JP6833520B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方式では、色材を含む液体組成物(インク)を紙等の記録媒体上に直接または間接的に付与することで画像を形成している。この時、記録媒体がインク中の液体成分を過剰に吸収することによるカールや、コックリングが生じることがある。
そこで、インク中の液体成分を速やかに除去するため、記録媒体を温風や赤外線等の手段を用いて乾燥する方法や、転写体上で画像を形成し、その後転写体上の画像に含まれる液体成分を熱エネルギー等により乾燥した後、紙等の記録媒体に画像を転写する方法がある。
さらに、転写体上の画像に含まれる液体成分を除去する手段として、熱エネルギーを用いずに、ローラ状の多孔質体をインク画像と接触させてインク画像から液体成分を吸収して除去する方法が提案されている(特許文献1及び2)。また、ベルト状の高分子吸収体をインク画像と接触させてインク画像から液体成分を吸収して除去する方法が提案されている(特許文献3)。
特開2009−45851号公報 特開2005−161610号公報 特開2001−179959号公報
しかしながら、特許文献1から3に記載の方法では、多孔質体等を転写体上のインク画像に接触させて、該インク画像から液体成分を吸収し、除去する際に、多孔質体等への色材付着や、インク中の液体、色材、色材以外の固形分等の一部が画像後端側に押し流される、いわゆる「画像流れ」が発生しやすくなる。したがって、本発明の目的は、色材付着及び画像流れを抑制できるインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明に係るインクジェット記録装置は、被記録体上に、第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成ユニットと、前記第一の画像と接触し、前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する多孔質体を有する液吸収部材と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記多孔質体の、前記第一の画像と接触する第一面の平均孔径が0.6μm以下であり、前記多孔質体の前記第一面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.9μm以下であり、前記多孔質体の、前記第一面の裏面である第二面の平均孔径が、前記第一面の平均孔径より大きく、前記多孔質体のJIS P8117で規定されるガーレー値が10秒以下であることを特徴とする。
また、本発明に係るインクジェット記録装置は、被記録体上に、第一の液体と色材とを含むインクを付与して第一の画像を形成する画像形成ユニットと、前記第一の画像と接触して前記第一の画像を構成するインクを濃縮する多孔質体を有する液吸収部材と、を備えるインクジェット記録装置であって、前記多孔質体の、前記第一の画像と接触する第一面の平均孔径が0.6μm以下であり、前記多孔質体の前記第一面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.9μm以下であり、前記多孔質体の、前記第一面の裏面である第二面の平均孔径が、前記第一面の平均孔径より大きく、前記多孔質体のJIS P8117で規定されるガーレー値が10秒以下であることを特徴とする。
本発明によれば、色材付着及び画像流れを抑制できるインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明の一実施形態における転写型インクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明の一実施形態における直接描画型インクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図である。 図1、2に示すインクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図である。 図1に示す転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。 図2に示す直接描画型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。 本発明の一実施形態における多孔質体の一例を示す断面図である。 本発明の一実施形態における多孔質体の他の一例を示す断面図である。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録装置は、被記録体上に、第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成ユニットと、前記第一の画像と接触し、前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する多孔質体を有する液吸収部材とを備える。多孔質体を有する液吸収部材を被記録体上の第一の液体と色材とを含む第一の画像と接触させることで、第一の画像から第一の液体の少なくとも一部が除去される。この結果、紙などの記録媒体が第一の画像中の第一の液体を過剰に吸収することによるカールや、コックリングが抑制される。第一の液体を全て吸収する必要はない。
本発明のインクジェット記録装置では、前記多孔質体の、前記第一の画像と接触する第一面の平均孔径は0.6μm以下である。また、前記多孔質体の前記第一面のJIS B0601:2001で規定される算術平均粗さRaは1.9μm以下である。また、前記多孔質体の、前記第一面の裏面である第二面の平均孔径は、前記第一面の平均孔径より大きい。また、前記多孔質体のJIS P8117で規定されるガーレー値は10秒以下である。本発明では、これらの要件を満たすことにより、多孔質体の第一面の変形及び孔径が小さく、かつ、流抵抗が低い構成となるため、第一の液体を十分に吸収、除去することができ、色材付着及び画像流れを抑制できると推測される。
本発明のインクジェット記録装置において、画像形成ユニットとしては、被記録体上に第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。好ましくは、1)前記第一の液体または第二の液体と、インク高粘度化成分とを含む第一の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置と、2)前記第一の液体または第二の液体と、前記色材とを含む第二の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置と、を含み、前記第一及び第二の液体組成物の混合物として前記第一の画像を形成するものである。
通常、前記第二の液体組成物は、色材を含有するインクであり、前記第二の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置は、インクジェット記録デバイスである。また、第一の液体組成物は、第二の液体組成物と化学的または物理的に作用して、前記第一及び第二の液体組成物の混合物を前記第一及び第二の液体組成物のそれぞれよりも粘稠とする成分(インク高粘度化成分)を含む。なお、被記録体に第一の液体組成物を付与する工程と、被記録体に第二の液体組成物を付与する工程の順序は特に限定されないが、画像の高画質化の観点から、画像形成工程は、被記録体に第一の液体組成物を付与する工程と、被記録体に第二の液体組成物を付与する工程と、をこの順に有することが好ましい。すなわち、画像形成工程は、被記録体に第一の液体組成物を付与する工程と、被記録体に、該第一の液体組成物を付与した領域と少なくとも一部が重なるように該第二の液体組成物を付与する工程とを、この順に有することが好ましい。そのため、被記録体に第一の液体組成物を付与する装置、及び、被記録体に第二の液体組成物を付与する装置は、被記録体に第一の液体組成物を付与し、該第一の液体組成物を付与した領域と少なくとも一部が重なるように該第二の液体組成物を付与することができるよう配置されていることが好ましい。
前記第一及び第二の液体組成物の少なくとも一方は、前記第一の液体を含む。ここで、第一の液体としては、常温(室温)での揮発性の低い液体を含み、特に水を含む。第二の液体は、第一の液体以外の液体であり、揮発性の高低は問わないが、第一の液体よりも揮発性の高い液体であることが好ましい。以下、第一の液体組成物を「反応液」、第一の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置を「反応液付与装置」と称す。また、第二の液体組成物を「インク」、第二の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置を「インク付与装置」と呼ぶ。また、第一の画像とは、液吸収部材による液吸収処理に供される前の液除去前インク像のことを言う。液吸収処理を行って第一の液体の含有量が低減された液除去後インク像のことを第二の画像と称する。また、以降の説明においては、液吸収部材に用いられる多孔質体への前処理として、湿潤液によって多孔質体を予め湿らせておく処理を説明する。
<反応液付与装置>
反応液付与装置は、反応液を被記録体上に付与できるいかなる装置であってもよく、従来知られている各種装置を適宜用いる事ができる。具体的には、グラビアオフセットローラ、インクジェットヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。反応液付与装置による反応液の付与は、被記録体上でインクと混合(反応)することができれば、インクの付与前に行っても、インクの付与後に行ってもよい。好ましくは、インクの付与前に反応液を付与する。反応液をインクの付与前に付与することによって、インクジェット方式による画像記録時に、隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディングや、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングを抑制することもできる。
<反応液>
反応液は、インクを高粘度化する成分(インク高粘度化成分)を含有する。ここで、インクの高粘度化とは、インクを構成している成分である色材や樹脂等がインク高粘度化成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインク粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク粘度の上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂などのインクを構成する成分の一部が凝集する事により局所的に粘度の上昇を生じる場合も含まれる。このインク高粘度化成分は被記録体上でのインク及び/又はインクを構成している成分の一部の流動性を低下せしめて、第一の画像形成時のブリーディングや、ビーディングを抑制する効果がある。本発明において、インクを高粘度化することを“インクを粘稠する”とも称する。このようなインク高粘度化成分として、多価の金属イオン、有機酸、カチオンポリマー、多孔質性微粒子などの公知のものを用いることができる。中でも、特に多価の金属イオン及び有機酸が好適である。また、複数の種類のインク高粘度化成分を含有させることも好適である。尚、反応液中のインク高粘度化成分の含有量は、反応液全質量に対して5質量%以上であることが好ましい。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+及びAl3+等の三価の金属イオンが挙げられる。
また有機酸としては、例えば、シュウ酸、ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸等が挙げられる。
反応液は第一の液体として水や低揮発性の有機溶剤を適量含有することができる。この場合に用いる水はイオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また本発明に適用される反応液に用いることのできる有機溶剤としては特に限定されず、公知の有機溶剤を用いることができる。
また、反応液は界面活性剤や粘度調整剤を加えてその表面張力や粘度を適宜調整して用いることができる。用いられる材料としてはインク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限は無い。具体的に用いられる界面活性剤としては、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル株式会社製商品名)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(「メガファックF444」、DIC株式会社製商品名)等が挙げられる。
<インク付与装置>
インクを付与するインク付与装置として、インクジェットヘッドを用いる。インクジェットヘッドとしては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、静電気を利用してインクを吐出する形態等が挙げられる。本発明では、公知のインクジェットヘッドを用いることができる。中でも特に高速で高密度の印刷の観点からは電気−熱変換体を利用したものが好適に用いられる。描画は画像信号を受け、各位置に必要なインク量を付与する。
インク付与量は画像濃度(duty)やインク厚みで表現することができるが、本発明では各インクドットの質量に付与個数を掛け、印字面積で割った平均値をインク付与量(g/m)とした。尚、画像領域における最大インク付与量とは、インク中の液体成分を除去する観点より、被記録体の情報として用いられる領域内において、少なくとも5mm以上の面積において付与されているインク付与量を示す。
本発明のインクジェット記録装置は、被記録体上に各色のインクを付与するために、インクジェットヘッドを複数有していてもよい。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを用いてそれぞれの色画像を形成する場合、インクジェット記録装置は上記4種類のインクを被記録体上にそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッドを有する。
また、インク付与装置は、色材を含有しないインク(クリアインク)を吐出するインクジェットヘッドを含んでいてもよい。
<インク>
本発明に適用されるインクの各成分について説明する。
(色材)
本発明に適用されるインクに含有される色材は、顔料を含むことが好ましい。例えば、色材として、顔料、または染料と顔料との混合物を用いることが好ましい。色材として用いることができる顔料の種類は特に限定されない。顔料の具体例としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イミダゾロン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系などの有機顔料を挙げることができる。これらの顔料は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
色材として用いることができる染料の種類は特に限定されない。染料の具体例としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、食用染料などを挙げることができ、アニオン性基を有する染料を用いることができる。染料骨格の具体例としては、アゾ骨格、トリフェニルメタン骨格、フタロシアニン骨格、アザフタロシアニン骨格、キサンテン骨格、アントラピリドン骨格などが挙げられる。
インク中の顔料の含有量は、インク全質量に対し0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
(分散剤)
顔料を分散させる分散剤としては、インクジェット用インクに用いられる公知の分散剤を使用することができる。中でも本発明の態様においては構造中に親水性部と疎水性部とを併せ持つ水溶性の分散剤を用いることが好ましい。特に、少なくとも親水性のモノマーと疎水性のモノマーとを含んで共重合させた樹脂からなる顔料分散剤が好ましく用いられる。ここで用いられる各モノマーについては特に制限はなく、公知のものが好適に用いられる。具体的には、疎水性モノマーとしては、スチレン及びその他のスチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
該分散剤の酸価は50mgKOH/g以上550mgKOH/g以下であることが好ましい。また、該分散剤の重量平均分子量は1000以上50000以下であることが好ましい。尚、顔料と分散剤との質量比(顔料:分散剤)としては1:0.1〜1:3の範囲であることが好ましい。
また分散剤を用いず、顔料自体を表面改質して分散可能としたいわゆる自己分散顔料を用いることも本発明において好適である。
(樹脂微粒子)
本発明に適用されるインクは、色材を有しない各種微粒子を含有させて用いることができる。中でも樹脂微粒子は画像品位や定着性の向上に効果がある場合があり好適である。
本発明に用いることのできる樹脂微粒子の材質としては、特に限定されず公知の樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリジエン等の単独重合物、または、これらの単独重合物を生成するためのモノマーを複数組み合わせて重合した共重合物が挙げられる。該樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上2,000,000以下の範囲が好適である。またインク中における樹脂微粒子の量は、インク全質量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上40質量%以下である。
さらに本発明の態様においては、該樹脂微粒子が液中に分散した樹脂微粒子分散体として用いることが好ましい。分散の手法については特に限定はないが、解離性基を有するモノマーを単独重合もしくは複数種共重合させた樹脂を用いて分散させたいわゆる自己分散型樹脂微粒子分散体は好適である。ここで解離性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしてはアクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。また、乳化剤により樹脂微粒子を分散させたいわゆる乳化分散型樹脂微粒子分散体も、同様に本発明に好適に用いることができる。ここで言う乳化剤としては、低分子量、高分子量に関わらず公知の界面活性剤が好ましい。該界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤か、もしくは樹脂微粒子と同じ電荷を持つ界面活性剤が好ましい。
本発明の態様に用いる樹脂微粒子分散体は、10nm以上1000nm以下の分散粒径を有することが好ましく、50nm以上500nm以下の分散粒径を有することがより好ましく、100nm以上500nm以下の分散粒径を有することが更に好ましい。
また本発明の態様に用いる樹脂微粒子分散体を作製する際に、安定化のために各種添加剤を加えておくことも好ましい。該添加剤としては、例えば、n−ヘキサデカン、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、クロロベンゼン、ドデシルメルカプタン、青色染料(ブルーイング剤)、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
(硬化成分)
本発明では、反応液またはインクのいずれかに活性エネルギー線で硬化する成分を含有することが好ましい。活性エネルギー線で硬化する成分を液吸収工程前に硬化させることで、液吸収部材への色材付着が抑制される場合がある。
本発明に用いる活性エネルギー線の照射により硬化する成分としては、活性エネルギー線の照射により硬化し照射前より不溶性となる成分を用いる。例としては一般的な紫外線硬化樹脂を用いることが出来る。紫外線硬化性樹脂は水に溶けないものが多いが、本発明に好適に用いられる水系インクに適応出来る材料としては、その構造に紫外線で硬化可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも有し、且つ親水性の結合基を持つことが好ましい。親水性をもつための結合基としては例えば、水酸基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基およびこれらの塩、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。また、本発明に用いられる該硬化する成分は親水性のものが好ましい。
また、活性エネルギー線としては、紫外線、赤外線、電子線などが挙げられる。
さらに、本発明では反応液またはインクのいずれかに重合開始剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる重合開始剤は、活性エネルギー線によってラジカルを生成する化合物であればいずれのものでもよい。
さらに、反応速度を向上させるために光の吸収波長を広げる役割を有する増感材を併用することも極めて好ましい形態の一つである。
(界面活性剤)
本発明に用いることのできるインクは界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、具体的には、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(アセチレノ−ルE100、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。インク中の界面活性剤の量は、インク全質量に対して0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
(水及び水溶性有機溶剤)
本発明に用いるインクは溶剤として水及び/または水溶性有機溶剤を含むことができる。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、インク中の水の含有量は、インク全質量に対して30質量%以上97質量%以下であることが好ましく、インク全質量に対して50質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
また用いる水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。具体的には、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、エタノール、メタノール、等が挙げられる。もちろん、これらの中から選択した2種類以上のものを混合して用いることも出来る。
また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量に対して3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
(その他添加剤)
本発明に用いることのできるインクは上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂及びその中和剤、粘度調整剤など種々の添加剤を含有してもよい。
<液吸収部材>
本発明では、第一の画像から第一の液体の少なくとも一部を、多孔質体を有する液吸収部材と接触させることで吸収し、第一の画像中の液体成分の含有量を減少させる。液吸収部材の第一の画像との接触面を第一面とし、第一面に多孔質体が配置される。このような多孔質体を有する液吸収部材は、被記録体の移動に連動して移動し、第一の画像と当接した後、所定の周期で循環したのちに、別の第一の画像に再当接し液吸収することが可能な形状を有するものが好ましい。例えば、無端ベルト状やドラム状などの形状が挙げられる。
(多孔質体)
本発明者等は、多孔質体が以下の(i)から(iv)の要件を満たすことにより、色材付着及び画像流れを抑制できることを見出した。
(i)多孔質体の第一面の平均孔径が0.6μm以下である。
(ii)多孔質体の第一面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.9μm以下である。
(iii)多孔質体の第二面の平均孔径が第一面の平均孔径より大きい。
(iv)多孔質体のJIS P8117で規定されるガーレー値が10秒以下である。
多孔質体が前記(i)から(iv)の要件を満たすことにより、色材付着及び画像流れを抑制できるメカニズムの詳細は判明していないが、例えば以下のメカニズムが推測される。反応液によりインク中の色材、及びその他の固形分等が凝集することにより、見掛け上の固形分の大きさが大きくなることで、色材付着が抑制されると推測される。ここで、多孔質体の第一面への色材付着を抑制するためには、第一の画像の凝集物が崩れない程度に多孔質体を接触させることが求められる。このとき、多孔質体の第一面の変形は小さいほど好ましく、また、多孔質体の第一面の孔径は小さいほど好ましいと考えられる。本発明では、上述した要件を満たすことにより、多孔質体の第一面の変形及び孔径が小さい状態で、流抵抗が低い構成となるため、第一の液体を十分に吸収、除去でき、色材付着及び画像流れを抑制できると推測される。
前記多孔質体の、前記第一の画像と接触する第一面(以下、「多孔質体の表面」とも称す)の平均孔径は0.6μm以下であり、0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下がより好ましい。該平均孔径が0.6μm以下であることにより、濾過性が高くなり、多孔質体への色材付着が抑制される。該平均孔径の下限は特に限定されないが、例えば0.02μm以上とすることができる。尚、本発明において「平均孔径」とは、電子顕微鏡で観察し、孔部分の面積を円の面積とした場合の直径を算出し、これを20点以上計測した平均値である。
前記多孔質体の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは1.9μm以下であり、1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.4μm以下であることがさらに好ましい。該Raが1.9μm以下であることにより、多孔質体が第一の画像に接触する際に、圧力ムラがより少なくなり、色材付着量を低減できる。該Raの下限は特に限定されないが、例えば0.3μm以上とすることができる。
なお、多孔質体や多孔質体を構成する各層の表面形状(算術平均粗さRa)の測定は、ピンホール等による共焦点光学系を用いたレーザー顕微鏡(例えば波長405nm程度の半導体レーザー)を用いて、観察測定範囲における反射をZ軸方向にスキャンしたデータを合成することで行うことができる。算術平均粗さRaは、具体的には以下の方法により測定する。VK9710 レーザー顕微鏡(商品名、キーエンス製)を用いて、対物レンズ50倍(CF IC EPI PLAN Apo 50Xニコン製)で表面から深さ200μmまでのデータをRPDモードで取得する。得られたデータをノイズフィルター(メディアン)処理し、カットオフλcを0.08μmとして、表面粗さを基準線長さ200μmで算出する。
前記多孔質体の、前記第一面の裏面である第二面、すなわち前記第一面とは反対側の面(以下、「多孔質体の裏面」または「第一面と対向する第二面」とも称す)の平均孔径は、前記多孔質体の表面の平均孔径より大きい。多孔質体の表面の平均孔径が0.6μm以下であることにより、濾過性が高くなり、多孔質体への色材付着が抑制されるが、流抵抗の増加により画像流れが発生しやすくなる。しかし、多孔質体の裏面(多孔質体の第二面)の平均孔径を表面(多孔質体の第一面)の平均孔径より大きくすることで、流抵抗を低下できるため、画像流れを抑制できる。尚、前記多孔質体の裏面の平均孔径は、4μm以上40μm以下であることが好ましく、6μm以上36μm以下であることがより好ましい。
多孔質体のガーレー値は、JIS P8117で規定されるガーレー試験機により測定される。本発明における多孔質体のガーレー値は、10秒以下であり、7秒以下であることが好ましく、5秒以下であることがより好ましく、3秒以下であることがさらに好ましい。ガーレー値が10秒以下であることにより、流抵抗が低くなるため、接触時間内において十分に第一の液体を吸収、除去でき、画像流れを抑制できると推測される。該ガーレー値の下限は特に限定されないが、例えば1秒以上とすることができる。ガーレー値は低い値であるほど通気性が高いことを意味する。ガーレー値は、例えば後述する第一の層を形成する際に、該第一の層を多孔質体として形成する前の厚みそのものを薄くすることで、低い値とすることができる。
(第一の層と第二の層とを有する形態)
本発明において、多孔質体の一つの形態としては、第一の画像と接触する第一の層と第二の層とを有する。このとき、第一の層が薄い場合であって、第一の層がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のような多孔質フッ素樹脂で形成される場合、該第一の層に積層される第二の層の局部山頂の平均間隔により、色材付着および画像流れが発生しやすくなることが分かった。具体的には、該局部山頂の平均間隔が大きいと、第一の層が変形しやすいため色材付着が発生しやすい。一方、該局部山頂の平均間隔が小さいと、通気性が低くなるため画像流れが発生しやすくなる。
そこで、本発明者らが、第一の層の耐水圧および厚さ、第二の層の局部山頂の平均間隔に関して検討を重ねた結果、以下の(a)から(c)の要件を満たすことにより、変形の抑制効果と通気性とを両立させることができることを見出した。これにより、色材付着及び画像流れをより抑制することができる。
(a)第一の層の、第一の画像と接触する第一面(以下、「第一の層の表面」とも称す)の平均孔径が0.6μm以下である。
(b)第一の層の厚さが35μm以下である。
(c)第二の層の、前記第一の層側の第一面(以下、「第二の層の表面」とも称す)における、JIS B 0601:1994で規定される局部山頂の平均間隔が、3μm以上40μm以下である。
尚、前記多孔質体は、後述するように、支持層として第三の層を有することが好ましく、図6に示されるように、第一の層110と第二の層111と第三の層112とをこの順に有することがより好ましい。また、第三の層の上に、更に別の層を有していてもよい。また、本発明の効果が得られるのであれば、各層間に別の層を有していてもよい。本発明において、第一の層と第二の層とは直接接することが好ましい。また、以下、第一の層の表面と対向する第一の層の面、すなわち第一の層の表面と反対側の面を「第一の層の裏面」、とも称す。また、本発明において第一の画像と接触する面(多孔質体の第一面(表面))は第一の層の表面113であり、第一の層の表面と対向する第二面(多孔質体の第二面(裏面))とは、第三の層112を有する場合、第三の層の裏面114を示す。また、第二の層の表面と対向する第二の層の面、すなわち第二の層の表面と反対側の面を「第二の層の裏面」、とも称す。本発明において、図7に示されるように、第一の層110と第二の層111からなる構成の場合、第一の画像と接触する面は第一の層の表面113であり、第一の層の表面と対向する第二面とは、第二の層の裏面115を示す。なお、本発明において、多孔質体は、多数の孔を有する材料であればよく、例えば、繊維同士が交差することによって形成される孔を多数有する材料も本発明における多孔質体に含まれる。
(第一の層)
前記第一の層はフッ素樹脂を含むことが好ましく、フッ素樹脂からなることがより好ましい。フッ素樹脂は、表面自由エネルギーが低く、クリーニング性が高い。フッ素樹脂としては、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。また、フッ素樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アルミニウムなどの金属、アルミナなどの金属酸化物、これらの複合材料なども用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。アルミナなどの金属酸化物を用いる場合は、遊離砥粒を用いて研磨することにより、表面粗さを低下させることができる。
前記第一の層の表面の平均孔径は0.6μm以下であり、0.5μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがより好ましい。該平均孔径が0.6μm以下であることにより、濾過性が高く、多孔質体への色材付着が抑制される。該平均孔径の下限は特に限定されないが、例えば0.02μm以上とすることができる。
前記第一の層の厚さは35μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。前記第一の層の表面の平均孔径は0.6μm以下であっても、該厚さが35μm以下であることにより、流抵抗の増加を抑制でき、画像流れを抑制できる。該厚さは1μm以上が好ましい。なお、該厚さは、直進式のマイクロメーター(商品名:OMV_25、ミツトヨ製)で任意の10点の厚さを測定し、その平均値を算出することで得られる値である。
(第二の層)
前記第二の層の表面における、JIS B 0031:1994で規定される局部山頂の平均間隔は、3μm以上40μm以下であることが好ましい。前記局部山頂の平均間隔は、5μm以上35μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることがさらに好ましく、15μm以上25μm以下であることが特に好ましい。該局部山頂の平均間隔が3μm以上であることにより、第一の層が変形しにくいため色材付着が発生しにくくなると考えられる。また、該局部山頂の平均間隔が40μm以下であることにより、通気性が十分高くなるため画像流れを抑制しやすくなると推測される。
なお、該局部山頂の平均間隔は以下の方法で測定する。キーエンス社製レーザー顕微鏡VK9710(商品名)を用いて、対物レンズ50倍(CF IC EPI PLAN Apo 50X(商品名)、ニコン製)で表面から深さ200μmまでのデータをRPDモードで取得する。得られたデータをノイズフィルター(メディアン)処理し、カットオフλcを0.08μmとして、断面プロファイルから局部山頂の平均間隔を基準線長さ200μmで算出する。なお、JIS B 0031:1994で規定される局部山頂の平均間隔ではなく、ISO4287:1997で規定されるmean width of the profile elements RSmで代用することも可能である。
前記第二の層の表面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaは、10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましく、4μm以下であることがさらに好ましい。該Raが10μm以下であることにより、第一の層が変形しにくいため色材付着が発生しにくくなると考えられる。
前記第二の層の材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、フッ素樹脂、これらの複合材料などを用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記第二の層は、(1)第一の繊維と第二の繊維とを含有すること、又は、(2)第一の材料及び第二の材料を含む繊維を含有することが好ましい。各々の場合について以下に説明する。尚、本発明において「軟化点」とは、融点を有する繊維の場合は融点を、融点を有さず、ガラス転移点を有する繊維の場合はガラス転移点を、それぞれ指すものとする。また、繊維の平均繊維径は、繊維表面を走査型電子顕微鏡で観察し、任意の10点以上の繊維の太さを測定し、その平均値を算出することで得られる値である。
(1)第二の層が第一の繊維と第二の繊維とを含有する場合
第一の繊維の平均繊維径は、0.1μm以上15.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。第一の繊維の平均繊維径が0.1μm以上であることにより、通気性が十分高くなるため画像流れを抑制しやすくなると推測される。第一の繊維の平均繊維径が15.0μm以下であることにより、表面のRaが低くなり、第一の層が変形しにくいため色材付着が発生しにくくなると考えられる。
第二の繊維の平均繊維径は、0.1μm以上15.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上10.0μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。第二の繊維の平均繊維径が0.1μm以上であることにより、通気性が十分高くなるため画像流れを抑制しやすくなると推測される。第二の繊維の平均繊維径が15.0μm以下であることにより、表面のRaが低くなり、第一の層が変形しにくいため色材付着が発生しにくくなると考えられる。
また、第一の繊維と第二の繊維の平均繊維径及び/又は軟化点が異なることが好ましい。具体的には、第一の繊維及び第二の繊維が、下記条件(1)及び下記条件(2)の少なくとも一方を満足することが好ましく、下記条件(1)及び下記条件(2)の両方ともを満足することがより好ましい。
条件(1):前記第一の繊維の平均繊維径が、前記第二の繊維の平均繊維径に対して1.2倍以上50.0倍以下である。
条件(2):前記第一の繊維の軟化点と、前記第二の繊維の軟化点との差の絶対値が10℃以上である。
前記条件(1)において、前記第一の繊維の平均繊維径は、前記第二の繊維の平均繊維径に対して1.2倍以上50.0倍以下であり、5.0倍以上40.0倍以下であることが好ましく、10.0倍以上30.0倍以下であることがより好ましい。前記第一の繊維の平均繊維径が、前記第二の繊維の平均繊維径に対して1.2倍以上50.0倍以下であることにより、繊維同士が部分的に溶着する面積が規定され、流抵抗の増加抑制と、密着強度向上との両立が可能になると推測される。
前記条件(2)では、具体的には以下の式を満たす。|(第一の繊維の軟化点)−(第二の繊維の軟化点)|≧10℃。前記条件(2)において、前記第一の繊維の軟化点と前記第二の繊維の軟化点との差の絶対値は10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。前記第一の繊維の軟化点と前記第二の繊維の軟化点との差の絶対値が10℃以上であることにより、繊維同士が部分的に溶融する面積が限定され、流抵抗の増加抑制と、密着強度向上との両立が可能になると推測される。尚、前記第一の繊維の軟化点と前記第二の繊維の軟化点との差の絶対値の上限は特に限定されないが、例えば200℃以下とすることができる。
また、第二の層に含まれる、第一の繊維と第二の繊維との質量比率(第一の繊維:第二の繊維)は、20:80〜80:20であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましく、40:60〜60:40であることがさらに好ましい。該質量比率が20:80〜80:20の範囲内であることにより、第二の層の強度向上と密着強度向上との両立が可能になると推測される。
第一の繊維の材料としては、例えばポリエチレン、共重合ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。第二の繊維の材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
(2)第二の層が第一の材料及び第二の材料を含む繊維を含有する場合
第二の層が第一の材料及び第二の材料を含む繊維を含有する場合、第一の材料と第二の材料とは繊維内において混合されていてもよいし、芯構造と鞘構造とから構成される芯鞘構造を形成していてもよい。
前記繊維の平均繊維径は、0.1μm以上15.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。前記繊維の平均繊維径が0.1μm以上であることにより、通気性が十分高くなるため画像流れを抑制しやすくなると推測される。前記繊維の平均繊維径が15.0μm以下であることにより、表面のRaが低くなり、第一の層が変形しにくいため色材付着が発生しにくくなると考えられる。
また、前記第一の材料の軟化点と、前記第二の材料の軟化点との差の絶対値は10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。前記第一の材料の軟化点と、前記第二の材料の軟化点との差の絶対値が10℃以上であることにより、材料同士が部分的に溶融する面積が限定され、流抵抗の増加抑制と、密着強度向上との両立が可能になると推測される。尚、前記第一の材料の軟化点と、前記第二の材料の軟化点との差の絶対値の上限は特に限定されないが、例えば200℃以下とすることができる。
また、第二の層に含まれる、第一の材料と第二の材料との質量比率(第一の材料:第二の材料)は、20:80〜80:20であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましく、40:60〜60:40であることがさらに好ましい。該質量比率が20:80〜80:20の範囲内であることにより、第二の層の強度向上と密着強度向上との両立が可能になると推測される。
これらの条件を満足することで、第一の層と第二の層との接着点が小さくなり、接着点同士の間隔も狭くなるため、通気性と層間の密着強度を共に向上することができる、と本発明者らは考えている。
第一の材料としては、例えばポリエチレン、共重合ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。第二の材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。
(多孔質体の少なくとも一部の領域で厚さ方向に平均孔径が変化している形態)
本発明において、多孔質体の他の形態としては、多孔質体の少なくとも一部の領域において、厚さ方向に平均孔径が変化している(厚さ方向に平均粒径が傾斜していると呼ぶこともある)。すなわち、多孔質体の少なくとも一部の領域において、厚み方向に対して垂直の平面における平均孔径が、多孔質体の表面から裏面へ向けて大きくなっている。係る構成によって本発明の効果が得られるメカニズムは判明していないが、本発明者らは、多孔質体の表面の平均孔径、平滑性と通気性が維持されつつ、剛性が増し、変形が抑えられると考えている。また、多孔質体の表面の平均孔径が0.6μm以下であることにより、濾過性が高く、多孔質体への色材付着が抑制されるが、流抵抗の増加により画像流れが発生する場合がある。前述したように、該画像流れの発生は、多孔質体の裏面の平均孔径を表面の平均孔径より大きくすることで抑制できるが、厚さ方向に平均孔径が変化していることで、より画像流れを抑制できる。
本形態において、多孔質体の材料は前記第一の層の材料と同様であることができる。また、多孔質層の少なくとも一部の領域において、厚さ方向に材料濃度が変化していることが好ましい。すなわち、複数の材料を含む多孔質層の少なくとも一部の領域において、多孔質体の表面から裏面へ向けて、各材料の濃度が変化していることが好ましい。例えば材料の異なる2種類の繊維で多孔質層が形成される場合、それぞれの繊維が交絡し、厚さ方向に材料の体積濃度が変化した領域が存在することが好ましい。繊維の交絡により、密着強度が向上し、繰り返し画像に多孔質体が接触した場合においても、安定的に色材付着を抑制することが可能となる。
本発明では、上述した二つの形態どちらにおいても、多孔質体のJIS L 1913:2010で規定される引張試験における単位幅あたりの塑性変形開始荷重が200N/m以上であることが好ましい。該塑性変形開始荷重は300N/m以上であることがより好ましく、400N/m以上であることがさらに好ましい。該塑性変形開始荷重が200N/m以上であることにより、搬送時に十分な張力を印加でき、ローラでのスリップ等を防止できる。また、該塑性変形開始荷重は4,000N/m以下であることが好ましく、3,000N/m以下であることがより好ましく、2,000N/m以下であることがさらに好ましい。該塑性変形開始荷重が4,000N/m以下であることにより、曲げ剛性が一定以下となり、ローラへの十分な追従が可能となる。
なお、該塑性変形開始荷重は、引張試験機AKG−kNX(島津製作所製)を用いて測定する。その際、測定する試料のサイズを25mm±0.5mm×150mmとし、つかみ間隔を50mm±0.5mm、引張速度を20±0.02mm/minとする。塑性変形が開始した時の荷重を試験片幅で除した値が単位幅あたりの塑性変形開始荷重である。
(第三の層)
また、上述した二つの形態どちらにおいても、多孔質体は支持層として、さらに第三の層を有することが好ましい。多孔質体がさらに支持層としての第三の層を有することにより、搬送時に十分な強度を有することが可能となり、ローラでのスリップ等を防止できる。第三の層は第一の画像と接触する側とは反対側に積層されることができる。第三の層は通気性を有することが好ましい。具体的には、不織布、織布、メッシュ(網状ネット)等が挙げられる。これらの中でも、強度、柔軟性及び作業性の観点から、不織布が好ましい。
第三の層の材料としては、特に限定されないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、ポリスルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、フッ素樹脂、アルミニウムなどの金属、アルミナなどの金属酸化物、これらの複合材料などを用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また、第三の層が、芯鞘構造である繊維を含有することが、該繊維が部分的に溶融する面積が限定され、流抵抗の増加抑制と、密着強度向上との両立が可能になる観点から好ましい。
また、多孔質体の多孔質層(例えば第一の層及び第二の層)と接する第三の層の表面は平滑であることが好ましい。また、第三の層と接着する多孔質層の裏面の平均孔径に対し、第三の層の表面の平均孔径は同程度かそれよりも大きいことが好ましい。
多孔質層と第三の層とを熱ラミネーションする観点から、多孔質層の裏面を構成する材料種の中で最も低い軟化点を有する材料種と、第三の層を構成する材料種の中で最も低い軟化点を有する材料種との軟化点の差の絶対値は10℃以上であることが好ましい。また、第三の層が繊維で構成される場合、該繊維は、繊維の芯よりも鞘の軟化点が低い芯鞘構造を有することが好ましい。
(多孔質体の製造方法)
前記多孔質体を製造する方法は、特に限定されないが、多孔質体が第一の層と第二の層とを有する場合、第一の層を作製する工程と、第二の層を作製する工程と、各層(第一の層と第二の層)を積層化する工程とを有する方法が好ましい。
第一の層として、PTFEを含む多孔質体を作製する方法について、以下に例を挙げて説明する。PTFEファインパウダーに潤滑剤を加えて均一に混合する。PTFEファインパウダーとしては、例えば、ポリフルオンF−104(商品名、ダイキン工業製)、フルオンCD−123(商品名、旭硝子製)などが挙げられる。潤滑剤としては、例えばミネラルスピリッツ、ナフサなどが挙げられる。潤滑処理したPTFEファインパウダーをシリンダ内で圧縮してペレットを形成し、未焼成状態でラム押し出し機から押し出してシート状に成形し、対になったロールにより適当な厚さ、例えば0.05〜0.7mmに圧延する。圧延されたシートに含まれる潤滑剤は、加熱により除去され、PTFEシートが得られる。次に、該PTFEシートを、加熱しながらPTFEシートの長手方向(圧延方向)に延伸し、その後、加熱しながらPTFEシートの幅方向に延伸する。PTFEペーストの加熱と延伸処理の方法で様々な孔径、空隙率、厚みの多孔質体が形成できる。
なお、延伸の際に、PTFEの融点より低い加熱温度で1軸以上の方向に比較的高速度で延伸すると、PTFEの多孔質体はきわめて小さい繊維により相互に連結された1μmより大きな大寸法の結節部を含む繊維構造を有するようになる。また、その空隙率は40〜97%と高く、高強度となる。また、成形体を半焼成状態にした後に延伸する方法や、PTFEの融点(327℃)以上の温度に加熱焼成した後、又は融点以上に加熱焼成しながら延伸する方法も挙げられる。
また、第一の層として、エレクトロスピニング(ES)法などで得られたフッ素樹脂繊維を熱圧などで膜化したものを用いてもよい。エレクトロスピニング(ES)法を用いた多孔質層を作製する方法について、以下に詳細に例を挙げて説明する。エレクトロスピニング法による紡糸方法では、ノズル等の樹脂溶液供給部から紡糸空間へ供給した樹脂溶液に対して電界を作用させることにより、樹脂溶液を延伸し、繊維化し、アースされたコレクター上で捕集する。
前記樹脂溶液は、エレクトロスピニング可能な樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。樹脂は特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、ポリイミドベンザゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリウレタン、セルロース化合物、ポリペプチド、ポリヌクレオシド、たんぱく質、酵素などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
前記樹脂の重量平均分子量は、1万〜100万が好ましく、10万〜50万がより好ましい。該重量平均分子量が1万以上であることにより、ビーズ状になりにくい。また、該重量平均分子量が100万以下であることにより、樹脂溶液が延伸されやすく、繊維状になりやすい。
前記樹脂溶液に含まれる溶媒は、前記樹脂を溶解させることができるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、水、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトフェノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。これら溶媒は単独で、または混合して使用することができる。
前記樹脂溶液中の前記樹脂の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。該濃度が1質量%以上であることにより、溶媒の蒸発が速くなる。また、該濃度が50質量%以下であることにより、樹脂の溶解性が向上するとともに繊維が延伸されやすくなり、繊維状になりやすい。
エレクトロスピニング法による紡糸において、例えば、電圧、温度、湿度、ノズル径、ノズルとコレクターと間の距離等を変化させることで、繊維径を変えることができる。また、繊維径を変えることで、多孔質層の平均孔径を厚さ方向に変化させることができる。また、例えば2種類以上の樹脂溶液を用いて、ノズルを複数用意し、それぞれの樹脂溶液の供給量の比率を変化させることで、多孔質層中での繊維の体積比率、すなわち材料濃度を変化させることができる。以上により、様々な平均孔径、材料濃度を有する多孔質体を形成できる。
また、エレクトロスピニング法以外にも、エレクトロスプレー法、フォーススピニングなどで得られた多孔質層を用いてもよい。また、相分離法などで得られる厚さ方向に異なった平均孔径を有する多孔質層を用いてもよい。また、不織布等と相分離膜とを複合したものを用いてもよい。
第二の層として、不織布を用いる場合、その作製方法としては、例えば乾式法、湿式法、スパンボンド法、ES法などによりフリースを形成した後、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法などで繊維間を接合する方法が挙げられる。
第一の層と第二の層とを積層する方法としては、重ね合わせるだけでもよく、接着剤ラミネートまたは熱ラミネートなどの方法を用いて互いに接着してもよい。通気性の観点から、熱ラミネートが好ましい。例えば、加熱により、第一の層または第二の層の一部を溶融させて、第一の層と第二の層とを接着して積層させてもよい。また、ホットメルトパウダーのような融着材を、第一の層と第二の層との間に介在させて、加熱により互いに接着させて積層してもよい。
第三の層を更に積層させる場合には、第一の層及び第二の層と共に積層させてもよいし、順次積層させてもよく、積層順に関しては適宜選択することができる。
次に本発明のインクジェット記録装置の具体的な実施形態例について説明する。
本発明のインクジェット記録装置としては、被記録体としての転写体上に第一の画像を形成し、液吸収部材によって第一の液体が吸収された後の画像である第二の画像を記録媒体へ転写するインクジェット記録装置と、被記録体としての記録媒体上に第一の画像を形成するインクジェット記録装置とが挙げられる。なお、本発明において、前者のインクジェット記録装置を、以下便宜的に転写型インクジェット記録装置と称し、後者のインクジェット記録装置を、以下便宜的に直接描画型インクジェット記録装置と称する。
以下にそれぞれのインクジェット記録装置について説明する。
<転写型インクジェット記録装置>
図1は、本実施形態の転写型インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す模式図である。転写型インクジェット記録装置100は、第一の画像と、前記第一の画像から第一の液体の少なくとも一部を吸収した第二の画像とを一時的に保持する転写体101を備えている。また、転写型インクジェット記録装置100は、前記第二の画像を、画像を形成すべき記録媒体108上に転写する転写用の押圧部材106を備えた転写ユニットを含む。
本発明の転写型インクジェット記録装置100は、支持部材102によって支持された転写体101と、転写体101上に反応液を付与する反応液付与装置103と、反応液が付与された転写体101上にインクを付与し転写体上にインク像(第一の画像)を形成するインク付与装置104と、転写体上の第一の画像から液体成分を吸収する液吸収装置105と、記録媒体を押圧することによって液体成分が除去された転写体上の第二の画像を紙などの記録媒体108上に転写する押圧部材106と、を有する。また、転写型インクジェット記録装置100は、第二の画像を記録媒体108に転写した後の転写体101の表面をクリーニングする転写体クリーニング部材109を有していてもよい。
支持部材102の回転軸102aを中心として図1の矢印Aの方向に回転する。この支持部材102の回転により、転写体101が移動される。移動される転写体101上には、反応液付与装置103による反応液、および、インク付与装置104によるインクが順次付与され、転写体101上に第一の画像が形成される。転写体101上に形成された第一の画像は、転写体101の移動により、液吸収装置105が有する液吸収部材105aと接触する位置まで移動される。液吸収装置105の液吸収部材105aは、転写体101の回転に同期して移動する。転写体101上に形成された第一の画像はこの移動する液吸収部材105aと接触した状態を経る。この間に液吸収部材105aは第一の画像から液体成分を除去する。
なお、この液吸収部材105aと接触した状態を経ることで、第一の画像に含まれる液体成分が除かれる。この接触した状態において、液吸収部材105aは、所定の押圧力をもって第一の画像に押圧されることが、液吸収部材105aを効果的に機能させる点で好ましい。液体成分の除去を異なる視点で説明すれば、転写体上に形成された第一の画像を構成するインクを濃縮するとも表現することができる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
そして、液体成分が除去された後の第二の画像は、転写体101の移動により、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108と接触する転写部に移動される。液体成分が除去された後の第二の画像が記録媒体108と接触している間に、押圧部材106が記録媒体108を押圧することによって、記録媒体108上にインク像が転写される。記録媒体108上に転写された転写後のインク像は第二の画像の反転画像である。以降の説明では、上述した第一の画像(液除去前インク像)、第二の画像(液除去後インク像)とは別に、この転写後インク像を第三の画像ということがある。
なお、転写体上には反応液が付与されてからインクが付与されて第一の画像が形成されるため、非画像領域(非インク像形成領域)には反応液がインクと反応することなく残っている。本装置では液吸収部材105aは第一の画像からのみならず、未反応の反応液とも接触(圧接)し、反応液の液体成分も併せて転写体101の表面上から除去している。したがって、以上では、第一の画像から液体成分を除去すると表現し説明しているが、第一の画像のみから液体成分を除去するという限定的な意味合いではなく、少なくとも転写体上の第一の画像から液体成分を除去していればよいという意味合いで用いている。例えば、第一の画像とともに第一の画像の外側領域に付与された反応液中の液体成分を除去することも可能である。
なお、液体成分は、一定の形を持たず、流動性を有し、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる。また、上述したクリアインクが第一の画像に含まれている場合においても、液吸収処理によるインクの濃縮を行うことができる。例えば、転写体101上に付与された色材を含有するカラーインクの上にクリアインクが付与されると、第一の画像の表面には全面的にクリアインクが存在している、或いは、第一の画像の表面の一箇所または複数箇所にクリアインクが部分的に存在し、他の箇所にはカラーインクが存在する。
第一の画像において、カラーインク上にクリアインクが存在している箇所では、多孔質体が第一の画像の表面のクリアインクの液体成分を吸収し、クリアインクの液体成分が移動する。それに伴ってカラーインク中の液体成分が多孔質体側へ移動することで、カラーインク中の水性液体成分が吸収される。一方、第一の画像の表面にクリアインクの領域とカラーインクの領域が存在している箇所では、カラーインク及びクリアインクのそれぞれの液体成分が多孔質体側へ移動することで液体成分が吸収される。なお、このクリアインクには、転写体101から記録媒体108への画像の転写性を向上させるための成分を多く含ませておいてもよい。例えばカラーインクよりも加熱により記録媒体への粘着性が高くなる成分の含有率を高くしておくことが挙げられる。
本実施形態の転写型インクジェット記録装置の各構成について以下に説明する。
(転写体)
転写体101は、画像形成面を含む表面層を有する。表面層の部材としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。反応液の濡れ性、転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
また転写体は、圧力変動を吸収する機能を有する圧縮層を有することが好ましい。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速印刷時においても良好な転写性を維持することができる。圧縮層の部材としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。上記ゴム材料の成形時に、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し多孔質としたものが好ましい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがある。本発明ではいずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
さらに転写体は、表面層と圧縮層との間に弾性層を有することが好ましい。弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料が好ましく用いられる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で好ましい。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも好ましい。
転写体を構成する各層(表面層、弾性層、圧縮層)の間に、これらを固定・保持するために各種接着剤や両面テープを用いてもよい。また、装置に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を設けてもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
転写体の大きさは、目的の印刷画像サイズに合わせて自由に選択することができる。転写体の形状としては、特に制限されず、具体的にはシート形状、ローラ形状、ベルト形状、無端ウェブ形状等が挙げられる。
(支持部材)
転写体101は、支持部材102上に支持されている。転写体の支持方法として、各種接着剤や両面テープを用いてもよい。または、転写体に金属、セラミック、樹脂等を材質とした設置用部材を取り付けることで、設置用部材を用いて転写体を支持部材102上に支持してもよい。
支持部材102は、その搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。支持部材の材質には金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いるのも好ましい。
(反応液付与装置)
本実施形態のインクジェット記録装置は、転写体101に反応液を付与する反応液付与装置103を有する。図1の反応液付与装置103は、反応液を収容する反応液収容部103aと、反応液収容部103aにある反応液を転写体101上に付与する反応液付与部材103b、103cを有するグラビアオフセットローラの場合を示している。
(インク付与装置)
本実施形態のインクジェット記録装置は、反応液を付与された転写体101にインクを付与するインク付与装置104を有する。反応液とインクとが混合されることで第一の画像が形成され、次の液吸収装置105にて第一の画像から液体成分が吸収される。
(液吸収装置)
本実施形態において、液吸収装置105は、液吸収部材105a、および、液吸収部材105aを転写体101上の第一の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材105bを有する。なお、液吸収部材105aおよび押圧部材105bの形状については特に制限がない。例えば、図1に示すように、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aがベルト形状であって、円柱形状の押圧部材105bでベルト形状の液吸収部材105aを転写体101に押し当てる構成であってもよい。また、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aが円柱形状の押圧部材105bの周面上に形成された円筒形状であって、円柱形状の押圧部材105bで円筒形状の液吸収部材105aを転写体に押し当てる構成であってもよい。
本発明において、インクジェット記録装置内でのスペース等を考慮すると、液吸収部材105aはベルト形状であることが好ましい。
また、このようなベルト形状の液吸収部材105aを有する液吸収装置105は、液吸収部材105aを張架する張架部材を有していてもよい。図1において、105c、105d、105eは張架部材としての張架ローラである。図1において、押圧部材105bも張架ローラと同様に回転するローラ部材としているが、これに限定されるものではない。
液吸収装置105では、多孔質体を有する液吸収部材105aを押圧部材105bによって第一の画像に押圧させることで、第一の画像に含まれる液体成分を液吸収部材105aに吸収させ、第一の画像から液体成分を減少させた第二の画像とする。第一の画像中の液体成分を減少させる方法として、液吸収部材を押圧する本方式に加え、その他従来用いられている各種手法、例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法等を組み合わせても良い。また、液体成分を減少させた第二の画像にこれらの方法を適用してさらに液体成分を減少させてもよい。
以下、液吸収装置105における、各種条件と構成について詳細に述べる。
(前処理)
本実施形態において、多孔質体を有する液吸収部材105aを第一の画像に接触させる前に、液吸収部材に湿潤液を付与する前処理手段(図1および2では不図示)によって前処理を施すことが好ましい。本発明に用いる湿潤液は、水及び水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、エタノールやイソプロピルアルコール等の公知の有機溶剤をいずれも用いる事ができる。本発明に用いる液吸収部材の前処理において、多孔質体への湿潤液の付与方法は特に限定されないが、浸漬や液滴滴下が好ましい。また、この湿潤液の表面張力を調整する成分としては特に制限は無いが、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の少なくとも1種を用いることが好ましく、フッ素系界面活性剤を用いることがより好ましい。また、湿潤液中の界面活性剤の含有量は、湿潤液全質量に対して0.2質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。また、湿潤液中の界面活性剤の含有量の上限は特に限定されないが、界面活性剤の湿潤液中における溶解性の観点から、湿潤液全質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
(加圧条件)
転写体上の第一の画像に対して押圧する液吸収部材の圧力が2.9N/cm(0.3kgf/cm)以上であれば、第一の画像中の液体成分をより短時間に固液分離でき、第一の画像中から液体成分を除去できるため好ましい。また、該圧力が98N/cm(10kgf/cm)以下であれば、装置への構造上の負荷が抑制できるため好ましい。尚、本明細書における液吸収部材の圧力とは、被記録体と液吸収部材との間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器(新田株式会社製 I−SCAN)にて面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割り、値を算出したものである。
(作用時間)
第一の画像に液吸収部材105aを接触させる作用時間は、第一の画像中の色材が液吸収部材へ付着することをより抑制するために、50ms(ミリ秒)以内であることが好ましい。尚、本明細書における作用時間とは、上述した面圧測定における、被記録体の移動方向における圧力感知幅を、被記録体の移動速度で割って算出される。以降、この作用時間を液吸収ニップ時間と称す。
このようにして、転写体101上には、第一の画像から液体成分が吸収され、液体分の減少した第二の画像が形成される。第二の画像は次に転写部において記録媒体108上に転写される。転写時の装置構成及び条件について説明する。
(転写用の押圧部材)
本実施形態では、第二の画像と記録媒体搬送手段107によって搬送される記録媒体108とが接触している間に、転写用の押圧部材106が記録媒体108を押圧することによって、記録媒体108上にインク像が転写される。転写体101上の第一の画像に含まれる液体成分を除去した後に、記録媒体108へ転写することにより、カールや、コックリング等を抑制した記録画像を得ることが可能となる。
押圧部材106は記録媒体108の搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。押圧部材106の材質には金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いてもよい。
転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が押圧する時間については特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにするために、5ms(ミリ秒)以上100ms(ミリ秒)以下であることが好ましい。尚、本実施形態における押圧する時間とは、記録媒体108と転写体101間が接触している時間を示しており、面圧分布測定器(新田株式会社製 I−SCAN)にて面圧測定を行い、加圧領域の搬送方向長さを搬送速度で割り、値を算出したものである。
また、転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が押圧する圧力についても特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにする。このために、圧力が9.8N/cm(1kg/cm)以上294.2N/cm(30kg/cm)以下であることが好ましい。尚、本実施形態における圧力とは、記録媒体108と転写体101間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器により面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割って、値を算出したものである。
転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が押圧しているときの温度についても特に制限はないが、インクに含まれる樹脂成分のガラス転移点以上又は軟化点以上であることが好ましい。また、加熱には転写体101上の第二の画像、転写体101及び記録媒体108を加熱する加熱手段を備える態様が好ましい。
転写手段106の形状については特に制限されないが、例えばローラ形状のものが挙げられる。
(記録媒体および記録媒体搬送手段)
本実施形態において、記録媒体108は特に限定されず、公知の記録媒体をいずれも用いることができる。記録媒体としては、ロール状に巻回された長尺物、あるいは所定の寸法に裁断された枚葉のものが挙げられる。材質としては、紙、プラスチックフィルム、木板、段ボール、金属フィルムなどが挙げられる。
また、図1において、記録媒体108を搬送するための記録媒体搬送手段107は、記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって構成されているが、記録媒体を搬送できればよく、特にこの構成に限定されるものではない。
(制御システム)
本実施形態における転写型インクジェット記録装置は、各装置を制御する制御システムを有する。図3は図1に示す転写型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図である。
図3において、301は外部プリントサーバー等の記録データ生成部、302は操作パネル等の操作制御部、303は記録プロセスを実施するためのプリンタ制御部、304は記録媒体を搬送するための記録媒体搬送制御部、305は印刷するためのインクジェットデバイスである。
図4は図1の転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。
401はプリンタ全体を制御するCPU、402は前記CPUの制御プログラムを格納するためのROM、403はプログラムを実行するためのRAMである。404はネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵した特定用途向けの集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)である。405は液吸収部材搬送モータ406を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、ASIC404からシリアルIFを介して、コマンド制御される。407は転写体駆動モータ408を駆動するための転写体駆動制御部であり、同様にASIC404からシリアルIFを介してコマンド制御される。409はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
<直接描画型インクジェット記録装置>
本発明における別の実施形態として、直接描画型インクジェット記録装置が挙げられる。直接描画型インクジェット記録装置において、被記録体は画像を形成すべき記録媒体である。
図2は、本実施形態における直接描画型インクジェット記録装置200の概略構成の一例を示す模式図である。直接描画型インクジェット記録装置は、前述した転写型インクジェット記録装置と比較し、転写体101、支持部材102、転写体クリーニング手段109を有さず、記録媒体208上で画像を形成する点以外は、転写型インクジェット記録装置と同様の手段を有する。
したがって、記録媒体208に反応液を付与する反応液付与装置203、記録媒体208にインクを付与するインク付与装置204、および、記録媒体208上の第一の画像に接触する液吸収部材205aにより、第一の画像に含まれる液体成分を吸収する液吸収装置205は、転写型インクジェット記録装置と同様の構成を有しており、説明を省略する。
なお、本実施形態の直接描画型インクジェット記録装置において、液吸収装置205は液吸収部材205a、および、液吸収部材205aを記録媒体208上の第一の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材205bを有する。また、液吸収部材205aおよび押圧部材205bの形状については特に制限がなく、転写型インクジェット記録装置で使用可能な液吸収部材および押圧部材と同様の形状のものを用いることができる。また、液吸収装置205は、液吸収部材を張架する張架部材を有していてもよい。図2において、205c、205d、205e、205f、205gは張架部材としての張架ローラである。張架ローラの数は図4の5個に限定されるものではなく、装置設計に応じて必要数を配置すれば良い。また、インク付与装置204によって記録媒体208にインクを付与するインク付与部、および、液吸収部材205aを記録媒体上の第一の画像に圧接し液体成分を除去する液体成分除去部と対向する位置に、記録媒体を下方から支持する不図示の記録媒体支持部材が設けられていてもよい。
(記録媒体搬送装置)
本実施形態の直接描画型インクジェット記録装置において、記録媒体搬送装置207は特に限定されず、公知の直接描画型インクジェット記録装置における搬送手段を用いることができる。例として、図2に示すように、記録媒体繰り出しローラ207a、記録媒体巻き取りローラ207b、記録媒体搬送ローラ207c、207d、207e、207fを有する記録媒体搬送装置が挙げられる。
(制御システム)
本実施形態における直接描画型インクジェット記録装置は、各装置を制御する制御システムを有する。図2に示す直接描画型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図は、図1に示す転写型インクジェット記録装置と同様に、図3に示す通りである。
図5は図2の直接描画型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。転写体駆動制御部407及び転写体駆動モータ408を有さない以外は図4における転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図と同等である。
すなわち、501はプリンタ全体を制御するCPU、502は前記CPUの制御プログラムを格納するためのROM、503はプログラムを実行するためのRAMである。504はネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵したASICである。505は液吸収部材搬送モータ506を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、ASIC504からシリアルIFを介して、コマンド制御される。509はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
<反応液の調製>
反応液には、以下に示される組成を有する反応液を用いた。尚、イオン交換水の「残部」は、反応液を構成する全成分の合計が100.0質量%となる量のことである。
・グルタル酸 21.0質量%
・グリセリン 5.0質量%
・界面活性剤(商品名:メガファックF444、DIC株式会社製) 5.0質量%
・イオン交換水 残部。
<顔料分散体の調製>
カーボンブラック(商品名:モナク1100、キャボット製)10部、樹脂水溶液(スチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、酸価150、重量平均分子量(Mw)8,000、樹脂の含有量が20.0質量%の水溶液を水酸化カリウム水溶液で中和したもの)15部、及び純水75部を混合した。この混合物をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを200部充填し、水冷しつつ、5時間分散処理を行った。この分散液を遠心分離して、粗大粒子を除去することで、顔料の含有量が10.0質量%の顔料分散体を得た。
<樹脂微粒子分散体の調製>
エチルメタクリレート20部、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)3部、及びn−ヘキサデカン2部を混合し、0.5時間攪拌した。この混合物を、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体(酸価:130mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):7,000)の8質量%水溶液75部に滴下して、0.5時間攪拌した。次に超音波照射機で超音波を3時間照射した。続いて、窒素雰囲気下で80℃、4時間重合反応を行い、室温冷却後にろ過して、樹脂の含有量が25.0質量%である樹脂微粒子分散体を調製した。
<インクの調製>
前記顔料分散体及び前記樹脂微粒子分散体を下記各成分と混合した。尚、イオン交換水の「残部」は、インクを構成する全成分の合計が100.0質量%となる量のことである。
・顔料分散体 40.0質量%
・樹脂微粒子分散体 20.0質量%
・グリセリン 7.0質量%
・ポリエチレングリコール(数平均分子量(Mn):1,000) 3.0質量%
・界面活性剤:アセチレノールE100(商品名、川研ファインケミカル株式会社製) 0.5質量%
・イオン交換水 残部
これを十分撹拌して分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧ろ過を行い、インクを調製した。
<多孔質体の作製>
第一の層として、以下の表1に記載の厚さ、表面の平均孔径、裏面の平均孔径および表面Raを有する層を用意した。なお、表1には、平均孔径の変化の有無および材料濃度変化の有無も示している。
1−a、b、e、f、g、h及びlは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる延伸膜である。これらは、高度に結晶化したPTFEの乳化重合粒子を圧縮成形し、融点以下の温度で延伸することによりフィブリル化した多孔質体を得ることで作製した。また、1−c、i、j及びkは、ポリエチレンテレフタラート(PET)からなる膜である。これらは、エレクトロスピニング法を用い、ノズルと電極間に電圧を印加し、溶融した溶液を積層した後に熱プレスすることにより作製した。1−dでは、表面側をポリフッ化ビニリデン(PVDF)、裏面側をポリエチレンテレフタラート(PET)として、第一の層中でこれらの材料の体積比率を変化させることで、材料濃度を変化させた。1−c、d、i及びjでは、エレクトロスピニング法を用い、ノズルと電極間の距離を変えることで、繊維径を変化させた。これにより、表面から裏面にかけて、1−c、d及びjでは0.20μmから20.00μm、1−iでは0.50μmから20.00μm、に各々平均孔径を変化させた。
Figure 0006833520
第二の層として、以下の表2に記載の厚さ、表面Ra、表面平均孔径、裏面平均孔径及び局部山頂の平均間隔を有する層を用意した。2−a、b、c及びdは、第一の繊維であるポリエチレンからなる膜である。これらは、結晶化したポリエチレンの乳化重合粒子を圧縮成形し、融点以下の温度で延伸することによりフィブリル化した多孔質体を得ることで作製した。また、2−e及びfは、第一の繊維であるポリエチレンと、第二の繊維であるポリプロピレンからなる膜である。これらは、二種類の単一繊維からなる材料を混合しつつ、湿式法により製造した。
Figure 0006833520
また、第二の層として、以下の表3に記載の厚さ、表面Ra、表面平均孔径、裏面平均孔径、局部山頂の平均間隔および平均繊維径を有する層(2−g)を用意した。2−gは、第一の材料であるポリエチレン(PE)と、第二の材料であるポリプロピレン(PP)とを1:1の質量比で含む繊維からなる膜である。第一の材料は「鞘構造」であり、第二の材料が「芯構造」であるため、第一の材料および第二の材料は「芯鞘構造」を有する。2−gは、芯鞘構造からなる繊維を用いて、湿式法により製造した。
Figure 0006833520
支持層である第三の層として、以下の表4に記載の厚さ、表面平均孔径、裏面平均孔径を有する各材料からなる膜を用意した。3−a及び3−bは、単一繊維からなる材料を用いて湿式法により製造した。なお、3−bの材料には、ポリエチレン(PE)が「鞘構造」、ポリプロピレン(PP)が「芯構造」である「芯鞘構造」を有する繊維を用いた。
Figure 0006833520
以下の表5に示される組合せで、必要に応じて第一の層と第二の層と第三の層とを熱圧ラミネートによって積層し、各実施例及び比較例で用いる多孔質体を得た。更に、得られた多孔質体の単位幅あたりの塑性変形開始荷重及びガーレー値を上述の方法で測定した。結果を表5に示す。なお、得られた多孔質体の、第一の画像と接触する第一面の算術平均粗さRaは、積層する前の第一の層の表面の算術平均粗さRaと同じであった。
Figure 0006833520
<インクジェット記録装置及び画像形成>
図1に示す転写型インクジェット記録装置を用いた。転写体101は両面テープにより支持部材102の表面に固定した。厚さ0.5mmのPETシートに、シリコーンゴム(商品名:KE12、信越化学工業株式会社製)を0.3mmの厚さでコーティングしたシートを転写体101の弾性層として用いた。さらに、グリシドキシプロピルトリエトキシシランとメチルトリエトキシシランとをモル比1:1で混合し、加熱還流することで得られる縮合物と、光カチオン重合開始剤(商品名:SP150、ADEKA製)との混合物を調製した。前記弾性層表面の水の接触角が10度以下となるように大気圧プラズマ処理を行った。その後、前記混合物を前記弾性層上に付与し、UV照射(高圧水銀ランプ、積算露光量:5000mJ/cm)、熱硬化(150℃、2時間)により成膜し、前記弾性層上に厚さ0.5μmの表面層が形成された転写体101を作製した。なお、転写体101の表面は、図示しない加熱手段により60℃に維持した。
反応液付与装置103により付与される前記反応液の付与量は1g/mとした。インク付与装置104には、電気−熱変換素子を用いオンデマンド方式にてインクの吐出を行うインクジェット記録ヘッドを使用し、転写体上にベタ画像を形成した。この画像形成時における前記インクの付与量は10g/mとした。
液吸収部材105aは、第一の画像と接触する側に前記多孔質体を有する。液吸収部材105aは、使用前に、エタノール95部及び水5部からなる湿潤液に浸漬し、前記湿潤液を浸透させた後、前記湿潤液を水で置換した。押圧部材105bで圧力を印加することで、転写体101と液吸収部材105aとの間のニップ圧を、平均2kg/cmとなるようにした。なお、押圧部材105bの直径は200mmであった。また、第一の画像と接触することによって多孔質体が吸収した水性液体成分は再度第一の画像に接触する前に、その吸収した水性液体成分の少なくとも一部を多孔質体から除去するようにした。
液吸収部材105aの搬送速度は、液吸収部材105aを張架しつつ搬送する張架ローラ105c、105d及び105eによって、転写体101の移動速度と同等の速度になるように調節した。また、転写体101の移動速度と同等の速度となるように、記録媒体108を記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって搬送した。記録媒体108の搬送速度は0.2m/sとした。記録媒体108としては、オーロラコート紙(日本製紙株式会社製、坪量104g/m)を用いた。
[評価]
以下の評価方法により、各実施例及び比較例におけるインクジェット記録装置の評価を行った。評価結果を表6に示す。本発明においては、下記の各評価項目の評価基準のAA〜Bを好ましいレベルとし、Cを許容できないレベルとした。
<色材付着>
前記画像形成における、液吸収部材105aの第一の画像への接触後の、液吸収部材105aに対する色材付着を観察した。評価基準は以下の通りである。
AA:繰り返し使用(液吸収部材の多孔質体を画像に10回接触)しても色材付着がみられなかった。
A:1回の使用によって色材付着はみられなかった。
B:1回の使用によってわずかに色材付着がみられたが、気にならない程度であった。
C:1回の使用によって色材付着が多くみられた。
<画像流れ>
前記画像形成における、第一の液体を吸収した後の、画像端部における色材の移動量、すなわち画像流れを観察した。評価基準は以下の通りである。
AA:繰り返し使用(液吸収部材の多孔質体を画像に10回接触)しても画像流れがみられなかった。
A:繰り返し使用(液吸収部材の多孔質体を画像に10回接触)した場合のみわずかに画像流れがみられたが、気にならない程度であった。
B:一回の液体除去によりわずかに画像流れがみられたが、気にならない程度であった。C:一回の液体除去により画像流れが大きくみられた。
<搬送強度>
前記画像形成における、液吸収部材105aの搬送時にかかる張力による変形の有無を観察した。評価基準は以下の通りである。
A:塑性変形がみられず、更に高速搬送時により強い張力をかけても塑性変形がみられなかった。
B:塑性変形がみられなかった。
C:塑性変形がみられた。
Figure 0006833520
また、図2に示す直接描画型インクジェット記録装置を用いて同様の実験を行った。図2に示す直接描画型インクジェット記録装置による画像形成においては、記録媒体208としてグロリアピュアホワイト紙坪量210g/m(五條製紙株式会社製)を用いた。記録媒体208以外の、反応液、反応液付与装置203、インク、インク付与装置204、記録媒体208の搬送速度及び液吸収装置205は、実施例1における転写型インクジェット記録装置と同様として、実施例1と同様に評価した。その結果、実施例1と同じ評価結果が得られることが確認された。
105 液吸収装置
105a 液吸収部材
105b 液吸収用の押圧部材
105c、d、e 張架ローラ
110 第一の層
111 第二の層
112 第三の層
113 第一の層の表面
114 第三の層の裏面
115 第二の層の裏面
205 液吸収装置
205a 液吸収部材
205b 液吸収用の押圧部材
205c、d、e、f、g 張架ローラ

Claims (14)

  1. 被記録体上に、第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成ユニットと、
    前記第一の画像と接触し、前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する多孔質体を有する液吸収部材と、
    を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記多孔質体の、前記第一の画像と接触する第一面の平均孔径が0.6μm以下であり、
    前記多孔質体の前記第一面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.9μm以下であり、
    前記多孔質体の、前記第一面の裏面である第二面の平均孔径が、前記第一面の平均孔径より大きく、
    前記多孔質体のJIS P8117で規定されるガーレー値が10秒以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記多孔質体が、前記第一の画像と接触する第一の層と、第二の層とを有する多孔質体であって、
    前記第一の層の、前記第一の画像と接触する第一面の平均孔径が0.6μm以下であり、
    前記第一の層の厚さが35μm以下であり、
    前記第二の層の、前記第一の層側の第一面における、JIS B 0601:1994で規定される局部山頂の平均間隔が、3μm以上40μm以下である請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記第二の層の前記第一面におけるJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが10μm以下である請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記第二の層が、第一の繊維と第二の繊維とを含有し、
    前記第一の繊維の平均繊維径が0.1μm以上15.0μm以下であり、
    前記第二の繊維の平均繊維径が0.1μm以上15.0μm以下であり、
    前記第一の繊維及び前記第二の繊維が、下記条件(1)及び下記条件(2)の少なくとも一方を満足し、
    条件(1):前記第一の繊維の平均繊維径が、前記第二の繊維の平均繊維径に対して1.2倍以上50.0倍以下、
    条件(2):前記第一の繊維の軟化点と、前記第二の繊維の軟化点との差の絶対値が10℃以上、
    前記第二の層に含まれる、前記第一の繊維と前記第二の繊維との質量比率(第一の繊維:第二の繊維)が、20:80〜80:20である請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記第二の層が、第一の材料及び第二の材料を含む繊維を含有し、
    前記繊維の平均繊維径が0.1μm以上15.0μm以下であり、
    前記第一の材料の軟化点と、前記第二の材料の軟化点との差の絶対値が10℃以上であり、
    前記第二の層に含まれる、前記第一の材料と前記第二の材料との質量比率(第一の材料:第二の材料)が、20:80〜80:20である請求項2又は3に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記多孔質体の少なくとも一部の領域において、厚さ方向に平均孔径が変化している請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記多孔質体の少なくとも一部の領域において、厚さ方向に材料濃度が変化している請求項6に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記多孔質体の単位幅あたりの塑性変形開始荷重が200N/m以上である請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記多孔質体が支持層として第三の層を有する請求項1〜8の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記第三の層が芯鞘構造である繊維を含有する請求項9に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記画像形成ユニットは、
    前記第一の液体または第二の液体と、インク高粘度化成分とを含む第一の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置と、
    前記第一の液体または第二の液体と、前記色材とを含む第二の液体組成物を前記被記録体上に付与する装置と、
    を含み、
    前記第一の画像は前記第一及び第二の液体組成物の混合物であって、前記第一及び第二の液体組成物よりも粘稠されている請求項1〜10の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  12. 前記被記録体は、前記第一の画像と、前記第一の画像から前記第一の液体を吸収した第二の画像を一時的に保持する転写体であって、
    前記第二の画像を、画像を形成すべき記録媒体上に転写する押圧部材を備えた転写ユニットを含む請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  13. 前記被記録体は画像を形成すべき記録媒体である請求項1〜11の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
  14. 被記録体上に、第一の液体と色材とを含むインクを付与して第一の画像を形成する画像形成ユニットと、
    前記第一の画像と接触して前記第一の画像を構成するインクを濃縮する多孔質体を有する液吸収部材と、
    を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記多孔質体の、前記第一の画像と接触する第一面の平均孔径が0.6μm以下であり、
    前記多孔質体の前記第一面のJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さRaが1.9μm以下であり、
    前記多孔質体の、前記第一面の裏面である第二面の平均孔径が、前記第一面の平均孔径より大きく、
    前記多孔質体のJIS P8117で規定されるガーレー値が10秒以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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