JP3957624B2 - ポリクロロプレン系ラテックス組成物、水系接着剤、それらを用いた接着方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系接着剤の原料として好適なポリクロロプレン系ラテックス組成物に関するものである。特に、土木,建築分野でセメント,モルタル,スレート類を接着するのに好適であり優れた接着強度を発現するポリクロロプレン系ラテックス組成物に関するものである。
また、該ラテックス組成物を用いる水系接着剤、及び該水系接着剤を用いる接着方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築,土木用途では溶剤系のポリクロロプレン系接着剤が使用されていた。しかし、溶剤系接着剤の場合、トルエン,酢酸エチル,メチルエチルケトン等の有機溶剤が多量に用いられていることから、作業員の安全衛生面、環境面で好ましくなかった。
そのため、接着剤の水性化の要求が年々高まってきており、幾つかの提案がなされている(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、これら従来の接着剤では、セメント,モルタル,スレート類との接着に使用された場合には、接着強度が実用上不足している問題点が残されていた。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−104028
【特許文献2】
特開2001−89727
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる現状を鑑み、接着剤原料として使用された場合に、従来使用されてきた溶剤系接着剤による接着方法に匹敵する接着強度を与える、ポリクロロプレン系ラテックス組成物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリクロロプレン系ラテックスにカルシウムアルミネートを添加することで、セメント,モルタル,スレート類との接着強度が大幅に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、ポリクロロプレン系ラテックスにカルシウムアルミネートを含有してなるポリクロロプレン系ラテックス組成物に関するものである。
更には、該ラテックス組成物を用いた水系接着剤、及び接着方法に関するものである。
【0007】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。本発明で云うポリクロロプレン系ラテックスとは、ポリクロロプレン系重合体を水媒体中に乳化分散させたものである。ここで云うポリクロロプレン系重合体とは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンと称す)の単独重合体、またはクロロプレンと、クロロプレンと共重合可能な単量体との共重合体のことである。ここで云う共重合体とは、ポリクロロプレン存在下にその他の単量体をグラフト重合させた様なグラフト共重合体も含む。
【0008】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられ、必要に応じて2種類以上用いても構わない。
特にアクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,フマル酸に代表される不飽和カルボン酸を共重合させることは、接着力の点から好ましい。クロロプレンとの共重合性の観点から、特にメタクリル酸との共重合がより好ましい。
【0009】
ポリクロロプレン系重合体の重合方法は、特に限定されるものではないが、乳化重合による方法が一般的であり、かつ簡便である。
本発明を完成させるに当たっては、ポリクロロプレンを水に分散させる必要があるが、乳化重合であれば、得られたポリクロロプレン系ラテックスをそのまま使用することが出来る。
【0010】
ポリクロロプレン系ラテックスの乳化重合に使用される乳化剤及び/または分散剤は特に限定するものではなく、通常ポリクロロプレンラテックスに使用されている各種アニオン型、ノニオン型、カチオン型のものが使用できる。
アニオン型の乳化剤としては、カルボン酸型,スルホン酸型,硫酸エステル型等があり、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、炭素数が8〜20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドとの縮合物等が挙げられる。ノニオン型の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはその共重合体(例えば、アクリルアミドとの共重合体)、ポリビニルエーテルまたはその共重合体(例えば、マレイン酸との共重合体)、ポリビニルピロリドンまたはその共重合体(例えば、酢酸ビニルとの共重合体)、あるいは、これら(共)重合体を化学修飾したもの、あるいは、セルロース系誘導体(ヒドロキシエチルセルロース)等を挙げることができる。
カチオン型の具体例としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩等があり、例えば、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
本発明においては、ノニオン型の乳化剤及び/または分散剤を用いることが好ましく、ポリビニルアルコールの使用がより好ましくい。
【0011】
本発明におけるポリクロロプレン系ラテックス中の乳化剤及び/または分散剤の添加量は、初期仕込み単量体の合計100質量部に対して好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部、更に好ましくは2〜6質量部である。0.5質量部未満の場合には、乳化力が十分でなく、20質量部を超えると耐水接着力を低下させてしまう欠点がある。
【0012】
本発明におけるポリクロロプレン系ラテックスの重合温度は特に限定されるものではないが重合反応を円滑に行うために、重合温度を0〜50℃とすることが好ましい。
重合の開始剤としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、第3−ブチルヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物などが好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
重合に用いる連鎖移動剤の種類は特に限定されるものではなく、通常クロロプレンの乳化重合に使用されるものが使用できる。例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0014】
ポリクロロプレンの重合停止剤(重合禁止剤)は特に限定するものでなく、例えば、2,6−ターシャリーブチルー4−メチルフェノール、フェノチアジン、ヒドロキシアミン等が使用できる。
【0015】
ポリクロロプレンの最終重合率は、特に限定するものではなく、任意に調節することができ、未反応のモノマーは脱モノマー操作によって除去されるが、その方法は特に限定するものではない。
本発明のポリクロロプレン系ラテックスは、濃縮あるいは、水等の添加により希釈することで、固形分濃度を必要な濃度に制御することができる。濃縮の方法としては、減圧濃縮などがあるが、特に限定するものではない。
【0016】
本発明におけるポリクロロプレン系ラテックスは、特に限定されるものではないが、重合温度、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率、脱モノマー、濃縮条件等を適切に選定、制御することで、固形分濃度、トルエン可溶部の分子量、トルエン不溶分(ゲル含有量)等を調整することが可能である。
初期接着力と常態接着力とのバランスの点から、ポリクロロプレン系ラテックス中の(共)重合体のゲル含有量を3〜60重量%に調整することが、好ましい。
より好ましいゲル含有量は、初期強度を重視する場合は、3〜40重量%であり、更に好ましくは5〜30重量%である。耐熱強度を重視する場合には30〜60重量%であり、更に好ましくは40〜60重量%である。
【0017】
本発明に用いられるカルシウムアルミネートとは、CaOとAl2O3からなるCaO・Al2O3やCaO・2Al2O3等の総称のことであり、種々の組成が知られているが、何れも本発明に好適に使用できる。カルシウムアルミネートを主成分とするアルミナセメントを使用することも可能であり、経済的メリットもある。
【0018】
カルシウムアルミネートの添加量は、ポリクロロプレン系ラテックスの固形分100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部である。より好ましくは0.5〜5重量部であり、更に好ましくは1〜4重量部である。0.1重量部以下では接着力の改良効果が充分でなく、10重量部を越えて添加するとラテックスの安定性を損なう可能性がある。
【0019】
カルシウムアルミネートの添加方法は特に限定するものではなく、粉体をラテックスに直接添加する方法,一旦スラリーとしてから添加する方法,界面活性剤を併用して水分散体としてから添加する方法等が可能である。しかし、粉体のまま添加する方法では、カルシウムアルミネートが均一に分散しない場合があるため、一旦スラリーまたは水分散体としてから添加する方法が好ましい。
【0020】
本発明のポリクロロプレン系ラテックス組成物を水系接着剤として用いる場合には、初期接着力,耐水接着力,粘着保持時間等の特性をより実用的にバランスするために、粘着付与樹脂を添加することが好ましい。
水系接着剤に粘着付与樹脂を配合する場合、その種類は特に限定されるものではない。具体的には、ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などが挙げられる。十分な初期接着力を得るためには、軟化点温度が50〜160℃の樹脂が好ましい。
【0021】
粘着付与樹脂の添加方法は特に限定されるものではないが、プライマー中に樹脂を均一に分散させるために、水性エマルジョンとしてから添加することが好ましい。
さらに粘着付与樹脂の水性エマルジョンの製法には、トルエン等の有機溶剤に溶解させたものを乳化剤を用いて水中に乳化/分散させた後、有機溶剤を減圧しながら加熱して取り除く方法と、微粒子に粉砕して乳化/分散させる方法などがあるが、より微粒子のエマルジョンが作製できる前者が好ましい。
粘着付与剤の添加量は、好ましくはラテックス中のポリクロロプレン系重合体100重量部に対し、1〜200重量部である。より好ましくは5〜100重量部であり、最も好ましくは10〜70重量部である。
【0022】
本発明のポリクロロプレン系ラテックス組成物には、上述した以外にも、要求性能に合わせて、増粘剤、金属酸化物、充填剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、消泡剤等を任意に添加することができる。
【0023】
本発明の接着剤の用途は特に限定されるものではないが、特に土木,建築分野でセメント,モルタル,スレート類と、布類、木材、合成ゴム素材、ポリウレタン系素材、ポリ塩化ビニル系素材、ポリオレフィン系素材等の接着を行うのに好適であり、建築物のルーフィングや内外装材の接着に有用である。
【0024】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明の効果を詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下の説明において特に断りのない限り、部および%は質量基準で表す。
【0025】
[実験例1]
内容積3リットルの反応器を用いて、窒素雰囲気中で、水96重量部にポリビニルアルコール3.5重量部を60℃で溶解させた。このポリビニルアルコールン水溶液を室温近くまで冷却した後、この中にクロロプレン単量体99重量部、メタクリル酸1重量部、オクチルメルカプタン0.4重量部を加えた。これを45℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として重合し、ポリクロロプレンラテックスを得た。次に、このポリクロロプレンラテックスに20重量%ジエタノールアミン水溶液を添加してpHを7に調製し、減圧加温により濃縮し、固形分を50重量%になるように調製した。
【0026】
[実施例1]
実験例1で得られたポリクロロプレンラテックスを用い、表1に示す処方で配合し、水系接着剤を得た。
被着体として、25mm×150mmのスレート板,及び同サイズのキャンバスを準備し、それぞれの被着体表面に調製した水系接着剤を80g/m2の割合で刷毛にて塗布した。表面が生乾きの状態になるまで乾燥させた後、両被着体を貼り合わせ、ハンドローラーにて圧着した。被着体は、室温で5日間養生した後、180°剥離試験を実施した。
【0027】
[比較例1〜2]
実施例1の配合処方を、表1中の比較例1〜2に示す配合処方に変えた以外は実施例1と同様に実施し、比較例1〜2とした。
【0028】
実施例及び比較例の試験結果を表1に示した。
【表1】
【0029】
【発明の効果】
表1より明らかな如く、本発明のポリクロロプレン系ラテックス組成物は、セメント,モルタル,スレート等に優れた接着強度を示し、土木,建築用途等に有用に使用できるものである。
Claims (7)
- ポリクロロプレン系ラテックスに、該ラテックスの固形分100の重量部に対し0.1〜10重量部のカルシウムアルミネートを含有してなるポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- カルシウムアルミネートとしてアルミナセメントを用いる請求項1に記載のポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- ポリクロロプレン系ラテックス中のポリクロロプレンがクロロプレンと不飽和カルボン酸との共重合体である請求項1または2に記載のポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- 保護コロイドとして、ポリビニルアルコールを含有してなる請求項1〜3のいずれか一項に記載したポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- 粘着付与樹脂を含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載したポリクロロプレン系ラテックス組成物。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載したポリクロロプレン系ラテックス組成物を主成分とする水系接着剤。
- 請求項6に記載の水系接着剤を用いて被着体を接着する接着方法。
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