JP6657648B2 - インクジェット捺染用インク組成物及びインクジェット捺染方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット捺染用インク組成物、及び該インク組成物を用いるインクジェット捺染方法に関する。
従来、布帛などに画像を印捺する方法として、スクリーン捺染法、ローラー捺染法、ロータリースクリーン捺染法、または転写捺染法等が用いられている。しかしながら、画像デザインの変更毎に、高価なスクリーン枠、彫刻ローラー、転写紙等を用意する必要があるため、多品種少量生産にはコスト的に不向きであり、ファッションの多様化に迅速に対応することが困難であった。
こうした従来の捺染方法の欠点を解消するために、スキャナーで見本を読み取り、コンピューターで画像処理を行い、その結果をインクジェット記録方式で印捺する技術(以下、「インクジェット捺染」ともいう。)が開発されている。インクジェット記録方式は、インク液滴をインクヘッドから記録媒体(例えば、紙や布帛)に向かって飛翔させ、その液滴を記録媒体に付着させる記録方式であり、その機構が比較的簡便で安価であり、かつ高精細で高品位な画像を形成できるものである。このようなインクジェット記録方式を適用すれば、従来の捺染方式で必要とされていた版を作製する必要がなく、手早く階調性に優れた画像を形成できることから、納期の短縮、多品種少量生産への対応等が可能になる。また、インクジェット捺染によれば、画像形成時に必要量のインクのみを使用するため、従来のスクリーン捺染等に比較して、廃液が少ない等の環境的利点も有する。
ところで、インクジェット捺染において、レッドからオレンジの領域における発色性及び耐候性に優れた染料は限られている。C.I.アシッドオレンジ33は、発色性及び耐候性に優れた酸性染料として知られている。例えば特許文献1では、インクジェット捺染用ではないが、液体クロマトグラフィーで展開した際、少なくとも2つのピークを持ち、高極性な第1ピーク面積S1に対する低極性な第2ピーク面積S2の比S2/S1が0.90未満であるC.I.アシッドオレンジ33を含有するインクジェット記録用インクが開示されている。特許文献1に開示されているインクジェット記録用インクは、C.I.アシッドオレンジ33の極性の高い染料部分の割合を高くする(水溶性を高くする)ことで、ノズルの目詰まりや噴射曲がりを低減し吐出信頼性に優れ、耐候性及び発色性の良好な画像を形成できるとしている。
特開2014−162863号公報
しかしながら、C.I.アシッドオレンジ33の極性の高い染料部分の割合を高くすると、布帛に印捺する場合には、洗濯堅牢性が不十分となることがわかった。また、C.I.アシッドオレンジ33を含有するインク組成物をインクジェットヘッドから連続吐出すると、インク抜けが発生することがあった。この理由としては、長期放置によってC.I.アシッドオレンジ33のアゾ基が分解されて窒素が発生し、この窒素に由来する微小な気泡がインクジェットヘッドの流路を形成する樹脂内壁に付着し、ヘッド外へ排出されることなく滞留することにより生じるものと推察される。特にこの現象は、C.I.アシッドオレンジ33の極性の低い成分が多いと生じやすく、その理由としては、(水性インク
と比べて)疎水性である微小な気泡が、染料の極性の低い成分に覆われつつ、インクジェットヘッドの微細な流路で結合して大きく成長し、最終的に流路全体を塞ぐように強固に付着し、ヘッド外へ排出され難くなる為と推察される。
そこで、本発明に係る幾つか態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、布帛に印捺した場合に、洗濯堅牢性に優れた画像を形成できるインクジェット捺染用インク組成物を提供するものである。
また、本発明に係る幾つかの態様は、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性を確保できると共に、布帛に印捺した場合に洗濯堅牢性に優れた画像を形成できるインクジェット捺染用インク組成物を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット捺染用インク組成物の一態様は、
着色剤、水及び水溶性溶剤を含有するインクジェット捺染用インク組成物であって、
前記着色剤として、極性の異なる少なくとも2つの染着成分を含むC.I.アシッドオレンジ33を含有し、
前記C.I.アシッドオレンジ33に含まれる、極性の高い染着成分のインク中の含有量S1に対する極性の低い染着成分の含有量S2の比S2/S1が0.9以上であることを特徴とする。
適用例1のインクジェット捺染用インク組成物によれば、特定のC.I.アシッドオレンジ33を含有することで、布帛に印捺した場合に洗濯堅牢性に優れた画像を形成することができる。
[適用例2]
適用例1のインクジェット捺染用インク組成物において、
前記比S2/S1が1.5以上であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2のインクジェット捺染用インク組成物において、
前記比S2/S1が液体クロマトグラフィーで展開した結果に基づくものであることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット捺染用インク組成物において、前記水溶性溶剤として、logP値(水/オクタノール分配係数)が−0.5以上1以下であり、かつ、標準沸点が200℃以上である水溶性溶剤を少なくとも1種以上含有することができる。
特定のC.I.アシッドオレンジ33を含有するインク組成物を長期放置する場合にはアゾ基が分解されて発生した窒素に由来する微小な気泡が発生することがあるが、適用例4のlogP値(水/オクタノール分配係数)が−0.5以上1以下の水溶性溶剤を含有したインク組成物にすることで、微細な気泡を大きく成長させることなくインク中に溶解させたままの状態を維持し、インクジェットヘッド外へ効果的に排出させることができる為、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性が良好となる。また、適用例4のイ
ンクジェット捺染用インク組成物によれば、特定のC.I.アシッドオレンジ33を含有することで、布帛に印捺した場合に洗濯堅牢性に優れた画像を形成することができる。
[適用例5]
本発明に係るインクジェット捺染方法の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インクと、インクジェット浸透液とを布帛の一方の面に付着させるインクジェット捺染方法であって、
インクジェット浸透液を吐出するタイミングが、インクジェット捺染用インクの先、同時、または後のいずれかであることを特徴とする。
適用例5のインクジェット捺染方法によれば、インクジェットヘッドのノズルからの吐出安定性が確保され、かつ、洗濯堅牢性に優れた画像を形成することができる。また、布帛に浸透液を付着させることにより、インクが布帛の厚み方向へ染み込んだ後に、浸透液による布帛への浸透効果を付与できる。これにより、布帛の表面(吐出面)と、裏面とに濃度差無く、均一に染着することができる。
実施例1で使用したC.I.アシッドオレンジ33のクロマトグラム。
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.インクジェット捺染用インク組成物
本実施形態に係るインクジェット捺染用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、着色剤、水及び水溶性溶剤を含有し、前記着色剤として、極性の異なる少なくとも2つの染着成分を含むC.I.アシッドオレンジ33を含有し、前記C.I.アシッドオレンジ33に含まれる、極性の高い染着成分のインク中の含有量S1に対する極性の低い染着成分の含有量S2の比S2/S1が0.9以上であることを特徴とする。このように、比S2/S1が0.9以上であるC.I.アシッドオレンジ33を含有することにより、極性の低い(すなわち、疎水性の高い)染着成分が布帛に効果的に染着するので、布帛に印捺した場合に洗濯堅牢性に優れた画像を形成することができる。
本実施形態に係るインク組成物は、インクジェット捺染用のオレンジインクである。本実施形態に係るインク組成物は、着色剤、水、水溶性溶剤、その他の添加剤を含有する。以下、インク組成物に含まれる成分について説明する。
1.1.着色剤
本実施形態に係るインク組成物は、着色剤として特定のC.I.アシッドオレンジ33(以下、「特定アシッドオレンジ33」ともいう。)を含有する。特定アシッドオレンジ33は、極性の異なる少なくとも2つの染着成分を含んでおり、極性の高い染着成分のインク中の含有量S1に対する極性の低い染着成分の含有量S2の比S2/S1が0.9以上であることを特徴としている。比S2/S1の下限値は、0.9以上であればよいが、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上である。比S2/S1の上限値は、特に限定されないが、好ましくは10.0以下、より好ましくは7.0以下、特に好ましくは5.0以下である。含有量比S2/S1が前記範囲にあると、極性の低い(すなわち、疎水性の高い)染着成分が布帛に効果的に染着するので、C.I.アシッドオレンジ33に由来する高発色性や高耐候性のみならず、布帛に印捺した場合に洗濯堅牢性が非常に良好となる。
インク中における極性の高い染着成分の含有量S1に対する極性の低い染着成分の含有量S2の比S2/S1は、インクを液体クロマトグラフィーで展開することにより各染着成分のピークを分離して、そのピーク面積の比をとることにより求めることができる。
本発明に用いられる液体クロマトグラフィーとしては、例えばペーパークロマトグラフィー、TLC、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)等を挙げることができ、これらのどの分析方法を用いても染料の染着成分を極性で分離できれば、固定相により所望の展開溶媒を選択することができる。展開溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、クロロホルム、アセトニトリル、ピリジン、モルホリン、アセトン、2−プロパノール、エタノール、メタノール、水よりなる群から選択される単独または混合溶媒が挙げられる。好ましい展開溶媒としては、クロロホルム:メタノール:水=7:2:1の混合溶媒が挙げられる。
特定アシッドオレンジ33は、通常、極性の高い染着成分と極性の低い染着成分の2種類を主成分として含んでいる。そのため、クロマトグラフにおいて、極性の高い方の染着成分のピーク面積と極性の低い方の染着成分のピーク面積との比から比S2/S1を求めることができる。なお、特定アシッドオレンジ33が3種類以上の染着成分を含んでいる場合には、クロマトグラフにおいて、全ピークの中でピーク面積が最も大きいピークとその次に大きいピークの2つのピークを選定し、極性が高い染着成分のピーク面積と極性が低い染着成分のピーク面積との比から比S2/S1を求めることができる。
本実施形態に係るインク組成物は、着色剤として特定アシッドオレンジ33を含有していればよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の着色剤を併用することもできる。具体的には、以下に例示する酸性染料、直接染料、反応性染料等が挙げられる。
酸性染料としては、C.I.アシッドイエロー1、3、6、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、67、72、73、79、99、104、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、219:1、220、230、232、235、241、242、246;C.I.アシッドオレンジ3、7、8、10、19、22、24、51、51S、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、C.I.アシッドレッド1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、60、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415;C.I.アシッドバイオレット17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126;C.I.アシッドブルー1、7、9、15、23、25、40、61:1、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、127:1、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、258、260、264、277:1、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350;C.I.アシッドグリーン9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109;C.I.アシッドブラウン2
、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413;C.I.アシッドブラック1、2、3、24、24:1、26、31、50、52、52:1、58、60、63、63S、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222等が挙げられる。
直接染料としては、C.I.ダイレクトイエロー8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、137、142、147、153;C.I.ダイレクトオレンジ6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118;C.I.ダイレクトレッド2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254;C.I.ダイレクトバイオレット9、35、51、66、94、95;C.I.ダイレクトブルー1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291;C.I.ダイレクトグリーン26、28、59、80、85;C.I.ダイレクトブラウン44、44:1、106、115、195、209、210、212:1、222、223、C.I.ダイレクトブラック17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169等が挙げられる。
反応性染料としては、C.I.リアクティブイエロー2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176;C.I.リアクティブオレンジ1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107;C.I.リアクティブレッド2、3、3:1、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、226、228、235;C.I.リアクティブバイオレット1、2、4、5、6、22、23、33、36、38;C.I.リアクティブブルー2、3、4、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236;C.I.リアクティブグリーン8、12、15、19、21;C.I.リアクティブブラウン2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46;C.I.リアクティブブラック5、8、13、14、31、34、39等が挙げられる。
本実施形態に係るインク組成物において、着色剤の総量を100質量%としたときに、特定アシッドオレンジ33の含有割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
本実施形態に係るインク組成物において、インク中の着色剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.5質量%以上8質量%以下、より好ましくは1質量%以上7質量%以下である。インク中の着色剤の含有量が前記範囲であれば、十分な発色濃度の捺染物が得られると共に、吐出安定性や保存安定性を確保することもできる。
1.2.水
本実施形態に係るインク組成物は、液状媒体としての水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。インク組成物中における水の含有量は、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上90質量%以下、より好ましくは55質量%以上70質量%以下である。
1.3.水溶性溶剤
本実施形態に係るインク組成物は、インクジェットプリンターの記録ヘッドのノズルからのインクの連続吐出安定性を向上させる観点から、水溶性溶剤を含有する。このような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類等が挙げられる。また、これらの水溶性溶剤は、1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの水溶性溶剤の中でも、logP値(水/オクタノール分配係数)が−0.5以上1以下で、かつ、標準沸点が200℃以上である水溶性溶剤(以下、「特定水溶性溶剤」ともいう。)を少なくとも1種以上含有することが好ましい。特定水溶性溶剤のlogP値は、好ましくは−0.4以上0.5以下、より好ましくは−0.2以上0.5以下である。特定水溶性溶剤の標準沸点は、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上、特に好ましくは240℃以上である。
特定水溶性溶剤の具体例としては、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等が挙げられる。
特定アシッドオレンジ33を含有するインク組成物は、長期放置していた場合に特定アシッドオレンジ33のアゾ基が分解されて窒素(気泡)が発生しやすい。この窒素に由来する微小な気泡がインクジェットヘッドの流路を形成する樹脂内壁に付着し、ヘッド外へ排出されることなく滞留することにより、連続印字の際に吐出安定性が損なわれてしまう。特にこの現象は、C.I.アシッドオレンジ33の極性の低い成分が多いと生じやすい。その理由としては、(水性インクと比べて)疎水性である微小な気泡が、染料の極性の低い成分に覆われつつ、インクジェットヘッドの微細な流路で結合して大きく成長し、最
終的に流路全体を塞ぐように強固に付着し、ヘッド外へ排出され難くなる為と推察される。なお、連続印字の際に高温環境下であると、吐出安定性がさらに損なわれる傾向がある。また、インクジェット捺染として布帛に印捺する場合には、通常のインクジェット記録に比べてノズルから布帛までの距離が長くなるため、さらなる吐出安定性の確保が必要となる。そこで、本実施形態に係るインク組成物に特定水溶性溶剤を添加したところ、長期放置していた場合の気泡の発生を抑制でき、インクジェット捺染での連続吐出安定性が効果的に向上することが明らかとなった。
上記例示した特定水溶性溶剤及び一般的な水溶性溶剤のlogP値、標準沸点について下表1に纏めた。
Figure 0006657648
ここで「logP値(水/オクタノール分配係数)」とは、化学物質の疎水性(脂質への溶けやすさ)を表す物理化学的な指標値である。logP値はオクタノール/水系において、これらの二層に溶質がどのような割合で分配されるかを示す指標値である。つまり、logP値が高いほど水に溶けにくく、油に溶けやすい(疎水性となる)。LogP値は、被験物質と二種類の溶媒(水及び1−オクタノール)を実際にフラスコに入れ、よく振り混ぜる、フラスコ振とう法(JIS Z7260−107)により求めることができる。
具体的には、水と1−オクタノールを24時間以上混合してそれぞれ飽和させ、被験物質と共にフラスコに取り温度を保ってよく振とうする。その後、遠心分離機にかけ完全に相分離させたら、それぞれの相に含まれる被験物質を機器分析によって定量する。その定量値から下記式(1)に用いてlogP値を算出する。
P=log10OW ・・・・・(1)
上記式(1)において、POW=C/Cであり、Cは1−オクタノール層中の被験物質濃度(mol/L)、Cwは水相中の被験物質濃度(mol/L)である。
本実施形態に係るインク組成物中における水溶性溶剤の含有量は、ノズルの目詰まり防止や滲み防止の観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、特に好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
また、本実施形態に係るインク組成物中における特定水溶性溶剤の含有量は、インクジェット捺染での連続吐出安定性を確保する観点から、好ましくは1質量%以上15質量%
以下、より好ましくは2質量%以上12質量%以下、特に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
1.4.その他の添加剤
1.4.1.界面活性剤
本実施形態に係るインク組成物には、布帛への濡れ性を高めてインクの浸透性を高める観点から、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、着色剤としての特定アシッドオレンジ33と布帛がイオン結合により結合するため、その結合の阻害を防ぐ観点から、イオン性界面活性剤よりも非イオン性界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコールまたはアセチレンアルコール系界面活性剤が挙げられる。
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤を使用することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤および/またはアセチレンアルコール系界面活性剤を用いることで、さらに滲みが低減された高品質の捺染物を得ることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、オルフィンE1004、E1010、PD001、PD002W、SPC;サーフィノール104、420、440、465、485、STG(以上、日信化学工業株式会社製);アセチレノールE00、E40、E100、LH(以上、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。本実施形態に係るインク組成物における界面活性剤の含有量は、通常0.1質量%以上3質量%以下、好ましくは0.2質量%以上2質量%以下である。
1.4.2.その他の添加剤
本実施形態に係るインク組成物には、さらに必要に応じて、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤(例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の3級アルカノールアミン)、または溶解助剤等のように、インクジェット捺染用インクにおいて通常用いることができる各種添加剤の1種または2種以上を含有させることができる。
1.5.インク組成物の製造及び物性
本実施形態に係るインク組成物は、上記した各成分を、任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。
本実施形態に係るインク組成物は、印捺品質とインクジェット捺染用インクとしての信
頼性とのバランスの観点から、表面張力が25〜40mN/mであることが好ましく、28〜35mN/mであることがより好ましい。また、同様の観点から、インク組成物の20℃における粘度は、1.5〜10mPa・sであることが好ましく、2〜8mPa・sであることがより好ましい。表面張力及び粘度を前記範囲内とするには、前記特定アシッドオレンジ33の濃度を調整する方法、前記水溶性溶剤の種類や添加量等を調整する方法等を用いることができる。
2.インクジェット捺染方法
本実施形態に係るインクジェット捺染方法は、上記のインクジェット捺染用インクと、インクジェット浸透液とを布帛の一方の面に付着させるインクジェット捺染方法であって、インクジェット浸透液を吐出するタイミングが、インクジェット捺染用インクの先、同時、または後のいずれかであることを特徴とする。本実施形態に係るインクジェット捺染方法によれば、様々な布帛に対して洗濯堅牢性や、発色性及び耐候性に優れた画像を形成できる。また、布帛にインクジェット浸透液を付着させることにより、インクが布帛の厚み方向へ染み込んだ後に、浸透液による布帛への浸透効果を付与できる。これにより、布帛の表面(吐出面)と、裏面とに濃度差無く、均一に染着することができる。
2.1.インクジェット捺染工程
本実施形態に係るインクジェット捺染方法は、インクジェット方式により、上記のインクジェット捺染用インクとインクジェット浸透液とを布帛の一方の面に付着させることにより行われる。具体的には、インクジェットプリンターのインクカートリッジに上記のインクジェットインク及びインクジェット浸透液を充填して、記録ヘッドからインク滴を布帛に対して吐出することにより行われる。インクジェットプリンターとしては、コンティニュアス方式、ドロップオンデマンド方式等を適用することが可能であるが、ドロップオンデマンド型のインクジェットプリンターが好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェットプリンターには、ピエゾ方式(記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う方法)、サーマル方式(記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等によって発生した気泡を用いて記録を行う方法)等があり、いずれのインクジェット方法を採用することもできるが、ピエゾ方式が好ましい。
本実施形態において、インクジェット浸透液を吐出するタイミングは、インクジェット捺染用インクを吐出する前であってもよいし、インクジェット捺染用インクの吐出と同時であってもよいし、またはインクジェット捺染用インクを吐出する後であってもよい。これらのいずれのタイミングであっても、インクが布帛の厚み方向へ染み込んだ後に、浸透液による布帛への浸透効果を付与できる。
本実施形態においては、インクジェット浸透液の布帛に対する付着量は、布帛に対するインク塗布量の20〜200%であることが好ましい。インクジェット浸透液の付着量を上記範囲内とすることにより、インクの布帛の厚み方向への浸透性を効果的に調整することができる。
本実施形態で用いられるインクジェット浸透液には、浸透剤の他、水、pH調整剤、その他の添加剤を含有することができる。
浸透剤としては、インクジェット捺染インクにおいて通常用いられる浸透性有機溶剤や浸透性界面活性剤を好適に用いることができる。このような浸透性有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;エチレングリコー
ルモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製:ニューコール1006)、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製:ニューコール1004)等の多価アルコールのアルキルエーテル類;尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの浸透性有機溶剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。浸透液は、上記した浸透性有機溶剤を、浸透液の全質量に対して10〜30質量%含むことが好ましい。
また、浸透性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類;アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤;サーフィノール61、82、104、440、465、485(何れも商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンE1010、オルフィンSTG、オルフィンY(何れも商品名、日信化学工業株式会社製)等のアセチレングリコール系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤;KF−353A、KF6017、X−22−6551、AW−3(何れも商品名、信越化学工業株式会社製)等のオルガノポリシロキサン系界面活性剤等を挙げることができる。浸透液は、上記した浸透性界面活性剤を0.1〜3質量%含むことが好ましい。
本実施形態において用いられるインクジェット浸透液は、上記インクジェット捺染用インクとのpHの調整を行うために、pH調整剤としての有機アミンを含有してもよい。有機アミンとしては、三級アミンが好ましく使用でき、例えばトリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。有機アミンの含有量は、浸透液の全質量に対して、0.05〜3質量%である。
本実施形態において用いられるインクジェット浸透液は、上記した各成分に加えて水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
本実施形態において用いられるインクジェット浸透液は、さらに必要に応じて、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、溶解助剤等、インクジェット捺染用インクにおいて通常用いることができる各種添加剤の1種または2種以上を含有することができる。
2.2.前処理工程
本実施形態に係るインクジェット捺染方法では、通常、上記したインクジェット印捺工程を行う前に、予め布帛の前処理を行う。予め布帛の前処理を行うことで、布帛の横方向や縦方向へのインクの滲みを防止でき、さらに発色性も良好となる。布帛の前処理には、公知の前処理剤を用いることができ、前処理剤は、一般に、糊剤、pH調整剤、及びヒドロトロピー剤を含み、更に場合によりシリカを含むことができる。前処理剤には、これらの成分が含まれるため、布帛の前処理を行うとインクの布帛への浸透を阻害する方向に作用しやすい。そのため、インクジェット捺染用インクを吐出するのと同時、もしくはその前後でインクジェット浸透液を布帛に付着させることで、インクの布帛への浸透性を向上させることができる。これにより、布帛でのインクの滲みを防止し、インクの発色性を確
保しつつ、布帛の裏面までインクを浸透させ、布帛の表面から裏面まで均一に染色することができる。
糊剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等が用いられる。
また、pH調整剤としては、酸アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウムが望ましい。更に、ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、又はジメチルチオ尿素等のアルキル尿素が挙げられる。
2.3.後処理工程
本実施形態に係るインクジェット捺染方法では、上記のインクジェット印捺工程を実施した後、染料固着処理を行うことが好ましい。染料固着処理は、例えば公知のスチーマー(マチス社製;スチーマーDHe型)を用いて定着操作を行うことができる。具体的には、例えば温度102℃の高加湿条件下で10〜30分間スチーミング処理を行う。
その後、洗浄操作を行う。具体的には、布帛を水道水で揉み洗いした後に、50℃程度の温水中に、ノニオン性ソーピング剤を添加し、時々撹拌しながら15分間程度浸ける。浴比(印捺布質量/浴質量)は1/50であることが好ましい。更に洗浄液中に水道水を入れながら手揉み洗いをする。十分に水洗した後に布を乾燥させ、アイロンを掛けて印捺布を得ることができる。
2.4.プリンターヘッド
上記した通り、本実施形態におけるインクジェット捺染方法は、サーマル方式、コンティニュアス方式、又はピエゾ方式などの任意のインクジェット方式に適用することができるが、好適にはピエゾ方式である。
また、本実施形態において、上記インクジェット捺染用インクやインクジェット浸透液をプリンターヘッドに充填して吐出する際には、このプリンターヘッドのノズルプレート表層部分に撥インク処理を施してあることが望ましい。撥インク処理を施すことにより、インクの飛行曲がりが発生しにくくなり、布帛上に再現性の優れた所望の画像を印捺することができる。
また、撥インク処理は、ノズル孔内面深さ方向に若干量施すことが好ましい。内面に施すことにより、インクメニスカス位置が安定し、更に吐出安定性が向上する。また、ノズルプレート表面にインクが出にくくなり、ノズル表面の撥インク性を、より長時間維持することができる。
ノズルプレートには、所望の口径を有する孔を設けることができる。ノズルプレートの構成材料としては、金属、セラミックス、シリコン、硝子、又はプラスチック等を挙げることができ、好ましくはチタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、錫、又は金等の単一材、若しくはニッケル−リン合金、錫−銅−リン合金、銅−亜鉛合金、又はステンレス鋼等の合金や、ポリカーボネート、ポリサルフォン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリサルフォン、又は各種の感光性樹脂で形成されていることが望ましい。
これらの材料表面を撥インク処理する方法は、特に限定されないが、使用する撥水性材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリパーフルオロアルコキシブタジエン、ポリフルオロビニリデン、ポリフルオロビニル、又はポリジパーフルオロアルキルフマレート等の樹脂を単独に又は混合して用いることが好適である。
2.5.布帛
本実施形態によるインクジェット捺染方法において好適に使用される布帛としては、ポリアミド系繊維及び/又はセルロース系繊維からなる布帛(例えば、織物、網物、または不織布)が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等が挙げられる。ポリアミド系繊維としては、例えば絹、ウール、ナイロンが挙げられる。本実施形態に係るインクジェット捺染方法によれば、絹だけでなくナイロンやウール、及び絹やナイロンとウレタンとの混紡に対する洗濯堅牢性や、発色性及び耐候性に優れた画像を形成することができ、また浸透液を用いることで、形成された画像の滲みを低減することができる。
3.実施例
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
3.1.インクジェット浸透液の調製
下記の表2に示した組成に従い、各成分を混合してインクジェット浸透液を調製した。なお、表2中、TEG−m−BEはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを表し、プロキセルXL2はロンザジャパン株式会社製の防黴剤(防腐剤)を表す。表2中の数値は、質量%を表す。
Figure 0006657648
3.2.インクジェット捺染用インク組成物の調製
下記の表3に示す着色剤、水溶性溶剤、界面活性剤を加え、さらにイオン交換水、pH調整剤を加えて合計100質量%とした。これを十分に混合撹拌した後、孔径5.0μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、表3に示す各インク組成物を調製した。なお、表3中、「オルフィンPD002W」は、商品名であり、日信化学工業株式会社製のアセチレングリコール系界面活性剤である。表3中の各インク組成の数値は、質量%を表す。
Figure 0006657648
表3において、比S2/S1が1.9のC.I.アシッドオレンジ33、比S2/S1が1.2のC.I.アシッドオレンジ33及び比S2/S1が0.9のC.I.アシッドオレンジ33については、それぞれファイン商事株式会社より入手したものを使用した。
一方、比S2/S1が0.8のC.I.アシッドオレンジ33については、以下のものを使用した。未精製のアシッドオレンジ33染料(Haihang Industry社製)7.0gを水100gに溶解し、これに50gの活性炭素(粒状)を入れ、1日撹拌した。ろ過で活性炭を除いた後、エバポレーターと減圧乾燥により染料固体を得た。
これらの各染料について、クロロホルム:メタノール:水=7:2:1を展開溶媒として高速液体クロマトグラフィーにて展開した。得られたクロマトグラムから極性の高い染着成分のピーク面積と極性の低い染着成分のピーク面積を求め、その面積比から比S2/S1を求めた。その結果を表3に併せて示す。なお、クロマトグラムの一例として、図1には、実施例1で使用したC.I.アシッドオレンジ33のクロマトグラムを示した。
3.3.インクジェット捺染及び評価方法
以下に示す評価方法における「duty値」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=(実吐出ドット数/(縦解像度×横解像度))×100
(式中、「実吐出ドット数」は単位面積当たりの実吐出ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
<洗濯堅牢性>
インクジェット印捺工程として上記で製造したいずれかのインク組成物をインクジェットプリンター(PX−G930、セイコーエプソン株式会社製)のヘッド1列に充填し、上記で製造した浸透液をヘッド1列に充填し、布帛の表面(印捺する面)に1440×720dpiの解像度でインク100%dutyと浸透液100%duty(合計200%duty)のベタ印刷(布帛の単位面積あたり1インクの塗布量が20mg/inch)を行った。このようにして、ベタ印刷を行った捺染物を用意した。なお、布帛には、ナイロンとウレタンの混紡を使用した。次いで、スチーマー(マチス社製;スチーマーDHe型)を用いて102℃の高加湿条件下で30分間スチーミング処理を行い、得られた捺染物についてISO 105−C10:2006に準じた方法で洗濯堅牢性評価を実施した。評価基準は、以下の通りである。その結果を表3に併せて示す。
◎:洗濯堅牢性の結果が4級以上である。
○:洗濯堅牢性の結果が3級以上、4級未満である。
×:洗濯堅牢性の結果が3級未満である。
<吐出安定性>
インクジェットプリンター(PX−G930、セイコーエプソン株式会社製)のヘッド1列に上記で製造したいずれかのインク組成物を充填した。この状態で6ヶ月間放置した。その後、このインクジェットプリンターを用いて、布帛の表面(印捺する面)にduty100%でベタパターンを連続150枚印字した。画像解像度は1440×720dpiとした。なお、布帛には、A4サイズのナイロンとウレタンの混紡を使用した。インク組成物の連続吐出安定性ついて、以下の基準により評価した。その結果を表3に併せて示す。
◎:A4ベタ150枚印字において、ドット抜けがない。
○:A4ベタ150枚印字において、ドット抜けが1本以上、10本以下。
×:A4ベタ150枚印字において、ドット抜けが11本以上。
3.4.評価結果
実施例1〜のインク組成物によれば、いずれも特定アシッドオレンジ33を含有しているので、得られた捺染物の洗濯堅牢性がいずれも良好であった。これに対して、比較例1のインク組成物は、比S2/S1が0.8のC.I.アシッドオレンジ33を含有しているので、布帛に対する染料の定着性が不十分となり、得られた捺染物の洗濯堅牢性が不良となった。
また、実施例1〜のインク組成物によれば、特定水溶性溶剤を含有することで、6ヶ月放置した場合でもインク中の気泡の発生が抑制されて、インクの連続吐出安定性がいずれも良好であった。これに対して、比較例3のインク組成物は、特定水溶性溶剤を含有していないので、6ヶ月放置後にインク中に気泡が発生することにより、インクの連続吐出安定性が損なわれることがわかった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (5)

  1. 着色剤、水及び水溶性溶剤を含有するインクジェット捺染用インク組成物であって、
    前記着色剤として、極性の異なる少なくとも2つの染着成分を含むC.I.アシッドオレンジ33を含有し、
    前記C.I.アシッドオレンジ33に含まれる、極性の高い染着成分のインク中の含有量S1に対する極性の低い染着成分の含有量S2の比S2/S1が1.2以上であることを特徴とする、インクジェット捺染用インク組成物。
  2. 前記比S2/S1が1.5以上であることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  3. 前記比S2/S1が液体クロマトグラフィーで展開した結果に基づくものであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  4. 前記水溶性溶剤として、logP値(水/オクタノール分配係数)が−0.5以上1以下であり、かつ、標準沸点が200℃以上である水溶性溶剤を少なくとも1種以上含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インク組成物。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用インクと、インクジェット浸透液とを布帛の一方の面に付着させるインクジェット捺染方法であって、
    インクジェット浸透液を吐出するタイミングが、インクジェット捺染用インクの先、同時、または後のいずれかであることを特徴とする、インクジェット捺染方法。
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