JP6361123B2 - 水系接着剤組成物 - Google Patents
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[1] 水系樹脂接着剤とセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする水系接着剤組成物。
[2] 前記水系樹脂接着剤が酢酸ビニル系接着剤あるいはエチレン酢酸ビニル系接着剤であることを特徴とする[1]に記載の水系接着剤組成物。
[3] 前記セルロースナノファイバーがアニオン変性あるいはカチオン変性されていることを特徴とする[1]〜[2]に記載の水系接着剤組成物。
本発明において、セルロースナノファイバーとは、平均繊維長0.1〜5μm、平均繊維幅2〜150nmであるセルロース原料を解繊して得られるセルロース繊維である。
<原料>
セルロース原料とは、木材由来のクラフトパルプまたはサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末等である。またこの他に、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物由来のセルロース系原料もできる。しかしながら、セルロース系原料中に広葉樹由来のリグニンが多く残留してしまうと当該原料の酸化反応を阻害する恐れがあるので、本発明においては、化学パルプの製造方法により得られたセルロース系原料が好ましい。リグニンをさらに除去するために、このようにして得られたセルロース系原料に公知の漂白処理を施すことがより好ましい。
また、上記したセルロース原料を高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの分散装置、湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーなどで微細化したものをセルロース原料として使用することもできる。
(1)アニオン変性
本発明において、上記のセルロース原料を、下記に例示する公知の方法を用いてアニオン変性させることで得ることで、変性セルロースを得ることができ、その一例として次のような製造方法を挙げることができる。
上記のセルロース原料を発底原料にし、溶媒に3〜20重量倍の低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合物と水の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60〜95重量%である。マーセル化剤としては、発底原料のグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍モル添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う。
メチル置換度が0.02〜0.50であることが好ましい。セルロースにカルボキシメチル置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カルボキシメチル置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換基が0.02より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換基が0.50より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。
上記のセルロース原料を、N−オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することでカルボキシル基をセルロースに導入した酸化セルロースを得ることができる。
上記のセルロース原料にグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハイドライト又はそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を水及び/又は炭素数1〜4のアルコールの存在下で反応させることによって、カチオン変性されたセルロースを得ることができる。なお、この方法において、得られるカチオン変性されたセルロースのグルコース単位当たりのカチオン置換度は、反応させるカチ
オン化剤の添加量、水及び/又は炭素数1〜4のアルコールの組成比率をコントロールすることによって、調整することができる。
このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.02より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.50より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。次の解繊を効率よく行なうために、上記で得た酸化されたセルロース系原料は洗浄されることが好ましい。
前記で得た変性セルロースあるいは無変性セルロース(以下、単に「セルロース」ということがある。)を含む分散液を調製し、当該セルロースを解繊してナノファイバー化する。「ナノファイバー化する」とは、セルロースを、平均繊維幅2〜150nm、平均繊維長0.1〜5μmのセルロースファイバーへと加工することを意味する。分散液とは前記酸化セルロースが分散媒に分散している液である。取扱い容易性から、分散媒は水であることが好ましい。
記分散液に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。この処理により、セルロース系原料が解繊してセルロースナノファイバーが形成され、かつセルロースナノファイバーが分散媒中に分散する。
本発明において、セルロースナノファイバーの平均繊維長0.1〜5μm、且つ平均繊維幅2〜150nmとすることで水系接着剤組成物の強度が大幅に向上する。さらに、平均繊維長は0.1〜0.3μm、且つ平均繊維幅が3〜100nmとすることで、水系接着剤組成物の強度が大幅に向上するとと共に、優れた伸びも発現する。
本発明において、水系樹脂接着剤(以下、単に「樹脂」ということがある。)とは水を媒体にした樹脂であり、溶媒成分の40重量%以上が水である。
ド樹脂接着剤、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂接着剤等のホルムアルデヒド樹脂系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、エチレンビニルアルコール系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、水溶性樹脂系接着剤、水性高分子―イソシアネート系接着剤を例示することができる。これらの中では、セルロースナノファイバーとの相溶性の点から、酢酸ビニル系接着剤あるいはエチレン酢酸ビニル系接着剤を用いることが好ましい。
本発明の水系接着剤組成物において、水系樹脂接着剤とセルロースナノファイバーを含有することが重要である。水系樹脂接着剤とセルロースナノファイバーの配合比率は、水系樹脂接着剤:セルロースナノファイバー=100:0.1〜100:5であることが望ましい。セルロースナノファイバーの比率が0.1%より少ないと強度が向上せず、5%より多いと粘度が高すぎてフィルム成形が困難になる。
漂白済み針葉樹由来DKP(バッカイ社製)5g(絶乾)を、TEMPO(Sigma
Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7.4mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液16ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した(酸化処理)。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応させた後、ガラスフィルターで濾過し、十分に水洗することで酸化セルロースを得た。
酸化セルロースの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した。
カルボキシル基量〔mmol/gパルプ〕= a〔ml〕× 0.05/酸化セルロース質量〔g〕。
マイカ切片上に固定したセルロースナノファイバーの原子間力顕微鏡像(3000nm×3000nm)から、繊維長を測定し、数平均繊維長を算出した。繊維長測定は、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用い、長さ100nm〜2000nmの範囲で行った。
セルロースナノファイバーの濃度が0.001質量%となるように希釈したセルロースナノファイバー水分散液を調製した。この希釈分散液をマイカ製試料台に薄く延ばし、50℃で加熱乾燥させて観察用試料を作成し、原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した形状像の断面高さを計測し、数平均繊維径を算出した。
セルロース原料を漂白済み針葉樹由来クラフトパルプ(日本製紙社製)に変更した以外は製造例1と同様にしてセルロースナノファイバーを製造した。
得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.7mmol/g、得られたセルロースナノファイバーの繊維長は450nm、繊維幅は4nmであった。
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を10mlに変更した以外は製造例2
と同様にしてセルロースナノファイバーを製造した。
得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.0mmol/g、得られたセルロー
スナノファイバーの繊維長は500nm、繊維幅は10nmであった。
反応系に添加する2M次亜塩素酸ナトリウム水溶液を12mlに変更した以外は製造例2
と同様にしてセルロースナノファイバーを製造した。
得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.2mmol/g、得られたセルロー
スナノファイバーの繊維長は480nm、繊維幅は8nmであった。
パルプを混ぜることが出来る撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙製)を乾燥重量質量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量質量で70g加え、パルプ固形濃度分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを100g(有効成分換算)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.1のカルボキシルメチル化したセルロースを得た。
1%(w/v)のカルボキシルメチル化したセルローススラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で10回処理したところ(解繊及び分散処理)、透明なゲル状であるセルロースナノファイバー分散液が得られた。得られたセルロースナノファイバーの繊維長は350nm、繊維幅は30nmであった。
セルロース系添加剤(絶乾)試料約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(CM化セルロース)をH−CM化セルロースにした。その絶乾H−CM化セルロースを1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLでH−CM化セルロースを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシメチル置換度(DS)をは、次式によって算出した。:
A=[(100×F’−(0.1N−H2SO4)(mL)×F)×0.1]/(H−CM化セルロースの絶乾重量質量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:H−CM化セルロースの1gの中和に要する1N−NaOH量(mL)
F’:0.1N−H2SO4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター
パルプを攪拌することができるパルパーに、パルプ(NBKP、日本製紙(株)製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で24g加え、パルプ固形濃度が15%になるように水を加えた。その後、30℃で30分攪拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを100g(有効成分換算)添加した。1時間反応した後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.1のカチオン変性されたセルロースを得た。
1%(w/v)のカチオン変性カルボキシルメチル化したセルローススラリー500mLを超高圧ホモジナイザー(20℃、140MPa)で10回処理したところ(解繊及び分散処理)、透明なゲル状であるセルロースナノファイバー分散液が得られた。得られたセルロースナノファイバーの繊維長は350nm、繊維幅は40nmであった。
(グルコース単位当たりのカチオン置換度の測定方法)
カチオン基の置換度は、試料(カチオン変性されたセルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN−10(三菱化学)で窒素含有量を測定し、次式により算出した。ここで言う置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値を表している。
カチオン置換度=(162×N)/(1−151.6×N)
N:窒素含有量
投入するアルカリ量は水酸化ナトリウムを110g、モノクロロ酢酸ナトリウムを210gとした、カルボキシメチル置換度が0.3の変性パルプを解繊するカルボキシメチル化したセルロースを得たこと以外は、実施例5と同様に行った。
得られたカルボキシメチル化したセルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.3、得られたセルロースナノファイバーの繊維長は300nm、繊維幅は10nmであった。
投入する3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを200g(有効成分換算)に変更した以外は製造例6と同様にして行った。
得られたカチオン変性したセルロースのカチオン置換度は0.2、得られたセルロースナノファイバーの繊維長は350nm、繊維幅は40nmであった。
超高圧ホモジナイザーの処理を行わなかった以外は実施例2と同様に行った。得られた酸化セルロースのカルボキシル基量は1.7mmol/g、繊維長は300μm、繊維幅は10μmであった。
[実施例1]
製造例1で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)11.0g、酢酸ビニル系接着剤(商品名:木工用ボンド速乾用、コニシ社製、固形分:55%)20.0gを混合し、水系接着剤組成物を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
得られた水系接着剤組成物を常温で乾燥・固化させ、縦200mm、横25mm、厚さ1mmの試験用のフィルムを得た。得られたフィルムをJIS K7127に準拠し、引張試験装置(オリエンテック社 RTC1210)を用いて最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定(引張速度50mm/min、チャック間距離100mm)した。
製造例2で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例3で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例4で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例5で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例6で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例7で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例8で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
酢酸ビニル系接着剤(商品名:木工用ボンド速乾用、コニシ社製、固形分:55%)を固形分35.5%に水で希釈した水性接着剤組成物を得た。得られた水系接着剤組成物(
固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
製造例9で得られたセルロースナノファイバー(1%水溶液)を用いた以外は実施例1と同様にして水性接着剤組成物(固形分35.5%)を得た。得られた水系接着剤組成物(固形分35.5%)の最大点応力、最大点伸度、弾性率を測定した。結果は表1に示す。
Claims (3)
- 水系樹脂接着剤と、平均繊維長が0.1〜0.3μmであり、且つ平均繊維幅が3〜100nmであるセルロースナノファイバーを含有することを特徴とする水系接着剤組成物。
- 前記水系樹脂接着剤が酢酸ビニル系接着剤あるいはエチレン酢酸ビニル系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の水系接着剤組成物。
- 前記セルロースナノファイバーがアニオン変性あるいはカチオン変性されていることを特徴とする請求項1または2に記載の水系接着剤組成物。
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