプと、吸引系の圧力を監視する圧力センサ
と、を含み、前記ピストンの動作量で前記液体試料の吸
引量が設定される吸引装置において、前記液体試料の吸
引開始時に、前記ピストンの動作量を目標吸引量以上に
設定し、吸引系の圧力が一定圧力になった時点で前記ピ
ストンの動作量を目標吸引量に戻し、最終的に、液体試
料を目標吸引量だけ吸引することを特徴とする。
【0012】
【作用】以上のような構成によれば、まずピストンの動
作量が目標吸引量以上に設定され、その後、吸引系の圧
力が一定圧力になった時点で動作量が目標吸引量に戻さ
れるので、特に高粘性の液体を吸引する場合には、吸引
初期の吸引圧を高く設定でき、この結果、全体として吸
引時間を短縮させて、迅速な吸引が達成できる。すなわ
ち、ピストンの動作量が目標吸引量以上に設定されるの
で、そのままの状態を放置すると目標吸引量以上の液体
試料の吸引が行われてしまうが、実際の吸引量が目標吸
引量を超える手前でピストンを戻し、最終的に目標吸引
量だけ吸引するものである。
【0013】このことを図13を用いて説明する。図1
3には、吸引時における経過時間と吸引系の圧力との関
係が示されている。本発明によれば、ポンプ動作時間に
おいてピストンが目標吸引量以上に引かれることになる
ので、ポンプ動作時間が経過した時点の吸引力は従来に
比べ高められることになる。例えば、ポンプの有する最
大の吸引力が発生される。そして、吸引系の圧力が一定
圧力αになった時点で、ピストンが目標吸引量まで戻さ
れ、これによって吸引力が急激に減少することになる。
そして、最終的に、ノズルチップ内に目標吸引量の液体
試料が吸引される。
【0014】なお、図13においては各粘性の液体試料
に対してピストンの動作量を一定(最大)としたため、
ポンプ動作時間における圧力を示す特性曲線の傾きが液
体試料の粘性に応じて若干ながら相違している。図13
におけるt1,t2 ,t3 は、粘性の異なる各試料につ
いての吸引終了時間を示している。
【0015】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づい
て説明する。
【0016】図1には、本発明に係る液体の吸引方法を
適用した分注装置30の外観が示されており、図1はそ
の斜視図である。
【0017】この分注装置30は、本実施例において、
遠心分離後の血漿成分と赤血球成分とを分注するもので
あり、換言すれば、血液型判定のための前処理分注を行
うものである。
【0018】図中ほぼ中央に図示される血液試料の吸引
を行うノズル部32は、XYZロボット34によって保
持されており、ノズル部32は、3次元的に自在に移動
可能とされている。
【0019】図2には、ノズル部32の要部断面図が示
されており、ノズル部32は、ノズルベース35とノズ
ルチップを成すディスポーザブルチップ(以下、チップ
という)36とで構成されている。すなわち、本実施例
の分注装置においては、ノズルチップとしてディスポー
ザブルなものが用いられている。なお、このチップ36
の上部開口には、ノズルベース35の先端部が加圧挿入
され、このようにチップ36の上部開口にノズルベース
35の先端部が嵌合することによって、チップ36がノ
ズルベース35に確実に固定される。チップ36の下方
先端には、小孔36aが形成され、この小孔36aから
血液試料が吸引され、あるいは吐出されることになる。
なお、チップ36は例えば硬質プラスチック等で構成さ
れ、ノズルベース35は金属等で構成される。
【0020】図1において、前記XYZロボット34
は、X駆動部34xと、Y駆動部34yと、Z駆動部3
4zとで構成され、Z駆動部34zにはノズル部32を
備えたエレベータ部38が昇降自在に連結されている。
このエレベータ部38はジャミングセンサ等の機能をな
すリミットスイッチ40を有し、このリミットスイッチ
40は、ノズル部32に加えられる上方への一定以上の
外的作用力を検出する。Z駆動部34zには希釈液の吐
出を行う希釈液ピペット42が固定配置されている。ノ
ズル部32には、エアホース44の一端が接続され、エ
アホース44の他端は吸引・吐出ポンプの作用をなすシ
リンダ46に接続されている。また、希釈液ピペット4
2には、希釈液ホース48の一端が接続され、その他端
は電磁バルブ50を介してシリンダ52に接続されてい
る。
【0021】シリンダ46とノズル部32との間には、
エアホース44内の内圧を測定するための圧力センサ5
4が接続されている。なお、リミットスイッチ40から
の信号は信号ケーブル56を介して装置本体に送られて
いる。
【0022】分注台58に載置された試験管ラック60
には、遠心分離処理が行われた後の血液試料を入れた複
数の試験管62が起立保持されている。すなわち、この
試験管62には、図10で示したように、血漿成分と赤
血球成分とが上下分離している血液試料が入れられてい
る。また、分注台58上に設けられた水平台64には、
希釈容器66を複数備えた希釈トレイ68と、マイクロ
プレート70とが載置されている。ここで、マイクロプ
レート70には、分注される血漿成分又は希釈された赤
血球成分等を入れる容器であるウェルが複数形成されて
いる。すべての血液試料の分注後には、このマイクロプ
レート70が血液型判定のための装置へ移され、そこで
光学的に凝集判定等が行われる。なお、凝集判定は、目
視判定により行われる場合もある。
【0023】本実施例の分注装置は、ノズルチップがデ
ィスポーザブル、すなわち使い捨て型であるため、チッ
プ立て72には複数の新品のチップが用意され、順次新
しいチップに交換される。また、チップ廃棄トレイ74
が設けられている。
【0024】従って、以上の分注装置によれば、ノズル
部32のチップ36によって血漿成分あるいは赤血球成
分を吸引してそれらを他の容器に移すことが自在に行え
る。もちろん、この分注装置を血液試料の分注以外に用
いることも可能であり、種々の応用が可能である。
【0025】図3には、本実施例の分注装置の概略的な
構成がブロック図で示されている。ピストン76を進退
させることによりシリンダ46の内容積が可変し、これ
による吸引圧力あるいは吐出圧力は、エアホース44を
介してノズル部32のチップ36へ伝達され、血液試料
の吸引や吐出が行われる。エアホース44の内圧は圧力
センサ54によって検出され、そのセンサ信号はDCア
ンプ78にて増幅された後、リミッタ回路80を介して
A/D変換器82へ送られている。ここで、リミッタ回
路80は過大入力を抑制する保護回路である。A/D変
換器82は、センサ信号をデジタル信号に変換して、そ
れを制御部84に送出している。
【0026】制御部84は例えばコンピュータ等で構成
されるものであって、シリンダ46の内容積制御やXY
Zロボット34の制御等を行うものである。そして、本
実施例において制御部84は粘性測定部86及びテーブ
ル88を含んでいる。これらの粘性測定部86及びテー
ブル88については後に述べる。
【0027】次に、以上の分注装置において採用される
分注方法の具体的な実施例について説明する。
【0028】図4及び図5には血漿分注工程が示されて
おり、図4には血漿吸引工程が示され、図5には血漿吐
出工程が示されている。
【0029】図4において、ステップ101ではチップ
36が試験管62の上方から下降し、チップ36の先端
が血漿成分90の上面から所定距離L1入った位置で停
止する。ここで、L1としては例えば2〜3mmが好適で
ある。すなわち、あまり深くチップ36の先端を血漿成
分90内に挿入すると、せっかく遠心分離された2つの
成分が再び混り合う可能性が大きくなるからである。
【0030】上記のチップ36の下降においては、いわ
ゆる液面検出が行われている。この液面検出は、圧力セ
ンサ54によってホース44の内圧を監視することによ
り行われており、制御部84はホース44の内圧が急変
したときにチップ36の先端が液面に達したことを確認
している。
【0031】ステップ102においては、血漿成分90
の吸引が行われている。すなわち、ピストン76を引き
出し、シリンダ46の内容積を増大させ、これによって
チップ36内に血漿成分90を取り込む。なお、例えば
30μl〜300μl程度が吸引される。ここで後に詳
述するように、その吸引量の中には血漿コーティングで
用いられる血漿成分も含まれている。ちなみに、最終的
にチップ36の内面に付着して吐出されない血漿成分の
量を見込んで吸引量を決定することが望ましい。
【0032】ステップ103ではチップ36が引き上げ
られ、その先端が血漿成分90の上面を出る寸前でチッ
プ36の上昇が一時的に停止される。そして、例えば
0.25秒程度の時間の経過後、ステップ104にてチ
ップ36が再度上昇することになる。ここでステップ1
03の工程がある理由は、チップ36の外壁に付着した
血漿成分をできるだけ試験管62内に返すためであり、
これによって分注精度を向上させることができる。そし
て、ステップ104の次に、図5のステップ105が実
行される。
【0033】図5に示す血漿吐出工程において、ステッ
プ105ではマイクロプレート70の所定のウェル92
内へチップ36が降ろされ、その先端が底面からL2の
距離にある位置でチップ36が停止する。ここで、L2
としては例えば2mm程度が好適である。すなわち、あま
り上方で血漿成分の吐出を行うと、いわゆる玉になって
速やかにウェル92内へ血漿成分を移すことが困難とな
るからであり、また、チップ36の先端をウェル92の
底面に当ててしまうと血漿成分の吐出が極めて困難にな
るからである。すなわち液体の性質からいって、例えば
L2として上記2mm程度が好適といえる。
【0034】ステップ106では、チップ36内に存在
する血漿成分の一部(所定量)が吐出されている。
【0035】そして、ステップ107ではチップ36が
下降され、その先端がウェル92の底面に“コツン”と
軽く当たるようにする。その当たる状態は上述したリミ
ットスイッチ40によって監視することができる。ステ
ップ108では、チップ36が上方に引き上げられてい
る。すなわち、このステップ107及びステップ108
にていわゆるタッチオフの垂直方式が実行されており、
チップ36の内面に付着した血漿成分を速やかに吐出さ
せることができる。
【0036】そして、ステップ109ではチップ36が
上方に引き上げられ、他のウェルについて吐出工程(S
105〜S109)が繰り返され、最終的に図において
ステップ109で示されるように、チップ36内に所定
量の血漿成分が残留することになる。ここで、その所定
量は例えば15〜20μlであり、その血漿成分は後に
述べる血漿コーティングに用いられる。すなわち、この
図5に示した血漿吐出工程における最終段階(S10
9)は、コーティング準備工程に相当し、コーティング
用として少量の血漿成分が残されている。
【0037】次に、図6〜図9には赤血球分注工程が示
され、この赤血球分注工程は大別して4つの工程に分け
られる。すなわち、図6に示す血漿コーティング工程
と、図7に示す赤血球吸引工程と、図8に示す本発明に
係る希釈工程と、図9に示す赤血球希釈液吐出工程であ
る。
【0038】まず、図6を用いて血漿コーティング工程
について説明する。図5に示したステップ109の後、
図6に示すステップ200が実行される。すなわち、X
YZロボット34によって、ステップ102で血漿成分
が採取された試験管62の上方にチップ36が位置決め
される。具体的には、チップ36の先端が試験管62の
上部開口内部にやや入った状態で位置決めされる。すな
わち、コーティングを行っている際に他の血液試料へコ
ーティング用の血漿が飛散したりしてコンタミネーショ
ンが生ずるのを防ぐためである。これによって、分注装
置の信頼性を向上できる。なお、ステップ200におけ
るL3としては、例えば5mmである。
【0039】なお、本実施例の分注方法においては、血
漿分注工程と赤血球分注工程では、同一のチップ36で
連続して分注作業が行われているが、もちろんその2つ
の工程の間でチップ36を新しいものへ交換してもよ
い。その場合にはステップ200の前工程としてコーテ
ィング用の血漿成分の吸引を行う工程を設ける必要があ
る。
【0040】ステップ201ではチップ36内に存在す
るコーティング用血漿成分の再度の吸引(上昇)が行わ
れ、少なくとも後に吸引される赤血球成分が到達する位
置までそのコーティング用の血漿成分が吸引されること
になる。厳密には、後に希釈された赤血球成分、すなわ
ち赤血球希釈液が到達する範囲までコーティングが実行
される。
【0041】なお、ステップ202ではコーティング用
血漿成分の吐出(下降)が行われ、ステップ203で示
されるように、その血漿成分がチップ36の先端に到達
したときに吐出の停止を行う。
【0042】本実施例において、血漿コーティングはス
テップ201及びステップ202で示されるように1回
の血漿成分の上下動により行われているが、必要があれ
ば数回上下させることも可能である。しかしながら、1
回上下動させれば十分コーティングがなし得ることが確
認されている。
【0043】ステップ204では、チップ36が下降し
その先端が血漿成分90内に挿入した状態でチップ36
の下降が停止する。ここで、図においてL4としては2
〜3mmが好適である。そして、ステップ205ではコー
ティングで用いられた残余の血漿成分が試験管内に返還
されている。すなわち、本実施例では貴重な血液試料を
無駄なく利用するため、再び試験管内にコーティング用
血漿成分が戻されている。なお、本実施例では血漿コー
ティングを少量の血漿成分によって行ったが、もちろん
多量の血漿成分を用いてコーティングを実行させること
も可能である。しかしながら、多量の血漿成分を用いれ
ば、上述したステップ102において不必要に多量の血
漿成分の吸引が必要とされ、また、ステップ205にお
いて多量の血漿成分を返還する際に、血漿成分及び赤血
球成分の混濁等が危惧されることから、血漿コーティン
グを少量で行うことが望ましい。
【0044】ステップ205の後に図7に示すステップ
206が実行される。ステップ206ではチップ36を
更に下降させて先端を赤血球成分94内部に侵入させ
る。ちなみに、血液試料全体を100%として、血漿成
分90上面から75%程度のところにチップ36の先端
が位置することが望ましい。つまり、あまり深くチップ
36を侵入させると、チップ36の外壁に赤血球成分9
4が多く付着し、一方、浅すぎると確実に赤血球成分の
吸引を行うことが困難となるからである。
【0045】ステップ207では、赤血球成分94の吸
引が行われる。本実施例においては、例えば80μl吸
引される。
【0046】ところで、上述したように、赤血球成分9
4は高い粘性を有する液体、あるいはゲル状の物質であ
り、チップ36先端の小孔を介して吸引を行うのはかな
りの圧力と時間を要する。しかしながら、本実施例にお
いては以下の2つの手法を適用して、できるだけ迅速な
吸引を実現している。その第1の手法としては、図6に
示した血漿コーティングであり、チップ36の内壁をコ
ーティングすることによって、チップ内壁の摩擦抵抗を
極力低減させて、円滑な赤血球吸引を確保する。
【0047】また、他の1つは本発明に係る一時的過大
吸引による手法である。
【0048】すなわち、シリンダ内のピストンを最大限
引き、その後圧力センサ54によってエアチューブ44
の内圧を監視し、その内圧が所定圧力αになった時点で
ピストンを戻し、最終的にチップ36内に所望の量だけ
赤血球成分を残すようにしたものである。つまり、赤血
球成分のように高粘性の液体はピストンの動作量に迅速
に追従して吸引されないので、吸引初期に最大限の吸引
力を発揮させて、その後、所望の量が吸引される直前に
ピストンの動作量を本来の適正な動作量に戻し、これに
よって最終的にピストンの動作量で定まる所定の吸引量
を得るものである。従って、ステップ208において圧
力センサの検出値が大気圧とほぼ等しくなったときに、
吸引終了が確認される。厳密には、チップ36内に赤血
球成分が吸引されていることに起因して、チューブ44
内の圧力はやや大気圧よりも低くなる傾向にある。最終
的にステップ208において、チップ36内に例えば8
0μlの赤血球成分が吸引される。
【0049】なお、本実施例において、以上の吸引制御
は、図3に示した制御部84によって行われており、図
示されてはいないが制御部84には図13に示した一定
圧力αを記憶するメモリが内蔵されている。ここで、一
定圧力αはポンプの特性に応じて実験により求めること
ができる。ちなみに、本実施例においては、ポンプ動作
時間を経過した後の待ち時間を計測するタイマが設けら
れ、そのタイマの値が所定のリミット値を超えた場合に
はアラームが発生されるようになっており、例えばノズ
ル36の詰まり等が生じた場合に警告を発生させること
ができる。
【0050】本実施例においては、赤血球吸引に上述の
ような吸引制御を行ったが、血漿成分の吸引の際に以上
の吸引制御を適用しても好適である。
【0051】ステップ209では、チップ36がゆっく
り上方に引き上げられる。ここで、ゆっくり引き上げる
のは2つの成分の分離安定状態を維持するためであり、
不必要に乱流又は赤血球の舞い上げを巻き起こさないた
めである。そして、ステップ209で示されるように、
血漿成分90の上面付近で一時的にノズル36の上昇が
停止され、その後ステップ210において再度上方に引
き上げられる。
【0052】ステップ211では例えば10μl程度の
空気が吸引され、チップ36の先端にエアキャップ99
が施される。これは、ノズル36の先端の縁に付着した
赤血球成分を完全に内部に取り入れるとともに、チップ
36から赤血球成分が滴下することを防ぐためである。
【0053】ステップ211の後に、図8に示すステッ
プ212が実行される。このステップ212では、チッ
プ36は希釈容器66の上方に搬送され、希釈液ピペッ
ト42から希釈液が希釈容器66内に所定量注入され
る。そして、ステップ213ではノズル36が上方から
下降して、その先端が希釈液96内に入れられる。な
お、図においてL5としては、例えば2mm程度が好適で
ある。希釈液としては例えば生理食塩水が用いられる。
【0054】ステップ214では希釈液96がチップ3
6内に吸引される。従来においては、まず赤血球成分を
吐出することによって、赤血球成分と希釈液との混合・
希釈が行われていたが、本実施例においては、赤血球成
分が高粘性の液体であり、吐出が困難であることに鑑
み、まず初めに吸引しやすい希釈液を吸引して、その後
赤血球成分との段階的な混合を行っている。
【0055】ステップ215ではノズル内の混合液が希
釈容器66内へ吐出されている。この場合に、赤血球成
分はある程度希釈液によって希釈されているため、純粋
の赤血球成分のみを吐出する場合に比べ、ステップ21
5は極めて容易に混合液の吐出を行うことができる。そ
して、ステップ216では混合液である赤血球希釈液の
吸引が行われ、このステップ215及びステップ216
が本実施例においてはおよそ5回程度繰り返されてい
る。ただし、ステップ214からの一連の工程において
は、吸引あるいは吐出する対象物の粘性に合わせて最初
はゆっくり行われ、その後徐々に早く行われている。な
お、血漿コーティングが行われているため、ステップ2
14で希釈液の吸引を行うに際しては、コーティングを
行っていない場合に比べ、より円滑な吸引を行うことが
できる。
【0056】そして、ステップ217では、チップ36
の先端が液面付近に達したときに、チップ36の引き上
げが一旦中断されて、更に上方に引き上げられている。
【0057】次に、赤血球希釈液吐出工程について説明
する。
【0058】ステップ217の後、図9に示すステップ
218が実行される。すなわち、チップ36はXYZロ
ボットによってマイクロプレートの特定ウェル98まで
搬送され、ステップ218に示されるようにチップ36
の先端がウェル98内部空間に入った状態でチップ36
の下降が停止されている。なお、図においてL6として
は例えば3mm程度が好適である。なお、図示されてはい
ないが、ウェル98内には予め試薬が分注によって所定
量入れられている。
【0059】ステップ219では、ノズル36内の赤血
球希釈液を所定量吐出させ、ノズル36の先端で玉状に
なった赤血球希釈液をステップ220においてウェル9
8の内壁に付着させる。すなわち、ステップ220にお
いては水平方式のタッチオフが行われており、このよう
にノズル36の先端をウェル下部の試薬に直接触れさせ
ることなく赤血球希釈液の吐出を行うことによってコン
タミネーションを防止している。
【0060】そして、ステップ221ではチップ36が
上方に引き上げられて、次のウェルへ移動し、再びステ
ップ218からステップ221までの工程が繰り返され
る。ある特定の血液試料に対して上記血漿分注工程及び
赤血球分注工程が実行された後、本実施例においては、
ディスポーザブルチップ36が新しいものに交換され、
そして他の血液試料に対して上記同様の血漿分注工程及
び赤血球分注工程が実行される。
【0061】次に、図3に示した粘性測定部86につい
て説明する。赤血球成分の粘性は、疾病の診断等におい
て有益な情報であり、また、血液試料の分注を行うに際
して、吸引圧力を設定する場合の判断材料として有益な
情報である。従来の分注装置においては、粘性測定装置
が設けられておらず、血液試料等の粘性を測定しようと
する場合には、他の測定器で血液試料の粘性を測定して
いた。従って、粘性測定後の血液試料は廃棄が余儀なく
され、また、粘性測定に時間がかかり、煩雑であるとい
う面もあった。
【0062】そこで、本実施例の分注装置においては制
御部84に粘性測定部86が設けられており、分注と同
時進行で分注をしている液体の粘性を測定可能である。
【0063】ところで、粘性が互いに異なる各種の液体
に対して、初期吸引圧として一定圧力を発生させ、その
状態からある圧力になるまでの時間は密接な関係があ
り、シミュレーション等においてはほぼ比例関係にある
ことが確認されている。
【0064】そこで、ある初期吸引圧である液体を吸引
し始めてその圧力が徐々に大気圧まで復帰するのに際し
て、特定の設定圧力まで復帰するのに要する時間と、そ
の液体の粘性との関係を記述したものがテーブル88で
ある。
【0065】具体的に説明すると、チップ36によって
血液試料の吸引を行うに際して、上述したように圧力セ
ンサ54によってエアチューブ44の内圧が監視されて
おり、粘性測定部86はピストン76を引いて初期吸引
圧を与えてからチューブ44の内圧がある設定圧力にな
るまでの時間を計測し、更に粘性測定部86は、その計
測時間をテーブル88に対応させて血液試料の粘性を求
める。そして、求められた粘性は図示されていない表示
部に表示されるとともに、その結果が制御部84におい
てシリンダのコントロール等に供されている。
【0066】従って、このような粘性測定部86によれ
ば、血液試料の吸引と同時進行で粘性測定が行えるた
め、粘性測定のための特別な時間を必要とせずに、極め
て簡便に粘性の測定が実現でき、また粘性測定のために
特別に血液試料を用意する必要がないという利点があ
る。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
液体試料の吸引開始時に従来以上の高い吸引力を発生さ
せ、吸引系の圧力が一定圧力になった時点でピストンの
動作量を目標吸引量に戻し最終的に液体試料を目標吸引
量だけ吸引することができるので、特に高粘性の液体試
料を吸引する場合にその吸引を迅速に行うことができ、
例えば分注装置においては分注を迅速化させて分注処理
能力を向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体の吸引方法を適用した分注装
置の実施例を示す外観図である。
【図2】ノズル部32の要部断面を示す断面図である
【図3】図1に示した分注装置の概略的構成を示すブロ
ック図である。
【図4】血漿分注工程における血漿吸引工程を示す説明
図である。
【図5】血漿吸引工程における血漿吐出工程を示す説明
図である。
【図6】赤血球分注工程における血漿コーティング工程
を示す説明図である。
【図7】赤血球分注工程における赤血球吸引工程を示す
説明図である。
【図8】赤血球分注工程における希釈工程を示す説明図
である。
【図9】赤血球分注工程における赤血球希釈液吐出工程
を示す説明図である。
【図10】血液型判定に当たっての前処理としての血漿
・赤血球の分注を示す説明図である。
【図11】分注装置における吸引部の概略的構成を示す
模式図である。
【図12】各粘性の液体試料について吸引時の経過時間
と吸引系の圧力との一般的な関係を示す特性図である。
【図13】本発明に係る吸引方法を適用した場合におけ
る吸引時の経過時間と吸引系の圧力との関係を示す特性
図である。
【符号の説明】
30 分注装置 32 ノズル部 34 XYZロボット 35 ノズルベース 36 ディスポーザブルチップ 54 圧力センサ 84 制御部 86 粘性測定部 90 血漿成分 94 赤血球成分
フロントページの続き (72)発明者 加藤 有子 東京都三鷹市牟礼6丁目22番1号 アロカ 株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体試料の吸引を行うノズルチップと、前
    記ノズルチップに接続されシリンダとピストンとから成
    る吸引ポンプと、吸引系の圧力を監視する圧力センサ
    と、を含み、前記ピストンの動作量で前記液体試料の吸
    引量が設定される吸引装置において、 前記液体試料の吸引開始時に、前記ピストンの動作量を
    目標吸引量以上に設定し、吸引系の圧力が一定圧力にな
    った時点で前記ピストンの動作量を目標吸引量に戻し、
    最終的に、液体試料を目標吸引量だけ吸引することを特
    徴とする液体の吸引方法。
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