JP2001098465A - 繊維処理用接着剤 - Google Patents

繊維処理用接着剤

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JP2001098465A
JP2001098465A JP27559099A JP27559099A JP2001098465A JP 2001098465 A JP2001098465 A JP 2001098465A JP 27559099 A JP27559099 A JP 27559099A JP 27559099 A JP27559099 A JP 27559099A JP 2001098465 A JP2001098465 A JP 2001098465A
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JP
Japan
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emulsion
polymerization
monomer
soluble polymer
polymer compound
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JP27559099A
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English (en)
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Misao Nakamura
みさを 中村
Toshihiro Inoue
利洋 井上
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Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた各種分散安定性を有するとともに、優
れた湿潤強度を有する不織布、含浸紙等の繊維製品を与
える接着剤を提供すること。 【解決手段】 アルコール性水酸基を含有する重量平均
分子量2,000以上の水溶性高分子化合物で分散安定
化された、アクリル酸エステル系単量体単位、メタクリ
ル酸エステル系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位
及び共役ジエン系単量体単位よりなる群から選ばれた1
種の単量体単位から成る単独重合体又は該単量体単位群
から選ばれた少なくとも1種以上の単量体単位を主成分
とする共重合体のエマルションであって、分散安定化に
使用した該アルコール性水酸基を含有する水溶性高分子
化合物の少なくとも一部が該単独重合体又は共重合体に
グラフトしていて、そのグラフト率が、0.5〜30重
量%であることを特徴とする繊維処理用接着剤を使用す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不織布製品、含浸
紙等の繊維製品の製造に好適に使用される繊維処理用接
着剤に関する。さらに詳しくは、特定の化合物で分散安
定化された、(共)重合体のエマルションを有効成分と
する接着剤に関する。本発明の繊維処理用接着剤は、湿
潤強度に優れた不織布や含浸紙等の繊維製品を製造する
のに好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】従来、含浸紙用接着剤又は不織布用接着
剤等の繊維製品用接着剤として、各種水性エマルション
が用いられている。これによって、得られる含浸紙や不
織布等の繊維製品の、引張強度、伸び、引裂強度、硬さ
などの機械的特性が向上するとともに、寸法安定性、耐
水性、耐薬品性、耐熱性などの性能が改善される。この
ような目的で使用される接着剤として、特に自己架橋性
の反応基を有する不飽和単量体、例えばN−メチロール
アクリアミドなどを共重合して得られる水性エマルショ
ンが賞用されている。しかしながら、不織布等の材質等
によっては、架橋を進行させるために高温に曝すと繊維
の変色・劣化等が起きる恐れがある等の理由で、低温で
の架橋を行わざるを得ず、このため架橋が不十分になっ
たり、架橋に長時間を要するという問題がある。また、
架橋反応によりホルムアルデヒドが発生するという衛生
上の問題が指摘されている。従って、このような問題の
ない接着剤が要求されている。
【0003】一方、含浸紙や不織布等の接着剤には、製
造工程における作業性の観点から、機械的安定性や各種
添加剤との混和性のよいことが要求される。しかしなが
ら、現在、汎用されている水性エマルションは、その乳
化重合による製造に際して通常使用される界面活性剤に
起因する問題を有している。即ち、界面活性剤を使用し
て得た水性エマルションは、放置安定性、機械的安定
性、化学的安定性、凍結融解安定性、顔料混和性等の分
散安定性が不十分であり、また、界面活性剤のマイグレ
ーションにより、最終製品の各種機械的特性等が低下す
るという問題がある。更に、一般に、界面活性剤を使用
して得られる水性エマルションは、低粘度であるため
に、高粘度化が要求される用途においては、増粘剤の添
加や不飽和酸の共重合によるアルカリ増粘が必要であ
り、これにより、最終製品の湿潤時強度低下等の問題が
生じる。
【0004】ところで、ポリビニルアルコールやヒドロ
キシエチルセルロース等の水溶性高分子化合物を乳化分
散安定剤として乳化重合を行うことが知られている。こ
の方法によれば、機械的安定性、化学的安定性その他の
各種分散安定性に優れ、また、重合処方により所望の粘
度を有するエマルションを得ることができる。
【0005】しかしながら、このような水溶性高分子化
合物を用いて重合できるのは、ラジカル反応性の大きい
酢酸ビニルや塩化ビニルに限られており、上記含浸紙や
不織布等の用途において接着剤として使用されるアクリ
ル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系化合物単量体、
共役ジエン系単量体等に適用しても、安定なエマルショ
ンが得られないという問題があった。
【0006】このため、このような水溶性高分子を用い
て安定なエマルションを得る方法が、種々検討されてい
る。例えば、特開昭60−197229号公報には、メ
ルカプト基を有するPVA系重合体を乳化分散安定剤と
して用い、スチレン系単量体、ジエン系単量体、アクリ
ル酸エステル系単量体、メタクリル酸エステル系単量体
の重合を行い得ることが開示されている。しかしなが
ら、本発明者らの検討によれば、重合安定性を確保する
には、PVA系重合体に含まれるメルカプト基とのレド
ックス反応によってのみラジカルを発生する特殊な開始
剤(臭素酸カリウム)の使用が必要であり、通常の開始
剤では、その目的が達成できない。また、メルカプト基
が消費されてしまった時点で反応が停止してしまうとい
う問題があることも指摘されている。
【0007】また、特開平8−81665号公報には、
炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜10モル%含
有する特殊な変性ポリビニルアルコールが提案されてい
る。更に、特開平8−325312号公報では、メルカ
プト基を有する少量の連鎖移動剤の存在下にPVAを分
散剤としてエチレン性不飽和単量体及びジエン系単量体
を重合する、水性エマルションの製造方法が開示されて
いる。しかしながら、連鎖移動剤の不存在下では、重合
中にゲル化してしまうという問題点がある。
【0008】また、特開平8−104703号公報に
は、粘度平均重合度、重量平均重合度/数平均重合度の
比及び分子量分布の最大の分子量ピーク位置を規定した
特殊なポリビニルアルコール系重合体を分散剤として使
用して、アクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸エ
ステル系単量体、スチレン系単量体、ジエン系単量体又
はハロゲン化ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体
の水性エマルションを得ることが開示されているが、汎
用的ではない。
【0009】しかしながら、こういった特殊な変性ポリ
ビニルアルコールまたは特定の重合度を有するポリビニ
ルアルコールを使用する方法は、経済的に不利であると
いう問題点がある。また、連鎖移動剤の存在下での製造
ではポリマーの分子量が低下し、ポリマー強度が低下す
るという問題点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、ポリビニルアルコール系水性エマルショ
ンの優れた機械的安定性、各種添加剤との混和安定性等
の各種分散安定性を有するとともに、比較的低温の処理
でも充分な耐水性、湿潤強度を有する含浸紙や不織布製
品などの繊維製品を与える接着剤を提供することを目的
とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水性媒体中、アル
コールの存在下で、特定の水溶性高分子化合物を反応系
に添加しながら、特定の重合開始剤を使用して、アクリ
ル酸エステル系単量体等より成る単量体混合物を重合す
ることによって、各種分散安定性に優れる水性エマルシ
ョンを得ることができること、この水性エマルションは
特に湿潤時強度等に優れる繊維処理用接着剤となりうる
ことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに
至った。
【0012】かくして、本発明によれば、アルコール性
水酸基を含有する重量平均分子量2,000以上の水溶
性高分子化合物で分散安定化された、アクリル酸エステ
ル系単量体単位、メタクリル酸エステル系単量体単位、
芳香族ビニル系単量体単位及び共役ジエン系単量体単位
よりなる群から選ばれた1種の単量体単位から成る単独
重合体又は該単量体単位群から選ばれた少なくとも1種
以上の単量体単位を主成分とする共重合体のエマルショ
ンであって、分散安定化に使用した該アルコール性水酸
基を含有する水溶性高分子化合物の少なくとも一部が該
単独重合体又は共重合体にグラフトしていて、そのグラ
フト率が、0.5〜30重量%であることを特徴とする
繊維処理用接着剤が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のエマルションを構成する
重合体の調製に用いられる単量体は、(メタ)アクリル
酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体及び共役ジ
エン系単量体よりなる群から選ばれた1種の単量体、又
は、これらの単量体の少なくとも1種を主成分とする単
量体混合物である。なお、本明細書において、(メタ)
アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称し
て指す。
【0014】本発明で使用する(メタ)アクリル酸エス
テル系単量体に、特に限定はない。前記(メタ)アクリ
ル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸メ
チル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル
酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリ
ル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチ
ル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ド
デシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル
酸ジメチルアミノエチル及びこれらの四級化物、エチレ
ングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
【0015】本発明で使用する芳香族ビニル系単量体
に、特に限定はない。前記芳香族ビニル系単量体の具体
例としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロ
ルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、
モノメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルス
チレン、ビニルトルエン、p−スチレンスルホン酸及び
そのナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。
【0016】本発明で使用する共役ジエン系単量体に、
特に限定はない。前記共役ジエン系単量体の具体例とし
ては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタ
ジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−
クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、
置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキ
サジエン類などが挙げられる。
【0017】本発明においては、共重合体の主成分とな
る(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル
系単量体及び共役ジエン系単量体のほかに、これらと共
重合可能なその他の単量体を使用することができる。こ
れらその他の単量体は、前記主成分となる単量体と共重
合可能なものであれば特に限定されない。これらその他
の単量体は本発明の目的、効果を損なわない範囲内にお
いて、通常、全単量体の50重量%未満の範囲で使用す
ることができる。
【0018】上記その他の単量体の具体例としては、塩
化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニ
リデンなどハロゲン化ビニル単量体;ギ酸ビニル、酢酸
ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、
ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニルなどのカルボン
酸ビニルエステル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、
フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン
酸、無水イタコン酸、マレイン酸ブチル、イタコン酸ブ
チルなどの不飽和モノカルボン酸又は多価カルボン酸も
しくはその部分エステル;エチレン、プロピレン、1−
ブテン、イソブテンなどのオレフィン系単量体;メチル
ビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプ
ロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イ
ソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、
ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量
体;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニ
トリル類;酢酸アリル、酢酸メタリル、塩化アリル、塩
化メタリルなどのアリル化合物及びメタリル化合物;フ
マール酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジ
イソプロピルなどの不飽和多価カルボン酸の塩又はその
エステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリ
ル化合物;ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンなど
を挙げることができる。
【0019】本発明の水性エマルションは、(メタ)ア
クリル酸エステル系単量体単位、芳香族ビニル系単量体
単位及び共役ジエン系単量体単位より選ばれた1種の単
量体単位からなる単独重合体又は該単量体単位群から選
ばれた少なくとも1種の単量体単位を主成分とする共重
合体のエマルションであって、重合時に分散安定化剤と
して添加したアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合
物の少なくともその一部が該単独重合体又は該共重合体
にグラフト結合している。本発明の水性エマルションの
優れた安定性は、このグラフト結合されたアルコール性
水酸基含有水溶性高分子化合物によるものと考えられ
る。
【0020】本発明において、アルコール性水酸基を含
有する水溶性高分子化合物がグラフト結合した単独重合
体又は共重合体の重量(グラフト結合した該アルコール
性水酸基を含有する水溶性高分子化合物の重量を除
く。)と該アルコール性水酸基を含有する水溶性高分子
化合物がグラフト結合していない単独重合体又は共重合
体の重量との合計量に対する、単独重合体又は共重合体
にグラフトした該アルコール性水酸基含有水溶性高分子
化合物の重量の比率を、グラフト率という。
【0021】本発明においては、このグラフト率は0.
5〜30重量%であることが必要であり、好ましくは1
〜15重量%、更に好ましくは5〜10重量%である。
このグラフト率が0.5重量%未満では、湿潤強度が悪
くなる。30重量%を超えると、エマルションの粘度が
高くなり取り扱いが困難になり、また、得られる繊維製
品の風合いが硬くなる問題が生じ、粘度を低くする為に
重合濃度を低くすると生産性が悪くなる。
【0022】なお、水性エマルション中に存在する遊離
のアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物と、アル
コール性水酸基含有水溶性高分子化合物がグラフト結合
した共重合体とは、例えば、遠心分離によって、分離す
ることができる。すなわち、遊離のアルコール性水酸基
含有水溶性高分子化合物は水層中に残り、アルコール性
水酸基含有水溶性高分子化合物がグラフト結合した共重
合体は、沈殿する。アルコール性水酸基含有水溶性高分
子化合物がグラフト結合した共重合体は、例えば、これ
をさらに過酸化物ラジカルで処理をすることにより不溶
化して、該水溶性高分子化合物がグラフト結合していな
い共重合体と分離することができる。ここで、アルコー
ル性水酸基含有水溶性高分子化合物がグラフト結合した
共重合体中の該水溶性高分子化合物の量は、例えば、水
酸基をアセチル化するなどの手法により適切な誘導体に
変換した後、例えば、NMRなどにより分析することが
できる。
【0023】本発明で使用する水性エマルションは、好
適には、以下のようにして製造することができる。即
ち、水性媒体(水又は水と所望により併用するアルコー
ルなどの水溶性有機溶媒との混合物をいう。)中におい
て、分解して過酸化物ラジカルを発生する重合開始剤を
用いて、アルコール及びアルコール性水酸基を含有する
重量平均分子量2,000以上の水溶性高分子化合物
(以下、「アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合
物」という。)の存在下で、単量体を重合させる。
【0024】上記の水性エマルションの製造プロセスで
は、重合をアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物
の存在下で行うことが重要である。界面活性剤を用いた
乳化(共)重合又は後乳化法によって得られた水性エマ
ルションに該水溶性高分子化合物を後添加する方法や乳
化(共)重合以外の方法で得られた(共)重合体又はそ
れらの水溶液を水に後乳化(強制乳化又は自己乳化)分
散させる時に分散剤としてアルコール性水酸基含有水溶
性高分子化合物を用いる方法で得られるエマルション
は、各種の安定性が上記方法で得られたものよりも遥か
に劣る。
【0025】上記の水性エマルションの製造プロセスで
は、重合の進行と並行して単量体を反応系に添加してい
くことが重要である。単量体の全量を重合初期に一括し
て重合容器に投入して重合を開始する方法では、反応系
が不安定化するなどの問題が生じるので、望ましくな
い。
【0026】また、上記の水性エマルションの製造プロ
セスでは、重合の進行と並行してアルコール性水酸基含
有水溶性高分子化合物を反応系に添加していくことが重
要である。
【0027】単量体とアルコール性水酸基含有水溶性高
分子化合物とは、それぞれ別々に添加しても、単量体、
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物及び水を混
合して得られる単量体乳化物の形態で添加しても構わな
い。単量体とアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合
物とを別々に添加する場合は、両者の添加をほぼ同時に
開始するのが望ましい。単量体のみが先に多量に添加さ
れると凝集物が発生しやすく、逆に、アルコール性水酸
基含有水溶性高分子化合物のみが先に多量に添加される
と重合系が増粘する、又は凝集物が発生しやすくなるな
どの問題が起きやすい。両者の添加終了は、必ずしも同
時である必要はないがほぼ同時であることが望ましい。
単量体及びアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物
の添加は、連続的又は断続的に行われる。
【0028】重合の開始は、即ち、単量体の存在下にお
ける開始剤ラジカルの発生は、アルコールの存在下に行
われることが必須である。重合開始時にアルコールを系
中に存在させるためには、重合開始剤添加前に反応容器
にアルコールを添加しておく、アルコールを重合開始剤
の溶媒又はその一部として重合系に添加する等の方法を
採用することができる。重合の開始が、アルコールの不
存在下、かつ、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化
合物の存在下に行われると、重合系が凝集する等の問題
が起きる。また、上記水性エマルションの製造方法にお
いては、重合の進行をアルコールの存在下に行うことが
各種安定性に優れたエマルションを得るために必須であ
る。
【0029】上記の水性エマルションの製造方法におい
て、アルコールを存在させない場合又はアルコールの使
用量が過少である場合は、安定性に優れた水性エマルシ
ョンを得ることができない。アルコールの存在により水
性エマルションの安定性が向上する理由は、本願発明を
何ら限定するものではないが、以下のような機構による
と解される。すなわち、過酸化物ラジカルは、アルコー
ル性水酸基含有水溶性高分子化合物から水素を容易に引
き抜いて、アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物
ラジカルを生成する。また、過酸化物ラジカルは、アル
コールから水素を引き抜いて、アルコールラジカルを生
成する。この過酸化物ラジカルによるアルコール性水酸
基含有水溶性高分子化合物ラジカルの生成速度とアルコ
ールラジカルの生成速度とでは、アルコールラジカルの
生成速度の方が圧倒的に大きい。このため、アルコール
の不存在下では、過酸化物ラジカルによって生成したア
ルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物ラジカル同士
の結合により容易に不溶化物が生じるのに対して、アル
コールの存在下では、アルコール性水酸基含有水溶性高
分子化合物が反応するよりも速くアルコールが過酸化物
ラジカルと反応して、アルコールラジカルが生成するた
めアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物ラジカル
の生成が抑制される。従って、アルコール性水酸基含有
水溶性高分子化合物ラジカル同士の結合による不溶化物
の生成が抑制される。これにより、重合反応系の不安定
化が起こり難くなると考えられる。
【0030】本発明において使用しうるアルコールは、
格別限定されることはなく、1価及び多価のいずれでも
よいが、水溶性のものが好ましい。このようなアルコー
ルの具体例としては、例えば、メタノール、エタノー
ル、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、
プロピレングリコール、グリセロールなどを挙げること
ができる。アルコールの使用量は単量体100重量部に
対して1〜50重量部、好ましくは3〜20重量部であ
る。
【0031】上記重合においては、重合開始剤として、
過酸化物ラジカルを発生するものを使用することが必須
である。過酸化物ラジカルとは、過酸化物のO−O結合
が切断して生成する構造を有するラジカルをいう。過酸
化物ラジカルを発生する重合開始剤の具体例としては、
過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素など
の水溶性過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイ
ド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオ
キサイドなどの油溶性過酸化物;過酸化物と重亜硫酸水
素ナトリウムなどの各種還元剤との組み合わせによるレ
ドックス系開始剤などを挙げることができるが、中でも
水溶性過酸化物が好適であり、過硫酸塩が特に好適であ
る。これら重合開始剤の使用量は、単量体100重量部
に対して、通常、0.05〜3重量部、好ましくは0.
1〜2重量部である。過酸化物ラジカルを発生すること
のない上記以外の重合開始剤を使用した場合は安定性に
優れた水性エマルションを得ることができない。
【0032】重合開始剤の添加方法には特に制限はない
が、重合開始前の重合容器に全量を投入する方法や、重
合開始前の重合容器に一部を投入して重合を開始した
後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開
始前に重合容器に一部を投入して重合を開始した後、残
部を単量体やアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合
物の添加と並行して連続的又は断続的に重合系に添加す
る方法などを採り得る。
【0033】本発明においては、重合時の分散安定化剤
として、重量平均分子量2,000以上のアルコール性
水酸基含有水溶性高分子化合物を使用することが必要で
ある。重量平均分子量が2,000未満では、重合を安
定的に行うことができない。アルコール性水酸基含有水
溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコ
ール及びその各種変性物などのビニルアルコール系重合
体;酢酸ビニルとアクリル酸、メタクリル酸又は無水マ
レイン酸との共重合体のけん化物;アルキルセルロー
ス、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキ
シアルキルセルロース、カルボキシルメチルセルロース
などのセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシル
メチル澱粉、酸化澱粉などの澱粉誘導体;アラビアゴ
ム、トラガントゴム;ポリアルキレングリコールなどを
挙げることができる。中でも、工業的に品質が安定した
ものを入手しやすい点から、ビニルアルコール系重合体
が好ましい。
【0034】前記ビニルアルコール系重合体は、実質的
に水溶性であって安定なエマルションが得られるもので
あれば、その他の条件には制限はなく、ビニルエステル
系単量体を主体とするビニル系単量体を従来公知の方法
で重合して得たビニルエステル系重合体(すなわち、ビ
ニルエステル系単量体の単独重合体、2種以上のビニル
エステル系単量体の共重合体、及びビニルエステル系単
量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体)を常
法によりけん化して得られる。また、分子の主鎖、側鎖
又は末端にメルカプト基などの変性基を導入したものを
使用できる。前記ビニルエステル系単量体はラジカル重
合可能なものであればいずれも使用でき、その具体例と
しては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
ル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリン
酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安
息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビ
ニルなどを挙げることができる。なかでも工業的に製造
され安価な酢酸ビニルが一般的である。
【0035】また、ビニルエステル系単量体と共重合可
能な単量体を共存させ、共重合することも可能である。
これら共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピ
レン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;ア
クリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イ
タコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメ
ット酸又は無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸;ア
クリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プ
ロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチ
ル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキ
シル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルな
どのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタ
クリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリ
ル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリ
ル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メ
タクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどの
メタクリル酸エステル類;フマール酸ジメチル、マレイ
ン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどの不飽和
カルボン酸エステル;メチルビニルエーテル、n−プロ
ピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n
−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、
t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、
ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ア
クリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル
類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ
化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、
塩化アリルなどのアリル化合物;エチレンスルホン酸、
アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリル
アミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン
酸基含有化合物;ビニルトリメトキシシランなどのビニ
ルシラン化合物;及び3−アクリルアミドプロピルトリ
メチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミド
プロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4
級アンモニウム基を有する単量体などを挙げることがで
きる。
【0036】前記ビニルエステル系重合体のけん化度
は、変性基の有無及びその種類に依存して変るが、得ら
れるビニルアルコール系重合体の水溶性などの観点か
ら、40〜99.99モル%であることが好ましく、5
0〜99.9モル%がより好ましく、60〜99.5モ
ル%がさらに好ましい。けん化度が40モル%未満の場
合には粒子の分散安定性が低下する。前記ビニルエステ
ル系重合体の粘度平均重合度は、通常、50〜8,00
0、好ましくは100〜6,000、より好ましくは1
00〜5,000である。前記重合度が50未満の場
合、重合安定性が不十分であり、また重合度が8,00
0を越えるとエマルションの粘度が非常に高くなり、エ
マルション製造時の除熱が困難になるなどの問題があ
る。
【0037】アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合
物の使用量は、単量体100重量部当たり0.5〜10
0重量部であり、好ましくは0.5〜50重量部、さら
に好ましくは1〜20重量部である。0.5重量部未満
では、重合時の安定性が悪く凝集物が多量に発生する、
得られるエマルションの機械的安定性及び化学的安定性
が低下する、皮膜強度が低下するなどの問題があり、1
00重量部を超えて使用すると、重合系の粘度上昇によ
る反応熱除去が困難になる、得られるエマルションの粘
度が高くなりすぎ、取り扱いが困難となる、さらには、
エマルションから形成した皮膜の耐水性が低下するとい
った問題が起きる。
【0038】乳化重合において、ノニオン性、アニオン
性、カチオン性又は両性界面活性剤などの通常使用され
る各種の乳化剤は、必須ではなく、本発明の目的、効果
を損なわない範囲で併用してもよい。これらの中では、
アニオン性界面活性剤が好適である。
【0039】アニオン性界面活性剤の例としては、高級
アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン
酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキ
ルアリールスルホン酸塩、ポリリン酸塩などを、ノニオ
ン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール
のアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型又
はアルキルエーテル型のものなどを、カチオン性界面活
性剤の例としては、脂肪族アミン塩及びその4級アンモ
ニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アン
モニウム塩などを、両性界面活性剤の例としては、カル
ボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸
塩、イミダゾリン誘導体を挙げることができる。これら
の乳化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよ
い。これらの乳化剤を使用する場合の使用量は単量体1
00重量部に対して、通常、0.1〜5重量部であり、
多すぎるとアルコール分散性が低下する。
【0040】重合に使用する水性媒体100重量部に対
する単量体の量は、特に制限されないが、通常10〜7
0重量部、好ましくは20〜50重量部である。単量体
の添加速度は、特に制限はないが、反応中の重合転化率
が10重量%以上を保つように制御するのが好ましい。
反応途中の好ましい重合転化率は20重量%以上、さら
に好ましくは30重量%以上である。単量体の添加速度
が速すぎると重合転化率が低くなり、粗大粒子が発生し
やすくなる。逆に、遅すぎると、重合系の粘度が上昇し
やすくなる。通常、単量体及びアルコール性水酸基含有
水溶性高分子化合物の添加に要する時間は、1時間以上
であり、好ましくは2時間以上、20時間以下である。
【0041】重合温度は特に制限はないが通常、0〜1
00℃、好ましくは5〜95℃である。単量体添加終了
後、必要ならば、重合をさらに続行して所望の重合転化
率に到達した後、重合を停止する。重合の停止は、重合
停止剤を添加するか又は単に重合系を冷却することによ
って行うことができる。また、重合終了後に、所望によ
り、未反応の単量体を除去することができる。上記以外
の重合条件や重合方法には特に制限はなく、各種の従来
公知の乳化重合方法を採用することができる。
【0042】重合に際しては、必須ではないが、連鎖移
動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、連
鎖移動が起こるものであれば特に制限はなく、例えば、
n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタ
ン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプ
タン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメル
カプタンなどのメルカプタン、チオグリコール酸、チオ
リンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどの
メルカプト基を有する化合物;ジメチルキサントゲンジ
サルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファ
イドなどのキサントゲン化合物;α−メチルスチレンダ
イマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテ
ン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、
1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンなどの
α−メチルスチレンダイマー類;ターピノレン;テトラ
メチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジ
スルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなど
のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メ
チルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノー
ル系化合物;アリルアルコール、アクロレイン、メタク
ロレインなどのアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロ
モメタン、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭
化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベン
ジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアク
リルアミドなどのビニルエーテル;トリフェニルエタ
ン、ペンタフェニルエタン;などを挙げることができ
る。
【0043】これらの中では、連鎖移動の効率の点でメ
ルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を
有する化合物としては、炭素数50以下の化合物が好ま
しく、炭素数30以下の化合物がより好ましく、炭素数
20以下の化合物が特に好ましく、具体的には、n−オ
クチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−
ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2
−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸
などが挙げられる。
【0044】連鎖移動剤を使用する場合、その添加量
は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜5
重量部である。連鎖移動剤が、0.01重量部未満で
は、重合安定性向上効果が小さく実用的ではない。ま
た、5重量部を越える場合には、重合安定性が低下する
うえ、得られる重合体の分子量が著しく低下し、エマル
ションの各種物性の低下が起こる。連鎖移動剤の添加方
法は、特に限定されず、一括添加しても、断続的に又は
連続的に重合系に添加してもよい。本発明で使用する水
性エマルションに、可塑剤、消泡剤などの助剤を重合時
又は重合後に併用することは何ら差し支えない。
【0045】本発明の水性エマルションは、以下の特性
を有している。本発明の水性エマルションは、その平均
粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.2〜2μmで
ある。本発明の水性エマルションのpH8における機械
的安定性は、マーロン安定性試験における発生凝固物量
が0.1重量%以下であって、非常に優れている。ま
た、重合体にカルボキシル基を導入する必要がないの
で、pHによるエマルションの粘度変化がなく、また、
エマルションから成膜した皮膜は耐水性に優れている。
また、本発明の水性エマルションは、優れた化学的安定
性を有している。特に2価の無機塩に対する安定性は、
非常に優れており、例えば、30重量%の固形分濃度で
同量の30重量%塩化カルシウム水溶液を添加混合して
も凝固しない。本発明のエマルションの塩化カルシウム
化学的安定性指数は、20以上、好ましくは30以上で
ある。塩化カルシウム化学的安定性指数については、後
述する。また、本発明の水性エマルションは、界面活性
剤を使用しないとき、表面張力が45mN/m以上、好
ましくは50mN/m以上と高い。
【0046】本発明の水性エマルションは、繊維製品の
製造・加工において、接着剤として好適に使用される。
対象となる繊維は、有機繊維又は無機繊維のいずれでも
よく、有機繊維としては、パルプ、羊毛、木綿、麻、絹
等の天然繊維;ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポ
リプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリフ
ェニルフェニレン繊維、ポリイミド繊維、ポリ塩化ビニ
ル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリフルオロビニリ
デン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリカー
ボネート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリパラフ
ェニレンテレフタレート繊維、再生セルロース繊維等の
合成繊維を、無機繊維としては、ガラス繊維、各種セラ
ミックス繊維、カーボン繊維等を例示することができ
る。
【0047】また、本発明の水性エマルションは、各種
繊維からこれを接着して不織布、含浸紙等の繊維製品を
製造する際に使用できるほか、繊維製品の表面処理・ラ
ミネート等の後加工にも使用することができる。繊維製
品の製造や後加工に当たって、本発明の水性エマルショ
ンを適用する形態としては、含浸、塗布、スプレー等を
例示することができるが、これらに限定されない。
【0048】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるも
のではない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に
ことわりのない限り、それぞれ「重量%」及び「重量
部」を示す。なお、ラテックスの重量は固形分換算であ
る。また、実施例中の粒径は重量平均粒径である。
【0049】また、各種試験データの測定法は下記のと
おりである。 (1)重量平均粒子径(μm) コールターLS230(コールター社製粒子径測定機)
で測定する。
【0050】(2)グラフト率(%) 重合で得られた水性エマルションの固形分濃度を10%
に調整して、その60gを試料とする。試料を5℃×1
3,000rpm×60分の条件で遠心分離し、上澄み
液を40g回収する。沈降層(20g)に蒸留水40g
を添加して均一にした後、同一条件で再度遠心分離し
て、上澄み液40gを回収し、沈降層について再度同一
操作を繰り返す。3回の遠心分離で得られた上澄み液合
計120gの固形分を測定し、上澄み液中の固形分量を
計算する。これが、単独重合体又は共重合体にグラフト
しなかったアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物
の量(A)である。試料中のアルコール性水酸基含有水
溶性高分子化合物の重量(B)[単独重合体又は共重合
体にグラフトしたアルコール性水酸基含有水溶性高分子
化合物と単独重合体又は共重合体にグラフトしていない
アルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物との和]か
ら(A)を差し引いて、単独重合体又は共重合体にグラ
フトしたアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の
量(C)を得る。従って、上記測定条件において、グラ
フト率は、下記式で与えられる。 グラフト率=〔C/(6−B)〕×100(%)
【0051】(3)B型粘度(mPa・s) 固形分濃度35%、pH8.0に調整したエマルション
をブルックフィールズ粘度計を用いて、25℃において
1分間回転させた後、粘度を測定した。
【0052】(4)表面張力(mN/m) 固形分濃度30%の重合体エマルションについて、オー
トテンションメーター(Type6801ES:離合社
製)を用いて20℃で測定する。
【0053】(5)化学的安定性(塩化カルシウム化学
的安定性指数) エマルションを100メッシュ金網で濾過した後、固形
分濃度を30%に調整する。次に、これと同量の濃度3
0%の塩化カルシウム水溶液を添加・撹拌した後、再び
100メッシュ金網で濾過して、金網に固形物があるか
否かを観察する。各種濃度の塩化カルシウム水溶液を用
いて同様の試験を繰り返し、凝固物が発生しなかった塩
化カルシウム水溶液の最高濃度(X)を、化学的安定性
指数とする。この数値が高い方が化学的安定性がよい。
上記試験は、塩化カルシウム化学的安定性指数である
が、電解質の種類を変えて、例えば塩化ナトリウム化学
的安定性指数なども求めることができる。
【0054】(6)機械的安定性(%) pHを8±0.1に調整したエマルションを100メッ
シュ金網で濾過した後、固形分濃度を30%に調整す
る。これを100メッシュ金網で濾過した後、マーロン
式機械的安定性試験に供する。条件は、回転数1000
rpm、加重15kg、10分間である。試験後のエマ
ルションを100メッシュ金網で濾過し、金網上に濾取
された凝集物を乾燥後、秤量して凝集物発生量を求め、
この供試エマルション固形分重量に対する割合(%)を
求める。
【0055】不織布に関する具体的評価方法は以下のと
おりである。 (1)不織布の作製条件 パルプウェブの一片面に固形分濃度5%のポリマーエマ
ルションをスプレー含浸して、140℃で3分間乾燥さ
せた。他の片面にも同様の操作を行った後、20℃、湿
度65%の恒温恒湿室で一晩調湿して不織布を得た。得
られた不織布中のポリマー含有量は、9g/mであっ
た。この不織布を2.5cm×13cmに裁断し、試験
片とした。
【0056】(2)不織布の常態強度測定法 上記試験片について、次の測定条件により、テンシロン
(オリエンテック株式会社製:RTC−1225A)を
用いて、引張り試験を行い、最大点応力を測定した。 測定環境:20℃、65%相対湿度 クロスヘッド速度:200mm/分
【0057】(3)不織布の湿潤強度測定法 上記試験片を常温の水道水に30分間浸漬した後に、
(2)と同様の条件で引張り試験を行い、最大点応力を
測定した。
【0058】含浸紙に関する具体的評価方法は以下のと
おりである。 (1)含浸紙の作成条件 ろ紙(東洋ろ紙No.2)に固形分濃度20%のエマル
ションを含浸させ、小型ロール(YURI ROLL
MACHINE Co., LTD製:TSC−14
6)で絞った後、110℃のオーブンで10分間乾燥さ
せた。その後さらに160℃のオーブンで5分間乾燥さ
せた。これを20℃、湿度65%の恒温恒湿室で一晩調
湿して含浸紙を得た。得られた含浸紙中のポリマー含有
量は、30g/mであった。この含浸紙を2.5cm
×13cmに裁断し、試験片とした。
【0059】(2)含浸紙の常態強度測定法 試験片をテンシロンを用いて、不織布の常態強度測定法
と同様の測定条件により引張り試験を行い、最大点応力
を測定した。
【0060】(3)含浸紙の湿潤強度測定法 試験片を常温の水道水に1時間浸漬した後に、(2)と
同様の条件で引張り試験を行い、最大点応力を測定し
た。
【0061】(実施例1)脱イオン水90部に、スチレ
ン50部とアクリル酸エチル50部とよりなる単量体混
合物及びポリビニルアルコール(PVA−205、クラ
レ社製、重合度550、けん化度88.5モル%)5部
を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。別途、還流冷
却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備え
たガラス製反応容器に、蒸留水57部及びエタノール8
部を装入して温度を60℃に昇温し、60℃を維持した
状態で、過硫酸カリウム0.5部を脱イオン水10部に
溶解した開始剤溶液を添加した。2分後に反応容器に前
記単量体乳化物の添加を開始し、4時間かけて添加を終
了した。添加終了後、さらに2時間撹拌を継続した後、
冷却して反応を終了させた。この時の重合転化率は97
%、粒径は0.3μmであった。エマルションを調整し
て、固形分濃度35%、B型粘度は80mPa・sのエ
マルション(a)を得た。
【0062】得られたエマルションの固形分濃度を10
%に調整し、その60gを用いて、グラフト率を求め
た。なお、遠心分離器としては、国産遠心機社製H−2
000Aを使用した。回収した上澄み液合計液の固形分
濃度は0.08%、回収上澄み液中に分離された総固形
分量0.09gであった。サンプル60g中の水溶性高
分子保護コロイド(ポリビニルアルコール)量Bは、6
g×(5/(97+5))=0.294g。これから、
グラフト率は、下記式のとおり、3.6%となる。 (0.294−0.09)/(6−0.294)×10
0=3.6% なお、この実施例において、使用したポリビニルアルコ
ールのうち、共重合体にグラフトしたものの割合(グラ
フト効率)は69%である(下記式)。 ((0.294−0.09)/0.294)×100=
69%
【0063】(実施例2〜5)単量体組成及びアルコー
ル性水酸基含有水溶性高分子化合物の種類又は量を表1
に示すように変えるほかは、実施例1と同様にして、エ
マルション(b)〜(e)を得た。なお、PVA220
Eは、クラレ社製、重合度2050、けん化度88モル
%のポリビニルアルコールである。これらのエマルショ
ンの特性を実施例1と同様に測定した。その結果を表1
に示す。
【0064】(実施例6)窒素吹き込み口を備えた耐圧
オートクレーブに、脱イオン水90部、スチレン50
部、t−ドデシルメルカプタン1部、ポリビニルアルコ
ール(PVA−205、クラレ社製、重合度350、け
ん化度88.0モル%)4部を仕込み、窒素置換を行っ
た後、ブタジエン50部を耐圧計量器より圧入して、混
合、撹拌して単量体乳化物を得た。別途、窒素吹き込み
口、温度計を備えた耐圧オートクレーブに、脱イオン水
57部、エタノール8部を仕込み、窒素置換後、60℃
に昇温し、60℃を維持した状態で、過硫酸カリウム
0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を圧
入し、直ちに前記単量体乳化物を5時間かけて添加し
た。添加終了後、さらに3時間撹拌を継続した後、冷却
して反応を終了させた。この時の重合転化率は95%、
粒径は0.35μmであった。エマルションを調整し
て、固形分濃度35%、B型粘度は120mPa・sの
スチレン−ブタジエン共重合体エマルション(f)を得
た。得られたエマルション(f)について実施例1と同
様の評価を行った。この結果を表1に示す。
【0065】(比較例1)[通常の界面活性剤によるエ
マルションの例] PVA205に代えてラウリル硫酸ナトリウムを使用し
たほかは実施例2と同様にして、エマルション(g)を
得た。得られたエマルションについて実施例1と同様の
評価を行った。この結果を表1に示す。
【0066】(比較例2)[低グラフト率エマルション
の例] ラウリル硫酸ナトリウム3部を併用したほかは実施例1
と同様にして、エマルション(h)を得た。得られたエ
マルションについて実施例1と同様の評価を行った。こ
の結果を表1に示す。
【0067】(比較例3)[高グラフト率エマルション
の例] メタクリル酸2部をメタクリル酸メチルに変え、PVA
220Eの量を50部としたほかは実施例2と同様にし
て、エマルション(i)を得た。得られたエマルション
について実施例1と同様の評価を行った。この結果を表
1に示す。
【0068】(実施例7〜12,比較例4〜6)エマル
ション(a)〜(i)を用いて、不織布を作成し、その
強度を測定した。結果を表1に示す。
【0069】(実施例13〜18,比較例7〜9)エマ
ルション(a)〜(i)を用いて、含浸紙を作成し、そ
の強度を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】表1の評価結果から、通常のアニオン性界
面活性剤を乳化剤として使用して得たエマルション
(g)を使用して得た不織布(比較例4)は、常態強度
は良好であるが、湿潤強度が非常に低いことが分かる。
また、水溶性高分子化合物のグラフト率が本発明の規定
範囲より低いエマルション(h)を使用して得た不織布
(比較例5)は、比較例4に比べて湿潤強度が僅かによ
いに過ぎない。更に、水溶性高分子化合物のグラフト率
が本発明の規定範囲より高いエマルション(i)を使用
して得た不織布(比較例6)は、常態強度が優れている
が、風合いが硬く、湿潤時強度は、やはり劣る。これに
対して、本発明のエマルションを用いた実施例7〜12
の不織布は、常態強度に対する湿潤強度の比率が非常に
高い、即ち、湿潤時でも強度が低下しないことがわか
る。
【0072】表1に示す結果から、含浸紙強度について
も、同様のことが言えることが分かる。
【0073】
【発明の効果】かくして本発明によれば、優れた各種分
散安定性を有するとともに、比較的低温の処理でも充分
な湿潤強度を有する含浸紙や不織布製品などの繊維製品
を与える繊維処理用接着剤を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09J 125/00 C09J 125/00 133/04 133/04 D06M 14/00 D06M 14/00 Fターム(参考) 4J011 KA15 KB14 KB29 4J026 AA02 AA03 AA04 AA11 AA12 AA13 AA14 AA24 AA25 AA26 AA30 AA31 AA37 AA38 AA43 AA45 AA49 AA50 AA53 AA54 AA55 AA62 AA63 AB19 AC23 AC33 AC35 BA01 BA02 BA03 BA05 BA06 BA08 BA10 BA11 BA16 BA19 BA20 BA25 BA27 BA28 BA29 BA31 BA34 BA35 BA36 BA40 BA43 BA45 BA46 BA47 BA49 BB01 BB02 CA07 DB04 DB08 DB10 DB11 DB14 DB15 DB16 DB26 DB29 DB31 DB32 DB40 EA02 FA04 GA08 GA09 4J040 DD022 DL001 DL121 DL141 JA03 KA38 MA09 MB02 NA11 4L033 AB01 AC11 CA13 CA18 CA29

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコール性水酸基を含有する重量平均
    分子量2,000以上の水溶性高分子化合物で分散安定
    化された、アクリル酸エステル系単量体単位、メタクリ
    ル酸エステル系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位
    及び共役ジエン系単量体単位よりなる群から選ばれた1
    種の単量体単位から成る単独重合体又は該単量体単位群
    から選ばれた少なくとも1種の単量体単位を主成分とす
    る共重合体のエマルションであって、分散安定化に使用
    した該アルコール性水酸基を含有する水溶性高分子化合
    物の少なくとも一部が該単独重合体又は共重合体にグラ
    フトしていて、そのグラフト率が、0.5〜30重量%
    であることを特徴とする繊維処理用接着剤。
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