JPH0229517B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は熱記録シートに関するもので、さらに
詳しくは染料を含有した色材を塗布した基材を使
用し、該色材層と記録シートとを接触せしめ、サ
ーマルヘツド等による加熱により色材を記録シー
トに転移させる昇華転写型の熱記録方式における
記録シートに関するものである。 一般に熱記録方式としては、加熱により物理的
又は化学的変化を起して発色する記録層を設けた
感熱記録紙にサーマルヘツドを接触させ、この感
熱記録紙に所要の発色記録を得る方式が普及して
いる。しかし、この記録方式は使用する感熱記録
紙が保存時や取扱時の不可避の圧力や熱などによ
つて発色汚染が起り易く、又製造コストが高いと
いう欠点があつた。 従つて、上記の熱記録方式に代るものとして例
えば特開昭51−15446号公報に記載されている如
く、常温では固体又は半固体状の色材を紙、樹脂
フイルム等の基材上に塗布しておき、該基材上の
色材と記録シートとを接触せしめ、サーマルヘツ
ドにより前記基材上の色材を加熱して選択的に前
記記録シートに転移させて記録を行なう方式が提
案されている。この記録方式に於て基材に塗布し
た色材が記録シートへ転移するのは、色材又は色
材を含有するバインダーが熱によつて熔融、蒸
発、又は昇華し、これに伴つて記録シートへの粘
着、染着等が起るためである。ここで使用する色
材は一般の染料、顔料をワツクス類等のバインダ
ーに分散したもので、普通の状態では記録シート
と接触しても色材の転移が起らないが、例えば60
〜300℃の加熱により始めて色材の転移が起るも
のである。この種の色材に用いる染料としては、
例えば昇華温度が60℃〜300℃の昇華性染料、即
ちニトロ系、アゾ系、キノリン系、アントラキノ
ン系等の分散染料が好適である。従つて、この記
録方式は記録シートとして普通紙を使用できる点
を特徴としている。 しかしながら、普通紙を使用した場合、特に染
料の昇華による染着を利用した所謂昇華型転写の
場合には記録の色濃度が低く、又経時的な退色現
象も著しいためにこの記録方式に適合する記録シ
ートの開発が要望されている。 本発明者らは叙上の如き欠点のない記録シート
を開発するために研究を重ねた結果、飽和ポリエ
ステルとポリビニルピロリドンと顔料を含む塗布
層を設けることによつて、極めて鮮明で且つ日光
堅牢性の良好な記録が得られることを見出し、本
発明を完成するに至つた。 本発明で使用する飽和ポリエステルはその代表
的なものとしてテレフタル酸とエチレングリコー
ルの重縮合で得られるポリエチレンテレフタレー
ト（PET、融点260℃）が知られており、この他
にもポリブチレンテレフタレート（PBT、融点
224℃）、ポリ１，４−シクロヘキサンジメチレン
テレフタレート（PCHT、融点290℃）、ポリエ
チレンイソフタレート（融点107℃）等がある。
これらのフタル酸系ポリエステルは通常たいてい
の溶剤には溶解しないが、最近、粒状で通常の溶
剤に可溶なものや水分散状のものが飽和ポリエス
テル系バインダーとして開発されている。本発明
では塗工用バインダーとしてこれらの飽和ポリエ
ステルを溶剤溶液の形で使用しても良いが、水分
散系のものを使用するのか取扱いも容易で望まし
い。 一方、ポリビニルピロリドンは水溶解性の極め
て良好な高分子であつて、透明な皮膜を形成し、
医薬品、化粧品、接着剤、繊維仕上剤への応用が
知られている。 本発明の熱記録シートは、前記の飽和ポリエス
テルの水分散状のもの又は溶剤溶液と、ポリビニ
ルピロリドンとを混合し、さらに炭酸カルシウム
等の一般顔料を混合して塗料を調製し、支持体に
７〜15ｇ／m²塗工して製造する。尚、顔料は予め
一方の液中に混合しておいてもよい。 熱記録シートは、顔料を使用せずに飽和ポリエ
ステルとポリビニルピロリドンとの混合物だけの
塗工によつても得られるが、このシートの場合に
は、熱記録直後に色材を塗布した基材との間に粘
着を起こし易く、両者の剥離を困難にする傾向が
ある。剥離を解消する手段として、顔料の添加は
極めて有効である。従つて、多用途向けとしては
剥離を容易にするために顔料を添加することが望
ましい。顔料としては重質又は軽質炭酸カルシウ
ム、タルク、カオリン、天然又は合成珪酸塩、水
酸化アルミニウム、酸化亜鉛又は酸化チタン等の
一般顔料を適宜使用することができるが、このう
ち炭酸カルシウムは極めて良好な色濃度と剥離効
果が得られる。顔料の混合割合は、飽和ポリエス
テルとポリビニルピロリドンとの混合物100重量
部に対し、50〜900重量部とするのが適当である。
また飽和ポリエステルとポリビニルピロリドンと
の混合物の色濃度向上効果は顕著であり、さらに
飽和ポリエステルは実施例で後述するように記録
物の退色防止作用が抜群であるが、目的によつて
は変性澱粉、スチレンブタジエン共重合体ラテツ
クス（SBRラテツクス）、アクリル重合体ラテツ
クス、ポリビニルアルコール又はその誘導体、カ
ゼイン等通常の紙塗工用に用いられる他のバイン
ダーを併用することも可能である。 尚、飽和ポリエステルとポリビニルピロリドン
とを併用する場合、飽和ポリエステル100重量部
に対しポリビニルピロリドン１〜100重量部を配
合すると、色濃度及び堅牢性が最も優れた熱記録
シートが得られる。 本発明に係る熱記録シートの支持体としては、
上質紙等の普通紙、即ちNBKP、NBSP、
LBKP、LBSP等の晒化学パルプに、必要に応じ
てGP、TMP等の機械パルプ、CGP等の半機械
パルプ、澱粉、ポリアクリルアミド樹脂およびこ
れらの誘導体、メラミンホルムアルデヒド樹脂、
尿素ホルムアルデヒド樹脂等の紙力増強剤、強化
ロジン、合成ポリマー系又はアルキルケテンダイ
マー等のサイズ剤及び硫酸バンドその他の定着
剤、タルク、クレー、重質又は軽質炭酸カルシウ
ム、水酸化アルミニウム、天然又は合成珪酸塩、
酸化チタン等の無機填料、又は粉末状の尿素ホル
ムアルデヒド樹脂等の有機填料を添加して普通に
抄造したもの、或いは更に酸化澱粉、その他の紙
力増強剤を外添したもの等が使用できる。この
他、用途によつては樹脂フイルムを支持体とする
ことも可能である。 以下、本発明を実施例に従つて詳細に説明す
る。 実施例 １ 飽和ポリエステルの水分散液（東洋紡製バイロ
ナールMD−1200）40％液とポリビニルピロリド
ン40％水溶液とを重量比50：50で混合し、その固
型分30重量部の液に、重質炭酸カルシウム（丸尾
カルシウム製スーパー1500）のスラリー70重量部
（固型分）を混合して、塗料調製した。この塗料
をステキヒトサイズ度12秒、米坪66ｇ／m²、厚さ
97μｍの上質紙上に、塗布量が10〜14ｇ／m²にな
るように塗布して熱記録シートを得た。 比較のために、前記飽和ポリエステルとポリビ
ニルピロリドンの混合液に代えて、飽和ポリエス
テルの40％水分散液単独、及びポリビニルピロリ
ドンの40％水溶液単独、並びに酸化澱粉、スチレ
ンブタジエン共重合体ラテツクス（SBRラテツ
クス）、ポリビニルアルコール（PVA）の５〜20
％水溶液又は、水分散液を使用してて、熱記録シ
ートを得た。 一方、昇華性分散染料としてデイスパースブル
ー24（商品名Duranol Blue 2G、インペリアル・
ケミカル・インダストリー社製）、デイスパース
イエロー42（商品名Resolin Yellow GRL、バイ
エル社製）およびデイスパースレツド−１（商品
名Celliton Scarlet Ｂ、BASF社製）を使用し
て、それぞれにつき染料10重量部、ポリビニルブ
チラール３重量部、イソプロピルアルコール45重
量部の割合で３本ロールミルにより練り合わせ
て、青、黄、および赤の昇華性熱転写用インキを
調製した。さらにこれらのインキを米坪30ｇ／m²
の薄葉紙にグラビア印刷して作つた転写用基紙を
使用して、この基紙の印刷面と上記熱記録シート
の塗布面とを接触させ、転写用基紙の裏面から
300℃にセツトした３cm×３cmのサーマルプレー
トを５秒間押し付け熱記録シートに熱転写した。
この様にして熱記録シートに熱転写された青、
黄、赤の記録面の反射濃度を転写24時間後にマク
ベス濃度計により測定した。さらに記録物の経時
変化を見る目的で、フエードメーターを使用して
カーボンアーク光を10時間照射した後の記録物の
色濃度も測定した。前者を「24時間後」、後者を
「F.照射後」として、表１に併せて示した。この
照射条件は東京近辺のおよそ20日間の屋外暴露条
件に相当する。なお反射濃度は青はビジユアル
（ラツテン＃106）、黄はブルー（ラツテン＃47）、
赤はグリーン（ラツテン＃58）の各フイルターを
使用した数値である。

【表】

【表】 表１から、本発明例の熱記録シートは高い反射
濃度が得られると共に、退色し難い特性を持つこ
とが分る。飽和ポリエステル単独の場合と比較し
ても、通常の使用状態に相当する24時間後の濃度
において、視覚的に差が認識され易い青と赤で優
つており、また苛酷な状態であるF.照射後でも優
つている。尚、塗布層を設けない原紙についても
同様に熱転写試験をしたが、低い反射濃度しか得
られなかつた。 実施例 ２ 飽和ポリエステルペレツト（東洋紡製バイロン
200）のメチルエチルケトン20％溶液とポリビニ
ルピロリドンのメチルエチルケトン20％溶液とを
重量比50：50で混合した。この混合溶液に対し、
メチルエチルケトンに分散した重質炭酸カルシウ
ム（丸尾カルシウム製スーパー1500）を各種配合
比で混合し、実施例１と同様にして熱記録シート
を得た。これらの熱記録シートを使用して、実施
例１と同様にして熱転写した記録面の転写24時間
後の反射濃度を表２に示す。

【表】 この表２から明らかなように、塗料中の顔料の
添加量を多くするに従つて記録面の反射濃度は僅
かに低下する傾向にあるが、何れも良好な結果を
示している。又、炭酸カルシウムの添加量を多く
すると、転写後の熱記録シートと転写用基紙との
剥離作業が容易になる傾向が認められた。 実施例 ３ 飽和ポリエステルの水分散液（東洋紡製バイロ
ナールMD−1200）40％液とポリビニルピロリド
ン40％水溶液を表３のように配合した混合バイン
ダー液に、それぞれ重質炭酸カルシウム（丸尾カ
ルシウム製スーパー1500）のスラリー70重量部
（固型分）を混合し、実施例１と同様にして熱記
録シートを得た。これらの熱記録シートを使用し
て実施例１と同様に熱転写した記録面の、転写24
時間後およびフエードメーターのカーボンアーク
光10時間照射後の反射濃度を表３に示す。

【表】 表３において、ポリエステルにポリビニルピロ
リドンを併用した熱記録シートはいずれも優れた
反射濃度を示している。特に、ポリビニルピロリ
ドンの配合比率をポリエステルに対し同重量部以
下とすることで、最も望ましい品質の熱記録シー
トが得られる。 実施例 ４ 飽和ポリエステルペレツト（東洋紡製バイロン
200）をトルエンとメチルエチルケトンの４対１
混合溶媒中に分散し得た20％溶液とポリビニルピ
ロリドンの同じ混合溶媒の20％溶液との混合溶液
50重量部（固型分）に対して、カオリン、水酸化
アルミニウムまたは酸化亜鉛を上記と同じ混合溶
媒に分散して得た20％溶液50重量部（固型分）を
混合して塗料を調製し、実施例１と同様にして熱
記録シートを得た。一方、比較のために、顔料成
分を全く含まない塗料を使用した熱記録シートを
造つた。これらの熱記録シートを使用して、実施
例１と同様にして熱転写し、転写直後の熱記録シ
ートと転写用基紙との剥離具合を試験した結果を
表４に示す。

【表】

【表】 評価方法 優；熱融着することな
く、きれいに剥離する。
良；若干熱融着するが
、きれいに剥離する。
不良；熱融着が生じて
、剥離し難い。
表４から、顔料添加による剥離効果は明らかで
ある。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 基材上に設けられた染料を含有する色材層と
   接触して、加熱により選択的に該色材の転移を受
   ける昇華転写型の熱記録シートにおいて、色材受
   理面に飽和ポリエステルとポリビニルピロリドン
   と顔料とを含む塗布層を設けたことを特徴とする
   熱記録シート。 ２ 飽和ポリエステル100重量部に対しポリビニ
   ルピロリドン１〜100重量部を配合することを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載の熱記録シー
   ト。