JP6268962B2 - インクジェット捺染用インク及び捺染方法 - Google Patents
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本発明に係るインクジェット捺染用インクの一態様は、
水と、下記一般式(1)で示される構造を有する分散染料2種以上と、を少なくとも含有し、
前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料の合計量が染料固形分全体の15質量%以上50質量%未満を占め、かつ、pHが5以上9以下であることを特徴とする。
適用例1のインクジェット捺染用インクにおいて、
前記一般式(1)で示される構造を有する2種以上の分散染料のそれぞれが、R1〜R5のうちの少なくとも1つをシアノ基又はシアノ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基とすることができる。
適用例1または適用例2のインクジェット捺染用インクにおいて、
前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料の合計量が染料固形分全体の20質量%以上40質量%以下を占めることができる。
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット捺染用インクにおいて、
pHが7以上8以下であることができる。
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインクジェット捺染用インクにおいて、
前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料が、C.I.ディスパースブルー165およびC.I.ディスパースイエロー163の2種であり、
さらに、C.I.ディスパースレッド92、C.I.ディスパースレッド152、C.I.ディスパースレッド154、C.I.ディスパースブルー60およびC.I.ディスパースイエロー114よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料を含有することができる。
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインクジェット捺染用インクにおいて、
ブラックを発色させるためのインクジェット捺染用インクであって、
前記C.I.ディスパースブルー165の含有量が染料固形分全体の2質量%以上10質量%以下を占め、
前記C.I.ディスパースイエロー163の含有量が染料固形分全体の18質量%以上29質量%以下を占め、
前記C.I.ディスパースレッド92の含有量が染料固形分全体の40質量%以上50質量%以下を占めることができる。
本発明に係る捺染方法の一態様は、
インクジェット記録装置を用いて、適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインクジェット捺染用インクを布帛に吐出して付与するインク付与工程を備えることを特徴とする。
適用例7の捺染方法において、
前記インク付与工程に先立って前記布帛に前処理剤を付与する前処理剤付与工程と、前記インク付与工程の後に前記布帛を加熱する熱処理工程と、前記熱処理工程の後に前記布帛を洗浄する洗浄工程と、を備えることができる。
本実施の形態に係るインクジェット捺染用インクは、水と、下記一般式(1)で示される構造を有する分散染料2種以上と、を少なくとも含有し、前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料の合計量が染料固形分全体の15質量%以上50質量%未満を占め、かつ、pHが5以上9以下であることを特徴とする。
本実施の形態に係るインクジェット捺染用インクは、下記一般式(1)で示される構造を有する分散染料を2種以上含有する。
表現できる色相の幅が拡大するため好ましい。
前記分散染料を分散させるための分散剤は、特に限定されず、例えばノニオン性やアニオン性の分散剤を挙げることができる。アニオン性の分散剤としては、高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、芳香族スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩またはリグニンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等が挙げられる。芳香族スルホン酸塩としては、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩等が挙げられる。芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物としては、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、特殊芳香族スルホン酸塩のホルマリン縮合物(ブチルナフタレン等のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムとナフタレンスルホン酸ナトリウムとのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物等が挙げられる。また、これらの分散剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施の形態に係るインクジェット捺染用インクは、分散染料の分散媒体としての水を含む。インク中における水の含有量は、特に限定されないが、40質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、55質量%以上70質量%以下であるのがより好ましい。
本実施の形態に係るインクジェット捺染用インクは、25℃の水100gに対する溶解度が1g/100g以上の水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のヒドロキシ基を持つアミン類;グリセリン、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好適に用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤は、1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、本実施の形態に係るインクジェット捺染用インクは、その諸特性を改善するためにその他の添加剤として、表面張力調整剤、防腐剤、防かび剤、pH調整剤、染料溶解助剤、酸化防止剤、消泡剤、また、導電率調整剤、濃染剤、均染剤、浸透剤等を含有することができる。
2.1.布帛
本実施の形態に係る捺染方法において使用する布帛を構成する素材としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限されない。分散染料で染色可能な繊維としては、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド等の繊維を含有するものが挙げられ、ポリウレタン繊維等との混紡繊維であってもよい。その中でも、染色が容易であるため、少なくともポリエステル繊維が含有されている布帛が好ましい。
本実施の形態に係る捺染方法は、インクジェット記録方式により吐出されたインク滴を布帛に付着させるインク付与工程を備える。インクジェット記録方式としては、いずれの方式でもよく、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデンマンド方式(ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式)などが挙げられる。これらのインクジェット記録方式の中でも、ピエゾ式のインクジェット記録装置を用いる方式が特に好ましい。
2.3.1.前処理付与工程
本実施の形態に係る捺染方法において、前記のインク付与工程に先立って布帛に前処理剤を付与する前処理剤付与工程を備えていてもよい。例えば、にじみ防止や布帛へのインクの浸透促進を目的として、水溶性高分子類(糊剤)、カチオン性物質、撥水剤等を含む前処理剤を布帛に付与することができる。また、インクが付着する面と反対面に浸透させることを目的として、表面張力調整剤、水溶性有機溶剤等を含む前処理剤を布帛に付与することができる。
本実施の形態に係る捺染方法において、インクが付与された布帛を熱処理する熱処理工程を備えていてもよい。熱処理工程を行うことにより、分散染料が繊維に良好に染着することができる。熱処理工程は従来公知の方法を用いることが可能であり、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)、サーモゾル法等が挙げられる。
本実施の形態に係る捺染方法において、インクが付与された布帛を洗浄する洗浄工程を備えていてもよい。洗浄工程は、前記熱処理工程の後に行うのが好ましく、繊維に染着していない分散染料を効果的に除去することができる。洗浄方法としては、特に限定されないが、白場汚染を抑制する観点から還元洗浄を用いることが好ましい。還元洗浄は、例えば、40℃以上100℃以下の熱アルカリ中で、ハイドロサルファイトナトリウムを作用させることにより行うものであることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
分散染料を表1〜表2に示す比率で染料固形分として4質量部、ジョンクリル163(BASF社製、水性アクリル樹脂、樹脂固形分30%)14質量部、トリエチレングリコール3質量部、トリエチレングリコールモノメチルエーテル3質量部、グリセリン29質量部、ペレックスSS−H(花王株式会社製)2質量部を加え、さらにイオン交換水、必要に応じてトリエタノールアミン、アジピン酸を加えて表1〜表2に示すpHとなるように調整して合計100質量部とした。これを十分に混合撹拌した後、孔径5.0μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、表1〜表2に示す各インクジェット捺染用インクを調製した。
3.2.1.記録工程(インク付与工程)
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、上記で調製したインクジェット捺染用インクを布帛に記録した。画像解像度は1440×720dpiとした。
前記記録工程を経て得られた捺染物を、HTスチーマー(HT3−550型、辻井染機工業株式会社製)を用いて下記の条件でスチーミング処理を行い、染料を布帛に定着させた。
・スチーム温度:170℃
・湿度:100%RH
・処理時間:8分間
前記定着工程を経て得られた捺染物を水洗し、次いで染色試験機「Turby type T」(マチス社製)を用いて下記の条件で還元洗浄を行った。その後、アイロンで乾燥させて捺染物を得た。
・温度条件:昇温速度2℃/minにて25℃から85℃に昇温し、85℃で10分間保持した後、降温速度3℃/minにて85℃から25℃に降温。
・撹拌:回転速度800rpm(回転:55s、左回転55sのサイクル)
・洗浄液:水150g、ラッコールSTA0.3g(ソーピング剤、明成化学工業株式会社製)、ハイドロサルファイト0.3g(和光純薬工業株式会社製)、10規定の水酸化ナトリウム水溶液0.3g
3.3.1.耐光性評価
ポリエステルエラストマー「Brisbane」(Carvico社製)に画像解像度1440dpi×720dpi、1ドット当たりのインク滴を22ngとしてグラデーションパターンを記録し、定着工程、洗浄工程を経て捺染物を得た。前記グラデーションパターンは、Dutyを5%ずつ増やしながら、Duty5%のパターンからDuty100%のパターンまでの計20パターンで構成されており、各パターン間のDuty差は5%である。次いで、Xenon Weather Meter XL−75s(スガ試験機製)を用いて、捺染物の耐光性を評価した。試験条件は下記の通りである。
・放射温度:34W/m2
・槽内温度:25℃
・BPT温度:38.4℃
・湿度:55%RH
・暴露エネルギー:28MJ/m2
耐光性評価前後の捺染物について、測色機「Spetrolino」(グレタグマクベス社製)を用いて測色し、Lab表示系における色差ΔEとOD保持率を算出した。
3:Dk=1.0部のΔEが0以上3未満
2:Dk=1.0部のΔEが3以上5未満
1:Dk=1.0部のΔEが5以上
Duty(%)=(実記録ドット数/(縦解像度×横解像度))×100・・・(4)
上記式(4)において、「実記録ドット数」は単位面積当たりで実際に記録されたドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの画像解像度である。100%Dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。したがって、例えば、横1,440dpi、縦720dpiの場合、1平方インチを横1,440分割、縦720分割した計1,036,800分割のうち、何%にインクドットを配置したかを示す。以下、「Duty」との用語は、この意味で用いられる。
上記で製造したインクジェット捺染用インクを一方が開いたアルミ蒸着パックに注入し、液面をシールして作製した、気液界面のないインクパックを60℃の恒温器(エスペック株式会社製、型式「SPHH−200」)にて9日間放置した。なお、湿度は制御しなかった。60℃にて9日間放置したインクパックと室温(25℃)で9日間放置したインクパックからそれぞれインクを採取し、下記の方法で粘度および吸光度を測定した。
・粘度:自動粘度測定装置(株式会社離合社製VMC−252)にてキャノン・フェンスケ逆流型粘度計を用いて20℃における粘度を測定した。
・吸光度:分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製U−3300)にて純水をブランクとして、300nm〜800nmにおける最大の吸光度の値が1となるように設定した希釈率にてインクを純水で希釈し、各ピークの吸光度を測定した。
保存安定性の評価基準は、下記の通りである。その結果を表1〜表2に併せて示す。
2:粘度および吸光度の変化が共に20%未満
1:粘度または吸光度のいずれかの変化が20%以上
上記で製造したインクジェット捺染用インクを沈降管に40g入れ、高速遠心機(日立工機株式会社製、型式「himac CR20B2」)にて10,000rpmで15分間遠心分離したインクの上澄み4gを採取して、保存安定性評価と同じ方法で吸光度を測定した。インク沈降性の評価基準は、下記の通りである。その結果を表1〜表2に併せて示す。
2:吸光度の変化が20%未満
1:吸光度の変化が20%以上
上記で製造したインクジェット捺染用インクを一方が開いたアルミ蒸着パックに注入し、液面をシールして作製した、気液界面のないインクパックを60℃の恒温器(エスペック株式会社製、型式「SPHH−200」)にて9日間放置した。なお、湿度は制御しなかった。
4:ΔEaveが0以上1.2未満
3:ΔEaveが1.2以上1.5未満
2:ΔEaveが1.5以上2.0未満
1:ΔEaveが2.0以上
とした。その結果を表1〜表2に併せて示す。
A4サイズのポリエステルエラストマー「Bilight Woven」(Boselli社製)に画像解像度1440dpi×720dpi、1ドット当たりのインク滴を22ng、Duty100%の条件で19cm×25cmのベタパターンを記録し、定着工程を経て捺染物を得た。捺染物の無地の部分について、測色機「Spectrolino」(グレタグマクベス社製)を用いて洗浄工程前後で測色し、Lab表示系における色差ΔEを下記式(2)に基づき算出した。
2:ΔEが0以上10未満
1:ΔEが10以上
表1〜表2に、各インクジェット捺染用インクの組成及び評価試験の結果を示す。表1〜表2中に示す各成分の略称は、以下の通りである。
・D.B.165(C.I.ディスパースブルー165)
・D.B.60(C.I.ディスパースブルー60)
・D.R.92(C.I.ディスパースレッド92)
・D.R.152(C.I.ディスパースレッド152)
・D.R.154(C.I.ディスパースレッド154)
・D.R.191(C.I.ディスパースレッド191)
・D.Y.163(C.I.ディスパースイエロー163)
・D.Y.114(C.I.ディスパースイエロー114)
Claims (7)
- 水と、下記一般式(1)で示される構造を有する分散染料2種以上と、を少なくとも含有し、
前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料の合計量が染料固形分全体の15質量%以上50質量%未満を占め、かつ、pHが5以上9以下であり、
前記一般式(1)で示される構造を有する2種以上の分散染料のそれぞれが、R 1 〜R 5 のうちの少なくとも1つをシアノ基又はシアノ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基とする、インクジェット捺染用インク。
- 前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料の合計量が染料固形分全体の20質量%以上40質量%以下を占める、請求項1に記載のインクジェット捺染用インク。
- pHが7以上8以下である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット捺染用インク。
- 前記一般式(1)で示される構造を有する分散染料が、C.I.ディスパースブルー165およびC.I.ディスパースイエロー163の2種であり、
さらに、C.I.ディスパースレッド92、C.I.ディスパースレッド152、C.I.ディスパースレッド154、C.I.ディスパースブルー60およびC.I.ディスパースイエロー114よりなる群から選択される少なくとも1種の分散染料を含有する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク。 - ブラックを発色させるためのインクジェット捺染用インクであって、
前記C.I.ディスパースブルー165の含有量が染料固形分全体の2質量%以上10質量%以下を占め、
前記C.I.ディスパースイエロー163の含有量が染料固形分全体の18質量%以上29質量%以下を占め、
前記C.I.ディスパースレッド92の含有量が染料固形分全体の40質量%以上50質量%以下を占める、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク。 - インクジェット記録装置を用いて、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インクを布帛に吐出して付与するインク付与工程を備えることを特徴とする捺染方法。
- 前記インク付与工程に先立って前記布帛に前処理剤を付与する前処理剤付与工程と、前記インク付与工程の後に前記布帛を加熱する熱処理工程と、前記熱処理工程の後に前記布帛を洗浄する洗浄工程と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の捺染方法。
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