JP2004359928A - 捺染用インクジェットインク及びインクジェット捺染方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】捺染用インクジェットインクは、反応染料(特には、モノクロロトリアジニル誘導体染料)及び2−イミダゾリジノンを含むことを特徴とする。インクジェット捺染方法は、水系前処理剤によって予め処理した布帛に、前記のインクジェット捺染インクを吐出させる工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、こうした知見に基づくものである。
本発明の好ましい態様においては、前記反応染料がモノクロロトリアジニル誘導体染料である。また、前記モノクロロトリアジニル誘導体染料濃度は、8重量%以上であることができる。更に、前記モノクロロトリアジニル誘導体染料は、例えば、C.I.ゴールデンオレンジ13である。
本発明の捺染用インクジェットインクは、更に別の好ましい態様においては、更に緩衝剤を含む。
本発明の捺染用インクジェットインクは、更に別の好ましい態様においては、pHが6〜9である。
本発明の捺染用インクジェットインクは、更に別の好ましい態様においては、更に金属イオン封鎖剤を含む。
本発明方法の好ましい態様においては、前記布帛が、植物性繊維、動物性繊維、又はアミド系繊維のいずれか一つ、あるいはそれら繊維2種以上の混紡からなる布帛である。
本発明方法の別の好ましい態様においては、前記水系前処理剤が、糊剤、アルカリ剤、及びヒドロトロピー剤を含む。
本発明方法の更に別の好ましい態様においては、前記シリカの表面が水酸基変性されている。
本発明方法の更に別の好ましい態様においては、前記シリカの平均粒径が10μm以下である。
本発明方法の更に別の好ましい態様においては、前記インクジェットプリントヘッドのノズル面が撥インク性皮膜層を有する。
(染料)
本発明による捺染用インクジェットインクに含有させることのできる反応染料は、特に限定されないが、モノクロロトリアジニル誘導体染料が好ましい。モノクロロトリアジニル誘導体染料は、モノクロロトリアジニル基、特にモノクロロ置換1,3,5−トリアジン−2−イル骨格を有する染料である。
C.I.リアクティブ(ゴールデン)イエロー3、6、12、18、86
C.I.リアクティブオレンジ2、5、12、13、20、
C.I.リアクティブレッド3、4、7、12、13、15、16、24、29、31、32、33、43、45、46、58、59、245
C.I.リアクティブバイオレット1、2、
C.I.リアクティブブルー2、3、5、7、13、14、15、25、26、39、40、41、46、49、176
C.I.リアクティブグリーン5、8、
C.I.リアクティブブラウン1、2、7、8、9、11、14、及び
C.I.リアクティブブラック1、2、3、8、10、12、13
などが挙げられる。
インクジェット捺染機では、乾燥による短期的な目詰まりを防止するため、一定時間毎に、ホームポジションに設けたヘッドキャップ内部等に、強制的にインクを吐出する機構を有している。こうした吐出操作は、フラッシングと呼ばれる。ヘッドキャップ内部にフラッシングされたインクは、ドレイン管に送り込まれるが、染料濃度が高い場合、あるいは高温環境で使用している場合は、ドレイン管内部あるいはヘッドキャップ内部に染料が析出することがある。ドレイン管内部での析出は、時間経過と共にドレイン管を閉塞させることになる。また、ヘッドキャップ内部での析出物は、時間経過と共に堆積し、こうして形成される堆積物はヘッドのノズル面と接触して、最悪の場合は、吐出不良の原因となる。
本発明の捺染用インクジェットインクは、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を有するインクは前処理した布帛上でも均一に濡れ、印捺斑を少なくすることができ、また短時間の内に布帛中へ浸透するので有利である。また、ピエソ振動型プリンタでは吐出不良の原因となるプリントヘッド内の気泡排出性を向上させ、安定した吐出を保持する効果がある。
本発明の捺染用インクジェットインクは、有機溶媒として多価アルコールを含むのが好ましい。多価アルコールは、インクジェット捺染機を長期間使用しない場合、ノズルの目詰まりを防ぐ効果がある。好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、チオグリコールなどである。
本発明の捺染用インクジェットインクにおいて、水は主溶媒である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、又は蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。また、紫外線照射、又は過酸化水素添加などにより滅菌した水を用いることにより、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
本発明の捺染用インクジェットインクは、緩衝剤を加えpHを安定させることが望ましい。pHを9以下に調整することで、インク中のモノクロロトリアジニル反応染料の加水分解の進行を抑制することができる。加水分解は、布帛の定着濃度を低下させるのみならず、インクpHを強い酸性領域に進めるため、インクジェット印捺機の流路部品を腐食しやすくなる。特に、プリントヘッド部分の腐食は、インクジェットシステムに大きなダメージを与える。本発明の捺染用インクジェットインクの好適なpHは6〜9、更に好適には7〜8.5である。pHがあまり高くなるとモノクロロトリアジニル反応染料の加水分解が進行しやすくなる。例えば、30℃で1年以上放置を要する場合は、pHが9.0以下が好ましい。但し、短期間でインクを使い切る場合はインクのpHが10を超えても差し支えない。
本発明の捺染用インクジェットインクは、更にピロリドン系溶媒を含有することが望ましい。本発明の捺染用インクジェットインクでは、モノクロトリアジニル反応染料の溶解性とインク吐出安定性との間に密接な関係がある。溶解性の高い溶媒を用いることで吐出安定性をより向上させることができる。染料濃度が比較的高い場合は、ピロリドン系溶媒を添加することで吐出安定性を向上させることができる。ピロリドン系溶媒としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、又は1,3−ジメチルイミダゾリジノン等があるが、好ましくは2−ピロリドンである。2−ピロリドンは吐出安定性に加えて乾燥目詰まり防止効果も有する。ピロリドン系溶媒を使用する場合の含有量は、前記の目的が得られる範囲で適宜決定されるが、一般的には、捺染用インクジェットインクの全重量に対して、1〜15重量%である。
本発明の捺染用インクジェットインクは、更に金属イオン封鎖剤を含有することが望ましい。好ましい含有量は0.001〜0.1重量%であり、更に好適には0.005〜0.03重量%である。金属イオン封鎖剤は、本発明の捺染用インクジェットインクを長期間安定的に吐出させる効果をもつ。また、印捺布上で安定した濃度及び色相を確保することができる。金属イオン封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、EDTAの塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、等が好適である。
本発明の捺染用インクジェットインクは、前記成分に加えて、インクの諸性能を改善するために添加剤を含有することができる。そのような添加剤の例としては、防腐剤が挙げられる。防腐剤の好ましい例としては、アビシア社より市販されているプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどが挙げられる。
本発明によるインクジェット捺染方法は、本発明の前記捺染用インクジェットインクを用いて、予め前処理を施した布帛に、吐出させたインクを付着させる工程、定着する工程、及び洗浄する工程により主に構成される。それぞれの工程には、公知の方法及び操作を使用することができる。以下、各工程の具体的な態様を例示する。
本発明のインクジェット捺染方法は、予め前処理を施した布帛、例えば、植物性繊維、動物性繊維、又はアミド系繊維のいずれか一つから構成される布帛、あるいはそれらの2種以上の繊維の混紡からなる布帛に、インクジェット捺染を行なうことが好ましい。
糊剤としては、例えば、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体、あるいは、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等が用いられる。
更に、ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、又はジメチルチオ尿素等のアルキル尿素を挙げることができる。
前記の前処理剤は、シリカを含有することができ、そのシリカは発色性向上に有効である。シリカとしては、好適には表面が水酸基で覆われているものがよい。水酸基は水に対して強い親和力をもつので、反応インクの定着効率を向上させることができる。また、シリカと尿素とを組み合わせることで、相乗効果が働き、この発色性が著しく向上する。シリカの含有量は、前処理剤液に対して、好ましくは0.5〜8重量%である。0.5重量%未満ではマゼンタ色での発色効果が少なくなり、また8重量%を超えるとマゼンタ印捺部分で色むらが発生しやすくなる。更に、シアン、ブルーでは発色濃度低下が起こる。更にまた、シリカが布帛から離れやすくなり、インクジェット吐出不良が起こりやすくなる。
後処理は、例えば、公知のスチーマー(マチス社製;スチーマーDHe型)を用いて定着操作を行なうことができる。具体的には、例えば、温度102℃、湿度98%以上の環境下で8分間スチーミング処理を行なう。
本発明のインクジェット捺染方法においては、本発明の捺染用インクジェットインクを、圧電素子を用いたピエゾ振動子を用いたインクジェットプリンタヘッドに充填し、インクジェット捺染を行なうことが望ましい。ピエゾ型ヘッドは耐久性にきわめて優れており、本発明のように、特に長時間にわたって安定的な吐出を求められる分野には、最適である。更に、本発明のインクはピエゾ型のプリントヘッドとのマッチングに優れており、広範囲の温度領域で長時間安定した連続吐出が達成される。このことは膨大な量のインク吐出を要求される長尺物のインクジェット印捺分野に好適である。特に1,2−ヘキサンジオールで吐出量を最適化されたインクは極めて安定に吐出し、好適である。
表1に示す組成を有する実施例1〜実施例5及び比較例1〜3のインクを調製した。
(1)高温・低湿吐出試験
表1の組成からなり、製造直後のインクを用いて評価した。プリンタとしては、市販のインクジェットプリンタ(MJ−8000C;セイコーエプソン製)を改造したプリンタ(以後、「評価機」と称する)を用いた。
前記評価機に、製造直後のインクを充填し、35℃及び湿度20%以下の条件で吐出させた。吐出は1日あたり10時間、A4紙換算で10000ページに相当する量まで行った。結果を表2に示す。なお、表2中の「OK」は、10000ページ以上まで支障なく吐出することができたことを意味し、「2000」及び「4000」は、それぞれ、2000ページ及び4000ページに相当する量まで吐出を行った際に、クリーニング操作でも回復しない非吐出及び吐出曲がりが発生したことを示す。
前項(1)の10000ページ(又は2000ページ若しくは4000ページ)に相当する量までの吐出試験の終了後に、評価機のホームポジションにあるヘッドキャップを観察し、ヘッドキャップ内部に染料の析出物の堆積が存在するか否かを目視観察した。結果を表2に示す。表2中の「OK」は、析出物が存在しないことを意味し、「NG」は、析出物の堆積が存在したことを意味する。
各インクを作成直後に評価機に充填した場合、あるいはアルミニウム製パック内にて60℃で10日放置してから評価機に充填した場合のそれぞれについて、予め前処理した綿ブロード上にインクジェット捺染し、定着及び洗浄処理の後、各々の光学濃度(OD)を測定した。OD値は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4成分の内、最大値を示す成分を印捺物のODとした。測定器は、測色計(グレタグマクベスSPM−50)を用いた。結果を表2に示す。
各インクを作成直後に評価機に充填し、評価機から20℃で吐出させ、そのドットあたりの吐出量を測定した。結果を表2に示す。単位はng/ドットである。
各インクを作成直後に評価機に充填し、常温下で1ヶ月間連続吐出を行った。1ヶ月経過後に、吐出曲りが発生するか否かを判定した。判定基準は、吐出曲りが発生したノズル数をカウントした。結果を表2に示す。表2中の「OK」は、吐出曲りが観察されなかったことを意味する。
各試験の評価結果を表2にまとめた。
2−イミダゾリジノンを添加している実施例1〜5のインクでは、35℃で相対湿度20%以下の環境でも全く支障なく10000ページ相当分まで吐出することができた。また、尿素を添加した比較例2のインクでも同様の結果が得られた。一方、2−イミダゾリジノン及び尿素のいずれも添加していない場合は、比較例1のインクで約2000ページ相当分にて、また、比較例3のインクで約4000ページ相当分にて詰まりが現れた。更に、この詰まりは評価機に備えられているクリーニング操作を行っても回復しなかった。なお、比較例1のインク及び比較例3のインクについて吐出を続けると、詰まりを起こすノズル数が段々に増えていった。
前項(1)の高温・低湿吐出試験の後に、評価機のホームポジションにおけるヘッドキャップ内部を観察した。
実施例1〜5のインク及び比較例2のインクには異常が全く観察されなかった。一方、比較例1及び3のインクでは、インクを構成している染料が析出していた。この析出物はヘッドキャップ内部に堆積しており、プリンタヘッドに接触する状態にまでなっていた。前項(1)の高温・低湿吐出試験で比較例1及び3のインクがヘッド詰まりを起こしたこと、及びクリーニングによっても回復しなかった原因は、この析出した染料がヘッドノズル内に入り込んだことが原因であることが分かった。
実施例1〜5のインク及び比較例1及び3のインクにおいては、インク製造直後での印捺濃度と60℃下で10日放置後の印捺濃度との差は、ODで0.01〜0.02と極めて少ないことが分かった。一方、比較例2のインクは、放置後にODの低下が0.28に達し、低下の程度が大きいことが分かる。これは、尿素がインクの安定性に影響を与えたことを示している。
実施例1〜5及び比較例1〜3の結果より、1,2−ヘキサンジオールの含有量を増やすと、インクの吐出量が減ってくることが分かる。特に、ピエゾ型のプリントヘッドにおいては、各々で最適な吐出量が決まっているが、本発明のインクは、1,2−ヘキサンジオールの含有量を変えることで各ヘッドに適した吐出量を得るインクを作成することができる。
1,2−ヘキサンジオール非添加の実施例4のインクでは、1ヶ月の連続吐出試験で3回曲りが発生した。この曲がりはインクの吐出量がやや多めであることが原因であった。但し、この曲がりはクリーニング操作一回でいずれも回復した。従って、実使用上は全く問題ないと判断することができた。
Claims (20)
- 反応染料及び2−イミダゾリジノンを含むことを特徴とする、捺染用インクジェットインク。
- 前記反応染料がモノクロロトリアジニル誘導体染料である、請求項1に記載の捺染用インクジェットインク。
- 前記モノクロロトリアジニル誘導体染料濃度が8重量%以上である、請求項2に記載の捺染用インクジェットインク。
- 前記モノクロロトリアジニル誘導体染料が、C.I.ゴールデンオレンジ13である、請求項2又は3に記載の捺染用インクジェットインク。
- 更に、界面活性剤、多価アルコール、及び水を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の捺染用インクジェットインク。
- 更に緩衝剤を含む、請求項5に記載の捺染用インクジェットインク。
- pHが6〜9である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の捺染用インクジェットインク。
- 更にピロリドン系溶媒を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の捺染用インクジェットインク。
- 更に金属イオン封鎖剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の捺染用インクジェットインク。
- 水系前処理剤によって予め処理した布帛に、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット捺染インクを吐出させる工程を含むことを特徴とする、インクジェット捺染方法。
- 前記布帛が、植物性繊維、動物性繊維、又はアミド系繊維のいずれか一つ、あるいはそれら繊維2種以上の混紡からなる布帛である、請求項10に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記水系前処理剤が、糊剤、アルカリ剤、及びヒドロトロピー剤を含む、請求項10又は11に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記水系前処理剤が、更にシリカを含有する、請求項12に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記水系前処理剤が、シリカ0.5〜8重量%を含有する、請求項13に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記シリカの表面が水酸基変性されている、請求項13又は14に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記シリカの平均粒径が10μm以下である、請求項13〜15のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
- シリカ含有の前記水系前処理剤によって予め処理した布帛に、少なくともシアン水系インクジェット捺染インク又はブルー水系インクジェット捺染インク、及びマゼンタ水系インクジェット捺染インクを含むインクセットを用いてインクジェット捺染を実施する、請求項13〜16のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記水系インクジェット捺染インクを、ピエゾ振動子を用いたインクジェットプリントヘッドに充填してインクジェット捺染を行う、請求項10〜17のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法。
- 前記インクジェットプリントヘッドのノズル面が撥インク性皮膜層を有する、請求項18に記載のインクジェット捺染方法。
- 請求項10〜19のいずれか一項に記載のインクジェット捺染方法によって捺染された布帛。
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