JP7068692B2 - マイクロカプセル被膜、マイクロカプセル製剤およびマイクロカプセル製剤の製造方法 - Google Patents

マイクロカプセル被膜、マイクロカプセル製剤およびマイクロカプセル製剤の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マイクロカプセル被膜、マイクロカプセル製剤およびマイクロカプセル製剤の製造方法に関し、より詳細には、被膜成分にセルロースナノファイバーを含有する、マイクロカプセル被膜、マイクロカプセル製剤およびマイクロカプセル製剤の製造方法に関する。
金属、化石燃料などの材料資源が不足している我が国では、古くから多くの資材を輸入に頼ってきた。その状況は現在も変わっておらず、自国内で採取可能で産業的に有用な資源を確保することは、これからの産業発展において必要不可欠である。
その条件を満たす新素材として近年注目されているのが、セルロースナノファイバー(CNF)である(非特許文献1)。セルロースナノファイバーの材料はパルプなどの植物繊維であり、国土の約7割が森林である我が国にとって原料調達が容易、再生可能、環境負荷が小など多くのメリットが存在する。
セルロースナノファイバーは鋼鉄の5倍の強度と5分の1の重さとを併せ持つとも言われる優れた性質を有し、我が国における川上から川下までの幅広い産業、すなわち、製紙産業、化学産業、繊維産業、自動車産業、IT産業、食品産業、医療産業、成形加工業等に関わる材料として提案されており(非特許文献2)、既に応用研究が進められている。例えば、セルロースナノファイバーは自動車部品、電子端末のディスプレイ構成材料などに加え、チクソ性を有するという性質を利用して、塗布後の肌へのべとつきを抑えた日焼け止めの構成材料や、ボールペンの増粘剤としても利用されており、一層幅広い分野への応用が期待されている。
一方、医薬品、農薬などの技術分野では、セルロースナノファイバーが充分に応用されていないのが現状である。これらの技術分野をも包含する、より広範な技術分野において、セルロースナノファイバーの用途が一層拡大することが所望されている。
近藤哲男,「セルロースナノファイバーテクノロジーの新展開」,木材学会誌,2008年,Vol.54,No.3,p.107-115 矢野浩之,「セルロースナノファイバーの製造と利用」,機能紙研究会誌,2010年,No.49,p.15-20
本発明は、上記問題の解決を課題とし、その目的とするところは、セルロースナノファイバーの用途を拡張する1つとなり得る、マイクロカプセル被膜およびマイクロカプセル製剤、ならびにそれらの製造方法を提供することにある。
本発明は、スチレン系化合物が付加されたセルロースナノファイバーを含有する、マイクロカプセル被膜である。
1つの実施形態では、上記スチレン系化合物は、以下の式(I):
Figure 0007068692000001
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、そしてRは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、分岐していてもよいC~Cのアルキル基、および分岐していてもよいC~Cのアルコキシ基からなる群から選択される基である)で表される化合物である。
さらなる実施形態では、上記スチレン系化合物はスチレンモノマーである。
本発明はまた、コア粒子と、該コア粒子を包囲する上記マイクロカプセル被膜とを含む、マイクロカプセル製剤である。
本発明はまた、マイクロカプセル製剤の製造方法であって、
セルロースナノファイバーにスチレン系化合物を付加してコーティング材料を得る工程;ならびに
該コーティング材料およびコア粒子を超臨界流体または亜臨界流体の存在下で混合してマイクロカプセル化する工程;
を包含する、方法である。
1つの実施形態では、上記スチレン系化合物は、以下の式(I):
Figure 0007068692000002
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、そしてRは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、分岐していてもよいC~Cのアルキル基、および分岐していてもよいC~Cのアルコキシ基からなる群から選択される基である)で表される化合物である。
さらなる実施形態では、上記スチレン系化合物はスチレンモノマーである。
1つの実施形態では、上記セルロールナノファイバーは、セルロース材料をTEMPO触媒で処理したものである。
本発明によれば、コア粒子を露出させることなく、セルロースナノファイバーで被覆された製剤を効率良く提供することができる。本発明の製剤を構成するセルロースナノファイバーは我が国にて生産可能でありそして再生可能な材料である。このため、製造にあたり海外資源への依存を必須せず、かつ環境負荷の影響も小さくすることができる。
実施例1~2および比較例1~2で行った超臨界流体下でのマイクロカプセル製剤の作製に使用した実験装置の模式図である。 実施例1で得られた固体粒子E1、実施例2で得られた固体粒子E2、および実施例1および2で使用したシリカバルーンについてのFT-IRスペクトルを表すグラフである。 実施例1等で使用したシリカバルーン単独のSEM画像を示す写真である。 実施例1で得られた固形粒子E1のSEM画像を示す写真である。 実施例2で得られた固形粒子E2のSEM画像を示す写真である。 比較例1で得られた固形粒子CE1のSEM画像を示す写真である。 比較例2で得られた固形粒子CE2のSEM画像を示す写真である。
以下、本発明について詳述する。
(マイクロカプセル製剤およびマイクロカプセル被膜)
本発明のマイクロカプセル製剤は、コア粒子と、当該コア粒子を包囲するマイクロカプセル被膜とを含む。
本発明において、マイクロカプセル被膜は、スチレン系化合物が付加されたセルロースナノファイバーを含有する。
セルロースナノファイバー(CNF)は、植物を由来とする繊維状の構造物である。多くの植物は細胞外マトリックスとして細胞壁を有する。当該細胞壁は、例えば、質量を基準として、概ね50質量%のセルロース、20質量%~30質量%のヘミセルロース、および20質量%~30質量%のリグニンから構成されている。セルロースナノファイバーは、このようなセルロース材料から、ヘミセルロースおよびリグニンを例えばアルカリ溶液中で蒸気を用いた高温処理を通じて除去することによりセルロースを単離し、さらに所定の化学的処理または物理的処理を施すことによってセルロース分子同士の結合および絡合を解して得ることができる。1つの実施形態では、セルロースナノファイバーは、1nm~100nmの直径を有しかつ100以上のアスペクト比を有するセルロース繊維から構成されている。
セルロースナノファイバーの原料となるセルロース材料としては、例えば、天然または産業造林により得られた樹木;産業廃棄物として得られた木材、麦ワラ、稲ワラ、トウモロコシの芯・茎葉、およびバガス;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
こうしたセルロース材料は、当業者に公知の種々の方法を用いてセルロースナノファイバーに加工される。セルロース材料からセルロースナノファイバーを得る方法の例としては、セルロース材料のパルプを水とともにノズルを備えるタンク内に仕込み、当該ノズルからパルプおよび水を高圧で噴射させることによりパルプ内のセルロース繊維同士を衝突させ、微細化を行う方法(ACC(Aqueous Counter Collision)法;TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル)触媒を用いて、セルロース材料に含まれるセルロース分子のC6位に存在する1級アルコールを酸化することにより、その荷電反発を利用して当該材料に含まれるセルロース繊維を微細化する方法;およびトリコデルマ(Trichoderma)属由来の微生物または当該微生物が生産する酵素を用いてセルロース材料の加水分解を行う方法;が挙げられる。本発明においては、室温かつ大気圧で反応を進行させることができ、特別かつ大型の製造設備等を必要とするものではなく、かつ触媒自体を回収かつ再利用可能であるとの理由から、上記TEMPO触媒を用いてセルロース材料に含まれるセルロース繊維を微細化する方法を用いて得られたセルロースナノファイバーを用いることが好ましい。
スチレン系化合物は、付加により、上記セルロースナノファイバーを構成するセルロースを幹ポリマーとしてグラフト重合可能な親油性の化合物である。
このようなスチレン系化合物の例としては、以下の式(I):
Figure 0007068692000003
(ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、そしてRは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、分岐していてもよいC~Cのアルキル基、および分岐していてもよいC~Cのアルコキシ基からなる群から選択される基である)で表される化合物が挙げられる。なお、式(I)のRを構成し得るハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、および臭素原子が挙げられる。
式(I)で表されるスチレン系化合物のさらに具体的な例としては、スチレン(モノマー)、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、p-メトキシスチレン、m-tert-ブトキシスチレン、p-ビニル安息香酸、p-メチル-α-メチルスチレン、および1-エチニル-4-フルオロベンゼンが挙げられる。セルロースナノファイバーを構成するセルロース繊維の分散性を効果的に高めることができるという理由から、セルロースナノファイバーは、スチレン(モノマー)が付加されていることが好ましい。
本発明において、マイクロカプセル被膜は好ましくは0.001μm~100μm、より好ましくは0.01μm~50μmの膜厚を有する。マイクロカプセル被膜の膜厚が0.001μmを下回ると、後述するコア粒子を完全に包囲することが困難となる場合がある。マイクロカプセル被膜の膜厚が50μmを上回ると、被膜が強固になりすぎて、マイクロカプセル製剤を所望の用途に使用した際に被膜からコア粒子の外に排出することが困難となる場合がある。
コア粒子は、マイクロカプセル製剤に対して所望される特定の機能、作用効果等を奏する物質であり、1つまたはそれ以上の有効成分を含有する、固体、液体およびそれらの混合物で構成される粒子またはその粒子群である。コア粒子の例としては、必ずしも限定されないが、医薬品または農薬のための原薬および/または構成成分(例えば、炭酸カルシウム);化粧品または健康食品のための有効成分;一般食品を構成する食品材料;印刷分野、電子分野等で使用される化学品材料;などが挙げられる。
コア粒子はまた、上記有効成分以外の他の成分を含有していてもよい。コア粒子に含有され得る他の成分の例としては、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、酸化防止剤、崩壊剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤、強化剤、殺菌剤、漂白剤、酸味料、発色剤、酵素、調味料、甘味料、増粘安定剤、香料、防カビ剤、保存料、膨張剤、ゲル化剤、糊料、苦味料、光沢剤、ガムベース、イーストパウダー、かんすい、結着剤、消泡剤、抽出溶剤、凝固剤、日持向上剤、離型剤、および濾過助剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。コア粒子における当該他の成分の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の含有量が選択され得る。
本発明のマイクロカプセル製剤を構成するコア粒子の平均粒子径は必ずしも限定されないが、例えば0.05μm~1000μm、より好ましくは1μm~100μmである。コア粒子の平均粒子径が上記範囲外である場合、上記セルロースナノファイバーによるマイクロカプセル被膜がコア粒子を略均一に包囲することが困難となる場合がある。
本発明のマイクロカプセル製剤は、マイクロカプセル被膜を構成するセルロースナノファイバー自体が有する優れた性質(例えば、高強度および高弾性率)を利用して、例えば、医薬品、農薬、化粧品、食品、印刷、電子化学品等の種々の分野におけるマイクロカプセル製剤に利用することができる。
(マイクロカプセル製剤の製造方法)
次に、本発明のマイクロカプセル製剤の製造方法について説明する。
本発明の製造方法では、まずセルロースナノファイバーにスチレン系化合物を付加してコーティング材料が作製される。
本発明において、セルロースナノファイバーは、上記の通り、セルロース材料(例えば、乾燥した植物体だけでなく、粗セルロースナノファイバーであってもよい)に、TEMPO触媒を用いてセルロース繊維の微細化(すなわち、得られるセルロースナノファイバーの高分散化)の処理が施されたものであることが好ましい。TEMPO触媒を用いてセルロース材料を処理する場合、その使用量は必ずしも限定されないが、セルロース材料100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~10質量部、より好ましくは0.1質量部~5質量部のTEMPO触媒を使用することができる。セルロース材料100質量部に対してTEMPO触媒の使用量が0.01質量部を下回ると、セルロース材料に対するTEMPO触媒が不均一に作用し、セルロース繊維が均一に微細化されたセルロースナノファイバーを得ることが困難となる場合がある。セルロース材料100質量部に対してTEMPO触媒の使用量が10質量部を上回ると、得られるセルロースナノファイバーにはほとんど変化が見られず、むしろ多くのTEMPO触媒を使用する点で全体的な生産性を低下させる場合がある。
本発明において、スチレン系化合物は、上記セルロースナノファイバー100質量部に対して、好ましくは100質量部~10000質量部、より好ましくは500質量部~1000質量部の割合で使用され得る。セルロースナノファイバー100質量部に対してスチレン系化合物の使用量が100質量部を下回ると、セルロースナノファイバーに付加するスチレン系化合物の量が少なすぎて、コア粒子に対してより均一なマイクロカプセル被膜を形成することが困難となる場合がある。セルロースナノファイバー100質量部に対してスチレン系化合物の使用量が10000質量部を上回ると、スチレン系化合物同士のラジカル重合が進行して、それ以上セルロースナノファイバーへの付加量や形成されるマイクロカプセル被膜に実質的な変化が見られない場合がある。
セルロースナノファイバーへのスチレン系化合物の付加は、当業者に周知の方法を用いて行われ得る。当該付加は、例えば、開始剤として硝酸二アンモニウムセリウム(IV)を用いて、スチレン系化合物を、セルロースナノファイバーを構成するセルロース(幹ポリマー)にグラフト重合することによって行われる。このグラフト重合に要する条件は当業者によって適宜選択され得る。
このようにして、セルロースナノファイバーおよびスチレン系化合物を用いてマイクロカプセル被膜の原料となるコーティング材料が作製される。
次いで、本発明においては、このコーティング材料およびコア粒子が超臨界流体または亜臨界流体の存在下で混合され、マイクロカプセル化される。
あらゆる物質には気液共存の上限である臨界点が存在する。その臨界点を超えた状態を超臨界状態と言う。
本発明に用いられ得る超臨界流体は、この超臨界状態にある流体を指して言う。超臨界流体は、臨界点および臨界圧力を超えた高密度の流体であり、好ましくは200kg/m~900kg/mの密度を有し、好ましくは10-5Pa・秒~10-4Pa・秒の粘度を有し、好ましくは10-8/秒~10-/秒の拡散係数を有し、および/または好ましくは10-3W/m・K~10-1W/m・Kの熱伝導度を有する、流体である。
一方、本発明に用いられ得る亜臨界流体は、超臨界流体の高温かつ高圧状態よりも幾分低い状態、具体的には、臨界温度より低い温度域で蒸気圧曲線より高い圧力で液体状態にある流体であり、好ましくは500kg/m~1100kg/mの密度を有し、好ましくは10-4Pa・秒~10-3Pa・秒の粘度を有し、好ましくは10-10/秒~10-/秒の拡散係数を有し、および/または好ましくは0.08W/m・K~0.10W/m・Kの熱伝導度を有する流体である。
このような超臨界流体または亜臨界流体を構成する物質の例としては、二酸化炭素、水、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、およびアセトン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明においては、上記コーティング材料を効率良く溶解することができるとの理由から、超臨界状態に設定された二酸化炭素、または二酸化炭素とエタノールとの混合物を超臨界状態に設定したものを用いることが好ましい。二酸化炭素とエタノールとの混合物を超臨界状態に設定したものを用いる場合、当該混合物における二酸化炭素およびエタノールの組成は、モル分率で好ましくは0.001~0.5の濃度であり、より好ましくは0.001~0.1の濃度である。
この超臨界流体の存在下において、上記コーティング材料およびコア粒子が混合される。そして、混合されたコーティング材料およびコア粒子を、ノズルを通して低圧環境(例えば、常圧)下に一気に噴射することによるか、あるいは徐々に減圧して、コーティング剤とコア材料との相分離を誘起することにより、コア粒子の外周がコーティング材料でマイクロカプセル化された(すなわち、マイクロカプセル被膜で覆われた)マイクロカプセル製剤を得ることができる。本発明では、より均一なマイクロカプセル被膜を作製することができるという理由から、上記超臨界流体の存在下において上記混合されたコーティング材料およびコア粒子を徐々に減圧して、コーティング剤とコア材料との相分離を誘起して、マイクロカプセル化することが好ましい。
このようにして、スチレン系化合物が付加されたセルロースナノファイバーを含有する、マイクロカプセル被膜でコア粒子が包囲されたマイクロカプセル製剤を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(参考例1:セルロースナノファイバーの高分散化)
後述のマイクロカプセル被膜の作製のために、使用するセルロースナノファイバー(CNF)の高分散化を行った。
100mLビーカーに、50mLの針葉樹パルプ(中越パルプ工業株式会社製;純度1.03%)、0.008gのTENPO触媒(ACROS ORGANICS製;純度96%)、および0.05gの臭化ナトリウムを添加し、超純水で100mLに調製した。得られた溶液に、0.65mmolの次亜塩素酸ナトリウム5水和物を添加して酸化反応を開始させ、室温にて500rpmで24時間撹拌した。この反応の間、反応溶液内のpHの低下を防ぐために、当該pHをpH測定器(株式会社佐藤計量器製作所製卓上型pH計SK-650PH)で測定し、適宜0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHをほぼ10に維持した。
その後、反応物を濾別し、超純水で洗浄し、乾燥することにより、高分散化したセルロースナノファイバー(0.4340g)を得た。
(実施例1:マイクロカプセル製剤の作製)
50mLの三角フラスコに、参考例1で作製した高分散化したセルロースナノファイバー0.01gを添加し、さらに10mLのスチレンモノマー(純度99.0%)および2.5mmol/Lの硝酸二アンモニウムセリウム(IV)(触媒;純度99.5%以上)を添加した。
次いで、このフラスコを50℃の恒温水槽内に配置し、フラスコ内を窒素で10分間程度置換した。窒素置換の後、恒温水槽の温度を50℃に保持したまま、500rpmで拡販し、100分間反応させた。反応終了後、フラスコ内の固体を分離して未反応スチレンおよび触媒を除去することにより、スチレンが付加されたセルロールナノファイバー(以下、「スチレン付加CNF」と言う)を得た。
このようにして得られたスチレン付加CNFを用いて、図1に示す実験装置1で以下の超臨界流体下での操作を行った。
容積50mLの高圧セル10内に、0.010gのシリカバルーン(コア粒子;平均粒子径9.8μm)および2.5mLのスチレン付加CNFと、2.5mLのエタノールとを仕込み、バルブ13,15を閉じた状態でバルブ12,14を開放し、ボンベ11から二酸化炭素(純度99.9%以上)を高圧セル10に供給し、高圧セル10内の圧力が操作圧力になるまでしばらく放置した。その間、高圧セル10内をマグネチックスターラー17により攪拌した。操作圧力になったことを確認後、バルブ12,14を閉じ、さらに高圧セル10内の撹拌を継続して、昇圧した二酸化炭素(超臨界流体)中で反応物18を分散させた。この状態で30分程度放置した。そして、バルブ15を開き高圧セル10内を0.067MPa/分で減圧して、反応物18内のスチレン付加CNFとシリカバルーンとの間の相分離を促した。大気圧にした後、高圧セル10を開き、内部に残存する固体粒子E1(シリカ-T-CNF-スチレン)を回収した。
(実施例2:マイクロカプセル製剤の作製)
参考例1で作製した高分散化したセルロースナノファイバー(TEMPO触媒で処理したセルロースナノファイバー)の代わりに、針葉樹パルプ(中越パルプ工業株式会社製;純度1.03%)0.01gをそのまま使用したこと以外は、実施例1と同様にしてスチレンを付加し、図1に示す実験装置1での超臨界流体下での操作を行い、大気圧にした後、高圧セル10内に残存する固体粒子E2(シリカ-CNF-スチレン)を回収した。
(比較例1)
参考例1で作製した高分散化したセルロースナノファイバー(TEMPO触媒で処理したセルロースナノファイバー)の代わりに、針葉樹パルプ(中越パルプ工業株式会社製;純度1.03%)0.01gをそのまま使用し、かつスチレンモノマーの添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、図1に示す実験装置1での超臨界流体下での操作を行い、大気圧にした後、高圧セル10内に残存する固体粒子CE1(シリカ-CNF)を回収した。
(比較例2)
参考例1で作製した高分散化したセルロースナノファイバー(TEMPO触媒で処理したセルロースナノファイバー)に対してスチレンモノマーの添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、図1に示す実験装置1での超臨界流体下での操作を行い、大気圧にした後、高圧セル10内に残存する固体粒子CE2(シリカ-T-CNF)を回収した。
(得られた固体の表面解析)
実施例1で得られた固体粒子E1(シリカ-T-CNF-スチレン)、実施例2で得られた固体粒子E2(シリカ-CNF-スチレン)、および実施例1および2で使用したシリカバルーン(すなわち、マイクロカプセル被膜で覆われていないコア粒子単独)について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製FT-IR 470-Plus)を用いて、ATR法(全反射測定法)により各粒子の表面状態を測定した。得られた結果を図2に示す。
図2に示すように、実施例1で得られた固体粒子E1(シリカ-T-CNF-スチレン)、実施例2で得られた固体粒子E2(シリカ-CNF-スチレン)、およびシリカバルーンの各IRスペクトルにおいて、3300nm付近に顕著な差異を観察することができた。この3300nm付近の差異はOH伸縮振動によるものであり、これは各粒子に含まれるセルロースに存在する多くの水酸基に由来すものであると考えられる。
ここで、図2を参照すると、セルロースナノファイバーを含有するコーティング材料を用いた実施例1および2の固形粒子E1およびE2では、シリカバルーンと比較して、3300nm付近にピークがあることが示されており、固形粒子の表面にセルロース、すなわち、マイクロカプセル被膜としてセルロースナノファイバーが多く分布していることがわかる。
(SEMによる固形粒子の表面状態の観察)
実施例1等で使用したシリカバルーン(すなわち、マイクロカプセル被膜で覆われていないコア粒子単独)、実施例1で得られた固体粒子E1(シリカ-T-CNF-スチレン)、実施例2で得られた固体粒子E2(シリカ-CNF-スチレン)、比較例1で得られた固体粒子CE1(シリカ-CNF)、および比較例2で得られた固体粒子CE2(シリカ-T-CNF)のそれぞれ表面状態について、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製JSM-6060)による観察を行った。得られた結果を図3~7に示す。
図3~図7から明らかなように、シリカバルーン単独の場合(図3)と比較して、実施例1で得られた固形粒子E1(図4)は、シリカバルーンの外表面に多くのセルロース片が付着して、全体として略均一な被膜が形成されていた。また、図4と図5とを比較すると、実施例2で得られた固形粒子E2(図5)では、幾分大きなセルロース片が付着しており、TENPO触媒で処理したセルロースナノファイバーを用いた実施例1の固形粒子E1(図4)の方が、TENPO触媒の処理を行わなかった実施例2の固形粒子E2(図5)よりも、より均一な被膜が形成されていた。
一方、TENPO触媒による処理を行わず、かつスチレンを付加させなかったセルロースナノファイバーを用いた比較例1の固体粒子CE1(図6)は、シリカバルーン単独の場合(図3)と比較して顕著な差が観察されず、シリカバルーン上にセルロースの被膜がほとんど形成されていなかった。また、TENPO触媒による処理を行ったが、スチレンを付加させなかったセルロースナノファイバーを用いた比較例2の固体粒子CE2(図7)は、シリカバルーンの外周に大きなセルロース片が形成されていたが、被膜の表面状態は著しく不均一であった。
以上のことから、セルロースナノファイバーにスチレンを付加することによって、シリカバルーン上に良好な被膜が形成されたマイクロカプセル製剤が作製され得ることがわかる。また、このセルロースナノファイバーは、予めTENPO触媒を通じて高分散化の処理が行われることによって、より均一な被膜を有するマイクロカプセル製剤を得ることができることがわかる。
本発明のマイクロカプセル製剤は、医薬品、農薬、化粧品、食品、印刷、電子化学品等の種々の分野において有用である。
1 実験装置
10 高圧セル
11 ボンベ
12,13,14,15 バルブ
17 マグネチックスターラー
18 反応物

Claims (4)

  1. マイクロカプセル製剤の製造方法であって、
    セルロースナノファイバーにスチレン系化合物を付加してコーティング材料を得る工程;ならびに
    該コーティング材料およびコア粒子を超臨界流体または亜臨界流体の存在下で混合してマイクロカプセル化する工程;
    を包含する、方法。
  2. 前記スチレン系化合物が、以下の式(I):
    Figure 0007068692000004
    (ここで、Rは水素原子またはメチル基であり、そしてRは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、分岐していてもよいC~Cのアルキル基、および分岐していてもよいC~Cのアルコキシ基からなる群から選択される基である)で表される化合物である、請求項に記載の方法。
  3. 前記スチレン系化合物がスチレンモノマーである、請求項に記載の方法。
  4. 前記セルロールナノファイバーが、セルロース材料をTEMPO触媒で処理したものである、請求項からのいずれかに記載の方法。
JP2018078030A 2018-04-13 2018-04-13 マイクロカプセル被膜、マイクロカプセル製剤およびマイクロカプセル製剤の製造方法 Active JP7068692B2 (ja)

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