JP4274011B2 - 捺染用インクジェットインク用の水系前処理剤 - Google Patents
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Description
従来、反応染料を含有する捺染用インクジェットインクと組み合わせて使用する前処理剤において、布帛ににじみを生ずることが無く、深みのある高濃度画像を記録することができ、しかも曳糸性が低く、連続処理的な前処理工程が可能な前処理剤は、提案されていない。
従って、本発明の課題は、反応染料を含有する捺染用インクジェットインクと組み合わせて使用する前処理剤であって、布帛ににじみを生ずることが無く、発色性が向上し、しかも曳糸性が低く、連続処理的な前処理工程が可能な前処理剤を提供することにある。
本発明による前処理剤の好ましい態様においては、更に、均染剤(例えば、多価アルコール脂肪酸エステル)を含む。
本発明による前処理剤の好ましい態様においては、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体の粘度平均分子量が10万以下である。
本発明による前処理剤の好ましい態様においては、更に、還元防止剤(例えば、メタ−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム)を含む。
本発明による前処理剤の好ましい態様においては、ヒドロトロピー剤は尿素である。
更に、本発明は、前記の前処理剤によって予め処理した布帛に、反応染料を含有する捺染用インクジェットインクを吐出させる工程を含むことを特徴とする、インクジェット捺染方法にも関する。
(ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体)
本発明の前処理剤は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体を含有する。ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体は、式(1):
HO−〔CH2CH2O〕m−〔CH(CH3)CH2O〕n−H (1)
(式中、mは2以上の整数、好ましくは30以上の整数であり、nは2以上の整数、好ましくは30以上の整数である)
で表される高分子化合物である。前記の式(1)において、〔CH2CH2O〕のエチレンオキシド繰返単位と、〔CH(CH3)CH2O〕のプロピレンオキシド繰返単位とは、それぞれ、ブロック状(例えば、A−B型又はA−B−A型)又はランダム状に存在することができる。好ましいポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体は、式(2):
HO−〔CH2CH2O〕p−〔CH(CH3)CH2O〕q−〔CH2CH2O〕r−H (2)
(式中、p、q、及びrは、それぞれ独立して2以上の整数、好ましくは30以上の整数である)
で表される高分子化合物である。
本発明の前処理剤は、ヒドロトロピー剤を含有する。ヒドロトロピー剤としては、例えば、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、又はジメチルチオ尿素等のアルキル尿素を用いることができる。
ヒドロトロピー剤の含有量は、特に限定されるものではないが、前処理剤の全重量に対して、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。ヒドロトロピー剤の含有量が1重量%未満になると、発色効果が低いことがあり、15重量%を超えると、ヒドロトロピー剤の粉末が浮遊し、ヘッド詰まりの原因となることがある。
本発明の前処理剤は、アルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、好適には、ナトリウム灰、水酸化ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウム等を挙げることができ、特に好適には重炭酸ナトリウムを挙げることができる。
アルカリ剤の含有量は、特に限定されるものではないが、前処理剤の全重量に対して、好ましくは1〜7重量%、更に好ましくは2〜5重量%である。アルカリ剤の含有量が1重量%未満になると、定着反応促進効果が少なくなることがあり、7重量%を超えると、絹等の動物性繊維を傷めることがある。
本発明の前処理剤は、糊剤を含むことが好ましい。糊剤としては、例えば、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体、あるいは、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等が用いられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
糊剤としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、又は澱粉の1種又は2種以上を組み合わせて使用するのが好ましい。
糊剤の含有量は、特に限定されるものではないが、前処理剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.3〜2重量%である。糊剤の含有量が0.1重量%未満になると、滲み防止効果が少なくなることがあり、5重量%を超えると、高粘性となり、塗工が難しくなることがある。
本発明の前処理剤は、均染剤を含むことが好ましい。均染剤としては、例えば、多価アルコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、又はペンタエリスリット脂肪酸エステルを用いることができ、多価アルコール脂肪酸エステル〔例えば、日華化学(株)から市販されているサンフローレン〕を用いるのが好ましい。
均染剤の含有量は、インク中の染料量及び種類に依存して適宜決定され、特に限定されるものではないが、均染剤の含有量は、前処理剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.3〜2重量%である。均染剤の含有量が0.1重量%未満になると、発色効果が少なくなることがあり、5重量%を超えると、滲みが発生することがある。
還元防止剤としては、ニトロベンゼンスルホン酸塩を用いるのが好ましく、メタニトロベンゼンスルホン酸塩を用いるのがより好ましい。塩は、例えば、アルカリ金属塩であり、好ましくはナトリウム塩である。
還元防止剤の含有量は、特に限定されるものではないが、前処理剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜7重量%、更に好ましくは1〜5重量%である。還元防止剤の含有量が0.1重量%未満になると、蒸熱後の染着色が不安定となることがあり、5重量%を超えても、それ以上色安定効果は変わらない。なお、前処理液に還元防止剤を添加する効果は、インク中に染料としてC.I.リアクティブブルー176を含む場合に特に有効である。
本発明の前処理剤において、水は主溶媒である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、又は蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、前処理剤を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
発色を向上させるために前記の各成分に加えて、シリカ及び/又はアルミナを添加することもできる。
(染料)
本発明の前処理剤は、反応染料を含有する捺染用インクジェットインクと組み合わせて用いる。本発明の前処理剤と組み合わせて用いる捺染用インクジェットインクに含まれる反応染料は、加熱蒸着により布帛と化学接合して定着する性質を有する限り、特に制限されないが、例えば、モノクロロトリアジニル基、ジクロロトリアジニル基、クロルピリミジル基、ビニルスルホン基、又はアルキル硫酸基等を反応基として有する染料が好ましい。これらの染料は、個々の目的により選択される。例えば、高濃度の黒色を特に所望する際はビニルスルホン系反応染料が好適である。また、捺染用インクジェットインクを長時間保存することが必要な際は、モノクロロトリアジニル骨格、即ちモノクロロ置換1,3,5−トリアジン2−イル骨格を有する染料が好ましい。モノクロロトリアジニル骨格を有する反応染料は比較的熱安定が優れているため、長時間保存安定性が要求されるインクジェットインク用染料として特に好適である。捺染用インクジェットインクに含まれる反応染料の具体例を以下に列挙する。
C.I.リアクティブイエロー3、6、12、18、86
C.I.リアクティブオレンジ2、5、12、13、20、
C.I.リアクティブレッド3、4、7、12、13、15、16、24、29、31、32、33、43、45、46、58、59、
C.I.リアクティブバイオレット1、2、
C.I.リアクティブブルー2、3、5、7、13、14、15、25、26、39、40、41、46、49、176
C.I.リアクティブグリーン5、8、
C.I.リアクティブブラウン1、2、7、8、9、11、14、及び
C.I.リアクティブブラック1、2、3、8、10、12、13
なお、本明細書において反応染料とは、カラーインデックス中で反応染料に分類されている化合物をいう。
本発明の前処理剤と組み合わせて用いる捺染用インクジェットインクは、緩衝剤を加えてpHを安定させることが望ましい。またpHを9以下に調整することによりインク液中の反応染料の加水分解を遅延させることができる。加水分解の進行は布帛の定着濃度を低下させるのみならず、インクを強い酸性領域に進めるため印捺機を腐食しやすくなる。特に、プリントヘッド部分の腐食はインクジェットシステムに大きなダメージを与える。本本発明の前処理剤と組み合わせて用いる捺染用インクジェットインクの好適なpHは6〜9、更に好適には7〜8.5である。pHがあまり高くなると反応染料の加水分解が進行しやすくなる。例えば30℃で1年以上放置することを要する場合は、pH9以下が好ましい。但し、短期間でインクを使い切る場合は、インクのpHが10を超えても差し支えない。
本発明の前処理剤と組み合わせて用いるインクジェット捺染インクにおいては、水としては任意の水を用いることができるが、純水を用いるのが好ましい。純水は、イオン交換、又は蒸留等で容易に製造することができる。また、純水を更に紫外線等で滅菌処理するのが更に好ましい。
本発明の前処理剤と組み合わせて用いるインクジェット捺染インクは、還元防止剤を含むことができる。還元防止剤としては、ニトロベンゼンスルホン酸塩を用いるのが好ましく、メタニトロベンゼンスルホン酸塩を用いるのがより好ましい。塩は、例えば、アルカリ金属塩であり、好ましくはナトリウム塩である。また、この効果はインク中の染料にC.I.リアクティブブルー176が含まれる場合、特に効果が大きい。
更に、本発明の前処理剤と組み合わせて用いるインクジェット捺染インクは、金属イオン封鎖剤を含有することができる。金属封鎖剤としてはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、EDTA塩(例えば、ナトリウム塩)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(EDTA−OH)等が好適である。
本発明の前処理剤と組み合わせて用いるインクジェット捺染インクには、インクの吐出安定性(特には、ピエゾヘッドでの吐出安定性)を向上させる目的で、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)を添加することができる。
また、本発明の前処理剤と組み合わせて用いるインクジェット捺染インクは、上記成分に加えて、防腐剤を含有することが好ましい。好ましい防腐剤としては、例えば、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。
更に、前記捺染インクは、ピロリドン系溶媒(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン)又はチオグリコールを含有することによって染料の溶解度を高くし、高濃度染料インクにも優れた吐出安定性を付与することができる。
本発明によるインクジェット捺染方法は、本発明の前処理剤によって予め前処理を施した布帛に、インクジェット捺染インクをインクジェット方式によって吐出させて付着させる工程、定着する工程、及び洗浄する工程により主に構成される。それぞれの工程には、公知の方法及び操作を使用することができる。以下、各工程の具体的な態様を例示する。
(前処理方法)
本発明による前処理剤を布帛に付着させる方法としては、常法通り、コーティング又はパディング法が望ましい。例えば、パディング時のピックアップ率は、布帛の厚さ、繊維の太さ等で適宜決めることができ、50%以上が望ましく、更に好適には65%以上である。
本発明方法によって捺染することにできる布帛は、植物性繊維、動物性繊維、アミド系繊維からなる布帛又は少なくともこれらの繊維の一つを含む混紡からなる布帛である。好ましくは、セルロース系繊維、又はアミド系繊維からなる布帛である。好適に使用されるのは、木綿、麻、羊毛、絹、ビスコスレーヨン、キュプラレーヨン、ポリノジック、ビニロン、又はナイロン等の繊維からなる布帛である。
前記の前処理剤で処理された布帛は、インクジェット方法によって、前記の捺染インクによって印捺された後、高熱又は高熱の蒸気により定着される。定着条件は、例えば、セルロース系布帛では、95〜105℃にて飽和蒸気近辺で、4〜12分間処理するのが好ましい。また、絹や羊毛等のアミド系繊維では、95〜105℃にて、飽和蒸気近辺で、20〜40分間処理するのが好ましい。
インクジェット捺染方法は、サーマル方式、コンテティニュアス方式、又はピエゾ方式などの任意のインクジェット方式に適用することができるが、好適にはピエゾ振動子方式である。
表1に示す組成を有する実施例1〜2及び比較例1〜3の前処理剤を調製した。表1に
おいて、数値の単位は重量%であり、EOPO共重合体は、ポリオキシエチレン/ポリオ
キシプロピレン共重合体(粘度平均分子量=15,500;プルロニックF108;旭電
化工業社)であり、均染剤は、多価脂肪酸エステル(サンフローレンSN;日華化学社)
である。
(1)パディング
実施例1〜2及び比較例1〜3で調製した前処理剤のパディングは、パッダー(マチス
社製HVF350)を用いて60℃下で行った。予め210×315mmに裁断した布帛
を、圧力2bar、スピード2〜3m/分、絞り率約70%の条件下でパディングした。
パディングした布帛は綿ブロードであった。なお、パッダーからパディングされた布を取
り出す際に、曳糸が観察されることもなく、優れたパディング特性を示した。
以下の表2に示す組成を有する捺染用インクジェットインクAを調製した。表2において、数値の単位は重量%であり、RR31は、C.I.リアクティブレッド31であり、リン酸系緩衝剤はトリポリリン酸であり、サーフィノールE1010はアセチレングリコール系界面活性剤である。前記のインクAをインクジェットプリンタ(MJ8000C;セイコーエプソン株式会社製)に充填し、前項(1)でパディングした綿にインクジェット捺染を行った。
前項(2)で処理した綿を、スチーマ(DHe型;マチス社)を用いて定着した。定着は、102℃にて8分間で飽和蒸気圧近辺の条件下で実施した。
その蒸熱処理後に洗浄を行った。すなわち、布を水道水で揉み洗いし、徐々に温水を追加していった。その後、アニオン活性剤を含む沸騰水中に、時々撹拌しながら15分間浸けた。更に、洗浄液中に水道水を入れながら手揉み洗いをした。洗浄布にアイロンを掛けて、捺染布を得た。
OD値は、測色計(グレタグマクベスSPM50)にて測定した。結果を表1に示す。
表1の実施例2と比較例1との比較、あるいは実施例3と比較例2との比較から明らかなとおり、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体を含む前処理剤で処理すると、印捺濃度の向上が観察された。
また、表1の実施例1及び実施例2と実施例3との比較、あるいは比較例1と比較例2との比較から明らかなとおり、均染剤を含む前処理剤で処理すると、印捺濃度の向上が観察された。
Claims (7)
- 反応染料を含有する捺染用インクジェットインクと組み合わせて用いる水系前処理剤であって、少なくともポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体、尿素、多価アルコール脂肪酸エステル、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム及びアルカリ剤を含むことを特徴とする、インクジェット捺染用の前処理剤。
- 更に、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、及び澱粉からなる群から選んだ糊剤少なくとも1種を含む、請求項1に記載の前処理剤。
- 前記ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体の粘度平均分子量が10万以下である、請求項1又は2に記載の前処理剤。
- 前記ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体の含有量は0.1〜10重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前処理剤。
- 前記尿素の含有量は3〜10重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前処理剤。
- 前記m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムの含有量が0.1〜7重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前処理剤。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の前処理剤によって処理した布帛。
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