JP6862173B2 - エステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法 - Google Patents

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本発明は、エステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法に関する。
近年の技術の進展に伴い、使用される用途に応じて、樹脂に対してより高度な特性が要求されている。このような要求特性を満たす技術の一つとして、熱可塑性樹脂に層状化合物、ナノフィラーをナノスケールで分散させた組成物、所謂ナノコンポジットが最近注目されている。ナノコンポジットを形成することにより、高耐熱化、高弾性化、難燃化、ガスバリア性能の向上等、様々な特性の向上を実現している(例えば、非特許文献1)。ナノコンポジットを形成するためには、層状化合物をナノスケールで分散させる必要があり、様々な方法が試みられている。
ナノフィラーとして、カーボンナノファイバー等の繊維状ファイバー、層状珪酸塩等の層状化合物を用いた材料開発が盛んに行われている。特に生物由来のフィラーとして、ミクロフィブリル化セルロースは、軽くて強度が高く(例えば、ガラス繊維は、密度が2.5g/cm、弾性率が約70GPaであるのに対して、セルロースは、密度が1.5g/cm、弾性率が120GPa)、さらには生分解性も高い。そのため、ミクロフィブリル化セルロースは、パソコン、携帯電話等の家電製品の筐体、文房具等の事務機器、スポーツ用品、輸送機器、建築材料等の幅広い分野への応用が期待されている。
このようなミクロフィブリル化セルロースの機械的特性を、既に幅広く利用されている樹脂の分野に活用することが試みられている。例えば、樹脂の物性、機能等の向上や、新たな物性、機能等の付与を目的として、樹脂にミクロフィブリル化セルロースを混合、複合等することが試みられている。特に、環境負荷の観点から生分解性樹脂が注目されており、この生分解性樹脂とミクロフィブリル化セルロースを混合、複合することが試みられている。
ミクロフィブリル化セルロースは、セルロース系繊維をリファイナー、ホモジナイザー等により磨砕ないし叩解することにより製造できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなプロセスでは、エネルギーコストが高く、かつミクロフィブリル化セルロースが凝集し易いという問題がある。また、ミクロフィブリル化セルロースを樹脂中に分散させることが非常に困難なので、均一な複合樹脂が得難い。
汎用的に入手可能な植物系の精製セルロース(木材パルプやリンターパルプ等)を元のミクロフィブリルまでダウンサイジングする技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。当該技術は、極めて高い圧力でフィブリル状物質を高度に微細化できる高圧ホモジナイザーと呼ばれる装置を用いて、セルロースのナノファイバーを得る技術である。しかしながら、当該技術は、高圧ホモジナイザーによる処理時に多大なエネルギーを要し、コスト的に不利であると同時に、得られるナノファイバーの繊維径にも分布が存在する。加えて、一般的な処理条件下では微細化の程度も不完全であり、1μm以上の太い径の繊維も若干残ることが多い。
一方、特許文献3には、微細セルロース繊維が開示されている。この繊維は水中において良分散したナノファイバーである。酢酸セルロースのような通常の再生セルロースは、天然セルロースの結晶構造であるセルロースI型結晶構造がセルロースII型結晶構造に転化することにより、強度の低下が起こる。一方、特許文献3の微細セルロース繊維は、化学反応処理後でも維持されていることが報告されている。
また、上記の微細セルロース繊維は、前述のミクロフィブリル化セルロースの基本骨格となる、幅4nm程度の高強度のナノファイバーである。このナノファイバーは、水中での凝集が抑制されているだけでなく、低エネルギーで製造する事が可能である。このようにして得られた微細セルロース繊維は、数nmから数10nmの繊維径を有するナノファイバーの分散体であることも特許文献3によって報告されている。
しかしながら、上記の微細セルロース繊維は、親水性の繊維であるため樹脂に添加すると凝集し易く、微細セルロース繊維と樹脂との界面強度が弱いという問題点がある。なお、該微細セルロース繊維を、公知のセルロース誘導体、例えば酢酸セルロース等に転化して疎水性(親油性)を付与しても、前記のとおりセルロースI型結晶構造がII型結晶構造に転化することにより強度が低下するので、問題の解決にはならない。さらに、製造された微細セルロース繊維の耐熱性は低く、用途が限定されるという問題もある。
特許文献4には、分子中にエステル化されたウロン酸残基を有し、かつセルロースI型結晶構造を有する微細セルロースエステル繊維が開示されている。この微細セルロースエステル繊維は、特許文献3に記載されたような、天然セルロースに酸化触媒としてN−オキシル化合物、及び共酸化剤を作用させ、該天然セルロースのグルコース残基のC6位のヒドロキシ基を触媒酸化して得られる反応物繊維を、更に溶媒中に分散させることにより、微細セルロース繊維の分散液を製造し、更に微細セルロース繊維を有機オニウム化合物にて処理した後、オニウム化合物にて処理された該微細セルロース繊維にアルキル化剤を反応させてエステル化を行う事で得られる。得られた微細セルロースエステル繊維は、5%質量減少温度が向上し、耐熱性が十分である事が報告されている。また、耐熱性や樹脂との密着性が良好なので、ナノコンポジットの形成に好適であり、家電製品の筐体等への幅広い分野へ応用できるとされている。
特公昭50−38720号公報 特開昭56−100801号公報 特開2008−1728号公報 特開2010-59571号公報
中条澄著、「ナノコンポジットの世界」、工業調査会、2000年8月
上記の微細セルロースエステル繊維は製造工程で減圧乾燥処理を行う。製造後の固形物(乾燥物)を使用時に溶媒に再分散させると分散性が十分ではなかった。そのため、熱可塑性樹脂に混練した場合、微細セルロースエステル繊維が均一に分散した組成物が得難く、ナノコンポジットとして十分な品質の製品を得難かった。また、該微細セルロースエステル繊維をフィルム化した場合、透明性も不十分であった。結果として、得られた微細セルロースエステル繊維は、幅広い分野への応用に最適なものではなかった。
本発明の課題は、分散性に優れており、高い透明性を持つフィルム等の製品を製造可能なエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を洗浄した後、及びエステル化セルロースナノファイバーを洗浄した後に乾燥工程を経ずに、溶媒に分散させることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔5〕を提供する。
〔1〕下記工程(A)〜(E)を有する、エステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
工程(A):アニオン変性セルロースを解繊して、繊維幅が4〜500nmであるアニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を得る工程
工程(B):前記アニオン変性セルロースナノファイバーを有機オニウム化合物により処理して、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を得る工程
工程(C):前記アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を洗浄した第一の洗浄物を、第一の溶媒に分散してアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩分散液を得る工程
工程(D):前記アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩とアルキル化剤を反応させて、エステル化セルロースナノファイバーを得る工程
工程(E):前記エステル化セルロースナノファイバーを洗浄した第二の洗浄物を、第二の溶媒に分散してエステル化セルロースナノファイバー分散液を得る工程
〔2〕下記工程(E)が、下記工程(e)を有する上記〔1〕に記載のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
工程(e):前記第二の洗浄物を、前記第二の溶媒に分散した後、微細化処理する工程
〔3〕前記アニオン変性セルロースナノファイバーのアスペクト比が100以上である上記〔1〕又は〔2〕に記載のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
〔4〕前記工程(A)における前記アニオン変性セルロースが、前記アニオン変性セルロースの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜2.0mmol/gであるカルボキシル化セルロースである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のエステル化セルロースナノファイバーの分散液の製造方法。
〔5〕前記工程(A)における前記アニオン変性セルロースが、前記アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル基の置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のエステル化セルロースナノファイバーの分散液の製造方法。
本発明によれば、分散性に優れており、高い透明性を持つフィルム等の製品を製造可能なエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。エステル化セルロースナノファイバーは、その分子中にエステル部位を有するピラノース構造を有する。ピラノースとは、下記一般式(1)に例示するような、5つの炭素原子と1つの酸素原子で6員環を構成する炭水化物をいう。
Figure 0006862173
また、エステル化セルロースナノファイバーは、下記一般式(2)〜(4)に例示する繰り返し単位を有するものである。なお、エステル化セルロースナノファイバー分散液において、エステル化セルロースナノファイバーは天然セルロースと同じI型結晶構造を有する。
Figure 0006862173
(一般式(2)中、Raは炭素原子数1〜50のアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜30のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
Figure 0006862173
(一般式(3)中、Rbは炭素原子数1〜50のアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜30のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
Figure 0006862173
(一般式(4)中、Rcは炭素原子数1〜50のアルキル基、好ましくは炭素原子数1〜30のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
本明細書において、第一の洗浄物、第二の洗浄物とは、それぞれ固形分が88質量%未満(水分量が12質量%以上)の、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩、エステル化セルロースナノファイバーをいう。
本発明のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法について説明する。本発明のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法は以下に示す工程(A)〜(E)を有する。
工程(A):アニオン変性セルロースを解繊して、繊維幅が4〜500nmであるアニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を得る工程。
工程(B):前記アニオン変性セルロースナノファイバーを有機オニウム化合物により処理して、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を得る工程。
工程(C):前記アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を洗浄した第一の洗浄物を、第一の溶媒に分散してアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩分散液を得る工程。
工程(D):前記アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩とアルキル化剤を反応させて、エステル化セルロースナノファイバーを得る工程。
工程(E):前記エステル化セルロースナノファイバーを洗浄した第二の洗浄物を、第二の溶媒に分散してエステル化セルロースナノファイバー分散液を得る工程。
本発明のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法は、工程(C)及び工程(E)において、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩又はエステル化セルロースナノファイバーを洗浄した際、乾燥工程を経ることなく湿潤した状態で溶媒に分散させる。洗浄液は、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩又はエステル化セルロースナノファイバーを溶解しない溶媒を使用するため、第一の洗浄物や第二の洗浄物の表面を被覆し、付着する。
本発明のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法においては、乾燥工程を経ずに第一の洗浄物及び第二の洗浄物を直接溶媒に分散させることで分散性が向上するという、予想外の効果が得られる。現在のところ、以下の理由によるものと推察される。
第一の洗浄物及び第二の洗浄物を乾燥させると、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩又はエステル化セルロースナノファイバーの、水酸基やカルボキシル基が直接水素結合を形成する。当該水素結合により、第一の溶媒又は第二の溶媒が侵入する隙間が小さくなり、溶媒和による解離が生じ難くなる。そのため、分散性が劣るものとなる。一方、乾燥工程を経ない第一の洗浄物及び第二の洗浄物においては、洗浄液(水やアルコール)がアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩又はエステル化セルロースナノファイバーの、水酸基やカルボキシル基と水素結合を介在するものと考えられる。そのため、第一の溶媒又は第二の溶媒で分散する際、水素結合を介在する洗浄液(水やアルコール)の分子が溶媒に置き換わり、溶媒和による解離が生じ易くなる。従って、分散性が向上する。
(1)工程(A):
工程(A)は、アニオン変性セルロースを解繊して、繊維幅が4〜500nmであるアニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を得る工程である。
工程(A)のアニオン変性セルロースを調製するためのセルロース原料としては、例えば、植物性材料(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ)、古紙等)、動物性材料(例えば、ホヤ類)、藻類、微生物(例えば、酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物を起源とするものを挙げることができ、いずれも使用することができる。好ましくは、植物又は微生物由来のセルロース原料であり、より好ましくは、植物由来のセルロース原料である。
(1−1)アニオン変性セルロース:
アニオン変性セルロースとしては、上記のセルロース原料を出発原料として調製されるカルボキシル化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、リン酸エステル基を導入したセルロース等が挙げられる。
以下、各セルロース誘導体の調製工程を説明する。
(カルボキシル化セルロースの調製)
アニオン変性セルロースとしてカルボキシル化セルロースを用いる場合、カルボキシル化セルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシル化することにより調製することができる。カルボキシル化の際には、アニオン変性セルロースの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜2.0mmol/gとなるように調整することが好ましく、1.0mmol/g〜2.0mmol/gになるように調整することがさらに好ましい。カルボキシル基の量が斯かる範囲であると、樹脂との相溶性に優れ、ナノコンポジットの製造に適したセルロースナノファイバーにすることができる。
カルボキシル化の一例として、セルロース原料を、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物と、の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法がある。この酸化反応により、セルロース表面のピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化される。その結果、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)又はカルボキシレート基(−COO)と、を有するセルロースを得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5質量%以下であることが好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生し得る化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)及びその誘導体(例えば、4−ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol〜10mmolが好ましく、0.01mmol〜1mmolがより好ましく、0.05mmol〜0.5mmolがさらに好ましい。また、その濃度は、反応系に対し、0.1mmol/L〜4mmol/L程度が好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。
臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物及びヨウ化物の合計量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol〜100mmolが好ましく、0.1mmol〜10mmolがより好ましく、0.5mmol〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物等がある。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol〜500mmolが好ましく、0.5mmol〜50mmolがより好ましく、1mmol〜25mmol、3mmol〜10mmolがさらに好ましい。また、例えば、N−オキシル化合物1molに対して1mol〜40molが好ましい。
セルロースの酸化工程は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。そのため、反応温度は4℃〜40℃が好ましく、15℃〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する。酸化反応を効率よく進行させるために、反応途中で水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じ難い等の理由で、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常、0.5時間〜6時間であり、0.5時間〜4時間であることが好ましい。
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段階目の反応終了後に濾別して得られたカルボキシル化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化することにより、1段階目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化することができる。
カルボキシル化の他の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法がある。この酸化反応により、ピラノース環の少なくとも2位及び6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50g/m〜250g/mであることが好ましく、50g/m〜220g/mであることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100質量部とした際に、0.1質量部〜30質量部であることが好ましく、5質量部〜30質量部であることがより好ましい。
オゾン処理温度は、0℃〜50℃であることが好ましく、20℃〜50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1分〜360分程度であり、30分〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化及び分解されることを防ぐことができ、カルボキシル化セルロースの収率が良好となる。
オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸等が挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水又はアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を調製し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
カルボキシル化セルロースのカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。
なお、カルボキシル基の量は、例えば、次のようにして測定することができる。カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記(式1)を用いて算出することができる。
(式1):カルボキシル基の量〔mmol/g(カルボキシル化セルロース)〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロースの質量〔g〕
(カルボキシメチル化セルロースの調製)
アニオン変性セルロースとしてカルボキシメチル化セルロースを用いる場合、カルボキシメチル化セルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより調製することができる。また、市販品を用いてもよい。
カルボキシメチル化セルロースを調製する方法の一例として、次の方法がある。出発原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、0℃〜70℃、好ましくは10℃〜60℃の反応温度で、15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間の反応時間でマーセル化処理を行う。その後、モノクロル酢酸ナトリウム等のカルボキシメチル化剤を、モル換算でピラノース残基当たり0.05〜10.0倍添加し、30℃〜90℃、好ましくは40℃〜80℃の反応温度で、30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間の反応時間でエーテル化反応を行う。
溶媒は、水及び低級アルコールの少なくともいずれかを使用する。低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコールは1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、水と低級アルコールを混合して使用する場合、低級アルコールの混合割合は、60〜95質量%である。
なお、溶媒の使用量は、質量部換算で、セルロースの3〜20倍である。
マーセル化剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属を使用する。
マーセル化剤の使用量は、モル換算で、出発原料のピラノース残基当たり0.5〜20倍である。
本明細書において、アニオン変性セルロースナノファイバーの調製に用いるアニオン変性セルロースの一種である「カルボキシメチル化セルロース」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。したがって、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースとは区別される。「カルボキシメチル化セルロース」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースの水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「カルボキシメチル化セルロース」はX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースではセルロースI型結晶はみられない。
(リン酸基を導入したセルロースの調製)
アニオン変性セルロースとしてリン酸基を導入したセルロースを用いる場合、リン酸基を導入したセルロースは、例えば、セルロース原料に対し、リン酸基を有する化合物を反応させて調製することができる。セルロース原料とリン酸基を有する化合物を反応させる方法としては、例えば、セルロース原料にリン酸基を有する化合物の粉末又は水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸基を有する化合物の水溶液を添加する方法等が挙げられる。
これらの中でも、反応の均一性が高まり、かつリン酸基の導入効率が高くなることから、セルロース原料又はそのスラリーにリン酸基を有する化合物の水溶液を混合する方法が好ましい。リン酸基を有する化合物の水溶液のpHは、リン酸基の導入の効率を高める観点から7以下が好ましく、加水分解を抑える観点から3〜7がより好ましい。
リン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸、これらのエステルや塩等がある。これらの化合物であると、低コストであり、扱い易く、セルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れる。リン酸基を有する化合物の具体例としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。中でも、リン酸基の導入効率が高く、解繊工程で解繊し易く、かつ工業的に適用し易いという理由で、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましい。
なお、リン酸基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上の組み合わせて用いてもよい。
リン酸基を有する化合物の添加量の下限は、リン原子換算で、セルロース原料100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸基を導入したセルロースの収率を向上し得る。一方、その上限は、500質量部以下が好ましく、400質量部以下がより好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸基を有する化合物の添加量に見合った収率を効率よく得ることができる。
リン酸基を有する化合物の添加量は、0.2質量部〜500質量部が好ましく、1質量部〜400質量部がより好ましい。
セルロース原料とリン酸基を有する化合物を反応させる際、さらに塩基性化合物を反応系に加えてもよい。塩基性化合物を反応系に加える方法としては、例えば、セルロース原料のスラリー、リン酸基を有する化合物の水溶液、又はセルロース原料とリン酸基を有する化合物のスラリーに、添加する方法が挙げられる。
塩基性化合物は特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。「塩基性を示す」とは、通常、フェノールフタレイン指示薬の存在下で塩基性化合物の水溶液が桃〜赤色を呈すること、または塩基性化合物の水溶液のpHが7より大きいことを意味する。
塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。中でも、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、低コストで扱いやすい点で、尿素が好ましい。
塩基性化合物の添加量は、2〜1000質量部が好ましく、100〜700質量部がより好ましい。反応温度は、0℃〜95℃が好ましく、30℃〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、通常、1分〜600分程度であり、30分〜480分が好ましい。反応条件がこれらのいずれかの範囲内であると、セルロースに過度にリン酸基が導入されて溶解し易くなることを防ぐことができ、リン酸基を導入したセルロースの収率を向上させることができる。
セルロース原料にリン酸基を有する化合物を反応させた後、通常、懸濁液が得られる。懸濁液を必要に応じて脱水する。脱水後には加熱処理を行うことが好ましい。これにより、セルロース原料の加水分解を抑えることができる。加熱温度は、100℃〜170℃が好ましく、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下(更に好ましくは110℃以下)で加熱し、水を除いた後、100℃〜170℃で加熱処理することがより好ましい。
リン酸基を導入したセルロースにおいては、セルロース原料にリン酸基が導入されており、セルロース同士が電気的に反発する。そのため、リン酸基を導入したセルロースは、容易にナノ解繊することができる。
リン酸基を導入したセルロースにおいて、グルコース単位当たりのリン酸基の置換度の下限は、0.001以上が好ましい。斯かる範囲であることにより、十分な解繊(例えば、ナノ解繊)を実施し得る。また、リン酸基の置換度の上限は、0.60以下が好ましい。斯かる範囲であることにより、リン酸基を導入したセルロースの膨潤又は溶解を防止し、ナノファイバーが得られない事態を防止することができる。
グルコース単位当たりのリン酸基の置換度は、0.001〜0.60であることが好ましい。
リン酸基を導入したセルロースは、煮沸後、冷水で洗浄する等の洗浄処理を施すことが好ましい。洗浄処理を施すことにより、効率よく解繊を行うことができる。
(1−2)解繊:
アニオン変性セルロースを解繊する際に用いる装置は特に限定されない。例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式等の従来公知の装置を用いることができる。
解繊の際には、強力なせん断力を印加して解繊することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることがより好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊及び分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサー等の公知の混合、攪拌、乳化、分散装置を用いて、予備処理を施してもよい。
解繊処理で用いるアニオン変性セルロースは、上記のように調製したアニオン変性セルロースを精製処理して得られる、水を含浸する反応物繊維を溶媒中に分散し、分散処理を施した分散体として用いることが好ましい。
分散媒として使用する溶媒は、水が好ましい。但し、水以外にも目的に応じて水に可溶な溶媒、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を使用してもよい。なお、水に可溶な溶媒は、混合物として使用することもできる。
さらに、上記した反応物繊維を溶媒によって希釈、分散する際には、少量の溶媒を加えて段階的に分散を試みると、効率的にナノファイバーレベルの繊維の分散体を得ることができる場合があり好ましい。操作上の問題から、分散処理後の状態は粘性のある分散液又はゲル状の状態となるように分散条件を選ぶことが好ましい。
(1−3)アニオン変性セルロースナノファイバー:
アニオン変性セルロースナノファイバーは、カルボキシル化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、リン酸エステル基を導入したセルロース等のアニオン変性セルロースを解繊して得られる、繊維幅が4〜500nmのナノファイバーである。
アニオン変性セルロースナノファイバーとして、カルボキシメチル化セルロースを解繊したカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いる場合、グルコース単位当たりのカルボキシメチル基の置換度は0.01〜0.50となるものが好ましい。カルボキシメチル基の置換度が斯かる範囲であると、樹脂との相溶性に優れ、ナノコンポジットの製造に適したセルロースナノファイバーにすることができる。
カルボキシメチル基の置換度は、例えば、次のようにして測定することができる。カルボキシメチル化セルロースナノファイバー(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチル化セルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5g〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定し、下記の(式2)及び(式3)からカルボキシメチル基の置換度(DS)を算出することができる。
(式2):A=[(100×F’−(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾質量(g))
(式3):DS=0.162×A/(1−0.058×A)
((式2)及び(式3)中、Aは、水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)を示す。(式2)中、F’は0.1NのHSOのファクターを示し、Fは、0.1NのNaOHのファクターを示す。)
アニオン変性セルロースナノファイバーの繊維幅は、4nm〜500nmであり、2nm〜5nmであることが好ましい。また、そのアスペクト比は、100以上であることが好ましい。斯かる範囲のアニオン変性セルロースナノファイバーを用いることにより、透明性に優れたナノコンポジットを製造可能なエステル化セルロースナノファイバー分散液を製造することができる。
なお、繊維幅は、例えば、以下のようにして測定することができる。電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析して平均値をとることで算出することができる。また、アスペクト比は、繊維幅と同様にして平均繊維長を算出し、平均繊維長を繊維幅で割ることにより算出することができる。
(2)工程(B):
工程(B)は、工程(A)で得たアニオン変性セルロースナノファイバーを有機オニウム化合物により処理して、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を得る工程である。当該処理により、親水性であるアニオン変性セルロースナノファイバーを疎水性(親油性)のアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩にする。当該処理としては、例えば、N−オキシル化合物(TEMPO等)酸化により生じたカルボキシアニオン等に、有機アンモニウム、有機ホスホニウムのようなオニウム構造を有する有機オニウム化合物を加えて反応させることで、容易に疎水化(親油化)できる。
有機オニウム化合物としては、下記一般式(5)で示される有機オニウムイオンを有するものを好ましく挙げることができる。
Figure 0006862173
(一般式(5)中、Mは、窒素原子又はリン原子を示し、R、R、R及びRは、炭化水素基又はヘテロ原子を含む炭化水素基を示す。R、R、R及びRの炭素原子数の合計は4〜120である。R、R、R及びRは、互いに連結して環を形成してもよい。)
、R、R及びRの炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、芳香族基がある。
アルキル基としては、炭素原子数1〜18のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等がある。
アラルキル基としては、炭素原子数7〜20のアラルキル基が好ましく、ベンジル基、o−トルイルメチル基、m−トルイルメチル基、p−トルイルメチル基、2−フェニルエチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等がある。
芳香族基としては、炭素原子数6〜20の芳香族基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ベンジル基、トシル基等がある。
〜Rは、それらの熱安定性に影響を及ぼさないメチル、エチル、弗素、塩素等の置換基を有していてもよい。
、R、R及びRのヘテロ原子を含む炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のヒドロキシ置換炭化水素基、アルコキシ置換炭化水素基、フェノキシ置換炭化水素基、フタルイミド置換炭化水素基、ポリ(オキシアルキレン)基が挙げられる。より詳細には、一般式(6−1)〜(6−4)、一般式(7)、一般式(8)、一般式(9)、一般式(10−1)〜(10−4)に例示するような置換基及びその異性体がある。
[ヒドロキシ置換炭化水素基]:
Figure 0006862173
(一般式(6−1)〜(6−4)中、aは、1以上29以下の整数であり、置換基中での炭素原子数が30以下になる整数である。)
[アルコキシ置換炭化水素基]:
Figure 0006862173
(一般式(7)中、a及びbは、1以上29以下の整数であり、置換基中での炭素原子数が30以下になる整数である。)
[フェノキシ置換炭化水素基]:
Figure 0006862173
(一般式(8)中、aは、1以上29以下の整数であり、置換基中での炭素原子数が30以下になる整数である。)
[フタルイミド置換炭化水素基]:
Figure 0006862173
(一般式(9)中、aは、1以上29以下の整数であり、置換基中での炭素原子数が30以下になる整数である。)
[ポリ(オキシアルキレン)基]:
Figure 0006862173
(一般式(10−1)〜(10−2)中、cは、1以上15以下の整数である。一般式(10−3)〜(10−4)中、dは、1以上14以下の整数である。)
、R、R及びRが互いに連結して環を形成する場合としては、例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、ジメチルピリジン、ヒドロキシピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン誘導体;イミダゾール、メチルイミダゾール、ジメチルイミダゾール、エチルイミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ピラゾール、メチルピラゾール、ジメチルピラゾール、エチルピラゾール、ベンズピラゾール等のピラゾール誘導体から形成される有機オニウムイオンがある。
一般式(5)中のMが窒素原子である場合の好適例としては、各種のテトラアルキルアンモニウムや、N,N’−ジメチルイミダゾリニウム、N−エチル−N’−メチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、4−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2−ジエチル−3−メチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−2−メチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−4−メチルイミダゾリニウム、1,4−ジエチル−3−メチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3,5−トリメチルイミダゾリニウム、1−エチル−3,4,5−トリメチルイミダゾリニウム、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、4−エチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、4−エチル−1,3,5−トリメチルイミダゾリニウム、1,2−ジエチル−3,4−ジメチルイミダゾリニウム、1,2−ジエチル−3,5−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−2,4−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジエチル−2,5−ジメチルイミダゾリニウム、1,4−ジエチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,5−ジエチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,5−ジエチル−3,4−ジメチルイミダゾリニウム、2,3−ジエチル−1,4−ジメチルイミダゾリニウム、2,3−ジエチル−1,5−ジメチルイミダゾリニウム、2,4−ジエチル−1,5−ジメチルイミダゾリニウム、2,5−ジエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、3,4−ジエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、3,4−ジエチル−1,5−ジメチルイミダゾリニウム、3,5−ジエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、3,5−ジエチル−1,4−ジメチルイミダゾリニウム、4,5−ジエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチル−4−メチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリエチル−2−メチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリエチル−5−メチルイミダゾリニウム、2,3,4−トリエチル−1−メチルイミダゾリニウム、2,3,5−トリエチル−1−メチルイミダゾリニウム、3,4,5−トリエチル−1−メチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,3,4,5−テトラエチルイミダゾリニウム等の各種イミダゾリニウム等のアンモニウムイオンが挙げられる。
一般式(5)のMが窒素原子である有機オニウムイオンとしては、合成の容易さやコスト面から、テトラアルキルアンモニウムイオンであることがより好ましい。テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、オレイルトリメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジオクタデシルジメチルアンモニウム、ジオレイルジメチルアンモニウム、ドデシルジメチルベンジルアンモニム、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウム、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、オレイルジメチルベンジルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシエチレンドデシルジメチルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシエチレンテトラデシルジメチルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシエチレンヘキサデシルジメチルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルジメチルアンモニウム、ヒドロキシポリオキシエチレンオレイルジメチルアンモニウム、ジヒドロキシポリオキシエチレンドデシルメチルアンモニウム、ジヒドロキシポリオキシエチレンテトラデシルメチルアンモニウム、ジヒドロキシポリオキシエチレンヘキサデシルメチルアンモニウム、ジヒドロキシポリオキシエチレンオクタデシルメチルアンモニウム、ジヒドロキシポリオキシエチレンオレイルメチルアンモニウムがある。
一般式(5)のMが窒素原子である有機オニウムイオンは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(5)中のMがリン原子、即ち有機オニウムイオンが有機ホスホニウムイオンである場合としては、例えば、テトラエチルホスホニウム、トリエチルベンジルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリメチルデシルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルヘキサデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルオクタデシルホスホニウム、トリオクチルエチルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、ジフェニルジオクチルホスホニウム、トリフェニルオクタデシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、トリブチルアリルホスホニウム等がある。
一般式(5)のMがリン原子である有機オニウムイオンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機オニウムイオンは、耐熱性の観点から、一般式(5)中のMがリン原子である有機オニウムイオンがさらに好ましい。
有機オニウムと対を成す陰イオン成分としては、塩化物イオンや臭化物イオン等のハロゲン化物イオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオン等がある。中でも、ハロゲン化物イオンであることが好ましい。
上記を踏まえて、有機オニウム化合物としては、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドが好ましい。
有機オニウム化合物での処理は、例えば、分散処理で得られたアニオン変性セルロースナノファイバーの分散体に有機オニウム化合物を含む溶液を添加することによって容易に行うことができる。処理の詳細は、分散処理で生じたアニオン変性セルロースナノファイバーの表面のカルボン酸のアルカリ金属イオンと上記有機オニウムイオンとのイオン交換である。
当該処理方法としては、例えば、カチオン交換前のアニオン変性セルロースナノファイバーを水に分散させた分散液と有機オニウム化合物の溶液を混合攪拌した後、生じた疎水性(親油性)のアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩をろ過、遠心分離等の方法により媒体と分離する方法がある。
有機オニウム化合物での処理の濃度は、アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度換算で、0.01質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%がより好ましく、0.2質量%〜2質量%がさらに好ましい。斯かる濃度範囲で、溶解した有機オニウム化合物と反応させることが好ましい。アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度が0.01質量%よりも低い場合、溶液全体の量が多くなり過ぎ、取り扱う上で好ましくない場合がある。アニオン変性セルロースナノファイバーの濃度が10質量%を超える場合、分散液の粘度が高くなりすぎ、有機オニウム化合物と接触させることによる陽イオン交換率が低下する場合がある。
反応時の温度としては、分散液が攪拌するのに充分低い粘度を有すればよく、例えば、水の場合には、概略20〜100℃程度で有機オニウム化合物での処理を行うことが好ましい。こうして得られた修飾後の有機オニウム化合物での処理済みアニオン変性セルロースナノファイバー(アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩)は反応終了後、未反応の有機ホスホニウムイオンを取り除くため十分に洗浄することが好ましい。洗浄方法としては特に限定するものではないが、例えば有機溶媒等の有機ホスホニウム化合物の良溶媒にて洗浄することが挙げられる。
なお、工程(B)における処理の効果は、主に、セルロースナノファイバー表面のカルボキシル基の塩を形成しているアルカリ金属カチオンが、有機オニウムイオンによってイオン交換されることによるものと考えられる。このことは、有機オニウム化合物での処理によって得られたアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩が、N−メチルピロリドン(NMP)やジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒に分散し、容易に沈殿を生じない事からも明らかである。
工程(B)での、有機オニウム化合物での処理による陽イオン交換率は、60%〜100%であることが好ましく、65%〜100%であることがより好ましく、70%〜100%であることがさらに好ましい。陽イオン交換率が60%以上であると、分散性の点で有利である。
なお、陽イオン交換率は下記(式4)にて算出することができる。
(式4):陽イオン交換率(%)=1−(A/B)
((式4)中、Aは、イオン交換後のアニオン変性セルロースナノファイバー中のアルカリ金属量[質量ppm]を示し、Bは、イオン交換前のアニオン変性セルロースナノファイバー中のアルカリ金属量[質量ppm]を示す。)
(3)工程(C):
工程(C)は、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を洗浄した第一の洗浄物を、第一の溶媒に分散してアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩分散液を得る工程である。
本工程において、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を洗浄した後、乾燥工程を経ることなく第一の溶媒に分散することで、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩が水素結合により凝集し、分散性が悪化することを抑制することができる。
洗浄は、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を溶解せず、工程(B)で用いた未反応の有機オニウム化合物や、反応後の有機オニウム化合物のアルカリ金属塩を除くために行う。例えば、水やメタノールを用いて、洗浄することができる。
分散に用いる第一の溶媒としては特に限定はされないが、有機オニウム化合物で処理したアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩の溶媒への分散性の他、次工程で行うエステル交換反応を阻害しないといった面を考慮して決めることが好ましい。例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂環式又は芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、エタノール、イソプロピルアルコール等のような極性溶媒を用いる事ができる。
有機オニウム化合物がアルキルオニウム化合物の場合、アニオン変性セルロースナノファイバーのアルキルオニウム塩がジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドに分散し易いので好適に用いる事ができる。
なお、第一の溶媒は1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
第一の溶媒の使用量は、添加するアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩の量等の諸条件に応じて適宜変更可能である。アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩の濃度が、通常は0.01質量%〜50質量%となる量であり、好ましくは0.5質量%〜20質量%となる量であり、より好ましくは1.0質量%〜10質量%となる量である。
(4)工程(D):
工程(D)は、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩とアルキル化剤を反応(エステル化反応)させて、エステル化セルロースナノファイバーを得る工程である。
有機オニウム化合物で処理をしたアニオン変性セルロースナノファイバーは、エステル化反応に使用する有機溶媒に添加した後、ホモジナイザー等のせん断が印加できる装置にて分散処理を施す事が好ましい。その後に、ハロゲン化アルキル等のアルキル化剤を添加してエステル化反応を実施することが好ましい。
アルキル化剤としては、ハロゲン化アルキル、アルキル硫酸エステル(ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等)、アルキルトシラート(p−トルエンスルホン酸メチル等)、アルキルメシラート(メタンスルホン酸メチル等)、アルキルトリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸メチル等)等が挙げられる。中でも、価格等の点でハロゲン化アルキルが好ましい。
ハロゲン化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ヨウ化エチル、塩化プロピル、臭化プロピル、ヨウ化プロピル、塩化ブチル、臭化ブチル、ヨウ化ブチル、塩化ヘキシル、臭化ヘキシル、ヨウ化ヘキシル、塩化デシル、臭化デシル、ヨウ化デシル、塩化ヘキサデシル、臭化ヘキサデシル、ヨウ化ヘキサデシル、塩化オクタデシル、臭化オクタデシル、ヨウ化オクタデシル、塩化コレステリル、臭化コレステリル、ヨウ化コレステリル、塩化コレスタリル、臭化コレスタリル、ヨウ化コレスタリル、炭素原子数が1〜50のポリフルオロアルキルクロリド、炭素原子数が1〜50のポリフルオロアルキルブロミド、炭素原子数が1〜50のポリフルオロアルキルヨード等が挙げられる。これらの中でも、臭化物が反応性及び取り扱い性の面から好ましい。
エステル化反応の反応温度は、溶媒の沸点、有機オニウム化合物で処理したアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩(セルロースナノファイバー)の安定性により適宜変更される。反応温度は、通常、室温〜200℃の範囲であり、好ましくは50℃〜150℃の範囲であり、より好ましくは70℃〜120℃の範囲である。例えば、反応温度が100℃以上の高温で反応を行う場合、耐熱性の点からアルキルホスホニウム化合物で処理したアニオン変性セルロースナノファイバーのアルキルホスホニウム塩が好ましく用いられる。
反応時間としては、0.1時間〜30時間が好ましく、1時間〜24時間とするのが好ましい。
なお、重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。
(5)工程(E):
工程(E)は、エステル化セルロースナノファイバーを洗浄した第二の洗浄物を、第二の溶媒に分散してエステル化セルロースナノファイバー分散液を得る工程である。
工程(E)は、第二の洗浄物を、第二の溶媒に分散した後、微細化処理する工程(e)であることが好ましい。
工程(D)で得られたエステル化セルロースナノファイバーは、エステル化反応終了後、未反応のアルキル化剤を取り除くため十分に洗浄する。洗浄方法としては特に限定されるものではない。例えば、水で洗浄した後、アルキル化剤の良溶媒であるメタノール等の有機溶媒にて洗浄することができる。
次いで、第二の洗浄物を第二の溶媒に分散する。分散に用いる第二の溶媒としては特に限定されないが、工程(C)で用いた第一の溶媒と同一種類の溶媒を用いると分散し易いので好適に用いる事ができる。
なお、第二の溶媒は1種単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
第二の溶媒の使用量は、添加するエステル化セルロースナノファイバーの量等の諸条件に応じて適宜変更可能である。エステル化セルロースナノファイバー濃度が、通常、0.05質量%〜50質量%となる量であり、好ましくは0.5質量%〜20質量%となる量であり、より好ましくは1.0質量%〜10質量%となる量である。
この分散液に対して、さらに高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、及びグラインダーのようなより強力で叩解能力のある装置等により微細化処理することが好ましい。これにより高度に微細化された、ナノコンポジットの製造により好適なエステル化セルロースナノファイバーの分散液を提供することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
(カルボキシル基の量の測定方法)
カルボキシル化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mlを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定した。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下記の式を用いて算出した。
(式):カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔ml〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
(平均繊維径、アスペクト比の測定方法)
アニオン変性CNFの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。なおアスペクト比は下記の式により算出した:
(式):アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
(製造例1:カルボキシル化(TEMPO酸化)セルロースナノファイバーの調製)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mlに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するので、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整し続けた。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。
反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプを分離し、分離したパルプを十分に水洗することでカルボキシル化セルロース(酸化されたパルプ)を調製した。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基の量は1.6mmol/gであった。
上記の工程で得られたカルボキシル化セルロース(酸化パルプ)を水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で5回処理した。最終的に0.2質量%のアニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を得た。得られたナノファイバーは、平均繊維径が4nm、アスペクト比が150であった。
(製造例2:カルボキシル化セルロースナノファイバーのオニウム塩の調製)
上記で得た分散液100質量部を、攪拌羽根を供えたビーカーに入れて、70℃にて加熱攪拌した。有機オニウム化合物として、トリ-n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(日本化成工業製、カタログナンバー:PX416)11質量部をイオン交換水300質量部に溶解した溶液を加え、70℃で3時間攪拌した。
混合物から固体を濾別し、メタノールで3回、水で3回洗浄した後、ジメチルホルムアミド(DMF)100質量部を加えた。回転刃式ミキサーで約5分間の撹拌処理を行った後、ブフナーロートを用いてろ過した。DMFによる溶解、撹拌、ろ過処理をさらに2回繰り返した後、DMFを加えて撹拌し、有機オニウム化合物にて処理されたセルロースナノファイバー(カルボキシル化セルロースナノファイバーのオニウム塩)の1.0質量%DMF分散液を得た。
(実施例1:エステル化セルロースナノファイバー分散液の製造)
上記セルロースナノファイバーの1.0質量%DMF分散液100質量部に、アルキル化剤として臭化ブチル6.9質量部を添加した後、ホモジナイザーで10分間分散処理を行った。反応温度を85℃に設定し、約24時間反応させた。
反応物をメタノールで3回、水で3回洗浄した後、ジメチルホルムアミド(DMF)100質量部を加えて回転刃式ミキサーで約5分間の撹拌処理を行った。その後、ブフナーロートを用いてろ過した。DMFによる溶解、撹拌、ろ過処理をさらに2回繰り返した後、DMFを加えて撹拌し、超高圧ホモジナイザーを用いて3回解繊処理を行い(20℃、150MPa)、エステル化セルロースナノファイバーの3.0質量%のDMF分散液を得た。この分散液は無色透明であり、エステル化セルロースナノファイバーが均一に分散している事が確認された。
(実施例2)
実施例1において、エステル化セルロースナノファイバーの溶解、撹拌、ろ過処理と超高圧ホモジナイザー処理に用いる溶媒を、DMFからメチルエチルケトン(MEK)に変えた事以外は実施例1と同様に行ない、エステル化セルロースナノファイバーのMEK分散液を得た。この分散液は無色透明であり、エステル化セルロースナノファイバーが均一に分散している事が確認された。
(比較例1)
製造例1において得られた0.2質量%のアニオン変性セルロースナノファイバーの分散液100質量部を、攪拌羽根を供えたビーカーに入れ70℃に加熱攪拌した。有機オニウム化合物として、トリ−n−ブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(日本化成工業製、カタログナンバー:PX416)11質量部をイオン交換水300質量部で溶解した溶液を加え、70℃で3時間攪拌した。混合物から固体を濾別し、メタノールで3回、水で3回洗浄した後、有機オニウム化合物で処理されたアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を得た。このアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を一昼夜減圧乾燥した。
乾燥したアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩1.0質量部をビーカーに移し、ジメチルホルムアミド100質量部、さらにアルキル化剤として臭化ブチル6.9質量部を添加した後、ホモジナイザーで10分間分散処理を行った。反応温度を85℃に設定して、約24時間反応させた。反応物をメタノール、水で洗浄した後、一昼夜減圧乾燥し、エステル化セルロースナノファイバーの乾燥物を得た。
このエステル化セルロースナノファイバーの乾燥物3.0質量部をジメチルホルムアミド100質量部に添加し、回転刃式ミキサーで約5分間の撹拌処理を行った後、超高圧ホモジナイザーを用いて150MPaで3回解繊処理を行い、エステル化セルロースナノファイバーの分散液を得た。この分散液は白濁しており、エステル化セルロースナノファイバーの分散性が不良である事が確認された。
(比較例2)
比較例1において、エステル化セルロースナノファイバーの超高圧ホモジナイザー処理に用いる溶媒を、DMFからメチルエチルケトン(MEK)に変えた事以外は比較例1と同様に行ないエステル化セルロースナノファイバーのMEK分散液を得た。この分散液は白濁しており、エステル化セルロースナノファイバーの分散性が不良である事が確認された。
(フィルム化試験)
実施例2、比較例2でそれぞれ得られた、エステル化セルロースナノファイバーの3.0質量%のMEK分散液を、それぞれガラス板の上に滴下して直径5cm程度の円形に拡げた。これを40℃のオーブンで乾燥させてフィルムを形成した。これらのフィルムの透明性を目視で観察したところ、実施例2で得られたエステル化セルロースナノファイバーを用いた場合、既存のフィルムとして比較して問題のない透明性を有していたが、比較例2で得られたエステル化セルロースナノファイバーを用いた場合、フィルムが不透明であった。

Claims (5)

  1. 下記工程(A)〜(E)を有する、エステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
    工程(A):アニオン変性セルロースを解繊して、繊維幅が4〜500nmであるアニオン変性セルロースナノファイバーの分散液を得る工程
    工程(B):前記アニオン変性セルロースナノファイバーを有機オニウム化合物により処理して、アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を得る工程
    工程(C):前記アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩を洗浄した第一の洗浄物を、乾燥工程を経ずに、第一の溶媒に分散してアニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩分散液を得る工程
    工程(D):前記アニオン変性セルロースナノファイバーのオニウム塩とアルキル化剤を反応させて、エステル化セルロースナノファイバーを得る工程
    工程(E):前記エステル化セルロースナノファイバーを洗浄した第二の洗浄物を、乾燥工程を経ずに、第二の溶媒に分散してエステル化セルロースナノファイバー分散液を得る工程
  2. 下記工程(E)が、下記工程(e)を有する請求項1に記載のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
    工程(e):前記第二の洗浄物を、乾燥工程を経ずに、前記第二の溶媒に分散した後、微細化処理する工程
  3. 前記アニオン変性セルロースナノファイバーのアスペクト比が100以上である請求項1又は2に記載のエステル化セルロースナノファイバー分散液の製造方法。
  4. 前記工程(A)における前記アニオン変性セルロースが、前記アニオン変性セルロースの絶乾質量に対して、カルボキシル基の量が0.6mmol/g〜2.0mmol/gであるカルボキシル化セルロースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル化セルロースナノファイバーの分散液の製造方法。
  5. 前記工程(A)における前記アニオン変性セルロースが、前記アニオン変性セルロースナノファイバーのグルコース単位当たりのカルボキシメチル基の置換度が0.01〜0.50であるカルボキシメチル化セルロースである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル化セルロースナノファイバーの分散液の製造方法。
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