JP4008273B2 - アルカリ現像型感光性樹脂組成物及びそれを用いたプリント配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ現像型感光性樹脂組成物及びそれを用いてソルダーレジスト及び/又は樹脂絶縁層を形成したプリント配線基板に関し、さらに詳しくは、指触乾燥性、密着性、解像性に優れ、加熱硬化時に発生するミストが少ない高感度のアルカリ現像型感光性樹脂組成物と、それを用いて製造した、部品実装時に発生するガスが低減され、クラック耐性、電気絶縁性等に優れたソルダーレジスト及び/又は樹脂絶縁層を形成したプリント配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プリント配線板の製造等に用いられるソルダーレジスト材料としては、アルカリ現像型感光性樹脂組成物が広く用いられている。
このアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、例えばプリント配線基板では、銅箔等の導体層で回路形成された基板上に塗布乾燥して塗膜とし、該塗膜をパターン露光し、未露光部を炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で現像除去してレジスト層を形成した後、加熱硬化することにより、パターン通りのソルダーレジストが形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト材料は、10〜50μmの膜厚で50μmの解像力を有するようにするために大量の光重合開始剤を添加し、感度を上げることで達成してきたが、量産レベルにおいて50μmの解像性を安定して得ることはできず、現像の際に、ソルダーレジスト材料と基板との密着不足による欠陥や解像不足による欠陥が多く発生するようになった。
【0004】
また、レジスト層の加熱硬化時に、膜中に大量に残留している光重合開始剤がガスとして放出され(ミスト発生)、乾燥炉やクリーンルームの汚染、さらには大気汚染といった問題がある。さらに、プリント配線基板に部品を実装する際の加熱によっても同じような問題があり、塗膜中に残留した光重合開始剤が大量のガスを発生させ、実装信頼性を低下させている。
さらに、物性試験において、冷熱衝撃試験では、残留した光重合開始剤が徐々に抜け出ることにより、又は光重合開始剤の再結晶化により塗膜物性を低下させてクラックが発生したり、電気絶縁性試験においては銅箔回路の電蝕を早める要因となっている。
【0005】
このように、近年、ソルダーレジスト材料に要求される特性及び環境問題に対する要望は益々厳しくなってきており、従来のパターン形成性又はめっき耐性等では対応が困難になってきている。
レジスト膜形成工程においては、低露光量で感度が高く、硬化深度が大きく、かつ高精細のパターンを描け、作業スピードを向上できるものや、加熱硬化時にガス発生を抑え、環境に悪影響を与えない等の特性改善が望まれている。
【0006】
また、硬化塗膜の面においては、部品実装時のガス発生を抑え、実装信頼性を低下させないレジスト、さらにBGA、CSP、TABやプリプレグを使用しないビルドアップ工法等で作製された基板の樹脂絶縁層としては、冷熱衝撃試験やプレッシャークッカー試験(PCT)による塗膜のクラック、劣化、物性の変化等が問題とされてきており、これらの改善が要求されてきている。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、指触乾燥性、密着性、解像性に優れ、加熱硬化時に発生するガス(ミスト)が少なく、かつ冷熱衝撃性やPCT耐性に優れた硬化塗膜が得られる高感度のアルカリ現像型感光性樹脂組成物、及びそれを用いて製造した部品実装時に発生するガスが低減され、クラック耐性・電気絶縁性等に優れたソルダーレジスト及び/又は樹脂絶縁層を形成したプリント配線基板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)1分子中に1個以上のカルボキシル基と、感光性の不飽和二重結合を2個以上有するカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤として、下記一般式(I)で表わされる少なくとも1種の化合物、(C)反応性希釈剤、及び(D)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物を含有することを特徴とするアルカリ現像型感光性樹脂組成物が提供される。
【化3】
さらに本発明によれば、上記アルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト及び/又は樹脂絶縁層を形成したプリント配線基板が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、近年、プリント配線基板のソルダーレジストや樹脂絶縁層に要求されてきている特性を有するアルカリ現像型感光性樹脂組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、(A)1分子中に1個以上のカルボキシル基と、感光性の不飽和二重結合を2個以上有するカルボキシル基含有樹脂、(C)反応性希釈剤、及び(D)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と組み合わせて、光重合開始剤(B)として、前記一般式(I)で表わされる少なくとも1種の化合物を含有する組成物によって、露光の際に照射された活性エネルギー線に対して高感度に反応し、感光性成分(反応性希釈剤及び感光性のカルボキシル基含有樹脂)の光重合速度が大きくなり、解像性が向上すると共に、指触乾燥性に優れた塗膜が得られ、しかも加熱硬化時に発生するガスが少なく、環境に及ぼす影響が少ないことを見出した。すなわち、本発明で用いる前記一般式(I)で表わされる光重合開始剤(B)は、感度が高いために少量の添加でも充分な解像性が得られ、また、加熱によって飛散(昇華)しないためにミスト発生の原因となることがなく、さらに有機溶剤に溶け難いので指触乾燥性の良好な塗膜が得られ易くなる。
【0010】
また、硬化塗膜の特性としては、部品実装時に発生するガスが低減し、実装信頼性が向上すると共に、BGA,CSP,TABやプリプレグを使用しないビルドアップ工法等で作製された基板の樹脂絶縁層としても、冷熱衝撃試験やプレッシャークッカー試験における塗膜のクラック耐性が向上し、物性の変化が少なく、劣化し難いプリント配線基板を提供できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
以下、本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。
まず、前記1分子中に1個以上のカルボキシル基と、感光性の不飽和二重結合を2個以上有するカルボキシル基含有樹脂(A)としては、それ自体に感光性の不飽和二重結合を2個以上有するカルボキシル基含有樹脂であれば使用可能であり、特定のものに限定されるものではないが、特に以下に列挙するような樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を好適に使用できる。
【0012】
(1)(a)不飽和カルボン酸と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、エチレン性不飽和基(b’)をペンダントとして付加させることによって得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(2)(c)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(d)不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した第2級の水酸基に(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(3)(f)不飽和二重結合を有する酸無水物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(g)水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(4)(h)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と(d)不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(5)(h)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物と、(d)不飽和モノカルボン酸と、(i)1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂
(6)(j)水酸基含有ポリマーに(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に(c)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基、カルボキシル基含有樹脂、及び
(7)(k)1分子中に2個以上のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に(d)不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の第1級水酸基に対して(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂。
これらの中でも、特に前記(4)の感光性のカルボキシル基含有樹脂が、耐熱性、金めっき耐性等の特性面から好ましい。
【0013】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、45〜200mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が45mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0014】
前記不飽和カルボン酸(a)の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、又はこれらの酸無水物、さらには、無水コハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などの水酸基を有する不飽和化合物との反応生成物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもアクリル酸及び/又はメタアクリル酸が好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0015】
前記不飽和二重結合を有する化合物(b)の具体例としては、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン;置換基としてメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、カプリル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、イソボルニル、メトキシエチル、ブトキシエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル等を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、モノビニルエーテル類、もしくはイソブチレン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物の中でも、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンが用いられる。
【0016】
前記(1)の感光性のカルボキシル基含有樹脂は、(a)不飽和カルボン酸と前記(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体のカルボキシル基の一部に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、該グリシジル(メタ)アクリレートの不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。上記共重合体の一方のモノマー成分である不飽和カルボン酸(a)の有するカルボキシル基の一部は未反応のまま残存するため、得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂は、アルカリ水溶液に対して可溶性である。そのため、このような樹脂を含有する感光性樹脂組成物から形成した塗膜は、選択的露光後にアルカリ水溶液により安定した現像が可能となる。
【0017】
上記ペンダントとして付加するエチレン性不飽和基(b’)としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などがある。このようなエチレン性不飽和基(b’)を前記共重合体に付加させる方法としては、共重合体のカルボキシル基に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させる方法が一般的である。
ここでいうエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、β−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]アクリルアミド、N−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]メタクリルアミド、クロトン酸グリシジルや、下記一般式(1)〜(4)で示される化合物などが挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【化4】
【0018】
前記(2)の感光性のカルボキシル基含有樹脂は、(c)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と前記(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体のエポキシ基に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、(d)不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基を反応させ、該不飽和モノカルボン酸の不飽和二重結合を側鎖に導入すると共に、上記付加反応で生成した第2級の水酸基に(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0019】
上記1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を含有する化合物(c)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレートや、前記一般式(1)〜(4)で示される化合物などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記不飽和モノカルボン酸(d)の具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、又は無水コハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などの水酸基を有する不飽和化合物との反応生成物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもアクリル酸及び/又はメタアクリル酸が好ましい。
【0020】
一方、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(e)の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
前記(3)の感光性のカルボキシル基含有樹脂は、(f)不飽和二重結合を有する酸無水物と前記(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体の酸無水物基の一部に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、(g)水酸基と不飽和二重結合を有する化合物の水酸基を反応させてハーフエステルとし、該化合物(g)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。
【0022】
前記不飽和二重結合を有する酸無水物(f)の具体的な例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、さらには無水ピロメリット酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などの水酸基を有する不飽和化合物との部分反応生成物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリマーを安定して合成できる無水マレイン酸が好ましい。
【0023】
水酸基と不飽和二重結合を有する化合物(g)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記したような感光性のカルボキシル基含有樹脂(1)〜(3)は、光硬化性に優れると共に、共重合モノマーの選択により様々な特徴を持たせることができる。
【0024】
前記(4)の感光性のカルボキシル基含有樹脂は、(h)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物のエポキシ基に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、前記(d)不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基を反応させ、例えばエポキシアクリレートを生成させると共に、上記付加反応で生成した第2級の水酸基に前記(e)飽和又は不飽和多塩基酸無水物をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0025】
前記多官能エポキシ化合物(h)としては、全てのエポキシ樹脂が使用可能であるが、代表的な例としては、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAのノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、N−グリシジル型、脂環式等の公知慣用のエポキシ化合物が挙げられ、これらの中で、好ましいものとしては、多官能でかつ固形であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂や、ダイセル社製EHPE−3150等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、多官能エポキシ化合物(h)としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型エポキシ化合物の第2級の水酸基に極性溶媒中でエピクロルヒドリンを反応させ、多官能化したエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0026】
前記多官能エポキシ化合物(h)と前記不飽和モノカルボン酸(d)の反応は、エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.05となる割合で行なうことが好ましい。エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が0.8未満では、不飽和モノカルボン酸が残るため臭気の問題があり、一方、上記当量数が1.2を越えた場合、エポキシ基が多く残るため、前記飽和又は不飽和多塩基酸無水物(e)を反応させる段階でゲル化し易くなるので好ましくない。また、生成した第2級の水酸基に対する飽和又は不飽和多塩基酸無水物(e)の反応比率は、最終的に得られる樹脂の酸価が好ましくは45〜160mgKOH/gの範囲内となるように調整する。一般的には、前記多官能エポキシ化合物(h)と前記不飽和モノカルボン酸(d)の反応で生成する水酸基1当量に対し、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(e)の当量が0.3以上、好ましくは0.5以上である。
【0027】
また、前記(5)の感光性のカルボキシル基含有樹脂の合成反応は、前記多官能エポキシ化合物(h)に前記不飽和モノカルボン酸(d)(又は1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物(i))を反応させ、次いで1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物(i)(又は不飽和モノカルボン酸(d))を反応させる第一の方法と、多官能エポキシ化合物(h)と不飽和モノカルボン酸(d)と1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物(i)を同時に反応させる第二の方法とがある。どちらの方法でもよいが、第二の方法が好ましい。
前記1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基(例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、第2級アミノ基等)を有する化合物(i)の具体例としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、ジメチロールカプロン酸、ジメチロールカプロン酸、(ビス)ヒドロキシメチルフェノール、(ビス)ヒドロキシメチルクレゾール、p−ヒドロキシフェニル−2−メタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはジメチロールプロピオン酸やp−ヒドロキシフェネチルアルコールが挙げられる。
【0028】
前記(6)の(j)水酸基含有ポリマーに(d)飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に(c)エポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基、カルボキシルキ含有樹脂において、水酸基含有ポリマー(j)としてはポリビニルアセタールやセルロース等が用いられ、飽和又は不飽和多塩基酸無水物(d)の反応量を調整することにより、組成物の希釈剤に水を用いることができ、現像液は希アルカリ水溶液以外に水を使うことが可能である。
【0029】
前記(7)の感光性のカルボキシル基含有樹脂は、出発原料として、不飽和モノカルボン酸との反応によって主として第2級の水酸基を生じるエポキシ樹脂に代えて、オキセタン環を有する化合物を用い、(k)多官能オキセタン化合物に前記不飽和モノカルボン酸(d)を反応させ、得られた第1級の水酸基に対してさらに多塩基酸無水物(e)を反応させることにより、結合部位が熱的に切断され難く、熱安定性に優れた樹脂としたものであり、この感光性のカルボキシル基含有樹脂を用いることによって耐熱性、熱安定性に優れたアルカリ現像型の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を調製できる。
【0030】
次に、前記一般式(I)で表わされる光重合開始剤(B)は、一般式(II)で表されるオキシム系のラジカル発生基と、チオキサントン骨格を有する。特に好ましくは下記構造式(III)で表わされる化合物である。
【化5】
これらの光重合開始剤(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記光重合開始剤(B)の含有量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部当たり、通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜5質量部の範囲で選ばれる。上記光重合開始剤(B)の配合量が、0.01質量部未満の場合、発生するラジカル量が少なくなり、感度低下が著しくなるので好ましくない。また、20質量部を越えた場合、光重合開始剤(B)の光吸収により、厚膜硬化性が低下し、塗膜特性も低下するので好ましくない。
【0031】
本発明の組成物において、上記光重合開始剤(B)と組み合わせて用いることができる他の光重合開始剤(B−1)は、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系、アシルホスフィンオキサイド、パーオキサイド系、チタノセン系などのラジカル光重合開始剤である。例えば、他の光重合開始剤(B−1)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネイト等のアシルホスフィンオキサイド類;1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−ブタン−1,2−ジオン2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オクタン−1,2−ジオン2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オクタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート、1−(4−フェニルスルファニル−フェニル)−オクタン−1,2−ジオン2−オキシム−O−ベンゾアート等のオキシム類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合開始剤(B−1)の配合割合は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部当たり、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。
【0032】
また、上記光重合開始剤(B)と組み合わせて用いることができる増感剤(B−2)としては、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などが挙げられ、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、可視領域でラジカル重合を開始するチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に用いられる反応性希釈剤(C)は、該組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を上げ、密着性などを有する塗膜を得るために使用する液状感光性化合物である。このような反応性希釈剤(C)としては、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等;その他、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、等の多官能モノマーが挙げられ、1種又は2種以上が用いられる。これらの多官能モノマーと共に、単官能モノマーを適当量併用することもできる。
【0034】
単官能モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
これらの反応性希釈剤(C)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部当たり2〜50質量部の範囲が好適である。反応性希釈剤(C)の配合量が上記範囲よりも少ない場合、塗膜の硬化不良、可撓性の低下、現像速度の遅延等を招き、一方、上記範囲よりも多い場合には、コールドフロー、硬化レジストの剥離速度低下等を招くので好ましくない。
【0036】
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、基本的には前記した反応性希釈剤(C)を用いているので有機溶剤を用いる必要はないが、前記目的の一つである指触乾燥性が必要な場合(接触露光の場合)、有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤としては、乾燥が容易で毒性の少ない有機溶剤が選ばれる。例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール、α−テルピオネール等のアルコール類;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;及びトルエン、ミネラルスピリットなどを好適に用いることができる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して前記アルカリ水溶液に可溶なカルボキシル基含有樹脂と光重合性不飽和化合物(反応性希釈剤)を溶解し、他の成分と添加混合されて、アルカリ現像型感光性樹脂組成物となる。
【0037】
前記1分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物(D)としては、従来公知の全ての多官能エポキシ化合物を用いることができ、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成(株)製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128(何れも商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成(株)製のエポトートYDB−400、YDB−500、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700(何れも商品名)等のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、大日本インキ化学工業(株)製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−680、エピクロンN−695、エピクロンN−865、東都化成(株)製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬(株)製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN―1020,EOCN−104S、RE−306、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220(何れも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート807、東都化成(株)製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004(何れも商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成(株)製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(何れも商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のエポトートYH−434、住友化学工業(株)製のスミ−エポキシELM−120(何れも商品名)等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021(商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−933、日本化薬(株)製のEPPN−501、EPPN−502(何れも商品名)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬(株)製のEBPS−200、旭電化工業(株)製のEPX−30、大日本インキ化学工業(株)製のEXA−1514(何れも商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートYL−931(商品名)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学(株)製のTEPIC、高融点タイプのTEPIC−H(何れも商品名)等の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂(株)製のブレンマーDGT(商品名)等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成(株)製のZX−1063(商品名)等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学(株)製のESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業(株)製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700(何れも商品名)等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業(株)製のHP−7200、HP−7200H(何れも商品名)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂(株)製のCP−50S、CP−50M(何れも商品名)等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂などの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0038】
これらの多官能エポキシ化合物(D)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量当たり、エポキシ基が0.6〜2.0当量、好ましくは、1.0〜1.8当量である。これらの多官能エポキシ化合物(D)は、パターン形成された塗膜を熱硬化させることにより、硬化塗膜の耐熱性、耐薬品性、密着性、鉛筆硬度などの諸特性を向上させることができる。多官能エポキシ化合物の添加量が、0.6当量未満の場合、カルボキシル基が残り、電気絶縁性、耐熱性が得られ難くなるので好ましくなく、一方、2.0当量を越えた場合、現像性の低下、現像ライフの低下が起こり好ましくない。
【0039】
また、上記カルボキシル基とエポキシ基の反応促進剤として、アミン類、ジシアンジアミド、尿素誘導体、メラミン、S−トリアジン化合物、グアナミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びその誘導体、フェノール化合物等の公知のエポキシ硬化促進剤を併用することもできる。
【0040】
さらに本発明の感光性樹脂組成物には、特性を向上させるために無機及び/又は有機フィラー(E)を添加することもできる。無機フィラーとしては硫酸バリウム、チタン酸バリウム、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の公知慣用の無機充填剤が使用できる。その使用量は、本発明の感光性樹脂組成物全体の0〜60質量%の割合が好ましく、特に好ましくは5〜40質量%である。
有機フィラーとしては、エポキシ系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ポリイミド系、ポリアミド系の物が使用でき、10μm以下の粒径のものが好ましく、またその使用量は本発明の感光性樹脂組成物全体の0〜30質量%の割合が好ましい。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0042】
以上のような成分組成を有するアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなるレジスト材料は、必要に応じて塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で感光性樹脂組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記感光性樹脂組成物をプラスチックフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成する。その後、接触方式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性光線により露光して硬化させ、未露光部をアルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。その後、さらに諸特性の向上のために、紫外線の照射及び/又は加熱(例えば、約120〜180℃で0.5〜1時間程度)によって充分な仕上げ硬化を行ない、硬化塗膜を得る。
【0043】
ここで、塗膜を光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプが適当である。その他、レーザー光線なども露光用活性光源として利用し、直接描画することができる。
また、上記現像に用いられる希アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用でき、特に、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0044】
【実施例】
以下に合成例、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0045】
比較合成例1
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、メチルメタアクリレート250部とメタアクリル酸43部とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート300部を仕込み、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを加え、撹拌しながら80℃で10時間反応させてカルボキシル基含有樹脂(A’)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(A’)の不揮発分は50%、固形分の酸価は95.4mgKOH/gであった。
【0046】
合成例1
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル325.0部を110℃まで加熱し、メタクリル酸174.0部、ε−カプロラクトン変性メタクリル酸(平均分子量314)174.0部、メタクリル酸メチル77.0部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル222.0部、及び重合触媒としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製パーブチルO)12.0部の混合物を3時間かけて滴下し、さらに110℃で3時間攪拌し重合触媒を失活させて、カルボキシ基含有樹脂を得た。
この樹脂溶液を冷却後、ダイセル化学工業(株)製サイクロマーA200[前記一般式(2)において、R5がCH2を表わし、R6がHを表わす化合物]289.0部、トリフェニルフォスフィン3.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.3部を加え、100℃に昇温し、攪拌することによってエポキシ基の開環付加反応を行い、感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−1)を得た。このようにして得られた感光性のカルボキシ基含有樹脂(A−1)は、重量平均分子量(Mw)が15,000で、かつ、不揮発分が57%、固形物の酸価が79.8mgKOH/gであった。
なお、得られた感光性のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、(株)島津製作所製ポンプLC−6ADと昭和電工(株)製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した(以下、同様)。
【0047】
合成例2
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、メチルメタアクリレート200部、グリシジルメタアクリレート142部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート300部を仕込み、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを加え、撹拌しながら80℃で10時間反応させた後、メタアクリル酸88部、トリフェニルホスフィン2.0部、安定剤としてハイドロキノン0.2部を計りとり滴下ロートで滴下し、80℃で16時間反応させ、さらにテトラヒドロ無水フタル酸140部を添加し、80℃で5時間反応させ感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−2)を得た。得られ感光性のたカルボキシル基含有樹脂(A−2)の不揮発分は65%、固形分の酸価は91mgKOH/gであった。
【0048】
合成例3
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、SMA3000(アーコケミカル社製の無水マレイン酸とスチレンの共重合体)410部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート400部に溶解し、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート80部、触媒としてピリジン3部、安定剤としてハイドロキノン0.2部を計りとり滴下ロートで滴下し、100℃で10時間反応させた。その後、エチレングリコールモノエチルエーテル40部を添加し、100℃で8時間反応させ感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−3)を得た。得られた感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−3)の不揮発分は56%、固形分の酸価は107mgKOH/gであった。
【0049】
合成例4
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製、エポキシ当量=220)220部を攪拌機及び還流冷却器を備えた四つ口フラスコに入れ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート214部を加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部と、反応触媒としてトリフェニルホスフィン2.0部を加えた。この混合溶液を95〜105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、反応液の酸価が2mgKOH/g以下になるまで、約18時間反応させた。この反応液に、テトラヒドロ無水フタル酸106部を加え、さらに8時間反応させ、冷却後、取り出し感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−4)を得た。このようにして得られた感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−4)は、不揮発分65%、固形分の酸価100mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)3,500であった。
【0050】
合成例5
温度計、撹拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えた三口フラスコに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート(酸価135mgKOH/g)208部とジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート400部を仕込み、撹拌しながら80℃に加熱して溶解物を得た。さらに、グリシジルメタアクリレート17.8部、トリフェニルホスフィン0.5部、安定剤としてハイドロキノン0.2部を滴下し、5時間反応させ、感光性の水酸基、カルボキシル基含有樹脂(A−5)を得た。このようにして得られた感光性の水酸基、カルボキシル基含有樹脂(A−5)の不揮発分は35%、固形分の酸価は100mgKOH/g、二重結合等量は1800であった。
【0051】
実施例1
合成例1で得られたカルボキシル基含有樹脂(A−1)100部に(B)成分として前記構造式(III)のオキシム系光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1.5部、(C)成分のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20部、エポキシ化合物(D)としてビキシレノール型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000)10部及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、RE306)3部、エポキシ硬化促進剤(潜在性硬化密着付与剤)としてジシアンジアミド(DICY)0.2部及びメラミン3部、着色剤(フタロシアニングリーン)1.0部、消泡剤(信越化学工業(株)製:KS−66)1部、沈降性硫酸バリウム80部を配合し、3本ロールミルで混合分散させることにより、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0052】
実施例2
実施例1において、カルボキシル基含有樹脂(A−1)100部に代えて、合成例2の感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−2)100部を用いること以外は、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0053】
実施例3
実施例1において、カルボキシル基含有樹脂(A−1)100部に代えて、合成例3の感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−3)100部を用いること以外は、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0054】
実施例4
実施例1において、カルボキシル基含有樹脂(A−1)100部に代えて、合成例4の感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−4)100部を用いること以外は、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0055】
実施例5
実施例1において、カルボキシル基含有樹脂(A−1)100部に代えて、合成例5の感光性のカルボキシル基含有樹脂(A−5)100部を用いること以外は、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0056】
実施例6
実施例2において、(B−1)成分として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製:イルガキュアー907、以下イルガキュアー907と称す。)を3部追加したこと以外は、実施例2と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0057】
実施例7
実施例2において、(B−2)成分として4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノンを0.5部追加したこと以外は、実施例2と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0058】
実施例8
実施例4において、(B−2)成分としてジエチルチオキサントンを0.5部追加したこと以外は、実施例4と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0059】
実施例9
実施例1において、(A)成分のカルボキシル基含有樹脂(A−1)に代えて、(A−6)日本化薬社製ZFR−1124(ビスフェノールF型エポキ樹脂の第2級の水酸基に極性溶媒下でエピクロルヒドリンを反応させ多官能化したエポキシ化合物に、アクリル酸を付加し、生成した第2級の水酸基に二塩基酸無水物としてテトラヒドロ無水フタル酸を付加したもの、酸価110mgKOH/g)を用いた以外、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0060】
比較例1
実施例1において、カルボキシル基含有樹脂(A−1)100部に代えて、比較合成例1の感光性のカルボキシル基含有樹脂(A’)100部を用い、且つ、(B)成分を用いずに、それに代えてイルガキュアー907を16部用いること以外は、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0061】
比較例2
実施例1において、(B)成分を用いずに、それに代えてイルガキュアー907を1.5部用いること以外は、実施例1と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0062】
比較例3
実施例7において、(B)成分を用いずに、それに代えてイルガキュアー907を16部用いること以外は、実施例7と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
【0063】
比較例4
実施例8において、(B)成分を用いずに、それに代えてイルガキュアー907)を16部用い、(B−2)成分のジエチルチオキサントンの配合量を1.0部に変えたこと以外は、実施例8と同様にして、アルカリ現像型感光性樹脂組成物を調製した。
上記各実施例及び各比較例の処方を表1及び表2にまとめて示す。
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
次に、このようにして調製したアルカリ現像型感光性樹脂組成物を、スクリーン印刷法により銅スルーホール・プリント配線板の全面に塗布し、その塗膜を熱風循環炉内において80℃で20分間乾燥した後、フォトマスクを介して波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製積算光量計を用いて200mJ/cm2の光量で照射し、光硬化させた後、1%炭酸ナトリウム水溶液の現像液にて2kg/cm2のスプレー圧で60秒間現像した後、150℃に設定した熱風循環式硬化炉内で60分間熱硬化させることによりソルダーレジストパターンを形成した。但し、実施例5に関しては、光硬化させた後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液で、2kg/cm2のスプレー圧で60秒間現像した後、150℃に設定した熱風循環式硬化炉内で60分間熱硬化させることによりソルダーレジストパターンを形成した。
【0066】
こうして得られたアルカリ現像型感光性樹脂組成物及びそれを用いて形成したソルダーレジストパターンの諸特性について、以下に示す試験を行なった。その評価結果を表3及び表4に示す。
【表3】
【0067】
【表4】
上記表3及び表4に示す結果から明らかなように、本発明に係るアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、解像性、指触乾燥性に優れ、少量の光重合開始剤の配合量(実施例4と比較例4参照。イルガキュアー907の標準量の約1/10)で優れた光硬化深度が得られ、高精細なパターンを描け、さらに光重合開始剤量が少なくてすむため、加熱硬化時のミストの発生が少なく、従って環境に悪影響を及ぼすことがなく、さらに部品実装時に発生するガスを低減でき、クラック耐性及び電気絶縁性に優れた高信頼性のプリント配線基板を提供できることを確認できた。
なお、表3及び表4に示す試験内容と評価方法は以下のとおりである。
【0068】
乾燥後の指触乾燥性:
アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅スルーエッチング回路基板にスクリーン印刷で塗布し、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃で20分間乾燥したものをテストピースとし、指で塗布面を強く押し、粘着性を調査し、塗膜の状態を以下の基準で判定した。
◎:全くベタツキや指紋跡が認められないもの。
○:表面に僅かにベタツキと指紋跡がみられるもの。
△:表面に顕著なベタツキと指紋跡がみられるもの。
×:表面が完全にベタツク状態のもの。
【0069】
ホットタックフリー性:
アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅スルーエッチング回路基板にスクリーン印刷で塗布し、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃で15分間乾燥し、放冷後、さらに印刷面を下にして80℃で20分間水平乾燥したものをテストピースとし、塗膜の状態を以下の基準で目視判定した。
◎:全く傷やへこみが認められないもの。
○:表面に僅かに傷やへこみがみられるもの。
△:表面に顕著な傷やへこみがみられるもの。
×:表面が完全に傷つく状態のもの。
【0070】
感度測定:
アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅スルーエッチング回路基板にスクリーン印刷で塗布し、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃で20分間乾燥した後、フォトマスクを介して、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて200mJ/cm2の光量で照射したものをテストピースとし、スプレー圧2kg/cm2の現像液(炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行なった後、残存塗膜の段数を目視判定した。フォトマスクはイーストマン・コダック社製、ステップタブレットNo.2を使用した。
【0071】
解像性測定:
<紫外線露光(UV)>
アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅スルーエッチング回路基板にスクリーン印刷で塗布し、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃で20分間乾燥した後、所定のフォトマスク(ライン20μm〜150μmのもの)を介して、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて200mJ/cm2の光量で照射したものをテストピースとし、スプレー圧2kg/cm2の現像液(炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行なった後、露光部のラインの残存とスペースの抜け性の状態を目視判定した。
<レーザーダイレクトイメージング(LDI)>
レーザーに関しては、50mJ/cm2のエネルギーで10ミクロンずつ幅を広くしていき露光を行なった。その後スプレー圧2kg/cm2の現像液(炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行なった後、露光部のラインの残存とスペースの抜け性の状態を目視判定した。
【0072】
ガス(ミスト):
アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅スルーエッチング回路基板にスクリーン印刷で塗布し、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃で20分間乾燥した後、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて200mJ/cm2の光量で照射し、その後150℃で60分間硬化したものを測定試料とし、試料1mgをパージ&トラップにて245℃で5分間加熱し、発生した開始剤成分をガスクロマトグラフで定量した。
【0073】
クラック耐性試験:
アルカリ現像型感光性樹脂組成物を銅スルーエッチング回路基板にスクリーン印刷で塗布し、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃で20分間乾燥した後、所定のフォトマスクを介して、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて200mJ/cm2の光量で照射した。その後、スプレー圧2kg/cm2の現像液(炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行なったものを150℃で60分間硬化し、テストピースを作製した。このテストピースに対して、−40℃で30分間、及び+165℃で30分間の冷熱サイクルを気相中で1000サイクル行ない、塗膜の状態を以下の基準で判定した。
◎:全くクラックが認められないもの。
○:0〜5カ所のクラックがみられるもの。
△:6〜15カ所のクラックがみられるもの。
×:顕著なクラックがみられるもの。
【0074】
耐電食性試験:
IPC−B−25のくし型テストパターンBを用い、クラック耐性試験と同様の手順でテストピースを作製し、相対温度85℃、相対湿度85%、直流50V印加の条件下で500時間の加湿試験を行なった後の絶縁抵抗を測定した。
【0075】
PCT耐性試験:
IPC−B−25のくし型テストパターンBを用い、クラック耐性試験と同様の手順でテストピースを作製し、121℃、相対湿度100%、2気圧で100時間の加湿試験を行ない、塗膜の状態を以下の基準で目視判定した。
◎:全く変化が認められないもの。
○:ほんの僅か変化しているもの。
△:顕著に変化しているもの。
×:塗膜にフクレあるいは膨潤脱落があるもの。
【0076】
密着性試験:
ガス試験と同様の手順でテストピースを作製し、JIS D0202の試験方法に従って碁盤目状のクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリングテストを行ない、塗膜の剥離状態を以下の基準で目視判定した。
◎:100/100で全く剥れのないもの。
○:100/100でクロスカット部が少し剥れたもの。
△:50/100〜90/100の範囲で剥がれたもの。
×:0/100〜50/100の範囲で剥がれたもの。
【0077】
はんだ耐熱性試験:
クラック耐性試験と同じテストピースを用い、それぞれJIS C6481の試験方法に従って、260℃のはんだ浴に10秒間浸漬する操作を2回行なった後、その塗膜の状態を耐無電解金めっき性試験と同様に評価した。
【0078】
耐無電解金めっき性試験:
クラック耐性試験と同じテストピースをそれぞれ、「オウロレクトロレスUP」(メルテックス(株)製金めっき液)を用い、85℃の液温で30分間めっきを行なって0.05μmの厚さの金を析出させた後の塗膜の状態を評価した。セロハン粘着テープによるピーリングテストを行ない、塗膜の剥離状態を以下の基準で目視判定した。
◎:100/100で全く剥れのないもの。
○:100/100でエッジ部が少し剥れたもの。
△:50/100〜90/100の範囲で剥がれたもの。
×:0/100〜50/100の範囲で剥がれたもの。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(A)1分子中に1個以上のカルボキシル基と、感光性の不飽和二重結合を2個以上有するカルボキシル基含有樹脂、(C)反応性希釈剤、及び(D)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と組み合わせて、光重合開始剤(B)として、前記一般式(I)で表わされる少なくとも1種の化合物を含有するため、露光の際に照射された活性エネルギー線に対して高感度に反応し、感光性成分(反応性希釈剤及び感光性のカルボキシル基含有樹脂)の光重合速度が大きくなり、解像性が向上すると共に、指触乾燥性に優れた塗膜が得られ、しかも加熱硬化時に発生するミストが少なく、密着性、電気絶縁性、耐熱性等に優れたソルダーレジストを形成できるという効果が得られる。また、硬化塗膜の特性としては、部品実装時に発生するガスが低減し、実装信頼性が向上すると共に、ビルドアップ工法等で作製された基板の樹脂絶縁層としても、冷熱衝撃試験やプレッシャークッカー試験における塗膜のクラック耐性に優れるため、信頼性の高いプリント配線基板を提供することができる。
Claims (5)
- 前記反応性希釈剤(C)が、1分子中に不飽和二重結合を有する液状感光性化合物であり、その含有量が前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部当たり2〜50質量部である請求項1に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
- さらに無機及び/又は有機フィラー(E)を含有する請求項1又は2に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト及び/又は樹脂絶縁層を形成したプリント配線基板。
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