JP4130986B2 - 紙塗工用水性エマルション及び紙塗工組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は紙塗工組成物及び紙塗工用水性エマルションに関し、更に詳しくは、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、白紙光沢、ウェット着肉性及び耐ブロッキング性に優れ且つそれらのバランスがよい塗工紙を得るための紙塗工組成物及びこれに用いる水性エマルションに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷技術の急速な発達に伴い、塗工紙に要求される性能も厳しくなっており、例えば、ドライピック強度とウェットピック強度との相矛盾した特性を両方とも向上させ、更には、ウェット着肉性に優れ且つこれらのバランスのよい塗工紙が求められている。これらの要求を満たすべく、種々の検討がなされており、例えば、紙塗工用エマルションとしては、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、共役ジエン単量体及びこれらと共重合可能な単量体を共重合してなる共重合体エマルションの存在下に、メタクリロニトリル及びメタアクリルアミドを共重合して得られる共重合体エマルション(特開平5−239113号公報)、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、共役ジエン単量体及びこれらと共重合可能な単量体を共重合してなる共重合体エマルションの存在下に、アクリロニトリル及びブタジエンを共重合して得られる共重合体エマルション(特開平5−59693号公報)等が提案されている。しかしながら、これらの共重合体エマルションを用いた塗工組成物を用いて得られる塗工紙は、ドライピック強度、ウェットピック強度、白紙光沢、ウェット着肉性などの特性のいずれかが悪く、各特性のバランスが十分でなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、ウェット着肉性、白紙光沢及び耐ブロッキング性に優れ且つこれらのバランスがよい塗工紙を得るための紙塗工組成物及びこれに用いる水性エマルションを提供することにある。
【0004】
本発明者らは、この目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、共役ジエン単量体単位等から成る特定の共重合体の水性エマルションであって、水溶性ビニルアルコール系重合体で分散安定化されており、分散安定化に使用した該水溶性ビニルアルコール系重合体の少なくとも一部が該共重合体にグラフトしていて、しかも、そのグラフト率が特定の範囲にある水性エマルションを用いることによって本目的を達成できることを見出し、この知見に基いて本発明を完成するに到った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、共役ジエン単量体30〜70重量%、芳香族ビニル単量体10〜70重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜60重量%からなる単量体を、単量体100重量部に対して1〜50重量部のアルコールの存在下に共重合して得られる共重合体の水性エマルションであって、重量平均分子量2,000以上の水溶性ビニルアルコール系重合体で分散安定化されており、分散安定化に使用した該水溶性ビニルアルコール系重合体の少なくとも一部が該共重合体にグラフトしていて、そのグラフト率が0.5〜30重量%であることを特徴とする共重合体の水性エマルションから成る紙塗工用水性エマルションが提供される。
また、本発明によれば、前記水性エマルションと顔料とを必須成分とする紙塗工組成物が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の紙塗工用水性エマルションは、共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体からなる単量体を共重合してなる共重合体水性エマルションである。
【0007】
本発明において使用する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類などを挙げることができる。これら共役ジエン単量体のうち1,3−ブタジエンが好適である。共役ジエン単量体の量の下限は、共重合体の合成に使用する全単量体の30重量%、好ましくは40重量%であり、上限は共重合体の合成に使用する全単量体の70重量%、好ましくは55重量%である。30重量%未満ではドライピック強度が低下する。逆に70重量%を超えるとウェットピック強度及び耐ブロッキング性が低下する。
【0008】
本発明において使用する芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、モノメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、p−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。これら芳香族ビニル単量体のうちスチレンが好適である。
芳香族ビニル単量体の量の下限は共重合体の合成に使用する全単量体の10重量%、好ましくは20重量%であり、上限は共重合体の合成に使用する全単量体の70重量%、好ましくは60重量%である。10重量%未満ではウェットピック強度が低下する。70重量%を超えるとドライピック強度が低下する。
【0009】
本発明の共重合体水性エマルションの合成には、上記単量体以外のエチレン性不飽和単量体を用いることができる。
その具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−エチルプロペンニトリル、2−プロピルプロペンニトリル、2−クロロプロペンニトリル、2−ブテンニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの四級化物、エチレングリコールジメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0010】
ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニルなどのカルボン酸ビニルエステル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸及びその無水物;マレイン酸ブチル、イタコン酸ブチルなどの多価カルボン酸の部分エステル等;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン系単量体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;酢酸アリル、酢酸メタリル、塩化アリル、塩化メタリルなどのアリル化合物及びメタリル化合物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンなどなどが挙げられる。
【0011】
これらその他のエチレン性不飽和単量体は、共重合体の合成に使用する全単量体の、60重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
これらの単量体のうち、エチレン性不飽和ニトリル単量体を用いると塗工紙の印刷光沢、ドライピック強度及びウェットピック強度が高くなる。エチレン性不飽和ニトリル単量体を使用する場合、その使用量は、通常、共重合体の合成に使用する全単量体の2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
また、塗工紙のインク受理性及び耐候性を高くする目的の為にはエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が好適に用いられる。エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体を使用する場合、その使用量は、共重合体の合成に使用する全単量体の、通常、3〜40重量%、好ましくは、5〜20重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の量が多すぎると、水性エマルションの粘度が高くなる傾向になる。
【0012】
また、所望ならば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を使用することによって、紙塗工組成物の機械的安定性を向上させることができる。この単量体を使用する場合、その使用量は、全単量体の0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%である。この使用量が多すぎると水性エマルションの粘度が高くなって紙塗工組成物の調製が困難になる。
【0013】
本発明の紙塗工用水性エマルションを構成する共重合体粒子の重量平均粒子径は、通常、0.06〜0.50μm、好ましくは0.07〜0.40μmである。平均粒子径が小さすぎると、紙塗工用水性エマルションの粘度が高くなりすぎるので、紙塗工組成物の調製が困難になる。逆に平均粒子径が大きすぎると塗工紙のドライピック強度及びウェットピック強度が低下する。
なお、平均粒子径は水性エマルションを電子顕微鏡で観察し、撮影した写真からエマルション粒子を無作為に500個選び、粒子径を測定し、その数平均値で示した値である。
【0014】
本発明の紙塗工用水性エマルションを構成する共重合体のガラス転移温度は、通常、−30〜+30℃、好ましくは−15〜+20℃である。ガラス転移温度が低すぎると、塗工紙のウェットピック強度が低下する。逆にガラス転移温度が高くなりすぎると塗工紙のドライピック強度が低下する。
ガラス転移温度は水性エマルションを枠付きガラス板に流延し、温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に48時間放置してフィルムを得、このフィルムについて示差走査熱量計(DSC、セイコー電子工業(株)社製:SSC5200)を用いて、開始温度−100℃、昇温速度5℃/分の条件で測定して得られる値である。
【0015】
本発明の水性エマルションは、共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体からなる単量体をアルコールの存在下に共重合して得られる共重合体の水性エマルションであって、重合時に分散安定化剤として添加した水溶性ビニルアルコール系重合体の少なくともその一部が該共重合体にグラフト結合している。本発明の水性エマルションの優れた安定性は、このグラフト結合された水溶性ビニルアルコール系重合体によるものと考えられる。
【0016】
本発明において、水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合した共重合体の重量(グラフト結合した該水溶性ビニルアルコール系重合体の重量を除く。)と該水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合していない共重合体の重量との合計量に対する、共重合体にグラフトした該水溶性ビニルアルコール系重合体の重量の比率を、グラフト率という。
【0017】
本発明においては、このグラフト率は0.5〜30重量%であることが必要であり、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。このグラフト率が0.5重量%未満では、ウエットピック強度及びウエット着肉性が悪くなる。逆に30重量%を超えると、同様にウエットピック強度及びウエット着肉性が悪くなる上に白紙光沢も低下し、更に水性エマルションの粘度が高くなって取り扱いが困難になり、粘度を低くする為に重合濃度を低くすると生産性が悪くなる。
【0018】
なお、水性エマルション中に存在する遊離の水溶性ビニルアルコール系重合体と、水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合した共重合体とは、例えば、遠心分離によって、分離することができる。即ち、遊離の水溶性ビニルアルコール系重合体は水層中に残り、水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合した共重合体は、沈殿する。水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合した共重合体は、例えば、これを更に過酸化物ラジカルで処理をして不溶化することにより、該水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合していない共重合体と分離することができる。ここで、水溶性ビニルアルコール系重合体がグラフト結合した共重合体中の該水溶性ビニルアルコール系重合体の量は、例えば、水酸基をアセチル化するなどの手法により適切な誘導体に変換した後、例えば、NMRなどにより分析することができる。
【0019】
本発明で使用する水性エマルションは、好適には、以下のようにして製造することができる。即ち、水性媒体(水と、併用するアルコールとの混合物をいう。)中において、分解して過酸化物ラジカルを発生する重合開始剤を用いて、アルコール及び重量平均分子量2,000以上の水溶性ビニルアルコール系重合体の存在下で、単量体を重合させる。
【0020】
上記の水性エマルションの製造プロセスでは、重合を水溶性ビニルアルコール系重合体の存在下で行うことが重要である。界面活性剤を用いた乳化重合又は後乳化法によって得られた水性エマルションに該水溶性ビニルアルコール系重合体を後添加する方法や乳化重合以外の方法で得られた共重合体又はそれらの水溶液を水に後乳化(強制乳化又は自己乳化)分散させる時に分散安定剤として水溶性ビニルアルコール系重合体を用いる方法で得られるエマルションは、各種の安定性が上記方法で得られたものよりも遥かに劣る。
【0021】
上記の水性エマルションの製造プロセスでは、重合の進行と並行して単量体を反応系に添加していくことが重要である。
単量体の全量を重合初期に一括して重合容器に投入して重合を開始する方法では、反応系が不安定化するなどの問題が生じるので、望ましくない。
【0022】
また、上記の水性エマルションの製造プロセスでは、重合の進行と並行して水溶性ビニルアルコール系重合体を反応系に添加していくことが重要である。
【0023】
単量体と水溶性ビニルアルコール系重合体とは、それぞれ別々に添加しても、単量体、水溶性ビニルアルコール系重合体及び水を混合して得られる単量体乳化物の形態で添加しても構わない。単量体と水溶性ビニルアルコール系重合体とを別々に添加する場合は、両者の添加をほぼ同時に開始するのが望ましい。単量体のみが先に多量に添加されると凝集物が発生しやすく、逆に、水溶性ビニルアルコール系重合体のみが先に多量に添加されると重合系が増粘する、又は凝集物が発生しやすくなるなどの問題が起きやすい。両者の添加終了は、必ずしも同時である必要はないがほぼ同時であることが望ましい。単量体及び水溶性ビニルアルコール系重合体の添加は、連続的又は断続的に行われる。
【0024】
重合の開始は、即ち、単量体の存在下における開始剤ラジカルの発生は、アルコールの存在下に行われることが必須である。重合開始時にアルコールを系中に存在させるためには、重合開始剤添加前に反応容器にアルコールを添加しておく、アルコールを重合開始剤の溶媒又はその一部として重合系に添加する等の方法を採用することができる。重合の開始が、アルコールの不存在下、かつ、水溶性ビニルアルコール系重合体の存在下に行われると、重合系が凝集する等の問題が起きる。また、上記水性エマルションの製造方法においては、重合の進行をアルコールの存在下に行うことが各種安定性に優れた水性エマルションを得るために必須である。
【0025】
上記の水性エマルションの製造方法において、アルコールを存在させない場合又はアルコールの使用量が過少である場合は、安定性に優れた水性エマルションを得ることができない。アルコールの存在により水性エマルションの安定性が向上する理由は、本願発明を何ら限定するものではないが、以下のような機構によると解される。即ち、過酸化物ラジカルは、水溶性ビニルアルコール系重合体から水素を容易に引き抜いて、水溶性ビニルアルコール系重合体ラジカルを生成する。また、過酸化物ラジカルは、アルコールから水素を引き抜いて、アルコールラジカルを生成する。この過酸化物ラジカルによる水溶性ビニルアルコール系重合体ラジカルの生成速度とアルコールラジカルの生成速度とでは、アルコールラジカルの生成速度の方が圧倒的に大きい。このため、アルコールの不存在下では、過酸化物ラジカルによって生成した水溶性ビニルアルコール系重合体ラジカル同士の結合により容易に不溶化物が生じるのに対して、アルコールの存在下では、水溶性ビニルアルコール系重合体が反応するよりも速くアルコールが過酸化物ラジカルと反応して、アルコールラジカルが生成するため、水溶性ビニルアルコール系重合体ラジカルの生成が抑制される。従って、水溶性ビニルアルコール系重合体ラジカル同士の結合による不溶化物の生成が抑制される。これにより、重合反応系の不安定化が起こり難くなると考えられる。
【0026】
本発明において使用し得るアルコールは、格別限定されることはなく、1価及び多価のいずれでもよいが、水溶性のものが好ましい。このようなアルコールの具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどを挙げることができる。アルコールの使用量は単量体100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。
【0027】
上記重合においては、重合開始剤として、過酸化物ラジカルを発生するものを使用することが必須である。過酸化物ラジカルとは、過酸化物のO−O結合が切断して生成する構造を有するラジカルをいう。過酸化物ラジカルを発生する重合開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水溶性過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの油溶性過酸化物;過酸化物と重亜硫酸水素ナトリウムなどの各種還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤などを挙げることができるが、中でも水溶性過酸化物が好適であり、過硫酸塩が特に好適である。これら重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。過酸化物ラジカルを発生することのない上記以外の重合開始剤を使用した場合は安定性に優れた水性エマルションを得ることができない。
【0028】
重合開始剤の添加方法には特に制限はなく、例えば、重合開始前の重合容器に全量を投入する方法や、重合開始前の重合容器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開始前に重合容器に一部を投入して重合を開始した後、残部を単量体やアルコール性水酸基含有水溶性高分子化合物の添加と並行して連続的又は断続的に重合系に添加する方法などを採り得る。
【0029】
本発明においては、重合時の分散安定剤として、重量平均分子量2,000以上の水溶性ビニルアルコール系重合体を使用することが必要である。重量平均分子量が2,000未満では、重合を安定的に行うことができない。水溶性ビニルアルコール系重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその各種変性物を挙げることができる。
【0030】
前記ビニルアルコール系重合体は、実質的に水溶性であって安定な水性エマルションが得られるものであれば、その他の条件には制限はなく、ビニルエステル系単量体を主体とするビニル系単量体を従来公知の方法で重合して得たビニルエステル系重合体(即ち、ビニルエステル系単量体の単独重合体、2種以上のビニルエステル系単量体の共重合体、及びビニルエステル系単量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体)を常法によりけん化して得られる。また、分子の主鎖、側鎖又は末端にメルカプト基などの変性基を導入したものを使用できる。
前記ビニルエステル系単量体はラジカル重合可能なものであればいずれも使用でき、その具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどを挙げることができる。なかでも工業的に製造され安価な酢酸ビニルが一般的である。
【0031】
また、ビニルエステル系単量体と共重合可能な単量体を共存させ、共重合することも可能である。これら共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸又は無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;フマール酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどの不飽和多価カルボン酸エステル類;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有化合物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム基を有する単量体などを挙げることができる。
【0032】
前記ビニルエステル系重合体のけん化度は、変性基の有無及びその種類に依存して変るが、得られるビニルアルコール系重合体の水溶性などの観点から、40〜99.99モル%であることが好ましく、50〜99.9モル%がより好ましく、60〜99.5モル%が更に好ましい。けん化度が40モル%未満の場合には粒子の分散安定性が低下する。
前記ビニルエステル系重合体の粘度平均重合度は、通常、50〜8,000、好ましくは100〜6,000、より好ましくは100〜5,000である。前記重合度が50未満の場合、重合安定性が不十分であり、また重合度が8,000を超えると水性エマルションの粘度が非常に高くなり、水性エマルション製造時の除熱が困難になるなどの問題がある。
【0033】
本発明の紙塗工用水性エマルションの重合において、水溶性ビニルアルコール系重合体の使用量は、単量体100重量部当たり0.5〜100重量部であり、好ましくは0.5〜50重量部、更に好ましくは1〜20重量部である。0.5重量部未満では、重合時の安定性が悪く凝集物が多量に発生する、得られる水性エマルションの機械的安定性及び化学的安定性が低下するなどの問題があり、100重量部を超えて使用すると、重合系の粘度上昇による反応熱除去が困難になる、得られる水性エマルションの粘度が高くなりすぎ、取り扱いが困難となるといった問題が起きる。
【0034】
乳化重合において通常使用される、ノニオン性、アニオン性、カチオン性又は両性界面活性剤などの各種の乳化剤は、必須ではなく、本発明の目的、効果を損なわない範囲で併用してもよい。これらの中では、アニオン性界面活性剤が好適である。
【0035】
アニオン性界面活性剤の例としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールスルホン酸塩、ポリリン酸塩などを、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型又はアルキルエーテル型のものなどを、カチオン性界面活性剤の例としては、脂肪族アミン塩及びその4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩などを、両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体を挙げることができる。これらの乳化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの乳化剤を使用する場合の使用量は単量体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部であり、多すぎると得られる塗工紙のウエットピック等が低下する。
【0036】
重合に使用する水性媒体100重量部に対する単量体の量は、特に制限されないが、通常10〜70重量部、好ましくは20〜50重量部である。単量体の添加速度は、特に制限はないが、反応中の重合転化率が10重量%以上を保つように制御するのが好ましい。反応途中の好ましい重合転化率は20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上である。単量体の添加速度が速すぎると重合転化率が低くなり、粗大粒子が発生しやすくなる。逆に、遅すぎると、重合系の粘度が上昇しやすくなる。通常、単量体及び水溶性ビニルアルコール系重合体の添加に要する時間は、1時間以上であり、好ましくは2時間以上、20時間以下である。
【0037】
重合温度は特に制限はないが通常、0〜100℃、好ましくは5〜95℃である。
単量体添加終了後、必要ならば、重合を更に続行して所望の重合転化率に到達した後、重合を停止する。重合の停止は、重合停止剤を添加するか又は単に重合系を冷却することによって行うことができる。また、重合終了後に、所望により、未反応の単量体を除去することができる。
上記以外の重合条件や重合方法には特に制限はなく、各種の従来公知の乳化重合方法を採用することができる。
【0038】
重合に際しては、必須ではないが、連鎖移動剤を使用することができる。
連鎖移動剤としては、連鎖移動が起こるものであれば特に制限はなく、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプト基を有する化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンなどのα−メチルスチレンダイマー類;ターピノレン;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール系化合物;アリルアルコール、アクロレイン、メタクロレインなどのアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン;などを挙げることができる。
【0039】
これらの中では、連鎖移動の効率の点でメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、炭素数50以下の化合物が好ましく、炭素数30以下の化合物がより好ましく、炭素数20以下の化合物が特に好ましく、具体的には、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸などが挙げられる。
【0040】
連鎖移動剤を使用する場合、その添加量は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部である。連鎖移動剤が、0.01重量部未満では、重合安定性向上効果が小さく実用的ではない。また、5重量部を超える場合には、重合安定性が低下するうえ、得られる重合体の分子量が著しく低下し、水性エマルションの各種物性の低下が起こる。
連鎖移動剤の添加方法は、特に限定されず、一括添加しても、断続的に又は連続的に重合系に添加してもよい。
本発明で使用する水性エマルションに、可塑剤、消泡剤などの助剤を重合時又は重合後に併用することは何ら差し支えない。
【0041】
本発明の紙塗工組成物は、前記の紙塗工用水性エマルションと顔料とを必須成分とするものである。
【0042】
本発明の紙塗工組成物に用いる顔料としては、クレー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、サチンホワイト等の無機顔料;プラスチックピグメント等の有機顔料などが挙げられる。本発明の紙塗工用水性エマルションと顔料との比率は、顔料100重量部に対して紙塗工用水性エマルションの固形分が、通常、1重量部以上、好ましくは3〜20重量部である。
【0043】
本発明の紙塗工組成物には、必要に応じて、更に水溶性高分子、pH調整剤、顔料分散剤、耐水化剤、消泡剤、染料、滑剤、有機溶剤などを配合することができる。
【0044】
本発明の紙塗工組成物は、これを紙に塗工することによって、塗工紙のドライピック強度、ウェットピック強度などを改善することができる。塗工する紙としては、板紙、洋紙いずれでもよい。また、塗工する紙としては、帯状形状のものが塗工作業を連続的にできるので好適である。塗工の方法は特に限定されず、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ショートドウェルコーターなどの塗工装置を用いて塗工する。塗工量は、通常、組成物が固形分換算で、通常、3〜30g/m2、好ましくは5〜25g/m2になる範囲である。
【0045】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「重量%」及び「重量部」を示す。なお、ラテックスの重量は固形分換算である。また、実施例中の粒子径は重量平均粒子径である。
【0046】
本実施例において行った評価方法を以下に説明する。
(1)重量平均粒子径(μm)
コールターLS230(コールター社製粒子径測定機)で測定する。
【0047】
(2)グラフト率(%)
重合で得られた水性エマルションの固形分濃度を10%に調整して、その60gを試料とする。試料を5℃×13,000rpm×60分の条件で遠心分離し、上澄み液を40g回収する。沈降層(20g)に蒸留水40gを添加して均一にした後、同一条件で再度遠心分離して、上澄み液40gを回収し、沈降層について再度同一操作を繰り返す。3回の遠心分離で得られた上澄み液合計120gの固形分を測定し、上澄み液中の固形分量を計算する。これが、共重合体にグラフトしなかった水溶性ビニルアルコール系重合体の量(A)である。試料中の水溶性ビニルアルコール系重合体の重量(B)[共重合体にグラフトした水溶性ビニルアルコール系重合体と共重合体にグラフトしていない水溶性ビニルアルコール系重合体との和]から(A)を差し引いて、共重合体にグラフトした水溶性ビニルアルコール系重合体の量(C)を得る。従って、上記測定条件において、グラフト率は、下記式で与えられる。
グラフト率=〔C/(6−B)〕×100(%)
【0048】
(ドライピック強度)
印刷インク(タック値20)0.4cm3をRIテスター(明石製作所製)のゴムロールに付着させた後、このRIテスター(明石製作所製)を用いて塗工紙に4回重ね刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態を観察し5点法で評価した。点数の高いほうがドライピック強度が高い。
【0049】
(ウェットピック強度)
塗工紙に、モルトンロールで水を塗布し、次に印刷インク(タック値14)0.4cm3をゴムロールに付着させたRIテスターを用いてべた刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態をドライピック強度の評価方法と同様にして5点法で評価した。点数の高いものほどウェットピック強度が高い。
【0050】
(ウェット着肉性)
RIテスターを用いて、0.3cm3の水を付着させたゴムロールに塗工紙を通過させた後、印刷インク(東洋インク社製、TKマークV、藍)0.3cm3をベタ刷りした。印刷インクの付き具合いを肉眼で観察し5点法で評価した。数値が大きいほどウェット着肉性が高い。
【0051】
(白紙光沢)
塗工紙について、光沢度計(村上色彩技術研究所製、GM−26D)を用いて入射角75度、反射角75度の条件で光沢度を測定した。
【0052】
(印刷光沢)
印刷インク(東洋インク社製、TKマークV 藍)0.3cm3をゴムロールに付着させたRIテスターを用いて、塗工紙に、べた刷りし、20℃、65%R.H.の恒温恒湿室に24時間放置した後、光沢度計(村上色彩技術研究所製、GM−26D)を用いて入射角75度、反射角75度の条件で光沢度を測定した。
【0053】
(耐ブロッキング性)
上質紙に水性エマルションを塗布乾燥した後、塗布面にラシャ紙を重ねて、温度80℃、線圧30Kg/cmの条件でカレンダー処理を行った。その後、ラシャ紙を手で剥し、その剥離状態を5点法で評価する。点数の高いものほど耐ブロッキング性が高い。
【0054】
(実施例1)
窒素吹き込み口を備えた耐圧オートクレーブ(1)に、脱イオン水90部、スチレン31部、アクリロニトリル10部、メタクリル酸メチル15部、イタコン酸3部、t−ドデシルメルカプタン1部及びポリビニルアルコール(重合度550、けん化度88モル%;PVA−205、クラレ社製)3部を仕込み、窒素置換を行った後、ブタジエン41部を耐圧計量器より圧入して、混合、撹拌して単量体乳化物を得た。
別途、窒素吹き込み口、温度計を備えた耐圧オートクレーブ(2)に、脱イオン水57部、エタノール8部を仕込み、窒素置換後、60℃に昇温し、60℃を維持した状態で、過硫酸カリウム0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を圧入し、直ちに前記単量体乳化物を4時間かけて添加した。添加終了後、更に3時間撹拌を継続した後、冷却して反応を終了させた。この時の重合転化率は95%、粒径は0.35μmであった。水性エマルションを調整して、固形分濃度35%、B型粘度は90mPa・sのスチレン−ブタジエン共重合体水性エマルション(a)を得た。
得られた水性エマルションの固形分濃度を10%に調整し、その60gを用いて、グラフト率を求めた。なお、遠心分離器としては、国産遠心機社製H−2000Aを使用した。回収した上澄み液合計液の固形分濃度は0.126%で、これから、回収上澄み液中に分離された総固形分量は0.151gとなる。サンプル60g中の水溶性高分子保護コロイド(ポリビニルアルコール)量Bは、6g×(3/(95+3))=0.294g。これから、グラフト率は、下記式のとおり、2.5%となる。
(0.294−0.151)/(6−0.294)×100=2.5%
なお、この実施例において、使用したポリビニルアルコールのうち、共重合体にグラフトしたものの割合(グラフト効率)は48.6%である(下記式)。
((0.294−0.151)/0.294)×100=48.6%
【0055】
(実施例2〜5)
単量体組成及び/又はポリビニルアルコールの種類・量を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にして、スチレン−ブタジエン共重合体水性エマルション(b)〜(e)を得た。これらの評価結果を表1に示す。なお、実施例2及び4では、ポリビニルアルコールとして、重合度2050、けん化度88モル%のポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA220E)を用いた。
【0056】
(比較例1)
エタノールの量を3部とし、ポリビニルアルコール3部に代えてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル(花王社製、レベノールWZ)5部を使用したほかは、実施例1と同様にして、グラフト率0%のスチレン−ブタジエン共重合体水性エマルション(f)を得た。
【0057】
(比較例2)
耐圧オートクレーブ(1)のポリビニルアルコールの量を50部に変え、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル(花王社製、レベノールWZ)3部を使用したほかは、実施例4と同様にして、グラフト率38.6%のスチレン−ブタジエン共重合体水性エマルション(g)を得た。
【0058】
(比較例3)
耐圧オートクレーブ(1)のポリビニルアルコール量3部に代えてラウリル硫酸ナトリウム5部を使用し、耐圧オートクレーブ(2)にポリビニルアルコール5部(重合度550、けん化度88モル%;PVA−205、クラレ社製)を仕込んだほかは、実施例1と同様にして、グラフト率0%のスチレン−ブタジエン共重合体水性エマルション(h)を得た。
【0059】
得られた水性エマルション(a)〜(h)の特性を表1に示す。
【0060】
(実施例6〜10、比較例4〜6)
次に、前記各紙塗工用水性エマルション10部、カオリンクレー(エンゲルハルド社製、UW90)60部、重質炭酸カルシウム(ECC社製、Carbital−90)40部、分散剤(東亜合成社製、アロンT−40)0.2部、水酸化ナトリウム0.15部及び酸化デンプン3部を混合して攪拌し、固形分濃度65%、pH10に調整して紙塗工組成物を得た。この紙塗工組成物を上質紙に塗工量が片面あたり15g/m2となるように塗布し、塗布直後に120℃の熱風で10秒間乾燥し、温度20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室内に一夜放置した。その後、温度50℃、線圧100Kg/cmの条件で2回スーパーカレンダー処理を行って塗工紙を得た。塗工紙の評価結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示す結果から、通常の界面活性剤を使用して得た水性エマルションを使用した紙塗工組成物(比較例1)では、ウエットピック強度及び耐ブロッキング性が著しく劣ることがわかる。また、水溶性ビニルアルコール系重合体を分散安定剤として用いても、グラフト率が本発明の範囲を外れている場合(比較例2及び比較例3)は、ウエットピック強度、ウエット着肉性とも著しく劣り、更に白紙光沢と耐ブロッキング性とのバランスに劣る。一方、本発明の水性エマルションでは、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、ウェット着肉性、白紙光沢及び耐ブロッキング性が高く、且つこれらのバランスがよいことがわかる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の紙塗工組成物を用いることによって、ドライピック強度、ウェットピック強度、印刷光沢、白紙光沢、ウェット着肉性及び耐ブロッキング性に優れ且つそれらのバランスがよい塗工紙を得ることができる。この塗工紙は、オフセット枚葉印刷に好適に適用でき、またオフセット輪転印刷又はグラビア印刷にも適用できる。
Claims (2)
- 共役ジエン単量体30〜70重量%、芳香族ビニル単量体10〜70重量%及びこれらと共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体0〜60重量%からなる単量体を、単量体100重量部に対して1〜50重量部のアルコールの存在下に共重合して得られる共重合体の水性エマルションであって、重量平均分子量2,000以上の水溶性ビニルアルコール系重合体で分散安定化されており、分散安定化に使用した該水溶性ビニルアルコール系重合体の少なくとも一部が該共重合体にグラフトしていて、そのグラフト率が0.5〜30重量%であることを特徴とする共重合体の水性エマルションから成る紙塗工用水性エマルション。
- 請求項1記載の紙塗工用水性エマルションと顔料とを必須成分とする紙塗工組成物。
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