JP6565535B2 - 複合体の製造方法 - Google Patents
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(1)セルロースナノファイバー分散液中で、エチレン性不飽和単量体を共重合させてなる複合体の製造方法であって、該セルロースナノファイバーがグリシジル基含有(メタ)アクリレート化合物で変性されてなることを特徴とする複合体の製造方法。
(2)前記エチレン性不飽和単量体が、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種以上が用いられることを特徴とする(1)に記載の複合体の製造方法。
(セルロースナノファイバー)
本発明において、セルロースナノファイバー(CNF)は、繊維幅が4〜500nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維であり、化学処理(カチオン化、アニオン化:カルボキシル化(酸化)、カルボキシメチル化等、疎水化:エステル化等、機能性官能基導入)したセルロースを解繊することによって得ることができる。
化学変性セルロースを製造するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物性材料(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものを挙げることができ、それらのいずれも使用できる。好ましくは植物又は微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
本発明において、化学変性セルロースとして、カルボキシメチル化したセルロースを用いる場合、カルボキシメチル化したセルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50となるものが好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる。セルロースを発底原料にし、溶媒として3〜20質量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的には水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールを混合する場合の低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う。
本発明において、化学変性セルロースとしてカルボキシル化(酸化)したセルロースを用いる場合、カルボキシル化セルロース(酸化セルロースとも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化(酸化)することにより得ることができる。特に限定されるものではないが、カルボキシル化の際には、アニオン変性セルロースナノファイバーの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gとなるように調整することが好ましく、1.0mmol/g〜2.0mmol/gになるように調整することがさらに好ましい。
アニオン変性セルロースを解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いることができる。解繊の際にはアニオン変性セルロースの水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊及び分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、前記水分散体に予備処理を施してもよい。
本発明では後工程の乳化重合操作の前に、セルロースナノファイバーの反応性を高めるため変性処理を行う。変性処理としては、セルロースナノファイバーと結合し、変性後に反応性の二重結合を付与できる物として、グリシジル基含有(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。グリシジル基含有(メタ)アクリレート化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、イタコン酸ジグリシジル、メタクリル酸2ーメチルグリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレンー4ーグリシジルエーテルまたは4ーグリシジルスチレンなど分子中に(メタ)アクリル酸およびグリシジル基を有するモノマー等が挙げられる。
本発明において、エチレン性不飽和単量体は、一般に重合に用いられるものであれば特に制限されるものではない。
乳化重合法に用いられる乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ジアルキルスルホサクシネートの塩類等のアニオン乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤、ビニルスルホン酸塩類、アクリル酸ポリオキシエチレン硫酸塩類、メタクリル酸ポリオキシエチレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルケニルフェニル硫酸塩類、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、メタクリル酸ポリオキシプロピレンスルホン酸塩類等のアニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメタクリロイルエーテル等のノニオン系反応性乳化剤、テトラデシルアミン酢酸塩類、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩類、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩類、1−メチル−1−ヒドロキシエチル−2−牛脂アルキルイミダゾリニウム塩類等のカチオン乳化剤を例示することができるがこれらに限定されるものではなく、また、これらの乳化剤を単独あるいは複数種用いることも可能である。
<TEMPO酸化セルロースナノファイバーの製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解サルファイトパルプ(日本製紙社)5g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム754mg(7.4mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)18ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化パルプを得た。酸化パルプに0.1Nの塩酸水溶液を加えて(塩酸の添加量:パルプ絶乾質量に対して0.1質量%)、pH2.8の5%(w/v)パルプスラリーを調製し、90℃で2時間酸加水分解処理した。酸加水分解処理した酸化パルプを水洗し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、超高圧ホモジナイザー(140MPa)で10回処理したところ、透明なゲル状分散液が得られた。得られた1.5%(w/v)のカルボキシル化セルロースナノファイバー分散液を次の乳化重合に供した。なお、得られたセルロースナノファイバーは、平均繊維系が4nm、アスペクト比が150であった。
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
(平均繊維径、アスペクト比の測定方法)
アニオン変性CNFの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。なおアスペクト比は下記の式により算出した:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
攪拌機、温度計、冷却管(、窒素導入管)を取り付けた500mlの反応容器に上記のセルロースナノファイバー分散液(固形分1.5%)667重量部、苛性ソーダ水溶液(濃度1%)5重量部を仕込み、攪拌しながら液温が80℃になるまで昇温させた後、グリシジルメタクリレート(有効成分100%)30重量部を投入し、60分間反応し、グリ
シジルメタクリレート(GMA)変性したセルロースナノファイバーを得た。
セルロースナノファイバーに対するグリシジルメタクリレートの導入確認はFT-IR分析で行った。反応液の一部を分取後、未反応のグリシジルメタクリレートをアセトンで十分に洗い流した後、FT-IRによる分析で1740cm-1付近に存在するグリシジルメタクリレート由来のエステルの吸収ピークにより確認した。
上記グリシジルメタクリレート変性したセルロースナノファイバー液が残った反応容器にブチルアクリレート(BA)単量体 70重量部、アニオン性乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ 5重量部を仕込み、常温で、ゆっくり攪拌しながら5分間窒素パージを行った。次に、ウォータバスにて反応容器内の液温を70℃に調整した後、少量の水に溶解した過硫酸アンモニウム 1重量部を開始剤として投入し、120分間反応を行い、重合率90%以上の乳化物を得た。
得られた乳化物の一部を105℃、2時間の条件で乾燥し、乾燥操作前後の重量差から算出した値であり、モノマーの内、重合したものは固形分として残り、未反応のモノマーは乾燥操作時に揮発して除去されることを応用したものである。
重合率(%)=(乾燥後の重量/乾燥前の重量)×100
乳化重合に供した単量体がブチルアクリレートから、エチルアクリレート(EA)に変わった以外は実施例1と同様の方法で乳化重合を行い、重合率90%以上の乳化物を得た。乳化物の状態の評価、分散状態の評価共に良好であった。
乳化重合に供した単量体がブチルアクリレートから、スチレン(ST)に変わった以外は実施例1と同様の方法で乳化重合を行い、重合率80%以上の乳化物を得た。反応速度が実施例1〜3に比べると遅いため、反応時間は6時間を要した。
セルロースナノファイバーをグリシジルメタクリレート変性する際、グリシジルメタクリレートの配合量を10重量部とし、ブチルアクリレート単量体の添加量を90部とした以外は実施例1と同様の方法で変性操作、乳化重合操作を行い、重合率90%以上の乳化物を得た。
実施例1に記載の方法で、セルロースナノファイバーを配合しないブチルアクリレートの乳化物と、実施例1に記載の方法でセルロースナノファイバーを別々に作成し、両者を易回流の条件でコールドブレンドして、複合材料を得た。両者の混合は、常温にて攪拌中のセルロースナノファイバー分散液にゆっくりとブチルアクリレートの乳化物を添加して得た。
(乳化物の状態評価)
得られた乳化物を目視で観察し、以下の基準で評価した。
△以上であれば、実用上問題がない。
○:エマルションの流動状態が良く、凝固物の生成がない状態
△:エマルションがやや増粘、または少量の粒状凝固物が生成している状態
×:エマルションが著しく増粘、または塊状の凝固物が多数生成している状態
得られた乳化物の一部を採取し、水で大希釈したのち、デジタルマイクロスコープ(ハイロックス社製 KH−8700)で200倍に拡大して観察(以下CCD観察)し、状態を以下の基準で目視評価した。
○:繊維の凝集体がほとんど観察されない状態。
△:複数の繊維が絡み合った凝集体がCCD観察画面内に散見される状態。
×:CCD観察画面に必ず繊維の凝集体が観察される状態。
乳化物をオーブン(105℃)で加熱乾固させた後、熱プレス(180℃)で厚さ1mm以下のシート状に成形したものをサンプルとして用いた。成形したサンプルの一部をデジタルマイクロスコープ(ハイロックス社製 KH−8700)で200倍に拡大して観察し、状態を以下の基準で目視評価した。
○:樹脂薄膜は均一で、繊維の凝集体は観察されない状態。
△:樹脂薄膜は概ね均一だが、繊維の凝集粒が散見される状態。
×:観察画面の至る所に繊維の凝集粒が観察される状態。
乳化物をオーブン(105℃)で加熱乾固させた後、熱プレス(200℃)で厚さ1mm以下のシート状に成形したものをサンプルとして用いた。シート状のサンプルをダンベル型(測定部の幅約5mm、厚さ約1mm)に打ち抜いて、引張試験機(エー・アンド・デイ社 テンシロン万能試験機 RTG−1210)に供して引張試験を行った(引張速度5mm/min)。
Claims (2)
- セルロースナノファイバー分散液中で、エチレン性不飽和単量体を共重合させてなる複合体の製造方法であって、該セルロースナノファイバーはセルロース原料を解繊して得られるセルロースナノファイバーであって、該セルロースナノファイバーはアニオン変性されており、該アニオン変性セルロースナノファイバーは、グリシジル基含有(メタ)アクリレート化合物が付加反応したものであることを特徴とする複合体の製造方法。
- 前記エチレン性不飽和単量体が、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種以上が用いられることを特徴とする請求項1に記載の複合体の製造方法。
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