JP3670362B2 - 接着剤用エマルション組成物及びその製造方法 - Google Patents

接着剤用エマルション組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤用として好適な粘着付与樹脂により変性されたエマルション及びその製造方法に関する。更に詳しくは、接着力と凝集力のバランスに優れ、また、良好な耐熱、耐水性を有するとともに、ポリオレフィンに対する接着性の良好なエマルション及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護の観点から溶剤使用が規制され、水分散系であるエマルションタイプの接着剤が脚光を浴びている。エマルションタイプの接着剤は、通常重合体エマルションに必要に応じてフィラー、増粘剤、架橋剤、その他添加剤を配合して製造される。エマルションタイプは溶剤を含まないという優位性はあるものの、一方で溶剤系に比し、乾燥速度が遅かったり、低表面エネルギー物質に対する濡れ性が悪く、その接着力が弱いなどの欠点を有している。
【0003】
かかる欠点を克服する方法の一つとして、接着剤製造時に粘着付与樹脂を配合することや、また、重合体エマルション自体を製造する際に粘着付与樹脂で変性するいくつかの方法が公知である。
例えば、特開昭54−23641号や特公平2−30351号には、高分子化合物或いは粘着付与樹脂を重合性単量体に溶解させて乳化重合に供する方法が開示されているが、予め調整された重合体を用いる旨の開示はない。また後者には特に連続添加によって重合せしめる方法が開示されている。これらの方法による接着剤は、予め乳化された粘着付与樹脂を重合体エマルションに混合する方法にて製造された接着剤よりも優れた性能を示すとされている。また特公平7−57864号には、粒径を限定したシードポリマーの存在下に粘着付与樹脂を溶解した重合性単量体を乳化重合する方法が開示されているが、粘着付与樹脂の量が多すぎるため、接着力と凝集力のバランスの良いものは得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来技術の方法では、未だ接着力と凝集力のバランス、さらには耐熱、耐水性、ポリオレフィン接着性のバランスに充分満足のいくものがなかったという点にあり、本発明の目的はかかる物性のバランスに優れた重合体エマルジョンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる問題について鋭意検討を進めてきた結果、特定の重合体の存在下に、特定量の粘着付与樹脂を含む特定量の単量体を重合することにより、上記問題点を解決できることを見い出し、本発明の完成に至った。
即ち本発明は、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類またはビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物(重合中に架橋する単量体は含まない。)を乳化重合して得られる重合体エマルションの存在下、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類、ビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物100重量部に、粘着付与樹脂10〜300重量部を溶解した混合物を、該重合体エマルションの固型分100重量部に対し、45〜250重量部を乳化重合することにより得られるエマルション組成物である。または、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類またはビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物(重合中に架橋する単量体は含まない。)を乳化重合して得られる重合体エマルションの存在下、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類、ビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物100重量部に、粘着付与樹脂10〜300重量部を溶解した混合物を、該重合体エマルションの固型分100重量部に対し、45〜250重量部を乳化重合するエマルション組成物の製造方法である。
【0006】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のエマルション組成物においてはまず、(メタ)アクリル酸エステル類および芳香族ビニル化合物類から選ばれる単量体およびビニル基含有カルボン酸類を含む単量体混合物を乳化重合して重合体エマルションを製造する(以下この工程を、前段重合と言うことがある)。
【0007】
ここにいう、(メタ)アクリル酸エステル類とは、メタクリル酸エステル類およびアクリル酸エステル類をいう。好ましい具体例を挙げるならば、メチル−、エチル−、プロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、第三ブチル−、n−アミル−、イソアミルヘキシル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、ドデシル−、オクタデシル−、シクロヘキシル−、フエニル−、ベンジル−のアルキ(メタ)アクリレート類β−ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有化合物をげることができる。これらの中でもメチル、エチル、ブチル、2ーエチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートなどが好ましい例としてげられる。
【0008】
芳香族ビニル化合物類の好ましい具体例を挙げるならば、スチレンおよびo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ar−ビニルルキシレン、ar−クロロスチレン、ar−ブロモスチレン、ビニルベンジルクロリド、p−第三ブチルスチレンなどがあげられる。中でもスチレンは最も好ましい。
【0009】
ビニル基含有カルボン酸類(以下、カルボン酸モノマーと略すことがある。)の好ましい具体例を挙げるならば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル安息香酸などがあげられる。前段重合でのカルボン酸モノマーの量は全単量体をベースに0.1〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
【0010】
本発明の方法では、上記の(メタ)アクリル酸エステル類および芳香族ビニル化合物から選ばれる単量体およびカルボン酸モノマーを含む単量体を乳化重合して得られる重合体エマルションの存在下に乳化重合が行われるが、該重合体エマルションは上記の単量体の他にその他の重合性単量体が共重合されていてもかまわない。これらの例をその単量体のレベルで述べるならば、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルステアレート、ビニルラウレート、ビニルミリステート、ビニルプロピオネート、バーサティック酸ビニルなどのビニルエステル類、さらに、ビニルエーテル類として、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシルなどのアルキル基を有するビニルエーテル類、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのビニルシアニド類、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノ又はジアルキルエステルのような不飽和二塩基酸アルキルエステル、エチレンのようなオレフィン類、アクリルアミド、メタクリルアミドのようなアミド類ケイ皮酸ビニルスルホン酸やスチレンスルホン酸などの不飽和酸類、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの塩基性単量体を挙げられる。
【0012】
前段重合における単量体の組成は接着剤としての性能に大きな影響を及ぼすので用途に応じて適宜、Tg、分子量等を設計する必要がある。
乳化重合の方法に特に制限は無く従来公知の手法を採用することができる。即ち、乳化剤の存在下、必要により連鎖移動剤やシード粒子の存在下に重合開始剤を用いて単量体を重合させる方法である。乳化剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩、アルキルサルフェートアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールサルフェートアルカリ金属塩、アルキルジフエニルエーテルジスルホン酸アルカリ金属塩、ジアルキルスルホコハク酸アルカリ金属塩などを用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、エチレンオキシドープロピレンオキシドブロック共重合体などを用いることができる。また、アクリル系水溶性オリゴマーを前記アニオン性界面活性剤と併用してもよい。反応性乳化剤と呼ばれるラジカル重合性の二重結合を有する乳化剤も公知のものが使用できる。さらに、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのコロイド保護剤としての作用を有する水溶性高分子化合物も必要に応じて用いることができる。これらの界面活性剤や水溶性高分子化合物は使用量が増加するに伴い、得られる重合体の耐水性が低下する場合があるので、その使用量は少ない方が好ましいが、少なくとも重合安定性や生成物の機械的安定性、化学的安定性を保持するための必要最低限度の量を用いることが好ましい。この使用量は通常単量体100重量部に対して、0.1〜7重量部の範囲で選ばれる。
【0013】
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、通常の重合反応の分子量調節に慣用されているものの中から適宜選択して用いることができる。このような連鎖移動剤には、例えばプロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンのような炭素数1〜30のアルキル基をもつメルカプタンや、オクチルチオグリコレート、チオグリコール酸、ジフエニルスルフイドのような炭素数1〜30の有機硫黄化合物や、四塩化炭素、四臭化炭素、ブロムトリクロルメタンのような炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素などが含まれる。これらの連鎖移動剤は単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
重合開始剤としては、通常0〜150℃の温度において、ラジカルを発生する化合物が使用される。この重合開始剤としては、主として水溶性のものが用いられるが、油溶性のものであってもよい。代表的な重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの水溶性過硫酸塩類、過酸化水素などの無機過酸化物、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、第三ブチルパーオキシド、第三ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。また、上記過酸化物と還元剤とを組み合わせ、微量の金属イオンの存在下ラジカルを発生させる、いわゆるレドックス系の開始剤も用いられる。このレドックス系の例としては、過酸化水素−塩化第一鉄系、クメンヒドロパーオキシド−アスコルビン酸ナトリウム系などが挙げられる。さらに、アゾビスイソブチルアミンのごときアミノ基を有する開始剤も使用することができる。これらの重合開始剤の使用量は、通常、単量体の合計量100重量部に対して、0.1〜2.5重量部の範囲で選ばれる。また、前記過酸化物は一種用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
重合性単量体を重合の場に供する方法に特に制限はなく、一括して導入する方法、連続的ないしは断続的に追添する方法、追添速度を任意に変える方法などを任意に採用できる。また、単量体類はそのままの状態で添加しても良いが予め乳化して添加する方法も採用できる。
重合開始剤の添加方法についても上記と同様の手法が採用できる。
【0016】
重合反応は、通常0〜130℃、好ましくは30〜100℃の範囲の温度で行われる。この様にして前段で得られる重合体エマルションは引き続き行われる重合によって生成する重合体よりも凝集力が大きいことが好ましく、具体的にはトルエン不溶分が30%以上であることが好ましく、更に好ましくは40%以上である。
【0017】
本発明の製造方法では、上記のようにして得られる重合体エマルションの存在下に、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類およびビニル基含有カルボン酸類から選ばれる単量体を含む単量体混合物100重量部に、粘着付与樹脂10〜300重量部を溶解した混合物を乳化重合する方法が採用される。この乳化重合は前段に引き続き実施しても良いし、予め用意されたものを使用しても良い。該単量体混合物の量は、重合体エマルションの固型分100重量部に対し45〜250重量部である。前出の特開昭54−23641号ないしは特公平2−30351号では、予め調製された重合体を用いていないので、本発明の如き効果を発現していない。使用する単量体は、上記(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類およびカルボン酸モノマーの他にラジカル重合性の単量体を併用しても良い。これらの例は上記に述べたものと同じものが好ましく使用できる。
【0018】
本発明において粘着付与樹脂とはピネン樹脂、ジペンテン樹脂及びその石油樹脂変性などのテルペン樹脂類、ロジン、酸化ロジン、水添ロジン、不均化ロジン及びそのグリセリンエステルなどのロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、アルキルフェノール樹脂、脂肪族および芳香族石油樹脂等をいう。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。組み合わせに於いては、ブレンドでも、変性でも良い。
【0019】
粘着付与樹脂の量は上記単量体混合物100重量部に対し、10〜300重量部であり、好ましくは20〜200重量部更に好ましくは25〜150重量部である。この範囲より小さいと、各種材料、特にプラスチック、殊にポリオレフィンに対する接着性が不良となり、この範囲を超えるとエマルションとしての安定性や、凝集力が不足する。
【0020】
この粘着付与樹脂を溶解した単量体混合物の量は、系に存在する重合体エマルションの固型分100重量部に対し45〜250重量部であり、好ましくは50〜150重量部である。なお、ここにいうエマルションの固型分とは、該エマルションを130℃にて3時間乾燥処理した後の重量を乾燥前の重量で除したものをいう。
【0021】
上記の製造方法による重合体エマルションは、予め乳化された粘着付与樹脂を重合体エマルションに混合する方法によるよりも優れた性能を示す。
また、特願平2−302770号では、粘着付与樹脂を溶解した単量体混合物の量が、系に存在する重合体エマルションの固型分100重量部に対し、5〜40重量部であり、40部を超える場合は粘着付与樹脂を溶解した単量体量が増え、それが低分子量アクリルポリマーとなり、凝集力の低下を招くとしている。従って接着力が低下する。しかし、本願発明者らの検討によれば、45重量部以上では、まったく意外なことにビニル基含有カルボン酸類の存在下において、接着力が回復することを見出したものである。
【0022】
この乳化重合においても前段の乳化重合と同様従来公知の方法を採用することができ、前段で述べた方法がそのまま採用できる。粘着付与樹脂を溶解した単量体混合物の重合系への添加方法はそのままでも良いが、予め乳化しておく方が好ましい。重合の場に供する方法に特に制限はなく、一括して導入する方法、連続的ないしは断続的に追添する方法、追添速度を任意に変える方法などを任意に採用できる。
【0023】
本発明のエマルション中の不揮発分(固型分)に特に制限はないが、通常20〜70重量%好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは45〜55重量%である。重合体粒子の粒子径にも特に制限はないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.05〜1μm、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。
本発明のエマルションの製造方法の任意の過程において、上記の通常の乳化重合に使用されるものの他に、各種添加剤を添加してもかまわない。かかる添加剤としては防腐剤、殺菌剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、可塑剤などが上げられる。
【0024】
本発明によって得られる重合体エマルションは、接着力と凝集力のバランスに優れ、また、良好な耐熱、耐水性を有するとともに、ポリオレフィンに対しても良好な接着性を示す。従ってコンタクト接着剤、ラミネート接着剤等を始めとする各種接着剤、感圧接着剤等に使用することができる。
本発明の重合体エマルションを用いてこれらを製造するには、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、架橋剤、無機粒子、有機系フィラー、増粘剤、消泡剤、防腐剤などを配合することにより製造することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下実施例により、本発明を具体的に説明する。
なお、接着性の試験条件は以下の通りである。
▲1▼ 接着強度
幅1インチの、糊付け・撥水処理を施していない9号綿布に、#55バーコーターにて接着剤を塗布し、常温にて30分乾燥させた。
【0026】
これを所定の基材に対し、20℃、65%湿度の雰囲気下、4.5kgローラーを1往復させることにより圧着し、同条件に24時間放置した後、テンシロン型定速引っ張り試験機を用い、100mm/minの速度で引き剥がすときの強さを測定した。
基材は、エタノールで脱脂処理したポリエチレン板、及び軟質塩ビ板である。
▲2▼ 耐熱クリープ性
上記と同じ条件で作成した接着長さが100mmのサンプルの綿布の一端に、60℃の雰囲気下で500gの重りをつるし、所定時間後のずり幅、ないしは落下するまでの時間で表示した。
▲3▼ 耐熱性
上記▲1▼で調製したサンプルを80℃の雰囲気下に静置し、これを直ちに▲1▼と同じ条件の引張試験に供し、その剥離強さを測定する。
▲4▼ 耐水性
上記▲1▼で調製したサンプルを20℃の水に3日間浸漬し、これを直ちに▲1▼と同じ条件の引張試験に供し、その剥離強さを測定する。
【0027】
(参考例1)
アクリル酸ブチル80g、メタクリル酸メチル17g、メタクリル酸3gを、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム1gと過硫酸アンモニウム0.5gを溶解した蒸留水50gと混合し、乳化機にて充分乳化した。次に、温度計、撹拌機、リフラックスコンデンサーを備えた三ツ口フラスコに、蒸留水 50gをいれ、内温を85℃に保った。次にこのフラスコに上記の乳化液を2時間かけて連続的に投入した。このあいだ内温を80℃に保った。さらに乳化液の投入終了後、そのままの温度で1時間反応を続けた。得られたエマルションの固型分は50%、粒子径は350nmであった。このエマルションを以下、(A)液ということがある。
【0028】
【実施例1】
アクリル酸ブチル35g、メタクリル酸メチル14.5g、メタクリル酸0.5gからなる単量体混合液に、不均化ロジンエステル50gを溶解し、更にこれをポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.15gと過硫酸アンモニウム0.2gを溶解した蒸留水50gと混合し、乳化機にて充分乳化した。この乳化液を(B)液とする。
【0029】
温度計、撹拌機、リフラックスコンデンサーを備えた三ツ口フラスコに、参考例1で得られた(A)液を200g,蒸留水を50gいれ、内温を80℃に保った。
このフラスコに上記で調製した乳化液(B)液を2時間かけて連続的に投入した。このあいだ内温を80℃に保った。乳化液の投入終了後、更にそのままの温度で1.5時間撹拌を続けた。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は440nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E1”とする。
【0030】
E1について軟質塩ビ板に対する接着性を上記試験条件にておこなった結果、接着強度は5kg、耐熱クリープは3時間で落下、耐熱性は2kg、耐水性は2kgであった。
【0031】
【実施例2】
実施例1における(B)液の投入量を0.5倍にする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は400nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E2”とする。
【0032】
E2について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は4kg、耐熱クリープは3時間で落下、耐熱性は2.2kg、耐水性は2.2kgであった。
【0033】
【実施例3】
実施例1における(B)液の投入量を2.3倍にする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は460nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E3”とする。
【0034】
E3について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は4kg、耐熱クリープは2時間で落下、耐熱性は1.8kg、耐水性は2kgであった。
【0035】
【実施例4】
実施例1における(B)液の単量体混合液50gを80gに、不均化ロジンエステル50gを20gにする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は450nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E4”とする。
【0036】
E4について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は5.5kg、耐熱クリープは2.5時間で落下、耐熱性は2kg、耐水性は2.5kgであった。
【0037】
【実施例5】
実施例1における(B)液の単量体混合液50gを60gに、不均化ロジンエステル50gを40gにする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は420nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E5”とする。
【0038】
E5について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は5kg、耐熱クリープは3時間で落下、耐熱性は2kg、耐水性は2kgであった。
【0039】
【実施例6】
実施例1における(B)液の単量体混合液50gを60gに、不均化ロジンエステル50gを水添ロジンエステル40gにする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は440nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E6”とする。
【0040】
E6について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は5kg、耐熱クリープは3時間で落下、耐熱性は2.5kg、耐水性は2.5kgであった。
E6について、ポリエステル板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は2kg、耐熱クリープは1時間で落下、耐熱性は1.2kg、耐水性は1.2kgであった。
【0041】
【実施例7】
実施例1における(B)液の単量体混合液50gを60gに、不均化ロジンエステル50gをテルペンフェノール40gにする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は460nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E7”とする。
【0042】
E7について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は6kg、耐熱クリープは3.2時間で落下、耐熱性は2.5kg、耐水性は2.5kgであった。
E7について、ポリエステル板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は2kg、耐熱クリープは1時間で落下、耐熱性は1.2kg、耐水性は1.2kgであった。
【0043】
【実施例8】
アクリル酸ブチル80g、メタクリル酸メチル17g、メタクリル酸3gを、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム1gと過硫酸アンモニウム0.5gを溶解した蒸留水50gと混合し、乳化機にて充分乳化した。次に、温度計、撹拌機、リフラックスコンデンサーを備えた三ツ口フラスコに、蒸留水100gをいれ、内温を85℃に保った。次にこのフラスコに上記の乳化液を2時間かけて連続的に投入した。このあいだ内温を80℃に保った。さらに乳化液の投入終了後、そのままの温度で1時間反応を続けた。更に別途調整した(B)液、即ち、アクリル酸ブチル35g、メタクリル酸メチル14.5g、メタクリル酸0.5gからなる単量体混合液に、不均化ロジンエステル50gを溶解し、更にこれをポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.15gと過硫酸アンモニウム0.2gを溶解した蒸留水50gと混合し、乳化機にて充分乳化した乳化液を、2時間かけて連続的に投入した。このあいだ内温を80℃に保った。乳化液の投入終了後、更にそのままの温度で1.5時間撹拌を続けた。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は440nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”E8”とする。
【0044】
E8について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は5kg、耐熱クリープは3時間で落下、耐熱性は2kg、耐水性は2kgであった。
E8について、ポリエステル板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は2.5kg、耐熱クリープは1.5時間で落下、耐熱性は1.3kg、耐水性は1.3kgであった。
【0045】
【比較例1】
実施例1における(B)液の投入量を0.2倍にする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は350nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”H1”とする。
【0046】
H1について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は3kg、耐熱クリープは30分で落下、耐熱性は0.5kg、耐水性は0.5kgであった。
【0047】
【比較例2】
実施例1における(B)液の投入量を3倍にする以外は、全く実施例1と同様にしてエマルションを得た。できあがったエマルションの固型分は50%、粒子径は560nm、重合率は100%であった。このエマルションはアンモニア水にてpHを8.0に調製した。このエマルションを”H2”とする。
【0048】
H2について、実施例1と同様軟質塩ビ板に対する接着性能を試験した結果、接着強度は2kg、耐熱クリープは2時間で落下、耐熱性は0.5kg、耐水性は0.5kgであった。
上記実施例等で使用した、不均化ロジンエステルは、ペンタリン4850(商品名:理化ハーキュレス株式会社製)、水添ロジンエステルは、エステルガムH(商品名:荒川化学工業株式会社製)、テルペンフェノールは、YSポリスターT30(商品名:ヤスハラケミカル株式会社製)を使用した。
【0049】
【発明の効果】
本発明のエマルションを接着剤として用いた場合、接着力と凝集力のバランスに優れているため、水系であるにもかかわらず、接着後短時間でハンドリングに耐える接着強度を発現し、最終強度まで達するための養生時間も短く、強度変化が少ない。
【0050】
耐熱性や耐水性に優れているため、壁、床材などの建築分野、モルタル、コンクリートなどの土木分野、自動車内装材、包装材、ケーシング材等、接着剤およびその原料として幅広く利用できる。
エマルションの製造においては、特殊或いは新たな装置を導入する必要がなく、またエマルションに粘着付与樹脂を分散・配合する必要がない。したがって製造プロセスを省略化することが出来る。この結果、生産効率が良く現場物、ライン物にかかわらず、安心して使用できる。

Claims (2)

  1. (メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類またはビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物(重合中に架橋する単量体は含まない。)を乳化重合して得られる重合体エマルションの存在下、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類、ビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物100重量部に、粘着付与樹脂10〜300重量部を溶解した混合物を、該重合体エマルションの固型分100重量部に対し、45〜250重量部を乳化重合することにより得られるエマルション組成物。
  2. (メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類またはビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物(重合中に架橋する単量体は含まない。)を乳化重合して得られる重合体エマルションの存在下、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル化合物類、ビニル基含有カルボン酸類から選ばれる一の単量体又は二以上の単量体混合物100重量部に、粘着付与樹脂10〜300重量部を溶解した混合物を、該重合体エマルションの固型分100重量部に対し、45〜250重量部を乳化重合するエマルション組成物の製造方法。
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