JP5400260B2 - インクジェット記録用メンテナンス液 - Google Patents
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Description
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液には、樹脂溶剤を含むことが必須である。この樹脂溶剤は、特に顔料インクに通常含まれる樹脂分散剤に対して良好な溶解剤として機能するという特徴を持つ。一般的な水性の顔料インクは、色剤である顔料とこれを水中に分散させる樹脂分散剤と水を主成分とし、必要に応じて水溶性有機溶剤等が添加されている。この顔料インクがプリンタのインク流路内で乾燥した場合、水と水溶性有機溶剤等が徐々に蒸発揮散して、最終的に顔料と樹脂分散剤が主に残った増粘・固化物となり、結果的に目詰まり等の不具合を発生させる。この増粘・固化物は水には容易に溶解あるいは分散しない。上述した従来のクリーニング液またはメンテナンス液を用いた場合では、水と比較してある程度の効果があるものの、目詰まり等の不具合を解消できるだけの洗浄性能・回復性能に劣る場合が多かった。それに対して本発明のインクジェット記録用メンテナンス液では、含まれる樹脂溶剤の作用により速やかに上記増粘・固化物がメンテナンス液中に溶解あるいは分散する性能に優れているため、洗浄性能・回復性能が高く、結果的に目詰まり等の不具合が解消する効果に優れている。
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液には、保湿剤を含むことが必須である。本発明で用いる保湿剤は低揮発性で保水能力が高く、かつ上述した樹脂溶剤との相溶性の高いものから選ばれる。そのようにすることにより、メンテナンス液の水分蒸発による乾燥を抑制して、長期放置によるメンテナンス液の組成の変質を抑止することが可能である。このため、例えば充填されて長期間装置が休止状態となった場合でも、本発明のメンテナンス液の効果が持続され、かつプリンタ内のインク流路部材への樹脂溶剤による反応性を抑えることができる。
水は、本発明のインクジェット記録用メンテナンス液の中心となる媒体であり、好ましい水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
本発明によるインクジェット記録用メンテナンス液は、別の態様によれば、さらに浸透剤を含むことができる。浸透剤を含むことにより、メンテナンス液による洗浄性をさらに向上させることができる。浸透剤を含ませることによりさらに洗浄性が向上する理由としては明確ではないが、例えば以下のように推察される。すなわち、以下に詳細に挙げる浸透剤はその分子内に親水性部分と疎水性部分とが存在しており、メンテナンス液の表面張力を下げる作用を持つ。そのため、プリンタ内のインク流路部材に対する濡れ性が向上して、インク流路内に存在するインク成分を効率的にメンテナンス液と置換する作用に優れている。また、インクが乾燥して生じる増粘・固化物に対する濡れ性・浸透性にも優れているため、その増粘・固化物にメンテナンス液を迅速に浸透させる作用を持つ。そのため、本発明のメンテナンス液中に含まれる樹脂溶剤が効果的・効率的に増粘・固化物内に浸透して、それら固化物等をメンテナンス液中に分散・溶解させる効果をさらに高める。
本発明によるインクジェット記録用メンテナンス液は、別の態様によれば、さらに防腐・防黴剤を含むことができる。本発明に用いられる防腐・防黴剤としては、イソチアゾロン系化合物、オキサゾリジン系化合物からなる群から選択されることが好ましい。万一メンテナンス液中にバクテリアや黴等が発生すると、これらが異物となってインクジェットプリンタ内のヘッドノズルやインク流路内を詰まらせ、インクの吐出に悪影響を及ぼす恐れがあるが、これら防腐・防黴剤を含ませることにより長期間放置された場合でもバクテリアや黴等が発生するのをより効果的に抑制することが可能となる。
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液は、25℃におけるpHが6〜11の範囲であることが好ましい。さらに好ましくはpHが7〜10の範囲である。pHが6未満の場合、色剤としてアニオン性化合物を含有するインクを使用するインクジェットプリンタに適用される場合等に洗浄性が十分に発揮されない恐れがある。またpHが11よりも大きい場合、メンテナンス液のインク流路部材に対する反応性が高くなり、部材の変質、異物の発生、吐出不安定等を引き起こす恐れがある。メンテナンス液のpHを上記範囲に調整するために、必要に応じて水溶性塩基性物質を使用することができる。
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液は、インクとして顔料インクを使用するインクジェットプリンタに適用されることが好ましい。上述のように、本発明のメンテナンス液は優れた洗浄性を有しているため、近年利用が拡大している顔料インクを使用したインクジェットプリンタにおいても好適に適用される。顔料インクとは色剤として顔料を用いるインクであり、使用できる顔料としては、例えばカーボンブラックやカラーインデックスに記載されているピグメントイエロー、ピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー、ピグメントブラック等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が使用できる。また、黄色4号、5号、205号、401号;橙色228号、405号;青色1号、404号等の有機顔料や、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料を用いることも出来る。前記色剤として顔料を用いる場合、インク中における分散安定性の観点から顔料とともに分散剤を併用するか、または顔料として表面処理顔料を用いることが好ましい。
以下、本発明のインクジェット記録用メンテナンス液を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1、表2に示す組成で実施例1〜10および比較例1〜6のメンテナンス液を調整した。各メンテナンス液は十分に攪拌したのち、1μm孔径のメンブランフィルターを用いて2kg/cm2の圧力で加圧濾過を行った後、以下の各評価に使用した。
インクとして全色顔料を使用したオンデマンド型インクジェットプリンタであるPX−V500(商品名:セイコーエプソン株式会社製)にインクを充填した後、実施例1〜10および比較例1〜6の各メンテナンス液5ccを使用してインク流路およびヘッド内部を洗浄した。その後インク流路およびヘッド内部を目視にて観察し、インクの残り具合により下記の基準に基づいて判定した。
判定A:インクがほぼ完全に除去できており、洗浄性に非常に優れる
判定B:インクがほとんど除去できており、洗浄性に優れる
判定C:インク残りが多く、洗浄性に劣る
上述のインクジェットプリンタPX−V500にインクを充填した後、実施例1〜10および比較例1〜6の各メンテナンス液5ccを使用してインク流路およびヘッド内部を洗浄した。その後、メンテナンス液を充填した状態でプリンタを60℃環境下で一週間放置した。放置後のヘッドのノズル周辺を顕微鏡により観察し、ノズル周辺の異物の付着具合により下記の基準に基づいて判定した。
判定A:ノズル周辺に異物の付着がほとんどない
判定B:ノズル周辺に若干の異物の付着が認められるが、ノズルを目詰まりさせるまでには至っていない
判定C:ノズル周辺に異物の付着が認められ、ノズルを目詰まりさせている
上述のインクジェットプリンタPX−V500にインクを充填した後、実施例1〜10および比較例1〜6の各メンテナンス液5ccを使用してインク流路およびヘッド内部を洗浄した。その後、メンテナンス液を充填した状態でプリンタを60℃環境下で一週間放置した。放置後のプリンタを常温に戻した後、インクを再度充填させてから連続して塗りつぶし画像印刷を行い、ドット抜け、ドット曲がり等の吐出安定性の具合により下記の基準に基づいて判定した。
判定A:インク充填直後より、飛行曲がり・未吐出等の吐出不安定が発生しない
判定B:インク充填後に2回以内のプリンタとしてのクリーニング動作を行うことで吐出安定性が得られる
判定C:吐出安定性を得るために、インク充填後に3回以上のプリンタとしてのクリーニング動作が必要
上述のインクジェットプリンタPX−V500にインクを充填した状態で、プリンタを60℃環境下で一週間放置した。放置後のプリンタを常温に戻した後、実施例1〜10および比較例1〜6の各メンテナンス液10ccを使用してインク流路およびヘッド内部を洗浄した。その後、インクを再度充填させてから連続して塗りつぶし画像印刷を行い、ドット抜け、ドット曲がり等の吐出安定性の具合により下記の基準に基づいて判定した。
判定A:インク充填直後より、飛行曲がり、未吐出等の吐出不安定が発生しない
判定B:インク充填後に2回以内のプリンタとしてのクリーニング動作を行うことで吐出安定性が得られる
判定C:吐出安定性を得るために、インク充填後に3回以上のプリンタとしてのクリーニング動作が必要、もしくは回復しない
判定D:インク流路およびヘッド内部の乾燥インクがメンテナンス液で洗浄されず、インク充填ができない
Claims (5)
- 少なくとも水と、25℃における水への溶解度が3重量%以上である、樹脂を溶解させる樹脂溶剤を0.1〜10重量%の範囲で含み、かつ保湿剤を1〜50重量%の範囲で含んでなり、
前記樹脂溶剤が、ケトン類としてアセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノン、エステル類として蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、3−メトキシブチルアセタート、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、リン酸トリエチル、アセトニトリル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ヘキサメチルリン酸トリアミド、含窒素化合物としてピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、ε−カプロラクタム、モルホリン、N−メチルモルホリン、含硫黄化合物としてスルホランからなる群から選ばれる一種以上であり、
前記保湿剤が、ポリオール類又はラクタム類であり、
樹脂分散剤を用いてインク中に分散された顔料を含む顔料インクを使用するインクジェットプリンタにおいて当該インクの洗浄に用いられることを特徴とするインクジェット記録用メンテナンス液。 - さらに浸透剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
- さらにイソチアゾロン系化合物、オキサゾリジン系化合物からなる群から選択される一種または二種以上の防腐・防黴剤を50ppm〜1重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
- 25℃における表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液を備える、インクジェットプリンタ。
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