JP4099862B2 - 水性エマルションおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体およびジエン系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体を主成分とする単量体を重合してなる(共)重合体の水性エマルションおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
各種のエチレン性不飽和単量体やジエン系単量体を単独重合または共重合して得られるスチレン−ブタジエン共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂エマルション、ビニルエステル系樹脂エマルションなどのエマルションは、各種接着剤、塗料、バインダー、繊維加工剤、モルタル混和剤などの広範な用途で用いられている。
【0003】
また、前記エマルションは、エチレン性不飽和単量体および/またはジエン系単量体を界面活性剤の存在下またはポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)やヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性高分子の存在下で乳化重合して得られる。
【0004】
界面活性剤は、それを使用することにより、エマルションの放置安定性、機械的安定性、化学的安定性、凍結融解安定性および顔料混和性を一定の水準に保つことができるが、必ずしも十分とはいえない。また、界面活性剤を乳化剤とした重合で得られるエマルションは、一般的にその粘度が低いことから高粘度が要求される用途では、増粘剤の添加あるいは不飽和酸の共重合によるアルカリ増粘が必要であり、このために、このエマルションを用いて得られる最終製品の耐水性などに悪影響を及ぼす。さらに、最終製品中で界面活性剤のマイグレーションが起こることにより最終製品の各種特性を低下させることが多い。
【0005】
一方、PVA系重合体のような水溶性高分子を乳化分散安定剤として製造した酢酸ビニル系や塩化ビニル系の重合体のエマルションは、機械的安定性、化学的安定性などの各種分散安定性に優れ、重合処方により所望の粘度のエマルションが得られるなどの利点がある。しかし、この方法が適用できるのは、もっぱらラジカル反応性の大きい酢酸ビニルや塩化ビニルに限られており、ラジカル反応性の比較的小さいスチレン系単量体、ジエン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の場合には、安定なエマルションが得られないという問題があった。
【0006】
特開昭60−197229号公報には、メルカプト基を有するPVA系重合体を乳化分散安定剤として、スチレン系単量体、ジエン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行い得ることが開示されている。しかし、この方法では、通常の開始剤系を使用した場合には該PVA重合体へのグラフト効率が低くて実用的な安定性を有するエマルションが得られず、他方、該重合体中のメルカプト基とのレドックス反応によってのみラジカルを発生する臭素酸カリウムという特異な開始剤を使用すると、重合安定性の向上が認められるものの、メルカプト基が消費された時点で反応が停止してしまうという問題があることが指摘されている。
【0007】
特開平8−104703号公報には、粘度平均重合度、重量平均重合度/数平均重合度および分子量分布の最大の分子量ピーク位置を規定した特殊なビニルアルコール系重合体を分散剤として、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ジエン系単量体またはハロゲン化ビニル系単量体の(共)重合体の水性エマルションを得ることが開示されており、特開平8−325312号公報には、従来PVAを分散剤とした場合には安定な水性エマルションが製造困難であったエチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体を、メルカプト基を有する連鎖移動剤の少量の存在下にPVAを分散剤として、重合する水性エマルションの製造方法が開示されている。しかしながら、連鎖移動剤の不存在下では、重合中にゲル化してしまう。たとえば、前記特開平8−104703号公報においてポリスチレン重合体エマルションを得るのに使用されたのと同じPVA重合体を分散安定剤として使用してもゲル化を起こしたことが記載されている。
【0008】
このように、一般的な水溶性高分子保護コロイドを分散剤として、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ジエン系単量体または、ハロゲン化ビニル系単量体などの(共)重合体の水性エマルションを安定的に得る方法は、これまで報告されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一般的な水溶性高分子保護コロイドを分散剤として使用して、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体あるいはジエン系単量体の(共)重合を行い、極めて安定性の高い水性エマルションおよびその製造方法を提供する点にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、一般的な水溶性高分子保護コロイドを分散剤として(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体あるいはジエン系単量体よりなるポリマーのエマルションを安定的に得る方法を鋭意検討した結果、PVAを分散として重合する際に、特定の方法で単量体を重合系に導入することによって前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の第一は、水溶性高分子保護コロイドで分散安定化された、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位、スチレン系単量体単位およびジエン系単量体単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体単位を主成分とする単量体混合物をアルコールの存在下に(共)重合を行うことにより得られた(共)重合体のエマルションであって、粒子径が0.05〜5μmであり、アルコール分散性指数が100以上、塩化カルシウム化学的安定性指数が30以上、固形分濃度30%における表面張力が45mN/m以上であることを特徴とする水性エマルションに関する。
【0012】
本発明の第二は、乳化剤や分散安定剤が存在しない水性媒体中で重合開始剤を分解してラジカルを発生させ、次いでこれに(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体およびジエン系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体を主成分とする単量体および水溶性高分子保護コロイドを連続的または断続的に添加して、アルコールの存在下に重合することを特徴とする請求項1記載の水性エマルションの製造方法に関する。
【0013】
本発明の方法が適用できる単量体は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体およびジエン系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体を主成分とする単量体またはこれらの混合物(以下、両者を併せて単に混合物ということがある。)である。前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが挙げられ、その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物、エチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
【0014】
前記スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−スチレンスルホン酸およびそのナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。
【0015】
前記ジエン系単量体としては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。
【0016】
その他前記主成分となる単量体と共重合させることのできる単量体としては、ハロゲン化ビニル単量体やカルボン酸ビニルエステル単量体などを挙げることができる。これらの単量体は本発明の目的、効果を損なわない範囲内において、通常、全単量体の50%未満の範囲で使用することができる。
【0017】
ハロゲン化ビニル重量体としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどを挙げることができ、カルボン酸ビニルエステル類としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニルなどをあげることができる。また、前記主成分となる単量体と共重合させることのできるその他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸または無水イタコン酸などの不飽和モノカルボン酸または多価カルボン酸もしくはその部分エステル;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン系単量体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩;(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体などの(メタ)アクリルアミド誘導体;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル類;酢酸(メタ)アリル、塩化(メタ)アリルなどの(メタ)アリル化合物;フマール酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどの不飽和多価カルボン酸の塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンなどを挙げることができる。
【0018】
本発明の水性エマルションの製造方法においては、まず、水性媒体(水または水と所望により併用する水溶性溶媒との混合物をいう。)中で重合開始剤を分解してラジカルを発生させ、次いでこれに単量体および水溶性高分子保護コロイドを添加して重合させる。単量体と水溶性高分子保護コロイドとは、それぞれ別々に添加しても、単量体、水溶性高分子保護コロイドおよび水を混合して得られる単量体乳化物の形態で添加しても構わない。単量体と水溶性高分子保護コロイドとを別々に添加する場合は、両者を同時に添加開始するのが望ましい。単量体のみが先に多量に添加されると凝集物が発生しやすく、逆に水溶性高分子保護コロイドのみが先に多量に添加されると重合系が増粘する、あるいは凝集物が発生しやすくなるなどの問題が起きやすい。両者の添加終了は、必ずしも同時である必要はないが同じであることが望ましい。単量体および水溶性高分子保護コロイドの添加は、連続的または断続的に行うことができる。
【0019】
水溶性高分子保護コロイドの量は、単量体100重量部当たり0.01〜100重量部であり、好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。0.01重量部未満では、重合時の安定性が悪く凝集物が多量に発生する、得られるエマルションの機械的安定性や化学的安定性が低下する、皮膜強度が低下するなどの問題があり、100重量部を超えて使用すると、重合系の粘度上昇による反応熱除去が困難になる、得られるエマルションの粘度が高くなりすぎ取り扱いが困難となる、さらには、エマルションから形成した皮膜の耐水性が低下するといった問題が起きる。
【0020】
本発明では、重合開始剤の分解によるラジカル発生が開始した時点で水性媒体中には、水溶性高分子保護コロイドが存在していないことが重要である。この時点で水性媒体中に水溶性高分子保護コロイドが存在していると、重合の途中で系がゲル化するなどして、安定的に重合を行うことができない。
【0021】
また、本発明では、重合開始剤の分解によるラジカル発生後に重合の進行と並行して水溶性高分子保護コロイドを添加していくことが重要である。乳化(共)重合以外の方法で得られた(共)重合体あるいは(共)重合体水溶液を水に後乳化(強制乳化あるいは自己乳化)分散させる時に分散剤として水溶性高分子保護コロイドを用いる方法、または界面活性剤を用いた乳化(共)重合あるいは後乳化法によって得られた水性エマルションに水溶性高分子保護コロイドを後添加する方法で得られるエマルションは、各種の安定性が本発明方法で得られたものよりも遥かに劣る。
【0022】
単量体の全量を単独でまたは水溶性高分子保護コロイドと共に初期に一括して重合容器に投入した後、重合開始剤を投入して重合を開始する方法や、最初に単量体の一部を単独でまたは水溶性高分子保護コロイドと共に重合容器に投入してこれに重合開始剤を添加して重合を開始した後、単量体の残りを単独でまたは水溶性高分子保護コロイドと共に重合系に一括してまたは連続的もしくは断続的に添加する方法などでは、本発明の目的を達成することができない。
【0023】
本発明の水性エマルションの製造方法においては、重合をアルコールの存在下に行うことにより重合時のエマルションの安定性を一層向上することができる。アルコールは重合開始剤の溶媒またはその一部として重合系に添加してもよく、重合開始剤の投入前または投入後に別個に重合容器に投入してもよい。アルコールは、1価のものでも多価のものでもよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどを挙げることができる。アルコールの使用量は単量体100重量部に対して1〜5重量部程度とすることが好ましい。
【0024】
乳化重合において乳化剤として通常使用される、ノニオン性、アニオン性、カチオン性または両性界面活性剤などの各種の乳化剤は、本発明の目的、効果を損なわない範囲で併用してもよい。中でも、アニオン性界面活性剤が好適である。アニオン性界面活性剤の例としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールスルホン酸塩、ポリリン酸塩などを、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型またはアルキルエーテル型のものなどを、カチオン性界面活性剤の例としては、脂肪族アミン塩およびその4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩などを、両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体などがある。これらの乳化剤を使用する場合の使用量は単量体100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部であり、多すぎるとアルコール分散性が低下する。
これらの乳化剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
重合開始剤については格別の制限はなく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性開始剤:アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの油溶性開始剤;過酸化物と重亜硫酸水素ナトリウムなどの各種還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤などを挙げることができるが、中でも水溶性開始剤が好適であり、過硫酸塩が特に好適である。これら重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して、通常、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
重合開始剤の添加方法には特に制限はないが、重合開始前の重合容器に全量を投入する方法や、重合開始前の重合容器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開始前に重合容器に一部を投入して重合を開始した後、残部を単量体や水溶性高分子保護コロイドの添加と並行して連続的または断続的に重合系に添加する方法などを採り得る。
【0026】
本発明で使用する水溶性高分子保護コロイドを形成するための水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその各種変性物などのビニルアルコール系重合体;ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸およびその塩;ポリビニルアルキルエーテル;酢酸ビニルとアクリル酸、メタクリル酸または無水マレイン酸共重合物およびそのけん化物;低級アルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合物;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉などの澱粉誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム;ポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。中でも、工業的に品質が安定したものを入手しやすい点から、ビニルアルコール系重合体が好ましい。
【0027】
前記ビニルアルコール系重合体は、実質的に水溶性であって安定なエマルションが得られるものであれば、その他の条件には制限はなく、ビニルエステル系単量体を主体とするビニル系単量体(ビニルエステル系単量体の単独重合体、2種以上のビニルエステル系単量体の共重合体、およびビニルエステル系単量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体)を従来公知の方法で重合して得たビニルエステル系重合体を常法によりけん化して得られる。また、分子の主鎖、側鎖または末端にメルカプト基などの変性基を導入したものを使用できる。
【0028】
前記ビニルエステル系単量体はラジカル重合可能なものであればいずれも使用でき、その具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサテイック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどを挙げることができる。なかでも工業的に製造され安価な酢酸ビニルが一般的である。
【0029】
また、ビニルエステル系単量体と共重合可能な単量体を共存させ、共重合することも可能である。これら共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸または無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;フマール酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどの不飽和カルボン酸エステル;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有化合物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン化合物;3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム基を有する単量体などを挙げることができる。
【0030】
前記ビニルエステル系重合体のけん化度は、変性基の有無やその種類にもよるため一概にはいえないが、得られるビニルアルコール系重合体の水溶性などの観点から、40〜99.99モル%であることが好ましく、50〜99.9モル%がより好ましく、60〜99.5モル%がさらに好ましい。けん化度が40モル%未満の場合には粒子の分散安定性が低下する。
【0031】
前記ビニルエステル系重合体の粘度平均重合度は、50〜8000であることが必要であり、100〜6000が好ましく、100〜5000がより好ましい。前記重合度が50未満の場合、重合安定性が不十分であり、また重合度が8000を越えるとエマルションの粘度が非常に高くなり、エマルション製造時の除熱が困難になるなどの問題などがある。
【0032】
重合に使用する水性媒体100重量部に対する単量体の量は、特に制限されないが、通常10〜70重量部、好ましくは20〜50重量部である。
【0033】
単量体の添加速度は、特に制限はないが、反応中の重合転化率が10重量%以上を保つように制御するのが好ましい。反応途中の好ましい重合転化率は20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。
単量体の添加速度が速すぎると重合転化率が低くなり、粗大粒子が発生しやすくなる。遅すぎると、重合転化率が低下し、重合系の粘度が上昇しやすくなる。従って、通常、単量体および水溶性高分子保護コロイドの添加に要する時間は、1時間以上であり、好ましくは2時間以上、20時間以下である。
【0034】
重合温度は特に制限は無いが通常、0〜100℃、好ましくは5〜95℃である。
【0035】
単量体添加終了後、必要ならば、重合をさらに続行して所望の重合転化率に到達した後、重合を停止する。重合の停止は、重合停止剤を添加するかあるいは単に重合系を冷却することによって行うことができる。
上記以外の重合条件や重合方法には特に制限はなく、各種の従来公知の乳化重合方法を採用することができる。
【0036】
本発明の重合に際しては、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤を使用することにより、重合安定性向上効果を得ることができる。
連鎖移動剤としては、連鎖移動が起こるものであれば特に制限はなく、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン,n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのメルカプタンやチオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプト基を有する化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンなどのα−メチルスチレンダイマー類;ターピノレン;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール系化合物;アリルアルコール、アクロレイン、メタクロレインなどのアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミドなどのビニルエーテル;トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン;などを挙げることができる。
中でも、連鎖移動の効率の点でメルカプト基を有する化合物が好ましい。メルカプト基を有する化合物としては、炭素数50以下のメルカプト基を有する化合物が好ましく、炭素数30以下のメルカプト基を有する化合物がより好ましく、炭素数20以下のメルカプト基を有する化合物が特に好ましく、具体的には、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸などが挙げられる。
【0037】
連鎖移動剤を使用する場合、その添加量は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部である。連鎖移動剤が、0.01重量部未満では、重合安定性向上効果が小さく実用的ではない。また、5重量部を越える場合には、重合安定性が低下する上、得られる重合体の分子量が著しく低下し、エマルションの各種物性の低下が起こる。
【0038】
連鎖移動剤の添加方法は、特に限定されず、一括添加しても、断続的にまたは連続的に重合系に添加してもよい。
【0039】
本発明においては、可塑剤、消泡剤などの助剤を重合時または重合後に併用することは何ら差し支えない。
【0040】
本発明の水性エマルションの製造方法によって、以下の特性を有する水性エマルションを得ることができる。
本発明の水性エマルションは、その平均粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.2〜2μmである。
本発明の水性エマルションのpH8における機械的安定性は、マーロン安定性試験における発生凝固物量が0.1%以下であって非常に優れている。さらに、本発明の水性エマルションは、低いpH領域においても機械的安定性に優れており、pH2±0.5における発生凝固物量とpH8±0.1における発生凝固物量との比(これを機械的安定性指数という。)は、5以下である。これは従来のカルボキシル基変性重合体では得られない長所である。
また、重合体にカルボキシル基を導入する必要がないので、pHによるエマルションの粘度変化がなく、また、エマルションから成膜した皮膜は耐水性に優れている。
また、本発明の水性エマルションは、優れた化学的安定性を有している。特に2価の無機塩に対する安定性は、非常に優れており、例えば、30重量%の固形分濃度で同量の30重量%塩化カルシウム水溶液を添加混合しても凝固しない。本発明のエマルションの塩化カルシウム化学的安定性指数は、30以上である。塩化カルシウム化学的安定性指数については、後述する。
さらに、本発明の水性エマルションは、アルコールに対しても安定性が優れている。すなわち、固形分濃度を30重量%に調整したエマルション100重量部に同量のエタノールを添加混合しても凝固することがない。本発明においては、固形分濃度30重量%のエマルション100重量部に添加してもエマルションが凝固することのない最大エタノール量をアルコール分散性指数という。本発明の水性エマルションのアルコール分散性指数は100以上である。
また、本発明の水性エマルションは、界面活性剤を使用しないので、表面張力が45mN/m、好ましくは50mN/m以上と高い。
また、本発明の水性エマルションは、界面活性剤を使用しないことから、耐水性に優れており、接着剤などの用途において優れた性能を発揮すると考えられる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「%」および「部」は特にことわりのない限り、それぞれ「重量%」および「重量部」を示す。なお、ラテックスの重量は固形分換算である。
また、各種試験データの測定法は下記のとおりである。
【0042】
(1)重合安定性試験
重合で得たエマルションを200メッシュの金網で濾過して、金網上に残存する凝固物を105℃に保った乾燥器で乾燥させて凝固物重量を求める。この重量の供試エマルションの全固形分重量に対する割合を重量%で算出する。
(2)重量平均粒子径
コールターLS230(コールター社製粒子径測定機)で測定する。
(3)粒子径分布
コールターLS230(コールター社製粒子径測定機)で測定する。
(4)粘度
BM型粘度計により、No.4ローターを用いて60rpmで測定する。
(5)表面張力
固形分濃度30%の共重合体エマルションについて、オートテンションメーター(Type6801ES:離合社製)を用いて20℃で測定する。
(6)化学的安定性(化学的安定性指数)
エマルションを100メッシュ金網で濾過した後、固形分濃度を30%に調整する。次に、これと同量の濃度30%の塩化カルシウム水溶液を添加・撹拌した後、再び100メッシュ金網で濾過して、金網に固形物があるか否かを観察する。各種濃度の塩化カルシウム水溶液を用いて同様の試験を繰り返し、凝固物が発生しなかった塩化カルシウム水溶液の最高濃度(X)を、化学的安定性指数とする。この数値が高い方が化学的安定性がよい。
上記試験は、塩化カルシウム化学的安定性指数であるが、電解質の種類を変えて、例えば塩化ナトリウム化学的安定性指数なども求めることができる。
(7)アルコール分散性(アルコール分散性指数)
エマルションを100メッシュ金網で濾過した後、固形分濃度を30%に調整する。この100重量部にY重量部のエタノールを添加・撹拌した後、再び100メッシュ金網で濾過して、金網に固形物があるか否かを観察する。エタノールの量を変えて同様の試験を繰り返し、凝固物が発生しなかったときのエタノール添加量の最大量(Y)を、アルコール分散性指数とする。この数値が高い方がアルコール分散性がよい。
(8)機械的安定性
pHを2±0.5に調整したエマルションを100メッシュ金網で濾過した後、固形分濃度を30%に調整する。これを100メッシュ金網で濾過した後、マーロン式機械的安定性試験に供する。条件は、回転数1000rpm、加重15Kg、10分間である。試験後のエマルションを100メッシュ金網で濾過し、金網上に濾取された凝集物を乾燥後、秤量して凝集物発生量を求め、この供試エマルション固形分重量に対する割合:CG2(%)を求める。
pHを8±0.1に調整したエマルションについて、同様の試験を行い、CG8(%)を求める。
(9)機械的安定性指数
CG2(%)およびCG8(%)の比率:CG2/CG8を、機械的安定性指数とする。この値が小さいほど、低pHにおける機械的安定性がよい。
【0043】
実施例1
脱イオン水90部に、スチレン80部とアクリル酸エチル20部とよりなる単量体混合物およびポリビニルアルコール(PVA−205,クラレ社製、重合度550、けん化度88.5mol%)5部を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。
別途、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製反応容器に、蒸留水57部およびエタノール3部を装入して温度を80℃に昇温し、80℃を維持した状態で、過硫酸アンモニウム0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を添加した。2分後に反応容器に前記単量体乳化物の添加を開始し、4時間かけて添加を終了した。添加終了後、さらに2時間撹拌を継続し、重合転化率を測定後、冷却してエマルションAを得た(表1参照。表中、実施例1は実1と表示)。
得られたエマルションAの固形分濃度を35%に調整した。pHは2.2、B型粘度は100mPa・s、表面張力は56mN/mであった(表3参照)。
エマルションAの化学的安定性を調べたところ、30%塩化カルシウム水溶液でも凝集物の発生がなかった。すなわち、塩化カルシウム化学的安定性指数は30以上であった。
固形分濃度を30%に調整したエマルションA100部にエタノール100部を添加しても、凝固物は発生しなかった。すなわち、アルコール分散性指数は、100以上であった。
またエマルションAのpH2.2におけるマーロン安定性試験の結果は0.0019%、pH8におけるマーロン安定性試験の結果は0.0015%であった。すなわち、機械的安定性指数は1.27であった。
【0044】
実施例2〜5
単量体組成および水溶性高分子保護コロイドを表1に示すように変えるほかは、実施例1と同様にして、エマルションB〜Eを得た。なお、PVA202Eは、クラレ社製、重合度2050、けん化率88%のポリビニルアルコールである。これらの特性を実施例1と同様に測定した。その結果を表1に示す。なお、表1中実施例2〜5は実2、実3、実4、実5と表示した。
【0045】
実施例6
窒素吹き込み口を備えた耐圧オートクレーブに、脱イオン水90部、スチレン60部、t−ドデシルメルカプタン1部、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製、重合度350、けん化度88.0mol%)4部を仕込み、窒素置換を行った後、ブタジエン40部を耐圧計量器より圧入して、混合、撹拌して単量体乳化物を得た。
別途、窒素吹き込み口、温度計を備えた耐圧オートクレーブに、脱イオン水57部、エタノール3部を仕込み、窒素置換後、70℃に昇温し、70℃を維持した状態で、2%過硫酸アンモニウム10部を圧入し、直ちに前記単量体乳化物を5時間かけて添加した。添加終了後、さらに3時間撹拌を継続した後、重合転化率を測定したところ95%であった(表2参照)。これを冷却して固形分濃度49.0%、粘度90mPa・sのスチレン−ブタジエン共重合体エマルションを得た。得られたエマルションについて実施例1と同様の評価を行った。この結果を表4に示す。なお、表中実施例6は実6と表示した。
【0046】
比較例1(重合開始剤分解時にポリビニルアルコールが存在する例)
脱イオン水90部に、スチレン80部とアクリル酸エチル20部とを混合、撹拌して、単量体混合物を得た。
別途、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製反応容器に、蒸留水57部、エタノール3部およびポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製、重合度550、けん化度88.5mol%)5部を装入して撹拌混合し、温度を80℃に昇温し、80℃を維持した状態で、過硫酸アンモニウム0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を添加し、約2分後に上記単量体乳化物の添加を開始した。添加開始1時間後に凝集物が生成し始め、2時間後に重合系がゲル化してしまった(表2および表4参照、なお表中比較例1は比1と表示した。)。
【0047】
比較例2(界面活性剤を使用して重合した例)
脱イオン水90部に、スチレン80部とアクリル酸エチル20部とよりなる単量体混合物およびラウリル硫酸エステルナトリウム塩5部を混合、撹拌して、単量体乳化物を得た。
別途、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製反応容器に、蒸留水57部およびエタノール3部を装入して温度を80℃に昇温し、80℃を維持した状態で、過硫酸アンモニウム0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を添加し、約2分後に上記単量体乳化物の添加を開始し4時間かけて添加を終了した。添加終了後、さらに2時間撹拌を継続し、重合転化率を測定後、冷却してエマルションPを得た。
得られたエマルションPの固形分濃度を35%に調整した。pHは2.3、B型粘度は400mPa・s、表面張力は38mN/mであった。また、マーロン安定性試験の結果は、pH2.3で0.015%、pH8.0で0.0067%、従って機械的安定性指数は2.23であった。また、塩化カルシウム化学的安定性指数は、0.5以上、1未満であった(表2および表4参照。なお、表2および表4中比較例2は比2と表示した。)。
固形分濃度を30%に調整して、これにエタノール5部を添加しても凝固物は発生しなかったが、10部を添加すると凝固物が多量に発生した。すなわち、アルコール安定性は5以上、10未満であった。
【0048】
比較例3(界面活性剤を使用して重合した後、ポリビニルアルコールを添加した
例)
エマルションPにポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製、重合度550、けん化度88.5mol%)5部を添加してエマルションQを得た。エマルションQの固形分濃度を35%に調整した。pHは2.3、B型粘度は560mPa・s、表面張力は40mN/mであった。また、マーロン安定性試験の結果は、pH2.3で0.015%、pH8.0で0.0067%、従って機械的安定性指数は2.24であった(表2、4参照。なお、表2、4中比較例3は比3と表示した。)。
固形分濃度を30%に調整して、これにエタノール20部を添加しても凝固物は発生しなかったが、30部を添加すると凝固物が多量に発生した。すなわち、アルコール安定性は20以上、30未満であった。
【0049】
比較例4(PVAを保護コロイドとしてバッチ重合した例)
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口、撹拌機を備えたガラス製反応容器に、蒸留水147部、エタノール3部およびポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ社製、重合度550、けん化度88.5mol%)5部装入し、続いてスチレン80部とアクリル酸エチル20部とを添加し撹拌混合して単量体乳化物を得た。温度を80℃に昇温し、80℃を維持した状態で、過硫酸アンモニウム0.5部を脱イオン水10部に溶解した開始剤溶液を添加し、重合反応を開始した。開始剤溶液を添加して、0.5時間後に凝集物が生成し始め、2時間後に重合系全体がゲル化してしまった(表2、4参照、なお表中比較例4は比4と表示した。)。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【発明の効果】
(1)本発明によれば、水溶性高分子保護コロイドを分散剤とする乳化重合において、ビニルエステル系単量体はもちろんのこと、これまで困難とされていた、ラジカル反応性の比較的小さい(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ジエン系単量体などを、安定的に重合する方法が提供される。
(2)また、本発明の方法で得られた水性エマルションは、機械的安定性、化学的安定性において、非常に優れている。
(3)本発明の方法で得られた水性エマルションは、また、耐水性、アルコール分散性に優れているので、接着剤、塗料、紙加工材、繊維加工材、無機物バインダー、セメント混和剤、モルタルプライマーなどとして有効であり、工業上の利用価値が極めて大きいことが期待される。
【0055】
以下に本発明の実施態様を列記する。
1. 水溶性高分子保護コロイドで分散安定化された、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位、スチレン系単量体単位およびジエン系単量体単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体単位を主成分とする単量体混合物をアルコールの存在下に(共)重合を行うことにより得られた(共)重合体のエマルションであって、粒子径が0.05〜5μmであり、アルコール分散性指数が100以上、塩化カルシウム化学的安定性指数が30以上、固形分濃度30%における表面張力が45mN/m以上であることを特徴とする水性エマルション。
2. 水溶性高分子保護コロイドの量が0.01〜100重量部である前項1記載の水性エマルション。
3. 水溶性高分子保護コロイドの量が0.05〜50重量部である前項1記載の水性エマルション。
4. 水溶性高分子保護コロイドの量が1〜10重量部である前項1記載の水性エマルション。
5. 水溶性高分子保護コロイドの高分子がビニルアルコール系重合体である前項1〜4いずれか記載の水性エマルション。
6. ビニルアルコール系重合体のけん化度が40〜99.99モル%である前項1〜5いずれか記載の水性エマルション。
7. ビニルアルコール系重合体のけん化度が50〜99.99モル%である前項1〜5いずれか記載の水性エマルション。
8. ビニルアルコール系重合体のけん化度が60〜99.99モル%である前項1〜5いずれか記載の水性エマルション。
9. ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が50〜8000である前項5〜8いずれか記載の水性エマルション。
10. ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が100〜6000である前項5〜8いずれか記載の水性エマルション。
11. ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が100〜5000である前項5〜8いずれか記載の水性エマルション。
12. 水性エマルションの平均粒径が0.2〜2μmである前項1〜11いずれか記載の水性エマルション。
13. 水性エマルションの機械的安定性指数が5以下である前項1〜12いずれか記載の水性エマルション。
14. 水性エマルションの塩化カルシウム化学的安定性指数が30以上である前項1〜13いずれか記載の水性エマルション。
15. 水性エマルションの表面張力が50mN/m以上である前項1〜14いずれか記載の水性エマルション。
16. 共重合体が(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とスチレン系単量体単位とを主成分とするものである前項1〜15いずれか記載の水性エマルション。
17. 共重合体がスチレン系単量体単位とジエン系単量体単位とを主成分とするものである前項1〜15いずれか記載の水性エマルション。
18. 乳化剤や分散安定剤が存在しない水性媒体中で重合開始剤を分解してラジカルを発生させ、次いでこれに(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体およびジエン系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体を主成分とする単量体および水溶性高分子保護コロイドを連続的または断続的に添加して、アルコールの存在下に重合することを特徴とする前項1〜17いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
19. 水溶性高分子保護コロイドの量が0.01〜100重量部である前項18記載の水性エマルションの製造方法。
20. 水溶性高分子保護コロイドの量が0.05〜50重量部である前項18記載の水性エマルションの製造方法。
21. 水溶性高分子保護コロイドの量が1〜10重量部である前項18記載の水性エマルションの製造方法。
22. 水溶性高分子保護コロイドの高分子がビニルアルコール系重合体である前項18〜21いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
23. ビニルアルコール系重合体のけん化度が40〜99.99モル%である前項18〜22いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
24. ビニルアルコール系重合体のけん化度が50〜99.99モル%である前項18〜22いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
25. ビニルアルコール系重合体のけん化度が60〜99.99モル%である前項18〜22いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
26. ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が50〜8000である前項22〜25いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
27. ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が100〜6000である前項22〜25いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
28. ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が100〜5000である前項22〜25いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
29. アルコールの使用量が単量体100重量部当たり、1〜5重量部である前項18記載の水性エマルションの製造方法。
30. 重合開始剤が過硫酸塩である前項18〜29いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
31. 単量体の添加速度が、反応中の重合転化率が10重量%以上を保つように行われるものである前項18〜30いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
32. 単量体と水溶性高分子保護コロイドとを同時に添加開始するものである前項18〜31いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
33. 単量体が(メタ)アクリル酸エステル系単量体とスチレン系単量体とを主成分とするものである前項18〜32いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
34. 単量体がスチレン系単量体とジエン系単量体とを主成分とするものである前項18〜32いずれか記載の水性エマルションの製造方法。
Claims (2)
- 水溶性高分子保護コロイドで分散安定化された、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位、スチレン系単量体単位およびジエン系単量体単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体単位を主成分とする単量体混合物をアルコールの存在下に(共)重合を行うことにより得られた(共)重合体のエマルションであって、粒子径が0.05〜5μmであり、アルコール分散性指数が100以上、塩化カルシウム化学的安定性指数が30以上、固形分濃度30%における表面張力が45mN/m以上であることを特徴とする水性エマルション。
- 乳化剤や分散安定剤が存在しない水性媒体中で重合開始剤を分解してラジカルを発生させ、次いでこれに(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体およびジエン系単量体よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の単量体を主成分とする単量体および水溶性高分子保護コロイドを連続的または断続的に添加して、アルコールの存在下に重合することを特徴とする請求項1記載の水性エマルションの製造方法。
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