JP6736421B2 - 共重合体ラテックス - Google Patents

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Description

本発明は、共重合体ラテックに関する。
特に、住宅の建材、木工家具等の工業分野、建築現場で使用される建築内装用等の分野、及び一般家庭において広く使用されている溶剤型接着剤の適用分野においても好適に使用でき、有害な有機溶剤を含まないため環境汚染や健康を害することがなく、火災等の危険性もなく、貼り合わせ後の初期接着性に優れ、且つ養生後の接着強度に優れ、更に優れた貯蔵安定を有する水性接着剤として利用するのにとりわけ適した共重合体ラテックスに関する。
溶剤を多く含む溶剤型接着剤は、接着性の良さ、乾燥速度の速さ、作業の容易さ等の理由から広い分野で使用されている。しかしながら、これらの接着剤に多く含まれる溶剤の多くは、毒性があり、環境を汚染する危険性があるため、溶剤を含まない水性接着剤の開発が進められている。
その中でも溶剤系クロロプレン接着剤の代替が積極的に行われている。溶剤系クロロプレン接着剤は、乾燥して張り合わせた後の初期接着性が良好であり、養生後の接着強度が強く、耐熱クリープ性も良好である等の特徴を有している。溶剤系クロロプレン接着剤の水系化として、例えばクロロプレンゴムのエマルジョン化等が検討されており、例えばビニルアルコール系共重合体を分散剤とし、クロロプレンとエチレン性不飽和カルボン酸を乳化重合する方法(特許文献1)が提案されている。
また、感圧ゲル化性を有する合成ゴム系ラテックスを使用した接着剤組成物(特許文献2)、アクリル成分を有するスチレン−ブタジエンラテックスを使用した接着剤組成物(特許文献3)が提案されている。
しかしながら、初期接着強度と養生後の接着強度をバランス両立させる水性接着剤を実現するという観点からは、まだ十分に満足できるものが得られていないのが実情である。
特開2004−346183号公報 特開2009−235234号公報 特開2010−185033号公報
本発明は、優れた保存安定性を有しながら、貼り合わせ後の初期接着強度に優れ、且つ養生後の接着強度に優れる水性接着剤として使用することのできる共重合体ラテックスを提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意研究した結果、共役ジエン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸単量体を必須成分とする共重合体ラテックスは、一般に、保存安定性(分散安定性)に優れるものの、化学的安定性試験における凝集物発生率で評価される化学的安定性も高いため初期の接着強度が低いが、pHを低くすると、保存安定性を保ちながらも、化学的安定性を低下させることができ、これにより接着剤として使用した際の初期及び養生後の接着強度を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1](a)共役ジエン系単量体単位10質量%〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%、及び、(c)共役ジエン系単量体及び/又はエチレン系カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体単位25質量%〜89質量%(ただし、(a)+(b)+(c)=100質量%)からなる共重合体を含み、
pHが8以下であり、化学的安定性試験における凝集物発生率が1%以上である、共重合体ラテックス。
[2]前記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%が、(b1)一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%と、(b2)二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位0質量%〜1質量%とからなる、[1]に記載の共重合体ラテックス。
[3]ゲル分率が、40質量%〜95質量%である、[1]又は[2]に記載の共重合体ラテックス。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の共重合体ラテックスを含む、水性接着剤組成物。
本発明の共重合体ラテックスは優れた保存安定性を有し、本発明の共重合体ラテックスを使用すると、初期接着強度および養生後の接着強度に優れる水性接着剤を実現できる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態の共重合体ラテックスは、(a)共役ジエン系単量体単位10質量%〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%、及び、(c)共役ジエン系単量体及び/又はエチレン系カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体単位25質量%〜89質量%からなる共重合体を含む。
本実施形態において、(a)共役ジエン系単量体成分は、共重合体に接着性を付与するために重要な成分である。
(a)共役ジエン系単量体の好ましい例としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態において、(a)共役ジエン系単量体単位が、共重合体中に占める割合は、10質量%〜60質量%であり、好ましくは15質量%〜55質量%である。
(a)共役ジエン系単量体単位の含有量を上記範囲に設定することにより、共重合体ラテックスに適度の柔軟性を付与して、接着性能を向上させることができる。
本実施形態において、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、共重合体に水分散安定性を与えるために好ましく使用される成分である。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、一塩基性とは水中で1つのプロトンを分離できる構造を持つ酸のことであり、二塩基性とは水中で2つのプロトンを分離できる構造を持つ酸のことであり、すなわち、一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体とはカルボキシル基を1つ有するエチレン系不飽和カルボン酸単量体、二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体とはカルボキシル基を2つ有するエチレン系不飽和カルボン酸単量体である。
本実施形態において、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位が、共重合体中に占める割合は、1質量%〜15質量%であり、好ましくは2質量%〜10質量%である。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の含有量を上記範囲に設定することにより、共重合体ラテックスの分散安定性(保存安定性)を良好に保つことができる。例えば、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用量が上記よりも少ないと、保存安定性が低下して、沈降や凝集が発生する。
ただし、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を多く含む場合には、通常、ラテックスの化学的安定性も高くなる。この点、本実施形態においては、ラテックスのpHを8以下とすることにより、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含み、保存安定性を良好に保ちつつも化学的安定性は低くすることを実現した。
更に、本実施形態において、保存安定性と初期接着強度とのバランス向上という観点からは(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位は、二塩基性のものより一塩基性のものを多く含むことが好ましく、より具体的には、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位が、一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%、より好ましくは2質量%〜10質量%、と、二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位0質量%〜1質量%、より好ましくは0.05質量%〜0.7質量%、とからなることが、保存安定性の観点から好ましい。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位の内訳を上記のようにすると、保存安定性を保ちながらも化学的安定性試験における凝集物発生率を高める、すなわち、低い化学的安定性(凝集物発生率1%以上)と高い保存安定性という一見相反する特性の両立を容易に出来ることが分かった。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体として一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体を多め用いることにより、化学的安定性試験における凝集物発生率を高めることができる理由は明らかではないが、一塩基酸は二塩基酸と比較して低pHにおける解離が少ないため、一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を多く含むと共重合体粒子表面に存在するCOO-量が少なくなり、化学的安定性が低下すると推測される。ただし、機序はこれによらない。
本実施形態において、(c)共役ジエン系単量体及び/又はエチレン系カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体は、共役ジエン系単量体及び/又はエチレン系カルボン酸単量体と共重合可能であれば限定はなく、その種類を適宜選択することにより、共重合体ラテックスにさまざまな特性を付与できる。
(c)その他の単量体の好ましい例としては、例えば、ヒドロキシアルキル基を有する単量体、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体等が挙げられ、1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本実施形態において、(c)その他の単量体単位、共重合体中に占める割合は、25質量%〜89質量%である。
(c)その他の単量体の一部に、ヒドロキシアルキル基を有する単量体を用いると、被接着材への優れた密着性を発現させることができるため好ましい。このような観点から、ヒドロキシアルキル基を有する単量体単位が共重合体中に占める割合は、0.1質量%以上であることが好ましい。
ここで、前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体、アリルアルコール、及びN−メチロールアクリルアミド等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記エチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体としてより具体的には、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
一方、共重合体ラテックスの化学的安定性試験における凝集物発生率を1%以上にするためには、前記ヒドロキシアルキル基を有する単量体単位が共重合体中に占める割合は、10質量%以下であることが好ましい。
したがって、本実施形態においては、被接着材へ密着性と凝集物発生率の点から、ヒドロキシアルキル基を有する単量体単位が共重合体中に占める割合は、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%〜7質量%である。
前記シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
さらに(c)その他の単量体としては、上述したもの以外にも、種々のものを使用することができる。そのような単量体としては、例えば、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能ビニル系単量体;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもいいし、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本実施形態の共重合体ラテックスは、化学的安定性試験における凝集物発生率が1%以上である。ここで、化学的安定性試験における凝集物発生率とは、実施例において後述する方法により規定される値である。
一般に、共重合体ラテックスについては、保存安定性の観点から、その化学的安定性は良好な(すなわち、化学的安定性試験における凝集物発生率が小さい)方が、好ましいと考えられている。しかしながら、本発明者ら検討したところ、共重合体ラテックスの化学的安定性を低下させたとしても直ちには保存安定性の低下につながらず、また、共重合体ラテックスを接着剤として使用した場合の初期接着においては、被接着材に接着剤を塗布して貼り合わせた際に共重合体同士が凝集してポリマー鎖が絡み合うことにより接着強度が発現し、化学的安定性試験における凝集物発生率が高いほど被接着剤に塗布した際の共重合体同士の凝集が起こりやすく、接着強度が速やかに発現することが分かった。
共重合体ラテックスの化学的安定性試験における凝集物発生率は、共重合体ラテックスのpHと、エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位とヒドロキシアルキル基を有する単量体単位各々の含有量により調整することができる。
一般に、共重合体中に占めるエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位とヒドロキシアルキル基を有する単量体単位の各々の含有量が少ないほど凝集物発生率は高くなる。
したがって、(b)エチレン不飽和カルボン酸単量体単位とヒドロキシアルキル基を有する単量体単位は多すぎないことが好ましく、具体的には、(b)エチレン不飽和カルボン酸単量体単位は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。また、ヒドロキシアルキル基を有する単量体単位は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
また、化学的安定性試験における凝集物発生率は、共重合体ラテックスのpHを低くすると高くなる。
本実施形態の共重合体ラテックスは(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位を含むが、高いpHではエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位のカルボキシル基の解離が進んで、化学的安定性試験における凝集物発生率は低下する。
本実施形態においては、pHを8以下という低い値にすることにより、保存安定性に寄与する総カルボキシル基量には影響を与えることなくカルボキシル基の解離を少なくし、凝集物発生率を1%とする。これにより、共重合体ラテックスの化学的安定性のみを低下させ、接着剤として使用した場合の初期接着強度を高めることができる。
本実施形態において、共重合体ラテックスの化学的安定性試験における凝集物発生率は、好ましくは2%以上、更に好ましくは3%以上である。
一方、保存安定性の観点からは、凝集物発生率は高すぎないことが好ましく、10%以下が好ましく、9%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましい。
本実施形態において、ゲル分率(共重合体ラテックスを乾燥させた乾燥物中のトルエン不溶分の割合)は、40質量%〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは50質量%〜85質量%である。ゲル分率が40質量%未満になると、ポリマーの凝集力が低下して養生後の接着強度が低下することがある。また95%を超えると初期接着強度が低下することがある。
ゲル分率は公知の方法で制御できるが、例えば、共重合体を合成する際に使用する連鎖移動剤の量により調整することができる。
本実施形態の共重合体ラテックスは、公知の乳化重合法によって得られる。
乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法で、水性媒体中で、連鎖移動剤、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本構成成分とする分散系において、単量体を重合させて共重合体粒子を合成し、その水性分散液、すなわちラテックスを製造すればよい。
重合に際しては、単量体組成を全重合過程で均一にする方法や重合過程で逐次、あるいは連続的に変化させることによって生成するラテックス粒子の形態的な組成変化を与える方法など所望に応じてさまざまな方法が利用できる。
本実施形態において、共重合体ラテックスに含まれる共重合体粒子の数平均粒子径は、特に限定されないが通常80nm〜500nmであり、好ましくは100nm〜400nmである。
数平均粒子径は、乳化重合により製造する際の乳化剤の使用量を調節したり、公知のシード重合法を用いることで調整することが可能である。
シード重合法としては、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を、適宜選択して用いることができる
本実施形態の共重合体ラテックスの製造方法については限定はなく、例えば、水性媒体中で乳化剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行う等の方法を採用することができる。
ここで、使用する乳化剤としては、従来公知のアニオン、カチオン、両性及び非イオン性の乳化剤を用いることができる。好ましい乳化剤の例としては、例えば、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性乳化剤が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。使用される乳化剤の量としては、全単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜2.0質量部である。
また、分子中にビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などのラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を用いることも何ら差し支えない。
ラジカル開始剤としては、熱又は還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい開始剤の例としては、例えば、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを挙げることができる。
このような開始剤としてより具体的には、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を上述の重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
本実施形態の共重合体ラテックスの製造において用いる連鎖移動剤としては、例えば、核置換α−メチルスチレンの二量体のひとつであるα−メチルスチレンダイマー;n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類;テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもメルカプタン類が好適に使用できる。
本実施形態の共重合体ラテックスの製造における重合温度としては、例えば、40℃〜100℃である。ここで、生産効率と、得られる共重合体ラテックスの衝撃吸収性等の品質の観点から、重合開始時から単量体混合物の添加終了時までの期間における重合温度として、好ましくは45℃〜95℃、より好ましくは55℃〜90℃である。
また、全単量体混合物を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合コンバージョンを引き上げるために重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を採用することも可能である。このような工程における重合温度としては、通常80℃〜100℃である。
本実施形態の共重合体ラテックスの製造における重合固形分濃度としては、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、通常30質量%〜60質量%、好ましくは40質量%〜55質量%である。ここで、重合固形分濃度とは、重合が完結した際の固形分濃度で、乾燥により得られた固形分質量の、元の共重合体ラテックス(水等を含む)質量に対する割合をいう。
本実施形態において、共重合体ラテックスのpH調整は、公知のpH調整剤を使用することが出来る。pH調整剤の好ましい例としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどのアミン類等が挙げられる。
本実施形態の共重合体ラテックスのpHは、8以下であり、好ましくは7.5以下、更に好ましくは7以下である。pHを上記に設定することにより、化学的安定性試験における凝集物発生率を1%以上にすることが出来る。
本実施形態において、共重合体ラテックスのpHに下限値はないが、あまりpHが低いと保存安定性が悪くなることもあるため、1以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。
本実施形態の共重合体ラテックスにおいては、共重合体が水性溶媒中に分散している。本実施形態の共重合体ラテックスの固形分濃度には、限定はないが、通常30質量%〜60質量%である。
本実施形態において、共重合体ラテックスの水性溶媒の種類に限定はなく、水をベースとするものであればよく、水や、用途に応じて各種水溶液も使用できる。
ここで、本実施形態の共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加したり、あるいは他のラテックスを混合して用いたりすることができる。例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、増粘剤、保水剤、印刷適性剤、滑剤、架橋剤などを添加することができる。また、アルカリ感応型ラテックス、有機顔料、ウレタン樹脂ラテックス、アクリル樹脂系ラテックス、水系クロロプレンラテックス、酢酸ビニルラテックスなどを混合して用いることもできる。
本実施形態の共重合体ラテックスは、そのまま、水性接着剤組成物として使用することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、他の(共)重合体ラテックス、例えばジエン系共重合体ラテックス、と混合して水性接着剤組成物としてもよい。この際、水性接着剤組成物中の本実施形態の共重合体ラテックスの割合に限定はなく、例えば、固形分の50質量%以上が本実施形態の共重合体ラテックス由来としてもよいし、70質量%以上が本実施形態の共重合体ラテックス由来としてもよいし、90質量%以上が本実施形態の共重合体ラテックス由来としてもよい。また、本実施形態の共重合体ラテックスは、他の(共)重合体ラテックスを主成分とする水性接着剤組成物に添加剤として添加することもできる。この場合には、本実施形態の共重合体ラテックスの割合は、例えば、固形分の50質量%未満、40質量%以下、又は30質量%以下であってもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、各物性の評価は以下の通りの方法で行った。
(1)ゲル分率(トルエン不溶分含有率)
水酸化ナトリウムでpH7に調整した共重合体ラテックスを130℃で30分間乾燥し、ラテックスフィルムを得た。このラテックスフィルム約0.5gを精秤した。これをトルエン30mlと混合して3時間振とうした後、目開き32μmの金属網にてろ過し、残留物を130℃で1時間乾燥して乾燥質量を秤量した。もとのラテックスフィルム質量に対する残留物の乾燥質量の割合をゲル分率(%)とした。
ゲル分率(質量%)=(残留物乾燥質量/ラテックスフィルム質量)×100
(2)初期接着強度
ラワン合板(厚み6mm、面積145mm×30mm)に、共重合体ラテックスを160g/m2塗布し、40秒後にMDF(厚み9mm、145mm×30mm)を貼り合わせた。
貼り合わせた2枚を4kgf/cm2×15秒プレスしてから解放し、直ぐに引張測度10m/minで割裂引張強度を23℃で測定した。
(3)養生後の接着強度
ラワン合板(厚み12mm、面積40mm×30mm)に、共重合体ラテックスを160g/m2塗布し、60秒後にMDF(厚み9mm、40mm×30mm)を貼り合わせた。
貼り合わせた2枚を13.3kgf/cm2×15秒プレスしてから解放し、23℃で3日間養生した後、引張測度2mm/minで平面引張強度を40℃で測定した。
(4)保存安定性
共重合体ラテックスを室温(25℃)で30日間静置し、離水、沈降、凝集等の有無を評価した。
○ : 離水、沈降、及び、凝集、いずれもなし。
× : 離水、沈降又は凝集あり。
(5)化学的安定性試験
穏やかに撹拌しながら、23℃に保った共重合体ラテックス50gに2質量%の塩化カルシウム水溶液を1g添加した。目開き32μmの金属網にてろ過し、金属網上の残留物(すなわち、凝集物)を130℃で1時間乾燥して乾燥質量を秤量した。
水を除いた共重合体ラテックスの質量(すなわち、固形分質量)に対する上記残留物の乾燥質量の割合を凝集物発生率(%)とした。
凝集物発生率(%)
=(凝集物乾燥質量/水を除いた共重合体ラテックス質量)×100
(6)共重合体粒子の粒子径
光散乱法により、粒子測定装置(LEED&NORTHRUP社製、MICROTRACTMUPA150)を用いて、共重合体ラテックス中の共重合体粒子の体積平均粒径を求めた。
(実施例A1)
攪拌機と内部温度調整用の温水ジャケット、及び各種原材料の定量添加設備を備えた、量産用の耐圧反応器に、重合初期の原料としイオン交換水110質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5質量部、イタコン酸0.6質量部および平均粒子径40nmのポリスチレン系共重合体のシードラテックス0.9質量部、スチレン31.4質量部、1,3−ブタジエン30質量部、メチルメタアクリレート12質量部、アクリロニトリル5質量部、2−エチルヘキシルアクリレート14質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1質量部、メタクリル酸6質量部、t−ドデシルメルカプタン0.9質量部、αメチルスチレンダイマー0.1質量部を一括して仕込み、60℃にて十分に撹拌した。
次に、過硫酸ナトリウム0.15質量部を添加し、温度を60℃に保った状態で16時間反応させた。その後、重合温度を90℃に昇温して30分保持し重合を終了した。
次いで、生成した共重合体ラテックスに水酸化ナトリウムを添加してpHを7に調整し、スチームストリッピング法により未反応の単量体を除去した後、200メッシュの金網でろ過し、共重合体ラテックスA1を得た。
共重合体ラテックスA1の各物性の評価結果を表1と表2に示す。
(実施例A2、A3、A4、A5、A6)
単量体の組成を表1に示す通りに変更したこと以外は、全て実施A1と同様にして共重合体ラテックスA2、A3、A4、A5、A6を製造した。
これら共重合体ラテックスの各物性の評価結果を表1と表2に示す。
(実施例A7およびA8)
共重合体ラテックスの粒子径を表1に示す通りに変更した以外は、全て実施A1と同様にして共重合体ラテックスA7及びA8を製造した。
これら共重合体ラテックスの各物性の評価結果を表1と表2に示す。
(実施例A9〜15)
単量体の組成を表1に示す通りに変更したこと以外は、全て実施A1と同様にして共重合体ラテックスA9〜15を製造した。
これら共重合体ラテックスの各物性の評価結果を表1と表2に示す。
(比較例B1、B2)
単量体の組成を表1に示す通りに変更したこと以外は、全て実施A1と同様にして共重合体ラテックスB1、B2を製造した。
これら共重合体ラテックスの各物性の評価結果を表1と表2に示す。
(比較例B3)
共重合体ラテックスpHを表1に示す通りに変更した以外は、全て実施A1と同様にして同じ手順で共重合体ラテックスB3を製造した。
この共重合体ラテックスの各物性の評価結果を表1と表2に示す。
本発明の共重合体ラテックスは、従来共重合体ラテックスが使用されている各種用途に使用することができ、とりわけ水性接着剤として好ましく用いることができる。また、本発明の共重合体ラテックスは、接着強度(初期及び養生後)にも優れるので、その他、カーペットバッキング剤、各種塗料、塗工紙用バインダー、各種コーティング剤などにも用いることができる。

Claims (4)

  1. (a)共役ジエン系単量体単位10質量%〜60質量%、
    (b)(b2)二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位0.05質量%以上を含むエチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%、及び、
    (c)共役ジエン系単量体及び/又はエチレン系カルボン酸単量体と共重合可能なその他の単量体単位25質量%〜89質量%
    (ただし、(a)+(b)+(c)=100質量%)からなる共重合体を含み、
    pHが8以下であり、
    化学的安定性試験における凝集物発生率が1%以上10%以下である、
    共重合体ラテックス。
  2. 前記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜15質量%が、
    (b1)一塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位1質量%〜14.95質量%と、
    (b2)二塩基性エチレン系不飽和カルボン酸単量体単位0.05質量%〜1質量%とからなる、
    請求項1に記載の共重合体ラテックス。
  3. ゲル分率が、40質量%〜95質量%である、
    請求項1又は2に記載の共重合体ラテックス。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の共重合体ラテックスを含む、水性接着剤組成物。
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